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2016年10月28日 第26回 社会保障審議会生活保護基準部会

社会・援護局

○日時

平成28年10月28日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
岡部 卓 (委員)
小塩 隆士 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・就労・自立インセンティブの強化を踏まえた勤労控除等の見直し効果の検証
・級地制度の在り方の検討
・その他

○議事

■駒村部会長 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第26回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠状況について、事務局より御報告をお願いいたします。

■鈴木保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、宮本委員から御欠席との御連絡をいただいております。

 それでは、部会長、議事の進行の方、よろしくお願いいたします。

■駒村部会長 本日の議事に入る前に、岩田委員から提出資料がございますので、岩田委員から御発言をお願いいたします。

 そろそろ始まりますので、カメラは御退室願えますでしょうか。

(報道関係者退室)

■駒村部会長 では、先生、お願いいたします。

■岩田部会長代理 きょうの資料の一番最後にあります「生活保護基準部会の今後の議論についての要望」をご覧いただきたいと思います。これは前回私が口頭で申し上げたことを文章にしたというだけのことでございますが、これまでの部会がかかわった基準検証では、全ての報告書にその基準改定の影響を把握することということが書いてございますけれども、影響把握はこれまでは必ずしも十分されておりません。つまり、専門部会が入手できる資料を最大限使いながら検証したわけですが、それをもとに厚生労働省のほうでそれ以外の要素も加えて改定をなさったわけですが、そのことの検証を注意深くしていかないといけません。生活保護というのは、御承知のように、国民全体にとってのセーフティネットという意味を持ちますので、生活保護世帯だけのものではなく、国民全体への影響という意味があります。

 もう一つは、現に生活保護を利用している世帯の生活にどういう影響が及んだかということは把握した上で、例えば私どもが当初予想したものと違う結果になっていたとすれば、それはなぜかということを考えながら、今後の基準の補正といいますか、改定に当たって違う考え方や資料を導入する必要があると思います。

 どういう影響把握についてお願いしたいかというのは、そこに書いてありますように、一つは保護の開廃です。これは国民最低限という意味と生活保護利用者の生活、両面にかかわっていますが、開始に与えた影響は非常に難しいとは思うのですけれども、なるべくそういうものを把握していただきたい。そもそも生活保護を利用されている世帯が、保護基準に対してどのぐらいのレベルの所得で申請をされているのかということを十分把握していないわけです。基準が動きますと、当然申請できる権利を持っている人たちの層が変わってきますけれども、どのぐらいの変化だとどう影響するかということを必ずしも把握していないのです。

 これは難しいと思いますが、ただ、ぎりぎり申請は少ないと思うのですが、後で申しますように、他制度と連動している、特に介護保険、障害等の境界層については、ここが影響を及ぼしますので。

 それから廃止です。これは把握したいと思いますので、前回申し上げた保護再開層も含めてどういう状態かということ。

 2番目は、実際に利用されている保護世帯の消費水準とその構造に与えた影響です。これは前回口頭で申し上げましたけれども、きょう、その下に参考というふうに資料をつけてあります。これは出たばかりの社会保障研究に山田委員の論文によるものです。この部会以前ですけれども、老齢加算を廃止した影響を検討する論文ですね。

 参考資料に2番目として挙げているのは、前回私が口頭で申し上げた社会保障生計費調査の世帯類型別家計の変化です。これはあくまで公表されている年次の作表の範囲でありますので、個票レベルで見ていく必要がありますし、特に標準世帯が全然出ていませんので何とも言えないのですけれども、水準均衡の比較対照であった全消の第1・十分位の消費水準も一応そこに書いてあります。これは2人以上の勤労世帯というややアバウトなものですが、そこと比較したはずなのに、ちょっと違うなという感じで出ています。

 それから、冬季加算、住宅扶助についてもぜひ。特に2015年に改定といいますか、多くは引き下げですけれども、その影響が重なって出ていると思うのです。2013年の生活扶助本体の引き下げが3段階になっていますので、2015年にこれと冬季加算あるいは住宅扶助というものの改正が重なって影響を及ぼしている可能性もありますので、ぜひそれを把握していただきたいと思います。

 5番目の他制度への影響ですが、これは就学援助等について1回御報告があったことは記憶しております。しかし、直接連動する介護保険等の問題もありますし、就学援助を含めた、直接連動ではないけれども、参照していく重要な制度があると思いますので、その制度への影響。特に自治体で裁量している制度については、地域による差異があると思いますので、そういうものもできるだけ把握した上で今後の議論をしていただきたいという要望です。

 以上です。

■駒村部会長 ありがとうございました。

 前回に引き続いて、これまでの制度改定の影響をきちんと検証しなければいけないという御指摘で、岩田先生、前回お話しした話を改めてポイントを整理していただいたと思います。

 岩田先生のこの御指摘について、事務局から何か御発言はありますか。

■鈴木保護課長 ありがとうございます。

 いろんな影響を検証するようにということでございます。岩田委員もおっしゃっていましたように、保護に入っていない方の状況など、現在では把握できていないものもございまして、どうするかということは、今の時点では十分アイデアがないものもございますけれども、全体的にきちっと評価をして出すというのは、おっしゃるとおりでございますので、影響の把握について、できる限り私どもの方で準備をさせていただいて、また、この後、来年度に向けて本格的に議論する際に、順次こういった情報についても整理してお出しできるように努力してまいりたいと思います。

 以上です。

■駒村部会長 事務局、岩田先生の資料について、可能なデータをまず精査するという御発言でした。

 岩田先生の方から追加の御発言ございますか。

■岩田部会長代理 資料2についてですけれども、作表されているものだけで見たものをつけてありますが、社会保障生計費調査というものが余り使われていなくて、山田委員の論文ではこの個票を使った検討がありますが、2015年のものが出ますと、3段階引き下げの影響がここに出てくるだろうと思うのです。私も東京都がやっていたときでなくて、こういう形になってからきちんと使ったことがなかったのですけれども、2015年のものがいつ出るかということと、ちょっと語弊があるかもしれませんが、使える資料かどうかということです。そういうことも検討していく必要があると思う。

 それから、被保護者調査ですけれども、これはぜひもうちょっと使って、補充調査は非常に難しいと思うのですが、全国津々浦々ということではなくて、幾つかの類型をつくって、自治体に問い合わせをする等々の方法で把握できるのではないかと考えていますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

■駒村部会長 岩田先生からお話があった2つのデータ、2015年の生計費調査と、あと被保護者調査はどこまで使えるのか。これは恐らくいろいろな意味があっておっしゃっているのだと思いますけれども、事務局のほうは今の御発言について、いかがでしょうか。

■清水保護課長補佐 2015年分の生計調査の時期でございますけれども、年明けぐらいにはデータがある程度整理できるかと思いますので、そこからデータ分析等をさせていただければと思ってございます。

■駒村部会長 きょうの議題に入りたいと思いますが、委員の皆さんから今の岩田先生の議論に関連する御意見はございますか。よろしいですか。

 では、岩田先生の御指摘を踏まえて、これまでの改定に関する影響についてはきめ細かく検証する、この作業を続けるということで、本日予定されている議題に戻っていきたいと思います。

 本日は、今年度のスケジュールに従いまして、就労関係の勤労控除等の見直し効果と級地制度の検証方法について、事務局より御報告いただきたいと思います。

 資料1について、事務局から御説明をお願いいたします。

■鈴木保護課長 すみません。資料の説明に入る前に、前回の部会でその他の扶助加算について議論が不十分だ、時間不足だという御指摘がございましたので、これにつきましては、次回お時間をとらせていただきたいと思いますので、きょうは就労と級地のほうの議論をお願いしたいと思っております。

■清水保護課長補佐 それでは、資料1について説明をさせていただきます。1ページ目「勤労控除等の見直しの効果の検証における論点」ということで整理してございますが、就労自立の支援、また、就労インセンティブの強化という観点から、平成25年、平成26年、近年、勤労控除の見直し、また、就労自立給付金の創設など、見直しを実施してまいりました。

 今回の部会においては、これらの見直しについて効果検証を行って、その結果に応じて、さらなる見直し等が必要かについて検討をしてまいりたいと思ってございます。

 基礎控除につきましては、見直しの概要を次ページにつけてございますけれども、平成25年8月に全額控除となる金額を8,000円から1万5,000円に引き上げて、また、控除率を一律10%にするなどの見直しを実施いたしました。こういった見直し前後によってどのような効果があったのかということを検証いたしまして、さらなる見直しが必要なのかということを検討してはどうかということで挙げさせていただいております。

 また、新規就労控除、未成年者控除につきましては、今日的な意義をどう考えるかということで、特に両控除とも未成年者、生活保護世帯の子どもを主にターゲットにした控除でございますけれども、前回有子世帯の回でも論点に載せてございますが、そういった子どもの自立、貧困の連鎖の防止の観点からあり方をどう考えるかということで挙げさせていただいております。

 3点目、就労自立給付金につきましては、平成26年4月に保護脱却直後の負担増に備えるためのものとして創設いたしましたが、その使われ方等を把握してはどうかということで挙げさせていただいております。

 1ページ飛ばしまして3ページ目をお開きいただければと思います。これは先ほどの平成25年8月施行の基礎控除の見直しの影響の評価ということで、その見直し前後で就労収入額にどのような変化があったのか、属性ごとに何か特徴があるのかという点を確認させていただければということで、資料を用意してございます。

 これは被保護者調査から、見直し前、平成25年7月と平成26年7月でいずれも就労収入があった人というものを抽出いたしまして、収入を比較したものでございます。

 下の棒グラフは、左の棒が平成25年、右の棒が平成26年で、それぞれ収入階級別に見てございます。収入階級別に見ますと、大体8万円未満の階級では平成26年にかけて前年度より減少して、平成25年以上の階級では平成26年にかけて増加をしているということで、収入の高いほうに若干シフトしているという傾向が見られるということでございます。

 また、平均額は、括弧書きで書いていますけれども、1年間で6万700円から6万3,300円ということで、2,600円ほど増加してございます。

 また、折れ線グラフが、就労者のうちの傷病・障害ありの割合。また、棒グラフは色分けしてございますが、上部分が65歳以上の方の数を示してございます。就労収入が低い階級では傷病・障害のある方の割合ですとか高齢者の割合が高くなっている傾向が見られるかと思っております。

 次いで4ページにつきましては、平成25年、26年で同一の方の就労収入がどの程度変化したのかを集計したものでございます。増収した方が7万7,000人、減収した方は6万3,000人ということで、増減額の幅が1万円以内の方が最も多く、増減額が大きくなるにつれ該当人数は少なくなりますが、増収した方、また平均の増収額が減収した方、減収額よりも若干大きくなっているということになってございます。

 5ページ目は、そのうち増収した方の属性を細かく見てみたものでございます。増収額は、細かく見てみますと、5,000円未満の方が最も多くなってございますが、下の年齢構成の割合、また、障害・傷病の種別の状況を見ていただきますと、増収額が上がるにつれて、若年者の割合、傷病・障害を有していない方の割合が高くなるという傾向になってございます。

 6ページが就労収入の増減の分布を見たものでございまして、表の見方でございますけれども、上下の行の区分が平成25年7月の収入で、横の列は平成26年7月の収入ということで整理してございますので、平成25年7月の収入の方が平成26年7月に幾ら収入があったかという枠に、当てはまる人数を計上している表でございます。いずれの階級でも収入が変化していないという、表で言いますと網かけをしておりますが、斜めの枠が一番数が多くなっており、それを対称にいたしまして線対称といいますか、山型になっています。また、これまでも触れたとおり、若干右側にずれますと増収した方の人数ということになりますけれども、収入が上昇した方の方が若干多いという状況でございます。

 7ページにつきましては全額控除未満の方の状況ということで、見直しで8,000円から1万5,000円に全額控除の上限額を引き上げたというところでございます。

 こちらを見ますと、同じく就労収入の方の分布、収入階級系別に見ますと、それぞれ全額控除される金額の層などで、平成25年については8,000円の層が一番ピークになっている。一方で、見直し後、平成26年は1万5,000円の階級が大きく増加しているというところが見てとれるかなと思っております。

 8ページは、先ほどの表と同じように、全額控除となる基準額以下の方の収入変動を見たもので、平成25年7月と平成26年の収入の増減状況をまとめたものでございます。こちらも収入が変わっていない層、網かけをしているところが中心とした山型になってございますけれども、平成25年7月の収入が1万5,000円未満の各層の方については、右側平成26年7月の1万5,000~1万6,000円のところの枠にシフトしている。ほかと比べると数字が大きいということが見られるかなと思っております。

 9ページが同じく全額控除未満の方の年齢、傷病・障害の状況を見たものでございます。先ほど冒頭の表の説明でもありましたが、1万5,000円未満であった方のうち、傷病・障害がある方の割合が全体の62.9%ということになってございます。また、年齢別に見ますと、60歳以上の割合が40%ということになってございます。

 基礎控除全体については、いろんな経済情勢の変化等を加味しておらず、見直しのみの影響を把握するまでには至ってございませんけれども、申しましたとおり、1万5000円未満、全額控除の変更の状況としては、もともと低収入の方、特に高齢者、傷病・障害者を中心に増収には影響が見られたかなと考えてございます。さらに、控除の見直しの影響の検証をする視点等、御意見をいただければということで考えてございます。

10ページは、就労自立給付金創設の影響の検証の評価ということでございます。こちらについては、就労によって自立される場合に給付されるというものでございますので、給付を受けた時点では保護が廃止をしてしまっているということもございまして、被保護者調査のように既存の調査ではなかなか数値が把握できないという現状がございますけれども、今回、脱却直後に困ったこととか、給付金をどのような形で使用したか等々について、アンケート調査等も実施してみたいと思ってございます。

 参考の方で支給状況を記載しておりますけれども、こちらの表の見方は、棒グラフの斜めの線が入ったものが就労による自立をした世帯の数、実線の黒い棒グラフがそのうち就労自立給付金の支給を受けた世帯数ということになってございます。

11ページ以降は、就労に関する属性のデータと被保護者調査をもとに集計したものでございます。

11ページについては、年齢別、また世帯類型別に就労者の数を計上したものでございます。

12ページにつきましては、それぞれ全受給者に対する就労者の割合を同じく年齢別、世帯類型別に平成25年と26年の比較を行ったという表でございます。全体的に見まして対前年伸び率、増加をしている傾向ということが言えるかなと思ってございます。

13ページにつきましては、それぞれ雇用形態別に見たものでございますが、前回有子世帯のところでも同じような状況でございましたけれども、パート・アルバイトの割合が高く、全体の6割強から7割の方がいわゆる非正規雇用、パート・アルバイトのところで就労されているということでございます。

14ページにつきましては、同じく平成25年、26年の就労者の受給者に対する割合を整理したものでございます。どの年代を見ましてもアルバイトの対前年伸び率がおおむねプラスになっているという状況でございます。

15ページにつきましては、就労者の就労期間別に人数を見たもの、また、平成25年、26年を比較したものでございます。こちらを見ますと、25年から26年にかけまして就労期間2年未満の割合が減少いたしまして、2年以上就労している方の割合が増加をしてございます。また、再掲で就労期間1年未満の方についてさらに細かく分布をとってございますけれども、こちらも半年未満の方の割合がおおむね減少しまして、半年以上の割合が増加をしているという状況が見てとれるかと思います。

16ページにつきましては、勤労控除の適用者数ということで整理したものでございます。年代別にとってございますが、特に新規就労控除、未成年者控除につきましては、未成年者は未成年者を対象にした控除でございますが、新規就労控除につきましても、19歳以下の割合が8割弱ということで、多くを占めるということでございますが、再掲でさらに細かい年代別の適用割合を集計してございますが、新規就労控除については、18歳のところが約6割ということで、高校を卒業後等に就職をした場合に適用になるというところかと思っております。

 未成年者控除につきましては、比較的満遍なく適用割合が分布しておりまして、学校に行きながらアルバイト収入を得ているという人も多く含まれるのではないかと思ってございます。

17ページにつきましては、それぞれ就労収入の状況ということで、世帯類型別に見た表でございます。世帯類型別に見ますと、母子世帯が8万3,000円程度で最も高く、次いでその他の世帯が7万8,000円弱ということになってございます。当たり前と言えば当たり前ですが、高齢者世帯、障害・傷病者世帯は低収入の割合が高いという状況が見てとれるかと思います。

18ページは、先ほど御説明した未成年者控除の適用者数の就労収入の状況について見たものでございます。就学状況もあわせて整理をしてございますが、人数としては高校生の人数が最も多いというところでございますが、収入額で見ますと、3万円台が最も多くなってございます。

 右側の参考2「一般の高校生のアルバイト収入金額」は、財団法人の調査の結果でございますが、これを見ましても、おおむね3万円台の収入が平均的な収入ということになりますので、一般的なアルバイトの程度の収入を得ているということかなと思っております。

 また、就労者割合について、右側上の参考1というところで、調査等が異なるので、一概に比較ということはできませんけれども、一般世帯に比べて生活保護受給世帯のほうが就労している割合が高い傾向にあるのかなということで、数字を挙げてございます。

 以下は参考資料ということで、制度の概要等をつけてございますので、また参照いただければと思います。

 資料1の説明は以上でございます。

■駒村部会長 ありがとうございました。

 最近制度改正をした控除の見直しと自立給付金制度創設の効果といったお話で、興味深い効果も出ているようですが、この資料について、委員の皆様から質問とかコメントがあればと思いますが、いかがでしょうか。山田委員、お願いします。

■山田委員 詳細な資料を御準備いただきまして、ありがとうございました。

 私の方では主に2点コメントと2点御質問がございます。

 最初のコメントの方ですが、基礎控除の見直しについては、当然労働経済学的には、例えば2ページをご覧いただきますと、基礎控除額の見直し前と見直し後に、0.8万円で予算制約線が屈曲しているところの山が1.5万円にずれるだろうなとか、あとは9万円前後の層が多分増えるだろうなということで、御説明にもありましたように、いろいろと経済状況の変化とか何かを見なくてはいけないと思いますが、それでも3ページの例えば1万円未満、1~2万円の動きとか8~9万円の動きを見ますと、予想されたように、そこの部分の山が動いているということは言えるのではないか。7ページの詳細な分析も、確かに8,000円のところの山が動いていて、1万5,000円のほうにシフトしているということでは、この控除の見直しによって、就労行動が変化したというのを読み取っていいのではないかと思いました。

 2点目のコメントとしては、「就労自立給付金創設の影響の評価(案)」とお示しいただいていますように、これは非常に難しくて、現在あるような情報だけでは、事務局も御指摘のように、なかなか評価が難しいところでありまして、保護脱却した者について、アンケート調査実施はぜひ行っていただきたい。こうした詳細な質問項目については改めて議論があるかと思いますけれども、特に例えば就労自立給付金の部分が、就いた職業によって脱却後どのくらい減っていってしまっているのかということです。要するに、急激に減っていっているのであれば、脱却したものの生保に戻ってくる可能性もあるわけですし、そういった危険性がどういうふうに生じているかまでこのアンケートで見られたらいいなと考えております。

 あと2つは質問なのですけれども、事務局からもいろいろと統計をお示しいただいているとおり、その他の世帯の比率が徐々に高まっているということがございますので、今は結構人数が多いのに「その他の世帯」というので一緒くたになってしまうので、ここをもう少しうまく世帯類型を分けて、こうした効果が見られるようにできないか、そうした方策はないのか教えていただきたい。これは我々が議論して答えを出すことかもしれません。

 もう一点は、6ページの対角線にあるピークの山型というものですが、どういうふうに右上にずれているのかわからないので、ここら辺はもう少し精査する必要があるかなと思いました。

 私からは以上です。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 確かに労働経済学のテキストにもなるようなきれいな効果が出ている。7ページを見ると、ピークが右にずれていますから、ちょうど折れている点、8,000円から1万5,000円に動いています。ただ、どういう人たちがどういうふうに変わったのかというのはもう少し細かく、個票データがあるのでしょうから、分析をすれば明確に年齢とか就労形態とか性別とか障害の有無とかの効果が出てくるのではないかと思いますけれども、この辺の分析は引き続きお願いして、こういう効果があるとするならば、制度の所期の目的を果たしたとも言えると思います。

 あと、山田先生のおっしゃるその他世帯の分析はもう少し丁寧にということ。

 それから、自立給付金の効果は、自立すれば、データが出ていってしまうということで、いろいろ工夫をしないと把握できないということですので、これのアンケートについてはまたいろいろ御相談があると思いますが、この辺も含めて、ほかの委員の皆様からも意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。小塩先生、お願いします。

■小塩委員 私も授業で使えるような資料を提供していただきまして、ありがとうございました。

 ちょっと質問したいことがあります。先ほどの御説明では、基礎控除の見直し等々で月収8万円未満の人の割合が減少して、それ以上の人の割合が増えているという結果を紹介していただきました。それから、就労収入の増減額は大体プラスマイナス1万円か2万円ぐらいで、かなり集中しているということも説明していただいて、それぞれ納得したのですが、それでちょっと気になることがあります。6ページ目に就労収入の推移をまとめたマトリックスがあります。これは同一の人の行動を追跡したと伺っているのですが、先ほどの御説明のように、シャドーをかけた対角線上のところで一番数字が大きい。これはもっともなのですが、対角線の両脇の数字を比較しますと、左上の方に位置している層、つまり、25年7月で所得が比較的低かった層では、対角線の右のほうの数字が大きくなっています。ですから、制度改革によって、こういう人たちは就労を強めたという効果があるというのはわかります。

 それに対して、右下の層、つまり所得が比較的高かった層を見ますと、もちろん、18万円以上は別の要因がありますから見なくていいと思うのですが、1516万円までの層を見ますと、動きがむしろ右でなくて左のほうにシフトしています。つまり、就労を抑えているという状況があります。

 全体として見たら、平均的には就労は高まっているという非常にいい結果が出てくるのですが、中身を見ると逆の動きが見られます。これをどういうふうに解釈していいのか、あるいは背景にどういうことがあるのか。私は理解できなかったので、もし山田先生が御存じでしたら説明していただきたいということです。それが1つです。

 2番目は、全額控除の制度変更の影響も、教科書にまさしく出てくるような結果があるのですが、全額控除の対象になっている人というのは、先ほどの御説明にもありましたように、何らかの形で傷病を抱えていらっしゃる方や高齢者の人ですから、普通の予算制約上の変化とは違うことが起こっている可能性があると思うのです。病気を抱えていたのだが、今回の制度変更でもう少し働こうということだったのかと思うのですが、どういう状況の変化があったのか、少し丁寧に個票レベルで分析しておく必要があると思いました。

 以上、2点です。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 今の小塩先生の話に関連しますか。

■山田委員 そうです。

■駒村部会長 だったら、先に。その後にお願いします。

■山田委員 先に申しわけございません。

 先ほど6ページの中身についてもう少し精査というのは、今、小塩先生のお話のとおり、これは脱却した部分で右上が消えてしまっているのではないか。要するに、8~10万円の層が消えてしまっているのかどうかというのをもう少し精査しなければいけないなという意味で、平成25年から26年で脱却した人を含めて、どういうふうにこの山が動いているのかというのをちょっと考えていただきたいということです。

 そこが先ほどの追加で、小塩先生に関係する部分です。すみませんでした。

■駒村部会長 では、阿部委員、お願いします。

■阿部委員 私ももしかしたら今の小塩委員の話に関係しているところかもしれませんけれども、もちろん労働経済学上では就労率が上がることイコールいいことというふうに解釈されるかと思いますが、生活保護層においては必ずしもそれがいいことと解釈していいのか、就労率が上がったことイコール効果があったというふうに見ていいのかというのは、そこには飛躍できないのではないかなと思います。

 特に気になるのが、比較的金額が少ない方々が増えている。ですので、アルバイト的な、恐らく世帯主ではなくて、そのほかの世帯員で、学生とかも入っているのではないか、その効果もあるのではないかなと思うのです。

 そうしたときに、18ページの資料にありましたように、一般世帯では就労割合が高校生5%であるのに対し、生活保護世帯では18.8%なのです。生活保護制度だから、働けるのだったらアルバイトしてくれというような観点もあるかもしれませんけれども、でも、これをイコールいいことだというふうに必ずしも解釈できないのではないかなと思います。このためには、ほかのもう一つの軸、これが例えば学業に影響しているとか、そのお子さんが例えばクラブ活動をするとか、そういった子どもらしき生活をすることの妨げになっていないかという点も含めて、データをとり直して見ていくべきではないかなと思いました。

 以上です。

■駒村部会長 労働経済学は、働くか働かないかは本人が一番よく知っているということで議論すると思うのですけれども、8,000円から1万5,000円というのは、多分労働時間を伸ばしているということになって、それがもし高校生とかだったらば、本来勉強するべき時間や学生らしい時間が削られているのをどう評価するかというお話だったと思います。

 これは、データの中で1番目、2番目とか、高校生かとか、こういった識別みたいなものはできるのでしょうか。

■免田保護課長補佐 こちらにつきましては、被保護者調査をもとに特別集計をしておりますが、被保護者調査の中で、その方が今どういう状況なのか。例えば就学状況とか、就学している場合には高校に就学しているのかとか、そういった情報はとっております。このように、被保護者調査の個票レベルで把握可能なことにつきましては集計可能でございますので、そういった分析の方は進めてまいりたいと思っております。

■駒村部会長 阿部委員、いいですか。

■阿部委員 ですので、そういった集計を進めていただければと思います。

 できれば勤労したかどうかのデータ以外にも、インタビュー調査ですとか追加の調査ですとか、追加の調査の話は出てきていますが、そこにこういった視点も踏まえていっていただければなと思います。

■駒村部会長 追加の調査の方は例の給付金の効果の方のアンケート調査で、こちらは。

■阿部委員 なので、こちらも含めてほしいということです。

■駒村部会長 やってほしい。わかりました。これはまた後で議論。

 ほかは。栃本委員、岩田委員。先に栃本委員、お願いします。

■栃本委員 今の阿部委員の話は私も言おうと思ったのだけれども、その前に、6ページ目のところで山田委員が上と下の部分を話されたのだけれども、このデータは当たり前だけど、脱却している人は入っていないわけだね。問題は、難しいのかもしれないのだけれども、その後、脱却した人を仮に抜くようなことはできるのかな。それは難しいですか。

■免田保護課長補佐 はい。

■栃本委員 この時点は25年7月から26年7月だからなのだけれども。

■駒村部会長 どうぞ。

■免田保護課長補佐 こちらにつきましては、平成25年7月と平成26年7月といったような毎年7月末現在のデータでしかとれませんので、ご指摘の点は難しいと思います。

■栃本委員 もう一つは、1年間で収入が増えたというのは、先ほどのアルバイトをする時間、パートをする時間が増えたという形ももちろんあるのでしょうけれども、それと、1年間でどのくらい経済の変化、これは事務局だけでなくて、ほかの先生方にお聞きした方が専門的なことでわかるのですが、そういうものはどういう形で見るべきなのか。そういうのは考えるほどの大きさではないと考えるのか。僕は素人なものだからわからなかったので、それを教えていただきたいというのが1点。

 もう一つは、先ほどの全体的なお話だと、母子家庭のお母さんが一生懸命仕事して8万ぐらい。月々お仕事をされている、すごいな、偉いなという形になるのだけれども、前回、前々回の議論にあるように、ワンペアレントファミリーで、子どもと接する時間であるとか、教育であるとか、その他もろもろの時間ですね。つまり、社会関係資本とか文化資本というものがなかなか蓄積できないというのがワンペアレントファミリーにあるわけで、なるほど、8万、一生懸命頑張ったと。一般的にはほかの世代に比べて、他の世帯は年齢が高いということが基本なので、そういう意味では母子家庭は就労する機会とか、無理すればと言うと変だけれども、いろんな時間を削ればできるだろうということもあると思うのです。

 そこら辺をよく考えないと。これは先ほど阿部委員が話されたことにも関係あるのだけれども、就労することはもちろんいいのだけれども、それが回り回ってその後どういう影響を与えるかということもあると思うので、このぐらい収入が増えたということだけでなくて、労働時間数、就労時間数、そういうものはなかなかわからないのかな。それは難しいということですか。これは質問です。

■駒村部会長 データの中に時間は入っているのでしょうか。

■清水保護課長補佐 時間数は被保護者調査では把握をしていません。ただ、別途やっております生活実態と生活意識に関する調査では一部就労時間はとっていたかと思いますので、どれぐらいかというところは集計すれば出るのですが、推移というような形ではお出しできないかなと思っております。

■栃本委員 前回か前々回、追加のどういう調査をするかという議論のときに、金目のものとかそういうものはもちろんとるのでしょうけれども、別の要素、例えば今、話をした時間の使い方、そういうものもとっておくということは、本筋ではないかもしれないけれども、やはり参考資料とすべきものだと思うので、これから調査するのであれば、そこら辺を考えていただきたいなと思いました。

 以上です。

■駒村部会長 ひとり親世帯のところの生活時間の余裕、苦しさがどうなっているかというのは前回も議論があったと思いますので、これはまた把握していく必要があると思います。既存のデータでもできる部分と、あるいは改めて追加調査をする部分があると思います。

 景気の変動効果というのはありましたが、委員のほうから何かありますか。お願いいたします。

■小塩委員 一言だけ。マクロ的な経済状況の変化はコントロールしないといけないと思うのです。特に平均的に政策の効果を見る場合は、コントロールしないとバイアスがかかると思います。

 ただ、先ほどから議論になっています6ページのように、それぞれ個別の所得階層に及ぼす影響を比較するという作業においてはそれほど心配しなくてもいいと思います。というのは、マクロ的な状況がほぼ同じような形で全ての層にかかっている。これも大ざっぱな言い方なのですが、そういうふうに見ますと、それほど心配しなくていいというのが私の整理の仕方です。

■駒村部会長 では、岩田先生、お願いします。お待たせしました。

■岩田部会長代理 意見と質問です。

 先ほど阿部委員がおっしゃったように、就労をどう考えるかというのは、そもそも論としてはありますが、この見直しをしたときの哲学は、働くことはいいことだという哲学だと思います。それを前提にしてこの効果を見よということになると思うのですが、ですから、それ自体、特に若い人、高校生などの就労をどう考えるかというのは宿題になると思うのですけれども、それを前提にして幾つかの見直しをしたわけです。

 きょうの御報告には、これによって新たに就労した。つまり、就労率が上がったということと、先ほどもちょっと出ていましたように、日数を増やした。特にアルバイト・パートが多いですから時間とか日数を増やす。推測ですけれども、収入の比較ということは、そこに一番出てくるのではないかと思われるのですが、そこがちょっと識別できない。

 それから、この中には世帯ごとの就労自立というのは出てくるけれども、子どもが就労自立してその世帯から離れたというのは出てこないので、わからないわけですが、そういう幾つかの異なった要素がありますね。

 6ページに保護を脱却した、就労自立したという人の割合が平成26年度で18.1%と出ていますが、これがどういう内容のものとして評価できるのか。ここが阿部委員の意見と同じなのですが、生活保護を利用していても1時間でもいいから勤労時間を増やして勤労収入を増やすというインセンティブを与えたという面も非常にあると思うのですが、それをどう考えるかということが今出ていると思うのです。いずれにしても、その三者がごっちゃになっているのではないかなと思うので、区別して見ていただきたいと思います。

 質問なのですけれども、13ページ以降、雇用形態が出てきますが、この雇用形態の一番下の「その他」は「日雇い労働者や自営業者などが考えられる」とあるのですが、これは雇用形態なので、自営業者は入らないのではないかと思われるのですが。それはまた調べていただいて。

 それから、10ページに就労自立給付金の支給率というのがございます。これは就労によって保護廃止した世帯に対する給付支給世帯数なわけですが、これが案外低いのは何でなのでしょう。これはそんなに条件をつけているわけではないのですね。だとしたら、8割ぐらいに上がってもいいのではないかという気もちょっとするのですが、なぜこうなったか。

■駒村部会長 最初の方はコメントで、要するに、さらなる詳細分析が必要である。そうしないと評価が難しい部分もありますねという話で、後半の部分は、「その他」の扱いというのがありましたね。「その他」の扱いは、自営業が混ざってしまっているということでしたか。後でお願いします。それから、最後の部分についても御回答いただければと思います。

■清水保護課長補佐 まず、雇用形態の「その他」のところですが、調査上、雇用形態ということで表記をしてございますけれども、要は、何らかの就労収入を得ている人がどういう属性になっているかということで、言うなれば、ほかのところに属さない人を「その他」のところに持ってきているということなので、自営業者、自営の方も「その他」の中には含まれるということになろうかと思います。

 また、就労自立給付金の給付割合ということでございますが、就労自立給付金は、前6カ月間とか、就労していた方の収入の額を仮想的に積み立てて脱却後のときに支給をするという制度でございまして、例えば保護受給中は特に求職活動をしていて、就労収入がなくて、例えば正職員に就職をして脱却をするという場合については、保護期間中には就労収入を得ていないという形でありますと、自立給付金は支給がないということになりますので、内訳とかはまだ整理ができていませんので把握できていないのですが、主な要因としてはそういったことも考えられるのかなと思っております。

■駒村部会長 これは、制度スタートが平成26年7月からという理解でいいですか。

■免田保護課長補佐 はい。

■駒村部会長 最初は極めて対象者が少なかった。その後だんだん増えていって、3割から4割ぐらいのところは安定している。28年度の4月、5月はすとんと落ちる傾向。これは何かあるのでしたか。

■清水保護課長補佐 どういった形で変動があるのかというところまでは分析できておりませんので、支給状況とか既存のものでわかるところがあれば、また整理をしてみたいと思っております。

■駒村部会長 岡部先生、手を挙げていましたが、関連していれば。では、岡部先生、お願いいたします。

■岡部委員 私は、勤労控除制度についてコメントさせていただきます。1点目は目的について。勤労控除制度というのはそもそも何を目的にしているかについて、2つあげられます。これは20ページの参考資料に書いてありますが、1つは必要経費論です。2つはインセンティブ論で就労のインセンティブを高めることです。見直しを通して就労のインセンティブが高められたことはよいことだと考えます。もう一方の必要経費については、これはどのように読んだらよいか、このデータだけではわからないということです。

 2点目は新規就労控除と未成年者控除の制度。未成年者控除をどう考えるかというのは先ほどから議論が出ていますが、労働市場にスムースに参入し、安定した雇用につなげる、継続した雇用につなげる、この制度は一定の効果を上げているのではないか。しかしながら新規就労控除は、数値としてはそれほど数が出ていないため、このあたりは何か工夫が必要ではないか。とりわけ「その他世帯」が非常に増えてきていますので、雇用していない期間から再度雇用へつなげていくに当たり同制度をどう考えたらよいかは今後の検討課題となると考えます。

 3点目は、就労給付金のアンケートはぜひ実施していただきその内容を詳細に知ることは意味があると考えます。

 4点目です。私は余りデータに強くないので、別の観点から話をします。働くということは大体3つぐらい意羲があるのではないかと思っているのです。1つは、自分の生活を働くことによって賄うという側面。2つ目は、働くことによって労働市場にて生産活動に貢献し社会とのつながりを持てるという側面。3つ目は、働くあるいは自分が何らかの活動、これは賃金を得るということだけでなくて、活動することによって自分の有用性であるとか、自己が存在する意義、自己肯定感を確認できるという側面があります。賃金を得るということ、働くということを勤労控除制度に即して述べれば、働く時期、年齢階層にもよりますが、はじめて労働に就く人、労働を中断した人が働くことによって社会的あるいは経済上の意義があると同時に、制度的にもきちっと手当てされている、またそういう制度的な仕組みはつくっておく。そういう意味では、勤労控除制度は非常に有効だと思います。同制度をよりブラッシュアップしていくということであるならば、いろいろと工夫があるのではないかと考えます。

■駒村部会長 働くことの意義の御指摘は非常に深い部分もあるかと思います。一方で、先ほどもありましたように、ひとり親世帯における時間の貧困みたいな話ですとか、子どもの学習時間という問題も同時に見ておかなければいけないということは踏まえての話だったと思いますので、その辺の効果を細かく分析するのと、ひとり親世帯は今回一つのテーマになっていますので、子どもの時間の問題もきちんと評価するということだったと思います。

 では、栃本委員。

■栃本委員 先ほど私は6ページのところで脱却した人のことを話したのですが、なぜそういう質問をしたかというと、無理なのはよくわかっていますけれども、平成26年度の就労を理由に保護を脱却した人数が3万1,000人で、全体に占める割合が18.1というのが注として書いてありますね。その意図というか、なぜそれを書いたのか。それもあってお聞きしたのです。

 もう一つは、26年度だから平成26年7月というのは入るのでしょうけれども、これは自分で調べればいいことなのだけれども、25年7月時点でやると難しいのだけれども、新たに入ってきた人と出てきた人がどのぐらいのボリュームなのかよくわからないのだけれども、そういうのも多少見て、それで差し引き勘定というか、そうすると、もう少しイメージが。先ほどの横の方に移ってしまうというのと変わるやつ、それを見るときにそれがあるとすごく参考になるなと思ったので、それで申し上げたのです。ちょっと言葉足らずで申しわけなかったです。すみませんでした。

 もう一つは、阿部委員、部会長からお話がありましたが、単純に外国と比較するというのは気をつけなければいけないということがあるのだけれども、昔、ジェンダーと健康という国際会議をしたときに、イギリスの話で、ワンペアレントファミリーで年齢区分と主観的健康度という調査がありました。日本のワンペアレントファミリーで生活保護を受けられている方々の就労率は極めて高いですね。それは文化的背景とかいろんな背景があると思いますし、単純に比較することはできないし、さまざまな社会福祉給付があることによっても就労率は違う。また保育サービスを使って仕事をするか、あくまで子供のそばで育児をするかという育児について3歳までをどう見るかとか、どういうふうに対応するかというのもあるから単純に比較はできないのだけれども、就労がすばらしいことであるというのは部会長が話されて、わかった上でどうなのか。健康でなおかつ生活保護から脱却して、かつ子育てというか、そういう関係も維持するということが必要。経済学者の方々は、経済人モデルみたいなものでみるが私は社会学なものですから、社会人という観点。社会人というのは仕事をしている人という意味ではないですよ。社会人として見ますので、そういうことで意見を言いました。

■駒村部会長 ちょっと待ってくださいね。

 ちょっと学問的な話になってしまって、恐らくここにいらっしゃる皆さんは、経済学者だからといって経済モデルを前提にしているわけではないと思いますけれども、今の件に関連することで一言あれば。

■山田委員 ちょっと誤解を受けているので、もう一度話したいと思うのですが、経済学は、別に就労したらオーケーとか、だから時間の貧困を考えていないというわけではなくて、経済学者もウェルビーイングが重要ということで、ウェルビーイングというのはいろいろな源泉があって、例えば子育てにかかわることとか、もちろん働きがいというのもウェルビーイングですし、いろいろな源泉があって、そんなに一面的な。モデルを考えるときはごくごく単純化していますが、きちんとウェルビーイングが重要だと。時間の貧困をなくすことも重要だし、働きがいを得るということも重要だし、いろいろと考えているというのはあえて申し上げたいと思います。すみません。

■駒村部会長 多分小塩先生も同じ御意見だと思いますので、そういうふうな話ですと、ずっと単純になり過ぎますので。

■山田委員 はい。

■駒村部会長 すみません。では、お待たせしました。岩田先生、お願いします。

■岩田部会長代理 先ほど岡部委員から働く意味について、非常に原則的な御意見がありましたけれども、別にそれに反対するのではないのですが、先ほど言いましたように、就労自立にもいくつか違いがあって、たとえば就労する日数が増えた、時間が増えた、新たに就労したなどがあります。理想で言うと、安定した職業についたことによって、就労自立、保護廃止となったということでしょうが、実際には幾つかのゴ—ルというか、イメージがあるわけですね。恐らく福祉事務所の就労支援でも、ともかくあと1時間ぐらい増やせないかとか、もうちょっと働けませんかとか、そういう働きかけももしかしたらあるかもしれないですね。

 私が幾つか東京都内で調査したときに聞いた話なのですけれども、今、就労の場というのは非常に変わっています。先ほどのその他も含めて、パート、アルバイト、日雇い、非常に細切れな時間単位で、所得の低い方たちがつける仕事、例えばビル清掃などというのは決められた時間に行って1人で仕事をして、終わった後申告して、1人で帰ってくるというのです。そこには社会との接点も仲間もいない。私はそれを聞いたとき、本当に社会は変わったのだなと思いました。岡部先生がおっしゃったような喜びとか自己確認というのができるような労働の場がどのぐらい生活保護の方たちに開かれているのかという問題が恐らく出てくるだろうと思うのです。

 私は別に哲学まで検証しろとは言いませんけれども、つまり、時間を増やしたのか、新しい仕事についたのか、それがより安定してきたのか、世帯ごとに自立できたのか。それから一番重要なのは、先ほどの未成年、若い人たちの就労、あるいは世帯から出ていくというのがどういうふうになってきたかということが、生活保護にとっては非常に大事なのです。

 それと、先ほどのその他もそうなのですが、あれは雇用形態ではなくて、就労形態とかなんとかしていただいて、その中身、どういう仕事につかれているのかということも把握していかないと。1万5,000円とか1万6,000円の壁みたいなものができて、そこに集中している。それはそういう選択になってきますね。こういう誘導の仕方をすれば。それがうまくきいたのは、時間を増やした人が多いからだとか、新たに働いた人が多いからだとか、その辺まで知りたいということと、労働現場についての現実をきちっと踏まえた議論をすべきだと思います。

■駒村部会長 労働の問題というのは哲学的な部分もかなりありますから、これ以上やると、次のテーマがもう一個ございますので、よろしければ次のテーマの方に入っていきたいと思います。

 それから、アンケートのプランというか、スケジュールも含めて、事務局からお願いします。

■清水保護課長補佐 まだいつかということまでは具体化していないのですが、年度中にはある一定の期間、例えば1月とか12月というところで区切って、1カ月のときに就労、廃止になった人に対して、受けたときの状況がどうなのかということを把握できればということで考えております。

■駒村部会長 課長、お願いします。

■鈴木保護課長 たくさん御意見をいただきましたので、これから追加的な分析あるいはいろんな調査に生かしてまいりたいと思います。

 1点だけ、8,000円、1万5,000円の点ですが、この層は本当に最賃の適用がある層なのかということもありますので、例えば福祉的就労というのも恐らく含まれているでしょうから、賃金が増えたのは事実なのですけれども、それによって労働時間とかが増えたかどうかというところも含めて検証していきたいと思っております。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 では、続けて資料2について御報告をお願いいたします。

■清水保護課長補佐 それでは、続きまして、資料2「級地制度の在り方の検討」について御説明をさせていただきたいと思います。

 1ページ目をお開きいただきますと、「級地制度の現状」ということで、制度の概要を載せてございます。現行の級地、真ん中のところでございますが、1級地-1から3級地-2まで6区分となっておりまして、下の現状、市町村の数としましては、3級地-2が一番多くなっていますけれども、大都市、被保護者世帯が多いところは1級地-1でございますので、被保護者世帯数の約4割は1級地-1の自治体に属しているという状況になってございます。

 2ページ目でございますが、現在の級地指定につきましては、昭和62年に見直したものが現状になっているということで、昭和62年度当時、どういった形で見直しを行ったかというものを整理してございます。こちらについては、昭和62年は地域における生活水準、生活様式の差ですとか物価差については、最終的に消費に反映されているという整理のもとに、全国消費実態調査を基礎資料として検証を行ったというところでございます。

 マル1のところでございますが、ただ、全国消費実態調査につきましては、一部の町村が調査対象になっていないということから、回帰分析により全市町村の生活扶助相当消費支出額を理論値として算出したというところで、具体的には参考のところで回帰式等も載せてございますが、1人当たり課税対象所得、平均世帯人員、消費者物価の地域差の指数をもちましてこの消費支出額を推計する、理論値を算出しているということでございます。

 マル2のところでございますけれども、理論値では測れない地域差を勘案するという観点から、人口・世帯、産業、所得、物価等から、主成分分析といった手法により、各市町村の総合特性値、都市化の度合いを示す指数というものを算出いたしまして、上記の消費支出額の理論値を補完するという形をとってございます。

 参考に、補完の方法ですが、昭和62年については、1級地、2級地、3級地の3級地制から枝番を設けた6級地制にしたというところでございますが、それぞれ1級地の自治体を1級地-1と2に振り分けるときに、いずれかが上位の範囲であれば上位の枝番としまして、どちらも下位の枝番であれば下位の枝番として級地指定案をつくったという経緯がございます。最終的には自治体の意見等も踏まえて、最終的な級地指定ということで設定をしたということございます。

 3ページ、4ページ目につきましては、それぞれ昭和62年当時の級地指定見直しの結果について整理をしたものでございます。先ほど申し上げましたとおり、昭和62年につきましては、それぞれ3級地制から6級地制に移行するというところで、それぞれの級地に属している自治体を枝番、1級地-1、1級地-2に振り分けたというところで、当時は地域差が拡大しているため、上位級地、下位級地までの最大較差を拡大するというところと、それに伴って枝級地を設けて級地間の差をなだらかにしたという見直しを行ったという状況でございます。

 5ページは、その経過等を踏まえまして、級地制度における課題ということで整理をしてございます。

 まず、1つ目の○でございますが、現行の級地指定につきましては、その見直しから約30年が経過しているということ。あと、平成の市町村合併が行われたため、多くの市町村が広域化いたしました。ということから、各地域の生活水準の実態と今の級地指定が乖離している可能性があるのではないかというところ。

 2番目の○でございますけれども、では、改めて級地指定を見直すということにしましても、その手法に関しまして、昭和62年の手法、1点目については、回帰分析による消費水準を推計する、理論値を出すという手法をとってございますが、こちらが現在も妥当な手法なのか。また、回帰分析を回帰式で分析するにしても、その要素、課税対象所得、世帯人員、消費者の地域差指数というものを用いてございますけれども、当時と比べ経済情勢、その地域の差の状況等も変化が生じているだろうということも踏まえまして、現在の消費水準を算出する変数として妥当なのかというところを改めて考える必要があるというところでございます。

 3点目のポツでございますが、昭和62年、理論値を補完するという手法をとってございますが、補完をする方法、また、補完に用いる指標等も、その妥当性というのは改めて検証してみる必要があるのではないかということで挙げてございます。

 6ページ目につきましては、それを踏まえて論点(案)ということで整理をしてございます。

 まず1点目、基本となる考え方です。級地制度につきましては、生活扶助以外にも、その他の扶助についても影響する部分がございますけれども、まず基礎となる生活扶助基準について検討するということでいかがでしょうかということで挙げてございます。

 また、今回の検証におきまして、生活扶助の基準につきましては、一般国民の消費水準との比較について主に検証を行う方針であることもございまして、この地域差につきましても、各地域の消費水準の差に着目して検証してはどうかということで挙げさせていただいております。

 2点目といたしまして、その消費水準で測る場合であっても、では、どういった単位で消費水準を測るかというところは、現在の指定は市町村単位となっておりますが、実際の生活というのは行政区域にとらわれず営まれているということから、地域の消費水準をどういった単位で測るのかというところも検討する必要があるのではないかということで、挙げさせていただいております。

 3点目につきましては、先ほど課題のところでも触れましたが、回帰分析による理論値を算出する手法が妥当なのかどうか、また、算出するもとになるデータはどういったものが適切なのかというのは検討する必要があるということ。

 4点目につきましては、補完をする方法ということで、62年の都市化の度合いによる補完の方法ということで行いましたけれども、そういった補完をする必要があるのかどうかというところと、また、補完をするにしてもどういったデータ、方法で行っていく必要があるのかということも改めて検討する必要があるのではないかということで、挙げさせていただいております。

 めくっていただきまして、7ページ目でございます。5点目、級地区分及び級地間較差の設定ということで、最終的に級地区分として具体化するためには、現在6級地制である級地区分の階層数であるとか各級地間の較差の程度についても最終的には検討する必要があるのではないかということで、挙げさせていただいています。こちらについては、上記までのような消費水準と各地の地域差をはかった上で、どこで区切っていくかというところの議論になるかと思っております。

 「また」以下のところでございますけれども、合併等、地域の単位に変更が生じた場合等における級地指定の変更のルールにつきましても検討する必要があるのではないかということで、挙げてございます。

 6点目、今後の検討の進め方ということで、いわばまとめの論点といいますか、検討の方法でございますが、級地制度につきましては、この基準部会等でも議論の蓄積が行われておらず、現状ではエビデンスが不足していることとか、活用できる指標についても、先ほど申しました地域単位でもどのようなデータが把握できるのか、また、それをもとにどのような分析手法を用いることができるのかというところをあわせて、推定方法を組み合わせていろんな形を試行する必要があるのではないかというところから、まずは例えば調査研究事業などを実施することによって、議論の基礎となるデータの整備ですとか、消費水準の地域差を推定するための手法の幾つかの候補等も見出す作業が必要かということで、論点として挙げさせていただいておりますので、また御議論をいただければと思ってございます。

 8ページ以降といたしましては、参考資料として幾つかつけてございます。

 8ページは、現行の級地指定の状況を地図に落とした資料ということで、色の濃い自治体の方が高い級地ということになってございます。

 次ページに昭和62年度当時の地図を掲載しておりますので、あわせて御参照いただければと思っております。昭和62年からの変更の要素というのは、市町村合併によるものとなってございます。

10ページは、合併の影響ということで整理した資料でございます。こちらについては、市町村合併によって級地指定の区分に変更があった市町村数をまとめてございます。今までは、市町村合併があったときは、合併の対象の市町村のうちの一番上位の級地にあわせるといったルールで実行してございますので、一番右に昭和62年度以降、級地指定が合併前より上位に変更になった市町村数を載せてございますが、821市町村ということで、昭和62年時点の市町村数の約25%ということになってございます。

11ページ以降は消費の状況ですとか、昭和62年のときに回帰分析で使用した指数等が、過去と現在でどのような状況の変化があったのかということを、まずは都道府県単位で比較を行ってみましょうということで、資料を整理してございます。

11ページは、1人当たりの消費支出額の全国平均との差についてまとめたものでございます。全体的に見ますと、一番高い東京、また、マイナスの差が大きかった九州ですとか沖縄地方、ともに平均との差が少なくなる傾向がございまして、そういった意味では、1人当たり消費支出額の地域差というのは縮小傾向にあるのかなということが見てとれるかと思います。

12ページにつきましては、都道府県別の1人当たり課税対象所得の全国平均との差を比較したものでございます。こちらについては、もともと東京が突出しておりましたけれども、より高くなっている一方で、ほかの道府県では全国平均を下回るところが増加しているという状況でございます。

13ページにつきましては、都道府県別の平均世帯人員の推移ということで、過去からの比較を行ったものでございます。こちらについては、全ての都道府県で世帯人員が減少しているという状況でございます。

14ページにつきましては、消費者物価の地域差指数の年次比較を行ったものでございます。最高値と最低値の差、また、全国平均との乖離幅の平均値を見ましても、いずれも都道府県間の差は縮小傾向にあるという状況でございます。

15ページは、1世帯当たりの消費支出について、全国平均との差を費目別に整理をしたものでございます。主に差が生じているのはグレーの色塗りしている食料、食費の部分、ほかに大きいのは、右下に下がる斜めの線の住居費、特に東京では住居費の割合が大きく見られる。その他の支出というのも地域差の影響が見てとれるかなと思っております。

16ページにつきましては、消費支出がどのような要素と相関が見られるかというものを整理したものでございます。こちらは消費支出と年間収入を比較したものでございますが、年間収入が高い自治体、都道府県ほど消費支出も高いということで、強い相関が見られるという状況でございます。

17ページにつきましては、昭和62年の見直しの際に回帰分析に使用したものでございますけれども、物価の差と1人当たり課税対象所得との相関を見たものでございます。消費者物価の地域差指数と消費支出の相関については0.31ということで、弱い相関が見られるということと、1人当たり課税対象所得との相関係数は0.73ということで、比較的強い相関が見られるというところで整理してございます。

18ページにつきましては、論点の一つとしても地域単位をどうはかっていくかというところを挙げてございますけれども、ほかの調査ですとか制度でどのような地域単位を設けているかという例示をしたものでございます。18ページは市町村の単位より大きい区分をしているような制度、調査、19ページにつきましては市町村単位より小さい区分を行っている調査等を載せてございます。

20ページにつきましては、どのような指標で分析、推計を行っていくかというデータの制約というのも大きな課題でございますので、これは昭和62年当時に用いた主な統計調査の概要ということで載せてございますので、また議論の参考にしていただければということで、挙げてございます。

 資料2の説明は以上でございます。

■駒村部会長 ありがとうございました。

87年にやったきりで、30年ぶりの見直し。見直すかどうかというのもあると思いますけれども、級地区分の評価ということで、いろいろと委員からも意見がありますし、非常に難しいテーマだと思います。きょうは、この方法を決めるわけではなくて、特に2ページから7ページあたりまでの議論を深掘りしてみましょうということなのです。

 岩田先生が62年の経緯を御存じだったらと思ったのですけれども、先に聞いてもいいですか。岩田先生、この辺は御存じでしょうか。

■岩田部会長代理 やったのですけれども、難しかったという結論だったと思います。

 消費水準の差は、きょうのデータに出ているように、収入の差であったり、あるいは平均でやってしまいますと、例えば富山とか福井が高くなるのは、世帯人員が多いので、消費水準でしてしまいますと、そこを工夫しないとおかしくなる。

 前の議論のときは、生活様式が非常に似てくると級地差はもっと縮めてもいいのではないかという議論はありました。ただ、そのあたりもまた今、変わってきているのか。そもそも生活保護というのは、いいかどうかわかりませんけれども、最下10%で水準均衡をやってきたわけです。急に平均、消費水準で見ましょうと言うと、要するに、高額所得者が多くて、世帯人員が低い東京みたいなのが突出するのは当然ですが、そこの議論をしているわけではないですね。国民の最低限の議論なので、どこを見たらいいのかというのがちょっと難しいところですね。

 それから、現状に全部合わせていいかという問題もある。けれども、生活様式と物価というのは非常に関係すると思う。当然関係があるように出ていますが、消費項目の何を見るかということによる。

■駒村部会長 どうもありがとうございました。

 2ページの過去の分析方法を少し御紹介いただいたわけで、これだけだとわからない部分もあると思いますけれども、阿部委員、お願いいたします。

■阿部委員 今の岩田委員のおっしゃったところと重なるところもあるのですが、1つは手法的な話、2つ目がそもそも論なのですが、手法的な話の方が簡単なので、そちらから言います。まず、前回のときは世帯人員だけでコントロールしているので、高齢化率ですとか、それも県別でもなく、市区町村別でやりますと物すごい差が出てきますので、これでは全然コントロールになっていないだろうなというのが、岩田委員も世帯人員の話でおっしゃったと思います。

 そもそも論の方がより重要だと思っておりまして、私たちが検証しなければいけないのは、各地域において最低生活を営む上で必要な経費の差です。ですので、そもそも消費の実態調査でやるということは、消費というのは必ずしも最低生活だけに使われているわけではありませんので、費目を選べばいいのかもしれませんが、例えば食費といったものでさえも最低生活だけのものではないといったことがあり、同じ議論は全国レベルでも言えるのですけれども、もう既に地域差の貧困率とかはすごく大きいということが指摘されている中で、市区町村レベルの消費のデータを使ってやるということは、市区町村レベルで同じような生活水準が享受されているという前提がありますので、それはそもそも成り立たないだろうと思います。

 そうしますと、最低生活を営むためにこの地域に必要なものは何かというような話を一からマーケットバスケットみたいな観点で論じなければいけないわけになってきているのです。そういった観点は冬季加算のときやったのですね。そのときには客観的な要素、例えば気温とか降雪とか、そういった要素を含めてやっていった。住居も恐らくできると思うのです。住宅費ということで、比較的客観的なデータがとれるので。でも、それ以外のところは一体どうやってやるのだというのが非常に難しくて、消費のデータをそのまま使ってしまったら、岩田先生おっしゃるように、もう既に日本の中に存在している地域格差をそのままリプリケートしてしまうというだけになってしまうかと思いますので、それは最低生活の保障といった意味では正しい方向ではないのではないかなということを思います。ですので、消費実態調査を使っていいのかというところです。使うにしても非常に限定的な費目だけを選んでやるべきではないかなと思います。

■駒村部会長 今日は一わたり委員の皆様の意見を聞いてみたいと思いますので、ほかにいかがでしょうか。山田委員、お願いします。

■山田委員 先ほど岩田先生からも御説明があったと思うのですけれども、まずそもそも昭和62年の見直しの手法というのもありますが、その後、見直しを実際に6級地に分けてという、そこのところでも多分何らかの乖離が起こっているような気がするのです。具体的に3ページにありますけれども、18から22.5%に段階的に拡大というのは、どうして18から22.5と決まったのだろうとか、6区分の各級地間の較差が5年間で9%から4.5%に段階的に縮小というのは、これもどうやって。何か根拠があってこの数値が決め打ちされたと思うのですが、仮に2ページの推計式が正しかったとしても、何らかの乖離を生む原因になっていると思うのです。

 あと、見直し前後における級地別の市町村数で、各市町村の級地間移動は行わないというので、またずれが生じていますし、あとは、先ほどの推計式の話で言えば、例えば消費性向みたいなものが地域によってどうなっているのだろうというのはちょっと気になるところです。推計式は、今、阿部委員もおっしゃったので、さておいて、そもそもその後に起こったものでずれが生じているような気がするのですけれども、それは一体どうなっているのかということです。

 特に今、問題になっているのは、合併して、必ず上の方の級地に寄せていっているので、そこでまた乖離が生じているはずなのですが、それはどういうふうに考えたらいいのだろう。なぜ必ず上にまとめていくような方式なのか。そうすると、合併前の級地区分に仮に戻したとして、それはどういう意味合いを持つのだろうか。まずは推計式の後に、実際に政策で一体どんな乖離が起こったのか、どうしてそうやって決まったのかということ。30年も前のことなので、きょうお答えするのは難しいと思いますけれども、少し追えるところは追えればと思います。

 さらに、後ろの方につけていただいているのですが、実際データの制約は物すごく大きいと思うのです。市町村単位のデータ、それこそ最低生活をあらわすような統計というのが市町村区分をさらに分解してとれるのかとか、市町村でとれるのか。実際にここで書かれていくのはなかなか難しいということを多分示しているわけですね。そうすると、そもそも我々がやろうとしても実行可能なのか。もしやるのであれば、データの制約でかなり縛られるところが出てくるのではないかというのが私の意見です。

■駒村部会長 山田委員がおっしゃったように、最近のこの改定の根拠もどういったものなのかというのも知りたいと思います。

 2ページの推計式も市町村別データでどのくらいの数で、どのぐらいの説明力があったのか、統計的に意味のある数字だったのかというのも。

11ページは県別データなので、単位ももう違うので簡単に比較できないとは思いますけれども、11ページの左側などを見ても、神奈川と東京を取ってしまったら、もう関係ないような感じがあって、この推計式、これまでの改定についても少し確認させていただいて、その上で新しい話を開発するという話になっていくのだろうと思いますが、データ制約とか、このデータ外のところに民間の調査みたいなものもあるのかどうか、そういうのも含めて考えていった方がいいのではないかと思います。

 この作業について、ほかに御意見、いかがでしょうか。栃本委員、お願いします。

■栃本委員 先ほどの説明で、7ページ目の一番最後に「今後の検討の進め方」ということで、調査研究事業を実施すること等により、1年でできるとか半年でできるということではないので、それをされるということが最終的なことだと思うのです。、このベースでもって議論するといろいろな細かい話になってしまうのだけれども、要するに、世帯類型や年齢によって消費性向が違うわけではないですか。

 もう一つは、我々は貨幣経済の中で生きていることは確かなのだけれども、世帯類型とか年齢とか、そういうことによって、貨幣ベースで見るということになっているそれはよくわかった上なのだけれども、貨幣が非常に重要な役割を占めるところとそうでないところがあるわけです。そこら辺をよく考えてしなければいけないと思います。

 もう一つは、先ほど合併のことがありましたが、三千数百の市町村があったときから千幾つに減って、しかも、極端に言えば弱者連合みたいな形で限界集落を含む地域が3つ集まって市になったり、そういう中における消費とか生活実態をきちっと丁寧に調べていかれることが重要だと思うのです。

 どうしてもこういう資料の説明は、前回は回帰分析により全市町村の1人当たり生活扶助相当消費支出額の理論値を算出して、それを補正するような形で都市化、総合特性値というものを当てはめてという議論になって、そこの中での議論になりがちなのだけれども、そもそも論で言うと、回帰分析によって全市町村の1人当たりの生活扶助の理論値を出したと言うのだけれども、それが本当に妥当かどうかというのは疑問ですね。ましてや、主成分分析により理論値を補完したというのも同じく怪しいということだと思うのです。

 だから、冒頭話したように、調査研究をするということなので、その際に、繰り返しになるけれども、世帯類型とか年齢とか出発点にさかのぼってみる。それと、貨幣経済と言うとあれだけれども、貨幣による生活が基本ですよ。それはわかっていますが、その上で貨幣によらない生活という実態を丁寧に見ていただくということが必要だと思います。

■駒村部会長 否定していませんから。生活実態、いろいろなものも入ってくるだろうという話だと思います。

 ほかにいかがでしょうか。きょうは、栃本先生、かなり自由なレベルまでお話しいただいていますので、ほかにも気がついた点が。岩田委員、お願いいたします。

■岩田部会長代理 今の栃本委員の御発言にも関係するのですが、例えば非常に過疎の状態になっていたり、東京でも身近なところでいろんな消費財が買えないような地域というのがたくさんあると思うのです。高齢化していきますと、交通手段も限定されたりする。そうしますと消費が縮んでいくということが多分あると思うのです。縮んだ消費実態を級地に当てはめるかどうかというのが一つの大きな問題で、これが若い方たちだったら例えばネットみたいなのを使って買いますから、全体経済から言えば、ある意味で地域差というのは当然縮んでいるはずなのです。ですけれども、現実の地域の中でいわば限界状態に置かれていると、余り買わない生活をするという実態は首都圏の中でもあるのです。ですから、余り細かく生活実態を見てしまっても、そこに合わせるというよりは、ある程度この辺までそろえてやりたいというようなものは必要なのではないかなという気もします。

 だから、使える資料である程度の地域差というのを考えながら、しかし、最低限という意味でもうちょっと底上げしていくといいますか、そうしないと、現状維持でいくとそれで暮らしてしまうということになるのですけれども、生活が縮んでいくというような印象を持っています。

■駒村部会長 恐らく企業のスーパーなどの出店というのは集積が気になると思うのです。地方などになると集積率が非常に悪いと思いますので、集積度合いが悪いところは価格、設定を高くしてくるような可能性もあると思いますので、非常に細かく見ておかないと、単にデータにリグレッションをかけてやるだけだと、ちょっと見えないものもあるのではないかなと思いますし、そもそも物を買わなくなってしまっていることが、では、少なくていいのかという話になってしまうかもしれませんので、人口の分布、地域分布もこの間かなり動いているようなことも考慮して議論していかなければいけないのではないかなと思います。

 ほかの委員はいかがでしょう。岡部委員、小塩委員、この点についてはいかがでしょうか。

■小塩委員 30年もたっているので、見直す必要はどうしてもあると思うのです。ただ、最終的に級地に落とすのは、えいやというところがあると思うのですが、えいやという作業をやるためにも、できるだけ丁寧に数字を見ておく必要があると思います。

 先ほど地域間のバリエーションがだんだんと小さくなっているというような御指摘があったと思うのですが、最低生活を保障するような中身はむしろバリエーションが大きくなっている可能性もありますね。ですから、全体的な消費だけでなくて、もう少し細かいところまで見ておいて、それを全面的に使うという必要はないと思うのですが、最終的な級地を設定するときにはできるだけ多くの資料を持っておいた方がいいと思います。

 以上です。

■駒村部会長 では、栃本委員、お願いします。

■栃本委員 今のお話にも関係があるのですけれども、6ページ目の2の「消費水準を推定する地域の単位」として、「実際の生活は行政区域にとらわれず営まれているとも考えられる」ということで、そもそも級地で、なおかつ千幾つで、その級地だという形でやることが妥当なのかどうかということもあると思うのです。だから、そういう研究もされるのでしょうから、きちっとしていただきたいということ。

 先ほど世帯類型とかそういうことによっても考えなければいけないというのは、農村部とか過疎地などで現金がなければだめだという世帯類型、年齢、そういうのもあれば、そうでもないものもある。余り細かいところまでというのはよくわかりますけれども、その上で、つぶさにきちっと見ていく必要があると思うのです。大都会だから貨幣なしにはだめで、田舎だとそれがないというわけでもないと思うし、JA、農協のコンビニしかないところとか、その他いろんなものがありますから、そういうのもちょっと細かく調査研究で見ていただくと同時に、そもそも級地という形で、級地の中は全部一緒というか、そういう形が果たしていいのかどうかということも検討していただきたいなと思います。

■駒村部会長 岡部先生、お願いできますか。

■岡部委員 今の級地は行政単位で行われています。それを行政単位から変えていくことは、確かに考え方としてはわかります。それは地域の生活様式に見合った生活水準で考えていくことになります。地域の生活の構造を見ていく考え方としてはわかりますが、技術的にどう算出するかという問題は非常に大きい問題であり、これは相当慎重にしなければいけません。ただし、部分的に手直しができるところがあればよいのですが、級地そのものを変えるということになると、相当丁寧に見ていただきたいというのが私の意見です。

 先ほどの話に戻りますが、勤労控除制度についてですが、現在は収入金額別で行っていますが、労働の質で分けていた時期があります。重労働、中労働、軽労働ということで控除額を分けて、カロリー消費の観点で、重労働の方は多くのカロリーを消費するため、控除額を増やすとか、中労働の場合はこれぐらいとか、業種別で分けていた時代がありました。級地の問題も、制度を変える、区分を変えるというときには、それなりの一定の裏づけがないと転換は難しいと考えます。そのため、30年が経過し、確かにその期間機能してきましたが、級地の耐用年数としてこのままでよいかという議論もありますが、相当精査した上で考えていただければと思います。

 行政区単位でやったときに、平成の大合併という問題で級地間較差があると考えますが、もう一つ級地内較差という問題も含んでいます。そういうことも併せて慎重に、考え方とデータと、そして技術的に可能かどうか、そういう観点から精査して検討していただけないかと思っております。要望ということです。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 どのくらいの行政単位、あとは実際の商圏、買い物圏の問題。これは地理的データでできるのか、あるいは簡単に車で行ける人と車で行けない人をどう考えるとか、いろいろな問題が出てくると思いますので、この辺は丁寧にやって、説明力のある、透明性のあるものを出さないと、岡部委員がおっしゃったみたいに、今との接続の問題もあるというお話だったと思いますので、これは。はい、お願いします。

■栃本委員 きょうの資料の10ページ目のところにあるように、3,253の市町村が平成の町村合併で千幾つになっているわけです。なおかつ10ページのデータだと、62年以降区分の変更がなかったところが74.8%だけれども、25%が変更しているわけです。しかも全て上位に変更しているわけです。これの妥当性というのはおかしいというか、検証すべきことだと思いますよ。当時はそうせざるを得なかったいろんな事情があるかもしれないけれども、ここはきちっとやらなければいけないし、先ほどお話ししたように、高齢者世帯の増加であるとか、先ほどの世帯類型の変化というものを考えたときに、果たして上位の上げどまりというか、そういうものが本当に適切だったかどうかというのは、しっかり見ていかなければいけないと思いますよ。

■駒村部会長 難しいテーマの部分ですけれども、いろいろ関連する研究も調べながらこの研究事業を行うということですので、この研究事業の方でもそういう基本研究やデータ、ちょっと幅広目にいろいろな可能性も探していただくと。

 この調査研究事業というのは、大体どのくらいのタイムスパンでやられるかというのを確認できますか。

■清水保護課長補佐 テーマ等にもよりますけれども、可能であれば来年度で調査研究を実施しまして、その研究の成果等を実施後に部会のほうで御提示させていただいて、御議論いただくような形で考えてございます。

■駒村部会長 では、今後、そういう動きについては適宜部会でも御説明いただいて、また部会のほうからの意見も聞いていただければと思います。

 では、岩田委員、お願いします。

■岩田部会長代理 いつもごめんなさい。

 その中にぜひ入れていただきたいと思うのが2点あって、1つは、先ほど駒村先生がちょっとおっしゃったように、むしろマーケットがどういうふうに形成されているかという問題がありまして、これは住宅扶助のときに私が申し上げたと思うのですが、家賃がどういう圏域で形成されているかを調査し、そういうものから家賃と公正な住宅との対応関係を見ながらフェアレントというのを決めていくというやり方をイギリスとかアメリカはやるわけですけれども、そういう考え方が、例えば家の問題もどうせ出てくるに決まっていますから、家の問題がありますね。それから光熱水費のような必需品、こういうのはもしかすると余り地域差がないと出るかもしれませんし、あとは生活に必要なものです。それから携帯電話とかネットとか、こういうものに本当に地域格差があるのかというと、もしかしたらないかもしれない。

 ですから、もうちょっと世帯の消費水準だけでなくて、その消費を支えるマーケットやそこでの価格のありようみたいなものをぜひ中に入れていただきたいというのと、必需品に焦点をぜひ合わせていただきたい。

■駒村部会長 ありがとうございます。

 そろそろ予定の時間になってきましたけれども、もしこれ以上御発言がなければ、きょうはこのくらいで終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。

 では、本日の審議はこれで終了したいと思います。

 最後に、次回の開催について事務局から連絡をお願いいたします。

■清水保護課長補佐 次回は1125日、予定時刻としては午前10時。場所は本日と同じくこの専用第21会議室を予定してございます。また正式に御案内の方をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

■駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。

 御多忙の中、ありがとうございました。


(了)

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