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2017年3月27日 第20回厚生科学審議会感染症部会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年3月27日(月)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1) 新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方について
(2) 抗微生物薬適正使用の手引きについて
(3) 報告事項
    「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」の一部改正告示の公布・施行について
(4) その他

○議事

○結核感染症課長補佐 それでは定刻となりましたので、ただいまより第20回厚生科学審議会感染症部会を開催いたします。初めに、委員の出席状況を御報告いたします。本日は岩破委員、賀来委員、細山委員より御欠席の連絡を頂いております。現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立しますことを御報告いたします。また、今回より山中委員に本部会の委員に御就任いただくことになりましたので、御報告いたします。なお、本日は議題2に関しまして、薬剤耐性AMRに関する小委員会より渡邉専門委員に御出席いただいております。

 次に、事務局より資料の確認をいたします。お手元の資料を御確認ください。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席図のほか、資料1から資料3、参考資料1から参考資料6を御用意しております。不足の資料がございましたら事務局にお申し付けください。冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。

 それでは、以降の議事運営については、倉根部会長にお願いしております。よろしくお願いいたします。

○倉根部会長 はい、どうぞよろしくお願いします。それではまず、事務局から審議参加に関する遵守事項について報告をお願いします。

○結核感染症課長補佐 審議参加について御報告いたします。本日御出席された委員の方々の、過去3年度における関連企業からの寄附金、契約金などの受取状況について申告をしていただきました。本日の議題では、抗インフルエンザウイルス薬及び抗微生物薬に関した調査審議を行います。あらかじめ事務局で申告内容を確認しましたところ、荒川委員の申告において第一三共株式会社、塩野義製薬株式会社、及び大正富山医薬品株式会社から50万円超500万円以下の寄附金等の受領があったとの申告がありましたので、意見を述べることはできますが、抗インフルエンザウイルス薬及び抗微生物薬に関する議決については、賛否を表明することはできません。このほか、岩本委員から、申請資料等の作成への関与について、製品名アビガン錠に関して申請資料等の作成に密接に関与があったと申告がありました。この取扱いについてお諮りいたします。なお、企業に確認させていただいた内容は、後日ウェブサイト上で公開させていただきます。事務局からは以上です。

○倉根部会長 はい、ありがとうございます。事務局から説明がありましたが、寄附金等の受領があったとの申告については、事務局からの説明のとおりであります。岩本委員は過去に、アビガン錠の臨床試験アドバイザーをされていたということにより、申請資料の作成に密接に関与したという申告がありました。厚生科学審議会感染症部会審議参加規程第5条により、審議及び議決が行われる間、審議会場から御退室をお願いするということになります。委員の皆様にお諮りしますが、御意見いただければと思います。特にないようですので、岩本先生におかれましては後ほど御退場をお願いします。

 それでは、本日の議題を確認します。まず、議題1、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方について、議題2、抗微生物薬適正使用の手引きについて、議題3、報告事項「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」の一部改正告示の公布・施行について、議題4、その他です。委員の皆様には円滑な議事進行をどうぞよろしくお願いをいたします。

 それでは、議題に入ります。議題1、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方についてです。事務局より資料の説明をお願いします。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 事務局のほうから資料の説明をさせていただきます。資料1「新型インフルエンザ対策におけるファビピラビルのあり方について()」です。ファビピラビルの概要について説明するために、参考資料4の冒頭、6ページ程度を使って、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザ薬の備蓄とアビガン錠の概要について説明させていただいてから、資料の説明をいたします。

 参考資料4の「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について(1)」という資料を説明いたします。2ページ目、今までの抗インフルエンザ薬の備蓄方針に対する議論の背景、経緯を書いております。これは抗インフルエンザ薬の全体の備蓄方針に関する議論の背景ということです。これは昨年度に、感染症部会と内閣官房の新型インフルエンザ等対策有識者会議で、備蓄方針について議論を重ね、以下のように取りまとめられているものです。現行の備蓄方針は、「引き続き国民の45%相当を備蓄目標」にする。「ただし、近年の人口動態や市場流通の増加を鑑み、以下のとおり変更」ということで、流通備蓄分について従前400万人だったのを1,000万人にする。それから、備蓄の薬剤は多様性を持たせるということで、今までタミフル、リレンザ、オセルタミビル、ザナミビルしかなかったところを、小児用タミフルのDS、静注薬であるラピアクタ、ほかの吸入薬であるイナビル等の備蓄を進めているところです。そのほか、備蓄薬剤の割合は、市場流通の割合や重症度を踏まえることになっております。

3ページ目、備蓄の検討の際に考慮する点ということで、第1回の医療・医薬品作業班会議の資料に入っていたものです。そちらで、このような種々の条件を勘案して、備蓄の検討を進めていくということが書かれています。

4ページ目が、現在、抗インフルエンザ薬として備蓄している、ないしは備蓄を進めている薬と、本日、御議論いただくファビピラビルの所です。こちらのように、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタという商品名の薬が、既存の抗インフルエンザウイルス薬として、主にノイラミニダーゼ阻害という作用機序を持った薬が4剤、備蓄が進められております。本日、御議論いただくのはアビガンと右端に書かれている薬で、作用機序が若干異なる薬です。

 アビガンの細かい概要について、5ページ目です。こちらの薬は富山化学工業(富士フイルム子会社)が開発したインフルエンザ用の薬剤で、既存のノイラミニダーゼ阻害薬と違い、ウイルスの遺伝子複製を抑制するということで、インフルエンザウイルスの増殖を阻害するRNAポリメラーゼ阻害剤です。現時点では、季節性インフルエンザに対するヒトにおける有効性は、限定的に確立されているところです。

 一方、今まで試した毒性試験、動物の試験、マウス、ラット、ウサギ、サルですが、全て催奇形性が認められており、安全性の懸念が存在しています。平成263月に、抗インフルエンザウイルス薬として、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症が発生して、既存薬が無効又は効果不十分な場合で、国が使用すると判断した場合のみ使用することとして、薬事承認されております。添付文書上、妊婦や妊娠している可能性のある婦人への投与は禁忌とされております。

 アビガンに関して、これまで抗インフルエンザ対策でどのようにするかというところの議論について、6ページ目に記載されております。平成2769日、新型インフルエンザ対策に関する小委員会で、薬事承認条件に定められた有効性・安全性に関するデータが提示された段階で、改めて備蓄の是非について作業班で議論すると合意されております。厚生科学審議会第3回新型インフルエンザ対策に関する小委員会(平成279)に、薬事承認条件で付されている臨床試験における有効性・安全性のデータがそろい次第、引き続き備蓄の是非等について議論すると取りまとめられ、その際、重症患者に対する有効性や薬剤耐性に関するエビデンスが重要とされております。

 第12回感染症部会(平成27918)で本剤について議論の整理が行われ、薬事承認条件で付されている臨床試験における有効性・安全性のデータがそろい次第、引き続き備蓄の是非等について検討すると取りまとめられております。企業側から臨床試験における有効性・安全性に関するデータの提出を受け、厚生科学審議会新型インフルエンザ対策に関する小委員会医療・医薬作業班会議において、本剤のあり方について臨床的な観点から審議をしております。それを平成281125日から計4回開催しております。また、作業班の審議の結果を受けて、厚生科学審議会新型インフルエンザ対策に関する小委員会において本剤のあり方について、公衆衛生的観点から審議を行ったというところは、220日、38日に実施されております。

 そちらで取りまとめられた案について、資料1という形でお示ししております。こちらを説明いたします。こちらは経緯、議論のまとめ、議論のまとめをされた経緯について細かいところを補足している補足からなっております。今のところで、経緯について大体、説明申し上げましたので、議論のまとめから説明いたします。

○倉根部会長 ここから資料1でいいですか。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 ここから資料1です。資料12、議論のまとめの所から説明いたします。作業班会議における新型インフルエンザ対策における本剤のあり方の議論を基に、本委員会で以下のとおり整理しました。本剤の使用の判断・基準の1つ目です。本剤を使用する可能性があるのは、原則、感染力・病原性の強い新型インフルエンザが発生し、かつ、ノイラミニダーゼ阻害薬4(オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル)全てに対して耐性がみられるような場合ではないかとまとめられております。2つ目、国は、新型インフルエンザ発生後速やかに、感染力、病原性、抗インフルエンザ薬の耐性・感受性に関する疫学情報、ウイルス学的情報、臨床医学的情報を収集し、総合的なリスク分析に努め、速やかに本剤を使用するか否か判断する必要があるのではないか。なお、国における本剤の使用の判断を迅速にするために、専門家の意見を新型インフルエンザ発生後、速やかに聴く等の手順をあらかじめ決めておくべきではないかと決められております。

 本剤を備蓄するかどうか、備蓄の必要性ということについて、小委員会では以下のようにまとめられています。1つはノイラミニダーゼ阻害薬4剤全てに耐性を示すウイルス株が出現するリスクは低いが、出現する可能性は否定できないため、備蓄している既存のノイラミニダーゼ阻害薬と作用機序の異なる本剤は、既存薬とは別に備蓄する必要があるのではないか。2つ目、本剤は市場に流通しておらず、製造に数箇月掛かることから、製剤として備蓄し、一定量は直ちに備蓄を実施する必要があるのではないか。3つ目、本剤は胎児における催奇形性が懸念される薬剤であることから、厳格な流通管理を行いつつ、必要時には迅速に供給するため、国が備蓄するべきではないか。なお、保管はリスク分散及び迅速に供給できるように調整を行うべきではないか。4つ目、備蓄量は、以下の投与対象者を踏まえて検討してはどうかとしております。

 新型インフルエンザ対策における投与対象者です。1つ目、本剤の投与対象者は、患者のリスク・ベネフィットを考慮しつつ、免疫抑制状態にある患者等のハイリスクグループの成人で、かつ重症患者及び重症化することが予想される患者に限定するべきではないか。なお、本剤の催奇形性を踏まえ、妊婦への投与は禁忌とするべきではないか。また、小児に対する本剤の安全性及び有効性については未確認であることから、現時点では小児に使用するべきではないのではないかとまとめられております。2つ目、本剤の安全性・有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生初期は感染症指定医療機関に入院した患者に限定するべきではないかということです。

 本剤を使うに当たっての診療ガイドラインの整備や知見の集積の必要性についても取りまとめられております。1つ目、本剤の催奇形性等の安全性に懸念があることや、現在までに得られている安全性及び有効性の知見を踏まえて、新型インフルエンザ発生前に、新型インフルエンザ発生時の使途、投与対象者、投与方法を示す診療ガイドラインを作成すべきではないか。2つ目、本剤の安全性及び有効性の臨床的な知見が限られていることから、新型インフルエンザ発生後速やかに、安全性及び有効性の知見・情報を集積する体制(臨床試験等)を整備し、新たに得られた知見・情報を基に、診療ガイドラインを適宜見直すべきではないかとまとめられています。

 このようにまとめられた背景として補足する事項について、2ページの下に示してありますので、概要について説明いたします。1つは、本剤は平成263月に抗インフルエンザ薬として、新型又は再興型インフルエンザ感染症が発生して、既存薬が無効又は効果不十分な場合、かつ、国が使用すると判断した場合のみ使用することとして薬事承認されていますが、催奇形性の懸念や限られた安全性及び有効性に関する知見等を踏まえると、現時点ではノイラミニダーゼ阻害薬に耐性のあった場合のみに、患者に投与が行われる可能性があるということです。※の所で、提出された臨床試験の概要が示されております。

 また、耐性についてです。作業班、小委員会のほうで御議論いただいたタミフルとラビアクタについては、季節性インフルエンザの耐性ウイルスが極めて少ない割合ではあるが既に出現している一方、現在ではリレンザとイナビルの耐性ウイルスはかなり出にくいということで、4剤耐性は非常に出にくいという現状がある状況です。一方、耐性ウイルスであっても、抗インフルエンザウイルス薬に対する感受性低下の程度が低い場合など、臨床的効果に大きな違いがない場合があるということで、使用に際しては、疫学、ウイルス学、臨床医学的な知見を総合的に勘案することが必要だと、御意見を頂いております。

 一般にですが、多剤耐性ウイルスというのは、薬剤に耐性化した遺伝子変異の影響で、野生株に比べて感染伝播効率が低下する。そのため、多剤耐性ウイルスが自然発生する場合を仮定すると、複数の薬剤耐性遺伝子変異に加えて、感染伝播効率の維持のための新たな遺伝子変異が必要であると。これらの複数の遺伝子変異が短期間で起こる可能性は低いことから、初めから多剤耐性ウイルスが突然流行する可能性は低いと考えられています。一方、バイオテロ等により人工的に作られた場合などにおいても、初めから多剤耐性ウイルスが発生する場合も想定すべきであるといった御意見を頂いております。

 投与対象者の議論につながるところですが、免疫異常症や免疫抑制剤を投与している患者、いわゆる免疫抑制状態にある患者さんは免疫機能が非常に低下していますので、体内のウイルスが排除されにくく、ウイルス増殖が長引くということで、抗ウイルス薬投与下で耐性ウイルスが出現しやすい。一般的に耐性ウイルスは出現当初は伝播能力が低く、直ちに拡大するとは考えにくいのですが、まれに感染伝播能力を補完する別の遺伝子変異を獲得して、広く感染伝播する可能性は否定できないといった御意見を頂いております。

 本剤の使用の判断については、安全性・有効性に関する知見が限られていることから、慎重に行うべきであると。その慎重に判断することに対して、新型インフルエンザ発生初期に、新型インフルエンザ対策に関する小委員会等に属する専門家において、疫学、ウイルス学、臨床医学的な観点から総合的なリスク分析を行うことが重要ではないかと言われております。

 こういった議論を踏まえての備蓄の必要性です。耐性ウイルスの出現への対応として、多種類の薬剤や本剤のように作用機序の異なる薬剤の存在は、臨床的観点から重要と考えられております。また、本剤は平時には流通していませんし、ほかの抗インフルエンザ薬もそうですが、製剤化に数箇月掛かる可能性があるということで、新型インフルエンザ発生時に本剤が必要とされた場合においては、本剤を使用する医療機関への供給が適時・迅速に行われるよう、危機管理に適した保存・流通体制を整備する必要があるという御意見を頂いております。また、本剤のみならず、ノイラミニダーゼ阻害薬と作用機序の異なる薬剤は開発が重要ですので、進行している臨床試験の開発状況については、引き続き今後の新型インフルエンザ対策に資するかどうか注視する必要があるという御意見も頂いております。

 投与対象者についてです。本剤は抗インフルエンザウイルス薬として一定度の有効性が期待できるという御意見を頂いております。一方で、本剤は、ほかに市場に流通しているような多数の投与実績がある既存の抗インフルエンザ薬と比べて、安全性及び有効性の知見が少なく、現時点においては、投与対象者についてはリスク・アンド・ベネフィット・バランスを考慮して限定すべきという御意見を頂いております。特に免疫抑制状態にあるインフルエンザ患者は、免疫状態が低下していることから、ウイルスが排除されにくく、体内でのウイルス増殖が長引くことがあるため、耐性ウイルスが出現しやすい。また、免疫機能が低下していることから、ウイルスがより増殖・浸潤して、肺炎等が重症化する可能性が高いと考えられております。

 今まで実施した動物試験、毒性試験(マウス、ラット、ウサギ、サル)全てで催奇形性が認められており、本剤を妊婦に投与した場合、胎児に対する催奇形性が最も懸念される問題ということです。妊婦は、一般に、インフルエンザウイルスに感染すると重症化しやすいことが分かっておりますが、本剤の胎児に対する催奇形性のリスクを上回る治療効果は現時点では確認されていないことから、原則、本剤の妊婦への投与を禁忌にすべきと御意見を頂いております。なお、本剤の胎児に対する催奇形性については、知見が限られている現状では、妊娠初期だけでなく、妊娠後期まで考慮すべきという御意見を頂いております。

 小児についても、本剤の安全性及び有効性は未確認ということで、現時点では成人に対してのみ投与を考えるべきと御意見を頂いております。

 ハイリスクグループへの重症化予防効果、重症患者への治療効果や粉砕・懸濁等の通常の経口投与以外の投与方法における安全性・有効性については未確認ということで、使用する際には留意が必要だと。投与量が多いところに懸念点があるということす。

 このように現在、本剤の安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生初期における本剤の供給は、新型インフルエンザに対する診療が適切に実施され、安全性及び有効性に関する知見の集積が適切に行われるよう、感染症の専門家が従事しており、感染症に対する診療体制が整備されている医療機関である感染症指定医療機関に限定するべきではないかという御意見を頂いております。

 こういったことを踏まえて、実際に診療する現場への対応として、診療ガイドラインや知見の集積の必要性についても取りまとめられております。診療ガイドラインについては、本剤の安全性と有効性を踏まえて、事前に診療ガイドライン等で本剤の投与適応者や投与方法等について、具体的な指針を示す必要があるが、個別の患者の状況に応じた迅速な治療の必要性を踏まえ、医師の裁量に十分留意した上で、診療ガイドラインの位置付けを決定する必要がある。

 本剤の安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生前に作成される診療ガイドラインでは、投与対象者を限定すべきと考えるものの、新型インフルエンザ発生後に得られた新たな知見・情報をもとに、投与対象者を広げるかどうかも含めて、本剤の適切な使用方法について検討し、パンデミックが発生した後であっても、可及的速やかに診療ガイドラインの改訂にこういった情報は生かすべきだといった御意見も頂いております。このような御議論を踏まえて、先ほどの議論のまとめをされたところです。説明は以上です。

○倉根部会長 今、事務局から説明いただきましたが、新型インフルエンザ対策に関する小委員会の座長をされておられる岡部先生から、補足あるいは御意見を頂ければと思います。

○岡部委員 岡部です。今の御説明で、もうほとんど委員会の結論は出たわけですが、小委員会は大久保先生を委員長とするワーキンググループで技術的な検討が行われて、それを小委員会で再度、検討したことになります。基本的なところは先ほど事務局からお話があった全くそのとおりですが、しばしば誤解を受けるのではないかというのは、現在、備蓄されているタミフルとかリレンザといった抗インフルエンザウイルス薬に置き換わるものでは認識されていないと。つまり、臨床試験も実際の効果・安全性といったものも、ある部分は明確ではなく、限られた知見でやっているので、それほどの、今、流通しているものに代わるものではないということになります。投与対象者についても、催奇形性は非常に問題になっており、これも先ほど申し上げているように、広く多くの人にどうぞというわけにはいかないので、どうしても使用せざるを得ないような状況となると、重症になることが予測される患者さんが優先的であろうというところが議論になりました。

 したがって、初期の段階で備蓄として使うとすると、一般の先生方にたくさん使っていただけるというものではなくて、それなりの重症者が集まって、なおかつ感染症に関する造詣の深いというか、慣れていらっしゃる先生の所でお願いするということになると、感染症の指定医療機関が妥当ではないかと、そのような議論が行われております。

 もう1つは、現在の段階でこれが備蓄ということになるわけですが、科学の発展その他によって、今後新たな薬剤が出てくるわけなので、そのときにはまたそれについて新たに検討するということで、これが未来永劫続くわけではないというのは当然です。

 備蓄量のディスカッションも少しはやったのですが、実際の量は、1つは今、西浦班のほうで被害に関する想定と言いますか、シナリオの見直しをやっているので、そのようなものによる可能性はありますが、これは今日明日、出来上がるのではないので、それができたときには、また全体の見直しということになるけれども、現在のところは今の状況をベースにして判断することになります。ただ、最終的な量等については、例えば製剤能力であるとか、それこそ予算の問題であるとかいうところにも関わるので、その辺は委員会ではなくて、ほかの場でのディスカッションにするということが小委員会で話し合われたことになります。以上です。

○倉根部会長 どうもありがとうございました。ただいま岡部小委員会委員長からの御説明を頂きました。それでは、審議を開始したいと思うのですが、ここから議決が終了するまで、岩本委員には御退室をお願いすることになりますので、よろしくお願いいたします。

                                 (岩本委員退室)

○倉根部会長 審議を開始したいと思いますが、これまでの事務局、それから岡部先生からの説明に関して、御意見、あるいは御質問がありましたらお願いします。

○山田委員 事前に質問があればと何度も言われたのに申し訳ないです。確認なのですが、最初に御説明いただいた参考資料46ページ目の上から2つ目のビュレットの最後の行、「重症患者に対する有効性や薬物耐性に関するエビデンスが重要とされた」とあります。この「重症患者に対するエビデンス」というのは、提出されたのでしょうか。

○倉根部会長 岡部委員どうぞ。

○岡部委員 実際にはパンデミックが起きていないというか、新型インフルエンザなるものがないなかで、実際には患者さんがおられないので、したがって治験も行われていないということになります。一般のインフルエンザに対しての重症はどうかということになると、使用対象が今の時点でも限定されているのと、製剤としては目の前にないので、重症患者に対する治験というのも多分ないだろうと思います。

 ただ、委員会としては、今後更にこういうものが使用されるということであるならば、本来であるならば、チャンスを見て季節性インフルエンザをモデルにしたような形でも、治験を行うことが望ましいという話は行われました。

○倉根部会長 よろしいですか。ほかに御質問、御意見はいかがでしょうか。

○廣田委員 この催奇形性は当然、前臨床試験からの結果だと思うのですが、小児に対する使用は、安全性の上からかなり控えめな意見が出ています。臨床試験での安全性試験というと健康成人でするわけで、健康成人の結果で小児には使わないほうがいいのではないかというところの話の筋書きのつながりようが、ちょっと分からないのです。

○倉根部会長 ここは事務局ですか。岡部先生ですか。

○岡部委員 小委員会のほうで話したのでは、大人において危惧される催奇形性、通常の副作用については大きいものは見られていないというのがありながら、しかし小児は治験が全然できていなくて、効果も含めて安全性のデータが全くないのに、これを更に小児に使うというのは、委員会としてはリコメンデーションができなかったということになります。

○廣田委員 そこをお伺いしているわけです。通常、安全性試験は健康成人でやって、健康成人の結果から一応、安全性は判断しますが、そのときにこれは小児には使わないほうがいい、小児には危ないのではないかという話は、普通は余り出てこないのではないかと思うのです。これは臨床試験と前臨床試験の結果を組み合わせたような考察がなされた結果なのか、その辺を疑問に思ったものですから。

○倉根部会長 分かりました。事務局から何かありますか。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 事務局のほうから追加で説明申し上げます。まず、1つは小児で用量などについて臨床試験が全くされていない、安全性も含めて臨床試験がされていないということが1つと、参考で行われた幼若動物の臨床試験で、完全に駄目とかそういうわけではないのですが、懸念するような事項も少しあったということで、現時点では推奨するという形にはならないのではないかという御意見は、小委員会、それから作業班のほうで頂いたように記憶しております。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。

○調委員 4剤耐性に備えるということだと思うのですが、資料13ページ目の補足の意見の2つ星印がありますが、この最初の所では要するに耐性を獲得したウイルスは安定性が悪くて、増殖性、感染性が低いので、これが流行する可能性は低いという意見がある一方、次の意見では、まれに感染伝播能力を補完する別の遺伝子変異を獲得し、広く感染伝播する可能性は否定できないという、矛盾するというか、違った2つの意見が出ていると思うのです。抗インフルエンザ薬耐性のウイルスが感染性を獲得して流行した事例はAソ連型だけであって、それはH275Yの変異なのですが、H275Yの変異は、タミフルとラピアクタには耐性になるのですが、構造の違うリレンザとイナビルは気質であるシアル酸の構造により近くて、ノイラミニダーゼの疎水性ポケットの所に入る部分の構造が違うので、その2つに対する耐性獲得は非常に考えにくいと思うのです。

 小委員会の考え方として、どちらが正しいのかというのは、広く流行するようであれば、かなり備蓄も必要であると思いますし、多剤耐性の患者さんが発生することもかなり考えておかなければいけないのですが、流行の懸念がそれほど強くないということであれば、免疫力の弱い患者さんに対して、タミフルを使って、かつリレンザも使ったときに、患者さんの中で耐性を獲得したウイルスが増殖して、その患者さんに対する治療だけを考えればいいということになるので、小委員会でその辺りの議論はどのようになされたのかをちょっとお伺いしたいのです。

○倉根部会長 ここは岡部先生にお答えしていただいてよろしいですか。

○岡部委員 おっしゃるように、基本的には耐性ウイルスによる流行というのは、最初からドカンという形では流行しないだろうと。ただ、おっしゃるような、その人の中で変異が起きて使用ができなくなったときには、まず使用対象になるだろうと。ただ、そのために耐性に関するサーベイランスをちゃんとやらなければいけないわけですが、遺伝子情報はもちろん必要ですが、感受性として実際に効果があるのか、ないのか。それから、今までも耐性があったものについても、実際の臨床上は効果が残っているということは、ほかの例でもあるので、そういったところを総合的に判断する必要はある。だから、何か1つがあったら、すぐに切り替えるということではないと思うのです。ただ、臨床の場において、耐性がありそうだというときに、使える薬がありそうだということであれば、それは使用する可能性がある。それが備蓄の意味になると思います。ただ、それによって、今度は備蓄量の話になってくるわけですが、そこはいろいろな考えを持って、これから判断していただきたいというところになります。そんなお答えでよろしいでしょうか。

○倉根部会長 ありがとうございました。山田先生どうぞ。

○山田委員 先ほどの廣田委員からの御質問と関連するのですが、結局、対象者をハイリスクグループに絞っておられると思うのですが、そのハイリスクの人たちを免疫抑制の掛かった人たちに関しても治験は行われていない、健康成人でしか行われていないと思うので、ここにも書いてありますが、安全性あるいは有効性が全く不明にもかかわらず、一方、小児は非臨床のデータからリコメンドしないとしておきながら、ハイリスクグループをリコメンドするところの論理が、私にはなかなか受け入れにくいなというところがあるのですが、いかがでしょうか。

○倉根部会長 ここは岡部先生、よろしいですか。

○岡部委員 もう1つ、ちょっとずれてしまうかもしれないのですが、例えば妊婦さんへの使用をどうしようかというのも、当然、議論になったのです。委員の中にはリスクがあっても、それを上回るベネフィットがある場合には、使うべきではないかという意見を持っている先生もおられます。ただ、コンセンサスとしては治験をやったところはあり得るけれども、その中で更に通常のインフルエンザでも正常にリカバーしてくる人が多い中で、ほかの病気でも経験的には免疫異常症のほうが重症になりやすいし、ウイルスの排泄も長引くということであれば、先に治療する対象になるのではないか。そのようなことは議論されました。ただ、厳密に重症者に対する治験が行われているのかということは、まだそこまでには至っていないので、治験としては不十分だと思います。それが一方では委員会の中で、治験というのは費用であるとか、対象の限定とか、いろいろ難しいこともありますが、委員会としては、できれば今後の使用がより納得がいくような形でできるためには、治験をやってもらうことが望ましいと。ただ、治験をやらなければ、これで備蓄がいかないということでは議論が進まないので、備蓄はある一定量は必要だろうと。それがコンセンサスになります。

○倉根部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、御意見はありますか。私から1つ聞いてよろしいですか。これはルールの話だと思うのですが、今回、ここでOKになり、上の委員会でOKになり、備蓄したとして、これを使用した場合の副反応に対する補償というか、そこはどうなるかということと、通常の枠組みでやるのかということ。それから、例えば幾つか禁忌というのを置いたときに、でも使ってしまったというか、いろいろな理由で使ってしまった。そのときに副作用が出た、あるいは催奇形性が出てしまったというときの補償というのは、どのようになるのでしょうか。もうルールが決まっていれば。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 現時点で流通していませんので、決まっているものではないですが、これは一般の抗インフルエンザと同様に流通した場合に、例えば副作用の健康被害救済の対象になるか、ならないかといえば、通常はなるものと考えております。

○倉根部会長 分かりました。あと、禁忌ということが書いてあるにもかかわらず使ってしまって、そこで出たものに関してはどうなるのですか。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 これも一般論の話ですが、通常、禁忌となっていた場合に、添付文書で禁忌となっていたからといって、必ずしもそれが不適切な使用であることを示すとは限らないので、それはケース・バイ・ケースで判断されることだと思います。ただ、どのような禁忌でも、禁忌と書いてある所にある程度の理由がちゃんとありますので、それを超えて妥当性をちゃんと示して使われたというものがないと、当然ながら普通の健康被害救済では対象にならない場合もあります。そういった意味で、適切にいろいろな情報を踏まえて投与いただくことが大切なのかなとは思っていますけれども。

○味澤委員 感染症指定病院に勤務する者としては、エビデンスがほとんどない中で、あり方を考えるとすれば、こういったものにならざるを得ないと思うのです。小委員会の皆さん、大変苦労なさったのではないかと思いますので、それを意見として言わせていただきました。

○倉根部会長 ありがとうございました。まず、調先生から御意見を頂けますか。

○調委員 先ほどの補足の所に書いてあることの続きなのですが、バイオテロの可能性です。先ほども言いましたが、4剤耐性のウイルスが出現する可能性は非常に低いと。それを材料にして、バイオテロを企てるというのは、何か余り効率の良い方法ではないような気がするので、そこまで考えてそれに備えておく必要があるのかどうかというところが若干気になったのですが、どのように考えたらいいでしょうか。

○倉根部会長 ここはいかがでしょうか。先生、これは議論がどうやって進んでこの文言が出てきたかというような質問でしょうか。それとも。

○調委員 そうですね。補足とはいえ、一応、小委員会の中の意見として出てきているということですので、その背景にある考え方を知りたいということです。

○倉根部会長 ここについては、岡部先生お願いします。

○岡部委員 ちょうどバイオテロの話が出たのですが、バイオテロ及びバイオセーフティ上の問題で漏れてしまったといったことがSARSのときがありました。そのような事故的なことも含めて、使い方として、現在、天然痘のワクチンが備蓄されているのですが、考え方としてはそういったような形であって、冒頭に申し上げましたように、ちょっと具合が悪いからタミフルに置き換えるというものではないというのが、委員会での議論の最終的なコンセンサスです。

○倉根部会長 調先生、よろしいでしょうか。そういう経過であったということです。

○調委員 分かりました。天然痘ウイルスなどは既存のウイルスとして存在するわけで、多剤耐性の高病原性型の新型インフルエンザが実験的に作られる可能性は低いような気がいたします。

○岡部委員 もう既に事務局から説明があったのですが、念のためです。地域のほうからは、この備蓄は国がやるべきであって、現在の備蓄のように地域が分担をするとか、地域がそれを分配するということではなくて、備蓄をする場合には国が責任を持ってやってほしいというのが、これも委員会で、1つ強調されたことでもありました。

○倉根部会長 この点、事務局から何かありますか。今の強調されたという事実で大丈夫ですか。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 事務局のほうから状況について、追加で説明申し上げます。この薬については、迅速に供給するという責任と、もう1つは厳重な管理をすると。催奇形性が非常に懸念されるところで厳重な管理をすると、相反するものを実際にやらなければなりませんし、平時には流通しているものではありませんので、そういったところを平時に流通しているタミフルなどの市場の枯渇している分を補完するような、通常の都道府県の抗インフルエンザ薬の備蓄とはまた位置付けが違うであろうということで、国が責任を持ってやるべきではないかという御意見を、委員会のほうで複数頂いております。

○倉根部会長 ほかに御意見、御質問はありますか。いろいろ重要な御意見、御懸念を頂きました。小委員会での話も、議論の流れも説明していただきましたし、また事務局からの御説明もありました。それをまとめてみますと。

○岡部委員 もう1つ、これをやるときに、医学的な議論で、あるいは科学的なところで議論をした上で決定する必要があるだろうということですので、どこかのところで突然ポンと決めるのではなくて、使用に当たっては国の中のそういうことを議論する委員会ができるのか、あるいは今の委員会のどこかを応用するのかはちょっと分かりませんが、そういう1つの専門家集団で、きちんとした結論が付けられるようにして、そこがリコメンデーションを出すという形にしてほしいということも小委員会の議論でした。

○倉根部会長 そこはいかがでしょうか。科学的な議論を常に踏まえて、今後の進歩もあるでしょうし、その時点での考え方もあると思いますが。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 小委員会のほうでも、そのような御議論を受けて、委員の先生方から、現状は例えば感染症部会の下にある新型インフルエンザ対策に関する小委員会のような、新型インフルエンザに対する専門家の先生方がそろっている所で御議論いただくのがいいのではないかという御意見も頂いていますので、そういった形で検討を進めていこうと思っております。

○倉根部会長 仕組みは全く固まっていないけれども、そういうことは考えつつ進めているということですね。

○新型インフルエンザ対策推進室ワクチン専門官 そうです。

○倉根部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。種々御意見を頂きましたが、特に対立といいますか、ここは大きな問題だというものが、今残っているということではないかと思います。御意見を今後生かしつつ、状況によっては、またここの委員会への報告もあろうかとは思いますが、まず今回は、1については感染症部会として了承するということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、感染症部会として了承するということにしたいと思います。岩本先生に御入室いただきます。

                                 (岩本委員入室)

○倉根部会長 岩本先生ありがとうございました。それでは次の議題に移ります。議題2、抗微生物薬適正使用の手引きについてです。事務局より資料の説明をお願いします。

○結核感染症課長補佐 事務局より説明します。資料2を御覧ください。この感染症部会の下に設置された薬剤耐性に関する小委員会、その下に作業部会が更に設けられまして、抗微生物薬適正使用の手引きの第1版というものが作成され、36日の小委員会で了承されたというものです。

 内容を簡単に説明します。1枚めくって目次です。全体の構成は、はじめにというイントロダクション、そして総論、これは抗微生物薬適正使用の考え方に関する解説です。そして、今回の第1版で取り上げた感染症が急性気道感染症、いわゆる風邪でまとめられることの多い感染症ですが、それが第3章です。もう1つが急性下痢症というものです。なぜこの2つの感染症を選んだのかも含めて述べているのが、ページをさらにめくり、はじめにという第1章です。 こちらには、抗微生物薬の適正使用の手引きを作成するに当たった経緯として、皆さん御存じの薬剤耐性に関する問題が、国際的な公衆衛生的危機と言われておりまして、我が国でも昨年、薬剤耐性対策のアクションプランをまとめたところです。その目標の1つに、抗微生物薬の適正使用を進めることによって必要な状況をより厳密に適切に使用するということで、広域抗菌薬の使用を減らし、薬剤耐性を改善させようということを目標として掲げておるわけです。

 我が国の抗菌薬の使用の状況を見ますと、外来診療における経口の抗菌薬の使用割合が90%以上を超えていて、極めて特徴的です。更にその中でも、広域のセファロスポリン系の抗菌薬、フルオロキノロン、マクロライドといったような経口の広域抗菌薬の使用割合が多いというのが特徴です。そこで、一般の外来でしばしば抗菌薬が必要以上に使われている場面が比較的多く想定される2つの感染症、もちろんその他にもたくさんあるとは思いますが、その中で一般の外来で遭遇しやすい急性気道感染症と急性下痢症の2つを選んで、まず第1版という形で作成したものです。

2ページ(3)に手引きの対象を示しております。特に、先ほど申し上げたような経緯に従いまして、主に外来診療を行う医療従事者の方を対象にしております。その中で、抗菌薬の使用が必ずしも必要ではない、いわゆる基礎疾患のない軽症の方を中心に考えております。複雑な背景をお持ちの方であるとか、より専門家の意見が必要になる場合というのは、それはこの手引きの主眼ではないということで、この手引きの内容からは割愛している状況です。そういうものを踏まえて総論以降を見ていただきたいのです。

4ページに総論です。こちらは4ページから6ページまであります。これは抗微生物薬適正使用の概念を解説しているものです。

5ページには、作業部会で議論がありながら、結果的に掲載したのは、感染症の予防に関する啓発も必要だろうということで、手洗いやワクチン、咳のエチケット等についても記載したということです。ここまでが総論の部分です。

7ページからが急性気道感染症に関するものです。もう1ページ開いていただくと、この手引きの考え方というものが分かりやすいかと思いますが、8ページの図19ページの上方にある図2、この辺りで、いわゆる急性気道感染症、あるいは風邪症候群という一くくりにされやすい感染症を、より細分化、診断をより一歩進めて、感冒、急性鼻副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎ということで診断を一歩進める。感冒というのはウイルス性ですので抗菌薬は必要ないであろう。鼻副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎それぞれに関しては、状況に応じて、あるいは想定される起炎菌、起炎微生物に応じて抗菌薬が必要になるという考え方とか、診断の進め方をイメージで解説しています。そのような各感染症の説明が8ページから11ページまで続きます。

12ページ、診断及び治療の手順をフローチャートの形で示しております。図3以降が治療法になります。後ほど御審議を頂きたいのは、特に、(4)の治療方法にある太い四角で囲ってある部分でして、それぞれの診断に応じて推奨事項としてまとめてあります。12ページには感冒、13ページには急性鼻副鼻腔炎、15ページには急性咽頭炎、17ページには急性気管支炎に関する推奨が、それぞれ四角で囲って書かれております。

 この手引きのもう1つの特徴は、この抗菌薬あるいは抗微生物薬を処方しなくてよいことを、患者さんあるいは家族の方に理解して御納得いただかないといけないということです。抗菌薬を投与しない場合に、どういう点に注意しないといけないのかに関しても、御理解いただかないといけないということで、18ページに、患者様への説明で重要な要素というものがあります。これも表5の形でまとめてありますが、本文で詳しく解説もしております。

19ページから20ページが、患者様への具体的な説明の例です。あくまで例ではありますが、感冒の場合、鼻副鼻腔炎の場合、そして20ページには、薬剤師から説明する場合の例を載せております。ここまでが急性気道感染症です。

21ページからは急性下痢症に入ります。大きな構成としては、先ほどの急性気道感染症と同様です。最初の数ページで、急性下痢症の成り立ちや疫学等々の説明が書かれています。

24ページ、ここからが治療になります。25ページには、先ほどの急性気道感染症と同様に、フローチャートの形で診断及び治療の手順というものが、イメージとして分かりやすいように示されています。急性下痢症の治療は、24ページが急性下痢症全体的な話、26ページにはサルモネラ腸炎及びカンピロバクター腸炎に関する治療が、それぞれ推奨事項として書かれております。

27ページの(v)腸管出血性大腸菌、EHEC腸炎といったもの、これも診断としては1つ可能性としてはあるのですが、こちらに関しては、委員の先生あるいは学会からの御意見等々を踏まえますと、抗菌薬の使用、不使用、いずれに関しても推奨できる事項がないということで、ここは解説のみになっております。

2829ページは、先ほどの急性気道感染症と同様に、患者さんへの説明に関する注意点及びその説明の例を載せております。ここまでが手引き第1版の本文です。

30ページ以降33ページまで、これは抗菌薬適正使用そのものの、あるいはこの手引きを使って、抗菌薬を使う、使わないという判断をするという全体的な考え方について、患者様や家族の方に御理解いただくのを助けるために設けたQ&Aです。

34ページ、これは抗菌薬の延期処方と申しまして、初診時に抗菌薬を処方せずに、一旦、数日待っていただき、その上で再度受診して判断するという1つの方法論について解説したものです。

3536ページ、これは、この手引きに沿って診療するときにチェックシートとして活用いただけるようにということで、参考に添付したものです。以上で全体的な手引きの説明をさせていただきました。

 全体的としての補足です。当初想定していたものよりも、かなりエビデンスの収集をたくさん行って、作業部会の方に非常にボリュームの多い、当初の想定よりも随分とボリュームの多い手引きとなってしまいましたので、ベッドサイドで使う上ではこれではちょっと多すぎるのではないかという意見がたくさん出ました。実際には、ベッドサイドで使えるようなコンパクトな概略版というものも、この本文、本篇と言いますか、これが完成後にそういう概略、コンパクト版、ハンディ版のほうを作成していく計画を立てているところです。以上で、手引きについての説明とさせていただきます。

○倉根部会長 ありがとうございます。それでは、薬剤耐性に関する小委員会の委員長をお務めいただいております渡邉先生、追加やほかに御意見を頂ければと思います。

○渡邉専門委員 ありがとうございます。この薬剤耐性小委員会は、去年の12月ぐらいにできたばかりです。ただ、この薬剤耐性の問題は、先ほどから説明がありましたように、去年の4月に日本のアクションプランができて、この5月のWHO総会でそれが報告され、そして2年ごとにそのレビューがされていく状況です。そういう意味では、日本のアクションプランに基づいて、日本の国がどういうことをやるかを示していくのには非常に重要なポイントになっている時期です。

 まず、第1番目として、抗菌薬の適正使用というか、なるべく抗菌薬を使わないで済むような疾患には使わないでいこうというのが、最初のこの抗菌薬の手引きを作るときのフィロソフィーでした。それに基づいて、大曲先生を中心とする小委員会で、過去4回か5回ディスカッションして、そして最終的なものとしてこの資料が薬剤耐性に関する小委員会に上がって、そこでも議論を重ねていろいろな意見を取り入れて、今回、この感染症部会に、これが第1版の案として提出されたところです。

 皆さんも御存じのことなので余り言う必要はないかと思うのですが、一番我々がインパクトを受けているのは、健康人の腸の中にESBL5%日本人ではもう存在していて、これがアジア等においては、60%そういう耐性菌が我々の腸の中にもう既にいるということです。ということは、多分、それらの菌又は遺伝子が、どこからか人の中に入り込んできたのだろうと。それはワンヘルスという概念で考えていかなければいけない問題だと思うのです。そうすると、不必要な抗菌薬を使うとその耐性菌が選択されて、それが増えてくる、又はその耐性遺伝子が腸間内でどんどんほかの腸内細菌、ノーマルフローラの中に移っていってしまって、それらによって病気を起こすようなことになった方々に対して、効く薬がなくなってしまうことが一番心配されるわけです。そういう意味では、なるべく早く手を打っておこうということで、今回の、先ほど説明されましたように、特に急性の呼吸器感染症又は急性の下痢性疾患に対しては、それがウイルスによって起こっているような疾患に対しては抗菌薬を使う必要はないし、抗菌薬を使っても効かない可能性があるわけです。場合によっては、ただウイルス感染症においても細菌感染を併発して重症化になるという例ももちろんありますが、その辺は、臨床の現場の先生方がきちんと診断をして、そして適切に使うような状況を作ることによってカバーできるのではないかということです。特に、軽症の場合又は中程度の場合には抗菌薬を使わないで様子を見て、そして細菌感染が疑われるようなことが判明した場合には、そこで使うことによってそれの鎮圧を図るということでも対応できるのではないかというのが、先ほどから説明されていますこの手引きの趣旨です。

 なかなか難しいのは、今までドクターも含めて、患者さんが来た場合に、風邪症候群の場合でも抗菌薬を出していたという例が多々あるわけです。また逆に、患者さんの側も、抗菌薬をもらわないとなかなか安心ができないという状況が続いてきている中において、これが今後どういう形で浸透していくかが一番大きい問題だと思います。その辺に関しては、この委員会でも大分話し合われました。1つは、やはりコミュニケーション、アウェアネス、またアンダースタンディングという、WHOが第1番目に掲げていますこの耐性菌の状況を、医療従事者も含めて、全国民にまずは理解していただいて、そして、使わなくて済むような疾患に対しては使わないという啓発を図っていく。そのためには、医師会、薬剤師会、ほか医療従事者又は消費者を含めた団体等にもインフォメーションを伝達することによって浸透させていくという段階が、これから多分数年掛かるのではないかと思います。そこら辺に関しては、この感染症部会の先生方にもお力添えを頂いて、この手引きにあるようなこういう点が浸透しますように、是非御協力のほうをお願いしたいと思います。もし何か質問があるようでしたらお答えしたいと思います。

○倉根部会長 ありがとうございます。今、事務局及び小委員会の渡邉先生から御説明がありました。大石委員どうぞ。

○大石委員 感染研の大石です。もう2000年の頃から日米医学会議の急性呼吸器感染症部会では、この耐性の問題が議論はされていたのですが、なかなか実際的な指針が出てくることがなかったのです。今回、AMRアクションプランが立ち上がり、このような指針が出てきたことは大変評価すべきことだろうと思っています。

 それで、私は意見を述べさせていただきます。11ページにある、急性気管支炎は診断が難しい疾患であると私は思っているのです。「発熱や痰の有無を問わず、咳を主症状とする病態の急性気道感染症」、急性気道感染症には上気道と下気道があるわけです。「急性気道感染症を、本手引きでは急性気管支炎に分類する」ということは下気道感染症も含んでいるということなのです。もう少し下に行った所で、「基礎疾患がない70歳未満の成人では」という文言があって、その後、「通常、胸部レントゲン撮影は不要と指摘されている」という言葉があります。私は臨床的な経験から、急性気管支炎においてはX線を撮らないと、なかなか肺炎との鑑別が難しいという事例が結構あると認識しております。しかも、ここは「基礎疾患がない70歳未満の成人」と書かれておりますが、では、70歳以上の高齢者ではどうなのかと。基礎疾患がなくても、バイタルサインが余り明確に出てこないというのは臨床的によく知られていることなので、指針のポリシーはよく分かるのですが、指針の運用に当たっては十分に注意すべきであろうと。例えば「通常」と書かれている所を「原則として」とかいった書き方ではどうだろうかと思った次第です。意見を述べさせていただきました。

○倉根部会長 渡邉先生いかがでしょうか。

○渡邉専門委員 ありがとうございます。急性気管支炎、特に高齢者で、ほかの合併症をいろいろ持っている方の場合にはとても気を付けなくてはいけないと、そのことは非常に議論されました。今回は特に軽症の場合という、高齢者の場合はいろいろなバイタルサインがはっきり出なくて、発熱が出ないとかいろいろなことがあって軽症と間違ってしまうことも中にはあるのだと思います。もう少しこれが進んだようなことに関しては、別個な形でのガイドラインを作成する又は各学会が出しているいろいろなガイドラインを利用していただくというところです。今回はどちらかと言うと、いわゆる軽症のほうに重点を置いたということでして、ほかの点に関しては今後また考えるということです。感染症学会、化学療法学会、あと呼吸学会がガイドラインを出していますので、そういうところも取りあえずは参考にしていただくことに、委員会としてはなりました。

○倉根部会長 大石先生よろしいですか。

○大石委員 指針としては、運用の面で医療機関の先生方にきちんと周知していただければと思います。

○結核感染症課長補佐 事務局からの補足と言いますか、説明をさせていただきます。この辺りの記載に関しては、大体ほとんどが海外、日本の国内も含めてですが、論文上のエビデンスから取っていますので、それを訳したような形で書いている部分に関しては、ちょっと替えにくいところがあるのが現状です。先ほど渡邉先生がおっしゃったように、どうしてもグレーゾーンと言いますか、これのとおりに割り切れない部分が出てきてしまうのはやむを得ないと考えております。その辺りは、それ以外の学会等、あるいは専門家の御意見であるとか、学会のガイドライン等に委ねざるを得ないところは、当然あると認識しております。気管支炎と肺炎の区別は大変重要ですので、それに関しては、肺炎を見逃さないための注意ということも、文章の中でもそうですし、次のページのフローチャートにも書かれてあります。どうしても主眼が、必要ない方に必要ないという判断をしやすくするということですので、高齢であるとか基礎疾患のことも含めまして、懸念がある場合はこの手引きから外れていただいて、現場のケース・バイ・ケースで判断していただくことはやむを得ないと考えております。

○倉根部会長 よろしいでしょうか。

○岡部委員 岡部です。こういうガイドラインが出てくるのは大歓迎で、実際に抗生剤、抗菌薬の使用を制限していく必要はあるだろうと思います。ところが一方では、だんだん耐性が付いてきて使える抗菌薬がなくなってくることが問題なのです。抗菌薬の開発をもっと促していかないと、イベルメクチンの例はいい例だったのですが、日本だけではない傾向ですけれども、特に日本では、新しい抗菌薬の開発は非常にブレーキがかかっているような状態であると思います。ですから、そこを促していくというのもAMR対策としては必要だろうという点が1つです。

 第2点は、現場において不要の抗菌薬投与をなくすというのは、鑑別診断のシャープさが必要になってくるのです。なかなかウイルス性疾患との鑑別が付きにくい中で、例えばインフルエンザとかRS、アデノは随分迅速診断ができるようになりました。全部に検査をやらないほうがいいとは十分思っているほうですが、ただ一方では、非常に外来診療上制約があってウイルス診断がしにくいという状況もあるので、そこのバランスも取っていただいて、適切な鑑別診断ができるようにしたほうがいいだろうと思います。

 長くなりましたが、3点目は小さいコメントです。カンピロバクターの所で、軽症であれば確かに自然治癒というのは多いのですが、食中毒に対してカンピロに非常に注意を促して、生の鶏肉は食べない、なぜならばカンピロになりますよ、カンピロになったらいけませんよという一方で、その患者さんがカンピロだと言われた途端に、これはほっておいても治るから大丈夫ですよというのは、ちょっと説明上片手落ちのような気がするのです。この説明の中には医師の説明とか薬剤師の説明があるので、ちょっとその辺をどうやって説明していいか、議論をするか、加えていただくかをしたほうがいいと思いました。以上です。

○渡邉専門委員 抗菌薬の開発は、ナショナルアクションプランでも5番目のところ、WHOでも日本でも同じところです。これに関してはAMEDとの話合いがされて、AMEDでも研究費を出すということで、日本としても開発をやるということなのです。日本は、過去は、例えばレボフロキサシンなどは第一製薬ですか、その他いろいろな抗菌薬、56種類の抗菌薬が日本から発出されているということですか、ただ残念なことに、現在はいろいろな会社が抗菌薬の開発から手を引いているような状況です。これは、抗菌薬の開発に関わった人の技術を確保する意味においても、日本としても、その辺に対しての補助をやっていかなければならないのだろうと個人的にも思いますし、感染症学会とかいろいろな学会が、それに対してのセミナー又はワークショップを開いて、国に働き掛けているのだと思います。これは御存じのように、日本は研究費がそちらに割かれる割合が非常に少ないのだと私は思っているのです。米国等では、かなりの額がそこの開発につぎ込まれている。ただ残念なことに、なかなかこれはというのが余り出てきていない状況であると思います。

 もう1つ、診断に関しては、迅速診断かつベッドサイドでできるような診断薬の開発が促進されるべきであり、WHO等も開発の促進ということをうたっておりますので、これは今後、日本も今までやってきましたし、更にそれを促進させることによって、臨床の先生方が間違いなく診断できるようには進めるべきだと思います。

 カンピロバクターについては、岡部先生も食品安全委員会にいらっしゃって、私も食品安全委員会でカンピロバクターのリスク評価をやった手前、これは、リスク評価をやった結果が出ているにもかかわらず、実際にそれがなかなか現状に反映されていないという非常に忸怩たるものがあるわけです。ただ余り、カンピロバクターも軽症うんぬんだからといってちょっと馬鹿にできないのは、後にギランバレー症候群になる可能性があるので、その辺は臨床の先生方も含めて、皆さんにその辺のインフォメーションを十分与えることによって、適切に対応するような仕組みをやはり作るべきだとは考えております。

○岩本委員 2点あるのです。1点目は、この手引きの主体が書いていないので、誰が出すのかという点です。

○倉根部会長 まずここ、誰が出すことになるのかということですね。

○結核感染症課長補佐 こちらは、厚生労働省と日本医師会に御協力を頂いておりますので、厚生労働省と日本医師会の名で出す予定です。

○岩本委員 ありがとうございます。2点目は、今までの先生方と同じラインと思います。原則的に私は何の反対もないのです。簡単な比較が難しいと思いますが、以前、小児へのインフルエンザのワクチン接種は余り意味がないというのでやめたら、高齢者あるいは原因不明の死因が増えているという議論があって、高齢者にはインフルエンザワクチン接種が始まったわけです。非常に大事なのは、確かにEMBLは非常に大事ですが、今後日本の公衆衛生にとっては高齢化社会を迎えるということで、要するに、非常に重症の肺炎が、呼吸器感染症が増えかねないというような場合に、抗菌薬抑制をやったときに、医療費の問題で比較はできると思いますが、病気の点で何を指標に、抗菌薬の抑制が効いたのではないかというところを主体に見ていけるのかという点について、お考えが伺えればと思います。

○倉根部会長 渡邉先生、まずお願いします。

○渡邉専門委員 エンドポイントをどこに置くかということですが、まず1つ、そういう疾患が減り、かつ耐性菌の割合が減るというところで、そのためには適切なサーベイランスをすることにより、データを確保することになると思います。このサーベイランスに関しては、別の委員会で、今、日本で行われているサーベイランスの改善すべき点は改善し、WHOに実際のケース等を発表しなければいけませんので、それができるような体制作りも行われております。ということでよろしいですか。

○倉根部会長 事務局から補足をお願いします。

○結核感染症課長補佐 事務局から補足させていただきます。この手引きはアクションプランの中の戦略の中の1つです。それ以外の感染予防のことや国民あるいは医療者に対する啓発という全体的な効果という形でしか評価できないと考えております。

 先ほど渡邉先生も言われた薬剤耐性の動向調査検討会というところで、それらの情報を動向調査をまとめていくのが、大きな意味で薬剤耐性の改善が見られるかどうか、そうなると、その薬剤耐性菌による感染症がどのぐらい起き、どれだけの方がその被害を受けているのかという情報も必要になってきます。

 そういう情報に関しては、平成29年度に設立される予定のAMR臨床情報センターが、国際医療研究センターに設置される予定で、そこでいろいろな薬剤耐性及びその感染症に対する情報を統合的に集計解析し、動向あるいは様々な試策の効果について評価していくという予定になっております。

○岩本委員 ありがとうございます。1点だけよろしいでしょうか。先ほどAMEDの予算が出たとの話が、何も言ってこなかったのかと言われては困るので、一言だけ申し上げておきたいと思うのですが、昨今、アメリカでトランプ政権になりNIHの予算が20%減らされるという話をされていますが、残念ながらAMEDの年間予算はトランプ政権が減額すると言っている額の約3分の1です。その上でもAMRの開発に対応するような薬剤開発を進め、AMEDではその開発に対する研究費というものもしっかりと見ていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○倉根部会長 ありがとうございます。

○釜萢委員 今、お話がいろいろ出ておりますが、私も渡邉先生の下で小委員会の構成員の1人ですが、日本医師会はワンヘルスの観点に立ってAMRにしっかりと向き合っていかなければいけないという、非常に強い危機感を持っており、今回このような手引きが作成されたことは大変良かったと思っております。

 しかし、その中で抗菌薬を使わなければいけないケースに対してはしっかりと使い、そして十分必要な量を使わなければいけないわけですが、不適切な使用についてはこの手引きを参考に患者さんの理解を得ながら、しっかりとなるべく適正な水準に持っていきたいというのが強い願いです。

 ですから、決して抗菌薬の使用が悪だということではなく、そこについては、今回、皆様の同意でこの手引きが完成した場合には、特に医療の現場でこれがしっかりと利用されるように、日本医師会としては啓蒙・啓発活動に全力を挙げなければいけないと思っております。その場合においても、あくまでも適切な適正な使用が必要であるということ、そのためには、もうお話が出ておりますが、診断をしっかり付けるということに対しての意識を更に高めなければならないと考えますので、そのようなことも併せてこの情報を医療現場に迅速に伝えるために役割を果たしたいと思っております。

○倉根部会長 コメントありがとうございます。ほかに御意見ありますか。

○笹井委員 東京都の笹井です。今の釜萢先生の御説明で少しどのようにお使いになるのか参考になりました。確認をしたいのですが、2ページで本手引きの対象は主に外来診療を行う医療従事者ということで記載されておりますが、この手引きが出来上がった暁には、周知の仕方、あるいはどのようなルートでどのように周知を図っていかれるのか教えていただきたいと思います。

○倉根部会長 今の笹井先生からですが、事務局お答えください。

○結核感染症課長補佐 事務局からお答えいたします。この手引きは先ほども申し上げましたように日本医師会の釜萢先生をはじめ、日本医師会の方の全面的な協力を受けており、日本医師会の会員の方には何らかの形で配布するということで予定しております。

 あとは、もちろん厚生労働省のホームページ等でも公開する予定ですし、全医療者にというのは現実的に難しいので、都道府県や自治体を通して機関病院等々に御紹介させていただくなどの方法で周知を図りたいと考えております。

○渡邉専門委員 追加で、この委員会で出た意見ですが、この委員会には薬剤師会の方々、獣医師会、保健所関係の方々も参加しております。特に薬剤師会の方々は処方箋が出されたときに患者に現場で説明しなくてはいけない、いろいろ聞かれたときにちゃんとした説明をしないとなかなか信頼が得られないということで、そこは薬剤師会の先生方も十分に協力をしたいとおっしゃっています。

 保健所関係の方々も地域住民の方々に説明するときに、これに基づいてお母さん方や子供さんがいらっしゃる方など、いろいろな方に説明をしたいと言われて、皆さん協力をするとおっしゃっています。

○倉根部会長 ありがとうございます。

○山田委員 変なことを言うようですが、ここの手引きに書いてあることは、日本の医学教育を受けた先生方にとっては、ある程度当たり前のことのように思われます。それにもかかわらず、そういう不適正な使用が多かったというのは、多分、経済的動機などがあるのではないかと。そうした場合に今回これを徹底させていくときに、一方でそういった動機をうまく取り除く努力をしないと、なかなか実践は難しいのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

○渡邉専門委員 小委員会に企業の代表の方々も来ていらっしゃいます。やはり、企業の委員の先生方も、適正使用は重要であるという認識を示していらっしゃるので、何らかのアクションをしていただけるのだと思います。先生の言われていることは多分売り込みということなのだとは思いますが、そこは今後、製薬業界にもこの種のお話を持って行って理解をしていただくということになると思います。

 ただ、これは私見ですが、少し難しいのは、片やそういう形で抑制をすると、今度は開発にどのように響いてくるのかという点が少し心配されるのです。そこは別途どこかで議論していただいてサポートするような形にならないと、製薬業界の方々のモチベーションがなかなか湧かなくなってきていると言われているので、今後その辺をどのようにやっていくかということも、このAMR小委員会で検討するのか、ほかの所に検討する場所があるのか分かりませんが、そこは考えていかないと新薬の開発が遅れるのではないかと思います。以上です。

○倉根部会長 事務局どうぞ。

○結核感染症課長補佐 今の山田先生の御指摘に関してですが、ほかの委員の先生方からも御指摘がありましたように、これは国民全体に対する啓発と、この手引きを使用していただきたいという医療者に対する啓発を、同時に行っていくことが極めて重要だと考えております。

 と申しますのも、医師は恐らく分かっているのに、なぜ今まで処方してきたかというところに関しては、患者様の心配を抗菌薬を処方することにより、患者様が安心するという経験に基づき定着した部分というのが、全てではないと思いますが、一定のパーセントを占めていると思いますので、医師側はこの手引きで診断をより一歩進め、必要・不必要な場面を分けるということ、そういう診察をしているのだということを、国民あるいは患者が知っているというそういう状況を作り出すということが、この手引きが普及していく上で大事なことだと考えておりますので、そういった意味で啓発には力を入れていく所存です。

○岩本委員 今の山田先生の点ですが、恐らく開業の先生方というのは個人個人のクリニックの場合、医薬分業が進んだ挙句、結局、医院では薬を仕入れて売るという所はないので、その点は余り関係はないのではないかと思います。もちろん、いろいろな患者さんを安心させるためなどのモチベーションはいろいろあるので、啓発するのは非常に大事だとは思います。

○釜萢委員 小委員会でも議論が出ましたが、患者さんが抗菌薬を処方してもらったときに非常に良くなったという体験があり、辛いのがすぐ良くなったのに今回は抗菌薬を出してくれないからちっとも症状がとれないという思いを持たれることがあり、そこについて医師の説明がまだ十分できなかったということも反省としてあります。

 ですから、必要なときにはきちっと出し、効果があって非常に症状改善に役立つという場合には、やはりこれは処方すべき事例だと思うのですが、その辺りの整理を更にしたいというところです。

○倉根部会長 ほかに御意見よろしいですか。

○荒川委員 2点あります。まず、1ページの最初、策定の経緯の冒頭のところで抗微生物薬の語句に「注1」としてあり、下段に「抗微生物薬については」という定義があるのですが、この欄に抗微生物薬、抗菌薬、抗生物質、抗生剤の4つの用語の定義があり、解説されていますが、この定義はどこから引用されたのでしょうか。出典をお教えください。

○倉根部会長 これはどなたに伺えばよろしいですか、事務局。

○結核感染症課長補佐 基本的には、いわゆる海外のテキスト等を参照し記載しておりますが、出典は示しておりませんので今すぐにはお答えできません。これは確認して追記したいと思います。

○荒川委員 日本化学療法学会の用語集第3版が同学会ホームページから誰もがアクセスできるようになっておりますので、それを参考にしていただきたいと思います。一番下に抗生剤とありますが、ここには「抗生剤とは抗生物質の抗菌作用を利用した薬剤の総称」とありますが、これは語弊があると思っております。総称というと全体をまとめる言葉のように受け取られかねませんが、抗生剤という言葉はあくまで通称というか悪く言えば俗称であり、汎用される言葉ではありますが学会等の正式の用語集にはこの記載はありません。

 抗生剤という言葉はよく使われるので、もちろん載せるべきだとは思います。これは私見になりますが、もし抗生剤という言葉を説明するとしたら、「抗生物質等抗菌作用を持つ薬剤の通称」という表現でないと誤解を招くと思います。と言いますのは、抗生剤という言葉に対する英語はないのです。これは日本人が作ったあくまで通称で、認定された医学用語ではありません。実際、抗微生物薬にはAntimicrobial agent、抗菌薬にはAntibacterial agent、抗生物質にはAntibioticsというれっきとした対応する英語の用語があります。用語というのは、細かいことですが非常に重要だと思います。

 このことと関連して、30ページの質問2に「抗微生物薬、抗菌薬、抗生物質、抗生剤の違いは何でしょうか」と、ここで抗生剤という言葉が出てくるのは別に構わないですし、この解答の5行目に「抗菌薬と呼んだり抗生物質、抗生剤と呼んだりします」とあるのもいいと思います。ただ、その後の「抗生物質と抗生剤は同じ意味です」という文言は削っていただいたほうがいいと思います。

 用語ということで申し上げますと、今度は抗微生物薬からは離れますが、27ページの一番上に「検査の結果、原因微生物」とあり、原因微生物は英語で言うCausative microorganismに対応する日本語として正しい用語だと思いますが、その下の(v)の腸管出血性大腸菌の2行目の右端に起因菌とありますが、これは正しい日本の用語集にはない言葉で、あくまで「原因菌」でなければいけないのです。俗に起因菌や起炎菌と言われていますが、これは原因菌にしていただきたいと思います。

○倉根部会長 この2つの点はいかがでしょうか。

○渡邉専門委員 ありがとうございます。確かにいろいろな言葉が混じり合っているところがありますので、どうしますか、化学療法学会か何かに。

○倉根部会長 事務局いかがですか。

○結核感染症課長 すみません、結核感染症課です。荒川先生から御指摘を頂いた点ですが、例えばAntimicrobialsで抗微生物薬、Antibioticsで抗生物質というように、直訳のものがあればそのままうまく使ってはいるのですが、先生御指摘のとおり日本ならではの言葉などもあり、幾つか、今御指摘の点も頂きましたので、もう一回そこのところは渡邉先生とも相談しながら正していきたいと思います。

○荒川委員 よろしくお願いいたします。

○倉根部会長 そこをよろしくお願いします。

○荒川委員 もう1点だけよろしいですか。今回、これは外来を中心とした患者さんを対象とした急性気道感染症、急性下痢症について解説してあり、これが第1版ということですが、外来の感染症には皮膚軟部組織感染症や尿路感染症などいろいろあるのですが、第2版以降でこういうものを出される予定ですか。

○倉根部会長 ここは事務局から。

○結核感染症課長補佐 はい、そのとおりです。もう既にそういう御意見は受けており、まず小児、この手引きでは学童以上はこれに含める形にしましたが、それ以下の小児や耳鼻科領域あるいは泌尿器、尿路感染治療域などを作るべきではないかという意見を既に頂いております。あと歯科領域など様々あります。

 先ほど少し申し上げた臨床情報センターで薬剤の使用状況なども調査する予定ですので、どういう場面、どういう診療科のどういう診断で抗菌薬が使われているかといったものも調査しながら、第2版以降をどこにするかを決めて、検討していきたいと考えております。

○倉根部会長 よろしいでしょうか。それでは、ほかに何かありますか。

○調委員 医療機関向けの手引きということなので直接は関係ないと思いますが、これまでの議論にもありましたとおり、国民への普及・啓発という意味では学校、教育機関の果たす役割は大きいと思うのですが、もし、そういうことについて何かありましたらお願いします。

○結核感染症課長補佐 御指摘はごもっともなことで、実際、アクションプランの中でも、教育の現場において抗微生物薬や薬剤耐性に対する教育を行うということが、既に記載されておりますので、これは特に文部科学省になりますが、そういったところもアクションプランの関係省庁の中に入っており、各々の分担を小委員会等でも検討しながら進めていく考えです。

○倉根部会長 よろしいでしょうか。多くの御意見を頂きありがとうございます。幾つか修正が必要となるとは思いますので、そこについては事務局、小委員会で見ていただき、更に私も確認するということで、この手引き第1()については感染症部会として了承ということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、そういう形で了承ということにしたいと思います。最初の議題のときに承認と言ってしまった気がするのですが、第1の議題も了承ということですので、先ほど、もし承認と言っていたら、了承に変えたいと思います。失礼いたしました。

 それでは、議題3、報告事項についてですが、まず、報告事項「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」の一部改正告示の公布・施行について、事務局からお願いします。

○結核感染症課長補佐 事務局より御報告いたします。資料3は感染症予防の総合的な推進を図るための基本的な指針の一部改正についてです。こちらは平成29310日に告示施行されましたので御報告いたします。これは感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律、いわゆる感染症法の改正法が平成2841日に全面施行されたことに伴っての改正です。

 昨年10月に改正されました第19回の日本感染症部会にて事務局から御提案しまして、御議論いただき御了承いただいたものです。この資料3に改正の趣旨、ポイント、改正の内容をまとめておりますので、御確認いただきたいと思います。

 また、参考資料5が改正された指針の全文、参考資料6が新旧対照表となっております。報告は以上です。

○倉根部会長 ただいま資料3に基づいて説明を頂きましたが、御質問、御意見ありますでしょうか。

○結核感染症課長 補足します。お配りした参考資料5ですが、今、私どものものを確認したところ片面コピーになっていました。先生方も恐らくそうなっていると思いますので、後ほどすぐ訂正させていただきたいと思います。中身については今、課長補佐が説明したとおり、内容的には変更になっております。

○倉根部会長 つまり偶数ページが欠けているということですね。

○結核感染症課長 参考資料5はそうです。参考資料6の新旧対照表は両面コピーとなっておりますので、こちらを御覧になっていただければ、今御説明した前回の改正時と比べ、状況の変化等を踏まえた文言の修正や、あるいは先ほど岩本委員からもお話がありましたが、AMEDが発足しましたので第6の医薬品の研究開発の推進のところにAMEDが記載されるなど、所定の改正をさせていただいたところです。

○倉根部会長 確認ですが、参考資料6の下段にあるものが、参考資料5の偶数ページにも載っているという理解でよろしいですか。

○結核感染症課長 改正部分についてはそのとおりです。

○倉根部会長 実際には、参考資料5は偶数ページがないので、そこについては参考資料6の下段で読むということに。

○結核感染症課長 下段というか上下段で読んでいただければと思います。原稿が下段でして、上段が今般お願いしている改正案です。

○倉根部会長 いかがでしょうか。御意見、御質問ありますか。よろしいですか。もし正式な参考資料をという御意見がありましたら事務局に御連絡を頂ければ。

○結核感染症課長 直ちに準備いたしますのでよろしくお願いいたします。

○倉根部会長 その他ありますか。なければ、ここについては特に御意見、御質問がないようですので、委員会として了承したということになります。

 次に、議題4、その他ですが御意見ありますか。何かその他ありますか。事務局からは。

○結核感染症課長 特段ありません。

○倉根部会長 それでは、今日準備いたしました議題はこれで全て終了としたいと思います。大変活発な御意見を頂きありがとうございました。事務局から次の開催等について何かありますか。

○結核感染症課長補佐 第21回の開催についてですが、日程調整の上、改めて御連絡差し上げます。事務局からは以上です。

○倉根部会長 それでは本日はこれで終了といたします。ありがとうございました。

○結核感染症課長補佐 ありがとうございました。


(了)

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