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2016年7月15日 第24回 社会保障審議会生活保護基準部会
社会・援護局
○日時
平成28年7月15日(金)10:00~12:00
○場所
航空会館5階 501・502会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
小塩 隆士 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
宮本 みち子 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・生活扶助基準の水準の検証手法及び今後の検証手法の開発に向けた検討
・その他
○議事
■駒村部会長 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第24回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
まず、本日の委員の出欠状況について事務局より御報告をお願いいたします。
■鈴木保護課長 おはようございます。本日の委員の御出欠でございますが、全委員、御出席いただいております。
それから、事務局におきまして、6月に人事異動がありましたので、御紹介させていただきます。
別の会議で、今、着いたばかりですけれども、定塚社会・援護局長でございます。
■定塚局長 定塚でございます。先月から局長を拝命しました。
委員の皆様には大変お世話になっておりますけれども、ぜひ充実した御審議をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
■鈴木保護課長 続きまして、藤原社会・援護局総務課長でございます。
■藤原総務課長 藤原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
■鈴木保護課長 それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
前回の部会では、平成29年検証に向けて、今後の基準部会における議論の進め方について事務局より資料を提出いただき、議論を行いました。
議論の中では6項目の検討課題が挙げられましたが、まず各検討課題を一通り議論してからということで、本日は生活扶助基準と基準の見直しの影響の検証方法についての御報告をいただきたいと思います。
まず、事務局から資料1についての御報告をお願いいたします。
■清水課長補佐 それでは、資料1の方から説明させていただきます。資料1については、前回の部会における委員から御依頼いただいた資料等をまとめたものでございます。
1ページ目をお開きいただければと思います。基準部会の今後のスケジュールということをまとめさせていただいております。
ただいま部会長の方から御紹介いただきましたとおり、今期については6つの課題について、一通り御議論いただきまして、来年度の検証作業に向けて、方向性とか課題の優先順位等について整理したいということで考えてございます。各回の議題といたしましては、今回、7月の欄でございますけれども、生活扶助基準の検証手法について御議論いただくとともに、6点目、一番下の欄でございますけれども、これまでの基準見直しの影響について、検証をどのような視点で行っていくかについて御議論いただきたいと考えてございます。
部会につきましては、おおむね1カ月半に1回程度を予定しておりますので、次回、9月の上旬から中旬ぐらいを予定しておりますけれども、その回では、有子世帯の扶助・加算のあり方、あわせて、その他の扶助・加算のあり方について御議論いただきたいと思います。
続いて、10月でございますけれども、就労(勤労控除等)の関係、また級地区分の関係について御議論いただくということで予定してございます。
11月については、各議題の議論の結果、さらに深めた議論が必要な点について御意見、御議論をいただきまして、12月には、今年のまとめとして、先ほど申しましたとおり、来年度の検証作業に向けて、各課題の検討の方向性とか検討の優先順位等の整理ができればと思ってございます。
年明けから、全国消費実態調査のデータが入手でき次第、また検討作業班等によるデータ分析等の作業を行いまして、29年の本格的な検証作業に移っていきたいと考えてございます。
続いて、2ページ目でございますけれども、こちらについては、前回御依頼がありました各種加算の認定状況、また事業費をまとめた資料でございます。
事業費については、認定件数に単価を乗じた推計値ということで出してございます。また、次回、加算の議論を行う際には資料として添付させていただきたいと思ってございます。
続いて、3ページ目、4ページ目につきましては、保護受給者のうち、高齢者、65歳以上の方の状況ということで、3ページが年金の受給状況、また4ページが就労状況をまとめた資料でございます。
年金につきましては、受給割合で言いますと47.8%ということで、約5割。また、金額で言いますと、平均的な金額としては4万7,000円。また、3万円台の受給者が最も多いという分布になってございます。
就労の状況、4ページでございますけれども、就労している割合は65歳以上全体で言いますと3.9%。下の表に再掲ということで年代別の就労割合を出しておりますけれども、65歳から69歳に限定すると7.9%。また、年齢が高くなるにつれて就労割合が低くなってくるという状況でございます。
続いて、5ページ、6ページについては、前回、平成25年から27年にかけて、生活扶助基準の見直しに伴い、他制度への影響の状況でございます。
前回の見直しの際におきましては、閣僚懇談会において、できるだけ基準見直しの影響が他制度に及ばないよう対応することについて、申し合わせを行っておりまして、その後の対応状況についてまとめさせていただいたものでございます。
1点目、個人住民税の非課税限度額等への影響でございますけれども、2番目の丸のところでございますが、生活扶助基準の見直しに係る対応結果というところでは、平成26年度税制改正におきまして、基準見直し前の現行どおりとするということにされまして、この下線部分でございますが、28年度分個人住民税まで、現在に至るまで非課税限度額については変更されていないという状況でございます。そのため、表に書いてありますとおり、住民税非課税を減免等の判断基準としている制度においても、基準見直しの影響は生じていないということになります。
また、6ページ目、2点目のその他の生活扶助基準の見直しに影響を受け得る国の制度ということで、主な制度をまとめさせていただいておりますけれども、いずれも見直しの影響を受けない形で対応いただいているという状況でございます。
3点目、地方単独事業でございますけれども、こちらについては、自治体に対して国の対応を説明させていただきまして、趣旨を踏まえて、自治体の方で御判断いただくように御依頼させていただいております。
そのうち、主なものとして就学援助についてでございますけれども、次ページをお開きいただきますと、これは文部科学省による各自治体での調査結果でございます。27年度当初でございますが、影響が生じていない市町村数で言いますと括弧書きの98.5%ということで、ほとんどの自治体において見直しの影響が生じていないという回答をいただいているという御報告をいただいております。
続いて、8ページにつきましては、1世帯当たりの最低生活費のうち、どの程度、世帯の自己の収入で賄われているか、まとめたものでございます。
すぐにお出しできるものとして、全体の平均値ということでございますけれども、収入で賄われている充当率につきましては26%となってございます。
続いて、9ページ、最後のページでございますけれども、こちらについては、保護開始世帯のうち、過去、保護を受けていた方がどれぐらいいらっしゃるかをまとめたものでございます。
数字的には、平成26年度に保護開始した世帯のうち、保護歴ありの世帯が割合で言いますと21%となってございます。
また、下の表に、前回廃止時からの期間別の数値を掲載しておりますけれども、前回廃止になってから1年未満に再開された方が51.9%ということで、20%のうち半分、10%程度が1年未満の間に再受給になった方という状況でございます。
資料1の説明としては以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
では、これは前回、委員の皆様から確認の依頼があった資料に関しての御説明だったわけですけれども、これから議論したいと思います。
栃本委員、お願いします。
■栃本委員 本日の資料にある一番最後の保護を受けて終了し、また再開といういわゆる回転ドアの部分も含めて、丁寧にそれぞれの委員の注文に応じてくださって、極めて重要な資料が今回、出されたと思います。
その上で、お願いですが、3ページ目でより丁寧に、従来からよく言われることですけれども、平均の議論と最頻値の議論と中央値というか、そういうものをそれぞれ出されるのが一番いいと思うのですね。どうしても平均の議論ばかりになるとミスリードするというのがありますので、ぜひできる限り、一番上のこういうところには最頻値と中央値と平均値を出していただくことが、多くの方々にとっても誤解を与えないような形になると思います。我が国の平均的な貯蓄額といった議論の時によく言われることですけれども、こういう生活保護にとっても3つのデータを出すことは判断の際に極めて重要なので。
もう一つ、まとめて申し上げますけれども、今回、65歳以上の就労について示していただきました。それで、先ほどのこれからの審議スケジュールの見通しで、9月に有子世帯の扶助・加算というものがありますね。あと、前回の審議でも、子どもの貧困とか、その他もろもろありました。子どものいらっしゃるワンペアレント・ファミリーにおける就労というものがあります。今回は65歳以上の就労状況がありますので、有子のそういうものがあるのであれば、次回、ぜひ出していただきたいということ。
これで終わりにしますけれども、さらに、生活扶助の基準の見直しに伴い他制度に連動して影響が出るという従来から言われ、この審議会でも多くの委員から指摘されてきたことについて、前回、私が注文したのではないかと思いますが出していただきました。テレビに出ていますと、コメンテーターがこの影響がすぐ出たとか、連動するので大変だという言及がありまして、もちろん影響が出たところが全くゼロじゃありませんけれども、こういう形で他制度が対応されているということを客観資料として出していただくことは、これはまた誤解を与えないというか、世間で言われていること、漠然とそうだと思っている、受けとめられていることに関して、客観的にはこうですよというものを出していただいたので、大変よかったと思いました。
以上です。
■駒村部会長 ありがとうございました。
では、山田委員、お願いします。
■山田委員 資料を御用意いただき、詳細に御説明、ありがとうございました。
私からは、9月の上旬から中旬にかけて、有子世帯の扶助・加算の主要論点に関する議論を予定、ということで、これに関連しまして、きょう提出いただきました7ページの資料、これは文部科学省が報告した資料を引用されたと思うのですけれども、私は「就学援助に係る認定基準の運用等で影響が生じていない」という定義が気になっております。
さかのぼって、この調査自体を確認いたしましたところ、影響を受けていないという定義が、平成26年調査では、平成25年度当初に準要保護者として就学援助を受けていた者について、引き続き対象とした場合、「影響を受けていない」と分類されています。要するに、新規に適用を受けられたかもしれない人が影響を受けたか、受けていないかは全く無視して、25年度当初に準要保護者として就学援助を受けている者については、引き続き対象とした自治体を、「影響を受けていない」という方に分類しているわけですね。
ですから、この資料を拝見するときには非常に注意が必要で、生活保護基準が引き下げられなかったら、本来、新規に就学援助の適用を受けるべき人たちを適用していない自治体を、「影響を受けていない」と分類している可能性があるということですね。ですから、有子世帯の加算を議論するときに、こうした資料をもとに、影響がなかったということを前提に議論が進んでしまうことについて、ちょっと懸念を覚えましたので、テイクノートということで指摘させていただければと思います。
私からは以上です。
■駒村部会長 ほかの委員、いかがでしょうか。
では、小塩委員、お願いします。
■小塩委員 私は前回、65歳以上の被保護者の年金受給状況について数字を見せていただきたいとお願いして、今回、非常に詳細な数字を見せていただき、ありがとうございます。それは3ページ目にありますね。
そこで、右側のグラフちょっとコメントいたします。これ自体は結構なのですが、このグラフが示しているのは年金を受け取っている人の分布ですね。もっと深刻なのは、年金をもらっていない人が全体の50%を超えていることです。その人たちをグラフに描くと、左端のところが物すごく高い棒になってしまいます。生活保護を受けている人が全体の四十数%、そのうち年金を受け取っていない人が50%を超えるということですから、掛け算すると20%ぐらいの人が、はっきり言えば公的年金の不備で生活保護の受給者になっていると考えていいかもしれません。
それから、年金を受け取っている人の分布を見ても、国民年金の受給の分布とよく似ているという印象を受けます。そう考えると、現在、国民年金を受け取ったとしても生活保護に陥ってしまうリスクはかなり高いということになります。これは結構深刻な問題でして、高齢者の生活保障を公的年金でやるのか、それとも生活保護でやるのかという大きな問題にかかわってきます。これから低年金・無年金の人が増えていくと考えますと、これは結構重要な問題だと思います。これが1つです。
もう一つは、後出しじゃんけんみたいになって申しわけないですけれども、こういうことも考えないといけないのかなということです。生活保護の目標としては、もちろん最低生活の保障というのは重要なのですが、もう一つ、自立の助長がうたわれておりますね。今回、見せていただいたのは、どちらかというと、このうち前半の最低生活の保障という観点から基準額をどのように見るかという評価にかかわるものです。それは、もちろん重要で、これからの私たちの議論の大半はそれになると思います。しかし、自立の助長という生活保護法が狙っているもう一つの目的に対して、現在の基準額がどういうインプリケーションを持っているかということも重要だと思います。
生活保護は、生活保護を受けても受ける期間ができるだけ短くなるということを最終的に目指すべきだと思いますが、そこまで目指して議論を進めないといけないと思いました。
以上2点です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
栃本委員。
■栃本委員 さっき、資料のお礼が中心になりましたので、今のお話の部分ですけれども、65歳以上の年金受給者の分布の部分ですけれども、これは今おっしゃったように、国民年金の人と厚生年金の人が入っているということですね。だから、この分布自身が興味深いと言うとあれだけれども、厚生年金でも生保ということがあるので、これをどういうふうに考えるかということが重要ということと。
もう一つは、むしろ僕は年金をもらっていても生活保護を受給しているという感じで、積極的というのも変ですけれども、そういう観点から見る図みたいに想定していました。ただ、おっしゃるように、これ以外に無年金者がいるわけです。
もう一つは、先ほど山田委員から、影響を受けたか受けなかったかということで、新規の被保護者になった人。
■山田委員 いや、私が申し上げたかったのは、生活保護基準がもし引き下げられなければ、本来だったら就学援助を新規に受給可能だった人を適用しなくても「影響を受けなかった」というカテゴリーに入ってしまう、そういう調査になっているということを申し上げました。
■栃本委員 わかりました。
■駒村部会長 よろしいですか。
ほかに。
岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 今の年金の話ですけれども、これは障害者世帯でやっても大体同じぐらいの割合で年金受給が出てきます。それで、これを年金が悪いとするかしないかですけれども、生活保護の役割というのは、生活保護でパーフェクトに無年金者を救済するという側面はもちろんあると思うのですけれども、年金が低い場合に、そこに補足的に入るという性格がもう一つあって、これは日本だけではなくて、例えばイギリスでも補足給付とずっと言ってきた。最低限保障というのは一つの制度でやるのではなくて、幾つかの制度がジョイントしてやるのだという考え方ももう一つあるわけですね。
そうすると、例えば年金受給のこのグラフを見てみますと、3万円台ぐらいのところは生活扶助部分も生活保護が相当補足しているということになりますけれども、高い層は、恐らく住宅扶助とか医療扶助とか、そういうほかの扶助が入ってくるということが想定されているのかなという感じがします。いずれにしても、65歳以上の場合は、今、小塩先生がおっしゃったように、短期の自立というのはもう無理なわけで、障害者世帯も重度の場合はそうです。今言った自立というのは生活保護から出るという意味ですけれどもね。
ですから、そういう生活保障の生活保護の性格と、もっと若い層が短期で頼ったりする。この20%ぐらいの1年未満で、また再開するという層、あるいは本当にステップアップできている層がどのぐらいいるのかわかりませんけれども、そういう層の生活保護というのはそもそも違うということを、もうそろそろはっきりさせていいのではないか。1950年に一般扶助で全国民のとやってしまったわけですけれども、分類型といいますか、類型型の生活保護ということももう考えてもいいのではないかという感じがします。
■駒村部会長 ほかにはいかがですか。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 先ほどの就学援助のところで山田委員がおっしゃった点を非常に重要に思っておりました。就学援助というのは、スプロール式に毎年新しい1年生が入ってきて、徐々に古いものが適用された人たちが卒業していくわけですから、何年かするとすぐに新しい基準になってしまうということもありますので、平成25年当時にそこにいた就学援助の受給者以外の方々も含めた状況を知る必要は非常にあると思います。
また、そういった観点から、この調査を26年度と27年度にやっていらっしゃるようですが、28年度はもう既にやられたのかどうか。もし、まだであれば、そういう観点も含めて文科省さんが調査なさるときにちょっと質問票を変えて、そのデータを集めることができないのか。もう既にやられていらっしゃるのであれば、厚労省さんのほうではできないのかということを御検討いただければなと思って発言いたしました。恐らく基準額もどんどん引き下げになってくるので、平成25年度からの乖離も大きくなってくるわけですから、影響はだんだん大きくなってくるはずなのです。なので、当初よりも今のほうが心配かなと思いますので、そこをぜひ御検討いただければと思います。
■駒村部会長 岡部委員、どうぞ。
■岡部委員 貴重なデータを出して下さり、ありがとうございます。
1点目、生活保護の受給者の世帯割合で、高齢者世帯が生活保護を受給されている割合が高い点についてです。高齢者世帯の所得の源泉は、稼働収入と預貯金、仕送りなどの非稼働収入がありますが、その主たるものは年金となります。低年金・無年金、給付水準の関係でこれらの人たちが生活保護を利用されることは、生活保護制度が一定の役割を果たしていると考えることができます。
また、被保護層のなかで高齢者が、一定程度就労されているというのは、一般の高齢者と比べてどうかを比較対照すると、先ほど小塩委員がちょっとおっしゃったように、高齢者が積極的に稼得を求めて就労するということがあるのかもしれません。これは、自立助長という観点から福祉事務所が働きかけをしていると読み取れるのではないかと考えます。そのため、この論議をもしされるとするならば、被保護層以外の層との比較対照しなければと考えます。
2点目、稼働年齢層の中の子どもの養育・教育支援について。これらは本来他の教育・養育関する所得保障で考えられるべきかと考えますが、このことを踏まえて制度との関連で考えますと、生活保護制度は一定役割を果たすことになります。また、先ほど山田委員、阿部委員がおっしゃった就学援助の関係が、生活保護基準を下げることによって、労働市場の教育、就労の訓練費用が引き下げられるならば問題で、引き下げられないようにするにはどうしたらいいかという論議が必要と考えます。
3点目、自立の観念について。生活保護制度の在り方に関する検討委員会が2003年から2004年にかけて開催されました。そこで、自立について捉え返しがされました。社会福祉法の3条に規定するサービスの理念に即して、生活保護の自立の助長で謳われている自立を、日常生活自立と社会生活自立と就労自立の3つで広く自立を捉えました。貧困から脱することも1つ大きな目的ですけれども、生活保護を受けながら社会生活、日常生活が営めるよう援助支援することも重要な役割であるとしました。
また、就労可能な人たちに対しては労働市場への参入を自立と考えられています。多様な働き方がありますので効果測定をどのように行っていくかはなかなか難しいと考えます。生活保護の制度は、最低生活の保障を行いながら自立を促進するという側面もあるということを、つけ加えさせていただきました。
以上です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
■栃本委員 今の部分は重要なので、逆に教えていただきたいのですけれども、社会福祉法の第3条における自立の概念というのが、そういう形で今、御説明のあったような3つの要素になったということによって、生活保護法における運用解釈じゃないけれども、そこにおける自立概念というのも自動的に変わったということですか。
■駒村部会長 岡部委員。
■岡部委員 変わってはおりません。生活保護法でいきますと、小山進次郎先生と木村忠二郎先生の自立の助長の考え方があります。小山先生につきましては、自立というものは経済的自立だけではないという表現でおっしゃっていますし、木村忠二郎先生は、ある意味では自立というのは貧困から脱するということを述べています。これら二つの見方を包含する考え方で、生活保護の所管の厚生労働省、あるいは自治体の部局が制度運営をされてきたと考えます。
それをもう一度詳細に整理したということです。社会福祉法の3条は、福祉のどのサービスを受け、人に対しても同じような考え方をサービスの提供することを述べたもので生活保護法において考え方を変更したことではないと理解しております。
■栃本委員 きょうはシンポジウムじゃないので。生活保護法における自立は違いますよ。いずれにしろ、今、小山進次郎先生の話が出てきたので、小山新次郎先生の『生活保護法の解釈と運用』の一番最初の部分では、資本主義社会における自立と書いてあって、それは自立ということを考えた時の意味する自立とは何かということについて極めて重要な意味内容と概念設定。わざわざ資本主義社会における自立と書いてあることの意味、一般的な自立論とはちがうわけです。それが別の世界ではどんどん変わっていくことも考えなきゃいけないが、ここは生活保護における自立概念に立脚しないととめどもないし、限定しないと。
■駒村部会長 ありがとうございました。
どうぞ。
■岡部委員 社会福祉法の3条は、厚生労働省の研究会でコンメンタールをつくられています。そこでは、ノーマライゼーションという考え方を前提にして書かれております。このことについてこれ以上はお話しを控えさせていただきます。
■駒村部会長 鈴木課長、お願いします。
■鈴木保護課長 すみません、1点だけ。
就学援助の調査の件ですが、文科省さんのほうに今年度、どうするかとかは聞いてみます。厚労省で独自に調査するというのは困難だと思いますけれども、生活保護の立場から言えば、御懸念されているような貧困スパイラルのようなことにならないような基準の考え方をどう考えていくかということを、また議論できるように事務局でも考えて、また次回に向けて提案したいと思います。
■駒村部会長 ほかの先生方、よろしいですか。
今の関係。先に山田先生。
■山田委員 すみません。そういうような働きかけをしてくださるというのは、大変ありがたいことだと思います。特に、文部科学省の資料ですと、援助率というのは、実は24年、25年と下がっています。平成25年の方が落ち込みが大幅になっています。もちろん背後には景気の回復等もありまして、これが一律に生活保護基準の引き下げによる影響とは言えません。
ただ、先ほど阿部委員からも御指摘がありましたように、学年別に見ていって、新しい学年ほど、がたっと落ち込みが激しければ、そこの部分は基準引き下げの影響という形で理解できるかと存じますので、多分、そういった人数をとっておりますと、学年別にどれぐらいの援助率かというのを確認すれば、大まかな傾向はつかめるのではないかと思いますので、そちらもあわせてよろしくお願いいたします。
■駒村部会長 援助率の仕組みが、扶助基準の1.何倍というのと、その倍率自体を動かしている地域というのもあると思うので、2つの効果が混ざっている可能性があるのではないかと思います。扶助基準が動いた部分と、扶助基準の1.何倍、これ自体をまた動かしているところがあるので、そのどっちの影響なのかというのをちゃんと識別していただかないといけないのかなと思いますけれども、この調査だけだとまだわからない部分が多いということで、引き続き検証していただきたい。
それから、私の方からのお願いというか、先ほどの議論をお聞きして、3ページですけれども、5割近い人が年金を受けながらということです。ただ、これは岩田先生の医療扶助、住宅扶助というお話もあったと思いますけれども、この数字が何年かおきに見たときに増えているのか、減っているのかということですね。これは、年金局と少し情報共有していただいて、どうも年金の制度が十分な機能を持たなくなってきているかもしれないと言うかどうかですね。
これは、先ほど岩田先生が扶助の種類、コンビネーションを見て判断しないと、単に年金水準そのものかどうかわからないですけれども、その辺は動きがどうなのか。この47.8%が増えているのか、減っているのかというのは慎重にモニターしておかないと、所得保障制度全体で何か困ったことが、どんどん生活保護の方で対応することになっているのかどうか、見てもらいたいなと思います。
岩田先生の方から手が挙がっていましたので、岩田先生、先ほどの続きを。
■岩田部会長代理 今の点とのかかわりで言いますと、さっき自立の議論がありましたけれども、例えば就労自立ということは、もちろん生活保護法の中でもある程度考えられてきたわけですけれども、結局、いろいろな環境変化や福祉事務所の力量の問題などもあって、今、ハローワークとのジョイントで就労ナビとか生活困窮者自立支援法とか、いわば外部化しているというか、制度の外に出ていっているのです。だから、就労はハローワークのほうがノウハウとしては蓄積がある。ただ、生活保護層に対するアプローチができるかという問題が残りますけれども、この辺の問題がある。私が思うに、これも生活保護の枠だけでやろうと考えない方がいいという感じがしています。
もう一点は、先ほどの就労援助ともかかわるのですけれども、個人住民税の非課税限度額も生活扶助基準額を勘案して設定していることになっている。変わりませんでしたよというのが今回、示していただいたものですけれども、そもそも地方住民税のもとになる所得税それ自体がいろいろな控除をとった後の所得に対して課税されるわけで、そういう低所得基準を使っていいかという根本的な問題が私はあるように思うのですね。
これ、もうちょっとすっきり、生活扶助基準の1.4倍とかとやってくれると、むしろ関係がはっきりするのです。昔、ボーダーラインと言った保護基準よりちょっと上か、実際上は下回るぐらいの、要するに貧困線の上下にあるような層がどのぐらい抑えられているかというのが大きな問題で、特に就学援助などはもうちょっと高く設定してもいいわけですね。昔は1.2とか1.4とかやりましたけれども、生活福祉資金なんか、東京都は1.8倍まで認めた時期もあったのです。
ですから、低所得基準というのも、我々の議論の範囲ではありませんけれども、いずれどこかできちんとした議論をぜひしていただきたいと思います。
■駒村部会長 では、宮本委員、お願いします。
■宮本委員 この調査に直接かかわるコメントではないのですけれども、就学援助等々に関係してですけれども、昨日、内閣府で子どもの貧困に関する有識者会議の第1回目というのがありまして、「子どもの貧困対策大綱」の見直し作業がスタートしたということで、文科省、厚労省、内閣府、それぞれが子どもの貧困にかかわって何をやるかということが相当出てきたわけです。
それで、きょうのこういう議論で気になるのは、生活保護制度の問題と、それから今、流れとしては子どもの貧困をどうするかということで様々な取り組みがスタートしようとしているのですけれども、ここがどういうふうな関係になっているのかというのが気になるところであります。生活保護基準とはかかわりなく、一つの政策的な動向あるいは政治的な動向で子どもの貧困対策が動いていくということになると、やや問題があるかもしれない。ということで、厚労省としても内閣府等と連絡をとりながら、そこがきちんと整合性がとれるようにしていくことが必要ではないかという感じがいたします。
■駒村部会長 今の点で事務局、何かありますか。今の宮本先生の情報共有なり、政府として向いている方向性でないかのようなことにならないようにということだと思いますけれども、何か。
■鈴木保護課長 もちろん、私どもの生活保護制度の中でも、子どもの貧困対策は、例えば収入認定の除外の範囲とか、そういったことで対応しておりまして、政府全体の子どもの貧困対策の中の一員として、私どもも当然取り組んでまいるということでございます。
■駒村部会長 いかがでしょうか。
はい。
■栃本委員 先ほど部会長が年金局とも連携してという話がありましたけれども、それと同時に、年金関係の審議会でも、制度論や財政論、技術論だけじゃなくて、制度論は重要ですけれども、年金の果たすべき機能論、年金はどこまでの範囲で何を実現するのか、機能論、これは本質論であって、これについても少しは関心を持っていただきたいということを申し上げます。
■駒村部会長 何と言っていいかわかりませんけれども、事務局のほうで情報共有等していただきたいと思います。
1個だけ、私も聞きたいことがあったのですが、9ページの保護歴のある世帯の定義というのはどういうふうな意味なのか。成人した後、本人に聞き取りをした結果なのか、それとも台帳に記録が残っているのか。子どものときも含めて、これはどういう意味なのか、御説明ください。
■清水課長補佐 こちらについては、保護開始のときに本人の聞き取り等で把握されたものということでございますので、必ずしも全部が把握できているわけではないと思っておりますけれども、期間としては、例えば子どものときに受けていたというところも含めての数字になっております。
■駒村部会長 わかりました。ありがとうございます。
では、きょうはまだ幾つか資料がございますので、次の報告に入っていきたいと思います。
資料2について、事務局からお願いできますでしょうか。
■清水課長補佐 それでは、資料2について説明させていただきます。生活扶助基準の水準の検証についてということでございます。
1ページ目、お開きいただきますと、水準の検証に関する論点といたしまして、前回の部会でも御指摘・御意見いただいた事項を踏まえて、論点を3つ挙げさせていただいております。
まず、水準均衡方式により検証を行う場合についてということで、主な意見といたしましては、これまで比較対象としてきた第1・十分位が適当なのかどうかというのはきちんと議論する必要があるとか、これまでのように標準3人世帯で検証するのがいいのかどうかといった御意見をいただいておるかと思います。
そこで、論点を2点挙げておりますけれども、1点目といたしましては、一般国民の消費水準との比較に当たって、どの所得分位との比較が適当か。また、そういったところをどうやって決めていくかというところで御議論いただければということ。
論点2といたしましては、その比較の方法といたしまして、多様な世帯類型がある中で、その消費特性を踏まえる上で、どのような比較方法が考えられるかということで御議論いただければと思っております。
下の丸でございますけれども、新たな検証手法の開発についてということで、前回も複数年にまたがる長期計画が必要で、開発事業等でやっていくべきではないかということですとか、最低生活そもそもの議論もあわせて必要ではないかという御指摘をいただいておるかと思います。
したがいまして、論点3といたしましては、まず生活扶助基準における新たな検証手法の検討をどのように進めていくかというところで御議論・御意見をいただければということで、3点挙げさせていただいております。
個別のところでございますが、2ページ、まず論点1で、どの所得分位との比較が適当かというところでございます。
まず、これまでの経緯といたしまして、水準均衡方式に移行することとした昭和58年当時、変曲点ということで、所得が減少する段階で消費支出が急激に下落する点、そういった概念を用いまして比較対象とする消費水準を確認したという経緯がございます。
丸の2つ目でございますけれども、水準均衡方式に移行した後、第1・十分位を比較対象として設定いたしまして、その分位の消費水準と生活扶助基準額を比較してきたという経緯がございまして、平成24年、前回の検証でも、下のポツに書いてございますとおり、平均的な消費水準が中位所得層の約6割であるとか、第1・十分位と第2・十分位の間で消費の変化が大きく見られたことなどを理由といたしまして、年齢、世帯人員、地域別の差を確認する対象として第1・十分位を用いてきたというところがございます。
一方で、低所得層の収入が減少した場合につきましては、この第1・十分位に着目することの妥当性について留意が必要であり、そういった消費実態について検証が必要であるという御意見をいただいていたかと思っております。
それを踏まえて、3ページ、検討方針(案)というところでございますけれども、平成29年検証におきましても、まずは、これまでの手法のように、一般国民の所得分位間において、消費水準にどのような差が生じているかというところについて分析を行ってはどうか。その上で、その他考慮すべき要素の有無とかも含めまして、比較対象とする一般国民の消費水準というものを検討してはどうかということで挙げさせていただいております。
具体的な内容・手法についてでございますけれども、まずは、所得状況による消費の変動をきめ細かく分析するために、全国消費実態調査のデータを五十分位ごと、それぞれの分位の差などについても分析してはどうかと考えてございます。また、必要に応じて家計調査のデータ等も補完的に使用してはどうかということで挙げさせていただいております。
2つ目の四角でございますけれども、その消費水準の差をどういった形で検証するかという点で、これまでの58年当時の変曲点という概念や、また所得が低下しても一定の消費水準が保たれる、消費の低下に抵抗する線として抵抗線という概念がございますけれども、そういった変曲点、抵抗線の水準を確認してはどうかということで挙げさせていただいております。
また、そのほかに考えられる視点、こういった変化が見られるか、確認した方がいいのではないかということがあれば、御意見をいただければということです。
また、一番下の四角でございますけれども、その他考慮すべき要素ということで、平成22年に実施いたしました「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」についても再度実施することにしてございますので、そういった消費水準の差以外に考慮すべき要素など、ほかのデータなどの活用も考えられないかという点についても、御意見をいただければと考えてございます。
4ページにつきましては、これまでの所得分位間における消費水準の差を分析した、過去の検証手法の概要をまとめたものでございます。
また、5ページ以降は、一般国民の消費水準の動向について確認するという観点から、全国消費実態調査のデータについて、準備できた範囲で資料としてまとめてございます。
5ページ目につきましては、収入階級の十分位ごとに年収と、全体の収入総額を100とした場合に各分位がどれぐらい占めているかというシェアを挙げさせていただいたものでございます。
6ページ目につきましては、世帯類型ごとのものと、同じく年間収入のシェアということで、これはそれぞれの世帯類型ごとの収入階級分位を設定して、シェアをまとめた表でございます。
7ページに、同じ数字のものでございますけれども、グラフ化した資料がございますので、またあわせてごらんいただければと思います。なお、こちらについては、全国消費実態調査のデータを特別集計する必要がございますので、今の段階では16年と21年の比較となってございますので、御了承いただければと思います。
8ページにつきましては、これも21年の調査のデータでございますけれども、それぞれ世帯類型ごとに平均年収、年収の中央値、世帯全体の年収中央値の2分の1の額。また、第1・十分位の上限額といいますか、一番上の所得となっておりますけれども、その金額を掲載させていただいてございます。
続いて、9ページ、10ページは、それぞれ所得分位間で平均的な消費支出が16年、21年、26年でどう推移してきたか。それぞれ第1・十分位と第1・五分位、また中位所得層である第3・五分位についてまとめたものでございます。下に平均年収等も記載してございます。
9ページが2人以上世帯で、10ページがそのうち勤労者世帯の表となってございます。
11ページにつきましては、検証作業に関係する主な調査データということで、それぞれ概要を記載させていただいてございます。
先ほど触れました家庭の生活実態及び生活意識の調査につきましては、22年実施したものを再度実施する予定にしておりますけれども、こちらについては12ページの方にも内容を記載しておりますので、ごらんいただければと思います。
続きまして、論点2、13ページになりますけれども、一般国民の消費水準との比較の方法ということでございますけれども、多様な世帯類型がある中で、どのような方法が考えられるかということで、これまでの経緯といたしましては、標準世帯を設定して比較ということを行っておりまして、19年検証においては、従来から使用してきた勤労3人世帯に加えて、単身世帯でも比較を行ったという経緯がございます。従来は、そういった標準3人世帯で金額の比較をして、そこから栄養所要量などをもとに基準を展開するという手法をとってございました。
丸の2つ目でございますけれども、直近の24年検証におきましては、これまでと若干方法を変えまして、3人世帯など特定の世帯類型は設定せずに、第1・十分位に属する世帯全体のデータを用いまして、年齢、世帯人員、級地別の差について回帰分析を用いて指数化するという手法をとっております。つまり、消費水準の差をそのまま基準額表に反映させるという手法を用いたということが言えるかと思っております。
そこで、「検討方針(案)」というところでございますけれども、今回の検証におきましても、前回の平成24年度の検証における指数化を行う手法を生かす形で実施してはどうかということで、御提示させていただいております。
「具体的な内容」というところでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、平成24年検証の手法は、一般国民の消費水準のデータから、年齢、世帯人員、級地別の消費水準を推計いたしまして、そのまま生活扶助基準額表に反映させるという手法をとってございまして、いわば世帯類型にかかわらず、年齢などに応じた一般国民の消費水準と生活扶助基準の均衡を図ることができる方法と言えるのではないかということでございます。
「このため」というところでございますけれども、現実には、多様な世帯類型がある中で、あえて特定の世帯類型を設定しなくても、高さ、比較する分位等を決定すれば、例えばその分位に属する1人当たりの消費水準と1人当たりの扶助基準額で比較するなど、平成24年検証の手法を生かした形で検証が行えるのではないかということで挙げさせていただいております。
また、この場合につきましても、各世帯類型別で消費水準と算出した基準額で乖離等が生じていないか、これを確認する観点から比較を行ったらどうかということで、今回の手法の案ということで提示させていただいております。
また、一番下のところでございますけれども、24年度の指数化の手法につきましても、改善すべき点があれば、必要に応じて、その手法の細部について改善を加えることも考えられますので、この点についても御意見をいただければと思っております。
14ページ、また15ページについては、先ほど申しました平成24年の指数展開の手法について、基準額表に展開する段階を再現した資料でございます。
14ページは、それぞれ24年検証のときに、年齢、世帯人員、級地別に基準部会の方で検証いただきまして、こういった指数化を行ったところでございまして、15ページにつきましては、それぞれ、それをどう基準額表に展開しているかというものでございますけれども、第1類費で言えば、横の括弧書きが年齢別の指数、また横軸が地域別の指数。掛け合わせれば、その年齢・級地の基準額表上の指数が出る。第2類費につきましては、同じく縦軸が世帯人員別の指数となって、横軸が級地別の指数となっているというものでございます。
また、米印でございますけれども、現在の基準額表につきましては、激変緩和の観点から、見直し前からの変動の影響を抑えるという措置をしておりますので、この表の指数と現在の基準額表は一致してございませんけれども、手法としては、このとおり指数、消費実態に応じた差が基準額表に反映できる方法をとっているという資料でございます。
16ページにつきましては、参考といたしまして、これまでの標準世帯としての考え方、経緯等をまとめた資料でございます。
続いて、論点3、新たな検証手法の検討というところでございますけれども、これまでも経済の変動によって基準の低下を招くという水準均衡方式のデメリットといいますか、特性があることから新たな検証手法の検討が必要ではないかという御指摘をいただいてきたところでございますけれども、まだ具体的な検討には至っていない状況であるということで、これまでも中長期的に検討を進めるべきではないかという御意見もいただいているという状況でございます。
検討方針(案)のところでございますけれども、生活保護法により保障する「最低限度の生活」の水準について検討を行っていくために、調査研究事業等を立ち上げて中長期的に検討を行っていくという方法はどうかということで挙げさせていただいております。また、その場合の論点といたしまして、最低生活に必要なものの内容・水準等を決めていくとか、収入の制約がある上で、どういった形が考えられるかということも考えられますけれども、そういった検討方法の是非、また研究をやる場合の方向性についても御意見をいただければと思っております。
また、18ページにつきましては、これまで部会の方でも御報告いただいた研修手法の概要についてまとめたものでございまして、19ページ以降は、過去の資料を含めて参考資料ということで挙げさせていただいておりますので、また御参照いただければと思っております。
資料2の説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
では、資料2に関して、皆様から御意見、御質問いただければ。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 詳細な資料、ありがとうございます。1つがコメントで、1つが反対意見を述べさせていただきたいと思います。
1つ目が主に論点1にかかるところで、5ページ以降、様々なデータを出していただいているのですけれども、ここについて申しますのは、今、このデータしかなかったので、とりあえずあるものを出されたということだと思うのですけれども、ここは公的な場所ですので、この数字が勝手にマスコミ等で違う形で報じられると非常に困りますので、留意しなければいけないということはこの場で述べさせていただきたいと思います。
例えば5ページに関して言えば、これは等価世帯所得ではなくて、人数等を調整していないものですから、それに10年間というスパンを見て考えた場合には世帯構成が大きく変わってくる中で、第1・十分位が平成16年のときに何%、26年のときに何%といった数値は余り意味を持たないわけですね。ですので、このようなことを述べさせていただきたいということと。
6ページの世帯類型分けは、その世帯類型の中の十分位ですので、その世帯類型自体が社会全体から見てスリップしているような場合であると、この16年と21年の差を見ても余り意味がないということがあるかと思います。
次のページも同じデータを出したものだと思いますので、こういったところを記録に残しておく必要があると思いますので、コメントという形でお話させていただきます。
もう一つ、9ページと10ページも2人以上の世帯の中身が大きく変わってきている中で、例えば高齢者世帯が多くなってきたら、住居費、教育費が減ってきて食料が上がってくるということは当たり前としてあるわけですから、この差を見ても余り意味がないのではないかと思います。この辺は、2次利用申請をして詳細な分析をしなければ何とも言えないところであるので、こういった形でデータが出るのは懸念されるところかなと思います。
2点目が反対意見です。それは検証方法に入ったところで13ページ。検討方針(案)の2つ目の四角のところですけれども、ここではあくまでもサゼスチョンとして出されているのかと思いますけれども、仮に比較をする分位を第1・十分位とした場合に、その中の1人当たりを世帯類型と関係せずに、それと比べることをするのはかなり乱暴な議論であり、まさに今まで何回もの検証で、こういったことはしてはいけませんね、違うやり方を考えましょうと言ってきたところですので、そこのところは単純に1人当たりの計算みたいな方法になることは非常に懸念されることかなと思いました。
平成24年のときにこれができたのは、平成24年のときは年齢とか級地の傾きの議論していたわけで、そのときの議論と、いわゆる生活扶助基準の丈比べをするときの議論というのは全く違うものかなと思います。
以上です。
■駒村部会長 前半の部分は、事務局としても、今わかるデータはこの程度ですよと。分析する人間たちが見れば、これを見た範囲で阿部先生が言うみたいにいろいろ想像があって、これだけではわからない。背景に何があるのだろうなと。そこをさらなる分析をしてくれと思うのですけれども、阿部さんが言うように、これだけ見て、じゃ、何なのかという結論を出してはいけない。あくまでも一個の手がかりというか、今わかるのはこの範囲ですよという理解でなきゃ困りますねということですね。多分、母子世帯を見ても、そもそもこの10区分がどこで切れているかというのを出したら、すごい数字になってしまうと思います。多分、それに気をつけてくれということだと思います。
■阿部委員 それをちゃんと記録に残していただいて、部会長も話してくださって。
■駒村部会長 この資料で何か結論めいたことは、全く言えない。これから次の切り口を考えましょう。ただ、傾向はこんな傾向があるけれども、この傾向の背景には何があるかというのをちゃんと考えましょうねということですので、この資料はその範囲ということだと思います。
あと、後半部分は大事なことだと思いますけれども、ほかの委員からも少しお話を聞きたいと思いますので、どの部分でもいいですので、御質問、コメントがあればお願いします。
はい。
■栃本委員 検証のあり方、今、阿部先生が話された部分というのは後でやるとして、出されたデータの部分ですけれども、今、部会長や阿部先生から御指摘があった部分ではあるのだけれども、6ページの一般世帯における世帯類型毎の年間収入シェアの分布1-1で、先ほどお話がありましたけれども、一定の条件のもとでこういうものをつくるからしようがないので、しかしながら重要なことが分かる。ほかの高齢者世帯とか夫婦子ども1人世帯と比べて、母子世帯が平成16年から21年に第1・十分位の部分と第10・十分位で見ると、格差社会になっているということでもある。そういうものが見てとれるものであるから、全く無用なものでもないということもあると思います。
もう一つは、検討方針は後でということだけれども、先ほど自立のことがあったので、3ページ目で変曲点と抵抗線というのがありましたけれども、私は抵抗線というのが結構重要だと思っています。変曲点は前回も議論があったけれども、かつて籠山先生の生活履歴効果に関する部分がこの抵抗線ですね。これは、人間にとって文化に関する部分なので、単なる動物であると同時に、人間は文化を持った存在だということがあるからこそ、この抵抗線というのは生まれるわけで、ここに尊厳がある。そういう意味では自立ということを考える場合にはこの部分は重要なので、ここでは変曲点及び抵抗線と書いてあるので、文化の部分ですよということを指摘したいと思いました。
あとは、一般世帯における年間収入の比較というので、これは平均年収と年収中央値と年収中央値の2分の1という数字を出してくださったわけですけれども、自分で見れば組み立て直しをすれば、すぐわかることだけれども、等価可処分所得とは言わないけれども、1人当たりで見た場合、幾らなのかという表は簡単にできるわけだから、母子世帯は子どもの数が違ったりするのでちょっと難しいということはよくわかりますけれども、それ以外については1人当たりというのは比較できるわけだから、そういう表も、我々が自分たちでやればいいことだけれども、その方が見やすいということだと思います。
それで、検証のあり方については、後ほどまだ議論になると思うので、それは後ほど述べます。
■駒村部会長 阿部先生からのコメントがあったところですし、ただ、検証方法について、きょう決めつけるわけではないということですね。こういう考え方を前回。平成24年のときの検証は、委員の何人かの先生がかわられていますので、詳細はこの青い中にどういう推計を行ったのかということは書かれていますが、きょうの時点では、ほかの先生方も13ページあたりの考え方や、今の栃本先生の変曲点に関する議論あるいは抵抗線に関する議論等々を含めて、少し御意見いただきたいという段階だと思いますけれども、いかがでしょうか。
山田先生、お願いします。
■山田委員 1点、確認と2つコメントです。
1点目は、3ページ目に論点1の検討方針として、具体的な内容の黒い四角のところに、一般国民の消費水準を検討するため、年間収入階級五十分位の各分位における消費水準を分析してはどうかということですけれども、これはあくまでも変曲点もしくは抵抗線の確認のためで、ここの部分の水準を、例えば第1・五十分位と何かを比較するわけではないですねというのが1つ、確認させていただきたい点です。
あと、コメントとしては2つございまして、1つは阿部委員のコメントとも重なるところがございますけれども、例えば6ページの年間収入シェアです。これは、3つぐらいの指標を組み合わせて考えることが必要で、それはアマルティア・センも言っているのですけれども、要するに貧困のヘッド・カウント・レシオ、すなわち貧困率では貧困指標として不十分で、貧困層内での格差。これは栃本委員も御指摘のように、6ページがそれをあらわしているのですけれども、あとは貧困の深さ、貧困層の所得が貧困線よりどれほど低いかですね。
ですから、見るときには必ずその3つをあわせて見ないと、貧困率が変わらなくても、貧困の深さが深くなっている可能性もありますし。あとは、貧困層内での格差が広がっている可能性もあります。いずれも貧困状態の悪化ですので、必ずその3つをセットで考えていただきたいということです。
コメントの2つ目については、17ページの一番下の検討方針(案)の2つ目の丸に2つポツがありますけれども、最低生活に必要なものの内容及びその水準と、収入の制約による消費への影響の考慮方法。既に事務局案として挙げていただいておりますけれども、これが非常に重要なところで、例えば子どもの貧困を考えた場合に、子どもに必要なニードというのは、貧困世帯とそうじゃない一般世帯で大きく異なっていないと考えられます。それは、どうしてもミニマムとして、必要なものだと考えられるので、そこの部分は低所得世帯と相対で考えるのではなくて、どうしても必要な部分ということで、別途取り出して考える必要があると。
あと、収入の制約による消費への影響について、特に懸念されるのは、最近、若年世代において、住宅・土地統計調査等を見ますと、企業福祉の後退によって、給与住宅いわゆる社宅が少なくなっている。持ち家の人の割合も少なくなっている。そうすると、賃貸住宅に支払わなくちゃいけないところで、その他の消費が非常に圧迫される。一方で、消費全体から見ると住宅費が高くなっているというのが、平均ではなくて、賃貸住宅に住んでいる方たちに見られる。そういった消費制約を考えつつ、消費水準を比較していくというのが非常に重要な点ではないかと思います。
私からは以上です。
■駒村部会長 栃本委員。
■栃本委員 今の山田委員の御指摘は非常に重要な部分だと私も思っていまして、17ページの部分です。
先ほど来もずっと一貫して議論がありましたけれども、子どもの貧困とか自立の問題で言うと、文化資本が形成されないような形での生活というのはだめですね。これは、次回、9月以降の議論になるけれども、山田委員の御指摘というのは、別の言い方をすると、文化資本については、第1・十分位の部分だけ比較したり、そういうことでは全然無理なので、その部分は切り分けて、もっと真ん中の第何・十分位でという形で広げて見ないと、その部分がわからない。そして文化資本が形成できないと自立に向かわないし、阿部委員が話されている、従来から指摘されている母子とか子どもをどうしていくかという議論の際に極めて重要な部分なので、その辺、検証作業のときに我々はさらにきちんと言いたいなということ。
それと、もう一つ、これは今日だけで決めるわけじゃないけれども、13ページで、これは検討方針の提案で、こういうことを考えていますよという事務局の一番下から2つ目の黒い四角で、「この場合には、様々な世帯類型別に、一般国民の消費水準と平成24年検証の手法により算出した生活扶助基準額を確認的に比較してはどうか」となっている。
けれども、問題は、その確認して比較してはどうかというのを、その後、それをどうやって反映させるのかということが重要で、比較して検討しましたで止まってしまうと、それをどうやって反映することが可能なのか。ロジカルにそれがきちんとできないと、比較しましたという話だけになると思う。これは、きょうの議論じゃなくて、9月以降の議論だと思います。
以上です。
■駒村部会長 では、岡部委員で、岩田委員、その順番で。
■岡部委員 私は2点あります。
1点目は、前回の平成24年のときに私は参加しておりませんので、この手法を踏襲しながら今後行うというのを前提として、今回算定する方針を出されている。平成24年度に行った検証の中で、より評価できる部分と課題になっている部分があると思います。その見直しとして、今回のペーパーに出されてきているのかもしれませんが、よりそれを精査してやっていただく場を設定していただき、その上で今回の検証作業を行うことを提案したいと考えます。今回の算定をより前進させるという報告でお願い致します。
2点目は、今、お話に出た中で、前回の委員会の中でもお話ししましたが、この算定方式は一定有効であると考えます。しかしながら、算定方式の耐用年数である。中長期的に検討するということでお話しをさせていただければ、この変曲点の考え方あるいは抵抗線の考え方は、籠山京先生あるいは中鉢正美先生、いわゆる生活構造論という、消費水準の中でエンゲル線の変曲点がみられることを出発点にして作り出された考え方であり、これはある意味では経済成長がある程度伸びがある時代はよいですけれども、低成長においては、最低生活ラインを設定する上ではなかなか難しいと考えます。
この貧困を相対的に捉えるという視点は非常に大事ですが中長期的に最低生活ラインを考える必要がある。先ほどお話ししましたように、子どもの貧困の問題をめぐって子どもの置かれた環境によって与えられる機会が制限されてよいかについては、文化資本、社会関係資本、経済資本と、いろいろな側面から検討していくことが大事であると考えます。先ほどお話が出ましたアマルティア・センなどの視点がそれに当たります。今まで貧困の算定については、ラウントリーの理論生計費、エンゲルの実態生計費、それと、タウンゼントの相対的貧困まで検討されてきました。
今後は、アマルティア・センの観点は、どれだけ反映できるのかという話になってくるかと思います。そういう考え方を具体的に算定方式として計上していくことは、技術的に難しい面もあると思いますが、国家として最低限、保障していくことと、これらを含めて内容・水準というものを中長期的に検討していただければと考えます。
なお、中長期的ですから、今回については、できるだけ前段でお話しした、相対的に捉える、籠山先生、中鉢先生たちが考えられた、これをより発展したのが今の水準均衡方式だとするならば、できるだけその中で中長期的に考えられることも取り入れていただければと考えます。まずは前回の算定の中での評価と課題の検討をしていただいき算定に入っていただければと考えております。
以上2点です。
■駒村部会長 さっきの阿部先生の意見、コメントも踏まえて言うと、阿部先生がおっしゃったように、13ページにも書いてありますけれども、前回の作業というのは、生活扶助の構造というか、パラメータが正しく設計されているのかというのを検証する作業であった。だから、第1・十分位のデータを使ったわけだけれども、水準そのものの議論に同じような手法を使っていいのかという御質問、御疑念があると。今の先生方のお話は、相対という意味がどういう意味なのかというのをもうちょっときちんと考え直さないと、第1・十分位を水準の話まで使っていいかどうかというのは慎重であるべきだというお話があったのだと思います。
ほかの委員の皆様からもお話を聞きたいと思いますけれども、すみません、先ほどの順番で、その後になります。岩田先生が先で、小塩先生、宮本先生。
■岩田部会長代理 4ページのこれまでの検証方法で、平成15年の中間まとめのときの第2回か第4回の資料が後ろにもついていて、それは家計調査のプールデータを使っているのですけれども、多分、岡部先生と栃本先生が参加されていたような。
■栃本委員 僕は参加していない。
■岩田部会長代理 岡部先生は参加されていたから覚えていらっしゃると思うのですけれども、確かに。水準均衡のときと同じように家計調査のプールデータで、五十分位階層で変曲点をまず見つけようとしました。また、社人研がやった社会生活に関する調査という調査を使って社会生活指標と収入の関係で変曲点を見つけようとした資料も出されています。後につけていただいた資料を見ていただければわかると思うのですけれども、どこを変曲点とするか、大議論になったのです。ここも曲がっているみたいな話になった。
変曲点というのは、対数か何かを使ってやる、結構芸術的なやり方で、ちょっと難しいのではないかということになって、このときの検証は、老齢加算と母子加算の検証だったこともありまして、結局やめたのです。やめて、全消で十分位でやったのですけれども、そのとき母子は第3・五分位を使いました。
問題点は、全国消費実態調査は規模が大きい調査なのですけれども、こういう世帯類型別に層別抽出をしているわけではないと思うのですね。私も今、見てみたのですけれども、余り細かく書いていないのでわからないのですが、単身とそれ以外は分けています。だけれども、サンプルをつくるときに、例えば年齢とか、こういう世帯類型がどのぐらい考えられているか、ちょっと怪しいところがあります。
それで、特に母子は、例えば子ども1人と子ども2人の母子世帯を分けてやると数がすごく少ないものですから、子どもが2人いる方が消費水準が下だったり、そういう結果になったのです。これは、データが制約されているために、つまり、母子は非常に扱いにくいということがわかって、そういうものでどうやるかという問題はあるということです。
ですから、これをやったことは事実ですけれども、これで全部ではないというので、このときの検証の前半が厚生労働省のホームページに出ていなくて、中間報告以降のものしか出ていないので、私も今、確認できませんでしたけれども、そのことは申し上げておきます。
もう一点は、今日作っていただいたデータ、特に消費の内容で見ますとエンゲル係数が非常に高くなっていますね。私も最近、こういうものを余り見ていなかったので、びっくり仰天したのですけれども、たまたま平成15、16でやったときのデータが出ていますけれども、このとき第1・十分位で22点何%というエンゲル係数が、これで例えば勤労世帯で見ても、平成26年の第1・十分位、26.3%です。高齢者も入れると29.3%。これは多分、1970年代ぐらいのエンゲル係数になるのではないかと思います。
すごく大変だなと思ったのですけれども、エンゲル係数というのは結構使いますので、こういうものも見たりしながら、さっき岡部先生がおっしゃったように、曲がる、曲がらないという議論は、本当はエンゲル係数と消費の段階を見た考え方なので、そういうものを幾つか組み合わせてやってみるということが必要。
それから、指数ですけれども、これは全部の予算は変えないという大前提で、1類と2類の年齢別、世帯人員別、それから級地ですね。これの合理的な指数化をやろうというのでやったので、全体を変えないということをどうするか。つまり、全体の100をどこから持ってくるかというのが問題になる。これを逆手にとって何かに当てはめて、これは指数ですけれども、考え方としては、昔、エンゲルがやったケトという消費単位というものをどこかで見つけて、1は幾らかというのがわかれば一番いいですけれども、今、消費単位の議論をやっている人は非常に少ないと思いますし、さもなければ等価指数でしょうね。
そういうもので、いい算定方式があれば、世帯類型を超えた、1は幾らかというものができれば、それをここに展開していけばいいわけですから、あり得ないことはないと思います。だから、その議論を1回してみてもいいかなという気はしますけれども、これ自体は違うという、今まで出ていたお話のとおりなので、これが透明度が高いかどうかというのは、その限りの話。
■駒村部会長 すみません、順番で、小塩先生、お願いします。
■小塩委員 2点ございます。
1つは、水準均衡方式についてです。これは非常に理にかなった方法だと思うのですが、暗黙の前提として経済が右肩上がりになっているということがあると思います。その限りにおいては正しいと思うのですが、経済がデフレ的状況で平均的な所得が低下しているときには、果たしてどこまで威力を持っているか考えておく必要があると思います。
先生方も御存じのように、相対貧困率が例えば16.1%だという議論はあるのですが、貧困線自体が低下しているわけですから、貧困の状況は相対的貧困率が示す以上に深刻だということですね。このように、我々がいろいろ精緻な方法で、水準均衡方式で基準額を設定したとしても、それがそのまま十分提供できるかというと、ちょっと問題があると思います。
私は今回初めて参加するのですが、前回見直しでも水準均衡方式による見直しよりも、デフレによる見直しの効果の方が大きかったと聞いています。我々の作業の範囲がどこまでかわからないですが、右肩下がりの状況も想定した上で議論しないと、相対的に基準を決めるという方法は限界があると思うというのが第1の点です。
もう一つは、変曲点の議論についてです。これはきょう初めて伺った、非常に興味深い概念ですが、配っていただいた資料を見ても、どこが変曲点なのか、非常に判断に迷うところがあります。ですから、アプローチをちょっと変えるべきだと思います。消費というのはもちろん重要な注目点ですけれども、きょう配っていただいた資料の34ページ以降に「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の調査項目が紹介されています。
例えば37ページを拝見すると、ふだんの生活について、いろいろな質問があるのですが、ちゃんと御飯を食べていますか、タンパク質・野菜を摂っていますか、あるいは下着をどのぐらいの頻度で購入していますか、病気になったときにお医者さんにかかっていますかという質問を聞いているわけです。こういう質問の答えが極端に低下するところも、変曲点として重要だと思います。所得がここを下回った途端に、健康で文化的な生活が維持できなくなるというのがわかる、というように。変曲点を消費だけで見るのでは不十分だと思います。
せっかくこういう調査をなさっているので、全消の所得水準とマッチングさせて、どこで人々の生活が大きく変わるのかという点も丁寧に見ておく必要があると思います。
以上です。
■駒村部会長 阿部さん、関連することですか。では、ほかの委員が手を挙げていますけれども、関連すれば。
■阿部委員 今の小塩先生の議論は、まさにディプリベーションの物質的剥奪の議論なのです。必需品がどこで欠乏していくのかというものを探るという点で、それは一つのアプローチだと思います。ただ、それと今まで発言があった中で、消費支出の中で相対的には決められないことがあるだろう。例えば山田先生がおっしゃったように、子どもの教育というのは保障すべきものがあるだろう。あるいは、岡部先生も小塩先生も発言なさったと思います。要は、どこかに絶対的貧困線をつくらなきゃいけないねという話なのです。
その中で、恐らく費目の中でどれが絶対的貧困と決められるものか、そうでないものかという議論が必要で、子どもの教育費というのは1つあると思いますけれども、前回の議論のときに、私は光熱費に関して冬季加算のことを結構言ったと思います。人間を温かくしておくというのは、普通の人の60%でいいという議論にならなくて、みんな同じぐらい必要なのだという議論です。なので、それは絶対的概念で決めるべきでしょうというので、どれとどれ。
例えば、今の話で食費もそうだと思います。食費も最低限のものは絶対的に決めなきゃいけないというものがあって、それをやる場所をどこかでつくらなければいけないので、もしかしたら論点の一番最初の新しい検証方法の検討というのを、まず一番最初にやる必要があるのかなという気もいたしました。
■駒村部会長 どうぞ、栃本先生、お願いします。
■栃本委員 今回については大きく変えることはできないのだけれども、今の話もそうなのだけれども、根本的にする作業があわせて必要ですよということは、事務局もきょうの資料で示されているわけだけれども、その上で、前回は変曲点ということを言っていた。今回は抵抗線。僕は変曲点の議論をしたときは、多分入っていなかった。その説明のときに入ったと思う。それで、抵抗線というのは極めて重要で、第1・十分位の下の方じゃなくて上の方なのです。
だから、何とかして絶対的貧困の新しい基準というか、補正するやつを考えるためにどうしたらいいかということを、みんなそれぞれ言っているわけだけれども、岡部先生は別の表現をされたけれども、中鉢さんの生活の履歴効果というのはいまだに意味があることでして、特に抵抗線というのはこれから極めて逆に重要だと思う。だから、それを今回載せたというのはすごくよかったのではないかと私は思います。前回は書いてなかった。
■清水課長補佐 前回の委員会では、確か岩田先生の御発表の機会のときに実態消費アプローチの中で御紹介いただいたぐらいだったかなと思っております。具体的などうしようという議論というのは、行っていなかったと記憶しております。
■駒村部会長 岡部先生と御一緒だったのが16ページの平成19年。このときには、多少この議論は確かありましたね。このときに一度、3ページに書いてある、抵抗線は、家計がそれまでの消費パターンを維持しようとするということですね。だから、世帯の比較というよりは、今までの生活をどう維持するのかという生活の履歴みたいなことで、これから先は幾ら何でも変えられませんよというのを言っている。これは時間の変化で、それについても考慮しましょうという話があのときあった。そのときに抵抗線という言葉を使ったかどうか、私も記憶がないですけれども、人生の恒常的な生活水準というのは考慮しなきゃいけないという話がありましたね。
■岡部委員 駒村先生と私、参加していたかと思いますけれども、先ほど小塩先生もおっしゃったように、デフレ化の中でのミニマムの設定の仕方がこれでいいのかどうかというのも、駒村先生、私が入った委員会の中では意見としては出されていたかと思います。しかしながら、そういうことをどこまで展開できたかとなると、今後の宿題とさせていただいたということです。
■駒村部会長 だから、前から課題になっていたのですけれども、成長とかインフレとか格差が縮小する時代の水準均衡と、低成長でデフレで格差拡大成長期の水準均衡は意味が違ってくるだろうと。
それから、19年よりもさらに今の方が状況が悪くなっているわけですけれども、落ちているということや、あるいは子どもの貧困や暖房費も、それ以下になったら相対的というレベルよりも、絶対的に健康や子どもの可能性を失ってしまうというところが、落ち始めるときにあるのではないかという議論があって。では、それをどう加味して開発するのかというのが次の検証までに間に合うのかどうかというのは、今度は我々の話ですし、間に合わないとしても、ちゃんとそれを第1段階としてどこまで加味できるのかという話になってくると思うのですけれどもね。
すみません、宮本先生、その後山田さん。
■宮本委員 私はこういう制度の専門家でないので、緻密な議論はできないのですが。
例えば7ページとか8ページを見ると、これはやむを得ないことですけれども、世帯類型ごとに比較をしています。実態は、世帯類型というものがうまくきかないほど多様化しているという問題があって、例えばここで夫婦と子ども1人とか、それから、母子世帯と言ったときの子どもは恐らく18歳未満の類型でしょうね。つまり何を言いたいかというと、子どもは18歳未満と決めて類型化するなどしないとなかなか類型化できないので、こういう作業をすることになるわけです。
ところが、例えば若年単身と若年夫婦という形で若年者を類型化していますけれども、実際の若年層問題で特に貧困と絡まっている場合、単身か夫婦かではなく、その中間の多様な形態で貧困を乗り切るという実態がある。それから、高齢に関しても、単身か夫婦かだけでなく、そこに不安定な仕事を持っている子どもがくっつくような形で貧困を乗り切っているというように、さきほどのデフレ問題ではないですけれども、デフレを乗り切るための多様な類型があり、全体としての家族の状況の多様化という問題があるわけです。
先ほど岩田先生が、生活保護もある意味類型化する必要があると発言されました。つまり、就労不可能な高齢者における生活保護制度と、就労可能な人々が速やかに制度から脱出するための制度のあり方の2つということを先ほど言われたと思うのですが、それと同時に、例えば子どもの教育の問題。それから、もう少し上になると、教育と同時に親の家から出ていくための準備費用という課題。そういうものが世帯類型としては複雑に組み合わさっているのが今の実態だということを感じているところですので、そういう多様性を十分に前提にしながら、最低生活費とはいかなるものかという検討をする必要があるのではないかという感じがいたします。
このあたりの計算に関しては、私は素人ですので、発言できないところです。
■駒村部会長 非常に難しい御意見で、恐らくデフレ下の中で、経済の状況に合わせて、みずから変形して何とかしようという形で世帯の多様化が進んでいる中で、その動きも含めてどう評価するかという話で、また1つ新しい切り口かなと思いましたけれどもね。
山田委員。
■山田委員 先ほど小塩委員、阿部委員もおっしゃっていたように、相対的貧困線が下がっていく中で、どういうふうに最低生活費を考えるかというのは、相対では難しいということで、そこには何らかの絶対的な評価基準を持ってくる必要があると思います。
またセンの話を引用すれば、彼は潜在能力を構成する機能の例として、貧困に関連深い機能の例として、ベーシックなものとしては、十分に栄養をとっているとか、衣料や住居が満たされているとか、予防可能な病気にかからないといったものを挙げています。他に貧困に関連深い機能として、コミュニティの一員として社会生活に参加するとか、恥をかかずに人前に出ることができる、なども挙げています。これらを実現する消費水準というのは、いろいろな社会とかいろいろな時代とかによって変わってくるわけですけれども、これらの貧困に関連深い機能自体を実現するかしないかという点は絶対的なものだと思います。だから、そこを基準に考える。
幸いなことに「平成28年家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の調査様式を拝見しますと、幾つかそういう項目もありますので、そういった項目を見ながら、どこの部分のレベルが、例えば社会生活に参加できる消費水準なのかというところから逆算していく方法もあり得るのではないかと考えます。
私からは以上です。
■駒村部会長 岡部委員、お願いします。
■岡部委員 1点目。本調査に関して岩田先生と一緒にやらせていただいた2003年から2004年の生活保護制度の在り方に関する検討委員会のときに、小塩委員がお話しされた点について私たちは、タウンゼントのディプリベーションのインデックスをベースにしながら、調査票をつくらせていただきました。
アマルティア・センとムスバムは項目を挙げられています。これらを組み合わせますとある程度考えられるのではないかと思います。
それと、もう一点。栃本委員が先ほどおっしゃった変曲点、抵抗線というのは非常に大事な概念で、日本人が誇る極めて理論的な実証的な研究だと私は考えています。これが非常にクリアに見い出されたのは、終戦直後にエンゲル線の変曲点です。今日において新たに見るとするならばどういう見方をするのかというのは、我々がデータを見るときにもう少し考えなければいけないと思っております。
■駒村部会長 はい。
■栃本委員 今でもとても重要で意義があるんです。要するに、北海道で調べてゼロ階層に転落している。階層転落する際に、どういうふうに消費が維持されるかというのは、生活が苦しくなってもここだけは守るというところがあるのですよ。その部分が人間の尊厳につながるから必要だということを申し上げている。戦後やった調査では一番よくあらわれたということはよくわかりますけれども、今日においてもそうなのです。だから、重視すべきだということを申し上げた。
■駒村部会長 では、岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 これまでいろいろな御意見が出ましたけれども、2つ種類が違う話があって、今の変曲点といいますか、曲がり理論というのは、エンゲル法則が通じないといいますか、そこで寝てしまうという話で、これはもう一つ背後にあるのは、エンゲル法則の一番基本になる食費についての合意があって、最低食費、栄養を達成する食料費の金額というのを厚生省の栄養の方のセクションで出していたのです。それが今ないので、その検討が非常に出にくいというのがあります。
それから、今、いろいろな生活様式といいますか、具体的な生活の社会活動や何かの充足というのは、タウンゼントのやったものの変曲点で、これはスコア化が必要なので、調査と同時にスコア化をどうするか。これは阿部先生がおっしゃったように、1年ぐらいでできるような話ではないと思います。いずれにしても、そういうかなり根本的なところを少し議論して整理するということは必要だと思います。
■駒村部会長 もう一個資料がございまして、きょうは大事な議論なのですけれども、まだ検証方法については決めつけることはないと。今、議論がありましたのは、新しい検証方法を考えていくときに、今までの考え方をどうしていくのか。変曲点、抵抗線というのを現代的にどう使っていくのか。
もう一つは、食費も栄養も含めて、コミュニケーションとか健康とか教育は相対的なもので言えるのかどうなのか。絶対的というのでしょうか、必要なものがあるのではないか。そこをどう、この検証に反映するのか。そういったプログラムづくりが間に合うのかどうかという話だったと思います。きょうお話を聞いていると、実は背景は、つながっている部分は、それぞれの先生が思っている、向いている方は同じだと思うのですけれども、表現やその背景の理論的な構成が少しずつ違うような感じもしますので、また整理させていただいて、この検討方針(案)については再度議論する。
ただ、一方では時間の限られている話なので、幾らでも時間があって精緻なものというわけにもいかないので、ここまでは今回は反映しましょうという話も含めて、開発の話と検証の話を進めていかなければいけないということだと思いますので、次回以降、この議論をまた少し深めたいと思いますが、きょうは時間もございませんので、資料3について、事務局からお願いできますでしょうか。
■清水課長補佐 それでは、資料3「基準見直しの影響の検証方法(案)」ということで、1枚紙の資料でございますが、御説明させていただきます。こちらについては、これまでの基準見直しの影響の検証におきまして、これからどういった把握とか検証を行っていくかについて、まとめた資料でございます。
1点目、生活扶助基準につきましては、生活保護受給者の消費の動向、また生活状況、生活意識の変化など、生活にどのような影響を与えたのかというところで、右側の検証方法(案)というところでございますけれども、まずは、影響の程度を被保護者調査をもとに、基準額が世帯ごとにどれぐらい減少したか、どの程度の影響があったのかということを推計して確認したいと思っております。
その上で、2点目のポツですけれども、生計調査をもとにしまして、基準の見直し前後で支出の内容がどう変動したかという点。
また、3点目といたしましては、生活状況や生活意識の変化がどうあったのかということで、先ほどもお話がありました生活実態・生活意識の調査を比較して検証してはどうかということで挙げさせていただいております。
2点目、住宅扶助基準につきましては、実際の住生活にどのような影響を与えたのかというところで、手法としては、自治体への実態把握ということで行いたいと思っておりますけれども、上限額を超えた件数、また見直しに伴い転居に至った件数について把握したいということで考えております。まだ経過措置がある段階ですので、中間的な把握になると思いますけれども、7月以降でそのような調査を行いたいということで考えてございます。
また、下の冬季加算の影響についても、光熱費の支出状況に変化が見られたかということを確認するために、まず生活扶助と同様に、世帯ごとの影響の幅というものを推計するというところにあわせて、支出の状況の変化。特に冬季期間の支出の変動について、生計調査を見直し前後で比較するという形で、そういった調査を行っていきたいということでございます。そういった意味で、このような視点以外に把握・検証すべき点などについて御意見をいただければと思っております。
また、ここに記載しております調査・推計値については、順次、部会の方にできた段階で御報告させていただいて御議論いただくということにしたいと思っております。
資料3の説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございます。
これは、基準変更の効果・影響をどう測定するのかというのが部会の課題になっているわけですけれども、委員の皆様から、この点について御意見があればと思います。
山田委員、お願いします。
■山田委員 2点、テクニカルな点で恐縮ですけれども、冬季加算をチェックする際には2つのことを考えなくてはいけなくて、1つは、その年がたまたま温暖であったとか寒冷であったというので変わってくる部分を、ちゃんと識別しなくてはいけないというのが1点目。
2点目としては、その光熱費が最低必要だということであれば、冬季加算が増減しようが、そこの部分はどうしても賄わなくてはいけないので、可能性として光熱費が変動しなかった、ということも出てくるわけですね。ということは、どこか別の支出から光熱費に必要なお金を持ってきている可能性があるので、光熱費の支出だけではなくて、ほかの支出についても、そういう意味を含めて支出の変動と仰っているのかもしれませんけれども、論点のところには光熱費としか書かれていないので、それ以外の支出についても見ていただければと思います。
以上です。
■駒村部会長 ほか、いかがでしょうか。
冬季加算のところですけれども、最近の研究の中には室内温度と健康状態に関する研究もあるらしいのですね。室内温度が一定以下になると健康状態ががくんと落ちるという研究もあるようなので、無理して下げてしまって、それこそ健康状態が悪化しているということがあっては、かえって別の扶助が増えてしまう可能性もありますので、今後のことも考えれば、多角的な検証方法も頭に入れておいた方がいいかもしれない。
ただ、今、山田先生がおっしゃったように、まず前回のインパクトは、特定項目だけじゃなくて、ほかにどういうしわ寄せがあったのかも含めて、きちんと見ておかないといけないということだと思いますので、その辺、また準備をお願いしたいと思います。
ほか、いかがでしょうか。この点についてはよろしいでしょうか。
それでは、議論の2番目のところを途中でとめてしまいましたけれども、きょう予定していた時間になりましたので、今後の予定について事務局から御連絡をお願いします。
■清水課長補佐 次回については、冒頭で申し上げたとおり、9月上旬・中旬ぐらいを予定しておりますけれども、具体的な日時につきましては調整中でございますので、また追って御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。
御多忙の中、どうもありがとうございました。
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