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2015年6月18日 第91回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成27年6月18日(木)10:00~


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(中央合同庁舎第5号館12階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石 祐二、犬飼 米男、岡本 浩志、小畑 明、勝野 圭司、城内 博、新谷 信幸、辻 英人、
角田 透、土橋 律、中澤 喜美、中村 聡子、縄野 徳弘、半沢 美幸、三柴 丈典、山口 直人

事務局:

土屋 喜久 (安全衛生部長)
美濃 芳郎 (計画課長)
田中 敏章 (安全課長)
泉 陽子 (労働衛生課長)
森戸 和美 (化学物質対策課長)
安達 栄 (調査官)
野澤 英児 (建設安全対策室長)
木口 昌子 (主任中央産業安全専門官)
前田 光哉 (電離放射線労働者健康対策室長)
安井 省侍郎 (電離放射線労働者健康対策室長補佐)

○議題

(1)電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(3)第12次労働災害防止計画の実施状況について(報告)
(4)その他

○議事

○土橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第 91 回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、公益代表では桑野委員、水島委員、使用者代表委員では栗林委員、鈴木委員、中村節雄委員が欠席されております。公益代表の三柴委員は少し遅れるとのことです。

 それでは、早速 1 つ目の議題に入ります。議題 (1) 電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案要綱について、諮問案件ですが、事務局から説明をお願いいたします。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 資料 1-2 に沿って、「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案の概要」を説明いたします。 1 ページは、省令案の検討の経緯です。東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会、いわゆる専門家検討会において検討いただいた内容を基に省令案を作成してまいりました。本検討会の設置目的は、 4 年前の東電福島第一原発の緊急作業従事者への対応と、今後、仮に緊急作業を実施する場合の対応を検討することです。検討事項は 6 点でしたが、省令改正事項は 2 番の緊急作業従事期間中の健康診断等。 5 番の緊急作業従事期間中の被ばく線量管理。 6 番の、特例緊急作業に従事する者に対する特別教育の 3 点です。

 検討会参集者は、産業保健、公衆衛生、被ばく医療、放射線防護の専門家 8 名で構成され、昨年 12 月下旬から 5 回にわたって開催し、 5 1 日に報告書を公表いたしました。本検討会報告書に基づき、省令案のパブリックコメントを 5 15 日から 6 14 日まで行ったところ、 30 件の御意見が寄せられました。御意見の内容は、省令改正事項の 3 項目の中では、 5 番の緊急作業従事期間中の被ばく線量管理に関するものが一番多かったところです。現在御意見に対する回答を作成中であり、省令の公布までに回答を公表したいと考えております。今後、本審議会から答申が得られましたら、放射線審議会での御議論を経て、秋頃までに省令公布、来年 4 月めどの省令施行を目指しております。
 2 ページは、緊急作業従事期間中の被ばく線量管理の趣旨についてです。 4 年前の事故の経緯ですが、事故後に原子力緊急事態宣言が出され労働者の健康リスクと周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量し、特例の緊急被ばく限度として 250mSv を特例省令により設定いたしました。そして、被ばく線量の低減を踏まえ、段階的に適用作業を限定した上で、原子炉の安定性が確保された段階で、平成 23 12 月に特例省令を廃止しました。今後、仮に同様の事故が発生した場合の基本的考え方ですが、 ICRP の正当化原則に基づき、 100mSv を超える線量限度を正当化する理由が必要で、国際文書では、例えば格納容器が破壊して大量の放射性物質が撒き散らされるような破滅的な状況を回避するような場合に限られ、対応者は高度な知識・技能を有する者に限定することといたしました。緊急被ばく限度の考え方については、検討会での議論の結果、 250mSv を超える線量を受けて作業をする必要性は現時点では見いだし難いこと。重篤な急性障害である免疫機能の低下を確実に予防するため、 250mSv を採用することは保守的ではあるが妥当とされました。

 前回のこの分科会で 250mSv の根拠について御議論がありましたが、検討会の議論の結果を紹介いたしますと、複数の原子炉の炉心が溶融する過酷事故でありました東電福島第一原発の事故においても、 250mSv の被ばく限度で緊急対応が可能であった経験を踏まえると、今後これを超える線量を受けて緊急作業をする必要性は現時点では見いだし難いとされております。また、放射線の急性被ばくによる影響として、血液中の白血球の一種であるリンパ球の数が比較的低い線量から減少しますが、人への急性被ばくに関する文献から見ますと、リンパ球数減少の閾値は 250mGy 程度から 500 600mGy 程度の間にあると考えられておりますが、この間のデータが少ないため、閾値を明確に決めることは難しいとされました。

 一方、緊急作業においては、短時間に被ばく限度まで被ばくすることを念頭に限度値を設定する必要があること。作業期間中は、感染症のリスクを高める要因が多いことに留意する必要があるとされました。そういった点を考慮しますと、リンパ球数の減少による免疫機能の低下を確実に予防するという観点から、東電福島第一原発事故時に閾値を確実に下回る 250mSv を緊急被ばく限度として採用したことは保守的ではあるが妥当と言える、と検討会では結論付けられたところです。

 原子力災害の危機管理の観点からは、「破滅的な状況」発生の判断基準としては、原子力災害特措法において、原子力緊急事態又はそれに至る恐れの高い事態が発生した場合が定められております。また、原子力災害に対する危機管理の観点からは、直ちに必要な対応を実施する必要があります。更に、 ICRP の最適化原則、すなわち被ばく線量をできるだけ少なくするという観点からは、作業の進捗状況等に応じて速やかな適用作業の限定、被ばく限度の段階的な引下げを実施し、原子炉の安定性が確保されれば特例的な限度を速やかに廃止することといたしました。
 3 4 ページには、省令案の内容を記載しております。 (1) 特例緊急被ばく限度の設定。厚生労働大臣は、事故の状況などを勘案し、緊急作業において 100mSv の被ばく限度によることが困難であると認めるときは、 250mSv を超えない範囲内で特例緊急被ばく限度を別に定め、又はこれを変更することができるとしております。次に、原子力緊急事態又はそれに至る恐れの高い事態が発生した場合は、厚生労働大臣は、直ちに 250mSv を特例緊急被ばく限度として定めるとしております。さらに、厚生労働大臣は、特例緊急作業従事者の受けた線量、事故の収束のために必要となる作業の内容などを勘案し、特例緊急被ばく限度をできるだけ速やかに廃止するとしております。また、厚生労働大臣は、特例緊急被ばく限度を別に定め、変更又は廃止したときに、その旨を告示するとしております。

(2) 特例緊急作業従事者の限定。事業者は、特例緊急作業従事者について、原子力防災組織の要員のうちから選任するとしております。これは、 4 年前の事故時に放射線によるリスクや保護具の使用方法などを十分に理解することなく、多くの労働者が緊急作業に従事したという教訓を踏まえております。防災要員は、原則として原子力事業者の労働者ですが、法令に基づき、原子力事業者が原子力防災組織の業務の一部、すなわち損傷機器の復旧作業等を委託する場合は、当該委託事業者の労働者も要員に含まれます。

(3) 被ばく線量管理の最適化。当然ながら、特例緊急作業従事期間中に受ける線量が、特例緊急被ばく限度を超えないようにすることを義務付けます。さらに、事故の状況に応じ、労働者が放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めなければならないという努力規定を置きます。

(4) 記録等の提出等。事業者は、個々の従事者の健康診断結果記録を実施後遅滞なく、さらに、被ばく線量等、緊急作業期間中は毎月末日に報告しなければならないとしております。これらの記録は、厚生労働省のデータベースに保存され、長期健康管理に活用されます。

(5) 線量の測定及びその結果の確認、記録、報告等。 4 年前の事故時には、内部被ばく測定や線量の確定が大幅に遅れたという教訓を踏まえ、従来は 3 か月に 1 回のところを 1 か月以内ごとに 1 回行わなければならないとしました。また、事業者は緊急作業期間中に受けた線量について、 1 か月ごと、 1 年ごと及び 5 年ごとの実効線量の合計を遅滞なく算定し、これを記録するとともに 30 年間保存しなければならないことといたしました。さらに、 4 年前の事故時に被ばく状況の把握が困難となった教訓を踏まえ、緊急作業従事者について外部被ばく線量が 50mSv を超える者の線量区分ごとの人数を、事故発生 15 日後、その後は 10 日ごとに報告し、実効線量の区分ごとの人数を事故発生月を除く毎月末日に報告することを義務付けます。
 5 ページは、特例緊急作業従事者に対する特別教育についてです。 4 年前の事故時、事故発生から 2 か月ぐらいまで発電所の外の施設で行われていました教育は、放射線の影響、線量、保護具などに関する 30 分程度のものしか行われておりませんでした。また、十分な教育の実施スペースも確保されておらず、教育できる人数は 1 回につき 20 人程度に限られておりました。このような中、 250mSv の被ばく線量限度を超過した 6 名の緊急作業従事者は、水素爆発以降の中央操作室内で、放射性物質の濃度が高くなった中で、チャコールフィルター式マスクを使用せず、マスクを外して飲食をしたことなどが明らかとなりました。そのほか、労働者が防水具を着用せず汚染水を頭からかぶり汚染した事案なども発生しました。この教訓を踏まえ、放射線による健康影響等のリスクを理解させ、作業内容、保護具の取扱いなどを教育して、作業中の被ばく線量を低減させることを目的としました。対象者は、緊急対応のための高度な知識や技能を有する者、すなわち原子力防災組織の要員に限定するとしております。

 省令案の内容です。事業者は、特例緊急作業に労働者を就かせるときは、学科教育として、特例緊急作業で使用する施設、設備の構造、取扱いの方法、作業の方法、電離放射線の生体影響、被ばく線量管理、関係法令を 6 時間 30 分程度教育するとしております。また実技教育として、特例緊急作業で使用する施設、設備の取扱い、作業の方法を 6 時間程度教育するとしております。実施頻度は、実技教育は 1 年ごとに 1 回、定期に再教育を行い、学科教育は、教育内容に変更があった際に再教育を行うべきとしております。
 6 ページは、特例緊急作業期間中の健康管理についてです。 4 年前の事故のときには、緊急作業期間中の健康診断については、法令上の定めがなく、安衛法第 66 条第 4 項の規定により、福島労働局長から東京電力に対して臨時の健康診断の実施を指示いたしました。しかし、健診項目や対象者の変更があったり、事業者による健診対象者の把握が遅れたりしたことなどにより、事故直後の受診率が低かったところです。この教訓を踏まえ、緊急時電離放射線健康診断として、緊急作業従事者に対し 1 か月以内ごとに 1 回定期に、さらに、その従事者が他の業務への配置替え又は離職の際に、事業者が健康診断を実施することとし、その項目は自覚症状及び他覚症状の有無の検査、白血球数及び白血球百分率の検査、赤血球の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査、甲状腺刺激ホルモン、遊離トリヨードサイロニン及び遊離サイロキシンの検査、白内障に関する眼の検査、皮膚の検査といたしました。また事業者は、健診結果の記録、医師からの意見聴取、結果の通知、所轄労基署長への結果報告及び事後措置を行わなければならないといたしました。
 7 8 ページは、省令改正と同時に実施する予定の大臣指針で対応する事項で、参考として説明いたします。緊急作業後の長期的健康管理については、緊急作業期間中に 100mSv を超えた者に対して実施されておりますが、がん検診等の内容を最新の知見に基づき見直し、胸部 CT 検査、大腸内視鏡検査などを追加し、ストレスチェックの実施について規定いたします。また、福島第一原発構内で医療スタッフを確保することが困難となった教訓を踏まえ、原子力施設内の医療体制の確保のため、災害発生時に即応し、医師等を原子力施設に派遣できるネットワーク組織を予算措置により設けることといたしました。
 8 ページの通常被ばく限度を超えた者の線量管理については、事故により 100mSv を超えた方は 174 人おられますが、これらの方に対して生涯線量として ICRP 勧告の被ばく限度の前提となる生涯線量 1Sv を採用し、通常被ばく限度である 5 100mSv を超えず、かつ、線量の合算が生涯で 1Sv を超えないように、より厳しい線量管理を指導いたします。具体的には、 5 年当たりの線量限度、 1Sv から累積線量を減じた残余の線量を就労期間の最終年齢の 68 歳から現年齢を減じた残余の就労期間で除して 5 倍するという方法で算定することといたしました。

 また、通常被ばく限度である 100mSv を超えた方については、これまで通常の放射線業務に就かせないという指導をしてまいりましたが、規模の小さい原子力事業者の場合、他の原発での通常業務ができなくなると安全が担保できなくなる可能性がありますので、原子力施設の安全な運転等を担保するためにやむを得ない場合に限り、通常被ばく限度の適用に一定の裕度を与えることとし、年間 5mSv を超えない範囲で、通常の放射線業務に従事させることができることといたしました。この年間 5mSv という数字ですが、放射線管理区域の設定下限値と同じで、放射線管理区域で業務をしない状況と同等の範囲内の被ばくとなるように設定したものです。説明は以上です。

○土橋分科会長 ただいま説明いただいた要綱案の審議に移ります。質問等はありますでしょうか。

○犬飼委員 今、資料 1-2 に基づいて説明いただきましたが、 3 ページにある特例緊急被ばく限度の設定に関して意見を申し上げます。今回、緊急作業において 100mSv の被ばく限度によることが困難である場合の特例緊急被ばく限度の設定が諮問されているところです。この基準設定の考え方は、前回の安全衛生分科会で検討会報告書として説明がされたとおり、医学的見地を踏まえた内容であることは確認をしております。本基準を厚生労働省令で定める以上、緊急作業従事期間中の被ばく線量管理、それから特例緊急作業従事者に対する特別教育、緊急作業期間中の健康管理、この各施策について、事業者が確実に実施するよう対応していただきたい。また、厚生労働省は事業者の実施を管理する立場にあることから、この各施策が確実に実施されるよう対応していただきたいということを強く申し上げます。

○土橋分科会長 御要望ということですが、事務局側、よろしいですか。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 了解いたしました。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○半沢委員 資料 1-2 3 ページ以降にあります特例緊急作業従事者の限定と対応に関して、意見を申し上げます。今回の省令案では、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、あらかじめ特例緊急作業従事者について選任し、線量管理体制の整備や特別教育を実施するという内容となっております。このような施策については、労働者がむやみに被ばくすることを避ける観点も含めて必要不可欠な対応だと認識をしております。特例緊急被ばく限度を 250mSv としていることについて、言うまでもありませんが、労働者の被ばくをできるだけ少なくするように努めなければならないことについては、くれぐれも徹底をしていただきたいと思っております。

 その上で、特例緊急作業従事者の選任についてです。事業者は特例緊急作業従事者について、原子力災害対策特別措置法で規定する原子力防災組織の要員のうちから選任することとしております。また、対象者の範囲については、これまでも御確認の答弁を頂いているとおり、当該委託事業者の労働者も要員に含まれるとされております。福島第一原発事故の教訓や、現時点では将来どのような事態が発生するのか分からない不確実性を踏まえれば、この特例緊急作業従事者の選任範囲をどのように設定するのか、この点は非常に重要な点です。この点に関して、私たちも原子力関係業務に携わる組合員に聞き取り調査を行いました。原子力事業者の労働者又は一次委託、二次委託といった構造がこの事業にはあるわけですが、こういった委託を受ける事業者の労働者、また現場の最前線で対応に当たる労働者において、それぞれ懸念を抱いていることが分かりました。具体的にはこういうことです。福島第一原発事故と同様、又はそれ以上の事態が発生をした際に、あらかじめ選任された特例緊急作業従事者であれば、健康管理などは国が対応してくれることがこの内容から分かります。しかし、その選任から漏れた、選任されなかった人が特例緊急作業に従事せざるを得なくなる場合もあり得ると思っております。そのような場合、特例緊急作業従事者に選任されなかった方々が、特例緊急作業従事者に選任されていないことで、健康管理などで国に対応してもらえないかもしれないということに関して、不安をお持ちであることも分かりました。特例緊急作業従事者の選任範囲というのは、過小であっても過大であってもいけないという意味において難しいものではありますが、これはきちんと対応していただきたい。これを前提としながら、原子力事業者の労働者、委託を受ける事業者の労働者、また現場の最前線で対応に当たる労働者に対して、この枠組みがどのような内容なのか十分で丁寧な説明を実施し、懸念を払拭した上で体制を構築していく不断の努力が必要だと思っております。この点を強く要請したいと思います。

 また、今回この資料を拝見した印象ですが、この特例緊急被ばく限度の設定は、労働者の生命、健康、安全を守ることを目的としていることが、残念ながら少し読み取りづらい面もあります。この点についても懸念や不安の払拭に対する具体的な回答も含めて、厚生労働省としてのお考えを改めて聞かせていただきたい思っております。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 いかがでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 御意見ありがとうございました。多数御意見を頂きましたので、順番にお答えいたします。まず、防災要員の選任範囲について非常に重要だという御指摘がありました。これは、私どもも全く同意見で、御意見にありましたとおり、これは教訓を踏まえ、あらかじめ選任することで結果的に事故時のリスクを減らすことを目的にしております。ただ反面、御指摘のとおり、過小に選任していることになりますと、結果的に選任をする効果がなくなってしまうことがあります。そういったことにならないように、事業者を指導していく予定です。

 現在、既に原子力防災事業計画の中で、防災要員の指定は行われつつありますが、今回のような省令に対応するような形で必ずしも制定されているわけではありませんので、この点については現時点での防災要員の選定のやり直しも含め、事業者を厳しく指導したいと考えております。

 一、二次あるいは現場の最前線で働く方が防災要員になるかどうかという御指摘です。これについても限定は設けないということですが、先ほど申し上げましたように、基本的には事故に対応できる専門的で高度な知識と経験を持っている方に限定するというラインを守りつつ、必要不可欠な方については、ほかの協力会社についても選任できるような指導をきちんとやってまいりたいと考えております。事故後、防災要員以外の方は、いわゆる通常の被ばく限度で業務をしていただく可能性が高いと考えております。これは、建設の要員、いわゆる重機のオペレーターのように、表現は悪いですが、人海戦術という形でたくさんの人数を投入することで 1 人当たりの線量を下げることができる方については、通常被ばく限度を想定しております。こういった方が、仮に事故的に 50mSv を超えてしまうような場合も想定されますので、そういった場合についてはきちんと長期健康管理のスキームの中に入れるように大臣指針の中で手当できるようにしたいと考えております。

 最後の御指摘ですが、今回の改正が労働者を守るためかどうか読み取りにくいというところです。これについては、正に我々としても御指摘のとおりというところがございますが、これは前回の東京電力福島第一原発の事故時に、労働者の健康リスクと周辺住民の生命、財産を守る利益を比較衡量した中で、可能な限りの労働者に対する保護を行った経緯があります。今回は、その教訓を踏まえ、その労働者へのリスクをいかに下げるかという観点から、この制度をあらかじめ定めたという趣旨ですので、御理解いただければと思います。以上です。

○半沢委員 御回答を頂きまして、ありがとうございました。是非、お願いしたいと思います。今回の内容で、特例緊急作業従事者は選任がなされていますが、今のお話にもありましたように、例えば特例緊急作業の期間又はその後、期間中であったとしても 50mSv 、通常被ばく限度の基準で入域するような場合も想定されると思っております。皆さんは、 50mSv を超えない対応を図っていくという想定をなさっているわけですが、やはりどのような事態が発生するか予想し得ないこともありますので、通常被ばく限度の基準で入域をする労働者に対しても、線量管理の体制や教育の体制、それから健康管理の在り方についてもあらかじめ万全の備えをして、それぞれで共有をしておくことが必要です。この点については、今回の諮問内容とは少し外れる内容になりますが、引き続き検討をしてはどうかと思っておりますが、いかがでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 御指摘のとおり、通常被ばく限度の適用という形で現場に入るケースはあろうかと思います。これについては、当然のことですが、毎日線量計は確実に着けさせた上で厳重な被ばく管理を行って、なおかつ保護具をきちんと使用させるということで、被ばく限度を超えさせない厳しい線量管理は当然行う予定です。また、当然放射線業務従事者にはなりますので、放射線業務従事者に対する特別教育は行います。その中には、保護具の使用であるとか線量計の使用については入っておりますので、その点については確実に実施したいと考えております。

○半沢委員 繰り返しになりますが、そういった事故対応の全貌や体制が分かるような内容を、例えば指針やガイドラインなどの形で明記して、これから周知していただき、みんながその状況を共有できるよう、また安全の管理やレベルを高めることのできるような運用をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○新谷委員 本日は、電離放射線障害防止規則(電離則)の一部改正に関する要綱案の諮問を受けております。今も毎日何千人もの労働者が福島第一原発で廃炉に向けて作業をされております。緊急作業ということではありませんが、電離則の改正にも関連いたしますので、私たち安全衛生分科会の労働側委員で福島第一原発に赴き、現地で働く労働組合の役員等と意見交換をしてまいりました。それを踏まえての意見を申し上げます。

 福島第一原発については、以前もこの安全衛生分科会の公労使三者による訪問機会をつくっていただきましたが、今回は労働側だけで訪問いたしました。今も、平日には毎日 7,000 人近い方々が、だんだん暑くなる環境の中で毎日、廃炉に向けての作業に奮闘されております。廃炉が完了するまでに、 30 年とも 40 年とも言われており、非常に長期にわたる取組ですので、こうした取組の中で課題となるところを申し上げます。

 作業に携わる労働者は、原子力工学を専門とされるエンジニアや、現場作業に従事される方など、非常に幅広い多くの労働者が必要になってまいります。それから、原子力事業者だけではなくプラントメーカーや建設業といった非常に幅広い業種、職種の労働者が必要となってまいります。この作業は、生身の人間が中に入って行うしかありませんので、そうした労働者の確保に向けて、安全衛生対策はもちろんのこと賃金や労働条件など、今取り組んでいる作業自体に対する社会的な使命、やりがいの確保も、非常に重要な取組だと思っております。今後は、溶けた燃料デブリの取り出しという非常に難事業があるわけで、世界中でも経験が余りないところにこれから取り組むことになります。そういった意味ではこの先 30 年、 40 年にわたって、例えば大学の工学部で原子力工学を志す学生さんたちに取り組んでいただかないといけませんし、高度な知識や技能を持った方々を養成していかなければいけません。それが、ひいては今日のテーマであります緊急時とは異なるものの 1 人当たりの線量集中化を避けることにもつながってくるわけで、廃炉に向けた労働者の確保は非常に重要な案件だと思っております。

 こうした労働者の確保というのは、単に電力事業者だけでできるものではありません。もちろん、それは雇用、労働を掌る厚生労働省だけでもできないわけです。したがって、政府全体として、この問題は国家的な事業として取り組むことが必要だと思います。ついては、労働安全衛生のみならず、厚生労働省としては関係省庁と必要な政策を講じていただきたいということを、意見として申し上げます。

 今回の諮問内容については、原子力に携わる労働者の命と健康を守るという極めて重要な重い内容の諮問です。施策の実施、運用に当たっては、現場の実情を把握いただきながら十分な対応をお願いしたいということを申し上げます。厚生労働省としても、最後まで責任を持って、今回提案された内容、特に事業者の体制の整備のチェック、監督指導等々に取り組んでいただきますことをお願い申し上げ、この諮問された省令案要綱については了承したいと思います。以上です。

○土橋分科会長 事務局側から何かありますか。よろしいですか。

○美濃計画課長 ただいまお伺いした御意見を踏まえて進めてまいりたいと思います。

○土橋分科会長 ほかに御発言はありますか。

○明石委員 お願い事ですが、先ほどパブリックコメントが 30 ほど届いているという話でしたので、次回の分科会で結構ですが、明らかにできる範囲で、主にどんな内容のパブコメがきていて、どのような対応をされたか、もしくは対応されるのかを少し御紹介いただきたいのですが。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。放射線審議会に諮問する予定がもともとありますので、それまでのスケジュール感で考えておりますので、その範囲内でどこまで詳しく説明できるかはこれから検討いたしますが、何らかの形で説明させていただきたいと思います。

○明石委員 紹介できる範囲で、よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 ほかはよろしいでしょうか。

○山口委員  6 ページの健康管理、健康診断について確認の質問なのですが、 1 か月以内ごとに 1 回定期ということで、縦書きのほうを拝見しますと、「配置替えの後 1 月以内ごとに 1 回、定期に」と書いてあります。この健康診断の項目は、やはりベースラインが非常に大事だと思うのですね。被ばくが開始する前にどのぐらいの値であったかが極めて重要だと思うのですが、それについては従事した後 1 か月というと、もう従事してしまっている可能性も出てきてしまうと思いますので、ベースラインを是非取るようなことを配慮したほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 今回の改正事項ではありませんので省略しておりますが、まず放射線業務従事者に対しては、雇入れ時の健康診断と 6 か月に 1 回の特殊健康診断の義務があり、甲状腺のホルモンの検査以外は全て同じ項目を行うことになっておりますので、ベースラインはそれで取れている状態です。それから、いわゆる緊急作業に配置替えになった瞬間に健康診断を行うのは、危機管理の観点からなかなか現実的ではないということがありますので、こういった規定ぶりとなっております。

○山口委員 了解しました。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○角田委員 電離則ということなので、対象は管理区域に限定されるかと思いますが、放射線の事故、原子炉ということを頭の中で想定なさって、今回の改正ということだと思います。一般に、船舶などでそういう危険のある装置が搭載されていたり、あるいは危険性のある物を運搬するというようなことがありますが、そうすると一般的な管理区域でない所でも事故的なことが起こることが考えられるわけです。これは今回の検討とは関係ありませんが、電離則管理区域でない所についても取り決めがあるわけですが、そうしたことへの影響、あるいはそうしたことも少し変えていかなければならないということについてのお考えをお持ちなのかをお聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 御指摘いただきました船舶による運搬ですが、原子力災害特別措置法においては、核燃料などの運搬については適用があります。今日説明いたしました原子力緊急事態、あるいはそれに準ずる事故というのは、運搬中の事故も想定されております。ですので、運搬中にそういった事態が発生した場合には、そこに必ず防災要員が同行する仕組みになっており、そこで緊急対応を行う形になると伺っております。ですので、そういう意味では今回のスキームの中に、防災要員という意味においては船舶の運搬中についても含まれるということです。

○角田委員 船舶が寄港すると陸地に近いわけですね。港ということですが、そのような場合、万が一にも事故と言うことはないのでしょうが、原子力というのが絶対安全だと言われて今回のような事態が起こったわけで、そのような場合に対しての、将来的なことですが、配慮があってもよいのでは、と思っただけであります。ご説明有り難うございました。

○土橋分科会長 ほかはよろしいでしょうか。それでは、当分科会としては、議題 (1) の電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令案要綱について、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                    ( 異議なし )

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で手続をお願いいたします。

 次の議題に移ります。議題 (2) は、労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱についてです。こちらも諮問案件ですが、事務局から説明をお願いいたします。

○田中安全課長 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について」、資料 2-2 を御覧ください。まず 1 ページ、今回の労働安全衛生規則の改正はロープ高所作業の安全対策を図ることを目的とした改正です。ロープ高所作業とは、業界ではいわゆるブランコ作業と呼ばれているものです。ビルクリーニング業務、具体的にはビルの窓拭きです。それと、山の急斜面などの法面の保護工事で行われているロープに労働者がつられて作業を行うようなものです。中程の参考にありますが、平成 21 年に死亡が 4 人、以下 5 人、 3 人と死亡災害が続いており、年間の労働災害による全死亡者数は大体 1,000 人程度ですので、死亡者数としては少ないが、毎年そういう死亡事故が発生している作業になっています。

 その死亡の要因は全て墜落で、発生機序としましては、労働者を保持するロープがビルの屋上なりの支持物から解けてロープごと落下する。あるいは高所作業の準備作業中に屋上から落ちてしまうものです。また、安全帯をしっかりとロックしていなかった、そういった状況で落下するという災害が発生しています。業界団体でもこれまで自主的な災害防止の取組を行ってきたのですが、依然として死亡災害が発生していることから、労働者の安全を確保するため規制を強化するという案件です。本件については、パブリックコメントを 5 18 日から 6 16 日まで行ったところ、 7 件ほどの意見がきています。その中で、後ほど御説明します特別教育に関する御意見が多くありました。頂いた御意見については今後、ホームページで厚生労働省の考え方を公表する予定で準備を進めているところです。
 2 ページの改正の概要ですが、ロープ高所作業の安全対策については、これまで労働安全衛生規則で明確にされていなかったことから、今回初めてロープ高所作業について定義付けを行ったものです。高所作業とはロープを緊結してつり下げ、労働者がこれで身体を保持しつつ作業を行います。次に、具体的な対策の規定について。1、ライフラインの設置です。事業者は身体保持器具を取り付けるための「メインロープ」以外に、安全帯を取り付けるための「ライフライン」を設けなければならないとする規定です。前の 1 ページに戻りまして右側の図ですが、メインロープとは作業中に身体を保持するためのもので、常に荷重がかかっている形になります。それに対して、ライフラインとは作業中は荷重はかかっていない状況にあるわけですが、メインロープに異常が起きた場合にブランコ台から作業者が落ちないように、そのときに安全帯をロックして安全を確保するというものになっています。

 また 2 ページに戻りまして、2、メインロープ等の強度等です。メインロープなどの器具の強度を規定するもので、アで、ロープ高所作業に使用するロープや器具について、十分な強度を有するものを使用しなければならないとしています。イは、メインロープとライフラインはそれぞれ異なる堅固な支持物に確実に緊結するなどの措置を講じなければならないと定めています。3は事前の調査及び調査結果の記録についてです。ビルのガラス清掃や法面保護工事は作業場所がその都度変わることがありますので、あらかじめ、例えば堅固な支持物があるか、突起物などロープが切断する恐れのある箇所はあるかといったことを調査することを義務付けるものです。また4は、その調査結果を踏まえ作業方法などについて作業計画を定め、関係労働者に周知するとともに当該作業計画に沿って作業を行わなければならないとするものです。
 3 ページです。先ほど、あらかじめ調査し作業計画を定めることを説明しましたが、5は定めた計画に基づく作業指揮者を定めなければならないとするものです。その他6にありますように、安全帯の着用、保護帽の使用、使用するロープや器具の点検等についても規定しています。以上のとおり、実施すべき安全対策は非常に基本的な事項ばかりですが、それをしっかりと実施するためにも、労働者をロープ高所作業に就かせるときには、 (2) に定める特別な教育を行わなければならないとしております。

 なお、特別教育については学科を 4 時間、実技を 3 時間とする予定です。今回の改正労働安全衛生規則については、来年 1 月施行、ただし、特別教育については教育の実施体制を確保するのに多少時間を要することがありますので、来年 7 月とする予定でいます。また、一番下の 4 ですが、経過措置も設けています。ビルクリーニングの業務に係る作業、又は法面保護工事に係る作業以外の作業については、必要な墜落防止措置を講じた場合に限り、当分の間ライフラインの設置の義務は適用しないこととしています。これは実は、死亡災害が発生しているビルクリーニングの業務や法面保護工事でのロープ高所作業のほかにも、例えば橋梁、大きな橋ですとか、ダム、風力発電所のブレードなどについて、調査や点検をロープ高所作業で行っている例があることが分かりました。このような作業では、使用する器具も作業方法もビルクリーニング業務や法面保護工事と異なることから、その安全対策については更なる検討の余地があるということです。ライフラインの設置についてのみ猶予とすることとしています。以上で説明を終わります。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた要綱案の審議に移りたいと思います。質問等はありますでしょうか。

○新谷委員 ただいま御報告を頂いたわけですけれども、この資料 2-2 にありますように、ロープ高所作業で 6 年間に 24 名の労働者がお亡くなりになっているという、この実態に非常に驚いています。危険であるということは分かっている作業ですし、プロであるべき事業者が行う事業なのに、ロープが解けて墜落するという、こういう信じられないような状況が発生しているわけです。こうした現状に対して今回、省令を改正をして取組を強化するということですから、その方向については妥当なものであると受け止めています。今回は諮問案件ですので、労働側として意見を申し上げます。資料 2-2 の最後、「経過措置」の所で、ビルクリーニングと法面保護以外のところについて経過措置を設けるということですが、このライフラインは大事な、まさしく命綱です。当分の間これは適用しないということですが、速やかにそれ以外の業界について調査をしていただいて、この「当分の間」が早く外せるように調査をして対応を頂きたいということです。

 また、施行日が来年 1 1 日、それと特別教育については、更に 7 月まで延ばすということですが、是非今回の改正内容をあらかじめ関係事業者に周知をしていただいて、取組への準備を是非徹底していただきたいとお願い申し上げ、諮問案件ですので、私どもとしてこれを了承したいと思います。

○田中安全課長 よろしいでしょうか。今、御指摘のとおり死亡がこれだけ起こっていたということは非常に重大なことです。私どもとしてもいろいろ指導はしてきたというところはあったのですが、それを今回、規則として整備するということで御理解いただきたいと思います。

 経過措置の問題ですが、これにつきましても引き続き、簡単にいうと、そこの業界では死亡事故は起きてないというのがありまして、調査がされていない部分になっています。それの安全対策については引き続き検討を進めながら、この経過措置の解消といいますか、その辺については進めていきたいと思っています。

○土橋分科会長 ほかに御発言はありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、当分科会としまして、議題 (2) の労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                  ( 異議なし )

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは事務局で手続をお願いいたします。

 最後に議題 (3) 「第 12 次労働災害防止計画の実施状況」についての報告案件について、報告を受けたいと思います。事務局から説明をお願いします。

○美濃計画課長 議題 (3) について、資料 3-1 について御説明申し上げます。第 12 次労働災害防止計画では、 PDCA サイクルを適切に回すため、毎年計画の実施状況をこの分科会に御報告することとされております。先般、平成 26 年の労働災害発生件数が確定しましたので、平成 26 年の状況を御報告申し上げます。
 1 ページ目を御覧ください。第 12 次労働災害防止計画においては、計画の目標として、死亡災害の撲滅を目指して、平成 24 年と比較して平成 29 年までに労働災害による死亡者の数を 15 %以上減少させること、さらに、平成 24 年と比較して、平成 29 年までに労働災害による休業 4 日以上の死傷者の数を 15 %以上減少させることとされています。平成 26 年の労働災害発生状況については、平成 27 4 28 日に記者発表しているところです。別途、資料 3-2 としてお配りしています。資料 3-1 1 ページ、平成 26 年の死亡者数は 1,057 人、平成 24 年と比較して 3.3 %の減となっています。休業 4 日以上の死傷者数については 11 9,535 人で、平成 24 年と比較して 0.03 %減となっています。

 資料 3-1 2 ページ、平成 26 年の労働災害の動向ですが、 1 3 月期の消費税増税前の駆け込み需要もあって経済活動が活発になったことや、 2 月の大雪による影響などにより、平成 26 年上半期は平成 25 年同期に比べて大幅に増加したところです。これを受けて厚生労働省では、 8 月に労働災害のない職場づくりに向けた緊急対策として、労働災害防止団体や業界団体などに対して、安全衛生活動の総点検、各事業場における自主点検を要請するなどの対策を実施したところです。その結果、下半期については、労働災害は平成 25 年同期に比べ減少が図られました。ただ、上半期の増加分と合わせると通年では平成 25 年と比べて増加、平成 24 年と比べて微減という結果となりました。なお、平成 27 5 月の速報値も掲載していますが、昨年下半期の減少傾向を引き続き維持しているところです。

 そのほか、平成 26 年の第 12 次労働災害防止計画に係る取組状況について、これから担当官より詳しく御報告を申し上げます。目標達成に向けて第 12 次労働災害防止計画に定められた事項に着実に取り組むほか、昨年の緊急対策のように労働災害発生状況に応じた機動的な取組を今後とも進めてまいる所存です。それでは、担当官より取組状況について御説明申し上げます。

○安達調査官 引き続き 3 ページを御覧ください。昨年の実施状況ということで、全体傾向をお示ししています。左側が死亡災害です。点線は第 12 次防の目標ラインと見ていただければ結構です。死亡災害、全産業については減少傾向がなだらかになっています。製造業は一定の減少傾向が見られます。建設業は平成 26 年、増加でした。右側は死傷災害です。全産業は、ほぼ横ばいでした。下の重点業種です。陸上貨物運送事業、社会福祉施設、小売業、飲食店については、残念ながら減少傾向が見られなかったところです。

 次に 4 ページです。ちょうど昨日、平成 27 5 月末現在の速報値を取りまとめましたので、参考に説明いたします。 5 月末の同時期との比較です。左側が死亡災害です。全産業がほぼ目標ラインに近づいています。製造業は大きく減少、建設業は目標ラインに近いところで推移しています。右側の死傷災害です。全産業は今、目標ラインにかなり近づいています。下の重点業種です。陸上貨物は減少傾向が見られましたが、社会福祉施設、小売業、飲食店については目標に向かって更に取組が必要だというところです。

 次に、 5 ページの平成 26 年の主な取組を簡単に説明いたします。先ほど説明がありましたが、平成 26 年上半期の状況を踏まえて 8 月に緊急対策を講じたところです。 250 団体への要請と、 (2) のとおり各都道府県の状況に応じた取組を推進し、一定の効果があったと考えています。
 6 ページです。非常に多い転倒災害については、今年の 1 月から「 STOP !転倒災害プロジェクト 2015 」というのを進めています。平成 26 年の実績には反映されないものですが、速報値から一定の効果が出てきているところです。
 7 ページ、交通労働災害防止の取組です。平成 26 年、死亡災害は墜落、転落災害に次いで、この交通労働災害が多くなっています。春の交通安全運動とか、ちょうどこの 6 月、全国安全週間の準備期間等、周知啓発に努めるとともに、業種の特徴に着目した対策として、関係行政機関、あるいは関係団体とも連携し対策を進めています。
 8 ページです。全国安全週間ということで、今月がその準備月間であり集中的な取組を進めています。今年の特別重点事項としては、先ほどの転倒災害防止対策と足場からの墜落防止対策、これは先般分科会で御審議いただいた改正内容ですが、こういったところを重点事項とさせていただいています。
 9 ページからが 12 次防の個別の目標事項に対する実施状況です。まず、第三次産業の状況です。小売業については平成 26 年、 2.0 %増、社会福祉施設については 11.5 %増、飲食店は 2.3 %増となっています。それぞれ「労働災害の動向」の所に要因を書いていますけれども、転倒災害が多くなっているところです。
 10 ページはこれまでの取組状況です。繰り返しになりますけれども、○の 2 つ目、今年の 1 月から「 STOP !転倒災害プロジェクト 2015 」を進めています。 5 つ目に、特に社会福祉施設を中心として腰痛災害も多く発生しているということで、講習会の実施などの取組を進めています。非正規労働者の割合も高いのですが、その取組についてはまた別のシートで御説明します。今後の取組については、特に関係業界を捉えた自主的な取組を支援することを進めていきたいと考えています。

 続いて 11 ページ、陸上貨物運送事業対策です。こちらは目標値に対して平成 26 年は 2.7 %増となっています。これまでの取組にありますが、災害の中でやはり荷役作業における災害が多いということで、国土交通省と連携した取組を進めています。また 4 番目の荷主に対する取組要請というところも実施しています。今後の取組については、こちらも関係業界団体による取組の促進を検討しています。
 12 ページは建設業対策です。こちらは死亡者数を目標値にしていますが、平成 26 年は 2.7 %増となっています。これまでの取組ですが、○の上 3 つが墜落防止対策ということで、 1 つ目の○ですが、今年 7 月から施行される足場の規制強化に取り組んでいます。 4 つ目、 5 つ目が発注者対策ということで、特に 4 つ目の安全衛生経費の確保ということで、都道府県労働局単位で連絡会議を立ち上げ、必要な要請を行っているところです。今後の取組としては、 1 つは安全性の高いハーネス型安全帯の普及を図ること、 2020 年東京オリンピック・パラリンピックに向けて工事の安全対策を進めることも検討しています。
 13 ページは参考ですが、以前当分科会において、建設業における一人親方の死亡災害の状況を報告してほしいということがありました。平成 26 年厚生労働省調べでは一人親方による死亡災害は 32 名となっています。
 14 ページは製造業対策です。死亡災害が 9.5 %減少と目標値を更に下回る数字になっています。これまでの取組ですが、食料品加工用機械における災害が多いということで、平成 25 年に規制強化を行いました。また、各種リスクアセスメントの取組も実施しています。今後の主な取組としては、機械の本質安全化を、特に中小事業者への対応も含めて推進していくことを考えています。
 15 ページ、メンタルヘルス対策です。こちらの目標はメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を 80 %以上としていまして、昨年、平成 25 年の状況は御報告した 60.7 %となっています。今年度も調査を行うこととしており、その結果については平成 28 年に御報告させていただきます。取組内容については、まず改正労働安全衛生法が本年 12 月に施行されます。黒ポツの 2 つ目ですが、小規模事業場向けのストレスチェック実施促進助成金や小規模事業場に対する支援も進めていきたいと考えています。○の 3 4 つ目ですが、例えばポータルサイトや相談窓口の件数もかなり実績が上がっており、非常に関心が高まっているところです。今後の取組ですが、 1 つ目の○、メンタルヘルスに関する電話相談ということで、労働者向けの電話相談窓口も新たに開設することとしています。
 16 ページ、過重労働対策です。こちらの目標は週労働時間 60 時間以上の雇用者の割合で、月の残業時間が 80 時間を超えないようにということで、目標値は 6.5 %以内ということですが、平成 26 年は 8.5 %となっています。これまでの取組については、厚生労働大臣をトップとする「長時間労働削減推進本部」の設置、また、働き方改革を進めており、本省あるいは都道府県労働局において、企業トップへの働きかけを行っています。○の 3 つ目、長時間労働あるいは過重労働が疑われる企業への重点監督も進めています。今後の主な取組ですが、 2 つ目の○にある過労死等防止対策推進法に基づく大綱が本年取りまとまる予定ですので、この大綱に基づく各種取組、調査研究や相談体制の整備といった取組で、過重労働対策を更に進めていくこととしています。
 17 ページは熱中症対策です。季節的な変動も非常に大きいということで、目標値としては、計画期間中 5 年間の合計値で評価をすることとしています。まだ 2 年経過していませんので、目標値の所のすみ付き括弧の年平均を暫定的に見ていただければと思います。目標値は年平均 312 名で、平成 25 26 年の平均が 477 ですから、取組が必要というところです。取組の所ですが、こちらの熱中症対策については注意喚起などを行っており、今年も 5 14 日に熱中症の状況や重点対策を取りまとめたものを公表し注意喚起を行っています。今後についてもこのような重点対策を引き続き実施していくこととしています。
 18 ページ、化学物質対策です。目標については、化学物質対策については危険有害性情報を基点とした対策が非常に重要ということで、この情報伝達、ラベル表示あるいは SDS の交付を行っている製造者の割合を目標値としています。平成 26 年度の調査結果が今年の秋口にまとまる予定ですので、また御報告したいと考えています。化学物質対策については改正法に基づくリスクアセスメントの義務化が平成 28 6 月から施行されます。それに対応する各種支援措置も実施しています。 4 つ目の○ですが、発がん性があると評価された化学物質のリスク評価も継続的に実施しており、規制が必要な物質については順次規制をする形になっています。今後の取組ですが、簡易なツールである「コントロール・バンディング」の改良とありますが、特に中小事業場向けの取組を促進することに取り組むこととしています。
 19 ページは受動喫煙防止対策です。目標は職場で受動喫煙を受けている労働者の割合を 15 %以下にするということで、平成 25 年度の状況は昨年御報告した 47.7 %となっています。今年度もう一度調査をしますので、こちらは平成 28 年度にまた御報告したいと思います。これまでの取組ですが、まず改正労働安全衛生法が 6 月に施行されたところです。また、各種支援措置として、助成金の実績も上がってきていますので、引き続き改正法やこのような支援措置の実施に取り組むこととしています。
 20 ページの非正規労働者対策です。目標値は設定されていませんが、業種横断的な取組という形で 12 次防の中に位置付けられています。これまでの取組ですが、平成 25 年に非正規労働者の実態把握ということで調査を行い、昨年、調査結果について御報告させていただきました。下の参考にありますが、例えば安全衛生教育とか安全衛生活動については、やや低調だというような状況が見られます。こうしたことから、非正規労働者に対する雇入れ教育の徹底などに今取り組んでいます。今後の主な取組としては、安全衛生教育マニュアルの作成、公表ということで、未熟練労働者に対する標準的な教育マニュアルを作成することとしています。また実態把握については、もう少し詳細にという分科会での御議論もありましたので、今年度、再度調査を実施することとしています。

 最後に 21 ページ、その他として、目標が設定された事項以外にも 12 次防で様々な規定があります。上から 3 つ目の「社会、企業、労働者の安全・健康に対する意識改革の推進」を見ますと、改正労働安全衛生法において、特別安全衛生改善計画が創設され、今年の 6 月から施行されています。また同じ 6 月には、安全衛生優良企業公表制度というものが創設され、既に都道府県労働局に申請が上がってきていると聞いています。一番下の東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた対応ということで、上から 4 つ目が今回、議題の 1 番目で御議論いただいた電離則等の改正とか、一番下の震災の復旧復興工事に関する新規参入者等教育支援や安全対策についても今、実施しているところです。

 以上が平成 26 年の状況ですが、冒頭申しましたとおり、非常に災害が多い中で、下半期あるいは平成 27 年の上半期はその減少傾向を堅持しているような状況です。本年は 12 次防の中間年ですので、引き続き目標達成に向けて取り組んでまいりたいと考えています。以上です。

○土橋分科会長 ただいまの説明について、質問等はございますでしょうか。

○犬飼委員  12 次防について、平成 26 年の報告を頂いたところです。資料 3-1 1 3 ページに書かれている 2010 年以降の労働災害の状況を見ると、平成 26 年は上半期で労働災害が増加しています。平成 26 8 月に緊急対策を実施したことから、下半期で減少。平成 25 年に比べると、年間を通してでは微減という状況です。また、資料 3-1 3 ページの右側を見ると、陸上貨物運送、社会福祉施設、小売業、飲食店では、減少どころか増加しているのです。重点業種として取り組んだにもかかわらず、この状況にあるということです。 4 ページにある平成 27 5 月までの状況を見ても、社会福祉施設、小売業、飲食店では増加しているという状況なのです。

 いみじくも、事務局から「 PDCA で進めていく」という話があったのですが、 2015 年は今ほど言われたように、 2013 年から始まった 12 次防、 2017 年までの 5 年間の中間年ということで、後半期にいよいよ入るわけです。 2014 8 月に緊急対策が行われ、労働災害が減ったということで功を奏しているとは思うのですが、こうした事後的な緊急対策だけで、ここで一生懸命検討して作り上げた目標に届くのかということを非常に懸念しております。業種ごとの「今後の主な取組」ということは記載されていますが、それも「自主的な取組に対する支援を行う」というような文言が垣間見られて、本当に大丈夫なのかという思いがするのです。 2015 6 月になれば 2015 年上半期の傾向というのは自ずと見えてくるので、それを踏まえて、「引き続き」とおっしゃったのですが、何らかの追加対策など、 12 次防の目標に沿っていくような方向になる対策を何か考える余地はあるのかということを、まずお聞きしたいと思います。

○美濃計画課長 平成 27 年の労働災害の速報値では、先ほどから申し上げているように、平成 26 年下半期からの減少傾向は継続して、全体として減少傾向が見られているところです。

 ただ、御指摘のとおり、第三次産業の一部の業種など、第 12 次防の目標値の達成に向けて、まだまだ取組が必要な状況にあります。本年 1 月から、ストップ転倒災害、さらに、交通労働災害の防止ということで取り組んでいるところですが、今後も引き続き第 12 次防の目標の達成に向けて、本日御説明した対策をしっかりと進めていきたいと思っております。昨年の緊急対策のように、速報値の動向、災害の特徴などを見極めつつ、必要に応じて緊急的な対応、重点的な取組を効果的に進めていきたいと考えている次第です。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○新谷委員  16 ページの過重労働対策についてです。平成 26 年の労働災害の状況が公表されていまして、資料 3-1 にも冒頭に労働災害での死亡者数 1,057 名という痛ましい数字が載っているわけですが、いわゆる過労死で認定された方というのは、この 1,057 名との関係では、どのように見たらいいのでしょうか。

○美濃計画課長 労働災害の内数として含まれているということです。

○新谷委員 資料 3-2 2 ページに、死亡者 1,057 名について事故の型別の発生状況が書かれてあって、一番多いのが「墜落・転落」です。「はさまれ」が 151 名で 3 番目です。確か平成 25 年の過労死認定数が 133 名だったと思うのですが、平成 26 年は何名かを教えていただけませんか。

○毛利主任中央労働衛生専門官 平成 26 年につきましては、補償課が今月中に公表すると聞いておりますが、まだ数字が確定していないということです。

○新谷委員 今は「その他」の 256 名の中に入っているということでよろしいですか。

○毛利主任中央労働衛生専門官 労働災害の統計の限界と言いますか、平成 26 年の 1 月から 12 月に発生したものについて、平成 27 3 月末までに労災認定されたものが、この災害統計に入ってくるという仕組みになっておりますので、例えば先ほどの 133 人のうちの一部が、この中に入ってくることになります。

○新谷委員 これは平成 26 年の数字ですので、平成 25 年ですと労災死亡者 1,030 名、そのうち脳・心臓疾患が 133 名ですから、平成 25 年で見ても原因別の労災認定の数からいくと、かなりのウエイトを占めると思います。

 そうしますと、資料 3-1 16 ページについて、過労死が労災による死亡原因の中でもかなりのウエイトを占めているという認識の下に、過重労働対策の取組が行われなければいけないと私たち労働側は考えております。この資料の中には幾つか取組されたことが書かれてありますが、重要な取り組みが書かれていません。総理大臣の指示で、違法な長時間労働を繰り返している企業に対する指導・公表制度が今年の 5 18 日から実施されています。違法な長時間労働、 1 か月当たり、時間外、休日労働が 100 時間を超えていること、繰り返し違法な状況にあること、あるいは大企業であることなどが要件となって、その企業名を公表するという制度が、 5 18 日から実施されているわけです。しかし、この制度が記載されていないのです。こういう大きな取組がなされているのに、しかも 12 次防の期間中に、過重労働対策として同じ厚生労働省労働基準局の中で実施されているのに、なぜ記載されていないのかが不思議なのです。それを後で教えてほしいと思います。

 申し上げたいのは、改正労働安全衛生法が順次施行されている中で、今年の 6 月から特別安全衛生改善計画制度がスタートしています。この安全衛生分科会でもかなり論議をして改正労働安全衛生法につながったわけですが、これは労働安全衛生法関係の法令に違反し、一定期間内に同様の重大な労働災害を繰り返し発生させた企業に対して、改善命令と勧告、最後は企業名の公表という対応を行うというものです。この審議の際も、私たちは随分申し上げて、結局は今回の労働安全衛生法改正の中には盛り込まれなかったのですが、労働災害というのは労働安全衛生法以外の法令違反でも発生しております。特に過重労働や長時間労働、違法な長時間労働を繰り返す企業というのが当然いるわけで、今回はそれを捉まえて、 5 18 日から企業名の公表を行うという制度が施行されています。これは法令に基づかず、総理大臣の指示に基づいて実施されているものですが、一方では労働安全衛生法の改正部分に基づいて、特別安全衛生改善計画制度がスタートしているわけです。

 労働安全衛生法違反ではないけれども、同じように労働災害として認定される原因になるような働かせ方をさせている企業名を公表する制度がある。一方で、この特別安全衛生改善計画制度がスタートしていて、同じように労働災害に絡む法令違反について公表する。同じような制度ではあるが、根拠となるものは違っている。一方は法令に基づき、一方は総理大臣指示に基づいて実施されているわけです。法制度としてこれを整備するのかしないのかも含めて、もう少し整合性の取れた形で取り組む必要があると思います。この安全衛生分科会で検討・議論してきた内容と似通った内容の取り組みが、総理大臣から言われれば政府は実施するのだという仕組みも、主張した労働側にとっては、残念だという思いがあります。結果としてはいいことなのですが、決定のプロセスとしては非常に残念な内容になっております。この辺の今後の取扱いについて、 12 次防の過重労働対策として盛り込まれていないということも含めて、どのように受け止めたらいいのかということを説明していただけませんか。

○美濃計画課長 まず、 1 点目の「盛り込まれていないのではないか」との御指摘です。今お話のあった、総理指示にて過重労働企業の公表ということですが、項目としては、 16 ページの過重労働が疑われる企業等に対する重点監督の実施など監督指導の強化。趣旨自体がここに盛り込まれているものだと思っております。この総理指示の趣旨としては、違法な長時間労働を繰り返している企業に対して、指導ということで長時間労働に係る労働基準法の違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、社会的に影響力の大きな企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返しているような場合に、都道府県労働局長が経営トップに対して全社的な早期是正について指導するということであり、その事実も公表するというものです。

 お尋ねになられた 2 点目の、特別安全衛生改善計画との関係ですが、特別安全衛生改善計画は重大な労働災害の再発防止といった観点から行うものであり、この分科会でも御審議いただきましたように、労働安全衛生関係法令に違反し、死亡災害あるいは障害等級 7 級以上の重大な災害を 3 年以内に複数の事業場で生じさせた場合に、厚生労働大臣が再発防止のための改善計画を作成指示するというものであり、その指示に従わない場合については、その企業名を公表していくというものです。

 このように、両者は趣旨、公表の対象、基準が異なるところで、結果として御指摘のように対象企業が重複する場合もあり得ると考えておりますが、実施に当たってはそれぞれの取組の趣旨に沿った対応を行っていきたいと思っております。いずれにしましても、過重労働における健康障害防止対策については、引き続き安全衛生の担当部署と監督部署が連携しながら、御指摘の趣旨も十分に踏まえながら一層の推進に努めていきたいと考えている次第です。

○新谷委員 まず、 1 点目の回答について、資料 3-1 16 ページに「過重労働が疑われる企業等に対する重点監督の実施」と書かれてあるのですが、 5 18 日に政府から出ている方針では、疑いなどを挟む余地などなくて、企業名公表のための要件が明確に書かれてあるわけです。今の御説明と資料 3-1 16 ページに書かれてある内容から、読み取れというのは全く無理な話です。先ほど申し上げたように、労働災害の中の死亡者数に占める過労死数というのは、原因別で見るとかなり上位の原因に入ってくる、非常に重大な原因になっているわけです。政府としても過重労働の防止のために、重大な違法長時間労働を繰り返す企業名を公表するという、まさに大きな方針転換を行い、行政として取組をするということを決定したわけですよね。それをなぜここに書かないのかということなのです。

 労働政策審議会は公・労・使の三者構成による審議会なので、使用者側の対応を慮って書いていないのだと思いますが、それではいけないと私は思います。これは政府として取り組むと決めたわけですから、安全衛生分科会に、取組の報告がないというのは非常に違和感があります。今の説明では全然納得できませんので、改めての答弁を求めたいと思います。

○美濃計画課長 繰り返しで恐縮なのですが、全社的な早期是正について指導していくということで、監督指導の強化という中に趣旨としては含まれ得るのではないかということです。ただ、御指摘のように、新たな取組ということですので、そうした観点から、引き続き連携を取ってしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

○新谷委員 なぜ書かないのですか。政府として、こういう重大な方針決定をされているのに、しかも法令に基づかずに、政府の意思として企業名を公表するということを総理大臣の指示で実施しているのに、なぜ安全衛生分科会の過重労働対策の報告内容に盛り込まれないのか。 12 次防の中で重大な方針転換をしたのに、なぜそれを書かないのか、そこを聞いているのです。

○美濃計画課長 そうした趣旨で書いていないということではありません。新谷委員の御指摘は十分に踏まえた上で、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○三柴委員  2 点申し上げます。 1 点目は新谷委員からお話のあった、安全衛生施策と労働時間施策との関わりについてです。この点は一筋縄ではいかず、国によって価値判断が必要な課題なのだろうと思います。 EU では両者の関係が密接に考えられており、例えば加盟国のイギリスですと、安全衛生法制の中で労働時間令というものが定められ、両者一体で進められているわけですが、イギリスの場合はそもそも労働時間に対する規制がなかったという前提があり、安全衛生施策の一環としてだったら進められるだろうという価値判断があったということです。ドイツであれば、安全衛生施策の一環として取り扱われる労働時間課題は、おおむね深夜業、交代制労働に焦点が絞られてきた経過があるので、そこの関係をどうするかということは、国ごとに事情に応じて考えていかなければいけません。

 日本の場合、もともと労働時間規制には、労働者の安全衛生プラスアルファの趣旨があって、管轄部署も設けられ、規制と運用が進められてきているという経過があるので、余り掛け合わせて考えすぎると、ひょっとすると、かえって施策が進みにくくなる部分もあるかもしれません。私自身、決して両規制の連携なり重複を否定する立場ではないのですが、そこの関係性は慎重に検討しないと、かえって対策を実効化できないかもしれないということを考えています。

 もう 1 点は、今回お示しいただいたペーパーに掲載された課題ごとの対応策一般についてです。これには、課題を跨ぐ共通点と課題ごとに個性があるものがあると思うのですが、おおむね共通しているのは、安全衛生人材の育成の重要性かと思います。現在図られている PDCA サイクルの推進政策には、以前いたベテランの人材がだんだん減ってきて、若手への継承も進みにくいから、なるべく精緻で実態に合った対応策のルール、マニュアルを作って進めていくように、対策をシステム化していこうという背景があったと思います。それはそれで重要なのですが、実際にシステムを作るのも運用するのも人ですので、ここで改めて、安全衛生人材の育成の重要性が説かれてもいいのかなと思うのです。

 それは、個々の企業の現場でもそうだし、関係団体でもそうだし、行政でもそうではないかと思われます。さらに、そうした人材を育成した上で、また育成の過程で、関係者間のネットワーク形成や対話の推進を図ることも重要かと思います。

 今、現場で起きている課題は、複雑で根も深いものが増えてきているので、関係人材というときにも、専門性が今までと違った形で求められてくることは前提として、関係団体の体制と機能の整備充実化も含めて、考えていかねばならないように思われます。

○土橋分科会長 ほかに御意見等はございますでしょうか。

○山口委員 業種別に見たときに、社会福祉施設の 4 日以上の死傷というのは明らかに増えているのですが、それをどのように解釈するかというときに、そもそも従事者数が増えれば、リスクが同じでも増えていくと思うので、その辺はどのように解釈していらっしゃるのでしょうか。

○田中安全課長 社会福祉施設については、 1 つ大きな要件として、施設の数が非常に増加しているということがあります。そういった中で、いかに災害を減らしていくかという取組になっているわけですが、そういった部分については非常に難しいというのが正直なところで、社会福祉施設そのものが新たにできるという格好になっていますので、そういう経験がない分野になりますので、そういった分野について安全衛生に対する取組を進めてもらう。そういった中で事故を抑えていくという取組になっていくと思います。

○山口委員 ただ、業種全体は人数でやって全く問題はないと思うのですが、業種別に分けたときは、今おっしゃったような補助的な情報がないと、一般の方がこのグラフを見ると、リスクがどんどん上がっているのではないかと見ると思うのです。厳密なデータを出すのは難しいのは分かるので、補助的な情報を一緒に出していただくと、解釈がよりシャープにできると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○美濃計画課長 最初の御質問の点に関して申し上げます。資料 3-2 10 ページを御覧ください。御指摘のように、労働力調査によると、雇用者数が前年より 4.3 %増加して、そのうち 60 歳以上の雇用者数が平成 27 2 月時点で 71 万人という形になっており、前年同期の 63 万人から 11.7 %増加しているという状況も、背景としてはあるのかなと思っております。別な指標というお話がありましたが、社会福祉施設における「千人率」、どれだけの割合で事故が発生したかということで申し上げますと、平成 24 年が 2.0 、平成 26 年が 2.0 ということで、発生割合としては変わっていないという状況です。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○辻委員 資料 3-1 9 10 ページについて意見させていただきます。第三次産業では、一部を除いて全体的に労働災害が増加傾向にあり、特に社会福祉施設で顕著です。日本が今後超高齢化社会を迎えていく中で、社会福祉施設の充実はより一層重要と考えます。確かに新規参入者が多く、労働者数が増えているということは言えますが、そこでの労働災害が多くて、かつ増加しているという点は、決して看過することはできないと思います。

 第三次産業においても、労働災害防止対策を着実に進めるためには、各組織のトップの意識改革が極めて重要です。資料 3-1 10 ページに、「 12 次防計画期間中の今後の主な取組」として、「社会福祉施設のトップを対象とした講習会を開催」との記載がありますが、厚生労働省として腰痛予防対策に限定せずに、もう少し幅広いテーマで労働災害対策、防止対策を徹底するための講習会も開催するべきだと考えております。この点について事務局の考え方をお聞きしたいと思います。

○毛利主任中央労働衛生専門官 腰痛対策については、今言われましたように、社会福祉施設を含む保健衛生業が業種で見ると一番多いのは確かですが、そのほかにも商業、製造業、交通運輸業が多くなっています。平成 25 年に腰痛予防対策指針を作った中では、全業種に共通する一般的な対策と、更に腰痛の発生が多い重量物取扱い、立ち作業、座り作業、車両運転の作業などについて、個々に対策を示しているところですので、この指針ではそうした社会福祉施設以外の腰痛の多い業種の作業も対象にしているところですので、この内容については、安全週間、衛生週間などの機会も活用し、今後広く周知を図ることとしているところです。

○美濃計画課長 腰痛はもとよりなのですが、現在、第三次産業、社会福祉施設をはじめとして、関係の業界団体と話合いを持っているところであり、そうした業界団体の自主的な取組を支援できないかということで、 10 ページに「今後の主な取組」に挙げておりますが、そういった支援ができないかということで検討を行っているところです。

○土橋分科会長 ほかに御質問等はございますでしょうか。

○小畑委員 資料 3-1 11 ページ、陸上貨物運送事業の関係で申し上げます。死傷災害数を見ると、過去 2 年間で 2.6 %あるいは 2.7 %と、いずれも 2 %台後半で増加しております。労働災害の防止については、当然事業主に第一義的な責任はありますが、発注者からの指示、代金面での制約など、事業主だけではなかなか解決しにくい側面があるという事実に留意する必要があると思っています。 12 次防のこれまでの取組として、荷主等に対する取組支援が実施されてきたとの記載があります。更に今般、荷主企業と運送事業者の協力による、トラックドライバーの長時間労働の改善に向けた取組事例も公表されたということです。こうした取組は非常に重要であるので、今後も折に触れて厚生労働省には同様の取組を継続していただきたいと思っているところです。

 また、「国土交通省と連携した周知」という記載があり、その中で「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」が記載されていますが、これが改組されて、 5 20 日に新しく「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」がスタートしたところです。国土交通省、厚生労働省のみならず、経済産業省、中小企業庁が加わって、業界団体、労働組合、学識経験者たちをメンバーに、今後地方段階でも開催され、更に業界団体、各都道府県トラック協会とのタイアップで、各都道府県 100 名のドライバーに対する実態調査も行われると聞いているところです。厚生労働省におかれましては、今後とも国土交通省あるいは関係業界団体、荷主関係団体などとの連携を緊密に図っていただきたいと思っております。加えて、これまでに何度も申し上げておりますし、先ほども出ましたが、過労死と脳・心臓疾患に関する労災状況を見ますと、陸上貨物運送事業が請求件数あるいは支給決定件数のいずれも飛び抜けて高いという状況です。当該産業の当事者自身が取り組んでいくことはもとより、より一層、国を挙げての取組が必要であると思っているところです。

 そういったことを踏まえた上で、最後に 1 点お聞きします。陸上貨物運送事業における安全対策には、荷主側でなければ行うことのできないものが現実問題としてあります。厚生労働省「陸上貨物運送事業の荷役作業における安全対策ガイドライン」について中身を見ると、荷主側が実施すべき安全対策事項が非常に具体的に記載されており、このガイドラインの周知、その実効性を高める取組が極めて重要だと思っております。しかし、資料 3-2 の参考の 7 ページに記載があるように、運送事業者における本ガイドラインの認知率が約 6 割にとどまっているということであるため、厚生労働省として今後これをどのように、更に周知徹底を図っていくのかをお聞かせいただければと思います。

○田中安全課長 今お話があったガイドラインの周知の問題です。これについては、先ほど国交省とも連携を取りながら進めていくという話がありましたが、そういった中で、日本トラック協会が実施するセミナー等の中でガイドラインの周知、また私どもで荷主等が、自社の荷役作業や荷役現場を直接確認するためのチェックシートの作成を行っておりますので、そういったものを荷主等の関係、業界団体を通じて、その活用を周知していくという形で、できるだけ広めていきたいと思っております。

 また、私どものほうで、製造業、大規模小売業、第三次産業対策の中で、そういった分野にも指導等を行っております。そういった際には、荷主としての安全対策の必要性について、併せて指導、説明することにしております。そういった中で、荷役ガイドラインを実際の製造業の工場、大規模小売店の広いエリアに広げていきたいと考えております。

○小畑委員 今お話のあったガイドラインの中で、多分巻末だったと思いますが、「安全作業連絡書」というのがあり、荷主と事業主の役割分担の部分で、非常にいい内容が盛り込まれています。

 ただ、一方、国土交通省は国土交通省の立場から、「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」というものを策定しております。事業者にとっては 2 つのガイドラインあるのは非常にややこしいということもあります。この中身の精査をしていただき、書面としては共通化を図ることも含めて連携の強化をしていただければ有り難いと思いますので、よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○縄野委員 資料 3-1 15 ページ、メンタルヘルス対策についてです。本年の 12 1 日からストレスチェック制度が実施されるわけですが、 4 月に厚生労働省が開催した説明会にも多くの参加者があり、質問も多数寄せられたましたし、報道に取り上げられることも多くなってきております。したがって、ストレスチェック制度に対する関心も高まってきていると思っております。一方で、このストレスチェック制度は、高ストレスの労働者を見付け出すための手段というように誤解されかねない恐れもあると思っております。制度の開始まで半年弱という短い期間ですが、是非、厚生労働省としても制度の正確な周知に、更に御尽力いただきたいと思います。

 なお、従業員 50 人未満の事業場でのストレスチェックの実施については、努力義務止まりとなっているわけですが、これまで労働側から再三再四申し上げてきていますように、労働政策審議会の総意は、 50 人未満の事業場も含む全ての事業場でストレスチェックを実施するというものでした。この点も踏まえ、地域産業保健センターからの支援を強化するなど、 50 人未満の事業場でもストレスチェックが実施されるよう、積極的な取組を是非進めていただきたいと思います。

○井上産業保健支援室長 ストレスチェック制度の周知については、先ほどおっしゃったように本省でも説明会を開催しましたし、これから 12 月の施行に向けて、各労働局、監督署で、あらゆる機会を通じて、その趣旨及び内容について周知徹底を図っていきたいと思います。 50 人未満の事業場についても、地域産業保健センターにおいて支援したり、それからストレスチェック実施促進助成金というものも用意し、できるだけストレスチェックの導入が進むように努めていきたいと思っております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○勝野委員  17 ページの熱中症のところです。こちらの数値を見ると、年平均でいっても 20 %以上増加しているということで、取り分け建設現場でも重要な課題になっていると思います。これについて、 5 14 日付けで厚生労働省から、対策の実施ということで文書が出されており、そちらを見てみました。昨年の段階で、熱中症で亡くなられた方は 12 人、そのうち 11 人については WBGT 値の測定が行われていなかったという統計が出ています。例えば厚生労働省として、測定値の設置状況の把握はされているのかという点が 1 つです。

 もう 1 つは、計測された数値等について、記録なり保存を義務付ける必要があるのではないかと考えるのですが、その点についてどうか。 2 点ほどお聞きいたします。

○毛利主任中央労働衛生専門官 熱中症については、今ありましたとおり、 5 14 日に通知を出し、建設業、それに付随する警備、製造業を重点業種とし対策を示しているところです。委員がおっしゃいましたように、確かに WBGT の測定を行い、それに応じた対策を取るということが非常に重要なわけですが、現時点で言うと、いわゆる事業場の中で実際にこの通知に従って指導はしていきますが、それがどれぐらい測定されているかという数字は手元に持ち合わせておりません。今頂きました WBGT の測定あるいはその記録については、今後指導していくことも検討したいと思っております。

○土橋分科会長 ほかに御意見、御発言はございますか。

○辻委員 資料 3-1 19 ページの受動喫煙防止対策に関してです。この 6 1 日から受動喫煙の防止措置に関する努力義務が事業主に対して課せられています。既に通達も発出されています。是非、国においても、より一層この法律、制度の周知に御尽力を頂きたいと思います。

 なお、前回の安全衛生分科会も含めて繰り返し申し上げておりますが、労働側としては、あくまでも努力義務ではなく、義務化すべきであると考えていることを改めて意見として申し上げます。

○濱本環境改善室長 環境改善室長です。ただいま御指摘いただきましたように、本年の 6 1 日から、労働安全衛生法のうち受動喫煙防止対策部分を施行させていただいております。現在、都道府県労働局、労働基準監督署等を通じ、積極的な周知を図っているところです。また、先般の分科会の中でも御報告させていただきましたように、改正法の施行に合わせて発出した通達に、具体的な対策の手法の情報なども盛り込み、こういったことも併せて周知を図っているところです。

 さらに、助成金をはじめ支援措置の実績については、平成 25 年度から比べて平成 26 年度は非常に伸びており、こういった支援措置の有効な活用も含め、職場における受動喫煙防止対策が今後ともしっかりと推進されるように、私どもも更なる周知・啓発に努めてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 ほかに御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、議題 (3) 12 次労働災害防止計画の実施状況について、報告を受けたことにさせていただきます。かなりいろいろと御意見を頂きました。事務局においては、今日の御意見を踏まえ、 12 次防の一層の取組推進をお願いしたいと思います。議題 (3) は終了します。

 最後に議題 (4) 「その他」です。何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、これで全ての議題を終了しました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○美濃計画課長 本日も熱心に御議論いただき、感謝申し上げる次第でございます。御了解いただきました諮問案件につきましては、早急に所要の手続きを進めさせていただきます。

 次回の分科会につきましては、追って御案内させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

○土橋分科会長 本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は小畑委員、使用者代表委員は中村聡子委員にお願いいたします。

 本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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