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2016年5月27日 第23回 社会保障審議会生活保護基準部会

社会・援護局

○日時

平成28年5月27日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
岡部 卓 (委員)
小塩 隆士 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

■鈴木保護課長 定刻まで若干早うございますが、メンバーがおそろいでございますので、ただいまより第23回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開会いたします。
 本日は、お足元の悪い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 最初に、久しぶりの開催でございますので、また、新たに委員に就任いただいた方もいらっしゃいますので、改めまして部会を構成する委員の皆様方を御紹介いたしたいと思います。
 お手元の資料1を御覧ください。上から五十音順でございますが、御紹介いたします。
 本日は御欠席でございますけれども、首都大学東京都市教養学部人文・社会系教授の阿部彩委員でございます。
 続きまして、日本女子大学名誉教授の岩田正美委員でいらっしゃいます。
 続きまして、首都大学東京都市教養学部人文・社会系長人文科学研究科長の岡部卓委員でいらっしゃいます。
 続きまして、一橋大学経済研究所教授の小塩隆士委員でいらっしゃいます。
 続きまして、慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平委員でいらっしゃいます。
 続きまして、上智大学総合人間科学部教授の栃本一三郎委員でいらっしゃいます。
 それから、本日御欠席でございますが、放送大学教養学部副学長の宮本みち子委員でいらっしゃいます。
 そして、慶應義塾大学経済学部教授の山田篤裕委員でいらっしゃいます。
 以上8名の委員にお願いをいたしております。
 続きまして、事務局の御紹介をさせていただきます。
 石井社会・援護局長でございますが、急遽、他の公務のため少々遅れて参ります。
 続きまして、堀江大臣官房審議官でございます。
 山本社会・援護局総務課長でございます。
 私、保護課長の鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
 本来、ここで石井局長より御挨拶を申し上げる予定でございましたが、後ほど切りのいいところで御挨拶を申し上げたいと思います。
 本日の委員の出欠は、先ほど申し上げましたとおり、阿部委員と宮本委員が御欠席でございまして、その他6名ということで定足数を満たしております。
 また、本部会の部会長について確認を行いたいと思います。各部会における部会長につきましては、社会保障審議会令の規定に基づきまして、部会に属する委員の互選により選任するとなっております。つまり、親審議会の委員の中から選任するということでございます。駒村委員と宮本委員に御相談申し上げたところ、互選ということで駒村委員にお願いするということでお2人の御了承をいただいておりますので、引き続き部会長を駒村委員にお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以下、部会長に進行をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
■駒村部会長 おはようございます。引き続き部会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 それでは、初めに、社会保障審議会令第6条第5項の規定により、私が不在の場合に議事の進行をお願いする部会長代理を部会長である私が指名することになっております。これについては引き続き岩田委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 本日は、前回、平成27年1月に開催した部会においてそれまでの議論を踏まえた報告書が取りまとめられ、その後ある程度の期間も経過しましたので、また、新しい委員も就任されたということでございますので、まず、生活保護制度の現況、生活扶助基準等の見直し、生活保護制度の見直し等の内容について事務局より御説明、御報告をお願いいたします。
■清水課長補佐 それでは、資料の順番は異なりますけれども、参考資料1「生活保護制度の概要等について」を御覧いただければと思います。直近の生活保護の状況等を中心に、資料をかいつまんで説明させていただければと思っております。
 それでは、1枚おめくりいただいて、まず1ページでございますけれども、生活保護制度の概要をまとめた資料となっております。生活保護制度の目的といたしまして、最低生活の保障、自立の助長の関係についてそれぞれ記載をしております。
 2ページ目でございますけれども、表の上に、生活保護基準の法律上の規定、また、表で8つの扶助についてそれぞれ概要を記載しております。
 3ページでございますけれども、生活扶助の額の例と、適用の手続、その他実施機関と費用負担について記載をしておりますので、また御参照いただければと思っております。
 続いて、4ページでございますけれども、被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移の表でございます。直近の生活保護の受給者数は、平成28年2月、速報値でございますけれども、216万1,307名となっております。世界金融危機以降、大きく増加傾向にございましたけれども、足元ではほぼ横ばいで推移しているという状況になってございます。
 5ページ目は、世帯類型別に世帯数とその構成割合の推移を見た資料でございます。左側の表を見ていただきますと、世界金融危機以後、「その他の世帯」の世帯数が大きく増加していたところでございますけれども、近年、平成25年ごろから、その他世帯、また母子世帯、傷病・障害者世帯も含めた高齢者世帯以外の世帯全体では微減傾向にございます。
 一方で、高齢者世帯につきましては一貫して増加傾向にございまして、右側の図、構成割合の推移で見ていただきますと、直近の平成28年2月現在では、正確には49.8%ということで、世帯数の約半分を高齢者世帯が占めるという状況になってございます。
 6ページについては、生活保護受給者の対前年同月の伸び率をまとめた資料となっております。この伸び率でございますけれども、平成22年1月の12.9%をピークといたしまして、そのままなだらかな減少傾向にございます。直近ではマイナス0.4%となっておりまして、こちらについては平成27年9月から6カ月続いてということになりますけれども、前年からマイナスの伸びが続いている状況になってございます。
 7ページについては、年齢階層別の受給人員の年次推移をまとめた資料でございます。御覧いただくとおり、被保護人員数としては65歳以上の高齢者の伸びが非常に顕著でございまして、人数の割合で見ましても、全体の約44%が65歳以上の方となってございます。
 8ページが都道府県・指定都市・中核市別の保護率をまとめた資料でございます。こちらの地図で見ていただきますと、色の濃い都道府県が受給率の高い自治体となってございます。
 9ページは生活保護費負担金の実績額の推移でございます。一番右側が、直近の平成28年度の予算の事業費でございますけれども、約3兆8,000億円となっております。平成26年の実績ベースの内訳を見ていただきますと、医療扶助が約半分を占めることになっております。
 10ページについては、それぞれの生活保護の各扶助、またそれに付随する各加算について整理したものでございます。8つの扶助またそれに付随する各種加算の一覧となっております。
 11ページ、12ページは、表はちょっと細かくなりますけれども、それぞれの扶助・加算について概要と基準額(1級地-1の場合)ということで一覧にして載せてございますので、また御参照いただければと思っております。
 13ページにつきましては、最低生活費の具体的事例の資料ということで、4つの世帯類型、あと、級地ごとにそれぞれの生活扶助と住宅扶助について記載いたしております。住宅扶助については、表の下の※にございますけれども、便宜的にそれぞれの級地ごとに自治体の例を当てはめて上限額ということで掲載させていただいております。また、生活扶助の額については冬季加算を平年度化した額と、該当する世帯については児童養育加算、母子加算を加えた額で計上しておりますので、また御覧いただければと思います。
 14ページについては、これまでの生活扶助基準の改定方式の変遷を簡単にまとめた資料でございます。一番下の5でございますけれども、御承知おきのとおり、昭和59年以降、一般国民の消費動向に合わせてこの生活扶助基準の調整を行うということで、水準均衡方式により改定を行っているところでございます。
 15ページ以降は、近年におけるこの基準部会での検証結果と、それに付随する見直しの状況について掲載をさせていただいております。
 15ページは、5年前の平成24年の検証となりますけれども、その際の検証結果を載せております。その際は、当時の生活扶助基準額と平成21年全国消費実態調査に基づく一般低所得者の消費実態を年齢、世帯人員また居住する地域の要素別に検証を行ったということでございます。
 16ページにその見直しの考え方等を記載しておりますけれども、1のほうで、今、申し上げました検証結果に合わせた調整を行ったほか、物価の変動分を反映させる調整を行いまして、平成25年8月から平成27年度にかけてこの見直しを実施したということでございます。
 続いて、平成25年10月から平成26年12月までの間で、基準部会では主に住宅扶助また冬季加算について検証を行っていただきました。
 17ページでございます。住宅扶助につきましては、検証結果を踏まえて、最低居住面積水準を満たす地域ごとのカバー率からばらつきを是正するなど、住宅扶助上限額の見直しを行ったほか、2人以上の世帯の上限額ということで、それぞれの世帯人員別の比率を細分化いたしまして、具体的に言いますと、2人世帯、6人世帯の基準額を設定する等の見直しを行いました。
 また、床面積別の上限額の新設といたしまして、より適切な住環境へ誘導する観点から、16平米未満の場合に上限額を減額する仕組みを導入するなどの見直しを実施したという経緯でございます。
 18ページにつきましては、その見直しの具体例ということで、それぞれ自治体の級地ごとの例を挙げさせていただいてございます。
 19ページにつきましては、冬季加算の見直し状況についてまとめた資料でございます。こちらについては、一般低所得者世帯における冬季に増加する光熱費の実態、また光熱費の物価を反映したほか、豪雪・山間部などに配慮して水準の見直しの実施を行いました。あわせて、世帯人員別の格差、また級地別の格差の是正等を行ったほか、自治体によった支給月の変更等も行ってございます。
 最後、20ページにつきましては、その見直しの具体例ということで載せさせていただいております。
 このほか、参考資料2といたしまして、直近、平成28年2月の保護動向の資料を添付してございますので、また別途御参照いただければと思います。
 駆け足となりましたが、制度概要等の説明は以上とさせていただきます。
■駒村部会長 ありがとうございます。
 最初でございますので、この参考資料1について、もし確認したいことがございましたら御自由に御発言をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 何もなければ私から。見ていても知りたいなと思うところがいろいろとあるのです。
 7ページの年齢は、65歳以上で一くくりになっているわけですけれども、高齢化社会ですから、65歳以上となると普通に考えても30%近くいるわけですね。年齢区分をもうちょっと細かく見られないのかなという気もするのですが、そういう統計はあるのでしょうか。
■清水課長補佐 70歳以上でいいますと、割合でいきますと31.7%、人数でいきますと67万4,158名となっております。資料の数字との差が65歳から70歳以上となりまして、25万ぐらいの世帯人員となります。そういったことで、特にその中でも70歳以上の方の割合が多いかなと思っております。
■駒村部会長 これは今後の全体的な統計のとり方、出し方かもしれませんけれども、もしかしたら、高齢グループをもう少し分けたほうがいろいろ動向が見られるのかなと。あるいは、高齢者の方たちが、今、一番増えているという感じでございますけれども、就労収入とか年金収入の有無みたいなものというのは、状況を把握しようと思えば統計的には把握できる状態なのでしょうか。
■清水課長補佐 それぞれの収入額、また収入の種類も統計調査でとってございますので、必要に応じてこの部会等にも出せるかと思っております。
■駒村部会長 ほかに。
 栃本委員、お願いいたします。
■栃本委員 これから再開ということでまた本格的な議論はあると思うのです。そのときにまた個別に出されるのでしょうけれども、参考資料の11ページ以降にいわゆる各種加算の概要と基準額ということで、今回は再開ということもあり、もう一度それを整理するということなのでしょうが、個別の加算について議論する前に、なるべく早目に、この基準額の横にそのボリューム感というか、総額がどのくらいになっているのかといったこと、その中の0.何パーセントであるとかのデータを入れたものを出していただきたい。
あと、もう一つ重要なのは、増えているのか減っているのか。数は少ないのだけれども、従来からあるから、引き続き出ているみたいな形であるとか。それは、個別の加算について議論する時々に出すのではなくて、こういう概要のところで出していただいたほうが私はいいと思うのです。それがお願いです。
 もう一つは、これは従来からのとり方だということですが、6ページ目のところで対前年同月伸び率を見ることの意味をちょっと教えてください。それはとり方なので、一般的にそういうとり方で見るものだというトレンドで見るということはあるのかもしれないけれども、それだけで判断できることでもない。多分、参考として対前年同月という形で見るというのは、1つの参酌すべきことであるので重要なことだとは思うのだけれども、その部分をちょっと説明していただきたい。
■駒村部会長 加算のほうは、どのくらい個別でかかっているのかというのはまた出していただくとして、今の後半の部分についてお答えいただけますか。
■清水課長補佐 いわゆるトレンドということではあるのですけれども、景気の状況とかいろいろな状況に合わせてそれぞれ生活保護がどういう形で伸びているかということで、今まで対前年同月ということでまとめていたところでございます。
■鈴木保護課長 少し補足しますと、対前月とかとしますとどうしても季節変動がございまして、結局、シーズンに合ったものを見る指標として、今のところこれが一番いいのではないかということで、一般的にはこれを使ってきているということでございます。
■栃本委員 だけれども、全体的な景気の変動のウエーブというか、この曲線を見ながら見ていかないと、その数字だけだとどうかなと思います。もちろん、前年で見るということの意義については、今、課長さんが説明されたようなことはよくわかります。
 どうもありがとうございました。
■駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
 岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 2点あります。
 1点目は、今、栃本先生が最初におっしゃった加算の件です。これまでいくつかの加算の妥当性の検証をしてきたのですけれども、加算全体についてどう考えるかという問題を根本的に見ておいたほうがいいかなと思います。現在のように、65歳以上あるいは70歳以上の高齢者が増えていきますと、年金など別の社会保障の給付を受けて生活保護も利用するという、これまでとは違うタイプの保護受給層がかなりできてくると思います。高齢加算はなくしてしまいましたが、もともと加算は、福祉年金や児童手当などの創設と絡んで、いわばその生保版として導入されたものが少なくありません。ところが、現在は状況が変わってきている。そういうことを前提に加算は全体的に見ていったほうがいいかなと思います。
さらに今の点とかかわっているのですけれども、お示しいただいた資料の最後のほうに、これまでの生活扶助基準の見直しの影響というのが出ています。減少額は出ているのですけれども、例えば、これによって廃止になった人がどのぐらいいるとか、あるいは、これは平均ですけれども、減少額の分布というのは出ないものですか。特に廃止の問題は、我々もそこを一番気にしながらやっていますので、ぜひ出していただきたいと思います。
 2点と言って3点目になってしまいますけれども、今の件とかかわって、年金受給プラス生活保護、あるいは児童扶養手当、児童手当プラス生活保護みたいな、こういう組み合わせの世帯が多くなってきますと、生活保護の個々の受給額というのは基準額に対して100%ではなくて、例えば70とか80とかとなっていくと思うのです。その分布がどうなっているかというのは案外知られていないわけです。一般には生活保護受給者というのは100%受給しているという誤解もありますし、制度をいじったときに、例えば100%を基準にするとどのぐらいが100%水準に分布し、その下の分布はどうなっているのか、というのを知らないとちょっと怖いなという感じがしています。多分、それはすぐおわかりになることだと思いますので、例えば、基準を見直したときにそれがどのように変化していくかということも含めて見せていただけると検討の参考になると思いますので、よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 これまでの見直しのインパクトはまたきちんと議論すべき柱になってくると思います。
 今、委員の皆さんからありましたように、もし加算の話を議論するとなると、今のように、各種加算の実態ですね。総額はもちろん、どのような受給状況になっているのか。複数もらっているようなケースがどうなのか。あるいは5ページにあるような世帯類型。これは以前も確認させてもらいましたけれども、複数の要因・属性を持っている場合は年齢とか家族構成要因がその分類構成の第一優位に来ているということでしたか。ただ、高齢世帯でも、加算をもらっている、例えば傷病世帯のような入院しているようなケースというのは、多分、高齢世帯のほうに分類されている。これは前も確認させてもらいましたけれども、そういう実態も含めて少し明らかにしてもらいたいなと思います。今の分類についての確認は事務局から一応言及してもらえますか。
■清水課長補佐 それぞれ世帯類型の定義については5ページの下のほうに載せさせていただいておりますけれども、複数の事由に該当した場合、どこに分類するかということかと思います。部会長から御説明いただいたとおり、高齢者世帯、母子世帯、傷病者世帯、障害者世帯、その他の世帯という順番になっておりますので、例えば障害を持っているけれども世帯全員が高齢者の場合については高齢者世帯に分類されることになっております。
■駒村部会長 だから、高齢者世帯の中で在宅患者加算等々をもらっているというのはどういうことになっているかということも、この議論をやるためにはより必要かなということだと思います。また後で検討項目の話になると思いますけれども、そういう資料も。きょうは、これは概要ですからいいと思いますけれども、御用意いただくということだと思いますし、先ほど岩田先生がおっしゃったような検証の話も当然ついてくる。1つの重要な柱になると思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 小塩先生、お願いします。
■小塩委員 私、きょうが初めてですので、基本的なことをお聞きしたいと思います。
 まず1点目は、先ほど駒村先生が御指摘をされたのですが、高齢者の受給者が増えていますね。高齢者と若い人では状況が全然違うと思います。特に高齢者にとっては年金をどれだけもらっているかをきちんと把握する必要があると思いますので、受給者の所得がどのような構成になっているかを丁寧に見ておく必要がある、という点です。その情報をぜひ出していただきたいと思います。
 もう一つは、15ページのところです。生活保護基準を考える場合、一般低所得世帯との比較がよく問題になります。これは全国消費実態調査の第1・十分位のことだろうと思うのですが、その層と比較する客観的な根拠といいますか、比較すべきなのはこの層だというしっかりとした根拠があるのかどうか。私は今回が初めてですので、それをお聞きしたいと思います。
 以上2点です。
■駒村部会長 現時点で答えられる範囲でお願いいたします。
■清水課長補佐 おっしゃられるとおり、これまで全国消費実態調査のうち、年間収入を10個に分けたうちの一番低位な層ということで行ってまいりましたけれども、以前は、第1・十分位と第2・十分位のところで消費が急に減少する変曲点というものがあるということ。あと、第3・五分位、いわゆる中位の層の消費実態が6割ぐらいに達していて、それほど遜色ない水準であろうというところ。あとは、耐久消費財の保有割合から見ても、他の所得、収入階層とそれほど差が見られないということで、一定の水準は確保されているであろうというところから、最低生活費と比較をする水準としておおむね妥当であろうということで、これまでは第1・十分位を使用してきたということかと思っております。
■駒村部会長 これを使う経緯というのは、報告書とかいろいろあるので、後日、事務局からまた改めて補足説明があると思いますけれども、幾つかの統計資料の中でこれを使っているそれなりの理由があるというのは、これまでの議論で具体的に全消と書き込まれているというところがある。すみません。これは事務局はまた後日だと思うのです。
 岩田先生。
■岩田部会長代理 今の点とかかわっていますけれども、私の記憶では、多分、下部10%といいますか、第1・十分位との比較をしたのは、水準均衡方式という言い方は変ですが、水準が均衡したといったとき、中央社会福祉審議会が使った資料で第1・十分位を使ったのだと思います。格差縮小の時代には、あれこれ比較しているのですけれども、そのときに収入で比較するのか、消費水準で比較するのか。それから、全消ではなくて家計調査を使ったり、実はいろいろな比較があるのです。
 我々がかかわってやったときも、例えば世帯類型でいいますと、母子などは、第3・五分位ぐらい、つまり半分以上が貧困層だというようにOECDなどの相対貧困の考え方で言われますので、かなり高い水準をとって比較したこともあります。どうしても第1・十分位でなければならないということはないと私は思います。ただ、家計簿式調査が限られている。何で家計調査かというと、生活扶助相当額の積み上げをやるものですから、収入調査でもうちょっと適当なものがあればそれでやってもいいと思うのですけれども、できにくいのでしょう。
 ただ、私もかねがね、何を比較すればいいのか、それから一般とは何かという問題が根底にあると思っています。収入と純粋な消費支出、それから実支出とか、いろいろなレベルがあると思うのですけれども、その辺も1回整理していくことが必要かと思います。
■駒村部会長 その辺の比較方法については、次の説明のところで考え方とか新しい比較方法の開発といった話もございますので、またそちらのほうでと思っておりますけれども、委員の皆様からあった議論を事務方も資料を集め始めていただく。今、小塩先生もおっしゃったように、高齢者が増えているという中で、特に受給者は高齢者が増えているわけですけれども、どういう形で生活保護の受給に至っているのか。65歳になったときに受給することになっているのか。年金が少しあって、65歳を超えた後もしばらく生活保護には至らなくてもよかったのだけれども、何らかの外的ショックがあって、やはりぎりぎりの年金では足りなかったということなのか。この辺も丁寧に見ていただいたほうがいいのかなとは思います。
 きょうは最初でございますので、ほかにもございましたら引き続き質問をやりますけれども、もしよろしければ次の話にいきたいと思います。
 局長が今お着きになられましたけれども、一言ございますでしょうか。
 お願いいたします。
■石井局長 国会業務の関係で遅参しまして大変失礼いたしました。社会・援護局長の石井でございます。
 皆様方、大変お忙しい中、このような会議に参加いただきまして誠にありがとうございます。大変関心を持たれている生活保護制度でございます。とりわけ、最近は関心が高まっていると私も肌身で感じているところでございます。ただ、最後のセーフティーネットといいましょうか、そういう意味では重要な機能を持っている制度でございますので、皆様方の知見を頂戴いたしながら、私ども、しっかりと考えてまいりたいと思います。どうぞ専門の御知見を存分に発揮いただきまして、私どもにお力添えをいただきまして、また国民のための仕事をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
■駒村部会長 どうもありがとうございます。
 では、よろしければ次の資料のほうに入りたいと思います。
■駒村部会長 岡部さん、ありますか。あれば、どうぞ。まだ時間に余裕がございます。
■岡部委員 後で述べます。
■駒村部会長 では、次のところであわせて。
 次に、今後の本部会において議論を進めるためにおおまかな方針を議論しておく必要があります。この点について事務局より御報告をお願いいたします。
■清水課長補佐 それでは、資料2「生活保護基準の検証における課題と今後の検討の視点(案)」と資料3「今後の生活保護基準部会のスケジュール(案)」についてあわせて説明をさせていただきます。
 まず、資料2「生活保護基準の検証における課題と今後の検討の視点(案)」をお開きいただければと思います。
 めくって1ページ目でございますけれども、今回の基準部会の開催の趣旨といいますか、背景等について記載をしてございます。今回、基準部会については、平成27年1月に開催して以降およそ1年半ぶりの再開となりますけれども、生活扶助基準については、平成16年の「生活保護の在り方に関する専門委員会」の報告書におきまして、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか、先ほどもお話が出ました全国消費実態調査をもとにしまして5年に1度の頻度で検証を行うべきということで提言をいただいております。これまで平成19年、また平成24年に検証を行ってございまして、次回となりますと、来年の平成29年に検証を行う必要があるということでございますので、今年、また来年にかけまして基準部会において検証を行っていくということでございます。
 下のなお書きに書かせていただいておりますけれども、平成27年の経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針におきましては、基準の検証にあわせて、必要な保護のあり方、自立促進のための施策など、制度全般にわたって検討し、必要な見直しを行うということが指摘をされてございます。基準部会におきましては、基準の検証を中心に行っていくということでございますけれども、制度の見直しにつきましても、今後はこの基準部会と別の検討の場を設けまして議論を行っていく予定にしておりますので、あわせて御承知おきいただければと思っております。
 続いて、2ページにつきましては、今般再開をする基準部会におきまして検討をいただきたいという課題について、これまで基準部会の報告書において課題等として指摘をいただいた点につきまして、事務局において6点にまとめて挙げさせていただいております。順番にそれぞれの課題また検討の視点の案について説明をさせていただければと思います。
 1枚おめくりいただいて3ページでございます。1点目につきましては「生活扶助基準の水準の検証手法及び今後の検証手法の開発に向けた検討」でございます。生活扶助基準については、これまで一般低所得世帯、先ほどお話も出ましたとおり、具体的には年間収入階級の第1・十分位との均衡を踏まえて水準を検証する水準均衡方式により改定を行ってきたということでございまして、直近の平成24年の検証におきましては、年齢・人員・地域別に低所得世帯の消費実態と比較した検証を行ったところでございます。
 「しかしながら」というところで書いてございます。この水準均衡方式による改定方式でございますが、これまでの基準部会の報告書においても、この下の枠組みのところに抜粋して掲載もしてございますけれども、一般世帯の生活水準が変動すると合わせて変動する方式であると。経済変動によっては基準が低下することも起こり得る。水準均衡方式を一定評価しつつも、これからは均衡だけで捉えるのではなく、その基準が健康で文化的な最低限度の生活を保障しているのかということも検証が必要ではないかということ。また、平成24年検証の手法についても、1つの妥当な手法ではあるけれども、将来の検証手法を開発していく必要性についても指摘をいただいておるということでございます。
 また、次ページにも記載してございますけれども、先ほどもお話が出ました。そもそも第1・十分位と比較することとしてきておりますけれども、この第1・十分位につきましても相対的な比較の考慮自体は必要であるが、それだけでは縮小均衡を招くおそれがあると。特に中位所得階層、第3・五分位と第1・十分位の割合が減少傾向にあることも踏まえて、比較対照として今日でも適切なのかどうかについては検証を行う必要があるということで指摘をいただいておるところでございます。
 こういった指摘を踏まえまして「今後の検討の視点」というところでございます。基準の検証につきましては、その客観的なデータに基づいて検証を行っていく必要がございますので、どのようなデータをどう活用していくのかということも含まして、先ほど出ました相対的な比較、第1・十分位が適切なのかどうかという検証も含めて、水準均衡方式による検証手法も試しながら、また、御指摘いただいております新たな検証手法につきましても、具体的なデータ等も踏まえながら、その手法の活用が可能かどうかということを検討してはどうかということでさせていただいております。
 続いて、5ページ、2点目でございますけれども、子どもの貧困対策も踏まえた有子世帯の扶助・加算の検証のあり方についてでございます。有子世帯の扶助・加算につきましては、児童養育加算、母子加算、教育関係の扶助等ございまして、前期間の部会でも議題に挙げさせていただきまして論点整理を行ったという経緯がございます。その際には、特にひとり親世帯の貧困率自体が先進国の中でも高いことなどから、有子世帯の扶助・加算については一般世帯との均衡のみで見直すことは適切ではないのではないか、また、子どもの貧困対策の観点からも慎重に検討すべきという意見を多くいただきまして、前期間の部会では引き続き議論を重ねていく必要があるという旨の御指摘をいただいておるところでございます。
 今後の検討の視点といたしましては、当然ながら、生活扶助基準本体との関係性も整理をする必要があることから、1点目の課題に挙げました基準本体の検証とあわせまして、子どもの貧困対策という観点から、子どもに係る特別な需要をどう評価するのか、特にひとり親世帯等につきましてはデータのサンプル数が限られるという問題もございますので、どういったデータが活用可能なのかも含めまして御議論いただければということで挙げさせていただいております。
 続いて、6ページになります。3点目ということで「就労・自立インセンティブの強化を踏まえた勤労控除等の見直し効果の検証」を挙げさせていただいております。就労促進につきましては生活保護制度における大きな課題でもございまして、平成25年においては、この基準部会においても勤労控除について議論等いただきまして、特別控除を廃止する一方で基礎控除額を増額するなどの見直しを行ったところでございます。また、同じく平成25年の法改正におきまして、保護からの脱却を促すことを目的といたしまして、収入のうち一定額を仮想的に積み立てて脱却時に支給するという就労自立給付金を創設したという経緯がございます。
 これらの見直しについて、基準部会の報告書におきましても、こういった制度見直し後の実態、その効果を把握した上で、基準部会においても議論し、データに基づく検証を行うことが必要ではないかということで御指摘いただいておるということでございます。
 そのため、今後の検討の視点といたしましては、まずは、前回講じた見直しの効果について、就労実態、例えば収入認定額がどう変化をしているのかということも踏まえまして把握・検証してはどうかということでさせていただいております。
 続いて、7ページでございます。4点目「級地区分の在り方の検討」でございます。級地につきましては、平成24年検証におきまして、それぞれの今の級地区分を前提とした上で級地間較差について比較検証を行いまして、その差を是正するという見直しを行ったところでございます。ただ、市町村ごとの級地指定につきましては、昭和62年度に各市町村の消費水準ですとか都市化の度合いといった指数をもとにして見直しを行って以降、それぞれ級地の指定見直し自体は行っていないということで、基準部会でもその級地区分のあり方についても検討すべきではないかということで御指摘いただいていたところでございます。
 「今後の検討の視点」というところでございますけれども、その昭和62年当時とは、市町村合併もございますし、その生活様式等も大きく変わっているところでございますので、まずは、どのような考え方に基づいて、またどのような指標を用いて最低生活費の地域差、級地の差に反映させていくのかを検討してはどうかということで挙げさせていただいております。
 続いて、8ページ、5点目になりますけれども、その他の扶助・加算における検証ということで挙げさせていただいてございます。生活扶助基準本体以外の扶助・加算についても、これまでの御指摘で検証に必要な統計データの収集方法また検証手法の開発を含めて検討を行うべきという御指摘もいただいてございます。前期間の部会では、住宅扶助、冬季加算についても検証を行ったというところがございます。先ほども全体の加算の意義というところも御意見が出たところでございますけれども、それぞれ社会保障制度のこれまでの見直しも踏まえて、現行の扶助・加算について意義を考慮することが必要ではないかということで御指摘もいただいておるところでございます。
 「今後の検討の視点」のところでございますけれども、これまで基準部会で検証を実施していないその他の扶助・加算についても、データの収集等も行いつつ、各扶助・加算が対応している特別な需要を把握し、その内容や金額等の妥当性について検討してはどうかということでございます。また、これについては、データ等が見直せる材料が出た段階で順次議論を行っていきたいということも考えてございます。
 続いて、9ページ、6点目ということでございますけれども、基準見直しの影響の評価についてでございます。先ほどの概要の説明でも申し上げましたとおり、これまで生活扶助基準については、平成24年、検証を踏まえた見直し、また直近で住宅扶助、冬季加算の見直し等を行ってきたところでございます。報告書においても、生活保護受給世帯への影響を的確に把握し、その影響の評価・検証を行う必要があるということも御指摘いただいております。先ほどの概要の説明のところでもそういった状況の変化がどうだったのかということで御指摘をいただいておりますので、「検討の視点」ということでございますけれども、基準見直し前後における生活保護受給世帯の生活状況の実態把握をデータ等で検証を行いまして、見直しにおける影響を評価・検証してはどうかということでさせていただいております。
 10ページ以降は、参考資料といたしまして各課題に関連する資料等を添付してございますので、また御議論の中で必要に応じて御参照いただければと思っております。
 続いて、別とじにしておりますけれども、資料3「今後の生活保護基準部会のスケジュール(案)」について御覧いただければと思います。
 1枚おめくりいただきまして、今回の基準部会のスケジュールでございます。今回5月から再開をするということでございますけれども、年末12月にかけましてはそれぞれの課題につきまして一通り、今後の検証手法について、またどういったデータを整備すべきかというところも順次議論を進めていければということで考えております。その中で、どういったデータまたどういった分析を行うべきかということを整理した上で、各課題の今後の議論の進め方、特に来年度に向けた優先順位ですとか、そういった方向性についても整理ができればと思ってございます。
 また、先ほどの全国消費実態調査のデータが年末ぐらいには活用できるかと思いますので、入手ができ次第、分析等を実施させていただきまして、29年1月から3月ぐらいにかけて検討作業班等を設けて、そういったデータの分析作業等もできればということで考えてございます。その上で、検証の実施ということで、29年4月から12月までの間でそういったデータの分析結果、データの分析については引き続き並行してやっていく部分もあろうかと思いますけれども、各課題の検証の実施また見直しの方向性について御議論いただきまして、29年12月には何らかの報告書の取りまとめを行いたい。こういったスケジュールで実施できればと思っております。
 次ページにつきましては、参考といたしまして、基準部会とあわせまして制度見直しに関するスケジュールについても掲載してございますので、あわせて御参照いただければと思います。
 基準における課題の検証の進め方またスケジュールに係る事務局からの提案ということでは以上でございます。
 あわせて、本日御欠席の阿部委員から御意見を資料提出いただいております。当日配付資料ということでお配りさせていただきましたので、事務局のほうで概要を若干かいつまんで御説明をさせていただきます。
 御意見としては主に3点ということです。
 まず1点目については「有子世帯の扶助・加算の検証について」でございます。こちらについては、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」にうたわれますとおり、生まれ育った環境によってその子どもの将来が左右されることのないよう、その貧困状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するという第1条の理念にのっとりまして、その貧困の連鎖、貧困の固定化を防ぐべく検討されるべきである。日本社会において、低所得層の子どもたちが、学力、健康、自己肯定感など多方面において不利な状況にあるリスクが高いことを踏まえると、生活保護受給世帯に育つ子どもたちの生活は一般低所得世帯に育つ子どもたちとの均衡で検討されるべきではない。むしろ、ここでの議論を生活保護受給世帯やひとり親世帯のみだけではなく、より広い意味での子どもの最低生活費の議論に深めていくべきであるということで1点目の御意見をいただいております。
 また2点目といたしまして「これまでの生活保護基準改定の影響把握」につきまして、その生活扶助の改定、また住宅扶助の改定による生活保護受給者及び非受給の低所得者に及ぼした影響を把握する必要がある。特に生活扶助引き下げによる他制度、主に就学援助費などということで挙げていただいておりますけれども、そういった他制度への影響、また、住宅扶助引き下げによって転居を余儀なくされた受給者の状況などを把握するための調査を実施するべきであるということで2点目の御指摘をいただいております。
 最後、3点目「生活扶助基準の検証手法の開発について」で、生活扶助基準の検証については、これまでも本部会において議論されてきたが、新しい検証手法の開発には至っていない。実際に適用が可能な検証手法を開発するには、複数年にまたがる長期計画が必要であり、部会と並行して開発事業を立ち上げる必要があるということ。
 以上3点の御指摘をいただいておりますので、あわせて御紹介をさせていただきました。
 説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
 では、資料2、資料3に関して委員の皆様から御質問、コメントを。
 山田委員、どうぞ。
■山田委員 御説明ありがとうございました。
 私からは3点ございまして、資料2のほうと、あと、スケジュールに関するものです。
 まず1点目は、今の阿部先生のコメントにもありましたように、もちろん生活保護受給者にどのような影響があったかというのは重要なのですけれども、特に第1・所得十分位のところに掲げられた、前回議論になった縮小均衡という懸念を押さえますと、生活保護受給者以外にどのような影響が基準引き下げによって起こったかを検討するというのは非常に重要な点かと思います。前回、いわゆる生活扶助基準の見直しに伴い、他制度に生じる影響についてということで対応方針が幾つか決められたと記憶しております。どのような制度の影響かというと3つあり、1つ目として個人住民税の非課税限度額等。ほかにも就学援助とか保育料の免除とか、そういった国の制度が2つ目。あと3つ目として、なかなかデータがとりにくいものとしては地方単独事業に対する影響でございますので、そこら辺にどのような影響が出たかどうかというのは、村木局長のときにも大変懸念しておられましたので、同じく問題意識を持って、どのようになったのかというのはぜひデータをとっていただきたいと思います。
 2点目ですけれども、「子どもの貧困対策も踏まえた有子世帯の扶助・加算の検証」で、前回も、ここで引用してくださったように、一般低所得世帯との均衡という考え方のみで見直すことは適切ではない、ということで、結局、取りまとめを見送ったわけです。その後に下線部が引かれているように、子どもの貧困対策を踏まえつつ議論を重ねていく必要があるということ。新しい動きとか何かがあったら議論する必要はあると思うのですけれども、前回と状況が余り変わらない中で議論しても、結論としてはまた同じになってしまう可能性があるので、前回と違うような動向として事務局がお考えになっていることとして何があるのかというのはお教えいただきたいということです。
 特に「今後の検討の視点」で「生活扶助基準本体の検証と合わせて」ということなのですが、前回の報告書と絡めて言えば、均衡という考え方のみで見直すことは適切ではない。「検証と合わせて」と言うと、「基準の変動に合わせて一緒に」というふうに読み取れてしまうので、私としては、一番下の括弧囲いの中の「生活扶助本体の検証と合わせて」というのは「タイミング的に合わせて」ということですよねということで、あくまでも子どもの貧困対策の観点からというのを重視しているのですねということを2番目についてはコメントとお伺いということです。
 3番目。長くなって申しわけありませんが、データの整備については、スケジュールとしては、順次議論ということで平成28年5月からとなっていますけれども、データの整備を考えると、調査票とか何かを事前にいろいろと練っておく必要があると思うのです。例えば生活保護に至る理由ということで、貯蓄額の減少となっていますけれども、結局、資力調査のために貯蓄を減らしているのか、それとも何かショックがあって減らしているのかというのが、今の開始理由のデータではよくわからないところがあるので、データの接合性も考えながら、果たして現行のデータでこれからやろうとしていることができるのか。できないのだったら、そろそろデータをつくるところから考えないといけないのではないかというのが3点目のコメントになります。
 私からは以上です。長くなってすみません。
■駒村部会長 事務局から何かございますか。この3つについて、いずれも重たい話でありますし、見直しの方向・視点にかかわる部分もございますけれども、もしあれば。
 では、鈴木課長からお願いします。
■鈴木保護課長 今、御指摘いただきました1点目の他制度あるいはいろいろなものへの影響ということは、できるだけ整理をして出せるように努力したいと思います。その上で御議論いただきたいと考えております。
 おっしゃったのは2番目のお話だと思うのですけれども、有子世帯の扶助・加算のことも今回テーマに挙げさせていただいておりますが、生活扶助基準と合わせて議論というのは、タイミングもそうですが、結局、子どもの生活も、その生活扶助の中に含まれている費用も含めて、全体として世帯としては子どもの育成をしていただくということでありますので、そういう意味で、高さを切り離して議論をしてはいけないのではないかと。そういう意味も含めて、生活扶助基準と合わせてと。そのタイミングもそうですけれども、高さ、家計全体を見なければいけないという意味でもそういうことで認識いたしております。
 いろいろな事情の変更がないのではないかということではありますが、一方で、生活保護世帯の中での今の加算が本当にフェアなのかとか、そういうこともありますので、そういう意味では予断なく見直しの検討をする。もちろん、結論は議論いただいた結果でございますので、そういう意味では、予断なく議論をしていただけるようにいろいろなデータを準備させていただきたいと思っております。
■清水課長補佐 最後、データのところでございますけれども、この議論の中でそもそもどういったものが必要かというところで、御指摘いただいた事項について、例えば時期的には来年度の調査などでも見直していく必要があれば、御指摘いただいた中からまた検討させていただければと思っております。
■駒村部会長 山田委員、何かありますか。
■山田委員 今、保護開始の話も、この前段階の理由というので、他制度、例えば年金制度との絡みはどうなっているのかというのが、果たして現行のデータでとれるのかどうかを精査していただきたいということです。
 あと気になっているのは、例えば脱却しましたと。脱却したけれどもまたすぐに再度生活保護受給を開始しましたというような、要するに不安定な出入りができているのであればそれは問題だと思うのですけれども、現行のデータでそれが確認できるかどうかというのは疑問ですので、ちょっと考えただけでも現在お持ちのデータでできるのかどうかという点が気になります。
 2点目に関しては、高さというのをどう考えるか。小塩委員の御指摘にもありましたけれども、OECD加盟国内で第1・所得十分位の伸びがマイナスになっているのは日本だけです。あとは、相対的貧困線がそれに伴ってずっと下がり続けていることとか、貧困ギャップというのもどんどん拡大している中で、何をフェアというのか、単に数字の大小だけではなくて、やはり突き詰めて議論しなくてはいけないところだと思います。
 私からは以上です。
■駒村部会長 今のやりとりの中で、最初、山田さんがおっしゃった影響ですね。生活保護基準はセーフティーネット、最低所得保障のアンカーになるわけですから、当然他制度に波及効果が出ますので、ここに書いてあるように、生活保護受給世帯のみへの影響だけでこの部会としては責任を果たしているかどうか。受給者だけに影響を与えるだけではなくて、非受給者にも当然波及効果がありますので、この辺は先ほど課長も少し触れられましたけれども、そこも見ながらという話でないと、基準部会として生活保護受給者だけの議論になってしまうのはちょっとまずいかなと。ほかにもこの扶助基準というのは波及効果があることを意識しなければいけない。
 それから、加算と本体の話ですけれども、これは阿部さんのところに書いてあります。阿部さんのかかわっているレポートがユニセフから発表されていますけれども、子どもの貧困率の問題やその状況を考えると、長期的にもかなり大きな影響を与えるわけですので、ここにも書いてあるように、単なる均衡論だけではなくて、成長に与える影響も同時に考えていくべきではないかと。この阿部さんの御意見というのはそうだろうかなと。これも材料をいろいろと集めていただいて多様な角度から議論していただきたいと思います。
 ほかに。
 岡部委員、岩田先生、お願いします。
■岡部委員 では、私から。1点目。生活保護基準部会というのは、そもそも何が健康で文化的な生活なのかということを具体的に検討する場であると考えます。何が健康で文化的なということは規範的な概念ですから、具体的な内容とか基準、尺度をどのように設定するかということになろうかと考えます。現行の水準均衡方式は1984年度から採用されていますのですでに30年余を越えています。その当時の時代状況と今日の状況では随分変化していますので、先ほど山田委員がおっしゃった均衡という考え方で比較対照していくということが果たしていいのかどうかということも含めて検討していただければと考えます。
 スケジュールを見ましたところ、現行の水準均衡方式を前提に検討していくということは、今回これはこれでよいと考えますが、何が最低生活なのか、また最低生活費なのかというそもそもの議論とそれに向けての開発の手法ももう一方で検討していただくと、次につながる議論ができるのではないかと考えます。それをぜひお願い致します。
 2点目。生活保護の基準というのは、生活保護制度を利用されている方の生活を保障するということと同時に、社会保障制度の中の根幹をなしています。それは山田委員、部会長もおっしゃったように、いろいろな制度・サービスに波及する。それを1つの尺度にしているということがありますので、ぜひ慎重にやっていただくと同時に、それの影響も精査していただきたいと思います。
 その上で具体的な話をさせていただきます。検討課題とスケジュールの参考というところでいくと、検討課題の1は、生活扶助基準の水準の検証手法及び今後の検証手法の開発ということではこれでよいと考えます。住宅扶助・冬季加算の検証と見直しもよいのですが、2以下については、このスケジュールの中には主としては入っていないことです。どういうことかといいますと、子どもの貧困対策を踏まえた有子世帯の扶助・加算の検証というのは、加算は生活扶助の中の話ですのでこれでよいかと思いますが、教育扶助であるとか、生業扶助の検討というのは当然子どもの貧困対策に入ってきます。それはどうするのかをお聞きしたいと考えます。
 それと、それ以外の扶助についても検討するのかどうかということです。これは5番目に入っていますけれども、このところもあわせてお教えいただきたい。
 また4の級地の問題についてです。級地間の格差を検討するということは、これも平成の大合併で地域の規模も相当変わっており、合併したことによって級地の中での格差という問題もあります。このあたりは相当丁寧にやらないと、同じ級地の1とか2といってもその中は相当違うので、この刻み方ももう少し検討していただきたいということになろうかと思います。
 それと、これは基準部会そのものの議論になるのですけれども、私は前回の生活扶助基準を検討したときのメンバーではなく、その後に参加させていただいたのですけれども、基準部会の審議の後に物価の下落を理由に生活扶助基準の見直しをされたことがあります。そうしますと、基準部会の閉会後に政策判断で基準の見直しをするということは、基準部会の守備範囲外だと判断するのか、部会の中の話として改めて議論をすることになるのか、そこらあたりのことの守備範囲を教えていただければと考えます。このことはわれわれの基準部会の位置づけと権限に関わることであると考えます。
■駒村部会長 まず、今回の検討について幾つか岡部先生から。大ざっぱに言うと、どこまでやるつもりなのかという話。特に4、5あたりです。これについて、これから詰めていく話かもしれませんが、一応事務局の覚悟というか、どういうスケジュール感として作業量として考えておられるのか。級地の区分の話などもかなり難しい部分もあると思いますので、これは事務局から御説明を。
 後半のところは実はかなり難しい話です。これをどう考えるか。これはこうあるはずだということは私のほうからはなかなか言いづらいところでございます。もし事務局で答えることができればお願いしたいと思います。
■鈴木保護課長 まず、今、部会長からございましたいろいろな課題の検討のスケジュールというか進め方ですけれども、私どもとしては、前回やっていないことはやはり予断を持たずに検討課題としてはあると思っております。一方で、それぞれそれなりに皆かなり重たい課題で、当然データとか、議論の密度とか、いろいろな意味でもそれなりにそれぞれ時間、力が要る問題だと思っております。そういう意味で、一わたり、今年度この12月ぐらいまでにやるセッションでは、それぞれの現在の課題とか、今、どういうデータがあるのかとか、そういったことも提示させていただく中で、どれをどういう形で重点的にやっていくかということも含めて御議論いただきたいと思います。
 そういう意味で、スケジュール表で線表がありましたけれども、一応、典型的には29年検証は30年度からの実施という時間軸を書かせていただいております。その検討の進捗によってそれがいろいろな時間軸の長さを持ってくるというのは、議論の結果、課題によって生じてくるということは当然あり得ることだと思っております。
 もう一つの物価の反映ということも前回やらせていただきました。前回の部会のほうでは、レポートの中には、部会の報告以外のいろいろな指標を考慮するときはその根拠をちゃんと示せということをコメントいただいておりまして、そういう意味で、その部会での議論を踏まえて、そのほかの経済指標のほうは私ども厚生労働省のほうの判断ということで総合勘案してやらせていただいたと。一定程度、総合勘案の部分というのはどのような局面でも生じるとは思っておりますが、根本となる考え方はぜひ部会のほうに議論いただけるようにこれからもしていきたいと思います。
 それから、一部各論に入りますけれども、冒頭おっしゃいました水準均衡方式との関係です。現時点では、水準均衡方式にかわる、これが絶対だというのがない、水準均衡方式はこれまで一定の評価をいただいているという意味では、一応それは1つの有力な路線だと思っております。ただ、これまでも水準均衡方式の持つ課題、そこがあくまで均衡でしかすぎないので、こういういろいろなものが下落していく局面にあってはそれでいいのかという御指摘も当然あります。新しい検証手法などがどれぐらい信頼性に足るものになるかにもよるのですけれども、そういったものも組み合わせていくことによって、例えば議論の中で水準均衡方式を是正できるのかとか、そういったいろいろな角度から御議論いただければいいなと現時点では思っております。
■駒村部会長 岡部先生がおっしゃるように、85年に導入された仕組みをそのままというのはどうかというのは、以前から部会の皆さんも、デフレ、低成長、格差拡大の社会の中で、この均衡水準方式だけでやっていていいのかと。だから、開発をしましょうと。これは代替するだけの確たる案がまだできていない。これは阿部さんの資料で言わせていただければ、ちゃんと開発する努力が必要だというお話が出ている。
 それから、我々の守備範囲がどこまでなのかというところ。先ほどの参考資料1の15ページ、16ページが前回の検証結果であったわけですけれども、我々がやったのはここまでなわけです。つまり、ある種、骨格のゆがみを治しただけで、その後のスライド部分については、この次のページに書いてあるように、生活保護基準部会の検証結果だと。検証したのはこの骨格の部分であると。そして、その経済指数の反映というのは政府のほうの判断で行われたということだと。これからこの部会でどうするかというのははっきりした形にはなっていないのですけれども、政府の役割と部会の位置づけというところは1つ考えなければいけないことではあるのかもしれません。
 もちろん、本部会は、前回の総合的な基準の見直しそのものがどういう影響を与えているのかということについては、もちろんコメントしたり分析する資格はあるわけですので、そういうのはやるということを今回の基準見直しの影響の検証というところに入っているのではないかと思います。
 岩田先生の手が挙がっていますのでお願いします。
■岩田部会長代理 この検討課題の6点を順次というのは、1個ずつやっていくという意味で理解していいのか。それとも、まず6をやって、その後、1から5までを続けてやるという理解でいいのでしょうか。
■清水課長補佐 6の基準の見直しの影響につきましては、またデータの収集等もありますので、恐らく、一方で並行してという形になろうかと思っております。それぞれの各課題について論点整理というのは順次行っていきまして、その中で見直しの影響等のデータもそろったものから出させていただきつつ、また御意見等もいただくという形で、順次というか、並行して進んでいく形にもなろうかと思っております。
■駒村部会長 お願いします。
■岩田部会長代理 私もこれに結構長くかかわってきています。1から4まではこれまでやってきまして、ある意味でもう行き詰まっているのです。特に生活扶助基準の水準の検証が、均衡といっても、何と何を比較するのかという意味で、第1・十分位といっても、そのモデルの3人世帯で押し進めていって展開していくのか。それとも、高齢は分離してやったことはありますけれども、母子は分離すると全消は使えませんので、それをどうするかという問題はずっと課題としてひきずっているわけです。
 また同じことをやるのかという感じもちょっとしていまして、生活扶助基準で私たちがやったのは、先ほど駒村先生もおっしゃったように、この15ページ等の、要するに生活扶助基準の1類、2類への展開のあり方の不合理性を是正したというのがデータでの検証での1つの成果ではあるのですけれども、これとデフレ効果で全体を引き下げたというのが一気に行われたために、検証それ自体の効果がきちっと出ていなかったというのが我々としては大変残念だったわけです。
 もっと大きな点は、先ほど出ていた高齢化の問題とあわせて単身化です。生活保護世帯はほとんど単身世帯といってもいいほどで、母子世帯の問題もむろんありますが、割合からいったらそんなに大きくないです。だから軽視するということではありません。それから、多子世帯、大人数の世帯もありますけれども、非常にレアです。ですから、どういうモデルで一般世帯と比較するか。一般世帯も単身化は非常に早く進んでいますが、一般世帯の高齢化・単身化よりもさらに生活保護のほうが早く進んでいますので、これをどう考えるか。単身モデルをつくるかどうかということです。今回出ているのは65歳の夫婦と65歳の単身ですけれども、70になると生活扶助額が下がるわけです。1類が下がるから。だから、70を出さない高齢モデルはあり得ないと思っています。そういうことがあります。
 3点目に、1950年に生活保護法が成立してから他の社会保障の手当やその他サービスが飛躍的に増大してきているわけです。介護保険は中に取り入れましたけれども、そのほかは一応、他法他施策ということで、先ほど言いましたように、年金とのセット、あるいは母子扶養手当とのセット、あるいは障害の場合も障害年金との関係というように、他の社会保障との関係の中でもう一回捉え直さなければいけないのではないか。生活保護法というのは、介護保険を除くと、介護保険もある意味ではそうだとも言えますけれども、生活保護の世界の中に全部取り込むわけです。収入認定して加算で取り込むというやり方で、きたわけです。私は福祉年金のときまではそれでいいかなと思っていましたけれども、今日の段階では、そのこと自体がもう時代遅れになっている。そういうことをそのままにして生活保護基準を考えていいのか。他の先進国と比べて日本の場合は、社会保障としては住宅手当だけがない珍しい国です。前回ちょっと扱いましたけれども、もしも住宅扶助を考えるときは、この辺は実は考えなければいけない。私たちは、データはどうする、どこのレベルと比較する、そこにすぐ追い込まれるわけですけれども、その前に考えなければならないことがあるわけです。誰の何と誰の何を比較するということなのです。均衡なら均衡でも構いません。
 それから、第1・十分位の検証の際も、五十分位とか百分位で細かくやったこともあります。昔、曲がり理論みたいなものがあって、変曲点みたいなものを見つけようとしたこともありますし、これまでもいろいろなことをやっているのです。そういうおさらいもやってみるかという感じもしますけれども、その前に、根本的なところで、少なくとも生活扶助基準を検証する場合のモデル世帯のあり方は、はっきりさせた方が良いでしょう。
 それから、全消でいいのかという問題もあります。全消だけでというか。光熱水費のときは家計調査のプールデータを使いましたけれども、そういったさまざまな問題があるのに、このスケジュールで順次議論をしていくと、またこれまでと同じトラップの中であがくだけで、根本的に合理的な最低生活をどのように考えていくかという議論にはなっていかないのではないかという非常に強い危惧を持っているものですから、スケジュールの冒頭にその辺の議論をぜひ置いていただきたい。
■駒村部会長 おっしゃるところは、私も部会長とは別に、個人的にはかなり合意するところもあるわけで、この辺の問題は一応俎上に上げておかないといけないのかなと思います。先ほど岡部先生がおっしゃったように、今、岩田先生がおっしゃったように、水準均衡を導入したころ、85年のころは社会保障はまだ充実期で、皆保険・皆年金がまだ。今でも機能しているかどうかというところはありますけれども、他法他施策優先の中で、生活保護費負担制度に与える負荷というのは徐々に下がっていく時代だったわけです。これからちょうど難しい時期に入ってきて、年金やそういったものも、今後マクロ経済スライドなどが本格実施されれば、逆方向に向かって落ちていく。そういうほころびが、高齢化要因とともに生活保護受給者の中に占める高齢者の数が非常に増えているという形で出てきている中で、従来どおりの考え方や手続でこの2年間を使ってしまっていいのですかということだと思います。やはりそこは前半部分できちんと議論して、その水準のあり方、検証方法について十分時間をとる、あるいは同時並行的に材料をどんどん集めていく。ただ一方、行政としては、スケジュールはスケジュールで守らなければいけないということだと思いますので、この辺は進め方をかなり工夫しなければいけないだろうと思います。
 岡部先生、お願いします。次は栃本さんの順番で。
■岡部委員 今、大きな議論をしていただいたのですけれども、1つは、生活保護の基準の中で、医療扶助が生活保護の基準の財源の大半を占めているということです。これは、岩田委員がおっしゃったように、国民健康保険等の医療保険の問題と介護保険の中の介護扶助のお話が出て、医療扶助優先なのか、国保等の社保等が優先なのかということは非常に大きな話となります。先ほどの守備範囲の話でいくと、これはまた別の場で議論していただいたほうがいいのではないかと考えます。これは私の意見です。
 2つ目は、冒頭に部会長がおっしゃったのですけれども、高齢者世帯が非常に多いということで、生活保護の年齢基準の区切り方をもう少し丁寧にしていただき、そこで生活需要がどの程度あるのかを収入との対比のところで検討していくということが、生活保護の受給者の動向からすれば必要なのではないかと考えます。どうするかは別にして、そのようなデータをとり検証することは必要なのではないかと考えます。
 先ほどお話ししたように、たくさんの課題が出されていますので、議論するほうとしては、全体的な、広げた議論をしていただく場は必要なのだと思いますけれども、部会長のほうでどこかに絞っていただき議論を深めさせていただいた方がより生産的な議論ができるのではないかと考えます。
■駒村部会長 医療扶助は、先生おっしゃるとおり、資料3でも見ますように、ここは基準部会でございまして、そちらのほうはまだ2つ議論の場があるかという感じでございますので、そちらのほうの議論があるのではないかと思います。どう整理していくのかというのがポイントかなと思います。
 栃本委員、お願いします。
■栃本委員 今の先生方のお話をずっと聞いていても、結局、生活保護というのは、他の社会保障制度の全ての矛盾点が全部集積的にあらわれるところなのです。したがって発言せざるを得ないということだと思うのです。これが基本ではあります。制度の面でもそうだし、実際に生活保護の被保護者、ないしは要保護なのだけれども保護に至っていないということもあるでしょうから対象者の幅という人の面でも矛盾点のあらわれだと思うのです。だから、どうしても会議のときにそういうのを言及せざるを得ないということだと私は理解しています。
 その上で、先ほど来、これは制度の見直しについてというので見直しに向けたスケジュールという事務局のものなのだけれども、一方で、今までのお話のように、各委員が6つの項目について集中的にないしは、めり張りをつけてということで、役所のほうの見直しに向けたスケジュールではなくて、部会長といろいろ相談しながらされているのでしょうが、部会のほうのスケジュールというか、目星みたいな大枠でいいのですけれども、そういうものを示していただけると良いと思います。前回のときに岩田先生や山田先生や、きょう欠席されています阿部先生から、現行の基準について代替案になるかはいろいろ議論があるところで、現在はこれしかということであるのだけれども、その一方で参照すべきことというのはあったわけで、これは引き続きやるということにはなっているわけですね。それはしたほうがいいと思いますし、先ほどの戦後の標準生計費、マーケット・バスケット、エンゲル方式までは理論なのだけれども、その後の水準均衡方式というのは理論ではないわけです。ということなので、根本からやるのか。さもなければ、水準均衡方式の修正版といったらあれなのだけれども、いろいろなものを加味した形の補正版というか、そういうものを考えるか。現実的には後者になるのかわからないけれども、その議論というのはできると思うのです。しかも、それぞれの委員の先生方はいろいろな知見からお話しされているので、そこら辺はある程度議論して整理しておいたほうが、国民の方々に対しても、きちっとやっているよというか、そういうものになると思います。
 もう一つは、生活保護の生活扶助基準とか波及するというのは前々から常にそういうことで議論されたわけですが、確かあのとき、部会長のもとで文書をまとめる際に、波及するので他制度についてそちらの方でよく考えてくださいよということを書いたと思います。ただ、それと波及するからといって、生活扶助基準が配慮するということではいけないんであって、それは生活扶助基準は基準で何ら斟酌せず微動だにさせてはいけない、そういうのが私の考え方なのです。
 繰り返しになりますが、ただ、波及するとなると、他の省庁であるとか、他のところが生活保護の生活扶助がこうなったからこうしましたみたいな機械的なことをすること自体がおかしいということです。これは前も申し上げました。そこを省略して、効率化して、サボって、それで生活保護の生活扶助基準のせいにさせられるのは非常に困ったことです。また、生活扶助基準を理由にというのは余りよろしくない手法だと思うのです。やはり他の諸制度であるとか、そういうものの部局や役所のところでそれについてどう考えるかということをきちっとされることだと思うのです。
■駒村部会長 どこでやりましょうね。
■栃本委員 それは私たちではない。
 あともう一つは、岡部先生から話がありました議論で、非常にわかりやすく言うと、デフレでこうなので、審議会での議論のあと、私たちの知らないところで実際の額、基準は下げられた、こうなってしまったよと。かみ砕いて言うとそういうことですね。例えば介護報酬なども介護報酬分科会で議論して、最終的には方向を示しいろいろまとめるのですが、実際に介護報酬額はこの額だなどということは審議会では決めません。あたりまえのことでそれはしようがないというか、それはそうだと思うのです。ただ、皆さん方が懸念しているのは、介護報酬とかそういうものは現実的にはこういう形で加算をつけるとこういう形になるといった形で介護報酬及び加算の点数を最終的に国が決めるのだけれども、皆さん方はなぜそうおっしゃるかというと、生活保護法が一条で示されているように憲法25条から直接導き出しているものですから、したがって、こういう客観的に扶助基準を考えたものが、その後現実的にはこうなったというのは、その責任感からおっしゃっていると思うのです。そういう場合は、部会長が緊急に事務局のほうにおっしゃって開催を依頼するとか、そういうこともあったほうが私はいいと思います。基本は、介護報酬の決定でも、介護報酬分科会というところで議論して、それを受けてされるというのは、そういう立場というのがあるからしようがない。ただし、25条の関係もあるから、そういう場合には1回ぐらいというか、こうだなと。それで納得するかは別にして。そういうこともありかもしれないと思いました。
 以上です。
■岡部委員 いいですか。
■駒村部会長 どうぞ。
■岡部委員 今の話は、守備範囲というか、手続をどうするかというのをある程度了解していたいということがありましたので、そういう発言をさせていただいたということです。
■駒村部会長 社会保障審議会の部会の位置づけにかかわるお話だったと受けとめました。
 小塩委員。
■小塩委員 これは質問ですが、前回の見直しの検証をするというのは非常に重要なことだと思います。特に我々経済学者からすると、どれだけ就労インセンティブが高まったかという点は、特に生活保護の目的が自立の助長となっていますから、非常に重要なポイントだと思います。しかも、3でも明記されていますが、これは現行の調査で検証可能なのですか。被保護者調査は全数調査だと思うのですけれども、これで検証は可能なのですか。それとも、何か追加的な調査をする必要があるとお考えなのでしょうか。それをちょっとお聞きしたい。
■駒村部会長 このインセンティブは実態はどうなって、データがあるのかどうかというのは私も聞きたいなと思っていたので、お願いします。
■鈴木保護課長 被保護者調査では収入認定額というのをとっておりますので、そういう意味ではマクロの収入階層の分布がわかります。同じ人が対象になってひもづけされているわけではないので、Aさんがどうなったかという調査にはなっていないのですけれども、その時点の集団としての分布はわかりますので、そういったものは1つの材料としてお示ししたいと思っております。
■駒村部会長 小塩先生は、これによってどう変わったかという後を知りたいのですよね。
■小塩委員 できれば、ひもづけをしていただきたい。それぞれの個人の、あるいは世帯の行動を追跡できるような仕組みは、政策評価をしっかり行う場合に必要だと思います。
■駒村部会長 関連してですか。
■山田委員 関連して。
 先ほど申し上げましたように、多分、データのとり方から考えないと。というのも、脱却したら、要するにデータから見えなくなってしまうわけですね。そうすると、その人を追い駆けて調査するのかどうか。なかなか難しいのではないかと思うのですけれども、一方で、少なくとも今いる人にとっては、いつ生活保護を受給しているか、また受給を再度開始したかというのをとれるようにすれば、どれだけ不安定になっているのか、安定的になっているのかどうかというぐらいはとれるかなとは見ているのです。いずれにしろ、今から用意しても、計量経済学的に言えば、導入前と後を観察しないと制度の効果はわからないので、私は、そこからわかるようにするのにはかなり工夫が必要かなという気はしています。
■駒村部会長 よく回転ドアみたいなことになっているのではないかという話もあるわけですけれども、過去に受給して、一時的にまた。これはとれるのですか。こういうデータはあるのですか。
■清水課長補佐 現在受けた人は、過去受けてからの期間がどれぐらいというのは、おっしゃるとおり、マクロのデータとしては一定のものがあるかと思います。具体的にその検証に耐え得るかどうかというところは、今あるものを出させていただいて、また御指摘等もいただくことになろうと思います。また、その会のときには現行で出せるものを整理して御提示させていただければと思っております。
■栃本委員 今おっしゃった「マクロにはある」というのはどういう意味ですか。
■清水課長補佐 ひもづけというのはなかなかされていないけれども、今、生活保護を受けている人が過去何カ月間あいているかとか、そういう全体の数字で分布がどうなっているかというようなものは。
■栃本委員 何カ月間あいているかというようなデータ。
■清水課長補佐 あったかと思っております。
■駒村部会長 この検証はなかなか難しくて、この検証をやるためには、そもそもこの制度前後の間から、これは前から山田さんがおっしゃっていますけれども、データのつくり方を始めておかないと、どういう効果になるかは事後的にはわからない。できたばかりの部分もありますので、今わかる範囲の資料をなるべく全部出していただいて、その上で、効果があったかなかったかは言い切れるかどうかわからない部分はありますよね。そこは拙速というか曖昧な判断をしてはいけないと思いますので、できる範囲は一体どこまでなのか、そこでわかったのかわからないのかというのを確認するのが大事だと思います。
 岩田先生、いいですか。
 お願いいたします。
■岩田部会長代理 今のひもづきというか、パネルですけれども、生活困窮者自立支援事業のほうで今度何かパネル的なデータを作るような話をちらっと聞きました。私たちの研究グループでは、今、生活困窮者自立支援法のパネルデータの作成をすでに始めていて、地域限定なのですけれども、相談に来た時点のグループを何種類かつくって追い駆けていく。多分その中で生活保護との関係も見え隠れはしてくるだろうと踏んでいます。本当は、抽出でも構わないので、福祉事務所のほうで生活保護のデータも少し追い駆けてもらうといいかなと思うのです。それよりさらに問題なのは、相談時のデータがないのです。申請した場合はある。しかし、申請までいくと、よほどではない限り却下はほとんどないです。だから、申請開始時のデータはあるのですけれども、その前に生活相談に来て、もうちょっと頑張ってねみたいな段階があると思うのですが、どのぐらいの所得水準や資産水準の人がそこではねられているのかを知る必要がある。昔でいうと要保護といいますか、被保護になる前の、相談に来た場合に、資産所得条件なのか、労働能力の活用の問題なのか、扶養家族の問題なのか、どういう時点で、もうちょっとになるのかというのは、データ的には全然わからないのです。
 この間、ある福祉事務所に聞いたら、完全ではないけれども、大まかな収入資産については聞いていると。ただ、全部持ってくる人と持ってこない人がいるので完全ではないと言っていましたけれども、そういうものが記録されているのかもよくわからないです。
 生活保護というのは、保護を開始して廃止までのデータしかないので、その周辺がないと生活保護の機能とか位置がわからないのです。大きな働きをしているはずだと思うのですけれども、そこがよくわからない。その辺を一気にとは言いませんけれども、ちょっとモデル的でもいいからどこかでやっていただくといいかなと。
■駒村部会長 では、岡部先生、お願いします。
■岡部委員 その3番目の話ですけれども、生活保護を受給されている稼働年齢層の稼働できる状態の人については、就労支援を行い相当数の方々が就労しています。それから、増収を図るということと生活保護廃止に至るかどうかというのは、要するに雇用先とのマッチングの問題と、本人がそれに対してどれぐらい増収を図れるような状態にあるのかということに関わっています。先ほどのデータ的に収入認定ということでは、稼働収入がどれぐらい収入認定されているかどうかということとは別に、そのようなデータは、福祉事務所の生活保護のところでは稼働年齢層の人を一定抽出しても結構なのですけれども、ピックアップして、どのようにいっているのかをみることが可能です。ただし、廃止以降になると、それ以上は制度的にフォローアップできませんので、そこはとれません。そのため別に調査の依頼をするしかないでしょう。そういう意味での限界はあるけれども、稼働年齢層の人については働ける状態の人は相当数働いているということで、インセンティブが非常に働いているという結果が多分出るのではないかと考えます。
■駒村部会長 栃本委員。
■栃本委員 先ほどの資料で、生活保護法の見直しと生活困窮者自立支援法の見直しというのが大きな形で進むというのがありましたけれども、生活困窮者自立支援法というのが今後ずっと我が国の社会保障制度の中に位置づけられることになると、先ほどのデータが追えるか追えないかということで言うと、言い方とかそういうのは難しいかもしれないけれども、生活保護番号などと言うとあれだけれども、生活困窮者の対象者というか、相談されたり、そういう方の番号というか。番号と言うと、多分誤解されてとられるかもしれないけれども、社会保障番号、そのようなものというのは必要かもしれない。またそれと別の話として、研究者レベルでも、我々は研究者なのだから、地道な骨の折れるそのような研究調査をしなければいけないのではないかと思いました。
 もう一つは、これは基準部会なので、これまた余計なことであるのだけれども、そのことを議論される場所が余りないと思うので言うのですが、先ほどの岩田先生から、相談の中身が実際に見られないとか、データが残っていないというのがありましたけれども、生保業務とか生保の相談関係の援助や支援実績、ケースの面談内容の電子記録化、ドキュメントの整理などICTというか、要するにコンピュータによるデータの電子的な管理というか、それは非常に有用性が高いのですが、医療ICTなどにくらべて、福祉や介護の方は記録ということについて遅れている。エビデンスベースの援助にならない、紙情報でとどまっているということになると、これはなかなかどうかなというのがある。やはりそういう部分も、これは私たちの部会ではないのだけれども、検討していってもらいたい。生保業務や運用という意味でより適切なシステムを構築しないと。
 あと、介護保険ではシームレスな支援と言うでしょう。やはり生活困窮者の自立支援法をつくったのもそうだと思うのだけれども、シームレスな支援というのは、就労であるとか、生活困窮者であるとか、そういうシームレスな施策を展開するためにはデータは欠かせない。それが遮断されてしまったら、結局シームレスではなくて谷間に落ちてしまうことになるから、今後ぜひそういうことも行政の中で考えていただきたいと思いました。
 以上です。
■駒村部会長 社会保障は、今、いろいろな改革が進んでいますし、財政が厳しい中で、適正化が進んでいくと、最後、生活保護が引き受けることになると、有効な政策をいろいろ考えなければいけなくなる。今まで議論が出たように、今までのデータや評価方法でいいのかとなってくると、栃本先生がおっしゃるように、生活保護行政の現代化というのですか、近代化というのですか、情報化というのをより意識していただかないと、大事なことにもかかわらず、政策効果が見にくいという問題が起きているので、そういう視点から、そういう意識で、これは多分、生活保護基準部会だけの話ではないわけですけれども、考えていただきたいということだと思います。
 きょうは最初ということで、再開後のテーマと現状に関しての資料をフリーディスカッションという形になりましたけれども、次回以降について事務局から御連絡をお願いしたいと思います。
■清水課長補佐 先ほどスケジュールのときで言い漏らしましたけれども、今年度についてはおおむね1カ月半に1回ぐらいのペースで実施させていただければと思っております。また、御指摘いただいた事項を含めて資料等を準備させていただきます。
 次回の日程については現在調整中でございます。また追って御連絡をさせていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 先ほど各委員から6項目についてどういう順番でと。栃本さんから、もう少し具体的な日程感があったほうがいいのではないかという意見もございましたので、これはまた相談したいと思います。
 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。
 御多忙中ありがとうございました。

(了)

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