ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第1回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録




2011年10月14日 第1回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録

年金局

○日時

平成23年10月14日 10:00~12:00


○場所

経済産業省別館8階 827号会議室


○出席者

吉野 直行 (委員長)
植田 和男 (委員)
小塩 隆士 (委員)
小野 正昭 (委員)
川北 英隆 (委員)
武田 洋子 (委員)
西沢 和彦 (委員)
山田 篤裕 (委員)
米澤 康博 (委員)

○議題

(1)委員長の選出及び委員会の公開について
(2)平成21年財政検証における経済前提の設定等について
(3)年金積立金の運用の現状について

○議事

○原口大臣官房参事官 それでは、定刻の少し前でございますが、皆様にお集まりいただきましたので、ただいまより第1回「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。
 委員長を選出いただくまでの間、資金運用担当参事官の私、原口でございますが、議事進行を務めさせていただきます。
 本日は辻厚生労働副大臣に出席いただいております。第1回ですので、一言ごあいさつを申し上げます。
○辻厚生労働副大臣 御参加いただきました皆様、御紹介いただきましたように、小宮山大臣の下で副大臣を拝命いたしております、参議院議員の辻泰弘でございます。
 今日は第1回の専門委員会でございますけれども、御多用の中、このように御参加いただきましたことを心より厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 多くを語る時間はございませんけれども、日本の高齢化もどんどん進行しておるわけでございまして、1億2,700万の国民の中で3,700万の方々が年金を受給しておられる。そして、またその中の6割の方々が年金所得だけで生活をされているという今日の状況にあるわけでございまして、年金は大きな国民的な政策課題になるわけでございます。
 年金財政、また国家財政も大変厳しい状況の中で、社会保障と税の一体改革ということで、年金、医療、介護等々の領域につながる政策の方針も提示をさせていただいたところでございまして、そういった方針の中にございました個別のテーマにつきまして、年金部会本体で御議論いただいている。いささか決まってしまったように新聞にとらえられておったりするわけでございますけれども、これから議論するところになっておるわけでございます。そういった年金部会での審議の下支えといいますか、その前提をつくっていただくのが、ここの極めて重要な仕事になるかと思うわけでございます。
 釈迦に説法になりますけれども、年金財政の将来推計につきましては、16年改正のときに財政再計算が財政検証という形になりまして、上限保険料18.3%、また積立度合い100年後1ということで、有限均衡方式に切り替えさせていただいた。また、国庫負担2分の1を明確化し、マクロ経済スライドという新たな考え方を導入したのが16年度改正でございましたけれども、その後の経済状況の大きな変化の中で、当初予定していたマクロ経済スライドの適用というものが今日までなされていないのみならず、年金の本来の給付水準と現行の水準がむしろ大きく乖離してしまうような状況にも立ち至っているわけでございまして、そういった意味で、当初想定していた経済状況というものが大きく変化したことが如実に表われているのが、年金財政の将来の見通しでもあろうかと思っているわけでございます。
 そういった意味におきまして、常識的に見て、こんなにデフレが続くとは思っていなかったということにも尽きるかと思いますけれども、そういった現状を反映した形での推計にしていかなければならないということであろうかと思っております。法律的には5年ごとになっておりますけれども、今後、年金制度改革を民主党政権として提示していく中において、やはりしっかりとした財政推計を提示することも求められてくるだろうと思いますし、近々行われる国会でもそのことが求められると思っているところでございます。
 そういったことで、皆様方には大変御尽力を賜るわけでございますけれども、国民の大きな生活の基盤となっている年金制度の将来、安定的な運営に向けての客観的、公正な前提をつくっていただく大きな使命にお力添えいただきまして、推進していただきますように、心からお願いを申し上げたいと思います。
 なお、個人的な意見として申し上げたいと思いますが、前回の財政検証はいろんなところで御意見をいただきましたけれども、例えば賃金上昇率がこんなに高くて大丈夫なのかといいますか、本当なのかという御指摘もいただいたわけでございまして、やはり庶民的な感覚になじむといいますか、現状に即した目標といいますか、数値というものも大事なことではないかと思っております。説明をいろいろ聞くと、何かわかったような気になるのでございますけれども、やはり庶民感覚から見ると、ちょっと離れているところもあろうかと思っているところでございます。
 また、平成13年に経済財政の一体的な目標を示すということで、竹中さんが改革と展望ということで、財政を組み入れた経済の見通しを毎年出すということをやられて、ローリングシステムでやるということになったわけですが、個人的には、社会保障もその中に組み込んで、医療の将来推計、年金の将来推計、そういったものを毎年ローリングで示すということも将来的な課題ではないかと思っているところでございます。
 いろいろ申し上げまして恐縮でございますけれども、いずれにいたしましても、大変重要な役回りを担っていく先生方でございます。この場での真摯な、また積極的な御議論をいただく中で、国民の重要な年金をお支えいただく、そのことに向けての御尽力を賜りますように、心からお願い申し上げまして、ごあいさつにさせていただきます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○原口大臣官房参事官 なお、辻副大臣は、公務の関係上、途中で退席いただくことがあろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして、委員の皆様の御紹介をさせていただきます。五十音順に御紹介をさせていただきたいと思います。
 植田和男委員でございます。
 小塩隆士委員でございます。
 小野正昭委員でございます。
 川北英隆委員でございます。
 武田洋子委員でございます。
 西沢和彦委員でございます。
 山田篤裕委員でございます。
 吉野直行委員でございます。
 米澤康博委員でございます。
 以上のほか、本日は御都合がつかず御欠席でございますが、駒村康平先生に委員をお願いしております。
 また、オブザーバーとして、年金積立金管理運用独立行政法人から大江審議役と清水調査室長に出席いただきました。
 後ほど御紹介いたしますが、年金積立金管理運用独立行政法人の在り方に関する検討会から年金制度・財政と運用を一体的に議論するに当たり、運用を担う年金積立金管理運用法人にも議論に参加できるようにすることが考えられるとの提言をいただきましたので、出席いただいております。
 事務方からの出席者につきましては、お手元に座席表をお配りさせていただいております。このとおりとなっておりますので、これをもって紹介にかえさせていただきます。
 続きまして、お手元の資料を御確認いただきたいと思います。
 1枚の議事次第がございます。議事次第に続きまして、座席表及び委員名簿をお配りさせていただいております。
 資料1、この専門委員会についてという設置の趣旨等の資料が1枚紙でございます。
 資料2、この専門委員会の議事等の公開についてという1枚紙がございます。
 ホチキスどめの資料が4つ続いております。
 資料3-1、平成21年財政検証における経済前提の設定についてという資料でございます。
 資料3-2、平成21年財政検証の経済前提等に対する諸意見等でございます。
 資料4-1、厚生年金・国民年金の積立金運用についてでございます。
 資料4-2、年金積立金運用に関する主な指摘事項でございます。
 資料5、当面の進め方(案)が1枚紙でございます。
 参考資料に入ります。
 参考資料1、関係法令・規則でございます。
 参考資料2、1枚紙でございます。平成21年財政検証における経済前提専門委員会の検討の経緯でございます。
 参考資料3、中央の方に参考資料3と打ってございます。平成21年財政検証における経済前提の範囲についてという資料でございます。
 参考資料4、年金積立金管理運用独立行政法人の運用の在り方に関する検討会報告書でございます。
 参考資料5、参考資料集でございます。
 以上、資料ございますでしょうか。もし何か欠落がございましたら、事務局に言っていただきましたら、お届けをさせていただきます。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に移らせていただきます。
 初めに本専門委員会の委員長の選出についてです。あらかじめ本委員会の各委員に相談いたしましたところ、吉野委員に委員長をお願いしてはどうかとの御意見がございましたけれども、委員の皆様、いかがでございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
○原口大臣官房参事官 ありがとうございます。それでは、吉野委員に委員長をお願いすることとし、これからの議事運営につきましては、吉野委員長によろしくお願いしたいと思います。
(吉野委員、委員長席へ移動)
○吉野委員長 ただいま委員長に選任していただきました、慶應義塾大学の吉野でございます。微力ではございますけれども、委員の皆様の御協力を得ながら、円滑な議事の運営をさせていただきたいと思います。
 また、冒頭に辻副大臣から御説明がございましたけれども、マクロ計算がこれまでことごとくうまくいっておりませんで、いろいろデフレの状況もございますので、経済の状況を見ながら、今回は間違った推計にならないように、皆さんと一緒にいい会にさせていただければと思っております。
 それでは、早速でございますけれども、議事に入りたいと思いますが、本会を開催するに当たりまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○原口大臣官房参事官 それでは、資料2をごらんください。本専門委員会の議事等の公開について(案)でございまして、本委員会の申し合わせ案でございます。
 「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会の会議及び議事録は原則として公開する。ただし、各種の市場に影響を与えるおそれがある場合等必要があると認められる場合には、委員長は、会議及びその資料並びに議事録の全部又は一部を非公開とすることができる。
 なお、議事録の全部又は一部を非公開とする場合には、委員長は、非公開とした部分について、議事要旨を作成し、これを公開するものとする」。
 以上が案でございます。
○吉野委員長 ただいまの御説明の案につきまして、皆様、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○吉野委員長 それでは、御異議ございませんので、ただいまの御説明のとおり、これから公開につきましては、原案どおりとさせていただければと思います。
 それでは、次に議事次第の「(2)平成21年財政検証における経済前提の設定等について」御説明をお願いしたいと思います。
○安部数理課長 数理課長の安部でございます。よろしくお願いいたします。
 私から資料1、資料3-1、資料3-2、資料5につきまして、併せて御説明を申し上げます。
 資料1でございますけれども、これは本専門委員会の設置についての資料でございます。
 「1.設置の趣旨」と書いてございますが、これは年金部会に提出しました資料でございますけれども、年金部会の討議に資するために、年金財政におけます経済前提、積立金運用の在り方など、専門的・技術的な事項に関して検討いただくために、本専門委員会を設置したところでございます。
 「2.主な検討項目」と書いてございますけれども、大きく2つございまして、1つが次期年金財政計算に用います経済前提の在り方についてというのが1つ。もう一つは、年金積立金の運用について。大きく分けまして、この2つについて御検討をお願いしたいと考えてございます。このうち、経済前提の御審議に関しましては、最終的には具体的な計数、定量的な検討もお願いすることになると思います。
 この資料の裏をごらんいただきたいと思います。実際に定量的な検討をしていただく際に最も基礎になりますのは、将来の人口がどうなっていくのかということが一番の出発点になるわけでございますが、現行の将来人口推計は、平成18年12月に公表されたものが直近でございます。将来人口推計は大体5年ごとに見直しが行われておりまして、ちょうど今、次の新しい人口推計に向けての検討が、社会保障審議会の人口部会で始まっているところでございます。
 今、ごらんいただいている資料は、人口部会の今後のスケジュールでございますけれども、上の1行目、2行目にございますように、一応、現在の目標といたしましては、年明けをめどに、できるだけ早期に新しい推計結果をとりまとめる、そういうスケジュールで現在審議が進んでいるところでございます。
 人口関係の推計については、以上のようなスケジュールで進んでいるということを踏まえまして、資料が飛んで申し訳ございませんが、資料5をごらんいただきたいと思います。資料5は「当面の進め方(案)」ということでお示しをしているところでございます。
 今日、第1回をここで開催いたしているところでございますけれども、本日は経済前提につきまして、これまでの経緯、平成21年財政検証の経済前提はどういう考え方で設定したかということ、運用につきましても現在の状況等、これらに対します各方面からの御意見、そういったものを御説明いたしまして、フリーディスカッションをお願いしたいと考えております。
 今後ですけれども、経済前提に関しましては、先ほども申しましたように、新しい人口推計が年明けぐらいに出てまいりますので、定量的な数字を見ながらの御検討は年を明けてからになると思っております。人口の数字、経済指標の実績値も新しい数字が出てくると思われますので、そういったものを見ながらお願いできればと考えております。
 一応月に1回ぐらいのペースでお願いしたいと考えておりまして、年内はあと2回、第2回、第3回を予定しております。
 経済前提につきましては、現行使っている経済モデルを御説明いたしまして、それについてどういうところが問題と思われるか、また改良すべき点など、主として理論的な面についての御審議をお願いできればと考えております。
 また、積立金の運用に関しましては、第2回には運用現場から見た課題ということで、GPIFからのヒアリングをお願いできればと思います。
 第3回につきましては、市場関係者または機関投資家など有識者の方々からのヒアリングをお願いしていきたいということで、一応当面の進め方(案)ということでお示しをしているところでございます。
 それでは、資料3-1、資料3-2にお戻りをいただきまして、順次御説明をしてまいります。
 資料3-1でございますけれども、これは平成21年財政検証において、経済前提をどのように設定したかということについて簡単にまとめた資料でございます。
 表紙をおめくりいただきまして、1ページでございますけれども、これまでどのような経済前提を設定してきたか。そして、それはどのような考え方で設定したかということを説明している資料でございます。1ページ目は、計数としてどういう前提を置いたかという表でございまして、昭和48年から順次財政再計算を行ってきたものでございます。
 これら計数を設定するに当たっての考え方ということで、2ページにお示ししております。経済前提を設定する際の考え方は、平成11年の財政再計算までと平成16年財政再計算以降とで考え方や方法が変わっております。
 1つ目の○は、平成11年再計算までの考え方でございますけれども、このときには主として国の方で経済計画というものを定期的に設定しておりました。直近までの実績と国の方で設定します経済計画の係数、そういったものをにらみながら、それぞれ昭和48年、昭和51年、昭和55年以降の財政再計算の経済前提というものを設定してきておりました。
 平成11年まではそういう考え方で設定したわけですけれども、平成16年の財政再計算におきましては、当時、社会保障審議会の中に年金資金運用分科会という分科会がございまして、そこの御議論の中で、過去の実績をそのまま延長するという方法ではなくて、実績を基礎としつつ、日本経済の潜在成長率の見通しとか労働力人口の見通しなどを反映したマクロ経済に関する1つのモデルのようなものをつくって、そういったものをベースにして経済前提を設定していくことができないか。そういう問題意識が提起されまして、この分科会の御議論の中で、1つの経済モデルが設定されました。それを踏まえて経済前提を設定するという考え方が、平成16年に行われたわけでございます。
 ただ、経済モデルで設定しますと、非常に超長期の経済前提でございますので、足元からすぐその数字になるというのはさすがに無理がございます。足元の数字につきましては、内閣府が定期的に5年から10年の経済見通しを公表しておりますので、当面の足元の数字については、そういった内閣府の数字を使う。そして、それが終了した後の超長期のものについては、経済モデルをベースにした推計、数字を使って経済前提を設定する。そういう考え方に平成16年に変わりました。
 平成21年の財政検証も基本的には同じ考え方を踏襲して設定をしたところでございます。
 おめくりいただきまして、3ページは、過去からの財政再計算におけます経済前提と実績がどのように推移してきたかというものをグラフでまとめたものでございます。
 平成16年に新しく考え方が導入され、平成21年にも踏襲されました経済前提の設定の考え方をまとめておりますのが、4ページ以降でございます。
 平成21年、この時点では年金運用分科会というものはございませんでしたが、年金部会の中に経済前提専門委員会を設置いたしまして、御議論をいただいて、設定をしたところでございます。
 2番目の○でございますけれども、基本的な考え方は16年の考え方を踏襲して、データなどは直近のものに変えて設定をするという考え方でございました。ここはあくまでも長期的な見通しということで、直近の金融危機などがございましたが、そうした混乱を脱した後の姿を超長期のものとして設定するという考え方です。
 3番目の○でございますけれども、16年と同様に足元の経済前提についてはモデルから出た数字を使うのではなくて、内閣府が作成した短期の見直しに準拠する考え方で設定をしたところでございます。
 おめくりいただきまして、5ページでございますけれども、16年、21年の経済前提を設定する際に使用しました経済モデルを簡単にまとめたものでございます。
 基本的にはいわゆるコブ・ダグラス型の生産関数に基づきまして、点線囲みの1つ目の四角に式がございます。経済成長率=ということで式が書いてございますけれども、経済成長率を規定するものとして、1つは資本成長率、2つ目として労働成長率、この2つで説明し切れない部分ということで全要素生産性上昇率、この3つの要素で経済成長率が定まっていくという仮定を置いてモデルを組んだわけでございます。
 2番目の点線囲みは、単に式変形をしただけでございますので、飛ばします。
 資本成長率、労働成長率、全要素生産性上昇率、それぞれ見込みを立てて、最終的に経済成長率を見込むわけですが、資本成長率についてはどのように見込むかということが3番目の点線囲みでございます。これはここにありますように、GDPに総投資率をかけております。ですから、GDPの中で投資に回るものが幾らか、それが資本ストックに対して何パーセントの割合になっているかを計算して、そこから資本減耗率を差し引くことで、ネットの資本の増加率を推定するという考え方です。ですから、資本成長率につきましては、GDPの推計と関連づけて推計するという仕組みになってございます。
 ここで資本ストックと書いてございますが、これらのデータは、基本的にはSNA、国民経済計算からのデータを使っておりますが、ここでいう資本ストックというのは、SNAにおきます有形固定資産、建物ですとか機械設備などの数字を使ってございます。
 労働成長率とか全要素生産性上昇率につきましては、6ページ以降でどのような考え方で推計したかということは御説明いたしますけれども、このようにして経済成長率を推計しています。
 4番目の点線囲みでございますが、そういった推計結果を基にして利潤率を計算いたします。利潤率と申しますものは、GDPの中から資本に分配されたものが幾らになるか、それが資本ストックに対してどれぐらいの割合になっているかということを計算し、資本減耗率を差し引くことでネットの数字にするわけですけれども、こういう定義で利潤率を計算いたします。1つの仮定なんですけれども、利潤率の変化というものが長期の金利と大体連動して動くとしまして、長期金利の推計につなげていく。基本的な流れとしては、そういう考え方で設定されているモデルでございます。
 6ページから10ページまでは、2番目の要素でございます、労働成長率をどのように推計したかをまとめた資料でございます。ベースとなっておりますのは、大きく分けまして2つありまして、フローチャートの右の方に※で幾つか記述してございます。
 まずベースとなりますのは将来の人口、世帯、特に有配偶、無配偶の区別をつけるために世帯の推計というデータを使っておりますが、社会保障・人口問題研究所が平成18年12月に将来の人口推計を公表しております。また20年には世帯推計ということで、特に女性についての有配偶、無配偶別の数字も出しております。これを人口についての基準となる将来推計の数字として使っております。
 もう一つは労働力の動向ということで、人口の推計を基礎といたしまして、労働力がどうなっていくかという推計につきましては、平成20年3月、労働力需給の推計と記載をしております。これはいわゆるJILPT、独立行政法人労働政策研究・研修機構というところが20年3月に推計を出したものでございますが、そこから将来の労働力とか就業者数といったものの将来見通しがございますので、それらを使うこととしております。
 この2つを組み合わせることによりまして、労働力成長率を推計していきます。最終的には人数ではなくて総労働時間、マンアワーベースの労働投入量を推計していくというプロセスでございます。
 7ページ、8ページ、9ページにつきましては、具体的な計算方法をお示ししております。この辺りは後ほどごらんいただければと思います。
 最終的に推計結果をグラフでお示ししておりますのが10ページ目でございます。前提といたしまして、労働市場への参加が進むケースを想定しておりますけれども、やはり将来人口推計の中で、現役の生産年齢人口が減少していくことが影響しておりまして、マンアワーベースでの労働投入量も将来にわたって少しずつ減少していく。そういう見込みをこのときに設定したところでございます。
 次に11ページ、12ページでございます。3番目の要素といたしまして、全要素生産性上昇率を設定する必要があるわけでございますがけれども、これにつきましては、当時、直近の資料といたしまして、内閣府が作成いたしました、平成19年度年次経済財政報告書におきまして、足元で1%程度の水準という分析もなされていました。
 また、先ほどから何回か申し上げておりますが、同じく内閣府が短期の経済見通しを作成しておりまして、直近では平成20年1月に参考試算などを出しておったわけですけれども、そういったところで見ましても、成長シナリオで1.4~1.5%、リスクシナリオでも0.9%程度という前提が置かれていた。
 そういったことを踏まえまして、平成21年の財政検証では、全要素生産性上昇率につきましては1.0%というものを中心として設定して、それに対して上位、下位ということで1.3%、0.7%を設定して、合計3通りの前提を置いて、それぞれのケースごとに推計を行ったところでございます。
 また、モデルを推計するに当たって必要となる前提といたしまして、資本分配率とか資本減耗率、総投資率を設定していく必要があるわけでございますけれども、これらにつきましては、それぞれ過去の実績などを踏まえまして、資本分配率と資本減耗率につきましては、それぞれ39.1%、8.9%と設定をいたしました。
 12ページですけれども、総投資率ということで、過去の実績を見ましたところ、このグラフにありますように、若干減少傾向にあることも踏まえまして、その傾向を延長するやり方で設定をしているところでございます。
 以上のような仮定を設定いたしまして、推計した結果を13ページ以降にまとめているわけでございます。
 13ページには「6.マクロ経済に関する推計結果」ということで、TFPが1%の場合、1.3%の場合、0.7%の場合、3通りにつきまして、それぞれ実質経済成長率等々の推計結果をお示ししております。
 この中で、基本ケースとしてはTFPの1.0%の場合を使用しておりますけれども、その場合ですと、実質経済成長率が大体0.8%ぐらい、また右から2つ目でございますけれども、1人当たりの実質賃金上昇率というのは1.5%、利潤率としては9.7%、そういった推計結果になったわけでございます。
 14ページでございますけれども、特にこの中の利潤率を使いまして、長期の運用利回りの設定をしております。
 1つ目の点線囲みにございますが、長期の運用利回りを設定するときの考え方でございますけれども、ベースとなりますのは、実質の長期金利というものが基準となります。それを名目値にするために物価上昇率を足しております。さらに、実際に運用するに当たりましてある程度分散投資を行うことによって若干プラスされる部分があるだろうということで、分散投資効果を加算する。その3つの要素を足し算することによりまして、長期の運用利回りを設定する考え方で行ったところでございます。
 この中の実質長期金利をどのように設定したかということが次にございます。これは先ほど御説明いたしましたように、上で推計しました将来の利潤率の見込みが過去の実績に対してどう変化したか、その変化率を見まして、それを過去の長期金利の実績にかけ算する、そういう考え方で設定をいたしております。
 具体的には14ページの下半分に表がございますけれども、この中で順番に申しますと、実質長期金利の過去平均が、実績としての実質長期金利の数字でございます。過去としてどれぐらいの期間をとるかということで、3つのパターンを設定しておりまして、過去25年平均、20年平均、15年平均という3つのパターンで計算をいたしておりますけれども、実績の長期金利が幾らであったか、そして同じ期間の利潤率を計算して平均をとると幾らであったかというのが?でございます。それに対して、将来の利潤率としてどのような数字が見込まれるかを?として設定いたしまして、?と?との比率を?にかけることで将来の実質長期金利の推計値を計算する。こういう考え方をとったところでございます。
 15ページでございますけれども、これは分散投資効果によってどれぐらい上積みが想定されるかということで、いろいろと仮想的な組み合わせを考えまして、有効フロンティアを計算しました。実際に国内債券と同程度のリスクをとって、どの程度上積みが可能であるかを推計いたしましたところ、約0.3%から0.5%程度になるのではないかという推計結果となったところでございます。
 以上はすべて実質の数字ベースでの推計でございますけれども、最終的に名目の数字をつくるためには、物価上昇率を仮定しなければならないわけですが、これにつきましては、16ページにございますように、日本銀行の金融政策決定会合などを参考にいたしまして、その当時の委員ごとの中心値として、大勢として1%程度となっているとされていたことも踏まえまして、21年財政検証の前提としては、長期の前提として1.0%を物価上昇率として設定したところでございます。
 こういったプロセスを経まして、18ページでございますけれども、最終的に経済前提としてどのような設定をしたかをまとめたものでございます。
 18ページの下の表が一覧表になっているところでございますけれども、中心となりますケースは、ケース2、TFP上昇率1.0%の場合でございます。これを見ていただきますと、4つあるうちの左から2つ目のところ、実質賃金上昇率が1.4%から1.6%です。ですから、平均して1.5%程度と想定しています。
 それから、先ほどありましたように、物価上昇率1%と考えまして、名目値としては2.5%を賃金上昇率として仮定しております。
 また、実質運用利回りとしては、2.7~3.5%程度という推計結果になります。一応平均をとりまして、3.1%を実質運用利回りと仮定しまして、名目といたしましては、物価上昇率1を足すことで4.1%という設定をしたところでございます。
 以上、御説明してきましたものは、経済モデルを使っての超長期の設定をどのように考えたかということでございますが、足元からすぐにその数字になることはなかなか現実味のないところでございます。
 19ページ以降でございますけれども、足元の経済前提というのは、そのモデルとは別に、内閣府が定期的に出しております5年から10年にかけての見通しに準拠して設定をしたところでございます。
 21年財政検証は、21年2月に公表したところでございますが、その直前の21年1月に内閣府が作成したものを当時は使ったわけでございまして、内閣府の数字でも、ケースとして3通り設定されております。世界経済が順調に回復するシナリオ、急速に回復するシナリオ、横ばいが継続するシナリオ、この3通りがございましたので、これをモデルにおける経済見通しの3つのパターンにつなぎ合わせるという考え方をとりました。
 このうちの1番目、順調回復シナリオを基本ケースとして想定したわけですけれども、これは19ページの下の表にございますように、想定としましては、世界経済としては混乱を脱して、ある程度順調に回復していくということで、TFP上昇率につきましても、最終的には1.0%まで上昇していくという仮定を出しております。そういう意味で、TFP上昇率につきましては、1%のところでつながっていくという設定となっておりました。
 20ページに表をお示ししておりますが、21年以降、足元の前提、長期の前提ということで、どのような経済前提を設定したかということを一覧表にしてまとめたものでございます。
 3通りございますが、経済中位ケースの名目運用利回りをごらんいただきますと、最終的には4.1%と設定しておりますけれども、足元は1%台ぐらいから出発して、少しずつ上昇して、2020年以降に4.1%になる。そのような前提を置きまして、財政検証を行ったところでございます。
 資料3-1の御説明は以上でございまして、引き続いて、資料3-2でございます。
 以上のような考え方で、平成21年財政検証の経済前提を設定したわけでございますけれども、これにつきまして、各方面からさまざまな御指摘をいただきました。それを資料としてまとめたものが、資料3-2でございます。
 1ページ、2ページ、3ページは、国会の審議におきまして、この経済前提に対していただいた御指摘を列挙したものでございます。
 4ページにございますものは、行政刷新会議の中で、年金の特別会計・制度の在り方ということで審議をいただきましたことがございますけれども、その中でも経済前提等に関する御指摘がございましたので、それをまとめたものでございます。
 5ページにございますものは、GPIFの運営の在り方に関する検討会の報告における御指摘です。平成22年12月にとりまとめが行われましたが、運用目標との関係で経済前提について幾つか御指摘がありましたので、まとめたものでございます。
 6ページですが、社会保障審議会の中に年金数理部会がございまして、これが各制度が行います財政検証とか財政再計算の検証を行う役割を担っておりますけれども、その検証結果の報告の中でも、やはり経済前提に関しての御指摘がございましたので、それをまとめたものでございます。
 これら各方面からさまざまな御意見をいただいておりますが、総じまして、平成21年に設定した経済前提というのは、ちょっと甘いのではないかという御指摘を各方面からいただいたところでございます。
 最後になりますが、5ページのところで、GPIFの運営の在り方に関する検討会からの御指摘として○が3つあります。3つ目でございますけれども、ここで御指摘をいただいておりますのは、年金積立金の運用というのは、年金の制度・財政と密接に関わっている。そういうことで、今後、年金財政の長期見通しに用いる経済前提を議論する早期の段階から、例えばかつての年金資金運用分科会のように、年金制度・財政と運用を一体的に議論する場を国に設ける必要があるという御指摘をいただいたところでございまして、そういったことも踏まえまして、今般このような専門委員会の場を設けさせていただいたところでございます。
 御説明は以上でございます。
○吉野委員長 安部数理課長、どうもありがとうございました。
 これまでの財政計算の基礎となります数字、モデルについていろいろ御説明をいただきまして、我々にとって非常に参考になったと思います。
 これから11時ぐらいまでの間、委員の皆様から財政検証における経済前提の設定とか、あるいは今後の議論の進め方につきまして、さまざまな御意見をいただければと思います。どなたからでも結構です。
 米澤委員からお願いいたします。
○米澤委員 内容に立ち入る前に、最後に御説明がありましたけれども、年金積立金管理運用独立行政法人の運営に在り方に関する検討会報告書の「年金積立金の運用目標について」で3つの提案がございました。今、その中の3番目を説明されたわけなんですけれども、まさにこういう意見が出て、これを受けて、多少ミッションが広くとられてこの委員会が開設されたと理解しています。
 前回は積立金運用の在り方という文言は入っていなくて、経済前提だけだったわけです。その前までの委員会だったんですけれども、その後いろいろ問題があって、昨年、検討会があって、その報告の一部で、今、言ったような提言があったわけなんです。多分それを受けて、我々のミッションも積立金の運用の在り方まで一応議論しましょうということになっていると理解しています。それは私も非常にいいことだと思いますし、こういうものは必要だと思っておりました。
 その際に、GPIFの方も出てきていらっしゃいますので、立場はオブザーバーということで紹介されましたけれども、積極的に意見を言っていただきたいと思います。この背景には、今、ちょっと説明もありましたけれども、多少高い目標が設定されて、GPIFが運用で困ったという経緯もございます。そのときのフィードバックが公式な場としてなかったんです。ですから、恐らくこの場がその公式な場になるかと思いますので、オブザーバーと言いながらも積極的に意見を言っていただきたいと思います。
 ただ、独立行政法人ですから、目標は大臣が与えて、それを受けてやるので、組織上の建付はいたし方ありませんけれども、かといって、できないことを、はい、わかりましたと受け入れることもないわけですので、可能な限り積極的に意見を言っていただきたいと思いますし、今回その部分の役目も是非有効に使っていただきたいと思います。
 最初にそれだけお願いします。
○吉野委員長 御意見どうもありがとうございました。
 植田先生、どうぞ。
○植田委員 経済前提の話です。
○吉野委員長 もし関連のところがあれば、ページ数をいただけるとありがたいです。どこのページかをお願いします。細かいところではないですか。
○植田委員 細かいところではないです。
 皆さんあるいは私も持っていた印象は、ここで想定されているかなり長期間の実質運用利回りがちょっと高過ぎるのではないかという直感だと思います。ケース1というのでいうと、分散効果込みの前の実質長期金利で2%台後半です。実質というのは、物価上昇率を引いたということです。
○吉野委員長 今は18ページですね。
○植田委員 はい。
 こういう長期の金利とか成長率等に関わる経済学の理論として、経済成長論という分野があるわけですけれども、そこで使われるような理論とか、あるいはそれに基づいた数百年ぐらいの長期のデータの結果から見ても、ちょっと高過ぎるという気がいたします。
 そういう意味で、内容に関する話に入ってしまいます。本来、次回以降だと思いますが、そのイントロダクションみたいな形でお話をさせていただいています。
 この計算の中でどこからそういう高い結果が出てきてしまうのかということが次は問題で、もう3~4回拝見したり、御説明を伺っているので、だんだんよくわかってきたんですが、間違ったことを無理にしているわけではないと思います。やっている計算は、今、申し上げました経済成長論の理論を物すごい使うというよりは、非常に簡単な経済の供給サイドに関する仮定を置いて、いろんなパラメータにこれぐらいかという仮定を置いたら、こういう成長の姿、それで実現する金利の姿はこれぐらいであるという計算をされているので、じっと見て、無理があるとすれば、そのうちのどこに無理があるかという作業を向こう2回とかちゃんとやらないといけないと思います。
 今、私が見ていまして、1つ思うのは利潤率のところであります。これは長期的な姿として、人口が減っていくので、労働は減っていくわけです。ここでの仮定では、投資はある種伸び悩んでいくんですみけれども、投資がプラスなので、資本ストックは増えていくという姿が描かれていますので、資本と労働の比率はどんどん増えていくんだと思います。そうしますと、時間とともに利潤率は普通どんどん下がっていく姿になるはずなんです。利潤率が微増の結果が描かれているんですが、それは恐らく全要素生産性が上がっていくところが、時間とともに少しずつ利潤率だけを押し上げる方向に効いて、その相殺でこういう姿になっていると思います。
 ただ、いずれにせよ、利潤率の辺りは、長期金利の計算の仕方を見ても非常にクルーシャルですし、例えば14ページにあります表で、実現した利潤率と実質長期金利というところを見ましても、時間あるいはデータが最近のものになるにつれて成長率は下がってくるんですが、その中で利潤率も実質長期金利も下がってくるという、割と直感的に合うような姿が過去のデータでは表われています。
 そういうことを考えますと、前提として、1つは全要素生産性の置き方です。これはえいやと置くしかないんですが、そこがどうか。それとの関連で、利潤率についてどう考えるかという辺りが1つクルーシャルだと思いました。
 次回以降までに私ももうちょっと考えきたいと思います。
○吉野委員長 どうもありがとうございます。
 今のお話は少しモデルのところにいきましたけれども、植田先生のものに加えますと、やはり総供給の供給サイドだけからのモデルですから、需要が全く入っていないモデルですし、非常に単純なコブ・ダグラス型ですから、トランスログとかいろいろなものが入っていないということもあります。専門の先生方が多いので、また追々議論させていただければと思います。
 川北委員、小塩委員の順でお願いします。川北先生、どうぞ。
○川北委員 1点は最初に発言された米澤委員のところに戻りますが、私が独法としてのGPIFの評価に参加させていただていて思うのは、GPIFとして言いたいことがいろいろあるものの、それを言う場がないということです。GPIFを評価したとして、本当にGPIFとしてそれに対応できるのかどうかすごく気になります。米澤委員がおっしゃったように、実際に運用されているGPIFとしての経済の見方なり、運用の見方なりを少しでも反映させていただく、そういう場としてこの委員会が使えるのであれば非常にいいと思いました。
 経済の前提に関して、気になるところはいろいろありますが、1つは6ページでの労働投入量の設定のところです。外部の公的な機関が推定されたものを入れられているのでしょうが、例えば労働力需給の推計に関して、過去の日本経済の労働需給が比較的いい時期が反映され過ぎているのではないかという印象を受けました。
 また、推計対象はGDPという海外の影響が間接的にしか及ばない日本の生産の話なので、例えば、日本の企業が海外に大挙して進出したときに、労働需給が大幅に崩れる可能性もあるわけです。その辺りのところをうまく反映しないと、賃金の上昇率が実質ベースで非常に高くなり、今後とも実態と合わなくなるのではないか。1つはそういう印象を受けました。
 もう一つ、全要素生産性に関しましては、植田先生がおっしゃったところに、私も疑問を感じました。
 それ以外は後々申し上げる機会があると思います。
○吉野委員長 米澤先生と川北先生から、例えば20ページの経済中位で見ますと、3列目のところの名目運用利回りが2010年ですと1.8となっていますし、今、国債の利回りはたった1.0とか0.9ですから、将来的に4.1となると、こういうものはGPIFさんが幾らやろうと思ってもなかなか大変ではないかと思いますので、是非この会議の中でも御意見があればいろいろ言っていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 小塩先生、どうぞ。
○小塩委員 将来予測というのは非常に難しくて、バイアスがかかるんです。この委員会で精緻に方法論を検討していくことは非常に重要なことだろうと思うんですけれども、人口推計が年明けでないと出てこないということがありますので、それまでにどういう作業が必要かと考えてみました。
 将来推計の仕方をより精緻にする、説得的なものにすることのほかに、現在の経済的なパフォーマンスで、現行の制度がどこまで持続可能なのかということを数量的にチェックする必要があるのではないかと思います。というのは、既に年金部会でマクロ経済スライドをデフレ下でもちゃんと適用するようにしましょうとか、あるいは前回ですと、支給開始年齢の引き上げが必要ですとか、特例措置は取っ払った方がいいですとか、そういう議論がいろいろ出てくるわけですけれども、私も含めてなんですが、皆さん好き放題言っているわけです。しかし、数量的にどういう重みがあるかというのはよくわからない。
 ですから、その重みを知るためにも、あまり予測しないで、過去10年ぐらいでいいと思うんですけれども、現在のパフォーマンスのまま経済が進んだらどうなるかということを一応念頭に置いて、しかも、特例措置はこのままにします、一切手をつけません、デフレ下でも名目の下限は守ります、削りません、支給開始年齢も今のスケジュールのままにしますという形で、どういう状況が起こるのか一応計算していただきたいと思います。それで本当に深刻だったら、数字の裏づけをもって年金部会でも非常に真剣な議論ができると思いますし、年明けに本格化する私たちの作業に際しても、ベンチマークとして我々が共有する認識もはっきりするのではないかと思います。
 以上です。
○吉野委員長 植田先生、どうぞ。
○植田委員 私も前回の年金部会で同じ趣旨の発言をしたんですけれども、結局、今おっしゃった計算で更にいろんなパラメータを動かしたら、例えば今のおっしゃった前提のままだったら破産してしまう、支給開始年齢を後ずれさせればこれぐらいよくなる、マクロスライドをちゃんとやればこれぐらいよくなる、その辺の見取り図をもうちょっとわかりやすくつくっていただけるといいと思います。
○吉野委員長 せっかく今までのモデルがあるわけですから、今までの数字を使って、そのままでいったとしたならば、今のいろいろな前提で、デフレ下でのアジャストメントとか、支給開始年齢とか、同じ状況でどうなるかということをまず示していただくといいのではないかというのがお二人の御意見だと思いますので、もし可能であればやっていただければと思います。
 そのほかにどうですか。西沢委員、どうぞ。
○西沢委員 私もこの経済前提については、前回の財政検証以来、強い不信感を持っていましたので、冒頭、副大臣がおっしゃったことに心が晴れる思いがいたしました。
 進め方と方法論について申し上げますと、進め方は小塩先生が言われたとおり、このまま行くとゴールは次の財政検証になってしまいます。09年の後が14年では遅いので、今、支給開始年齢の話ですとか、マクロ経済スライドの見直しの話をしていますけれども、100年安心の前提に立つのであれば、いずれも必要はないわけであって、財政状況が厳しいからこそ支給開始年齢の話なども出てくるはずであって、順序が逆転していると思います。ですから、暫定的でも結構ですので、小塩先生とか植田先生が言われたようなことをまず出す。財政検証は5年に一度ということにこだわる必要はないと思いますので、正式なものも人口推計が出たと同時か直後ぐらいに出した上で、財政健全化に向けて議論をしていくというゴール、道筋を示していくことが必要だと思います。
 方法論について3つ申し上げますと、1つはモデルの見直しの話がありましたけれども、モデルはかなりきちんとできていると思います。恐らく資料3-1の幾つかにありましたように、不信感が強いというのはプロセスだと思うんです。モデルを精緻化すれば妥当性の高い結論が出るというよりも、どういう委員を選んで、政治的なプレッシャーの中、どういうプロセスで結論を出したかというプロセス自体の透明性が高まりませんと、結論に納得性は備わらないと思いますので、モデルの精緻化という理論的な検討と同時に、プロセスの透明性を高めることが第一に重要だと思います。
 2番目は、モデルの精緻化と同時に、今までのお話を伺っていますと、過去のトレンドを将来に反映させるというプロセスが多かったと思うんですけれども、理論よりむしろマーケットの情報をもっと取り入れることに注力したらいいと思います。マーケットがあらゆる情報を得ながら将来の予測を行っていると思いますので、それが超長金利だと思いますから、それをもっとベースにして、マーケットから聞くという作業をしたらいいと思います。
 3番目、これが最後ですけれども、マクロ経済スライドを導入した後の経済前提の置き方と、導入前の経済前提の置き方というのは違った工夫が必要だと思います。と申しますのも、マクロ経済スライドがなければ、べたっと物価1%、べたっと2.5%と置いておいても構わないと思うんですが、マクロ経済スライドを導入した以上、べたっと1%、べたっと2.5%と置いてしまいますと、必ずマクロ経済スライドが適用できるという計算になってしまいます。平均は1でも2.5でも構いませんが、0になったり、-1になったり、1.5になったり、2になったりという変動を織り込んでいきませんと、だめだと思いますから、マクロ経済スライドの適用が終わるまでの間は、変動を織り込んだ経済前提の置き方をする。終わるのが見込まれた時点以降はべたっと置けば構わないんですが、前の年金部会に入っていたときにも申し上げて、できないということだったんですけれども、今回はそれを是非お願いしたいと思います。
 以上です。
○吉野委員長 わかりました。
 米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 今のお二方のシミュレーションしてくださいということは、私も必要だと思いますが、そのときに、今、西沢委員からお話があったように、1%の物価上昇率があるわけです。ですから、そこではちゃんとマクロ経済スライドが働いているわけです。ということは、実質は残しておいて、物価上昇率のところをもう少しいじって下げて、発動しないような格好で計算するということですね。
○西沢委員 例えば平均で物価が1%でも、くどいですけれども、0になったり、2になったり、0、2、0、2で平均1%だとすると、単純に計算すると、マクロ経済スライド適用期間が倍になるわけです。今のマクロ経済論はそういう性格だと思いますので、それを織り込んで、このマクロ経済スライドをどう設計したらいいかとフィードバックしていった方が、マクロ経済スライド見直しの議論が深まると思いますし、実態経済を反映していると思います。
○吉野委員長 米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 細かい点は実際にやる方にお任せしますけれども、私は前の方に結構関わったので、そのときの反省も含めてですが、実質のところはそんなに違和感はないと今でも思っています。名目のところで、物価上昇率プラス1%を乗せたので、そこですべてがくるった。実質にもう一回戻してやって、例えばそこのところに物価上昇率0%とか、ないしは-0.5%をやると、名目の数字もそんなに違和感ない数字が出てきます。
 ただ、それはどう違うかというと、そこでもってマクロ経済スライドが発動したり、発動しなかったりするので、そこのところを見ていくことは、非常にやる価値があると思っております。ですから、実質のところはいじらないで、今、言った名目のところを少しいじっていただいて、要するにスライドが発生しないでどうなるかというところを見ていけばいいと感じます。
 それから、細かい話になるんですけれども、植田委員が言った資本ストックの伸びですが、TFPではなくて、資本減耗率ではないでしょうか。ここは私なども実感がわからなくて、これはぽんと置いてあるんですけれども、ここで随分変わってしまうんです。
○植田委員 確かに資本の伸び率は、先へいくと急速に下がってきていまして、減耗率次第です。
○米澤委員 そこの数字も効いていると思います。
○吉野委員長 ありがとうございました。
 先に小野先生、それから、山田先生お願いします。
○小野委員 私はちょっと違った観点から申し上げたいのですが、2004年の財政再計算の経済前提を策定する時期というのは、いわゆるパーフェクトストームの真っただ中にあったのではないかと思います。それから、前回の2009年の財政検証の設定の議論を始めたときは、かなり経済の状況がよかったのですが、例のサブプライム問題が発生するちょっと前だったと思います。ですから、教訓としては、この議論を始めると、やはり1年、2年という話になるわけで、その間に今の社会のマインドと比べて大きく変動する可能性がある。ですから、楽観的過ぎてもいけませんし、逆に悲観的過ぎてもいけないのではないかと思います。設定したものが、そのとおりにいくことはまずあり得ないと思いますので、そういった批判なども受けながら、その辺は十分に心していきたいと思います。
 もう一点は、国の財政の見通しも一方で立てられているわけで、基本的に社会の仕組みとして、年金制度というのは、経済なり社会システムの上に乗っている制度だと思われますので、年金だけ足元の情勢とかを反映したとしても、国の財政自身がそういう見通しに立っていないとすれば、政府全体としては、ややどうかという気持ちを持っております。
 長くなって恐縮ですが、1つ質問は、2004年の財政再計算と今度の2009年の財政検証のときに、今、御説明がありましたいろんなパラメータの設定がありまして、私が拝見すると、かなり変わっているのではないかと思います。シミュレーションを作成された当局として、大きく変わってしまったパラメータについて、どんな感触や印象などをお持ちになったか。大ざっぱで結構ですから、その辺りを教えていただきたいと思います。
○吉野委員長 ありがとうございます。
 今のことに関しては、また後でよろしいですか。
 山田先生、植田先生、どうぞ。
○山田委員 先に済みません。そもそも論なんですけれども、先ほど財政検証のようなものを今の足元の数字でやったらどうかという話がありました。そもそも論として、この専門委員会は、資料1で最初にお示しいただきましたように、年金財政における経済前提や積立金運用の在り方ということで、財政検証がどうあろうと、専門的な観点からして、どういう前提を置くべきかということにあります。私個人としては、戦線を拡大するということも非常に関心があるところではありますけれども、何を話し合うべきかというのは明確にした方がいいと思います。
 そういった意味で、植田先生とか川北先生、また委員長からもありましたように、経済学としてはどういう理論に基づいて、どういう経済前提を置くのがいいのか、もしくは経済前提としてどの指標を選び出すのがいいのかということを話し合うのが、まず第一にあるのではないかと思います。財政検証が重要ではないということでは決してありませんけれども、その結果がどうであろうと、どういう前提を置くべきかというのが第一にこの専門委員会の目的としてはあると理解しておりますので、そこら辺を共通の委員の理解として、ここで確認しておいた方がよろしいのではないかと思いました。
 以上です。
○植田委員 私も全く同じポイントを申し上げようと思って、議論がちょっと混乱して、計算をいろいろした方がいいというときの中身は2種類あります。マクロの変数、成長や金利に関する前提をどう置くか、それに関する計算という部分と、それがあったときに年金財政がどうなるかというシミュレーションがありますので、この両方に関する議論が出ていて、ただ、今、出ましたように、この委員会のマンデートは、どちらかというと、前者ということですか。
○吉野委員長 そうです。前者です。ですから、マクロ前提として、どういうことを入れていったらいいかということです。
○山田委員 たとえば経済成長論として、どういうことが考えられるか、考えるべきかということです。
○吉野委員長 ただ、結果的にそれがどう年金財政に影響を与えるかというところを見るための前提であるということは、間違えないわけです。
○山田委員 それが影響を与えるとは思いますけれども、そういった影響があるから、どういうふうになるのかというフィードバックは考えずに、そもそもこちらの前提としては、専門家としてはこう置くべきではないのかということを話し合うべきところだと理解しています。
○吉野委員長 それが最初のミッションであると思います。
○米澤委員 シミュレーションは、年金部会にお願いするのが筋なのかもしれないと思います。
○吉野委員長 そうですね。
 もう一つの議論のところは、こういう前提は関係なしに皆さんと御議論したいということで、小塩先生とか植田先生より、そういう前提だったら、どういうふうになるのかということを知るべきではないかとございました。それはごもっともであって、もう一つのところできちんとやるべきだと思います。
 まだ御意見をいただいていない武田先生から何かございましたら、お願いします。
○武田委員 基本的に先生方のご発言に賛同する部分が多いため、繰り返しになると思いますが、私が専門委員会に参加させていただくにあたり、問題意識を持っていることは2点ございます。
 1点目は、今、大分議論が出ましたが、現実的な経済前提をどのように考えていくのかです。マクロ経済理論の視点や、現状の日本経済が置かれている環境を踏まえて見直す必要があると思います。資料などを拝見したところ、経済前提を推計する際の基本的な考え方自体に私は大きな違和感はございませんけれども、結果として出された長期の運用利回りの4.1%という数字は、やはり違和感がございます。つまり、途中の仮定で置いている数字、あるいは用いている係数、その辺に見直すべきところがあるのではないかと思います。
 例えば、労働力参加率については、労働参加が進むというケースを前提に置いておいていますが果たしてそれでいいのか、あるいはほかの先生方が御指摘されていたようなところについても、私も同様に多少疑問に感じている点がございます。
 もう一点は、先程、小塩先生がおっしゃった点です。確かにこの専門委員会の目標は、経済前提をしっかり見直すこと、さらには今回目標として加わった運用面の2点だと認識しております。
 ただ、一方で、今回なぜ専門委員会がこのタイミングで行われるかといえば、本来5年に一度のところ、税と社会保障の一体改革を実行するにあたってベースとなる財政検証をきちんと行わなければならないということにあると思います。年金部会で議論されている改革を進めるに当たっては、きちんとした数字の前提を用いて比較ができるようにしないと、議論が前に進まないという現実もあります。
 第1段階としてマクロ経済スライドの特例水準を戻す。第2段階として、マクロ経済スライドの自動調整をデフレ下でも発動する。第3段階として、現行の支給開始年齢引上げのスケジュールの前倒し、第4段階として、更に支給開始年齢を引き上げたらどうなるか。この4つの段階、それぞれについて現在の枠組みの中で比較するというのは、どちらの委員会、部会で行うにしても必要な作業であることには変わりはないと感じています。
 以上です。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
 皆様から御意見をいただきましたが、まずこの委員会の前提としては、マクロをどう見ていくかということが最大の前提で、何人かの方々からは、せっかくここにモデルがあるんだから、今のモデルを使ったままでいいから、それがどういう影響を与えるかということを、ここの委員会か親部会のどちらかできちんと議論をしていただきたいという御意見だったと思います。
 それでは、副大臣はここで御退席でございます。どうもありがとうございました。
○辻厚生労働副大臣 ありがとうございました。よろしくお願いします。
(辻厚生労働副大臣退室)
○吉野委員長 いろいろ御意見いただきましたけれども、次の議題に移らせていただきたいと思います。「(3)年金積立金の運用の現状について」原口参事官から資料4を使って御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○原口大臣官房参事官 それでは、資料4-1をお開きいただきたいと思います。
 1ページ目には、年金積立金の意義についての御説明を記載してございます。
 将来、高齢者世代の割合が高まることから、保険料のうち年金給付に当てられなかったものを積立金として運用している。これで年金財政の安定化に活用されるということであります。
 水準につきましては、平成16年の関係法の改正において、おおむね100年後に給付費の1年分程度、支払準備金程度を保有するよう設定されているということでございます。
 2ページはイメージになります。御承知かと思いますが、グラフを書いてございます。
 上に書いておりますが、平成16年改正後は、今後、おおむね100年間にわたり財政が均衡するまで給付水準を自動調整する仕組みになりました。そして、おおむね100年後、2105年度に支払準備金程度の保有となるよう積立金水準の目標を設定するということでございます。
 グラフを見ていただきますと、右側、平成117年度で1年分程度の積み立てがなされるよう、設定されているということでございます。
 また、足元のところを見ていただきますと、当面は年金積立金が徐々に取り崩されていく時期に当たっており、また保険料が段階的に引き上げられておりますので、これにより収支の状況が変わりまして、やがてまた積み立てを行っていくようになっているということでございます。
 1ページ目に戻りまして、管理運用組織の経緯でございます。
 平成12年度までは全額が資金運用部に預託される仕組みでございました。
 平成13年度から17年度までは、財投改革により厚生労働大臣から直接、昔の法人でございます年金資金運用基金に寄託し、管理運用するという方式になりました。この時点においては、厚生労働大臣が資産構成割合を示しておりました。なお、この法人は理事会の方式をとっており、理事会で意思決定を行っておりました。
 平成18年度以降でございますが、運用の組織に関しまして、専門性を徹底し、責任の明確化を図る観点から、新たに年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFと略称しておりますが、これを設立し、ここで管理運用を行っているということでございます。独立行政法人でございますので、厚生労働大臣が中期目標を示し、GPIFが資産構成割合を含む中期計画を決定する仕組みでございます。また、意思決定は理事長が行うというのが独立行政法人の仕組みでございまして、重要な運用関係などの意思決定に当たっては、運用委員会の意見を聞く、議を得るという仕組みになっているところでございます。
 3ページをごらんいただきたいと思います。今、文章で申し上げました事柄を右側に図にして示してございます。
 まず図の上の方で、厚生労働大臣が役割としまして、年金制度の設計、年金財政の検証といったことを行います。また、独立行政法人評価委員会に諮りまして、中期目標を設定いたします。
 これを受けて、下の年金積立金管理運用独立行政法人でございますけれども、金融・経済等の専門家で構成される運用委員会において審議を行い、理事長が株式等の投資割合の決定をします。これは中期計画の中で行われることになります。これを始めとしまして、運用受託機関の管理あるいはインハウス運用の実施といった運用に関わる業務を行う、その意思決定を担うことになっております。
 なお、この独立行政法人は、現在、運用受託機関として、信託銀行や投資顧問会社を合計77ファンド採用して、運用しているところでございます。
 それから、左側に記載しておりますけれども、年金積立金全体の規模でございますが、平成22年度末で約122兆円でございまして、このうちGPIFが管理・運用する資産額は、その時点で116兆円でございます。資産の構成割合は国内債券が7割、内外債券では約8割でございます。
 下にポートフォリオが書いてございます。国内債券67%、国内株式11%等の資産構成割合で運営をされます。このポートフォリオの期待収益率は、当初設定されました時点で3.37%、名目ではこういう水準と考えられております。
 上の部分でございますが、賃金に対する実質的な運用利回りの確保を目的として運用いたしております。そのほか専門性の徹底及び責任の明確化を図り、運用に特化して独立行政法人において運用しているということでございます。
 下の方に運用実績を書いてございます。自主運用が開始されました平成13年度から22年度までの累積収益につきましては、額で23兆円、平均収益率は1.6%程度でございます。
 4ページには、参考までにこの法人の概要を記載してございます。説明につきましては、重複する点もございますので、5ページへまいりたいと思います。
 厚生労働大臣が示す中期目標と、実際に資産運用を行う際の基本ポートフォリオとの関係でございます。5ページでは、財政再計算あるいは財政検証における長期の経済前提における運用利回りを書いてございます。
 左側、16年の財政再計算のときの前提におきましては、長期の前提としまして、平成21年度以降、名目での運用利回りが3.2%という設定になってございます。3.2%の内訳でございますが、物価上昇率が1.0%、実質長期金利が2.0%、合わせて長期の名目金利が3.0%となってございます。また、物価上昇率を除いた実質賃金上昇率は1.1%、名目では物価分を合わせまして2.1%になります。そして、名目の賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りとして1.1%を設定してございます。これは長期金利と比較いたしまして、0.2%上乗せしてあるわけでございまして、国内債券以外で株式等に分散投資をすることによって、0.2%程度更に長期的な利回りを確保できるという考え方で設定をされております。
 右側でございます。前回の平成21年財政検証の際の前提でございますけれども、長期の前提としましては、平成32年度以降が設定されております。名目運用利回りは、先ほども出ましたが4.1%という水準であり、この数値の内訳ですが、物質上昇率が1.0%、これを上回る実質長期金利が2.7%、合わせて名目長期金利は3.7%という水準でございます。名目長期金利に加えまして、分散投資で0.4%を確保するということで設定されていまして、全体の運用利回りは4.1%となってございます。また、賃金上昇率でございますが、物価上昇率を上回る実質賃金上昇率が1.5%でございまして、これを上回る実質的な運用利回りとしましては、1.6%という設定になっていたところでございます。
 このような財政再計算あるいは財政検証での前提を受けまして、中期目標、更に基本ポートフォリオを設定しているわけでございますが、6ページの左側でございます。平成18年度から21年度までの第1期の中期目標期間における中期目標やポートフォリオでございます。
 中期目標の抜粋をここに書いてございますが、運用の目標といたしまして、年金財政は実質的な運用利回り、賃金上昇率を上回る運用利回りが確保される限り、基本的には影響を受けないことから、年金財政上の諸前提における実質的な運用利回り、5ページで申しますと1.1%になります。これを確保するよう、長期的に維持すべき資産構成割合を定め、これに基づき管理を行うこと。
 ポートフォリオの策定に関しまして、ポートフォリオは、年金財政上の諸前提と整合的なものになるよう策定することとし、その際、以下の点に留意すること。年金財政上の諸前提における実質的な運用利回りを確保するような資産構成割合とすること。このように目標で設定をしておりました。
 これを受けまして、策定された中期計画の中の基本ポートフォリオについては下にあるとおりで、先ほど3ページで御紹介したポートフォリオでございます。
 それから、第2期の中期目標期間、平成22年度から26年度までの期間でございますが、こちらの時期におけます中期目標ですけれども、GPIFにおきましては、当初の21年財政検証の前提を踏まえた基本ポートフォリオについての検討をいただいたところでございます。
 最終的に中期目標につきましては、運用の目標のところですが、今後年金制度の抜本的な見直しを予定しているとともに、年金積立金管理運用独立行政法人の運営の在り方について検討を進めていることから、この運用目標は暫定的なものであることに留意し、安全・効率的かつ確実を旨とした資産構成割合を定め、これに基づき管理を行うこと。その際、市場に急激な影響を与えないこと。そういうことで、数値での運用目標を示すことは行わなかったということでございます。
 こうしたことを受けまして、現在、第2期の中期計画において策定されております基本ポートフォリオは、従前と同じものが設定されているということでございます。
 7ページでございます。年金積立金の運用収益の状況でございます。
 左下に書いてございますが、これは年金積立金全体、ですから、平成13年度から財投預託で運用された資金がまだあった時期につきましては、その部分を含めました年金積立金全体での運用収益でございます。
 ごらんいただきますと、平成22年度の段階で累積の収益額につきましては、棒グラフでございますが22.6兆円、累積の10年分の収益率では16.80%、単年度の収益率をごらんいただきますと、上下してございますが、22年度におきましては-0.26%という若干のマイナスであったという結果になっております。
 8ページでございますが、市場運用における収益率を参考に書いてございます。先ほどのポートフォリオにありました各資産、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式のそれぞれの年度ごとの収益率をお示しできるよう、参考までに付しております。
 右側の方に直近5年間あるいは10年間の収益率を書いてございますけれども、これはGPIFにおける市場運用に限った数値でございますので、7ページとベースが違いますので、御指摘申し上げておきたいと思います。
 9ページでございます。年金積立金管理運用独立行政法人の運用状況でございまして、GPIFにおきましては、運用状況を四半期単位で公表し、年度で詳細なディスクローズを行うというやり方をとってございます。
 左上の表に四半期ごとの収益状況を書いてございますが、年度通期では-0.3%、約-0.3兆円という運用の結果でございました。
 また、真ん中のところには、22年度における資産別の収益額の棒グラフを書いてございます。ごらんいただきますと、国内債券が+1.5兆円、国内株式が-1.3兆円、外国債券-0.7兆円、外国株式+0.3兆円、資産全体では-0.3兆円という結果でございます。
 そのほか年度末時点での運用資産額、あるいは資産別の収益率などを記載してございますので、御参照いただければと思います。
 10ページにつきましては、四半期ごとに公表しているということでございますので、本年度も既に第1四半期の運用状況を公表してございますので、ここに付けさせていただきました。
 左上をごらんいただきますと、23年度の第1四半期においては+0.2%、約0.2兆円のプラスであったという結果となってございます。
 11ページでございます。運用収益の結果につきましては、年金財政に与える影響を毎年度検証する作業を行っております。
 17ページに関係の条文がございますので、一番後ろのページになりますが、17ページをごらんいただきたいと思います。年金積立金管理運用独立行政法人法というのがGPIFの設置根拠の法律でございます。
 第28条でございますけれども、見出しで年金財政に与える影響の検証等とございまして、厚生労働大臣は、毎年度年金積立金の運用が年金財政に与える影響について検証し、独立行政法人通則法第32条第1項の規定による評価に資するよう、厚生労働省の独立行政法人評価委員会に報告しなければならない。こういう規定がございまして、年金財政に与える影響を検証することになってございます。
 11ページは22年度に対する検証でございます。
 ?の平成22年度の欄をごらんいただきまして、運用実績が真ん中にございますが、名目運用利回りで-0.26%、先ほどございましたとおりの運用の利回りでございました。そして、22年度における名目賃金上昇率は0.68%でございましたので、これを利回りから差し引きまして、実質的な運用利回り、名目賃金上昇率を除いた利回りにつきましては-0.93%という結果でございます。一方、財政検証における平成22年度の設定でございますが、先ほどの財政検証の資料にございましたとおり、22年度におきましては、設定されております利回りが-1.58%でございましたので、差し引きで、この年は結果的に0.65%財政検証上の前提を上回っているので、この年の運用が年金財政に影響を与えていることにはならないという検証を行ってございます。
 12ページからは、内外のほかの年金積立金の運用の状況の資料でございます。左側から幾つか公的な年金運用組織の運用状況についての資料を掲げてございます。
 左側は国家公務員共済組合連合会でございまして、資金規模、目的等を書いてございますが、資産構成割合をごらんいただきますと、国内債券が80%でございます。
 右側の厚生年金・国民年金とございますのは、GPIFの運用でございまして、先ほどの基本ポートフォリオです。
 以下、地方公務員共済組合、企業年金連合会ということで、おおむね左側から国内債券の割合が高い順に配列させていただきました。
 これらの最近5年程度の運用実績を下に書いてございます。各年度ごとに横でごらんいただきますと、平成18年度におきましては、いずれもプラスの収益率です。収益率につきましては、右側の組織ほど高い収益率になっている傾向がございます。
 19年度はいずれもマイナスでございまして、おおむね右側の組織ほど運用収益が低い、マイナスが大きい。
 20年度も同じような傾向になっています。
 21年度は、またいずれの法人もプラスでございまして、おおむね右側ほどプラスが大きいという状況でございます。
 これは勿論資産の構成割合で、国内債券、リスクが比較的小さい資産が大きいところほど、プラスについても、マイナスについても振れが小さいことが表われているところでございます。
 そして、過去5年間あるいは10年間の平均のデータを下に記載してございますので、御参照いただければと思います。
 13ページでございますが、外国の年金基金との比較を若干記載してございます。
 資産規模につきましては、いずれも外国の公的年金基金で、著名な大規模なものを掲げておりますけれども、アメリカのCalPERSで19兆円、カナダのCPPIBで13兆円等とございまして、一番右側の日本のGPIFにつきましては116兆円、国際的に見ても大変大きな規模の資金運用でございます。
 22年度に限りましての運用成果は、通貨の違い、経済情勢の違い等が各国でございますけれども、このような運用結果になってございます。
 資産構成をごらんいただきますと、いずれの外国のファンドにおきましても、株式での運用割合がかなり高い。日本と比べましても、外国では株式運用に重点を置く傾向があると言えるかと思います。
 14ページは、諸外国の公的年金積立金の運用につきまして、幾つかの前提的な組織の結果、運用実績を記載してございます。
 カナダやスウェーデンにつきましては、上にございましたとおり、株式比率あるいは外国資産の比率が高いということがございまして、運用収益の動向を下のグラフあるいは表でごらんいただきますと、毎年度の騰落は非常に大きな数値になっているところでございます。
 一方、米国には全額非市場性の財務省証券で保有する大きな基金がございまして、こちらの運用収益につきましては、下の米国の欄をごらんいただきますと、かなりコンスタントな形で安定的な運用収益になってございます。
 このようなファンドの例があるということでございます。
 これを含めまして、15ページには諸外国の年金基金についての資料を記載させていただきました。必要がございましたら、参照していただきたいと思います。
 資料4-2でございます。「年金積立金運用に関する主な指摘事項」でございまして、最近いただきました幾つかの指摘事項をまとめております。
 1ページをごらんいただきたいと思います。平成22年12月にとりまとめていただきました、GPIFの運営の在り方に関する検討会の報告でございます。
 こちらにおきましては、さまざまな御議論をいただきまして、年金積立金の運用の基本的な考え方としましては、年金積立金は老後の給付に当てるための重要な資産。年金制度や年金財政との関係等を考慮しつつ、長期的な観点から安全かつ効率的な運用が重要。こうしたことを御確認いただきました。
 次の運用目標のところでございますが、名目運用利回りについて、足元の経済実態から見て高過ぎる。
 2つ目には、リスクについての考え方も併せて示すことが重要。
 3つ目には、運用利回りの具体的な示し方について、賃金上昇率を一定程度上回る利回りという考え方と、長期金利を一定程度上回る利回りという考え方の両論がある。こういった事柄の御指摘をいただきました。
 このほか2ページのところでは、法人のガバナンスの在り方、あるいは年金積立金の運用手法、運用対象について御指摘いただいております。
 3ページでは、運用対象の資産についての御指摘などをいただいたということでございます。
 4ページですが、こちらは民主党の財務金融部門の役員会で、今年になってまとめられた論点でございまして、先ほどの検討会の報告と共通するような事項も多数含まれてございます。
 GPIFの運営体制に関わる事項、あるいは運用方法といったことについて御指摘をいただいているということでございます。
 6ページでございますけれども、今年8月に参議院の財政金融委員会におきまして、平成23年度における公債の発行の特例に関する法律案の審議の際に附帯決議をいただいておりまして、この中で1点関連する事項がございます。国際的な金融情勢が不確実さを増す中、公的年金の運用に当たっては、安全性の高い運用を基本とし、適切な資産負債管理(ALM)を行うこと。こういう御指摘をいただいているところでございます。
 以上、駆け足で御説明をさせていただきました。
○吉野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、残り10分か15分ぐらいで、ただいまの御説明に関しまして、御意見あるいは御質問がございましたら、受けさせていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 川北委員、どうぞ。
○川北委員 1点質問ですが、今日、最初にいただきました資料の専門委員会の検討の項目として、運用目標と基本ポートフォリオの関係などと書いてあるのですが、どこまでGPIFのポートフォリオの議論をすべきなのか。単に経済の前提が基本ポートフォリオにどういう影響を与えるのか、その程度でとどめるべきなのか、もしくは更に突っ込んだポートフォリオの在り方を議論すべきなのか、その辺りを教えていただきたいと思います。
 もう一点、これはポートフォリオのところと大いに関係しますが、現在、先ほどの説明にありましたように、GPIFのポートフォリオは債券、特に国債が大半を占めているわけですが、そういう中で経済の見通しに関して、いくつかシナリオを立てて議論をしないと、かなり無理があるのではないか。前回は全要素生産性のところだけシナリオを立てられているわけですけれども、今回は例えば経済活動が金利にどういう影響を与えるのかとか、極論をすれば、今、話題になっているように、日本の国債がある意味ではデフォルトするのではないか。デフォルトはともかくとして、そういうところまで踏み込んだシナリオ、ある程度世界経済全体の流れをシナリオの中に組み込んで議論をしないと、極端に悲観的もしくは楽観的な、そのときの状況に引っ張られた想定になってしまう危険性が結構あるのではないかと思いました。
○吉野委員長 ありがとうございました。
 今のGPIFのポートフォリオの中身までというのは、事務局の方、いかがでしょうか。
○原口大臣官房参事官 私から答えさせていただきます。
 資料4-2で御説明しました中でも、1ページ目にございますように、年金積立金運用の在り方につきまして、幾つか大きなところでの御指摘をいただいているところでございます。運用利回りを中期目標上どのように示すのか。平成17年のときに、賃金上昇率を一定程度上回る実質的な運用利回りの確保という示し方を行っているわけでございますけれども、まずは、ここにつきましての御指摘を受けて、どのように考えればいいかということなどを追って議論いただければと思っております。
 基本ポートフォリオそのものにつきましては、法律上、中期計画の中で策定するものでございますので、直接これをこちらで御検討いただくことはございません。
○吉野委員長 ありがとうございました。よくわかりました。
 ほかにございますでしょうか。小塩先生、どうぞ。
○小塩委員 今までマクロの経済前提と運用利回りの話は、必ずしも一緒に議論されていなくて、別々の枠組みで議論されていた面があったのではないかと思うんですけれども、今回はこういうふうに専門家の人たちが一堂に集まって、マクロの話と運用利回りの話を同じ土俵の上でやることになりましたので、それは非常にすばらしいことだと思います。
 それは結構なんですけれども、マクロの話をずっと積み上げて運用利回りの予測をしても、なかなかうまくいかない。実態と離れてしまう状況が結構あると思います。ですから、マクロの経済前提とリンクさせるというのは非常に重要なことなので、是非やっていただきたいと思うんですけれども、それと同時に、実際の金融市場の動きを見据えることが必要ではないかと思います。市場に参加している人たちが、例えば将来30年とか40年どういうふうに予想しているのかを見ないと、実際の運用計画を立てるときも、何か現実離れしたことが起こるのではないと思います。
 具体的にいいますと、例えば30年国債の利回りは今どうなっているのか。それとマクロの前提から出てきた運用利回りの数字はどういう関係にあるのか。そういうものはチェックしておく必要が同時にあるのではないかと思います。
 それから、先ほど山田委員が私たちのミッションについて御意見を述べられました。私は大賛成で、つけ加えることはないんですけれども、あえて私から言いますと、モデルがあるからいろんなシミュレーションをしていいのではないか。それは私の個人的な意見です。
 もう一つ、今までの財政再計算と現在の財政検証は質的に違うのではないかと思います。現在の財政再計算には、2004年改正以降の話なんですけれども、もちろん将来見通しをより正確にすることは重要なんですが、それと同時に、リスク管理みたいな役割があるのではないかと思います。今のまま走って果たして大丈夫なのかを常にチェックしておくということが、正確な将来見通しを立てることと同時に必要になってくるのではないかと考えていますので、あえてそういうことを先ほど提案させていただいたということです。
 以上です。
○吉野委員長 ありがとうございます。
 今、御指摘のように、金融市場の動向がどうかというのは、運用に非常に影響しますし、最近の10年間、構造変化がすごく起こっていますから、今でもギリシャの状況がどうなるかとか、先ほど川北先生がおっしゃった安全資産と思われていた国債が、ヨーロッパでは安全資産ではなくなっているわけですから、そういうことも含めて大きな構造変化も考えながら、この委員会も考えていきたいと思います。ありがとうございます。
 西沢先生、米澤先生、お願いします。
○西沢委員 積立金運用の在り方を考える際に、情報が不足しているといいますか、足りないと思うのは、120兆円の積立金が多いのか、少ないのかがよくわからないんです。これを相対的に評価するためには、給付義務の現在価値の計算が必要だと思うんですけれども、この情報がないので、絶対額としては多いですが、給付義務の現在価値に引き直すと実は物すごく少ないわけで、そうした情報の中で積立金の規模を評価しませんと、果たして安全運用していいのか、あるいは株式のリスク資産に投資していいのかというのは評価がつきにくいと思います。企業年金ではそうであるように、給付義務の現在価値、揮発性債務の中で積立金の規模が今どうあるのかといったところから、積立金に取り組むべきだと思うということが1つです。
 あと、今回が最初ですので確認なんですが、運用の在り方というときに、基本ポートフォリオだけを定めるのか。資料の12ページ、13ページを見ていて、もう少し情報がほしいと思ったのは、これは年度末の資産構成残高が出ているだけで、期中どんな売買をしていたかという情報がありません。頻繁に売買を回転しながら、これだけの利回りを得ていたかどうかといったこともありますので、そういった運用方法といったときに、基本ポートフォリオという骨格だけを定めるのか、日々の売買など運用方法までに踏み込んでいくのか、それは別途どこかでやるのかといったところも教えていただきたい。
 最後に質問ですけれども、国共済や地共済では貸付金というものがあって、多分組合の方に対するローンではないかと思います。
○吉野委員長 住宅ローンです。
○西沢委員 そうですよね。これは利回りがどれぐらいになっているのか、蛇足ながら教えていただければと思います。地共済などはある程度の規模がありますので、これも利回りに影響しているかと思います。
○吉野委員長 今のことに関しまして、事務局からもしお答えがあればお願いしたいと思います。
○原口大臣官房参事官 先ほども申し上げましたけれども、まずこの専門委員会で御検討いただく必要があると思いますのは、基本ポートフォリオ作成、そのまた前提となります中期目標でどのように目標を示していくかでございます。これが財政検証そのものとも関わる事項でございますので、これをどのように示していくのかという大きな事項について御検討をお願いしたいと思っております。
 基本ポートフォリオの作成、更にはどのように投資行動をとっていくのかという具体的なレベルのことにつきましては、GPIFの中で御判断、検討いただくべき内容が多いだろうと思ってございますので、この専門委員会では、運用関係としましては、まずはこの運用目標をどのように示すのかという大どころのことを議論いただきたいと思っております。
 それから、国共済などの貸付金の利回りという御指摘がございました。ここは調べればわかると思いますので、確認して、御説明できるようにしておきたいと思います。
○安部数理課長 御指摘いただいた給付債務の現在価値ですが、財政検証の際の数字としては給付債務の額、また過去期間と将来期間を分けたものはお示しをしております。ただ、もうちょっと情報開示の程度に改善の余地があるとか、もし御意見がございましたら承りまして、すぐに改善するというのはなかなか難しいわけですけれども、今後、私どももより改善をするように努力していきたいと思っております。
○吉野委員長 米澤委員、どうぞ。
○米澤委員 今の点に関しまして、どこまでがミッションかということで、事務局の御説明である程度わかったんですが、実際にGPIFで私が運用の委員をしていたときに、年金財政の負債のことがわからないと、ポートフォリオも決めにくい。今、西沢委員がおっしゃったことと関わりがありますし、最後に御説明のありましたように、ALMを行うことという文言があったんですが、まさにその点で、ある意味ではGPIFは負債の方は見なくていいと言われているような感じもして、でも、近々取り崩す額が増えてくるのでということで、そこのところはあいまいだったんです。ですから、同じポートをつくるにも、負債のところがどうなっているかによって、ポートフォリオの話は決定的に違ってくるわけです。そこのところをここが担うのかどうかわからないんですけれども、少なくとも現場の方としては、十分な情報が与えられるようにお願いしたいと思います。
 どこかの公表データを見ればいいといえば、それまでかもしれませんけれども、GPIFの運用の専門委員会は専門家がいらっしゃいますので、ALMをやれと言えばやれる方もたくさんいらっしゃる。ただ、やらなくていいという感じだと思っているんですけれども、そこのところは年金財政にとっても余りいいことではないと思いますので、この場でないとしても、うまく担保するような格好でお願いしたいということが1点です。
 もう一つは、これもここではないんでしょうけれども、植田先生が座長をされていた在り方のところで、まず最初にいろいろ怒られていたのは、リーマンショックのときも含めて、GPIFはポートフォリオを動かしていなかったのではないか、何をやっているんだということで怒られたんです。ただ、実際に動かす場合、法律的にそんなに自由度は高くないわけですし、結構大変なんです。ただ、法律的には、GPIFの方で必要があれば動かせるという理解でよろしいんでしょうか。そこのところはこの委員会なのかどうかわからないんですけれども、何かお手伝いができるのか、できないのかということをお聞きしたかったんです。最後の御質問は、ポートフォリオの中身です。目標は変わらなくても、中身を変えるときには、GPIFだけでできるのかどうか。そこの定義をお知らせいただきたいと思います。
○吉野委員長 米澤先生、このミッションというのは、基本のポートフォリオの前提となるマクロをどうするかということなので、そこを忘れないでいただきたいと思います。
 今の米澤先生のことに関しまして、事務局あるいはGPIFの方からコメントはございますか。
○原口大臣官房参事官 先生がよく御承知のところでございますけれども、基本ポートフォリオそのものにつきましては、中期計画で策定し、大臣の認可を受けるという仕組みのものでございますので、そういう意味で、それそのものを動かすことは、単独の判断ではできないという仕組みでございます。
 ただ、他方で、ポートフォリオにつきましては、ある程度乖離しながらという幅が認められているわけでございます。あとはその幅を投資判断で動かすことの是非になるのではないかと思いますけれども、この点につきましては、基本的にはそのように基本ポートフォリオというのは、機動的に資産構成割合を変えて、収益を追求するというやり方は一般的なものでなく、例えば先ほどのGPIFの在り方検討会の報告でも、運用は長期的なものであることが確認されていると考えております。
○米澤委員 それは十二分に承知しているんですけれども、動かせない状況と、必要があれば動かせるという状況では大分違うと思うんです。私はGPIFが動かせると理解していて、ただ、そのときは相当手続が大変ですということです。少なくとも動かしたいときはGPIF側でできて、大臣の承認を得ればできるという判断いいんでしょうか。全く動かせないとなれば、これは幾ら文句を言われても、動かせないものは動かせないんだと言えばいいわけなんです。
○原口大臣官房参事官 大臣の認可を受けて変えることは、制度的にはあり得るわけでございます。
○吉野委員長 小野委員、どうぞ。
○小野委員 私は年金数理などをやっている関係で、その辺りに興味がありました。
 まず先ほど数理課長が御指摘のとおり、2004年財政再計算と2009年財政検証、それぞれについては、バランスシートはそれぞれの報告書の中に載っていまして、基本的に債務に対して積立金がどれぐらいあるかといったら、それはそんなにあるわけがないということだと思います。これは例えばアメリカでもそうですし、スウェーデンもそうです。スウェーデンですと、債務に対して7分の1か8分の1ぐらいの積立金しかないという話だったと思います。
 資料の中で2ページをごらんいただくとよくわかると思うのですが、公的年金の財政には余り詳しくありませんが、一定期間経過後の目標値を定めて、それに合うような財政計画を立てる、一般化スケールドプレミアム方式というやり方だそうです。このグラフを見ておわかりのとおり、そういう意味では、債務に対して一定割合を確保するということを戦略的にとっていないわけです。従いまして、この財政計画の下で債務を中心に議論することは、かなり制約を受けるのではないかという気がいたします。
 むしろ保険料あるいは給付調整の仕組みということで、キャッシュフローをコントロールすることによって、今の仕組みは目標を達成することになっているわけですので、例えば保険料というのは、賃金上昇率をベースに変化する。給付の方は基本的には物価上昇率に対して変化しますが、裁定時の年金は賃金上昇率をベースにしますので、長期的には賃金上昇率になるかもしれない。ですから、現在の運用の目標の立て方というのは、賃金上昇率が基準になっているということで、これがヘッジできるか、できないかということとは全く別問題だと思っています。
 そういったところが感想でございます。
○吉野委員長 どうもありがとうございます。
 植田先生、どうぞ。
○植田委員 今のお話とダブるんですけれども、GPIFあるいは積立金に対応する負債は何かということが複数の方から出ましたが、ある意味でははっきりしないと思います。公的年金は基本的に賦課方式ですから、今、持っている積立金を将来のどの時点の年金支払いに当てるかということは、全くはっきりしていないわけです。ただ漠然となるべくたくさん稼いで、将来助けになればいいということであって、その際に将来年金支払いは、大まかには賃金の水準と連動して動く部分が大きいので、年金の運用についても、そこを1つの基準とするという考え方が出てきやすいんだと思います。
 もう一つ、違った観点として、これも今の話にありましたけれども、当面のライアビリティサイドの問題として、資料の2ページ目のグラフの最初のところにもありますように、年金の支払いの方が受け取りを上回ってしまうことから、積立金から流出が発生することが見込まれているわけです。そのキャッシュアウトに対応する流動性管理をちゃんとしないといけないという、負債にマッチした資産の管理が大事なイシューとしてあるということだと思います。
 それから、全く別のことで、複数の方からマーケットの情報をちゃんと見た方がいいということがございました。前半のお話との関連でも出ていたと思いますけれども、マーケットをどう見るかと考えてみますと、例えば30年債、40年債、長期の利回りをそのまま見るという見方もあり得ますけれども、これはイールドカーブをずっと見て、これを横に切って、1年ごとのフォワードレートをずっと先までつくるんです。そうすると、だんだん上がっていって、どこかで水平になるんです。それはマーケットが長期の均衡に達するようなところと考えている。何年か先になるわけです。
 そこのレートを見ますと、私は忘れてしまいましたけれども、ちょっと前の記憶では、10年先ぐらいには大体フラットになって、10年先スタートの1年もの、11年債、それが3%前後だった記憶があります。つまりそれが正しければ、10年先の1年ものも、10年先の10年ものも3%です。今、もうちょっと低いと思うんですけれども、そういう見方で長期のマーケットがどう見ているかということを抽出することができるように思います。
○吉野委員長 どうもありがとうございます。
 そろそろ時間になりました。今日は大分活発な御意見をいただきまして、この進め方に関しても、ありがとうございました。
 次回の日程でございますけれども、今日の御議論も踏まえまして、次回も続けてやらせていただきたいと思いますが、11月21日の15時からという予定でございます。場所などに関しましては、事務局からまた詳細を御連絡させていただきたいと思います。
 今日は第1回目でございましたけれども、皆様から活発な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。


(了)

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