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2016年9月6日 第96回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成28年9月6日(火)10:00~


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:

青木 健、明石 祐二、勝野 圭司、栗林 正巳、桑野 玲子、城内 博、
土橋 律、中澤 善美、中村 聡子、中村 節雄、縄野 徳弘、
村上 陽子、水田 勇司、最川 隆由、山口 直人、山岸氏(岡本委員代理)

事務局:

田中 誠二 (安全衛生部長)
宮本 悦子 (計画課長)
小沼 宏治 (調査官)
野澤 英児 (安全課長)
縄田 英樹 (建設安全対策室長)
安井 省侍郎 (副主任中央産業安全専門官)
武田 康久 (労働衛生課長)
塚本 勝利 (産業保健支援室長)
高橋 良和 (主任中央労働衛生専門官)
鈴木 章記 (主任中央じん肺診査医)
奥村 伸人 (化学物質対策課長)
木口 昌子 (環境改善室長)

○議題

(1)ボイラー及び圧力容器安全規則及び労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)第12次労働災害防止計画の実施状況について(報告)
(3)その他

○議事

○土橋分科会長 ただいまから、第 96 回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、公益代表委員は角田委員、三柴委員、水島委員、労働者代表委員は袈裟丸委員、杉山委員、使用者代表委員は岡本委員が欠席されております。なお、岡本委員の代理として、 JFE スチールの山岸様が御出席されております。

 まず、最初に資料 3 の労働政策審議会安全衛生分科会委員名簿を御覧ください。本日、 9 6 日付けで、労働者代表委員の辻委員、半沢委員が退任され、同じく本日付けで全国ガス労働組合連合会中央執行委員長でいらっしゃいます青木委員、日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員でいらっしゃいます袈裟丸委員のお二人が就任されております。また、平成 28 7 15 日付けで、使用者代表の鈴木委員が退任され、同日付けで西松建設安全環境品質本部安全部長の最川委員が就任されております。袈裟丸委員は本日は欠席されていますので、青木委員と最川委員から一言、御挨拶を頂きます。

○青木委員 おはようございます。全国ガスの青木でございます。初めての経験でありますが、是非ともよろしくお願いいたします。

○最川委員 西松建設の最川と申します。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 よろしくお願いいたします。続いて、事務局に異動があったということですので、挨拶をお願いいたします。

○田中安全衛生部長  6 月の異動で安全衛生部長になりました田中と申します。よろしくお願いいたします。

○宮本計画課長  9 2 日付けで計画課長に就任いたしました宮本でございます。よろしくお願いいたします。

○奥村化学物質対策課長  4 月から化学物質対策課長になりました奥村です。 3 月までは建設安全対策室長をしておりました。どうぞよろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 よろしくお願いいたします。傍聴の方へのお願いですが、カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。

1 つ目の議題に入ります。議題 (1) のボイラー及び圧力容器安全規則及び労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令の一部を改正する省令案要綱について、諮問案件ですが、事務局から説明をお願いいたします。

○野澤安全課長 ボイラー則及び登録省令の改正案の概要について説明します。改正省令案要綱は、資料 1-1 ですが、その内容を資料 1-2 に基づき説明いたします。 1 ページ目で、今回の改正の背景について説明します。従来、安衛法の機械関係の規制は、例えばボイラーで言えば、ボイラー容器の厚さ、安全弁などの物理的な安全方策と、ボイラー技士などの資格による監視といった人的な安全方策を基本としてまいりました。一方で、 1 の専門家検討会設置の目的にあるように、コンピューター制御技術の向上により、非常に信頼性の高い制御が可能となってきており、新たに制御機能を付加することによる安全方策である機能安全について、国際規格が定められております。さらに、そのような高い信頼性を持つ自動制御装置を装備した機械等について、諸外国で機械等の取扱い規制を見直す動きがあります。これらを踏まえて、我が国における機能安全の基準によって、高い信頼性を持つ自動制御機能を備える機械等に対する規制について、専門家によって検討していただき、本年 3 月に報告書をまとめたところです。

2 ページ目、ボイラーについて、機能安全の規制の取入れについて説明いたします。従来の規制では、イラストの左側のようにボイラー容器の厚さや安全弁といった物理的防護に加え、ボイラー技士による常時監視や水面測定装置の機能の 1 1 回の点検を義務付けておりました。従来のボイラーにも、異常があった場合に自動的にボイラーを停止する自動停止機能は設けられておりますが、その信頼性についての定めは特になく、最後の砦としてボイラー技士が常時監視し、異常があった場合にボイラーを停止させることを前提としておりました。機能安全を導入すれば、イラスト右側のように、自動制御の信頼性の水準である安全度水準により、いざというときに自動制御が故障する確率が非常に低いことが定量的に明らかになります。このため、そのような証明がなされた自動制御装置を装備したボイラーについては、ボイラー技士による常時監視を外すとともに、先ほど申し上げた水面測定装置の機能の点検の頻度を 3 日に 1 回とすることができることになります。これにより、ボイラー技士の負担軽減と生産性の向上を図ることが可能となります。

3 ページ目、ボイラー及び圧力容器安全規則の具体的な規定ぶりについて説明します。報告書では上の枠にありますように、ボイラーのように事故が起きたときの重篤度が大きい機械等については、資格者による一定頻度の点検が義務付けられているが、これらの点検等は制御装置の故障を早期に発見して、事故を予防する趣旨であることから、電子等制御の安全度水準が高くなることに応じ、有資格者による点検の頻度を下げることは妥当であるとされたところです。

 これを踏まえて、下の枠にあるように、ボイラー則に、 (1) ボイラーに異常があった場合に安全に停止させる機能を有する自動制御装置であって、 (2) 厚生労働大臣の定める技術上の指針に適合していることを、 (3) 監督署長が認めたものを備えているボイラーについて、通常 1 日に 1 回の点検の頻度を 3 日に 1 回とできることを定めることとしております。さらに、技術上の指針に制御装置が適合していることについて、厚生労働大臣の登録を受けた第三者の専門機関に証明してもらい、その証明書を添付して、認定の申請をしていただく規定としております。

4 ページ目、この第三者機関の要件について、労働安全衛生法及びこれに基づく命令に係る登録及び指定に関する省令で規定いたします。専門家検討会では、上の枠にあるとおり、 (1) 制御機能が適切に設計されていること、 (2) 設計どおりに製造されていることをユーザーが判断することが困難であることから、専門的な第三者機関による適合性の証明が必要であると指摘しております。

 これを踏まえて、下の枠にあるとおり、登録省令に登録適合性証明機関の登録基準等として、証明者の資格要件を定めるほか、実施義務として公正な証明などを義務付けております。さらに、機関に対する監督として、適合命令、改善命令の権限を定めるほか、取消しの規定を設け、登録機関による証明の品質確保を適切に行うこととしております。

5 ページ目、機能安全に関する技術指針の内容を説明します。技術指針は、安全衛生法第 28 条に基づく指針として、告示で定める予定であり、今回の諮問事項ではありませんが、参考までに概要を説明します。左側の 2 の流れですが、 3 ステップになっております。まず、 (1) の要求安全機能の特定で、リスクアセスメントを実施し、事故を防止するためにどのような安全機能が必要かを決定いたします。例えば、ボイラーの場合、空焚きが起きたときに燃料を遮断するリミッターなどが必要となります。次に、 (2) で安全機能を実行する安全関連システムの信頼性の基準である要求安全度水準を決定します。指標としては、安全機能が作動に失敗する確率を使用します。最後に、 (3) の設計要求事項の決定とそれに基づく製造で、要求安全度水準のレベルに応じて作動失敗の確率の基準を満たすことができるように制御装置を設計し、製造します。

3 の要求安全度水準の決定については、 (1) 事故が起きたときの重篤度、 (2) 危険事象からの回避可能性、 (3) 危険事象の発生頻度、そういった 3 点によりレベル別に決定されます。 4 の要求安全水準を達成する設計方法については、例えば、危険側故障確率、パーツが壊れる確率、あるいは検査間隔や、共通原因故障、システムを多重化していても配電盤が壊れたら全て駄目になってしまうという共通的な故障の原因をなくすことなどにより、いざというときに安全機能が作動しない確率を下げていくという設計をすることになります。

6 ページ目は別の内容になるわけですが、機能安全以外の登録省令の改正について説明します。これについては、外国で製造されたボイラー等の輸入を円滑に行うため、現地で製造されたボイラー等を現地の検査機関が検査し、日本の構造規格に適合することを証明する書類を作成する制度があり、この機関を「指定外国検査機関」と言います。この制度は昭和 60 年から運用されておりますが、検査機関の指定方法を労働基準局長通達で定めておりました。これについては本年に入り、証明書の内容と輸入された圧力容器が一致しないという事案が発生し、指定外国検査機関を処分する必要がありましたが、その際、通達に基づく行政処分を行うことについては困難を来したということがあります。

 このため、上の枠のとおり、今般の登録省令の機会を捉え、指定外国検査機関の指定手続等を省令に格上げすることとしました。指定内容としては、下の枠にあるとおり、適合性証明機関、先ほど説明したものとほぼ同じで、証明書作成員の資格、実施義務を定め、問題があった場合に適合請求、改善請求と取消しの権限を規定するということです。適合請求、改善請求については、外国の機関であるため命令まではできないということで、そのような行政対応をすることになっております。これによって、指定外国検査機関による証明書の品質を確保する措置を強化することとしました。

 最後に、 7 ページ目には指定外国検査機関の制度の概要を付けております。右下にあるように、現在 8 機関を 6 か国から指定しており、これら機関はそのまま新たな省令による指定に移行する予定です。以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた要綱案の審議に移りたいと思います。質問等ありますでしょうか。

○村上委員 今回、技術の進歩を踏まえて、機能安全という考え方を取り入れていこうという見地から、専門的な検討もされたということであるため、この改正は妥当ではないかと思っておりますが、 4 1 日の施行まで半年ほどあるので、是非、現場が混乱しないように周知徹底していただきたいと思います。こういう場合だったら 3 日に 1 回としてもいいのだということについて、「 3 日に 1 回」だけが独り歩きしないように、きちんと周知いただきたいと思います。

 また、適合性証明がなされた機械についても、万が一、不具合であるとか、労働災害などが発生した場合には、登録適合性証明機関に対して適合命令、あるいは改善命令や登録の取消しなども、速やかに適切に行われるよう、行政としても指導していただきたいと思っております。以上です。

○土橋分科会長 事務局側、いかがですか。

○野澤安全課長 周知につきましては、おっしゃるとおり、しっかりやっていきたいと思っております。それから、万が一ですが、不具合が起きたときの適合性証明機関に対する処分については、その不具合について適合性証明機関の確認に問題があるということであれば、おっしゃるようなことをしっかりやっていきたいと思っております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。それでは、当分科会といたしましては、議題 (1) のボイラー等安全規則等の一部を改正する省令案要綱について、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で手続をお願いします。

 次の議題に移ります。議題 (2) の第 12 次労働災害防止計画の進捗状況報告について、事務局から説明をお願いします。

○小沼調査官 議題 (2) の第 12 次労働災害防止計画の進捗状況について、報告いたします。資料 2-1 を御覧ください。第 12 次労働災害防止計画については、資料 2-1 の表紙にあるように、死亡災害、死傷災害の削減、メンタルヘルス対策、過重労働対策、化学物質による健康障害防止対策などに取り組むことになっております。

 最初に、労働災害防止対策の状況について、説明いたします。資料の 1 ページ、死亡災害、死傷災害については、計画前年である平成 24 年に比較して、それぞれ 15 %削減することが目標とされております。これは 5 年経過後の平成 29 年で 15 %削減ということです。そういう中で、計画開始から 3 年経過した平成 27 年における災害件数については、 5 年間で 15 %の削減を目指しますので、単純計算すると 1 年当たり 3 %、 3 年経過ですので、 9 %削減されていれば大体、計画どおりということになります。詳しくはこの後御説明しますが、死亡災害については 9 %を上回る 11.1 %の減となっております。一方で、死傷災害については 9 %に届かない、 2.7 %の減となっており、更なる努力が必要という状況です。

2 ページの左側半分ですが、死亡災害について、全産業と比べて比較的死亡災害が多い製造業、建設業について、グラフにしたものです。点線の部分が一応、計画どおりに減っていった場合の数字になりますので、点線より下になっていれば計画よりも高成績ということになります。死亡災害については、先ほど説明したように、今 9 %の目標を上回る 11.1 %となっており、今のところは比較的、順調に進んでいるということです。これまで統計を取って以来、初めて 1 年間の件数が 1,000 件を下回るということもあって、次のページはまた後で見ていただければ結構ですが、本年 7 月末現在の速報値でも更に昨年を上回るという状況で、非常に良い傾向が続いております。死亡災害については、取り返しがつかない災害ですので、引き続きこの減少傾向を維持できるように取り組んでいきたいと考えているところです。

 一方で、右半分の死傷災害です。こちらは 9 %に対して 2.7 %の削減にとどまっておりますので、更なる努力が必要ということです。従来から災害が多発しております製造業、建設業は、ここにグラフはありませんが、具体的に計画の中で目標は掲げていないのですが、全産業の 9 %にほぼ近いぐらいの減少になっており、ほぼ達成できているという状況です。

 一方で、ここにグラフがある陸上貨物運送業、社会福祉施設、小売業、飲食店といったところは、正直申しまして、ほぼ横ばいか、むしろ増加に転じてしまっているという結果になっております。こうした状況を踏まえて、残り 1 年半の経過期間がありますが、死傷災害については一層の取組強化、相当頑張っていかなければいけないと思っているところです。

3 ページは先ほど申しました今年 7 月の速報値の比較ですので、後ほど御参考に見ていただければと思います。

4 ページ目ですが、こういった現状を踏まえて、本年度、平成 28 年度における安全衛生分野の行政運営方針として、どのようなことをやっているかということをまとめたものです。ポイントをかいつまんで説明しますと、最初の両立支援のためのガイドラインでは、がんなどの治療を受けながら職業生活が送れるようにするための支援の普及・促進といったことを行っております。次は過重労働の関係ですが、過労死等防止のための研究であるとか、シンポジウムの開催といったことをやっております。労働災害ですが、業種横断的なということで、どの業種でも比較的多く発生している転倒災害の防止、腰痛対策、交通労働災害防止などの対策に取り組むことになっております。また、重点業種ということで、第三次産業、建設業、製造業などといった重点業種に対する対策を引き続きやっていく。本年 6 月から化学物質の関係で、リスクアセスメントの義務化が前回の法改正の関係で施行されていますので、そういったものへの対応をしっかりしていく。ストレスチェックの関係ですが、昨年 12 月から施行されておりますので、そういったものの義務化への対応に、本年度の安全衛生分野の行政運営も重点を置いて頑張っているということです。

5 ページ目から、重点業種の 1 つである第三次産業の災害発生状況についてです。第三次産業の中で、小売業と社会福祉施設と飲食店と 3 つに分かれておりますので、それぞれについて簡単に説明します。まず、一番上の小売業ですが、目標は平成 29 年までに 20 %減ということですので、本年でいうと、単純にいくと 12 %ぐらい減っていないといけないということですが、現状は 0.5 %の減少となっております。

 こういったことになっている背景ですが、なかなか厳密な分析は難しいのですが、 1 つは小売業における雇用者数が平成 24 年以降、 4 %程度増えてきていることがあります。それから、高齢の方はもともと災害発生率が高いわけですが、そういった高齢の労働者、 60 歳以上の方などがかなり増加しており、そういった中で転倒災害などに被災していることが要因の 1 つになっているのではないかと考えております。また、小売業の死傷災害の 3 分の 1 は転倒災害が占めているわけですが、平成 27 年に若干の減少は見られました。これは「 STOP! 転倒災害プロジェクト」をやった結果でもあると思うのですが、一方で冷静に見ますと、平成 26 年、前年については冬場に大雪が降ったといったこともありましたので、これに甘んじることなく、今後も引き続きしっかり転倒対策に取り組んでいく必要があると考えているところです。

 社会福祉施設は、死傷災害の部分が著しく増えており、もともと 12 次防を作る前の段階でも、かなり増加があったものですから、 10 %減という、少し控えめな目標となっております。そういった中で、平成 27 年現在で 17.2 %増となっております。こちらの原因についても、小売業同様に雇用者数の増加ということがかなり大きく影響しており、平成 24 年以降に 16 %ほど雇用者数が増加しているということがかなり大きいと思っております。

 事故の型別に見ますと、腰痛と転倒が全体の 3 分の 2 を占めております。小売業とか飲食店に比べると、比較的未熟練な労働者、経験 3 年未満の方災害は他の業種と比べると少ない傾向にあるのですが、その分 60 歳以上の労働者の被災者数が増加しているという状況にあります。今後は腰痛とか転倒災害の防止対策を中心に、組織としての安全衛生意識の高揚に加えて、高年齢者に配慮した対策も必要になってくると考えております。飲食店については詳しい説明は割愛いたしますが、ほぼ小売業と同様の状況ということです。

 こうした状況を踏まえて、 6 ページは第三次産業における今後の取組をまとめたものです。平成 27 年は、上段にある 12 次防の計画期間中のこれまでの取組について、いろいろと網羅的に書いてありますが、そもそも重篤な災害が少ないということから、事業者、労働者ともども、安全に対する意識が少し希薄であるということを踏まえて、厚生労働省の幹部から業界団体に対する要請を行うであるとか、前回、法改正の時も議論がありましたが、安全推進者の選任であるとか、災防団体と連携した取組が挙げられております。そういった中で安全衛生教育を普及していこうということに取り組んでおります。災害件数が多い転倒災害については、「 STOP! 転倒災害プロジェクト」を平成 27 年に立ち上げております。同様に腰痛対策については、社会福祉施設の労働者に対する腰部への負担を軽減する実践的な介助法の指導講習会を、具体的に行っております。それに加えて、社会福祉施設の経営トップの方に対する講習も必要ではないかということで、平成 27 年からはそういった講習も加えて、組織全体で腰痛対策に取り組んでいただくことを進めております。

 今後はこうした取組に加えて、下側の今後の取組に記載がありますが、ウェブサイトを通じた安全衛生教育の動画教材の提供や、作業マニュアルの提供、業界関係者による安全衛生協議会の設置を通じた自主的な活動の促進などといったことにも、取り組んでいきたいと考えております。

7 ページ目、陸上貨物運送事業対策についてです。災害の件数については 10 %減が目標ですが、 0.4 %増ということで、平成 24 年以降を見ても、横ばいという状況です。こういった中で、トラックによる貨物の輸送量を見ると、この期間はほぼ変化がありません。確定的なことは言えませんが、ネットショッピングなどの普及に伴い、こういった荷物を運ぶというお仕事で働く方が増加していることも影響しているのではないかと思っております。こうした状況を踏まえて、陸上貨物運送事業の死傷災害の 7 割を占める荷台などからの墜落・転落災害の防止について、ガイドラインを策定して、その対策に取り組んでおります。その結果、若干ですが、墜落・転落災害については、前年より減少しているという状況です。

 荷役作業中の災害ですが、陸上貨物運送事業者の管理下にない荷主先で発生することが多くなっています。そういったことも含めて、荷主先を含めた荷役作業に関連する労働者に対する荷役災害防止担当者向け研修に取り組んでいるところです。また、 12 次防の最終年において、全国の実施対策、対策の実施状況などもよく精査して、効果のあったものを水平展開していくこともしながら、最後に対策の見直しを進めていきたいと思っております。

8 ページ、建設業の対策です。建設業については、死亡、死傷ともに着実に減少しておりますが、計画の目標である死亡災害 20 %削減については、引き続きの対策が必要という状況です。このため、事故の型別で災害件数が多い墜落・転落について、安全衛生規則を改正して、昨年、規則強化を行っております。足場での作業において、より安全な措置である手すり先行工法の普及についても継続的に指導を行っており、死亡災害については平成 24 年比で 20 %近い大幅な減少となっておりますし、死傷災害も同じく 10 %近い減少となるなど、一定の成果が得られていると考えております。今後は、震災からの復興に加えて、 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックの関連工事の増加も予想されますので、こうした工事の安全対策について、競技組織とか発注機関と連携した対策を進めていく。そういった中で、ハーネス型の安全帯の普及などにも取り組んでいきたいと考えております。

9 ページは建設業の関係ではありますが、厚生労働省で把握しております一人親方の死亡災害の発生状況です。こういった災害の発生状況について、引き続き私どものほうでも把握に努めて、対策としては基本的には一人親方も一緒になりますので、今後は労働者対策を通じて、その防止に取り組んでいきたいと考えております。

10 ページ目、製造業対策についてです。製造業についても、建設業同様に死亡、死傷ともに着実に減少してきております。 12 次防の目標では、死亡災害を 5 %以上削減させることになっておりますが、これについてはほぼ余裕を持って達成しているということです。一方で、死傷災害については、先ほど計画の目標は定めていないものの大体全業種平均ぐらいは達成していると申しましたが、わずかながら達成できていないという部分がありますので、この部分を引き続き着実に進めていくことを考えております。製造業においては、近年、大規模な装置産業において、労働災害や事故が後を断たない状況にあります。特に鉄鋼業などにおいては、外部の階段とか、クレーンの操作室の床といった部分、普段あまり使用することのない場所で、施設の老朽化を原因とする災害が相次いだことがありまして、業界団体や経済産業省と連携して、施設の自主点検などをお願いしております。今後については、こうした対策を引き続き行うとともに、産業用ロボットと人との共同作業を安全に行うためのリスクアセスメント手法の明確化、本日の諮問案件である機械の機能安全に取り組んでいくこととしております。

11 ページ、メンタルヘルス対策です。メンタルヘルス対策については、昨年 12 月に施行されたストレスチェック制度を含めた対策が適切に実施されますよう、産業保健支援事業などを活用しながら、事業場を支援しているところです。具体的な取組としては、産業保健支援事業において、事業場への個別訪問や産業保健スタッフ向けの研修を行っておりますほか、ストレスチェックの実施が努力義務とされている 50 人未満の事業場への助成措置なども行っております。今後については、こうした対策を引き続き行うとともに、労働者個人のストレスチェックの結果を集計・整理する研究の結果を踏まえた、職場全体の改善につなげていく手法を検討していくこととしており、また、メンタルヘルスで休業している労働者の職場復帰支援モデルのプログラムを作成・周知していくことに取り組むこととしております。

12 ページ、過重労働対策についてです。過重労働対策については、健康管理対策と過労死等の防止のための対策に関する大綱に基づく対策、この 2 つに取り組んでいるところです。具体的な取組としては、産業保健支援事業において、事業場への個別訪問による労働者の健康確保に関する相談対応、独立行政法人労働者健康安全機構の労働安全衛生総合研究所において、過労死等の実態調査に関する研究を行っております。今後については、こうした対策を引き続き行うとともに、現在、開催されております産業医制度の在り方に関する検討会においても、過重労働による健康障害防止対策も含めて検討を進めていくこととしております。

13 ページ、熱中症対策についてです。熱中症対策については、 12 次防の計画期間中の年平均の死傷者数を、平成 20 年から平成 24 年までの平均より 20 %削減することを目標に掲げております。平成 26 年については、平成 25 年より 107 人減少という大幅な減少となったのですが、平成 27 年については増加に転じてしまっているという状況です。こうした状況を踏まえて、平成 27 年については例年 5 月に発出している熱中症予防の通達を 2 月の段階で発出して、夏本番になる前から対策を講じていただくことをお願いしているところです。この通達の中で、熱中症の予防教育について、新たにカリキュラムを具体的にお示しして、対策・教育がしっかりした、より実効が上がるものになるようにということでお願いしているところです。熱中症予防の関係ですが、今後については正確な WBGT 値をしっかり測って対策を講じることが必要になり、この WBGT 値を測る計測機器の JIS 規格が今度、制定されることになっておりますので、そういったもののタイミングを捉えて、その普及に取り組んでいきたいと考えております。

14 ページ、化学物質による健康障害防止対策です。化学物質対策については、有害性の表示と SDS の交付率を 80 %とすることを目標に掲げております。平成 27 年の状況については、調査結果が今秋に公表予定です。具体的な取組としては、本年 6 月に施行された化学物質のリスクアセスメントの実施や表示の義務化への対応はもちろんですが、こういったものの対象とならない化学物質についても、きちんと表示を普及していくために「ラベルでアクション」という運動を展開して、全国労働衛生週間、ちょうど今、準備月間中ですが、そういった機会を捉えて啓発活動を行っているところです。そのほか、福井県の化学工場において膀胱がんが発生しておりますので、オルト - トルイジンについて、特化則の規制物質に追加することとしており、それによって局所排気装置、作業環境測定、保護具着用、特殊健診の実施などが義務化されていくということで考えております。

15 ページ、受動喫煙防止対策についてです。受動喫煙の防止については、昨年 6 月に受動喫煙防止の努力義務が施行されたことを踏まえて、職場における受動喫煙の防止であるとか、中小企業事業場向けの助成金について、引き続き周知啓発を続けていくということで考えております。

16 ページ、非正規労働者の対策です。非正規労働者については、労働安全衛生調査の結果から、安全衛生教育・安全衛生活動への参加が低調であるということが課題として浮き上がっております。このため、安全推進者の選任を含む安全管理活動の活性化、派遣元指針、派遣先指針に基づく安全衛生対策の実施、雇入れ時教育マニュアルの作成に引き続き取り組んでいくこととしております。

17 ページ、その他の対策です。こちらでは、リスクアセスメントの普及の促進、労働災害防止団体による中小規模事業場向けの安全診断、改善指導をやっております。安全衛生優良企業の公表は、現段階で 23 企業あります。東京電力の福島第一原子力発電所への事故対応、廃炉作業への対応や、最初に出てきましたが、治療と職業生活の両立支援対策などに取り組んでおります。以上、簡単ですが、第 12 次労働災害防止計画の平成 27 年時点における進捗状況について説明を終わります。

○土橋分科会長 それでは、ただいま説明いただいた内容について質問等はございますか。

○縄野委員 資料 2-1 5 ページに関して意見と質問です。第三次産業、特に小売業、社会福祉施設、飲食店においては、一部を除いて労働災害が増加傾向にあります。特に社会福祉施設で顕著な傾向にあります。これから、日本がますます高齢社会となっていく中、社会福祉施設の充実は、より一層求められる施策です。しかしながら、新規事業者、新規参入事業者が多く労働者数も高齢者層で増えているとはいえ、そこでの労働災害が多く、かつ増加の一方である点は見過ごせない問題であると認識しております。社会福祉施設などでは労働災害が増加傾向にありますが、一方で建設業等、労働災害が減少傾向にある産業もあります。建設業で労働災害の減少がうまくいった要因は何であるのか、厚生労働省として分析されているのかどうか。また、その分析を基に労働災害の減少に成功した要因や対策を、社会福祉施設等の労働災害が増加傾向にある産業でも活用できないものかと思っております。

 また、労働災害の増加傾向にある社会福祉施設や飲食業では、従業員 50 人未満の事業場も多く、安全衛生委員会等の設置義務もなく、職場の労働者で労働安全衛生の意識が共有できていないということも、この要因の 1 つではないかと思っております。従業員 50 人未満の事業場においては、労働安全衛生についてどのような取組がなされているのか。調査、確認をしていく必要もあるのではないかと思っております。この点についても御見解をお願いいたします。以上です。

○野澤安全課長 第三次産業の労働災害の発生が増加傾向にあることについて、建設業等の災害が減っている業種についての取組を、そういう業種にいかせないのかという趣旨だと思っております。建設業については、企業や事業場の安全衛生意識が非常に高くて、例えば、職長等の現場の管理者から労働者に至るまで、その意識が高いということだと思っております。そのような状況になっていることについては業界の取組、それから、公共工事等については発注者と受注側の建設業界の関係があろうかと思っております。

 そういうことをどのようにいかせるのかということですが、まだ、緒についたばかりではありますが、 1 点として、社会福祉関係の業界団体の集まりである協議会組織と中災防と連携して、いろいろな働き掛けを始めているところです。そういう団体側へのアプローチが企業や事業場、あるいは最終的に労働者の意識にまで下りてくるということが必要かと思っております。

 これも取り組んでいることですが、先ほど申し上げたような発注者と受注者である建設業界との関係ということについて言えば、社会福祉についても許可する行政機関がありますので、厚生労働省の中ではありますが、そういう機関と県単位で各局が連携して、例えば、許可する対象の事業場を集める会議の場で安全について話をさせてもらうという取組をしております。

 そういうことをしながら対策を進めていきたいと考えております。今日の説明にもありましたように、改めて都道府県労働局の対策の取組状況を調べたり、業界団体へのヒアリング等をしたりして、 12 次防の最終年度、あるいは 13 次防にかけて第三次産業にどのように取り組むかという検討をしていきたいと考えております。

 それから、 50 人未満の事業場における安全衛生管理体制の話については、先ほどの説明にもありましたように、安全推進者の配置についてのガイドラインを示しております。まだまだ配置の率は高くありませんが、そういうことについてしっかりと指導していきたいと考えております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○山口委員  2 点あります。 1 点目は、例えば、社会福祉施設については就業者数そのものが増えているという御説明がありました。実際どの程度の数字なのかということを示していただくと、多分、分母と分子の関係で見ると、また違った見方ができると思いますので、その辺を是非お願いしたいと思います。

2 点目は、労働災害は複数の要因が複雑に組み合わさってリスクが高まるということが、多分いろいろな所で起きていると思います。それについては、資料 2-2 も含めてコンパクトなものですから、説明文の中で随所にそういう説明を頂いておりますが、もしも、詳細なクロス集計みたいな分析とか、更に高度な解析をしているということがありましたら、そのエッセンスだけでも示していただけると、多分大きな参考になるのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○野澤安全課長 まず、社会福祉施設の就業者数の増加と労働災害の増加の比率の御質問ですが、平成 24 年に比べて、先ほどの説明の資料の中にもありましたが、休業 4 日以上の労働災害は平成 27 年の時点で 17.2 %増加しております。それに対して、雇用者数は 15.6 %の増加です。残念ながら、かなり近いところといえば近いところですが、数字そのものをしっかり見ると、雇用労働者数の増加よりも死傷者数の増加率の方が高いという状況です。これについては、これも先ほどの説明の中にありましたが、 60 歳以上の高年齢労働者が平成 24 年比で 30.8 %増加しているということもあり、御存じのとおり高齢の方は転倒の災害、あるいは腰痛等の災害に被災する率が高くなっておりますので、そういうことも影響しているかと思っております。

 それから、 2 点目の複数の要因が重なってリスクが高まることについての分析ということですが、少しこの場で説明できるようなものを持ち合わせておりませんので、また、今後、説明できる機会がありましたら、説明したいと思っております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○中村 ( ) 委員 社会福祉施設における労働災害防止について申し上げます。今年実施した日本商工会議所の調査においては、 55 %の企業が人手不足と回答いたしました。その結果と本日の資料を比較しますと、労働災害の多い業種は人手不足が顕著な業種と重なっているという状況です。人手不足を背景とした、労働者の高齢化や未熟練化が労働災害につながっていると考えられますので、業界ごとの構造変化に対応した取組、支援を進めていくことが重要であるということを、まず考えております。

 質問になりますが、商工会議所では介護事業を営む企業と意見交換を行い、ロボット、 IT の活用の支援をしてほしいという要望がありました。これは、特に腰痛防止に効果が見込まれるということです。 4 ページに助成金について書かれていないのですが、社会福祉施設等へロボットや IT に関係する助成金があるのかないのか。また、ほかの産業ではどうなのかというところを、まず、教えていただきたいと思います。

○武田労働衛生課長 まず、安全性やその他の課題について、介護福祉施設等における作業を含め、装着型ロボットの腰部負担軽減効果等について、現在研究を進めております。省内においても老健局をはじめとする関係業界を所管している部局とも横の連携を図りながら進めていきたいと考えております。

○中村 ( ) 委員 ありがとうございます。 6 ページは腰痛予防対策についての講習会がメインになっているということが現状なのでしょうか。その点を教えてください。

○武田労働衛生課長 腰痛予防の講習会については、確かに御指摘のとおり大きな対策の柱と考えております。腰痛に関しては、ここでもお示ししているとおり、基本的に私どもは指針を策定しており、先般改訂をいたしました。それに基づき、どのような形で対策を進めていくのか、標準的なものをお示しするということも非常に大事なのですが、具体的にそれぞれの現場でどのように適用していくのか、それから対象者の属性、その他要因によって、どのようにやり方を工夫していくのかということが非常に重要なことと考えております。

 現場でいかに有効に腰痛対策を進めていけばいいのかということも含めて、講習を横に広げていきたいと考えております。

○土橋分科会長 ニッポン一億総活躍プランの中にもロボット、 IT の活用が書かれておりますので、いろいろな産業でその辺りが活用されていくことが大事なのかと思います。

○中村 ( ) 委員  11 ページのメンタルヘルス対策の件です。事業所の取組状況については、平成 28 年の秋頃、調査結果が出るということなのですが、メンタルヘルスへの取組が進んでいることを期待しております。大企業に比べて、小規模企業は安全衛生に対する取組はどうしても遅れがちですが、人材や財政面が十分でないために対応に苦労しております。ストレスチェックの実施や産業医の選任については、義務を課される基準となる従業員数を安易に引き下げるのではなく、地域の事業者への前向きな取組を支援していただきたいと思っております。

4 ページに書かれておりますが、地域の産業保健センターや助成措置による支援をよろしくお願いしたいと思います。以上です。

○土橋分科会長 御要望ということですが、よろしいですか。

○村上委員 只今のメンタルヘルスについて、何点か申し上げます。 11 ページに記載があります、今ほど御指摘のあったストレスチェックについてです。 50 人未満の事業場についてはストレスチェックの実施が努力義務となっておりますが、労働安全衛生法改正の議論をした当時、安全衛生分科会においても全ての事業場でストレスチェックの実施を義務とするということで取りまとめた経緯があるかと思います。ただ、そうは言っても産業医を確保するなどの問題もあり、なかなか難しいという状況は踏まえておりますが、私どもとしては早く全ての事業場の労働者が、ストレスチェックをきちんと受けて、より良い職場にしていくということを求めておりますので、意見として改めて申し上げます。

 また、ストレスチェックについてですが、もう少しで施行後 1 年近くになろうとしております。本当に実施されているのかどうか、課題は何かということについて実態を把握する必要もあるのではないかと思いますが、実態を把握する御予定があるのかどうかということについて伺いたいと思います。

3 点目ですが、 11 ページに記載のある「 12 次防計画期間中の今後の主な取組」として、最後に「職場復帰支援プログラムの作成支援」が掲げられていますが、これについて 1 点要望があります。私ども連合でも労働安全衛生に関して、加盟組合を対象に 3 年に 1 回、調査を行っております。その中でメンタルヘルス不調による休業者が出た事業場において、直近 3 年間に職場復帰したが再度休業した人がいるのかどうかという調査をしたところ、再び休業した人がいるという回答があった事業場は 64.6 %で、いないが 30.6 %でした。職場復帰してからも再度休業してしまう事例も多いという視点を踏まえた、職場復帰支援プログラムの作成支援をやっていただきたいと思っております。

 また、もう 1 点、非正規労働者対策です。 16 ページ、おそらく第三次産業はとても多くなってくるのではないかと思いますが、第三次産業の労災が増えているといっても、ここには数値として現れてこないような労働災害というのでしょうか、労災の申請はしていないのだけれども、実際にはいろいろな怪我が起きているのではないかと思います。いわゆるパートや契約社員の方々だけではなくて、昼間学生や外国人留学生の方でも週に 28 時間まで働くことができますので、そういう方々も何かしら怪我などをされているのではないかと危惧しております。働いている労働者は全て労災保険でカバーされるのだということや、労働安全衛生は等しく教育していかなくてはいけないということを、是非、改めて徹底していただきたいと思います。以上です。

○野澤安全課長 最後は、非正規関係の労働災害についての意識の啓発という御質問だと思っております。おっしゃるように第三次産業にはそのような形の労働者がたくさんいると思っております。事業場の安全衛生意識を高めていただくということについて、先ほど説明でもありましたが、今年度あるいは来年度からトップに対する講習も予算等で予定しておりますので、そのような意識については植え付けるというか、そういうことをやってまいりたいと思っております。

○塚本産業保健支援室長 まず、ストレスチェックの施行状況です。現在、都道府県労働局、労働基準監督署、地域の産業保健支援総合センターにおいて、研修、集団指導、個別指導、自主点検等を行っております。先ほども御指摘がありました、ストレスチェックの実施状況については、規則に基づく監督署への報告により把握することとしており、統計自体は年度ごとに取りまとめる予定ですが、例えば、ある労働局のサンプル調査では 9 割以上、大部分の事業場において実施済み又は実施予定であるという状況です。私どもは平成 28 11 30 日に向けて引き続き重点的な周知、広報、指導等を行い、ストレスチェックの履行確保を図っていきたいと考えております。

 次に 2 つ目の 50 人未満の事業場におけるストレスチェックの実施ですが、御承知のとおり、 50 人未満の職場ではストレスチェックは努力義務となっております。これについては、助成金を設けてストレスチェックに要した費用、面接指導に要した費用等について助成金を支給するという形で現在促進を図っているところです。また、 50 人未満の職場の産業保健の在り方については、現在、産業医の在り方検討会を開催して、その在り方等について御検討いただいております。

 メンタルヘルス不調の方の支援復帰です。 11 ページの下に掲げておりますが、職場復帰支援モデルプログラムの作成、また、支援事例の収集等を図り、今後、普及等を図っていきたいと考えております。

○土橋分科会長 その他ございますでしょうか。

○勝野委員 建設業の対策のところで何点か、要望と御質問をさせていただきたいと思います。この間の死亡者数、平成 27 年度で申しますと大きく減少したということで、着実に減少という表現されておりましたが、資料の下にありますとおり、この間の取組について、やはり成果ということで評価をしていきたいというふうに思います。ただ、ここで出されている数字が死亡者数の減少という指標でありまして、先ほど山口先生がおっしゃったとおり、例えば、労働者数に占める割合として建設業における死亡者数がどのくらい変化をしているのか、そういう指標も必要かなと思っておりますので、それが分かれば是非お教えいただきたいと思います。

 加えまして 9 ページに、参考資料ということで、一人親方の死亡災害発生状況が出されております。こちらのほうで申しますと、平成 27 年度が 48 人ということですが、平成 26 年度で申しますと 32 人と承知をしているわけで、これはかなり増えていると認識をしております。中小事業主も含む特別加入 1 種、 2 種の合計で言うと、平成 26 年が 64 人だったものが、平成 27 年は 81 人に増えている。一方で、こういう実態も多分出ているのかなと思っております。建設業の場合で申しますと、やはり中小零細の事業主は労働者と一緒に現場で従事をする、こういったような作業でありますので、災害を防ぐという意味からしますと、こうした特別加入者と申しましょうか、一人親方、中小零細事業主も含めた実態の把握と、それに対する対策ということが非常に重要になってきていると思います。そうした点で、こちらのほうの実態把握を数字を含めてどの程度までされているのかという点について、お聞きをしたいと思います。

 もう一点なのですが、 8 ページの下のところで、オリ・パラに向けて今後の 1 つの取組が出されているわけであります。この間、厚労省の中で安全衛生協議会を立ち上げていただいて、そこにその後、労働者側の代表も入っているということで、しっかりとした対応をしてもらっているというふうに理解をしております。今後の取組の中で「安全衛生対策の推進」という項目がありますが、何か具体的な予定、方針等が出されているのであれば、少しお聞かせいただければと思います。以上です。

○土橋分科会長 いくつか御質問がございましたが、どうぞ。

○縄田建設安全対策室長 御質問いただきましてありがとうございます。建設安全対策室長の縄田でございます。いくつか御質問ありましたが、順々に答えていきたいと思います。まず、建設業の災害が減っているけれども、労働者数に対する割合で減っているのかどうかという御質問があったかと思います。私どもでは、労働者千人当たり 1 年間に発生する死傷者数、これを「年千人率」という言い方をしておりますが、こういった統計も取ってございまして、建設業については平成 25 年、平成 26 年と年千人率が 5.0 でしたが、平成 27 年においては 4.6 ということで、年千人率で見ても建設業については災害が減っているという状況でございます。

 それから 2 点目で、 9 ページにございますが、一人親方の災害が増えているのではないかという御質問ですが、おっしゃるとおり、私どもがお示ししている統計では平成 26 年の一人親方の死亡災害が 32 人に対して、平成 27 年は 48 人ということで、一見、急増しているような数字になってございます。ただ、これについては一人親方の死亡災害の統計を取り始めたのが、実は平成 25 年の下期からです。一人親方については、労働安全衛生法上の労働者死傷病報告の提出義務がないものですから、私どもはそもそも一人親方の災害の発生を正確に把握する術がないという中で、新聞報道でありますとか、あるいは労働災害が発生した中で、一人親方の方が含まれている、そういったものをできるだけ把握して数字をつかもうということで、先ほども言いましたが、平成 25 年の下半期から統計を取り始めております。そういった意味で、平成 26 年と平成 27 年を単純比較すると、 32 から 48 ということでございますが、これは私どものその統計が精緻となったというか、より多く把握できるようになったという側面も、多分あるのではないかというふうに考えてございます。いずれにしましても、この統計については今後、更にきちっと取れるような形で、努力してまいりたいと思っております。

3 点目ですが、一人親方がどういう実態にあって、それに対してどういう対応を取るかということでございます。一人親方の安全衛生対策については、労働安全衛生法に基づきまして、元方事業者に対して下請けを含めた現場の安全衛生に係る指導を徹底することが、一人親方の安全衛生の確保に資するものだというふうに考えております。一人親方の災害の発生状況にも十分留意しまして、引き続きこういった対策を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

4 点目としてオリンピック・パラリンピック競技大会の建設工事に関する協議会について御質問がありました。私どもは、 6 月に協議会を開催しまして、基本的な安全衛生方針というものを策定しております。 4 つくらい大きな柱があるのですが、発注者による取組、それからリスクアセスメントの実施、墜落・転落等発生頻度の高い災害の防止、魅力ある建設現場の構築ということで、女性や若者も安全に安心して働ける現場を構築するとしております。そういった基本方針を策定してございまして、これを今後協議会の中でフォローアップしていこうというふうに考えてございます。具体的には、度数率といった指標を用いまして、建設工事がきちっと安全に施工されているかどうかということを、関係機関の御協力を頂きながら、進めてまいりたいというふうに考えてございます。また、そのほかにも技術者の交流をやったり、安全スローガンを決めたり、この協議会の活動を盛り上げていく中で、建設安全について意識の向上を図ってまいりたいというふうに考えてございます。以上です。

○勝野委員 一人親方の実態については是非できるだけ正確と申しましょうか、 100 パーセントでないにしても、例えば、労働局等々では一定の数字を把握していると思いますので、そういうところを含めて是非、実態把握を、より正確な実態把握をお願いをしたいというふうに思います。

 もう 1 つは、これからの安全衛生対策の中で是非、現場の安全パトロールですとか、そういうことも実施していただきたいというふうに考えておりますので、その際には是非、公労使と申しましょうか、そういったような形での安全パトロールの実施をお願いをしたいというふうに思います。以上です。

○縄田建設安全対策室長 一人親方の統計については引き続き、できるだけ精緻な数字が取れるように努力してまいりたいと思います。それからオリ・パラ協議会の中でのパトロール活動については、御要望として承りまして、協議会の中で議論させていただきたいというふうに思います。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○水田委員 建設業対策についてです。今お答えもあったように、死亡者数が過去最小ということについての評価はあると思うのですが、引き続きの対策をお願いしたいと思います。その上で、懸念事項を 2 点ほど申し上げたいと思います。 1 つはアスベストの関係です。これまでにも様々な対策が講じられてきたということは承知しているのですが、一時期高まった関心が薄れたのか、本来なされているべき対策が欠落していたのではないかという事例、例えば、慶應大学の矢上キャンパスの事例など、そういったものが報道をされています。改めてアスベスト対策の重要性について、周知徹底すべきではないかと考えています。この点については、通常の解体工事だけではなくて、熊本地震に伴う倒壊建物の解体工事についても同様だと思っております。特に、熊本地震に伴うアスベスト飛散に関しては労働問題だけではなくて、環境問題の側面もあると思いますから、厚生労働省として環境省とも是非連携を図っていただきたいと思います。

2 点目は、今もご指摘がありましたけれども、 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに関してです。国立競技場の新設工事が大幅に遅れていると思うのですが、そこで 2020 年に間に合わせるために急ピッチでの工事となることが予想されます。そのような状況で、労働安全衛生がおろそかにされることを懸念しているわけです。是非「オリンピック・パラリンピック競技大会 大会施設工事安全衛生協議会」などを通じて、とにかく労働安全衛生の問題については、徹底をしていただきたいと思います。以上です。

○奥村化学物質対策課長 では、アスベスト問題につきまして、化学物質対策課長の奥村からお答えしたいと思います。平成 18 年の全面禁止から時代が経って、人々の関心あるいは感度が薄れているのではないかという御指摘でございますけれども、確かに私どもの行政の担当者にもいろいろな問合せが来ているのですが、平成 18 年当時では来なかったようなちょっと残念な問合せ、初歩的な問合せも多くなってきているところでございます。私どももそういったことを大変問題だと思っておりまして、法違反の事実等を確認した場合にはきちんと厳正に対処いたしまして、私ども監督機関として新聞報道などもするというルールがありますので、それを適切に運営することなどにより、関心を高めていきたいと思っております。

 また、熊本でのアスベスト問題は私どもも今年度の大きな行政の重点課題としておりまして、既に 5 月から解体現場、あるいはがれきの処理現場でのアスベストのモニタリングを始めております。これは環境省大気環境課と連携しておりまして、作業現場、解体現場では、現場の中は厚生労働省、現場の外での一般環境への影響、拡散確認については環境省という役割分担で進めているところでございます。これまでに、 5 月以降のアスベストの飛散状況を両省とも発表しておりますが、敷地境界上の基準値、リッター当たり 10 ファイバーを超えるような現場はございませんで、環境省の調査では一般環境、国土の一般的な状況と変わらないというようなコメントもありました。労働環境においても同じような状況であると存じております。

 これから引き続き環境省との連携はもとより、石綿の解体については夏が終わってから、これから公費での解体が本格化すると聞いております。石綿の解体につきましては、事前調査でどの程度その建物の建材に石綿が含有しているかをきちんと把握して、適切な飛散防止対策及びマスクの選定をする、これは基本中の基本でございます。熊本では労働者のばく露はもちろん、一般環境の住民へのばく露もないように、徹底していきたいというふうに考えているところでございます。

○縄田建設安全対策室長 オリ・パラ大会施設の建設工事の関係でございますが、委員の御指摘のとおり、 2020 年に向けて今後、建設工事が集中して行われる、あるいは急ピッチで行われる、そして輻輳する困難な工事が行われるということについて、協議会の構成員である発注者、それから元請となる建設業の関係団体、こういった構成員全員が共通の認識を持っております。それゆえに、基本方針では工事の安全最優先というのをトッププライオリティに掲げており、委員の御指摘のとおり、協議会を通じてこれが徹底されるよう、しっかりとフォローアップしてまいりたいというふうに考えております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○青木委員 全国ガスの青木でございます。詳細にわたる説明ありがとうございます。私は意見を 2 点申し上げたいと思います。まず 6 ページの第三次産業における対策、腰痛対策のところであります。職場で労働災害を防止していく中で、実際に働いている従業員、組合員一人一人が安全に気をつけることはもちろん一番大事なところでありますが、やはりトップの意識というものも非常に重要な要素だと思っておりますので、是非ここは取組を進めていただきたいと思っております。この 6 ページの後半のところに、今後の主な取組として、社会福祉施設のトップを対象とした腰痛予防対策の講習会を開催するという旨が記載をされております。こういった施設での労働災害の発生状況が増えていることとか、その約 3 分の 2 の原因が無理な動作とか転倒であることを踏まえれば、これまでも取組を進めてきていただいていると認識をしておりますが、是非ここに記載の腰痛予防対策を一層進めていただきたいと思っております。それと併せまして、これまで厚生労働省の方で作成をいただいている様々なマニュアル、例えば、「社会福祉施設における安全衛生対策マニュアル」ですとか、「社会福祉施設における安全衛生対策 腰痛対策・ KY 活動」というものについても、是非活用を頂きたいと思っております。

2 点目ですけれども、 15 ページ、受動喫煙防止の対策についてでございます。直接的な記載があるものではないのですけれども、 9 2 日に厚生労働省から報告を公表された「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」を拝見すると、受動喫煙と肺がんや、虚血性心疾患、脳卒中、小児喘息、乳幼児突然死症候群との関連性について「科学的証拠は因果関係を推定するのに十分である」となっています。マスコミ等でも拝見をいたしております。また、 2020 年には東京オリンピック・パラリンピックが開催をされるということで、これについても厚生労働省では公共の場などにおける受動喫煙防止対策を強化するための「受動喫煙防止対策強化検討チーム」を立ち上げているとお伺いをしております。こうしたことも踏まえて、これまでも本分科会の中で労働側から再三申し上げているところでありますけれども、 2014 年の労働安全衛生法の改正では努力義務とされました受動喫煙防止対策について、やはり我々としてはあくまでも義務化をすべきだと考えている旨、改めてこの場で意見として申し上げたいと思います。以上でございます。

○野澤安全課長 今の 2 つのうちの第三次産業対策について、トップの意識啓発が重要である、それから厚生労働省で今まで作ってきた各種のマニュアルをしっかり活用してほしいということについては、先ほどから説明してきているとおりでございますので、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

○土橋分科会長 受動喫煙関係、よろしいですか。

○木口環境改善室長 受動喫煙防止関係につきましては、委員が御指摘のとおり、 9 月に喫煙検討会の結果が公表されまして、オリンピック・パラリンピックに向けた基本方針ということで、受動喫煙防止対策の強化検討チームにおいて検討が進んでいるところでございます。検討チームの取りまとめを踏まえまして、職場における受動喫煙防止対策に係る必要な対応についても、こちらの分科会でまた改めまして労使の皆様の御意見を伺った上で、検討してまいりたいと思っております。

○明石委員 今の先ほどの発言について、少しお聞かせいただきたいのですが、労働安全衛生法では受動喫煙防止対策が努力義務になりました。それの基になった建議についても、三者構成で議論した上で努力義務になりました。それについても反対をされているということなのですか、義務化を推されているというのは。

○村上委員 労働政策審議会、この安全衛生分科会もそうですけれども、公労使で議論して、まとめてきていることについては、それは私どもも尊重しております。

ただ、私どもとしては、全ての事業場でその労働者が受動喫煙によって健康被害を受けないように配慮しなければならないと考えておりますので、そこは義務化が必要であると考えているところでございます。労政審のこれまでまとめてきた経過とか、建議ですとか議論を、私ども参加してきた立場から蔑ろにしたりということでは全くございません。ただ、繰り返しになりますが、主張としてはそういうことだということです。

○明石委員 それは整合性がないような気がしますが、そのあたりはどういうことなのですか。三者構成で、労働組合も参加されて、努力義務でいこうと決まっていますよね。個人で義務化が良いとおっしゃるのは勝手ですが、三者構成の建議は尊重するけれど、やはり義務化をここで言われるのはおかしいのではないですか。

○村上委員 労働安全衛生法の改正はもうなされたわけです。前回改正においては、受動喫煙防止対策は努力義務化という話でした。労働側の主張が全て通るわけではありませんので、そこは努力義務化ということで、一歩前進したということであると考えています。ただ、それが労働安全衛生法を全く今後改正しなくていいということではなく、私どもとしては、もう一歩、受動喫煙防止対策を進めるべきだと考えているということを申し上げているだけであって、前回改正の話と、次回改正の話とは違うと思っておりますので、そのもともとの立場をもう一度改めて申し上げただけでございます。

○明石委員 しつこいようで申し訳ないのですけれど、今そういう、次の議論が、オリンピックに向けてなされているという認識かもしれませんが、やはりこの対策は昨年の 6 月に施行されたものであって、それを推し進める、それによって受動喫煙防止対策はされていくということで取り組んでいます。我々の方からすると、先ほどの発言は非常に残念です。

○土橋分科会長 ということでございます。ほかに御質問等ございますでしょうか。

よろしいですか。

 それでは分科会といたしましては、ただいまの報告を承ったということで、次の最後の議題にまいります。議題 (3) その他について、事務局から報告事項があるということですので、お願いいたします。

○小沼調査官  1 点、独立行政法人関係の御報告でございます。一昨年の 5 月の分科会で、法案の成立などにつきまして御報告させていただいておりましたが、独立行政法人労働安全衛生総合研究所と独立行政法人労働者健康福祉機構の統合などを内容といたします、独立行政法人の整備法というものが、平成 28 4 月から施行されました。その関係で、統合法人といたしまして、新たに両法人を統合いたしました「独立行政法人労働者健康安全機構」が発足いたしておりますので、御報告いたします。

○土橋分科会長 御報告ということでございます。そのほか、何かございますでしょうか。それでは、これで全ての議題を終了いたしました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○宮本計画課長 本日も熱心に御議論いただき、感謝申し上げます。御了解いただきました諮問案件につきましては、早急に所要の手続を進めてまいります。また、次回分科会は追って御案内させていただきますので、よろしくお願いをいたします。

○土橋分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名につきましては、労働者代表委員は勝野委員、使用者代表委員は中村節雄委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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