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2013年3月22日 第91回労働政策審議会職業安定分科会議事録

職業安定局総務課

○日時

平成25年3月22日(金)13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省職業安定局第1・2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○議題

(1)雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)その他

○議事

○大橋分科会長 ただいまから、第91回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。本日の委員の出欠状況は、公益代表の清家委員、樋口委員、宮本みち子委員、使用者代表の河本委員、久保委員、田沼委員が御欠席です。なお、久保委員の代理として、株式会社上組の深井様に御出席いただいています。また、橋本陽子委員は所用のため途中退席の予定となっていますので、あらかじめ御承知おきください。坂倉委員は追って参加されることと思います。
 議事に入ります。本日の議題は、「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」及び「その他」です。最初の議題は「雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」です。本件については、本日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会長宛て諮問を受けています。事務局から説明してください。
○総務課長 お手元の資料1-1と資料1-2が本日お諮りする省令案要綱です。今回は本予算の成立がずれ込み、長期の暫定予算が組まれることになっているため、2段階の施行を予定しています。各種助成金のうち廃止・縮小するものについては4月1日の施行、新設・拡充するものについては本予算成立段階での施行という、2段階を基本に整理しています。資料1-1が4月1日施行に係るもので、資料1-2が本予算成立段階での施行に係るものです。要綱案では全体図が見えにくいので、資料1-3と資料1-4で御説明いたします。
 資料1-3を御覧ください。大きな枠の中に《今般の改正の基本的な考え方》を書いています。まず、各種助成金についてそれぞれ必要な見直しを行うこと。具体的には、行政事業レビュー、PDCAに基づく自己評価などを踏まえて必要な廃止・見直しを行うということです。それから、リーマン危機後に拡充あるいは時限的な創設等を行いましたが、これを徐々に元に戻すとして、後ほど御説明する雇用調整助成金の縮小等がそれに該当します。当面する政策課題への対応として、これも後ほど御覧いただきますが、非正規雇用労働者のためのキャリアアップ助成金の創設などが該当いたします。
 2つ目の柱として、利用される方にとって簡素で分かりやすい制度に見直しを行うこと。具体的には、類似助成金の統合やメニュー化です。利用される方にとって入口が分かりやすくなるように、目的別・対象別に整理統合を図るということです。それから、これは要綱には出てきませんが、助成金によっては支給申請期間や不支給要件等に多少のズレがあるものがあり、それらについて、この際、統一化を図り、分かりにくさ、不合理さを解消することとしています。
 続いて、見直しの全体像について資料1-4を御覧ください。1ページは、「全体の整理表」で、左側が現行で右側が見直し後です。これは4月1日分と本予算成立後の分を併せて書いています。右側に「廃止」あるいは「廃止(新設)」の形で大括りしています。助成金の数え方にもよりますが、左側が40数本、右側が20数本と、大幅に本数が減ることになります。○印を付けているものが今回お諮りするものです。助成金はいろいろに跨がるため、雇用均等分科会あるいは職業能力開発分科会で御審議いただくものがあります。また、当分科会の関係でも、4番目の「特定求職者雇用開発助成金」のように、今回は見直さないものには○を付けていません。以下、具体的に御説明いたします。
 2ページは「雇用調整助成金の見直し」です。基本的にリーマンショック前の状態に徐々に戻すとして、昨年10月に雇用調整助成金の第1弾の見直しを御審議いただきましたが、今回はそれに引続いての第2弾で、4月からの施行です。助成率等を元に戻すというものです。雇用調整助成金の下に「中小企業緊急雇用安定助成金」があります。これは雇用調整助成金の特例として設けられてきたものですが、今般、助成金を雇用調整助成金の水準に戻すということで、もともとの雇用調整助成金に統合する形で整理したいと思っています。
 3ページは「労働移動支援助成金の見直し」です。給付金の右側に※が付いていますが、これは予算成立の段階からの施行を表していて、以下同じです。本助成金については、中小企業が紹介事業者に委託して再就職が実現した場合に助成を行うもので、左下の「支給額」の所にあるように、3月1日から高率補助の範囲を45歳以上に拡大しています。今般は名称変更のみで、助成金の名称に「給付金」と付いているものがここだけだったので、これを「奨励金」として他に合わせるものです。なお、産業競争力会議等においても、雇用維持型から労働移動支援型に政策をシフトしていくことが言われています。今後、労働移動支援助成金についてはその拡充が課題になってくると考えています。それについては、また改めて御相談したいと思っています。
 4ページは「定年引上げ等奨励金の見直し」です。これまで、高年齢者の定年引上げ等の制度導入を促す形で助成措置を設けてきましたが、御案内のとおり、高齢法が改正になりまして、制度導入の義務化が図られることになります。これに伴い、助成金を制度導入型から環境整備型に切り替えていくということです。「中小企業定年引上げ等奨励金」は廃止します。その下の「高年齢者職域拡大等助成金」について、制度導入が前提となっていましたが、環境整備の助成として充実を図るという見直しを行うものです。
 5ページは「受給資格者創業支援助成金の見直し」です。これは、雇用保険の受給資格者が創業した場合に創業費用の一部を助成するものですが、行政事業レビューで政策効果等に鑑み、廃止が適当とされたことを踏まえて今般廃止するものです。なお、廃止の場合は経過措置が残りますので、それについては経過措置分として手当てすることを予定しています。
 6ページは「試行雇用奨励金の見直し」です。まず、「トライアル雇用」という言い方が一般に普及してきていることに鑑み、名称を「トライアル雇用奨励金」と改めたいということです。内容は、これまで対象者ごとにいろいろな区分がなされていましたが、それぞれの範囲を拡大してきた中でそういった区分けの意義が薄れてきたため、今般、安定就職が著しく困難な者に対する奨励金として一本化を図りたいというものです。その下に「実習型試行雇用奨励金」と、それとセットの「正規雇用奨励金」があります。これらはいずれも平成23年度までの事業で、被災地のみ1年間延長していましたが、期限が到来しましたので廃止するという内容です。
 7ページは「地域雇用開発助成金の見直し」です。これは、雇用情勢が厳しい地域において、事業所の設置・整備に伴って雇入れを行った事業主に対して助成を行うものです。左下に「地域再生中小企業創業助成金」があります。これは創業に伴う雇入れについて別立ての助成金にしていましたが、これを本体に上乗せ助成する形で整理します。したがいまして、右上の「地域雇用開発奨励金」に組み込む形で整理したいということです。
 8ページは「通年雇用奨励金の見直し」です。これは、季節労働者の通年雇用化のための助成です。基本部分は変更ありませんが、左下に3つ、「移動就労経費助成」「休業助成」「季節トライアル雇用助成」として、3年間の暫定措置となっていたものがあります。引き続き支援が必要であることに鑑み、これらについて、それぞれ期限を3年間延長するものです。
 9ページ以降は「両立支援助成金」です。両立支援助成金については雇用均等分科会で御審議いただくことになっていますので、主な変更点のみ御説明いたします。9ページは細かな要件の見直しです。
 10ページを御覧ください。現在、「継続就業支援コース」というものが設けられています。これは、育児休業取得者の継続就業のための研修に対する助成ですが、平成25年度からは継続就業率の低い期間雇用者への助成という形で重点化を図るものです。
 11ページには、左下に「中小企業子育て支援助成金」があります。これは一種の制度導入奨励的なもので、既に廃止となっていて経過措置が残っていましたが、今般、経過措置も廃止するものです。
 12ページは「人材確保等支援助成金の見直し」です。これは中小企業の雇用管理改善のための助成金です。はじめの「中小企業基盤人材確保助成」は、右側にあるように、行政事業レビューで政策評価等により廃止とされたことを踏まえ、今般廃止するものです。以下の2つ、「中小企業人材確保推進事業助成金」と「介護労働環境向上奨励金」は、「中小企業労働環境向上助成金」という形で統合を図りたいというものです。14ページにその詳細がありますが、中小企業労働環境向上助成金として統合し、その内訳は「団体助成」と「個別企業助成」です。「個別企業助成」の所にあるように、介護労働者の雇用管理改善も含んだ形で整理したいということです。
 13ページは「建設教育訓練助成金」と「建設雇用改善推進助成金」があります。建設関係については、14ページの「建設労働者確保育成助成金」という形で一本化を図り、建設人材の確保・育成あるいは技能継承に重点化していきたいという内容です。
 13ページの一番下の「派遣労働者雇用安定化特別奨励金」は、派遣労働者を直接雇入れた派遣先事業主に対する奨励金です。これは、後ほど御覧いただきます「キャリアアップ助成金」に統合する形で整理したいと考えています。
 15ページは「均衡待遇・正社員化推進奨励金の見直し」です。右側にありますように、後ほど御覧いただく「キャリアアップ助成金」のメニューとして、そちらに統合する。したがって、当該事業としては廃止すると考えています。
 以上いくつか申し上げましたが、16ページに「キャリアアップ助成金の創設」を掲げています。非正規雇用関係については、この「キャリアアップ助成金」に一本化していくということです。先般、基金事業で一部先行実施する際に、「助成金活用のためのガイドライン」について御報告しました。今後この助成金ができることに伴い、ガイドラインに必要な見直しを行った上で、ガイドラインとセットでキャリアアップを支援していくことになります。「キャリアアップ助成金」のメニューとしては、16ページにありますように、「正規雇用・無期雇用転換」に対する助成、「人材育成」に対する助成、「処遇改善」に対する助成、「健康管理」に対する助成、「短時間正社員」に対する助成、「短時間労働者の週所定労働時間延長」に対する助成を内容とするものです。
 17ページ以下は「障害者雇用促進助成金の見直し」です。障害者については、ここに列挙されているように、障害別あるいは内容別で多くに分立していました。これの大括り化を図りたいというものです。まず、「発達障害者雇用開発助成金」と、その下の「難治性疾患患者雇用開発助成金」については、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」という形で統合することにしたいと存じます。その下の「精神障害者雇用安定奨励金」、それから、次の18ページの「職場支援従事者配置助成金」という、職場支援に従事する方の配置に対する助成ですが、これらについては、「精神障害者等雇用安定奨励金」という形で統合を図りたいということです。その下の「重度障害者等多数雇用施設設置等助成金」と、一番下の「特例子会社等設立促進助成金」については、「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」として、中小企業の施設・設備助成に重点化を図り、特に中小企業における障害者の雇入れの促進を図る形で整理したいと考えています。
 それから、その間にある「障害者初回雇用奨励金」は、障害者の雇入れ効果を一層高める観点から、支給対象を法定雇用率達成となる企業に重点化するという見直しを行いたいというものです。
 以上をまとめたものが19ページです。一番上の「中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金」、中ほどの「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」、それから「精神障害者等雇用安定奨励金」という、これらに整理したいということです。
 最後に、20ページの「キャリア形成促進助成金の見直し」です。これは職業能力開発分科会で御審議いただくものです。左上の「中小企業雇用創出等能力開発助成金」は、都道府県知事の改善計画の認定を受けた事業主に対する高率補助として別立ての助成にしていましたが、右下の「キャリア形成促進助成金」の要素として組み込むことにしまして、当該助成金としては廃止したいと考えています。
 以上が助成金の見直しの概要です。それらを要綱の資料1-1と資料1-2に掲げています。
○大橋分科会長 本件につきまして御質問、御意見がありましたら御発言ください。
○新谷委員 本日の諮問案件に入っている年度当初施行分、1-3に出ている雇用調整助成金について意見を申し上げて、厚生労働省の見解をお伺いしたいと思っています。
 雇用調整助成金について、本日は労働側から資料を提出しています。カラーの配布資料を御覧ください。安倍政権になって、成長戦略を検討する会議が設置されています中の1つの「産業競争力会議」が先週の3月15日金曜日に開催されました。新聞等でも報道されていましたし、ホームページにも資料が出ています。この産業競争力会議、総理大臣主催という非常に重要な会議の中で、民間議員から、本日御提起いただいている内容に関連して、雇用調整助成金の廃止について提言されています。重要な会議の中で重要な提起がされていますので、雇用調整助成金についての私どもとしての見解を申し上げておきたいと思っています。
 この資料は、リーマンショックの前後で、上のグラフの実線が失業率、同じ色の点線がその国のGDPの変化です。我が国は、残念ながら、リーマンショックによる経済的なダメージが欧米諸国より大きくて、名目GDP成長率は-6%を記録しました。ところが、失業率を見ると、例えばアメリカのように3ポイント以上失業率が上昇した国と対比して、我が国では失業率の上昇は非常に緩やかであったことが見て取れると思います。
 下のグラフは、完全失業者数と雇用調整助成金の支給対象者の数、そして、経済の動きを月別に捉えるため、四半期に一度に公表されるGDP成長率の代理変数として鉱工業生産指数をプロットしたものです。リーマンショック発生を受けて2009年初頭には鉱工業生産指数が30%近く落ち込む中、完全失業者の数は急激に伸びることもなく、一方で雇用調整助成金の支給対象者の数が非常に増えているのが、プロットして分かります。これが端的に表わしているように、リーマンショックのような100年に1度と言われる大規模な経済危機に遭った際も、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者を一時的に休業又は教育訓練あるいは出向させることによって、雇用を維持してきたことが見て取れます。我が国の雇用政策の中で雇用調整助成金が果たした役割は非常に大きいと、私どもは認識しているわけです。
 仮に雇用調整助成金という仕組み、こういう柔軟かつ機動的な対応がなければ一体どうなったのだろうという思いがあります。学術的にも、労働経済学の先生方やJILPTでも定量的に分析されていて、雇用調整助成金の雇用維持に対する政策効果についても有益であるという結果が出ていると思います。こうした重要な政策としての雇用調整助成金について、民間議員からの提起ではありますが、総理出席の産業競争力会議の中で、これを廃止するという提起が出てきています。この点について、厚生労働省としての見解をお伺いしたいと思います。
○雇用開発課長 産業競争力会議の民間議員ペーパーの中に雇用調整助成金の廃止の話が出ているという報道があります。産業構造の変化に対応するために、成熟産業から成長産業へ人材を移動していくという労働移動を図るために、必要な労働移動という手法で、これを実現するという考え方が打ち出されているわけです。一方、雇用調整助成金については、それに反比例するように縮減を図ったらどうかという話があるのです。雇用調整助成金そのものについては、大変高い雇用維持効果があると考えています。御紹介がありましたように、リーマンショック後においても相当の効果を上げています。内閣府の推計によりますと、失業率の押下げ効果として、当時0.5%程度押し下げたという推計もあります。これまでも、また、今後とも一定の大きな効果を上げていくと考えています。雇用調整助成金は、リーマンショックの直後にいろいろな要件を緩和したために予算額が膨らんでしまって、今、徐々に戻している状況にあります。景気の回復による利用者の減少なども背景にあり、必要性も鑑みて、その結果として減少傾向にあるかもしれませんが、雇用調整助成金自体を廃止するという考えは、今のところ私どもは持っていません。
○新谷委員 確かに、リーマンショックのあと、支給要件についてかなり柔軟に対応していただいて、そろそろ出口戦略を考えなければいけないというときに、東日本大震災が発生して、要件緩和の継続や、更なる要件緩和をやってきて、今回提起されているような出口の対応になっているのだと思います。厚生労働省としては、課長から御答弁をいただきましたが、中小企業緊急雇用安定助成金も今回廃止して、もともとあった雇用調整助成金と統合し、申請書類も分かりやすくしていただくということなので、それはそれでよいのですが、お答えいただいたように、雇用調整助成金の果たした政策効果は非常に大きいと思っていますので、余り乱暴な論議にならないように厚生労働省として、是非頑張っていただきたいと申し上げておきたいと思います。
○大橋分科会長 使側はいかがですか。雇用調整助成金については反対されているわけではないのですね。日本型のワークシェアリングをするための手段として非常によく使われていて、これは効果は大きいと思っています。ほかにいかがでしょうか。
○中村委員 雇用調整助成金以外でよろしいでしょうか。キャリアアップ助成金の考え方と適用要件等についてお尋ねしたいと思います。先ほど御説明いただいた資料の16ページに「キャリアアップ助成金」があります。質問の1つは要件に関わるもの、もう1つは考え方に関わるものです。
 まず、考え方に関わるものについて。真ん中に「支給額」とあり、「正規雇用・無期雇用転換(一人当たりの助成額)ア、イ、ウ」とあります。アでは有期契約から正規雇用に、イでは、有期契約から無期雇用に転換した場合ということです。言葉として「正規雇用」と「無期雇用」の2つの使い分けがされていて、転換したときにキャリアアップというのですが、どうして正規雇用と無期雇用の考え方に分かれているのですか。正規雇用はどういったものなのか、考え方を確認させていただきたいと思います。
○企画課長 御指摘いただきましたのは、転換に当たって目標としている「無期雇用」と「正規雇用」がそれぞれどういう概念で、なぜ2つに分けているのかということです。まず、正規雇用から御説明します。これはいわゆる正社員、基幹的な役割を果たす者として終身雇用を前提としたような取扱いを受けている正社員を念頭に置いて「正規雇用」としています。それから、無期雇用は、いわゆる典型的正社員とは違った形ではあるけれども、「無期」という形で雇用の安定が図られている方々です。どのように正社員と見るか見ないかという議論はありますが、助成金という手段の中では、我々は便宜的に「無期雇用」という別の概念で、有期雇用から正規雇用、それと、有期雇用から無期雇用を一旦通ってから正規雇用にするという、2つのチャンネルを助成対象にするという考え方を取っています。要するに、途中に段階を置いて、2段階に分けてキャリアアップする場合でも助成できることをはっきりさせるために、「無期雇用」という概念を作ったと御理解いただきたいと思います。
○中村委員 すると、こちらで考えているのは、「正規雇用」というのは正社員という意味合いですか。
○企画課長 おっしゃるとおりです。
○中村委員 この定義については何か示されることになるのでしょうか。
○企画課長 一番細かく書かれるのは支給要領です。お手元の資料を見ていただいてもなかなか分かりませんが、省令案要綱でも「正規雇用労働者」という言葉を使っています。資料1-2の10ページの1行目に「正規雇用労働者」という言葉を使っていまして、省令の形で正式に官報に登載する際には、正規雇用労働者とは何ぞやということをまずきちんと書く必要があると思っています。
○中村委員 次に、助成金の支給要領で、そういう形で定義がされるとして、この助成金の支給要件についてです。有期から正規に転換したり、有期から無期に転換したりという計画を立てて、実際にその取り組みを実施した企業について、この金額を助成するということですが、同時にその企業の中で、一方でいわゆる正規から無期にといったことも同時並行的に行われるようなケースも、全体の動きによっては考えられるのではないかと思います。その場合、トータルとしてのキャリアアップ促進を図る観点で、政策目的として整合するのかどうかという懸念があります。
 正規雇用から無期雇用への転換というのは、キャリアアップという概念とは反対のものだと捉えております。仮に、そういうことが同時並行的に行われるようになった場合、それでも当該対象となるキャリアアップをする有期労働者等についての助成金は淡々と支給するという考え方なのかどうか、ちょっと見えないのです。
 例えば雇用調整助成金のように、雇用維持という基本的な大きな政策目的に向けて、解雇等を行った場合については支給内容を制限をするという考え方に立っていることを考えれば、キャリアアップ助成金についても、キャリアアップと同時的にいわゆるキャリアダウン等も行われるような場合については、たとえキャリアアップをされるものがあっても、助成の対象にはならないのではないかという考え方なのですが、その点はいかがでしょうか。
○企画課長 正に今、雇調金における解雇の例を御紹介いただいたわけですが、基本的には同じような考え方に立って、何らかの仕掛けをしていくのだろうと思っております。
○中村委員 是非、御検討をよろしくお願いいたします。
○新谷委員 今、非常に大事な点を確認させていただいていると思っています。産業競争力会議の中でも、田村厚生労働大臣が提出された資料の中で、多元的な働き方という概念が提起されております。正しく今ここで政策誘導するような、いわゆる無期雇用の労働者を作っていく。政策的に、正社員と非正規雇用の間に多元的な働き方を普及拡大するということが提起されているわけです。
 今回のキャリアアップ助成金の無期雇用への転換助成が正しくそれに当たると思うのです。今、中村委員が申し上げたように、政策的には確かに非正規の有期から一遍に正規雇用へ転換するのは大変だから、無期雇用という概念を作って、そこに政策的に誘導していくというのは分かるのですけれども、懸念するところはその逆のパターンです。いわゆるピカピカの正社員から、無期雇用に落としてしまう。これは例がないわけではなくて、私の出身の電機産業でも、今から10年ぐらい前にITバブルが弾けたときに、勤務地限定社員の論議がありました。ピカピカの正社員から手を挙げさせて、勤務地をその工場に限定する。その代わりに労働条件を、ゾーンはありますけれども10~30%の引下げをする。雇用契約期間は無期なのだけれども、賃金をそれぐらい下げて手を挙げさせるということで、大量の勤務形態の変更を行ったことがあります。その後どうなったかについては、昨今の電機産業の状況であり、工場閉鎖等々が起こって、結局、勤務地での雇用も守れなかったということが現実としてありました。
 今回も、厚生労働省としてステップアップを支援するという政策制度は非常に前向きでいいのですけれども、世の中はいろいろなことが起こりますし、いろいろなことを考える経営者もおります。今いるピカピカの正社員を下ろしていくということに対して、今回の助成金でどうやってブレーキを掛けていくのかというところを、もう少し明確に聞かせていただきたいと思います。
○企画課長 大変重要な御指摘であろうと思います。この助成金自体は、前にガイドラインのときにも御説明いたしましたように、正にガイドラインにあるような、非正規と言われるような人たちのキャリアアップのために使う助成金であるというコンセプトであることは間違いありません。そういうものとして発足するということです。
 例えば、御懸念になっております無期雇用という中間段階みたいな所を置いて上げていく場面についても、横広の資料の16ページの支給額の所にも、●1つ目の一番下の注の所にあるように、無期雇用に転換する場合は、基本給5%増額ということを要件にするという形で、ただの無期ではなくて、プラスアルファを求めるという形で政策的な方向性を明記させていただこうかと思っております。そもそもの対象者となる労働者の考え方ですが、有期であるとか、短時間あるいは派遣であるといった非正規の人たちを対象として、それをこういう形に持っていく、上に上げていくという形の、そういう上のベクトルなものについて助成をするということは、全体の仕組み上、明らかですので、我々としては、いわゆる昨今の競争力会議の議論とは、この助成金自体は取りあえず別ものとして考えているということははっきり申し上げられます。
○新谷委員 今5%の話が出てきて、16ページの真ん中に注書きがあって、イの項目の(注)として、有期から無期に転換させる場合には、基本給を5%以上増額することが必要であるという要件が入っています。私が確認したいのはそういうことではなくて、ここでいう正規雇用から無期に引き下げるということが、いわゆる除外要件として入ってくるのかどうかということを確認したいのです。
○企画課長 説明が言葉足らずでありましたが、飽くまでもこれはスタートライン、つまりどういう労働者を対象にするかというところで、正規を対象にするということになっておりませんので、そもそも除外されているという説明です。
○新谷委員 ちょっとすれ違っていると思うのは、助成金があるかないかではなくて、例えばイの項目を使って、有期から無期の転換が図られたとしたときに、同時にそのカテゴリーに正社員から下りてきたケースがあったときに、このイの項目というのは助成するのかしないのかということなのです。先ほど雇用調整助成金で申し上げたように、雇用調整助成金の申請をすると同時に、一方で助成金の対象事業所で解雇をやっているということであれば、雇用調整助成金は支給されないわけです。今回の助成金の除外の要件として、正社員から下りてきたケースが入ってくるのかどうか。要するに、正規から無期に落ちてくるということが同時に起こっているケース、あるいは過去1年以内に起こっているケースについては、どのような扱いをするのかというのを確認したいのです。
○企画課長 これからの設計で、まだ時間があるわけですが、その中で今言ったような点も含め、細かく詰めさせていただきたいと思います。
○新谷委員 分かりました。今、私どもが申し上げた点は是非十分考慮いただいた制度設計をお願いしておきます。もう1つ確認したいのは、16ページの短時間正社員の所です。短時間正社員については、昨年厚労省が出された「望ましい働き方ビジョン」の中で定義付けがあって、時間単価が正社員と同じであり、労働時間が短い正社員だという定義です。先ほどの単なる無期雇用とは、その時間単価の扱いが違うという定義をされていたと思います。
 16ページの下から2つ目の●に書いてある短時間正社員1人当たりの助成額の所に、有期労働契約から短時間正社員に移行するというのが書いてあって、これは有期のフルタイムから短時間の正社員に移行するというケースが出ています。これは、どういう想定でこういうことを考えたらいいのか。要するに、これは時間単価を正社員と同様の水準に上げて、かつ労働時間を短くするというケースに対して助成するということで想定されているのかどうか、ここの制度設計について確認させていただきます。
○企画課長 それは、書きぶりがやや誤解を招くものだったかと思います。ここの部分は、今、雇児局が所管している均衡処遇の奨励金を基本的に引継いだもので、あれと違うものではありません。有期から短時間正社員に、あるいはフルタイムから短時間正社員にという2つのパターンに分けて書いてしまっているので、やや誤解を招くような書き方になっているのだと御説明申し上げます。
○新谷委員 これは、有期という労働契約期間の概念と、別に短時間という労働時間が短いという概念と、更に時間あたりの単価の問題と3つ入っているのです。それを有期契約から短時間正社員に移行するというのが、いきなりは繋がらないと思っています。今ある制度と変わらないのだという答えでしたので、それはそれでいいのでしょうけれども、これだけ書かれても、なかなかイメージしにくいということです。
○企画課長 もう一度御説明いたしますと、有期労働者をどのような場面で助成対象にするかということですが、無期にする場合であれば、正規雇用・無期雇用転換のほうに該当するわけです。有期契約労働者を典型的な正社員にするという場合も、そちらで助成対象なわけです。それでは、時間当たり単価が同じの、いわゆる短時間正社員にする場合はどうかというと、この下から2つ目の●の所で助成対象にするという理解です。まず、有期を出発点としたキャリアアップの形としては、そのいずれもこの2つの●のどちらかに該当するという形で助成対象にするという整理です。
○大橋分科会長 よろしいですか。
○新谷委員 いいです。
○大橋分科会長 正社員のほうにウエイトが掛かっているのです。有期契約から正社員。
○企画課長 おっしゃるとおりです。正社員であるということに着眼し、それが短時間であっても、短時間正社員という形態であれば、それは助成対象にしようという思想です。
○大橋分科会長 だから、労働力タイプにいろいろなタイプがあって、その中の位置付けが厚生労働省側の位置付けとちょっと違うかもしれません。
○新谷委員 後でまた確認しますけれども、これはフルタイムで働いている有期契約の方を、正社員タイプに移行するのだけれども、それは短時間でないと駄目だということなのですか。今8時間で働いていた有期契約社員がいて、それを6時間の短時間正社員にすれば助成するということですか。
○企画課長 有期の労働者がいて、つまりフルタイムの有期労働者です。その場合でも、フルタイムの正社員にすれば、一番上の●になるわけですし、短時間の正社員にすれば2つ目の●に当たるということです。
○新谷委員 なるほど。
○企画課長 要するに短時間正社員が、会長のおっしゃったとおりで、正社員として1つの位置付けをなしているのであれば、それも政策目標にしようということです。
○新谷委員 はい、分かりました。
○大橋分科会長 書きぶりを少し注意したほうがいいかもしれません。確かに。
○中村委員 今の議論で、イの部分の有期から無期への転換と、有期から短時間正社員への転換は、それぞれ20万円ということになっていますが、ダブルカウントで助成するという理解でいいのですか。要するに、例えば6時間の有期の方が無期転換し、なおかつ6時間の時間比例の処遇を受ける短時間正社員になったというような場合には、イ+短時間正社員、つまり20万円+20万円の助成が受けられるという考え方ですか。
○企画課長 そこは、併給調整のようなことをする必要があるのかないのかということにはなりますが、どちらかということになるかと思います。
○中村委員 考え方としては分かります。
○高橋委員 テクニカルな質問になるかもしれません。先ほど話題になっていた16ページのキャリアアップ助成金の(注)の所に、無期雇用に転換する場合は、基本給5%以上増額とすることが必要ということが指摘されていました。例えば、有期契約労働者が時間給で働いていて、会社の仕組みにもよりますが、無期雇用だからといって、別に時間給のままでもいいわけですけれども、仮に月例給で仕組んだような場合に、基本給5%以上というのは、有期契約の時間給でしたら、就業日数とか、就業時間に応じて金額も変動するわけですが、その5%以上となるベースの賃金のことをどのように考えて、5%以上と規定していくのかということについて質問いたします。
○企画課長 5%の上げ幅をどういう根拠にしているかという御質問かと思います。基本的に月例給に換算した場合を時間給に換算すると、大体これぐらいの上げ幅になるのではないかという考え方を取って5%とさせていただいています。
○高橋委員 時間給だと就業日数、例えば月数、何月何日働いたかによって収入が異なります。月例給だったら、別に労働日数にかかわらず毎月定額になるわけです。もし時間給だとするならば、そのベースとなる金額をどのように考えるのか。技術的な質問をしています。
○企画課長 率直に言って、今のような場面まで細かく詰めて検討しておりませんでした。基本的な考え方はこのままでいこうかと思いますが、御指摘のような場面も想定し、いざ実行する段階には、改めて対応させていただきたいと思います。
○大橋分科会長 無期契約と有期契約の賃金格差は大体5%ですか。時間給にしても、月給にしてもという判断ですよね。
○企画課長 有期と無期との格差自体が5%だという判断をしているわけではなくて、もともと時間給でやっていた人を月給にするときに、単純に同じ額で比較するわけにはいかないということをどう捉えるかというところからスタートしたものですので、今御指摘いただいたような点も含め、もう一度詰めさせていただいて、別途御相談したいと思います。
○大橋分科会長 少なくとも5%ぐらい上げないと、無期雇用とは言えないという解釈でいいですね、取りあえず。
○企画課長 これは、労働契約法の話とも、やや関係していて、労働契約法で5年を超えて更新するときは、本人の申出で無期になるという義務が発生することになっております。その場合の無期は、有期を無期にするだけでいいと。要するに賃金のほうはいじらなくてもいいということになっています。それ自体は法律上そういう方向になっているので、政策的に更にキャリアアップということを誘導するのであれば、何かそこに付け加わるものがないと処遇改善ということにはならないだろうという判断です。
○大橋分科会長 分かりました。
○新谷委員 労働契約法という話がありましたが、本日は岩村先生もおられますけれども、無期転換後の労働条件のあり方については、労働条件分科会で大分論議になった点です。今回は無期雇用に転換した場合は基本給を5%以上増額するという政策誘導を行うわけですが、無期転換後の労働条件の在り方がどうなるのかということは非常に重要なポイントです。紛争防止の観点からは、労働契約法の改正に併せて、無期転換後の労働条件を就業規則できちんと明定するということが大事なことであるわけです。
 経営法曹会議という、経営側が使う弁護士のグループがあります。そこの論文の中に、無期転換後の労働条件については、一時金(ボーナス)との関係、全体の年収との関係で、いろいろな調整をすることを考えているような論文も出てきております。無期転換前の有期の時には、夏・冬の一時金として一定の賞与に当たるようなものを支給していたけれども、月給を5%上げて、その分一時金を下げるというものです。こうしたケースは、今回のキャリアアップ助成金の要件に合致しているのだけれども、年収的には全然変わっていないということも考えられます。この5%をどのように算出するかについては、いろいろな企業に対応できるようにしていただきたいと思います。
○企画課長 改めていろいろな問題があるようですので、別途御相談させていただきます。
○大橋分科会長 他にはいかがでしょうか。特にないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会長に御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋分科会長 ありがとうございます。それでは報告文案の配布をお願いいたします。
(報告文案配布)
○大橋分科会長 配布していただきました報告文案により、労働政策審議会長宛て、報告することとしてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。次に移らせていただきます。議題「その他」として資料が配布されておりますので、事務局から説明をお願いいたします。
○公共職業安定所運営企画室長 「その他」議題について御説明させていただきます。参考資料として、「地方分権改革推進本部の設置について」という1枚の資料をお配りしております。これまで、地方分権の流れの中で、地方自治体とハローワークが共同で一体的実施、あるいはハローワーク特区に取り組んできております。これに関連して、今回政府の体制に一部変更がありましたので御報告するものです。
 3月8日の閣議決定で、その資料にあるとおり地方分権改革推進本部が内閣府に設置されております。内容としては、地方分権改革の推進に関する施策の総合的な策定及び実施を進めることが目的とされております。この本部の構成員は、本部長が内閣総理大臣、副本部長が官房長官と内閣府特命担当大臣、本部員として厚生労働大臣を含む全ての国務大臣が入っております。
 4ところに書いてありますが、これまであった地域主権戦略会議は廃止となり、これに伴い、この閣議決定には明記されておりませんが、その下にあったアクション・プラン推進委員会、ハローワークチームも合わせて廃止となっております。ただし、平成22年12月の閣議決定のアクション・プランは廃止されておりません。したがって、これまでハローワークが取り組んできた一体的実施事業、あるいはハローワーク特区は継続して取り組んでいくこととしております。
 今後ですが、地方分権改革推進本部の下に、自治体関係者等が参加する有識者会議が設置され、地方分権推進の在り方等が検討される予定と聞いております。ただ、この有識者会議について、メンバー、あるいは開催のスケジュール等、具体的な進め方については、現時点では決まっていないと聞いております。以上、地方分権の関係で新しい動きがありましたので御報告させていただきました。
○大橋分科会長 本件について御質問がありましたらお願いいたします。
○林委員 ただいまの御説明の中で、アクション・プランに基づく一体的実施、ハローワーク特区については継続するという説明がありました。ハローワークの運営に関して質問させていただきます。先ほどから再三出ております3月15日に開催された第4回産業競争力会議において、一部の民間議員から、ハローワークの地方移管、民間開放を行うべきとの提言がなされたと聞いております。本審議会において、過去2回、2009年と2010年でありますが、出先機関に関する意見書を取りまとめております。その中では、ハローワークの業務は都道府県に移管することは適当でなく、国が責任を持って直接実施する必要があり、これは先進諸国における国際標準であると結論付けていると認識しております。今回の産業競争力会議における議論というのは、こうした公労使三者構成の労働政策審議会の意見を把握した上での発言なのかどうか、ここは甚だ疑問であると私どもは捉えております。
 ここで質問ですけれども、ハローワークが行っている職業紹介とか、雇用保険に関わる各種給付手続といった機能が、仮に地方に移管された場合には、どのようなメリット、デメリットがあると考えているのか、厚生労働省の見解を改めてお聞きしたいと思います。
○公共職業安定所運営企画室長 ハローワークの地方移管の議論については、厚生労働省としては今までどおり問題があると考えております。今おっしゃった、雇用保険の保険者の変更など雇用保険の財政の根本に関わる議論になること、都道府県を跨いだような形での広域的な職業紹介が適切に実施できなくなること、雇用対策の全国的な機動性を担保できなくなること。ILO条約を守れなくなるということ、このような点で問題があると考えております。厚生労働省としては、あくまでもセーフティネットとして国による全国ネットワークが必要であると考えており、その点はこれまでと変わるものではありません。地方移管については、これまで労働政策審議会で2回にわたって御意見を頂いておりますので、これを十分踏まえて対応していきたいと考えております。
○林委員 ありがとうございました。過去2回の労働政策審議会でも、正に今うかがった就職対応や、雇用保険の問題を捉えても、ハローワークの運営は都道府県に移管するのではなく、国として見ていくべきだということが確認されておりますので、是非今一度そこを御確認いただいて、私どもも現在行われている議論の動向を非常に注視しておりますので、是非そこの歯止めとしてしっかりと対応していただければと思います。よろしくお願いいたします。
○新谷委員 その他のその他で、前回の宿題の件です。前回の本分科会で、雇用保険の制度の見直しについて質問させていただきました。御承知のとおり、失業給付等の積立残高が5兆円を超えるような巨額な金額になってきておりますし、今年度の収支の見込みも恐らく当初見込んでいたような3,300億の赤字ではなくて、収支とんとんか、あるいはちょっとプラスになるような状況ということになるのではないかと思われます。
 一方で、国家財政が非常に厳しい中で消費税の引上げが進められています。その中で雇用保険の国庫負担の本則戻しの話も非常に重要なテーマとしてあります。こんなに大きな残高が積み上がってしまっている中で、保険料率については弾力条項を使って1%の下限に張り付いています。そのときに、保険制度ですから給付の見直しを進めるべきではないかというのを、私どもはずっと申し上げています。これについて、歴代の雇用保険課長からは、平成24年度末までにある程度の状況把握をして報告をしたいということを伺っております。今年度末というと本日は22日ですから、もう1週間もありません。本日たまたまというか、分科会が開催されておりますので、本日が最後だと思いますので、今の雇用保険制度の給付の在り方の見直し状況、あるいは今、分析されている課題等々を本日現在で開示していただける内容があれば御紹介いただきたいと思います。
○雇用保険課長 新谷委員からは、雇用保険部会の場でも累次の御指摘をいただいている点です。雇用保険制度については、御指摘いただいたような形で様々な課題があると考えているところです。その前提として、これまでの雇用保険法の改正、特に大きな給付の見直しとしては、平成12年、あるいは平成15年の改正が大きかったかと思います。その辺りの効果について検証するということが私どもの宿題になっております。平成24年度中には何とか整理したいという形で私もこれまで答弁させていただいていますし、私の前任からも同様の御発言をさせていただいているところです。
 委員御指摘のどうなるのかということですが、正直若干作業が遅れている状況で、取りまとめが遅れています。現在作業をしておりますのは、正に平成12年度の改正、平成15年度の改正での給付テーブルなどの見直しを行っておりますが、もちろんその前後で経済状況が違いますので単純な比較はできないわけです。その前後で求職者の就職時期がどのぐらい変わっているかということについて、例えば平成11年以降の個々の個別の雇用保険のデータから、平成11年度に離職した方が、個別にいつ就職しているかということを集計するという形で、悉皆のかなり大きな調査を手掛けている状況です。データとしては上がってきておりますので、今、正に分析をしているところですが、まだ属性別の分析などが、十分にできている状況ではありません。
 いずれにしても、雇用保険制度については様々な課題があることは御指摘のとおりですので、早急に十分な分析までできるかどうかは別にして、基本的な分析をさせていただいた上で、雇用保険部会の場等々に御報告させていただきながら、今後の雇用保険制度の在り方について御議論いただく場を設けさせていただければありがたいと考えております。
○大橋分科会長 他にはありませんか。特にないようでしたら本日の分科会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、会長のほか2名の委員に署名を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の勝野委員、使用者代表の橋本委員にお願いいたします。どうも御苦労様でした。


(了)
<照会先>

職業安定局総務課

職員厚生係: 03(5253)1111

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