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2017年9月1日 第126回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

○日時

平成29年9月1日 13:00~14:30


○場所

中央合同庁舎第5号館厚生労働省職業安定局会議室第1,2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

 

  阿部分科会長

定刻より若干早いのですが、ご出席予定の委員の皆様方ご出席ですので、ただいまから第126回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。

はじめに、本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の小畑委員、玄田委員、中窪委員、労働者代表の勝野委員、柴委員、林委員、使用者代表の河本委員、深澤委員、吉岡委員がご欠席です。なお、河本委員の代理として全日本空輸株式会社の秋田様が出席されております。

それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は「働き方改革の長期的かつ継続的な取り組みについて」です。

それでは、資料について事務局から説明をしてもらいます。宜しくお願いします。

 

  総務課長

総務課長の田中でございます。私から資料に基づきましてご説明をさせていただきます。

 まず、お手元の資料でございますが、資料NO1といたしまして「働き方改革を推進するための雇用対策法の改正について(概要案)」それから、資料NO2といたしまして「働き方改革実行計画(抄)」それから、資料NO3としまして「労働政策審議会の建議(抄)」それから、参考資料といたしまして生産性運動に関する3原則、それから雇用対策法の条文、働き方改革実行計画と同一労働同一賃金に関する法整備についての建議の全体版をお配りさせていただいてございます。基本的に資料のNO1、NO2、NO3に基づきましてご説明をさせていただきたいと思います。本日、議題として「働き方改革の長期的かつ継続的な取り組みについて」ということで審議をお願いしてございます。今般ご議論を頂きたいのは、お手元の資料NO1にございますように雇用対策法の改正の関係でございます。少子高齢化が進んでいきます中でこれからの我が国の課題として働き方改革を進めていくということを求められています。本日の審議をお願い致します雇用対策法の改正につきましても、このうちの一つとして位置づけられるものでございます。

 それでは資料NO1の説明に先立ちまして、資料NO2、NO3の方をご覧いただければと思います。働き方改革実行計画(抄)とそれから働き方改革の中で今後行っていきます時間外労働の上限等の関係、それから同一労働同一賃金に関する法整備についてという建議の抜粋でございます。

まず資料の方でございますけれども、働き方改革の中で様々な事情がある方もその事情に合わせて働くことが出来るようにすること。労働参加率の向上、資料NO2の中ほどのところ少し下線を引いておりますが、労働参加率の向上と納得感を持って働けるようになる、自分に合った働き方が出来るようになる事等による労働生産性の向上、これが二つの柱になってございまして、こういうその生産性向上の成果を働く人に分配をすることで賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る、成長と分配の好循環が実現をされるということが目的とされてございまして、働き方改革実行計画におきましては、働き方改革が日本の企業文化や日本人のライフスタイル、それから働くということに対する考え方そのものに手を付けていくものであること等に鑑みまして、長期的かつ継続的な取り組みが必要ということでございまして、資料NO2の(3)のあたりになりますけれども、改革のモメンタムを絶やすことなく、長期的かつ継続的に実行していくことが必要である。働き方改革の基本的な考え方と進め方を示し、その改革実現の道筋を確実にするため、法制面も含め、その所期の目的達成のための政策手段について検討するとされてございます。また、資料NO3の方でございますけれども、働き方改革の具体策の大きな内容でございます労働基準法、それから同一労働同一賃金に関しての労働政策審議会の建議の抜粋でございます。これ、上のところも下のところも同じ内容が書いてございますが、これも同様に働き方改革の実現に向けては、改革の基本的な考え方と進め方を示し、そのモメンタムを絶やすことなく、長期的かつ継続的に取り組みを進めていくことが必要である。このため、「働き方改革実行計画」を踏まえて、改革全般にわたり、法制面も含め、その目的達成のための政策手段について、引き続き検討を行っていくことが求められるというようにされてございます。これらを受けて改革全般にわたり、基本的な考え方や進め方を法律においても明らかにする。こういった様な観点から現行におきまして、雇用対策を一覧として規定をしております雇用対策法を、改正をする形で対応したいという風に考えているものでございます。今般の働き方改革を踏まえた様々な取り組みの中でございますが、他の法律等々内容を調整中のものもございます。これを労働政策審議会でお諮りをするためには、諮問としては一つのものになりますので、現地点においてはまだ法律案要綱の諮問というような形ではされてございません。ですけれども時間の都合もございますので、本日関係部分について法案要綱の諮問に先立ちまして事前に現在検討中の案ということで概要をご説明してご審議を頂きたいというものでございます。様々な調整が調いますれば後日正式に法律案要綱の労働政策審議会に諮問いたしますので、それを受けて正式にご審議を頂くというような段取りになろうかと思います。

 それで、雇用対策法の改正の内容の方に移りたいと思います。資料NO1でございます。それから参考資料のNO1-2には、現行の雇用対策法の条文がございますので適宜ご参照頂ければと思います。働き方改革を推進するための雇用対策法の改正について、概要案、現時点での案というようなことで本日資料を用意してございます。法制的な面等々、現在整理をしているところでございますので現時点での案というようなことでご説明をさせていただきます。

 まず、雇用対策法の改正でございますが、働き方改革において基本的な考え方や進め方、施策を明らかにするというようなことでございますので、ちょっとまず前後しますけれども、資料NO1、1枚おめくりを頂きまして2ページ目ですが、5にありますように、働き方改革に関する意義、それから施策等の基本的事項を定める基本方針を閣議決定として新たに策定をするというものでございます。この方針におきましては、労働政策以外の関係する働き方改革に関係する施策も盛り込んで必要に応じて各省に協力を要請する。こういったような枠組みとしたいというふうに考えてございますし、また、策定するに当たりましては労働政策審議会のご意見を頂戴するということと、また必要に応じて見直しをしていきたいというふうな内容になってございます。こういうような基本方針の策定ですけれども、1ページに戻っていただきまして、まず、法律名です。法律名、現行雇用対策法というふうに申しますが、広く労働政策を扱うというようなことになりますので、これに対応するということで職業の安定、職業生活の充実と労働施策の総合的な推進に対応したようなものに法律の題名も改めさせていただきたいというのが1点目でございます。次いで2点目が目的規定等の改正になります。○二つございますけれども、まず上の○からですが、目的規定、第1条の目的規定の改正のその内容を念頭においたものでございます。目的規定、現在国が雇用に関して総合的に施策を講じて職業の安定を図っていくといった様な事が規定をされてございますが、今般、更に広く労働に関して必要な施策を総合的に講ずると。こういうことによって経済社会情勢の変化の中で、労働者がその多様な事情に応じた就業が出来るようにすることを通じて能力を有効に発揮することが出来るようにする。これと共に労働生産性の向上を図り、以て労働者の職業の安定、それから職業生活の充実等を図る。そういったような内容で改めたらどうかというものでございます。職業に就ける、量、機会というのが主たる観点になります職業の安定に加えまして、生活面も含めて職業生活が充実するといった様な質の観点もしっかり国が施策をとる目的として加えたいという趣旨でございます。2点目の○ですが、これは現行の第3条の基本的理念に追加をするというようなことを想定してございます。労働者がどういったようなことに配慮をされるかという規定ですけれども、今般、働き方改革実行計画の中でも職務内容、職務の成果、今申し上げているところは資料NO2の一番下の部分になりますが、職務内容、職務の成果・能力・経験等に対する正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者を通じた公正な評価・待遇決定の推進や、そうした公正な待遇の決定が、労働者の能力の有効な発揮等を通じ、経済及び社会の発展に寄与するものである等の大きな理念を明らかにするというようなことが盛り込まれてございます。これを踏まえまして、全体を理念的に規定をいたします雇用対策法の基本的理念に○にありますように、労働者はその職務の内容及び当該職務に必要な能力等の内容が明らかにされ、並びにそれらを踏まえた評価方法に即した能力等の公正な評価及び当該評価に基づく処遇その他の措置が効果的に実施されることにより、その職業の安定及び職業生活の充実が図られるように配慮されるものとすると。こういったようなことをあらたに加えるものでございます。

 つづきまして、3番目の国の講ずべき施策でございます。雇用対策法、元々国が講じます施策を規定する法律でございまして、どういうような施策をとっていくかということをインデックス的に並べてございます。これにつきまして職業生活の充実の観点からの施策を追加するものでございまして、具体的には法律でいきますと第4条を改正して付け加えたりしていくことになりますが、3点でございます。まず1点、仕事と生活の調和を保ちつつ、その意欲能力に応じて就業することが出来るようにするため、労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保等に関する施策を充実するといった様な事を一つ追加するものでございます。

 それから次のところ、女性、それから子の養育、又は家族の介護を行う労働者の職業の安定を図るためというふうになってございます。これ現在女性についてはもう既にある規定でございまして、ここに子の養育または家族の介護を行う労働者の職業の安定を図るためについてもこういった様な雇用の継続等々の施策を推進するということを追記するものでございます。3点目が、やはり仕事と治療の両立というふうに言われる内容でございまして、傷病の治療を受ける者の職業の安定を図るために雇用の継続、雇用管理の改善及び離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進を図るために必要な施策を充実することというようなことを内容として追加をするものでございます。これについては国がこういうふうな施策を実施するというようなことでございまして、個別の具体的な内容については各予算事業でありましたり、各個別の法律に委ねられることになります。それからおめくりをいただきまして、4番目が事業主の責務でございます。働き方改革のみならず雇用対策、労働施策の中におきましては事業主の果たして頂く役割も大きい、また重要でございますので雇用対策法の中でも事業主の責務というような形で規定を設けているところでございます。それにつきまして、今般の職業生活の充実に対応したものを追加するということでございまして、具体的には現行事業主の責務として第6条にございますので、それに1個新しく加えるようなイメージでございます。事業主はその雇用する労働者の労働時間の短縮、その他の労働条件の改善、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保、その他の労働者が仕事と生活の調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することが出来る環境の整備に努めなければならないことを規定する。追加をして規定をするというものでございます。雇用対策法の法律の性格上、この規定、何かここで新たに義務を創設をするというよりは、むしろ各法に既に存在をしている責務について一覧の形でいわば確認的に規定をするものになります。最後に基本方針、先ほどちょっとご覧になっていただきました5番の基本方針でございます。新たに閣議決定で国が労働者の職業の安定及び職業生活の充実、経済的社会的地位の向上を図るための必要な労働に関する施策の基本方針を定めるというようなことにし、基本方針に定める事項は労働者の職業の安定等を図ることの意義に関する事項、それから国が総合的に講じようとする施策に関する基本的事項等々となります。それから、基本方針に、策定に当たりましては、都道府県知事の意見を求めるとともに労働政策審議会の意見を聞くというようなことにしてございます。それから、働き方改革、労働政策以外のものも関係をしてきますので、そういったような施策も盛り込むということで当然のことながら必要に応じて関係各省に必要なご協力を求めるということになってまいりますので、最後の○にありますように、基本方針において定められた施策で関係行政機関の所管にかかるものの実施について必要な要請をすることが出来るというような規定も併せて盛り込みたいというふうに考えてございます。一番下、右の方に施行期日というふうに書いてございます。法律の内容、国の施策を一覧として規定をする。それから各法で規定をされているような事業主の責務を一覧の形で規定をするといった様な内容でございますので、公布に、施行につきましては、公布日施行でお願い出来ればというふうに考えてございます。

 以上が雇用対策法の改正の関係になります。なお、同一労働同一賃金の建議もお配りをしておりますが、これはこの分科会においてご審議を頂いておりますけれども、これを踏まえた改正につきましては、現在別途作業を進めているところでございまして、基本的に同一労働同一賃金をご審議頂いた部会でご議論を頂くというようなことになりますので、そのあとその結果については当分科会にご報告をするというような運びで進めさせていただければというふうに思っております。以上でございます。

 

  阿部分科会長

ありがとうございました。それでは、本件についてご質問ご意見等がございましたらご発言頂きたいのですが、本日マイクの数に限りがございますので、ご発言の際にはお隣同士で融通し合うなど適宜宜しくお願い致したいと思います。

それでは、ご質問ご意見いかがでしょうか。はい、高松委員お願いします。

 

  高松委員

ただいま改正法の概要をご説明いただきました。資料1の1枚目の2目的規定等の改正についてです。一つ目の○のいわゆる第1条の目的に当たるところでございますけれども、意見としてお話をさせていただきますが、この中に労働生産性という言葉が入っていることに対して率直に違和感を覚えております。知る限りでは今年3月の雇用保険法改正での二事業の関係に労働生産性という言葉が入ったと記憶しているのですが、それ以外では知る限りではございません。そういう中で改正雇用対策法の第1条の目的に労働生産性が入るということには、少し違和感があります。と言いますのも、やはり労働生産性というのは効率化を図る指標であるというふうに私は理解をしておりまして、生み出された付加価値あるいは生産量というのを労働の投入量で割り出して得るというような比率でございますから、アウトプットを増やすという目的であればよろしいのですけれども、それのみならずインプットを減らすというようなことも考えられまして、間違っていればご指摘いただきたいのですが、企業が人員削減というものを行う場合にも結果としては労働生産性が向上するというケースが考えられるのではないだろうかというふうに思っております。そうした意味でいきますと、この法律の改正名にもありますけれども、職業の安定と職業生活の充実、労働政策の総合的な推進ということが謳われているわけでありますから、本当にこの目的に沿った内容と労働生産性という言葉が合うのかという意味では違和感があると申し上げたいと思います。

 

  阿部分科会長

何かありますか。じゃあ事務局お願いします。

 

  総務課長

では、ここのところの考え方について補足をしてご説明をさせていただきたいと思います。今般の雇用対策法の改正、こういうことを考えているというふうな内容でございますけれども、まず今後少子高齢化が進んでいく中で労働というものを考えていく中では、やはりいろんな事情をお持ちの労働者の方にもしっかり労働参加をして頂くということと、やはり全体として労働生産性の向上を図るということが求められるということは、働き方改革実行計画の中でも謳われているところでございます。それで労働生産性、インプットに対してアウトプットということでございますが、全体にそういったような労働生産性の向上で得られるものを再分配していく中でより良い好循環に繋げていこうというような観点でのものです。ここで主として念頭に置いておりますのは、アウトプットを増やしていこうというようなことでもございます。それから雇用対策法目的規定の中ですけれども、職業の安定それから職業生活の充実を目的としている法律でございますので、当然のことながらここで規定をする労働生産性の向上というようなものについてもこういったような職業の安定とか職業生活の充実といったような考え方に相反するような形での労働生産性の向上というのは、法律上も意図していないというふうに考えております。

 

  阿部分科会長

今の関連してご発言ありますか。

 

  久松委員

今のご説明も含めてなのですが、アウトプットを増やす、そしてインプットを減らすことは意図していないということですが、やはり私もこの目的規定の改正の中の労働生産性については違和感を感じているところです。どうしても私たち働く側からしますと、労働生産性の向上のために労働強化や人員削減が行われることを危惧しています。これまでにもそういったことが実際にあったということです。そもそも労働生産性の向上は、個別の労使で取り組むべき問題でわざわざ法律で規定する必要があるのかということについて疑問を持っています。本条文の中で労働生産性の向上という文言を削除したとしても条文の以て以降に明記されております労働者の職業の安定、職業生活の充実、経済的社会的地位の向上などの目的は十分に成し得るのではないかというふうに考えます。また、労働生産性の向上というのはそもそも、手段であるべきですが、条文では、労働生産性の向上という目的のために必要な施策を講ずるようにも読み取れます。労働生産性の向上の位置づけを含めてさらに詳しく第1条の条文構造について説明を頂きたいと思います。

 

  阿部分科会長

では、ご質問もありますので事務局お願いします。

 

  総務課長

現在こういうような形ということでお示しをさせていただいていますここの部分でございますけれども、まず労働生産性の向上でございますが、社会全体、膨らんでいくそういうような付加価値を付けていくというようなことがなければ、それを分配していくにあたっても限られたパイの中から分配をしていくことになります。職業の安定、職業生活の充実を図っていくというふうな事のためにも労働生産性の向上の観点も重要なのではないかというふうに思ってございます。それから条文の構成ですけれども、具体的に申し上げますと、まずこの条文になるとしたらということですけれども、条文につきましては、主語は国でございまして、国がこういうふうなことで国が必要な施策を講ずるというようなことになってございます。これが、誰が何をするというふうな最初の部分、それで、経済社会情勢の変化の中でというのは今の状況、経済の状況がどうだという、そのところを書いてございますけれども、そのあとに二つございまして、労働者が多様な事情に応じた就業が出来るようにすることを通じて、有する能力を有効に発揮することが出来るようにすると。施策を通じてこういうようなことを実現し、且つ労働生産性の向上を図るというようなことは二つ並列で並んでございます。こういような手段を通じて、以て以下ですけれども、こういう労働者の職業の安定職業生活の充実、経済的社会的地位の向上を図るということを目的としておりまして、更に最終的な何て言いましょう、究極な目的としては経済社会の発展と完全雇用の達成に資するというような構造になってございますので、お尋ねの点の目的なのか手段であるのかということにつきましては、労働者の職業の安定、職業生活の充実ということを実現するための法律上手段といった様な位置づけになろうかと思います。

 

  阿部分科会長

はい、久松委員

 

  久松委員

やはり、法律上の手段とおっしゃいましても、先ほど申しました通り違和感を覚えるものであります。いずれにしても先ほど申した通り、労働生産性の向上という文言がなくても、目的規定としては十分成り立つのではないのかと思いますし、もし仮に労働生産性の向上が削除できないということでしたら、例えば3の国の講ずべき施策に関する条文の中に、国は企業が労働強化や人員削減が意図的に行われないよう努める、などの趣旨の文言を明記していただかないとなかなか理解ができないということを意見として申し上げておきます。

 

  阿部分科会長

ご意見としてお伺いします。私個人の意見を、生産性に関して特にすごく詳しいというわけではありませんが、ここでいう労働生産性というのは、一人あたりの付加価値或いは一人当たりの産出物を指すわけですが、この一人当たりの付加価値或いは産出物を増やすために、確かに久松委員が言われたように、労働者の労働強化を図ったりとか、あるいは長時間残業をさせるとか、そういうことで行うケースもあるかもしれません。が、本来ここで望まれているのは、技術革新による生産性の向上であるとか、あるいは人事の配置によって適材適所に人材を配置することとか、そういった経済学の用語で言うと全要素生産性と言われますが、そういったことで生産性を上げていこうというのが、多分主旨であろうと思うんですね。ただまあこういうふうに書くと確かに久松委員や高松委員のご懸念があるのだろうなとは思います。この書き方をどうするかというのは少しまた議論していったらいいかなとは思います。が、そもそも政府が考えているのは、労働強化であったり、残業をどんどん増やして付加価値を上げようとかいうことではなくて、働き方改革です。今後の少子化で労働力が不足していって経済の成長に足かせになるようなものをどうやって取っ払っていくかということが問題なっているわけです。それを考えるとやはり多分、久松委員や高松委員が言っているご懸念はありますけれども、まあそういうことではないだろうというふうに理解いただければと個人的には考えているところです。ただあの、法的にどういうふうにそういうのを書けるのかというのは、私は良く分からないので、また議論させていただければというふうに思います。宜しくお願いします。はい、矢木委員どうぞ。

 

  矢木委員

はい、分科会長ありがとうございます。私もですね、参考資料1-1に付けていただいている部分も補足させていただきながら意見を述べさせていただきたいと思います。

生産性向上に関する3原則の全文をお付けいただきありがとうございました。労使関係の基本となる生産性3原則は、昭和30年、1955年の3月に合意された内容でございます。全文読むことはいたしませんけれども、雇用の維持・安定、労使の協力と協議、成果の公正配分という3つの所から成り立ってございます。今回は、改正にあたり労働生産性の向上が明示されるという状況に立っておりますので、それによって得られる公正な成果配分についても、法の中で明示されてしかるべきではないかというふうに思っております。ちなみに、これはあくまで参考でございますけれども、厚生労働省から出された平成24年度の労働経済の分析、いわゆる労働経済白書には、このように書かれております。「1980年以降、労働生産性が上昇を続ける一方、実質賃金はその伸びを下回って推移しており、近年においては労働生産性と実質賃金の伸びに乖離がみられることがわかる」。これは私が言っていることではなくて労働経済白書に書かれております。主な産業別にみると、とくに製造業では労働生産性の伸びが実質賃金に反映されていない。また、卸売業、小売業では労働生産性は低下しているが実質賃金はおおむね横ばいであり、サービス業では労働生産性は微増しているが実質賃金は減少傾向です。このような形の表記がある中で、法律上、方や労働生産性を記載するのであれば、加えて公正な配分についても明示を頂けないかなというのが一つ目の意見でございます。

二つ目の意見は、我が国においては、2002年から2007年にかけまして転職者が労働生産性の高い産業から低い産業へシフトしたという事実がございます。労働生産性の向上を図るということではなく、これからも雇用を吸収すべき業種を含めて生産性の向上、そして付加価値のある産業を創出、維持することを元来は目的とすべきではないかと思っております。事実、先ほども引用させていただきました労働経済白書の1年後に出された、平成25年版の労働経済白書にはこのような記載がございます。「2002年から2007年までの転職者は、前職と現職の産業比較を行うと、同一産業への転換への割合が多いものの、製造業から卸売、小売業その他のサービス業への転職、卸売業、小売業から医療、福祉その他のサービスへの転職が多いが、図表の分析がございますけれども、分析結果を踏まえると労働生産性の高い産業から低い産業への労働分配がシフトしていることが窺われる。今後の高齢化の諸課題に対して課題を解決する需要の創造が重要になってくる中で、マクロの労働生産性の向上のために、雇用を吸収する主体であるサービス業等における生産性の向上などと共に、付加価値のある産業を創出維持し、失業なき労働移動により労働移動を行い、産業構造転換を行っていく必要がある」、という文章になってございます。繰り返しになりますけれども、我が国の歴史を分析する上において、過去、労働生産性の高い業種から低い業種への労働シフトが行われたという事実をもって、この部分について今後の法律への対応についての考え方をお伺いさせていただきたいと思います。

 3番目でございますけれども、労働生産性の向上によりまして、この法律に書かれております職業の安定及び職業生活の充実が阻害されないと本当に言えるかをお伺いしたいと思います。これにつきましても、平成28年の労働経済白書を引用させていただきます。この平成28年の労働経済白書におきまして、ページは後でおめくりを頂くといたしまして71ページから72ページにかけて、いわゆる生産性の変化率に関して付加価値の変化率、就業者数の変化率、労働時間の変化率、デフレーターの変化率という形で4つに分けましてOECD各諸外国の要因分析を行っておられます。2005年から2013年までですから、思い返すとひどい時代ではありましたけれども、日本だけ分析をすれば付加価値要因の部分はほとんど寄与していない。つまり新しく起こした付加価値は労働生産性の向上にはほとんど寄与していないという一方で、もちろん当時はデフレの時代ですからデフレーターの影響が大きいのですけれども、OECD諸国の中で我が国だけ、就業者数の減少が労働生産性の上昇を押し上げたという分析をされておられます。もちろん本文の中にも少子高齢化等によるという前置きは付いておりますが、労働者数の減少も労働生産性の上昇に寄与していることが示唆されると明示をされておられます。要するに、OECDの中で唯一就業者数の減少が労働生産性の上昇に寄与する国が我が国だったということになります。

もちろん、先ほども申し上げたようにデフレに苦しんでいた時代の影響が強くあったかもしれませんが、この当時、平成25年版の労働経済白書の骨子では、この状況を以下のように書いております。「1985年から2010年までの25年間、正規雇用が減少していない一方で、労働需要側の人件費コストの削減、仕事の繁忙閑の多様の為、多くの産業で非正規労働雇用が増加し、非正規労働者比率が増加した」。2008年9月のリーマンショックや2008年年末の年越し派遣村というのはまだ私どもの記憶に新しいものでございます。製造業をはじめとして私の記憶でも団塊の世代が大量に退職されるに当たって、経営の効率化や生産性の向上の目的のもとに、企業は新しい新入社員を採用せずに広くアウトソーシングを行い、人件費分類ではなく原材費分類にカウントされる比較的安価な派遣労働者をチープレーバーとして人件費削減のもと導入していった職場の実感がございます。つまり我が国はデフレにあっては就業者数の減少が生産性向上の要因であるということを前提に労働生産性の向上があったという事実を踏まえて、なお職業の安定及び職業生活の充実が阻害されないと本当に言い切れるかをお尋ねしたいと思います。過去に学ばなければならないという部分でございます。

最後に労働生産性というキーワードについて、もちろん働き方改革にも記載されておりますけれども、だからと言って法案に盛り込む必要が本当にあるのかということは意見を述べた方もいらっしゃいますけれども、私も労働生産性という単語自体が、今般、異常に突出して増えてきていることに唐突感を覚えておりまして、法案に本当に盛り込むのかということに関しては違和感がございます。ちなみに、これから8つの数字を申し上げますのでお書留を頂ければと思いますが、平成22年は134でございました。平成23年は3でございました。平成24年は165、平成25年は52、平成26年は49、一昨年平成27年は417、そして平成28年は668という数でございます。これは、労働経済白書におきまして労働生産性という単語が出現した回数ですが、明らかにこの2年突出をしております。すぐれたアナリストの方々、もちろん省内の方ですけれども、そのような方々が分析された中にこれほど多用された時代はないということを踏まえた上で、今般の法案に本当に労働生産性という単語を法律に盛り込むことをお考え頂ければと思います。

 

 

  阿部分科会長

ありがとうございます。それでは何か。はい、どうぞ。

 

  大臣官房審議官(職業安定担当)

お話しいただきましたことより、まとめてお答え申し上げたいと思います。それでちょっと先ほどの話に戻りますけれども、まず労働生産性の向上というふうに今回概要案に書かせていただいておりますが、これはあくまでも先ほどらい話がございますように、国の施策の話であります。国の施策としてですね、人員を減らしていくとか、或いは労働強化をあおってくみたいなことは当然有り得ないわけであります。申し上げるまでもなくこれから労働供給制約ということで人が不足するような時代になるということですので、先ほどリーマン後のOECDの話がございましたけれども、置かれている前提条件が大きく異なっているというふうに思っております。具体的にじゃあ国の施策を通じてやって行くという国の施策は何なのかということでありますけれども、それは今回この雇用対策法改正して先ほど国が講ずべき施策ということで4条の方に追加をさせて頂きたいということを申し上げたわけですけれども、長時間労働の是正みたいなのを通じてのワークライフバランスを実現していくっていう話、或いは正規、非正規の均衡処遇というのを実現していくことによってそれぞれの納得感、モチベーションというのを上げていこうというような話。これらはいずれも生産性向上に必ずつながるかと言うとですね、もちろん色々ご議論あるかもしれませんが一定の条件を置けばですね、労働生産性の向上につながり得るものだというふうに思っています。それから、今人づくりということを言われておりますけれども、職業能力開発はこれから強化していくということでありますから、これもですね生産性の向上に、これはもう当然に繋がってくる話でありまして国の意図しているところは、それらの政策によってですね生産性向上につながり得るし、つながっていくだろうということであります。これをじゃあなぜ法律に明記する必要があるのかということでありますが、これは私どもとしてはですね、一つは働き方改革というのを一過性のものではなくて持続的に行っていく上においてはですね、やはりそれを動かす生産性の向上というのは不可欠な要素だろうというふうに思っています。先ほど成長と分配の好循環というのもありましたけれども、この成長と分配の好循環というのを実現する上においてはですね、やはり生産性の向上というのは原資になるものですから当然必要な物だろうというふうに思っております。職業の安定という量的なものに加えて、今回質的な職業生活の充実ということを加えるわけでありますけれども、その長時間労働の是正ですとか同一労働同一賃金みたいなことをやって行くことになるという際にそれを他にしわ寄せが及ばないようにする、そして持続的にやって行くとすればですね、それは生産性の向上というのはですね当然必要だと思いますし、そういう長期的に持続させる、あるいは好循環を実現していくという趣旨を表す上でもですね生産性の向上という要素は必要な要素だろうというふうに思っております。それから、これを書くのであれば分配のことについても言及があってしかるべきではないかということ言うことでございますが、直接分配ということはなかなか法律上はですね書きにくい部分もあるわけですが、今回労働時間の短縮、その他の労働条件の改善ということで、労働条件の改善という言葉もですね法律上盛り込みたいというふうに思っております。もちろん実際の分配がどうなるかというのは当然労使の話し合いの中で決まっていく話でございますけれども、理念上はですね、この労働条件の改善という言葉の中にですね分配の話はですね含まれ得る、含まれてくるものだというふうに思っております。それから高い方から低い方へのシフトしか生じてないじゃないかというお話がございましたけれども、これもですね生産性の向上という言葉が画に描いた餅にならないようにするためには、やはり産業政策と連携してですね労働政策を進めていくということも非常に重要な要素でありまして、今回基本方針を定めるということでこれを厚生労働省だけの基本方針ということではなくて、閣議決定をする政府全体の基本方針というふうに位置づけて必要に応じて厚生労働大臣はそのために他の大臣に要請を行うことも出来るということも入れ込みたいと思っています。そういうところに付加価値につながるようなですね産業政策、そしてそれとの連携或いは長時間労働につながるような下請取引みたいな商慣行の是正みたいな話を入れ込むことによって、より効果が上がるんじゃないかというふうに思っております。我々としては、この労働生産性の向上という言葉は、今回の働き方改革のキーワード、先ほど二つ多様な労働参加と労働生産性の向上ということで申し上げましたように、一つの大きな柱だというふうに思っておりますので、法律の方に入れ込みたいという思いでおります。ただ今日はまだ事前審査ということでございますが、また正式なご審査をいただくときにその言葉が入っているかどうかということでございますけれども、我々としては入れ込みたいと。入れ込む際には今ご指摘いただいたようなご懸念が払しょくされるように、そういう必要があると思いますので、この生産性の向上という言葉の意図するところはどういうことかというか、どういうことに我々留意するかということについてはですね、何というかわかりやすい形で同時にお示しできるようにしたいというふうに思っております。

 

  阿部分科会長

ありがとうございました。矢木委員よろしいですか。その他いかがでしょうか。はい、遠藤委員どうぞ。

 

  遠藤委員

いましがたの議論を拝見しておりまして一言申し上げたく思っております。お立場が違えどですね、やはりその多様な人材の活躍促進に向けて、その社会の実現ということであればひとつにはワークライフバランスを確保しながらですね、色々事情を抱えている方々が一層活躍できるような柔軟な働き方の選択肢の拡大といった様な事が求められる。これは異論がないところかと思います。そのための環境整備をするためには、企業は経営課題の一つとしてですね、生産性向上に取り組むことは必須であります。今、労働側がご懸念されているようなことに関連して申し上げればですね、企業の活力の源泉は人であります。従って経営課題として過重労働の防止であったり、或いは適材適所の配置、更には従業員の健康確保といったようなことは大前提であり最優先課題であるということでございますので一言申しあげさせていただきました。

 

  阿部分科会長

ありがとうございました。その他いかがでしょうか。村上委員、鎌田委員の順で。

 

  村上委員

ありがとうございます。冒頭ご説明がありましたように、今回雇用対策法について職業の安定だけではなく職業生活の充実も盛り込んで労働政策全体の施策をきちんと掲げていくという方向性については、後程いくつか確認したいことはございますが、方向性としては私どもとしても理解はするのですが、やはり労働側委員から申し上げましたように、労働生産性の向上については、若干危惧があるというところをまず申し上げたいと思います。働き方改革実行計画の中でも、労働生産性や生産性といった言葉が多用されているところでありますが、何か数値目標を掲げるという定量的なものではないのではないかと思います。気持ちの部分で効率的にやって行こうといった事が示されているという理解をしておりますが、その理解でいいのかということについてまず確認をしたいと思います。また、労働生産性の向上というものをここの法律の中に明記するかどうかということは、阿部分科会長からも少し工夫が必要というようなお話がありましたけれども、阿部分科会長、田中課長、小林審議官などのご説明を伺った限りでは、数値目標を掲げるという話ではないという印象を受けたのですが、そのようなことも今回法改正するのであれば、何らかの方法で明らかにして頂きたいと考えております。また、基本方針の策定について、この法改正の中で規定していくということですが、できれば先ほど矢木委員からありましたけれども、生産性3原則の精神や、公正な分配、また、先ほど遠藤委員も仰った、企業にとっては人が資源であるといった精神を何らかの形で示して頂くということが必要ではないかと思っておりまして、そのことについても現時点での考え方を教えていただければと思います。

 

  阿部分科会長

では事務局お願いします。

 

  総務課長

それではご質問の点にお答えをさせていただきたいと思います。まず数値目標というようなものを念頭に置いているのではないですよねということですけれども、ご指摘の通りでございます。あくまでも働き方改革実行計画等々で書かれておりますような一般的な意味での労働生産性の向上を通じて職業の安定と職業生活の充実を図っていくということにつきますので、例えば何%とかそういうようなことでそれを目指して何とかしますといったような直接のそういうことを念頭に置いた規定ではございません。また、そういったようなところ、生産性の3原則といったような、ここにあります労働生産性の向上の観点でございますとか、こういう数値目標的な物を念頭に置いていないというようなことを明らかにするべきであるというようなことかと思います。なかなか法律上書き込むということは難しいところなどもございますが、また法律案要綱を正式に諮問されます際には、そういった考え方についても一定に何らかの形でまとめてご説明をさせていただくような機会になればいいかなというふうに思っております。

 

  阿部分科会長

よろしいですか。では、鎌田委員。

 

  鎌田委員

私は国の講ずべき施策のところで2点ほど意見を申し上げたいと思います。資料NO1のローマ数字3、国の講ずべき施策でありますけれども、その黒矢印の一番目でありますが、労働者が仕事と生活の調和を保ちつつその意欲能力に応じて就業することが出来るようにするため、労働時間の短縮、その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及、雇用形態又は就業形態の異なる労働者間の均衡のとれた待遇の確保等々の施策を充実すること。ということが追加とされております。全体としてこれについて私もポジティブに捉えているのですが、ただこの多様な就業形態の普及ということの意味を少し考えてみますと、この多様な就業形態というものの中には、例えば在宅就業とかあるいはテレワークとかそういった様な非雇用型のですね就業も含まれてくるのではないかと。実際、働き方改革の実行計画を見ますとですね柔軟な働き方の中にですね、非雇用型テレワークというのもあります。そうしますとですね、こういう多様な就業形態の普及、それ自体は私は働く人にとっての働き方の選択肢を増やすということでいいことだと思うんですけれども、しかし一方では、非雇用型の中で取り分け雇用類似の働き方をしていながら労働法の適用を受けない方たち、或いは労働政策の対象とならない人たちも場合によっては出てくる可能性がると。そういうことを考えますとですね、多様な就業形態の普及にとどまらずですね、それとともに就業環境の整備も付け加えて考えていく必要があるんじゃないかと。施策において。従いまして、多様な就業形態の普及とそれから就業環境の整備というようなことでですね、この施策を考えて頂いたらいいのではないかというのが第1点で意見の第1であります。

それから、次にですね黒矢印の一番下、傷病の治療を受ける労働者等の職業の安定を図るためという文章でございますけれども、これについては雇用の継続、それから雇用管理の改善、及び離職を余儀なくされる労働者の円滑な再就職の促進を図るために必要な施策を充実することということになっております。ただ、これはこれでわかるんですが、実際に傷病の治療を受ける労働者の方たちの中で一部の方は休職をされています。いわゆる傷病休職。傷病休職に入った方が職場復帰をするということは大変大きな問題ではないかと。実際裁判例においてもですね、こういうとくにメンタル不調の方たちのですね復職ということはですね裁判においてもたくさん争われております。雇用の継続それから労働者の再就職ということの間にですね、やはりその職場復帰の円滑な推進ということがですね、施策にとっては必要なことではないかというふうに思いますし、また実際、厚生労働省もこのメンタルヘルスとの関連で職場復帰の支援プログラムを既に施策として打ち出しているところでありますので、雇用の継続の次あたりにですね職場復帰についても必要な施策を充実するということで位置づけて頂いたらより明確になるのではないかというふうに思います。以上2点です。

 

  阿部分科会長

ありがとうございました。それでは事務局お願いします。

 

  総務課長

まず1点目の多様な就業形態の関係ですけれども、鎌田委員からもご指摘のありました通り、働き方改革実行計画の中でも非雇用型テレワークのガイドラインとか働き方への支援というようなことで、幅広く今後課題を抽出しながら検討していくというようなことになってございます。当然のことながら多様な就業形態を普及していくに当たっては、それがなんていうんでしょう、しっかりとした働く場でなければならないというかそういうようなことでの環境整備も当然のことながら重要だというふうに考えてございまして、多様な就業形態を普及をするというふうな施策の中には、当然のことながらそういうような環境整備に向けて何が必要かというのを検討するといった様なことから現段階始めるというような施策も含まれてくるのかなというふうに思ってございます。それから、最後の傷病との両立ですけれども、概念的にはおそらく雇用の継続の中に、例えば育児介護休業法等々でございますと休業終わって復職をしてくるまでというのを捉えて雇用の継続というように言ってございますので、雇用の継続の中には、休職をしてその後円滑に復職をするというようなこと、雇用の継続を円滑に進めるために必要な施策を講じることの中には、当然のことながらお辞めになった方ということでないのであれば、そこのところは雇用の継続に含まれる概念であるかなというふうには思ってございますが、そういうような考え方についてはご指摘通りかというふうに思っております。

 

  鎌田委員

できれば、文言において明確化を図っていただくのが有難いなというふうに思っています。意見です。

 

  阿部分科会長

ありがとうございました。他に、はい、矢木委員どうぞ。

 

  矢木委員

3のところに第4条の部分が入りましたので、質問させていただきたいと思います。黒矢印の一番目に多様な就業形態の普及と書かれております。その次には雇用形態又は就業形態の異なる労働者間のというような形の引用がございます。用語の意味合いの確認ですが、就業形態と書かれている部分の意味合いと、この後段にございます雇用形態又は就業形態の異なるという、二つの用語、つまり雇用形態と就業形態の使い分けについて確認をさせていただけないでしょうか。

 

  阿部分科会長

はい、いいですか。では事務局お願いします。

 

  総務課長

まず前段の多様な就業形態の普及という就業形態で単独で使っております所は、雇用契約によらないような働き方も含めて広くその就業の形態というようなことで使ってございますけれども、後の方の雇用形態又は就業形態というふうにセットで使う場合は雇用対策法、前回の改正の際にちょっとそういうような整理をしてございまして、雇用対策法上セットで使われる場合は、雇用形態又は就業形態というセットで使う場合についてはパートタイム労働者それから有期契約の労働者を雇用形態で解釈をし、派遣労働者について就業形態というようなことで解釈をするというような平成19年の改正でそういうような整理になってございます。

 

  阿部分科会長

よろしいでしょうか。では、村上委員どうぞ。

 

  村上委員

先ほどの鎌田委員のご指摘の一番目の方ですと、田中課長のお答えの部分ですが、雇用類似の非雇用型の方々の働き方や就業環境の整備について、どのようにして保護を考えていくのかということの重要性は私どもも同じ認識を持っておりますが、ここで言う多様な就業形態の普及の部分の就業形態とは、例えば短時間であるとかフルタイムであるのかといった様な違いであって、非雇用まで含むというふうには理解をしていないところでございます。非雇用まで含むということであれば、まずは厚生労働省の施策として様々なことを考えていく必要があるかと思いますが、この法律の中で普及ということまで書き込むような話であるのかというと、かなり違和感を持っております。次回、法案要綱の諮問・答申の際には少し議論させていただきたいと思っております。ここは雇用労働者の話をまずは記載していると思っておりまして、働き方改革実行計画で記載されているような非雇用型の方々については、まず検討を行った上で、そこで必要があればこちらに入ってくるようなことなのかと理解しております。加えて、資料NO1の2ページ目のところで確認させていただければと思います。基本方針の策定の二つ目に、基本方針に定める事項は、その目的を達成するために国が総合的に講じようとする施策に関する基本的事項とあり、基本的事項と施策の明示については第4条でいくつか掲げていまして、今回も追加するということでありますが、それぞれの項目についてもう少し詳しい方向性や具体策を明示していくのかということが1点であります。それから、次の項目で基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ都道府県知事の意見を求めるとなっておりますが、これはどういった理由から都道府県知事の意見を求めるのかということについての質問です。加えて最後の項目ですが、先ほどから基本方針において定められた施策で関係行政機関の所管に関わるものについて必要な要請をすることができるとありますが、これは具体的にはどのようなものか例示を頂ければと思います。現在の雇用対策法30条の外国人関係で法務大臣に対して協力要請することができるというようなものがありますが、そういったことをイメージされているのかどうかもう少し例示があれば教えていただければと思います。

 

  阿部分科会長

はい、ありがとうございました。ではご質問がありましたので事務局お願い致します。

 

  総務課長

ご質問の点についてお答えをさせていただきます。第1点目の基本的事項等というのはどんなようなイメージかということにつきましては、委員からご指摘のあった通り、第4条に掲げられている施策を中心にしてもう少し細かくこうやりますというふうに書くというようなイメージのようなものでございます。それから、都道府県知事の意見ですけれども、雇用対策法に盛り込まれている規定の中には能力開発等もございますし、そういった能力開発については特に県と役割分担をしながら進めているような部分がございます。それから雇用対策につきましても、先般の雇用対策法の改正の中では、地方自治体と連携をするということになっておりますし、雇用対策法そのものが地方自治体も国に協力をして雇用対策に取り組んでくださいというような規定がございます。そういった様な観点から全体の施策を進めていくに当たっては自治体のご協力も必要であるというような考え方から、都道府県知事の意見を求めるというようなことにしているところでございます。それから、3点目の関係をする施策ですけれども、主として念頭に置いておりますのは例えば商取引の関係ですとか、重層的な下請け構造の関係ですとかそういったようなもの、ちょっとどこまで何が書き込めるかというのはそれこそ法律が成立した後に各所とご相談になろうかと思いますけれどもそういったことをイメージしております。

 

  阿部分科会長

よろしいですか。はい、ありがとうございました。その他いかがでしょうか。はい、高松委員お願いします。

 

  高松委員

ありがとうございます。1ページ目に戻りますが、第3条の基本的理念でございます。そこに労働者の能力の公正な評価というものを義務化していこうということで書き込んでいただいたことに対しては理解が出来るところでございます。ただ、私、厚生労働省と経済産業省の合同でやっております、中小企業並びに小規模事業者の働き方改革の検討会に出ているもので、この前段にございます職務の内容、職務に必要な能力等の内容を明らかにした上でということまで、かなり細かく記載されると企業によってはですね、今の人事制度を含めた制度自体をすべて見直していかないことには対応できないというような危惧がありまして、本要綱を出していく段階では、出来ればあまり細かいところまで基本理念に入れない方がよろしいのではないだろうかというのがあります。あとは個人個人におきましても、企業の中においては人事異動等もございますので、新たに付いた職における能力が上がってくるまでの間の評価をどうするのかなど、そうした細かいことも基本理念の中で考えていくような文言となると、特に中小、小規模事業者にとっては大変だなというふうに思っておりますので、その辺はご検討いただきたいと思います。

 

  阿部分科課長

はい、ありがとうございました。その他いかがでしょうか。はい、村上委員どうぞ。

 

  村上委員

先ほどの就業形態のところにも関わるので、定義について教えていただきたいのですが、1ページの2の目的規定のところで、国が労働に関し必要な施策を総合的に講ずるとなっていますが、ここでいう「労働」とは何を意味しているのかというところであります。現在の雇用対策法は「雇用」に関して記載されており、「労働」に関しとなると、理解としては労働時間や両立支援の問題などもあるため、雇用だけではないから労働という文言にしたという理解ですが、それを越えるようなものなのかどうか懸念しているところであります。それから労働者とは何を意味しているのかというところでありまして、狭くとらえるという話をしているわけではないのですが、多様な就業形態の普及との関係で部分で引っかかる部分がありますので、その労働者とは誰を意味しているのかということについてもお答えいただければと思います。

 

  阿部分科会長

はい、ではお願いします。

 

  総務課長

まずあの1点目の労働でございますが、例えばこの労働政策審議会も労働政策に関する重要事項を調査審議をするというふうになってございまして、基本的には厚生労働省の所管している事項と申しますか、いわゆる労働政策というふうなことと同義だというふうに思ってございます。それから労働者ですけれども、法律上、労働者という用語を使う場合に若干そのものによってなんて言うんでしょう概念的には、今働いている人とそれから失業者で職に就きたいと思って活動をしている人も含めたりするような場合がございますが、ここで雇用対策法の中で使っております労働者については、一般的には雇用契約を以て働く人というのが一義的な意味であるというふうに思います。ただ、条項によっては、例えば失業者が入っていたりするというようなこともあろうかと思いますし、基本的にはそういうような考えです。

 

  鎌田委員

労働者という言葉は人によってかなり幅があると思うんですけれども、今、田中課長からもご説明ありましたけれども、私の意見としては、例えば労働契約を結んで働いている方が労働者であるというのはこれはいいですよね。じゃあ例えば請負だとか委託だとかそれで働いている方たちが労働者じゃないんですかと、これは僕はおかしいと思っています。実際に請負契約、委託契約を結んでいても実質的な使用従属関係、あるいは指揮命令を受けて働いていたり何らかの支配関係、従属関係があればそれは広い意味での労働者になるし、また判例においても必ずしも契約の名称如何によって決まるわけではないと。そうすると概念がやっぱり広くなりましてですね、労働というのはそういう働き方、労働の受け手の方と働く方との間に何らかの形の雇用類似の関係があれば広くこの施策の対象になってくるというふうに私は考えておりますが、ただ、それを無制限に拡大して考えるというわけではなくて、大まかにその程度の事で労働というものを捉えたらどうかというふうに思っています。厳密に労働というものを今ここで定義をするというのは、それは僕はちょっと無理だと思うんで。実際例えば先ほどのシルバーの方たちだって、これは請負で働いているわけですよね、委託で働いている。そういう人たちを今施策の外に出しているかと言ったらそういうことはないわけですので、それはそういう意味で広く自分の労働を提供して、そしてその報酬で生活している人達を広く労働者として捉えてその労働政策の対象にしているんだというふうな捉え方で僕はいいんじゃないかというふうに思っています。それで多分個人事業主の方たちとは区別が出来てくるんじゃないかというふうに思っています。これは私の考えです。

 

  阿部分科会長

はい、どうぞ。

 

  大臣官房審議官(職業安定担当)

労働という言葉は、今先生からご指摘ございましたように、ある程度柔軟に考えられる部分があると思ってます。ただ、先ほど村上委員からもご指摘がありましたけれども、多様な就業の普及というところまで行った時にですね、これは先生からもご指摘がありましたけれども、ちゃんとした保護の在り方が議論される前からですね、普及するということはないと思うんですね。だからそこは今時点で積極的に普及を図るのは雇用型テレワークみたいなものだと思いますし、非雇用というものを、もしこの文言で普及を図るんだとすればですね、それはこの働き方の方でも中期的に法的保護の在り方について検討するということになっていますので、そういうものとのバランスを取ってやって行くんだと思います。いずれにしても、具体的にこれを受けて何をやって行くかについてはですね、いつも基本方針のところに言っちゃって恐縮なんですけれども、そういうところで具体化を図っていくと。そこで正しい姿を示してくっていうのが一つと、それから何より目的規定のところに職業の安定、職業生活の充実、経済的社会的地位の向上というのが大目的としてありますので、最後の目的はそこにあるということでご理解いただければと思っております。

 

  阿部分科会長

はい、ありがとうございました。今の点は非常に重要だと思いますが、ただし社会の流れというのはすごく早くて、いわゆるシェアリングエコノミーが急速に今進んでいるところですので、是非いわゆる雇用の外側にある、雇用されていない労働ですね、このあたりの保護の在り方ですとか、あるいは分配の在り方ですとか、そういうのは早急にどこかで考えておく必要があります。その上で今小林審議官が仰ったようなことがあるのかなというふうに思いますので、今回ここでやる話ではないですけれども、是非そういった方向で色々とご検討いただければと思いました。

その他いかがでしょうか。もしなければ本日資料NO1を中心に委員の皆様から様々ご意見を頂きました。冒頭総務課長の説明で本日法案要綱の諮問に先立つ事前の概要説明ということで説明がありました。この件については、本日の意見もありますので次回も引き続き議論を続けていきたいと思っているところでありますので委員の皆様においては宜しくお願いしたいと思います。

それでは最後に次回の日程等について事務局からご説明お願いします。

 

  総務課長

次回の職業安定分科会の日程でございますが、追ってご連絡をさせていただきたいと思います。

 

  阿部分科会長

それでは本日の分科会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録についてですが、労働政策審議会運営規定第6条により分科会長の他、二人の委員に署名を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の高松委員、使用者代表の松井委員にお願いしたいと思います。宜しくお願いします。本日もお忙しい中どうもありがとうございました。


(了)

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