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2016年9月7日 「第5回 労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」議事録

○日時

平成28年9月7日(水)16:00 ~ 19:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館9階 省議室


○議題

(1) 労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目等について
(2) その他

○議事

○小林中央じん肺診査医 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 定刻となりましたので、ただいまより「第5回労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 カメラ等の撮影はここまでとさせていただきます。

 本日は、高松委員、山口(健)委員、中澤委員が所用のため御欠席。小林委員の代理として、日本商工会議所産業政策第二部、高野課長に御出席いただいております。

 また、委員及び事務局に交代がありましたので、御紹介させていただきます。まず委員です。

 日本医師会常任理事の交代に伴い、道永委員から松本委員に交代となりました。

○松本委員 日本医師会の松本です。どうぞよろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 続いて、事務局です。

 安全衛生部長が田中に交代となりました。

○田中安全衛生部長 6月の異動で安全衛生部長に参りました田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 計画課長が宮本に交代となりました。

○宮本計画課長 9月2日付で計画課長に就任いたしました宮本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 労働衛生管理官が鈴木に交代となりました。

○鈴木労働衛生管理官 9月1日付で瀧村の後任で着任しております。よろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 なお、宮本は公務のため退席させていただきます。

 これ以降につきましては、座長より議事をお願いいたします。

○山口(直)座長 それでは、よろしくお願いいたします。

 最初に、資料の確認を事務局からお願いしたいと思います。

○小林中央じん肺診査医 それでは、配付資料の確認をいたします。

 議事次第、資料1、資料2、参考資料1、参考資料2、参考資料3でございます。

 不足する資料がございましたら、お知らせください。

 お手元の青いファイルは、過去の検討会資料になりますので、適宜参考にしていただければと思います。

 以上です。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。

 それでは、議論を進めてまいりたいと思います。本日は、これまで検討会で御議論いただいた内容を事務局のほうで論点案ということで整理をしていただいておりますので、そ

れを中心に議論を進めてまいりたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

山口(直)座長 ありがとうございます。

 それでは、議事を進めてまいりますが、最初に前回の検討会で委員の皆様からいただいた宿題について、事務局のほうで整理してくださっていますので、そこから説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 それでは、資料2をごらんいただけますでしょうか。

 まず、32ページ目をごらんいただけますでしょうか。これは、宿題とされておりましたCKDの年齢分布でございます。CKD診療ガイドライン2012の抜粋でございますが、GFR59以下の方のCKDの患者頻度は60歳以下では男女とも10%未満ですが、年齢とともに増加し、60代では男性16%、女性15%、70歳代では男性27%、女性31%などとなっております。

 次は、35ページをごらんいただけますでしょうか。前回の検討会で宿題とされておりました血圧測定の方法でございます。この資料でございますが、特定健康診査におきます検診の検査実施方法及び留意事項でございますが、この中で血圧の測定回数は原則2回とし、その2回の測定値の平均値を用いる。ただし、実施状況に応じて、1回の測定も可とするとしております。

 また、測定方法でございますが、関係団体の手引き書、循環器病予防ハンドブックを参考にするとされ、この中では水銀血圧計、自動血圧計を用いた場合が示されております。特定健康診査と定期健康診断との連携を図る場合には、実施この特定健康診査での実施方法にて行うことになります。

 次は、43ページをごらんいただけますでしょうか。これも前回宿題とされておりました海外での健康診断項目でございます。

 海外におきます事業者が行う一般健康診断ですが、アメリカなどでは事業者に実施が義務づけられておらず、健康保険で対応するなどとしており、また、フランス、韓国などでは事業者に実施が義務づけられているといった状況にございます。

 海外の一般定期健康診断の例といたしまして、フランス、韓国などを資料としております。見ていただきますと、韓国はほぼ日本と同様、フランスは血液検査、レントゲン検査は産業医の判断で行うなどとしております。

 以上でございます。

○山口(直)座長 ただいまの事務局からの説明内容について、委員の皆様方から何か御質問はございますでしょうか。よろしいですか。

 それでは、次に進んでいきたいと思います。資料1の論点整理案について、事務局からまず通しで御説明いただいて、その後項目ごとに議論を進めていくということでよろしいでしょうか。

 では、説明をよろしくお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 本日ですが、先ほど座長からお話がございましたが、特定健康診査に関する検討状況も踏まえまして、私どもの定期健康診断の各項目の見直し方針などについて、一定のとりまとめをお願いしたいと考えております。

 まず、特定健康診査の見直しでございますが、医学的エビデンスなどをもとに後ほど各ペーパーで出てまいりますが、特定健康診査等の技術的事項を検討いたします健康局が事務局の「特定健康診査・特定保健指導のあり方に関する検討会」におきまして本年6月にこれまでの論点整理として一定のとりまとめが行われております。

 また、特定健康診査の実施方法・内容などを検討いたします保険局が事務局の「保険者による検診・保健指導等に関する検討会」におきましても、健康局の検討会または私どもの検討状況を踏まえまして、8月にこれまでの論点整理として一定のとりまとめが行われております。最終的な特定健康診査の見直しにつきましては、保険局の検討会での検討結果を踏まえて行われることになるかと思います。

 資料1でございますが、これまでの資料に健康局、保険局での検討会の論点整理の内容を主に追記したものでございまして、各健康診断項目に関する方針をとりまとめるための資料として事務局が作成したものです。

 1ページの1ですが、健診の目的、項目の要件です。

 目的につきましては、労働者の健康状況を把握し、労働時間の短縮などの事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症防止、生活習慣病の増悪防止を図ることなど。また、労働安全衛生法(労安法)において健康診断、就業上の措置が義務、保健指導が努力義務であることなどを踏まえますと、診断項目は項目単独または他の項目とあわせて、義務であります就業上の措置を行うためのデータとすることが期待でき、その上で努力義務であります保健指導においても活用するものであることが必要。

 2からが各項目の検討でございます。

 まず、肝機能検査の検討の方向性でございますが、GOTGPT、γ-GTPは肝機能の障害の指標です。文献レビューではGPT、γ-GTPは虚血性心疾患、脳・心臓疾患等の発症予測能もあると。

 2ページですが、健康局の検討会におきましては、肝機能検査は肝機能障害の重症化を早期に評価するための検査であり、基本的な項目、つまり全員が行う必須項目から詳細な項目、特定の方に行う項目へと位置づけを整理すること。虚血性心疾患や脳・心臓疾患等の発症予測能の低いGOTは廃止することも可能。

 保険局の検討会におきましては、肝機能検査は従前から基本的な診断項目として定着した項目であること、被扶養者等にとっては制度上義務づけられた唯一の健診であり、健診項目を削除する場合は、この点も十分に考慮することが必要。また、詳細な項目とした場合には、健診受診者のうち肝機能検査の対象者が占める割合が高い可能性があり、むしろ実務的な負担が増す可能性があることなどを踏まえ、引き続き現状の項目を基本的な項目として維持。

 また、肝機能検査につきましては、肝機能障害を把握し、就業上の措置などを行うことを目的としており、森教授の調査では、調査対象のうち一定の産業医が肝機能検査を就業制限等に活用したという調査結果がございました。また、大久保教授の研究では、調査対象の産業医等において肝機能を就業制限・適正配置に利用することは少なかったとした調査結果。

 これらから、定期健康診断においては、過労死防止対策の充実が求められている中、GPT、γ-GTPを虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症防止の観点から活用すること。GOTを含む肝機能検査は、程度に差があるが、就業上の措置において活用することが期待できることなどから、引き続き健診項目として維持する。

 次に、血中脂質検査の方向性でございます。3ページの()をごらんいただけますでしょうか。

 1)まず、特定健康診査におきましては、血中脂質検査、基本的な健診項目、また測定法は可視吸光光度法、紫外吸光光度法等によること。ただし、空腹時採血を行い総コレステロール値を測定した上であれば、中性脂肪が400mg/dL以下の場合に限り、フリードワルド式を用いてLDLコレステロールを算出することができるなどとしております。

 2)は、健康局の検討会における考え方でございますが、まず1 LDLコレステロールは虚血性心疾患、脳・心臓疾患の発症予測能を備えているが、国際的にはLDLコレステロールの評価はフリードワルド式で行われている。LDLコレステロール直接測定法は、ほぼ日本でしか用いられておらず、測定精度に関する懸念が国際的に指摘。全体的に測定精度が向上しつつあるため、適切な試薬を使用して精度管理が行われれば、臨床検査としてのLDLコレステロール直接法自体の使用は可能。

 これらから、総コレステロールを健診項目へ追加し、LDLコレステロール直接測定法を健診項目としては廃止。

 次に、2 の最後のあたりですが、non-HDLコレステロールを保健指導対象者の指導に用いる。空腹時採血であれば、フリードワルド式で算出されるLDLコレステロールも使用可。

3 中性脂肪は随時採血であっても、虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症予測能があり、健診項目として活用可能。

 3)保険局での検討会ですが、LDLコレステロールは悪玉コレステロールとして既に定着しており、特定健康診査の円滑な運用及び検査値の連続性を担保するため、LDLコレステロールを引き続き健診項目とすべき。ただし、LDLコレステロールのかわりにnon-HDLコレステロールを用いることも可とするかどうかも含め、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の見直しも踏まえ、引き続き検討。

 5ページ、4)高血圧治療ガイドラインでは、脂質異常症は脳・心臓疾患の危険因子の1つであり、採血時によりLDLコレステロールはフリードワルド式で計算。トリグリセライド400mg/dL以上や、食後採血の場合は、non-HDLコレステロールを使用し、その基準はLDLコレステロール+30mg/dL

 5)これらから、定期健康診断等においては、引き続きLDLコレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライドを項目とし、LDLコレステロールはフリードワルド式によって総コレステロールから求める方法。ただし、トリグリセライドが400mg/dL以上や、食後採血の場合にはnon-HDLコレステロールにて評価するとともに、本検査の円滑な実施等のため、LDLコレステロール直接法によっても引き続き可能とすべきでないか。

 次に、血糖検査の方向性でございます。6ページの()でございます。

 糖尿病は、ガイドラインでは脳・心臓疾患の危険因子の1つ。また、糖尿病の診断は、ガイドラインでは空腹時血糖のみならず、随時血糖も可能。

 特定健康診査におきましては、基本的な検診項目とされ、血糖またはHbA1c、随時採血の場合はHbA1cのみを行うとされております。健康局の検討会におきましては、随時血糖は虚血性心臓疾患、脳・心臓疾患の発症予測能があり、健診項目として活用可能と。

 次に、保険局の検討会のほうでございますが、血糖検査を原則として空腹時血糖またはHbA1cを測定することとし、空腹時以外はHbA1cのみを測定。ただし、健診受診率の向上のため、随時血糖を項目に新たに位置づけることが有効であるとの意見もあったことから、やむを得ず空腹時以外においてHbA1cを測定しない場合は、食直後を除き、随時血糖により血糖検査を行うことも可とする。

 また、定期健康診断関係でございますが、大久保教授の研究などでは血糖は脳・心臓疾患のリスク因子として就業上の措置に活用しているとしておられます。

 これらから、血糖検査は、定期健康診断等の項目として空腹時血糖のみならず、随時血糖も含めて引き続き健診項目として維持する。

 また、HbA1cは過去1~3カ月程度の平均血糖値を反映したものであることなどから、医師が必要と認めた場合には実施することが望ましい検査項目としてはどうか。

 次は、尿糖関係でございますが、()の方向性でございます。

 糖尿病は、ガイドラインでは脳・心臓疾患の危険因子の1つであるが、尿糖はガイドラインでは糖尿病の診断には用いられない。

 あと、健康局の検討会におきましては、尿糖は腎臓の排泄閾値に影響を受けること、特定健康診査では血糖もしくはHbA1cの血液検査が実施されることから、廃止することも可能。

 一方、保険局の検討会では、尿検査は既に基本項目として特定健康診査の全ての対象者に実施されており、侵襲性も低い検査項目であるため、引き続き基本的な項目として維持すべき。労働安全衛生法に基づきます定期健康診断の見直しを踏まえ、引き続き検討とされております。

 これらから、定期健康診断等において、血糖の検査が必要である40歳以上35歳などにおいて血糖検査を実施する場合は、尿糖の検査を不要とすることなどが従前の方針だったかと思います。

 また、血糖の検査が必須でない若年層で血糖検査を実施しない場合には、現行の尿糖検査を維持するかどうか。従前、私ども健康局の検討会での考え方をも踏まえて血糖検査を実施する場合は尿糖の検査を不要とするとしておりましたが、保険局の検討会におきまして、尿検査は侵襲性も低い項目であるため、引き続き基本的な項目として維持すべきとされたことも踏まえまして、従前の検討よる方針につきましても再度御検討をお願いいたします。

 次は8ページ目の心電図検査の検討の方向性()からでございます。

 心電図検査は、不整脈、虚血性心疾患、高血圧に伴う心臓の異常等を把握。

 保険局、健康局の検討会におきましても、引き続き詳細な健診として実施するとしております。

 大久保教授の研究では、調査対象の産業医等においては、心電図検査、意識消失を伴う不整脈があるため自動車運転の可否等の就業上の措置の検討のために必要な検査であったと回答した調査結果があるとされております。

 これらから、定期健康診断におきましては、心電図検査を引き続き検査項目として維持する。

 次は、9ページの貧血検査の方向性()でございます。

 貧血検査は血色素量、赤血球数の検査であり、高齢期に増加する貧血や食行動の偏り等による判決を把握。

 健康局の検討会におきましては、血液一般は貧血の重症化を早期に評価するための検査であるが、内臓脂肪の蓄積に起因する生活習慣病ではなく、特定健康診査において実施すべき健診項目とは言えないことから、健診項目として廃止することも可能。

 保険局の検討会におきましては、貧血検査は、従前から詳細な健診項目として実施され、健診受診者に定着した項目であること、被扶養者等にとって制度上、義務づけられた唯一の健診であり、健診項目を削除する場合はこの点も十分に考慮することが必要。また、女性の健診受診を促す観点からも重要な項目であること踏まえ、引き続き詳細な健診項目として維持。

 一方、私どものほうでございますが、貧血検査は、貧血を把握し、就業上の措置などを行うことを目的としており、大久保教授の研究では、調査対象の産業医等において高所作業、自動車運転、暑熱環境下での重筋作業等の就業制限・適正配置に用いていたと回答した調査結果。

 これらから、定期健康診断におきましては、貧血検査は就業上の措置において活用していることなどから、引き続き現行の健診項目であります血色素量、赤血球数を維持する。また、特定健康診査の健診項目でありますヘマトクリットにつきまして、女性に多い小球性低色素性貧血が把握できることなどから追加すると。

 なお、今回御検討いただく血清クレアチン、HbA1cなどの位置づけと比較いたしまして、ヘマトクリットを必須項目とすることで妥当であるかなどについても、あわせて御確認をお願いいたします。

 次は、尿蛋白検査等の腎機能検査の()検討の方向性をごらんいただけますでしょうか。

 まず、慢性腎臓病は、脳・心臓疾患の危険因子の1つ。透析導入患者原疾患として、1)糖尿病性腎症、これは高血圧による糸球体細小血管障害が主であり、アルブミン尿が早期診断マーカーとして考えられてきたが、陰性でもGFRの低下例がある。2)慢性糸球体腎炎は、早期の診断には尿検査が有効など。3)腎硬化症は高血圧が原因、尿蛋白で陰性でGFRが低下する例が多いなどとされております。

 また、森教授の就業上の措置の類型化では、腎不全を持つ労働者は、就業が疾病経過に悪影響を与えるおそれがあることから、就業措置を行う場合がある。

 また、健康局の検討会におきましては、若年層に多く見られます腎機能障害の主たる原因は、尿蛋白検査が早期の発見につながります糸球体腎炎であり、中高年に多く見られる腎機能障害の主たる原因は、糖尿病性腎症や腎硬化症であると。

 尿腎機能検査は、4074歳の対象者に多く見られます高血圧による腎硬化症、糖尿病による糖尿病性腎症等を対象疾患とし、血圧または代謝性検査が保健指導判定値以上の者で、医師が必要と認める者に対して実施すること。また、特定健康診査の詳細な健診項目として、血清クレアチン検査を実施するものとし、糖尿病性腎症等の重症化予防等が課題となっている保険者が尿蛋白検査とあわせて実施することも可能。

 次に、保険局の検討会ですが、尿検査は既に基本項目として特定健康診査の全ての対象者に実施されており、侵襲性も低い検査項目であるため、引き続き基本的な項目として維持すべきである。定期健康診断の見直しを踏まえて引き続き検討とされております。

 また、血清クレアチン検査について、保険局の検討会では、詳細な健診項目に追加し、eGFRで腎機能を評価すること、対象者は血圧または血糖値が保健指導判定値以上となる割合が高い年齢を設定した上で、医師が必要と認める者を対象とすることが考えられる。

 次に、定期健康診断の検討の方向性ですが、12ページのエをごらんいただけますでしょうか。

 尿蛋白検査のみでは必ずしも把握できない腎機能障害もありますが、例えば、糖尿病性腎症においては高血糖、腎硬化症においては高血圧がそれぞれ原因と考えられるなど、基礎疾患等が背景に認められるなどとしております。

 また、特定健康診査に係る検討では、腎機能検査は検査対象を絞り込んだ上で実施する検査などとされております。

 これらから、現行の必須項目として、既に実施されております尿蛋白検査は維持し、血清クレアチン検査については、基礎疾患などを含め労働者の健康状態等を勘案しながら、医師が必要と認めた場合には実施することが望ましい検査項目としてはどうか。

 次に、血圧の測定の()検討の方向性についてでございます。

 高血圧は、日本血圧学会のガイドラインでは、脳・心臓疾患の危険因子の1つ。また、森教授の調査でも、調査対しようとしたうち一定の産業医の方が収縮時血圧、拡張期血圧を就業制限に活用するといった調査結果がございました。

 これらから、定期健康診断におきまして血圧の測定は高血圧が脳・心臓疾患の危険因子の1つであり、就業上の措置においても活用していることなどから、引き続き現行の健診項目を維持する。

 次は、13ページからの胸部エックス線検査・喀痰検査の方向性でございますが、15ページの()をごらんいただけますでしょうか。

 結核等の呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング検査。喀痰検査は、結核の早期発見等を目的として実施。

 胸部エックス線検査の必要性、また対象者等につきましては、平成17年の改正結核予防法の施行等に伴い、「労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会」などにおきまして調査検討が行われた結果を踏まえたもので、この調査検討から約10年が現在経過しているところかと思います。

 次に、大久保教授の調査研究では、調査対象の産業医等におきましては、胸部エックス線検査を主に結核対策などに活用しており、グローバル化等に伴う人材の流動性の高まりにより、必要性は高まっているなどと回答した調査結果。

 これらから、定期健康診断におきます胸部エックス線検査・喀痰検査につきましては、本検査の必要性、対象者等に関する調査検討から約10年経過していることなどから、知見の集積等に務めるとともに、現行においては従前の調査検討等を踏まえて、引き続き現行の健診項目等として維持する。

 次が、腹囲の検討の方向性でございますが、17ページの()をごらんいただけますでしょうか。

 高血圧治療ガイドラインでは、メタボリックシンドローム、これは心血管病の危険因子。また、メタボリックシンドロームはウエスト周囲径が一定以上で、脂質値、血圧値、血糖値のうち2項目以上が一定値以上を診断基準としていることから、腹囲は他の項目とあわせて心血管病の危険因子の1つ。

 また、保険局、健康局の検討会におきましても、引き続き基本的な健診項目として実施とされております。

 これらから、定期健康診断におきまして、腹囲は他の指標とあわせて脳・心臓疾患防止のための就業上の措置において活用できることなどから、引き続き現行の健診項目を維持する。

 次は、身長、体重、視力及び聴力の検査の方向性でございますが、18ページの最終行から見ていただけますでしょうか。

 文献レビューでは身長、体重、BMIは、精度、有効性とも確立。

 次に、BMI25以上の肥満は、ガイドラインでは脳・心臓疾患の危険因子の1つであり、BMIは身長、体重から算出。

 視力検査、聴力検査は、視覚機能、聴覚機能を評価し、適正配置に配慮するためのもの。

 これらから、定期健康診断におきまして、身長、体重、視力及び聴力の検査は、就業上の措置において活用が期待できることなどから、引き続き現行の項目を維持する。

 次は、既往歴及び業務歴の調査ですが、19ページの下から2つ目の・でございます。

 労働者が、自らの疾病による労働災害を防止すること。また、就労により当該疾病を増悪させないことなどが必要であり、的確な疾病情報の把握、対応が必要。

 また、健康情報の取り扱いにかかる留意事項におきましては、定期健康診断の結果を含む健康情報を、事業者は、労働者の健康確保に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないこととしております。

 次のページの1つ目の・でございますが、ストレスチェック制度におきます健康情報は、結果は労働者の同意がない場合には事業者には通知されない。また、昇進・異動に関しまして直接の権限を持つ監督的地位にある方は、ストレスチェックの実施従事者には含めないなどとしております。

 次に、()の検討の方向性でございますが、まず既往歴は、通達にて直近に実施した健康診断以降のものとしておりますが、現在罹患しております疾病に関する情報が含まれることが理解されにくいことなどから、これらが明確にわかるようにする。

 また、特定健康診査において求められております服薬歴ですが、定期健康診断においても、就業上の措置の検討において活用が期待できることなどから調査すると。具体的には、特定健康診査におきまして、1 血圧、2 血糖、3 コレステロールを下げる薬について服薬歴を調査しており、定期健康診断におきましても把握するように指導しているところでございます。

 今後、定期健康診断においても特定健康診査との連携を図る観点から、これらの服薬歴とともに就業上の措置に結びつく可能性がある薬につきましては、問診において把握するように指導してはどうか。

 次に、特定健康診査において求められております喫煙歴でございますが、定期健康診断においても喫煙歴が脳・心臓疾患の危険因子の1つとしていることなどから調査する。

 なお、これら上記の既往歴等の調査ですが、必要に応じて配置転換等を行い、疾病による災害防止等を図るための重要な調査ではございますが、特に機微な健康情報の調査であることから、これらの情報の取り扱いなどにつきまして別途、各業種、企業での取り扱いの現状と課題の把握、また、検討を行い対応すべきでないかとしております。

 次に、21ページの自覚症状及び他覚症状の有無の検査の()方向性からでございます。

 まず、1)他覚症状に関するものにつきましては、通達に基づきまして、受診者本人の訴え、問視診に基づき、異常の疑いのある事項を中心として、医師の判断により検査項目を選定して行うとしております。

 その際の選定して行う検査項目でございますが、打診、聴診、触診などの臨床診察的な手法による検査であること。

 また、2)特殊健康診断の対象となっておりません化学物質を取り扱う労働者につきましては、SDSで記載されております健康影響が見られるか否かの調査を行うことが重要であることなどを改めて示すことが必要ではないか。

 また、他覚症状の名称の見直しを検討してはどうか。

 次に、22ページをごらんいただけますでしょうか。3の()健康診断項目の省略についてでございます。

 まず、1)血液検査等の定期健康診断におきましては、規則・告示に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することができるとしております。

 また、この省略につきましては、個々の労働者の健康状況の経時的な変化、自他覚症状等を勘案しながら判断することが大切などとしております。

 2)この検査項目の省略の状況でございますが、50人以上の事業所からの報告ですと、全受診者1,349万人に対しまして、例えば、血糖検査の受診者ですが1,136万人と、全受診者の16%が当該項目を省略しております。

 しかし、一部におきましては、省略の判断を医師でない者が一律に行うといった、適切に省略の判断が行われないことも懸念されることなどから、規則・告示に基づきます血液検査等を省略する場合の判断は、個々の労働者ごとに医師が省略が可能であることを認める場合において可能であることなどについて、普及・徹底を図ることが必要ではないか。

 4)血液検査などの省略基準、告示改正から約30年弱経過しているところでございますが、これらに係る知見の集積等を図ることが必要ではないか。

()のその他でございますが、1)定期健康診断等の受診の徹底を一層図ることが必要ではないか。

 2)特定業務従事者への健康診断につきまして、対象業務の妥当性について非常に古い規定でございますので、調査等を行うことが必要ではないか。

 3)健康診断時に治療中である場合には、主治医と連携が重要であり、その際の健康診断は主治医において既に取得されているデータを取得・活用し、診断することを促進すべきではないか。

 4)その他追加すべき検査項目はないか。

 以上が資料1でございます。

○山口(直)座長 ありがとうございました。

 それでは、1ページ目までお戻りいただいて、項目ごとに検討をしていきたいと思います。

 最初の「1 定期健康診断等の目的、項目の要件等」は文章編ですが、ここについて何か御意見ございますか。

 森委員。

○森委員 この文章そのものではないのですが、今回の検討の範囲について確認いただきたいことがあります。検討の範囲が定期健康診断ということは理解しているのですが、定期健康診断の項目に変更があった場合には、雇い入れ時健診もそれに合わせて変わるという理解でよろしいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 ここで「等」を入れておりますのは、雇い入れ時健診や特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断にも共通項目がかなりありますので、個々の健診項目の取り扱いはここで御議論された内容が反映されるようにしていくことを念頭に御検討いただければと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、検査項目をそれぞれ検討していきたいと思います。まず、肝機能検査についての論点整理案ですが、委員の皆様方から御意見がありましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 私からよろしいでしょうか。最後の「これらから」で書かれていることで、内容はこれで異存ないのですけれども、出方の順番として、肝機能検査は肝機能をきちんと調べるためというのが第一義的な目的ですので、1)と2)は順番を反対にしたほうがよろしいのではないかと思いましたが、いかがですか。

○塚本産業保健支援室長 その方向で検討したいと思います。

○山口(直)座長 GPT、γ-GTPが虚血性心疾患とか脳血管疾患のリスクの予測に役立つということは多分事実なのだろうと思いますが、これは我々が言う代理指標的な意味なのではないかと思いますので、そういう整理でお願いできたらと思います。

○森委員 済みません、表記は今後ともGOTGPTを使う予定ですか。ASTALTに変更していくとかそのような方向性はどのようになっていますか。

○塚本産業保健支援室長 特定健康診査では、この名称を変えない方向のようですから、そこは少し調整していきたいと思いますが、なるべく同じような文言を使っていければと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、肝機能検査については以上でまとめを進めていくということで、よろしくお願いいたします。

 次に、血中脂質検査について御意見がありましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 土肥委員どうぞ。

○土肥委員 5ページの5)の最後の部分で、「LDLコレステロール直接測定法も引き続き可能とすべき」というのは、具体的にはどういうことを指すと理解すればよろしいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 これは今現在、特定健康診査で行われているやり方を引き続きという趣旨になると思います。具体的にとるデータは総コレステロールまたはLDLコレステロールの直接法で、それに加えてHDLコレステロールと中性脂肪をとるというものです。つまり、LDLコレステロールは計算式で出すために総コレステロールをとる場合もありますし、LDLコレステロール直接法でとる場合もあるということで、従前の方向性に、保険局の考え方を追記した内容にしております。総コレステロールまたはLDLコレステロール直接法で値をとる、プラスHDLコレステロールと中性脂肪をとるというのが、この案です。

○土肥委員 表記するときに、具体的にできることとすべきことがはっきりわかるようにされたほうがいいと思います。この表記ですと、引き続き可能とすべきではないかという意味では、項目として残るんだよと、それは直接法でも計算法でもいいんだよということを示しているという理解でよろしいのですね。わかりました。

○塚本産業保健支援室長 ここは、もしこれでよければ、書き方を少し工夫したいと思います。

○山口(直)座長 私も土肥委員と同じような意見を持っていて、会議が始まる前に事務局とお話ししたのですが、まず検査項目をきちんと今の事務局の説明ように決めて、その上で動脈硬化性疾患のリスクをきちんと予測評価するために、LDLをフリードワルドで計算するとか、あるいはnon-HDLコレステロールを計算するということについて、きちんと説明をするほうがわかりやすいのではないかと提案をしたところです。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、事務局のほうで進めていただくことで、よろしくお願いいたします。

 3点目、血糖検査についてはいかがでしょうか。どうぞ。

○森委員 これも表現解釈の問題だと思いますが、HbA1cの最後の「医師が必要と認めた場合には実施することが望ましい検査項目」というのは、もともと血糖検査というのは法令規則にあるから、その中の選択としてHbA1cはある一定の条件では実施することが望ましいという理解でよろしいですか。

○塚本産業保健支援室長 現行では特定健康診査が空腹時以外ですと必ずHbA1cとなっておりますので、現行では空腹時以外は血糖のかわりにHbA1cをとっても良いとしています。今回は随時採血であっても、空腹時採血であっても血糖は評価すると書いていますから、まず、血糖はとっていただき、それに加えて、例えば医師が必要があると認める場合、ヘモグロビンで平均値が出ますので、最近だけ摂生されているような方などに対して同一検体で望ましい検査ということで実施するというような案になっているかと思います。血糖のかわりに随時採血ではHbA1cに変えてもいいというのが現行通達です。ただ、平成10年の通達では血糖は基本的にとってくださいと。ただし、医師が必要と認めるときは同一検体でHbA1cをとることが望ましいとしておりますので、このころのやり方に戻るような案になるかと思います。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。土肥委員。

○土肥委員 これは、今までのHbA1cに対する項目の考え方から、とるように進めたのか、それとも後退したのかという総論でいきますと、どちらだという理解をすればよろしいのかを、まずお教え願えますか。

○塚本産業保健支援室長 今までは血糖値かまたはHbA1cという選択だったものが、学会のガイドラインと同様、血糖値は必ずとり、必要に応じてHbA1cが追加されるという形になったことから、どちらかというと1つは確実に、それプラス必要に応じてという形ですから、ある意味充実された面もあるのではないかと思います。

○山口(直)座長 よろしいですか。森委員どうぞ。

○森委員 おそらく今までは選択だったので、血糖値かHbA1cの一方を実施するという事業者が多かったと思いますが、血糖検査を行った上でさらにHbA1cを追加するとなると、ハードルは実質上高くなると理解したほうが自然かなと思います。個々の項目で就業制限の判断に用いられている検査項目に関する記述がありますが、我々の調査では、糖尿病についてはHbA1cが用いられているケースが多いという結果でした。このことを考えると、HbA1cを測定する方向により進むように配慮した対応をしないと、特に糖尿病については非常にたくさんの人がコントロール不良のまま働いている現状からすると、就業上の措置が少し後退するのではないかという不安があります。

 もう一点は、私たちは健康診断の項目を法定項目と法定外項目というのは明らかに違うものとして考えています。つまり、労働者に受診義務があるのか、ないのかという視点です。労働者が受診を拒否できるかどうかというところにおいても、法定項目と法定外項目は明らかに違うわけで、医師が必要と認めたということがあった場合には、法定内項目として事業者が実施するのであれば労働者に受けさせるということが前提と考えないといけないのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 医師が必要と認めたときに実施することが望ましいという形、これは従前から通達で示したものなのですが、これだと法定外項目になります。今回HbA1cと血糖値の考え方のところですが、これは糖尿病の臨床診断のフローチャートあたりがかなり重視されて御議論されたと理解しております。この中では、HbA1cだけですと、必ず血糖について再検査をやらなくてはいけないという流れも書いてあります。基本的には必ず血糖はとらなくてはいけないとされています。それにあわせた方で原案は血糖をとった上で必要と認めた場合についてはHbA1cをという形の論点整理案にしているものです。

○山口(直)座長 土肥委員、お願いします。

○土肥委員 いわゆる法定項目なのか違うのかというのは非常に大きな議論でございまして、例えばこの文章は、医師が必要と認めた場合には実施する項目とするとすれば、これは法律の必須項目内だという考え方をするという理解で、「望ましい」がついているがゆえに法定項目外になっているのだという考え方になりますね。そうであれば、やはり医師が望ましいと考えたときにすべき項目、つまり法定項目があって、必要がないと認めたときには省略していい、それでいいと法律は考えているわけですね。医師が必要と認めたときにしたほうがいいというのであれば、やはり医師の裁量権の中で法定項目という認識にしたほうが、実際の運用としては非常にいいのではないかと私は思うのですが、ほかの先生方の意見をお聞きしたいと思います。

○山口(直)座長 ほかの委員の皆様いかがでしょうか。法定項目というのは、イコール全員に実施ということですね。

○塚本産業保健支援室長 基本的にはそうなります。告示でこういう場合は医師が省略することも可能とすることもできますが、基本は座長が言われるとおり、原則としては全員実施ということになります。

○山口(直)座長 今の御議論を聞いて、全ての検査についてそうなのですが、早期発見的な二次予防的な側面と、定期健康診断の場合には疾病管理的な側面もございまして、多分、森委員がおっしゃったような位置づけというのは疾病管理的なことも含んでいて、その場合に、この検査に限らずですけれども、ただ医師が必要と認めた場合という以上に、こういう場合にはやるべきだという目安というか、ガイドラインというものをきちんと明らかにして、必要なのに省略されているみたいなことがないように、そういう方向性で考えていただいたほうがいいのではないかと思いましたけれども、その辺についてはいかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 これにつきましては、後ほど出てきますが、医師が必要でないと認めたときの省略の考え方と、通知に基づいて追加することが望ましい、この辺の考え方につきましては、おっしゃるとおりある程度、こういう場合でこういう形をとったらよくなったとか、実例の調査もしながら何らかの形でお示しできるように調査研究を行うことは必要ではないかと考えております。

○山口(直)座長 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 医師が必要と認める場合には再検査・精密検査という扱いと、法定の場合はいわゆるセット検査でやってしまいますけれども、医師が認めた場合は再度やるわけですから、再検査もしくは精密検査とどう違うのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 最初とった同一検体で検査することが望ましいというのが従前の平成10年の通達のやり方です。それと、まさに言われました後でもう一回やるというような再検査とか要精密検査的なやり方があるかと思います。論点案では、同一検体でやっていくことになるかと思います。

○岡田委員 同一検体でやったとしても法定ではないですよね。そうすると、それは医師が再検査もしくは別途とられた検査ですよね。費用はまた別になってきますよね。

○塚本産業保健支援室長 費用は個々の事業所の取り決めで行っていただくことになるかと思います。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。福田委員どうぞ。

○福田委員 文言の表し方だと思うのですが、「医師が必要と認めた場合には実施すること。」、そういう表現ではまずいですか。医師は個々の従業員諸氏の健康状態をかんがみて、そこで判断すると。先ほど室長がおっしゃられたように、その場しのぎの血糖逃れが結構いるわけですよね。それは森委員がおっしゃられたように、あるいは土肥委員がおっしゃられたように、結構HbA1cは高いと。ですから、労働者諸氏の健康管理あるいは疾病管理まで考えてみると、医師がこの検査は絶対に必要だと、だからこれは同一検体でHbA1cはとりなさいよと。「望ましい」ではなくて、「医師が必要と認めたら検査をすること」という表記では。

 あとは実はおっしゃるとおり法定外健診になりますから、これは事業主様と各健診機関との間のやりとりで、この費用はどうするとかそういう話になると思うんですよね。やはりわかりやすさを追求するのであれば、余りグレーにせずに「望ましい」は外して「実資すること。」以上終わりと。いかがでしょうか。

○宮本委員 ここまで皆さん委員がほぼ一致して必要性を強く訴えている話ですから、これはむしろ原則として行うことにして、医師が必要でないと認めるときは省略できるという形にして、この項目について医師が必要でなければ省略できるというような、一段上の書き方にしてしまったほうがよろしいのではないかと思うのですが、そういうことは不可能なのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 現状では、そこまでの理解はなかなか得られにくいのかなあと考えております。多分従前の並びですと局長通達になるかと思いますが、ある程度通達でお示しすることによって、健診機関、産業医などの御配慮をいただけますので、従前のHbA1cの書き方であったとしても一定の対応は医師の判断によってなされるのではないかと思います。

○福田委員 先生のおっしゃりたいことはよくわかるのですけれども、これは実際、事業主にとったら、それを必須にされてしまうとかなり抵抗があるのは事実だと思います。これは足し算じゃなくて引き算みたいな形で、医師が望ましいと言ったらやってくださいよぐらいのニュアンスでお書きしたほうが、実際には実施されやすいのだと私は思います。

○山口(直)座長 土肥委員どうぞ。

○土肥委員 例えば、「実施することが望ましい」でいいとしたとしても、それが法定項目の中である、つまり、医師が望ましいと思ってするということは、それが最終的に法定項目として理解されると。費用がどうあるべきかというのは別だと思いますが、望ましい判断するとした結果は当然、法定項目の血糖と同様に扱っていただいて、評価なり、それが就業上の措置に使えないと、せっかくしたHbA1cを追加した検査の意味がかなり薄れてしまうと思うので、それは最終的にした結果は法定内で扱うという方法があれば、「望ましい」でも構わないのではないかと私は思うのですが。

○森委員 最初に雇い入れ健診も結果的に検討の範囲になりますねというお話をさしあげたのは、実はこのあたりと関連があります。「望ましい」というところが、例えば、若い人の雇い入れ時にはそんなに問題にならないのですが、今後40代、50代、場合によっては60を超えた方が会社を変わるということが頻繁に起こってくるでしょうから、その最初の健康診断でHbA1cを測定した上で事後措置をしないと、とりあえず働かせた上で数か月後に精密検査に行くまでそのままで働かせて様子を見ることはかなり厳しいのではないかと思います。今、土肥委員がおっしゃったように、必須にできないとしても、それが使える形にしておかないと、産業医としてかなり手足を縛られてしまうという感じがするのですが。

○塚本産業保健支援室長 ここの考え方ですが、健康診断の事後措置に関する指針にも書いてございますが、健康診断を行って要精密や要医療になってくる。その結果をなるべくいただいて、それをもとに産業医の先生方に就業上の措置を講じていただくという流れは現在打ち出しておりますので、これも同じように流れとしては、法に書いていないから、「望ましい」と書いているから何もやらないでいいというような話には、他の並びからするとならないのではないかとは思います。

○山口(直)座長 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 これは、現実に検査をしたときにすぐに血糖値の結果がわかるという前提ですよね。検体を残しているということは、そういうことですよね。本来であれば、健診を受けたらデータが産業医のところに来て、1週間前の健診の結果が来て、それを見て私たちは、糖尿病の疑いがあるからということで紹介状を書くこともあるんです。だから、これは、その日のうちに検査結果が出て同一検体を残していて、同一検体を残すのも期間はどのくらいなのですか。同一検体を残す場合は、そんなに長期に残しておられるのでしょうか。

○福田委員 冷所で保存すれば血糖値は余り影響は受けないと思います。

○岡田委員 全例残しておられるということですか。

○福田委員 そうではないです。今のお話ですと、少なくとも産業医は前の歴であるとか、その方の健康状態をある程度把握できていますから、その場で血糖値がわからなくても、あらかじめこの方についてはこうしましょうということは十分可能だと思います。ですから、先生がおっしゃられているのは二次・再検のところで、ここでうたわれているのはあくまで当日の場面ですよね。ですから、そこのお話は少しずれがあるのではないかと思います。

○岡田委員 先ほど、森委員がおっしゃった雇い入れ時は別の機関で受けられていることが多いですよね。中小企業さんですと健診機関さんで。その結果が産業医のところに来て血糖値が高いというときには、HbA1cをさらに検査するというのは、基本的には保険を使って紹介状を書いてHbA1c、糖尿の精査をするということが多いのではないでしょうか。

○福田委員 現状ではそうだと思います。

○岡田委員 その場合は、健康保険での診療になってしまう可能性がありますよね。

○福田委員 全くそのとおりだと思います。

○岡田委員 わかりました。

○山口(直)座長 武田課長どうぞ。

○武田労働衛生課長 基本的に医師が必要と認めた場合というのは、個々の労働者の状況を、例えば時間軸で考えてみますと、そのときの検査結果も踏まえてという場合もあるかもしれません。また、今までの経過や前回のデータ、そのほかの理学的な所見等も踏まえてということもあるかもしれません。そういうことも含めての医師の判断ですし、もう一つは、例えばこれは一応やっておいたほうがいいかなというような内容的な判断基軸もあるかもしれません。これは確実にやったほうがいいとか特段必要ないであろうとかのレベル感も含めての医師の判断ということもある。ですので、これは医師の判断でとなった場合は、いろいろな判断基軸に基づいてということだと考えられますので、HbA1cについても先生方いろいろと御議論いただいたような観点もその判断にあたって重要かと考えています。

○山口(直)座長 松本委員どうぞ。

○松本委員 この「医師が必要と認めた場合には」という文言は、ほかのことでもたくさん出てきますけれども、今、武田課長さんがおっしゃったようなことが今までの基本的な考えであって、このHbA1cに限らない話だと私は思っております。

○山口(直)座長 ほかにいかがでしょうか。お願いします。

○黒澤委員 今のお話で、どれくらい例えば実効性というか、血糖で引っかかるべき人がどれくらい引っかかって、それで漏れた人がA1cなり何なりという順番で考えると、血糖をとればある程度引っかかるだろうという考えのもとに立っているということでいいのでしょうか。血糖でどれくらい引っかかっていて、あとはA1cでもやって念のためその率をもうちょっと上げるとか、どんな考えで言っていると考えればいいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 基本的に血糖ですが、大体10%程度は現行でも有所見という状況です。そういう方々について、場合によってはより判定するためにHbA1cをとっておこうかというような流れも一つ考えられるのではないかと思います。

○黒澤委員 そうすると、引っかかるべき人は血糖でもう引っかかっているんだという考えに立って、この案を出しているという理解でいいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 その部分と、健診のときだけ摂生されているような行動パターンが類推されるような方については、最初からオーダーをかけておかないとわからないというケースなど、いろいろなケースがあるかと思いますが、一定の方は今までも血糖で引っかかっている、それをさらに詳細にどのような糖尿病なのか見たいというときには、HbA1cもオーダーをかけることもあるかと思います。

○山口(直)座長 柳澤委員どうぞ。

○柳澤委員 専任の場合はかなり予測可能です。嘱託の場合、会社によっては、翌年の健康診断を1年間かけてやるところが結構あります。その場合、嘱託の産業医はどのタイミングで医師が必要と認める検査項目としてチェックするのかが問題になります。実際、ダラダラと健診を行う会社の場合には、チェックできないまま血糖だけで終わってしまうということもあります。その辺の考え方はいかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 過去のデータ変動を見ながらオーダーをかけるというようなことはできるのではないかと思います。

○柳澤委員 専属の場合、それはできると思いますが、月に1度ぐらいしか行かない嘱託の場合、1年間あるいは6カ月ぐらいかけてダラダラ健康診断をやると、相当詳細に会社側と、特に健康管理を担当するような方々と打ち合わせをしておかないと、それはなかなか難しいと思います。そういうことを考えると、HbA1cをこのような形で設定するというのは有効なのかどうか考えなくてはいけないと思いますが、その辺はどうですか。

○塚本産業保健支援室長 日本医師会の調査の中でも、一番多い嘱託産業医の活動時間が月2~3時間から5時間で、半分が巡視、半分は健康診断関係の業務をしていただいているかと思います。医師による血液検査、エックス線の省略のやり方ですが、過去の状況、当日の診断医の方の自他覚症状の調査などから判断する流れの中である程度御検討いただくようなやり方はあるのかなと考えております。

○山口(直)座長 森委員どうぞ。

○森委員 「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」は、空腹時血糖またはHbA1cを測定することとし、空腹時以外はHbA1cのみを測定すること。食後を除いて随時血糖の場合も可とするという結論なんですよね。これをそのまま労働安全衛生法に基づく定期健康診断に適用することができない理由は何ですか。

○塚本産業保健支援室長 これを我々がそのままコピーすると。

○森委員 確かに、糖尿病の診断を行うために健診をやっているのか、コントロール状態を見て事後措置をするためにやっているのか、どちらが職域での定期健診の目的かというと、今までの議論でも後者のほうが優先だったと思います。先ほどのご説明からすると、糖尿病学会のガイドラインで糖尿病を診断するために血糖が必要なので、空腹時か随時かの血糖値を入れましょうという話だと思いますが、そもそも目的の優先順位が逆になっているのではないかと思いますが。だから、むしろ特定健診の項目をそのままでいいのではないかと思います。

○山口(直)座長 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 デコードスタディというのがあるのですけれども、空腹時血糖が正常であっても食後血糖が高い場合は死亡率が非常に高いと世界的に発表されたデータがありますので、もし今、森先生がおっしゃったように診断をするのか、就業上の措置上コントロールが悪いのかと見るのであれば、全く考え方を変えないといけないと思っているのですけれども、その点いかがでしょうか。健康診断の意味は、就業上の措置、就業していいかどうかの判断、もしくは糖尿病の合併症もそうでしょうけれども、そうすると、血糖値というのは基本的には糖尿病の診断ではありますけれども、予後のリスクはなかなか見られないということにはなるのですが、デコードスタディは、いわゆる空腹時血糖が正常であっても食後血糖が高い場合の死亡率は極めて高いということで、そうだったとすると、企業のリスクとしてはHbA1c単独ではかったほうが、食前であっても食後であっても合併症に対するリスク管理というのは極めてできやすいのではないかと思います。

 だから、森委員がおっしゃられたように、目的が何であるのかということで、そのあたりはきちんと論点の整理をしておく必要があるのかなと思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 長時間労働の面接指導のマニュアルあたりでも示していますが、高血圧以外の脳・心臓疾患のリスクファクターの中には1つは糖尿病もあります。また、今回の定期健康診断の結果だけで判断できる場合もありますが、そうでない場合もあります。今現在、過労死の防止等が大きな課題になっている中では、糖尿病、また一定の値で、脳・心臓疾患のリスクファクターがあるというところを把握して事後措置につなげることができることから、ある程度糖尿病学会のフロー図を意識してもいいのかなと。フロー図の中では、HbA1cだけでは必ず再検査で血糖値をとれという形になってしまいます。

○山口(直)座長 済みません、先ほど柳澤委員が手を挙げられて、スキップしてしまいまして申しわけありません。

○柳澤委員 先ほどの議論に戻ってしまうのですが、もし「医師が必要と認めた場合」とすると、嘱託産業医は、事前に一人一人この検査項目は必要だけれども、この検査項目は不必要だというチェックは基本的にしないので、必ず行うべき検査としてHbA1cを記載してもらったほうが良いと思います。

○塚本産業保健支援室長 その辺の解説は検討していきたいと考えております。

○山口(直)座長 私、知識が不足しているので間違えていたら指摘してほしいのですけれども、糖尿病についての疾病管理について先生方の御意見はよくわかったのですけれども、生活指導とか予備軍に対する対応ということを考えると、空腹時の血糖がちょっと高めみたいなところからスタートするということもポピュレーション的なアプローチとしてはあるのではないかと思いますので、全体について必要性がどうかということと、糖尿病になってしまった人の疾病管理として一体どうなのかということで、少し切り分けをしたほうがいいのではないかと思ったのですけれども、その辺はいかがでしょうか。そうしますと、やはり最後は医師が必要だという、疾患管理についてそこをきちんと会社としてもやらないと、安全配慮義務を全うに果たしていることにはならないということを厚労省から徹底してメッセージを伝えていただくということでどうかなと思いましたが。

 砂原委員どうぞ。

○砂原委員 議論をお聞きしていて、必要なことは必要だということでやっていくべきで、疾病管理上必要というのもそのとおりだろうと思うのですけれども、就業上の措置を判断する上でというベースは残した上で項目を考えるべきということかなと感じましたので、一言だけ。

○山口(直)座長 黒澤委員どうぞ。

○黒澤委員 就業上の措置を考えるときにちょっと想像してみると、今までA1cで就業上の措置をしてきていたのに、血糖だけが来ているということだと、就業上の措置がおくれてしまうという先ほどの議論もありましたが、それはしようがないとここでは考えるということなのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 もし、これまでHbA1cである程度アクションを起こしていたとなると、必要であるならば、ある程度医師の方が必要と判断するのではないかと思います。

○黒澤委員 たまさか食後でとられていて、どういうわけかA1Cが高い人が食後血糖になっているのかもわかりませんけれども、例えば1万人とかいる会社ですと、そういう人は一定数いると思うのですけれども、一定の危ない人はそこで見つかるみたいなことになっているわけですが、血糖だけだと、それから医療機関に紹介してA1Cを見て、それから就業上の措置という感じになってしまうかなと想像したのですけれども、それだとタイミングが今までよりもおくれてしまうということなりますが。

○森委員 今のご説明で思いついたのですが、今まで何も管理できていなかった人でもHbA1cが重要だと思いますが、既に一定の管理をしている人たちがいて、治療には行っているという情報はいただいているが、本当にコントロールがうまくいっているのか産業医としてはとても知りたいところです。そのときに、空腹時血糖の測定が本当に有効かということになります。HbA1cを望ましいから追加といっても、空腹時か随時かどちらかの血糖値をはからないといけないとなると、さらに費用を追加してA1cを測定することは、少し無駄が多いのではなかと思います。血糖値とHbA1cの選択ができるようにしておかないといけないのではないですか。

○塚本産業保健支援室長 今の森先生の案は、現行のままということですか。HbA1c省令上は血糖となっているのですが、食べた後についてはHbA1cでというほうが。

○森委員 基本的にはそれで。だから、先ほど申し上げたように、特定健診と結果的に同じになるのではないかと思うのですが。

○塚本産業保健支援室長 ただ、特定健康診査のほうは、今度は随時血糖も良いことになります。

○森委員 それもやむを得ずの場合はということですよね。

○福田委員 必須項目。随時であっても空腹時であっても絶対血糖値はとりましょうと。

○森委員 そういうことなんですか。

○塚本産業保健支援室長 先ほどの糖尿病診断ガイドラインの中で今回HbA1cだけでは、もう一回オーダーし、血糖を取ることが必要となります。血糖値だけの流れで診断できる場合もありますが、そうでない場合はHbA1cを追加することが必要な場合もあります。これらは、健康局の検討会で重視された議論のポイントではないかと思います。あと、保険局の検討会では従前の整合性をある程度重視しながら書かれている。基本的には随時血糖もOKにしましょう、HbA1cもある程度使いましょうというのが、両局の結論なのかなと理解しています。

○森委員 済みません、私が正しく理解できていないかもしれませんが、もともと空腹時血糖かHbA1cを測定することになっているのですよね。もちろん空腹時以外においてHbA1cを測定しない場合は、食直後を除いて随時血糖をはかると。だから、HbA1cだけを測定して、血糖値をはからない場合もあるということですよね。

○塚本産業保健支援室長 保険局は。

○森委員 保険局は。そういう解釈ではないのですか。

○塚本産業保健支援室長 血糖、HbA1cのみを測定する場合も当然あります。

○森委員 HbA1cだけの場合もあるということですよね。

○塚本産業保健支援室長 HbA1cのみでいったときは、明らかにガイドラインの中ではフローは完結しない、流れていかないということになります。

○森委員 しかし、就業措置はやりやすいわけですよね。

○塚本産業保健支援室長 あともう一つは、過労死のリスクファクターのところが糖尿病というのも明確に入っています。

○森委員 ただ一方で、HbA1c6.0を超えると、それだけでも大きなリスクファクターだというエビデンスも十分あります。

○塚本産業保健支援室長 今回の議論は、随時血糖を積極的に入れるのか、従前どおり入れないという方向でいくのかというところだと思います。今回は、医学的知見では随時血糖は評価できるのではないかと打ち出してきた。だけれども、そうだったとしてもそれはなしにして、引き続き食後についてはヘモグロビン重視でいこうということにするのか、それとも新たな評価で随時血糖を使いますからというところで、それを入れた形でいくのかというところが多分議論ではないかと思います。

○山口(直)座長 土肥委員どうぞ。

○土肥委員 6ページに書かれている「保険者による健診・保健指導に関する検討会」の結論は確定なのですか。つまり、ここからもう変わらないという議論のもとに今議論をされているわけですけれども、これは変わらないという議論であればそうだし、まだ検討されて変更される可能性があるのであれば、これをベースに議論することが何となく違う方向性になることもあり得るのかなと思うのですが、これはもう変わらないという結論でよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 書き方はいろいろありますが、ここのところはある程度方向性は固まった分野ではないかと思います。まだペンディングのところは労安法の健診の見直しの結果を踏まえて、と書いてあります。

そうでないところは、ある程度方向性は打ち出されたのかなというところではないかと思います。

○土肥委員 そうであれば、医師が必要と認めた場合に実施することが望ましい項目であり、就業上の配慮に活用することが望ましいとはっきりと書いておいていただいたほうが、まだいいかなと思います。

○塚本産業保健支援室長 繰り返しになるのですが、この点は健診の後の要精密検査の結果や、その後治療に行った結果なども含めて、ここは任意という形にはなるのですが、いただいてそれを就業上の措置の流れの中に持っていくということは健康診断事後措置のガイドラインの中でもうたっておりますので、ここも同じような流れで今後お願いすることになるかと思います。

○武田労働衛生課長 もちろん、そのところは目的が何なのかということが一番大事な点ですので、事後措置を適切に行っていくという一つの過程として、それぞれの方々の状況をかんがみて、医師の判断のもとに項目を考えていくというわけですので、今回であればHbA1cは医師が必要と判断した場合の項目として明確に位置づけられてお知らせしていくということになろうと考えています。

○山口(直)座長 新たな御意見がございましたら、お願いしたいと思います。

 福田委員どうぞ。

○福田委員 今の御活発な議論、失礼な言い方ですけれども、たかが血糖とHbA1cでこれだけもめるというのは、なかなかおもしろいと思います。

 産業医、また読者の立場に立ってしまえば、正直なところ両方見たいのは見たいんです。ただし、事業主さまに御負担いただく健康診断ですから、全部やればいいかというとそうもいかないと思います。そうなると一番問題なのは、厚労省が行っているいわゆる健康診断はいろいろなものが走っているんですよね。保険局がやってみたり、こちらがやってみたり。なるべく整合性を合わせていこうというのが今回の一つのお考えだと思うんです。そうであれば、最大公約数的にまとめていくしかないと考えます。

 そうしますと、事務局案に示されているものが一番、各局にとっても受け入れやすい一つの案だと私は考えます。ただ、やはり医師の立場に立つと、土肥委員あるいは森委員がおっしゃられたように、就業上の措置あるいは事後指導につなげるために、さっき申し上げたように、これは「望ましい」というところをもう少し強く訴える表現に変えていただくのが一番妥当な線ではないかと思います。

 申し添えれば、労災の二次・再検ではHbA1cはちゃんと見るんですよね。ですから、何となく失礼ながら、全体の健康診断の整合性がうまくとれていないがゆえに、たかが血糖、たかがHbA1cに1時間以上の議論になってしまっていると思います。

 以上です。

○山口(直)座長 松本委員、お願いします。

○松本委員 今おっしゃられたとおりだと思いますけれども、これだけ委員の皆さん方がHbA1cは必要だという認識は間違いなく持っていらっしゃるわけで、あとは結局、乗り越えるハードルの問題が引っかかっていてということで、こういう表現で今回はいたし方ないのかなというところがコンセンサスなのかなと思います。必要なのは、もちろんみんなわかっていらっしゃると思います。

○山口(直)座長 このところで、もう少し必要であるのにやられないということがないように文言を事務局で整理していただいて、例えば、就業上の措置が必要な糖尿病有病者と就業上の措置が必要の者については、HbA1cの測定を実施することとか、もうちょっと委員の皆さんの御意見を反映させるような形で文言を考えていただくということで、このままいくと9時ぐらいまでかかりそうですので先に進みたいと思いますが、いかがでしょうか。

 武田課長どうぞ。

○武田労働衛生課長 御議論いただきまして、ありがとうございました。今、座長からのお言葉も含め、先生方からいただいた必要な情報をそれぞれの現場の先生方等に適切に届けるということもあわせまして、私どものほうでも工夫していきたいと考えております。

○山口(直)座長 それでは、次の尿糖検査に進みたいと思います。これについて御意見がある方、お願いしたいと思います。

 松本委員、お願いします。

○松本委員 糖尿病のガイドラインは重々承知しておりますけれども、侵襲性が低いということと、費用と実務的な負担が生じないのであれば、保険局案のように、このまま継続してもいいのかなと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 それでは、事務局案のとおりでよろしいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 案では省略になっていますので。

○山口(直)座長 ごめんなさい、維持するということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、次に進みたいと思います。心電図検査につきまして、御意見がありましたら、お願いしたいと思います。

○福田委員 維持するで結構だと思います。

○山口(直)座長 事務局案の維持するということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 それでは、次に進みたいと思います。次は貧血検査につきまして、御意見がありましたら、お願いをいたします。

 福田委員どうぞ。

○福田委員 最後の文言にあるヘマトクリットの取り扱いなのですが、これはあればあったで便利だとは思うのですけれども、実際はヘモグロビンと赤血球数で判断している場合が多いのではないかと思うので、あえて追加する必要もないと思いますが、いかがでしょうか。余り積極的に入れなくてもいいのかもしれないし。

○山口(直)座長 砂原委員、お願いします。

○砂原委員 今の点、私もちょっと思ったのですが、追加することでこれが就業上の措置にどうきいているかというエビデンスみたいなものも踏まえて判断するということが必要なのかなと感じましたので、コメントさせていただきます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。土肥委員どうぞ。

○土肥委員 ヘマトクリットを申し上げたのは多分私だったと思うので、何か言っておかないとと思うのですが、もともとは健診項目がかなりいろいろな形で変わっていくだろうという前提に立ちましたので、ヘマトクリットを追加することが望ましいと考えたわけですが、ここまで変わらないのであれば、ここで欄を1行ふやしてコストをふやす必要性に関して、あとで議事録から削除させていただきますが、余り必要性を感じないというところでございますので、同意いたします。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 そうしますと、現行どおりの赤血球数と血色素量でいくという案でよろしいですか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、現行どおりということでいきたいと思います。

 次に、尿蛋白検査等の腎機能検査について、御意見をお願いいたします。尿蛋白検査のことと、血清クレアチニン検査がございますし、腎機能検査といいますとほかにも検査項目が頭に浮かぶものがございますが、いかがでしょうか。

 森委員どうぞ。

○森委員 血清クレアチニン検査を法定項目として入れることは、かなりハードルが高いということはわかって申し上げているのですが、追加項目として測定した場合に先ほどと同じように、きちんと事後措置で使えるような形で配慮いただければと思います。我々は今、産業医を対象に健診項目の優先順位の調査を行っているのですが、多くの産業医がかなり高いところにクレアチニンを位置づけているという結果を得ています。先ほどのHbA1cの議論と同じ理由だと思いますが、中高年の転職のときに最初に腎機能をきちんと見ておきたいというのが産業医の基本的なスタンスになると思うので、せっかく測定したのに法定ではないから使えないみたいな話にならないように、ぜひ、そのあたりは配慮いただければと思います。

○山口(直)座長 事務局からいかがでしょうか。

○武田労働衛生課長 この点につきましても先ほどと同様に、それぞれの現場に、こういう場合にこういうものが必要だという情報も含めて、しっかりとその辺の情報提供をさせていただければと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。松本委員、お願いします。

○松本委員 クレアチニンが必要であることは本当に間違いないことだと思っておりますけれども、これも今回入ってくることに対しては非常に意義があることだと思っておりますので、これもハードルを越えるという意味においては、こういった表現でもいいのかなという感じがしております。

○山口(直)座長 宮本委員、お願いいたします。

○宮本委員 尿蛋白のことなのですが、必要性について言われているという点で、感度の面からも必要だというのはわかるのですけれども、実際に健診をやっている、判定する側からすると、特異度が低いというのが非常に問題だと思っております。尿蛋白が陽性だったからといって、その先どうすればいいのかというのがいつも悩ましいし、何か特定の疾患が引っかかるわけでもないし、若年者はむしろCKDがすごく少ないので、尿蛋白が陽性だった場合に、事後措置として何をするのかという点が非常に悩ましいのです。本当にこの先もこの項目でいくのか、あるいはもうちょっと知見を収集して違うものが出てくるのか、何か一言付言していただきたいと思います。やっていて虚しくなる検査の代表がこれだと思っていますので、今はこれしかないのかもしれませんが、もうちょっと違う手を考えられたらありがたいと、付言しておいていただければと思います。

○山口(直)座長 事務局からいかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 これにつきましても、今後の課題ということで調査研究を検討していきたいと考えております。

○山口(直)座長 柳澤委員、お願いいたします。

○柳澤委員 このクレアチニンを医師が必要と認めた場合に実施するとしたときに、医師の采配が重要になります。例えば、先ほども事務局から御説明がありましたが、糖尿病性腎症があり得ると。あと、高血圧起因性糸球体硬化症です。例えば、高血圧者、また高齢者、例えば40歳ぐらいまで高かったけれども、60歳ぐらいになったら正常に戻ってしまったという方。すなわち過去も含めて血圧が高かった人と糖尿病の人は、少なくとも医師の判断でクレアチニンチェックが必要であると記載していただきたいと思います。

○山口(直)座長 事務局からいかがでしょうか。

○武田労働衛生課長 いろいろな場合、場合があると思いますので、参考情報としてできるだけ現場での御判断に役に立つようなものはお届けするようにして、支援させていただきたいと考えております。

○山口(直)座長 どうぞ。

○高野参考人 先ほどの血清クレアチニン検査のお話について、医師が必要と認めるものを対象とするという方向性については賛成です。今、委員の皆様のお話を聞いていると、どんどん検査した方がいいよねという形で、結局、全員検査すればいいのではないかという方に議論が行きそうな感じで、ちょっと不安に思っています。あまねく全員に必要でない項目については、医師と本人、事業主が必要に応じて判断ということでよろしいのではないかと考えます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。福田委員、お願いします。

○福田委員 先ほど宮本委員が言われたとおりで、あれは半定量ですね。プラマイとか1プラとか。実際に健診機関としてもそれでお出しして、それが生かされるかというのは非常に疑問に思っています。ですから、これは将来的には事務方にいろいろな知見を集めていただいて、尿蛋白というくくりではなくて、例えば、尿中微量アルブミンで見るとか、もう少しスペシフィックな、CKDも特異性の高い、感受性の高いものを将来的には少し考えていこうと。そのようにやっていただけたらうれしいと思います。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、検査項目の位置づけとしては事務局案のとおりということで、医師が必要と認める場合というのは、どんな場合が必要かというあたりについて丁寧に御説明していただくと。それから、研究推進が大事だということですので、その辺についても、ぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、血圧の測定について御意見がありましたら、お願いいたします。

 特にございませんでしょうか。現行どおりということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、続きまして、胸部エックス線検査・喀痰検査について、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。

 砂原委員どうぞ。

○砂原委員 ここにも記載されておりますとおり、この必要性等について15ページの()の真ん中ぐらいにありますけれども、10年経過しているということもあるので、今後もう少しエビデンス等を集積していただいて、必要性について再検討できるような形をつくっていただければと思っております。被曝のことを気にする人も出てきているということも踏まえて見直す必要もあるかと感じましたので、よろしくお願いいたします。

○山口(直)座長 どうぞ。

○高野参考人 私も砂原委員と同じ意見です。これから調査が行われるということで書かれています喀痰と胸部エックス線検査などについては、引き続き検討の余地があるということですので、今後、事業主にとって納得感のある診断項目であることが早期に示されることを期待いたします。

○山口(直)座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

 そうしますと、今回は現行どおりという位置づけにいたしまして、胸部エックス線検査あるいは喀痰検査を実施することで、労働者にとって何がどれだけプラスになるかというあたりは、やはり研究が必要ということ。特に、特定健康診査等にはない項目でもありますので、ぜひ研究の必要性を強調していただけたらと思います。

 では、次にまいりまして、腹囲についていかがでしょうか。

 砂原委員、お願いします。

○砂原委員 健康局、保険局の両検討会でも、腹囲についていろいろな議論がありました。エビデンスということも含めて、我々のほうも今後、見直しを考えていく必要がある項目なので、そういうことも御検討いただければと思いました。

 

○山口(直)座長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、腹囲についても現行維持ということで、今後、保険局や健康局の検討ともあわせて、よりよい方法があるのかないのかというあたりを御検討いただくということでお願いしたいと思います。

 続きまして、身長、体重、視力及び聴力の検査について、御意見がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

 こちらも現行の方法を維持ということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、次に進みたいと思います。既往歴及び業務歴調査について、お願いいたします。

 砂原委員どうぞ。

○砂原委員 19ページの下から2つ目の・ですが、「労働者が、自らの疾病による労働災害を防止すること」、これは労働者が主語で防止するということだと思いますけれども、「また、就労により当該疾病を増悪させないこと」、これは労働者だけが主語ではないのではないかと思いますので、主語がないと労働者、事業者のいずれの話かというところがちょっとわかりにくいなと感じました。できれば、だれがやるのかという実施主体を明記いただければわかりやすくなるかなという気がしました。

 以上です。

○山口(直)座長 事務局からいかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 当然のことながら労働者本人の努力もございますが、自らの疾病によって、例えば、貧血で高所から転落して、下の方に対してダメージを加えるような場合の防止、あと、就労によって今ある疾病が増悪しないように、これは例えば就業の措置などで事業主が対応するというような場合もあるかと思います。そういう意味での事業主に対してお願いする措置もありますし、労働者自ら対応すべきところもあるという意味で書いているつもりでございます。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

 ここは、既往歴という用語が法制上は現病歴を含んでいますが、我々の日常の使い方とちょっと違うという御議論もありましたし、喫煙歴みたいな生活歴、服薬状況、疾病罹患歴みたいなものについて、どこまでという議論もございましたが、その辺について御意見いかがでしょうか。

 砂原委員から。

○砂原委員 まさにそのとおりで、服薬状況を聞くことで事業主としても非常に重たい情報をいただくことになることを踏まえて、どうかじ取りをしていくのかを考える必要があると感じた次第でございます。実際、服薬の内容について産業医の先生にお伝えして、産業医の先生もきちんと判断できるような仕組みがないといけないわけで、事後指導に必要な情報を適切にとっていくような形をうまく構築することが重要だと感じたので、コメントさせていただきます。

○山口(直)座長 では、土肥委員、お願いいたします。

○土肥委員 20ページの「今後、健康診断においても」というところで、「(熱中症リスクを高める利尿剤、意識障害を発生させるおそれのある降圧薬・糖尿病など)については、問診において把握するように指導してはどうか」というのは、指導するということですか。つまり、どこでどういう指導をするのかという部分について。今まではこういう文章はなかったので、単純に既往歴を聞くという前提で進んでいたわけですが、これを書くということは何らかのことを示すということになりますので、それはどういう形で示すのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 まず、特定健康診査で求めております服薬歴と喫煙歴は、現行の省令の対象になっておりませんので、協力ということで現行、通達で把握していただくようにお願いしているところです。今回新たに、例えば、定期健康診断でも使う部分があるからというところ、これも同じような形で、指導するというのは把握していただくよう会社関係者にお願いするというような趣旨で書いてございます。法令の規定に基づくものではなくて、従前から特定健康診査とのリンクとの関係で把握していただくようにお願いしているという並びで考えてはどうかという趣旨で書いてございます。

○土肥委員 我々としては、定期健康診断において聞いた病歴や服薬歴というのは、当然定期健康診断の明確な枠内で処理されるべきものだという理解をしているのですが、こう書いてしまうと逆に外になった感じがします。つまり、我々が必要に応じて聞いた健康診断の問診情報は、すべて定期健康診断の枠組みとして活用するものであるという前提に立っていると思うのですが、指導するということは、聞いた後に取り扱いについて機微な健康情報であることから、十分検討を行って対応すべきだということになると、今までどおり使ってはいけないという趣旨のことが書かれているのか、そういうことではないという理解でよろしいですか。

○塚本産業保健支援室長 当然のことながら、把握されたものについては就業の措置で使っていただくことは可能かと思います。ただし、前回も、自由意思で強制してはいけないという議論もあったかと思います。一方では、労働者の方が持っていらっしゃる疾病によって、大きな事故のもとになる場合もあることから的確な対応も必要だということもあります。これらを含めて明確にどういう形で対応できるか、ある程度強制的にできるのか、任意という形でやるべきか。また、フランスの制度ですと、別の委員会で御紹介がありましたが、産業医は疾病は把握しても、事業者には事後措置の内容だけお知らせするというやり方もあります。それらも含めて、一度これは実態調査をした上で、具体的に共通的に定められるもの、特殊な分野であるので例外的にやるべきなど、考え方を一度整理してはどうかとしています。

 ですから、ここは方向性を書いてはございますが、これはまた別途、実際の取り扱いの状況も踏まえて御検討させていただければと考えております。

○山口(直)座長 今の御説明の中のフランスの例ですが、今まで定期健康診断の情報というのは全てが事業者にいきますという整理でずっとやってきて、就業上の措置等について医学的に考えて必要だという議論もあって、それから、プライバシーに配慮すると、事業者がそのような情報を抱えて一体どうするんだという議論もあって、その中で今のお話で連想するのは、ストレスチェック制度というのは一つの新しいモデルを、賛否いろいろありますけれども、事業者と実施者という役割を明確にして、事業者に伝えるべき情報とプライバシーにかかわる部分を実施者止まりにするみたいなお話と、その辺を今回の検討会というよりも、今の事務局のお話ですと今後検討を進めていくべしと聞こえましたが、そういうことでよろしいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 はい。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。森委員。

○森委員 別のところですがよろしいですか。業務歴なのですが、21ページの一番下に()の2)に、「特殊健康診断の対象とされていない化学物質を取り扱う労働者については、SDSで記載されている」云々というレベルの他覚所見を求めるのでしょうか。今のハンドブックを見てもそこまでは書いていないと思います。おそらく、法定の特殊健診をやっているかといったこと以上のことを健診現場では聞けていないのではないかと思います。そうなると、ここで業務歴をそこまで踏み込んである程度とってくださいとか、何らかのインストラクションがないと、労働衛生機関や健診機関が、情報が乏しい中で健診判定を行っている現実から乖離することになりますので、業務歴についても何か言及をいただいたほうがいいのではないかと思いました。

○山口(直)座長 事務局いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 業務歴の充実も非常にポイントだと思います。

 やり方ですが、うまくいっている例ですと、会社サイドで業務歴の詳細とともに化学物質の情報としてSDSで書かれている健康影響をある程度まとめられて、それを健康診断の医師に見ていただいて、特殊健康診断の対象となっていない化学物質の健康診断を行っています。必ずしも十分浸透しているとも限らないところもありますので、ここで再度お願いしてはどうかと考えています。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 黒澤委員、お願いします。

○黒澤委員 また別のところですけれども、前の議論を忘れてしまったのですが、喫煙歴はやはり参考にしたい情報だと思うのですけれども、ここで調査すると書いてある意味は、項目にはしないけれども、今後必要かどうか調べるという意味だったのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 ここでの調査というのは、要は現場の健康診断の問診の中で把握するという意味で書いているつもりです。ただ、ここの全体、多分既往歴・業務歴の調査のところが、程度の差はあったとしても、かなりの個人の機微な情報が入ってくるのでの、具体的な取り扱いについては一律でやっていいのか否か、または業種ごとに区別してやったほうがいいのか、これらを少し時間をかけて実例を踏まえて、また、法的な側面も含めて検討が必要という御意見もありますので、検討していきたいという趣旨で書いております。

○黒澤委員 そうすると、喫煙歴も機微な情報ということでいいのでしょうか。薬の情報は確かに機微な感じはしますけれども、喫煙歴は機微に入るのでしょうか。

○武田労働衛生課長 必ずしも機微かどうかという軸だけではなくて、いろいろな考え方の軸があると思います。ですので、どういう観点で情報をとらえるかというところも含めて、包括的にこれはまた別途、検討させていただく必要もあるし、その価値もあることではないかという意味でございます。

○黒澤委員 厚労省のほうで喫煙歴を何年まで下げるという目標を出しておりますし、そういう一貫した流れの中で考えるという視点もあると思いますので、ここで例えば項目としてちゃんと書かせるというようなことですと、ある程度意識の点で違うと思いますし、そういう効果を狙うという意義もあるのではないかと思います。

○山口(直)座長 事務局、今の御意見について、いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 検討していきたいと考えております。

○山口(直)座長 ほかにいかがでしょうか。

 岡田委員、お願いいたします。

○岡田委員 また元に戻りますが、服薬は聞いてもいいということですか。従業員の高齢化に伴って多剤服用している人が非常に多くなってきていますので、それで目まい、ふらつき、いろいろなものが出てきて、産業医が高血圧、糖尿、そのほか心房細動があるとか多剤を飲んでおられる場合に、一人一人については問題なくても、産業医としてはこれだけたくさんの薬を飲んでいると危険業務は無理であるとか、今回、祇園のてんかん事件のように、結局、御本人が言わなくて会社が倒産してしまったとか、やはり企業リスクということから考えると、就業制限というところで服薬による副作用というのが就業上極めて大きなリスクになると思うのですけれども、そこがプライバシーになるのか、前回の議論では、そこは本人の自由意思であるということですけれども、薬で企業が倒産するような状況をなってくるということになれば、産業保健の中で従業員の健康を守ったり、就業上の疾病・安全性を確保するということであれば、これから従業員の高齢化に伴って服薬というものも非常に大きなリスクになってくるので、ここはきちんと検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 御指摘のとおり、必要性というのは多分一致したご意見ではないかと思います。ただ、この情報をどう扱っていくのか、全部自由意思なのか、それとも非常に災害に結びつくようなものだと自由意思ではなくて、ある程度強制的にとか、そういう取り扱いをある程度議論した上で、先ほど先生が言われました服薬による災害の防止などの観点から検討していきたいと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、この部分も将来に向けて解決方法の検討を進めるということを文言として入れていただけたらということで、よろしくお願いいたします。

 次が、自覚症状及び他覚症状の有無の検査について御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。特にございませんか。「他覚症状」を「他覚所見」としないとおかしいのではないかという議論がありましたが。

 どうぞ。

○宮本委員 それは報告書案に書いてくださっているので、今後の整合性も含めてご検討よろしくお願い致します。いいと思うのですけれども、21ページの()の一番下の・ですけれども、「職場巡視の所見あるいは作業環境測定の結果などを照合しつつ」という項目についてです。特殊健診で決まったものは別にして、自覚症状や他覚症状の一般的なものはどこの段階で指定をするのか、例えば健診機関が産業医としてやっているのではない場合どうするのかというのは、ガイドライン的なものが必要と思うのですが、これはまだ生きている条文ですか。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 これは、平成元年ぐらいに成人病の要素を大幅に入れたときの解説本ということになります。もう30年近く前のものですから、その点も含めて検討の方向性の投げかけのところですが、医師が選定して行うものは何なのかというところだけは少なくともピックアップしています。

○宮本委員 わかりました。

○山口(直)座長 黒澤委員どうぞ。

○黒澤委員 今見て気がついたのですけれども、21ページの()の上のほうで、「視診、打聴診、触診を行い」と書いてありますが、大学で身体所見をとるときは視診、打診、聴診、触診と教えるわけですけれども、下で視診が抜けているのは何も意味がないのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 いえ、視診は()の3行目で「本人の訴えおよび問視診に基づき」と書いていますから、視診はやってというところで、さらに何か選定してということなので、残りの打診、聴診等を書いたという趣旨でございます。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、事務局案をベースにとりまとめをしていただくということでお願いしたいと思います。

 次の「3 その他の論点案」ということで、()健康診断項目の省略について、御意見がございましたら、お願いいたします。

 宮原委員どうぞ。

○宮原委員 血液検査についてです。医師の判断で省略ができるということで、非正規の方に対して実施が省略がされていたり、医師の判断ではなくて、会社の判断で血液検査が非正規の方になされていないという職場の実態もあるようです。こういったところについて、4)で記載されておりますけれども、告示から30年経過して状況も変わっているということも御認識だということですので、全ての労働者に対して実施されるような取り組みをぜひお願いしたいと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 事務局から何かございますか。

○塚本産業保健支援室長 この医師の省略のところは医師が行うということを徹底、また、告示の改正から30年強の経過があるということで、この辺につきましても最近の知見の集積に努めていきたいと考えております。

○山口(直)座長 福田委員、お願いします。

○福田委員 実際に事後指導、保健指導を行っているのですが、35歳、40歳ということで、一つ区切りがあります。でも、見ていますと、だめな人はもう30歳ぐらいから相当なデータなんです。これは次の御議論だと思いますが、いわゆる若年者に対する健康診断のあり方、今ですと要するに雇い入れ時にはありますが、そこから先はポンと飛んでしまって35歳まで、はっきり言っておしっこをとって、身長・体重だけで終わってしまうと。実際には病気の種は仕込まれているわけで、もっと言えば、中学校であるとか高校であるとか、教育のレベルからきちんと健康とは何かということを教えながらやっていくべきだと思っていますが、これはまた話が違うものですから。ただ、労働者、それも優良な労働力としての若年労働者をきちんと確保していく。そうであれば、若年労働者に対する健康診断のあり方は、事業主様はまた問題があると思いますが、結局は40歳、50歳で重病になってしまえば傷病手当その他で経営にも非常にマイナスになるわけですから、若年労働者への今後の健康診断のあり方は、そろそろ見直されてしかるべきではないかと考えております。

 以上です。

○山口(直)座長 土肥委員どうぞ。

○土肥委員 22ページの3)の最後の「普及・徹底を図ることが必要ではないか」、必要だと思うのですが、どのような普及・徹底を図られるのかについて、考え方なりをお示ししいただければと思います。

○塚本産業保健支援室長 このやり方ですが、まず、そもそも制度を知らないという方がかなりいらっしゃると推察されます。この省略の制度について医師でないと判断してはだめだということについて、紙媒体とかいろいろな媒体で周知します。また労働基準監督署からの指導の際には例えば個人票を見ながら省略している部分について確認するなど、あらゆる手法を使いながら、非常に重要なところでもありますので、徹底されるよう取り組んでいきたいと考えております。

○山口(直)座長 先ほどの医師が必要と認める場合というところと共通して、漠然と省略可というよりも、こんな場合は省略してはならないみたいなガイドライン的なものをぜひ出していただいて、現実は一律にやられなかったり、一律にやられたりというのがありますので、その辺をきちんと是正できる具体的な方法を最終報告書の中に何かの形で記載していただけたらと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 宮本委員、お願いします。

○宮本委員 今、座長から言われたことはすばらしいと思うのですが、産業医がいる場合、産業医が省略にかかわることができるということは、当たり前のようでいながら、今のいろいろな検査項目の省略要件を見ると、その日の状態を診た診察医のみが省略することができると読めてしまう場合があります。実際には、診察医が省略するというのは非常に難しいと思うんです。ある症状があったら追加することはできても、症状がないものを見つけるのが健診ですから、省略するという判断をするのはかなり難しいと思いますので、過去からの経過を見て、事前に省略してもいい人は産業医なり結果に基づく意見を聞いた人が、次は省略してもいいですよとしておき、診察の場で追加・戻すという行為ができるような仕組みづくりのほうがよろしいのではないかと思っております。そうでないと、産業医が結果を見て次はこういう項目でということ、あるいはいろいろな健康増進努力をして項目数が減っても大丈夫と自信を持って言えるような産業保健活動をしたとか、何のインセンティブもないことになってしまいますので、その辺も含みで書いていただけたらと思う次第です。

○山口(直)座長 事務局いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 おっしゃるとおり、やり方としましては宮本委員言われましたように、過去の健康診断の所見などの有無で産業医の方などが省略できると考えられる項目を選定し、実際に健診を行う医師の方が最終的に、例えば、自他覚症状の有無の検査で、レントゲンですと結核を疑うような状況・症状があれば一応省略にはなっていたけれども、省略しないというような形のやり方はあるかと思います。そういう意味では、何らかの形で先ほどのガイドライン的なものと、やり方についてもある程度お示しし、適切にできるようにしていきたいと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、いよいよ最後の23ページのその他ですが、何か御意見がありましたら、お願いいたします。

 森委員。

○森委員 今回の検査項目と少し関係ないのですが、定期健康診断と関連して、健診結果の報告義務が事業者にあって、そこに有所見者数を記載する欄があります。その有所見の定義というか基準値ももちろんはっきりしないのですが、考え方も必ずしも明確ではない中で、あれがそもそも有効なのかということは常に言われていることです。健診データ自体はとても貴重な情報ですが、それだけ事業者に負荷をかけていることでもあり、また産業医活動の中でもどう書いたらいいかしばしば相談されているため、今後どうしていくかということを検討課題として挙げていただければと思います。

○山口(直)座長 事務局いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 わかりました。

○山口(直)座長 では、ぜひよろしくお願いいたします。

 ほかにはいかがでしょうか。福田委員。

○福田委員 先ほども申し上げましたが、本当にいろいろな健診をなるべくうまく整合性を持たせて、例えば、安衛法だからここは事業主でもわかります、特定健康診査は保険者、全部別々の法律で走っている。しかし、重複したり抜けていたり、国民全体の健康を考えるのであれば、お上におかれましては、局、局、局の話ではなく省として大きく、生まれてから死ぬまできちんと、ビッグデータではないですが、一貫したデータとして把握する。我が国は、がん登録さえまだろくにできていない状態ですから、夢のまた夢かもしれませんが、今回の検討会もそういうことだと私は理解しています。ですから、さらに進めていただいて、本当に大きく省としてお考えいただければうれしいなと思います。

○山口(直)座長 土肥委員、お願いいたします。

○土肥委員 その他の2)に書いてあることでございますが、これは「必要ではないか」ではなくて必要だと思いますので、早急にといいますか、見直していただきたい項目です。これによって、かなりいろいろなことで手間と時間をかけているところがございますので、否定的ではございませんで、必要なものに必要なことをするということにしないと、今は特殊健康診断とのダブりを考えると非常に複雑な状況になっていますので、ぜひ特殊健康診断のほかの規定とともに整理をお願いしたいと思います。

○山口(直)座長 松本委員どうぞ。

○松本委員 今回の検討会でもたくさん出てきましたけれども、必要であると認めたことはできるとか、あるいは必要でないと認めたときは省略することができる、この文言が非常に多く盛り込まれた今回の案でございますので、それに対しては産業医が専任であろうが、嘱託であろうが、きちんとした責任を持って自分で判断していくことをきちんと求めていくべきだと思います。それを盛り込むべきだと思います。

○山口(直)座長 そういうことで、よろしくお願いいたします。

 では、福田委員。

○福田委員 これも毎回申し上げていますが、何のための健康診断かといえば、労働者の健康に資するため。そのためには、やっただけではだめで、今努力義務であるところの保健指導をもう少し強く訴えていただきたいと思います。やりっ放しの健康診断であれば、むしろやらないほうがいいのではないかと私は考えております。ですから、少なくとも努力義務の事後指導に対して、もう少しお上におかれても積極的に関与していただければと思います。

 以上です。

○山口(直)座長 柳澤委員、お願いします。

○柳澤委員 これは前の検討会でもお話ししましたけれども、尿潜血を入れるかどうかということです。確かに尿潜血はいろいろ精査しても原因不明ということが多いのですけれども、きょうもデータが出ておりましたが、CKD20%が慢性糸球体腎炎(IgA腎症)、そのときには尿蛋白と尿潜血をペアではかるべきですし、特にIgA腎症の場合には蛋白陰性で尿潜血だけが陽性というケースも多々あります。あと、もう一つは、尿路系腫瘍の問題があると思います。ですから、今後エビデンスを集めて尿潜血を加えるかどうかの議論を、ぜひ継続していっていただきたいと思います。

○山口(直)座長 先ほど腎機能系は、今後より効果的な方法を研究的に検討していただきたいということでしたので、その話の中に尿潜血も加えていただくということでよろしいでしょうか。

 砂原委員、お願いいたします。

○砂原委員 2点ございまして、まず1点目は、23ページの3)ですけれども、「主治医において既に取得されているデータを取得、活用し診断することを促進すべきではないか」ということが、どういうふうにやればうまくできるのかというのが余りイメージできなかったので、そこはどう考えていけばいいのかと思ったのが1点。

 あと、いろいろお願いして事務局の方には資料2の43ページにあるように、海外の一般定期健康診断の例ということで情報を収集いただき、ありがとうございました。ただ、一方で、ここで見るとこの3カ国は定期健康診断があったということで、それ以外の国ではなかったということなのでしょうか。もしそれ以外の国で実施されていないのであれば、日本は世界的に見て特別な定期健診をやっていることになるので、それによって、事業主がそれにかけているコスト以上のメリットが出ているかどうかがポイントだと思います。費用対効果次第で、そういう選択肢もあると思うのですが、そのあたりが効果検証できるような研究・調査等も今後実施していただければと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

 以上です。

○山口(直)座長 事務局からよろしいですか。

 第1点目の3)の具体的な方法について、何か具体的な案はございますか。

○塚本産業保健支援室長 まず、御紹介なのですが、例えば、特定健康診査におきましても原則一日で健康診査を実施すべきことから、そういう場合は実施日が記載される。ただ、他の健康診断の記録やデータをもって実施するときは、最終的には複数回に分けてやる場合ですが、全部そろった日という取り決めもあったりします。

 データの活用において特によく言われますのが、健康診断の直近で別の目的でレントゲンを撮った場合、短期間でもう一度撮らなくてもいいのではないかということがあります。例えば、直近で撮ったレントゲンのフィルムを持ってきて、それが診断するのに可能であるならば、それをお使いいただいてというようなことは、現行でもある程度行われているのではないかと考えております。

○山口(直)座長 第2点目についてですが、海外が余りやっていないのだから、日本もやらなくていいだろうみたいな議論が出てくるとしたら、それはゆゆしきことというか、でも、よくよく考えてみると健康診断をやることによって、我々医学の世界でアウトカム、アウトカムと言いますけれども、労働者の健康がどういうふうに守られて、どういうエビデンス、それから、非常に大きい目で見るならば、企業や事業者の経営にどれだけプラスになっているのかということも含めて、エビデンスの蓄積が今まで以上に大事で、そうでないと無駄だからやめろという議論に対して十分な意見を申し述べられないと思いますので、その辺について厚生労働省のリーダーシップで、ぜひエビデンスの蓄積を進めていただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

○森委員 今の海外の話は前回もお話ししたのですけれども、海外と日本では産業保健や健診そのものの仕組みが違うので、単に健康診断の項目だけ切りとってもほとんど全体が見えません。例えば、職務適正の評価をするときに、業務を特定して業務に合った健診を実施する戦略と、広く全ての労働者に特定の項目を実施する戦略がまったく異なるので、労働者の健康評価をどのように実施しているか、その全般をとらえない限り、どちらがいいかという話にはならないので、検討するとしたらそこまで踏み込まないといけないのではないかと思います。その上で、日本は今後どちらにいくのかという議論はありうると思います。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。

 それでは、最後のページまでまいりましたので、これで一応きょうのメーンの議論は終わったと思いますが、済みません、長かったので、座長が次に何をするかわからなくなってしまいましたけれども、事務局からお願いしたいと思います。

○小林中央じん肺診査医 本日は、熱心な御議論をありがとうございました。

 次回日程は、1012日、14時から16時でございます。開催案内につきましては、改めて送付させていただきます。

 また、本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開することとさせていただきます。

 本日の検討会はこれで終了します。どうもありがとうございました。

 


(了)

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