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- 2011年9月27日 第104回雇用均等分科会議事録
2011年9月27日 第104回雇用均等分科会議事録
雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課
日時
平成23年9月27日(火)15:00~17:00
場所
経済産業省 別館 第1020号会議室(10階)
出席者
公益代表委員
林分科会長 権丈委員 佐藤委員 田島委員
労働者代表委員
小林委員 齊藤委員 關委員 冨高委員 山口委員
使用者代表委員
布山委員 中西委員 瀬戸委員 川﨑委員
厚生労働省
藤田厚生労働大臣政務官 高井雇用均等・児童家庭局長 石井大臣官房審議官
伊藤総務課長 吉永短時間・在宅労働課長 吉本雇用均等政策課長
成田職業家庭両立課長 大隈均衡待遇推進室長
林分科会長 権丈委員 佐藤委員 田島委員
労働者代表委員
小林委員 齊藤委員 關委員 冨高委員 山口委員
使用者代表委員
布山委員 中西委員 瀬戸委員 川﨑委員
厚生労働省
藤田厚生労働大臣政務官 高井雇用均等・児童家庭局長 石井大臣官房審議官
伊藤総務課長 吉永短時間・在宅労働課長 吉本雇用均等政策課長
成田職業家庭両立課長 大隈均衡待遇推進室長
議題
1.分科会長の選出、分科会長代理の指名及び家内労働部会委員の指名について
2.「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」について
3.その他
2.「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」について
3.その他
配付資料
No.1-1 労働政策審議会雇用均等分科会委員名簿
No.1-2 労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会委員名簿
No.1-3 労働政策審議会令
No.2 今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書
No.3 社会保障・税一体改革成案
No.4 平成22年度雇用均等室における法施行状況
No.5 雇用均等特別相談窓口の設置について
No.1-2 労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会委員名簿
No.1-3 労働政策審議会令
No.2 今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書
No.3 社会保障・税一体改革成案
No.4 平成22年度雇用均等室における法施行状況
No.5 雇用均等特別相談窓口の設置について
議事
○伊藤総務課長
ただ今から、第104回労働政策審議会雇用均等分科会を開催させていただきます。4月27日付で委員の改選がありまして、本日は、その後の最初の会合でございますので、分科会長が決まるまでの間は暫時、事務局が議事進行をさせていただきます。
本日は、中窪委員、山川委員、山本委員より欠席されるとの連絡をいただいておりますが、定足数は満たしております。
それでは、まず新任の委員をご紹介いたします。お手元に配布させていただいております資料No.1-1「労働政策審議会雇用均等分科会委員名簿」をご覧いただきたいと思います。今回は、公益委員2名が新しく雇用均等分科会委員となられましたので、ご紹介いたします。亜細亜大学経済学部教授の権丈委員でございます。
○権丈委員
権丈でございます。よろしくお願いいたします。
○伊藤総務課長
それから、本日はご欠席ですが、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の中窪委員です。
なお、本日は藤田政務官が出席されていますので、一言ご挨拶をお願いします。
○藤田政務官
皆さま、こんにちは。この度、政務官に就任いたしました衆議院の藤田一枝でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日、委員の皆さまにおかれては、何かとお忙しい中に雇用均等分科会にご出席いただきまして、誠にありがとうございました。
いよいよ今日から本格的に今後のパートタイム労働対策についてご審議いただくわけでございますが、ご案内のとおり、2008年に施行されましたパートタイム労働法においては、3年後の見直しに向けた検討規定が設けられておりまして、目下その時期を迎えているところでもございます。
また、先般「パートタイム労働対策に関する研究会」の報告も取りまとめられまして、大臣に提出されたところでもございます。そしてまた、前回の改正法以降、パートタイム労働者のいろいろな処遇や賃金の問題については、一定の改善が見られたともいわれておりますけれども、まだまだ課題が山積しておりまして、処遇の改善や賃金格差の是正が強く求められているところでもございます。
委員の皆さまにおかれては、それぞれのお考え、あるいはお立場がおありかとは思いますが、今は非正規雇用が増大して大きな問題になっている状況下でございますので、ぜひ、パートタイム労働というものがライフスタイルに応じた魅力的な働き方の選択肢の一つとなり得るようにご審議いただきたい。とりわけ、連続性の向上あるいは均等待遇の推進といったことについてご審議を賜れば大変幸いと思っているところでございます。
小宮山厚生労働大臣も、このパートタイム労働法の改正については強い意向を示しておられるということもございまして、私も一緒に取り組んでまいりたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
○伊藤総務課長
次に、事務局に2名異動がございましたので紹介させていただきます。私は総務課長の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いします。
それから、職業家庭両立課長の成田でございます。
○成田職業家庭両立課長
よろしくお願いいたします。
○伊藤総務課長
それでは、議題1「分科会長の選出」について、ご説明申し上げます。資料No.1-3をご覧いただきたいと思います。資料No.1-3は労働政策審議会令の抜粋でございますが、第6条第6項に「分科会に分科会長を置き、当該分科会に属する公益を代表する委員」これは労働政策審議会の本委員のことでございますが、この「委員のうちから、当該分科会に属する委員が選挙する」とされております。本分科会では、公益代表のうち本審議会の委員でいらっしゃいますのは林委員のみですので、林委員に分科会長に引き続きご就任いただくことになります。よろしくお願い申し上げます。
それでは、以後の進行は林分科会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○林分科会長
それでは、議事に入りたいと思います。まず、労働政策審議会令の第6条第8項では、分科会長代理について、分科会長が指名することになっておりますので、私から指名させていただきます。佐藤委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、「家内労働部会に属すべき委員及び臨時委員の指名」についてですが、これにつきましては労働政策審議会令第7条第2項において、分科会長が指名することになっております。あらかじめお手元にお配りしております資料No.1-2のとおり指名させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議題2に入ります。議題2は「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」についてです。本件につきましては、今月15日に開催されました「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」において、報告が取りまとめられています。
まず、事務局からその報告書についての説明をお願いいたします。
○大隈均衡待遇推進室長
それでは、事務局から「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」につきまして、説明させていただきます。お手元に冊子があると思いますが、よろしいでしょうか。
内容を説明させていただきます前に、通しページの83ページをご覧いただければと思います。まず、研究会の位置付け等につきまして、説明いたします。83ページは「今後のパートタイム労働対策に関する研究会 開催要綱」となっております。先ほど藤田政務官からのお話にもありましたように、パートタイム労働法は平成19年に改正されまして、平成20年4月1日より施行されております。この平成19年の改正時に、改正法の附則におきまして「施行後3年を経過した場合に見直しのための検討をする」という規定があります。これを踏まえまして、パートタイム労働の実態の把握と課題の整理、そして今後のパートタイム労働対策について検討を行うために開催されたところです。
参集者については、隣の84ページにございます。学習院大学の今野先生に座長をお務めいただきまして、雇用均等分科会の権丈委員、佐藤委員、山川委員もメンバーでいらっしゃいました。
そして、85ページをご覧いただければと思います。今年2月から、10回の議論をし、途中、労使の方々からご意見を伺うということもいたしまして、9月15日の第10回研究会で報告書を取りまとめました。参考資料を2枚めくっていただきますと「パートタイム労働対策に関する最近の主な提言等」という資料も付いております。こちらには、先ほど説明いたしました改正法の附則である3年後の見直し規定や、さまざまなパートタイム労働対策に関します閣議決定も付けています。
この中でも特に提言の5ページ、6ページをご覧いただければと思います。昨年6月18日に「新成長戦略」が閣議決定されています。この中に「ディーセント・ワークの実現」という項目もございます。6ページですが、この新成長戦略の計画(工程表)の中の「2011年度に実施すべき事項」にパートタイム労働法の施行状況を踏まえた見直しの検討という事項も入っています。
報告書の内容を説明させていただきます。報告書本体の「目次」をお開きいただければと思います。報告書の構成は、こちらにありますとおり二部構成ということで第1の「総論」で「パートタイム労働をめぐる現状」「検討に当たっての基本的考え方」「パートタイム労働の課題」「検討に当たっての留意事項」という四つの柱、第2で「今後のパートタイム労働対策」についての選択肢が取りまとめられているという構成になっております。
第1の「パートタイム労働をめぐる現状」ですが、これは今後の議論に当たりまして基本的な事項となると思いますので、図表を用いまして説明させていただきます。大変恐縮ですが、通しページ54ページのパートタイム労働の現状、1の「パートタイム労働者数」をご覧いただければと思います。平成22年度の週間就業時間35時間未満の者は1,414万人ということで、すう勢として増加しています。また、平成22年には雇用者総数に占める週35時間未満労働者の割合が26.6%ということで、約4人に1人がパートタイム労働者と考えられます。1ページおめくりいただきますと、雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は、緑色の数字で、今、申し上げましたように26.6%です。男女別に、それぞれの労働者に占めるパートタイム労働者の割合を見ても、すう勢として増加しているということが見てとれます。
また、55ページの図表4はパートタイム労働者の業種別の分布状況ですが、卸売・小売業、サービス業、製造業、医療・福祉業で多くなっています。
次の56ページの図表6は企業規模別のパートタイム労働者の分布を見た状況です。100人未満の事業所に勤務するパートタイム労働者が半数ということで、小規模の事業所にパートタイム労働者がかなり多く存在していることがわかります。
また、次の57ページの図表7は、年齢別に見た数字です。男性につきましては、さまざまな年齢構成でパートタイム労働者が分布しています。女性につきましては、35~54歳層に占める割合が、ほぼ半分です。
それから58ページの図表9をご覧いただければと思います。これは勤続年数です。女性は少しずつ、男性もかなり勤続年数は延びています。また、勤続年数の分布を見ますと、男性につきましても勤続年数が5年以上というパートタイム労働者が約4分の1、女性につきましても、勤続年数が5年以上が約4割という状況になっています。
その下の図表10ですが、これは年齢別に一般労働者の男女、パートタイム労働者の男女の1時間当たりの所定内給与額を見ております。この表を見ますと、男性・女性のパートタイム労働者につきましては、年齢構成にかかわりなく賃金額がほぼ一定であるということが見てとれます。
また、59ページの図表11は、勤続年数別に男女の一般労働者とパートタイム労働者それぞれで1時間当たりの所定内給与額を見ております。やはりパートタイム労働者、特に女性につきましては勤続年数が延びても時給はそれほど大きくは上昇しないということが見てとれます。ちなみに、点線で示しているのが平成17年の数字で、実線が平成22年ということで、一番下の女性パートタイム労働者につきましては、平成17年から平成22年にかけまして、いずれの勤続年数の区分においても数十円ぐらい上昇しています。
その下の図表12ですが、これは一般労働者とパートタイム労働者の1時間当たり所定内給与額の格差についての数字です。これは女性同士で一般労働者とパートタイム労働者を比べますと、そこにありますようにパートタイム労働者が約7割ぐらいということ。男性につきましては、一般労働者に占めるパートタイム労働者の割合については54.7%になっています。
また、60ページの図表13は、パートタイム労働者の組織率で、少しずつ上昇しており、平成22年には5.6%になっています。下の表につきましてはパートタイム労働者に関して労働組合が何らかの取組をしているかということですが、組合加入資格があり組合員がいる組合におきましては、労働条件や処遇の改善要求、相談窓口の設置といった取組がなされているという状況が見てとれます。以上が、パートタイム労働につきましての全体的状況です。
61ページの図表15以降は、パートタイム労働法の施行後2年間の状況につきまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構におきまして、昨年、アンケート調査を実施した結果です。その結果、パートタイム労働法の施行を機に、一番左側の棒グラフですが、約6割の事業所が何らかの措置を実施したと回答しております。その隣にありますように、その中でも一番多かった回答が「パートタイム労働者の労働条件通知書等で特定事項を明示するようにした」で、約半分ぐらいになっています。また、「正社員とパートタイム労働者の職務内容の区分を明確にした」という事業所も14%、それから、福利厚生施設の利用、正社員への転換措置を設ける、待遇の改善、教育訓練の実施といった選択肢も約1割ぐらいの事業所で実施されているという状況が見てとれます。
61ページの図表16は、現行パートタイム労働法の第6条の関係です。平成22年をご覧いただければと思います。これがパートタイム労働法の施行後2年間についての調査です。平成18年に厚生労働省が実施しておりますパートタイム労働者総合実態調査の結果も併せて載せておりますので、ご参考に見ていただければと思います。図表16でいきますと、「労働条件を明示している」事業所が97.3%、かつ、その明示の方法ですが、右側に棒グラフがありますように、「書面を交付している」所が約9割ということで、平成18年との変化を比較いたしましても、文書で労働条件を明示する事業所が増えているのではないかと考えられます。
また、62ページの図表18は、現行のパートタイム労働法第8条・第9条の関係で、正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいるかどうかを調査したものですが、その結果、正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいると回答した事業所は24.4%です。
続きまして、63ページの表19ですが、「正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいる場合に、1時間当たりの賃金額に差があるか」という質問に対しましては、平成22年をご覧いただければと思いますが、賃金差が「ある」と回答した事業所が7割を超え、「正社員より低い」と回答している事業所が約7割ということです。その賃金差がある理由が、その下の図表20です。「勤務時間の自由度が違うから」「そういった契約内容で労働者が納得しているから」といった回答が多くなっています。
64ページの図表21につきましては、先ほどは事業所に対して正社員と同じ仕事をしているパートタイム労働者がいるかどうかと質問しましたが、こちらについては、パートタイム労働者に対して、自分と同じような仕事をしている正社員がいるかどうかという質問に対する回答です。「業務の内容・責任も同じ正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は15.9%。それから「責任の重さは違うが、同じ業務の正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は約4割ということです。今の約5割の人たちに、その正社員との賃金水準についての納得度について質問した回答が右側の円グラフです。「正社員より賃金水準は低いけれども納得している」と回答しているパートタイム労働者がピンク色の部分ですが5割を超えています。それから「賃金水準が低く、納得できない」と回答しているパートタイム労働者が28%、「わからない」という回答も14.9%あるところです。
1枚めくっていただきまして、65ページの図表23は、先ほど「正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいる」と答えた事業所に対しまして、そのうち、人材活用の仕組みも同じパートタイム労働者がいるかどうかという質問に対する回答ですが、正社員と全期間あるいは一定期間、職務も人材活用の仕組みも同じパートタイム労働者が「いる」と回答した事業所は18%となっています。
この結果、65ページの図表24ですが、パートタイム労働法の3要件に該当する、職務が同一、人材活用の仕組みも正社員と同一、無期または実質無期契約のパートタイム労働者につきまして、この調査においては全てのパートタイム労働者に占める割合は、左側の四角の一番下、0.1%ということでした。
続きまして、66ページの図表25は「パートタイム労働者の採用時の賃金決定の際に考慮した内容」ということで、平成22年にはパートタイム労働者の能力・経験、職務の内容などを考慮していると回答した事業所が多くなっておりまして、地域での賃金相場や最低賃金よりも、能力や職務の内容を勘案したと回答した事業所の方が多くなっています。
それから、その下の図表26です。これは手当や福利厚生の制度について、正社員とパートタイム労働者のそれぞれにどのように実施しているかという実施状況の事業所に対する調査です。緑色の方が正社員とパートタイム労働者の両方に実施している、灰色の方は正社員に対してのみ実施ということですが、正社員にのみ実施ということでは退職金、役職手当、家族手当といったものが多くなっています。両方に実施しているものは通勤手当、健康診断、慶弔休暇といったところが多くなっています。
67ページの図表27は、パートタイム労働者に対して、職務が同じような正社員には実施されていて、自分には実施されておらず納得できない制度としてはどのようなものがあるかということを聞いた質問に対する回答です。「賞与」が一番多くなっています。そして「定期的な昇給」「退職金・企業年金」については納得できないと考えているパートタイム労働者が多いということです。
続きまして、下の図表28はパートタイム労働者に対する教育訓練の実施状況についての調査結果です。パートタイム労働者につきましては緑色、正社員と職務が同じパートタイム労働者は黄色の部分ですが、一番左側の青色は正社員に対してということです。「入職時のガイダンス」や「日常的業務を通じたOJT」などはパートタイム労働者に対しても、ある程度は実施されています。一方で、「キャリアアップのための教育訓練」については、正社員とパートタイム労働者の実施比率の差が大きくなっています。 68ページの図表29は、パートタイム労働法第12条で義務としている正社員への転換推進措置ですけれども、実際に実施している事業所は48.6%ということで、半数です。
そして、その下の図表30ですが、実際に実施している企業のうち、正社員に転換させた実績があるかどうかということを質問していますが、上から二つ目の棒グラフですが、実績があると答えている事業所は39.9%になっています。
それから、70ページの図表34をご覧いただければと思います。パートタイム労働法第13条では、パートタイム労働者から説明の求めがあった場合に、事業主は待遇を決定するに当たって考慮した事項について説明するという規定がありますが、実際に説明を求められたことがある事業主は22.3%でした。このうち、説明をしたかどうかという質問には、98.5%の事業主が説明しているという回答をしています。ちなみに、その表の右下ですが、パートタイム労働法には、事業主は、パートタイム労働者から苦情の申し出があったときに自主的な解決をする努力義務が設けられていますが「解決に努めている」事業所は92.4%ありました。
続きまして、71ページの図表35です。現在の会社や仕事に対して不満・不安があるかどうかという質問ですが、約6割のパートタイム労働者が「不満・不安がある」と回答しております。そして、その内容は、平成22年は水色の方ですが、一番多いのが「賃金が安い」、それから「雇用が不安定」「勤続が長いのに有期契約である」「正社員になれない」といった選択肢などが多くなっています。
その下の図表36は、パートタイム労働者を雇用する理由です。これにつきましては「人件費が割安なため」「簡単な仕事内容のため」「一日の忙しい時間帯に対処するため」という回答が多くなっております。
72ページの図表38は、パートタイム労働者の「働いている理由」です。これにつきましては、一番多いのは「主たる稼ぎ手ではないが、家計の足しにするため」が、男女計と女性で見たときに多くなっています。
続きまして、73ページの図表39です。パートタイム労働者を選択した理由につきましては、「都合のよい時間(日)に働きたいから」「勤務時間・日数が短いから」が多くなっています。
また、図表40は「今後の働き方に関する考え方」ということで、引き続きパートタイム労働者を「続けたい」人が約7割で一番多く、「正社員になりたい」という人は18.8%という状況です。
74ページの図表41ですが、就業調整をしているかどうかという調査をしましたところ、平成22年でも約4人に1人が就業調整を行っているということです。理由につきましては、非課税限度額や社会保険の関係の130万円が理由として挙がっているところです。以上が、施行後2年間の状況です。
74ページの図表42です。これは都道府県労働局雇用均等室の施行状況です。図表42は相談件数ですけれども、平成19年度・平成20年度は法改正の前後ということで、質問が多くなっております。平成22年度につきましても、6,000件を超える相談が寄せられているところです。
76ページをご覧ください。図表46です。平成20年度以降の事業主に対する報告徴収・指導件数です。報告徴収実施事業所数・指導件数も順調に増えています。平成22年度には1万2,590の事業所を訪問しまして、約2万6,000件の指導をしたところです。
78ページの図表50をご覧ください。こちらは、パートタイム労働法で現在、紛争解決援助の仕組みがあります。都道府県労働局長の紛争解決援助につきましては、3年間で14件の申立てがあったところです。また、調停につきましては、3年間で3件となっています。以上が、施行状況の現状です。
報告書に戻っていただいて、18ページをご覧いただければと思います。こういった現状を踏まえまして、パートタイム労働対策を検討するに当たっての基本的な考え方ということで、三つの項目を挙げています。一つ目は「パートタイム労働者の公正な待遇の確保」です。19ページの10行目です。現行のパートタイム労働法は、パートタイム労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇の実現を趣旨としておりますが、今後もそういったパートタイム労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇をより一層確保していくことが、社会の公正という観点から、極めて重要であるというのが、基本的な考え方の一つ目です。
基本的な考え方の二つ目としては、(2)「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」ということです。今後、ますます労働力供給が制約される日本におきまして、「全員参加型社会」の実現ということで、そのためにはパートタイム労働者が能力を十分に発揮できるような条件整備が必要である。パートタイム労働者を積極的に活用していくことが重要であるということが、基本的な考え方の二つ目です。
基本的な考え方の三つ目は、パートタイム労働者の就業実態が多様であること、また、企業の雇用管理制度も多様であるということを踏まえまして、20ページの下から3行目です。そういった多様性を踏まえて、きめ細かく対応できる方策を検討する必要があるということが基本的な考え方の三つ目です。
こういった基本的な考え方に基づきまして、21ページの「パートタイム労働の課題」です。まず、3(1)のイです。現行のパートタイム労働法第8条の関係です。先ほど、ご説明しましたように、21ページの下から2行目ですが「3要件に該当するパートタイム労働者は、実態調査によると、調査対象パートタイム労働者の0.1%となっているが、今後、第8条の規定を活用してパートタイム労働者の雇用管理の改善を進める余地は小さい状況となっている」ということを踏まえまして、現行のパートタイム労働法第8条の3要件について検討する必要があるということが課題として挙げられています。
ロの「均衡待遇の確保」は、現行の第9条の関係です。先ほどもありましたように、賃金の決定要素が変化している等の一定の効果があると考えられますが、まだ、賃金に対する不満・不安も高いということがありますので、より一層の待遇改善を推進する方策について検討する必要があるというのが二つ目の課題です。
(2)「待遇に関する納得性の向上」ということで、パートタイム労働法第13条の関係です。こちらも、一定程度パートタイム労働者の満足度は高まっている部分があると思われますけれども、23ページです。先ほどもご説明しましたが、「しかしながら」の段落にも書いておりますように、過去2年間に実際に説明を求められた事業主が2割程度ということですので、パートタイム労働者が実際に事業主に説明を求めることが、必ずしも容易でない状況がうかがえるということで、納得性を一層向上させる方策の検討が必要ではないかというのが課題です。
(3)の「教育訓練」につきましても、先ほど申し上げましたように、パートタイム労働者が従事する職務に必要な導入訓練は一定程度実施されていると考えられますが、キャリア形成のための教育訓練については、必ずしも十分に行われていないのではないかということです。そのため、こういったキャリア形成の促進について検討の必要があるのではないかというのが教育訓練についての検討課題です。
(4)「通常の労働者への転換の推進」です。これも先ほどご説明しましたように、実際に転換措置を実施している事業所が約半数ということもありますので、さらなる推進が必要との課題があると考えられます。
(5)「パートタイム労働法の実効性の確保」です。事業主に対する報告徴収、勧告といった点につきましても、長期間是正されない案件もありますので、さらなる方策について検討する必要があるのではないかということが指摘されております。
また、「紛争解決援助」ですが、先ほど説明しましたように、利用実績が非常に少ないということで、何らかの検討ができるのではないかということが指摘されております。
25ページ、26ページは「その他」としまして「税制、社会保険制度等関連制度」ということで、先ほどの調査で見たとおり、パートタイム労働者の4人に1人が現在就業調整を行っているということです。就業調整によりますパートタイム労働者の能力発揮の機会や、待遇の改善を阻害しているのではないかということで、この点についても検討が必要ではないかということが「その他」の検討事項です。
27ページ、28ページは「検討に当たっての留意事項」でごす。留意事項の一つ目としては、「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」です。有期労働契約の在り方につきましては、労働政策審議会労働条件分科会で現在、検討されているところです。また、8月には「議論の中間的な整理」が公表されています。パートタイム労働者の多くが有期労働契約で雇用されているということもありますので、そちらの方の検討との整合性を図る必要があるということが留意事項の1点目です。
留意事項の2点目です。「比較法の視点に基づく検討」です。EUでは、EU指令及びその国内法化などにおきまして、パートタイム労働者につきましては、パートタイム労働を理由とする合理的な理由のない不利益取扱いが禁止されているところです。他方、アメリカでは契約自由の原則から、そういった規制は特にないということです。こういった諸外国の法制も参考にしつつ、そういうものを比較法の視点に基づいて検討する場合は、各国の法制度の背後にあるさまざまな考え方、諸制度の相違にも留意する必要があるというのが、留意事項の2点目です。
それから、3点目、「社会保障・税一体改革成案及び第3次男女共同参画基本計画」です。さまざまな閣議決定がなされており、こういったものも留意する必要があるだろうということです。
また、4点目として「東日本大震災が企業に与える影響」ということで、大震災が企業に与える影響についても留意する必要があるだろうということで、留意事項の4点目として挙げております。
29ページ以降からが「今後のパートタイム労働対策」についての記述です。柱書きの8行をご覧いただければと思います。この研究会報告におきましては、考えられる選択肢を幅広く整理するということで、相互関係や措置すべき時点や手法などにとらわれず、幅広く選択肢を整理したというのが研究会の報告書の基本的な考え方です。
まず、「均等待遇」の関係です。29ページ1の(1)イです。ここにつきまして、ロの「今後の在り方」としては、①「3要件の在り方とパートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止」というところです。一つ目の○ですが、パートタイム労働法第8条の3要件の在り方につきましては、このパラグラフの4行目ですが、研究会におきましても「職務の内容が同一であること」の要件のみでよいのではないかというご意見がありました。一方で、そこから3行下ですが、「人材活用の仕組み・運用等が同一であること」との要件のみでよいのではないかというご意見もありました。また、次の段落ですが、一律に3要件を適用していることが問題ではないかというご意見もあったところです。
31ページです。さらに、第8条の適用範囲を広げていくという観点からしますと、上から6行目です。「事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならないとする法制を採ることが適当ではないか」という意見もあったところです。この点に関しまして、合理的な理由については、個別の事案で判断されるという点がありますので、このような問題点を踏まえ、労使双方にとり予測可能性を確保するために、「合理的な理由」の考慮要素となり得るものについて一定の例をガイドラインで示すこととし、行政指導等による履行確保の際に利用するとともに、司法手続で参考とされることを期待することが適当ではないかという意見もあったところです。また、「合理的な理由」としまして、EU諸国では勤続年数、学歴、キャリアコースが考慮されていることを踏まえますと、日本の雇用システムでも「合理的な理由」を幅広く考えられるのではないかという意見もあったところです。
32ページの○の「また」の段落です。こういった法制にした場合は、現行の法制との立証責任の考え方についても整理する必要があるのではないかという意見もありました。
32ページの二つ目の○ですが、このように、パートタイム労働法第8条については、3要件の在り方を含め、適用範囲の拡大の方策について十分に議論する必要があるという指摘がなされているところです。
また、第8条の関係でいいますと②「フルタイム有期契約労働者」です。第8条の適用範囲を広げていくという観点からしますと、フルタイム有期契約労働者についても適用の可否について検討することも考えられるところですが、先ほども申し上げましたように現在、労働政策審議会労働条件分科会でもご議論いただいておりますので、そちらを見極めつつ、検討する必要があるという指摘になっています。
(2)「均等待遇の対象とならないパートタイム労働者の待遇改善」です。待遇の改善につきましては、パートタイム労働者のニーズが高いこともあり、34ページのロ「今後の在り方」での下から6行目ですが、賃金制度や雇用管理の取組は、個々の事業所ごとに多様であるということで、待遇改善の在り方について、法律等で一律の基準を設けることには限界があるのではないかという意見がありました。このため、個々の事業所ごとに、雇用管理の取組やパートタイム労働者のニーズ等の実情に応じて、事業主が自主的にパートタイム労働者の雇用管理の改善等を計画的に進めることが重要であるという意見がありました。この場合に、例えば、次世代育成支援対策推進法の枠組みを参考に、厚生労働大臣が指針を定めて、それに即して事業主が計画を策定する。そして、事業主が一定の基準を満たした場合には、その旨の認定を受けることができて、厚生労働大臣の定める表示を付すことができるということ。あるいは、現在、認定事業主に対しまして、割増償却制度の創設といった税制の恩典がこの6月から導入されたことを踏まえまして、パートタイム労働者の雇用管理の改善等のための行動計画を策定した事業主に対して、一定のインセンティブを付与し取組を促進することが適当であると考えられるとされております。
それから、待遇の関係で36ページに(3)「職務評価」とあります。職務評価につきましては、パートタイム労働者と通常の労働者との間で、均等・均衡待遇の確保をさらに進めるために非常に重要なツールではないかという考え方があるところです。そういった考え方も踏まえまして、研究会におきましては、専門家に対してヒアリングを行ったところです。37ページの二つ目の○で、そのヒアリングの結果について少し書いております。職務評価点に見合った賃金を計算することができ、その差に応じた賃金を払うことができるという見解も示されたところです。38ページの2行目ですが、ただし、職務評価は、単一の賃金体系を企業に要請するものではないというご意見もあったところです。
こういった職務評価に関しますヒアリングなども含めまして「今後の在り方」ということで、39ページです。職務評価の今後の在り方につきましては、日本におきましては、小規模企業では賃金表の作成すら十分なされていないという状況を考慮しますと、中小規模の企業を含めた事業主に広範に職務分析・職務評価を義務付けることは困難であって、むしろ、事業主がさまざまな実情に応じて職務評価制度を導入することを促していくことが一つの方向性として考えられるということで、先ほどご説明しました行動計画のメニューの一つとして位置付けるということが考えられるのではないかという指摘が、この報告書ではなされたところです。
続きまして、論点の二つ目「待遇に関する納得性の向上」の「今後の在り方」です。41ページのロ「今後の在り方」の一つ目の○ですが、先ほど現状と課題のところでも、説明を求めにくいのではないかということがありましたので、例えばパートタイム労働者が事業主に対して説明を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止を法律に規定することが考えられるという指摘がされています。
また、一番下の○ですが、パートタイム労働者からの求めという現在の法律上の要件にかかわらず、むしろ、求めの有無にかかわらず、事業所ごとの実情に応じて集団的労使関係の中で、納得性が向上するような枠組みを設ける方が重要ではないかという意見が研究会の中ではあったところです。
42ページの上から4行目、ドイツやフランスなどを参考にして、事業主、通常の労働者、パートタイム労働者を構成員として、パートタイム労働者の待遇等について協議することを目的とする労使委員会の設置が適当ではないかという考え方もあったところですが、他方で、日本では一般的に労使委員会の枠組みが構築されていないということで、パートタイム労働者についてのみ同制度を構築することに関しての検討が必要であろうという指摘になっております。
44ページ、三つ目の論点「教育訓練」です。ロの「今後の在り方」、教育訓練につきましても、経営戦略に応じて行われることを踏まえると、法律等により一律の基準を設けて事業主に義務付けることは困難ではないか。むしろ、事業主が先ほども説明したような行動計画の中で、パートタイム労働者のキャリア・ラダーの整備や、それに応じた計画的な教育訓練の実施を盛り込む。それに対して、インセンティブを付与していくことが良いのではないかという提言になっております。また、教育訓練につきましては、45ページの下の○「また」の段落ですが、職業訓練を通して得られた経験・能力を評価しやすい仕組みの普及が重要であるということで、「ジョブ・カード制度」「職業能力評価基準」「キャリア段位制度」の一層の普及・促進が重要であるという指摘もなされたところです。
47ページの「通常の労働者への転換の推進」についてです。(1)「通常の労働者への転換の推進」ロの「今後の在り方」です。48ページの上から6行目「したがって」からです。まず、フルタイムの通常の労働者の長時間労働の是正を図るということと、併せて、こちらにつきましても行動計画を作成して、パートタイム労働者のキャリア・ラダーを設ける。そして、計画的に教育訓練を実施する。そういった教育訓練などと組み合わせて、最終的に通常の労働者へ転換するための措置を講じることを促進するアプローチが考えられるのではないかというまとめになっています。
また、通常の労働者への転換の推進の中では、(2)の「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約についても研究会の中では議論になったところです。「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約につきましては、48ページの下から2行目にありますように、他の研究会の報告などでも提言されている状況です。
49ページのロ「今後の在り方」です。上から4行目ですが、事業所の閉鎖や職種の廃止の際の雇用保障の在り方について整理が必要であるという指摘もされているところです。こういったことも踏まえまして、この研究会におきましても、今後は関連判例の内容の整理が必要であると指摘されているところです。
(3)「パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換」についても論点の一つとして議論があったところです。EUのパートタイム労働指令におきましては、パートタイム労働とフルタイム労働との間の転換の希望について事業主が配慮するという規定があるところです。そういったものも踏まえまして、ドイツやオランダなどにおきましては、相互転換について一定の法制が設けられているところです。
50ページのロ「今後の在り方」です。こういった相互転換は、ワーク・ライフ・バランスの観点からも有効と考えられる、しかしながら、通常の労働者とパートタイム労働者の間の待遇の格差が大きい日本では、まずは、両者の間の待遇の格差を是正していくことが必要ではないかということで、その状況を見極めつつ実現を目指していくことが考えられるというのが研究会のまとめです。
51ページの5「パートタイム労働法の実効性の確保」です。(1)「事業主に対する報告徴収、勧告等」ですが、今後は例えば雇用均等室の勧告に従わなかった場合のその旨の公表や、過料を課す対象の拡大を検討することが考えられるのではないかということが盛り込まれております。
また、(2)の「紛争解決援助」ですが、既にご説明しましたように、実績が少ない理由として、義務規定だけを対象としていることも理由の一つとして考えられるということで、対象範囲を例えば努力義務規定に広げられないかということも報告書の中で指摘があったところです。ただ、どういった内容の調停案にするかというのは、まだ検討課題であると書かれているところです。
実効性の確保というところで(3)の「その他」ですが、法の実現手段については、さまざまなものがあるということで、例えばEU諸国の動向なども踏まえますと、51ページの一番下から52ページにかけてですが、実体規制を通じた法違反による事後救済と併せて、当事者自らによる改善に向けた取組を促す手続規制の活用、具体的には、既に説明しました事業主による自主的な行動計画の策定を促進する枠組みといったものも今後重要になるのではないかというご意見があったところです。
53ページです。最後の「その他」 (1)の「フルタイム無期契約労働者の取扱い」です。ここは有期の検討とパートタイム労働法の検討と両者の検討から外れている部分ですが、今後も課題であるという意見があったところです。
また、(2)の「税制、社会保険制度等関連制度」ですが、働き方に中立的な税、社会保険制度の構築を早急に図ることが必要であるという指摘がされているところです。簡単ですが、報告書の説明は以上です。
○林分科会長
ご説明ありがとうございました。今後、この分科会でパートタイム労働法の見直しの検討をしていくわけですけれども、この研究会報告書は多くの示唆に富むものであると思います。その意味で、今ご説明いただきました研究会報告書についてのご質問・ご意見等がありましたら、お願いします。冨高委員。
○冨高委員
ありがとうございます。まず、今回の研究会の報告書のこれまで取りまとめにご尽力してきていただきました方々の努力に、まず、敬意を表したいと思います。
3点ほど、質問させていただきたいことがあります。この報告書の中では、パートタイム労働が抱える課題について、さまざまなものが多く指摘されておりまして、21ページです。先ほどもご説明いただきましたとおり、今は「差別的取扱いの禁止」という点で3要件に該当するパートタイム労働者が0.1%ということで、現状の第8条の規定を活用したパートタイム労働者の雇用管理の改善の余地が少ないという課題が指摘されております。この報告書を全体的に見せていただいて、今のご報告を伺っても、さまざまな有識者の意見が数多く列挙されていると見受けられたのですが、では第8条をどのように変更するべきかという明確な方向性が示されていないのではないかとも見ております。もし、よろしければ、この研究会の中では、その辺りについてどのような議論があったのか、もう少し詳しくお伺いしたいと思っております。これが1点です。
もう1点は、少し後ろになるのですが、48ページの「通常の労働者への転換の推進」の(2)「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約の部分につきまして、「勤務地限定」、「職種限定」の無期契約労働者についての表記がございます。これはパートタイム労働法の論議という意味では今回初めて、この報告書の中で提起されているものだと、伺っていて感じました。この「勤務地限定」、「職種限定」の無期契約労働者について、賃金・労働条件面で正社員と比べてどうあるべきなのか。それから、正社員という位置付けでは駄目なのか。そういったところが、研究会の中でどのような議論がされたのかというところを、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。これが2点目です。
2点目と少し関係がありますが、3点目といたしまして、この内容につきましては「雇用政策研究会報告書」及び「有期労働契約研究会報告書」で提言されていることを踏まえ、としていただいております。当然のことながら、先ほどご説明いただいたように有期契約の問題とも連動してくると思いますので、今、事務局で有期契約との論議の進め方について、具体的な連携の仕方という部分でイメージがあれば、ぜひ、その辺りについてお伺いしたいと思います。以上、3点です。
○林分科会長
では、事務局から。お願いします。
○大隈均衡待遇推進室長
質問の1点目ですけれども、第8条の今後の方向性について、さまざまな意見が列挙されているというご指摘だったかと思いますが、研究会の中では本当にさまざまな意見があったところです。繰り返しの説明で大変恐縮ですけれども、職務の内容が同一であるという要件でよいのではないかというご意見がある一方で、逆に日本の待遇というのは人材活用の仕組みで決定されるものであるので、そちらの要件だけでよいのではないかという議論もありました。また、企業によって職務給であったり職能給であったり、人材の決定の仕方がさまざまである中で、三つの要件を一律に適用することが問題なのではないかなど、まさに報告書に書きましたようなさまざまな意見が出たところです。
また、もう一つ、諸外国の法制、特にEU指令などを踏まえますと、パートタイム労働であることを理由として合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならない。今のように入り口で3要件で縛るのではなく、パートタイム労働者すべてを対象としたこういったEU法制のようなやり方もあるのではないかなど、本当にさまざまなご意見が出たところです。そこは、やはり待遇の決定の仕方がどのようなものなのか、企業によってさまざまな待遇の決定の方法、賃金制度があるという前提の中で、さまざまな意見が出たところです。
それから、2点目の48ページの「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約については、この働き方自体が、そもそも先ほどのご質問にありましたような、このような労働者の方の待遇がどうあるべきかという観点よりも、むしろパートタイム労働者は先ほどの実態の調査の中でも正社員になるよりは今のパートタイム労働者のままでという考え方もありますので、やはり勤務地や職種が限定された方が、パートタイム労働者のニーズに対応するのではないか。かつ、無期契約になるということで雇用が安定するのではないか。パートタイム労働者の転換先、移行先としてふさわしいかどうかという観点で議論したところです。そして雇用保障をどう考えるかということで、研究会の委員の中から整理解雇法理の4要件が柔軟に解釈されている例が多いという判例のご紹介もありました。ただ、委員もまだすべての判例を見ているわけではないので、やはり雇用保障のところについての整理などは、多様な正社員についての研究会でも十分に検討してもらう必要があるのではないかというご意見があったところです。
それから、3点目の有期労働契約の議論との連携の仕方、進め方ということですが、労働条件分科会の方の情報提供はこちらでも適宜させていただきたいと思っておりますし、当然、こちらの方の進め方について労働条件分科会でも必要があれば情報提供をすることも当然あると思いますので、委員の皆さま方にも有期労働契約の議論の進め方についての情報提供をしながら進めていきたいと考えております。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
最後の有期労働契約との整合性につきまして、補足させていただきたいと考えております。有期労働契約につきましては昨年、既に研究会報告書が出て、1年にわたり労働条件分科会で議論が進んでいるところです。そういう意味で、パートタイム労働者の議論よりは期間としてはかなり先行している状況にあります。そういう中で、先月中間的整理が出ております。これを踏まえて、年末を目途にさまざまな議論が進んでいくと思っておりますけれども、そういった中間的整理につきましてもこの分科会で状況をご報告したいと思っておりますし、労働条件分科会における議論を逐次こちらにご報告する中で、連携を取る必要があるものについては連携を取り、議論を進めていただければと考えているところです。
現時点においては、パートタイム労働者と有期労働契約者の議論とは重なる部分もありますし、また、異なる部分もあると思っておりますので、そういう意味で状況を見据えながら、全体としてのパートタイム労働者特有の議論、あるいは有期労働契約の議論を踏まえて議論すべき部分、この辺りを併せてご議論いただければと考えている次第です。
○林分科会長
その他に、ご質問・ご意見等はありますか。布山委員。
○布山委員
権丈委員、取りまとめ、ありがとうございました。今日ご欠席の山川委員、それから遅れていらっしゃる佐藤委員もご参画されている中で、非常に言いにくいところがあるのですが、この中身については企業の実態や現場を考えた場合に非常に違和感のある内容が含まれていると思っているのが全体的な感想です。例えば、わが国の人事賃金制度と様子が異なるEU諸国の事例なり、仕組みを繰り返し例として挙げられている点や、パートタイム労働者といっても一様でなく、多様な実情であることに対する言及があまりないということなど、実際の現場から考えるとしっくりと来ない。
一つ具体的な例を挙げてみると、パートタイム労働者対策の検討なので、ある程度は仕方がないのかなと思いながらも、報告書の19ページに、通常の労働者とパートタイム労働者の間に待遇の格差が存在していて、その中でパートタイム労働者も含めた労働者の働き・貢献に合った公正な待遇をより一層確保していくことが社会の公正という観点から極めて重要だという記述があります。ただ、一方で、参考の64ページの図表21「パートタイム労働法の施行状況」を見てみると、同じ仕事を行っている正社員の有無などを聞いている部分ですが、職務が同じ正社員と比較して、自らの賃金が低いが納得しているという回答が実は53%にも上っているわけです。つまり、待遇の差があっても公正さは維持されていると考えることもできるのではないかと思います。このように現場の多様な実態という視点が少々不足しているのではないかというところで、少し違和感を持つところです。感想ですが、以上です。
○林分科会長
特に回答を求めるということではないですね。
○布山委員
はい。感想ということで。
○林分科会長
その他に、ご質問・ご意見等はありますか。關委員、お願いいたします。
○關委員
1点、質問させていただきたいと思います。報告書の34~35ページにかけてのところですが、事業主が自主的に、計画的に進めることが重要であると。この場合に、例えばうんぬんという表記がありまして、その次のパラグラフで行動計画の具体的な内容として、パートタイム労働者の賃金水準の改善、賃金制度の見直し、教育訓練の実施等の記載があるわけですが、これらの各種項目についてパートタイム労働者の均衡待遇を確保するための基準はどうするのか、どうすべきなのかといった観点で研究会の中でどのような議論があったのかをご教授いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○林分科会長
大隈均衡待遇推進室長、どうぞ。
○大隈均衡待遇推進室長
行動計画の中で目指すべき均衡の水準についてのご質問かと思いますが、その水準について一律に義務付けるのは難しいのではないかと。この行動計画という意見が研究会の中で出てきましたのは、また34ページの下から6行目ですが、賃金制度や雇用管理の取組が非常に多様であるということなので、待遇改善の在り方について法律等で一律の基準を設けることには限界があるのではないかということです。多様な事業所の実態、またパートタイム労働者の実態を踏まえると、例えば正社員の何割というような基準を義務付けるのは難しいのではないかと。そういうことも踏まえて、個々の事業所ごとに労使で納得するような形で、こういった行動計画を作って推進していく。それに対してインセンティブを付与していくという方法、手続的な規制といいますか、そういうものの方が適当ではないかという議論が研究会の中であったところです。
○林分科会長
その他に、ご質問等はありますか。川﨑委員。
○川﨑委員
質問というよりは感想ということで述べさせていただきたいと思います。まず、全体的なところになりますけれど、21ページから始まっている「パートタイム労働の課題」といったことで、まずは差別的な取扱いの禁止で第8条の3要件の見直しが必要であるといったところから全体がスタートしていると読めるわけですけれども、企業の実態から考えていきますと、パートタイム労働法が規定されて、それの適正な運用のために社内にいろいろな規則を見直していって、実際にパートタイム労働者にいろいろな対応をしてきたといったことを考えますと、その結果として、今回のこの三つの要件に該当するパートタイム労働者の数が減っていっただろうということが推測されるわけです。これが0.1%になったから、このパートタイム労働法自体が効力を失っているのではないかという論調に関しては非常に違和感を覚えたということが1点です。
あと、3ページを見ますと、パートタイム労働者が全労働者の4分の1以上を占めるようになってきたということですけれども、もう一方で4分の3は正社員であり、正社員の労働条件をどのように見ていくのかといったところと、やはりパートタイム労働者の条件をどのように見ていくのかといったところは、ある程度パラレルになっていくところもあるだろうと考えます。パートタイム労働者のところからだけの観点で今回、いろいろ述べられていますけれども、やはり日本の労働の条件の現状を考えたときには4分の3を無視するような形と、あと今までずっと前回のパートタイム労働法の改正のときに決めてきた部分を引っ繰り返すような議論というのはなかなか難しいのではないかと思います。実際の企業の実態を見ても難しいのではないかということが実感です。実際にアンケートの結果等も見ていくと、引き続き現在の会社でパートタイム労働者として働き続けたいと言っている人が7割近くいるということも勘案すると、全体的なパートタイム労働者の就労に対しての納得性や継続意欲といったものは、かなりの部分担保されているような状況にあるという見方をしてもよいのではないかという感想を持ちました。
○林分科会長
その他に。では、小林委員。
○小林委員
パートタイム労働法の第11条の福利厚生についてですけれども、今回の資料の中で67ページの図表27や図表35などにパートタイム労働者が福利厚生に対して持っている不満が大きいという内容が資料で出ております。報告書の中では福利厚生についての言及があまりなされていないのではいないように思いますけれども、研究会の中で福利厚生に関する議論がなされたかどうかをお伺いしたいと思います。
もう1点よろしいですか。もう1点は53ページの「その他」のところで、先ほどご説明がありましたとおり、フルタイム無期契約労働者については有期契約労働者にもパートタイム労働者にも両方から外れているというご説明がありました。この中で、フルタイム無期契約労働者についての言及はここでされているのですけれども、具体的な取扱いということはここの中で方向性が示されておりません。フルタイムのパートタイム労働者、いわゆる疑似パートタイム労働者については、前回の法改正から積み残された課題だと思っております。この疑似パートタイム労働者についても、今回の法改正でパートタイム労働者の対象者にすべきだと考えるのですけれども、研究会ではどのような議論があったか、併せてお伺いしたいと思います。
○大隈均衡待遇推進室長
まず、一つ目の福利厚生に関するご質問ですけれども、確かに研究会の中では第11条ということで一つの論点として掲げて議論はしなかったのですが、第8条や第9条のところで、例えば現在の第9条も職務関連給付を対象としているところですので、これも職務関連給付でよいのか。あるいは、今後、第8条について、パートタイム労働者であることを理由として合理的な理由なく不利益取扱いをしてはいけないというような法制を仮に採る場合には、どういった給付を対象としたらよいか。報告書で言いますと32ページのちょうど真ん中ぐらいです。一番上に、一つ目の○の「また」というパラグラフがあると思いますが、この下から4行目の「さらに、後者の法制を採る場合には」ということで、仮に「合理的な理由」なく、パートタイム労働者であることを理由として不利益な取扱いをしてはならないという法制を採る場合には、現行の第9条では職務関連給付だとしていますけれども、職務関連給付をするのか、それ以外の給付とするのか、あるいはそういったものごとに考え方を変えるのか。そういった形で各種手当ての議論がなされたということはあります。福利厚生について直接的な議題とはしておりませんが、待遇の第8条、第9条の関連でご議論があったところです。
それからフルタイム無期契約労働者やいわゆる疑似パートタイム労働者につきましては、フルタイムの有期契約労働者に該当する人につきましては、報告書の中でも32ページの今の段落の下の方にありますけれども、研究会の中では当然問題意識はあり議論はされたところです。パートタイム労働法の適用範囲を広げていくということであれば、こういったフルタイム有期契約労働者を対象にすることは一つの考え方としてあるのではないかということで報告書にも盛り込んでおります。
ただ、これは先ほど課長からも説明しましたように、労働条件分科会の方で先行して1年ぐらい前から検討をしておりますので、研究会報告書の中でもそれを踏まえて検討する必要があるという記述になっているところです。
○林分科会長
それでは、補足をお願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
若干、補足させていただきます。フルタイム無期契約労働者の話といわゆる疑似パートタイム労働者の話というご質問を頂戴いたしましたけれども、基本的に主としていわゆる疑似パートタイム労働者、あるいは呼称パートといわれている層につきましては、おおよそフルタイムの有期契約労働者に該当される人が多いのだろうと思っております。この点につきましては今説明させていただきましたとおり、労働条件分科会の中でかなり議論が進んでいます。フルタイムの有期契約労働者にはいろいろな人がいらっしゃいます。例えば期間工の人もいらっしゃいますし、もちろんいわゆるフルタイムパートと呼ばれている人もいらっしゃいますし、あるいはその他にも契約社員と呼ばれている人等、さまざまな人がいらっしゃいます。その中で、フルタイムのパートタイム労働者についてどのように考えているかという議論が当然必要になってくるわけですが、一方で有期契約労働者の中で、それなりのボリュームを持つ層であることも間違いないと思います。そういう意味で、有期契約労働者の在り方についての議論の中でそれなりのウエートを占めた議論が進んでいるものと考えておりますので、そのような先行的な議論も十分に見ていく必要があるのではないかと思っております。
このようなことから、フルタイムの無期契約労働者の議論につきまして研究会報告書では触れております。有期契約労働者の議論の中で雇用管理を改善する、あるいはパートタイム労働法制の中で雇用管理の改善がある中で、残された部分として残るということがあります。一方で、フルタイムの無期の人と正社員の違いの辺りはかなり難しい議論が出てくるという中で、その辺りの実態が正直はっきりとしていない部分もあります。そういったものの実態を把握しながら、具体的な対策については検討する必要があるのではないかと考えております。観念的には、正社員でないフルタイム無期の人がいらっしゃるとすれば、その方々の処遇をどのような形で考えていくのかは一つの大きな論点としてあるわけですけれども、現状において有期労働契約法制の議論、あるいはパートタイム労働法制の議論がどのような姿になるのか明らかになった段階で、そのようなものをどのような形でフルタイム無期の人にも当てはめていくのかという辺りの議論をしていくのではないかと思っております。以上です。
○林分科会長
その他に。齊藤委員。
○齊藤委員
53ページの6「その他」の(2)「税制、社会保険制度等関連制度」に関して2点質問させていただきます。パートタイム労働者の中には社会保障の枠組みで守られるセーフティネットの中に入れない方々がたくさんいらっしゃいますが、3月に発生した東日本大震災で休業を余儀なくされた方々の中にも雇用調整助成金が受けられないということで、休業保障がされなかった人もいらっしゃいます。こういったことに関連して、パートタイム労働者のセーフティネットという観点からの記載がここの部分に入っていないのですが、そういったことに関連して何か議論がなされたということがあれば、お伺いしたいと思います。
もう1点は、この中にも「厚生年金制度及び健康保険制度の適用拡大が検討されている」という項目が1項目あります。現在、社会保障審議会の方で短時間労働者への社会保険適用に関する特別部会で議論が行われているということを承知しております。その中で、どのような議論がされているのか、論点や方向性について、わかる範囲で構わないので教えていただければと思います。以上です。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
税・社会保険制度の議論の中で、現在、社会保障審議会の部会において議論が進んでいるというのが1点、ご案内の通りです。別の項目の中で社会保障・税の一体改革成案についてもご説明いたしますが、それに基づいた議論が今進んでいるという状況です。その中でパートタイム労働者が多く就業する企業への影響についてどう考えるか。企業規模ごとの取扱いの差異を設けるかどうか、業種による取扱いについて差異を設けるべきであるなど、企業の事業主負担がかなり増えますので、それについての激変緩和策の必要性をどう議論するのか、あるいは小規模事業所について社会保険の適用が負担にならないか等の議論について検討を始めたところで、現在2回ほど開催しておりまして、9月30日に3回目を開催するということで、非常に密度濃く議論しているところです。もとより、こういった社会保険制度の適用がパートの人の就業に非常に大きな影響を与えているという問題がありますので、これをどういった形で緩和していくのかという意味でパートタイム労働者の対策においても非常に関心を持つべき事項だと思っております。
最初の1点目の質問が、十分に理解できない部分があったのですけれども、20時間未満の人について、補助金の対象等にならなかったということでしょうか。
○齊藤委員
そうですね、今回は。
○吉永短時間・在宅労働課長
現在、雇用保険制度に基づいて各種施策については先ほどご指摘がありましたように20時間という形、あるいは30日以上という形で現政権になって対象者が拡大した部分ではありますが、それらの基準に満たない人については法制上適用になっていない状況があります。もともと雇用保険が失業という保険事故に対して生計の補助を行うという保険制度になっておりますので、短時間の人に対するものが当てはまるのかという大きな議論の中でそのような位置付けになっているところです。20時間を切る人についての議論は、あまり全体として研究会の中心の議論になっておりませんけれども、パートの人でマルチジョブホルダーの方々もいらっしゃいますので、その方々についてどうするのかという議論は一部出ております。また、いずれにしても短時間労働の中できちんとした生計を計るための処遇をどのような形で改善するのか、働きや貢献に見合った処遇をどのような形で実現するのかということがパートタイム労働法の主たる考え方ですので、そういう観点から、先ほどご説明したような第8条、第9条の見直しについてのご提案をいただいたものと考えているところです。
○瀬戸委員
これは確認ですけれども、この「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」ですが、83ページに開催目的等が書いてありますけれども、この研究会のこの報告を基に雇用均等分科会の中で議論していくために、この研究会が設置され、現状分析なり課題が抽出されてきた。それを基にこの分科会で議論を進めていくということなのか。
というのは、先ほども他の委員から発言があったかと思いますけれども、この研究会報告書を事業者側から見たときに、実態的な面から見れば、やや不満というようなご意見があったかと思います。そういったことも含めて、この研究会報告書を基に議論していくということなのかどうかということを確認させていただければと思っております。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
本日ご報告させていただいた研究会の位置付けですが、ご説明しているとおり、審議会で法施行後3年の見直しに向けた検討を行うために、それについての議論を専門家の方に整理していただくという観点で、まとめていただいたものです。そういう意味で、これを検討の素材としてご議論いただければと考えておりますが、今回の研究会は多様な選択肢を示すという形の報告書になっております。そういう意味で、この選択肢の中でどのようなものを取るべきか取るべきでないか、あるいは、他の選択肢があるということであればそういうことを盛り込む形で議論していただければと思っております。ただ、そうは言っても84ページにありますように日本の専門家の中でも非常に代表的な方に入っていただいたものですから、報告書についてはご尊重いただきながら、ご議論を進めていただけるのではないかと考えているところです。
いずれにいたしましても、研究会の議論を素材としまして、自由にご議論いただきながら、パートタイム労働者の処遇なり、雇用管理をどのような形で進めていくのかという観点からご審議いただければありがたいと考えている次第です。
○林分科会長
布山委員。
○布山委員
今のご意見・ご質問に関連して、私も同じことを思っておりました。今年、パートタイム労働法施行後3年目の見直し時期を迎えて、それでこの分科会が開催されたと認識しております。そういう意味では、議論する必要性は理解できます。
ただ、この報告書の取扱いについては、あくまでも有識者の方々がお集まりになってご研究をされた取りまとめということであって、あくまでも雇用均等分科会の中で議論する際の参考資料という位置付けでよろしいのかどうかということです。むしろ、私はそのように思っております。また、一方的な方向性を求めているものでもないですし、複数の選択肢がある見解につきましても、どれか一つを前提にした議論を求めているものでもないということを確認させていただきたいと思います。
いずれにしても、パートタイム労働法の見直しそれ自体は、非常にわが国の今後の経済成長あるいは発展に関連する大きな問題で、重要なテーマであると私どもも思っております。そのような中で、この研究会の報告の内容は参考にさせていただきながらも、この三者構成の分科会の中できちんと議論したいというのが私の考えでございます。
○林分科会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
私も今、布山委員がおっしゃったように、この研究会の報告は、あくまでも参考にというか、さまざまな視点で調査、それから専門家の方たちの議論に基づいて整理させていただいて、私たちが今後、このパートタイム労働法をどのように見直していくかということにおいて、大変参考になるものだという視点でこの研究会報告を見たいと思います。
使用者側の委員の方たちがおっしゃっていましたけれど、やはり先生方の研究結果ということで少し現実とは違うとおっしゃっていましたが、私どももそういった視点では、はっきり申し上げて、大変大きなボリュームとなったパートタイム労働という働き方をしている人たちの率直な声が聞こえていないという感想を持っています。
そのような点でも指摘はしていただいていますが、この1,414万人にもなろうという非正規労働者の中でも最大のボリュームであり、多くが女性であるパートタイム労働者は、これも使用者側委員がおっしゃっていたように、一律では見られないというところに大変難しさがあるのですが、過去からのパートタイム労働者の変遷を見ていくと、今、非常に私どもが問題意識を持っているのは、子育て期の女性たちがこのパートタイム労働に従事しているということで、そのグループから見ると非常に家庭的、家族的責任を負っているからこそ、他の就業形態を選べない、他の就業形態に就けない。そういう中で、限定的な就業形態として選ばざるを得なかったというところが、この就業している現状にあると思います。そういう中で、私どものパートタイム労働者に聞くと、「私たちはパートタイムで働く以上、例えば労働条件が正社員より低くても仕方がない。それから、賃金が3、4割下がっても仕方がない」と。この「仕方がない」という言葉を多く聞きますが、それをこの研究会の報告においては「納得している」と翻訳されているのではないかという感想も持ちます。
布山委員がおっしゃったように、今や日本の労働力全体の中で、このパートタイム労働者を外すわけにはいかない大変なボリュームになっています。これが、その人たちの「我慢」や「仕方がない」という考えの上に乗っかって、そのまま維持していくのではなくて、少しでもその人たちが、より生産性を上げられる、より働きがいを感じられるような環境にもっていくことが私たちに課せられたパートタイム労働法見直し、改正の視点だと思いますので、冒頭で申し上げましたように、研究会の先生方に大変ご尽力いただいた成果物を参考にさせていただいて、三者構成の分科会の中で「あるべきパートタイム労働法」について、議論をさせていただきたいと思います。これは意見でございます。
○林分科会長
中西委員、どうぞ。
○中西委員
いろいろなご意見を拝聴させていただきまして、一言、中小企業・零細企業の立場から、経営の厳しさについて再度、述べさせていただきたいと思います。本法が施行されて今日に至る3年間の世界の経済状況、日本の経済環境、それから私たち中小企業の経営者の経営環境の厳しさは日々一層増すばかりでございます。何とか雇用を確保したいという思いで、さまざまな中小企業・零細企業の経営者が日々、奮闘努力して今日に至っております。奮闘努力のかいもなく、不本意ながら倒産に至る企業が続出しておりますことは皆さまご承知のとおりです。
法制化されることによって、さまざまな影響が私ども経営者サイドにも出てまいります。さまざまな業種を抱える中小企業・零細企業といたしましては、現場の具体的な事情に即した、それから現場の調査をさらに徹底して行っていただく機会を多く設けていただきたいと思います。非常に難渋しつつ、夜も眠れない経営者のそういう話を私は身近にいたしております。そういうことにつきまして、どうぞご理解のある議論が今後の分科会でなされますよう、願ってやみません。どうぞよろしくご議論のほど、お願い申し上げます。
○林分科会長
基本的には、パートタイム労働法の改正問題、見直しの検討については、本分科会の審議の中で決めていく。ただ、あまりに大きな問題でもありますので、この研究会報告書が一つの有識者の方々のお考えをまとめたもので、参考にというかそういうもの示唆等も受けて我々の考える一つの考え方の参考にしていくということになるのではないかと思っております。その点について、事務局から何かありますか。
○吉永短時間・在宅労働課長
ただ今、分科会長におまとめいただいたとおりだと思っております。パートタイム労働法制の見直しについては、まさにこの分科会の中で、公労使三者構成の中でご議論いただくべきものだと思っております。
その中で、パートタイム労働対策をどのように考えていくのか、労働力供給制約の中でどのような形で全員参加型社会を実現するのかという観点からご議論いただくに当たって、この報告書は、正にご参考にしていただけるものであろうと思っておりますので、よろしくお願いしたいと考えております。
○林分科会長
それでは最後に布山委員、どうぞ。
○布山委員
報告書の内容ではなくて、見直しをすることになったということで、お願いと確認したいことがあります。先ほど申し上げたように、パートタイム労働者といっても、その実態は一様ではなく、さまざまでありますので、事務局は今後議論する際に、偏った議論とならないように、検討項目の設定やご提供いただく資料の作成に際しては、そのような観点で考えていただければと思います。そのような提供を受けながら、パートタイム労働法のどのような部分を見直すことによって、どのようなパートタイム労働者の処遇を適正化していこうとするのか。これをきちんと明確化して、その中で必要性あるいは手段について冷静にきちんと議論を三者でしていければと思っております。
また、先ほど他の委員からも出ていましたし、この報告書の中にもどこかにあったと思いますけれど、パートタイム労働者のおよそ8割がいわゆる有期契約労働です。先ほど事務局からも説明があったように、昨年から労働条件分科会において有期労働契約の在り方について審議がなされているところでございます。また、パートタイム労働者の多様な実態ということを考えると就業調整等、働き方のニーズもいろいろでございますので、そういうことも踏まえてパートタイム労働のあるべき姿というものを考える際には、このような議論の動向も当然、視野に入れる必要があると思っています。本部会での審議だけではなく、そういうことも注視しながら議論できればと思っていますので、そのようにお願いします。以上でございます。
○林分科会長
それでは、他に特にないようでしたら、次の議題に進みたいと思います。「その他」ということで報告案件がありますので、事務局より説明をお願いします。
○伊藤総務課長
資料No.3をご覧いただきたいと思います。「社会保障・税一体改革成案」というタイトルの資料でございますが、これは少し前になってしまったのですが、本年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部で決定されまして、7月1日に閣議報告されたものでございます。6ページをご覧いただきたいと思います。この社会保障・税一体改革成案の中で、労働関係につきましては6ページの真ん中辺りに「就労促進」という項目があります。これは労働市場への参加保障の理念によって、積極的に人々の就労を促進して雇用の拡大に取り組むという観点から、この項目が盛り込まれていると承知しております。
一つ目の丸です。「全員参加型社会の実現のために、若者の安定的雇用の確保、女性の就業率のM字カーブの解消、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会づくり、障害者の雇用促進に取り組む。その下には、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る」といったことが書かれています。当分科会の関係では、M字カーブの解消のほか、ディーセント・ワークにはパートタイム労働対策を含めた非正規労働対策が含まれていると理解しております。
その上のⅢ「年金」ですが、女性の就業に関係のある事項としまして、二つ目の丸の二つ目のポツでございます。短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見直し、産休期間中の保険料負担免除などが盛り込まれております。このうち、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大につきましては、先ほども議論がございましたけれども、9月1日から社会保障審議会の特別部会で議論がなされています。これにつきましては、議論が進んだ段階で必要に応じまして当分科会でも紹介させていただきたいと考えております。
それから、少し戻りまして4ページ、5ページをご覧いただきたいと思います。「その他」の関連項目としまして4ページの一番下でございますけれども、「子ども・子育て」に関する記述があります。5ページの一番上の丸でございますが、「子ども・子育て新システムの制度実施等に伴い、地域の実情に応じた保育等の量的拡充や幼保一体化などの機能化を図る」とされていまして、具体的な施が二つ目のポツに掲げられています。この「子ども・子育て新システム」につきましては、税制改正法案と併せて次期通常国会に法案を提出できるよう現在、政府内で検討を進めているところでございます。私からは、以上でございます。
○吉本雇用均等政策課長
続きまして、資料No.4に基づきまして「平成22年度雇用均等室における法施行状況」について、ご説明いたします。まず、「相談」件数でございますが、1ページ目の一番下の表をご覧いただきますと、一番下の合計のところですが、17万件余りの相談が寄せられていまして、括弧書きの昨年の数字に比べますと大きく増えております。その主な要素といたしましては、改正育児・介護休業法が昨年の6月末から本格的に施行されていますので、その関係で育児・介護休業法の、特に事業主からのご相談が大きく増えているといった状況がございます。
各法律についての文章のところをご覧いただきますと、まず「男女雇用機会均等法」の相談内容につきましては、依然としてセクシュアルハラスメントに関するものが最も多く、次いで、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関するものとなっております。
それから、1ページの中ほどの「育児・介護休業法」の相談内容としましては育児休業に関するご相談が最も多く、次いで所定労働時間の短縮措置等に関するご相談となっておりまして、二つ目のポツで特に育児休業の取得等を理由とした不利益取扱いについては1,543件と、前年に比べて若干減少はしていますけれども、リーマン・ショック以降はかなり多くの相談を寄せられる状況が続いております。
また「パートタイム労働法」につきましては、通常の労働者への転換に関するものが最も多く、次いで労働条件の文書交付に関するものなどとなっております。二つ目のポツにありますように、昨年度につきましてはパートタイム労働に関する個別相談会を開催しました影響がありまして、短時間労働者からのご相談は増えているところでございます。
2ページをご覧ください。「是正指導」の状況でございます。各法律に基づきまして、報告徴収、事業所への現地調査などを行う中で、法違反が確認されたものについては是正指導を行っているところでございます。「男女雇用機会均等法」についてはセクシュアルハラスメントに関するもの、次いで母性健康管理に関するものが多く、育児・介護休業法については育児休業に関するものが最も多く、次いで子の看護休暇に関するもの。
また、「パートタイム労働法」につきましては通常の労働者への転換に関するものが最も多く、次いで労働条件の文書交付等に関するものといった状況になっております。
次に、3ページの「紛争解決の援助」でございます。その➀としまして「都道府県労働局長による援助」の受理件数でございますが、男女雇用機会均等法につきましては、これもこれまでの傾向と同様でございますが、セクシュアルハラスメントに関するものが最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱い。また、育児・介護休業法につきましては、育児休業に係る不利益取扱いに関するものが最も多く、5割を超える状況でございます。育児・介護休業法の紛争解決援助は、一昨年の9月末からの施行となっておりますので、一昨年の数字は107件でございますが、昨年はそれの2倍をさらに上回る件数が寄せられている状況でございます。パートタイム労働法については6件ということで、そこにありますような内容になっております。
➁の「調停」でございますが、男女雇用機会均等法については、これもセクシュアルハラスメントに関するもの、婚姻、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関するものが多く、育児・介護休業法につきましては、昨年4月から調停の制度が開始になっておりますが、21件。そのうち、育児休業に係る不利益取扱いが17件という状況になっております。
それから、4ページは次世代法の関係でございます。次世代法に基づく一般事業主の行動計画の届出状況でございます。これにつきましては、今年4月から届出の義務がかかる対象の企業が、それまでは301人以上でしたが、それに加えて101~300人の企業に対象が拡大されたところでございます。昨年度末にかけましては雇用均等室で、その対象となる企業の方々に集中的に届出勧奨をしたところでございますが、結果といたしまして、昨年度末の届出率が301人以上の企業は95.4%、101~300人の企業が60.7%でございまして、さらに最新の数字でご覧いただきますと、平成23年度8月末では、それぞれ96.2%、87.7%というところまで至っているところでございます。
それから➁は、一定の基準に該当する「くるみん」の取得の対象となる認定の状況でございますが、昨年度末までに1,000件を超えたところでございまして、直近の数字では1,139となっております。参考でございますが、「くるみん」の認定を受けている企業に対する税制の優遇措置が設けられておりまして、そこにありますとおり、認定を受ける対象となった計画期間開始の日から、認定を受けた日を含む事業年度終了の日まで、これは建物の減価償却が対象となりますけれども、その建物について割増の償却が受けられる制度でございます。こうしたものも活用していただきながら、「くるみん」の取得を勧めていきたいと考えております。
続きまして、資料No.5でございます。「雇用均等特別相談窓口の設置について」ということで、3月の東日本大震災への対応といたしまして、雇用均等室におきましても被災地等に特別相談窓口を設置したところでございます。震災に伴いましてさまざまな問題を抱えられた労働者からの相談に迅速に対応するようにいたしております。相談事例にありますような営業再開後に妊娠を理由に自宅待機を命じられた。あるいは産前・産後休業中で、出産後は育児休業を取得する予定であったけれども、経営難であることを理由に解雇されたといったようなご相談などが寄せられているところでございます。このところ、相談件数としては、やや落ち着いてきておりますが、引き続き的確に対応していきたいと考えているところでございます。以上でございます。
○林分科会長
今の「社会保障・税一体改革」と「雇用均等室における法施行状況」、および「雇用均等特別相談窓口の設置について」の説明について、何かご質問等がありますか。
齊藤委員、どうぞ。
○齊藤委員
「平成22年度雇用均等室における法施行状況」について、質問させていただきます。パートタイム労働法への相談で、通常の労働者への転換に関するものが最も多いとされていますが、もう少し詳細な内容を。例えば措置が講じられていないのか。措置が講じられていても実際に運用ができていないということもあると思いますので、そういった部分についてお聞かせいただきたいと思います。
同じく、是正指導の方についても、お聞かせいただければと思います。
○林分科会長
均衡待遇推進室長、お願いいたします。
○大隈均衡待遇推進室長
パートタイム労働の関係で相談の件数が一番多いのが「通常の労働者への転換に関するもの」で、937件ですが、これをもう少し細かく見ますと、事業主からの相談が505件、パートタイム労働者からは217件、その他が215件です。事業主からは、どのような措置をとればパートタイム労働法第12条を満たすことになるのかという質問が多くなっています。
パートタイム労働者に関しては、そもそも、その措置をご存じなくて、説明するということもありますし、自分は対象になるのだろうかという質問もあります。それから、中には転換できないということでの相談を受けていることもあります。
それから、二つ目の「是正指導」です。平成22年度の是正指導件数につきましても、通常の労働者への転換に関するものが最も多いということです。これは第12条の措置がとられていないということで、パートタイム労働法に基づいて正社員を募集する場合の周知でありますとか正社員を配置する場合の応募機会の付与、試験制度のいずれかを採っていただけるように指導しているところです。
○林分科会長
よろしいですか。
その他に何か、ご質問がありますか。
○瀬戸委員
資料No.5の雇用均等特別相談窓口の設置ですが、資料では設置する場所が青森、岩手、宮城、福島及び茨城労働局雇用均等室「等」と書いてありますが、これ以外にはどこにあるのですか。
○吉本雇用均等政策課長
まず被災地には設置するようにといった指示をしまして、それ以外のところにも必要な状況に応じてということで指示しましたところ、その他といたしましては山形、愛知、新潟、神奈川、栃木、千葉、熊本、秋田について。新潟については、窓口としての対応は6月末で終えているようですが、その他の窓口は継続して開設しているところです。
○林分科会長
よろしいですか。他に何か、ご質問等がありますか。ないようでしたら、本日の議事は、これで終了いたします。
最後に、本日の署名委員ですが、労働者代表は關委員、使用者代表は布山委員にお願いしたいと思います。
それでは、本日の分科会はこれで終了します。どうもご苦労さまでございました。
(了)
ただ今から、第104回労働政策審議会雇用均等分科会を開催させていただきます。4月27日付で委員の改選がありまして、本日は、その後の最初の会合でございますので、分科会長が決まるまでの間は暫時、事務局が議事進行をさせていただきます。
本日は、中窪委員、山川委員、山本委員より欠席されるとの連絡をいただいておりますが、定足数は満たしております。
それでは、まず新任の委員をご紹介いたします。お手元に配布させていただいております資料No.1-1「労働政策審議会雇用均等分科会委員名簿」をご覧いただきたいと思います。今回は、公益委員2名が新しく雇用均等分科会委員となられましたので、ご紹介いたします。亜細亜大学経済学部教授の権丈委員でございます。
○権丈委員
権丈でございます。よろしくお願いいたします。
○伊藤総務課長
それから、本日はご欠席ですが、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の中窪委員です。
なお、本日は藤田政務官が出席されていますので、一言ご挨拶をお願いします。
○藤田政務官
皆さま、こんにちは。この度、政務官に就任いたしました衆議院の藤田一枝でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日、委員の皆さまにおかれては、何かとお忙しい中に雇用均等分科会にご出席いただきまして、誠にありがとうございました。
いよいよ今日から本格的に今後のパートタイム労働対策についてご審議いただくわけでございますが、ご案内のとおり、2008年に施行されましたパートタイム労働法においては、3年後の見直しに向けた検討規定が設けられておりまして、目下その時期を迎えているところでもございます。
また、先般「パートタイム労働対策に関する研究会」の報告も取りまとめられまして、大臣に提出されたところでもございます。そしてまた、前回の改正法以降、パートタイム労働者のいろいろな処遇や賃金の問題については、一定の改善が見られたともいわれておりますけれども、まだまだ課題が山積しておりまして、処遇の改善や賃金格差の是正が強く求められているところでもございます。
委員の皆さまにおかれては、それぞれのお考え、あるいはお立場がおありかとは思いますが、今は非正規雇用が増大して大きな問題になっている状況下でございますので、ぜひ、パートタイム労働というものがライフスタイルに応じた魅力的な働き方の選択肢の一つとなり得るようにご審議いただきたい。とりわけ、連続性の向上あるいは均等待遇の推進といったことについてご審議を賜れば大変幸いと思っているところでございます。
小宮山厚生労働大臣も、このパートタイム労働法の改正については強い意向を示しておられるということもございまして、私も一緒に取り組んでまいりたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
○伊藤総務課長
次に、事務局に2名異動がございましたので紹介させていただきます。私は総務課長の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いします。
それから、職業家庭両立課長の成田でございます。
○成田職業家庭両立課長
よろしくお願いいたします。
○伊藤総務課長
それでは、議題1「分科会長の選出」について、ご説明申し上げます。資料No.1-3をご覧いただきたいと思います。資料No.1-3は労働政策審議会令の抜粋でございますが、第6条第6項に「分科会に分科会長を置き、当該分科会に属する公益を代表する委員」これは労働政策審議会の本委員のことでございますが、この「委員のうちから、当該分科会に属する委員が選挙する」とされております。本分科会では、公益代表のうち本審議会の委員でいらっしゃいますのは林委員のみですので、林委員に分科会長に引き続きご就任いただくことになります。よろしくお願い申し上げます。
それでは、以後の進行は林分科会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○林分科会長
それでは、議事に入りたいと思います。まず、労働政策審議会令の第6条第8項では、分科会長代理について、分科会長が指名することになっておりますので、私から指名させていただきます。佐藤委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、「家内労働部会に属すべき委員及び臨時委員の指名」についてですが、これにつきましては労働政策審議会令第7条第2項において、分科会長が指名することになっております。あらかじめお手元にお配りしております資料No.1-2のとおり指名させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議題2に入ります。議題2は「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」についてです。本件につきましては、今月15日に開催されました「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」において、報告が取りまとめられています。
まず、事務局からその報告書についての説明をお願いいたします。
○大隈均衡待遇推進室長
それでは、事務局から「今後のパートタイム労働対策に関する研究会報告書」につきまして、説明させていただきます。お手元に冊子があると思いますが、よろしいでしょうか。
内容を説明させていただきます前に、通しページの83ページをご覧いただければと思います。まず、研究会の位置付け等につきまして、説明いたします。83ページは「今後のパートタイム労働対策に関する研究会 開催要綱」となっております。先ほど藤田政務官からのお話にもありましたように、パートタイム労働法は平成19年に改正されまして、平成20年4月1日より施行されております。この平成19年の改正時に、改正法の附則におきまして「施行後3年を経過した場合に見直しのための検討をする」という規定があります。これを踏まえまして、パートタイム労働の実態の把握と課題の整理、そして今後のパートタイム労働対策について検討を行うために開催されたところです。
参集者については、隣の84ページにございます。学習院大学の今野先生に座長をお務めいただきまして、雇用均等分科会の権丈委員、佐藤委員、山川委員もメンバーでいらっしゃいました。
そして、85ページをご覧いただければと思います。今年2月から、10回の議論をし、途中、労使の方々からご意見を伺うということもいたしまして、9月15日の第10回研究会で報告書を取りまとめました。参考資料を2枚めくっていただきますと「パートタイム労働対策に関する最近の主な提言等」という資料も付いております。こちらには、先ほど説明いたしました改正法の附則である3年後の見直し規定や、さまざまなパートタイム労働対策に関します閣議決定も付けています。
この中でも特に提言の5ページ、6ページをご覧いただければと思います。昨年6月18日に「新成長戦略」が閣議決定されています。この中に「ディーセント・ワークの実現」という項目もございます。6ページですが、この新成長戦略の計画(工程表)の中の「2011年度に実施すべき事項」にパートタイム労働法の施行状況を踏まえた見直しの検討という事項も入っています。
報告書の内容を説明させていただきます。報告書本体の「目次」をお開きいただければと思います。報告書の構成は、こちらにありますとおり二部構成ということで第1の「総論」で「パートタイム労働をめぐる現状」「検討に当たっての基本的考え方」「パートタイム労働の課題」「検討に当たっての留意事項」という四つの柱、第2で「今後のパートタイム労働対策」についての選択肢が取りまとめられているという構成になっております。
第1の「パートタイム労働をめぐる現状」ですが、これは今後の議論に当たりまして基本的な事項となると思いますので、図表を用いまして説明させていただきます。大変恐縮ですが、通しページ54ページのパートタイム労働の現状、1の「パートタイム労働者数」をご覧いただければと思います。平成22年度の週間就業時間35時間未満の者は1,414万人ということで、すう勢として増加しています。また、平成22年には雇用者総数に占める週35時間未満労働者の割合が26.6%ということで、約4人に1人がパートタイム労働者と考えられます。1ページおめくりいただきますと、雇用者総数に占めるパートタイム労働者の割合は、緑色の数字で、今、申し上げましたように26.6%です。男女別に、それぞれの労働者に占めるパートタイム労働者の割合を見ても、すう勢として増加しているということが見てとれます。
また、55ページの図表4はパートタイム労働者の業種別の分布状況ですが、卸売・小売業、サービス業、製造業、医療・福祉業で多くなっています。
次の56ページの図表6は企業規模別のパートタイム労働者の分布を見た状況です。100人未満の事業所に勤務するパートタイム労働者が半数ということで、小規模の事業所にパートタイム労働者がかなり多く存在していることがわかります。
また、次の57ページの図表7は、年齢別に見た数字です。男性につきましては、さまざまな年齢構成でパートタイム労働者が分布しています。女性につきましては、35~54歳層に占める割合が、ほぼ半分です。
それから58ページの図表9をご覧いただければと思います。これは勤続年数です。女性は少しずつ、男性もかなり勤続年数は延びています。また、勤続年数の分布を見ますと、男性につきましても勤続年数が5年以上というパートタイム労働者が約4分の1、女性につきましても、勤続年数が5年以上が約4割という状況になっています。
その下の図表10ですが、これは年齢別に一般労働者の男女、パートタイム労働者の男女の1時間当たりの所定内給与額を見ております。この表を見ますと、男性・女性のパートタイム労働者につきましては、年齢構成にかかわりなく賃金額がほぼ一定であるということが見てとれます。
また、59ページの図表11は、勤続年数別に男女の一般労働者とパートタイム労働者それぞれで1時間当たりの所定内給与額を見ております。やはりパートタイム労働者、特に女性につきましては勤続年数が延びても時給はそれほど大きくは上昇しないということが見てとれます。ちなみに、点線で示しているのが平成17年の数字で、実線が平成22年ということで、一番下の女性パートタイム労働者につきましては、平成17年から平成22年にかけまして、いずれの勤続年数の区分においても数十円ぐらい上昇しています。
その下の図表12ですが、これは一般労働者とパートタイム労働者の1時間当たり所定内給与額の格差についての数字です。これは女性同士で一般労働者とパートタイム労働者を比べますと、そこにありますようにパートタイム労働者が約7割ぐらいということ。男性につきましては、一般労働者に占めるパートタイム労働者の割合については54.7%になっています。
また、60ページの図表13は、パートタイム労働者の組織率で、少しずつ上昇しており、平成22年には5.6%になっています。下の表につきましてはパートタイム労働者に関して労働組合が何らかの取組をしているかということですが、組合加入資格があり組合員がいる組合におきましては、労働条件や処遇の改善要求、相談窓口の設置といった取組がなされているという状況が見てとれます。以上が、パートタイム労働につきましての全体的状況です。
61ページの図表15以降は、パートタイム労働法の施行後2年間の状況につきまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構におきまして、昨年、アンケート調査を実施した結果です。その結果、パートタイム労働法の施行を機に、一番左側の棒グラフですが、約6割の事業所が何らかの措置を実施したと回答しております。その隣にありますように、その中でも一番多かった回答が「パートタイム労働者の労働条件通知書等で特定事項を明示するようにした」で、約半分ぐらいになっています。また、「正社員とパートタイム労働者の職務内容の区分を明確にした」という事業所も14%、それから、福利厚生施設の利用、正社員への転換措置を設ける、待遇の改善、教育訓練の実施といった選択肢も約1割ぐらいの事業所で実施されているという状況が見てとれます。
61ページの図表16は、現行パートタイム労働法の第6条の関係です。平成22年をご覧いただければと思います。これがパートタイム労働法の施行後2年間についての調査です。平成18年に厚生労働省が実施しておりますパートタイム労働者総合実態調査の結果も併せて載せておりますので、ご参考に見ていただければと思います。図表16でいきますと、「労働条件を明示している」事業所が97.3%、かつ、その明示の方法ですが、右側に棒グラフがありますように、「書面を交付している」所が約9割ということで、平成18年との変化を比較いたしましても、文書で労働条件を明示する事業所が増えているのではないかと考えられます。
また、62ページの図表18は、現行のパートタイム労働法第8条・第9条の関係で、正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいるかどうかを調査したものですが、その結果、正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいると回答した事業所は24.4%です。
続きまして、63ページの表19ですが、「正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいる場合に、1時間当たりの賃金額に差があるか」という質問に対しましては、平成22年をご覧いただければと思いますが、賃金差が「ある」と回答した事業所が7割を超え、「正社員より低い」と回答している事業所が約7割ということです。その賃金差がある理由が、その下の図表20です。「勤務時間の自由度が違うから」「そういった契約内容で労働者が納得しているから」といった回答が多くなっています。
64ページの図表21につきましては、先ほどは事業所に対して正社員と同じ仕事をしているパートタイム労働者がいるかどうかと質問しましたが、こちらについては、パートタイム労働者に対して、自分と同じような仕事をしている正社員がいるかどうかという質問に対する回答です。「業務の内容・責任も同じ正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は15.9%。それから「責任の重さは違うが、同じ業務の正社員がいる」と回答したパートタイム労働者は約4割ということです。今の約5割の人たちに、その正社員との賃金水準についての納得度について質問した回答が右側の円グラフです。「正社員より賃金水準は低いけれども納得している」と回答しているパートタイム労働者がピンク色の部分ですが5割を超えています。それから「賃金水準が低く、納得できない」と回答しているパートタイム労働者が28%、「わからない」という回答も14.9%あるところです。
1枚めくっていただきまして、65ページの図表23は、先ほど「正社員と職務がほとんど同じパートタイム労働者がいる」と答えた事業所に対しまして、そのうち、人材活用の仕組みも同じパートタイム労働者がいるかどうかという質問に対する回答ですが、正社員と全期間あるいは一定期間、職務も人材活用の仕組みも同じパートタイム労働者が「いる」と回答した事業所は18%となっています。
この結果、65ページの図表24ですが、パートタイム労働法の3要件に該当する、職務が同一、人材活用の仕組みも正社員と同一、無期または実質無期契約のパートタイム労働者につきまして、この調査においては全てのパートタイム労働者に占める割合は、左側の四角の一番下、0.1%ということでした。
続きまして、66ページの図表25は「パートタイム労働者の採用時の賃金決定の際に考慮した内容」ということで、平成22年にはパートタイム労働者の能力・経験、職務の内容などを考慮していると回答した事業所が多くなっておりまして、地域での賃金相場や最低賃金よりも、能力や職務の内容を勘案したと回答した事業所の方が多くなっています。
それから、その下の図表26です。これは手当や福利厚生の制度について、正社員とパートタイム労働者のそれぞれにどのように実施しているかという実施状況の事業所に対する調査です。緑色の方が正社員とパートタイム労働者の両方に実施している、灰色の方は正社員に対してのみ実施ということですが、正社員にのみ実施ということでは退職金、役職手当、家族手当といったものが多くなっています。両方に実施しているものは通勤手当、健康診断、慶弔休暇といったところが多くなっています。
67ページの図表27は、パートタイム労働者に対して、職務が同じような正社員には実施されていて、自分には実施されておらず納得できない制度としてはどのようなものがあるかということを聞いた質問に対する回答です。「賞与」が一番多くなっています。そして「定期的な昇給」「退職金・企業年金」については納得できないと考えているパートタイム労働者が多いということです。
続きまして、下の図表28はパートタイム労働者に対する教育訓練の実施状況についての調査結果です。パートタイム労働者につきましては緑色、正社員と職務が同じパートタイム労働者は黄色の部分ですが、一番左側の青色は正社員に対してということです。「入職時のガイダンス」や「日常的業務を通じたOJT」などはパートタイム労働者に対しても、ある程度は実施されています。一方で、「キャリアアップのための教育訓練」については、正社員とパートタイム労働者の実施比率の差が大きくなっています。 68ページの図表29は、パートタイム労働法第12条で義務としている正社員への転換推進措置ですけれども、実際に実施している事業所は48.6%ということで、半数です。
そして、その下の図表30ですが、実際に実施している企業のうち、正社員に転換させた実績があるかどうかということを質問していますが、上から二つ目の棒グラフですが、実績があると答えている事業所は39.9%になっています。
それから、70ページの図表34をご覧いただければと思います。パートタイム労働法第13条では、パートタイム労働者から説明の求めがあった場合に、事業主は待遇を決定するに当たって考慮した事項について説明するという規定がありますが、実際に説明を求められたことがある事業主は22.3%でした。このうち、説明をしたかどうかという質問には、98.5%の事業主が説明しているという回答をしています。ちなみに、その表の右下ですが、パートタイム労働法には、事業主は、パートタイム労働者から苦情の申し出があったときに自主的な解決をする努力義務が設けられていますが「解決に努めている」事業所は92.4%ありました。
続きまして、71ページの図表35です。現在の会社や仕事に対して不満・不安があるかどうかという質問ですが、約6割のパートタイム労働者が「不満・不安がある」と回答しております。そして、その内容は、平成22年は水色の方ですが、一番多いのが「賃金が安い」、それから「雇用が不安定」「勤続が長いのに有期契約である」「正社員になれない」といった選択肢などが多くなっています。
その下の図表36は、パートタイム労働者を雇用する理由です。これにつきましては「人件費が割安なため」「簡単な仕事内容のため」「一日の忙しい時間帯に対処するため」という回答が多くなっております。
72ページの図表38は、パートタイム労働者の「働いている理由」です。これにつきましては、一番多いのは「主たる稼ぎ手ではないが、家計の足しにするため」が、男女計と女性で見たときに多くなっています。
続きまして、73ページの図表39です。パートタイム労働者を選択した理由につきましては、「都合のよい時間(日)に働きたいから」「勤務時間・日数が短いから」が多くなっています。
また、図表40は「今後の働き方に関する考え方」ということで、引き続きパートタイム労働者を「続けたい」人が約7割で一番多く、「正社員になりたい」という人は18.8%という状況です。
74ページの図表41ですが、就業調整をしているかどうかという調査をしましたところ、平成22年でも約4人に1人が就業調整を行っているということです。理由につきましては、非課税限度額や社会保険の関係の130万円が理由として挙がっているところです。以上が、施行後2年間の状況です。
74ページの図表42です。これは都道府県労働局雇用均等室の施行状況です。図表42は相談件数ですけれども、平成19年度・平成20年度は法改正の前後ということで、質問が多くなっております。平成22年度につきましても、6,000件を超える相談が寄せられているところです。
76ページをご覧ください。図表46です。平成20年度以降の事業主に対する報告徴収・指導件数です。報告徴収実施事業所数・指導件数も順調に増えています。平成22年度には1万2,590の事業所を訪問しまして、約2万6,000件の指導をしたところです。
78ページの図表50をご覧ください。こちらは、パートタイム労働法で現在、紛争解決援助の仕組みがあります。都道府県労働局長の紛争解決援助につきましては、3年間で14件の申立てがあったところです。また、調停につきましては、3年間で3件となっています。以上が、施行状況の現状です。
報告書に戻っていただいて、18ページをご覧いただければと思います。こういった現状を踏まえまして、パートタイム労働対策を検討するに当たっての基本的な考え方ということで、三つの項目を挙げています。一つ目は「パートタイム労働者の公正な待遇の確保」です。19ページの10行目です。現行のパートタイム労働法は、パートタイム労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇の実現を趣旨としておりますが、今後もそういったパートタイム労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇をより一層確保していくことが、社会の公正という観点から、極めて重要であるというのが、基本的な考え方の一つ目です。
基本的な考え方の二つ目としては、(2)「パートタイム労働者が能力を発揮する社会」ということです。今後、ますます労働力供給が制約される日本におきまして、「全員参加型社会」の実現ということで、そのためにはパートタイム労働者が能力を十分に発揮できるような条件整備が必要である。パートタイム労働者を積極的に活用していくことが重要であるということが、基本的な考え方の二つ目です。
基本的な考え方の三つ目は、パートタイム労働者の就業実態が多様であること、また、企業の雇用管理制度も多様であるということを踏まえまして、20ページの下から3行目です。そういった多様性を踏まえて、きめ細かく対応できる方策を検討する必要があるということが基本的な考え方の三つ目です。
こういった基本的な考え方に基づきまして、21ページの「パートタイム労働の課題」です。まず、3(1)のイです。現行のパートタイム労働法第8条の関係です。先ほど、ご説明しましたように、21ページの下から2行目ですが「3要件に該当するパートタイム労働者は、実態調査によると、調査対象パートタイム労働者の0.1%となっているが、今後、第8条の規定を活用してパートタイム労働者の雇用管理の改善を進める余地は小さい状況となっている」ということを踏まえまして、現行のパートタイム労働法第8条の3要件について検討する必要があるということが課題として挙げられています。
ロの「均衡待遇の確保」は、現行の第9条の関係です。先ほどもありましたように、賃金の決定要素が変化している等の一定の効果があると考えられますが、まだ、賃金に対する不満・不安も高いということがありますので、より一層の待遇改善を推進する方策について検討する必要があるというのが二つ目の課題です。
(2)「待遇に関する納得性の向上」ということで、パートタイム労働法第13条の関係です。こちらも、一定程度パートタイム労働者の満足度は高まっている部分があると思われますけれども、23ページです。先ほどもご説明しましたが、「しかしながら」の段落にも書いておりますように、過去2年間に実際に説明を求められた事業主が2割程度ということですので、パートタイム労働者が実際に事業主に説明を求めることが、必ずしも容易でない状況がうかがえるということで、納得性を一層向上させる方策の検討が必要ではないかというのが課題です。
(3)の「教育訓練」につきましても、先ほど申し上げましたように、パートタイム労働者が従事する職務に必要な導入訓練は一定程度実施されていると考えられますが、キャリア形成のための教育訓練については、必ずしも十分に行われていないのではないかということです。そのため、こういったキャリア形成の促進について検討の必要があるのではないかというのが教育訓練についての検討課題です。
(4)「通常の労働者への転換の推進」です。これも先ほどご説明しましたように、実際に転換措置を実施している事業所が約半数ということもありますので、さらなる推進が必要との課題があると考えられます。
(5)「パートタイム労働法の実効性の確保」です。事業主に対する報告徴収、勧告といった点につきましても、長期間是正されない案件もありますので、さらなる方策について検討する必要があるのではないかということが指摘されております。
また、「紛争解決援助」ですが、先ほど説明しましたように、利用実績が非常に少ないということで、何らかの検討ができるのではないかということが指摘されております。
25ページ、26ページは「その他」としまして「税制、社会保険制度等関連制度」ということで、先ほどの調査で見たとおり、パートタイム労働者の4人に1人が現在就業調整を行っているということです。就業調整によりますパートタイム労働者の能力発揮の機会や、待遇の改善を阻害しているのではないかということで、この点についても検討が必要ではないかということが「その他」の検討事項です。
27ページ、28ページは「検討に当たっての留意事項」でごす。留意事項の一つ目としては、「有期労働契約の在り方の検討との整合性確保」です。有期労働契約の在り方につきましては、労働政策審議会労働条件分科会で現在、検討されているところです。また、8月には「議論の中間的な整理」が公表されています。パートタイム労働者の多くが有期労働契約で雇用されているということもありますので、そちらの方の検討との整合性を図る必要があるということが留意事項の1点目です。
留意事項の2点目です。「比較法の視点に基づく検討」です。EUでは、EU指令及びその国内法化などにおきまして、パートタイム労働者につきましては、パートタイム労働を理由とする合理的な理由のない不利益取扱いが禁止されているところです。他方、アメリカでは契約自由の原則から、そういった規制は特にないということです。こういった諸外国の法制も参考にしつつ、そういうものを比較法の視点に基づいて検討する場合は、各国の法制度の背後にあるさまざまな考え方、諸制度の相違にも留意する必要があるというのが、留意事項の2点目です。
それから、3点目、「社会保障・税一体改革成案及び第3次男女共同参画基本計画」です。さまざまな閣議決定がなされており、こういったものも留意する必要があるだろうということです。
また、4点目として「東日本大震災が企業に与える影響」ということで、大震災が企業に与える影響についても留意する必要があるだろうということで、留意事項の4点目として挙げております。
29ページ以降からが「今後のパートタイム労働対策」についての記述です。柱書きの8行をご覧いただければと思います。この研究会報告におきましては、考えられる選択肢を幅広く整理するということで、相互関係や措置すべき時点や手法などにとらわれず、幅広く選択肢を整理したというのが研究会の報告書の基本的な考え方です。
まず、「均等待遇」の関係です。29ページ1の(1)イです。ここにつきまして、ロの「今後の在り方」としては、①「3要件の在り方とパートタイム労働者であることを理由とする合理的な理由のない不利益取扱いの禁止」というところです。一つ目の○ですが、パートタイム労働法第8条の3要件の在り方につきましては、このパラグラフの4行目ですが、研究会におきましても「職務の内容が同一であること」の要件のみでよいのではないかというご意見がありました。一方で、そこから3行下ですが、「人材活用の仕組み・運用等が同一であること」との要件のみでよいのではないかというご意見もありました。また、次の段落ですが、一律に3要件を適用していることが問題ではないかというご意見もあったところです。
31ページです。さらに、第8条の適用範囲を広げていくという観点からしますと、上から6行目です。「事業主はパートタイム労働者であることを理由として、合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならないとする法制を採ることが適当ではないか」という意見もあったところです。この点に関しまして、合理的な理由については、個別の事案で判断されるという点がありますので、このような問題点を踏まえ、労使双方にとり予測可能性を確保するために、「合理的な理由」の考慮要素となり得るものについて一定の例をガイドラインで示すこととし、行政指導等による履行確保の際に利用するとともに、司法手続で参考とされることを期待することが適当ではないかという意見もあったところです。また、「合理的な理由」としまして、EU諸国では勤続年数、学歴、キャリアコースが考慮されていることを踏まえますと、日本の雇用システムでも「合理的な理由」を幅広く考えられるのではないかという意見もあったところです。
32ページの○の「また」の段落です。こういった法制にした場合は、現行の法制との立証責任の考え方についても整理する必要があるのではないかという意見もありました。
32ページの二つ目の○ですが、このように、パートタイム労働法第8条については、3要件の在り方を含め、適用範囲の拡大の方策について十分に議論する必要があるという指摘がなされているところです。
また、第8条の関係でいいますと②「フルタイム有期契約労働者」です。第8条の適用範囲を広げていくという観点からしますと、フルタイム有期契約労働者についても適用の可否について検討することも考えられるところですが、先ほども申し上げましたように現在、労働政策審議会労働条件分科会でもご議論いただいておりますので、そちらを見極めつつ、検討する必要があるという指摘になっています。
(2)「均等待遇の対象とならないパートタイム労働者の待遇改善」です。待遇の改善につきましては、パートタイム労働者のニーズが高いこともあり、34ページのロ「今後の在り方」での下から6行目ですが、賃金制度や雇用管理の取組は、個々の事業所ごとに多様であるということで、待遇改善の在り方について、法律等で一律の基準を設けることには限界があるのではないかという意見がありました。このため、個々の事業所ごとに、雇用管理の取組やパートタイム労働者のニーズ等の実情に応じて、事業主が自主的にパートタイム労働者の雇用管理の改善等を計画的に進めることが重要であるという意見がありました。この場合に、例えば、次世代育成支援対策推進法の枠組みを参考に、厚生労働大臣が指針を定めて、それに即して事業主が計画を策定する。そして、事業主が一定の基準を満たした場合には、その旨の認定を受けることができて、厚生労働大臣の定める表示を付すことができるということ。あるいは、現在、認定事業主に対しまして、割増償却制度の創設といった税制の恩典がこの6月から導入されたことを踏まえまして、パートタイム労働者の雇用管理の改善等のための行動計画を策定した事業主に対して、一定のインセンティブを付与し取組を促進することが適当であると考えられるとされております。
それから、待遇の関係で36ページに(3)「職務評価」とあります。職務評価につきましては、パートタイム労働者と通常の労働者との間で、均等・均衡待遇の確保をさらに進めるために非常に重要なツールではないかという考え方があるところです。そういった考え方も踏まえまして、研究会におきましては、専門家に対してヒアリングを行ったところです。37ページの二つ目の○で、そのヒアリングの結果について少し書いております。職務評価点に見合った賃金を計算することができ、その差に応じた賃金を払うことができるという見解も示されたところです。38ページの2行目ですが、ただし、職務評価は、単一の賃金体系を企業に要請するものではないというご意見もあったところです。
こういった職務評価に関しますヒアリングなども含めまして「今後の在り方」ということで、39ページです。職務評価の今後の在り方につきましては、日本におきましては、小規模企業では賃金表の作成すら十分なされていないという状況を考慮しますと、中小規模の企業を含めた事業主に広範に職務分析・職務評価を義務付けることは困難であって、むしろ、事業主がさまざまな実情に応じて職務評価制度を導入することを促していくことが一つの方向性として考えられるということで、先ほどご説明しました行動計画のメニューの一つとして位置付けるということが考えられるのではないかという指摘が、この報告書ではなされたところです。
続きまして、論点の二つ目「待遇に関する納得性の向上」の「今後の在り方」です。41ページのロ「今後の在り方」の一つ目の○ですが、先ほど現状と課題のところでも、説明を求めにくいのではないかということがありましたので、例えばパートタイム労働者が事業主に対して説明を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止を法律に規定することが考えられるという指摘がされています。
また、一番下の○ですが、パートタイム労働者からの求めという現在の法律上の要件にかかわらず、むしろ、求めの有無にかかわらず、事業所ごとの実情に応じて集団的労使関係の中で、納得性が向上するような枠組みを設ける方が重要ではないかという意見が研究会の中ではあったところです。
42ページの上から4行目、ドイツやフランスなどを参考にして、事業主、通常の労働者、パートタイム労働者を構成員として、パートタイム労働者の待遇等について協議することを目的とする労使委員会の設置が適当ではないかという考え方もあったところですが、他方で、日本では一般的に労使委員会の枠組みが構築されていないということで、パートタイム労働者についてのみ同制度を構築することに関しての検討が必要であろうという指摘になっております。
44ページ、三つ目の論点「教育訓練」です。ロの「今後の在り方」、教育訓練につきましても、経営戦略に応じて行われることを踏まえると、法律等により一律の基準を設けて事業主に義務付けることは困難ではないか。むしろ、事業主が先ほども説明したような行動計画の中で、パートタイム労働者のキャリア・ラダーの整備や、それに応じた計画的な教育訓練の実施を盛り込む。それに対して、インセンティブを付与していくことが良いのではないかという提言になっております。また、教育訓練につきましては、45ページの下の○「また」の段落ですが、職業訓練を通して得られた経験・能力を評価しやすい仕組みの普及が重要であるということで、「ジョブ・カード制度」「職業能力評価基準」「キャリア段位制度」の一層の普及・促進が重要であるという指摘もなされたところです。
47ページの「通常の労働者への転換の推進」についてです。(1)「通常の労働者への転換の推進」ロの「今後の在り方」です。48ページの上から6行目「したがって」からです。まず、フルタイムの通常の労働者の長時間労働の是正を図るということと、併せて、こちらにつきましても行動計画を作成して、パートタイム労働者のキャリア・ラダーを設ける。そして、計画的に教育訓練を実施する。そういった教育訓練などと組み合わせて、最終的に通常の労働者へ転換するための措置を講じることを促進するアプローチが考えられるのではないかというまとめになっています。
また、通常の労働者への転換の推進の中では、(2)の「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約についても研究会の中では議論になったところです。「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約につきましては、48ページの下から2行目にありますように、他の研究会の報告などでも提言されている状況です。
49ページのロ「今後の在り方」です。上から4行目ですが、事業所の閉鎖や職種の廃止の際の雇用保障の在り方について整理が必要であるという指摘もされているところです。こういったことも踏まえまして、この研究会におきましても、今後は関連判例の内容の整理が必要であると指摘されているところです。
(3)「パートタイム労働とフルタイム労働との間の相互転換」についても論点の一つとして議論があったところです。EUのパートタイム労働指令におきましては、パートタイム労働とフルタイム労働との間の転換の希望について事業主が配慮するという規定があるところです。そういったものも踏まえまして、ドイツやオランダなどにおきましては、相互転換について一定の法制が設けられているところです。
50ページのロ「今後の在り方」です。こういった相互転換は、ワーク・ライフ・バランスの観点からも有効と考えられる、しかしながら、通常の労働者とパートタイム労働者の間の待遇の格差が大きい日本では、まずは、両者の間の待遇の格差を是正していくことが必要ではないかということで、その状況を見極めつつ実現を目指していくことが考えられるというのが研究会のまとめです。
51ページの5「パートタイム労働法の実効性の確保」です。(1)「事業主に対する報告徴収、勧告等」ですが、今後は例えば雇用均等室の勧告に従わなかった場合のその旨の公表や、過料を課す対象の拡大を検討することが考えられるのではないかということが盛り込まれております。
また、(2)の「紛争解決援助」ですが、既にご説明しましたように、実績が少ない理由として、義務規定だけを対象としていることも理由の一つとして考えられるということで、対象範囲を例えば努力義務規定に広げられないかということも報告書の中で指摘があったところです。ただ、どういった内容の調停案にするかというのは、まだ検討課題であると書かれているところです。
実効性の確保というところで(3)の「その他」ですが、法の実現手段については、さまざまなものがあるということで、例えばEU諸国の動向なども踏まえますと、51ページの一番下から52ページにかけてですが、実体規制を通じた法違反による事後救済と併せて、当事者自らによる改善に向けた取組を促す手続規制の活用、具体的には、既に説明しました事業主による自主的な行動計画の策定を促進する枠組みといったものも今後重要になるのではないかというご意見があったところです。
53ページです。最後の「その他」 (1)の「フルタイム無期契約労働者の取扱い」です。ここは有期の検討とパートタイム労働法の検討と両者の検討から外れている部分ですが、今後も課題であるという意見があったところです。
また、(2)の「税制、社会保険制度等関連制度」ですが、働き方に中立的な税、社会保険制度の構築を早急に図ることが必要であるという指摘がされているところです。簡単ですが、報告書の説明は以上です。
○林分科会長
ご説明ありがとうございました。今後、この分科会でパートタイム労働法の見直しの検討をしていくわけですけれども、この研究会報告書は多くの示唆に富むものであると思います。その意味で、今ご説明いただきました研究会報告書についてのご質問・ご意見等がありましたら、お願いします。冨高委員。
○冨高委員
ありがとうございます。まず、今回の研究会の報告書のこれまで取りまとめにご尽力してきていただきました方々の努力に、まず、敬意を表したいと思います。
3点ほど、質問させていただきたいことがあります。この報告書の中では、パートタイム労働が抱える課題について、さまざまなものが多く指摘されておりまして、21ページです。先ほどもご説明いただきましたとおり、今は「差別的取扱いの禁止」という点で3要件に該当するパートタイム労働者が0.1%ということで、現状の第8条の規定を活用したパートタイム労働者の雇用管理の改善の余地が少ないという課題が指摘されております。この報告書を全体的に見せていただいて、今のご報告を伺っても、さまざまな有識者の意見が数多く列挙されていると見受けられたのですが、では第8条をどのように変更するべきかという明確な方向性が示されていないのではないかとも見ております。もし、よろしければ、この研究会の中では、その辺りについてどのような議論があったのか、もう少し詳しくお伺いしたいと思っております。これが1点です。
もう1点は、少し後ろになるのですが、48ページの「通常の労働者への転換の推進」の(2)「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約の部分につきまして、「勤務地限定」、「職種限定」の無期契約労働者についての表記がございます。これはパートタイム労働法の論議という意味では今回初めて、この報告書の中で提起されているものだと、伺っていて感じました。この「勤務地限定」、「職種限定」の無期契約労働者について、賃金・労働条件面で正社員と比べてどうあるべきなのか。それから、正社員という位置付けでは駄目なのか。そういったところが、研究会の中でどのような議論がされたのかというところを、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。これが2点目です。
2点目と少し関係がありますが、3点目といたしまして、この内容につきましては「雇用政策研究会報告書」及び「有期労働契約研究会報告書」で提言されていることを踏まえ、としていただいております。当然のことながら、先ほどご説明いただいたように有期契約の問題とも連動してくると思いますので、今、事務局で有期契約との論議の進め方について、具体的な連携の仕方という部分でイメージがあれば、ぜひ、その辺りについてお伺いしたいと思います。以上、3点です。
○林分科会長
では、事務局から。お願いします。
○大隈均衡待遇推進室長
質問の1点目ですけれども、第8条の今後の方向性について、さまざまな意見が列挙されているというご指摘だったかと思いますが、研究会の中では本当にさまざまな意見があったところです。繰り返しの説明で大変恐縮ですけれども、職務の内容が同一であるという要件でよいのではないかというご意見がある一方で、逆に日本の待遇というのは人材活用の仕組みで決定されるものであるので、そちらの要件だけでよいのではないかという議論もありました。また、企業によって職務給であったり職能給であったり、人材の決定の仕方がさまざまである中で、三つの要件を一律に適用することが問題なのではないかなど、まさに報告書に書きましたようなさまざまな意見が出たところです。
また、もう一つ、諸外国の法制、特にEU指令などを踏まえますと、パートタイム労働であることを理由として合理的な理由なく不利益な取扱いをしてはならない。今のように入り口で3要件で縛るのではなく、パートタイム労働者すべてを対象としたこういったEU法制のようなやり方もあるのではないかなど、本当にさまざまなご意見が出たところです。そこは、やはり待遇の決定の仕方がどのようなものなのか、企業によってさまざまな待遇の決定の方法、賃金制度があるという前提の中で、さまざまな意見が出たところです。
それから、2点目の48ページの「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約については、この働き方自体が、そもそも先ほどのご質問にありましたような、このような労働者の方の待遇がどうあるべきかという観点よりも、むしろパートタイム労働者は先ほどの実態の調査の中でも正社員になるよりは今のパートタイム労働者のままでという考え方もありますので、やはり勤務地や職種が限定された方が、パートタイム労働者のニーズに対応するのではないか。かつ、無期契約になるということで雇用が安定するのではないか。パートタイム労働者の転換先、移行先としてふさわしいかどうかという観点で議論したところです。そして雇用保障をどう考えるかということで、研究会の委員の中から整理解雇法理の4要件が柔軟に解釈されている例が多いという判例のご紹介もありました。ただ、委員もまだすべての判例を見ているわけではないので、やはり雇用保障のところについての整理などは、多様な正社員についての研究会でも十分に検討してもらう必要があるのではないかというご意見があったところです。
それから、3点目の有期労働契約の議論との連携の仕方、進め方ということですが、労働条件分科会の方の情報提供はこちらでも適宜させていただきたいと思っておりますし、当然、こちらの方の進め方について労働条件分科会でも必要があれば情報提供をすることも当然あると思いますので、委員の皆さま方にも有期労働契約の議論の進め方についての情報提供をしながら進めていきたいと考えております。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
最後の有期労働契約との整合性につきまして、補足させていただきたいと考えております。有期労働契約につきましては昨年、既に研究会報告書が出て、1年にわたり労働条件分科会で議論が進んでいるところです。そういう意味で、パートタイム労働者の議論よりは期間としてはかなり先行している状況にあります。そういう中で、先月中間的整理が出ております。これを踏まえて、年末を目途にさまざまな議論が進んでいくと思っておりますけれども、そういった中間的整理につきましてもこの分科会で状況をご報告したいと思っておりますし、労働条件分科会における議論を逐次こちらにご報告する中で、連携を取る必要があるものについては連携を取り、議論を進めていただければと考えているところです。
現時点においては、パートタイム労働者と有期労働契約者の議論とは重なる部分もありますし、また、異なる部分もあると思っておりますので、そういう意味で状況を見据えながら、全体としてのパートタイム労働者特有の議論、あるいは有期労働契約の議論を踏まえて議論すべき部分、この辺りを併せてご議論いただければと考えている次第です。
○林分科会長
その他に、ご質問・ご意見等はありますか。布山委員。
○布山委員
権丈委員、取りまとめ、ありがとうございました。今日ご欠席の山川委員、それから遅れていらっしゃる佐藤委員もご参画されている中で、非常に言いにくいところがあるのですが、この中身については企業の実態や現場を考えた場合に非常に違和感のある内容が含まれていると思っているのが全体的な感想です。例えば、わが国の人事賃金制度と様子が異なるEU諸国の事例なり、仕組みを繰り返し例として挙げられている点や、パートタイム労働者といっても一様でなく、多様な実情であることに対する言及があまりないということなど、実際の現場から考えるとしっくりと来ない。
一つ具体的な例を挙げてみると、パートタイム労働者対策の検討なので、ある程度は仕方がないのかなと思いながらも、報告書の19ページに、通常の労働者とパートタイム労働者の間に待遇の格差が存在していて、その中でパートタイム労働者も含めた労働者の働き・貢献に合った公正な待遇をより一層確保していくことが社会の公正という観点から極めて重要だという記述があります。ただ、一方で、参考の64ページの図表21「パートタイム労働法の施行状況」を見てみると、同じ仕事を行っている正社員の有無などを聞いている部分ですが、職務が同じ正社員と比較して、自らの賃金が低いが納得しているという回答が実は53%にも上っているわけです。つまり、待遇の差があっても公正さは維持されていると考えることもできるのではないかと思います。このように現場の多様な実態という視点が少々不足しているのではないかというところで、少し違和感を持つところです。感想ですが、以上です。
○林分科会長
特に回答を求めるということではないですね。
○布山委員
はい。感想ということで。
○林分科会長
その他に、ご質問・ご意見等はありますか。關委員、お願いいたします。
○關委員
1点、質問させていただきたいと思います。報告書の34~35ページにかけてのところですが、事業主が自主的に、計画的に進めることが重要であると。この場合に、例えばうんぬんという表記がありまして、その次のパラグラフで行動計画の具体的な内容として、パートタイム労働者の賃金水準の改善、賃金制度の見直し、教育訓練の実施等の記載があるわけですが、これらの各種項目についてパートタイム労働者の均衡待遇を確保するための基準はどうするのか、どうすべきなのかといった観点で研究会の中でどのような議論があったのかをご教授いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○林分科会長
大隈均衡待遇推進室長、どうぞ。
○大隈均衡待遇推進室長
行動計画の中で目指すべき均衡の水準についてのご質問かと思いますが、その水準について一律に義務付けるのは難しいのではないかと。この行動計画という意見が研究会の中で出てきましたのは、また34ページの下から6行目ですが、賃金制度や雇用管理の取組が非常に多様であるということなので、待遇改善の在り方について法律等で一律の基準を設けることには限界があるのではないかということです。多様な事業所の実態、またパートタイム労働者の実態を踏まえると、例えば正社員の何割というような基準を義務付けるのは難しいのではないかと。そういうことも踏まえて、個々の事業所ごとに労使で納得するような形で、こういった行動計画を作って推進していく。それに対してインセンティブを付与していくという方法、手続的な規制といいますか、そういうものの方が適当ではないかという議論が研究会の中であったところです。
○林分科会長
その他に、ご質問等はありますか。川﨑委員。
○川﨑委員
質問というよりは感想ということで述べさせていただきたいと思います。まず、全体的なところになりますけれど、21ページから始まっている「パートタイム労働の課題」といったことで、まずは差別的な取扱いの禁止で第8条の3要件の見直しが必要であるといったところから全体がスタートしていると読めるわけですけれども、企業の実態から考えていきますと、パートタイム労働法が規定されて、それの適正な運用のために社内にいろいろな規則を見直していって、実際にパートタイム労働者にいろいろな対応をしてきたといったことを考えますと、その結果として、今回のこの三つの要件に該当するパートタイム労働者の数が減っていっただろうということが推測されるわけです。これが0.1%になったから、このパートタイム労働法自体が効力を失っているのではないかという論調に関しては非常に違和感を覚えたということが1点です。
あと、3ページを見ますと、パートタイム労働者が全労働者の4分の1以上を占めるようになってきたということですけれども、もう一方で4分の3は正社員であり、正社員の労働条件をどのように見ていくのかといったところと、やはりパートタイム労働者の条件をどのように見ていくのかといったところは、ある程度パラレルになっていくところもあるだろうと考えます。パートタイム労働者のところからだけの観点で今回、いろいろ述べられていますけれども、やはり日本の労働の条件の現状を考えたときには4分の3を無視するような形と、あと今までずっと前回のパートタイム労働法の改正のときに決めてきた部分を引っ繰り返すような議論というのはなかなか難しいのではないかと思います。実際の企業の実態を見ても難しいのではないかということが実感です。実際にアンケートの結果等も見ていくと、引き続き現在の会社でパートタイム労働者として働き続けたいと言っている人が7割近くいるということも勘案すると、全体的なパートタイム労働者の就労に対しての納得性や継続意欲といったものは、かなりの部分担保されているような状況にあるという見方をしてもよいのではないかという感想を持ちました。
○林分科会長
その他に。では、小林委員。
○小林委員
パートタイム労働法の第11条の福利厚生についてですけれども、今回の資料の中で67ページの図表27や図表35などにパートタイム労働者が福利厚生に対して持っている不満が大きいという内容が資料で出ております。報告書の中では福利厚生についての言及があまりなされていないのではいないように思いますけれども、研究会の中で福利厚生に関する議論がなされたかどうかをお伺いしたいと思います。
もう1点よろしいですか。もう1点は53ページの「その他」のところで、先ほどご説明がありましたとおり、フルタイム無期契約労働者については有期契約労働者にもパートタイム労働者にも両方から外れているというご説明がありました。この中で、フルタイム無期契約労働者についての言及はここでされているのですけれども、具体的な取扱いということはここの中で方向性が示されておりません。フルタイムのパートタイム労働者、いわゆる疑似パートタイム労働者については、前回の法改正から積み残された課題だと思っております。この疑似パートタイム労働者についても、今回の法改正でパートタイム労働者の対象者にすべきだと考えるのですけれども、研究会ではどのような議論があったか、併せてお伺いしたいと思います。
○大隈均衡待遇推進室長
まず、一つ目の福利厚生に関するご質問ですけれども、確かに研究会の中では第11条ということで一つの論点として掲げて議論はしなかったのですが、第8条や第9条のところで、例えば現在の第9条も職務関連給付を対象としているところですので、これも職務関連給付でよいのか。あるいは、今後、第8条について、パートタイム労働者であることを理由として合理的な理由なく不利益取扱いをしてはいけないというような法制を仮に採る場合には、どういった給付を対象としたらよいか。報告書で言いますと32ページのちょうど真ん中ぐらいです。一番上に、一つ目の○の「また」というパラグラフがあると思いますが、この下から4行目の「さらに、後者の法制を採る場合には」ということで、仮に「合理的な理由」なく、パートタイム労働者であることを理由として不利益な取扱いをしてはならないという法制を採る場合には、現行の第9条では職務関連給付だとしていますけれども、職務関連給付をするのか、それ以外の給付とするのか、あるいはそういったものごとに考え方を変えるのか。そういった形で各種手当ての議論がなされたということはあります。福利厚生について直接的な議題とはしておりませんが、待遇の第8条、第9条の関連でご議論があったところです。
それからフルタイム無期契約労働者やいわゆる疑似パートタイム労働者につきましては、フルタイムの有期契約労働者に該当する人につきましては、報告書の中でも32ページの今の段落の下の方にありますけれども、研究会の中では当然問題意識はあり議論はされたところです。パートタイム労働法の適用範囲を広げていくということであれば、こういったフルタイム有期契約労働者を対象にすることは一つの考え方としてあるのではないかということで報告書にも盛り込んでおります。
ただ、これは先ほど課長からも説明しましたように、労働条件分科会の方で先行して1年ぐらい前から検討をしておりますので、研究会報告書の中でもそれを踏まえて検討する必要があるという記述になっているところです。
○林分科会長
それでは、補足をお願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
若干、補足させていただきます。フルタイム無期契約労働者の話といわゆる疑似パートタイム労働者の話というご質問を頂戴いたしましたけれども、基本的に主としていわゆる疑似パートタイム労働者、あるいは呼称パートといわれている層につきましては、おおよそフルタイムの有期契約労働者に該当される人が多いのだろうと思っております。この点につきましては今説明させていただきましたとおり、労働条件分科会の中でかなり議論が進んでいます。フルタイムの有期契約労働者にはいろいろな人がいらっしゃいます。例えば期間工の人もいらっしゃいますし、もちろんいわゆるフルタイムパートと呼ばれている人もいらっしゃいますし、あるいはその他にも契約社員と呼ばれている人等、さまざまな人がいらっしゃいます。その中で、フルタイムのパートタイム労働者についてどのように考えているかという議論が当然必要になってくるわけですが、一方で有期契約労働者の中で、それなりのボリュームを持つ層であることも間違いないと思います。そういう意味で、有期契約労働者の在り方についての議論の中でそれなりのウエートを占めた議論が進んでいるものと考えておりますので、そのような先行的な議論も十分に見ていく必要があるのではないかと思っております。
このようなことから、フルタイムの無期契約労働者の議論につきまして研究会報告書では触れております。有期契約労働者の議論の中で雇用管理を改善する、あるいはパートタイム労働法制の中で雇用管理の改善がある中で、残された部分として残るということがあります。一方で、フルタイムの無期の人と正社員の違いの辺りはかなり難しい議論が出てくるという中で、その辺りの実態が正直はっきりとしていない部分もあります。そういったものの実態を把握しながら、具体的な対策については検討する必要があるのではないかと考えております。観念的には、正社員でないフルタイム無期の人がいらっしゃるとすれば、その方々の処遇をどのような形で考えていくのかは一つの大きな論点としてあるわけですけれども、現状において有期労働契約法制の議論、あるいはパートタイム労働法制の議論がどのような姿になるのか明らかになった段階で、そのようなものをどのような形でフルタイム無期の人にも当てはめていくのかという辺りの議論をしていくのではないかと思っております。以上です。
○林分科会長
その他に。齊藤委員。
○齊藤委員
53ページの6「その他」の(2)「税制、社会保険制度等関連制度」に関して2点質問させていただきます。パートタイム労働者の中には社会保障の枠組みで守られるセーフティネットの中に入れない方々がたくさんいらっしゃいますが、3月に発生した東日本大震災で休業を余儀なくされた方々の中にも雇用調整助成金が受けられないということで、休業保障がされなかった人もいらっしゃいます。こういったことに関連して、パートタイム労働者のセーフティネットという観点からの記載がここの部分に入っていないのですが、そういったことに関連して何か議論がなされたということがあれば、お伺いしたいと思います。
もう1点は、この中にも「厚生年金制度及び健康保険制度の適用拡大が検討されている」という項目が1項目あります。現在、社会保障審議会の方で短時間労働者への社会保険適用に関する特別部会で議論が行われているということを承知しております。その中で、どのような議論がされているのか、論点や方向性について、わかる範囲で構わないので教えていただければと思います。以上です。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
税・社会保険制度の議論の中で、現在、社会保障審議会の部会において議論が進んでいるというのが1点、ご案内の通りです。別の項目の中で社会保障・税の一体改革成案についてもご説明いたしますが、それに基づいた議論が今進んでいるという状況です。その中でパートタイム労働者が多く就業する企業への影響についてどう考えるか。企業規模ごとの取扱いの差異を設けるかどうか、業種による取扱いについて差異を設けるべきであるなど、企業の事業主負担がかなり増えますので、それについての激変緩和策の必要性をどう議論するのか、あるいは小規模事業所について社会保険の適用が負担にならないか等の議論について検討を始めたところで、現在2回ほど開催しておりまして、9月30日に3回目を開催するということで、非常に密度濃く議論しているところです。もとより、こういった社会保険制度の適用がパートの人の就業に非常に大きな影響を与えているという問題がありますので、これをどういった形で緩和していくのかという意味でパートタイム労働者の対策においても非常に関心を持つべき事項だと思っております。
最初の1点目の質問が、十分に理解できない部分があったのですけれども、20時間未満の人について、補助金の対象等にならなかったということでしょうか。
○齊藤委員
そうですね、今回は。
○吉永短時間・在宅労働課長
現在、雇用保険制度に基づいて各種施策については先ほどご指摘がありましたように20時間という形、あるいは30日以上という形で現政権になって対象者が拡大した部分ではありますが、それらの基準に満たない人については法制上適用になっていない状況があります。もともと雇用保険が失業という保険事故に対して生計の補助を行うという保険制度になっておりますので、短時間の人に対するものが当てはまるのかという大きな議論の中でそのような位置付けになっているところです。20時間を切る人についての議論は、あまり全体として研究会の中心の議論になっておりませんけれども、パートの人でマルチジョブホルダーの方々もいらっしゃいますので、その方々についてどうするのかという議論は一部出ております。また、いずれにしても短時間労働の中できちんとした生計を計るための処遇をどのような形で改善するのか、働きや貢献に見合った処遇をどのような形で実現するのかということがパートタイム労働法の主たる考え方ですので、そういう観点から、先ほどご説明したような第8条、第9条の見直しについてのご提案をいただいたものと考えているところです。
○瀬戸委員
これは確認ですけれども、この「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」ですが、83ページに開催目的等が書いてありますけれども、この研究会のこの報告を基に雇用均等分科会の中で議論していくために、この研究会が設置され、現状分析なり課題が抽出されてきた。それを基にこの分科会で議論を進めていくということなのか。
というのは、先ほども他の委員から発言があったかと思いますけれども、この研究会報告書を事業者側から見たときに、実態的な面から見れば、やや不満というようなご意見があったかと思います。そういったことも含めて、この研究会報告書を基に議論していくということなのかどうかということを確認させていただければと思っております。
○林分科会長
吉永短時間・在宅労働課長、お願いいたします。
○吉永短時間・在宅労働課長
本日ご報告させていただいた研究会の位置付けですが、ご説明しているとおり、審議会で法施行後3年の見直しに向けた検討を行うために、それについての議論を専門家の方に整理していただくという観点で、まとめていただいたものです。そういう意味で、これを検討の素材としてご議論いただければと考えておりますが、今回の研究会は多様な選択肢を示すという形の報告書になっております。そういう意味で、この選択肢の中でどのようなものを取るべきか取るべきでないか、あるいは、他の選択肢があるということであればそういうことを盛り込む形で議論していただければと思っております。ただ、そうは言っても84ページにありますように日本の専門家の中でも非常に代表的な方に入っていただいたものですから、報告書についてはご尊重いただきながら、ご議論を進めていただけるのではないかと考えているところです。
いずれにいたしましても、研究会の議論を素材としまして、自由にご議論いただきながら、パートタイム労働者の処遇なり、雇用管理をどのような形で進めていくのかという観点からご審議いただければありがたいと考えている次第です。
○林分科会長
布山委員。
○布山委員
今のご意見・ご質問に関連して、私も同じことを思っておりました。今年、パートタイム労働法施行後3年目の見直し時期を迎えて、それでこの分科会が開催されたと認識しております。そういう意味では、議論する必要性は理解できます。
ただ、この報告書の取扱いについては、あくまでも有識者の方々がお集まりになってご研究をされた取りまとめということであって、あくまでも雇用均等分科会の中で議論する際の参考資料という位置付けでよろしいのかどうかということです。むしろ、私はそのように思っております。また、一方的な方向性を求めているものでもないですし、複数の選択肢がある見解につきましても、どれか一つを前提にした議論を求めているものでもないということを確認させていただきたいと思います。
いずれにしても、パートタイム労働法の見直しそれ自体は、非常にわが国の今後の経済成長あるいは発展に関連する大きな問題で、重要なテーマであると私どもも思っております。そのような中で、この研究会の報告の内容は参考にさせていただきながらも、この三者構成の分科会の中できちんと議論したいというのが私の考えでございます。
○林分科会長
山口委員、どうぞ。
○山口委員
私も今、布山委員がおっしゃったように、この研究会の報告は、あくまでも参考にというか、さまざまな視点で調査、それから専門家の方たちの議論に基づいて整理させていただいて、私たちが今後、このパートタイム労働法をどのように見直していくかということにおいて、大変参考になるものだという視点でこの研究会報告を見たいと思います。
使用者側の委員の方たちがおっしゃっていましたけれど、やはり先生方の研究結果ということで少し現実とは違うとおっしゃっていましたが、私どももそういった視点では、はっきり申し上げて、大変大きなボリュームとなったパートタイム労働という働き方をしている人たちの率直な声が聞こえていないという感想を持っています。
そのような点でも指摘はしていただいていますが、この1,414万人にもなろうという非正規労働者の中でも最大のボリュームであり、多くが女性であるパートタイム労働者は、これも使用者側委員がおっしゃっていたように、一律では見られないというところに大変難しさがあるのですが、過去からのパートタイム労働者の変遷を見ていくと、今、非常に私どもが問題意識を持っているのは、子育て期の女性たちがこのパートタイム労働に従事しているということで、そのグループから見ると非常に家庭的、家族的責任を負っているからこそ、他の就業形態を選べない、他の就業形態に就けない。そういう中で、限定的な就業形態として選ばざるを得なかったというところが、この就業している現状にあると思います。そういう中で、私どものパートタイム労働者に聞くと、「私たちはパートタイムで働く以上、例えば労働条件が正社員より低くても仕方がない。それから、賃金が3、4割下がっても仕方がない」と。この「仕方がない」という言葉を多く聞きますが、それをこの研究会の報告においては「納得している」と翻訳されているのではないかという感想も持ちます。
布山委員がおっしゃったように、今や日本の労働力全体の中で、このパートタイム労働者を外すわけにはいかない大変なボリュームになっています。これが、その人たちの「我慢」や「仕方がない」という考えの上に乗っかって、そのまま維持していくのではなくて、少しでもその人たちが、より生産性を上げられる、より働きがいを感じられるような環境にもっていくことが私たちに課せられたパートタイム労働法見直し、改正の視点だと思いますので、冒頭で申し上げましたように、研究会の先生方に大変ご尽力いただいた成果物を参考にさせていただいて、三者構成の分科会の中で「あるべきパートタイム労働法」について、議論をさせていただきたいと思います。これは意見でございます。
○林分科会長
中西委員、どうぞ。
○中西委員
いろいろなご意見を拝聴させていただきまして、一言、中小企業・零細企業の立場から、経営の厳しさについて再度、述べさせていただきたいと思います。本法が施行されて今日に至る3年間の世界の経済状況、日本の経済環境、それから私たち中小企業の経営者の経営環境の厳しさは日々一層増すばかりでございます。何とか雇用を確保したいという思いで、さまざまな中小企業・零細企業の経営者が日々、奮闘努力して今日に至っております。奮闘努力のかいもなく、不本意ながら倒産に至る企業が続出しておりますことは皆さまご承知のとおりです。
法制化されることによって、さまざまな影響が私ども経営者サイドにも出てまいります。さまざまな業種を抱える中小企業・零細企業といたしましては、現場の具体的な事情に即した、それから現場の調査をさらに徹底して行っていただく機会を多く設けていただきたいと思います。非常に難渋しつつ、夜も眠れない経営者のそういう話を私は身近にいたしております。そういうことにつきまして、どうぞご理解のある議論が今後の分科会でなされますよう、願ってやみません。どうぞよろしくご議論のほど、お願い申し上げます。
○林分科会長
基本的には、パートタイム労働法の改正問題、見直しの検討については、本分科会の審議の中で決めていく。ただ、あまりに大きな問題でもありますので、この研究会報告書が一つの有識者の方々のお考えをまとめたもので、参考にというかそういうもの示唆等も受けて我々の考える一つの考え方の参考にしていくということになるのではないかと思っております。その点について、事務局から何かありますか。
○吉永短時間・在宅労働課長
ただ今、分科会長におまとめいただいたとおりだと思っております。パートタイム労働法制の見直しについては、まさにこの分科会の中で、公労使三者構成の中でご議論いただくべきものだと思っております。
その中で、パートタイム労働対策をどのように考えていくのか、労働力供給制約の中でどのような形で全員参加型社会を実現するのかという観点からご議論いただくに当たって、この報告書は、正にご参考にしていただけるものであろうと思っておりますので、よろしくお願いしたいと考えております。
○林分科会長
それでは最後に布山委員、どうぞ。
○布山委員
報告書の内容ではなくて、見直しをすることになったということで、お願いと確認したいことがあります。先ほど申し上げたように、パートタイム労働者といっても、その実態は一様ではなく、さまざまでありますので、事務局は今後議論する際に、偏った議論とならないように、検討項目の設定やご提供いただく資料の作成に際しては、そのような観点で考えていただければと思います。そのような提供を受けながら、パートタイム労働法のどのような部分を見直すことによって、どのようなパートタイム労働者の処遇を適正化していこうとするのか。これをきちんと明確化して、その中で必要性あるいは手段について冷静にきちんと議論を三者でしていければと思っております。
また、先ほど他の委員からも出ていましたし、この報告書の中にもどこかにあったと思いますけれど、パートタイム労働者のおよそ8割がいわゆる有期契約労働です。先ほど事務局からも説明があったように、昨年から労働条件分科会において有期労働契約の在り方について審議がなされているところでございます。また、パートタイム労働者の多様な実態ということを考えると就業調整等、働き方のニーズもいろいろでございますので、そういうことも踏まえてパートタイム労働のあるべき姿というものを考える際には、このような議論の動向も当然、視野に入れる必要があると思っています。本部会での審議だけではなく、そういうことも注視しながら議論できればと思っていますので、そのようにお願いします。以上でございます。
○林分科会長
それでは、他に特にないようでしたら、次の議題に進みたいと思います。「その他」ということで報告案件がありますので、事務局より説明をお願いします。
○伊藤総務課長
資料No.3をご覧いただきたいと思います。「社会保障・税一体改革成案」というタイトルの資料でございますが、これは少し前になってしまったのですが、本年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部で決定されまして、7月1日に閣議報告されたものでございます。6ページをご覧いただきたいと思います。この社会保障・税一体改革成案の中で、労働関係につきましては6ページの真ん中辺りに「就労促進」という項目があります。これは労働市場への参加保障の理念によって、積極的に人々の就労を促進して雇用の拡大に取り組むという観点から、この項目が盛り込まれていると承知しております。
一つ目の丸です。「全員参加型社会の実現のために、若者の安定的雇用の確保、女性の就業率のM字カーブの解消、年齢にかかわりなく働き続けることができる社会づくり、障害者の雇用促進に取り組む。その下には、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を図る」といったことが書かれています。当分科会の関係では、M字カーブの解消のほか、ディーセント・ワークにはパートタイム労働対策を含めた非正規労働対策が含まれていると理解しております。
その上のⅢ「年金」ですが、女性の就業に関係のある事項としまして、二つ目の丸の二つ目のポツでございます。短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見直し、産休期間中の保険料負担免除などが盛り込まれております。このうち、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大につきましては、先ほども議論がございましたけれども、9月1日から社会保障審議会の特別部会で議論がなされています。これにつきましては、議論が進んだ段階で必要に応じまして当分科会でも紹介させていただきたいと考えております。
それから、少し戻りまして4ページ、5ページをご覧いただきたいと思います。「その他」の関連項目としまして4ページの一番下でございますけれども、「子ども・子育て」に関する記述があります。5ページの一番上の丸でございますが、「子ども・子育て新システムの制度実施等に伴い、地域の実情に応じた保育等の量的拡充や幼保一体化などの機能化を図る」とされていまして、具体的な施が二つ目のポツに掲げられています。この「子ども・子育て新システム」につきましては、税制改正法案と併せて次期通常国会に法案を提出できるよう現在、政府内で検討を進めているところでございます。私からは、以上でございます。
○吉本雇用均等政策課長
続きまして、資料No.4に基づきまして「平成22年度雇用均等室における法施行状況」について、ご説明いたします。まず、「相談」件数でございますが、1ページ目の一番下の表をご覧いただきますと、一番下の合計のところですが、17万件余りの相談が寄せられていまして、括弧書きの昨年の数字に比べますと大きく増えております。その主な要素といたしましては、改正育児・介護休業法が昨年の6月末から本格的に施行されていますので、その関係で育児・介護休業法の、特に事業主からのご相談が大きく増えているといった状況がございます。
各法律についての文章のところをご覧いただきますと、まず「男女雇用機会均等法」の相談内容につきましては、依然としてセクシュアルハラスメントに関するものが最も多く、次いで、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関するものとなっております。
それから、1ページの中ほどの「育児・介護休業法」の相談内容としましては育児休業に関するご相談が最も多く、次いで所定労働時間の短縮措置等に関するご相談となっておりまして、二つ目のポツで特に育児休業の取得等を理由とした不利益取扱いについては1,543件と、前年に比べて若干減少はしていますけれども、リーマン・ショック以降はかなり多くの相談を寄せられる状況が続いております。
また「パートタイム労働法」につきましては、通常の労働者への転換に関するものが最も多く、次いで労働条件の文書交付に関するものなどとなっております。二つ目のポツにありますように、昨年度につきましてはパートタイム労働に関する個別相談会を開催しました影響がありまして、短時間労働者からのご相談は増えているところでございます。
2ページをご覧ください。「是正指導」の状況でございます。各法律に基づきまして、報告徴収、事業所への現地調査などを行う中で、法違反が確認されたものについては是正指導を行っているところでございます。「男女雇用機会均等法」についてはセクシュアルハラスメントに関するもの、次いで母性健康管理に関するものが多く、育児・介護休業法については育児休業に関するものが最も多く、次いで子の看護休暇に関するもの。
また、「パートタイム労働法」につきましては通常の労働者への転換に関するものが最も多く、次いで労働条件の文書交付等に関するものといった状況になっております。
次に、3ページの「紛争解決の援助」でございます。その➀としまして「都道府県労働局長による援助」の受理件数でございますが、男女雇用機会均等法につきましては、これもこれまでの傾向と同様でございますが、セクシュアルハラスメントに関するものが最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱い。また、育児・介護休業法につきましては、育児休業に係る不利益取扱いに関するものが最も多く、5割を超える状況でございます。育児・介護休業法の紛争解決援助は、一昨年の9月末からの施行となっておりますので、一昨年の数字は107件でございますが、昨年はそれの2倍をさらに上回る件数が寄せられている状況でございます。パートタイム労働法については6件ということで、そこにありますような内容になっております。
➁の「調停」でございますが、男女雇用機会均等法については、これもセクシュアルハラスメントに関するもの、婚姻、妊娠・出産等を理由とした不利益取扱いに関するものが多く、育児・介護休業法につきましては、昨年4月から調停の制度が開始になっておりますが、21件。そのうち、育児休業に係る不利益取扱いが17件という状況になっております。
それから、4ページは次世代法の関係でございます。次世代法に基づく一般事業主の行動計画の届出状況でございます。これにつきましては、今年4月から届出の義務がかかる対象の企業が、それまでは301人以上でしたが、それに加えて101~300人の企業に対象が拡大されたところでございます。昨年度末にかけましては雇用均等室で、その対象となる企業の方々に集中的に届出勧奨をしたところでございますが、結果といたしまして、昨年度末の届出率が301人以上の企業は95.4%、101~300人の企業が60.7%でございまして、さらに最新の数字でご覧いただきますと、平成23年度8月末では、それぞれ96.2%、87.7%というところまで至っているところでございます。
それから➁は、一定の基準に該当する「くるみん」の取得の対象となる認定の状況でございますが、昨年度末までに1,000件を超えたところでございまして、直近の数字では1,139となっております。参考でございますが、「くるみん」の認定を受けている企業に対する税制の優遇措置が設けられておりまして、そこにありますとおり、認定を受ける対象となった計画期間開始の日から、認定を受けた日を含む事業年度終了の日まで、これは建物の減価償却が対象となりますけれども、その建物について割増の償却が受けられる制度でございます。こうしたものも活用していただきながら、「くるみん」の取得を勧めていきたいと考えております。
続きまして、資料No.5でございます。「雇用均等特別相談窓口の設置について」ということで、3月の東日本大震災への対応といたしまして、雇用均等室におきましても被災地等に特別相談窓口を設置したところでございます。震災に伴いましてさまざまな問題を抱えられた労働者からの相談に迅速に対応するようにいたしております。相談事例にありますような営業再開後に妊娠を理由に自宅待機を命じられた。あるいは産前・産後休業中で、出産後は育児休業を取得する予定であったけれども、経営難であることを理由に解雇されたといったようなご相談などが寄せられているところでございます。このところ、相談件数としては、やや落ち着いてきておりますが、引き続き的確に対応していきたいと考えているところでございます。以上でございます。
○林分科会長
今の「社会保障・税一体改革」と「雇用均等室における法施行状況」、および「雇用均等特別相談窓口の設置について」の説明について、何かご質問等がありますか。
齊藤委員、どうぞ。
○齊藤委員
「平成22年度雇用均等室における法施行状況」について、質問させていただきます。パートタイム労働法への相談で、通常の労働者への転換に関するものが最も多いとされていますが、もう少し詳細な内容を。例えば措置が講じられていないのか。措置が講じられていても実際に運用ができていないということもあると思いますので、そういった部分についてお聞かせいただきたいと思います。
同じく、是正指導の方についても、お聞かせいただければと思います。
○林分科会長
均衡待遇推進室長、お願いいたします。
○大隈均衡待遇推進室長
パートタイム労働の関係で相談の件数が一番多いのが「通常の労働者への転換に関するもの」で、937件ですが、これをもう少し細かく見ますと、事業主からの相談が505件、パートタイム労働者からは217件、その他が215件です。事業主からは、どのような措置をとればパートタイム労働法第12条を満たすことになるのかという質問が多くなっています。
パートタイム労働者に関しては、そもそも、その措置をご存じなくて、説明するということもありますし、自分は対象になるのだろうかという質問もあります。それから、中には転換できないということでの相談を受けていることもあります。
それから、二つ目の「是正指導」です。平成22年度の是正指導件数につきましても、通常の労働者への転換に関するものが最も多いということです。これは第12条の措置がとられていないということで、パートタイム労働法に基づいて正社員を募集する場合の周知でありますとか正社員を配置する場合の応募機会の付与、試験制度のいずれかを採っていただけるように指導しているところです。
○林分科会長
よろしいですか。
その他に何か、ご質問がありますか。
○瀬戸委員
資料No.5の雇用均等特別相談窓口の設置ですが、資料では設置する場所が青森、岩手、宮城、福島及び茨城労働局雇用均等室「等」と書いてありますが、これ以外にはどこにあるのですか。
○吉本雇用均等政策課長
まず被災地には設置するようにといった指示をしまして、それ以外のところにも必要な状況に応じてということで指示しましたところ、その他といたしましては山形、愛知、新潟、神奈川、栃木、千葉、熊本、秋田について。新潟については、窓口としての対応は6月末で終えているようですが、その他の窓口は継続して開設しているところです。
○林分科会長
よろしいですか。他に何か、ご質問等がありますか。ないようでしたら、本日の議事は、これで終了いたします。
最後に、本日の署名委員ですが、労働者代表は關委員、使用者代表は布山委員にお願いしたいと思います。
それでは、本日の分科会はこれで終了します。どうもご苦労さまでございました。
(了)