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2018年12月26日 第7回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会議事録

○日時

平成30年12月26日(水)15:00~15:26

 

○場所

中央労働委員会 労働委員会会館612会議室(6階)

○議題

 ○複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用について

○議事

○岩村座長
  それでは、定刻ですので、ただいまから第7回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を始めさせていただきます。年末のお忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、所用により渡邊委員が御欠席ということです。
 それでは、早速本日の議事に入りたいと存じます。議事次第を御覧いただければと思います。本日の議題は、複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用についてとなっております。
本日は、検討会での委員の皆様から頂戴した御意見を整理した資料に基づきまして、この検討会の取りまとめを行いたいと考えております。
 それでは、本日の1つ目の資料について、事務局からまず説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 田中課長補佐
 事務局です。お手元のタブレットから資料1をお開きください。マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用に関する論点ということで、前回お出しした各回における主な御意見についてという資料に第6回に出た御意見を追記しています。具体的に追記があった箇所をなぞって御説明します。
 まず、資料の3ページ目です。こちらは、マルチジョブホルダーの適用に関する必要性の項目で、マルチジョブホルダーに関するJILPT等のデータの分析の結果、現行では適用拡大の必要性は必ずしも高いと言えないのではないか。しかしながら、世帯主の方ですとか、そういった雇用の安定化の必要性が高い方に対しては、当然セーフティネットが必要ですので、具体的な求職者支援制度ですとか公共職業訓練等の支援が有効ではないかといったような御意見をいただいたところです。
 続きまして、適用に関する部分ですが、資料の6ページを御参照ください。
 強制適用、任意適用というところで御議論がありました。雇用保険の世界で任意適用という話になりますと、事業者そのものが任意適用で加入するという話と、被保険者の方が任意適用で加入するというお話が混在をしますので、任意適用という言葉については、自己の申請によって適用するという意味で、自己申請方式という言葉を使ったほうがよいのではないか、といったような御意見がありました。
 2つ下の○ですが、強制適用を前提として考える場合には、特段のエビデンスがない限りは、自己都合離職の場合の給付制限について、一般被保険者と区別する必要はないという御議論がありました。労働時間の把握方法がない現状で、マルチジョブホルダーに雇用保険を適用させる場合は、本人からの申出を適用の契機とせざるを得ない。こういった場合ですと、モラルハザードの防止という観点から、自己都合離職の場合に何らかの給付制限を付ける等の工夫が必要ではないかといったような御意見をいただいたところです。
 続きまして給付の観点で、8ページです。こちらの一時金方式を採用した場合の給付日数ですが、高年齢求職者給付とのバランスを勘案して決めるので、給付日数が長くなることはないのではないかといった御意見をいただいたところです。さらに経済学の観点で、給付日数のほうが失業期間に反応がしやすく、給付日数を延ばすと失業期間が延びるといった研究が報告されていることにも留意が必要ではないかといったような御意見をいただいたところです。
 8ページの自己都合離職の部分については、前と同じ御意見ですので、説明は割愛させていただきます。
 9ページです。求職者給付以外の給付についてということで、3つ目の○の部分に記載をしておりますが、高年齢雇用継続給付の取扱いについてです。こちらは、もともと給付の趣旨が、60歳定年制の下でその後も雇用を継続された場合に支給するということを目的として設けられた制度ですので、マルチジョブホルダーには、制度の趣旨からいって、なじまないのではないか。運用面でも相当難しい問題があるのではないかという御意見をいただいています。
 9ページの6.以降、懸案事項についてということで、前回の御議論では、何らか試行的に実施するといった方法が必要ではないかという御意見を多数いただいておりまして、それらをまとめたものです。具体的に1つ御説明申し上げますと、
 10ページの「例えば」の所ですが、20時間で雇用保険の適用を受けるという仕組みを用意したときに、マルチジョブホルダーが20時間以上働いて雇用保険に入ろうと動くのか、又は保険料の負担を嫌って就業調整してしまうのか、こういったことについて行動を確認するためにも、試行実施をすべきではないか。こういったような御意見をいただいているところでございます。簡単ですが、私からの説明は以上です。

○ 岩村座長
 ありがとうございました。これは前回までの議論をまとめた資料ということです。先ほど申し上げましたが、前回までの議論を基にしながら、今日皆様にお諮りするための資料を私と事務局との間でお話をしまして、資料という形でまとめていただいたところです。
事務局は、まとめた資料を配ってください。
 
(資料配布)
 
○ 岩村座長
 それでは、配布していただいた資料について、事務局のほうから説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○ 田中課長補佐
 御説明申し上げます。
 資料の構成としては、1.の「はじめに」から、2.のマルチジョブホルダーの現状について、この検討会で御議論いただいたエビデンスを記載しております。その後、マルチジョブホルダーに関する適用の必要性、具体的な制度設計について、最後にそれを受けての考察ということでまとめています。
 中身です。1.の「はじめに」の部分ですが、雇用保険の適用に関する検討会の創設の経緯を簡単にまとめております。既に御案内のとおり、平成28年12月13日の雇用保険部会の報告で、仮にマルチジョブホルダーの適用を行う場合には、技術的な論点、雇用保険制度そのものの在り方との関係など、専門的に検討する課題があることから、専門家による検討会を設置し、検討を進めていくことが必要とされたところです。この検討会は、そういった部会報告等を踏まえて立ち上げられたもので、計7回にわたり検討を行ってまいったところです。
 2.マルチホルダーの現状についてです。2ページを御参照ください。本検討会では、主に2つの調査、関係者からのヒアリングという形で実態の確認を行ったところです。
 (1)は就業構造基本調査で、こちらは現況、副業を行う労働者に関する分析を行うことができる統計データとして既に存在をしておりますので、そういったデータを活用して、具体的な過去からのマルチジョブホルダーの推移、本業の就業形態、従業上の地位等を確認したところです。
 (2)のJILPTの調査です。こちらは副業を行う労働者に関してさらに詳細な実態把握を行うということから、JILPTに2017年の9月から10月にかけて行っていただいた調査で、こちらを使いまして具体的なマルチジョブホルダーの世帯の状況、就業の形態、本業の収入状況、世帯の収入状況等々について確認を行ったところです。後ほど簡単に御説明いたしますが、この中で雇用保険の適用が現行されておらず、本業と副業の労働時間を合算すると、20時間を超える方の分析も実施したところです。
 (3)はヒアリングでございまして、こちらは、データ分析に限らず、マルチジョブホルダーの方の実態を把握するという観点から、関係団体からのヒアリングも実施しました。
 具体的な中身ですが、まず3.適用の必要性についての御議論をまとめたものです。4ページです。こちらの4パラグラフ目の「具体的には」の所で記載しておりますが、今ほど申し上げましたとおり、JILPTの調査で「副業している」と回答した方から、さらに雇用保険に加入していると回答していない者で本業・副業の週所定労働時間が合計20時間以上である。かつそれぞれがいずれも20時間未満であるという要件で抽出を行いましたところ、371人であるという結果を得たところで、こういった方々の世帯状況、就業形態の確認を行ったところです。
 こうしたデータを踏まえまして、現行雇用保険が適用されておらず、合算して20時間以上となる方については、その中で生計を立てておられると考えられる方々は、就業者全体に比して多いとは言えないのではないかといった御意見があったところです。さらに、雇用の安定化の必要性が高い方については、特に求職者支援制度や公共職業訓練等の施策により支援していくことが適当ではないかといった御意見を記載しております。
 続きまして、制度設計の部分です。こちらも第2回に提示をいたしました、適用の在り方についての論点に沿って検討を行っていただきました。5ページを見ていただきますと、適用事業の範囲、適用基準について、ア)とイ)という形でそれぞれ記載しております。
適用基準については、大きくそれぞれの週所定労働時間を合算する合算方式と、基準引下げ方式を御議論いただきました。基準引下げ方式の場合には、一般被保険者についても同様となることから、現行の雇用保険制度の考え方と照らしてどうなのかといったような御意見があったところです。適用の強制性についてですが、社会保険である以上、かつ雇用保険の性格に照らして強制適用を原則とすべきという御意見があったところです。
 6ページの3パラグラフ目ですが、一方、合算方式で考えますと、事業者や行政が労働時間を把握する方法がないという状況の中では、本人からの申出を起点として適用することを前提とせざるを得ないのではないかといったような御意見があったところです。
続きまして6ページの(2)給付の制度設計です。まず、保険事故の設定については、現行の考え方にも照らして、適用要件を満たさなくなった段階、すなわち被保険者資格を喪失する段階で、同時に保険事故の発生と考えることが適切ではないかといったような御意見が出されました。
 求職者給付の給付方法については、7ページで、現行の基本手当と同じ方式で支給するとした場合は、マルチジョブホルダーに関しては部分失業の状態も多いと想定されますので、失業認定の仕組みですとか、内職減額の仕組みに照らして、問題があるのではないかといったような御意見をいただいたところです。
7ページのウ)ですが、賃金合算方式と賃金の非合算方式、算定の基礎になる賃金日額の計算方法についての御議論を記載しております。
 8ページです。自己都合離職については、基本的に強制適用で考える上では、一般の被保険者と異ならせる必要はないのではないかといった御意見、さらには強制適用ではなく本人からの申出を起点として扱う場合には、逆選択、モラルハザードの懸念もありますので、給付を制限するなど、一定の工夫が必要ではないかといったような御意見をいただいたところです。
 最後は、求職者給付以外の給付については教育訓練給付と雇用継続給付について御議論いただいたところですが、オ)の2パラの部分にありますとおり、教育訓練給付については、対象とすることが適当、高年齢雇用継続給付については、趣旨、運用面の課題から考えると、難しいのではないかといった御意見、育児休業給付、介護休業給付については、一般被保険者とのバランスがありますが、支給対象とすることが適当といった御意見をいただいたところです。
 9ページ、論点の整理です。以上の議論を総合いたしますと具体的にどういう制度設計が考えられるかを記載したものです。3パラ目ですが、基準引下げ方式を採用する場合には、一般被保険者についても同様に基準を引き下げるということになりますので、それは一般被保険者の給付水準の引下げにつながっていくことについて、合理性を説明するのは難しいのではないかといったような御意見がありました。
 それを踏まえて適用基準について、労働時間を合算する合算方式を採用する場合には、適用の強制性について大きな課題があるのではないかといった点、つまるところ強制適用を現実的な実行可能な選択肢とするのは難しいのではないかといった御意見をいただいています。「最後に」のパラグラフですが、適用基準を合算方式としつつ、本人からの申出を起点として適用することを考えた場合には、一定の難しさはありますが、実現可能な選択肢たり得るのではないかといった御意見をいただいています。
こうした内容を踏まえて、(2)考察の部分です。
 今ほど申し上げたとおり、現時点で実行可能性がある方式としては、適用が合算方式、申出起点適用、給付が一時金方式、こういった形を想定されるのではないかというような御意見があったところです。ただ、こうした制度を導入いたしますと、やはり逆選択や循環給付等の問題が懸念されますので、先ほど申し上げた適用の必要性について、直ちには高いと評価できないという状況の中では、こうした制度の導入を直ちに提言するのは難しいのではないか、こういった方であれば、求職者支援制度をはじめとする各種施策を活用して支援を行っていくことが適当ではないかといった御意見です
 最後、「しかし」以下ですが、10ページの2パラグラフ目です。以上の議論を踏まえても、今後、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用の検討を推進していくのであれば、例えば、現行の被保険者類型も参考に、まずはマルチジョブでの働き方になじみ、上記のような制度設計にも親和性が高く、財政影響を予測しやすい対象者層を抽出して、試行的に制度導入を図るといったことが考えられるのではないか。この場合、試行によって雇用保険が適用されたマルチジョブホルダーがどのように行動するかを把握し、また、複数の事業所の労働時間を把握・通算する方法に関する検討状況も踏まえつつ、改めて制度の在り方を検討することが考えられる。こういった御提言をいただいたところです。
 「最後に」の部分については、今後、議論を行う場として、具体の制度設計を含めて、労使参画の場である労政審において議論が行われることを望む。このように閉じています。資料の説明は以上です。

○ 岩村座長
 ありがとうございました。ただいま、事務局のほうから資料の説明をいただいたところですが、本検討会での最終的な取りまとめということになりますので、それについて御意見、あるいは御質問があればお出ししていただきたいと思います。

○ 酒井委員
 報告書(案)に関して御説明ありがとうございました。今回の報告書(案)ですが、これまでの検討会で行われてきた議論の難しさが反映されていて、非常に行き届いた内容になっているのかなと感じまして、基本的にこの報告書(案)に異論はございません。
基本的に異論はありませんが、ただ、1つ述べておくとすると、この報告書をもって、例えばマルチジョブホルダーへのセーフティネットが不要であるとか、あるいはマルチジョブホルダーへの雇用保険適用が不可能であるといったような、後ろ向きな捉え方はされるべきではないと思っていますし、また、捉えられないように配慮する必要があるのかなと感じています。
 報告書(案)では、部分的ながらですけれども、試みに適用する案を提案していただいていますし、報告書の中で述べられていることも、あくまでも現在のデータですとか、現在の状況、ヒアリングといったものに基づいた上で考えられる、予測されることを述べているということで、今後、当然その状況が変われば、判断も変わってくる可能性はありますし、細かい話ですけれども、例えば今後、景気の状況によって、賃金率、いわゆる時給がどのくらいになるかということによっても、マルチの出方というのが変わってくるかと思います。そういう意味で、やはり今後の状況を踏まえた上で、今後議論していくべきだと考えています。
 それから、私のような者が述べるべきことではないかもしれませんが、やはり今後の政策の実施に当たっては、改めて労使双方から意見を聞いて判断していくということが重要になってくるかなと考えました。
 ただ、いずれにしても、この報告書(案)というものが、やはり今後の議論の1つの土台になっていくとありがたいというか、望ましいのであろうというように感じた次第です。以上です。

○ 岩村座長
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 私のほうからも一言申し上げたいと思います。今日取りまとめた報告書の案については、これまでこの検討会で、委員の皆様からお出しいただいた意見等を適切に整理し、まとめていただいているものと思っております。今、酒井委員もおっしゃいましたけれども、この報告書自体が、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用について、それはできないという結論を出したものではないという点は、注意をする必要があるだろうと思っています。他方で、実際にやろうとすると、この報告書の案の中でも書かれているとおり、いろいろな問題、あるいは検討課題というものが存在します。
 それともう1つ大きな点は、これまでも検討会でも話題になりましたが、マルチジョブホルダーに対して雇用保険を適用した場合に、マルチジョブホルダーの行動がどう変わるかということが、現時点では非常に予測が難しいです。それが制度設計を非常に難しくしているということがあると思っています。
 その観点から、まず試行的に、マルチジョブホルダーの適用を、ある特定の部分について、特定の範囲についてやって、それからそれに基づいて、いろいろデータを得た上で、また必要があれば本格的な制度設計というものを今後考えていくという、そういう道筋だと私も理解しているところです。
 そういう意味で、この報告書がこれからのマルチジョブホルダーの雇用保険の適用について、考えていく上での第一歩というようになれば、大変ありがたいなと考えております。
ほかによろしいでしょうか。それでは、委員の皆様の意見もこれで一致したと考えておりますので、本日の意見の集約はここまでにさせていただきたいと思います。
 この検討会は、平成30年、今年の1月31日に第1回を開催しまして、その後、本日まで計7回の検討会を開催させていただきました。その結果としまして、委員の皆様のお力によりまして、この検討会の意見をまとめることができたように思っております。委員の皆様方には、大変感謝しております。厚く御礼を申し上げたいと思います。
 今日、こういう形で報告書をまとめるということができましたが、最終的な確認等は必要かと思いますので、それについては私にお任せいただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 
(各委員了承)
 
○ 岩村座長
 その上で、本検討会の報告書という形で公表をさせていただきたいと思います。
 それでは、ここまでということで、検討会を終了したいと思いますけれども、検討会の最終回ということですので、土屋職業安定局長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○ 土屋職業安定局長
 職業安定局長の土屋です。この取りまとめの会合に、私自身は初めて出席をさせていただく形になりましたので、大変恐縮に存じます。
 岩村先生をはじめ、委員の皆様方には、先ほどお話がありましたように、今年の1月から7回にわたって大変精力的に御議論いただきまして、複数の事業所で雇用される方々への雇用保険の適用について、技術的・専門的な観点から具体的な御検討を頂きました。
 それが今日、こういった形で取りまとめに至りましたこと、誠にありがとうございます。今日の取りまとめでは、適用の必要性について評価を頂くとともに、適用を検討するのであれば、どのような点について制度設計の選択肢があるのかということについて、具体的な御示唆もいただくことができました。
 また、今この場でもお話がありましたように、マルチジョブホルダーについて考えていく、その視点として、重要な御意見を検討会の中で様々いただいたと思っております。
 今後、この検討会でいただいた様々な議論、御意見も含めて、この報告を労働政策審議会に報告申し上げまして、公労使の皆様に、必要な御議論を行っていただくようにしたいと考えています。
 また、今後、さらにそういった場面で詳細な検討を行っていくに当たりましては、委員の皆様方に、改めていろいろな形で御意見を頂戴したいという機会もあろうかと思っていますので、また引き続きどうぞよろしくお願いします。
 誠にありがとうございました。

○岩村座長
 局長、どうもありがとうございました。
 先ほども申し上げたので、繰り返しになりますが、委員の皆様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして、貴重な御意見を多数頂きました。改めて御礼を申し上げたいと思います。
 それでは、これをもちまして、複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 

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