ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(新型インフルエンザ対策に関する小委員会)> 第10回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録(2017年11月27日)




2017年11月27日 第10回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成29年11月27日(月)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

(1)季節性インフルエンザり患者数の推計方法変更に伴う抗インフルエンザウイルス薬の備蓄目標量の改定について
(2)その他
   季節性インフルエンザとの同時流行に関する研究について(報告)

○議事

 ○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第10回新型インフルエンザ対策に関する小委員会を開催いたします。本日の出席状況は、委員12名中8名の出席となっております。谷口委員、丸井委員、山崎委員から欠席の御連絡を頂いております。また、宇田委員につきましては、少し遅れているようです。定足数に達しておりますので、会議が成立することを御報告いたします。

 それでは、新委員の御紹介をいたします。本日欠席ですが、吉川委員の御後任で東京都市大学メディア情報学部社会メディア学科准教授、山崎瑞紀様が新委員となっております。参考人としまして、4名の方をお招きしております。御紹介いたします。山口県環境保健センター所長、調恒明様です。北海道大学大学院医学研究科教授、西浦博様です。日本大学危機管理学部教授、福田充様です。横田小児科医院長(小田原医師会会長)、横田俊一郎様です。前回の開催以降、事務局にも人事異動がありましたので、御紹介いたします。申し訳ありませんが、都合により遅れての出席となりますが、結核感染症課の三宅です。結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長補佐の竹下です。健康局参与の山岸です。本日の会議よろしくお願いいたします。

 申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力お願いいたします。それでは、ここからは岡部委員長に進行をお願いいたします。

○岡部委員長 おはようございます。お忙しいときにお集まりいただいてありがとうございました。川崎市の健康安全研究所の岡部です、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、これから第10回の厚生科学審議会感染症部会の中で、この新型インフルエンザ対策に関する小委員会、これを始めたいと思います。それから今日は参考人の4人の先生方、お忙しいところ、お出でいただいてありがとうございました。全体について是非御意見を伺えればと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局のほうから、審議参加に関する遵守事項をよろしくお願いします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 本日、御出席された委員の方々及び参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金、契約金などの受領状況について申告していただきました。該当する製薬販売業者や各委員からの申告については、机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。事務局で申告内容を確認いたしましたが、川名委員から塩野義製薬株式会社から50万円を超える寄附金や講演料の受領があった申告がございましたので、抗インフルエンザ薬に関する議決については賛否を表明することはできません。定足数に達しており、ほかに審議や議決に不参加となる基準への該当はありませんでした。薬事承認等の申請資料等の作成の関与についても該当はありませんでした。以上です。

○岡部委員長 ありがとうございました。川名先生につきましては、今までどおり公平な立場で是非御意見を頂ければと思いますけれども、審議には参加できないということで、御了承いただければと思います。今までのところで何か御意見、御質問よろしいでしょうか。では、この審議参加の遵守事項としては、了承いただいたということにしたいと思います。それでは、ここからですけれども、配布資料の確認をよろしくお願いします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 議事次第、委員名簿、座席図のほか事務局資料12のほか、事務局参考資料13となります。議事次第に書かれています配布資料の一覧と照らして不足資料等がございましたら、事務局にお申出ください。以上です。

○岡部委員長 ありがとうございました。資料は薄めですけれども、内容は濃いようですから、どうぞよろしくお願いします。それでは早速議事に入りたいと思うのですけれども、議事次第にあるように1つが季節性インフルエンザり患者数の推計方法変更に伴う抗インフルエンザウイルス薬の備蓄目標量の改定、それからその他として、季節性インフルエンザとの同時流行、これもいろいろ話題になっておりましたので、これに関する研究についての御報告を頂くというような順番でいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、議題1のほうに入りたいと思いますので、事務局のほうから最初に御説明いただければと思います。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 ありがとうございます。では、事務局から御説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。季節性インフルエンザり患者数の推計方法の見直しについて御説明をさせていただきます。本件は、今年6月の感染症部会において既に決った内容ではありますが、改めてここで紹介させていただきます。1番目の項目ですけれども、季節性インフルエンザの動向把握については、全国約5,000か所の医療機関を定点医療機関として指定しまして、そこから全り患者数の推計を行っているのが現状です。

2番目ですが、り患者数の推計方法の見直しを、具体的に説明させていただきます。現行では医療施設数による推計を行っております。定点医療機関1施設当たりの報告件数に、日本全国の医療機関の施設数を乗ずることで推計をしておりました。この方法では、単純に医療施設数で割り戻す方法ですので、医療機関の規模が反映できず、インフルエンザり患者数推計が過大となる傾向が明らかになりましたので、今回見直しが行われました。下の見直しという所を見ていただきたいのですけれども、見直し後は外来患者延数による推計に変更がされます。本年5月に研究班において、以下について取りまとめられております。定点医療機関においてインフルエンザり患者を診る機会は、ほかの医療機関と比べ大きな差はないと考えられることから、外来患者延数を用いた推計値のほうが、現行推計方法よりも実態を反映していると言える。2つ目のポツですけれども、これまでのり患者数の推計値を見直し後の推計値に変換するためには、これまでのり患者数に0.66を乗ずるということが取りまとめられております。平成296月の厚生科学審議会感染症部会において、この方法を踏まえた上で、(定点医療機関の患者延数)分の(定点医療機関からのインフルエンザ報告数)、それを全医療機関の外来患者延数に乗ずることで、推計が行われることが決まりました。

2ページ目では、季節性インフルエンザり患者数の推計報告の見直しが、新型インフルエンザ対策のどこのところに該当するかというところを説明させていただきます。新型インフルエンザ対策としての抗インフルエンザ薬の備蓄量の見直しについてですが、1つ目に新型インフルエンザ対策として抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について。これは新型インフルエンザ対策としての抗インフルエンザウイルス薬の備蓄については、新型インフルエンザ等対策ガイドラインにおいて「全り患者(被害想定において全人口の25%がり患すると想定)の治療、予防投与や季節性インフルエンザが同時に流行した場合に使用する量として、4,770万人分」とされております。このところが該当すると考えております。

 季節性インフルエンザの同時流行への対応につきましては、これまで1,270万人分の抗インフルエンザ薬を備蓄しております。これは、インフルエンザウイルス薬の備蓄量を決定した平成21年当時の過去3シーズンの季節性インフルエンザのり患者数の推計値の平均から算出しております。この内容、季節性インフルエンザの推計方法の見直しに伴い、季節性インフルエンザ同時流行への対応としての抗インフルエンザウイルス薬の備蓄量を見直すこととするということに関して、御審議いただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

○岡部委員長 どうもありがとうございました。今のが抗インフルエンザウイルス薬の備蓄量の見直しについてベースになるところですけれども、既に外来数の見直しといった、インフルエンザ患者数、り患数の見直しは、感染症部会でも承認されているということがあります。少し過大評価だったというのもありますが、事務局がおっしゃったように、外来患者を把握するということがいろいろな理由で今までなかなかできなかったのが、それを配慮するという、研究班の意見を取り入れられた結果だと認識をしております。それで、その結果とすると、いろいろな数が変わってくる可能性があるので、今回もそれに伴って、計算はこれからのようですけれど、細かい計算はまだ入ってないようですけれども、見直そうということがあります。ということで、議論を頂ければと思うのですが。御意見、御質問がありましたら、どうぞよろしくお願いします。

○大石委員 御説明ありがとうございました。基本的には、新型インフルエンザ対策に変数を加えてインフルエンザり患数の推計を見直して、これを応用するということには賛成です。ただ、感染症部会のときの資料から、かなり要領よくまとめられすぎていて、0.66を掛けるということが余りに表に出てきています。

 このり患数推計の変数を掛けるということについては、研究班で橋本先生方が相当苦労してエビデンスベースで、これを算出しようとされているところであって、具体的に言うとり患数の推定が定点医療機関での数ではなくて、外来の患者数によって大きく違う、数と比例しないのだと。分布がばらばらであったり、あるいは、定点医療機関の先生方の患者さんを診る数はかなり変わってくるのだということで、いろいろな解析をされて、この係数0.66が算出されているというところを、一般の方々にも知っていただく必要があるのではないかと思っております。基本的には賛成なのですが、そういう点を事務局にも配慮していただきたいと思います。以上です。

○岡部委員長 事務局はいかがでしょうか。単にoverestimationされていたわけではなくて、もう少し正確なところを研究班でやったということを説明したほうがいいという御意見です。これは松井班なので、先生も委員で入っているのですか。

○大石委員 委員では入ってないのですが、研究班会議には出ています。結論から言うと、0.66を掛けてoverestimateの部分を少し修正するということなのですが、研究のプロセスが存在することについての理解が必要であろうと考えております。

○岡部委員長 議論を蒸し返すあれは全くないのですが、例えば、今までマックスで1,7001,800万人ぐらい季節性インフルエンザで出ているというのが、0.66を掛けると1,1001,200ぐらいであろうという研究結果を基にする。ただ、先生、幅があるとおっしゃっておりましたが、その辺りは何か。

○大石委員 感染症部会の資料が手元にあるのですが、この数値にも、信頼区間があり、その幅の中でも医療機関を用いた係数と外来患者延数を用いた係数ではかなり差があるということを知っておく必要があろうということです。

○岡部委員長 事務局から説明はありますか。もともと、これは一番最初に定点が出来た辺りのときの推計、推計というかやり方が踏襲されていたのですが、その橋本先生も現状に合わせて、幾つかの進歩になると思うのですが、修正が行われたという経緯だということは承知しているのです。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 追加の御説明ありがとうございます。確かに、この数字を出すためには、膨大な研究結果やナショナルデータベースの比較等が行われた上で算出されたと、そういうことを踏まえ、今回使わせていただきたいと考えております。

○岡部委員長 三宅課長が遅れて来られましたが、御挨拶も含めて一緒にお願いします。

○三宅結核感染症課長 すみません、遅れて参りました。711日より結核感染症課長を拝命いたしました三宅でございます。本日は年末に近くなって、お忙しい中お越しいただきありがとうございます。

 意見を申し上げます。おっしゃるとおりで、推計にはいろいろなやり方があり、これをやろうということで研究のバックグラウンドがあるわけです。ですから、推計をやったときに結核感染症課のホームページや感染症課のホームページで、この推計についての考え方の辺りが少しサマライズされて載っているようにして、なぜ、このような数が出たのか、どういう考え方なのかということが分かるようにしておくことが、国民のためになるのではないかということでよろしいでしょうか。

○大石委員 おっしゃるとおりです。少なくとも感染症部会の資料に推計値が出ておりますので、そこは添付資料とするなどして、余りに分かりやすくなりすぎていてということで指摘いたしました。

○岡部委員長 ほかに何かございますか。

○坂元委員 一番下の計算方法から単純に思うことは、外来延患者数というとリピーターも入るわけで、つまり定期的に受診されている方も入ると思います。報告数というと、既に1回インフルエンザと診断された場合には1例としてカウントされるかと思います。となると、素人ながら少し分母が大きくなる傾向があるいかと思います。その辺りの議論はどのようにされたのか、もし御存じだったらお教えいただければと思います。

○大石委員 研究班では原則的な計算は何年かに1回、5年ぐらいに1回、4年ですかに1回、1か月くらいの期間だったと思いますが、全国の医療機関の外来患者数を一定期間だけ調べるのです。ですから、それを参考にして地域の分布等を検討されていると理解しております。そういうことで、かなり制約がある数字であるということは否めないと思います。

○岡部委員長 よろしいでしょうか。ほかに何かございますか。

○押谷委員 この修正はいいと思うのですが、これでも、多分、overestimateになっている可能性があります。我々も大分前に調べたことがあるのですが、定点医療機関は、多分、建前上ランダムに選ばれることになっているのだと思うのですが、必ずしもランダムではなくて、積極的に感染症診療をしているような医療機関が手を挙げて選ばれているという、実態としてはそういうところがあります。

 今、受診者がインターネットで検索して受診するということが、どんどん行われてきていて、実態として、この病気だとこの先生の所に行くと選んで来ているのです。そうすると、感染症指定医療機関に指定されている所にどうしても受診者が集中するという傾向は、多分あるのだと思います。その辺りを考えると、これでも、まだoverestimateになっている可能性があるのではないかと思います。

○岡部委員長 以前から定点と実態はなかなか、私、サーベイランスセンターにいたときも、何とかできるだけ公平にいくようにということを言っていましたが、実際にはウェットな部分があるというのは、世界のどこの国でも悩んでいるところなので、全部ドライにはいかないということがあります。釜萢委員、横田参考人、実態の感覚として、実際に診療されている先生方からはどのようなものがあるのか教えていただきたいです。

○横田参考人 私は小田原の医師会の会長をしておりました。小田原では、やはり定点を選ぶときに、比較的、協力してくれる積極的な先生で患者さんもそれなりに診ている方に、どうしてもお願いするということになるので、ランダムに決めるということは全くありません。

○釜萢委員 今、横田先生からお話があったとおりで、やはり、定点になっている医療機関には、こういう感染症が集まりやすい傾向は確かにあるだろうと思います。

○大石委員 今、議論された件について、せっかくですのでお話いたします。実は、昨年だったと思うのですが、昨年から今年にかけて入院サーベイランスのデータの制度等を議論する場で、やはり、定点医療機関もそうなのですが、いわゆるインフルエンザ定点の問題の課題も少し浮上し、いろいろ議論されて、私の所の第二室のサーベイランス室室長の砂川先生が、各県にいろいろ情報の聞き取りをして、情報を得て分析を進めているところです。

 そういう分析がどうしても必要であるということを踏まえて、厚労省の研究班が今年度から立ち上がって、そういうことが整理されてくると思います。近い将来、そういう情報がしっかりしてくると思っております。以上です。

○岡部委員長 ほかに何かございますか。

○釜萢委員 なかなか正確なデータというわけにはいかないのですが、各地域において、まず、早い時期にインフルエンザがどこで出たか、どのような背景で出たのかということについては、医師会を中心にかなり情報収集に努めております。そして、大変、流行がひどくなると全例を網羅できるというわけにはなかなかいかないですが、数については、ある程度集計結果が出ておりますので、そういうデータを参考資料として比較対象に用意しておくと、実態との乖離がどうなのかということが少し議論できるかという気がいたします。

○岡部委員長 それは、一部サンプリングのようにして実数を取っておけばいいだろうというところですね。

○釜萢委員 はい。

○岡部委員長 そういうところも、できれば研究班、その他で取り入れていただきたいと思います。川崎市のことを言えば、全数に近い形でのリアルタイムサーベイランスという形で毎日、把握しているので、ある程度のものはつかめますが、それでも、やはり全部の先生に報告していただけるわけではないので、先ほどの母数の問題もあって、それぞれの医療機関が、何人患者さんを診ていますかというのは、なかなか難しいところもあるので、きちんといかないというのは知りながらも、でも、ある程度の推計を出して方向性を付けるという意味では、その基になるデータが必要なので、今回の改正になっていくという形だと思います。

 定点については、本当はもっと進化しなくてはいけないので、その辺りは定点の先生方、医師会、感染研、厚労省に改善の方向については、是非、御協力をお願いしたいと思います。

 ほかに何かございますか。

○調参考人 質問です。6月の部会のときに御説明があったかもしれませんが、季節性インフルエンザについても、パンデミックのときに備蓄した抗インフルエンザ薬が必要だということについては、やはりパンデミックが起こると抗インフルエンザ薬が品薄になるということを想定して、季節性インフルエンザについても備蓄していくという考え方なのでしょうか。

○岡部委員長 事務局、どうぞ。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 今、現状において新型インフルエンザ対策の中に季節性の同時流行を入れているのは、正に、新型インフルエンザのパンデミックと同じ時期に季節性の、H3N2みたいなものが流行って品薄になったりしたときに、対応できるようにということを考えての備蓄と考えております。

○調参考人 そうすると、毎年、流行している季節性インフルエンザについて、流通している抗インフルエンザ薬が確保できなくなってくる可能性があると想定しているということですか。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 そういうことも起きても対応できるようにということで備蓄しているということになっております。

○岡部委員長 多分、余りがっちり新型インフルエンザと決めすぎてしまうと、それ以外のものに使えなくなってしまうことがあるという意味合いのようにも思っています。ただ、同時流行があるかどうかということは、これもずっと議論があり、その研究は西浦先生の所にお願いしており、次のところでもう少し議論したいと思いますので、よろしくお願いします。

 今の全体の指標になる数が、大体、このぐらいにセットされたというのは、一応、感染症部会で了承されているのですが、それをもってこの委員会では、今までの備蓄量の見直しを図っていいかどうかというところの承認を頂いて、実際、どのぐらいの数の差になって出てくるかどうかというのは、残念ながら今回までに間に合っていないので、そこはこれから事務局に計算していただいて、多分、その結果としては委員の中では共有をしたとして、感染症部会ですね、親部会に掛けるというプロセスだと思います。プロセスとしては今のでよろしいでしょうか。という形で、この委員会としてはいかがでしょうかというところですが、もし、賛同いただければ今の方針でいきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、基本方針としては、その算定数を見直すので、ただ、最終的な数字については再度審議というのも大変ですので、メールで委員、参考人の先生にもお伝えして見ていただき、その結果を感染症部会に報告するとしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。議事1は、これで終了ですが、かなり関連性もあるところで、季節性インフルエンザとの同時流行に関する研究、これは、全体数の見直し、その他のところの関連でもあると思います。流行状況について、そのために今日は西補先生にお出でいただいているので、西浦先生から御説明いただければと思います。

○西浦参考人 研究レベルで季節性インフルエンザと、ほかの特に「新型インフルエンザ」と呼ばれるものが同時流行するという前提で、今の計算をされているのですけれども、同時流行が必ずあるということ、全く独立した2つの亜型あるいは2つの異なるタイプのインフルエンザウイルスが流行するということは、疫学のデータを見られている先生方からは、ずっと長い間、違和感を持って見られてきたものだと自分は理解しています。それは必ず異なるウイルスタイプの間や異なる亜型の間で、その相互作用があるということが過去に知られてきたからです。この詳細に関しては、まだ詳しく分析されていないので、その研究を今年度から開始させていただきました。

 資料21ページを御覧ください。インフルエンザのSubtype間というのは、異なる亜型間です。タイプAのインフルエンザの中でH3H1の間で相互作用があるような、あるいは今回はSubtypeに限らず研究しているので、ABの間も含めて対象にしていますけれども、この相互作用がどのように起こっていたのかデータの系統的レビューをして、数理モデルを利用した研究をし、今の時点の実態として、どれくらい同時流行する可能性があるかを疫学的に明らかにしていこうという研究です。

 背景は御覧のとおりです。インフルエンザの流行というのはA型・B型、あるいはA型の中の亜型同士だったり、あるいはインフルエンザだけでなく、ほかのウイルス性の上気道炎を起こすような感染症、RSウイルスだったり、コロナウイルスだったり、ライノウイルスだったり、ここに挙げているようなものが典型です。それらの間で相互作用が起こっているということが、今まで間接的に認められてきました。従来、こういったものは「疫学的干渉(epidemiological interference)」と呼んでいます。イギリスの疫学者を中心として、干渉がどのようなパターンで起こっているのかが分析されてきました。異なる亜型間で干渉していることはどうも確からしいのですけれども、その程度がどれくらいであるかということと、疫学的なのでそれを踏まえた上で、同時にどれくらいの規模で流行するかということは、十分にデータに基づいて検討されていないのが実状です。

 今までどのようなことが分かっているのか、参考に見ていただきたいと思います。次のページの2番のスライドの図を見てください。これは『PLOS Medicine』に出版された、Harvard School of Public Healthの研究者で、Goldstein Eといった同門の研究者の人たちが、アメリカの季節性インフルエンザと別の季節性インフルエンザの間の相互作用を検討した結果です。それぞれのグラフで(A)(B)(C)とあるのですが、(A)(B)(C)それぞれがそれぞれの亜型、あるいはインフルエンザのタイプBですけれども、(A)H1N1で、(B)H3N2(C)B型インフルエンザの累積のincidenceです。累積の患者数を縦軸に取って、横軸にそれ以外の亜型あるいはインフルエンザのタイプのincidenceを取っています。流行途中の「week 16」と書いてあるのですけれども、流行が始まってすぐの頃までのり患者数を横軸に取ったときに、負の相関関係があるというのを見たものです。

(A)(B)の間には負の相関関係があって、(C)は検定をすると、p値で言うと0.067ということで、厳密には有意な相関関係があるわけではないのですが、全体的に見てそれぞれの週のデータを見てみると、A型の特定の亜型の累積り患率は、別の亜型が流行っていない所で高くなる。B型に関しても同じようなパターンが見られます。しかも、それは流行の途中、流行が上がり出した頃の累積り患率を横軸に取っているのです。つまり、どうも自分と違う亜型の流行が起こりかけているというデータがあると、そのシーズンを通じて当該の亜型の流行は抑えられているらしいということを、疫学的な方法を利用して証明した研究です。こういうことが分かったのも、まだ2011年のレベルの段階です。パンデミックを経て、亜型間の流行のメカニズムがどのようになっているだろうというのを、一度全体でみんなでデータをひも解き合って検討していこうという動きが、やっと始まったのです。

 これが分かるとある程度、相互作用がどんなパターンで起こっているのかが見えてくるだろうというアイディアは、以前から温めてきたのです。3ページを見てください。それを踏まえて現在、研究を計画しています。Subtype間あるいはA型とB型の間の相互作用が日本で、あるいは世界のほかの国も含めて起こってきたのかということを明らかにすることを通じて、新型インフルエンザ及び季節性インフルエンザの同シーズン流行に対し、その相対的規模の関係がどうなっているかというのと流行時期が多少ずれるのです。多くの先生方は御存じだと思いますが、B型インフルエンザは必ずではないにしても、A型の流行が起こった少し後に起こっていることが多いというのを御存じかと思います。少しずれるのです。そうかと思いきやデータ分析をしていると、同じような時期に流行のピークがあるときもあるのですが、系統的レビューを通じて一旦、統計学的なデータを収集して一斉に検討することによって、そのメカニズムがある程度類推できるであろうと考えています。

 使用するデータは、今のコンテクストは季節性インフルエンザ同士も対象にしますけれども、新型インフルエンザの話をある程度は対象にしないと、新型インフルエンザ対策に役立てることはできませんので。2009年と、それ以前の20世紀の途中で新型インフルエンザの流行が世界各国で起こっていて、一部の地域ではウイルスサーベイランスが実施されていますので、その相互作用に関して検討します。それから、日本では今日、小田切先生が来られていますが、国立感染症研究所で長くウイルスサーベイランスが実施されてきましたので、その亜型の情報のデータを今、分析させていただいているところです。それに基づいて疫学モデルを利用することによって、2つの異なる種のウイルスには恐らく伝播の相互作用があるだろうということで、その背景のメカニズムまではある程度類推することができるモデル研究を予定しています。今、ハーフウェーぐらいまで来たところで、次に機会があれば御報告できると思います。

4ページを御覧ください。具体的にどのようなことの実施を予定しているかがそちらにあります。現在までに系統的レビューで先進国を中心に各亜型の患者数と、血清疫学的な調査を含めた抗体のデータも含めて収集が終わって、ポスドクの研究員と一緒に分析しているところです。その患者数があるので、亜型間とウイルスの型間の相互作用というのが分析できる状況を作り上げることができました。

 これは同じ年の分析だけでなく、年をまたいだときの相対的なincidenceの関係のパターンにも大きく関わります。H1がある年に流行すると、その次の年のH3incidenceに一定の影響を与えていると。その相互作用は連続的にずっと分析しないといけないのですけれども、流行パターンは累積り患者数あるいは累積り患率で検討します。り患者数だけが問題ではなく、流行週がいつで、流行している期間がどれくらい重複しているかということ、ピークの週になっていたものにどれくらい差があるのかということ、それからパンデミックということ。

 今、亜型に関するデータのあるもので「パンデミック」と言えるものは、残念ながら3回しかありません。1957年と1968年と2009年のデータに関しては、亜型の情報が得られているのですけれども、複数の亜型と相互作用しながら流行を起こしていたので、そのパターンを分析するということです。それを基にモデル研究をしていくのですけれども、まずはデータをつまびらかに分析し、相互作用の存在と、それがどれくらい影響があるのかということを明らかにしていく予定です。

○岡部委員長 ありがとうございました。おわびをしなくてはいけません。最初に事務局から紹介をしていただいて、詳細を西浦先生からというのが本来の順番だったのですけれども、思わず西浦先生に最初にお願いしてしまいました。すみません。逆になりますけれども、事務局から発言をお願いします。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 もう既に、岡部委員長から御紹介を頂きました。今回、ずっと課題となっていた季節性インフルエンザの同時流行に関しての進捗ということで、西浦先生に御紹介いただいたので、これを基に、また皆様に御審議いただければと思います。

○岡部委員長 今のところ、中間的な報告ということで、もちろん全部固まっているわけではないのですけれども、今の時点でコメントと言いますか、あるいは疑問がありましたら、西浦先生にお答えいただける範囲でお答えいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○大石委員 figureの読み方についてです。一番上にH1N1H3N2のデータがあり、縦軸がCumulativeH1N1のケースで、横軸が「Cumulative complementary incidence」と書かれていますが、この意味がよく分からないのです。横軸はインフルエンザ全体を言っているのですか。

○西浦参考人 例えば、パネルAの縦軸はH1N1で、横軸は何かと言いますとH1N1でないインフルエンザのincidenceで、week 16です。

○大石委員 ないものを言っているのですね。

○西浦参考人 そうです。異なるもの同士を見ているのです。

○大石委員 それなら理解できました。分かりました。

○小田切委員 非常に重要で、私も個人的に非常に興味のある解析ですけれども、質問があります。この解析は個々の個別の対応と、それが集積した集団の対応というファクターがかなり影響してくるように思うのです。その辺の兼ね合いはどういうようになっているのでしょうか。今、相対的に干渉ということをおっしゃっていましたけれども、恐らく個々のレベルで見ると、結構、亜型間での重感染が個人レベルで起こっています。例えば、H1に感染した人が引き続きH3にも感染している、若しくはA型に感染している人がB型にも感染しているというように、同じ人から2種類取れることがときどきあるのです。そういうファクターも、やはり無視できないと思うのです。それが集団になってくると、いろんな干渉があるないというところに関与してくるのかもしれませんけど。その辺のファクターの取扱いはどういう形になるのでしょうか。

○西浦参考人 データの取扱いは段階的に考えています。まず、異なるSubtype間の相互作用というのは、こういった負の相関関係を見ることを積み重ねることで、統計学的に明らかにできます。それがまず第1段階でしなければいけないことです。その上で、それがどういったメカニズムで生じているのか、少なくともある程度の仮説が立証できるまでの分析を今やろうと思っているのです。この研究が完成できるところまで、ある程度その仮説が本当にどうなっているかは分からないのですけれども、今の時点で出版された文献の中で、疫学的な干渉に関してメカニズムとして知られているのは、先生のおっしゃるとおりで、個体レベルで何らかの相互作用が生み出されるメカニズムがあるのか、あるいは集団レベルでそういったメカニズムがあるのかということです。個体レベルであることに関しては、一旦1つの亜型あるいはタイプに感染すると、ノンスペシフィック・テンポラルイムニティーという、特異的でない免疫が一定期間付与されるのではないかと。異なる亜型間というのは、もともとクロスリアクションはないのですが、感染後に一定期間非特異的な免疫が付与されるという仮説が、今立証されてないレベルで疫学者の人たちに言われている、そういったものがあります。

 集団レベルで言えば、1つのインフルエンザシーズンの間に一度感染すると、休んで自宅などで休養しますので、著しく本来あるはずの感染機会を失います。流行中に小学生が小学校、流行中の場所に行かない期間が1週間レベルで生じますと、著しく感染機会を失う、そのことを数理モデルファクターに入れるだけで、今見られている現象がある程度再現できるということが知られています。どちらが正しいかというのは、今の段階ではまだ言えないし、あり得るデータでどこまで言えるのかはまだ疑問ですけれども、まず相互作用を立証するところから、段階的にやろうと考えております。

○押谷委員 まず、そもそも論です。これは大分前に専門家会議か何かで議論した話だと思うのです。調先生がおっしゃったように、そのときの議論も、同時流行というのはほとんど考えにくいという意見が多かったと、少なくとも私はそう言ったと記憶しているのです。そういう中でいつの間にか、同時流行したときの1,270万人分というのが入ってきたという経緯があります。そこら辺の記録がどうかということはありますけれども、もともと過去のパンデミックを見ても、季節性インフルエンザのいろいろな状況を見ても、この規模で同時流行することは絶対にあり得ないと、私はずっと思っています。専門家会議でもずっとそういうように発言してきたはずですが、こういう形で今はそうなっている。

 西浦先生の研究については、ここで考えているのは多分、亜型間の相互作用のようなものだけを見ていると思うのです。実際にパンデミックが、それまでの季節性インフルエンザと同時流行するかどうかという非常に大きな要因は、パンデミック・バイ・ウイルスは非常に抗原性が異なるというのがそもそもの定義で、susceptible populationが非常に多いということが、そもそもの大前提になっているのです。そこの抗原性が大きく変わることによって、感受性者が非常に多くなる。そこでどういうことが起こるかというのが、パンデミックの相互作用を考えたときに非常に重要だと思うのです。

 西浦先生がやられているものとは、ちょっと違いますけれども、こういう形で我々もリプレイスメントがどういうように起きてくるかということで解析をして、数年前ぐらいに論文を出しているのです。そこで一番大きいのが抗原性の違いです。小田切先生の所でやられている季節性インフルエンザの流行を見ていても、やはりH1H3などの抗原性が大きく変わったとき、H3の抗原性が大きく変わったときにH1が非常に抑えられているという、実際のデータもあるのです。それは我々がやった解析とも一致している。だから我々の結論は、パンデミックでの同時流行はより起こりにくいということになっているのです。西浦先生がやろうとしているところで、抗原性の違いというか、感受性者がどのくらいいるかというのは、どういうように考慮して解析されていくのかという辺りをお聞きしたいと思います。

○西浦参考人 パンデミックが起こったときに、リプレイスメントがたくさん起こってしまうということと、その背景にあるメカニズムの説明は、先生のおっしゃるとおりだと理解しています。2009年のことを考えていただきたい。その前シーズンまではH3がずっとcirculateしていたのが一瞬、その年に関してはほぼH1によってリプレイスされて、H3がゆっくり帰ってくると。今は同時流行、「同時流行」というのが混乱する用語なので直さないといけないのですが、今は相互に流行が起こったり、干渉し合ったりという様が見られるのです。

 このことに関して、まず疫学的に対処しないといけないのは、パンデミックのときにどうなるかというパターンに関して、2009年のときはとても明確だったのです。ほぼH1で置き換えられてしまって、H3が追いやられるということがあったのです。それがアジア風邪や香港風邪でも同じようなパターンだったかというと、データを見ていると必ずしも全く同じではない。相互作用の強さがどれくらいなのかという、過去のパンデミックで分かっているものを、まず観察データで明らかにしていくという作業を1回しないといけないと考えています。

 感受性を持った人が一気に特定の亜型、あるいは特定の流行を起こしているstrainに関して、ドッと増えるという状況でリプレイスメントが起こるのですけれども、そのリプレイスメントが起こっている様というのは、そうやって集積したデータを基に数理モデルを利用して解析しないと、一般的な結論は分からないので、今それをやろうとしているところで、まだそこまでは着手できていないのです。

○坂元委員 今、リプレイスメントの議論が出ていて、同時流行の前段階として、1,000万人分の備蓄という話が出たと思うのです。今見ると、ある流行が起こってしばらくしてリプレイスメントが起こると、備蓄というのは、リプレイスメントの時期がずっと後であれば、初発後すぐに増産していれば、薬の供給は間に合ってしまうと思うのです。ですからリプレイスメントの時期だと思うのです。時期が非常に近接してリプレイスメントが起こった場合には、多分備蓄は必要なのかなと思います。その辺がよく分からないので、お教えいただければと思います。

○押谷委員 坂元先生がおっしゃっているのは、季節性インフルエンザが起きた後にパンデミックが起こるということだと思うのです。季節性インフルエンザの流行に関しては、今は備蓄は一切使ってないわけです。そこで抗インフルエンザ薬が少なくなる、足りなくなるという状況は起きていないわけです。パンデミックに関しては備蓄を使うということなのです。新型インフルエンザの流行が起きた直後にパンデミックが起こるということは、シナリオとしては十分あり得ます。ただ、季節性インフルエンザの流行は、通常流通している新型インフルエンザ薬、抗インフルエンザ薬で十分なはずで、そこに関して備蓄が必要だというように私は考えてないです。

○岡部委員長 生産量も当時と比べて随分変わってきたし、種類も変わってきているので、その議論をしたときには、流通分をどうやって備蓄に充てるかという議論もしました。流通している中からも備蓄量としてある程度算定しようというのが、ちょっと前の委員会でやったことだと思うのです。確かに押谷先生がおっしゃるように、同時流行についてはいろいろな議論をして、どちらかと言うと起こらないのではないかという意見のほうが多かったかと思うのです。ただ、それを示す根拠がないじゃないか、心配だという場合にどうするかというのがあって、結果的に備蓄のほうに含めることになったと思うのです。それについては、押谷先生の前の論文と、今回の新しいモデルでもうちょっと理論的な構築をしていくことになると思うのです。ほかに御意見、あるいは西浦先生や福田先生も御意見があればおっしゃってください。

○福田参考人 私自身、危機管理学という政策科学のほうで、医学のほうは全く不勉強なものですから、いろいろ勉強させていただいてありがとうございました。今議論になっているポイントとして、正に社会心理学やリスクコミュニケーションの中では、客観的データから見たら安全だと言えるけれども、社会心理的には安心できないというか、絶対に安全と言えるのかという国民世論に対し、どう説得するかというコミュニケーション上の問題になってくるだろうと思うのです。1点目の議題も2点目の議題も、その問題点というのは、かなり同じ側面があるのではないかという気がいたしました。

 話が戻ってしまうのですが、1点目も医療機関からの算定数については、変更点の結果は非常に分かりやすいのです。しかし、その結果を示すための科学的根拠というのは、やはり一般的な国民、市民には理解できない可能性が高い、非常に難しい問題があります。ただし一般市民というのは、分からなくても政策的に通ってしまった場合にはそれを受け入れ、結果が起きた後、間違っていたら結果で判断するという側面があります。ですから結局、結果オーライという部分が非常に多くなるのですが、当然、最終的に合意形成をしていくときに、根拠となる、科学的根拠の合理性みたいなもののエビデンスベースで示されたデータということが。

 今日、私は参考人としては初めて参加させていただいたのですけれども、やはりこれだけ研究者の間でも対立する争点があった場合には、これが報道や政治の場で議論されたときには、非常に混乱が発生する要因となり得ます。現在の国民のリテラシーというのは、若しくは一般市民のリスク不安というのは、いろいろなものに対して高まっている状況があります。新型インフルもそうですし、原子力もそうですし、テロもそうですし、地震に対してもそうです。それに対する国民のリテラシーというのは、ちょっとずつ向上している部分はありますし、それに対して監視する、若しくはチェックするメディアや一般市民というのも増えてきている。

 しかしながら全体的な一般市民、国民全体で言えば、いろいろな研究データの出典はこうやって示されているのですが、出典を見てもその先に行って自分で読んで、自分で勉強して、自分で調べて判断しようというのは、なかなか難しい部分があります。特に2点目のほうでこういう印象を持ちました。対立的な争点のあるものについて、どの段階で政策化していきながら、どういう段階で情報公開をして合意形成していくかというのは、昨今もいろいろなところで起きているように、報道や政争に利用されないようなプロセスというか、手続というものを慎重に考えるべきではないかと思います。雑駁な感想で申し訳ありませんが。

○岡部委員長 大変貴重なコメントをありがとうございます。リスクコミュニケーションにつながるところだと思います。ただ、これ、パンデミックが起きる直前とか、起きている最中にこの議論を始めてしまうとごちゃごちゃになってくるので、やはり平常時こそ議論をきちんとやっておくと。それに基づいて決断はどこかでしなければいけないわけですが、そういうようなプロセスの過程の1つだと私は理解したいと思います。今のは大変重要な御指摘を頂いているので、是非、テイクノートしておいてください。ほかにありますでしょうか。

○信澤委員 私も同時流行ということにちょっと違和感を感じて、押谷先生と意見が似ているのですが、ウイルス学という立場から考えると、インフルエンザウイルスの新型のウイルスが季節性のウイルスと同時に流行するためには、季節性ウイルスより強いのではなくて弱いようなウイルスであれば、季節性のウイルスと並行して流行することは可能だと思います、その場合、新型と言うのかよく分かりませんが、新しければ新型と言うのでしょうけれども。ウイルス学的にそう言うことが可能なのかという、ウイルス学と免疫学の両方の立場から考えて可能なのかということも、これは西浦先生にお願いするべきではなくて、ウイルス学者のほうが考えるべきかもしれませんが、余りに現実的ではないところ、ウイルスの性状を考えたときに、現実的ではないところを議論するようになってもいけないのかなという気がちょっとしました。

○岡部委員長 ありがとうございます。川名先生、何か御意見はありますでしょうか。

○川名委員 先ほど西浦先生から御説明いただいた、このepidemiological interferenceというのは、感覚的には非常に分かりやすいお話だと思いました。例えば、いつも国立感染症研究所がインフルエンザの流行に関して、過去10年間のエピカーブをホームページ上で公開されていますが、あれを見ても、毎年の季節性インフルエンザの流行曲線の高さや面積は、それほどは変わっていないと思いますが、その内訳は非常に変わっていて、ある年はH3一色になってしまうようなときもありますし、いろいろなものが混ざっているときもあると。ただ、そういう質的なものを差し置いてもそのピークというか、ボリュームがいつもそれほど変わらないという現実からすると、やはりお互いに干渉があって、総数としてはそれほど変わらないという疫学的な現状が起こっているのかということは感覚的には非常によく分かります。そういう点から言うと、同時流行というのは考えにくいということは言えるのかもしれません。

 では、どうしてこういう疫学的干渉が起こるのかということですが、例えば、毎年流行している季節性インフルエンザとの疫学的干渉は、パンデミック株が出てきたときに、どこまで当てはめていいものなのか、科学的にどうしてこういう干渉が起こるのかというのが、どこまで分かっているのか、もし分かれば教えていただきたいと思います。以上です。

○岡部委員長 西浦先生、お願いいたします。

○西浦参考人 疫学的干渉に関しては、ボトムアップでモデル化をしたものがデータによく適合するというような研究ぐらいしか、実際にはされていないのです。実証というのがとても難しいことは御想像いただけると思いますけれども、それがあるので、先ほど申し上げたようなメカニズムというのは、幾つかの仮説があって、どれぐらいそのモデルが観察データに適合がいいかという程度の比較にとどまっています。

 非特異的な免疫が感染後に少し持続するので、感受性を持った人というのは1つの亜型に感染すると、しばらくはほかのタイプのインフルエンザには感染しないのですという話というのはある、存在するということ自体は、ある程度実証されているのですが、でも、それが生物学的にどのようなメカニズムでというのは、ウイルス学では実証されていない。どれぐらいの強さで、どれぐらいの期間でということも、まだ分かっていないというのが実際のところです。感染機会が著しく奪われるのでというのも、勝手にそういう想定でモデルも構築してみて、データに適用すると、うまくいったということが分かっている程度で、それが社会実験としてどこまで実証されているかというと。例えば「因果推論」というような、その疫学で言うところのcounterfactualと言っているような、実際に感染機会が失われたときと、失われなかったときを比較するといった社会実験というのができないので、確実な実証というのが、まだ得られていないというのが現状です。ただ、少なくとも、統計学的に、このメタデータと言いますが、いろいろな国で流行が起こって、特に新型インフルエンザも含めた分析をすることで、どのように干渉がどれぐらいの強さで起こっているのかというのは、一定の客観性を持って明らかにできるとは考えています。

○岡部委員長 調先生、どうぞ。

○調参考人 今のことに関連して質問です。亜型間のcross immunity というのは、先生、否定されたように思ったのですが、非特異的な免疫によって相互作用が起こるとすると、しかも、亜型間の相互作用があるということは必ずしも特異的ではないのだけれども、インフルエンザウイルスには特異的な相互作用がある、免疫的な相互作用があるということが何か分かっているのでしょうか。

○西浦参考人 ウイルス学あるいは免疫学で言うと、小田切先生か信澤先生のほうがふさわしいかもしれませんけれども、亜型のそもそもの定義として、二者の免疫が特異的に交差しないということを背景にして定義されていると理解しています。

 非特異的な、一時的な免疫に関してですが、それがあるという実証がされたのは、疫学的な干渉を基にした研究で実証されたのではありません。インフルエンザの「系統進化学」と言って、特に、季節性インフルエンザが集団の免疫を逃げるように進化していくのですが、その系統樹がほかの感染症と比べて、とても薄く長い梯子のような形をするということが知られています。細く長くなるようなメカニズムというのを認めるためには、非特異的免疫がないと説明が付かないということが、今までの進化生物学の研究である程度分かってきている。そういうのがあることは、ほぼ間違いないというところまでが分かった背景としてあると理解しています。

○岡部委員長 ありがとうございます。信澤先生、どうぞ。

○信澤委員 では、少しだけ補足させていただくと、一応、亜型をまたいでH1H3の両方を認識できる抗体というのはあることはあると言われておりまして、それは、HAH1H3の共通部分。

調参考人 stem

○信澤委員 ステムの所です。抗体はあると言われていますので、そのクロスの抗体の存在というのは、どれぐらい中和に働いているかというのは分からない、というか、弱いとは思いますが、あると思います。

 あと、中和抗体以外に、私は免疫が詳しくないので、言葉だけ申しますが、ADCCが関与しているという話も何か最近出ているようですので、抗体以外にもそういう非特異的な免疫で抑えるという可能性もあるのだと思う。

○岡部委員長 押谷先生、どうぞ。

○押谷委員 先ほど信澤先生がおっしゃったウイルス学的にどういう条件になったら、そのリプレイスメント、同時流行のようなことが起こるのかということなのですが、1つ考えられるのは、感染性を十分に獲得しないようなパンデミック株が出てくる。具体的に言うと、1957年のだったと記憶しているのですが、あれが出現したときは、必ずしも完全にヒトに適応していない形で出てきたと言われていたと思うので、信澤先生のほうが詳しいところですが。そういう状況になると、感染性が十分にない状況で抗原性の大きく異なるウイルスが出てくると、多分、西浦先生が先ほどおっしゃった過去のパンデミックのデータもそういうことなのかなと思いますが、そういうのだと、季節性インフルエンザと、ある程度、ある一定期間同時に流行するというのは実際にあり得るとは思います。ただ、その場合には、逆に、パンデミックのほうが大規模な流行にならないので、そうすると、備蓄という観点からすると、だからそれを考えて、では、プラスアルファで、その状況でパンデミックで2,000万人、3,000万人がり患して、更に季節性インフルエンザで1,000万人がり患するというシナリオは非常に考えにくい。その場合には、パンデミックの流行ピーク、規模はどうしても小さくならざるを得ないので、ということなのだと私は思っています。

○岡部委員長 ありがとうございます。宇田先生、何か御意見はありますでしょうか。よろしいですか。では、調先生、どうぞ。

○調参考人 もう1つ、備蓄という観点で確認ですが、製薬会社か卸か分かりませんけれども、ある程度季節性インフルエンザの流行に備えて、抗インフルエンザ薬を一定量、民間における備蓄と言っていいか分かりませんが、そういうものがあると思うのですが、それは何か把握されているのでしょうか。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 私たちのほうでは大体どれぐらい生産されているか、どれぐらい消費されているかというのも把握しております。

○調参考人 それは、その年の季節性のインフルエンザの流行が終わった春の時点ぐらいでかなり底をつくような備蓄というか、流通量なのでしょうか。

○竹下新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 それも把握しております。流通備蓄としても把握しておりますので、その点は私たちのほうでも数は押えております。

○岡部委員長 ありがとうございます。私もちょっとあれなのですけれども、これ、あくまで同時流行の可能性ありなしというようなモデルなので、感染しただけではなくて、発症した人の比較ですよね。それを例えば、小田切先生の所の亜型のウイルスの状況だけで見ていると、この中には発症ではなかったり、同時感染だったり、いろいろなウイルスが含まれている可能性があるので、その辺はバイアスとしてかかってくるのですね。私たちも経験で、丁寧にやってみると、ウイルス量が多いのと少ないので両方出てくるということもあるのです。でも、症状としては1つで出てくるので、そういったようなことについては、感染と発症のことになるのですけれども。

○西浦参考人 観察データが極めて限られています。ウイルスサーベイランスに関しては、往々にして、全国の都道府県の衛生研究所でdetectされたウイルスで、亜型の報告が上がってきていると理解しています。それで多くの場合は、重症患者さんのデータからウイルスの亜型がdetectされていると。ですので、そのデータだけに頼っていると、亜型間の相互作用に関してはサンプリングバイアスと言って、数が少ないことによる影響も大きいですし、一定の特殊な感染者の人たちのデータを拾ってしまう可能性もあるのです。そういったことがあるので、海外でこういった分析をするときは、普通は複数のデータを使います。ウイルスサーベイランスだけに頼らずに、日本のインフルエンザのサーベイランスというのは、実はとても良いのです。海外ではILIと言って、症状ベースでデータが取られているのですが、日本は、先ほどの質問で確認がありましたが、ILIではないですよね。インフルエンザの患者さんのサーベイランスで上がってくるデータは、ほとんどの場合が迅速診断検査陽性で上がってくるので、ほぼインフルエンザが確からしい人たちのデータで上がってくるのですが、そこにインフルエンザサーベイランスのデータをかけたり、実際の感染者数の推定をした上で、この相互作用を見たりするというような、一定の修正を疫学的に行うということを1件やる。

 もう1つは、その疫学的なincidenceのデータに頼りきっているとエラーが起こってしまうので、血清のデータを系統的に収集しています。系統的に日本以外の国も対象にしていますが、日本はウイルスサーベイランスに加えて、感染研で流行予測調査事業をされていて、ワクチンの株に対する反応リスクはありますけれども、人口全体で5,000サンプルぐらいの人たちにおいて、年に特定の亜型に対してどれぐらいの割合の人が抗体を保持していたのかという検討結果がありますので、より客観的に集団レベルの免疫度合いというのをある程度見られるとは考えています。

○岡部委員長 どうもありがとうございます。ほかに御意見、御質問はよろしいでしょうか。最初におっしゃっていたように、これはあくまで、今、中間報告というか、ハーフウェーとおっしゃっていたから、中間でいいですか。ですので、これから発展、進展していく部分だと思います。また、西浦先生から改めてその状況などを伺って、いろいろな参考にしたいと思います。大石委員、どうぞ。

○大石委員 少しだけ追加させていただきます。インフルエンザの定点サーベイランスの中で、病原体サーベイランスもされているわけですが、その中で、ほとんどがインフルエンザキットで診断されていると言うから正確だという話は、それは事実なのですけれども、今、陰性データも昨年からの感染症法の改正で取れるようになってきているので、そういう分母もしっかり見れて、陽性率というのが示せるようになりつつあると思います。以上です。

○岡部委員長 ありがとうございます。少し早めではありますが、私自身は非常によいディスカッションができて、参考になった部分が多いと思っております。それでは、何かお一言なければ、一応、今日は終了にしたいと思います。事務局のほうは、それでよろしいですか。それから、次の計画、その他があればアナウンスをお願いします。

○山崎新型インフルエンザ対策推進室室長補佐 次回の予定については日程が決まり次第、御連絡を差し上げます。よろしくお願いいたします。以上です。

○岡部委員長 それでは、少し短めではありますが、実のある議論ができたと思います。終了したいと思います。参考人の先生方、どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(新型インフルエンザ対策に関する小委員会)> 第10回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録(2017年11月27日)

ページの先頭へ戻る