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2015年1月23日 第102回労働政策審議会職業安定分科会

職業安定局

○日時

平成27年1月23日(金) 14:45~16:15


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省職業安定局第1・2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○阿部分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第102回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。

 議事に先立ちまして、労働者代表委員の交替がありましたので、御報告いたします。住野委員に代わりまして、日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長の清水委員。中村委員に代わりまして、UAゼンセン常任中央執行委員の斗内委員。中島委員に代わりまして、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会書記次長の松原委員がそれぞれ就任されております。

 次に、事務局である職業安定局の幹部に異動があり、生田職業安定局長、勝田職業安定局次長、坂口派遣・有期労働対策部長、広畑雇用開発部長がそれぞれ就任されております。

 それでは生田局長より一言、御挨拶いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○職業安定局長 御紹介いただきました生田です。私自身2年前は、派遣・有期労働対策部長を務めておりまして、それ以前も職業安定局が非常に長くて、職業安定分科会の委員の皆様には本当にお世話になってきております。

 現在の政府全体の動きを見ますと、経済の好循環を持続的なものとして、デフレ脱却を確実なものにするということで様々な政策対応が取られております。その中で職業安定行政の果たすべき役割は非常に大きいと思っております。働く人を大切にして、その希望をかなえるという取組を進めていく必要があると思っております。

 具体的には、正社員を希望される方について、多様な正社員も含め、正社員化を進めていくこと、あるいは処遇の改善を図っていくこと。そのための人材育成。これと裏腹な関係にある人材確保対策、雇用管理改善対策等が重要だと思っておりますし、中長期的に見ましても、人口減少下で働くことを希望する若者、女性、高齢者、障害者の皆様の希望をかなえ、その能力を発揮していただくことが大事だと考えております。このような雇用対策を進めていく中で、労働現場の実情に精通しておられます公労使の皆様の御意見は非常に重要だと思っておりまして、皆様の意見を十分にお伺いして当分科会での御議論を頂き、これを踏まえた対策を進めていきたいと考えています。

 今日は若者雇用対策の充実、雇用対策法施行規則、雇用保険法施行規則などについて御審議いただくということで、今後とも職業安定行政の推進について御理解、御審議を賜れば幸いでございます。なにとぞよろしくお願い申し上げます。

○阿部分科会長 ありがとうございました。本日の委員の出欠状況は、公益代表の岩村委員、鎌田委員、宮本委員。労働者代表の澤田委員。使用者代表の河本委員、田沼委員、深井委員、深澤委員が御欠席です。

 それでは議事に入ります。最初の議題は、「若者の雇用対策の充実について」です。本件については、先ほど開催された雇用対策基本問題部会において、報告が取りまとめられています。雇用対策基本問題部会の部会長は私が兼ねておりますので、本件については事務局より御報告をお願いします。

○企画課長 派遣・有期労働対策部企画課の代田でございます。資料No.1-1No.1-2が若者雇用対策の充実についての関係資料です。資料No.1-2は概要です。資料No.1-1を使って御説明をさせていただきたいと思います。

2枚目です。若者雇用対策の充実については、ただいま分科会長から御紹介いただいたように、雇用対策基本問題部会において、昨年917日以降7回にわたり精力的に検討を深めていただき、部会としての報告書を厚生労働大臣宛、建議すべきという形での結論に達しましたので、御報告を申し上げたいと思います。内容については次のページの別添で説明したいと思います。

 議論の経緯あるいは問題意識については、「1 はじめに」の所で書いております。2ページの中ほどから下の部分で具体的な若者雇用対策の方向性についてまとめた構成になっています。「はじめに」の部分で、1つ目の○は少子高齢化が進展する中で、1534歳の若年労働力人口は減少が続いているという構造的な状況認識、2つ目の○には、若者の雇用状況ということで、最初に就いた仕事の状況、更には、新規学校卒業者の卒後3年での離職率の状況、また、1534歳の不本意非正規の割合について状況をまとめています。

3つ目の○で、若者の特性として、心身ともに発達過程にある一方、一般的に見ると人生経験や就業に関する経験が少なく、そうした経験から得られる情報が乏しい存在という認識と、そのため、自らの適性を理解した上で適職を選択し、希望する企業を見つけて就職活動を行うことについて他の年齢に比べて未熟な面があるということ、そうした中で、多種多様な情報の中から若者が必要な情報を取捨選択して判断することが求められており、若者対策として、情報面での未熟さを補う支援が不可欠となっているという問題意識が掲げられています。

4つ目の○では、若年期は、生涯にわたるキャリア形成のスタートとしての重要な時期である。こうした中で就職後一定期間について、若者の心身の健康に配慮しつつも、正社員として集中的に職業経験を積むこと等が重要であることがまとめられています。

5つ目の○では、全員参加型の社会の実現を図り、我が国全体の生産性の向上を図る観点からも、若者雇用対策に総合的かつ体系的に取り組むことが必要であると書かれております。

 次の2ページのなお書きで、我が国の若年者の失業率について、世界的に見れば相当低い水準に留まっており、その背景として、新卒一括採用の慣行があることが考えられます。学校から職業への橋渡しを円滑にするメリットがある一方、就職時の景気に就職環境が左右され、卒業時の違いにより就業状況に差が生じる傾向も見られるということです。若者雇用対策を行うに当たり、景気動向に関わらず恒常的・安定的に支援することの必要性、また、若者が将来に見通しを持ちながら働くことができるよう非正規雇用労働者のキャリアアップ支援等を進めることの重要性に留意すべきであるとされています。

 次の○は検討の経緯で、昨年6月に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014において、就職準備段階から、就職活動段階、就職後のキャリア形成に至るまでの若者雇用対策が社会全体で推進されるよう、次期通常国会へ法案提出を目指すこととされています。こうしたことを踏まえ、労働政策審議会において、職業安定分科会雇用対策基本問題部会において若年者雇用対策の検討、また、職業能力開発分科会において、若者の職業能力開発等の検討をそれぞれ行ってきました。

 本部会は、これまでの意見、議論を踏まえ、以下のとおり取りまとめを行ったので、報告をする。この報告を受けて、厚生労働省において、法的整備も含め所要の措置を講ずることが適当と考えるということです。

 具体的な方向性については2になります。1つ目の柱として、新規学校卒業者等の就職活動からマッチング・定着までの適切かつ効果的な就職支援の在り方です。社会の入口である新規学校卒業段階でのミスマッチを解消していくことが重要であるとされています。

(1)学校段階からの職業意識の醸成として、2ページから3ページにわたり、多様な職業について理解を深めるとともに、社会的自立に不可欠な知識として労働関係法令などの基礎的知識の周知啓発の推進の重要性、具体的には、関係者連携の下で、働く際のルール、あるいは様々なトラブルに巻き込まれた際の総合労働相談コーナー等の相談窓口の周知等が適当であるということです。

 また、我が国の新卒一括採用慣行の特性を踏まえて、職業を体験することで職業意識の醸成に高い効果が期待できるインターンシップが、その趣旨に適った適正な形で実施されるよう、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の3省により策定された「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」の周知徹底を図ることが適当であるとされています。

(2)マッチングの向上に資する情報提供です。ミスマッチの解消に向けて、労働条件に加えて、職場の就労実態に係る職場情報も併せて提供することにより、新規学校卒業者と企業双方がより正確に互いを理解し選択し合える環境を作っていくことが重要であるという問題意識から、マル1労働条件の的確な表示の徹底です。一部の求人において募集時等の労働条件と労働契約締結時に明示された労働条件が異なるという指摘があり、現行法においては、募集に当たっての労働条件の明示、あるいは労働契約締結に際しての労働条件の明示義務等が規定されているところです。これらの規定の遵守徹底のため、募集から就労に至るまでの過程で守るべき事項について、後述する事業主等に係る指針において一覧できるよう定めることが適当であるとされています。

4ページで、また、トラブルが起こった際には、都道府県労働局による個別労働紛争解決制度等が利用できることを周知する。また、必要に応じ公共職業安定所が相談等に適切に対応することが適当と、また、誤解を生じにくい形で的確に労働条件が示されるよう、公共職業安定所における新規学校卒業者等に係る求人票の様式、紹介状の記載事項の見直し、求人票作成時の留意事項の周知を行うとともに、今後も個々のケースに応じてトラブルを低減するための有効な方策を運用面も含めて検討することが適当とされています。

 マル2職場情報の積極的な提供で、新規学校卒業者の適職選択とともに企業が求める人材の円滑な採用に資するよう、()募集・採用に関する状況、()企業における雇用管理に関する状況、()職業能力の開発・向上に関する状況、これらが情報として提供されることが有効であるということから、応募者等からの求めがあった場合には、その項目ごとに企業において情報の提供を行うものとするとともに、それ以外の者に対しては、これら情報の提供に務めるものとすることが適当であるとされています。

 具体的な情報提供項目については、省令において列挙し、その中から、事業主が業種等の事情を勘案して適切と考え選択した項目を提供することが適当とされています。また、公共職業安定所等を通じて求人募集を行う事業主における扱いをまとめております。

5ページの(3)公共職業安定所での求人不受理です。現在、公共職業安定所において、個別の求人内容が違法である場合等を除いて全ての求人を受理しなければならないことになっております。新卒一括採用慣行の下、就業に関する経験が少ない新規学校卒業者が賃金不払残業等の労働基準関係法令違反が繰り返し認められる求人者からの求人に応募し、社会の入口でのトラブルに巻き込まれるということは、キャリア形成のスタート地点でのつまづきとなって、長期的な影響が危惧されるところです。

 このために、今申し上げた賃金不払残業等の労働基準関係法令違反が繰り返し認められる場合、男女雇用機会均等法及び育児介護休業法違反に基づく公表の対象となった場合は、公的な機関としての公共職業安定所においては、当該求人者からの求人の申込みを一定期間受理しないことができるとすることが適当であるとされています。

 なお、対象となる法令、あるいは一定期間については、政省令で定めルールの透明化を図ることが適当とされています。

2として、中途退学者、未就職卒業者への対応です。個々の事情に配慮しつつ希望に応じた就職支援が必要。具体的には、中途退学者について、学校、ハローワーク、地域若者サポートステーション等が連携し、就職支援機関や職業訓練機関に関する具体的な情報を効果的に提供することが適当であると、また、未就職卒業者については、学校・新卒応援ハローワーク等が連携し、ハローワークでの個別支援等々に当たっていくことが適当ということです。

3として、フリーターを含む非正規雇用で働く若者に対する支援について、(1)フリーター等の就職支援について、「わかものハローワーク」におけるキャリア・コンサルティング機能の強化、キャリアアップ助成金・トライアル雇用奨励金の積極的な活用を図ることが適当とされています。

6ページ(2)若者の主体的な職業選択・キャリア形成の促進で、こちらについては非正規雇用労働者として働くことに関する情報を若者に提供するといったことを含め、若者の希望等を踏まえながら、個々の状況に応じた支援を通じて、若者自身が主体的に職業選択やキャリア形成を行えるようにしていくことが適当であるとされています。

4として、企業における若者の活躍促進に向けた取組に対する支援について、(1)企業における雇用管理改善の支援については、事業主が、若者の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するよう雇用管理の改善に努めるとともに、労働関係法令違反が行われないよう適切な雇用管理が不可欠とし、そのために、公共職業安定所において、積極的な支援に努めるべきである。具体的には、離職率の高い業種についての雇用管理面での課題分析・改善等を促進し、魅力ある職場とするとともに、人手不足問題等にも対応するための取組の強化を図ることが適当とされています。

(2)認定制度の創設で、若者の採用・育成に積極的に取り組み、実力を有しながらも、知名度等の点から若者の採用面に課題を抱える中小企業の情報発信を支援することで、当該企業の求める人材の円滑な採用支援、マッチングの向上を図っていくために、新たな認定の仕組みを創設することが適当とされています。

 具体的には、新規学校卒業者の定着状況、ワーク・ライフ・バランスに関する状況が一定水準を満たし、かつ、若者の育成に熱心に取り組んでいる企業を認定し、支援措置を講ずることが適当であるとされています。なお、現行の「若者応援企業宣言」事業と認定制度の違いについて、趣旨を明確にすることが必要であるとされています。

 最後の5の施策推進に関する関係者の取組等についてでは、(1)関係者の協力・連携による総合的な取組の推進ということで、若者本人や家族を含め、国、地方公共団体、学校、事業主に加え、職業紹介事業者、求人情報提供事業者等の就職支援関係者、地域若者サポートステーション等の地域における関係者等がそれぞれ期待される役割を果たしつつ、相互に連携を強化しながら取り組んでいくことが求められるとされています。こうした関係者の責務や連携を法的に位置付けた上で、施策の基本方針を策定し、関係省庁等との連携の下で実施に当たるとともに、募集・採用及び定着促進に当たって事業主等が講ずべき措置をまとめた指針を策定することが適当とされています。

(2)地方での就職支援です。地元就職ニーズが相当程度ある中で、国、地方公共団体、事業主が連携し、いわゆるUIJターン就職を積極的に支援することが重要であり、そのために、地方における良質な雇用の場の創出等々に関係省庁、地方公共団体等の密接な連携の下、各般の取組が進められるべきであるということです。

 おおむね簡単ですが報告とさせていただきたいと思います。

○阿部分科会長 ありがとうございました。本件について御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○新谷委員 今、御報告を頂いた内容について、阿部分科会長をはじめ、公労使の部会の中で取りまとめを頂いた内容ですので、労働側として、この内容をもって大臣に建議することが適当であると申し上げます。以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございます。

○高橋委員 この点について一言述べたいと思います。この内容について特段な意見はございませんが、できればということで意見を述べさせていただきます。報告書の6ページから7ページにかけて、新しく創設される認定制度についての記述があります。中小企業を主たる対象として、採用・育成に積極的に取り組みながら、なかなか知名度の関係で、採用に困難を抱える企業に認定制度を創設していく、その趣旨は大変結構だと思います。この「具体的には」の所で、3点掲げているところを見ると、どちらかというと雇用管理に主眼が置かれすぎているのかなという嫌いを少し感じます。

 雇用管理をしっかりしていただく企業は、とても大事だと思います。趣旨自体の、若者の採用・育成に積極的に取り組んでいるというところを、もう少し評価軸としても強めていただいてもいいのではないかと思うのです。法案が通った後の話だと思いますが、また基本問題部会で、いろいろな御検討をしていただければと思います。

 勝手ながら申し上げると、例えば一生懸命、独自のインターンシップに熱心に取り組んでいる。マル3に社内教育と書いてあります。社内教育以外に社外教育も積極的に行って育成をしていることもあります。あるいは、メンター制度等を取り入れて、しっかり入社直ぐから育成をしていくとか、あるいは労使のコミュニケーションをしっかり図って若い社員の悩みや相談なども積極的にすくい上げて改善に向けて努力をしていくといったような取組に、加点をし評価をしていくような制度になっていくと、より良いのではないかと個人的な考えを持った次第です。以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。

○太田委員 ありがとうございます。大変すばらしい報告書に仕上がっていると思います。私のほうも1つだけ感想を述べさせていただきたいと思います。「職場情報の積極的な提供」の部分で、恐らくこれは新規学卒者に対する情報の提供に限定されているのではないかと思います。確かに新卒者について情報面は、非常にまだ十分に情報を解釈する力も、取得する力もなかなか身についていないこともあり、こういった限定された形で対応されているのかと思うものの、やはり若年層といった場合に、もう少し広く取って、職場情報を提供することも将来的には、この経緯をどういう具合に運用し、その結果を見ながらになるかもしれませんが、是非、適用対象者の拡大を考えていただければと思いました。以上です。

○阿部分科会長 事務局のほうで今、2点ほど御意見がありましたので、コメントがあればお願いします。

○企画課長 まず1点目が認定制度に関係する部分で、今、委員の御指摘にもありました制度の具体的な内容について、制度が法律という形になった後になろうかと思います。具体的には部会での御議論になろうかと思いますが、今いただいた御意見も御紹介する等しながら対応させていただければと思います。

2点目については、趣旨についても御承知、御理解を頂いた上での御意見ということかと思います。頂いた御意見は、考慮させていただきたいと思います。

○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問はございますか。特にないようでしたら当分科会は、雇用対策基本問題部会報告書をもって、厚生労働大臣へ建議すべきであるとの結論とし、その旨を労働政策審議会会長に御報告を申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。報告文案の配布をお願いします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長宛、報告することとしてよろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。そのように報告させていただきます。これをもって厚生労働大臣への建議となりますので、御了承ください。

 事務局より、今後の手続について、説明をお願いします。

○企画課長 私から今後の手続について御報告申し上げたいと思います。今後の手続としては報告書に基づきまして、事務局として法律案要綱を作成し、本分科会での御議論をお願いする予定といたしています。

 通常のスケジュールとしては、まず、職業安定分科会を開催し、法律案要綱を諮問した上で、雇用対策基本問題部会において御議論いただき、その意見を踏まえ再度、分科会を開催し、答申をお願いする運びになるかと思います。今回、時間的な関係、あるいは分科会委員の皆様の日程を考慮し、あらかじめ雇用対策基本問題部会において、法律案要綱について、御意見を頂戴した上で、その意見を踏まえ職業安定分科会において御議論いただくことをお願いできればと考えています。よろしくお願い申し上げます。

○阿部分科会長 ではそのように進めてまいりたいと思います。

 次に議題2に移ります。議題2は「雇用対策法施行規則及び雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。本件については、本日付で厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛に諮問を受けています。事務局より説明をお願いします。

○雇用開発企画課長 雇用開発企画課長の北條です。雇用対策施行規則及び雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について御説明します。

 資料No.2-1に、今回お諮りする省令改正案の要綱をお示ししています。2枚目が諮問文の本文です。3枚目以降が省令案要綱の内容です。省令改正の趣旨は、就職困難者の雇入れ助成金である特定求職者雇用開発助成金等の各種助成金について、これは略称で特開金と呼んでいますが、この支給額を見直すものです。

 その第一が、雇用対策法施行規則の一部改正です。特開金及びそれとほぼ同じ仕組みの雇入れ助成金は、一般会計で措置されているものと、雇用保険二事業で措置されているものとで、計5種類ありますが、その第1は、一般会計で措置されている特定求職者雇用開発助成金の支給額の変更です。

 次の第二です。これが、雇用保険二事業分で措置されている分の支給額の変更です。そのうちの一の項目が、60歳以上の高齢者や障害者に対する特定就職困難者雇用開発助成金の関係です。2ページの二の項目が、65歳以上の高齢者に対する高年齢者雇用開発特別奨励金の関係です。三の項目が、発達障害者、難病患者の方に対する、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金の関係。四の項目が、東日本大震災の被災離職者に対する被災者雇用開発助成金の関係です。

3ページの第三では、今申し上げた第一、第二でお示しした支給額の変更の施行日について示しておりますが、現時点で既に41日付けの採用が内定されている方もいることを踏まえながら、事業主に対する一定の周知期間を取るという観点で、本年51日施行を考えております。

 この改正の趣旨をお示しした資料が、資料No.2-2です。これを更にかみ砕いた資料を、資料No.2-22ページに付けておりますので、こちらのほうで御説明いたします。

 特定求職者雇用開発助成金等は、高年齢者、障害者等の就職困難者の雇入れを促進するための助成金ですが、リーマンショックの際の雇用状勢の悪化に対応して、平成2012月と平成212月の2回にわたり、中小企業群について支給単価と助成対象期間の拡充を行ってまいりました。このような中で、就職困難者の就職について見てみると、雇用状勢の全体的な回復基調の中で順調に伸びてきている状況にあることから、原則として、支給額をリーマンショック前に戻すこととして、まずは支給単価について、全てリーマンショック前に戻すこととしたいと思っております。

 一方、助成対象期間ですが、こちらも基本的にはリーマンショック前に戻すこととしたいと考えておりますが、障害者については、採用後に職場定着せずに早期に離職する方が多いという状況がありますので、これの対応を考えなければならないと考えており、例えば精神障害者については、平均勤続年数が平成20年時点で64か月という統計が出ていますが、これが平成25年には43か月と短くなっています。また、知的障害者についても、92か月が79か月と短くなっています。こういう中で、障害者職場定着の促進が、政策上の大きな課題になっていますので、このことについて事業主の努力を支援することが重要であることから、障害者については、助成対象期間を1期分延長し、また、特に重度の障害者の方と精神障害者については2期分を延長することを考えていきたいと考えております。以上が、今回の省令改正の趣旨ですが、今申し上げた内容のバックデータが3ページ以降に掲げてあります。

3ページの別紙1は、特開金と、これと類似する5つの助成金の具体的内容を一覧表にした資料です。このうちの一般会計分ですが、これは、例えば職業訓練施設に通う障害者などの労働者に対して、雇用対策法に基づいて一般会計で職業転換給付金という給付金が支給される場合がありますが、本助成金は、そのような給付金を受給している労働者を採用した事業主に対して支給されるものです。このほか、雇用保険二事業分については、それぞれこの表に掲げてあるような対象労働者を雇い入れた場合に支給されるものです。

4ページの別紙2です。この表は、支給単価と助成対象期間の変遷と、今回の見直し案をお示ししたものです。下線の太字部分が各時点での変更点です。この表の(1)の列がリーマンショック前の状況、(2)の列が平成2012月に中小企業について障害者の助成対象期間を延長したときの状況、(3)の列が、平成212月に中小企業について支給単価を増額したときの状況です。(4)の列が、今回の見直し案で、支給単価と助成対象期間をリーマンショック前に戻すということを原則として、ただし、障害者群については1期分延長、重度障害者、精神障害者群について2期分延長しようということが示されています。

5ページの別紙3です。このグラフは特開金等の支給対象となる就職困難者の最近の就職の伸びを示したものです。6064歳においては、平成24年度から平成25年度にかけて、就職件数が若干低下しているところが見えますが、就職率で見ると上昇しています。その他の対象類型では、就職件数も就職率も、全て伸びている状況にあります。

6ページは、障害者を類型に分けて表したグラフですが、これも同様に全体的に上昇傾向にあるということです。以上が特開金の支給額の変更に係る雇用対策法施行規則と雇用保険法施行規則の改正の趣旨です。説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 それでは、本件について御質問、御意見があれば御発言ください。

○林委員 ただいまの省令案要綱について2点確認させていただきたいと思います。まず1点目は、省令案要綱の第1の特定求職者雇用開発助成金制度の改正に関してです。ただいま説明いただきましたが、資料No.2-2省令案要綱の概要4ページを見ると、今回の見直しの中身は、助成の支給単価と期間の2つが掲げられていますが、資料No.2-1の省令案要綱では、期間の見直しについての記載がないように見受けられます。助成期間の見直しは、どのように定めるのかを、まず確認させていただきたいと思います。

○雇用開発企画課長 省令においては、支給単価×助成対象期間の合計額である支給額、総額ですが、これを省令のほうに規定しておりますので、これを支給単価を幾らにし、助成対象期間を何期分にするのかということは、要領のほうで定めております。総額を省令で定めているものですから、要綱のほうも総額でお示ししているという中身です。その心は別紙のほうでお示ししたような内容だということです。

○林委員 ありがとうございました。2点目としては、省令案要綱の第二の四、被災者雇用開発助成金制度の改正に関してです。改正の内容は支給額の減額ということですが、なぜこのタイミングで減額するかについて、事務局の考え方を確認させていただきたいと思います。

○雇用開発企画課長 被災地の雇用状勢について、まず初めに御説明申し上げたいのですが、リーマンショック前、あるいは被災直後、大変に状勢が厳しくなったわけですが、その後、順調に回復してきています。求人倍率で見ても、リーマンショック前あるいは被災前の状況まで戻ってきていますし、被災3県の状況は、求人倍率で見ると全国平均を上回るような状況まで見て取れるわけです。雇用者数についても、例えば雇用保険被保険者数ベースで見て、リーマンショック前や被災前と比べて伸びています。そういったことで、雇用状勢の量的なものについては一定程度進んできています。むしろ、今問題であるのは、そこに例えば建設の人材が不足していることなどのミスマッチのところが大きな問題になっている状況です。

 こういう状況の中で、被災離職者の方を助成金の対象としてどんどん優先的に採用をお願いしますという、直接的な助成措置も、それは否定は申し上げませんが、むしろ、地域、地域で良質な雇用を創出していくといった対策で、大きく、その地域の復興と連動させながら雇用対策を進めていく段階に入ってきているのではないかということです。

 そのために基金がありまして、事業復興型雇用創出事業といったものがあり、産業政策と一体となって、地域で良質な雇用を作るという事業をやっております。この基金について、平成27年度予算で積み増しをして、そういった産業政策と一体となった良質な雇用を創出するという事業でウエイトシフトしていくということで考えております。

○林委員 ありがとうございました。今回の分科会での議論に先立って事前に調べたところ、被災者雇用開発助成金の見直し論議を行った20139月の第93回の本分科会においても、労働側委員から助成金を見直す必要性に関する質問と意見を申し上げました。その際、事務局の方より、求職者に一律に助成金を付ける段階ではなく次の再就職にどのように向かったらいいのかという相談をきめ細かくやっていく段階に来ているという旨の答弁があり、ただいまも丁寧な答弁を頂きました。今回、本諮問内容が了承された場合には、助成金が減額されることになりますが、それはあくまでも次の施策へとバトンタッチしていくということであって、決して被災者のための支援策を低下させることがあってはならないと思いますので、今後とも万全の対応をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○松原委員 資料No.2-2(2)の改正内容について意見を述べたいと思います。まず1点目は、高年齢者に関してです。確かにリーマンショック後と比較すると、事務局よりお示しいただいたとおり、高年齢者の雇用状況については、ハローワークでの就職件数が改善しているほか、有効求人倍率についても改善しています。今回、いわゆる出口戦略ということで、高年齢者の雇入れにかかる助成金の額をリーマンショック前の水準と同等に改定するという案が示されています。しかし、今後も景気動向や雇用状勢などを踏まえて、機動的な対応がなされるべきであると思います。また、高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえて、正規、非正規を問わず、就業を希望する全ての労働者に対して、65歳までの雇用確保に向けて十分な対応が図られるべきであるということを意見として申し上げたいと思います。

 もう1点、障害者の雇入れに関する助成については、水準は引き下げるものの、職場定着の観点から期間は延長するという案でお示しを頂いております。改正障害者雇用促進法が成立して、障害を理由とする差別の禁止と合理的配慮の提供義務にかかる規定は20164月から、精神障害者を雇用義務制度の対象とする規定については20184月から、それぞれ施行されることになっています。こうした状況も踏まえれば、今はまさに障害者の職場への定着に向けた政策の充実が求められているのではないか。例えば、新たに雇用義務制度の対象となる精神障害者の雇用促進に向けては、単に事業者に対応を委ねるのではなく、企業に対して、精神障害をお持ちの方の雇用管理のあり方などについて啓発や事例提供などを行うといった対応を、国の責任で実施していくべきではないかと考えています。こうした対応とあいまってこそ、障害者の職場への定着が図られるのではないかと考えておりますので、意見として述べたいと思います。以上です。

○雇用開発企画課長 ただいま2点ありました。特開金について、雇用状勢に応じて機動的に展開するという話については、雇用調整助成金についてリーマンショック前に戻すときにもお話しいたしましたが、雇用調整助成金についても特開金についても、同様に雇用状勢に機動的に即応して、この審議会のほうで皆様の御議論を踏まえて、機動的に対応するということは、今までもそのようにしておりますし、今後ともそのようにしますということを改めて申し上げたいと思います。

 高齢者のほうですが、65歳までの年齢にかかわらず、能力と適性に応じて働けるような、生涯現役社会を作り出すということについては、この特開金のみならず、いろいろな助成金、支援策を通じて実現しなければいけないものです。そこの対策について、平成27年度にもいろいろな政策を盛り込んでおりますが、更にどんな対策が必要かということについては、皆様の御意見を頂きながらまた考えていきたいと思っております。

 障害者の定着支援です。これについては、私どものほうから事業主さんのほうに、定着を頑張ってくださいね、と単純にお願いするだけではもちろん済まされません。行政側も、どうやったら障害者の定着が進むのかということについて様々な好事例がありますので、そういったマニュアルを提供させていただくという取組を既にしておりますし、例えば、精神障害者の方で言うと、既に就労されている精神障害者の方が、「私はこういうことを事業主さんからやってもらって助かりました、定着できました」という話、メッセージのようなものをお伝えするセミナーのようなものまで、きめ細かに対応しております。ジョブ・サポーターやジョブ・センターなどのいろいろな支援機関もあります。そういったいろいろな支援サポートを通じて、このことを実現していきたいと、今後何ができるか、効果的にできるかということについて考えていきたいと思っております。

○新谷委員 諮問案件ですので、労働側としての総括的な意見を申し上げます。ただいま、労働側代表委員から意見を申し上げ、それに対して厚労省から答弁を頂きましたが、労働側から申し上げた意見について十分な対応をお願いし、労働側としては本諮問案件について了承したいと思います。

○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、報告文案の配布をお願いします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 次の議題です。「労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき雇用保険率を変更する告示案要綱について」です。本件については、本日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛て諮問を受けておりますが、1215日の雇用保険部会において、あらかじめ本議題に関する議論を行っていただいております。本日は、雇用保険部会長である岩村委員が御欠席ですので、事務局より説明及び、雇用保険部会での議論の報告をお願いいたします。

○雇用保険課長 雇用保険課長をしております奈尾と申します。よろしくお願いいたします。私のほうから、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定に基づき、雇用保険率を変更する告示について御説明いたします。資料No.3-13-2です。順番は前後しますが、資料No.3-2から御説明いたします。

 資料No.3-21ページです。趣旨が書いてありますが、労働保険の保険料の徴収等に関する法律において、雇用保険率については、原則1,000分の17.5、この17.5の内訳は、失業等給付に係る保険率が1,000分の14、二事業に係る雇用保険率が1,000分の3.5です。これについて、平成27年度の雇用保険率は、弾力条項の規定に基づき、今年度に引き続き1,000分の13.5とする案です。1番の趣旨の下のほうの※で、いわゆる弾力条項について書いています。これについては、4ページを御覧ください。

4ページでは、雇用保険料率の弾力倍率の計算方法ということで、上のほうで失業等給付に係る弾力条項の説明があります。簡単に申し上げますと、失業等給付費、支出を分母にして、分子に積立金に当該年度の剰余あるいは不足分を加減した額が2を超える場合には、保険料率を1,000分の4下げて1,000分の10まで下げられるというものです。逆に、失業等給付に対して積立金等の額が1を下回る場合には保険料率を弾力的に上げて、1,000分の18まで上げられるということです。同じページの下のほうですが、二事業に係る弾力条項が書いてあります。二事業については、二事業分の保険料収入を分母として、雇用安定資金等を分子にした場合に1.5を上回る場合には保険料率を1,000分の3まで引き下げられるというものです。

5ページから7ページにかけては、今申し上げたことの根拠条文、それから、これまでの雇用保険料率の推移といったものがバックデータで付いています。

 同じ資料No.3-22ページを御覧ください。「失業等給付関係収支状況」ということで、平成27年度予算案までの数字が書いてございます。この中で、右から3番目の平成25年度決算の欄を御覧いただくと、収入は約18,000億円、支出が約16,600億ということで、1番下の段ですが、積立金残高は約6兆円で、先ほどの弾力条項の計算に当てはめると2を超える状況ということです。

3ページです。雇用保険二事業関係収支状況が書いてございまして、右から3番目の平成25年度決算の欄ですが、収入が約5,980億、支出が約4,200億弱ということで、安定資金残高は6,000億強です。これを計算式に当てはめると、収入に対して安定資金残高が1.5を超えていないということです。

 以上を前提にして1ページに戻っていただくと、失業等給付に係る計算式で言うと2を超えています。一方、三事業の率については、弾力条項に発動要件を満たしていないことから、1ページの2番で書いているような料率にしたいと思っております。平成27年度の雇用保険率の表ですが、一般の事業の雇用保険率は1,000分の13.5、農林水産・清酒製造業は1,000分の15.5、建設業は1,000分の16.5という案で、今年度と同じ率です。農林水産・清酒製造業、建設業については、季節的に離職される方が多いということで、一般の事業と別の保険料率にしています。

 資料No.3-1です。2枚目の別紙に案が書いてあります。今回の説明は先ほどのとおりですが、先ほど分科会長からお話いただいたとおり、1215日に開催された雇用保険部会において、来年度の雇用保険料率について、現在の財政状況等を踏まえて御議論いただきました。その結果、来年度の雇用保険料率は、今年度に引き続き、失業等給付に関しては1,000分の10、雇用保険二事業に関しては1,000分の3.5、合わせて1,000分の13.5ということで、本日の職業安定分科会へ告示案を諮問するという形で進めるという結論をいただきました。以上です。

○阿部分科会長 それでは、本件について御質問、御意見があれば御発言ください。

○斗内委員 雇用保険に関連して2点お伺いします。1点目は、年明けの一部報道で、厚生労働省が介護休業の分割取得を認める方向の検討に入っているとの記事が出ていました。介護休業の分割取得の是非については、雇用均等分科会で論議すべき事項と認識しておりますが、記事の中では、介護休業給付という、正に本分科会の所管事項についても厚生労働省の見解が示されています。記事によると、分割取得の導入によって、介護休業を取得する者が増加することが伴う給付増については、約6兆円ある雇用保険の積立金でまかなうため、雇用保険料の料率の上昇にはつながらないと厚生労働省は見ている、という報道がなされています。まず、この記事の真偽について厚生労働省の御見解を伺いたいと思います。

○雇用保険課長 まず、育児・介護休業法については、平成21年に改正いたしまして、平成21年改正法の附則において、施行後5年を経過した場合に見直しするという条項が付いております。これを受けて、昨年11月から雇用均等・児童家庭局において研究会を開催していると聞いております。この研究会については、現在のところ、介護休業制度についてどうするかという方向性はないと私どもは聞いておりまして、仮にこの介護休業制度の見直しに関連して雇用保険制度の見直しが必要ということであれば、当然ながら雇用保険部会で御相談するべき案件と私どもも考えております。

○斗内委員 ただいま答弁をいただきましたが、労働側としては、そもそもこうした報道がなされたこと自体が非常に遺憾です。本分科会や雇用保険部会で、介護休業給付の分割支給の議論をされたこともないと認識しています。3者構成の労働政策審議会を軽視することのないよう論議を進めるべきであると意見を申し上げておきます。

 続いて2点目の意見です。2014年雇用保険改正の目玉の1つである専門実践教育訓練については、昨年12月に公表された支給決定分を含めて、20154月開校講座が合計で1,053講座となりました。しかし、都道府県別の指定状況を見ると、秋田、岐阜、鳥取ではいまだゼロ講座のままです。改めて申し上げておきたいのは、専門実践教育訓練は労使が拠出している雇用保険料を財源としているということです。保険料を強制的に徴収されているにもかかわらず、都道府県間の指定講座数の不均衡が発生している現状について、保険料徴収をしている厚生労働省として、保険料負担者に対してどのように説明責任を果たしていくのか。この点について見解を伺えればと思います。

○雇用保険課長 今、斗内委員から御指摘がありましたが、改めて申し上げるまでもなく、今回の教育訓練給付については、全国一律のセーフティーネットとして全国一律の保険料でやっているわけですので、当然ながら地域ごとの差があるのは望ましくないという認識は私どもも一致して持っております。特に去年の12月末において1,053の講座が指定されたわけですが、御指摘のとおり、まだ3県、指定されていない県があることについては私どもも問題意識を持って取り組んできたわけです。今後、1月下旬をめどにして、さらに来年4月開校分の講座指定に向けて、現在、作業をやっていると聞いておりますが、現在の講座の申請においては当該3県からも指定があったと聞いておりますので、私どもとしても、できるだけ早期の指定に向けて努力すべきだと思っております。いずれにしても、関係部局とよく相談して進めていきたいと思っております。

○斗内委員 厚生労働省には、専門実践教育訓練が、雇用保険の本体保険料を財源としていることの重みを受け止めていただき、是非、ユニバーサルサービスとなるような積極的な取組を行うことを、労働側として強く要請したいと思います。お願いします。

○玄田委員 資料No.3-22ページと3ページについて伺います。資料No.3-22ページのうち、失業等給付関係の収支状況ですが、支出項目を見ていますと、平成26年度予算について特に失業等給付費が17,562億円と書かれています。御案内のとおり、完全失業率の状況を見ていますと2009年のリーマンショック直後に失業率が大変上がり、趨勢的に完全失業率自体は低下傾向にあります。それは、平成25年度、平成26年度も継続してそうなのですが、平成25年度に比べて比較的この支出が増えている背景についてはどのように理解すればよろしいのか。つまり、給付対象の失業者が増えたといった理由があるのかどうかということです。

 それと併せて、3ページの二事業についても、支出が平成25年度から平成26年度に、それまで減少傾向だったのが増加傾向に転じています。比較的、雇用状況については人手不足が言われるぐらいの、労働市場に関しては需給がタイトな時期に、この2つの支出が増えているということ。併せて、平成27年度予算案についても、比較的多めに予算が見積もられているのは、どのような背景として理解すればいいのかを教えていただければと思います。

○雇用保険課長 何点か要因があります。まず、失業等給付費と二事業との共通する要因から御説明いたします。予算というのは、前年度に組みます。前年度では、次年度の雇用状勢がよく分からない状況で組むということで、若干、予算額については、通常、決算で締めてみると、予定していた額よりも支出のほうが少ないというのが例年見られます。これは失業等給付と二事業共通した要因かと思っております。

 その上で、平成26年度の、特に失業等給付に関連する要因としては、平成26年の雇用保険法改正において何点か改正を行って、育児休業給付の拡充や教育訓練給付の拡充、再就職手当の拡充といったものをやっています。そういったものを含めて、平成25年度よりも平成26年度のほうの予算が多いというのが、まず1点あります。

 それから、失業等給付の中で申しますと、雇用状勢に特に関連するのは一般求職者給付で、この辺りは雇用状勢に応じて受給者数が増減するわけですが、例えば平成25年度の決算で見ると、失業等給付費の中に占める一般求職者給付費は大体5割強ですので、景気変動に関連する部分は全部ではないということがあります。それに平成26年度の法改正要因を加えて、平成26年度の予算額は増えているという形だと御理解いただければと思っております。

○新谷委員 今、玄田委員が御質問になった点は、本当に素直な疑問としていつも論議の対象となる点であって、雇用保険部会でも随分論議をしてきました。毎年度予算と決算のギャップが非常に大きく、予算上は毎年度赤字予算を見積もるものの、決算では数千億円の黒字が生じるという状況を繰り返し、結果、積立金残高が6兆円を超えたということが現状です。6兆円という水準は、1年間に必要な支出額の約3.2年分です。毎年度予算と決算に多額の乖離が生じ積立金残高が6兆円を超えるまで積み上がった背景は、今事務局から説明いただいた点もあるのでしょうが、財政当局との調整が必要な国庫負担の問題も大きいのではないかと思います。

予算上は赤字を見込むものの決算を締めたら黒字になるという構造は、毎年度繰り返されています。これは先ほどの斗内委員の発言とも関連しますが、昨年の雇用保険法改正において、積立金残高を減らす観点から、国庫負担を要しない給付項目を増やすために、年間で890億円の支出が見込まれる専門実践教育訓練を創設したわけです。しかし、専門実践教育訓練は、労使の保険料を財源としているにもかかわらず、そのメリットを受けられない県がまだあるのです。

こうした雇用保険財政の構造問題をどうするのかということは雇用保険部会でも再三申し上げました。この構造を放置すれば、雇用保険の国庫負担25%復帰もますます遠のいてしまう。

 また、保険数理から言えば、給付と収入の関係で積立金残高が3.2年分も貯まってしまっているということであれば、収入たる保険料を減額するか、労働側がかねてから主張している、平成13年改正、平成15年改正で下がったままになっている給付の改善をすることが当然です。もし給付の改善ができないのであれば、弾力条項を発動して最下限としている保険料率の枠組みの見直しをする段階に入っていると雇用保険部会で申し上げました。

 今回の来年度の保険料率にかかる諮問内容については、雇用保険部会の答申どおりで構いませんが、これはもう今回限りということで、来年度以降はこの構造問題をどうするのかということを抜本的に論議する必要があると思います。事務当局においては、構造問題をどうするのかということについて、是非、早急に検討を進めていただきたいということを意見として申し上げまして、今回の諮問内容についてはやむを得ないということで了承したいと思います。以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特にないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは報告文案の配布をお願いいたします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 次の議題です。最後の議題ですが、「ハローワークのマッチング機能に関する業務の評価・改善の取組について」です。事務局から説明をお願いします。

○公共職業安定所運営企画室長 公共職業安定所運営企画室長の溝口でございます。よろしくお願いいたします。資料No.4、ハローワークのマッチング機能に関する業務の評価・改善の取組についてです。この資料の一番最後に参考2として、資料を付けていますけれども、ハローワークの評価については、「日本再興戦略」改訂2014において、外部労働市場全体のマッチング機能強化の観点から、ハローワークについても機能強化が求められており、そのために各ハローワークごとのパフォーマンスを比較、公表することとされたところです。本日はその内容について御説明いたします。

 資料の1ページ目の概要の所ですが、ハローワークにつきましては、従来から就職率、求人充足率、雇用保険受給者の再就職割合というものを中心に、PDCAによる目標管理を実施しているところです。今回はそれを拡充することというのが1点です。更にその拡充することにより、評価指標等が増えるということなので、それを総合的に評価する仕組みを設ける、それで評価した結果については公表するというのが2点目です。評価結果について、業務改善にしっかりとつなげていく取組を評価するというのが3点目です。この3点を一体的に平成27年度から実施したいと考えています。

 左側のPDCAサイクルによる目標管理・業務改善の拡充ですが、従来から取り組んできた就職率等の主要指標に加え、業務のサービスの質を表す指標とか、ハローワークごとに地域の雇用課題がありますので、それの課題に応じてハローワークごとに重点をおいて業務を実施しているということを踏まえ、それに対応した地域の雇用課題に関する指標とか、若しくはその中長期的な観点から職員の資質向上や継続的な業務改善の取組といった、そういう取組を加えることを考えているところです。具体的な構成については後ほど御説明いたします。

 真中の、総合評価と利用者への公表については、まず、年度当初に目標を立て、その達成状況を把握して評価することを基本として、主要指標の実績については毎月、年度後半の取組強化のための分析を年央に公表して、年度終了後には全ての指標を総合評価をして公表したいと考えています。評価の仕組みについての詳細はまた後ほど御説明いたしますけれども、各指標を総合的に評価するということを考えているところです。

 最後に、総合評価の公表については、単に評価だけではなく、重点的に取り組んだ事項とか業務改善事項、その他の労働市場の動向なども併せて公表してまいりたいと考えています。評価結果等については、労働局においては、地方労働審議会、本省では労働政策審議会に報告をさせていただく予定としています。今回の取組は業務改善を促進することにより、ハローワークの機能強化を図ることが目的ですので、利用者の御意見を踏まえた改善にしっかり取り組んでいきたいと思っています。

 右側が評価結果等に基づく全国的な業務改善です。これについては、評価結果に基づいて重点的に業務改善が必要なハローワークについて、しっかり指導していくということとともに、評価作業の中から好事例を取り出して意見交換会を設けるなどにより、積極的に横展開を図っていきたいと考えています。

 続いて次のページの、総合評価の構成です。2つに大きく分けてあります。左側は全てのハローワークに設定する指標です。(1)主要指標とありますが、これまでの目標管理の取組と同様に、就職者数等の指標を設定しているところです。(2)補助指標として、ハローワークの利用者に対してアンケート調査を通じて満足度調査をしています。その関係と紹介成功率を定めています。紹介成功率については、ハローワークで職業紹介を行うときに発行する紹介状の発行件数分の就職件数の割合です。これは単に職業紹介件数を上げて就職者数を増やすということではなくて、一件一件の職業紹介の質を高めているかどうかを見る指標として設定してまいりたいと考えています。

 右側については、ハローワークごとの重点的な取組の評価です。(1)として、重点指標としていますけれども、ここは地域の雇用課題に関する指標ということで、例えば障害者の就職者数や正規求人数などを設定してまいりたいと考えています。(2)として、所重点項目として、これは指標ということではないのですが、ここに掲げられたような取組を行った場合に評価をしていくということです。例えば職員が実際の事業所の現場を見ることを通じて実態を把握する力を養うということで、職員による事業所訪問の実施とか、あと計画的にキャリア・コンサルティングの研修を受講させたハローワークについて評価をしたいと考えています。これらの指標、取組を総合的に評価してまいりたいということです。

 次のページは総合評価の方法です。実際にどのように総合評価するのかですが、原則として指標については年度当初に目標を定めて、その達成率を評価することと考えています。マル1として、目標の達成率について、あらかじめ指標ごとに定めたポイントを掛け合わせ、○○ハローワークの各指標ごとのポイント数を計算したいということです。次にマル2として、指標ごとの目標の達成率を見るだけでは目標を低く設定すれば達成率は上がっていくという関係になりますので、そういうことを防ぐために実際に業績が上昇した場合に加点を行うということにしたいと考えています。次にマル3は、指標だけではなくて、先ほど説明した資質向上の取組等を行った場合に一定のポイントを加算したいということです。以上、マル1~マル3を合計してハローワークごとの総合ポイント数を計算します。最後に、ハローワークについては置かれている労働市場の状況等も異なっていますので、労働市場の状況や業務量を踏まえ、ハローワークを11グループに分類をして、そのグループの中でポイント数を比較、評価するということにしたいと。これにより、好事例を横展開しやすくしたいというように考えています。また、業務改善につなげることが目的ですので、ポイント数そのものを公表するというよりも、評価結果については4段階とさせていただき、実績値や業務改善事項をまとめて公表するということを考えています。評価制度については、継続的な改善が必要だと考えており、今後とも当分科会でも御意見を頂きながら進めていきたいと考えています。

 次のページは参考としておりますが、ハローワークごとの評価に当たり、ハローワーク職員の研修等の取組についても紹介をさせていただいています。職員に対する研修については、中央研修、ブロック別研修、地方研修と3種類あり、それぞれ研修実施計画を立てて、体系的に実施しているところです。特に右側の中央研修については、キャリアパスとか担当業務に沿った段階的な研修を実施しています。業務に必要な知識付与のほかに、ロールプレイなどの実践的な技術の習得や福祉などの関係行政の知識等も付与しています。特に2020年度末までにハローワークの職業相談部門の職員の5割以上をキャリア・コンサルタント資格取得者としたいということを目指していまして、来年度からキャリア・コンサルティングを踏まえた職業相談等に必要な知識や技能等を身につける研修を実施する予定です。

 その下はOJTの実施です。今回、ハローワークの評価については、職業紹介部門が中心となるわけですが、職員についてはその職業紹介だけではなくて、雇用保険とか雇用指導等の各業務に幅広く配置をされて、OJTを積むことにより、職業安定行政に関する総合的な知識・経験を得ることができるようにしているところです。また、職員の希望や地域のニーズにより、他行政への配置や自治体への出向といった機会もありまして、多様な経験・知識を持った職員の育成に努めているところです。説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 本件について、御質問、御意見等がありましたら御発言ください。

○清水委員 ただいま御説明いただきました取組の目的は、求職者に対するマッチング機能を向上させるということです。取り組みを進めるにあたっては、この目的を常に意識すべきと思います。本取組の結果、管理が強化されることで、いわゆる締め付けのみが行われる一方、職員の資質向上にはつながっていないといった事態に陥らないよう、十分に留意を願いたいと思います。

 また、働く者の視点から意見を申し上げせていただきますと、本取組によって、職員の方々のモチベーションを鼓舞するよう、改善指導や、あるいは好事例の全国展開を図っていただきたいと思います。

 なお、資料の最後のページに、参考として、「日本再興戦略」改訂2014が記載されていますが、冒頭申し上げたとおり、職業安定行政を所掌する厚生労働省として、求職者に対するマッチング機能を向上させるため、このような取組が推進されるべきであって、閣議決定がなされたからこのような取組を推進するというような、受身の姿勢であってはならないことも意見として申し上げたいと思います。以上です。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○玄田委員 一言意見を申し上げます。御指摘のように、ハローワークの機能強化に向けて様々な取組をしていかなければならないというのは全くもって同意するところです。ただ、若干懸念を申し上げさせていただくとすれば、今回はそういう指標評価のために、できるだけ客観的な情報に基づきこのような評価をしたいというような意図は大変よく理解できるところですが、一方で現実の今の労働市場のマッチングを考えてみると、必ずしもまだ十分に客観性が担保された情報以外のものがマッチングには重要な役割を果たしているという現実があるのも否めないと思っています。例えばその1つに、求職者の就職困難度は人によって随分違いがあるときに、その違いを十分に我々は情報として、客観的に把握できているかというと、もちろん障害の有無とか、年齢とか様々な要因はあるものの、それ以外にもまだ必ずしも困難度について明確になっていない部分があるのも現実だと思われます。

 また一方、企業についてもその働きがいを感じられる企業について、企業の分布とか状況というのが我々は分かっているかというと、今回、最初の議題にあった職場情報の提供という、今回改めて初めての試みをすることからも分かるように、また企業の在り様についても十分な情報がないのかもしれない。

 また一方で、この資料の冒頭にあるとおり、「今後評価する場合にハローワークを労働市場の状況に合わせ、業務量が同程度のものというグループ分けをする」と書いてありますが、果たしてハローワークの業務量というのも客観的に示すことができる部分と同時に、必ずしも業務量を明確に全て客観化できるかというと、想像の域を出ませんが、難しい部分もあるのではないかと。また、そういう問題もあるということを踏まえて、この総合評価というのが間違っても唯一絶対の評価軸にはならないというように、あくまで複線的に今後は評価の方法を考えていく上での、1つの重要な柱として位置付けていくことも重要ではないかと考えています。

 併せて申し上げると、その客観的なものを、特にハローワークの機能のいわばアウトプットを中心として評価されることを意図されているようにお見受けしますけれども、当然アウトプットのためにはどういうインプットがハローワークに対してなされているのかということもなければ、アウトプットの成果というのはこんな評価はできないはずだと思いますので、先ほどハローワークの業務量の問題も含めて、その辺りについても今後、継続的な改善を検討するという上で、是非御検討いただければと思っています。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

 私からも、玄田委員と同じようなことを申し上げるつもりですが、参考2にマル4として「官民協働による外部労働市場のマッチング機能の強化」というように書いてあるわけですが、この間、ずっと職業紹介というのは民間への規制緩和で、民間が入ってきて、官民協働という形になっていくわけです。そういう中でハローワークというものは、ある意味、「最後の雇用のセーフティーネット」と言われるようなものを役割として担わなければならないと思っています。そうした最後のセーフティーネットをどのように評価するかというのは、必ずしも簡単に指標で見られるかというと、そうでもないだろうという点が多いのではないかと思います。今、それは玄田委員がお話になったとおりではないかと思います。

 そういう意味で、この指標をどう使うかと言ったところで、やはり指標そのものを今後改善していくということも大事だと思いますし、更にこの指標を使って、先ほどから御説明がありましたが、PDCAサイクルを回して好事例を横転換していくといったところでうまく使っていって、いわゆる成果が第一であるような使い方はむしろなされないほうがいいのかな、というように個人的には思っているところです。今後ともこの指標については、改善していくような形で、ハローワークの機能強化といった形につながるような、指標になるようにしていただきたいと思います。

 ほかに御意見、御質問はありますでしょうか。特にないようでしたら、この取組については、本日御説明いただいた内容に沿って進めていただきたいということで、当分科会としては了承したいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、予定されている議題は以上で終了しましたが、ほかに御発言はありますでしょうか。特にないようでしたら、本日の分科会はこれで終了したいと思います。

 本日の会議に関する議事録につきましては、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか、お二人の委員に署名を頂くことになっています。つきましては、労働者代表の林委員、使用者代表の高橋委員にお願いしたいと思います。本日もどうもありがとうございました。


(了)

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