ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(職業安定分科会雇用対策基本問題部会)> 第80回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録について(2018年2月16日)




2018年2月16日 第80回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録について

○日時

平成30年2月16日(金) 10:00 ~ 11:30


○場所

厚生労働省 省議室
東京都千代田区霞が関1-2-2
合同庁舎5号館 9階 公園側


○議事

○雇用政策課長 皆様おはようございます。雇用政策課長の弓です。本日はお忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。

 それでは委員の皆様がおそろいですので、定刻より若干早いのですけれども、ただいまから第 80 回職業安定分科会雇用対策基本問題部会を開催させていただきたいと思います。職業安定局長と総務課長におきましては、急遽業務の都合がございまして遅れての参加となりますことをお詫び申し上げます。以降の進行につきましては、鎌田部会長にお願いいたします。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○鎌田部会長 それでは、私が進行したいと思います。本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の小野委員、桑村委員、玄田委員、労働者代表の小林委員、紺谷委員が欠席されるということです。

 それでは、議事に入ります。本日の議題は、転職受入促進のための指針の策定についてです。この転職受入促進のための指針につきましては、働き方改革実行計画に基づき、本年度中に策定することとされています。本日は、指針案の概要について事務局より説明を頂いた後、委員の皆様から御意見を頂戴したいと思っております。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

○雇用政策課長 資料に基づきまして、説明させていただきます。順序が前後して申し訳ないのですが、参考資料 2 に指針策定の背景という資料もお付けしていますので、そちらについてまず簡単に触れさせていただきます。参考資料 2 ですが、働き方改革実行計画の抜粋を記載しております。真ん中の所に線が引いてある部分がありますが、年齢にかかわりない多様な選考・採用機会の拡大に向けて、転職者の受入促進のための指針を策定し、経済界に要請するということが実行計画の中に盛り込まれているところです。 2 ページに工程表を記載しております。赤字にしている部分がありますけれども、年齢にかかわりない多様な選考・採用機会の拡大に向けて、転職者の受入促進のための指針を策定し、経済界に要請するということが盛り込まれているところです。

3 ページです。今回の指針については、法律に指針を定めるといったような規定があって、それに基づくという指針ではありません。年齢制限の禁止という意味では雇用対策法のほうに規定がなされておりまして、募集・採用における年齢制限が原則として禁止されているといったところです。こうした規定により、ハローワークにおける年齢不問求人は約 9 割といった状況ですが、更に多様な選考機会を確保していくという観点から、今般指針を定めるということです。

 続きまして、参考資料 3 、検討会の報告書というものが付いています。こちらは労働政策研究・研修機構に設置された検討会の報告書です。昨年 8 月から検討を重ねたもので、こちらも飛んで申し訳ございませんが、 17 ページに検討委員の名簿が載っています。中央大学の佐藤先生を座長にしまして、本日は御欠席ですがこちらの部会の委員でもあります小野委員にも御参加いただいた形で、検討を進めさせていただいたものです。なお、こちらの研究会につきましては、若者雇用促進法に基づく指針の改正という部分に基づいて、希望する地域等での勤務規制等の導入といったことについても併せて検討されたもので、この報告書においては、こうした多様な選考機会の拡大に向けて、企業、労働者、国として望まれる取組というものを整理し、報告書をまとめているといったものです。

 本文に入る前に、前置きが長くなって申し訳ございませんが、参考資料 1 に前提となる現在の状況などについて整理した資料をお付けしています。まず現在の雇用情勢です。皆様御承知のとおり非常に改善が進んでいるということで、有効求人倍率につきましては 1.59 倍、完全失業率については 2.8 %といった状況です。次ページの図表2、人手不足感に関する資料ですが、こちらについては製造業、全産業ともに不足感が高まっているといった状況を示しています。図表3は、中・長期的なことですが、人口減少ということで、生産年齢人口について減少が見込まれているといったところです。

 図表4は、中高年の方々が我が国の労働供給の中心的な役割であるということを示しているものです。また、失業された場合には、中高年の方々は長期化しやすいといったことをグラフとして示しているものです。図表5は、入職者の状況という雇用動行調査から拾ったものです。いわゆる我が国の雇用動行については、新卒一括採用ということはよく言われるところですが、入職者という形で見ると、新規学卒者が 135 万人に対して転職入職者が 478 万人で、 3 倍以上の方が転職入職という形を取られているというものです。こちらはパートなども含めた数字です。赤字の所が一般労働かつ雇用期間に定めのないものというものを抜き出した数字ですが、こちらの赤字で見ても、新規学卒者が 84 万人に対して転職入職者は 194 万人ということで、やはり多くの方が転職をしているという現状が見て取れるところです。

 図表6は転職の現状について整理したもので、転職入職者数についても長期的に見ると増加傾向にあるというところです。企業別、規模別の転職入職者数の推移は右側にありますけれども、大企業においても転職入職者の数が増えているといったところです。図表7は、年齢別に転職入職率を示しているものです。上のほうの青い線が 20 24 歳、赤い線が 25 29 歳で、若年層で転職入職率が高いことが見て取れます。足元で青い線の 20 24 歳が若干下がっていますけれども、他の年齢層も含めた全体で見ますと増加傾向と言えるということです。

 図表8は企業の規模別転入職者構成比で、転職入職というと中小企業というイメージが非常に強いという部分もありますが、大企業においても長期的には増加しているといったことがこの図表で示されています。図表9は、離職された方の離職理由を正社員と正社員以外で記載しているもので、正社員の方ですと会社への将来の不安や賃金以外の労働条件、仕事内容、賃金が、正社員以外の方ですと賃金や雇用への不安といったことが離職理由として挙げられているといったものです。

 図表 10 、左側のグラフは、転職を希望される方に対して実際に転職をした人の割合を折れ線で示しているものです。若い層や高齢者については、転職を考える方のうち多くの方が実際に転職をされていますが、 35 44 歳、 45 54 歳の層においては、転職に対する希望は持ちつつも実際には転職には踏み出せないといった状況が見て取れるところです。長期失業者割合につきましては右側に記載していますが、やはり一旦失業すると長期的になりがちといったことがありますので、こういったことも踏みとどまっている要因の 1 つとして考えられるのではないかというものです。

 図表 11 は、企業の採用の意向についての調査です。左側の白黒の表ですが、「積極的に採用を強化したい」というのは 35 歳未満からだんだんと減っていく、若い方ほど積極的に採用したい。また、「良い人材であれば採用したい」も、若い層であれば割合が非常に高いのですが、年齢が上がるにつれて減っていくといった状況が見て取れるところです。右側は中高年の採用実績があるなし別に、中高年の方を採用したいのかどうかについて聞いたもので、採用実績がある企業においては「積極的に採用したい」、「いい人がいれば採用したい」という部分が 5 割を超えているわけですけれども、採用実績がない企業は 3 分の 1 程度といったことが見て取れるところです。

 図表 12 は、転職後の活躍状況などについてです。まず異業種・同業種等での転職先の割合についてが左側の図で、右側の図は同業種・同職種ですとか異業種・異職種といった転職先等、その後活躍しているかしていないかについてのアンケート調査を行っているものです。こちらを見ていただきますと、異業種・異職種や同業種・同職種の場合についてもおおむね半分ずつということで、同じ職種や同じ業種に転職したからといって、特段そこの活躍の度合が異なるということは言えないかと思います。もちろん職種によって同職種でなければなかなかという職種もあるかとは思いますが、全体として平均しますと、こういった絵姿が出てくるといったものです。

 図表 13 は、年齢別に見た転職後の賃金変化についてです。白い所はほぼ変わらずに、オレンジが 1 割以上増加、青が 1 割以上減少ということで、やはり年齢が上がるにつれて賃金がなかなか上がりにくいといった状況が見て取れるところです。以上が参考資料 1 についての御説明です。

 資料 1 を御覧ください。資料 1 がこの指針の策定に向けて基本的な考え方や事項を整理したものです。本日は、こちらをベースに御意見を頂ければと考えているところです。まず指針策定の狙いですが、こちらは先ほどの働き方実行計画から抜粋しているものです。最初のマルですが、転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立できれば、労働者にとっては自分に合った働き方を選択してキャリアを自ら設計できるようになるということ、企業側にとっても急速に変化するビジネス環境の中で、必要な人材を速やかに確保できるということ、そうして雇用吸収力や付加価値の高い産業への転職や再就職を支援することは、国全体の労働参加率や生産性の向上につながるということが記載されています。

2 つ目のマルは先ほど申し上げた部分ですけれども、年齢にかかわらない多様な選考・採用機会の拡大に向けて、転職者の受入促進のための指針を策定し経済界に要請するといったことが、実行計画の中に盛り込まれているというものです。

 この転職・再就職拡大を進める主体はどういった方々が想定されるのかといったものをまとめたものが、左側の真ん中になります。まず企業ですが、人手不足の中で事業承継や企業価値の向上の担い手となる中核人材を求める中小企業ということが想定されるところです。また産業・事業構造の劇的な変化の中で、必要な専門性等を持つ人材を速やかに採用したい企業というものも、転職市場の中でこういった拡大を進める主体となり得ると考えています。労働者の方ですが、これまで培ってきた職務遂行能力、職務遂行能力というのは、仕事をしていく上での基本的な能力、土台となるような仕事の仕方や人との関わり方、適応の仕方といった能力というように、ここでは捉えさせていただいていますが、そういった能力や専門性を利用して、キャリアチェンジやキャリアアップを図りたい労働者というのがいらっしゃるのではないかと。国としましては、こういった企業や労働者双方のニーズを踏まえて、支援を行っていきたいと考えています。

 右側のほうに、年齢にかかわりない活躍の可能性というものをピックアップして記載しております。最初のマルは先ほどの資料の説明の中でも申し上げましたけれども、中高年の中途採用に前向きな企業の割合については、採用実績のない企業ですと 3 割程度ですが、採用実績のある企業では 6 割を超えているというものです。 2 つ目のマルは、専門性だけでなく、職務経験によって培われ土台となる職務遂行能力です。例えるならばコンピューターの OS という例えができるというものですけれども、こちらが企業横断的に活躍するために重要であり、職務経験が豊富な中高年齢者こそ転職後の活躍が期待できるのではないかと考えているところです。

3 つ目のマルですが、異業種からの転職者であっても同業種からの転職者と同様に活躍していると、先ほどの図表で説明したとおりです。 4 つ目のマルは、中途採用された中高年者が活躍している好事例を持つ企業の存在です。中高年の方を積極的に採用するということを PR することにより、多くの方に応募いただいて、契約的な人材の確保が可能となったといった事例も見られるところで、こういった事例があるといったところです。

 では、どのように取り組んでいくかということですが、下の1、2、3と数字が書いてあります。まず機運の醸成、年齢にかかわりない適正な評価・採用、採用後の活躍支援です。今回の指針は、企業側に主に取り組んでいただくことを記載するという指針ですが、企業側の取組を支援する形での国の取組というものも位置付けていきたいと考えているところです。下のほうに項目が国の取組、企業の取組、また企業・国という形で書いてありますが、次ページの赤文字のタイトルが 1 枚目の下に書いてあることと同じでして、具体的な内容については更に黒ポツで記載しておりまして、こちらを中心に説明をしたいと思います。

 1機運の醸成に関しての国の取組です。転職市場に関する情報の発信、職場情報の見える化の促進です。こちらについては、先ほど申し上げた転職市場が非常に拡大しているといったことなどにつきまして、正確な情報発信などを積極的に行ってまいりたいと考えているところです。 2 つ目のポツは、職場情報や雇用管理の状況等が優良な企業の認定・表彰に関する情報の紹介などということで、くるみんといったような積極的な企業を認定、表彰する制度などが多くありますので、転職の際の参考となるような形での積極的な情報提供を進めていきたいと考えています。 3 つ目のポツは、企業や転職希望者に対して、中途採用の成功事例や中途採用者の円滑な職場定着・活躍のためのポイントを周知するということで、こういったノウハウやポイントを周知することによって、好事例を作り上げていきたいと考えているところです。

2 つ目の赤いマルですが、多様な選考・採用機会の拡大に向けた機運の醸成です。指針の周知を図るために経済団体等への要請を行うということ、また、こういったことを通じて官民を上げての中途採用拡大の機運の醸成を図りたいと考えております。

 2の年齢にかかわりない適正な評価・採用です。 1 つ目のマル、労働者の専門性や職務遂行能力等の見える化です。円滑な転職や合理的な処遇決定に向けて、各職種の賃金や働き方、職務遂行能力を含む職業能力等の見える化を促進するというものです。労働者の立場に立っても、専門性に加えて職務遂行能力の見える化というものを促進してまいりたいと考えています。 2 つ目のポツですが、企業におけるセルフ・キャリアドックやジョブ・カードの活用ということにより、従業員の方の主体的なキャリア形成を促進・支援したいと考えています。

2 つ目のマル、中高年の中途採用拡大に取り組む企業への助成等です。中高年を初めて採用する企業や中高年の採用を拡大する企業に対して、助成金等を通じて支援をしていきたいと考えています。

 企業の取組です。まず、必要とする職業能力の明確化及び職場情報等の積極的な提供です。自社の現状や方向性等を踏まえ、必要とする専門性等の職業能力の水準、非常に高度なものから一般的なもの、専門能力と言いましても様々な水準があるかと思いますので、そういった職業能力の水準や範囲、どの範囲までを必要とするのかということを明確に整理し、募集・採用を行っていただきたいと考えています。

2 つ目のマルは、職務経験により培われる職務遂行能力の適正な評価です。この土台となる職務遂行能力は、異業種においても共通して発揮できるものだと考えています。こうした職務遂行能力は職務経験によって培われるということを考えますと、豊富な職務経験を持っていらっしゃる中高年の方こそ企業・業種横断的な活躍が期待できるところです。こうした方々の選考・採用に当たりましては、このような職務遂行能力について是非適正に評価していただきたいということを記載しております。

 次のマルは、専門性の高い従業員の活躍機会の拡大です。職務遂行能力と並び、専門性ももちろん必要となるということですので、継続的な学び直しを通じた専門性の向上を図るために、費用面・時間面での負担の軽減に努めていただきたいといったものです。 2 つ目のポツは、専門性を有する従業員を適正に処遇評価できる職員等を導入するなど、プロフェッショナル人材の育成・活用に努めていただきたい。専門性についての適正な処遇評価を行っていただきたいということです。次のポツは、高度に専門的な業務を切り出し、専門職等のウエイトを高めるということについても御検討いただければということです。

 3が採用後の活躍支援です。まず公平かつ柔軟な処遇です。中途採用の賃金決定においては、外部労働市場の相場や社内の賃金水準などの個別事情に加味して、公平性を保つ処遇について柔軟に決定していただきたいということ。また、採用時で終わりではなく、昇進や配置等といった処遇についても公平な処遇を行っていただきたいということです。

 次のマル、早期定着に向けた支援です。中途採用の方、例えば中高年の方でベテランだからといって、採用したまま定着支援を行わないとなかなか定着できない場合があるということを伺っており、こういった採用後の定着支援についても実施していただきたいということです。

3 つ目のマルですが、平素からの継続的な役割の明確化、職務遂行能力の把握です。こちらは中途採用者に限らず自社の従業員も含むのですが、能力を十分に発揮し続けられるように、従業員の求める役割の明確化や職務遂行能力の把握に継続的に取り組んでいただきたいというものです。下に緑で全体を通じて企業・国の取組という形で、労働者の主体的・継続的なキャリア形成の促進というものを記載しています。まずは早い段階から従業員に自身のキャリア形成を考えさせる機会や、自身の職業能力を把握させる機会を提供していただきたいと考えておりますし、また、社内公募制度の導入など、従業員の方の主体的なキャリア形成といったものに配慮した人事管理を行っていただければということを記載しています。私からの説明は以上です。

○鎌田部会長 それでは、議論に移ります。ただいまの説明について、御意見や御質問があればどうぞ御発言をお願いします。

○酒井委員 公益委員から最初に発言すべきではないかもしれませんが、資料に関して 1 点だけ確認させていただきます。資料 1 1 ページの右側、「年齢にかかわりない活躍の可能性」という所で、 1 つ目のマルに、「中高年齢者の中途採用に前向きな企業の割合は、採用実績のない企業では 3 割程度だが、採用実績がある企業では 6 割を超える」ということで、これは恐らく参考資料の 11 ページのグラフに対応するものだと思います。これはどういうふうに解釈したら良いのか教えていただけると有り難いのです。

○鎌田部会長 よろしくお願いします。

○雇用対策課長 アンケートを取りますと、企業側が中途採用を行うときには、中高年の方だと自社の文化になかなか馴染んでいただけないのではないかとか、若い方々を採用して育てていきたいという形で、左側にあるように若い方々を積極的に採りたいという意向が強いのですが、実際に 1 度中高年の方を採用していただいた場合には、中高年の方でも十分活躍していただけるではないかということで、実際に雇ってみると中高年の方々の良さと言いますか、活躍している実際の姿を御覧になって、そういった採用に対して積極的になっていくのではないかと解釈しております。

○鎌田部会長 いかがですか。

○酒井委員 分かりました。そういうふうに解釈するということですが、多分、研究者などがこのグラフを見ますと、恐らく採用するつもりがないので採用実績がない、採用する意欲が高いから採用実績があるのだろうとも読めるのかなとパッと思ったので確認させていただきました。そういうふうに考えていることは分かりましたので結構です。ありがとうございました。

○鎌田部会長 ほかに御質問はありますか。

○渡辺委員 例えば、資料 1 の左側に転職市場のイメージ図がありますが、今ここには、もう 1 つ大きなプレイヤー、転職を仲介する民間の業者がいて、実際に中高年の方が転職しようと思うと、そういった所を介する場合が多いと思いますし、実際に今は若い人だけではなくて、中高年の方に関してもそこを通してかなり人材が動いている。私自身も実感をしております。

 そういった中で、これは質問になりますが、 2 ページ目、「国の取組」の一番上に「労働者の専門性や職務遂行能力等の見える化」という言葉があって、アンダーラインが引いてある所の「見える化を促進する」というのは非常に大事なことだと思います。その下の「企業の取組」の中で、一番上に「必要とする職業能力の明確化及び職場情報等の積極的な提供」とあって、これも企業がこういったことをされることは必要だと思いますが、実際にこれを使う場としては、そういった転職の仲介企業がその人の能力を定義し、また、人を欲しがっている企業はどういう人を欲しがっているのか定義するというところで一番役に立つと思います。ですから、こういったことをおっしっていながら、これをどういうふうに使うかという説明がないので、私は非常に奇異に思いました。そうすると、どうしてもここには民間の斡旋業者が登場して、そういう場で使うように取り組むということなのかなと想像しながら見ていたのですが、そうでないと、多分、幾ら見える化と言っても掛け声だけに終わってしまって、どういう場で使うかというイメージがもう少し欲しいなという気がしたので、そこの所を説明していただければと思います。

○鎌田部会長 よろしいですか。お願いします。

○雇用政策課長 委員がおっしゃるように、民間の業者を使っての、転職という場合もありますし、ハローワークを使って転職をしていただく場合もあるということです。そういった中で「見える化」ということですが、例えばジョブカードやキャリアコンサルティングを普及していくことによって、それぞれ労働者の方々が自分自身の職業能力を明確化していく、棚卸しをしていくということ。これは転職という場面に限らず、見える化していくという部分もあります。また、企業が採用する場合にどういった基準で採用するのかというときに、職務遂行能力についてももう少し評価して採用すれば良かったという、見るときにはどうしても専門性を中心に見てしまって、採用した後を見ますと、もう少し人柄とかも加味して採用すれば良かったといったアンケートもありまして、そういったことを事前に整理して見ていただくことも必要だと思っています。

 職業能力評価についても、見える化していただきたいときに、どういった評価をすればいいのか。そこは既にしっかりとお持ちの企業もいらっしゃると思いますし、また、そこについてどのように取り組んだらいいのかということでは、職業能力評価基準的なものを我々としても示していくことによって採用につなげていただきたいと思います。実際にそれをハローワークでお使いになるのか、業者でお使いになるのか、例えばこういう方を募集していますよというのを、大手企業が中心になりますが、ホームページ等で掲示される場合もありますし、様々な場面でお使いいただけるかとは思います。

○渡辺委員 今、基準という言葉が出たので、私はかなり安心したのですが、やはり、そういったものを作るというゴールがあるわけですね。

○雇用政策課長 既に職業能力評価基準をお示ししているものはあります。それを引き続きブラッシュアップしていくことにより、皆様に御利用いただきたいと考えてます。

○鎌田部会長 よろしいですか。

○春川委員 私も渡辺委員の御質問と関連する所になるのですが、「見える化」の中で、「賃金」にもアンダーバーが引いてありますので、そこに対して意見提起をさせていただきます。透明性を図ることについての重要性についてはマッチングという観点からも重要であると理解しております。一方で、透明性が高まることは、様々な情報が明るみになるということから、特定の産業や特定の職種に人が寄らなくなるといった、人手不足を逆に誘発してしまうことがあるのではないかとも考えております。そうした点も含めて情報の取扱いには十分留意していただきたいと思います。

○鎌田部会長 御意見ですかね、何かコメントがあればお願いします。

○雇用対策課長 例えば、職務の負担や業務の内容にもよったりとか様々あると思います。柔軟な働き方が可能な方に関して、職種の特性等いろいろな賃金の決定要素があって、賃金だけを御覧になってしまうと確かにそういった要素が含まるかもしれません。ですから、様々な情報をきちんとお示しすることによって、何か一部の情報で偏りがないようにという御意見だと受け止めさせていただきます。

○鎌田部会長 よろしいですか。

○根本委員 私から 2 点ほど質問をさせていただきます。 2 ページ目の企業の取組の最初の項目、職業能力の明確化、情報の提供という所です。専門性、職業能力の水準、範囲を明確化に整理し、募集・採用を行うということで御説明がありました。我々も実務で行うときにミスコミュニケーションにならないように、そういったことは日常からとても意識してやっているところです。資格みたいなものは比較的伝えやすい部分ですが、職業能力の水準範囲といったものについてはなかなか言葉として伝えていくことは苦労をしていますし、また、今までの経験の中で培われた OS のような職務遂行能力についても、表現としてどういうものを我々が求めているのかということも伝える難しさも実感しています。

 そういう意味で、どういう項目についてどれぐらいの具体性でということが非常に付けづらいと思います。そういう点について、何か具体的な方針、指針みたいなお考えが皆様のほうであるのかどうかお聞きしたいと思います。

2 つ目ですが、右側にある「公平かつ柔軟な処遇」という記載についても、我々はやはり実務でやっておりますと、なかなか迷うところもあります。非常に能力、経験豊かな方については、当然来ていただくためにもより高遇な処遇をということも考える一方で、新卒から勤めてきている社員との社内的なバランスをどう取っていくかというところをいつも気を払っております。公平という概念が、そういう意味では難しいところがあるのかと感じております。「社内外での公平性を保つ処遇」という記載についても見解等がありましたら教えていただければと思います。以上です。

○鎌田部会長  2 点ほど御質問がありましたのでお願いします。

○雇用政策課長 まず、明確化の部分です。専門性については、例えばどの水準まで必要なのか、本当に最先端の能力なのかということは、今でも取り組んでいる企業もあると思っております。また、そういった中で、例えば本当に高度な専門性が必要な場合と、その分野に関してマネジメントできるとか、そういった会話ができるくらいの共通言語を有しているといった程度の専門性といった場合もあるかと思います。そういったところで、ミスマッチがないように、募集採用段階に当たって間口を広げるという意味でも、専門性については明確化していただければと考えております。我々としても、指針という形で策定した後に、この指針については積極的に活用して周知を図っていく際には、できるだけ分かりやすいような形で、何か網羅的に整理するのではなく、ポイントポイントの好事例になるのかもしれませんが、できるだけ分かりやすい形で皆様にお示ししていければと考えております。

 公平かつ柔軟な処遇についても、例えば専門家を雇い入れる場合、なかなか今の社内における賃金表や賃金体系に合わない場合もあるということで、そういったときには雇われる企業のほうでも非常に苦労されて雇っておられることは伺っております。なかなか個別具体的に、どこがどうなる場合が公平かということを明確にお示しすることは難しいので、個別な判断という部分があるのですが、必要な人材を雇い入れるという観点で、そういったことを配慮しながらも処遇を考えていただきたいということで書かせていただいているものです。こちらについては、具体的にこうすれば公平というところまでこの中で記載することは難しいかとは思っております。

○人材開発統括官能力評価担当参事官 補足的にお答えします。人材開発統括官能力評価担当参事官の瀧原です。本日は見える化のこともありましたので出席させていただいております。公平な部分と明確化の部分と非常に近い部分もありまして、国としてこれがこういうふうなレベルで能力を示してくださいというものは、もちろんそこまでのものはないのですが、ただ我々がやっている中で能力評価をどう見ていくかということで、企業によって非常に差はあるのですが、非常に深く考えて、こういう能力が必要で、こういう部分が必要でという企業と、なかなかそこまでいかなくて営業の人が欲しいというぐらいで、経験があればなお良いですというところで終わってしまっている企業と。しかし、御社においてはどういう営業をされているのですかとか、あるいはどういう仕事があってというような職務分析をしっかりやっていただきたいという形で、我々は実はサポートさせていただいております。

 先ほど課長から話がありましたが、職業能力評価基準のシートは幾つかの業種で 50 幾つ作っているのですが、この業界だとこういう仕事があるのではないかというモデルを示して、そのモデルでこういう業界ではこういう仕事があって、それをレベル 1 からレベル 4 まで考えると、若い人はこれぐらい、 2 だとこれぐらい、 3 だとこれぐらいというのをモデル的に示しております。我々はそれを今ホームページで公開しているのですが、企業に自由に使ってください、自由に持っていって、ただそこのクラークはモデルなので、御社に使いやすいように使ってくださいという形でやっております。そういう意味では、これが基準というよりは、我々はモデルで示しますが、各社でどうやったらいいかというのを考えていただくためのツールを、できるだけ多くこれからも提供していきたいと思っています。明確化がなかなかできていない所には、それを使うことによって明確化が 1 歩進むのではないかと思っております。

 また、公平な部分を同じような形でということで、キャリアマップというものを考えておりまして、会社の中でこういう能力を持った人は、次はこういうレベルに上がっていくと会社の中で 1 つ給料が上がるという判断もあり得るのではないかというような形です。全体的に会社として人をどういうふうに評価していくという全体像を作ると。採用するときには良い人を採らないといけないですから、少し給与面を考えないといけないのかもしれませんが、長期的にその人が会社の中でどういうふうになっていくかというと、それは新卒から入った人も中途採用した人も、全体の中ではこの位置付けになるから、これぐらいの給与になるのではないかと。それが採用したときの給与を配慮するというのはあるかもしれませんが、全体的に皆さん社員の方は、こういう中でこういうレベルで、その場合には給与はこうだという形を構築していただければ、少しでも公平にはつながっていくのかなと思っております。我々としては、できるだけそのサポートができるようなツールをこれからも提供させていただければと考えております。

○鎌田部会長 補足がありましたが、よろしいですか。

○小保方委員 幾つか意見と質問をさせていただきます。資料 1 の左側の中段の枠の所ですが、労働者の所の書き振りで、「これまで培ってきた『職務遂行能力』や『専門性』を利用して、キャリアチェンジやキャリアアップを図りたい労働者」というように、前向きに転職であったり再就職を望んでいる労働者像が書かれていると認識しています。

 一方で、本日示されている資料にはないのですが、 JILPT 2016 年度に実施した「第 7 回勤労生活に関する調査」の中で、いわゆる終身雇用を支持する者の割合が 87.9 %と過去最高の数値になっています。取り分け直近の傾向で言うと、 20 代、 30 代の終身雇用や年功賃金を支持している割合が、 2007 年から急速に伸びている。こういう結果として、今の状態としては年齢階層にかかわらず、 90 %近くの労働者が、いわゆる日本型雇用慣行を支持しているというデータがあると認識しています。すなわちこれはどういうことかと言うと、労働者の大半は、本来的にはできれば 1 つの企業でやりがい、働く意欲を持ちながら着実にキャリアアップを図っていきたいと望んでいる労働者が多いのが実態であると思っています。

 一方、資料 1 の左下の、例えば国の取組の所ですが、「多様な選考・採用機会の拡大に向けた機運の醸成」など、いわゆる転職を促進する取組に向けた機運の醸成と理解しております。これは旗振りの仕方を誤れば、いわゆる日本型雇用慣行の良い部分、労働者から支持されている部分を蔑ろにされかねない。その結果、望まざる転職者が増えるような形になってしまうのではないかという懸念を抱いています。ですから、まずそこはそうではない、そうならないように十分留意して取組を進めていくべきではないか。これは意見になります。

 もう 1 つ、今申し上げた前提を担保した上でという話になりますが、ステップアップしたいとか、再チャレンジしたいと考えている労働者に対して、国や企業として門戸を広げる。こういう取組を進めていくこと自体に異を唱えるものではないのですが、先ほどの説明や概要の資料の書きぶりをみると、取り分け、中高年層の転職や再就職にフォーカスをしているのかという印象を受けております。

 参考資料の 10 ページにデータとして示されているものですが、これはいわゆる中高年層をどこで捉えるかによって変わってくるとは思いますが、例えば左下の「転職希望者に対する転職者の割合」のデータを見ますと、 35 44 歳の層、 45 54 歳の層はほぼ大差がない状態だと思います。右側の失業率の割合をみますと、一番失業率が高いのは 25 34 歳の層です。長期失業者割合に関しては、 25 54 歳の層においては、いずれも 40 %近辺という形なので、恐らく大差がないということだと思います。

2 点目に申し上げたいのは、中高年層にフォーカスし過ぎるように見えてしまうと、これは旗振りとしておかしいのかなと思います。これはタイトルにあるとおりですが、年齢にかかわりなく、多様な選考・採用機会の拡大ということで、中高年層だけではなく、幅広く対策を進めていく趣旨が伝わるようにしていただきたいということです。

 最後 3 点目は質問です。 GILPT の報告書、参考資料 3 11 ページの中段に ( ) とありまして、これは企業の取組の流れで書かれている所であると認識しております。例えば ( ) 2 つ目のマルに副業・兼業の記載があります。 12 ページ、 (2) の最後、新卒者・労働者等の取組の流れの中の記載で、副業・兼業の記載が見られている状況だと思います。今日示されている副業・兼業の問題は、今いろいろな検討会で取り上げられていると認識しております。ただ、今日の指針案の概要ペーパーにおいては、副業・兼業の記載は見られていないと認識しております。今回の指針の中で、副業・兼業に関してどのような取扱いを考えているのかお伺いします。 3 つ目は質問です。以上です。

○鎌田部会長 御意見が 2 つと御質問がありましたが、御意見の部分についてはもし必要であればコメントしてください。質問については、お答えいただきたいと思います。

○雇用政策課長 まず、中高年の方々に対しての望まない転職の関係ですが、今回の指針は、あくまで受入れを促進するためのものという形で、転職を希望される方が円滑に転職を実現できることを前提としているものです。数値としては余り差がないのではないかという御意見、あとフォーカスし過ぎないようにということで、やはり、今、転職市場は実態としてはかなりあるという一方で、なかなかうまくいかない場合もある。そういったうまくいかない場合があるときに、中高年の方々を中心に障害となっている部分があれば、例えば情報をきちんと積極的に提供していくことによって、うまくいかない転職を 1 つでも減らしていきたいということです。あくまで年齢にかかわりないという部分で、中高年の方々は総体的に見れば非常に厳しい状況ではないかという受け止めはしておりますが、その方に限ったものではなく、年齢にかかわりはないと考えております。

 今回のお示しした資料については、必ずしも全ての項目を網羅しているものではないと考えております。ほかの項目についても、今後指針案を作るときには盛り込んでいくことを考えております。ベースとなるものは、この検討会の報告書を参照しながらと考えております。御懸念としては、副業・兼業等については労働時間とか健康管理の問題等もありますので、そういった指針案について検討する際には、そういったことについても十分留意しながら検討していきたいと考えております。

○鎌田部会長 更にありますか。よろしいですか。

○坂下委員 経団連の坂下です。今、労側から御質問があった件について、私からももう一度確認的に質問したいと思います。今日は資料 1 の内容について議論になっていると思います。今の雇用政策課長の御発言では、ここに書かれていないものも含めて、今後指針の中に入ってくる可能性があるということでしたが、この場ではそれをどういうふうに考えればよろしいのですか。

 

例えば、兼業・副業に関しては、経団連は必ずしも旗振り役をする立場ではなく、慎重に検討する必要があると考えています。今日この場での議論が、今後どのように展開されていくのか、もう一度御説明していただけますか。

 

○鎌田部会長 どうぞお願いいたします。

○雇用政策課長 本日については、正に資料 1 でお示ししたこれまでの経緯や基本的な考え方の部分、また中核となる取組としてお示しした資料について御意見を伺う。これに限らず御意見があれば、もちろんそこを否定するものではありませんが、基本的にはこの資料に基づいて御意見を頂くものと考えております。

 今後、実際に指針を策定する段階になったときには、本日頂いた御意見も踏まえながら、指針案を策定して、分科会にお諮りして、そちらでの御意見を踏まえて指針を策定する形で進めたいと考えております。

○鎌田部会長 坂下委員、どうぞ。

○坂下委員 ありがとうございます。そうしますと、やはり重要になるのは、指針そのものの審議になる安定分科会ということになると思います。先ほども申し上げたとおり、ここに書かれていないものの中で、かつ検討会の中で書かれているものについては、慎重に判断していく必要があるものも含まれていると理解しておりますので、しっかりと分科会で見ていくことになると思います。

 その関連で、実際、指針の文書は、今ここでは示されておらず、恐らく資料 1 2 枚目が指針のイメージになると思いますが、それでいいのかどうか確認させてください。もしそうであった場合、文言について幾つか違和感がある部分がありますので、この際指摘させていただければと思います。

  違和感と言いましょうか、この表現で本当に適切なのかどうか疑問に思っているのが、職務遂行能力という言葉です。職務遂行能力というのは広く一般に使われている言葉であるとは思いますが、それ故に、この言葉の持つイメージや定義はそれぞれではないかと思います。恐らく指針の中に「コンピューターの OS のような」という書き方はできないと思いますが、先ほど来の御説明ですと、人との接し方など、かなり基礎的な能力に近い部分が入っているように思います。経団連で職務遂行能力という言葉を使う際は、必ずしもそういう基礎的な部分、汎用的な部分ではなく、その人が当該職務を遂行するために必要な知識や、正にそれに必要な能力というような、もう少し OS よりもアプリケーションの要素も含んだようなものを使う場合が多いです。ですから、実際の企業の方がこの指針を通じて中途採用をしていこうと考えたときに、誤解がないように表現は慎重に検討していただいたほうがよろしいかと思います。以上です。

 

○鎌田部会長 今、御意見のような言い方で、職務遂行能力についての御発言がありましたが、何かコメントはありますか。

○雇用政策課長 用語の使い方や定義の仕方も含めて、検討させていただきたいと思います。

○鎌田部会長 ほかにありますか。

○春川委員 私からは 1 点、これも資料 1 の内容について意見提起をさせていただきます。資料 1 の中段、右側の吹き出しの中にある上から 3 つ目のマルです。「異業種からの転職者であっても、同業種からの転職者と同様に活躍している。」といったところの捉え方の意見提起です。参考資料の 12 ページの右側の棒グラフ、「職種・業種の変化と活躍の状況」の調査内容です。一言で言えば、同じ業種・職種であっても、活躍しているしていないということの調査で言えばイーブンだということもあって、資料 1 の吹き出しの中での、異業種であっても同じように活躍しているのだという断定の仕方には、若干違和感を覚えます。

 併せて、参考資料の 12 ページの棒グラフの注釈の所にあるのが、 40 歳からの調査ということもありますので、年齢にかかわらない活躍の可能性というところであれば、もう少し年齢層の幅のある中で何か調査の根拠付けがあればよろしいのではないかというところを意見として申し上げます。

○鎌田部会長 よろしいですか。何かコメントはありますか。

○雇用政策課長 なかなかこういった調査がありませんので、こういった層の調査の形になっていることについてはお詫び申し上げます。

 今回吹き出しで書かせていただいたのは、あくまで異業種です。どうしても同業種や同職種の方を求めがちという話もありますが、そうではなくて、異業種からであっても活躍できる可能性は、そこには差はないということで、そこを強調した書きぶりにさせていただいております。ただ、委員御指摘のとおり、ここは差がないと言っても半々という状態で、実際は転職した方全体として、もっと活躍していただくことが必要だと思っております。転職した方が活躍していただくための定着支援や、転職後の活躍の割合を引き上げていく方向での施策を含めたものを、この指針の中で、定着支援のようなもので含めているということで御理解いただければと思います。

○志賀委員 御提案と御質問があります。先ほど好事例を共有してくださるというお話があったのですが、企業側から申しますと、好事例よりもむしろどのようなリスクがあるのかを事前に知ることが、ハードルを下げる 1 つのポイントになってくると思います。特に図表の 11 の中高年の採用意向についてを見ると、採用実績なしの企業のうち、「分からない」が 44.8 %、「採用したくない」等を含めると 60 %超えになると思います。なぜ分からないのかというところは、やはり採用にあたってどのようなリスクがあるのか分からないという考えが非常に高いのではないのかと思います。そのリスク、失敗事例の共有をしていただくことで、リスクヘッジやソリューションをあらかじめ考えることができ、ハードルが低くなるのではないかというのが御提案です。

 それから御質問です。 12 ページの右側の活躍の状況を見ると、活躍している方と活躍していない方が半々と、いいような悪いような状況となっています。企業側のアンケートだと思うのですが、こちらの対象者の方は、転職前は自分が活躍できていないと感じていて、転職後活躍できていると思われたのでしょうか。その関係資料はあるのでしょうか。もし活躍していると思っている人が 0 %なのが 50 %になったというのでしたら、非常に効果的な資料かと思いますがいかがですか。

○鎌田部会長 どうでしょうか。

○雇用政策課長 すみません、なかなかそこにお答えするような調査というのはないのですが、その資料の 9 ページ、ここは転職前の理由だけを聞いているものですが、満足のいく仕事内容ではなかったとか、能力・実績が正当に評価されていなかった、能力・実績が正当に評価されていなかったというのは、もしかすると活躍できていないという、自分は本当はもっと活躍できるのに適正に評価されていないというのは、活躍していると受け止めてもらっていないとかいったことがあるのかなと。そうした方も転職者の中では一定割合、 10 %後半だと思いますが、こういう方がいらっしゃるというところがあります。

○鎌田部会長 よろしいですか。

○志賀委員 はい。

○鎌田部会長 そのほかありますか。

○勇上委員 すみません、今の資料 12 ページに関して幾つか議論がありましたので、御提案をさせていただきたいと思います。 12 ページで同業種・同職種とか、異業種・同職種とか、それに関しての成果として、活躍している、活躍していないというものが扱われていると思うのですが、先ほどの別の資料では、賃金の変化というものも、例えば雇用動向調査という厚生労働省が実施されているものがあるわけですので、雇用動向調査ですと前職の職種や業種、転職後の業種や職種というものが分かるということで、特別集計が必要になりますけれども、もし可能であれば、そういう賃金を見られるというのは 1 つです。ただ、その賃金変化というのは、転職前と転職直後の変化でしかありませんので、もし活躍している方がいらっしゃる場合は、転職して 1 年後 2 年後に賃金が急激に上がっていくこともあります。ですので、転職前後だけで見ることだけではなくて、例えば労働者御本人の調査で転職して満足している、していないというものを、成果として見たときに、同業種と同職種あるいは異業種と異職種で、どのように満足をしているのか、またどのぐらい差があるのかも 1 つの指標になるのかなと考えました。

○鎌田部会長 坂下さんどうぞ。

○坂下委員 すみません、質問です。資料 1 2 ページ目の一番下の緑色の囲みの部分について、企業・国の取組となっているのですが、具体的に書かれている 2 つのポツは、どうも企業の取組しか書いてないように見えます。それで先ほど来、ここにないことも安定分科会での議論では含まれ得るということだったので、確認ですが、国が取り組むというのはどのようなものがここに入ってくる可能性があるのか。あと、もし可能であるならば、ここ以外も含めて、今時点でここに書いてないもので指針に書き込もうと考えているようなものがあるのであれば、それも併せて教えていただけると有り難いと思います。

○鎌田部会長 事務局いかがでしょうか。

○雇用対策課長 この黒ポツにつきましては、確かにおっしゃるように企業側の取組が中心になって書かせていただいていますが、国としましても、公的な職業訓練や教育訓練給付などの活用により、学び直しの支援といったものができるのではないかということが考えられておりますので、そうした支援について実施してまいりたいという方向で、今検討させていただいているところです。

 そのほかにも、例えば一人一人の方々のニーズに応じたマッチングというようなことも、極めて基本的な事項ですが、ハローワーク等においてマッチングを推進していくことは、我々として基本的に実施していくべき事項だと考えているところです。すみません、ちょっと網羅的ではないですが。

○鎌田部会長 ほかにありますか。

○村上委員 何点か申し上げます。まず、先ほど坂下委員から御発言がありましたが、兼業・副業に関しては、私どもとしても全部を否定するわけではありませんが、政府が推進する話ではないというのが基本的な考え方でして、この点については昨年 11 20 日に行われた別の局での検討会でも申し上げたとおりですので、そういう点も是非御配慮いただければと思っております。

 それから、先ほど小保方委員からも発言がありましたが、年齢にかかわりない多様な選考・採用機会への拡大に向けた指針というタイトルなのであれば、中高年にフォーカスしたような話ではなく、妊娠、出産、育児などで一度退職された女性の再就職の支援であるとか、就職氷河期世代と言われる方々の支援というものも、もう少し書き込んだ内容になるのがしかるべきだと考えておりますので、指針をそのように策定するのであれば、そうしたことも是非書き込んでいただきたいと思います。書き込まないのであれば、このタイトルが適切ではないと考えておりますので、御検討いただきたいと思っております。

 もう 1 点は、なかなか申し上げづらい部分なのですが、先ほど渡辺委員から、資料 1 1 ページ目の左の図を指されて、企業の努力も大切だけれども、マッチングがとても大事なのだというお話がありました。その点から言うと、職業紹介事業の方々がどれだけきちんとマッチングできるのかという、そこの能力も高めていくことが必要だということでした。再就職の場合、そうした方々の役割が増えてくるという中で、どのようなデータを使って議論していくのかという問題ですが、検討会や審議会の中で、全てを公的な統計だけ活用するということには限界がありまして、いろいろな調査機関あるいは研究機関のデータを使うことはあることだと思いますし、また、そういうこともあっていいと思っています。ただ、人材サービス関連の研究機関の調査を使うのはどうなのかと、どのようにこの後見られるのかというところは、少し注意をしなければならないと思っております。このようなリクルートワークスや人材サービス産業協議会の皆さん方が、いろいろな調査を幅広くされていることや、大変中身の濃い研究をされていることは十分理解した上で、ただ、今回のテーマの議論をするときに、どのように見られていくかについては注意していただきたいですし、分科会における議論の際には、留意していただければと思ます。

 最後に、本日の位置付けですが、先ほど坂下委員とのやり取りにもありましたが、あくまでもこの資料 1 をベースに意見を述べ合ったということで、指針そのものについては、特段議論はしていないという理解でおりますので、分科会においても指針案が示されるのでしょうけれども、そのときには指針案の議論は初めてだということで、確認をいただきたいということです。ただ、その場合、ではこの基本問題部会の役割は何なのだろうかというところも少し疑問がありまして、議論するのであれば指針案を出していただいて、ここで本当はもう 1 回議論をすればよかったということではないかと思っておりまして、その辺りについて、事務局として御見解を頂ければと思っております。

○鎌田部会長 事務局お願いいたします。

○雇用対策課長 まず、今回の指針につきましては、もともとは資料 1 の上の狙いの所の 2 つ目のマルですが、働き方改革実行計画にありますように、転職者の受入促進のための指針からスタートしているもので、今その企業に働きながら、しかも御自身が転職を希望していらっしゃる方を中心に考えております。それ以外の方々でも、今回その指針の中で示している施策が、それ以外の方にももちろん当てはまる場合もありますので、そうした方を排除しているものではなく、対象になる部分がありますが、それ以外の部分までどんどん間口を広げていきますと、労働政策そのものになってしまう部分もありまして、そこの部分については一定程度の枠組みの中で支援を策定させていただければと考えているところです。タイトルが大き過ぎるのではないかという御意見については、少し検討させていただければと思っておりますが、基本的な方向性としては、そうした中で、転職者の受入れの促進のための指針ということでのタイトルとして、こういう案を付けさせていただいているということです。

 資料につきましては、なかなか公的な統計だけでは、正に委員がおっしゃったように不十分な部分もありまして、企業や協会が作られているような統計についても活用させていただいているところです。

 また、こうした御議論を頂く上で、今回については、基本的な考え方とか方向性などについて御意見を伺う形でセットさせていただきました。そうした意味では、もちろん指針もあればなおいいのではないかということで、それは御指摘として承って、今回こうした形で開催させていただいたことにつきましては、すみません、御説明が不十分な点があったかもしれません。そこはお詫びを申し上げたいと思います。

○鎌田部会長 何かほかに追加の御質問はありますか。

○酒井委員 時間もありませんので、手短に確認というか半分ぐらい意見になりますが、先ほどから職務遂行能力の見える化ということに関して、幾つか意見が出ているかと思うのです。私は個人的には非常に重要なことだと考えております。ただ、やはりこれからは職業安定分科会に上げて、具体的な指針について議論をしていく中で、確認しておかなければいけないのかなと思うのですが、職務遂行能力などが見えないことにより転職が妨げられているのだと、転職が躊躇されているというような根拠になる資料というものはありますか。ちょっと先ほど御説明いただいた資料などの中に、もしかしたらあったのかもしれないので、教えていただけたらと思います。簡単な確認ですが、お願いいたします。

○鎌田部会長 事務局いかがですか。

○雇用対策課長 こちらも公的な統計ではなくて、アンケート調査的なものになってしまうのです。今日はお示した資料には入っていないのですが、採用後にどのような能力をより評価すればよかったかというところで、人柄とかそういう基本的な職務遂行能力的な部分をもっと評価すればよかったという、直接的なものにはなりますが、そうしたデータというか、アンケート結果はあります。ということは、その採用時において、職務遂行能力をきちんと評価していただくのであれば、もっと採用の可能、職務遂行能力が高い方については採用されるのではないかということが言えるのではないかと考えているところです。

○酒井委員 分かりました。ありがとうございます。

○鎌田部会長 よろしいですか。そのほかありますか。どうもありがとうございます。大変活発な御意見、御質問が出ておりました。今まで皆様の御意見をお聞きして、具体的な指針案については分科会で協議を頂くということですが、では、今日は一体何を話したのかということを、少し私の考え方を申し上げたいと思います。

 まず、このタイトルにも関わることですが、この指針は一体何を目的にしているのかということで、年齢にかかわりない多様な選考・採用機会への拡大に向けた指針と、かなり幅広なタイトルになっておりますが、私は実質的にその後の資料 1 で示された内容を見る限りは、やはり転職・再就職支援と拡大に向けた、国そして受入れ企業の今後の、言ってみれば受け入れるためのガイドラインを示すものではないかと。ですから、タイトルはこういうことですが、具体的にこの指針に盛り込む内容はそう広くはないと、限定されているのではないかと。つまり、転職・再就職支援と、それからそれを受け入れる場合の企業の在り方に関する様々な取組のガイドラインを示すというような内容であると。

 では、なぜそこを限定だと言わなければいけないのかというか、実はこれは、今皆さん方がいろいろな御質問をされてて分かるとおり、場合によってこれは日本型雇用システムとか職務能力だとか、もう数十年来話題にしていることに突っ込みかねないわけです。もちろん突っ込んでもいいわけですけれども、しかし私は、今日の議論とこの部会で今議論する射程というのは、そうではないと思っています。話すのは構わないのですが、それを始めますと、例えば転職あるいは受入れといった場合に、中途で採用される方をどのような形で企業が受け入れるのかという、職能給あるいは新卒からの受け入れている社員とのバランスという問題が、当然出てくるわけです。それについてこの指針で何か書けといっても、それは私は難しいと思っています。

 だから先ほど言いましたように、転職あるいは再就職を希望される方たちに国がどのようなサポートをし、そして受け入れる会社にとってはどのような考え方やツールをモデルとして提示をするか、そういったことに限定されるのではないかと思っています。そういう趣旨として様々な御意見を今いろいろな形で頂いて、今いろいろな方がおっしゃったように、いろいろな職務能力とか日本的雇用慣行だとか、あるいは今後、副業・兼業を含めた日本の働き方についての方向性うんぬんということについて深掘りするような指針だと問題が出てくると。それをするのであれば、きちんとやってくださいというようなことではないかと。逆に言うとここでの課題は、そういうことに突っ込んでいく話ではなくて、限定された形で指針を作って、正に企業あるいは国の役割も考えていくということではないかと思います。

 そして、そういう観点から見ますと、指針を作る上でかなり限られたものではありますけれども、そうは言ってもやはり、職務遂行能力とか職場情報とかいろいろな言葉は入れざるを得ない部分があります。そうしたときに、この考え方の基本は分かりやすく示し、企業にも理解をしてもらう、あるいはそれをモデルとして参考にして受け入れてもらう、このようなことですので、指針を作る際に、好事例それからリスクを含めた失敗例と言いますか、分かりやすい参考例、指針に書くのは無理だと思いますけれど、説明の際にはそういうことで具体例で幾つか分かりやすく説明できるようにする。作りますと分かりやすく周知をするということになってくるわけですから、当然事務局としてもそれはお考えになるだろうと思っています。そういうことで指針については御議論いただければと思っています。

 ということで、冒頭の課題設定が私のほうでうまくできなかったものですから、皆さんいろいろとちょっと紛糾したところがあるかとは思いますけれども、この基本部会での議論として位置付けと言いますか、議論の流れとしてはこのような形で、指針のための考え方、方向性をまとめてみてはいかがでしょうかと。もしこれでよろしければ、指針を作成していただいて、それを分科会で御議論いただくということについて、皆さんいかがでしょうか。どうでしょうか、よろしいですか。はい、どうもありがとうございます。非常に根の深い問題でありまして、私の立場で問題を提起するのも控えなければいけないのですが、私もいろいろと考えておりました。だけど私のほうはやめておきます。そのようなことでよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

 今後の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。

○雇用政策課長 本日は活発な御意見を頂きまして誠にありがとうございました。皆様から頂きました御意見を踏まえ指針案を策定しまして、今後安定分科会にお諮りさせていただきたいと思っております。

○鎌田部会長 それでは、本日の議事は以上をもちまして終了いたします。本日の会議の議事録の署名委員については春川委員、穗岐山委員にお願いいたします。以上で終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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