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2017年6月16日 第124回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

○日時

平成29年6月16日 15:00~16:00


○場所

中央合同庁舎第5号館厚生労働省省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○総務課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第124回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。職業安定分科会長は労働政策審議会令第6条第6項により、労働政策審議会の本審に所属する公益委員の方々の中から本審に属する委員により選出されることとなっております。事前に阿部委員が選出されておりますので御報告申し上げます。以降の議事進行は阿部分科会長にお願いいたします。

○阿部分科会長 阿部でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、本日の労働政策審議会職業安定分科会を始めたいと思います。

 まず、労働政策審議会令第6条第8項により、分科会長代理を公益委員の中から分科会長である私が指名することになっております。事前に鎌田委員にお願いしておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、議事に先立ちまして、職業安定分科会の委員に新たに就任された方を御紹介させていただきます。一言御挨拶をお願いいたします。公益代表委員として、京都大学大学院人間・環境学研究科教授の小畑委員です。

○小畑委員 京都大学の小畑でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○阿部分科会長 東北大学大学院法学研究科准教授の桑村委員です。

○桑村委員 東北大学の桑村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の中窪委員です。

○中窪委員 中窪でございます。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 使用者代表委員として、三菱倉庫株式会社取締役社長の松井委員です。

○松井委員 三菱倉庫の松井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 以上でございます。また、当分科会の下に置かれております各部会に所属する臨時委員については、労働政策審議会令第7条第2項の規定により、分科会長である私が指名することになっております。配布している名簿のとおり、事前に指名させていただいておりますので、新しい名簿について席上配布をしております。

 本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の太田委員、鎌田委員、労働者代表の柴委員、高松委員、矢木委員、使用者代表の遠藤委員、河本委員、深澤委員が御欠席です。勝野委員は後ほど遅れて到着と思われます。

 議事に入ります。本日の議題は、「同一労働同一賃金に関する法整備について」です。本件については、先日開催された同一労働同一賃金部会において報告が取りまとめられておりますので、事務局より説明をお願いいたします。

○企画課長 事務局より御報告申し上げます。同一労働同一賃金に関する法整備については、本年428日に本分科会、労働条件分科会、雇用均等分科会の3つの分科会の下に新たに設置した同一労働同一賃金部会において、6回にわたる御議論を経て、69日に報告書を取りまとめていただいたところです。内容は、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備などで、資料1に基づいて報告書の内容を御説明いたします。

 表紙をめくっていただくと、69日付けで、3つの分科会の下に置かれている同一労働同一賃金部会の部会長から3つの分科会の分科会長宛ての報告の表紙が付いております。

 次のページで報告書の内容に入ります。「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」という表題の下、まず四角囲みの1番では、今回の法整備の検討に当たる背景事情、非正規雇用の現状や法整備の基本的考え方などについて、今回の議論の前提となっている働き方改革実現会議、総理を議長とする会議で、3月に取りまとめられた「働き方改革実行計画」などに基づいて記述をしております。

 最初の○では、我が国の非正規雇用者が現在、全雇用者の4割を占めるに至っていること、また、不本意非正規は減少している一方、30代半ば以降、非正規雇用を選択する層が多いといったことを記載しております。次の○では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇格差の社会的影響として、少子化の一要因、ひとり親家庭の貧困の要因、また、能力開発機会が乏しい場合が多いことから、労働生産性向上の隘路といったことを挙げております。

 次の○では、賃金などの待遇は労使によって決定されることが基本であるという労使自治の原則を確認した上で、不合理な待遇差については政策的に是正を図っていかなければいけないという考え方を示しております。また、その不合理な待遇差の是正に当たって、(1)から(3)までの3つの観点、正規雇用労働者-非正規雇用労働者双方の賃金決定基準・ルールの明確化など、3つの観点が重要であるとしております。

1ページの一番下ですが、その上で、不合理な待遇差の実効ある是正のため、1つは昨年末に政府が提示しました「同一労働同一賃金ガイドライン()」を、関係者の意見や国会審議を踏まえて、当部会、この同一労働同一賃金部会で審議して最終的に確定させていくということ。また、その実効性担保のため、司法判断の根拠規定の整備などの法改正を行うことが必要であるということを記しております。

2ページです。「なお」という○の所では、法整備と併せて、非正規雇用労働者を含めた労使間の話合いの重要性、また、中小企業・小規模事業者等に対する丁寧な支援の必要性について記載しております。

 その次の○では、働き方改革、今回の同一労働同一賃金のほか、時間外労働の上限規制の問題など様々な面で、取組をこれから進めようとしておりますが、これについて長期的かつ継続的な取組が必要であるということ。また、その次の○では、仮に法改正がなったとして、その結果、どのような政策効果が生まれているかについて検証・評価するプロセスも重要であるということを記載しております。

 次の四角囲みの2番からが具体的な法改正の内容にわたる部分です。四角囲みの2番は「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」ということで、具体的には、現在、均等待遇ないし均衡待遇と言われている規定の整備の在り方について言及している部分です。まず(1)で、直接雇用の非正規労働の類型である短時間と有期について、(2)では派遣労働について言及しています。短時間・有期の最初の○では、現行のパートタイム労働法、労働契約法において、まず均衡待遇ルールがどのようになっているかということを記載しています。3つの考慮要素を考慮して、不合理と認められるものであってはならないというのが基本ルールです。3つの考慮要素は※のマル1~マル3のとおりであり、マル1職務内容、マル2職務内容・配置の変更範囲、マル3その他の事情というのが現行法の枠組みです。

3ページです。この均衡待遇規定について、「働き方改革実行計画」でも、現在の均衡待遇規定の明確化が必要であるという提言がなされております。具体的にどのように明確化するかは「働き方改革実行計画」では触れられておりません。ここは同一労働同一賃金部会で御議論いただいたことです。その明確化の内容としては、次の「こうした課題を踏まえ」という○と、もう1つ次の「また、考慮要素として」という○が、この明確化について触れている所です。

1つ目の「こうした課題を踏まえ」という所では、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化するとしております。若干分かりにくい文章かもしれませんが、待遇と言うと、賃金、教育訓練、福利厚生など様々なものが含まれ、また、賃金と言うと、基本給、賞与、各種の手当などが含まれる概念です。これらについて現在の均衡待遇規定は、どの待遇もマル1からマル3までを考慮して不合理かどうかを判断するというのが現行法の枠組みですが、それをもう少し具体化する観点から、待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断するという考え方を条文化してはどうかということです。例えば、基本給のように各社各様の賃金決定基準があるものもあれば、諸手当の中には、例えば店長さんに支払う店長手当のように、一般的に言って店長手当であれば、店長さんの業務内容や責任を果たすことに対する報酬だと定義できるだろうと。そのように、待遇の性質によって様々な考慮要素を総合勘案することがふさわしい待遇もあれば、店長なら店長という職務内容に着目して、それが同じかどうかを専ら見ていくことがふさわしい待遇もあるだろうと、そういうことを少し条文に表現しようという趣旨です。

 次の「また、考慮要素として」とある段落です。ここでは3つの考慮要素のうち、3つ目の「その他の事情」に着目しました。「その他の事情」は個別の事案によって様々なものを事案の実情に応じて含み得る、現実的な解決を導くための重要な概念ですが、内容的に、若干中身の想像が付きにくい部分もありますので、ここでは、今「その他の事情」に含まれるものと解釈されており、かつ、待遇を決定する際の考慮要素として広く活用されていると考えられる「成果」「能力」「経験」といった要素を「その他の事情」の例示として明記してはどうかとしております。ただ、「その他の事情」が、そのことによって逆に狭く解釈されないように、例えば労使交渉の経緯などが含まれることを明確化することも併せて必要だという提言になっております。

 次の「さらに」という段落では、均等待遇の規定について触れております。現行法では、職務内容などが異なる場合に、その異なる度合と照らして不合理な待遇差にならないようにしてくださいという均衡待遇のルールと、もう1つ、職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一の場合には待遇も差別をしないでくださいという均等待遇のルールと2つありますが、均等待遇のルールは、現在パートタイム労働法のみに設けられていますので、これを有期にも適用してはどうかということです。

4ページです。この均等待遇のルールを有期契約労働者にも適用する点に関して、「なお」という、部会でも議論になった段落を付け加えております。定年後の継続雇用の有期契約労働者について、退職一時金などの存在が待遇を決定する際の勘案要素として認められるかどうかについて、現在最高裁にかかっている事案もありますので、そういったものも見守りながら、追って解釈の明確化を図っていくことが適当としております。

 次の○です。パートタイム労働法と労働契約法が別々に発展してきたこともありまして、若干条文の構造に相違がある点があります。パートタイム労働法は事業所の中でフルタイムとパートタイム労働を比較する。それに対して、労働契約法では企業単位で無期と有期を比較するというふうに比較範囲にずれがあります。この報告書では、労働契約法の方に合わせる考え方、同一の使用者に雇用される正規を比較対象とすることが適当という内容になっています。

(2)が派遣労働者です。最初の○では、現行の労働者派遣法について、均等待遇・均衡待遇という、パートタイムや有期契約労働に置かれているようなルールは現在ありませんで、賃金決定の配慮義務が置かれているのみであるということを、まず記載しております。その上で、派遣労働者の就業場所でもある派遣先の労働者との均等・均衡が重要な観点であるということで、これを原則とするという考え方が次の○で示されております。

 その上で、「しかしながら」という○のところですが、派遣労働者の場合、派遣先労働者との均等・均衡を大原則としようという方向性ですが、一方で、そのことによって派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定化するであるとか、あるいは同じ業務で大企業のある部門の補助的な業務に従事をする場合、それから中小企業である部門の右腕となって派遣就業するような場合を比較したときに、業務の難易度としては、場合によっては後者の方が難しい、複雑なことを任されるということもありますが、周りの賃金との比較という点で言えば、前者の方が賃金が高いということも起こり得ます。こういったことが起こり得る就業形態であることも考慮して、次の5ページですが、この報告では、「こうした状況を踏まえ」というところの1)として、派遣先労働者との均等・均衡による待遇改善を原則としつつも、2)労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善というものも認めて、両者を派遣会社の労使間で話し合って選んでもらうということを提言しております。

 「具体的には、以下のような制度設計とすることが適当である」としまして、1)の派遣先との均等・均衡方式による場合には、i)派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について均等待遇規定・均衡待遇規定を設けるということ。また、ii)派遣元事業主が派遣先との均等・均衡の義務を履行できるよう、派遣先から派遣元に対して、派遣先の待遇に関する情報を提供してもらうという義務を課すという点などを提言しております。

2)は労使協定方式です。ここでは、派遣元事業主が過半数組合又は過半数代表者と話し合って、派遣労働者の保護が図られると判断できる以下の要件を満たす労使協定を締結した場合としております。以下の要件として3つ挙げております。マル1が、同種の業務、例えば、経理の仕事の派遣労働者であれば、経理の業務に従事する世の中一般の労働者の賃金水準と同等以上。マル2で、派遣会社において段階的・体系的な教育訓練などによる派遣労働者の職務内容・能力の向上などを公正に評価して賃金に反映していくという仕組みを設けていく。マル3で、賃金以外の待遇、例えば派遣会社が持っている保養施設などについて、派遣元の正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。このマル1~マル3までの要件を満たす労使協定が適正に締結されている場合には、1)ではなくて2)の方式によることができるということを記載しております。その下の「ただし」書きでは、派遣先でなければ意義を果たせない、例えば、社員食堂や休憩室、更衣室の利用といったものについては、専ら1)の派遣先均等・均衡方式でやっていただく。労使協定方式の対象外とするということを記載しています。

 その下の「また」という段落では、労基法の労使協定の仕組みなども参考にしまして、締結した労使協定を派遣元において周知をするとか、労使協定の有効期間、過半数代表者の選出に関するルールなどに関して、省令等で規定する事項も含めて、労使協定の適正性確保の措置を講ずることが必要としております。

 次の「なお」という段落では、現在、労働者派遣法に基づく指針で定められていることがありますが、派遣先に派遣料金の設定に際して配慮していただくということを、法律上の配慮義務に格上げをするということです。

 次の「さらに」は、派遣先均等・均衡方式を用いるのか、労使協定方式を用いるのかというのは、派遣会社にとってはもちろんですが、派遣先や派遣会社を選ぼうとする労働者等にとっても重要な関心事項ですので、それをきちんと知り得るようにする措置を講ずるということです。

(3)ガイドラインの根拠規定の整備ですが、パート・有期・派遣に横断的にガイドラインの根拠規定について、現在政府が法律に根拠のない形でガイドライン()を示しておりますが、これを法律に基づくものとして位置付けていくための根拠規定を設けるとしております。

 四角囲みの3番は、労働者の待遇に対する説明義務の点です。具体的な内容は7ページからです。(1)で短時間と有期ですが、最初の○では、現在のパートタイム労働法で短時間労働者についてどういう説明義務がかかっているかをまとめております。i)が昇給・賞与など特定事項の文書交付、ii)が雇入れ時の待遇内容に関する説明義務、iii)がパートタイム労働者から求めがあったときの待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務です。ii)が、あなたの待遇はこういう内容ですという説明義務で、iii)は、こういう内容であるのはこういうことを考慮して決めているのですという説明義務だとイメージしていただければと思います。

 それについて、次の「しかしながら」という○ですが、有期契約労働者については労働契約法とパートタイム労働法の法律の性格の違いもありまして、このような説明義務が現在課されておりません。その点を指摘しておりますことと、また、パート・有期両方ともですが、本人の待遇に関する説明義務はパートの場合は様々整備されていますが、正規雇用労働者との待遇差がどのような内容で、その待遇差が生じている理由はどういうことなのかに関する説明義務は現在規定されておりません。

 そこで、「このため」の部分ですが、まず、パート・有期いずれについても、現在パート法で規定されているi)iii)に加えて、短時間・有期が求めた場合には正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等について説明が得られるようにするということにしております。また、併せて、説明を求めたことによる不利益取扱いの禁止についても言及しております。

 次の「なお」という段落です。これは、詳細は法の施行に当たっての解釈、運用の問題になってきますが、待遇差の説明に際して、正社員が多数いる場合も多いわけですが、誰との待遇差を説明すればいいのかということが議論になりました。部会での議論を反映しまして記述した内容としては、同一の事業所に、同一又は類似の正規雇用労働者・無期雇用フルタイム労働者がいればその人と待遇差を比較することが自然であると思われますが、画一的に法定するというやり方ではなくて、待遇差の説明を求めた非正規の方と職務内容や職務内容・配置変更範囲などが一番近いと考える正規雇用労働者あるいはその集団・グループを取り上げて、そことの待遇差を説明するという形にしてはどうかというような内容としています。

 また、8ページには括弧書きがありますが、一方で、非正規雇用労働者の側が、本当にその法律に基づく権利救済を求めて司法判断を求めていくという場合には、どの比較対象との比較において待遇差が不合理であると訴えるかどうかというのは、これは説明義務の対象集団に限られるものではないということも記載しております。

(2)は派遣労働者の関係です。派遣労働者に関しても、議論の構造としてはパート・有期と同様で、現在、まず、労働者派遣法では、現行のパートタイム労働法に近い水準の説明義務が既に課されています。その上で、派遣労働者についても、待遇差の内容や理由に関する説明義務を加えるというのが提言内容です。

 四角囲みの4番の「行政による裁判外紛争解決手続の整備等」という項目です。具体的内容は9ページからです。まず、現在パートタイム労働法でどうなっているかという記述が9ページの一番上の○です。パートタイム労働法では、行政による報告徴収・助言・指導・勧告、それから、一定の規定に限定して企業名公表の規定が設けられています。また、行政 ADRとして、労働局長による紛争解決援助や調停の規定もあります。一方、有期契約労働者については、労働契約法の性格もありまして同様の規定がありません。そこで、短時間労働者と併せてパートタイム労働法に関係規定を移行することによって、パートタイム労働法に今設けられているような行政措置を対象にしていくことが適当であるとしております。

 また、次の「なお」書きですが、現在パートタイム労働法の運用として、均等待遇の規定、つまり職務内容等々が同じ場合には差別的取扱いをしないでくださいという規定については、報告徴収・助言・指導・勧告の対象として運用しておりますが、均衡待遇規定、職務内容などが違うものに対して、例えば待遇差が10070であるとか、10080であるなどといったものについての判断は、助言・指導・勧告の対象としないという運用をしておりますが、ここでは均衡待遇規定に関しても、1007010080、どちらが是か否かというようなグレーゾーンの場合は引き続き助言・指導・勧告の対象とはしない一方で、均衡待遇規定の適用の問題であっても、例えば雇用形態が非正規であることを理由とする不支給、ある手当がある事業所においてパートの方に支給されていないとしまして、それをその会社に確認したところ、それは正社員ではないから払っていないのですというような御説明しか得られなかったというような場合などについては、助言・指導・勧告の対象としていくことが適当としております。また、行政 ADRについては、現在、均等待遇に関する紛争のみを扱うということになっていますが、均衡待遇も対象とするとしております。

(2)派遣労働者です。派遣労働者に関しても、現在の労働者派遣法では、派遣元に対しては報告徴収・指導・助言・改善命令・事業停止・許可取消しの規定があります。派遣先に対しては、報告徴収・指導・助言・勧告・公表の規定があります。これらを、今回追加する均等・均衡待遇の規定、それから説明義務の規定に関しても、これらの行政措置を適用していくというような内容となっております。当然のことながら、現在の労働者派遣法においても、違反の重大性・態様などにより、指導・助言・改善命令、最悪の場合には許可取消しといった措置を使い分けておりますので、同じように権利侵害の深刻さなどで使い分けていく運用になるものと考えております。それから、派遣労働者に関しても行政 ADRの対象としていくということ。それから、均衡待遇規定の行政指導の在り方については、先ほどと同様、雇用形態が非正規であることを理由とする不支給などは対象としていくということを触れております。

 四角囲みの5番「その他」です。パートタイム労働法には1番から4番までで触れませんでした更に細かい規定が様々あります。国によるパートタイム労働施策の基本方針の策定や、就業規則の作成・変更時に労働基準法で義務付けられている意見徴収とは別に、パートタイム労働者の代表者の方の意見を聞く努力義務や、通常の労働者への転換、正社員の募集をする場合に、募集しますという情報を事業所内に掲示してくださいなどというような規定が設けられております。これらについて、有期契約労働についても同様にこれらの規定を対象としていくことが適当であるということ。また、派遣労働者については、労働者派遣法においてパートタイム労働法と名前は違いますが、例えばパートタイム雇用管理者というものに対して、労働者派遣の場合には派遣元責任者というものが置かれていますが、名前が違っても同じような内容が担保されているものは別にしまして、該当する法的な規定がない就業規則の作成・変更時の意見徴収努力義務については新たに対象としていくことが適当としております。

 最後の四角囲みの6番、「法施行に向けて」です。これら同一労働同一賃金に対応するための法改正には、事業主の方々にとっても、待遇差の検証などに一定の時間を要すると考えられます。したがって、施行に当たっては十分な施行準備期間を設けることが必要としております。また、中小企業、小規模事業者等、各事業主への丁寧な支援も必要だとしております。「また、以下の点等については」とありますのは、今後の流れとして、現在は法律の内容について部会で御議論を頂いて報告を頂いた段階ですが、仮に、国会に提出をし、成立をしたという段になりますと、今度は法律に基づく指針事項や通達事項などについて御議論いただく場面が出てきます。そこで、論点となる、現時点で想定される主なもの、代表的なものを挙げている箇所です。報告書の内容は以上です。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 それでは、本件について御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○林委員 今回の法改正の狙いは、あくまでも正規と非正規間の不合理な待遇差を是正して、パートタイマーや契約社員、派遣社員の方の処遇を改善していくことであり、その点は、もう確認ができていることだと思います。

 ただ、今回のこの報告書にも使われている「同一労働同一賃金」という言葉が、あまりにもインパクトが強く、この言葉が独り歩きをしているという感が否めない中で、受け取る人によってはイメージが様々なのではないか。例えば日本では、長い間労使で培ってきた賃金制度を持っている企業が多くありますが、その中には年齢的な部分や勤続的な部分や、様々な問題はあるにしても、全部否定するべきではない年功的な賃金制度を持っている所も多々あると思います。

 例えば、この同一労働同一賃金を正規労働者間に当てはめた場合には、この年功的な部分を全部排除しなければならないのかとか、また、地域差によっても賃金制度を変えている所もありますので、そういった部分も問題となります。また、これは早急に改善しなければいけませんが、まだまだ男女間の賃金格差というものも実態としては残っています。男女間の賃金格差は早急に改善すべきということは間違いありませんが、この法改正の中でそういったものを全て含めてイコールにしなければならないと捉えられたときに、正規労働者間でそういった不具合というものが多々考えられるということを、私どもとしても心配しておりますので、前段で申し上げたように、この法改正はあくまでも正規と非正規間の不合理な待遇差を是正するものであることを申し上げておきたいと思います。それ以外のことに関しては、きちんとまた別の形の中でやっていかなければならないということを、皆さんで確認していく意味でも、今後、この報告書にとって条文化作業を進めていくに当たっては、この「同一労働同一賃金」という言葉を使うことなく、現場での混乱を招かないようにしていただきたいということで、一言、意見を申し上げさせていただきます。

○阿部分科会長 はい。御意見として承りたいと思います。ありがとうございます。その他、いかがでしょうか。

○久松委員 今の林委員の御意見と少し関連する部分もあるのですが、部会の議論の中では、いわゆる同一労働同一賃金を実現するためには、正規雇用労働者の賃金体系も見直さないといけないというような発言もあったと聞いています。あくまでも限られたパイを正規雇用労働者と非正規雇用労働者で奪い合うというロジックには賛同ができないというふうに思いますので、改めてここで強調しておきたいと思います。

 今回の法改正の目的は、正規・非正規間の不合理な待遇差をいかに解消していくかということでありまして、例えば、非正規雇用労働者に今までなかった昇給ルールや手当をどうやって作っていくのかというような対応が求められているものだと思っています。そこは決して間違うべきではありませんし、誤った受け止め方がされないように、政府としてもしっかりとメッセージを発信していただくべきだと考えております。また、非正規で働く方の処遇改善は、今回の法改正のような雇用形態間の不合理な格差の解消だけではなく、正規雇用への転換を進めていくことも重要であるということで、意見を表明させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。他にいかがでしょうか。

○熊谷委員 同一労働同一賃金に関する法の施行については、先ほどのご説明の中でも十分な施行準備期間を設けることが必要であるとご説明があったところですが、日本商工会議所でも、「人手不足等への対応に関する調査」の中で同一労働同一賃金制度について調査を実施したところです。同調査は、中小企業約4,000社を対象とし、約2,700社が回答したものですが、調査結果では、今回の同一労働同一賃金ガイドライン案について、「ガイドライン案について知らなかった(知っていたが、内容は未確認を含む)」と回答した割合が41.8%と最も多く、次いで「今後どのような影響が出るか不安」と回答した割合が27%となりました。同一労働同一賃金制度については企業側も非常に不安な要素がありますので、周知方法や、具体的な施行日、内容等についてどのようにお考えであるかお教えいただきたいと思います。

○阿部分科会長 では御質問ですので、お願いします。

○企画課長 御質問いただきました点ですが、今回の部会報告、部会での御議論では、具体的な施行までの期間をどれぐらいの期間必要かということには、そこまで立ち入る余裕もございませんで、部会報告では「働き方改革実行計画」の表現に倣いまして、「十分な施行準備期間が必要」という表現でまとめております。

 一方で、法の施行日をどうするかというのは、おっしゃるとおり非常に重大な労使双方にとっての関心事であると思います。今後の流れとしましては、法案要綱という、頂いた報告の内容をより条文に近い形に整理をしていく作業をして、その法案要綱をまた労働政策審議会にお諮りするという場面があります。そこで具体的に何年何月施行というものについての私ども事務局の案を示させていただきまして、それについて当審議会で御議論を賜わって、また判断をしてまいりたいと思います。

○阿部分科会長 熊谷委員、よろしいでしょうか。

○熊谷委員 はい。

○阿部分科会長 他にいかがでしょうか。特にないようでしたら、労使それぞれから御意見を頂戴しましたので、それも含めて今後、厚生労働省ではお考えいただきたいと思います。報告文案の配布をお願いします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 ただいま報告していただいた報告文案により、労働政策審議会長宛て報告することとさせていただいてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 それでは、そのようにさせていただきます。なお、労働条件分科会、雇用均等分科会については、労働政策審議会令第6条第9項及び労働条件分科会運営規程・雇用均等分科会運営規程において、部会が議決をしたときは、当該議決をもって分科会の議決とすることができると定められております。したがって、これをもちまして、私より労働政策審議会長へ報告の上、労働政策審議会長より厚生労働大臣に対する建議となります。御了解いただきたいと思います。

 それでは、事務局より今後の手続について御説明をお願いします。

○企画課長 先ほど建議を頂くことになりました同一労働同一賃金部会報告につきましては、今後、事務局の方で法律案要綱を作成いたしまして、また本分科会で御議論をお願いする予定としております。段取りについては、あらかじめ同一労働同一賃金部会において法律案要綱について御意見を頂戴いたしまして、その意見を踏まえて当分科会において御議論頂くという段取りでお願いしたいと思っております。以上です。

○阿部分科会長 予定されている議題は以上で終了いたしましたが、他に御発言はありますか。特にないようでしたら、本日の分科会はこれで終了させていただきます。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか2人の委員に署名を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の村上委員、使用者代表の森下委員にお願いしたいと思います。本日もお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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