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2016年4月21日 「第3回 労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」議事録

○日時

平成28年4月21日(木)15:00 ~ 17:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館19階 共用第8会議室


○議題

(1)労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目について
(2)その他

○議事

○小林中央じん肺診査医 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 定刻になりましたので、ただいまより第3回「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 カメラ等の撮影はここまでとさせていただきます。

 まず、委員の交代がございましたので、御紹介させていただきます。

 櫻田前委員にかわりまして、情報産業労働組合連合会の宮原委員でございます。

○宮原委員 情報労連の宮原と申します。よろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 本日は、小林委員、道永委員が所用のため御欠席です。

 なお、事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。

 労働衛生管理官の瀧村でございます。

○瀧村労働衛生管理官 瀧村です。よろしくお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 産業保健支援室長補佐の石原でございます。

○石原室長補佐 石原です。よろしくお願いします。

○小林中央じん肺診査医 これ以降につきましては、座長より議事をお願いいたします。

○山口(直)座長 皆さん、こんにちは。座長の山口です。よろしくお願いいたします。

 本日も、委員の皆様の御協力をいただいて議事を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、資料について事務局で確認をお願いしたいと思います。

○小林中央じん肺診査医 それでは、配付資料の確認をいたします。

 座席表、議事次第、資料1、資料2、参考資料1、参考資料2、参考資料3でございます。不足する資料がございましたら、お知らせください。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。

 今日の議事は、労働安全衛生法に基づく定期健康診断の検査項目としまして、本日は貧血検査、心電図検査、腎機能検査の3項目について検討を進めてまいりたいと思います。

 まず、この3項目の医学的知見の評価などにつきまして、並行して進められています「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」の検討状況について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○瀧村労働衛生管理官 それでは、説明させていただきます。参考資料1をごらんください。第4回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会資料に沿って説明いたします。

 ページが飛びますけれども、7ページの横長の表をごらんください。こちらは、厚労科研の研究班で作成された表でございまして、尿腎機能・血液一般・12誘導心電図・眼底検査について、検査と事後措置の観点から分析されたものです。

 少し影がついている箇所が課題があるとされているものでございまして、縦にごらんいただいて、一番左の「目的」のところで、尿腎検査が腎機能異常、血液一般が貧血の重症化の進展の早期評価を検査目的としているというところが課題とされております。こちらにつきましては、この表の一番下の欄にございますけれども、特定健康診査で実施される健診項目の検査の目的には 1、特定検査の最終エンドポイントである虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子の評価、2として生活習慣病の重症化の進展の早期の評価があるとされておりますので、そういった観点からの課題があるという意味でございます。

 その隣の「対象集団」につきましては、尿腎機能・心電図・眼底検査におきまして、40歳から74歳で詳細な健診として実施した場合に対象者の選定が課題とされております。

 1つ飛びまして、「精度/有効性」につきましては、尿蛋白は濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価する可能性があることが課題。血清クレアチニンは、eGFRは実測値と比べてばらつきが大きく、計算式に年齢が加味されていることから、対象集団によっては過大評価をする可能性があることが課題とされております。

 その隣の「事後措置」につきましては、全ての項目で保健指導及び受診勧奨判定値が定められておらず、保健指導方法が明確でないことが課題とされております。

 1枚めくっていただきまして、次のページからが各検査項目の論点になっております。

 9ページ目が尿腎検査についての論点となっておりまして、尿腎機能の測定の面では、糖尿病などを発症する可能性の高いハイリスク者を抽出しているか。

 1つ飛びまして、尿腎機能検査は「基本的な項目」とすべきか、「詳細な健診の項目」とすべきかということが論点となっております。

 また、尿蛋白の測定につきましては、過大あるいは過小評価の可能性があること。

 血清クレアチニンの測定につきましては、対象集団によっては過大評価する可能性があるとされております。

 1枚飛びまして、11ページが血液一般の項目に関する論点です。こちらは、必ずしも特定健診で実際される健診項目の検査目的である最終エンドポイントの評価を目的とするものではないため、健診項目として見直してはどうかとされております。

 次のページが12誘導心電図の論点になります。こちらは、検査で評価可能な疾患を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定してはどうかとされております。

 次の眼底検査は、本日の議題ではございませんので割愛させていただきます。

 その次のページからが、厚労科研・永井班の概要になります。

 1枚めくっていただきまして、16ページ目に基本項目の考え方が示されておりまして、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙は脳・心血管疾患の発症予測に用いられる基本指標とされております。

 次の17ページですけれども、腎機能検査に関する文献レビューの結果でございます。蛋白尿は腎機能の低下を予測し、CKDは脳・心血管疾患の発症・死亡を予測するという文献が多く、日本人一般集団におきまして、腎機能異常が将来のリスクを予測するのは明らかとされております。

 少し飛びまして、21ページをご覧ください。こちらの表では、メタボリックシンドロームの有無によってCKDの有病率に差はないということが示されております。

 次の22ページの表では、随伴する危険因子数が多いとCKD有病率も増加するが、危険因子を伴わないCKDも約5~10%程度あるとされておりまして、23ページの表では、CKDの有無で血圧高値と耐糖能異常の有病率に差はないとされております。

 次の24ページは、eGFRCKDの判定を行ったとき、蛋白尿だけのときと比べて、有所見率が地域集団におきまして10%増加するとされております。

 次の25ページのグラフは、日本人住民コホート集団におけるCKDと他の危険因子の個数別に見た脳・心血管疾患の発症・死亡リスク:男性の表になりますけれども、ほかの危険因子の合併個数が多いCKDは脳・心血管疾患の高リスクでございますが、合併していない場合のハザード比は有意なリスク上昇を示さない集団もあるとされております。

 次の26ページは女性のデータです。こちらは男性と同様ですけれども、ほかの危険因子を伴わないCKDのハザード比は男性より低い傾向を示したとされております。

 1枚飛びまして、28ページも文献レビューの結果ですけれども、貧血検査については、脳・心血管疾患との関連を示唆するエビデンスがない。心電図はさまざまな所見が脳・心血管疾患を予測していた。眼底異常や上下肢血圧比も脳・心血管疾患を予測していたが、ABIについてのエビデンスは少ないとされております。

 少し飛びますけれども、35ページ以降がCKD関連の検査項目測定の意義に関する、福島県立医大の渡辺特任教授の発表資料です。

36ページは、これまでの研究課題一覧。37ページはデータ収集状況を示しております。38ページに移りますと、生活習慣病関連因子との相関を検証したエビデンスの一覧、39ページは諸因子の腎・心血管・死亡アウトカムの予知能力の検証について示されております。

 少し飛びまして、42ページは健診と医療それぞれで実施すべき検査について意見が述べられております。特定健診では、CKDのスクリーニングと重症度判定による保健指導/受診勧奨の適応判定に尿蛋白と血清クレアチニン検査に基づくeGFRの両者が必須である。

 2番目の○として、標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】では、尿蛋白(-)でかつeGFR5060ml/min/1.73m2 の者は生活習慣の改善について情報提供を行うこととされており、保健指導対象者の選定を行うためには血清クレアチニン検査が必要であるとされております。

 続きまして、次の43ページは特定健診でCKDスクリーニングにより保健指導/受診勧奨の対象にするかどうかの判定において、尿蛋白と血清クレアチニンに基づく糸球体ろ過量が必要とする説明資料になります。こちらは真っ黒になっているところもあるのですけれども、特定健診における腎機能と蛋白尿程度別のCKDの頻度になります。A1G1G2のクロスされている部分以外のところがCKDの合計になりまして、こちらが18.33%。そしてA1、蛋白尿陰性・擬陽性が12.78%だったということです。

 次の44ページは、CKDのステージ別・年齢別の蛋白尿陽性率を示したものでして、尿蛋白検査のみではCKD70%以上を見逃す可能性、特に高齢者のCKDの発見には血清クレアチニンの測定が重要とされております。

45ページは、保健指導/受診勧奨判定値(案)です。

46ページは、日本腎臓学会のCKD診療ガイドからの引用で、CKD対策でのかかりつけ医と腎専門医の医療連携で、年齢が上がると、紹介する対象が拡大するということが示されております。

 次の47ページでは、CKD対策の医療連携における腎専門医の受診頻度を示しておりまして、重症者ほど受診間隔が短いことを示しております。

 次の48ページは、尿蛋白及び血清クレアチニン検査が対象とする疾患について示されておりまして、尿蛋白は糸球体疾患のマーカーであり、血清クレアチニンは腎機能のマーカーである、尿蛋白とScr に基づくeGFRは末期腎不全及び心血管イベントの発症予知因子である、糸球体疾患である各種腎炎、糖尿病性腎炎などは尿蛋白が早期マーカーであるが、糖尿病性腎症でも蛋白尿陰性でeGFRが低下する例があり、糖尿病腎症病期分類が2013年に改変されております。

 血管性/間質性腎疾患である腎硬化症、虚血性腎症、薬剤性腎障害、多発性嚢胞腎、急速進行性腎炎などは尿蛋白が陰性で腎機能が低下するのでeGFRが診断マーカーであるとされております。

49ページは、原疾患別のCKDの特徴になります。糖尿病性腎症はアルブミン尿が早期診断マーカーと考えられてきましたが、陰性でもGFR低下例がある。

 慢性糸球体腎炎では、早期診断に尿検査は有効。

 腎硬化症は、蛋白尿が陰性で、緩徐にGFRが低下する例が多いとされております。

50ページが尿蛋白及び血清クレアチニン検査が対象とする疾患では、糖尿病性腎症病期分類に、尿中蛋白値とeGFRが必要とされております。

51ページからは、各検査の精度に関する資料になります。

 まず、尿蛋白検査の精度ですが、尿蛋白は全てのキットが(1+)で、アルブミン30mg/dl相当となるように標準化されておりまして、健診においては尿蛋白(1+)以上は異常アルブミン尿と一致するため、CKDのスクリーニングは使用可能。末期腎不全と心血管イベントの発症の予知のエビデンスが多数あり、医療経済的な財政削減効果も示されている、尿蛋白(-)でも30%程度は異常アルブミン尿が存在し、感度における欠点があるとされております。

 少し飛びまして、56ページは血清クレアチニン検査とeGFR推算式の精度につきましてですが、Scr は測定キット誤差は臨床上問題ない、腎機能以外にも筋肉量に依存しているので、その絶対値は腎ろ過量と乖離する、腎機能評価には、Scr 値、年齢、性別を変数としたeGFR推算式が複数考案されている、日本の推算式は、より精度が高いとしております。

 また、日本人用のeGFR及びその低下速度は、末期腎不全及び心血管イベントの予知マーカーとなるとされております。

 また少し飛びまして、61ページからは検査の対象者に関する資料になります。

CKD予備群以外に尿腎機能検査を行うべき対象集団として、糖尿病、高血圧、肥満を除外した特定健康診査受診者の約11%がCKDと考えられます。

 日本透析医学会の統計では、新規透析導入の原疾患の中で、糖尿病性腎症と腎硬化症をあわせて57%前後あり、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症のスクリーニングのみでは透析導入に進展する者のうち多くを見逃す可能性がある、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどに比べて、腎疾患の既往の問診がCKD予備群を補足することに関しては有効であるとされております。

64ページからは検査の頻度の資料になります。

 尿腎機能検査を実施すべき頻度として、3点目にありますように肥満、血糖高値、血圧高値、脂質異常など疾患予備群や生活習慣の乱れを持つ集団は、CKD及び心血管イベント発症危険群であり、毎年の検査が望ましいとしております。

69ページには、特定保健指導以外のCKDに効果的な介入方法が示されておりまして、CKDの病因に対する薬物治療として、免疫学的腎疾患に対する免疫抑制療法の有用性のエビデンスが多数あり、これらの疾患で経年的に透析導入遅延効果が示されているとされております。

 第4回の検討会の説明は以上ですが、続きまして、第5回の資料について御説明をします。4ページ目をごらんください。

 こちらが第5回検討会で配付されました第4回の検討会の概要になります。これまで説明いたしました発表内容等を踏まえまして、尿腎検査につきましては「基本的な項目」から「詳細な健診の項目」へと位置づけを整理し、検査の対象者を明確とした上で実施することとなっております。

 その理由は、枠の下の2つ目の○にございまして、主として医療機関への受診勧奨の対象者を選定するために実施する検査であるためとされております。

 ◎の3点目の尿腎機能の検査項目、実施すべき対象者、検査間隔等は改めて検討されることとなりました。

 次の5ページの血液一般につきましては、健診項目から廃止することも可能とするとしておりまして、その理由は、内臓脂肪の蓄積に起因した生活習慣病ではなく、特定健診において実施すべき検査項目とはいえないためとのことです。

 3番の12誘導心電図につきましては、対象者にできるだけ早期に検査を実施するべきであり、異常を指摘された場合には、できるだけ早期の精密検査や医療的な介入が望ましいことから、12誘導心電図は主として医療機関で実施する、特定健診では対象者、血圧高値、不整脈が疑われる者に受診勧奨を行うとしております。

 ただし、定期健康診断のように特定健診と同時に心電図を実施する等、速やかな検査の実施が可能な場合は、引き続き詳細な健診として実施することは可能とのことです。

 4番の眼底検査は、本日の議題ではありませんので割愛させていただきますが、取り扱いとしては12誘導心電図と同様です。

 最後に、その他の項目ですけれども、健康診査と医療が担うべき役割は区別されるべきである、健診の受診を中断している者、受診中だが適切な管理がなされていない患者へ注意喚起する意味で特定健診の検査項目を検討すべきではないとの意見がまとめられたということです。

 以上でございます。

○山口(直)座長 どうもありがとうございました。

 特定健康診査・特定保健指導はあくまでも、先ほど横長の表の下の注意書きにありましたように、虚血性心疾患とか脳血管疾患というふうなアウトカムの予防ということですので、恐らく労働安全衛生法に基づく定期健康診断とちょっと目指すところが違うということも注意しつつ、では我々の議論はどう進めたらいいかということについて、事務局のほうで資料1でまとめてくださっています。それと、前回、情報について要望を委員の皆さんからいただいたものについても、ここでまとめて御報告がいただけるということであります。どうぞよろしくお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 それでは、私からは資料1につきまして御説明いたします。

 まず最初に、前回の検討会におきまして御要望のありました統計など、幾つか御説明させていただきます。

 まず、1枚めくっていただいた裏面、2ページをご覧いただけますでしょうか。ご要望のありました事業者から報告されます休業4日以上の死傷者数全体と脳・心臓疾患の労災支給決定件数との年齢別の比較でございます。これを見ていただきますと、40歳代、50歳代につきましては、脳・心臓疾患の労災支給決定件数の割合のほうが高く、逆に30歳代、20歳代につきましては、休業4日以上の死傷者数の全体の割合が高いといった状況でございます。

 次に、3ページ目が運転手関係の有所見率でございます。職種別のものがなく、あくまでもこれは業種別の一般定期健康診断の有所見率になります。これは全体と比べまして、道路、旅客、鉄道などの交通運輸業、またトラック、貨物運送などの陸上貨物運送業の有所見率が総じて高いといった状況にございます。

 次に、4ページ目は職種別の脳・心臓疾患の労災支給決定件数と当該職種の労働者全体の平均年齢でございます。脳・心臓疾患の労災支給決定件数が多い輸送・機械運転従事者の職種でございますが、全職種の労働者全体の平均年齢の44歳よりも高い49歳といった状況でございます。

 次に、血液検査などの省略基準、検査の省略についてでございますが、5ページ目をごらんいただけますでしょうか。労働安全衛生規則ですが、規則44条の2項に基づきまして、血液検査などは「厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することができる」としており、大臣が定める基準といたしましては、下側のほうですが、告示を定め、例えば一番下の欄の貧血等の血液検査関係については省略することができる者として、35歳を除く40歳未満の者などとしております。

 では、これを具体的にどうするかということについて6ページ目をご覧いただけますでしょうか。そのやり方の詳細といたしまして、これは厚生労働省の労働衛生課編の「一般健康診断ハンドブック」の中におきまして、上側で二重線を引いているところでございますが、「この省略に際しては、個々の労働者の健康状況の経時的な変化、自・他覚症状等を勘案しながら判断することが大切である」としております。

 次に、健康診断の費用についてですが、10ページ目をご覧いただけますでしょうか。あくまでもこれは目安ですが、関係する項目の診療報酬点数を計算しております。1点10円として換算いたしますが、では具体的にどのくらいというのが11ページ目になります。

 まず必須項目のみを実施した場合の目安は、まず雇い入れ時健診でございますが、喀痰検査以外の項目を行いますが、点数は、9911,048点。また、身長以外の項目を行います35歳と40歳以上の方につきましては、9911,238点。20歳、25歳、30歳で問診、X線検査、尿検査、喀痰検査を行う場合で453651点。20歳、25歳、30歳、35歳を除きます40歳未満につきましては、問診と尿検査を行う場合ですが、308点となっております。仮に血液検査を行わない場合で、新たに血清クレアチニンの検査を行う場合でございますが、これにつきましては、まず採血料が25点、判断料が144点、血清クレアチニンの点数が11点、つまり合計180点、2,000円弱が目安になるかと思います。

 次が、本日の検討事項であります尿蛋白、心電図検査、貧血検査などの概要を簡単に御説明させていただきたいと思います。

 1ページ目に戻っていただけますでしょうか。まず、尿蛋白検査ですが、雇い入れ時の一般健康診断、定期健康診断ともにこの項目につきましては、年齢に関わりなく必須の項目になります。有所見率は平成2年の1.8%から平成26年の4.2%と増加。この検査につきましては、腎・尿路疾患のスクリーニングであるとしております。

 次は心電図検査ですが、標準的な検査法は、安静時標準12誘導心電図を記録するものとしております。有所見率も、平成2年の6.2%から平成26年の9.7%へと増加。これにつきましては、まず雇い入れ時健診におきましては必須項目、定期健康診断におきましては、40歳未満で35歳を除く者につきましては、医師が必要でないと認めるときは省略可となっております。あと、平成元年の通達におきましては、不整脈、虚血性心疾患、高血圧を伴う心臓の異常等を把握するために行うものであるとしております。

 次は、貧血検査ですが、この検査につきましては、血色素量及び赤血球数の検査で、雇い入れ時健診におきましては必須項目、定期健康診断におきましては、40歳未満の者(35歳を除く)につきましては、医師が必要でないと認めるときは省略可。有所見率は、平成2年の4.2%から平成26年の7.4%と増加。あと平成元年の通達によりますと、高齢期に増加する貧血、食行動の偏りによる貧血を把握するために行うものとしております。

 簡単ではございますが、以上が資料1でございます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 次が資料2で、事務局でまとめていただいた貧血と心電図と尿蛋白検査等に関する論点案ということで、こちらの説明もお願いできますでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 では、資料2をご覧いただけますでしょうか。事務局が作成いたしました論点案でございます。

 まず「1 貧血検査」ですが、先ほども御説明いたしましたが、血色素量及び赤血球数の検査、貧血を把握するために行うもの。

 また「第4回特定健康診査・特定保健指導のあり方に関する検討会」におきましては、貧血の既往歴を有する方または視診等で貧血が疑われる方に対しまして詳細な健診項目として行われます血色素量等、「血液一般」という名前で項目が設定されておりますが、これにつきましては、「血液一般は内臓脂肪の蓄積に起因した生活習慣病ではなく、特定健康診査において実施すべき項目とはいえないことから、検査項目から廃止することも可能とする」とされております。

 また、貧血検査につきまして、貧血を把握し、就業上の措置などを行うことを目的としており、前回の大久保教授の調査によりますと、調査対象の産業医等においては、高所作業、自動車運転、暑熱環境下での重筋作業などの就業制限・適正配置に用いていたと回答された調査結果があるとされております。

 これらから、定期健康診断におきましては、貧血検査は就業上の措置において活用していることなどから、引き続き、健診項目を維持してはどうかというのが、まず1つ目の論点案でございます。

 続けてよろしいでしょうか。

○山口(直)座長 はい、どうぞ。

○塚本産業保健支援室長 次に、「2 心電図検査」についてですが、この検査は、不整脈、虚血性心疾患、高血圧に伴う心臓の異常等を把握するために行うもので、標準的な検査法は、安静時の標準12誘導心電図を記録するもの。

 また、「第4回特定健康診査・特定保健指導のあり方に関する検討会」におきましては、前年の健康診断結果において、血糖高値、脂質異常、血圧高値、肥満の全ての項目について一定の基準に該当された方のうち、医師が必要と認める方について詳細な健診項目として行われておりますこの心電図検査につきましては、「次年度に実施するのではなく、速やかに検査の実施が可能な場合には、引き続き詳細な健診として実施することを妨げない」などとされております。

 また、第2回目にプレゼンをいただきました大久保教授の研究によりますと、調査対象の産業医等におきましては、心電図検査は、意識消失を伴う不整脈があるため、自動車運転可否等の就業上の措置の検討のために必要な検査であったと回答した調査結果があるとされております。

 これらから、定期健康診断におきましては、心電図検査を引き続き健診項目として維持してはどうかというのが2つ目の論点案でございます。

 次は、「3 腎機能検査」です。

 まず、アといたしまして、腎機能全般について書いてございます。慢性腎臓病(CKD)につきましては、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」におきましては、脳・心臓疾患の危険因子の一つである。

 また、森教授に前回プレゼンしていただきました「就業措置の類型化例」におきましては、腎不全を持つ労働者は、就業が疾病経過に悪影響を与えるおそれがあることから就業措置を行う場合があるとされております。

 また、「第4回特定健康診査・特定保健指導のあり方に関する検討会」におきましては「尿腎機能検査は、主として医療機関への受診勧奨の対象者を選定するために実施する検査であるため、基本的な項目から詳細な健診項目へと位置づけを整理し、検査対象者を明確にした上で実施することとする」などとされております。

 次に「イ 尿蛋白検査」でございますが、この尿蛋白検査は、現在、定期健康診断等の診断項目で、糸球体疾患のマーカーであるとしております。

 文献レビューでは、精度は濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価する可能性があることが課題、有効性は確立しているとしております。

 次に「ウ 血清クレアチニン検査」ですが、この血清クレアチニン検査によりますeGFRにつきましては、腎機能(糸球体ろ過量)のマーカーであるとしております。

 文献レビューでもeGFRは実測値と比べてばらつきが大きく、計算式に年齢が加味されることから、対象集団によっては過大評価する可能性があることが課題、有効性は確立しているとされております。

 また、前回の大久保教授の研究では、調査対象の産業医等におきましては、血清クレアチニン検査を暑熱環境下での就業制限を行う場合があったと回答された調査結果があるとされております。

 エとしまして、腎機能検査等の論点案でございますが、前回、第2回の検討会の論点案では、血糖の検査が必要であります40歳以上及び35歳につきましては、尿糖を廃止する方向で整理するが、血糖の検査が必須でない35歳を除く40歳未満への対応につきましては、別途、尿検査全体の取り扱い、代替措置を含めて判断することが必要であるということを踏まえて検討するとしていただいたところです。

 これらから、定期健康診断等におきます腎機能検査の取り扱いとともに尿検査(尿糖、尿蛋白)の取り扱いにつきましても、この場であわせて御検討をお願いしたいと考えております。

 まず、(ア)でございますが、血液の検査が必須でない35歳を除きます40歳未満ですが、現行は必須でない血糖等の血液検査をどうするのか。(イ)の35歳、40歳以上におきます検討とあわせて御検討をお願いしたいと考えております。

 また、血糖検査を行わない場合におきましては、必須項目として尿糖検査を行うとともに、腎機能の把握につきましては、尿蛋白検査を行ってはどうか。

 次は、(イ)の血液の検査が現行必須である40歳以上及び35歳についてでございますが、4つの案を示させていただいております。

 まず、案1といたしましては、尿蛋白検査を引き続き必須項目として維持する案。

 案2といたしましては、尿蛋白検査を必須項目として維持し、血清クレアチニン検査を、医師が必要と認めた場合には実施することが望ましい項目として位置づける案。この場合でございますが、血清クレアチニンを35歳を除く40歳未満にも同様に位置づけることも検討が必要だと考えております。

 また、案2でございますが、この医師が必要と認める場合の例といたしましては、例えば慢性腎臓病が脳・心臓疾患の危険因子の一つであるということから、例えば医師が長時間労働を行っていらっしゃる労働者に対して慢性腎臓病の有無を把握することが望ましいと判断されるような場合などが考えられるのではないかと考えております。

 また、血清クレアチニン検査の位置づけといたしましては、従前、HbA1cと同様に通達と位置づけることなどが考えられるかと思います。

 次は、案3でございますが、これは必須項目として、尿蛋白検査を維持するとともに血清クレアチニンを追加する案でございます。この案の場合ですが、特に費用負担についても検討が必要かと思います。また、この場合、35歳を除く40歳未満の方におきましても、血清クレアチニンを医師が必要でないと認めるときは省略可能な検査として追加することにつきましても検討が必要ではないかと考えております。

 最後に、案4でございますが、尿蛋白検査を廃止、または医師が必要でないと認めるときは省略可とし、必須項目といたしましては、血清クレアチニン検査を追加するという案でございます。この案でございますが、この場合、35歳を除く40歳未満におきましても、血清クレアチニン検査を医師が必要でないと認めるときは省略可能な検査として追加することも検討が必要ではないかと考えております。本案の場合ですが、特に尿蛋白検査を中高年において廃止または省略可能とする理由などにつきましても検討が必要ではないかと考えております。

 これらの4案などにつきまして、御検討をお願いしたいと考えております。

 また、健康診断項目の検討におきましては、健康診断全体での効果、負担などの観点からの検討も必要かと考えております。まず最初に、個々の健診項目の検討におきまして、例えば変更とか維持などの方針、方向性を御検討いただいた後、他の健康診断項目の方針、また特定健康診査の方針も明らかになった時点で健康診断全体での効果、負担などの観点からも御検討いただき、最終的な結論をいただければと考えております。

 なお、前回の検討会におきまして、さらなる検討を行うこととされました血中脂質検査につきましては、特定健康診査での取り扱いに関します考え方などをさらに把握した後、次回以降、具体的に御検討をお願いしたいと考えております。

 以上でございます。

○山口(直)座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議論に入りたいと思いますが、まず、事務局のほうで用意してくださった資料1について、委員の皆様から御質問とか御意見とか何かありましたら、まずお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 福田先生、どうぞ。

○福田委員 この資料1でございますが、1ページ目から始まって、前の委員会でも申し上げたのですが、「医師が必要でないと認めるときは省略可とされている」という項目がございますでしょう。そうしますと、多くの事業主様とか、健保組合様は、これは医師が別に関与しなくても自動的に省略してしまうことが多ございますが、その辺はどのように考えていらっしゃいますか。

○塚本産業保健支援室長 やはりここは省令等で医師が必要でないと認めるときは省略することができるとなっておりますので、医師の関与、医師が御判断いただいて省略ということをやっていただくことが必要かと思います。また、労働衛生課編のハンドブックでは、誰がやるというところについては、自・他覚症状等を勘案しながら判断することが大切であるとしておりますので、自・他覚症状の検査を行われる方が行うことが大切としています。

○福田委員 おっしゃられているのは、この6ページ目ですね。

○塚本産業保健支援室長 そうですね。6ページ目の記載のところでございます。

○福田委員 「自・他覚症状等を勘案しながら判断することが大切である」と。それは、バイ・ドクターと考えてよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 そうです。医師が自・他覚症状の検査をおやりになるということから、そこの場で、例えばちょっと顔色が悪いとか、そういう観点から省略はやめておきましょうというような判断が行われることが大切だという趣旨だと考えております。

○福田委員 しつこくなりますが、これは厚労省のほうから主体となる事業主様とかに対して、これは医師の判断で省略ができるのですよということを通達か何かできちんとなされていらっしゃるのでしょうか。というのは、先ほど申したように、自動的に省略されてしまうケースが多いものですから。

○塚本産業保健支援室長 これは通達ではなく省令で書いてございますので、省令の説明の中で、徹底をお願いする対応になっていると思います。ただ、どういう医師、どういう場面で具体的に判断をしていくかというところが、先ほどの労働衛生課編のマニュアル記載になります。あくまでも医師が行うというところは省令で書いてございますので、他の方がおやりになると問題が生ずるのではないかと考えております。

○福田委員 ということは、健診医側としては、説明する場合に、この項目は必ず医師の判断で省略ができるものであって、基本的にはやらなくてはいけないという説明でもよろしいのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 そこはいろいろなファクターによりあくまでも医師が御判断して省略することができるということで、まず医師のほうにどうしましょうかというところをお聞きいただくことが必要になってくるかと思います。ただ、実務上で、大体こうかなということをある程度セットしながら、最終判断を医師の方がやるというやり方はお聞きしたことはございます。

○山口(直)座長 高松さん、どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 2つございます。1つは今、福田先生がおっしゃったところと全く同じところなのです。これはいわゆる専門家のお立場での御質問だったわけですが、我々のような素人感覚ですと、この後も「医師が必要でないと認める場合は省略できる」という文言が数多く入っているのは非常に不安な表現でして、通達あるいは通知的なものとしては、もっと積極的な表現ができないものかと思います。今、先生がおっしゃっていた医師が判断する前の段階で事業者が判断するケースがあるというのを聞いて、ちょっとびっくりしたところなのですが、そういうことも含めて、厚労省でどのようにこの件について捉えていらっしゃるのか質問したいのが1つ目です。

 2つ目でございますが、今日の案件に特化したことではないので、ここで質問するのが正しいのかどうかわかりませんけれども、毎回出てくる資料として、9ページに項目表がございます。35歳、これは平成元年のときにこうなったということでございましたけれども、それから約30年近く経過していて、若年者の間でも生活習慣病が広がってきているのではないかという素人想像があるわけでございます。そういう意味では、その当時35歳及び40歳以上を対象としてもよかったところが、今はその範囲が変わっていないのでしょうか。エビデンスとして何かないものかと思います。あるいは、もし、エビデンスがないのであれば、今後どんなふうに実施していかれるおつもりなのか。この2つを御質問させてください。

○山口(直)座長 では、最初について室長からお願いします。

○塚本産業保健支援室長 医師の判断のところは一部繰り返しになりますが、例えば、事業主の方、医師以外の方が省略可否をされたとしても、最終的にそれだけではだめでして、便宜的な案としてつくられても、最終的には医師の方がそのとおりでいいとか、いや違うというような判断、あくまでも最終的に、省略する、しないというのは医師の方にお願いしないと、この省令どおりの健康診断になりません。ただ、やり方は全く白紙のままでやっていくのではなくて、例えばある程度可能性としての案を持ちながら、健診を実施するに際しては、例えば実施時間とか、検査数とかの目安をある程度捉まえて実施しないといけないことから、大体目算は立てられてやられるのですが、あくまでも最終的には医師の方が、判断して、やっていただくということが必要になってくるかと思います。

 あと、今、御指摘がありましたが、もっとこの辺のやり方について丁寧に通達等で示したほうがということについては、これは検討させていただければと思います。ここの部分は前回も大きなポイントのところだというお話もございましたので、ここは検討会の議論を踏まえて、私どもはどういうものを打ち出し、また、お願いすることができるかについては考えていきたいと考えております。

○山口(直)座長 2点目の年齢については、いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 これはまた先生方にお聞きしないといけないのですが、当時、40歳以上の方の判断のために若干若い方のデータがあったほうがいいのではないか。また、5年刻みというのは、健康診断の個票とかの保存義務が5年であるということから、35歳で健診を実施すれば5年間保存されているので、40歳のデータと比べることによって、この方はどんどん悪化しているとか、この方は現状が維持され、または、この方はTHP等をやっているので非常にいいというような判断ができるという観点から、35歳を必須にし、その後40歳というふうになったとお聞きしています。ただ、その有効性等のエビデンス、例えば3年ごとがいいのかとか、10年スパンでとったほうがいいとか、その辺の部分については、エビデンスがすぐに見つからなかったものですから、この場では御提示等もできませんでしたが、この辺について、具体的なエビデンスなどがあれば、ぜひとも、この検討会で御紹介いただければと考えております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。年齢につきましては、各項目の検討が終わった後の全体的な検討の中で、今までどおりの35歳の節目と40歳以上40歳未満という区切りで今後もよろしいのかどうか、全体の検討をしてはどうかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 一度全項目を終わって、案が出た中で、全体を俯瞰したなかで、再度健康診断の構成、システムをまた御検討いただければと考えております。

○山口(直)座長 あと、岡田委員でしたか。お願いいたします。

○岡田委員 医師が必要でないと認める貧血の検査なのですけれども、一般の中小零細企業さんの健診というのは流れ作業のようになっておりまして、採血があって、いろいろ問診があって、最後に医師の診察が入ってきて、既に採血が終わっています。そうすると、一般献血に関しては、コアグレーションを予防するために別の容器にとらないといけないので、また採血しないといけないという問題があって、恐らく従業員の方はほとんど拒否される可能性が高いですね。その後で、顔色が悪いですから、もう一回貧血の検査をしましょうと言っても、もう結構ですという場合が多いので、ひょっとしたら、流れの中で、ドクターの診察を最初に持っていくなど、健診のあり方そのものを変えていかないと、医師が省略していいかどうかというところを検討していかないといけないのではないかなと考えております。

 それから、35歳のときに異常があった場合に、翌年に医師がきちっと指示ができているかどうか。つまり翌年、36歳、37歳ときちっと指示ができていて、翌年は省略しないで検査がちゃんとできるようなシステムが構築されているかというと、これはほとんどでき上がっていないという現状があると思います。紹介状を書いて、既に治療を受けている方はいいのですけれども、要経過観察とか要注意という判断をされた場合には、ここで見ておかないと見逃すおそれがあるということも踏まえて、これはきちっと検討していただけたらいいなと考えております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 今の点については、事務局から何かございますか。

○塚本産業保健支援室長 この点についても、後ほど検討をお願いできたらと思います。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 宮本でございます。

 年齢については後でということだったので、それ以外の点として、貧血検査なのですが、平成元年の改正時の資料に「高齢期に増加する貧血や食行動の偏りのために」と書かれているのですが、その時代から今までの大きな変化というのは、やはり女性労働者の増加だと思います。女子則の改正で、女性労働者が交代勤務の製造現場で就業する機会も増えています。そうすると貧血が若年女子にも相当あるのです。また、食行動の偏りも若年女性に相当あります。これは雇い入れ時健診だけでは不足すると思いますので、年齢だけではなくて、性の差というのも踏まえて議論していただく必要があるかなと思いましたので、よろしくお願いします。

○山口(直)座長 ありがとうございます。資料2については、後でまた項目別に詳細にやりたいと思いますので、そのときにまた。

 ほかにはいかがでしょうか。

 土肥先生、どうぞ。

○土肥委員 土肥でございます。

 先ほどから医師による省略について議論がなされているのですが、何もなしで医師に省略するか、実施するかを一任するというのは非常に危険な状態かなと思います。例えば、雇い入れ時にした後、次に必須になるまで35歳まであるのですけれども、その間に、医師がどのような基準に基づいて、一体何を判断して必要かどうかを判断してくのかというのは、それは判断する医師によって大きなばらつきを生む可能性が高いと思います。

 例えば、高脂血症とか血液検査の項目をはかるに当たって、何もなしで、診察だけで必要性を判断しろと言われて、これをどのように判断するのだろうかと私は思います。通常、将来のコレステロールとか血糖とかが高くなることを予測するためには、その項目が若干高いかどうかというのが最も信頼できる予測能を持ったものになりますので、そこら辺を含めて、これからの議論の中で、では、本当に医師による判断をきちっとしていくためには、どのような仕組みがあることが必要なのかということも議論していただかないと、単純に医師の判断に任せてきちっとしろということ自体だけを押しつけるのは、かなり危険な部分があるのではないかと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 では、今いただいた意見も踏まえながら、資料2を中心に、場合によっては資料1、あるいは参考資料1に立ち戻りつつ、検査項目ごとに詳細に御議論いただきたいと思います。

 まずは、1番目が貧血検査になっております。資料2では事務局の論点案としては現行どおりということが出されておりますが、この辺につきまして、委員の皆様の御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 どうぞ。

○岡田委員 岡田でございます。

 もともとこの貧血検査という名前が、ちょっと私はひっかかるのですけれども、昨今、肥満者ですとむしろ多血症が多くて、ヘモグロビン濃度が非常に高くなって、むしろこれは長時間労働者の心筋梗塞の誘発の原因になるということで、必ずしもこの血液一般で貧血だけ見ているのではなくて、ガイスベック症候群を初めとする中高年の赤ら顔で太りぎみの男性には極めて高いヘモグロビン濃度があるという古典的な考え方もあるのですけれども、これは貧血検査とすると、かなり誤解を招くのではないかなと。ほかは血糖検査とか、心電図検査というのがありますけれども、これは多血症の検査も踏まえていますので、この名称そのものも考えていただいたらどうかなと。むしろ内臓脂肪に蓄積したという場合には多血症が非常に多くて、肥満者に見られる場合は、ヘモグロビンが17とか、ひどい場合は20を超えているような方がいらっしゃって、これは非常に大きなリスクになっている。だから、一概に貧血だけに関心がいくのではなくて、むしろ多血症というところにも、私たちは関心を持たざるを得ないのかなと考えておりますので、名前を変えるというのは、これは非常に難しい問題でありますけれども、ぜひその辺も含めてお考えいただいたらいいのかなと考えております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 名称まで考えていませんでしたけれども、医学的には血液学的検査という。

○岡田委員 血液一般とか血液検査とか。

○山口(直)座長 何か白血球が含まれていないので、血液学的というと白血球が含まれてくるのでちょっと微妙かなと。何かいい案はございますのでしょうか。

 それは多分すぐには出てこないと思うので、事務局にちょっと検討していただくということでお願いしたいと思います。

 では、それ以外。

 森先生、お願いします。

○森委員 私も、先ほど宮本委員からありました問題提起には賛成です。現実にヘモグロビンが10を切っているような貧血で一番多いのは閉経前の女性の貧血で、仕事の状況によっては就業制限をかけて、早く鉄剤を飲みなさいという指導をすることが多いわけです。つまり、結局35歳、40歳以上以外のところにも、かなり貧血の有所見があることを考えると、先ほどの話と関連するのですけれども、医師による省略が、医師の判断なしに基本的に省略ということになっていれば、むしろ女性の貧血検査は全年齢でやってもいいぐらいだと思います。一方で、文章どおりの、医師が必要でないと認めたときには省略できるという話だったら、現行のままでいいと思います。女性の高度貧血が一定割合で出てくるのを実際に観察していますので、この部分はきちっとやっていくべきだと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 土肥先生、どうぞ。

○土肥委員 土肥でございます。

 貧血検査を考えるときに、赤血球数とヘモグロビンだけという形でいいのかというのはあると思います。なぜかと言いますと、ヘマトクリットをはかることによって暑熱環境における脱水がよりわかりやすくなるであるとか、例えばヘマトクリットをはかりますと、小球性低色素性のような、例えば女性に陥りやすい貧血のパターンが最初からわかってしまうとかという可能性がありますので、通常これらの項目は検査上は一緒に出てくるものであって、それをわざわざ省略して結果を返しているという複雑な手続を踏んでいるものですから、貧血検査を行うという前提に立つのであれば、そこら辺の中身についても一緒に検討したほうが合理的ではないかと考えます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○福田委員 これは森先生の御意見と宮本先生の御意見と同じなのですけれども、見ていますと、やはり女性でダイエット、そのおかげでかなりの貧血、ヘモグロビン7とか6が若い方で平気でいるのですね。今度は男性に転じて見た場合に、中高年で貧血を見る場合、大体、消化管出血があって、よく調べるとがんが出てくるということを経験しています。ですから、貧血検査という名称については別途協議ということなのですけれども、この検査は必須項目と私は考えます。

 もしできれば、先ほど森先生がおっしゃったように、女性の場合、かなりの若い方でも偏食、あるいは間違ったダイエットで貧血がとても多ございますから、少し御検討いただきたいと思います。

 以上です。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 今までの御意見では、若い人もきちっとやったほうがいいということと、ヘマトクリットも加えてはどうか、その2点について出されていますけれども、いかがでしょうか。

 先ほど料金のお話が出ましたけれども、ヘマトクリットというのは、やってもやらなくても料金は同じということなのですか。

○塚本産業保健支援室長 はい、同じです。

○山口(直)座長 先ほど土肥先生から、熱中症みたいなことでも意義があるという御意見もいただきました。

○福田委員 あと1つよろしいですか。

 出されているコストの一覧表は診療報酬の保険点数から出されていると思うのですけれども、実際は健診医のほうは、正直言って、そこは全然気にしていないです。あくまでも事業者様との話し合いで決まっていく問題で、ですから、今おっしゃったようにクレアチニンを入れると2,000円高くなるというのは、先ほど説明がありましたけれども、これはちょっと乱暴な表現で、そこまで高くする業者は、正直言っていないと思います。補足まで。

○塚本産業保健支援室長 これは私どももホームページをいろいろ調べたのですが、やはり機関によっても条件によっても違っているというところがありまして、あくまでも目安として、診療報酬の点数を出させていただいたもので、実態は正確にこのとおりではないということを前提に見ていただければと考えております。

○山口(直)座長 貧血検査について、ほかにはいかがでしょうか。

 ございませんでしょうか。

 事務局、どうぞ。

○塚本産業保健支援室長 先ほど省略基準、または省略のところですが、イメージとしては、告示の省略基準のところとか、あと今までも通達で、こういう方については省略することは慎重にとか、そういう形の対応で医師が御判断される、方向性をお示しするというやり方があったのですが、イメージとしては、そういうやり方で、一律でばさっではなくて、ある程度リスクが高い方は極力拾うような流れを誘導することを通知、告示でやっていくというイメージでよろしいでしょうか。

○山口(直)座長 よろしいですか。それで、医師の判断に基づく云々ということにつきましては、本来あるべき姿と現行でやられている慣行がちょっとずれているかなというお話もありましたので、その辺についても今後あるべき姿に近づけて、きちっとやられるにはどうしたらいいかというあたりも事務局でぜひ整理をしていただいてということでお願いしたいと思います。

 では、ヘマトクリットは加えるということでよろしいですか。

 値段が同じだったら入っているほうがいいではないかという単純な考えなのですけれども、昔、遠心か何かして測定しなくてはいけなくて手間が別だったのでということですよね。

○福田委員 今は、ぱっと出てしまいますから。

○山口(直)座長 ということで、貧血検査を労働安全衛生法上やるべきだという意見は多分一致していると思うので、検査項目としてはヘマトクリットも含めてということでよろしいですか。

(「はい」と声あり)

○中澤委員 今の貧血検査に関しては、事務局のまとめによると、特定健康診査においては廃止の方向が今、出ているという理解でよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 そうですね。

○中澤委員 そうすると、定期健康診断との兼ね合いでいくと、方向性が一致していないという理解でよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 正確には、健康局が行っている特定健康診査の検討会の中でこういう方向が出されています。ただ、一方で保険局が行っております検討会では、さまざまな御意見が出ているというところです。最終的には、特定健康診査の流れ、方向性を確認した上で、再度、私どもについても、ここの部分はハーモナイズをとか、ここが目的が違うのでという御判断をお願いしなくてはいけないのではないかと考えております。

○中澤委員 大久保先生の記述のところで、調査対象の産業医等においては、高所作業とか自動車運転、暑熱環境下での重筋作業等の就業制限、適正配置に用いていたということなのですが、逆に言いますと、こういったような高所作業、自動車運転等に関連をしないような職務的なものについては、ここの配慮が要らないというふうにも理解ができると思っております。したがって、今後の考え方として、例えば高所作業のないような業種、あるいは職種というのはあろうかと思いますが、定期健康診断の中から貧血検査については除くという方向性は全く考えられないのかどうかということを確認したいのです。

○砂原委員 関連して。今のことでいけば、例えば特殊健診化するだとか、そういうことも含めての話ということですか。

○山口(直)座長 私が議論が始まる前にちらっと申し上げたのですけれども、特定健康診査・保健指導での検査と、今、議論している労働安全衛生法に基づく定期健康診断の項目というのは、そもそも目的としているところが一部オーバーラップしていますけれども、違ったところがあるというところを1回目に確かやりましたので、そこのところを一つ押さえておいたほうがいいなと思いますのと、もう一つは、やはりいろいろなお仕事をいろいろな形でやっているという非常に多様なお仕事をしている日本のお仕事しておられる方全体のことを考えてどうかという視点で考えますと、高所作業以外にも今、転倒災害が大変問題になっていますけれども、普通にオフィスワークしている方が階段で転んで転倒するみたいなことも含めて考えると、高所作業云々というのはどちらかというと特殊健診の方向に向いていくベクトルだと思いますので、そこまで厳密化して作業別にと考えなくてもいいのかなと今、中澤委員のお話をお聞きしながら思いましたけれども、いかがでしょうか。

○中澤委員 厚労省の調査の中で、業種的なデータ、職種的なデータがない場合というのはいろいろあろうかと思うのですが、健康診断に関しては、恐らく作業的なもの等との因果関係というのがかなり大きいのだろうと思います。

 一方で今、座長が言われたように、一般的に転倒等といったものは起こり得るのだというくくり方でもよろしいのかもしれませんが、中には特殊作業に起因したような健康診断項目も否定はできないので、貧血検査ばかりではなくて、それ以外のところも含めて、様々な観点も踏まえながら議論すべきではないでしょうか。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 特殊健康診断のマターという視点も加味しながら検討していくということと理解しましたが、そういうことでよろしいでしょうか。

○中澤委員 はい。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○森委員 今の件、私も大久保班に分担研究者として入っていますが、高所作業とは自動車運転といった作業はあくまでも例示です。例えば、私は食品業の産業医をやっていますが、工場の中は様々な機械や高圧の窯などが動いていて、そこで女性がたくさん働いています。貧血が原因となって転んだとか、巻き込まれたとか、巻き込まれないような設備にしておくということが本来大事なのでしょうけれども、そういうことまで含めて考えると、貧血に関してはかなり広い作業や職場で職務適性上の問題が生じます。では一つ一つ、ここの職場は危険だから貧血検査を加えましょうかとか、そこまでやると、先ほどの省略よりもさらに複雑になってきます。現実的に、少なくとも貧血に関しては、業種や作業ごとに限定することは難しいのではないかと思います。

○山口(直)座長 山口委員、どうぞ。

○山口(健)委員 1つだけ申し上げます。

 座長がおっしゃったように、やはり今、厚労省でもプロジェクトとして検討され、災害防止ということを進められていると思っていますし、実際には交通事故死者よりも転落等で亡くなる方のほうが多いという実態もあると思っています。やはり労働者の視点では、安全は何よりも優先すべきと思っておりますので、今、先生方がおっしゃったような視点で、しっかりと見るべきところは見るということが重要ではないかなということは申し上げておきたいと思います。

○福田委員 あと言えば、先ほど座長がおっしゃったように、これは要するに最大公約数のところで見ていくしかないと思うのですね。特殊健康診断みたいになってしまうと、本当に特化してしまう。貧血の検査などというのは、これは本当に基本中の基本で、これを特殊健康診断化してしまったら、一体何が残るのかぐらいに思います。ですから、大久保先生が提出されたのは今、森先生がおっしゃられたように一つのそういう例もありますよというだけであって、これを特殊健康診断化するということは少し行き過ぎで、やはり全体の労働者の健康を守るという意味においては最大公約数で見て、費用対効果も考えて見てみると、やはり貧血検査というのは必須項目だと思います。

 以上です。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。前回と今回、それから次回は検査項目ごとの検討を進めてまいりますが、最後に全体が出そろったところで、また全体像として定期健康診断としてどうかという議論もするということですので、貧血検査につきましては、検査項目の議論としては一応ここで終わっておくということにしたいと思います。

 次に進みたいと思います。次は、2番目の心電図検査でありますが、心電図検査につきまして、委員の皆様から御意見をいただけたらと思います。

 どうぞ。

○福田委員 私は、ある運輸会社の産業医をやっているのですが、やはりこの安静時の12誘導で結構不整脈が引っかかって、中からアダムス・ストークス発作を見つけて、運転業務を外したおかげで事故に至らなかった。ですから、安全配慮義務等を考えますと、少なくとも安静時12誘導、場合によれば負荷心電図、やはりそこぐらいまでは考えていいのではないか。ただ、負荷心電図については、安静時の心電図を医師が判断して、そこから出ますものですから、精密検査になりますものですから、一般の法定健診としては安静時12誘導で私は十分だと思いますし、これは特に運輸業においては必須項目だと考えます。

 以上です。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 柳澤先生。

○柳澤委員 柳澤です。

 今、福田先生がおっしゃったように、通常、健診としてやった心電図を見ていましても、アダムス・ストークスだけではなくて、結構WPW症候群もありますね。発作性心房細動とか上室性頻拍とか、やはりそういうものは働く人たちにとっては非常にリスクファクターになっていますし、あとは心筋虚血の所見もかなり出ていますので、スクリーニング検査としての心電図は絶対必要な項目だと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 土肥先生、どうぞ。

○土肥委員 今のお話を聞いておりますと、不整脈に対して心電図検査が非常に有効であるというお話をされておられると思います。確かにそのとおりだなと私も思っております。そういう意味では、本当に12誘導心電図が必要なのかということも検討する必要があるのかなと思いますが、実際に不整脈を調べるだけであれば、四肢誘導だけでも十分わかることでございます。年齢が上がれば、当然心筋虚血について検討する必要が出てくるので、年齢の高い層では今のとおりでよろしいかなと思いますが、もしも何らかの理由で若い年齢層にするという案が出てくるのであれば、例えば四肢誘導だけで不整脈をきちっと見るとか、そういうバリエーションなり案も考えられるのではないかなと思います。

○山口(直)座長 今の土肥委員の案については、いかがでしょうか。

○福田委員 まことにおっしゃるとおりなのですが、またこれは電極をつければとれてしまうものですから、わざわざ四肢誘導だけとるというのも何かですね。正直申し上げて、コストもこれは変わらないと思うのです。

○岡田委員 若い人たちの心電図はどちらかというとTの逆転とか、心筋症とか、肥大型心筋症が若い30歳代でちょっと見つかっていますので、やはり胸部誘導の中で部位4、5、6はとっておくべきではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。

○土肥委員 申し上げたいのは、医師による判断をしていくという前提に立ったときに、何を根拠に心電図は省略できるのだと言われたら、入社時にとってずっととらずに省略できるかどうかを判断していくことが非常に難しいのであれば、やはり何らかの方策が必要であって、そのために何をするのが一番合理的かということもあわせて考えていく必要があるのではないか。そのための手法として、何かあってもいいかなという意味で考えていただくことも重要かなと思います。

 

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 山口委員、どうぞ。

○山口(健)委員 結論には全く異論はないのですけれども、この資料2の心電図検査のところの1ページ目の一番下の特定保健指導のあり方に関する検討会に関する段落に記載されている意図が、何か当たり前のことなのかなと思われます。あえてこれが論点案の資料に、この検討会での議論内容の紹介として記載された意図がちょっとわからなかったものですから、どういう意図でこの段落は記載されているのか、それをちょっと確認させていただけませんか。

○塚本産業保健支援室長 まず1つ目は、特定健康診査で位置づけが必須となる基本項目なのか、詳細な健診項目なのか、これが一つ大きなファクターになると思います。基本ですと今、労安法の健康診断結果が特定健康診査にデータを渡して、向こうのほうで今度特定保健指導が行われることから、基本にした場合には、ハーモナイズをどうするかというところは強く考えなければいけない。これが詳細になりますと、最初からそこの部分についてはある程度、自由度が高まります。

 あとは、考え方として、今回変更しようとした部分については、1年後にやるのではなく、やはり速やかにというところも大きな情報かと思います。まだこれで決定というわけではないのですが、議論の方向性をここで御紹介させていただいたというところです。

○山口(健)委員 単なる紹介という位置づけだということであれば、わかりました。

 

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。

 それでは、心電図検査につきましては、基本、現行どおりということ、検査項目単位の検討の結果としては、そういうことでまとめさせていただいて、次に進みたいと思います。

 3点目が腎機能検査についてであります。これにつきまして、御意見がございましたらお願いいたします。

 柳澤先生。

○柳澤委員 柳澤です。

 腎機能検査ですけれども、結論から言いますと、やはりある程度早期にスクリーニングするには尿蛋白も必要ですし、血清クレアチニンも必要だと思います。というのは、血清クレアチニンは御存じのように、GFR50ぐらいまで下がってこないと血清値は1以上になりません、確かに感度は悪いのですけれども、実際GFR70とか80ぐらいで尿蛋白というのは出てくる人がいますし、逆にGFR30ぐらいまで低下しても尿蛋白が陰性という人も実際います。ですから、かなり詳細にスクリーニングするためには両方の項目が必要だと思います。

 もう一つ、現在、CKDが問題になっていますけれども、CKDの独立因子として尿潜血があります。例えば学校保健などでは尿潜血は昔から健診項目として入っています。しかし、労安法の健康診断には診断項目として入れられておりません。それは恐らく、尿潜血が陽性でも非特異的なことが多く、診断的価値が低いという理由からだと思います。しかし、現在、慢性腎炎ではIgA腎症がふえていて、初期のIgA腎症では尿潜血だけが陽性というケースも多々ありますので、健診項目に入れる入れないは別として、この委員会の中で尿潜血についても少し議論していただきたいと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○砂原委員 こういうことを言うと皆様に怒られるかなと思いながら、ちょっと感想のようなことをお話をさせていただきたいと思うのですが、クレアチニンの検査を入れることの重要性、今、議論されている内容については個人的には十分理解できるなと思う反面、本当に今これを入れるということが必要なのかなと感じています。というのは、多分今、柳澤先生がおっしゃられたように、これをきちんと管理しないといけないレベルの人というのは、多分そのほかの検査項目で既に引っかかって、定期健診のフォロー等を受けている人が大半ではないのかなと思ったからです。とすると、本来、定期健診の中で検査項目として取り上げることがポイントなのか、それとも健診の事後措置をきちんと事業者がやっていく中でフォローしていくほうがむしろ大切なのかなとも思いました。当然、事後措置は現在できていない事業者もあるかもしれません。ただ、そうであれば、事後措置をきっちりやることが大切であって、クレアチニンを今、定期健診項目として追加する必要が本当にあるのかとか、そういう観点の議論も本来あってもいいのかなということを感じたので、お伝えさせていただきたいと思いました。よろしくお願いします

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

○森委員 先ほどの柳澤委員のお話は、どちらかというと早期発見のための話だったと思います。一方、就業制限との関連では、やはり臓器不全があって制限をかけないといけないときに必要ということも考えなくてはなりません。定期健康診断の事後措置においては、そのことが一番大事なので、そこのところをやはり見たいと。そのことを目的としたときに、ほかの血液項目と同じようにリスクと考えて、ずっと全年齢で実施することを前提にするのか、もっと柔軟な方法を取るのか、選択肢は存在すると思います。例えば、雇い入れ時健診のときは、それまでの経過が全くわからなくて、突然臓器不全があるということもあり得ますが、逆に、一定の年齢になるまで何にも異常がない人が突然クレアチニンが2.5になるということはまずないと思います。そうすると、それは追加をできるような、案2みたいな置き方、加え方をすることによって、早期発見は尿蛋白でやると。クレアチニンはあくまでも臓器不全の可能性のある人に対して、きちっと把握、またはそういうことが最初とフォローアップのときに必要だというように、二つの検査を両立させることができるのではないかと思います。今、砂原委員のご意見をお聞きしながら何かいい方法はないかなと考えていて、思った次第であります。

○福田委員 私も基本的には事務局案の案2にかなり近いです。ただ、手前どもの病院は透析を大分やっているのですけれども、やはりおっしゃられたように、蛋白尿とクレアチニン、この2つが一般の臨床医の先生は見ていらして、それでも手遅れでいきなり腎不全で透析という方が多いのですね。ですから、理想はやはり両方をちゃんと見ていきたいのですが、砂原委員のおっしゃられたように、ではそれは事後措置で何とかカバーできないのかと言えば、できなくもなくはないとは思うのです。ですから、中途半端で申しわけないのですけれども、私は基本的には森先生がおっしゃられた第2案に、柳澤先生のおっしゃられたものを入れながらと思います。経営者側の御意見でも、コストのことがやはり大事だと思いますので、第2案を基本に何か少しうまくできないかなと考える次第です。

 以上。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○土肥委員 まずは、尿潜血を持ち込むことの本当の有効性のエビデンスがあるのかということについては、エビデンスというのは、入れることによって病気が見つかるということは間違いないと思うのですね。ただ、それによって起こる不必要な再検査であるとか、そういうことのトータルのデメリットを含めた上で合理的であるかという検討をしないで、検査したら病気が見つかるだろうということだけで入れるという観点ではないということの理解でよろしいのか、そこの部分を。

○柳澤委員 もちろんおっしゃるとおりです。CKD進展の独立因子であることは間違いないのですけれども、健診として用いた場合に有効であるという明らかなエビデンスは今のところありません。ただ、過去に開催された健診項目を見直す委員会の中で恐らく議論されていないので、一度は議論をしておくべきだろうと思い提案しました。

○土肥委員 それともう一点、クレアチニンを事後措置の中で見ていくというのは、やはりクレアチニンの悪化というのが症状が出るレベルで、何かわかるレベルでクレアチニンが悪化しているといったら、すごく悪化しているはずなので、それを事前に何かしていくというのは非常に難しくて、やはり何か定期的にとか、ある一定の頻度とか、そういうものを考えていかないと、やはり腎疾患の早期発見になかなか結びつかない。急激に変わるものではないというのも事実だと思うのです。そこを考える必要がある。

○柳澤委員 おっしゃるとおりで、例えばクレアチニンが3ぐらいでもほとんど無症状です。ですから、健診の中で、本当に早期発見しようという考えが少しでもあるのであれば、やはり2項目は必要だと思います。ただ、私は、砂原先生がおっしゃったことも十分理解いたします。

○山口(直)座長 どうぞ。

○岡田委員 健診で蛋白尿が見つかって、紹介状を書いて主治医ができた場合、基本的にはそこで全部はかってくれていますよね。その人まではかる必要は全くない、無駄だと私は思っているのですけれども、全員一律にクレアチニンを検査するというのはいかがなものかなと。多くの私たちが見ている患者さん、従業員の中で、尿蛋白が出ている方は、既に腎専門医に診てもらっている方が多くて、むしろ私たちは就業制限が必要かどうかということを紹介状を書いて出してもらって、それで主治医の先生の専門家の意見を聞いて、就業時の措置を講ずるというのが一般的でありますので、企業の定期健康診断で重症の腎臓病が見つかるかというと、もう既にそれはかかりつけ医の先生がいらっしゃるというパターンが多いので、やはりこの案2、初期に発見するのであれば、蛋白尿が出て、産業医が指示したほうが最も効率的ではないかなとは思っております。意見までです。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○高松委員 ありがとうございます。

 現行の40歳以上及び35歳の件に関しては、何か先生方の御意見が大体まとまりつつあるなと思うのですが、一つ、専門家の先生方にお聞きしたいのは、アのほうでございます。いわゆる健康体である、血液検査が必須でない方々の問題について、座長から年齢の話は最後という話でしたけれども、35歳、40歳以外の、特に入社以降35歳まで全く血液検査をしないという方については、これは現行のままで本当によろしいのでしょうか。コストのことを考えると、現行のままということになるかもしれませんけれども、ちょっと不安なのは、入社から35歳までの長い間検査をしなくても良いものなのだろうか気になったものですから、このアの方々についてはどうお考えなのか、御見識をお聞かせいただければと思います。

○山口(直)座長 事前にいろいろな情報を検討いたしましたときに、一つは、CKDがリスクの年齢分布みたいなものはやはりちょっと押さえておいたほうがいいかなということをちょっと感じて、済みません、怠って、きょうまでに調べずに来てしまったのですけれども、柳澤先生、年齢分布はいかがですかね。

○柳澤委員 私もちょっと正確には覚えていないのですけれども、やはり50歳以上からぐっと上がってきますね。ただ、そこのところは詳細に一度検討しておく必要があると思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 それから、先ほどの事務局からの御説明もあって、蛋白は糸球体疾患のマーカーで、クレアチニンのほうは糸球体のろ過量、機能のマーカーですということで、参考資料1で御説明いただいた中で、ちょっと違った観点で、それを組み合わせるとCKDについてよりよくわかるという御説明があったのですが、その辺について、柳澤委員の先ほどのお話で、蛋白が出なくてもクレアチニンがどんどん悪くなっていくような例もあると。だから、それが一体何%でどのぐらいの割合でそれが起こるのかということも多分大事な情報かなと思いました。その辺は、先生いかがでしょうか。

○柳澤委員 基本はGFRが下がってくると蛋白が出てきます。そのときに潜血がまじるケースもあるし、まじらないケースもあると思います。恐らくGFR3040ぐらいで尿蛋白陰性というのは、多分1割、10%以下だと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

○森委員 今の件、先ほどの参考資料1の43ページでeGFRと蛋白尿の関係がきれいに示してあって、eGFR3044で尿蛋白が(+-)以下は1.29%という数字が出ています。

○山口(直)座長 ありがとうございます。そうですね。ここにパーセントが出ていますね。

 ほかにいかがでしょうか。

○福田委員 これは事務局に、アですけれども、これは血糖検査を行う場合は必須項目として、尿糖とともに尿蛋白をやってはどうかという御意見ですよね。だから、先ほど高松委員からおっしゃられたところは、この尿蛋白で拾うという考えでよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 それもありますし、40歳以上も、例えばクレアチニンを必須項目にしていきますと、今の定期健康診断の考え方ですと、40歳未満の方も何らかの形で省略基準をつけながら、一応の項目にはするというのが今の体系になっておりますので、どちらを先に検討するかというのは別にして、ある程度、40歳以上でクレアチニンとか血液検査の話が出てくるとすると、若い方も同じようにするとか、ある程度省略とかというところが出ますので、そのミックスで40歳未満の方をお考えいただく方法が一つあるのかなという意味で書いてございます。

○福田委員 ありがとうございました。

○山口(直)座長 今までの御議論を整理いたしますと、まずイのほうがちょっと中心的な議論だったのですが、案1とか案4を押すような御意見は全然なくて、案2か案3かなという感じの御議論だったかなと思います。

 それから、(ア)のほうにつきましては今、事務局の御説明のとおりかなと思います。ただ、先ほども貧血のときにも申し上げましたように、全体の項目の案がそろったところで検討する必要があるだろうと思いますし、特定健診のほうの検討もまだ現在進行形ということですので、多分案2、案3の案2のほうがちょっと声が強かったかなと思いますが、その辺できょうの議論は整理をつけておいて、また後日全体でどうかと。やはり医学的な面で見ると、これもやったほうがいいのではないか、あれもやったほうがいいのではないかというのはありますけれども、最終的にはやはり優先順位とかについても議論をしていただいてということもあると思いますので、そんな形で議論を進めていきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 土肥先生。

○土肥委員 先ほどのコストの話が出たときに、既に血液検査がされている人たちにクレアチニンだけが追加されるとすると、それはコストとしては幾らになるというふうに考えればよろしいのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 資料1の10ページ目を見ていただきますと、クレアチニンが17番で書いてございますので、この※は、一番下の数によって、現行だと7項目ですから93点、これがクレアチニンが1個加わりますと8項目になりますから99点、つまり6点増です。もう既に血をとっていらっしゃる方は、11番の採血料25点も入っておりますし、生化学的検査判断料144点も入ってございますので、具体的には1人当たり、診療報酬の目安では60円というところです。ただ、本当の費用は各健診機関等で異なっておりますが、目安の一つとしていただければと考えております。

○山口(直)座長 この腎機能検査については、今、私が申し上げたところで、今回の議論の結論とするということでよろしいでしょうか。

(首肯する委員あり)

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 それでは、今日の議論の一番の要のところは、これで一応終了したということでございます。

 ほかに、全体を通じて何か委員の皆様から御意見とか御質問はございますのでしょうか。

 福田先生、どうぞ。

○福田委員 これは、こういうことを言うと怒られてしまうことは十分承知の上の発言なのですけれども、エビデンスということが非常に言われているのですが、例えば乳がん健診、あれもエビデンスということでマンモグラフィー一本に絞られてしまいましたが、実際に健診を承っている健診機関としては、日本人女性の場合、御承知のとおり、40歳に乳がんのピークがある。ですから、その場合、マンモグラフィーよりやはりエコーのほうが発見率が高いのではないか。そういうペーパーはいろいろと出しております。ですから、エビデンスというものは本当にどこのものを引っ張っているか。マンモグラフィー一本にしてしまったのは、欧米のエビデンスを持ってきて、それで出してしまったと私は思っています。ですから、ここでもやはりエビデンスそのものも本当に日本人の特性に合っているのか。欧米人の大きい胸と日本人の、怒られてしまうな。要するに、マンモグラフィーというのは圧迫がすごいのですよ。家内も受けるのですけれども、二度と受けたくないと。つまりぺっちゃんこにするのですね。ところが、欧米の場合は脂肪分が多いですから、これは簡単につぶれる。だから、やはり人種、あるいは民族、そういうところに根差したエビデンスでなければ、おかしいと思っています。ですから、その辺のこともお考えいただきたいなと思います。

 以上です。

○山口(直)座長 福田先生、ぜひ痛くないマンモを開発していただけるといいのではないかと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、今後につきまして、事務局のほうからお願いしたいと思います。

○小林中央じん肺診査医 本日は熱心な御議論をありがとうございました。

 次回日程は、5月3110時から12時となっております。正式な開催案内は改めて送付させていただきます。

 また、本日の議事録につきましては、各委員に御確認をいただいた上で公開することとさせていただきます。

 本日の検討会はこれで終了いたしました。どうもありがとうございました。

 


(了)

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