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2014年11月11日 第2回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成26年11月11日(火) 14:00 ~16:00


○場所

厚生労働省省議室


○出席者

委員

樋口座長、大石委員、玄田委員、佐藤委員、鶴委員、堀委員、宮本委員、山川委員
生田職業安定局長、勝田職業安定局次長、広畑職業安定局雇用開発部長、代田職業安定局派遣・有期労働対策部企画課長、田畑労働政策担当参事官、鈴木労働基準局総務課長、宮下職業能力開発局総務課調査官、田野雇用均等・児童家庭局保育課長補佐、中井雇用政策課長、黒田雇用政策課長補佐、藤井雇用政策課労働市場分析官

○議題

(1)人手不足分野等の現状把握について
(2)その他

○議事

○樋口座長 定刻になりましたので、ただいまから第2回雇用政策研究会を開催いたします。お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、第1回、前回出ました各委員からの要望、それに対する対応、並びに今回のテーマであります人手不足分野等の現状把握について、事務局から説明をお願いいたします。

○黒田雇用政策課長補佐 よろしくお願いします。雇用課の課長補佐の黒田でございます。資料1と資料2について、連続で御説明させていただきます。

 まず、資料1でございますけれども、前回、委員の皆様方から御要望があった点について、資料をまとめさせていただいておりますので、ごらんください。

 おめくりいただきまして1ページ目でございますが、人手不足の分野において、本来であれば賃金が上がるはずなのに、現実としては必ずしも賃金上昇につながっていないのではないかという御指摘があったかと思います。それに関連した資料を1ページ目から3ページ目までつけてございます。

 1ページ目は、2011年から2014年の雇用過不足DIの変化幅と賃金変化率の関係を見る資料でございまして、右下のほうにございます医療・福祉、あとは建設業のあたりで人手不足感が大きくなっていますが、賃金はそれほど上昇していないことがわかります。

 おめくりいただきまして2ページ目、3ページ目でございますけれども、求人賃金と人手不足の関係を整理した資料でございます。ここには人手不足感が高い業種を拾ってみましたけれども、求人賃金についていえば建設業では上昇傾向にある。次のページですけれども、医療・介護については、求人賃金で見ても最近は横ばいという傾向になってございます。

 4ページ目でございます。世代ごとに見た有配偶率でございますけれども、男女ともに若いコーホートになるにつれて低下している状況が見てとれます。

 5ページ目でございます。世代ごとにみた、就業率と完全失業率の資料でございます。特徴としまして、まず男性でございますけれども、1959年から68年生まれの青色の点線に比べて、若い層、赤とか黄緑の世代のほうが、自分たちが若かったころの時代の就業率が低くなっている。逆に、完全失業率は高い状況になってございます。また、自分たちが30代中盤から40代中盤時点で青と赤を比べますと、実は上の世代と下の世代が同水準になっているというおもしろい現象が起きていることがわかります。女性は、若い世代になるほど就業率が上昇していることがわかります。

 6ページ目でございます。世代ごとにみた、人口に占める正規雇用・非正規雇用・非労働力人口の割合でございます。男性は、若いコーホートになるにつれまして正規雇用の割合が低下しております。非正規雇用と非労働力人口は、逆に割合としては上昇している状況であります。また、自分たちが30代中盤から40代中盤時点で見てみますと、上の世代と下の世代で正規雇用の割合が同水準に近くなっているという現象が起きてございます。女性は、逆に若くなるにつれて非労働力人口の割合は低下しております。正規雇用と非正規雇用の割合が上昇している状況であります。

 7ページ目に参ります。世代ごとの賃金カーブを実質で見たものでございますけれども、男女ともに、若くなるにつれて賃金カーブが緩やかになっていることがわかります。

 8ページ目でございます。大卒の求人倍率の推移でございます。青色の棒グラフ、求人総数を見ますと、足元の2015年は、リーマンショック前やバブル期の水準までは達していないものの、顕著に増加している状況であります。赤色の民間企業就職希望者数は、ここ3年微減ではありますけれども、長期的に見ますと増加傾向ではないかと考えてございます。

 9ページ目から11ページ目まで、3ページにわたって就業率について男女別で見てまいります。

10ページ、男性は、就業率、年代別になっていますけれども、おおむねどの年代も横ばい、ないしは若干、一部低下傾向という状況でございます。

11ページ目、女性の就業率でございますけれども、長期推移を見ますと、25歳から44歳、赤い三角と緑のバッテンのところが顕著に上昇していることがわかります。

12ページ目、開業率と廃業率の推移の資料でございます。開業率は、バブル期以降、低下傾向にありましたが、2000年代に入りましたところで4%から5%のレンジで横ばいで推移していることがわかります。逆に廃業率は、90年代、おおむね3%台でございますけれども、2000年代に入ってちょっと上昇しまして、4%台で横ばいに推移してきた。足元の2012年度と比較すると、廃業率は3.8%まで落ちていますけれども、基本的にはこの10年ぐらいは横ばいということでございます。

13ページ目でございます。社長の平均年齢の推移と社長の交代率という資料でございます。帝国データバンクのデータでありますけれども、社長の平均年齢というのは1990年から一貫して上昇しているということで、2013年は58.9歳まで上昇してきました。一方で交代率、1年の間に社長に交代があった企業の割合でございますけれども、これは徐々に低下してきて、足元では3.67%まで落ちてきている状況。新陳代謝がなかなか進みづらい状況が見てとれます。

14ページ目、15ページ目、16ページ目では、正規から非正規、非正規から正規、どのような動きがあったかということを、お尋ねがあったのでおつけしてございます。

 まず、14ページ目ですけれども、それぞれどうなっているかというと、左側の正規から非正規で特に顕著なのは、斜め線の55歳以上の層が中心となってふえていることがわかります。逆に、非正規から正規については、15から34歳層に着目すると、非正規から正規に転換する人のほうが正規から非正規よりも多いということになってございます。

15ページ目が男女別に見ておりますけれども、男性の高齢層で正規から非正規に転換する方が顕著に多い状況になってございます。

16ページ目は、経年変化で正規から非正規、非正規から正規、両方見たものでございますが、リーマン前の2007年までと、アベノミクスの効果があらわれ始めた2013年については、非正規から正規への移動という赤い斜線の棒グラフが伸びていることがわかります。

17ページ目、18ページ目は、不本意非正規労働者の推移の資料でございます。全体については、前回もお示ししたのですけれども、平成26年4月から6月期では対前年で15万人減。特に15から34歳層の若い層では、2期連続の減少となっております。ただし、まだとり始めて間もないデータですので、もう少し長く傾向を見るという留意が必要であります。

 これを今回は男女別に見るという御下問がございましたので、資料は18ページ目でございますけれども、男女ともに全体のその傾向に大きな変化はございません。足元では、女性のほうが減少幅が大きくなっているという状況にございます。

19ページ目からは、在職老齢年金制度の資料をおつけしています。制度の概要ですけれども、在職老齢年金制度、60歳から65歳、あと、65歳以上で仕組みが異なってございます。

60歳から65歳というのが中段ですけれども、賃金と年金の合計額が28万円を上回る場合には、賃金の増加2に対して年金の減額1をする、年金を1停止するという仕組みになってございます。これは、平成26年改正で導入されたものでございますけれども、それ以前は在職中は一律2割、年金を停止することになってございました。

65歳以上は、賃金と厚生年金の報酬比例の部分の合計が46万円を上回る場合に、同じように賃金の増加2に対して、年金を1停止するという仕組みになってございます。こちらは、平成12年改正で導入してございます。

70歳以上も、基本的には同じような2対1でする形でございます。

20ページ目は、平成16年改正以前と以後で、それが雇用に対してボトルネックになっているのかということを研究した資料を集めてみました。これは年金部会の資料、そのままですけれども、上の箱が清家先生と山田先生の2004年の著書から抜粋したものですが、中段のところ、「この分布は」という2段落目を読み上げますが、「年金受給資格者の多くが、80%の年金給付を受けるために就労を抑制した結果を反映している」ということで、平成16年以前では、働くと一律2割、年金が停止されることが就労の抑制につながっているという分析がされているということでございます。

 下の箱は平成16年改正以降の話でありますけれども、これも2段落目の冒頭、「以上のように」というところですけれども、「老齢厚生年金受給資格の就業抑制効果は2009年時点では確認できなかった」ということでございますので、2対1になってからは就業の抑制効果は確認できていないということで、一つの証左になっている資料でございます。

21ページ目は、老齢厚生年金の支給開始年齢の段階的な引き上げのスケジュール等々でございますので、御参考までにおつけしたものでございます。

 以上が前回御指摘いただいたことに対して御用意した資料でございます。

 引き続きまして、本日の本題になります資料2、分野別に見た人手不足、ミスマッチについて御説明申し上げます。

 まず、各分野における人手不足の現状という資料をおつけしてございます。

 2ページ目、職業別有効求人倍率、これは前回もお示ししましたけれども、丸をつけているうちの左側で、まず看護師・准看護師が2.57倍、右側中段ですけれども、建設の職業が2.76倍、土木の職業2.86倍、あと、下から2つ目、介護関連職種が2.32倍。このあたりの建設、介護、看護等で人手不足が顕著でありますので、本日はこれらの分野について御説明してまいります。

 3ページ、人手不足分野の職業別の有効求人倍率についてでございます。ここ数年間の推移を見ますと、建設関連職種ではいずれの職業も低下傾向にありましたが、リーマンショック後にさらに落ち込みまして、職業によっては1倍台という時期もございました。しかしながら、東日本大震災以降は逆に大幅に上昇してございます。看護師・准看護師の青い線については、リーマンショック等の景気変動はそれほど関係なくて、有効求人倍率は上昇傾向で推移している状況でございます。

 また、4ページ目で有効求人数を見ますと、近年は赤い介護関連職種と、あと、建設業はいろいろ分かれておりますが、合計したものが黒いものですけれども、この2つで上昇が顕著であります。また、保育につきましても増加傾向に転じてきております。

 5ページ、有効求職者数の推移を見ますと、介護関連職種は多い状況でございます。一方で、黒の建設関係職種の合計は、有効求人数の増加に呼応するように有効求職者数は減少してございます。

 6ページ目、7ページ目は、前回お示ししました産業別・雇用形態別の労働者の過不足状況の資料でございます。

 8ページ、職業別の正規・非正規雇用労働者の割合を見ますと、右の建設・土木、あと、左側にある看護師は、正規雇用の割合が高い。真ん中にあります介護サービス職業従事者は、非正規雇用の割合が高くなってございます。

 9ページから先は、職種ごとに正規・非正規の分布と男女の分布を見た棒グラフをつけてございます。

 まず、9ページは看護師でございますが、右側に棒グラフが伸びていまして、女性が多くなってございます。女性の多くが正規雇用であることがわかります。30代以上の女性では、非正規雇用の割合が高まってまいります。

 続きまして、10ページ、保育士を初めとする社会福祉専門職業従事者の分布です。これも女性が多くなってございます。男性のほとんどが正規雇用。一方、女性は、看護師に比べると非正規の紫色の棒グラフの割合が高まっている状況でございます。

11ページ、介護サービスの職業従事者も女性が多く、男性はほとんどが正規雇用、35歳以上の女性の半数以上が非正規雇用という状況になってございます。

12ページ目、建築・土木作業従事者は、男性が多くなっております。男女ともに正規雇用の割合が高くなっていることがわかります。

13ページ目以降は、各分野における入職・離職の資料をおつけしてございます。特に入職については、看護、保育、介護については資格試験等がございますので、その資格の前提となるようなルートについて御説明させていただきます。

 まず、看護について御説明しますが、14ページ目をごらんください。保健師・助産師・看護師等の就業者数の推移になります。黄緑色が看護師、オレンジが保育士、一番下が助産師、これはいずれも増加傾向です。紫の准看護師は減少傾向にございます。一番上の青い看護職員というのは、今の4職種の合計であります。

15ページ目でございます。看護教育の概念図ということで、看護師になるためにはどういうルートがあるかということでお示ししたものでございます。国家試験を受験するには主に4つのルートがありまして、一番左の4年制大学が29%、左から2番目のオレンジが3年コースの養成所とか短大が46%で、一番ボリュームゾーンになっている。右から2番目、中学を卒業してすぐに5年一貫校に入るのが7%。一番右ですけれども、准看護師の養成所に入った後で、さらに養成期間2年の養成所・短大に入るという経路もございます。これが19%でございます。

16ページ目でございます。看護師の学校養成所、今のページのオレンジ色の4つの部分がありましたけれども、この定員を見ていきます。4年制大学を中心に増加を続けておりまして、他方で准看護師は定員が減少しているという状況でございます。

17ページ目でございます。看護師等の学校養成所における入学者数は増加が続いている。内訳としましては、看護師が増加傾向、准看護師が減少傾向でございます。

18ページ目でございます。看護師等の学校養成所の卒業者と卒業後の就職先について見たものでございますけれども、卒業者も増加傾向ですし、看護職員として就職した人も増加傾向になっていることがわかります。

 次に、保育分野を見てまいります。

 保育所に勤務する保育士の数という資料をおつけしてございますけれども、直近の平成24年では40万人余りが保育所に勤務しておられます。そのうち8割が青いところですけれども、常勤職員となっていることがわかります。

 引き続きまして、20ページ目です。保育士の資格取得方法ということで、主に大きく2パターンのルートがあります。1つ目が、一番左に書いてあります、全国601カ所ある指定保育士養成施設を卒業するコース。もう一つが、右側ですけれども、大学とか児童福祉施設とか幼稚園等々、いろいろな経緯がございますけれども、一定の受験資格を満たした上で保育士試験に合格する形のパターンがございます。

21ページ目であります。先ほどの左側にあった指定保育士養成施設の入学定員について見ている資料ですけれども、この定員は増加傾向にあります。特に、大学とか専修学校は増加してございます。

22ページで、卒業者数でございますけれども、長期的にはふえたり減ったりになっておりますけれども、ここ2年間は増加が続いております。あと、卒業者のうち、保育士関連施設に就職した者の動きも同様でございます。

 次に、介護分野について御説明します。

23ページ、介護分野における人材確保の必要性についての推計を紹介いたします。24年3月の社会・援護局の推計でございますけれども、2025年には237万人から249万人の介護職員が必要になるという推計が出ております。

24ページ目が、介護福祉士国家試験における前提となる経路についてお示ししています。主に介護福祉士養成施設等を卒業するパターンと、一定の実務経験と実務研修、一番右ですけれども、こういったものをクリアした場合、国家試験を受けられることになっております。

25ページ、介護福祉士養成施設の定員数は減少傾向にございます。また、入学者数も減少傾向になっております。

26ページ目です。福祉系高等学校等の定員数は増加傾向、入学者数は福祉系高等学校では増加、特例高等学校では減少傾向になっていることがわかります。

 続きまして、建設業の状況について御説明します。

27ページ目は、建設分野における状況ですけれども、左側のグラフのオレンジ色のところ、技能労働者の数は、平成9年455万人がピークでありました。足元、平成25年は338万人まで約26%減少してきている状況です。

 あと、右側の折れ線グラフですけれども、これが建設業全体の高齢化を示しているものですけれども、55歳以上の方が3分の1以上、34.3%になっています。逆に、29歳以下の方が10.2%で約1割ということで、全産業平均に比べても高齢化が顕著に進んでいることがわかります。

28ページ目、建設投資と建設業の高卒求人数のグラフです。黄色と青の棒グラフの合計が建設投資額です。平成4年度以降、減少を続けておりまして、平成22年度に一旦41兆円まで落ち込みました。その後は増加傾向で推移してございます。他方で、赤い折れ線グラフが高卒求人数でございますけれども、これは建設投資額に連動した動きをしていることがわかっております。直近23年度で一旦底を打っておりますが、その後増加に転じていることがわかります。

 今度は、全体的な就職・離職の状況を見ていきますけれども、まず29ページ目は、今、申し上げた人手不足4分野へのハローワークからの就職者数の推移でございます。経年変化で見ますと、介護関係職種への就職者数が伸びてございます。また、どの職種もハローワークを通じた就職がコンスタントに行われていることがわかります。

30ページ目、前回お示しした産業別離職率の資料でございますけれども、今回、テーマとしています医療・福祉の一般において若干高い状況にあることがわかります。

31ページ目、離職の状況を見てまいりますが、これも前回お示しした資料でございますけれども、高卒3年後の離職で見ますと、建設業、医療・福祉、ともに平均より高くなっております。大卒3年後の離職で見ますと、医療・福祉で平均よりも高く、建設業で平均より低くなっている状況でございます。

32ページ目ですけれども、職種別の勤務先の従業員の離転職の状況を見ますと、介護関係の仕事や医療関係の仕事では、離転職が多い、またどちらかといえば多いという割合が高くなってございます。

33ページ目からは、各分野における雇用管理全般の資料をおつけしております。

34ページ目ですが、職種別の勤務先で実施されている雇用管理制度等についてですが、各分野において赤丸をつけたところが多く実施されてございます。

35ページ目、職種別の離職理由を見ますと、これも赤丸をつけてございますけれども、介護では、例えば賃金が不満とか健康を損ねたためというのが多くなっております。医療では、結婚・出産等のためとか家族の転勤等、家族の事情が多くなっております。あと、建設では、労働時間が長いとか健康を損ねたということが多くなっているということであります。

36ページ目、37ページ目は、前回おつけした資料ですので、割愛します。

38ページ目から、各分野における労働時間の資料をおつけしてございます。

39ページ、職種別の週休制度を見てまいりますが、建設業において完全週休2日制より公休日数が多い、あと、完全週休2日制になっている、この2つの総計の割合が低くなっている状況でございます。

40ページ、日曜・祝日が原則として休みという割合についてですが、介護関係、医療関係では低くなっていることがわかります。

41ページ、勤務時間の形態を見ますと、建設業は日勤のみの割合が高い。逆に、介護とか医療というのは日勤のみが低いという状況になってございます。

42ページ、産業別と職業別の長時間労働の状況を見ますと、建設業の男性が平均より高くなっていることがわかります。

43ページです。総労働時間の経年変化を見ると、建設業はおおむね産業計に比べて長くなっております。特に、男性の労働時間が一貫して長い状況であります。

44ページ、所定内労働時間を見ますと、建設業、保育士、介護支援専門員が長くて、看護師、准看護師は短くなっていることがわかります。

45ページ目です。超過労働時間についてですが、全体的に産業計より短い傾向にありますが、近年、建設業の超過労働時間が若干上昇傾向の状況であります。

46ページ目からは、賃金に関する資料をおつけしてございます。

47ページ、年収ベースの年齢階級別の賃金カーブを見ますと、建設業と30代以下の看護師を除きますと、人手不足分野の賃金カーブというものは、産業計の黒に比べて全部下になっている、どの年齢層でも低い水準になっていることがわかります。また、建設と看護、保育のあたりは年齢が上がると伸びてきている。年功賃金的な動きをしているのがわかりますが、介護分野は年齢が上がっても賃金カーブが横ばいとなっていることがわかります。ホームヘルパーとか福祉施設のところです。ただ、賃構は御存じのとおり、職種と管理職がダブる場合は職種区分から外れますので、年齢が高い人を見るときには注意が必要ということだけ申し添えておきます。

48ページ目、49ページ目、51ページ目は、今の年収ベースの賃金カーブと同じ動きなので、割愛します。

50ページ目、超過給与額の賃金カーブですが、看護師と45歳以上の准看護師、あと、40歳未満の建設業で産業計を上回っている以外は、産業計よりも低くなっているという状況でございます。

52ページ目以降は、平成13年を基準年といたしまして、そこを100といたしまして、各年の賃金を指数化したものを時系列にまとめたものです。ちょっと見にくくて恐縮ですけれども、決まって支給する現金給与総額。ホームヘルパー、緑、あと、看護師、赤ですけれども、これが上昇傾向にある。一方で、保育士、介護支援専門員が水色とオレンジですけれども、大幅な低下傾向になっているということでございます。

53ページも同じ状況ですので、54ページをごらんください。超過労働給与額に関してでございます。これも同じように平成13年を100にしますけれども、ここ二、三年に限って見ますと、建設業と介護支援専門員が上昇傾向です。保育士の水色は、ここ二、三年は低下傾向にあります。

55ページ目、年間賞与その他特別給与の推移でございます。全体的に、産業計も含めてですけれども、低下傾向で推移してございますが、平成25年の指数は、建設業と看護分野で産業計より高くなっている以外は、ほかは低くなっているということで、産業計よりさらに落ち込んでいることがわかります。

56ページ目でございます。一般労働者の所定内労働時間における時間当たり賃金を見ますと、建設業は一貫して、あと、看護師は平成24年以降から、それぞれ産業計を上回っております。看護師は、近年上昇傾向にあるということも同時にわかります。

57ページ目、短時間労働者の所定内労働時間における時間当たり賃金を見ますと、看護師、赤です。あと、准看護師、紫。あと、ホームヘルパー、緑。あと、介護支援専門員、オレンジ、このあたりが産業計より高く、福祉施設介護員、保育士は産業計と同水準ないしは低い水準になってございます。

58ページ目は、超過労働時間における時間当たり賃金でございますけれども、超過労働時間に着目しますと、看護師、准看護師、福祉施設介護員が産業計を大幅に上回っております。また、准看護師、紫が近年大幅に伸びてきている状況です。

59ページ目でございます。ここまでのまとめということで、先ほど資料1の一番初めにおつけした資料をおつけしておりますので、御参考までによろしくお願いします。

60ページ目でございます。人手不足の各分野における企業規模別の所定内給与額階級別の労働者比率をまとめてみました。右上の介護労働者と左下の保育士が20万円未満の層が比率として多くなっていることがわかります。あと、どの職種でも企業規模が大きくなるにつれて給与の高い層の割合が高まっている。これは当然のことですけれども、わかります。

61ページ目をごらんください。給与等の決定要素についてでございますけれども、介護関係、医療関係、建設関係、いずれにおいても本人の年齢とか勤続年数、黒いところです。あと、点々のところ、本人が持っている能力、このあたりが決定要素として割合が高い。逆に、本人が一定期間内に出した、目に見える成果・業績というのは低くなっているということがわかります。

62ページ目でございます。産業別売上高営業利益率を見てみます。産業計5.61に比べまして、今回、テーマである建設業、3.95と低い。逆に、保育や介護は労働者の賃金が低かったのですけれども、営業利益率は産業計より高くなっていることがわかります。

63ページ目からは8月25日に副大臣ヘッドで人手不足介護会議で取りまとめました、現在の人手不足対策をおつけしていますので、きょうの議論の参考にしていただきます。

 若干オーバーしてしまいましたが、私からは以上でございます。

○樋口座長 どうもありがとうございました。

 それでは、質疑、御意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いします。佐藤さん。

○佐藤委員 どうもありがとうございました。

 4つぐらいあるのですけれども、1つは、人手不足の分野、今回、4分野ですけれども、特に地域におりたときに、これを全てうまく充足するのかということで、特に保育、介護で言うと、例えば高卒でどこに進学するかというと、結局取り合いになっているわけです。特に、若年労働が減ってくることを考えると、全てが充足することが可能なのか。それは新卒のところもそうですし、転職のところもそうですけれども、事実上、取り合いの状況があって、どう頑張っても充足できない。

 特に、地域あるいは全国で見てもそうかもわからないですけれども、確かにそれぞれの分野でいろいろやっているのですけれども、実際上、奪い合いみたいなことになって、本当に充足できるのかというのがすごく気がかりな点。それを考えられているのかどうかが1つ。

 もう一つは、地域ごとに需給推計するということですけれども、保育とか介護で言うと、地域を超えて、大手の保育は九州のほうに採用に行ったり、介護も沖縄に採用に行ったりということで、事実上、地域間移動が相当あるのです。ですから、本当に完結しているわけじゃなくて、昔の涼む場所を用意して乗ってくるみたいに近いようなことが、介護とか保育士なども結構あるので、規模はわからないのですけれども、大手の方に聞くとかなりやられているので、地域内だけでという議論は確かに大事ですけれども、他方で地域間で若い人の取り合いがかなり起きているので、これをどうするかということが2つ目です。

 3つ目は、需給をどのぐらいに考えるかで、保育も看護も不足ですけれども、高齢者介護の需要は2025年を超えても相当続くのです。ただ、保育は正直言って、かなり早目にピークが来る。余り始めるのではないかということもあるので、海外だと保育士の人を介護のほうに転換するということも考える議論もされているのです。目の前の不足で保育士資格取って参入というと、早目に保育士余りみたいなことが起きかねない。

 余り早目には言えないですけれども、無責任にやるのは問題かなと思うので、現在の需給だけじゃなくて、もう少し先を見たときにどうなるかも含めて、例えば保育士の資格取得をどうするというときに、将来的には介護への転換ということも少し視野に入れておかないと、将来困ってしまうのではないかというのが3つ目です。

 4つ目は、潜在有資格者、これはいろいろなところで議論されているのですけれども、介護のデータを見ると、確かに資格を持っていて介護分野に就職していない人はいるのですけれども、既にほかの仕事についている人がたくさんいるわけです。ですから、資格はあるのだけれども、今、働いていないとか、ついているけれども、転職したい人がどのぐらいいるか。つまり、資格を持っているけれども、当該分野で働いていないというデータが出てくるのですが、その資格を生かせる分野に移せるだけの可能性が本当にあるかというと、余り詰めた議論がされていないので、潜在有資格者がこれだけいるから、もう一度参入できるという議論はもう少し精査したほうがいいかなというのが4つ目です。

 あと、細かい点で、データで31ページ目に3年目離職率がありましたね。全体にかかわるのですけれども、大卒を見ると、現状でも男女で離職率が相当違うのです。そうすると、女性の大学進学率が高くなっていて大卒女子がふえているので、女性がふえたことによる離職率の増加が結構大きいので、できたら男女別。もとのデータにはあるので、特に大卒の離職率が上がっているのですけれども、女性の大学進学率が上がったことによる影響というのを少し割り引いて見なきゃいけないかなと思いますので、これはデータの見方ということで、ちょっと長くなりました。

 以上です。

○樋口座長 今の御指摘あるいは御意見で、事務局で何かありますか。

○中井雇用政策課長 ただいまの佐藤先生の御指摘について何点か。

 最初の1つ目の高卒の取り合いとか、地域別の需給推計における地域間の移動という御指摘がありましたが、いずれも労働力は地域間を移動するということだと思っています。それは重要な視点でございまして、今回、どういうふうにこなすかというのは考えなきゃいけないと思っていますが、移動をされるということは当然念頭に置いて考えたいということであります。

 あと、需給バランスの関係で言いますと、将来どう見通すかというのは、前回の研究会ではマクロの労働力需給推計をまとめていただいております。その中でも、医療・福祉というところも一定程度、先行きを見通してということになろうかと思います。その中で、中身をどう見るかということと、それを地域でどう見るかという話だと思っておりますが、そちらとの整合性を考えていかなきゃいけないだろうなと思っています。おっしゃるとおり、介護と保育は今後の見通しというのは、需要が変わってくると思いますので、前回の需給推計を整理しながら考えていきたいということでございます。

 4番目の潜在的な有資格者については、当面の対策として掘り起こさなければいけないということでやっている中において、どのくらい可能性を見るのか。実際に有資格者であっても、今の処遇ではとか、将来、そこにもう一回戻っていくという意思が余りない方もアンケート調査で出ていたかと思います。そういったものをどういうふうに整理できるかあれですが、念頭に置きたいと思っています。

 あと、3年目の離職率のデータですが、もともとのデータとしては男女別であるはずだということですが、現在はつくっていないです。加工できるかどかうも、また持ち帰って検討したいと思います。

 以上でございます。

○樋口座長 鶴さん。

○鶴委員 どうもありがとうございました。

 委員から要望があった資料についてということで、私のほうから人手不足と賃金の関係と、あと、非正規から正規への移行ということをお願いしたのですけれども、これを見て非常に明解な結果が出ているなと思いました。ただ、1ページと2ページ、3ページですが、この2つについては、使っている賃金の統計が違いますね。片方が毎勤、片方は職業安定業務統計の求人賃金ということです。

 先ほど若干御説明があったのですけれども、建設業は1ページのほうだと賃金の伸びがかなり低いのですけれども、求人賃金を見ると割と高いという印象。医療、福祉は両方ともそれほど伸びていない。一方、卸売・小売は求人賃金は余り伸びていないのですが、毎勤で見ると割と伸びているということなので、この統計の仕方によってかなり違っている気がしているのですけれども、この理由について、もしおわかりになるなら教えていただきたい。

 2点目は、これは質問というよりも単純な感想ですけれども、非正規から正規への動きということで、16ページを見ると、年というのは四半期の平均ということだと思いますけれども、80万人ペースで非正規から正規へ転換していきました。これが14ページの一番右のところを見ると、4-6月期で100万人ということですね。だから、今、足元で転換が過去数年に比べて非常に高いペースになっていると解釈していいのかなということで、もしコメントがあればお願いします。

 それと、最後ですが、3番目。資料2の62ページで売上高営業利益率をお示しいただいています。この出所がセンサスですが、私も統計のことが詳しくなくて申しわけないのですけれども、医療とか社会福祉・介護等々、ここで取り上げている法人の格というか、社福とか会社形態なのか、ありとあらゆるものがこの中に我々が想定しているものが入っているのか。それとも、法人の格としては統計上、かなり限定されたものが入っているのか、もしおわかりならばお教えください。

○樋口座長 では、お願いします。

○黒田雇用政策課長補佐 説明が言葉足らずなところがあるかもしれませんが、先ほどの御指摘の1点目の統計による賃金の違いですが、求人賃金のほうは、まさに求人のときにどういう賃金水準で募集しているかでありますので、私ども職業安定業務統計のところは、実際に払っている賃金というよりは、人を募集するときの賃金水準がどうなっているかということを見てございます。

 1ページ目の前勤のほうは、実際にお支払いになっている賃金の水準でございますので、受け取っている賃金は1ページで、求人賃金のほうを見たのは、多少動きが違うかもしれないということがありましたので、分けて資料をお出ししています。その中で、医療・福祉は求人賃金も低いですし、実際もらった賃金も横ばいになっているということであります。

○樋口座長 今の関連で、求人賃金と言っても、それは求人票に書いてある賃金で、実際に就職すればその賃金をもらえるわけですね。要するに新しく雇った人の賃金は上がっているけれども、今までいた人も含めて平均で見ると上がっていませんということになっているわけでしょう。だから、それがなぜ逆に既に雇っている人たちのところまで波及しないで、新しい人ばかり高い賃金で来てもらおうとしているのかというところの問題だと理解したのです。

○中井雇用政策課長 そういう意味で言うと、人手不足感と賃金ということで言った労働市場における需給バランスみたいなところが敏感に反応しているかどうかという話と、おっしゃるストックとしての労働者にそれがどう波及するかというのは、分けて考えないといけないということだと。ちょっとそこまで細かく分析できているわけではないですが、その両者の違いにのっとっていると思います。可能であれば、もう少し深掘りしたいと思います。

○黒田雇用政策課長補佐 2点目の80万人ペースで推移してきた、正規から非正規の転換が足元は100万人転換したということで、ふえているのではないかという御指摘。まだ短期的な1四半期しか出ていませんので、100万人になって、その傾向が続くのかどうかをまた注意深く見ていきたいと思ってございます。まさに、7-9の数字がすぐ出ますので、これも楽しみと言ったら変ですけれども、待っておりますので、見ていきたい。伸びていればいいなと思ってございます。

 最後の経済センサスの医療・介護の関係は、どういう法人が入っているのかというのは、直ちに今、持ち合わせがないので、後ほど整理して御説明できる機会があればと思ってございます。

○樋口座長 私も今の鶴さんと関連して、1ページ目の2011年から14年の人手不足感、それと賃金変化率がマイナスの相関になっているというのは、普通考えるのと違う。普通は、人手不足のほうが賃金を上げて、それを解消しようとするだろうと思うのですが、ここに如実にそれがあらわれているなという感じで、逆に右側にある建設と医療・福祉のところは、人手不足は非常に強いのだけれども、賃金で見ると賃上げ率2%以下。

 だから、そこがなぜそうなのだろうかという、この間の研究会の皆さんの御意見だったと思って、そこには制度的な要因とか、いろいろなものが働いている可能性があって、単に労働市場が働いていないということでもないと思うのですけれども、その背景があるということは確認しておかないといけないのかなと思いますね。

 もう一つ、先ほど佐藤先生から、今後の見通しで、職種によって今後も伸びる職種もあれば、長期的にはむしろ減少する、需要側が減ってくる職種もありますねという御指摘だったのですが、同じようなことは、過去からさかのぼって考えると、ここに4分野の人手不足の業種が出ているわけですが、それぞれ違った動きがあって、例えば建設の場合は、総需要が少なくても、民間事業にしろ、公的投資にしろ、むしろずっと減ってきて、人のほうも減らされてきて、その段階で今、ちょっと上がったね。上がったとたんに、今度は人手不足という動きだろうと思います。

 だから、需要が減ってきて、供給というか、実際に雇われている人も減って、ある意味ではバッファーが調整されたわけです。その段階で、今度、需要がふえたから、バッファーを持たずに、従来であればかなりバッファーを持ちながらの調整だったのが、急激にそれが如実にあらわれてしまったというところ。

 今後を見通したときに、このままずっとふえていくのだと考えるのか。景気の動向によって変化する特殊な産業だと思うのです。そこにたくさんの人が入ったときに、また同じようなビジネスサイクル的な調整みたいな話が出てくると、働くほうとしては不安で、今、人手不足だから賃金が上がったからといって、なかなかそこに行かないということも可能性があって、幾つか分けて考えたほうがいいのではないですか。

 介護・医療というのは、まさに高齢化の影響という形で需要がずっと伸びてきている中で、慢性的な人手不足、恒常的な人手不足が発生している中での今の問題という形で、タイプを分けて考えていく必要があるのではないか。現状を見ると同じ人手不足でありながら。という感じがしますということです。

 どうぞ。

○佐藤委員 今、樋口先生が言われた1ページ目のデータで、私は人事管理なので。医療・福祉、特に福祉関係で伺うと、同じ法人で障害者とか高齢者とか、基本的に賃金水準はそんなに変わらない。ただ、募集すると、障害者のほうは若い人が採れても高齢者が採れないという話も伺う。つまり、賃金だけでは動かない部分が相当あって、賃金を上げれば来てくれるというわけではない。もちろん低いというのはあるだろうけれども、それでも採れない。ですから、ほかのいろいろな工夫とか働く人の見方とか、その辺をやらないと採れない面もここに反映しているのかなという気もしました。

○広畑雇用開発部長 建設業がちょっと議論になっていますので、1点、御指摘申し上げますと、資料2の27ページですが、建設業は相当高齢化が進んでいる一方で、若者の求職者が減っている上に離職者がふえているということで、先ほどございましたように、賃金が非常に高い求人を出さなきゃいけないけれども、技能労働者はどんどん高齢化していますので、そちらがピークアウトして、全体の賃金が下がっている。

 あと、建設業でも技能労働者と事務系の職種がおるのですけれども、多分事務系は高止まりして、それ以上伸びない。ところが、先ほど申し上げた労働者の部分は高齢化して下がってくる部分がありますので、どんなに足元の求人賃金を上げても追いつかないというのが1点あります。

 それから、28ページにございますように、建設投資を今後どう見るかというので、被災3県を深掘りして、いろいろ聞いておるのですけれども、型枠とか鉄筋工を採用したいという意欲はあるのですが、被災3県ですら、今後の投資についてはまだまだ悲観的に見ておりますので、産業構造としても大きな問題があるので、建設と医療・介護は別かなという感じはしております。

○樋口座長 どうぞ、宮本さん。

○宮本委員 大変勉強になる資料、ありがとうございました。

 2点ほどお伺いしたいのですけれども、1点目は、今、座長がおっしゃった人手不足の中の賃金未上昇ということもかかわると思いますが、特に介護分野で、今、社会福祉法人の内部留保などの問題が取り上げられていて、これに関連して介護報酬6%引き下げみたいな話も財政支援あたりで出てきているという流れに、62ページの先ほど鶴先生が言及されたところですけれども、利益率のデータが妙に重なってしまうというか、利益が出ているじゃないか。これならば賃金を上げられるのではないかということともつながってくるわけですけれども、このあたりの分析ですね。

 1つは、社会福祉法人の中でもいろいろで、内部留保のあり方で話を聞いていると、必要以上に留保しているのは3割ぐらいあるのだけれども、ほかは留保の規模自体が、例えば繰越金とか修繕費の求める数字に追いつかなくて、そこでまた6%下げられたら雇用危機ということになりかねない実態もありそうだということです。このあたり、雇用の科学を分析している研究会として、何か言えるのか言えないのかということを含めて、この中身をどれぐらい分析できるかということについて。

 もう一つは、法人別だけではなくて、例えば介護でも事業分野別に、特養と通所介護、デイサービスは全然違っていて、デイサービスはこの間、ビジネスが参入してきて、お泊まりデイなど、いろいろな問題が出てきているわけですけれども、特養はかなり厳しい条件の中で攻められているということもある。ここできちんとしかるべき雇用をつくり出していく、あるいは定着させていくということが研究会の一つの課題だとすると、そのあたりを突っ込んで考えていかざるを得ないのかなということで、そのあたりの課題もお示しいただければと思います。

 それから、2番目は、看護、保育、部分的には介護も含めてですけれども、入職経路をいろいろお示しいただいて、4年制大学、専修学校等ですね。先日、結構知られている館山の亀田総合病院のグループ、あそこは地域雇用ということを課題にして、最近、看護学校を館山で立ち上げたわけです。ここは、優先して地域の離職している、失業している社会人から入学者を募るという形をとっていて頑張っている。あるいは、看護学校については、母子世帯の高度技能訓練促進費のあたりで入ってきている層も非常に重要な層だと思います。

 要するに、入職経路別の定着率とか正規・非正規の割合が少しわかってきて、どの入職経路をプッシュすると、例えば地域雇用の安定につながるか。何か見通しが立てられるか、立てられないのか、そのあたりももし何か材料がおありでしたらお示しいただければと思います。

○樋口座長 はい。

○中井雇用政策課長 2点御指摘いただきましたけれども、最初の内部留保の御指摘の関係でありますけれども、現状を申し上げると、最近、マスコミ等でいろいろ報道もされている状況だというのは承知しておりますけれども、内部留保については現時点では確立した定義がなくて、余裕財産を明確化する仕組みがないということ。あるいは、余裕財産が明確化された場合において、活用方法の明確化ルールがないという現状があると伺っております。

 そうした中、現在、厚生労働省社会保障審議会福祉部会におきまして、社会福祉法人制度の見直しを議論していると伺っています。その中で、社会福祉法人がみずからの説明責任を果たせるよう、余裕財産の具体的な状況を見える化する仕組みを構築した上で、余裕財産については、必要に応じ、福祉サービスや地域の公益的な活動に活用する仕組みについて検討を進められると承知しています。そういった中で、宮本先生、御指摘があったような話をどう考えていくのかということについては、ここの研究会の問題意識として担当部局にもお伝えしていきたいと思っております。

 それから、入職経路ごとに離職率とか、いろいろわからないかという話でございますが、現時点でそういったデータは承知していないので、もう一回調べてみたいと思いますが、現状は深掘りできるかどうか、この場ではお答えできない状況です。いずれにしても、その辺の関係をもう少し調べてみたいと思います。

○樋口座長 はい。

○鶴委員 ちょっと話が戻って恐縮ですけれども、先ほど事務局のほうから、建設業で高齢化が進んでいるので賃金が低下すると。先ほど樋口座長がおっしゃった、足もとのところでは、若い人を採るに対して賃金が上がっているのですけれども、どうもそれが相殺されているのではないかというお話がありました。

 これは、資料の49ページを見ると、建設業というのは、年功賃金カーブの形態を見ると、傾きがかなり急で、なおかつ5559歳は逆に余り下がらない。この形だけを見ると、ある程度高齢化ということになると、賃金はなかなか下がらないのではないか。むしろ高齢化になったほうが上がる要因じゃないか。一方、6064になると、どんな作業でもそうですけれども、どんと落ちる形になっているので、先ほどの御説明、55歳以上の人たちはかなり大きな割合になっているからということだと、そこまで言うのはなかなか難しいのかな。

 数字がわかれば、また次回に教えていただきたいのですけれども、60以上の方がこれぐらいで、これだけどんどんふえている。だから、そこでがくんと賃金が低下するので、そういう可能性があるということであれば、議論として少し説得的なのかなということで、60以上がどうなっているのかという割合がもしわかれば、次回教えていただけますか。

○広畑雇用開発部長 御指摘の点、分析してみます。

 1点補足ですが、49ページ、お示しいただきましたように、建設業も2つございまして、産業計を上回っているのは建設業全体ですけれども、その下に生産労働者というものがございまして、これは一貫して全産業を下回った動きをしているということがございますので、職種をよく見ていかないと。ボリューム的には生産労働者がはるかに多いはずなので、その辺を分析してみます。

○樋口座長 はい。

○佐藤委員 ここは雇用政策研究会で、エンプロイだけということになると思うのですけれども、建設も自営セクター、ひとり親方がいるので、あわせて見ないと現状はわからないと思います。就調だとわかるので、全体の労働力がどうなっているのかを押さえた上で、雇用セクターをどうするかというのは、特に建設はやらないとまずいかなという気がします。

○広畑雇用開発部長 御指摘のとおり、ひとり親方の話まで踏み込むと相当綿密な分析をしなきゃいけませんので、よく検討してみます。

○樋口座長 去年の政労使会議の中で建設業の代表の方においでいただいて、今後の建設業における人事計画をどうするのか。特に、生産性をどういうふうに上げていくのかという議論が中心にあったときに、たしか業界を挙げて下請の構造を変えていくのだと。たしか3次下請以下と言ったかな、そういうところは今後なくして、2次までで能力開発とか近代的という言葉を使ったかどうかわかりませんけれども、人事管理をしていくという、業界を挙げて計画を持っていますという話だったのです。そこは、今もそういう流れが続いて、こういう状況ということなのでしょうか。

○広畑雇用開発部長 反省をしたのが多分最近でございまして、今、樋口先生御指摘のように、元請けのゼネコンもその問題にやっと気がついておりますので、グループ化を含めて、最終的な下請をどういうふうに育てていくのかという問題意識を持っています。一方、最終的な下請になります専門工事業者と我々は呼んでおりますが、その団体も自分たちも何とかしなきゃいけないということを理解を始めておりますので、動きとしては始まりましたのが、それはまだここには反映されていない状況でございます。

○樋口座長 玄田さん。

○玄田委員 難しいので、何を言えばいいかわからないのですけれども、私は大胆に申し上げますけれども、人手不足対策を政府がやると大体失敗するのではないかというのを、過去の経緯を調べてみると認めなければならないのではないか。つまり、人手不足に対応するには、短期的、中期的、長期的な次元がございますけれども、特に長期であればあるほど、八代尚宏さんではありませんけれども、労働市場の需給調整をできるだけ迅速にするような方策を考えるというのは、この場合には常套手段だろうと。

 そう考えると、いろいろな資料をつくっていただいたように、賃金調整がなかなかうまく進まないとするならば、賃金調整を阻害しているような何らかの制度的要因がある場合には、それについてある種の規制緩和なども緊急的に考えなければならないということでやらないと、なかなか難しいかなというのが率直なところです。せっかく対策をしても、政策の誘導効果というのは、特に人手不足についてはある程度時間がかかるので、そう思います。

 その上で、今、御説明を聞いて、かなり思いつきで申し上げますので、間違っていたらぜひ、大体間違っているのですけれども、雇用調整助成金というのは人手不足に使えるのかということです。つまり、通常、雇用調整助成金というのは、一時的な業績悪化に対して、余剰の雇用者に対する訓練・休業に対して補てんするもので、それはそれで極めて効果がある。今、懸念されるのは、大変な人手不足によって既存の労働者、建設現場もそうですけれども、働く機会が持てないとか、この人手不足を一時的にせよ乗り越えられないと、事業が成り立たないみたいな。今までとは全く逆のケースで、人が足りないために経営ができないときに、どういうサポートがあり得るのか。

 こういう1997年以来の好景気が続いてきて、雇調金の財源自体は多分かなり豊富にあると。そうしたときに、私が申し上げたいのは、本当に緊急的に人手不足で事業が継続できないような事態があった場合に、賃金の一時的な補てんも含めて、何らかの対応策を緊急措置的に考えることはできないか。恐らく相当難しいと思うのですけれども、雇用の余剰ではなく、雇用が足りないために事業が続けられないことに対して、どういう補てん策があり得るのかということは、私は雇調金にこだわりませんけれども、そういうことで政策的に考える。ある意味では、長期的なことについては市場の需給に任せざるを得ない。

 ただ、あくまで短期的、一時的な問題に対して、どういう対応ができるのかということはもう少し詰めて議論したほうがいいような思いを持ってお話を伺っていました。これは質問ですかね。答えていただけるなら、どうぞ頑張って答えて。

○樋口座長 それでは、ちょっと頑張って。

○中井雇用政策課長 雇用調整助成金ですけれども、もともとの制度設計が、景気変動に伴う余剰労働力が発生したときに、これは一時的に労働力を保存する。そのときに一時休業とか能力開発とか、そういうものをセットで、ただそこについてはコストがかかるから賃金助成で支援しましょうという仕組みでやってきたという中において、一方で、下手な使い方をすると、産業構造の転換、円滑な労働移動を妨げることにもなりかねないので、そういう意味で言うと、人手不足というのがその産業に労働移動が行われていないということであるならば、むしろ移動を活発にするほうがいいのではないかというのが最近の議論ではないかと承知しています。

 先生のおっしゃるのは、多分、人手不足で、そこに事業があってもできない、対応できないから利益が上がらない、企業経営が厳しくなるということに対して出せないかということですね。それに限らずということだと思いますけれども、そういうことに対する支援というのは、従来やってこなかったですし、人手不足を解消する方向に、そこへ人が来るようにということでどうするかという話はあります。

 賃金とか処遇改善、雇用管理の改善によって、あるいは生産性向上というのも設備投資で言われていますが、そういうことでこれまでやってきていて、その延長線上で我々は対応しているというのが現実だと思っています。なので、今おっしゃったことに対して答えはないのですが、現状はそういうことかなと。

○樋口座長 どうぞ。

○玄田委員 中井さん、私は反論しますよ。おっしゃった移動促進をおくらせるというのは理屈が反対で、衰退産業に対して一時的な補充措置をすることに対しては、確かにしかるべき移動を阻害するという理屈はあり得るのです。ここで挙げられている看護分野も介護分野も特にそうだけれども、これは送り出し側ではなくて、受け入れる成長産業になぜか人が来ないという、デフレと同じぐらい、今までの経済学の中では想定していなかったことが起こっているわけです。そうしたときに、普通ならば賃金が自然に上がるはずだということを我々は考えていたのだけれども、長期のデフレと同じで賃金が上がらないわけです。

 ただ、今のところ考えられる理由は、介護にせよ、看護にせよ、ある種官製市場であるということで、そもそも労働市場における競争的な余地が少ないわけです。そういうときに成長産業を成長させるために、あくまで一時的な補てんをすることによって成長の呼び水にするということは、今の日銀の政策を見ても、それほど常識外れではないかもしれない。だから、雇用調整助成金にはこだわりません。

 もちろん、法律上、拡張すれば明らかに反する。ただ、もし本当に人手不足の産業を何とかしなきゃいけないとするならば、ある種雇用補充助成金のようなことを緊急措置として、かなり足かせはしながらもやっていかないと、緊急的な人手不足に対しては何も手立てがないのが現状であることは考えておいたほうがいいのではないかと思います。

○樋口座長 別に事務局をサポートするわけじゃないのですけれども、成長産業というのがいろいろなタイプに分けられて、賃金の高い成長産業もあれば、賃金の低い成長産業もあって。今、問題になっているのは賃金の低いところで、なかなか人が集まらない。そこについて、今まで政府が何もやってこなかったかというと、実は保険制度です。医療保険にしろ、介護保険にしろ、人手不足を解消するために、そしてまた賃金を引き上げるためにという形で、点数制度にしろ、かなり見直しをやってきたわけですね。

 やってきた効果が今回、出ているのか出ていないのかということは検証するべきじゃないかということで、どういう方向で助成すると賃金が向上して、そして人が集まるようになるのかというところについては、ぜひ今回、やっておく必要があるのではないか。これはやっていないので、何ともわかりませんけれども、今までも何回かやってきましたね。医療保険の見直し、看護師不足に対する対応とか、介護についてもそれをやってきたのです。やってきたのだけれども、その検証というのをやったのかやらないのか、もしかしたら厚生サイドでやっているのかもしれませんけれども、もしやっているのであれば、逆に教えてもらうといいのではないかと思います。

 はい。

○中井雇用政策課長 1つ、介護のこれまでの取り組みについて簡単に御紹介申し上げると、最初、平成21年度の介護報酬改定では、介護従事者の処遇改善に重点を置くということで取り組んでいます。

 あとは、平成2110月から介護職員処遇改善交付金というものをやっております。

 それから、3点目として、これは時限措置だったわけですけれども、これを安定的な効果を継続させるために、介護職員の処遇改善加算を新設ということで、平成24年度から介護報酬を改定しているということで、全体として21年度の介護報酬改定で9,000円ぐらい上げる効果があった。それから、介護職員処遇改善交付金では1万5,000円ぐらい上げる効果があった。次の介護報酬改定では6,000円ぐらい上げる効果があったということで、全体で約3万円引き上げる効果として我々としては考えています。

 ただ、現実問題として、あとは職員の賃金ということでいえば、経営者との関係で、労使も入ってくると思いますが、そこで決まってくるということなので、我々が期待した部分がそのまま賃金に反映されているかどうかというのは、多分個別の事業所で異なっていると思いますので、そこの検証ということだと思います。現時点での介護部門の整理は、そういうことになっているということでございます。

○樋口座長 今の数字は、実際それだけの効果があったという結果の評価なのか、それとも保険の見直しのときに、これだけ効果があるはずだということで、その分だけ上乗せしますということをやった制度設計の段階での話なのか、どちらだろうか。

 もう一つは、賃金の上昇というのが、本当にそこに就職する人をふやしたのかどうかですね。問題としては、単に賃金の引き上げではなくて、本当にそこに人が来るようになったという効果も含めないと、今の話は政策評価としては不十分かなと思います。まず最初のほうはどうだったのでしょうか。

○中井雇用政策課長 樋口座長のおっしゃることはもっともで、これは制度上の整理です。

 それから、その事業所に来たかどうかという話はあるにしても、マクロとしては医療・福祉分野の雇用がこの間もずっと増加してきていることは、これは需要が伸びたということも当然ありますが、間違いないということでありますので、おっしゃったような形でどれだけ効果が検証できるかわかりませんけれども、ちょっと課題とさせていただければと思います。

○樋口座長 制度設計がそのまま現実になっていれば問題が解決しているのだけれども、そこを検証する必要があるだろうということです。

○鶴委員 玄田先生の先ほどのお話というのは、荒唐無稽ということでは全然なくて、賃金調整メカニズムがなかなかうまく働きません。ある種失敗が起きているから、政府がそこを考えなきゃいけない。では、人手不足状況の中でどうしても人が採れない。賃金がなぜ調整されないか。これは理由はちょっと置いておいて、そこに補てんして、それで人が集まるのだったら、何か仕組みを考えてもいいのではないかというのは、私は決して間違いではないと思います。

 そのときに考えるのに非常に重要なのは、先ほどの介護とかの話はまたちょっと別ですが、ある程度賃金を調整できるような企業にとって、逆にその企業が賃金を引き上げることが何でできないのか、そのインセンティブはないのかということもちょっと考えなきゃいけない。もし、今の人手不足状況が非常にテンポラリーな短期的なものであるということを考えると、一旦引き上げます。でも、また状況が変わって、今度、引き下げることはなかなかやりにくいとなると、一時的な状況に対して引き上げるインセンティブというのは非常に弱くなる可能性ということも、ある意味であるのかもしれない。

 何が言いたいかというと、企業も、それから労働者のほうも、今の賃金をどうするかということだけじゃなくて、かなり将来的なことも考えて行動している。だから、そこに行かないということにおいては、将来的なものがどうなのかということ。それは、企業側も労働者側も考えなきゃいけないということだと思うのです。

 それで、私はきょう御説明していただいた賃金カーブというものを見ると、先ほど建設業で生産労働者全体と違うという話だったのですが、全産業はそれでも緩やかに上がっていくのに、ほかのところはほとんど上がらないのです。結局、幾つまでやっても賃金は変わりませんという、ある意味で希望のない世界がずっと広がっているという状況だと思います。では、足元の賃金が少々上がったから、そこに行きたいのか。行っても、どんなに何十年頑張っても賃金が上がっていかない世界でいいのか。そういう話も私は根底にあるのではないかということなので、もう少しダイナミックに視点を持って少し議論しないと、なかなか見えてこない部分もあるのではないか。

 以上です。

○樋口座長 山川さん。

○山川委員 似たような視点ですけれども、業種によってかなり違って、福祉・介護は割と賃金カーブも含めた制約、それから非常勤とか非正規が多いということですし、建設はむしろ賃金というよりも労働時間の問題のような感じがあります。

 その点で、資料2の35ページが比較的興味深いデータですけれども、丸がついていて、賃金が不満というのは、いつの時代もどこでも多いと思いますが、業種別になぜ転職したかというのが出ていて、比較的おもしろかったように思います。ただ、ここで仕事上のストレスに赤丸がついていないのですが、介護・医療はストレスの問題が比較的多いようですし、建設も考えると、インデックスとして賃金のほかにストレスや仕事の負担のようなものも、将来、転職を考えるときには重要ではないか。もし移動を促進するのであれば、その辺も一つの考慮に入るのではなかろうかという感じがします。

 感情労働という言葉をこの間初めて聞いたのですけれども、ストレスフルな労働のことではないかと思うのです。それでやめてしまうとか、入っていかないということがあるのかなと思います。しかし、このデータは職種別の勤務先同僚の離職の理由ということで、かなり間接的な聞き方をしているので、もう少し正確に本人に聞いたようなデータがないのかなと思ったところです。

 あと、政策的にどうするかは難しいのですけれども、市場が市場どおりにいっていないのが、お金を政府が出していることに一因があるとすると、お金の出し方にひもをもっとつける仕組みといいますか、最近、女性活躍推進法案で公契約について女性の活躍促進計画を考慮しうるというような仕組みがだんだんとでき始めていますので、改善の状況とお金の出し方がリンクするような仕組みはないのかなと思った次第です。先ほどの玄田さんのお話の助成金とちょっと似ているようなことかもしれません。 以上です。

○樋口座長 はい。

○佐藤委員 先に出るので、1つだけ。

 先ほど介護とか医療、官製市場という議論があったのですけれども、介護を見ると、全ての事業所が人手不足ではなくて、介護労働安定センターのデータを見ると、半分ぐらいはもう充足していますという事業所で、足りないのは5割で、足りないところも2種類あって、1つは採れない。つまり、本当にやめたりして採れない。もう一つは、採れているのだけれども、それ以上成長していて、需要が拡大しているけれども、採れない。つまり、採れるのだけれども、もっと採りたい。

 つまり、いろいろ改善して工夫して賃金も上げたり、やらなきゃいけないところと、もう一つは、それはちゃんとできているのだけれども、成長が早くて追いつかないところもある。もうちょっと全体としての底上げみたいなものはあると思うのですけれども、違うところを見ながら政策も考えなきゃいけないかなと。供給をふやせばいいというところと、事業所が改善して賃金とか雇用管理をしないと採れないのも2割ぐらいあるのです。

 そういう意味で、一律に交付金とかはなかなか難しいから、相当違いがあるので、それを見ながら、業種だけじゃなくて、同じ産業の中でも相当違うことを視野に入れながら、どういうふうに人材を確保するかが大事かなと、聞いていて思いました。

○樋口座長 はい。

○玄田委員 今、山川さんの発言を聞いて、私は心から反省しました。この問題を需給メカニズムで解決せよと言ってしまった自分が恥ずかしい。確かにおっしゃるとおりで、この部分の人手不足の問題を解決するためには、ある種安全衛生管理から入っていくほうがいいかもしれない。

 つまり、この4つの分野は違うけれども、共通するのは、極めて直接的に生命の安全にかかわる分野で、そこを担っている人たちは、人手不足というもとに大変過酷な労働条件にあるということが、この分野に進出することに対して躊躇させているとすれば、助成金云々にこだわりませんけれども、この分野の安全衛生管理のための助成金みたいな理屈をつくっていかないと、危ないかもしれない。それは本当に思いました。

 ありがとうございました。

○樋口座長 大石さん。

○大石委員 保育のことと、それから、委員から要望のあった資料について2点言わせていただきたいのですけれども、今、先生方が御指摘のように、保育に関しても、介護もそうですけれども、責任の重さとか生命に直結する重さ。そういうものがあれば、補償賃金という考え方からすれば高くなるはずだと。だけれども、それが起こらないということが現実にあるわけですね。

 保育に関しては、例えば民間施設給与等改善費という、それである程度、民間保育施設の給与を改善するシステムがあるのですが、その加算率は勤続10年以降は横ばいになってしまう仕組みになっています。30代半ば以降の賃金が頭打ちになってしまう賃金カーブになっているのはそういうことですね。

 今、加速化プランでもう少し上乗せをしようということで、7,000円から1万円ぐらい上乗せされることになっているようですが、保育士の月収というのは全産業平均と比べると9万円ぐらい低いので、それを埋められるほどでもありません。そういう意味では、もうちょっとめり張りをつけないと。どういうふうなシステムでつけるかは別ですけれども、やらなくてはいけないと思います。

 それと、玄田先生もおっしゃったように、公定価格のシステムだから、そのシステム自体を変えていくという方向性もありえます。同時に、ソフト面の対応ということも考えなくてはいない。ストレスが大きいとか責任が重いということをコンペンセートする方法ということですけれども、多少でも緩和する方法としては、ワーク・ライフ・バランスを改善していくような方向が考えられます。直接的ではありませんが、やっていくことが必要です。

 あと、これはフローレンスの駒崎さんがおっしゃっているのですけれども、保育士試験を2回にふやす。それで受験者が増加すれば、保育士になる人も増えることが期待されます。

 あと、保育に関して、佐藤先生から、ある意味で衰退産業じゃないか、少子化が進んだらという、やんわりとそういうニュアンスの御発言がありました。そういう御趣旨かどうかわかりませんが。ただ、これについては非常に地域的な偏在が大きくて、少子化が急速に進んで子どもがいなくなってしまうような地域もあれば、東京のようなところもあります。待機児童の40%は東京です。そういうことを考えると、保育士不足も東京問題と言えまして、これから保育士を3万人近くふやすと言っていますけれども、それが果たして可能なのか。

 そういう意味では、国が自治体がやることに対して、どこまで口出しできるのかという問題はあるものの、地域問題だというとらえ方で、全国一律でなくもうちょっと柔軟に対応していくことが必要なのではないかなと思います。

 県別の保育士需給に関しては、しばらく前に三菱UFJコンサルティングが厚労省の要望でつくった調査というものがあったように記憶しています。当時、かなり詳細な調査をしていましたので、ああいったものも利用できるのではないかと思います。

 それから、委員から要望のあった資料について、続いて意見を申し述べさせていただきますと、6ページの人口に占める正規雇用・非正規雇用、非労働力人口の割合についてコメントします。確かに男性の正規雇用者割合は減っている。でも、男性と女性でグラフの目盛が違います。むしろ、女性の正規雇用者割合が全く増えていないところを見るべきであるし、女性の非正規化が非常に大きいということも注目すべきだと思います。

 このグラフが意味していることは、例えば育休とかの施策につきましても、非正規を対象としたいろいろな施策を考えていく必要がある。児童家庭関係の施策を講じるにしても、非正規労働者の存在を前提にしてやっていく必要があります。期間雇用者も育休をとれるようになっていますけれども、取得者は正規の人が多いのです。現在、子どもを産むような年齢層の女性は非正規しているわけなので、そこをもっと重点化していく必要があるのではないかと思います。

 あと、次のページですが、実質賃金のコーホート変化ということです。これは、もちろん世代によって出発時点の賃金が違うので、簡単に比べられるものではないですが、このカーブの下の部分が生涯所得になるわけですね。そう考えると、若い世代ほど生涯所得は低下している。例えば、国税庁の民間給与等のデータを見ても、20年前ぐらいですと、50代になると年収700万円ぐらい階層にボリュームがあったわけですが、今はそういうものは消滅しています。そういうことを考えると、縮小した生涯所得の中からしか社会保険料とか税収はもう得られないということでありまして、それは社会保障財政という面で考えると非常に深刻な問題でもあるわけです。

 例えばスウェーデンとかですと、賃金のボリュームというのですか、総賃金にリンクさせて、自動的に社会保険料が変動するようなシステムにしていたりするわけです。保険料の段階的引き上げとかは考えているわけですけれども、この図の示していることは結構深刻だなと言わざるを得ないと思いました。

 以上です。

○樋口座長 今の御指摘の中で、介護士とか保育士であっても、経営組織によって人手不足というのはかなり事情が違うのではないかという感じですね。介護士にしても、高額の施設のところでは、逆に人がかなり自由に採れるような話も聞いたことがあるし。

○大石委員 保育所と言っているからには認可保育所で、私立と。

○樋口座長 ただ、公的な公務員として雇っているところには、希望者がいっぱいいる。移っていきたいのだけれども、逆にそこには枠があるという形で移れない。だから、事情がちょっと違うのではないかということもあったので、もしそういう情報があれば少し出してもらうと、経営形態のところまで議論がいく可能性はあるなと思います。

○大石委員 ただ、賃金センサスのこれは民間の保育士ではありませんか。

○中井雇用政策課長 賃金センサスは、基本的に民間だと思います。先ほどの経営形態とか、いろいろ細かく見るべきだということについて、これも少し調べてみたいと思います。

○樋口座長 それと、先ほど端的に紐つきのやり方、補助の仕方があるのではないか。今、法人税の引き下げについて、一律に引き下げても、中には内部留保で終わってしまうのではないかという指摘もあって、そこに紐つきをするべきじゃないか。具体的に言うと、人件費総額を引き上げた企業に対して法人税を引き下げるということも、実行可能性があるかどうかは知りませんけれども、そんな議論も出てきているように思います。

 ちょっと別の視点でいいですか。せっかくデータをつくっていただいたので、資料1の13ページで、社長の平均年齢。帝国データバンクですから、株式会社、有限会社に限定されているわけですけれども、かなり高齢化が社長さんについても起こっている。株式会社、有限会社以外の個人事業主までを含めて考えたときに、もっと年齢が高いですね。地方へ行くと、後継者難から廃業という形を選ぶ、あるいは選ばざるを得ないと言っている人たちもいるのですが、それの数というのは見聞きしているわけでもないのだけれども、ヒアリングにしかすぎないから何とかわからないけれども、相当な数に上りそうだと。

 そうなってくると、事業所の数が減っていく。既に10年間で日本全体で100万社減ったのですか。その分だけ就業者のほうも減っているわけだけれども、需要サイドというか、雇用機会自身も減っていく可能性が特に地方においてあるのではないかという感じが私はしておりまして、ここに出ている交代率が下がっているというのは存続しているところですね。これで年齢別に廃業した比率というのはわからないのですかねという。

○中井雇用政策課長 現在、手元にないので、調べてみたいと思います。

○樋口座長 済みません、ちょっと検討していただければ。人口高齢化というと、働くほうの人口高齢化ばかり言ってきたけれども、経営側のほうがもっと人口高齢化が大きいと思います。さっきの建設業でも、働くほうの年齢が60歳以上という話だったけれども、経営者についてもかなりあるのではないかと思いますね。

 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○堀委員 先ほどから、座長を初め、建設業のことが話題になっているのですけれども、28ページに建設投資及び建設業の高卒求人数の推移を事務局からお示しいただいておりますが、これは恐らく建設業において高卒者が重要であるという認識から、こういうデータを示していただいているのではないかと推測します。今、高卒、特に工業高校では、建築科というのはずっと就職が悪かったわけですけれども、近年、大変よい状況にあると。建築科の高校生は、ほとんどこうした産業に行っているわけですけれども、では工業高校の建築科以外から、例えば普通高校からこうした産業に行くかというと、そうした構造にはなっていない。

 高卒就職というのは長年の関係の中でつくられてきたものですので、突然採用しようとしても大変難しいわけですし、特に送り出す先生の側は、建築業は衰退産業なのではないかという懸念が非常に強くあって、特段生徒にも勧められないということがあるような気がします。したがいまして、高卒から新たに新卒を採用するというのはちょっと難しいのではないと考えておりまして、特に新卒の若年労働者におきましては、短期的な人手不足問題とやや切り離して考えていただけないかなと考えておりまして、ぜひ御検討いただければと思います。

○樋口座長 確かに産業特性がいろいろあるから、人手不足ということだけでは。

 どうぞ。

○広畑雇用開発部長 今の御指摘、全くそのとおりでございまして、2点あります。

 1点は、建築・土木、いろいろあるのですけれども、建築は公的職員雇用が残っていたりするのですが、土木はさっぱり。あるいは、型枠とか鉄筋は土木・建築の両方にかかわるところですけれども、そこについては非常に危機感があるので、1点。工業高校を卒業しても、土木科とか建築科を出ても就職しない者がいる一方で、製造はむしろ高卒の普通科を採っているので、そこに焦点を合わせていけないだろうかという問題意識が1点と。

 もう一つは、目先の賃金もそうですけれども、キャリアパスを示すのが大事だということで、先ほど業界の話を申し上げましたけれども、ゼネコンもそうですし、専門工事業の団体もキャリアパスをお示ししないと、求職者本人、それから、求職者のお父さん、お母さんも納得しないということがありますので、そういうイメージアップ戦略を始めているところでございます。

○樋口座長 はい。

○堀委員 普通科から製造業というのは結構ギャップがあると思うのですが、建築よりはまだ小さいということがあると思います。建築業が本当にやるのであれば、イメージアップ戦略という形ではなくて、職業訓練とは言いませんけれども、インターンシップ的なことがある程度できるような。実際に体験して、建築業というのはこういうものだと普通科高校生にもわかるようなレベルで提供していかないと、普通高校から建設業が採用するというのはちょっとギャップがあるのではないかと思いまして、ぜひ一歩進めた御検討をお願いできればと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○鶴委員 ちょっと蛇足かもしれないのですけれども、何人かの委員の方々がおっしゃられたことに多分共通する話なので、申し上げたいと思います。先ほど玄田先生、反省のお話をされたのだけれども、先ほどサポートしましたけれども、私は反省される必要がないのではないかという考え方です。なぜかというと、大石委員もおっしゃられたのですけれども、補償賃金仮説というのはすごく大事な考え方で、リスクとか衛生面で問題があれば賃金が高くなるのは当然で、処遇というのはそういうものを全部一緒に見る。それでいろいろなものが決まってくる。

 そのことがちゃんと成り立つためには、それなりの裁定が働かなきゃいけないということです。裁定が働くというのは、例えば内部労働市場であっても、いろいろな選択ができるとか転換ができるという話ですし、外部労働市場であれば市場メカニズムということでいいのかもしれないですけれども、それがちゃんとできれば、ちゃんと賃金に反映されるべきだと。

 私は、今の日本のいろいろな状況を見ても、補償賃金仮説が成り立っている状況がどれぐらいあるのだろうか。そこが必ずしも十分じゃないなというのを非常に感じることがあるだけに、そういう要因もあわせてちゃんと賃金に反映されるべきだということを考えれば、そういうものが反映されていないような賃金の状況はおかしいし、それを改善して解決していくというのは、ある種内部労働市場でのさっきの考え方というか、ある意味裁定が働くような状況をどれぐらいつくっていくのか。そういう意味では、選択とか転換というのが非常に重要だと私は思っているのですけれども、考慮しないと、この問題はクリアカットな答えがなかなか出てこないなということだと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○玄田委員 お二人から補償賃金のお話が出たので、私も一言だけ申し上げます。おっしゃるとおり、本来、賃金に仕事内容等が反映されるべきだと思いますけれども、前提条件がございまして、仕事に関する情報の非対称性というのが極めて深刻ではないということが前提であって、もちろん2人は当然御存じのことですけれども、初めて補償賃金仮説が成り立つわけであります。

 振り返ったときに、ここに挙げられた4つの分野が、そういう面で仕事の内容に関する情報が他の分野に比べても広く行き渡っているかというと、確かにおっしゃっている面で非常にわかりにくい分野である可能性もある。つまり、介護とか看護師は制度的には非常に明確に決められているわけだけれども、働く人にとって、なぜこれだけの賃金でこの仕事なのかということについては、果たしてどのくらい納得性を持って、仕事につくなり、就業を考えているかというと、もしかしてそこにはギャップがあるかもしれない。

 先ほど、もちろん需給調整を働かせるためにという面もあるのですけれども、安全衛生管理ということを申し上げたのは、仕事内容に関して、より透明性を高めるという前提を成り立たせるためにも、安全衛生面についてのサポートとか、明らかにすることが考えられるわけです。

 今、ハローワークなどでも企業取材をたくさんなさって、その会社が一体どういう仕事をしているのかということを、より労働者に見えやすくするということが就職につながったりするならば、この4分野に限りませんけれども、その情報をよりオープンにするような施策も含めて、補償賃金が成り立つような環境整備をする。その場合の情報面というのは、1つには安全衛生面というのを抜きにしてはならない重要な面であるというのは、今、お話を伺っていて思いました。

○鶴委員 私も全く同感で、逆に言うと、裁定とか市場メカニズムが働く前提条件というのは、情報がちゃんと行き渡っているのでしょうか、きちんとなっているのでしょうかというところが、むしろ日ごろ余りにも見過ごされていることが私は非常に大きいと思うので、まさにそこが全部そろってからこそのこういった議論なのかなということで、一番大事なところを今、玄田委員、御指摘になったのかなと私も思っています。

○樋口座長 どうぞ。

○大石委員 私は、処遇とか情報開示という意味では、例えば労働条件通知書とか、どういう賃金、どういう手当がついて労働時間はどうということをもう少し明示化していくことを、政策的にももう既にやっていると思うのですけれども、推進していくことが必要かなと思います。

 これは、別に介護や保育とか医療の世界に限らないのですけれども、時間外手当がどんなふうについているか。今、若い人が就職するに当たっても、余りよくわからないということがよくありまして、実際の処遇がどんなものなのかというのを入社するときに余りはっきり見せられていないとか、理解しやすい形で情報提供されていないという問題があります。何か統一的なフォーマット化することでわかりやすくしていくというのは、一つの方向かなと思います。

○樋口座長 緊迫した議論の中で、ちょっと雑駁な印象の話をして恐縮ですが、資料2の9から12、性別の年齢別の人数が出ていますね。これを見て、改めて日本は職種によって男女が決まっている。12ページの建築・土木になると女性がほとんどいない。国別にも私も何回か見たことがあるけれども、こんなに男性用の職種とか業種とかと物の見事に分かれている。その背景に一体何があるのだろうか。働くほうの意識もあるかもしれないですけれども、例えば建築・土木というのは若い男性じゃないとなかなか務まらないというものが、単に給与の問題だけでなくてあるのか、それを想定した働き方あるいは仕事内容になっているのかどうかですね。これはちょっと驚きですよ。

 この辺も大分変わってきてはいると思います。看護師とか介護にも男性が入ってきているけれども、ここはせっかく事務局が出してつくってもらった図なので、改めて印象で恐縮ですが、そんな感じがしますね。

 ということで、もしよろしければ、そろそろきょうの議論は終わりたいと思いますが、よろしいですか。

 次回は、地域雇用等に関する現状把握について検討を進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 事務局から連絡をお願いします。

○黒田雇用政策課長補佐 次回、第3回雇用政策研究会は、1212日金曜日14時から16時としてございます。場所については、また追って御連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。

○樋口座長 では、以上で本日の研究会は終了します。

 どうもありがとうございました。


(了)

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