ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 過労死等防止対策推進協議会(過労死等防止対策推進協議会)> 第10回過労死等防止対策推進協議会 議事録(2018年1月26日)




2018年1月26日 第10回過労死等防止対策推進協議会 議事録

労働基準局総務課(過労死等防止対策推進室)

○日時

平成30年1月26日(金)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 省議室
(中央合同庁舎第5号館9階日比谷公園側)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

<専門家委員>

岩城穣委員、岩村正彦委員、川人博委員、堤明純委員、宮本俊明委員、森岡孝二委員、山崎喜比古委員

<当事者委員>

寺西笑子委員、中原のり子委員、西垣迪世委員、前川珠子委員

<労働者代表委員>

白井桂子委員、中川義明委員、八野正一委員、村上陽子委員

<使用者代表委員>

小林信委員、山鼻恵子委員、輪島忍委員

○議題

今後の過労死等防止対策について

○議事

○岩村会長 皆様おそろいですので、ただいまから第10回過労死等防止対策推進協議会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては御多用中にもかかわらず、お集まりを頂きまして誠にありがとうございます。今年初めての会合ということですので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日の委員の出欠状況ですけれども、木下潮音委員、小林治彦委員がそれぞれ都合により御欠席です。

 続いて、本日の資料について事務局から確認を頂きたいと思います。

○佐藤企画官 資料1-1、「過労死等防止対策推進法」及び「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づく施策の実施状況、資料1-2、調査研究等の実施状況、資料2、総務省における過労死等の防止対策の実施状況、資料3、学校における働き方改革に関する緊急対策等について、資料4、大綱における数値目標等に関する参考データです。その後は参考資料1、過労死等防止対策推進協議会委員名簿、参考資料2、過労死等防止対策推進協議会運営規程、参考資料3、過労死等防止対策推進法(概要)、参考資料4、過労死等防止対策推進法の本文、参考資料5、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(概要)、参考資料6、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の本文、参考資料7、自殺総合対策大綱(抜粋)です。それから、資料番号は付いておりませんが、最後に岩城委員、川人委員、森岡委員、寺西委員、中原委員、西垣委員及び前川委員提出資料を用意しております。不備等がございましたら、事務局にお申し付けください。

○岩村会長 カメラ撮影については、ここまでとさせていただきたいと思います。御協力をお願いいたします。

 それでは、お手元の議事次第に沿って進めたいと存じます。本日の議題は、今後の過労死等防止対策についてです。前回の協議会においては、今後の過労死等防止対策の進め方について、フリーディスカッションの形で御意見を頂戴しました。そこでは大綱の数値目標などについて、多数の御意見を頂戴しましたし、今後の議論を深めるという観点から、大綱の進捗状況等を整備した資料を用意していただきたいという御要望も頂戴しました。その際、私のほうから事務局に対して、法律及び大綱に基づく施策の実施状況及び数値目標などに関して、参考となるデータの資料の整理をお願いしたところ、今日御用意いただいております。

 そこで厚生労働省、人事院、内閣人事局、総務省、文部科学省という順序で、資料等についての御説明を頂き、その後に質問と議論の時間を設定したいと思っております。本日の議論の進め方ですけれども、施策の実施状況に関して、今後過労死等を防止していく上でどのような対策が必要であるか、御議論を頂きたいと思います。その後に大綱における数値目標について、議論をしていただくという順序で進めていきたいと考えておりますので、御理解と御協力を頂きたいと思います。

 まずは資料の説明等ということで、先ほど申し上げた順番で、厚生労働省からお願いしたいと思います。

○佐藤企画官 資料1-1、資料1-2、資料43つを使って説明させていただきます。まず資料1-1、「過労死等防止対策推進法」及び大綱に基づく施策の実施状況です。右下にページ番号が振ってあります。この資料ですが、左側に大綱に盛り込まれている内容を、その右側に平成27年度から平成29年度において実施してきた施策の状況を書いてあります。

 調査研究等は、2ページから4ページにまとめております。2ページはそのうちの過労死等事案の分析で、上半分が労災の認定事案の分析です。職種や業種の分析も含めてやっており、平成27年度にはデータベースを構築し、平成28年度には100万人当たりの認定率の分析、重点業種である自動車、外食産業について解析し、平成29年度には残りの教職員、IT、医療について解析しております。下半分が認定されなかった事案の分析です。1年遅れでデータベースを構築し、その後に分析をしています。

3ページは疫学研究等で、からまであります。がコホート研究で、長期的に2万人の集団を追跡して調査するものです。平成29年度に第1回の調査を実施しており、これから継続していきます。が事業場間の比較です。介入前後で結果を解析するもので、1事業場約50人規模の所について今後介入を実施し、その後に結果を解析します。が脳・心臓疾患との関連性を調べつつ、簡便に検査する手法の研究をするもので、平成28年度に約50人につき実験を実施し、この後に結果を解析しています。

4ページは労働・社会分野の調査研究で、真ん中辺りのにありますように、アンケート調査を実施しております。平成27年度に全業種の調査を実施し、平成28年度には自営業者、会社役員、自動車運転従事者、外食産業についてのアンケート調査、平成29年度には残りの教職員、IT、医療について実施しています。これらの結果の発信はホームページに掲載するとともに、白書にも掲載し、月間中のシンポジウム等で概要を説明するなど、周知を図っております。

 次が啓発等で、5ページから14ページです。5ページが国民に向けた周知・啓発で、インターネット、リーフレット等を活用した周知・啓発、また過労死等防止啓発月間における集中的な取組としてシンポジウムを開催したり、安全衛生優良企業公表制度で、取組を行っている企業を発信しております。

6ページは大学・高等学校等における啓発で、()から()まであります。このうちの()が協議会の委員の皆様にも御協力いただいている、過労死等防止対策等労働条件に関する啓発事業です。

7ページが、長時間労働削減のための周知・啓発です。が監督指導で、月100時間超を80時間超へと拡充していき、企業名公表制度も作り実施しているところです。また、労働時間の適正な把握ということでガイドラインを作成し、これに沿って対応しているところです。36協定の適正な締結等についても、あらゆる機会を使って対応しています。

8ページは過重労働に関するもので、が監督指導等に合わせて指導を実施しています。また、いろいろな機会を通じて裁量労働制、管理・監督者に対する啓発、セミナーやポータルサイトの活用を通じて指導しています。

9ページは、企業への働きかけや年次有給休暇の取得促進です。企業へ直接働きかけや、助成金の利用促進、コンサルタントの活用なども行っています。そのほかにポータルサイト、シンポジウム、年次有給休暇の取得促進期間の集中的な啓発、地域によってイベント等に合わせた年次有給休暇の取得の促進等を進めております。

10ページは、メンタルヘルスケアに関するものです。がストレスチェック制度の関係で、制度を創設し、周知しているところです。については、産業医等のいない事業場の地域産業保健センターの利用促進、産業保健総合支援センター等による研修を実施しているところです。

11ページはパワハラの関係です。こちらもホームページ、リーフレット等を活用した周知、対策導入マニュアルを充実・改訂しながら周知しております。また、セミナーや実態調査も行っております。

12ページは商慣行等も踏まえた取組で、大綱策定後に行ったものも盛り込んでいます。自動車運送業については「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央・地方に設置し、実証実験等に取り組んでいるところです。関係省庁の連絡会議を開催し、直ちに取り組むべき施策を取りまとめたり、建設業においても関係省庁の連絡会議を設置し、ガイドラインを策定したり、情報通信業については業界団体と連携した取組を行ったり、医療従事者については勤務環境改善の取組を進めるとともに、昨年は医師の働き方改革に関する検討会を設置し、現在検討を進めているところです。

1314ページは公務員に関係する啓発です。

 相談体制の整備等は1516ページになっております。15ページの1つ目が相談窓口の設置で、労働条件については労働条件相談ほっとライン、メンタルヘルス不調についてはポータルサイト「こころの耳」を設置しており、産業保健総合支援センターで専門的な相談対応を行っております。また、産業医等の相談に応じる方に対する研修、労働衛生・人事労務関係者に対する研修も実施しているところです。

17ページは、民間団体の活動に対する支援です。1つ目がシンポジウムの開催で、平成27年度から始めており、平成29年度に初めて全ての都道府県で実施しました。2つ目はシンポジウム以外です。過労死遺児交流会、民間団体主催のイベントに対する支援を実施しております。一番下ですが、地方公共団体は、国が行う施策に協力するということになっております。月間を中心として、協力依頼を行っています。

1819ページも大綱の後に始められたものです。1つ目が「『過労死等ゼロ』緊急対策」で、違法な長時間労働を許さない取組、メンタルヘルス、パワーハラスメントの対策、社会全体で過労死等ゼロを目指す取組を実施しています。

19ページは、働き方改革実行計画です。時間外労働の上限規制、産業医・産業保健機能の強化等が、労働政策審議会でおおむね妥当という答申を頂いております。また、パワーハラスメント対策、勤務間インターバルについては検討会を設置し、現在検討しているところです。

 一番下の自殺総合対策大綱には、新たに「勤務問題による自殺対策の更なる推進」を盛り込んでおります。これについては参考資料の中にお配りしておりますので、後ほど御覧いただければと思います。

 資料1-2は調査研究についてで、昨年、一昨年の白書の資料などを載せて、概要が分かるようにしております。後ほど御覧いただければと思います。

 続いて、資料4の説明をさせていただきます。1ページは、現在の大綱に定めている数値目標と実績です。目標は3つ定めており、1つ目が週労働時間60時間以上の雇用者の割合を、平成32年までに5%以下にする。2つ目が年次有給休暇の取得率を70%以上にする。これも平成32年までとしています。この2つについては、仕事と生活の調和推進のための行動指針と並びを取っているものです。3つ目が、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にする。こちらは第12次労働災害防止計画と並びを取っているものです。直近の状況については右に書いてあるとおり、それぞれ目標までは達していません。この目標の経年的な数値を、次ページ以下で示しています。

2ページが、週60時間以上の雇用者の割合の推移です。

3ページが、年次有給休暇の取得率の推移です。

4ページが、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合の推移です。

5ページが、月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者数とその割合で、上のオレンジ色の所が週60時間以上の雇用者の割合です。現在7.7%ですが、平成20年の10.0%が基準となっており、これを10年で半分の5%にするという目標が基になっております。

6ページは、前回の協議会で森岡委員から御指摘のあったものです。先ほどの表では短時間の雇用者も含まれているということで、週40時間以上の雇用者のうち、60時間以上の方の割合を示したらどうかという御指摘を頂きましたので、グラフの形で作成しました。これも基準になる平成20年の割合が15%ですが、直近の平成28年では12.6%となっております。

7ページが年次有給休暇の取得率の推移です。御覧いただければと思います。

8ページです。第13次労働災害防止計画は、平成30年度からの5か年計画で、これに示された目標をお示ししております。3つあります。1つ目が仕事上の不安、悩み、ストレスについて、職場や事業場外資源を含めた相談先のある労働者の割合を90%以上にする。現在は71.2%です。2つ目は現行の目標と同じですが、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にする。現行が56.6%です。3つ目がストレスチェックで、50人以上の事業場には義務化されていますが、義務化されていない集団分析があります。この集団分析をし、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とする。平成28年では37.1%という数字でした。この3つが、労働政策審議会の安全衛生分科会において審議されたものです。

9ページでは、メンタルヘルス対策とストレスチェック制度の概要を示しております。

 次に10ページです。前回の協議会で、勤務間インターバル制度の導入について御意見をたくさん頂戴しております。点線の枠で囲んだ部分が主な御意見です。1つ目が11時間以上の休息時間の確保について規制を設けるべき、2つ目が導入企業の割合の数値目標を定めるべき、3つ目が実態調査を通じてきちんと把握すべき、4つ目が「インターバル」のもつ意味などを、きちんと理解していただくことも必要だという御意見を頂いております。

 下半分が統計調査の結果です。2つ掲げております。1つ目は、前回の協議会で総務課長から御説明申し上げましたが、平成27年度の委託研究の調査で、勤務間インターバルを導入している企業の割合が2.2%という結果がありますので、これを御紹介したところです。(2)が昨年12月に公表された就労条件総合調査の結果の中で、勤務間インターバルについて調査をしており、「導入している」と回答した企業が1.4%という結果が出ております。

12ページは前回の協議会でも申し上げた、平成27年度の調査研究の結果です。

13ページが今ほど申し上げた、就労条件総合調査の結果をグラフにしたものです。13ページは勤務間インターバルの導入状況と、右側に平均間隔時間があります。青い所が「導入している」で1.4%という数字です。赤い所が「導入を予定又は検討している」です。緑の所が「導入の予定はなく検討もしていない」というものです。92.9%の事業場が、「導入の予定はない」という結果になっています。

 その下が規模別に見たものです。規模の大きい事業場の方が導入している割合が多くなっており、規模の小さな所では、「導入の予定はない」が規模の大きい事業場より多くなっております。業種別については、その下を御覧ください。

14ページは、実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が、11時間以上空いている労働者の割合です。一番右は不明ですが、その左の水色の所が「全員空いている」という所です。真ん中のオレンジ色っぽい所が「ほとんど全員空いている」で、調査計で、「ほとんど全員」と「全員」を合わせると、71.6%という数字になっております。その下では事業場を規模別に見ております。規模が小さくなるほど、「ほとんど全員」と「全員」を足したものが多くなっています。業種別については、その下を御覧ください。

 最後に15ページで、インターバル制度を導入していない理由別企業割合です。それぞれ棒グラフが61組になっております。一番下のオレンジ色の所が「当該制度を知らなかったため」です。その2つ上の紫色の所が「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」です。どの区分もこの2つが多く、規模別に見たところ、小さい企業では「当該制度を知らなかった」、「必要性を感じないため」が多くなっています。業種別には、その下のとおりです。以上です。

○岩村会長 それでは次に、人事院から御説明を頂きたいと思います。

○荻野人事院職員福祉局職員福祉課長 人事院では内閣人事局と連携し、国家公務員に対する過労死等防止対策を実施しているところです。具体的には調査研究、啓発、相談体制の整備等を中心として取り組んでいます。資料1-1に沿って御覧いただきますと、2ページにありますように、国家公務員の過労死等に関する調査研究については、平成22年度から平成26年度における公務災害等事案のデータを収集した上で、データベースを構築して分析を進めました。

 また、啓発等に関しては資料1-113ページに書いてあります。「国家公務員に対する周知・啓発の実施」という項目です。各府省人事担当者へこころの健康づくり対策、パワーハラスメント対策のための制度等の周知等も行っており、昨年度は全国6か所で、345人に対して実施しております。今年度も全国5か所で既に実施済みです。また、各府省人事担当者へのこころの健康づくりに係る研修講師養成の研修については、昨年度は全国10か所で534人に対して行っております。今年度も全国8か所で既に実施済みで、残り2か所を年度内に行う予定です。

 続いて、1つ飛ばして各府省人事担当者への職場環境改善の手法に係る研修についても、昨年度は全国3か所で105人に対して実施しております。今年度も既に2か所で実施済みで、もう1か所行う予定としております。今後もこういった周知・啓発を行っていくことにしておりますし、このほかにも外部有識者の講演などを通じたメンタルヘルスに関する知識の習得、全職員が活用できるe-ラーニング教材の配布、管理監督者向けと一般職員向けのガイドブックの作成・配布なども行っています。

 続いて16ページを御覧いただきますと、相談体制の整備について取り組んでいただいております。が国家公務員に対する相談体制の整備等です。メンタルによる休職者の円滑な職場復帰と再発防止のため、復帰に際して人事当局と休職者を対象に、専門家である医師からアドバイスを受けることができる「職場復帰相談室」を、全国10か所で開設・運営しております。また、職員等が自らの心の悩みに関する相談をすることができる、「こころの健康相談室」も全国10か所で開設・運営しております。パワーハラスメント等に係る相談については、職員からの苦情相談を受ける窓口を開設・運営しております。昨年度の実績を申し上げますと、職場復帰相談室が170件、こころの健康相談室が151件、パワーハラスメントに係る苦情相談が264件ということで、こういった相談を受けています。

 また、人事院では長時間労働の是正のために、超過勤務縮減指針に基づく周知・啓発なども実施しております。昨年夏の人事院勧告時の報告においては、各職場におけるマネジメント強化、府省全体としての業務の削減・合理化を求めており、事務次官級の会議の場において、人事院事務総長から各省事務次官に対して取組を依頼するなど、長時間労働の是正に向けた取組について、各省に対して働き掛けを行っています。今後は民間労働法制の議論等を踏まえ、実効性ある措置を検討していくこととしております。長時間労働の是正については、関係機関と連携しつつ、引き続き取組を強力に進めていきたいとしているところです。以上です。

○岩村会長 それでは次に、内閣人事局からお願いしたいと思います。

○池田内閣官房内閣人事局参事官 内閣人事局でも人事院と連携しながら、これまでも過労死防止対策に取り組んできました。特に超過勤務の縮減は、官民問わず重要な課題であり、これまでも政府全体で長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や、業務効率化を通じた超過勤務の縮減に取り組んできたところです。具体的には啓発、相談体制の整備について、御説明したいと思います。13ページを御覧ください。

13ページの下の部分を御説明したいと思います。78月をワークライフバランス推進強化月間として、退庁時間を早めることなどにより長時間労働を打破し、生活スタイルを変革するゆう活をはじめとする具体的な働き方改革について、全府省で取り組んでおります。例えば今年度は、全府省共通で大臣や事務次官などから強力なメッセージを発信していただいて、ゆう活と超過勤務の縮減の徹底、年次休暇や夏季休暇の一層の取得促進などを実施しました。また、各府省等や職場の実情に応じて、庁舎全体の完全消灯日ということで照明を消してしまうとか、スケジュール管理表による予定の見える化で、スケジュールの共有、管理職員向けのマネジメント能力向上のための研修なども、この期間中に実施いたしました。今年度の実績として資料に記載してありますが、3.9万人がゆう活を実施いたしました。そのうちの定時退庁割合も72.2%で、昨年度に引き続き高い数値となっており、この取組は着実に定着していると考えております。

 さらにこの月間の終了後に、各府省等の人事課に対して調査を実施しましたので、その結果を簡単に御紹介したいと思います。ワークライフバランス推進強化月間は、平成27年度から開始されたもので、開始前の平成26年度の数字と比較しますと、78月ともに超過勤務が減少した府省等の数値は、全23府省あるうち18府省という数字になっております。同時に職員の意識調査も行ったところ、職場の業務において改善を感じた職員が55%、定時以降の業務時間を縮減できたと感じた職員が44%にのぼるなど、ワークライフバランス推進月間は、働き方改革の具体的な取組の推進に寄与していることが伺えました。

 このような集中的な取組により、ワークライフバランス強化月間は実施前と比べて、超過勤務時間も減少していることなど、成果が出てきております。この月間で効果の高かった取組や各府省の事例なども参考に、引き続き超過勤務の縮減に向けた取組を実施していきたいと考えております。また、2つ目のポツにありますように、ワークライフバランスそのものの推進のためのセミナーも実施しているところです。

3つ目のポツ以下は、メンタルヘルスに関する記述です。メンタルヘルス対策を推進する上で、管理監督者の職場マネジメント業務において、職員のこころの健康づくりというのは大きな比重を占めており、とても重要なものです。このため、内閣人事局では管理監督者を対象として、メンタルヘルスの基礎知識や不調者への実際の対応を習得される研修を、全国で6ブロック毎年度実施しております。毎年度、300人以上が参加しているという状況にあります。

 最後のポツになりますが、国では新任の管理者などに対して、こころの健康づくりとハラスメント防止に関する研修の受講を必修化しています。各省で実施するこういった研修に参加できない方々もおりますので、これらの方にもメンタルヘルスに関する基礎知識や、部下に対する相談対応方法を周知できるe-ラーニングの講習を、毎年度、内閣人事局で実施しております。毎年度、1万人程度が受講しているという状況にあります。

 続いて、16ページの相談体制の整備です。一番下のポツ、各府省等カウンセラー講習会です。前提として、各府省等においては職場における相談体制の整備だけでなく、外部の専門機関への委託による電話相談や面談なども行われており、職員のニーズに応じた相談体制が整備されています。また、各府省等にカウンセラーも配置されております。こういったカウンセラーのカウンセリング能力の向上を図るため、カウンセラーを対象にして、全国6ブロックで講習会を実施しております。本年度は合計240人程度が参加する予定となっております。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。続きまして、総務省から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉武総務省自治行政局公務員部安全厚生推進室長 総務省安全厚生推進室長です。よろしくお願いいたします。右上に資料2と書いてある資料に基づきまして、御説明させていただきます。1ページを御覧ください。総務省におきましては、地方公務員のワークライフバランスの推進に資する基礎資料を得るために、都道府県、政令指定都市、県庁所在市の知事部局等の地方公務員の時間外勤務の状況について、調査を行ったところです。

 結果を書いたものですけれども、左側の表の時間外勤務の時間数、(1)の全体状況の一番上にありますように、年間で158.4時間の時間外勤務がされており、これにつきましては、下に(参考)で書いておりますが、民間労働者とほぼ同様、それから国家公務員より少ないという結果でした。なお、本庁につきましては、国家公務員の本府省より少ないものの、年間で219.6時間となっております。また、右側の時間外勤務が多い職員の数の表ですが、1か月当たりの時間外勤務が80時間を超える職員も、全体で1.1%、本庁では2.2%あったことが分かったところです。

2ページです。地方公務員の過労死等に係る公務災害認定事案に関する調査研究の結果の抜粋を書いております。左側が脳・心臓疾患で公務災害と認定された84件について、過重負荷と認められた職務の従事状況を示したものです。御覧いただくと分かるように、上から2つ目の長時間の時間外労働が67件と最も多く、事案の8割で要因の1つとなっていたものです。

 右側は、精神疾患106件について、職種別に過重負荷が認められる主な要因別にまとめたものです。それぞれの職務により、最も多い要因は異なりますけれども、義務教育学校職員では、住民等との関係が13件と、最も多くなっておりますけれども、うち、括弧書きにある自殺事案に関して見ると、住民等との関係が5件、仕事の量が3件となっております。

 消防職員では、9件全てが異常な出来事が要因となっております。また、その他の一般職員においては、仕事の量が25件と最も多く、次いで異常な出来事、住民等との関係の順となっております。また、これを自殺事案について見ると、仕事の量が13件、対人関係と住民との関係が、それぞれ3件となっています。このように精神疾患においても、時間外勤務が多くの事案において、要因の1つとなっていることが分かったところです。

3ページです。左の表ですが、勤務時間管理の状況です。最初に御説明した時間外に関する調査において、併せて調査を行ったもので、タイムカードや任命権者の現場確認により、時間管理を行っている団体も55団体あったものの、職員からの申告により、出退勤時間を管理した団体が44団体あったところです。このような状況を踏まえ、右側にありますように、これまでに労働時間の適正な把握のために、使用者が講ずべき措置や、時間外勤務等の縮減の取組について、文書で地方公共団体に要請を行いました。

 そのほか、4ページに書いておりますが、地方公共団体の人事課長等が出席する各種の全国会議、6ブロックでの会議、さらに本年度は県別の会議を、これまで8か所で行い、周知・要請を行っているところです。

5ページです。実施団体の7割が勤務時間の縮減に効果があったと回答している「ゆう活」についての取組です。ゆう活についても事例の紹介や、積極的な取組を要請し、平成29年度は、下にありますが、432団体で実施をしていただいたところです。

6ページから10ページにかけて、ゆう活の取組で紹介した事例の概要や、定時退庁促進に向けた各団体の主な取組を付けております。後で御覧いただければと存じます。

11ページです。また、メンタルヘルス対策として、平成27年からストレスチェック制度が50人以上の労働者を使用する事業場に義務付けされたところですが、地方公共団体に対しては、50人未満の事業場を含め、実施の検討を要請しておりました。平成28年度においては、50人以上の事業場で99.2%と、ほぼ全ての事業場で、また、50人未満でも87.2%の事業場で実施していただいたところです。また、この結果が取りまとめられた昨年12月には、改めて、更にストレスチェックの実施など、メンタルヘルス対策を推進していただくよう、要請をしているところです。

12ページです。研修・相談としては、自治大学校の研修においてメンタルヘルスや、ワークライフバランスなどの講義を行うとともに、メンタルヘルスマネジメント実践研修会を全国19か所で実施するほか、電話・面談によるメンタルヘルス相談等を行ってきているところです。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは、文部科学省から御説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○森文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長 文部科学省初等中等教育企画課長の森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、資料3を御覧ください。学校における働き方改革に関する緊急対策等ということです。文部科学省では、教員の大変厳しい勤務状況を踏まえ、学校における働き方改革について、中央教育審議会に諮問し、議論を進めているところです。

 昨年末にこれまでの議論の経過をまとめた中間まとめを取りまとめていただき、そして、これを受けて文部科学省として緊急対策を取りまとめたところです。資料32ページから5ページまでが、この緊急対策の概要です。また、7ページから11ページまでが、その基になった中教審の中間まとめの概要、さらにそれ以降に、それぞれの本体を付けておりますが、中教審の取りまとめを受けて、緊急対策を提示したということです。重なる部分もありますので、本日は2ページから5ページまでの資料に基づき、主に緊急対策の概要について、御説明を申し上げたいと存じます。

 まず1ページです。この緊急対策として、まず1点目、1.にあるように、業務の役割分担・適正化についてです。下のほうに表として示しているのは、中教審のほうで、学校がこれまで担ってきた業務のうち、本来、学校が担うべき学習指導、生徒指導、そのもの以外で、本来、誰がどのような役割分担をすべきかということについて、御議論をし、整備をしていただいたわけです。

 例えば、表の左側にあるのような業務については、基本的には学校以外が担うべき業務であるということで、その業務の内容に応じて、地方公共団体、教育委員会、地域ボランティア等が担うべきであるという整理がされております。また、真ん中のの業務については、学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要がない業務であるということで、教員以外の職員、あるいは学校外の方々と分担をしながら、進めていくことを検討すべきであるという整理がなされております。

 そして、右側にあるの業務については、学校の業務、そして教師の業務だが、負担軽減が可能な業務であろうということで、教員以外のスタッフを活用し分担する中で、積極的に業務負担の軽減の取組を進めていくべきであると、そのような整理がなされたわけです。

 こうした考え方を受け、この緊急対策では、1.(1)1つ目の○にありますが、文部科学省として学校、そして教師・事務職員等の標準的な業務の在り方を明確に整理し、各教育委員会において、学校管理規則に位置付けていただくように、そのモデルとなるような案を作成し、提示していくことを、緊急対策として提示させていただいているところです。

 また、2つ目の○にあるように、全国で様々、優れた取組もあろうかと思いますので、こういった取組を収集し、周知をしていくことも進めていきたいと思います。1つ飛ばして4つ目の○にもあるように、文部科学省の中で、教職員の業務量に関わるような業務、これを全体的、俯瞰的に管理し、これを新たな業務付加が学校に下ろされるようなことが生ずることがある場合に、それを省内で調整するというような役割を担う、一元的な組織の整備をするといった取組も進めていきたいと考えているところです。

3ページです。これらの個別の業務を適正化するための取組を記載しております。学校徴収金の管理について、取り分け給食費について、公会計化を導入するといったことや、調査・統計等の精査を進めるといったことを掲げています。また、部活動については、現在、検討が進められていますけれども、本年度末までに、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを作成する。顧問について、部活動指導員や外部人材を積極的に参画させるといったことを促していきたい。このようなことを検討しつつ、将来的には、部活動を地域単位の取組にすることによって、学校以外に担っていただくといったことも検討していきたいと考えているところです。

4ページ、2.です。学校が作成しなければならない様々な計画、あるいは学校の組織運営に関する見直しです。これについて、類似するものを統合・整理するといったことを図る中で、業務の適正化に向けた取組を進めていきたいと考えております。

 さらに3.です。勤務時間に関する意識改革と時間外勤務の抑制のための措置です。1つ目の○にあるように、タイムカード等を使うことにより、勤務時間管理の徹底を図っていくといったこと、あるいは一番下、5つ目の○にありますが、学校閉庁日等を適切に設定することにより、長期休業期間中に年次有給休暇が確保できるようにといった取組を進めていきます。

 さらに、管理職のマネジメント能力が大事ですので、(2)にあるように、そうした観点からの研修を進めていきたいと考えております。

 さらに(3)、時間外勤務抑制のための措置です。現在、政府全体で進められている「働き方改革実行計画」を参考にしながら、教師の勤務時間に関する数値で示した上限の目安を含むガイドラインを検討し、提示していきたい。

 そのほか、※に書いておりますが、「中間まとめ」において、更に検討が必要とされた課題、具体的には給特法を含む、勤務時間制度の在り方や、学校の組織運営の在り方といった課題について、引き続き中教審によって検討を進めていきたいと考えているところです。

 最後、5ページです。この学校における働き方改革に関連する平成30年度予算案に計上している事項について、簡単に御説明します。まず、1点目です。学校指導・運営体制の効果的な強化・充実を図るための措置として、教職員の定数に関して、英語教育を行う専科指導教員の充実のための専任をはじめとして、全体で1,595人の定数改善となっております。

 また、2番目にあります専門スタッフ・外部人材の活用では、スクール・サポート・スタッフの配置に12億円、部活動指導員の配置に5億円といった予算を計上しているところです。

 さらに、3点目にありますように、業務の効率化及び精選といったことに関連して、実践研究であるとか、都道府県単位での校務支援システム導入促進に必要な経費を計上しているところです。

 以上、概略ですけれども、緊急対策の内容です。今後とも中教審において、教員の働き方改革に関する検討をしっかりと進めていきたい、それを通じて具体的な長時間勤務の改善につなげるような措置を、しっかりと着実に進めていきたいと考えているところです。以上です。

○岩村会長 各省庁の皆様、どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただいた内容のうち、先ほど申し上げましたように、順番といたしまして、まず施策の実施状況に関して、御質問あるいは御意見を頂きたいと思います。その後、数値目標についての御意見、御質問とさせていただきたいと思います。繰り返しですけれども、御理解と御協力を頂きたいと思います。それでは、施策の実施状況に関しまして、いかがでしょうか。

○寺西委員 全国過労死を考える家族の会の寺西笑子です。私から、今後、必要な取組事項などについて、3点の意見を申し上げます。まず1点目は、この3年間は国による調査研究・啓発などの取組を実施し、各省庁の施策や結果をホームページや白書で過労死に関する実態把握は公表されました。ただいまも、かなりの取組の御報告を頂いたところであります。

 しかしながら、過労死を巡る状況は悪化しているため、もはや調査中心ではなくて、調査研究で得られた知見を生かし、今こそ実効性ある過労死防止のための対策が必要であり、更なる法改正に取り組むべき時期を迎えています。本日、私ども協議会委員7名は、過労死等防止対策推進法施行3年後の見直し及び大綱の改定に当たっての意見を提出しました。私たちは、過労死等をなくすための法律にしたいと考えています。是非、御議論を深めていただきたいと思っております。

2点目は、同法の14条に「過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする」ことを規定されています。ここで申し上げたいのは、労災認定基準のハードルが余りにも高いために、過労死なのに労災認定されない事案が多いことです。1980年代から過労死が増え始めたころの、認定基準は大変厳しいものでした。ましてや自殺は1999年までガイドラインがなく、ほとんど泣き寝入りの時代でした。私もその時代に夫が過労自死したことで、1年余り泣き寝入りをしました。

 遺族はそうした厳しい時代に過労で亡くなった証拠を集め、行政で駄目なら裁判してでも10年、15年掛けて司法で認めさせ、その積み重ねで認定基準の道なき道を切り開いてきたことで労災認定基準が策定されましたが、近年は労働時間管理の問題や不規則勤務、夜勤、パワーハラスメントなどの過重労働の評価が適正に行われないことで、過労死なのに評価されない事例が増えています。様々な過重労働を過労死と認めることこそが、過労死防止対策につながると考えます。是非、議論を深めてください。

3点目は、若者の精神疾患による自死が増えてきたということであります。本日の資料1-119ページの自殺総合対策大綱に、勤務問題による自殺対策の更なる推進を盛り込むと示されています。白書の自殺の状況を見ますと、勤務問題を原因とする自殺者数の推移は、9年間2,000人以上から、平成28年は2,000人を割り1,978人に減りました。ところが過労自死の労災申請数を見ますと、約1割の200件前後であります。ほとんどの方は仕事が原因なのに、労災申請されていないのが実情です。

 こうした実態を改善するためにも、自殺対策基本法と連携した取組により、基本的な対策の推進に必要な整備を図るものと考えます。参考資料には、取組などを載せていただいていますが、これもデータ的に、きちっとした情報を共有したいというふうに、意見として述べさせていただきました。私のほうからは以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは、岩城委員どうぞ。

○岩城委員 弁護士の岩城です。今の寺西委員のお話にありましたように、本日、委員7名による意見書を配布させていただいております。私はこの中の第2の過労死防止法の改正についての意見を申し上げたいと思います。

 今年3年目の見直しの時期ということで、これから議員連盟の皆様にも御協力を得ながら、どういった点を改善していくのかということで、私たちなりに意見を書いてみました。1点目が調査研究をメインとする立て付けの法律から、文字どおり過労死等防止対策を推進するという法律にシフトしていただきたいということであります。

 もちろん、過労死等に関する調査研究も、まだ緒に就いたばかりでして重要なわけですけれども、その結果を待って対策するというのではなくて、既に分かってきたこともありますし、その後も次々と過労死が発生しているわけですから、法の本来の目的が、過労死等防止対策の推進であるということを、鮮明にしたものにしていただきたいと思っております。

 それから2つ目が、過重労働の解消を取り入れてほしいと。意外なことですが、大綱には過重労働の解消ということが何箇所も出てくるのですが、法律そのものには過重労働という言葉は出てきておりません。この辺りは、もう、いわば共通の認識になっておると思いますので、過重労働という言葉を入れていただきたいというのが、2点目であります。

3点目が、過労死等の原因と考えられている事項が、ほぼ明らかになってきております。4ページにありますように、具体的には長時間労働、負荷の高い勤務形態又は作業環境、精神的緊張、パワーハラスメントであります。この4点が過労死、過労自死等の大きな原因であることは、今や、ほぼ争いがないというふうに思われます。

 そこで、第3条の定義、第8条の調査研究、第9条の啓発などの規定において、この4点を取り入れていただきたいというふうに思っております。特にパワハラについては、今回初めて言葉に入ってくるものと考えております。

 それから、使用者の責務が4点目ですけれども、現行法では使用者は国及び地方公共団体の防止対策に協力する責務という形で定められておりますけれども、過労死とは職場で発生するものであり、労働契約法や労安法で自らの責任も認められているところでありまして、大綱ではそのことが、きちんと明記されております。そこで、この法律の中にも、協力するとともに取組を自ら実施するということを入れていただければと考えております。

5点目が、労働組合の責務の新設であります。労働組合は職場の過半数の労働者を組織している場合は、36協定の当事者となりますし、また労働条件を巡って労使協定や労働協約を締結することができる、大変重要な立場にあり、特別な役割を持っていると考えております。また大綱にも、その旨の記述があります。そこで第4条の中に労働組合の責務を入れていただきたいということであります。

6番目が、事業主の取組に対する支援を追加していただきたいということであります。先ほども申し上げましたように、過労死は職場で発生することから、過労死等の防止のためには、事業主の取組に対する支援が大変重要であります。以前、この法律ができる前に、野党6党案がありましたけれども、そこの18条では、事業主の取組に対する支援が書かれておりました。今、これを入れていただくことについては、大変、重要な意味があるかなと思っております。

7番目が、労働時間の把握と記録、労働時間の上限設定等に関する法制上の措置を講ずる旨の義務を、14条の中に入れていただきたいということであります。この法律自体は、いわゆる理念法でありますから、直接、権利義務を書くことにはなりませんけれども、法制上の措置等の例示として、この言葉を入れていただくことによって、法制度の改善が進むのではないかということを、期待をしております。私のお願いしたい7点は以上であります。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは森岡委員、どうぞ。

○森岡委員 岩城委員の御意見を受けて発言します。大綱改正は、一つは法改正に盛り込むべき論点、もう1つは、法改正がすぐには運ばないという状況下で大綱独自に盛り込むべき論点、この両方に跨ります。議員立法でできた過労死防止法の改正を、この場で議論することはできますが、具体化することは、議会レベルの課題であります。この協議会では、法改正がすぐには実現しない場合でも、法改正が望ましい事項も改訂される大綱の中に、先行主導的に取り込むべきであると思います。

 例えば、現行の防止法と大綱の関係について言うと、現行の防止法では、例えば過重労働という言葉はなかったけれど、大綱には随所に盛り込まれている。あるいは、そもそも労働時間という用語も法律にはないのですが、大綱の中には詳細に記載されている。このような形で大綱が防止法より踏み込んだ表現をしている項目は、現在でもありますので、今回の場合も法の改正がすぐに実現する、しないにかかわらず、法の改正の課題とされる事項については、大綱に最大限取り込んで、実効的な過労死防止対策に資するような大綱に改めることが必要だと思います。その点で、委員7名による意見書の9ページから10ページにかけて6項目ほど挙げていますが、これはこれで、今、言った趣旨で、是非、御検討いただきたい。

 それから、大綱の法改正には及ばないけれども、幾つかの点で議論をして盛り込むべき課題があります。それらを11項目ほど示しています。若干、最後の残された時間にその点に触れておきます。1つは、この全体の構成なり内容を記載する場合、当然のことですが、この3年間における研究の進展、それから過去2回の白書の内容、その他、この協議会でも明らかにされてきた事項については、大綱に最大限盛り込むということを前提に、大綱の改定を行うということであります。

 大綱の中で法改正にも関わっていますが、6番目に労働時間の把握というところがあります。この労働時間の把握は、簡単な3行ほどの記述になっていますが、やや不十分なので、ここで改めて追加的な意見なり、特に私個人の委員としての要望を申し上げます。

 ガイドラインを大綱に盛り込むということだけで問題が解決するとは言えません。現行ではガイドラインの中にタイムカード、ICカード等入力、客観的な記録を最大限重視するという趣旨は盛り込まれていますが、なおかつ自主申告を最後的には残すという扱いになっています。例えば人事院が民間労働者について検討している資料の中には、ほとんど半数に近い所が自主申告をしているというようなデータもあります。

 自主申告というのは、この間、明らかになった過労死事案について、労災認定に至ったケース、至らないケースがありますが、至ったケースに限って言っても、企業が把握した労働時間と、労基署及び裁判で確定した労働時間の間に随分大きな乖離があります。一番ひどい場合には、30時間ぐらいの時間外労働が実際は210時間であったとか、7倍の差があるような事態さえ報道されています。そういう点で労働時間の適正把握というのが非常に重要です。ある意味では、いかなる過労死防止の取組にも先んじて、厳格に行われるべき事項と考えられます。その点を特に強調して、客観的なタイムカード、ICカード等による把握に徹するということを明確に打ち出すような内容にすべきだと思います。

 それから、1分よろしいですか。

○岩村会長 ほかの方の御発言もあるかと思いますので、できるだけ簡潔にお願いしたいと思います。

○森岡委員 公務員のことで一言ですが、国家公務員、地方公務員について働き方改革の問題及び過重労働対策の今後の取組が詳細に、この間、示されてきていますが、やはり正規と非正規ですね、非正規は多くは短時間労働者で、長時間労働の問題に絞って言うと、入ってこないということになりかねませんが、非正規でもフルタイム労働者がたくさんいます。

 それから、短時間でも健康安全管理という点では、むしろ非正規のほうが大きな問題だというのは、いろいろなデータがあります。その点で、非正規の非常勤公務員あるいは臨時職員についても大綱で過労死防止、健康管理ということをうたっていく必要があると思いますので、その点、是非、どこかに反映していただきたいと思います。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは前川委員、お願いいたします。

○前川委員 東北家族の会から参りました、前川と申します。森岡先生に引き続いて、公務員と教員の過重労働の問題について話します。まず、総務省における過労死等の防止対策実施状況については、より実際的な内容にしていただいたことを感謝しています。森岡先生のお話にもあったように、出退勤時間の把握方法というのが、すごく大事になってくるので、今後は過労死白書で効果のあった、過労死防止に効果のあるといわれているものとを突き合わせて、この先の対策をどういうふうに取っていくか、その結果がどうなっていくかというのを、是非、教えていただければと考えます。

 あとは、公務災害と補償制度については、まず、情報公開を積極的に進めること、また、公務災害については、労基署や労働局に該当する監督機関及び相談窓口がないことから、何らかの代替措置を講ずること、公務員においても、過労死等過重労働やパワーハラスメントの防止のための対策を講じる必要があること、また、一般職を含む全ての自治体職場において、36協定の締結が求められることを大綱にも書き込むことを希望します。

 近年、取り分け過重労働対策を求められている教員については、大綱の中で特別の項を起こして述べていただきたい。内容は1.業務量内容の改善、業務の明確化。2.教師の定数改善、正規職員の増員と持ち時間数を減らすこと。教職員に過重労働を強いる背景には、給特法の存在があります。給特法は運用の曖昧さに問題があり、それが教師に過労死を誘発する、過酷な長時間労働を強いる有力な根拠になっています。過労死防止の観点から見て、給特法の法律の改正を含めた具体的な対策、見直しが必要不可欠です。よって給特法の見直しを大綱に盛り込む、なお、1の業務量・内容の改善については、本日の資料、緊急対策にも詳しく取り上げられています。この方策が末端まで確実に周知され、実行されたという具体的な成果報告を、是非、こちらの協議会でも頂きたいと考えています。

 教職員の過重労働については、私たち遺族や有識者からの呼び掛けで集まった時間外労働の上限を求める50万の署名が122日に文部科学省に届けられたばかりで、今、大きな注目が集まっています。加えて、2020年の高大接続改革及び小中学校における教育指導要領の改定に向けて、疲弊した現場に更に負担がのし掛かり、過労死、精神障害の発生が拡大する危険が高まっています。

 私の夫は大学の准教授でした。ここで扱っている教員とは違うのですけれども、やはり同じ教育者でした。彼は生前、教育には国を変える力があるのだというふうに言っていて、国の教育の仕事に誇りを持って命を懸けて生きた人でした。新たな教育を支える教育現場に必要な教師というのは、言われるままに家庭生活もなく、奴隷のように働く思考力の失われた人たちではないはずです。過労死ゼロを目指す、過労死防止対策推進法の内容は、私たちが今後どう働き、どう生きていくかについて、新しい日本の未来はどうあるべきかということについての、具体的な展望から導かれるものでなくてはならないと考えています。形だけではなく、より実効性のある内容を織り込んでいただけるように、亡き主人とたくさんの遺族の思いを一緒に伝えたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○岩村会長 ありがとうございました。総務省へは御質問ということで、今、よろしいですか。

○前川委員 はい、その後の、また、次を見たいと思っています。

○岩村会長 そうですか、ありがとうございます。それでは、輪島委員のお手が挙がっていましたので、どうぞ。

○輪島委員 一番下の資料、7人の委員から提出された資料を、今日、初めて見ましたので、よくまた勉強してみたいと思っております。その点で1つだけ、まず事務局に御質問ですけれども、前回、私のほうから、国会に提出している閣法と議員立法の関係について、お伺いをしたかというふうに思いますけれども、改めてもう一度、御説明を頂ければと思うところでございます。

○岩村会長 では総務課長、お願いいたします。

○村山総務課長 前回も同じ趣旨の御質問があり、お答えした内容は委員にも確認した上で、既にホームページで議事録として公表されています。ただ、重ねての御質問ということで、重ねてお答え申し上げたいと思います。

 内閣提出法案の国会への、特に私ども厚生労働分野での通常の出し方としては、審議会からの建議等意見を取りまとめていただいたものをベースに法案要綱を策定し、それをもう一度審議会に諮問して御答申を頂き、その上で御答申内容を踏まえて法案化をする。そして議院内閣制の国ですので、与党の了承を頂く手続を経て閣議決定の上、国会へ提出するというのが普通の進め方かと思います。うなずいている委員もいらっしゃるように、例えば労働政策審議会等での処理の仕方というのは、そういった流れかと思います。

 議員立法に関しては、ものによって千差万別というのが実態だと思います。前回御質問を頂いた後に改めて調べてみましたが、やはりこうした総合的な推進法や一定分野の基本法のような法律で、議員立法をされたもののほとんどは全会一致で成立しているものだと思いますけれども、この過労死等防止対策推進法も衆参両院全会一致で成立しているわけです。こうしたものに関して改正するときは、通常は超党派での合意があって、その上で所管委員会等から委員長提案等がされて、質疑はどの程度やられるかは立法府の御判断ですけれども、前回も申しましたように、その上で改正されていくのが通例であると理解をしています。先ほどいみじくも寺西委員からも言及があった自殺対策の基本法や、がん対策の基本法等といった横断的な、ある分野を俯瞰しているような法律はそういった形で改正されているというのは、少なくとも厚生労働委員会に付託されるものであれば、そういったものが多いということは改めて確認したところです。

○輪島委員 そういう整理だということを前提にした上で、過労死等防止対策推進法の中身については、過労死等に関する調査研究や国民への啓発などを目的として、先ほどお話があったように超党派の議員立法という形で成立していると、基本的な役割をそういうような位置付けに定めたものだと考えているところです。

 もう一方の御提案があった中身、特に9ページ以降の大綱の背景についての意見ですけれども、これも既に昨年決定された「働き方改革実行計画」の中で、例えば9ページ(2)のパワーハラスメントの防止の関係は専門家の検討会を立ち上げる。本日、その専門家の会議も開催されていると思いますが、そういうところで対応しているものや、12ページのインターバル休息制度についても、労働時間等設定改善法を改正して対応するということについて、既に労働政策審議会として対応しているものもあるのではないかと思っております。そういう意味で推進法と、一方で労働政策決定プロセスである労働政策審議会とは基本的には別のもので動いています。しかしながら、いろいろなものを意識しながらプロセスの中で対応しているものではないかと思っていますので、そういう意味では労政審の担う役割と、こちらの協議会で持っている推進法の中身というのは、ある一定程度の役割の分担があると私としては理解しています。以上です。

○中原委員 今、輪島委員のお話を伺って、輪島委員の前に森岡委員から大綱独自の盛り込みや先行盛り込みというような言葉があったかと思います。内閣総理大臣の年頭記者会見においても、今国会は働き方改革国会であるということで多様な働き方を推進すると。その中で、私たち過労死遺族としては、高度プロフェッショナル労働制や裁量労働制の拡大などについては遺族として容認できない箇所が含まれているのは事実です。

 裁量労働制の拡大については、現行においても先だって野村不動産の裁量労働制の不当な運用という報道もありました。違法な長時間労働や残業代の未払いの発生といったことを防ぐために、またこの裁量労働が拡大されることは、私たち遺族としては賛成しかねるという意見です。あと、最近のニュースを見ていますと、北里大学病院での労基法違反の是正勧告、杏林大学病院の医師の2%が過労死ラインを越えている等、やはり同じように労基法違反で是正勧告が杏林大学にも入っております。愛媛県立病院では勤務医の残業、年間最長1,777時間というちょっと驚くような労働時間や、ほかにも36協定のとても多い時間数を締結している病院もあります。

 私は医師の過労死遺族として、今度の働き方改革においては、医師は5年猶与ということがうたわれており、輪島委員がおっしゃったように、今、医師も働き方検討会は行われていますが、5年猶与というのは現場の労働環境を早く改善しないと、やはり健康確保において深刻な事故が起こり得ると言えるのではないかと思います。健康確保のために医師も労働者であるとか、上限規制を規定してほしいというのは、5年は待てない状況であるということです。また、医師と同じように適用除外が建設業、自動車運転業務、研究開発、厚労省の指定業務などといった職種にも及んでいるわけですが、私としては是非こういった職業についても、今大綱で防止対策を盛り込んでいただきたいと思っております。以上です。

○八野委員 今、岩城委員をはじめ、川人委員、森岡委員、寺西委員が出された意見を踏まえながら議論が進んでいると捉えております。今まで過労死の防止対策について様々な研究や調査が進められてきたのは、大綱がきちんとできて過労死ゼロに向けて取り組んでいくという中で進んできたものだと思っています。しかし、この大綱で十分かというとそうではないので、大綱の見直しが必要であろうということが出てくるのだと思います。その中には、前回にも話されたような数値目標というのも重要でしょうし、今国会で議論される働き方改革が、イコール全て過労死防止ゼロにつながっているものではないと捉えています。ここで議論する大綱の在り方等はある意味予防措置の機能として、働く者にとって又は過労死ゼロを目指していく日本にとって重要なものだと見ています。

 その観点から見ていったときに、これから大綱の見直しを前提ということで考えていくと、更に対策を踏み込んだものとして掲げていくべきではないかと思っています。その観点の1つとして、「過労死等防止対策推進法」が2014年に制定されてからは、社会的な変化も起きていますし、これから予測されている社会的変化もあります。非常に大きいのは労働力不足、労働人口の減少が大きな関わりとなってくると思いますし、そういう中で第四次産業革命などとも言われており、雇用契約の在り方や働き方の在り方がどうなっていくのかという観点も、議論をしていく上で考えていく視点だと思っております。

 それと、昨年大きく報じられた大手企業における過労死問題ですが、その中では企業風土、文化、マネージメントの在り方、今までの商慣習等々についても踏み込んだ言及があったと思っています。これは、現在の大綱の中では企業に求める姿として出ているわけではありません。そういうことを踏まえ、命と健康を守るという観点から、大綱をしっかりと見直していく議論をこの中でしていくべきではないかと思っております。意見として述べさせていただきます。

○西垣委員 全国過労死を考える家族の会兵庫代表の西垣です。大綱の改訂と、現在取り組まれておられる取組の強化について3点発言させていただきます。

 まず、若年労働者に対する国及び事業主の特別配慮措置を大綱に追加する件です。12ページの意見の(7)の所にあります。実は私事で恐縮ではありますが、本日は私の息子の十三回忌に当たります。「このまま生きることは死ぬよりつらい」とブログに残したまま、27歳の若さで旅立ちました。「もっと健康に生きたいものだ。日本人てどうしてこんなに働くのでしょうか」とブログにつづっております。あの日以来、息子からのメールは届きません。お正月になっても帰ってまいりません。逆縁は人生最大の苦しみと言いますが、この苦しみを味わう親を日本はこれ以上増やすというのでしょうか。資料1-29ページの労災認定された精神障害事案等の分析によると、30代や29歳以下の若者層に過労死が多いという結果が出ており、また自殺対策大綱によると、15歳から39歳の死因別順位で自殺が第1位になっており、産後うつ対策等とともに、勤務問題による自殺対策として、長時間労働の是正など過労対策推進が緊急の課題であるとうたわれています。

 また、最近の大手広告会社や五輪競技場建設での過労自死事件など、入社1年目の事件が目立っております。若者を過労死させた企業の責任は、少子化と労働力不足の日本の現状から考えると、国益にも反するものだと言わざるを得ません。これらのことから単なる調査にとどまらず、この大綱に7人の意見、12ページ(7)2つの内容を追加することを希望いたします。
 1つ目は、「国は、近年多発する過重労働とパワハラによる若者の過労死等を防止するため、適切な監督指導を行う。」以下省略します。「事業主は、新卒採用の労働者が請求したときは、採用後1年間は事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1か月につき24時間、1年につき150時間を超える時間外労働をさせないよう努めなければならない。」以下省略です。息子の場合を考えると2年目も考慮していただきたい気持です。
 2つ目は、同じく7人の意見書の12ページの労働時間の把握と記録についてです。これも2017120日付けのガイドラインを大綱に盛り込むことを希望いたします。同じく資料1-237ページの過労死等の労働・社会分野の調査・分析(平成28年度)によると、労働時間を適正に把握すること及び残業手当を全額支給することが、残業時間の減少、年休取得日数の増加、メンタルヘルスの状態の良好化に資するとの分析結果が出ています。これは貴重な結果であると言えます。このことから、労働時間の把握と記録の適正化は、長時間労働の削減、過労死問題解決の一番基になる前提と言えるのではないかと思います。

 また、過労死は憲法第13条、生命自由及び幸福追求に対する国民の権利。第25条、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、人間らしく生きることを国に求める権利。第27条、人間らしく働く権利等への侵害であり、国民の生存権が脅かされている状態と言えると思います。生存権は保障されるべきであります。国や企業は働く人の尊厳への意識を高めていただくべきですし、そのことが、やがては国と企業にとっても繁栄につながると確信していただきたいと思います。

 最後に第3は、情報通信業への対策についての要望です。資料1-218ページによると、時間外労働時間が最も長かった月において、80時間超えと回答した企業の割合が44.4%と一番多い業種になっております。資料1-112ページには商慣習等も踏まえた取組の推進が、平成29年度、アンケート調査等取組が実施されるとの報告がありますが、必要な場合は仕様変更による納期の変更などにも結び付く、また、元請と下請、顧客が一体となった改革が進む実効的な解決、対策になることを期待いたします。また、聞き取りをしていただいたものとして、その中間報告を頂きたいと思います。さらに、研究開発部門として、時間外労働上限規制の適用外となっている企業もありますが、長時間労働がはびこっているこの部門こそ適用から除外するべきではないと考えます。以上です。

○岩村会長 ほかにいかがでしょうか。

○中川委員 今日、御提示いただいたデータ等に対して、意見と質問をそれぞれ1点ずつ申し上げたいと思います。勤務間インターバル制度に関するデータを御提示いただいたと思いますが、例えば製造業の工場などで言いますと交替勤務では、実質的にはもう既に勤務間インターバルを行っているというところもあります。そういった意味では実質的に交替勤務は次の方が次のタイミングで来られるので、実質的に勤務間インターバルになっている所がほぼほぼ、大きな工場で言うと多い状態です。また、勤務間インターバルは長時間労働是正の観点もありますけれども、例えば運輸業や宿泊サービス産業においては、導入が進むことでワークライフバランスの取れた働き方が可能となると考えておりますので、そういった意味では我々としては前向きに考えているところです。

 さらに、広域で営業展開するスーパーなどで、11時間以上の勤務間インターバルを導入したら、例えば人事異動は、これまではどこに住んでいるかとか、通勤時間はどれぐらいかかるかというところは、余り考慮されずに人事異動をされていましたが、導入後は住居や通勤時間等も考慮した人事異動をされるようになってきたと聞きます。そういった意味で働く者の立場という観点では、いい方向になっているのだと思います。ただ、実際に産業や会社ごとに、職場の実状を踏まえて労使でしっかり議論をした上で導入することが重要だと思っています。

1点だけ意見を申し上げると、資料414ページ、これは厚生労働省の調査の所なのですが、私は肌感覚で11時間以上空いている労働者がほとんどいない会社、企業が10%以上もあるというのは、数字的には疑問に残るなと。これは勝手な推測なのですけれども、全く逆を答えているのではないかなと疑問に思います。次に質問ですが、今回勤務間インターバルについては導入、普及、促進のために有識者検討会が開かれていると聞いておりますので、そちらの議論経過のようなものがあれば教えていただきたいと思います。以上です。

○岩村会長 質問の点について、もしお答えいただければお願いいたします。

○村山総務課長 お答えの前提として、最初に会長から仕切りがありましたように、恐らく数値目標は後段のほうで、区分けて議論されるものだと思いますけれども、その前提となる資料に関する御質問ということで頂いた点についてお答えしたいと思います。

 勤務間インターバル制度に関しましては、先ほど輪島委員からも紹介があったように、3月の労使合意をベースとした働き方改革実行計画の中においても、有識者や労使の参画を得て、厚生労働省において検討会を立ち上げて検討するということで、既に3回の会議が開かれています。本日御参画の各団体の関係者の皆様にも、委員として御参画を頂いているところです。最初の回はこうした基本的なデータ、それもこの就労条件総合調査が出る前ですので、それほどまとまったデータもなかったのですけれども、あとはヨーロッパ等でどのような法制になっているかの概要等の説明の上で、今、中川委員からも御意見、御開陳がありましたが、こうした制度を入れていく積極的な意味や、実施する場合の隘路のようなものはどのように感じていらっしゃるかということを、有識者の先生方から頂いたということです。
 23回目に関しては、私どもで把握しております先端的に労使でお話し合いの上、社内制度を入れていらっしゃる、あるいは正に中川委員からもお話があったように、製造業の大きな現場等でもう既にインターバルということではなくて、きちんとした交替制の中で間隔が空いた形で勤務管理をしていらっしゃるような実例なども含め、企業側、労組の双方から同数ずつの皆様方のヒアリングをしていただいているところです。

 今後はヨーロッパにおける法制だけではなくて運用の実態等に関しても、どうしてそれでヨーロッパの企業は回るのだろうかとか、そもそも前提として働き方にどのような違いがあるのだろうかというような突っ込んだ御質問もありますので、今はそうした点について勉強させていただいており、今後更に議論を深めさせていただきたいと考えているところです。先ほど輪島委員からも御提起がありましたように、ほかの検討会とこの協議会がよく連携が取れるようにということは、非常に重要な視点だと思います。どちらにも労使に御参画いただいている会議でもありますので、皆様方とよく意見交換をしながらやっていきたいと思います。

 なお、御意見として頂いた就労条件総合調査の調査ですけれども、今回全く初めてやったものでして、非常に貴重な御指摘も頂きましたので、担当部局にそうした御指摘があったことはしっかり伝えさせていただきたいと考えております。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは堤委員、お願いします。

○堤委員 恐らく、後半の数値目標の議論に入る前に、今まで余り話にならなかった大綱の枠組みについて、意見を申し上げたいと思います。今、各省庁からの御報告や、委員のお話を受けて、意を強くしたところなのです。1つ、これまでの官民連携のいろいろな活動で、国民の理解や関心は、確実に広がっているように思っております。そのような取組に関わっておられる方々の活動や取組は、やめるべきではありませんし、まだ伸びしろがあるようにも思いますので、是非これは続けていく必要があるだろうと思うのが1つです。それから、調査研究に関しては、いろいろな知見が出されているように思います。また、いわゆる重点業務に関連しての解析も始まっていて、これからまた新しい知見も出されるように期待をしております。

 私は、これが大切かなと思っているのは、いろいろな施策を行って、恐らくその評価にも調査研究は重要な意義を持つのではないかというような期待をしております。一方で、いろいろと御意見があったように、この大綱を含めたいろいろな取組についての問題点や不足点がありますから、そういうことを全部勘案した上でですが、今の大綱の基本的な枠組み、構成は維持しながらも、今まで委員が出されてきた不足分や問題点といったようなものは、やはり補うようにし、そしてまた必要に応じて新しい取組を入れてという、ここは委員がずっとおっしゃっていたようなことだろうと思います。そういう形で、よりよい大綱に進められるといいかなという希望も含めての意見です。要旨としては、大綱の枠組みを保ちながら議論が進められればというようなところです。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。では、白井委員、どうぞ。

○白井委員 先ほどの中川委員からありました勤務間インターバルのことについて、少し追加でお話をさせていただきたいと考えております。私は看護師ですが、医療関係者は日を跨いで、考え方によっては勤務間インターバル0時間というような形で働く場合があります。この勤務間インターバルを確保するために、いわゆる圧縮勤務、2つの勤務を1回にしてしまえば、次の勤務は間が空くというような考え方もあるのです。そうしたときに、勤務間インターバルの考え方が、業種によって大分違っているなというようなことを感じております。先ほど中川委員も発言しましたが、しっかりとしたローテーションの三交替職場では、次の方が来ているので、必ずインターバルが空くというようなことはあります。

 ただ、医療の現場においては、病院そのものが24時間で稼働しておりますので、そこに働く者のインターバルは5時間であったり、2時間であったり、あるいは36時間であったりというように、まちまちです。勤務間インターバルを考える上では、その勤務間インターバルの前にある労働時間の長さみたいなものも、しっかり考えていかないといけないのではないかと思います。そうしたときに、いわゆるこの勤務間インターバルを議論するときには、ある一定程度の共通認識に立たないと、時間数だけでの問題ではないのかなというような感じがします。その辺りのところをまとめていただいて、御提示いただきたいなという希望があります。以上です。

○岩村会長 そろそろ次に移りたいとは思うのですが、よろしいでしょうか。では、村上委員、どうぞ。

○村上委員 数値目標については、前回発言いたしましたので、本日はその前提の大綱について発言させていただきたいと思います。先ほど、堤委員からもありましたように、この過労死等防止対策推進法であるとか、協議会というのは、やはり過労死ゼロ、過労死防止という視点で様々な課題を摘出していくということが、大変大きな役割だと思っておりますし、それが特徴だと思っております。こういったことがあるからこそ、他の分野においても、過労死防止という観点で、では何が考えられるのかという問題意識を持ち帰って、議論が進んでいくのではないかと考えており、この協議会でもそういった観点での議論をしていくべきだと考えております。

 また、具体的には啓発や調査研究でもそうなのですが、そういった分野では取引関係や商慣行、また消費者行動など、社会全体を捉えたような幅広い取組が必要だと思っております。是非、大綱の見直しにおいては、啓発の分野でそういった観点を入れていただきたいと思っております。先程来ありますように、自動車運転や建設や医療についての働き方については、他の検討の場でも議論はしておりますが、サービス業はなかなかそういった議論はできていない部分がありますので、そういった所も充実させていただいて、社会に訴えていくことを是非考えていただきたいと思います。

 もう1点は、先ほど寺西委員から労災認定基準の見直しの議論を深めていくべきという御発言がありました。私どもも同じような問題意識を持っておりますが、現在労災認定基準の在り方を巡って、係争中の事案があり、どのような判断が出されるのかが大変注目されているところです。労災認定基準が、認定をしないための基準として活用されていいのかどうかが問われておりますので、そういった判断も見ながら考えていくべきではないかと考えております。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。それでは、次に移ります。数値目標について、御意見、あるいは御質問を頂ければと思います。

○森岡委員 先ほど、7人の委員の提出資料の中の11ページに、表を掲載しています。これを参考に、若干の発言をお聞きください。前々から主張してきましたが、過労死防止の長時間労働を考える場合に、男性、女性の性別の区分、それから正規、非正規の雇用形態の区分、あるいはもう少しこだわって言えば、裁量労働制や管理・監督者、その他の労働時間管理の違いによる区分等が大変重要で、個々の職場では突出した長時間労働は個別具体的に発生しているわけですが、それを平均で論ずることはできません。ですが、大きな数値目標を掲げるということで、5%目標がまず第一に掲げられています。これは、10年前の議論で政府内で定められた基準が、そのまま踏襲されて、今に至っており、2014年の大綱の際にそういうことで盛り込まれたと理解しています。

 この間、御承知のように、非正規化が最近の人手不足の中でも止まっていない状況があります。それから、正規化が進んでいるという数字もありますが、正規化が進んでいる中には、実は限定正社員と言われる時給正社員、エリア正社員、短時間正社員が含まれていて、労働力調査で見ると、週35時間未満の労働者で、正規という括りになっている労働者が、少しずつ増えています。そういうことがあって、数字が何を意味するかというのは大変難しいのですが、少なくとも非正規労働者を含む男女の全ての雇用労働者を分母に、週60時間以上の労働者の割合を出すというのは、ある面で非正規化が進めばそれだけで実現されていくような、だんだん目標に近付いていくような数字でもあって、好ましくない。その割合が下がっても必ずしもフルタイム労働者の長時間労働が改善されているとは言えない。それで週40時間以上のフルタイム労働者の中の週60時間以上の割合を算定して示しておきました。

 これについては、先ほど大変貴重な資料が推進室から示されており、それを参考にしながら議論を進めていくべきだと思います。もう一度立ち返って言えば、フルタイム労働者についての労働時間というのは、日本では残念ながらないのです。OECDILOの国際労働統計を比較する場合にも、日本の場合は毎月勤労統計調査の一般労働者というのはフルタイム労働者ですが、残念ながらこれは賃金支払労働時間の集計であって、早出、居残りを含む実労働時間のうち、賃金不払残業の部分は、含まれていないという点で問題があります。いずれにせよ、実効性がある目標という点で言えば、週60時間以上の労働者を、非正規を含む総労働者の5%にするという数値目標では、なお300万人近くが(2016年データでは281万人)週60時間以上の労働、したがって、月で言えば80時間以上の残業をしているという形で残るわけですから、そこをもっと絞り込むためには、数字の検討が必要ではないかという意見を提出しました。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○川人委員 2点あります。7人の意見書の11ページにも、深夜交替制勤務について述べてあります。長時間労働の削減が非常に重要なテーマであることは間違いないのですが、この間の調査なり啓発活動において、この深夜勤務の人体に対する悪影響、あるいは交替制勤務の人体に対する悪影響という問題に関する調査、あるいはこの問題に関する調査に基づいた啓発活動という点では、この3年間残念ながら必ずしも十分な活動ができてこなかったと考えております。これは、今日の報告書等を見ていただいても、そのとおりだと思います。

 例えば、これはどういう形になって表れるかというと、医療機関で言えば、医師が時間外労働が100時間を超える状況であった場合には、百数十時間というような場合には、ほとんど脳・心臓疾患であろうと、自殺であろうと、労災として認定されるわけです。看護師や介護士の方が交替制勤務で深夜勤務も非常に多いにもかかわらず、例えば残業が4050時間ぐらいしかなかったという理由で、これは労災としては認められないという結果になっています。また、このことが予防関係にも影響してきて、結局交替制勤務自体が非常に過重にもかかわらず、それにプラスして更に残業もある程度やるのが、常態化しているようなところがあるのです。申し上げたいのは、やはり長時間労働の規制と同時に、過重性を生じさせる勤務形態、特に深夜勤務、交替制勤務の問題について、もっと科学的な調査もし、そしてそれに基づく防止対策をしていかなければいけない。過重労働の解消が大事で、過重労働の解消は長時間労働の解消だけではないわけです。この点を、強く申し上げたいと思います。

 最後に、この防止法が制定されてもうすぐ4年になるわけですが、私はこの防止法が与えた社会に対する役割は大変大きかったと思います。そして、その下でこの協議会が構成され、専門家、更に各労使の代表の方、そして過労死家族の方、更に医師の方々も含めて、多様な協議会の委員によって議論されました。また、政府側、行政側も、厚生労働省だけでなく、各省庁から議論に参加していただきました。そういう意味で、この協議会でのこの数年間の多様な議論が、大変大きな役割を果たしたと思うわけです。したがって、今後、見直し作業の議論に当たっても、是非多様な議論を積極的に出し合い、その上で最終的には、この理念法としての法の趣旨の中で、具体的な結論を得るという形での議論の進行をお願いしたいと思います。以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○輪島委員 今、川人委員がおっしゃった点は、私も同様であり、この協議会の果たした役割は非常に大きいと思っております。手前味噌で恐縮ですが、これは今年の私どもの春の労使交渉に臨むポジションペーパーで、先週発表させていただいたものです。実は、この中に、本当はお配りをすればよろしいのでしょうが、61ページに長時間労働の是正の関係で、上限規制を入れるというくだりのところです。そういう意味では、非常に企業実務に及ぼす影響は決して小さいものではないとしながらも、「しかし」として、「企業として痛ましい過労死、過労自殺は絶対に引き起こしてはならず、過労死、過労自殺ゼロを実現するという強い意思の基、経済界の総意として、いわゆる上限規制の導入について決断をした」と書いているところです。

 先ほどの点も含めて、私どもも真剣に取組をさせていただいています。そういう意味では、非常にこの協議会が果たしている役割は大変大きいと、再度申し上げておきたいと思います。その点で言いますと、大綱の見直しの議論の中で数値目標の議論をしているわけですが、余り全体を、今あるものを、あれもこれも付け加えていくというよりは、メインのものはメインのものとして、きちんと継続的に見ていくというようなものと、それからサブ目標ではありませんが、もう少し時代の動きに合わせて見ていくような、少し濃淡を付けるというような見方も別途必要なのではないかと思っているところです。

○岩村会長 ほかにはいかがでしょうか。最後に、少しだけお許しを頂いて、座長もときどきしゃべりたいのですが。今、川人委員、それから輪島委員からも御意見がありましたし、先ほど村上委員もおっしゃっていたことですが、私もこの過労死等の防止対策の法律と大綱は、非常に重要な役割を果たしてきたと思っております。取り分け、様々な問題について実証的なデータを集めて、分析をするということを、この間、着実に行ってきています。それが、結局のところ、さまざまな局面で、とりわけ労働時間、それから労働安全衛生の側面における政策形成、あるいは法改正その他の作業に、実は非常に役立っていると私自身は実感して思っております。そういう点で、この法律に基づいて内容を具体化している大綱で定めている様々な調査研究が、それで終わっているわけでは全然なくて、実はそれが回り回っていろいろな形で政策形成にとって重要な役割を果たしているというのは、強調しておいていいだろうと思います。

 また、前にも申し上げましたが、この協議会の場には、当事者の方々のほかに、労働政策審議会に出席、関与している各種団体の代表の方も入っています。そういう方々が、ここにいらっしゃるということを通して、各種審議会への反映も行われていると、私は理解しています。まず、この点でもこの協議会が果たしている役割は非常に大きなものがあると理解をしています。そういった、これまでの実績を十分に踏まえた上で、この後3年間、どういう内容の取組を行っていくかという観点から、今日、いろいろな御意見も出ましたので、それを踏まえつつ、今後大綱の取りまとめを考えていくのがいいのかなと、個人的には思っております。今のは、座長としてということではなく、個人として、そのように思っています。

 もしよろしければ、ほぼ時間になりましたので、本日の議論はこの辺りで閉じたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。先ほどは個人として言ったのですが、今度は座長として、委員の皆様、非常に活発な御議論を頂き、ありがとうございました。とりわけ、今後の過労死等の防止対策についてのそれぞれの立場からの貴重な御意見を頂いたと、私も考えております。全体を通じて、今日の御意見を振り返ってみますと、法や大綱に基づく施策に新たに盛り込むというようなことや、数値目標についても御意見を頂いたところです。そういう点で、大体基本的な枠組みは維持するということについては前提としつつ、それをどのように発展させていくかが議論だと思いますが、それで見直しをしていくということで、ほぼ御理解は得られたのかなと考えております。

 そこで、次回の会合に向けては、事務局であります厚生労働省に中心となっていただき、関係の各省庁と連携も図りつつ、今日頂いた委員の皆様からの御意見を踏まえて、数値目標も含めた形で、今後の過労死等防止対策の見直し案の骨子と、それを肉付けした素案を準備していただくようお願いをしたいと思います。また、準備をしていただくに当たって、委員の皆様からも事前に丁寧に御意見を伺って作業していただくよう、改めてお願いいたします。

 最後に、次回の日程について事務局から説明をお願いいたします。

○佐藤企画官 本日、委員の皆様のお手元に、連絡と調整のための紙をお配りしております。既に御提出いただきました委員の皆様、ありがとうございます。また、本日提出が可能であれば、記載の上、机の上に置いていただくか、事務局へお渡しいただければ助かります。よろしくお願いいたします。

 次回の開催日時や場所については、追って調整の上、事務局より御連絡差し上げます。よろしくお願いいたします。

○岩村会長 それでは、日程調整については、机上の資料で御協力を頂きたいと思います。以上で、第10回過労死等防止対策推進協議会は閉会といたします。本日はお忙しい中、長時間にわたりありがとうございました。

 


(了)

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