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2011年7月12日 第4回社会保障審議会生活保護基準部会議事録
社会・援護局
○日時
平成23年 7月12日(火)14:00~16:00
○場所
財団法人商工会館6階G会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
庄司 洋子 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
林 徹 (委員) |
道中 隆 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・生活保護制度における勤労控除等について
・その他
○議事
○駒村部会長 ただいまから、第4回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
まず、本日の委員の出欠状況について、事務局よりお願いいたします。
○三石社会・援護局保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、本日は、全委員の御出席をいただいております。
なお、私どもの社会・援護局長でございますけれども、本日は、国会出席のため欠席でございます。
以上、よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
まず、事務局より、本日提出された資料1及び参考資料1から4について併せて御報告をお願いしたいと思います。
○三石社会・援護局保護課長 それでは、お手元の資料1「第3回部会における委員の依頼資料」について御説明をさせていただきたいと思います。
前回、住宅扶助の関係の御説明をした際に、栃本委員、あるいは岩田部会長代理から御質問のあった事項でございますけれども、実際の被保護世帯の家賃の分布状況などがどうなっているのか、特に級地別、あるいは世帯構成別でどういう分布になっているのか、というお尋ねだったかと思います。
そこで、1ページないし2ページでございますけれども、こちらの分布図は被保護世帯の家賃がいわゆる特別基準額、各自治体の住宅扶助の上限額でございますけれども、その特別基準額に対してどのぐらいの割合を示しているのかということの分布を示したものでございます。平成21年度のもので、まず1ページが1・2級地を合わせたものでございます。左の青いグラフの方が単身世帯、そして右側の赤いグラフが2人~6人世帯のケースでございますけれども、いずれも、ごらんいただきますように、やはり特別基準額の90~99%のところが突出して高いということが言えようかと思います。
なお、ちょうど100%というところはその次の100~109%のところに入っていると考えられますので、その一部も合わせますと相当数がやはりこの特別基準額ギリギリのところで占められているということがおわかりかと思います。
なお、100%を超える世帯も見受けられるわけでございますけれども、左下に※印がございますが、単身者の場合には、例えば車椅子使用の障害者の方が通常より広い居室を必要とするような場合、こういったケースなどについては実際に特別基準額の更に1.3倍額まで認めているケースもございますので、こういった方々がここに入りますし、あとは、実際には、住宅扶助の上限を超えて、ある意味、生活扶助の一部を住宅費に充てながら住宅扶助の上限を超えるような住居に入られている方も実態としてはいらっしゃるのかなと考えております。
併せて、2ページでございますけれども、同様に、3級地の合計について見たものでございます。単身世帯については、先ほどの1~2級地と同様に、特別基準額の90~99%のところの世帯数がやはり突出して多いのですけれども、もう一つの山がございまして、特別基準額の20%未満のところにも別のピークがございます。これは、特に3級地の公営住宅などでは特別基準額を相当下回るような家賃が設定されているケースがございますので、そういった公営住宅に入居されている方ではなかろうかと推察しております。また、2人~6人世帯については比較的フラットに近いような分布になっております。
続いて、3ページ、4ページをお開きいただきたいと思います。先ほどのものは、特別基準額に占める割合で分布を見たものでございますけれども、こちらの方は、被保護世帯の実際の家賃などの階級別の世帯数を見たものでございます。まず3ページ、1・2級地でございますけれども、左側の方のグラフが公営住宅に入居されている世帯の、上が単身世帯、そして下が2人~6人世帯の分布図でございます。
同様に、右側のグラフでございますけれども、その他の住宅、すなわち民間アパートなどの住宅に入られている方の分布でございまして、やはり上が単身世帯、下が2人~6人世帯ということでございます。
これをごらんいただきますと、いわゆる単身・複数世帯にかかわらず、公営住宅に入居されている世帯、あるいは民間のアパートなどに入居されている世帯、ともにそれぞれ分布の形状は類似しているということが言えようかと思います。
同様に、4ページにつきましては、3級地について、やはり左側が公営住宅、右側が民間アパート等の住宅に入居されている世帯ということで分布を示したものでございます。
以上が、前回御指摘のございました資料の関係でございます。
併せまして、参考資料につきまして御説明させていただきたいと思います。
まず参考資料1でございますけれども、こちらも、前回、たしか林委員から御指摘あったことでございますが、生活保護制度に関する国と地方の協議を、5月30日にハイレベル会合という形で開催させていただきました。その後の進捗状況、どうなっているのかというお尋ねだったかと思いますけれども、5月30日に実施しましたハイレベル会合の趣旨、そしてそのときのメンバーについては、最初の紙に書かれているとおりでございます。知事会代表、市長会代表、そして町村会代表の方々、それから私どもの大臣以下政務三役が加わって開催したものでございます。
その席上で、今後の検討課題及びスケジュールが議論されまして、その次をおめくりいただきたいと思いますけれども、検討の課題といたしましては大きく4つ挙げられております。生活保護受給者に対する就労、自立支援、また医療扶助や住宅扶助などの適正化、更には生活保護費の適正支給の確保、そして第2のセーフティネットと生活保護との関係整理・その他ということとなっております。
今後の進め方といたしましては、6月から7月末にかけまして月2~3回の頻度で実務レベルの検討を行うということで、私ども厚生労働省の実務担当者と、それから各自治体のやはり実務担当者とで打ち合わせを行いまして、国や自治体が取り組む現状、課題、あるいは論点の整理などについて細かい議論をしているところでございます。ある程度論点が整理できたところで、最終的には8月ごろをめどにハイレベル会合において意見をとりまとめるということで今進めているところでございます。
そして、その次のページでございますけれども、「生活保護制度に関する国と地方の協議」における検討項目(案)という表がございます。これが6月13日に実務レベルの会合の第1回目として配付させていただいた資料でございます。
冒頭にございますように、これまでの自治体からの提言、あるいは社会保障改革に関する集中検討会議に自治体代表の方々が出されている資料、あるいはハイレベル会議における議論、こういったものを踏まえて整理したものでございまして、先ほどの1から4のテーマに沿いましてもう少し細かい検討項目をここでお示しをし、この6月13日以来、細かい検討項目について更に鋭意協議を進めているという段階でございます。
なお、この表の後ろに第1回「生活保護制度に関する国と地方の協議事務会合」概要というのがございまして、6月13日に行われました協議の議論の概要について整理をさせていただいております。それぞれ自治体側の発言、あるいは国側の発言などをまとめております。
この後、6月29日にも第2回の会合を行っておりますけれども、現在、そちらの概要は、自治体側と整理中でございます。
第3回目については明日行われる予定でございまして、先ほど申しましたように、月に2~3回程度の頻度で重ねていって、できれば8月をめどに何らかの意見のとりまとめをすべく協議を進めているところでございます。
以上が参考資料1でございます。
併せまして、参考資料2につきまして御説明させていただきます。「生活保護受給者の自殺者数について」ということでございます。実は昨年のナショナルミニマム研究会、厚生労働大臣の私的研究会という形で置かせていただいていたものでございますけれども、その席でも初めて、生活保護受給者の自殺者数について調査をし、報告をさせていただきました。その際、国といたしましても、今後、定期的にこういった数を把握し公表していく、また必要な対策を講じていくということを申し上げました。この基準部会と直接関係するわけではございませんが、この生活保護の問題を考える際に大変重要な資料になりますので、恐縮でございますけれども、この席で御報告をさせていただきたいと思います。
1枚おめくりいただきまして、この自殺者調べの概要と留意点がございますけれども、今回の調べは、平成22年1月1日から22年12月31日の1年間について、生活保護受給中、あるいは停止中の方の中で、自殺あるいは自殺と推定された死亡者の状況をまとめたものでございます。
(注)にございますように、死亡診断書または死体検案書もしくはケース台帳などから自殺または自殺と推定された死亡者の方を対象としております。調査方法といたしましては、今年の1月に全国の自治体に依頼いたしまして、福祉事務所経由で私どもに御報告をいただいたものでございます。
なお、この調べは、先ほど申し上げましたように、平成21年から行っているものでございますが、平成20年の状況につきましては、1年さかのぼって調べたということもございますので、福祉事務所の職員がケース台帳等をめくったり、あるいは記憶をたどったりというところがございます。したがって、平成20年のデータについては報告漏れがある可能性がございますので、年次推移を見る際には、この点御留意をいただければと思います。
なお、都道府県別の数字については、1都道府県当たりの件数が極めて少ないような県もございますので、結果が不安定であること、あるいは個人の特定につながる可能性がございますので、これは昨年公表させていただいたときも同様でございますけれども、公表は控えさせていただきたいと思っております。
そして結果の概要が2ページでございます。表がございます。20年、21年、そして今年調査したものとして22年を加えさせていただいておりますけれども、生活保護受給者の方と全国の一般の自殺者の状況を比較したものでございます。被保護人員10万人に対して自殺をされた方が、平成20年で54.8、21年で62.4、22年で55.7ということで、やはり全国の自殺率と比較しても高く、3年間おしなべても高いということが言えようかと思います。
その原因といたしましては、生活保護受給者には自殺の大きな要因と考えられている精神疾患を有する方の割合が全国平均よりも高いということが考えられます。詳しくは9ページをごらんいただきたいと思いますが、ここに「精神疾患の有無別自殺者数」を整理させていただいております。自殺者のうち精神疾患を有する方、3年間の累計で1,936人、全体の66%となっておりまして、この割合は3年間を通じてほぼ同様ということでございます。また、被保護者数に占める精神疾患及び精神障害を有する方の割合が15%であるのに対しまして、一般的に全人口に占めるこういった方々の割合は2.5%になっているということでございます。
その他、幾つかの分析をさせていただいておりますが、詳細は割愛させていただきますけれども、最後に11ページ、一番後ろのページをお開きいただきたいと思います。生活保護受給者の方の中で自殺した方の割合が高いということで、私どもとしても所要の対応をとっているわけでございますが、第一には、1にございますように、まず実態を把握するということで、継続的にこの調査を実施しております。特に「生活保護業務データシステム」という、自治体と私ども国との間でさまざまなデータをデータベースで把握するというシステムを今年から稼働しておりますので、この調査事項に来年以降はこの自殺の調査を登録いたしまして、統計数値として管理することを検討しております。
また、2番目といたしましては、福祉事務所にいわゆるPSW、精神保健福祉士などの専門家を増配置して、こういった精神障害の方の相談、あるいは支援体制を充実することとしております。昨年度22年度の実績では、まだ100自治体にとどまっておりますけれども、こういったものを更に充実させてまいりたいと思っております。
また、今年度の新たな事業といたしましては、救護施設がございますけれども、定義はそこにございますように、現在、全国で188か所で、日常生活を営むことが困難な要保護者の方に入所していただいているわけでございますが、その施設における精神障害者の支援機能を強化するということで、この救護施設でPSWの方を加配した場合に、人件費の加算措置を設ける、あるいはこういった施設から在宅に戻られたような精神障害者の方が在宅で一時的に症状が不安定になった際に、一時的にこの救護施設で入所してもらうこととし、こういった一時入所事業にも財政支援することとしておりまして、こういう救護施設を活用したような精神障害者の在宅生活の継続、自殺防止対策の推進といったものも今後充実してまいりたいと考えております。
続きまして、参考資料3でございます。「東日本大震災に伴う被災者からの保護の相談等の状況把握について」ということで、7月8日にプレスリリースをさせていただいたものでございます。前回の部会で、3月、4月の状況について御報告させていただきましたけれども、5月分についてとりまとまりましたので、その件につきましても御報告させていただくということでございます。5月における被災者からの保護の相談件数ですが、全国で602件、申請件数が215件、生活保護の開始世帯数が153世帯となっております。
なお、被災地別では、一番多いのは宮城県の64、その次が福島県の56になっております。世帯類型で見ますと、これは3月、4月のときにも同様でございましたけれども、その他世帯が79ということで半数以上を占めているということでございます。そして避難先で見ますと、賃貸住宅が79ということで、この割合が一番高いということとなっております。
なお、それでは3月から5月までの累計でどうなっているかということでございますが、2枚おめくりいただきまして、(参考)というところで、3月から5月の累計の件数をお示ししております。相談件数が全国2,621件、生活保護申請件数が972件、生活保護の開始世帯数が全国で702世帯になっているということでございます。したがいまして、3、4月に比べまして、5月は、必ずしも開始世帯数などが増えているわけではございませんけれども、今後、例えば失業給付の満期が来て失業給付が切れる、あるいは仮設住宅への移行が進む、そういったことで、今後、生活保護の相談、あるいは開始が増えてくることも予想されますので、なおこういった動向について注視してまいりたいと考えております。
最後に、参考資料4について御説明させていただきたいと思います。前々回の部会におきましても、この社会保障・税一体改革の関係で集中検討会議に厚生労働省が提出いたしました、いわゆる低所得者対策などについて御報告をさせていただきました。そういった政府からの報告も踏まえまして、政府・与党の中で、この社会保障・税一体改革が議論された結果、6月30日に「政府・与党社会保障改革検討本部決定」という形で成案を見たわけでございます。
低所得者対策だけではなくて、医療、年金、介護、さまざまな課題が網羅されているわけでございますけれども、この中で生活保護について言及された部分について御報告したいと思います。
ページといたしましては、6ページの下の部分、ローマ数字5というところですが、ちなみに、そこまでは、ローマ数字1で子ども・子育て、2で医療・介護、3で年金、4で就労促進、そして5でそれら以外の充実、重点化・効率化という項目でくくられておりまして、その中に生活保護の見直し、就労・自立支援の充実、医療扶助等の適正化、不正受給防止対策の徹底、関係機関の連携強化などの重点化・効率化という形で言及されております。
また、この成案の参考資料といたしましていわゆる工程表も示されておりまして、その中でも、この生活保護の問題が触れられております。一番後ろのページから1つおめくりいただいて、色がついている横表のものでございますけれども、一番左側にローマ数字1~4以外の充実、重点化・効率化項目というのがあるかと思いますが、その中の下から5番目の○に「生活保護の見直し」というのがございます。
中身といたしましては、先ほど本文のところでも触れたような中身が書かれておりますけれども、具体的な工程というのがその右側、黄色の部分にございまして、生活保護基準の問題につきましては、この基準部会において、2012年末までに検証を実施するということが触れられております。また、生活保護基準以外の問題につきましては、国と地方の協議の開始ということで、先ほど御説明しました国と地方の協議の中で議論していく、そして、必要によっては法案の提出もあり得るというような記載になっております。
以上でございます。
○駒村部会長 それでは、ただいまの事務局の説明について、質問等があればお願いいたします。
道中委員。
○道中委員 参考資料2「生活保護受給者の自殺者数について」という資料提供いただいて、生活保護の受給層についての自殺率という形で、これまで現場、フィールドでは結構そういう事象が多くあるという印象だったのですが、こういった形でデータベース化して数量的に見られるというのは非常に画期的だなと考えております。
現場のケースワーカーとして、私も経験していたのですけれども、精神疾患との関係がかなりあるということで、あるいはホームレスの方々も90%ぐらいはそういった精神疾患があるというような調査もございますし、そういった意味で、この自殺率を調査していただくというのは今後のデータが有効に活用できるものと考えます。
私も実は保護受給層の母子世帯についての調査もちょっとしていたのですけれども、母親の精神疾患が随分と出てきまして、特に、重たい精神疾患よりも、むしろうつとか、神経症群とか、DVのトラウマとか、そういった行動障害群のものが随分引きずられてきているという実態が確認されています。そのことから就労というよりも、まずヘルスプロモートというような形で、今後の施策に生かせるような形でお考えいただければ非常にいいことだなあと考えます。できますれば、精神疾患についての世帯類型別のデータも当然抽出できるだろうと思いますので、そういった形で、その他世帯が多いのか、あるいは母子世帯、高齢が多いのかとか、そこらが今後のインプリケーションとして非常に有効な資料になるのではないかと考えますので、是非これを楽しみにしたいと考えています。
○伊沢社会・援護局保護課長補佐 ただいまお話ございました世帯類型別の自殺者数でございますが、6ページの方でございますけれども、高齢者世帯、母子世帯、障害者世帯、傷病世帯、その他世帯の区分けで、数といたしましては、構成割合等も入れさせていただいております。
○駒村部会長 道中先生が今おっしゃった部分ですけれども、資料9ページに相当する世帯類型別の精神疾患の有無、これはあるのでしょうかという部分も含まれていたと思うのですが、これはいかがでしょうか。
○伊沢社会・援護局保護課長補佐 個票に戻りまして、再集計というか、特別集計という形でさせていただければ出せるかと思います。
○駒村部会長 道中先生がおっしゃるように、どの世帯類型に多いかというのがわかってくれば、どういうところに重点化するのかと。一番最後の施設にプラスアルファで、多分ケースワーカーの皆さんも、ああなるほどと、こういう状況になっているのかというデータがあればいいかと思いますので、またいずれ個票に戻って集計可能であればまた見せていただければと思います。ほかに。
庄司委員、お願いいたします。
○庄司委員 ちょうど今、自殺のところが出ましたので、関連してちょっとお尋ねしてみたいのですが、全国的な今の自殺の状況の中では、自殺というのは全体として男性問題といいますか、そういうことが非常にはっきりしてきたのと、それから、過労死、過労自殺ということに加えて、近年の失業ですね。失職で自殺というそれが非常に相関しているというデータは出されているので、それがここでは全国の自殺の状況として読み取れるのですが、それに比べますと、被保護自殺者の方では、自殺率が若年層に非常に高くなっているのを、現段階、ごく近年のあれですけれども、その原因というのは主に若年層に自殺率が非常に有意に高く偏っていることをどのように見ておられますでしょうか。
○駒村部会長 データは4ページでしょうか。
○庄司委員 資料で言えば、5ページの「年齢階級別自殺率」、先ほど御説明のところではその辺はちょっと飛ばしておられましたが、4ページ、5ページですが、特に自殺者数の方は、これは母数との関係がありますのでちょっと別にして、自殺率の方で見ていただく方がいいと思うのですね。それは5ページの方の資料になるかと思うのですが。そうするとやはり20代層、30代層に被保護自殺者は非常に高く出ているのですが、これはどのように今の段階で見ておられるでしょうか。
○三石社会・援護局保護課長 確かに5ページのところで年齢別の自殺率は出させていただいているのですけれども、例えばそういった方々について何が原因で自殺されたかとか、あるいは精神疾患の有無が年齢別のこの自殺率にどう影響しているのか、ちょっとまだそこまでの分析はできておりませんので、持ち帰らせていただいて、そういった分析ができるのかどうかも含めてちょっと宿題にさせていただければと思います。
○駒村部会長 ほか、いかがでしょうか。
栃本委員、お願いします。
○栃本委員 今の部分で、そもそも自殺関係の資料って警察ではないですか。それで、自殺の原因というのも、後で警察でまとめたやつですね。警察統計の方で、精神疾患の人だったとかそういうのはありましたか。
○庄司委員 警察と総務省と両方出ているのですね。
○栃本委員 精神疾患のはないでしょう。精神疾患別というのはとれてないと思いますよ。それで、なるほど、生保を受給されている方が精神的な課題を持たれている方が多いということで、なおかつ自殺されている方も受療していたとかそういうのはあるだろうけれども、その一方で、傷病者世帯が、この6ページの説明書きだと、世帯類型別の自殺者数で言うと、「傷病者世帯が最も多く」となっているでしょう。この世帯類型というのは最も優先順位があるのが何とか第1回目か2回目のときに説明があったやつで、ここでは、傷病者世帯になっているから、そうなると、精神疾患の人が、全く無関係とは言わないけれども、簡単に結びつけていいのかどうかというのはよくわからない。それは専門家の方はもう研究されているのかもしれないけれどもね。つまり、傷病者世帯の中でも精神疾患の方がいらっしゃって云々という形になるかもしれないけれども、というので、一般的には、生保を受給されている方はいろいろ生活課題が多いわけだから、自殺というか、そういうことあるでしょうけれども、そこら辺の分析というのは、精神疾患との関係でという場合に、やはり慎重にというか、やるべきだというのが1点です。
それともう一点は、ちょっとこれまたこの審議会の本題とは違うのですけれども、先ほどの東日本大震災の関係ですけれども、先ほど参考資料の説明にもありましたけれども、これから、津波と、それと放射能の関係とかその他もろもろの関係で、中期的に見るとかなりの数が発生しますね。それで、前回お聞きすればよかったのですけれども、被災地別で、青森とか岩手とか宮城とか福島とか茨城になっているわけだけれども、これは申請する人の住所地というか、そこで申請したという意味でのものですね。
○三石社会・援護局保護課長 例えばこの参考資料3の裏をめくっていただきますと、まず左側の欄に北海道、青森云々とございますけれども、これは実際に保護の相談を受けたり、あるいは申請を受けたり、あるいは保護の開始を決定した実施機関が並べられております。一方、右側の被災地の方は、もともと被災者かどうかは御本人の申告ですので、自分は例えば福島原発で、福島から逃げてきたとおっしゃれば福島ですし、宮城で津波に遭ったというのであれば宮城ということで、基本的には御本人の申告ということになります。
○栃本委員 それが申告だということで、持っている手帳がないとか、例えば生保ではないけれども、保険証がないからとか、そういうので被災地以外のところでいろいろなしで全部受けてみたいなことがかなり増えているわけですね。それともう一つは、生保の申請で、例えば被災地ではないけれども、そこから逃げてきたとか、そういうので申請するわけだけれども、あくまで申請というか、自分の申告ということになっているので、そこら辺、これからどのように見ていくのかというのは非常に重要なポイントになると思うのですよ。
それと同時に、被災地別と書いてあるけれども、これは表書き、被災地別で、それはそれで非常にわかりやすいけれども、それと同時に、全国に散らばるというとあれですが、かなり広範にこれから影響が出るわけで、したがって、細かく北海道から、こういうデータも比較的表というか、前面に出していった方が、今広がりを持っていると言ったらあれだけれども、必ずしもそこで暮らすということが、一番幸いなことでしょうけれどもなかなか難しいことが出てくるし、2次的な影響とかそういうのがすごく出てくる可能性があるから、北海道から始まって、沖縄はどうかわからないけれども、こちらの方のデータももう少し紹介していただいた方が、持つ意味というのがすごく出ると思います。
以上です。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
阿部委員。
○阿部委員 今のこの統計について1つお願いがございまして、御本人の申告による被災者ということを数えていらっしゃると思いますけれども、そのときに、実際に被災されて家がなくなったとか避難地域に移っているというだけではなくて、取引先が倒産してしまって、それで自分の会社も倒産しただとか、そのような間接的なものもこれからはいっぱい出てくるかと思いますけれども、そちらの方の影響というのも見たいと思いますので、それもとることは可能でしょうか。第1次被害と第2次被害に分けるみたいな形で、どうしてですかと聞いていただくときに、それは可能かと。
○三石社会・援護局保護課長 私どももいろいろ詳細な分析をしたいのですけれども、実はこういった調査も自治体にかなりの負担をかけて、要は、通常行っている生活保護受給者の方の、毎月毎月速報値で出している調査とは別に被災者ごとに出していただいているものですから、これだけでも相当地方に負担をかけておりまして、そこに更にそういった2次被害的なものを加えることについて、私どもとしてはできれば把握したいとは思うのですけれども、自治体の、実際にケースワークに携わる方にすると、そもそもそうするとそういった2次被害の程度をどのように定義したらいいのかという問題もありますし、実際に調査に当たる自治体の負担を考えるとなかなかちょっと厳しいところがございます。今後そういったもう少し詳細な調査もできるのかどうか、そこは自治体とも相談をしていきたいと思います。ちょっとここでは確約しかねますので、恐縮でございますが、そんな状況でございます。
○駒村部会長 ほかいかがでしょうか。
○岩田部会長代理 この部会と余り関係ないのですが、さっきの年齢別の自殺率ですけれども、被保護者で年齢別に若い方に傷病者が率としては高いだろうと思います。それは保護の要件といいますか、若くて、つまり、稼働年齢期にあって、働けるであろうということが想定された場合に、受理される可能性が相対的には少ないので、それが生活保護世帯になっているということは、精神疾患も含めた傷病、障害世帯の割合が、65歳以上に比べて相対的に高い、特に若い層でかなり高いということは推定されるのではないでしょうか。
○駒村部会長 ほか、いかがでしょう。
林委員、お願いします。
○林委員 少し教えていただきたいのですけれども、今の自殺関連の資料の最後の方に、救護施設というのが全国に188あるということですけれども、救護施設内で自殺されているということは結構あるのですかね。またはその数字はあるのですか。教えてください。
○三石社会・援護局保護課長 恐縮でございますが、今回の調査の中では、救護施設内か外かということでの把握はしておりませんので、現時点ではそういったものを把握しておりません。
○駒村部会長 いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、続いて、事務局より資料2、資料3について併せて御報告をお願いいたします。
○三石社会・援護局保護課長 それでは、まさに本日のテーマでございます「生活保護制度における勤労控除等について」ということで、資料2を御説明させていただきたいと思います。
1枚おめくりいただきまして2ページからでございますけれども、勤労控除につきましては、2つ、趣旨・目的がございます。1つは、勤労に伴う必要経費を補てんするということ。それから2番目といたしましては、勤労意欲の増進・自立助長を図るということでございます。そして勤労控除の種類でございますけれども、まず一番大きいのが、マル1の基礎控除ということで、上限額は、1級地の場合ですが、月額3万3,190円になっておりまして、勤労収入額8,000円までは全額が控除されるということになります。詳しくは後ほどグラフで御説明させていただきたいと思います。
なお、この上限額につきましては、生活扶助基準の改定率に準じて、その並びで改定しているものでございます。
この基礎控除の趣旨でございますけれども、勤労に伴って必要となる被服、あるいは身の回り品、あるいは知識、教養の向上等のための経費等々を控除するというもので、かつ、勤労意欲の増進・自立の助長を図ることを目的としております。基本的な控除額の算定は、勤労収入に比例して増加させる方式を採用しております。
2番目といたしましては特別控除というのがございまして、こちらは年間の勤労収入額の1割でございます。上限額といたしましては、やはり1級地で15万900円ということで、こちらの方も、生活扶助基準改定率並びで改定しているものでございます。趣旨といたしましては、勤労に伴って必要となる年間の臨時的な経費に対応するもので、年間を通じて一定限度額の範囲内で必要な額を控除するということで、通常のいわゆるボーナスに相当するような控除ということとなっております。
3番目といたしまして新規就労控除というのがございます。こちらは、基準額としては、各級地共通で月額1万300円ということで、就労から6か月間のみ控除されるものでございます。これは中学、あるいは高校を卒業して初めて継続性のある職業に従事する場合、こういった場合などに、その勤労収入から一定額を控除するというものでございます。
4番目には未成年者控除がございまして、こちらも各級地共通で、月額1万1,600円。その数字については生活扶助基準改定率並びで改定をしております。こちらの要件といたしましては、名前にあるように、20歳未満の方が就労している場合に、この勤労収入から一定額を控除するものです。ただし、単身の方とか、あるいは配偶者とのみで独立した世帯を営むような方などについてはこの対象とはしないというような取り扱いとなっております。これ以外にも、必要経費として、通勤費とか社会保険料などについては実費で控除されるという仕組みとなっております。
続いて3ページをおめくりいただきたいと思いますけれども、実際に働いて収入がある場合の生活保護における収入として認定される額でございます。まず、左から右の方をごらんいただきますけれども、勤労収入については、額が月によって変動するような場合には、過去3か月間の平均額という原則的な考え方でございまして、超勤手当、通勤手当など一切のものを合計いたします。ここから、先ほど申し上げましたような勤労控除といったものを差し引きます。ここで差し引くので控除というような言い方をしておりますけれども、実質的には受給者の方のお手元に残る額でございますので、19年の検証などではそもそも控除という言い方がややまぎらわしいのではないか、なかなか一般の方にはわかりづらいのではないか、むしろ手元に残る額というような言い方の方がよりベターなのではないかというような議論もあったと伺っております。
ただ、控除という趣旨は、このような算式で差し引く、収入認定される対象になる就労収入から差し引くという意味で、控除という名前になっているということでございます。
更に、先ほど申し上げましたように、実費の控除ということで、通勤費とか社会保険料などについて実額が控除されます。その結果出された収入額が、生活保護における認定された収入額ということとなります。
若干統計データをご紹介したいと思いますが、その下にございます「世帯類型別の就労者のいる世帯数等」ということで、こちらは平成21年の全国一斉調査における数字でございますけれども、この時点で生活保護受給者の総世帯が121万6,840世帯でございました。そのうち就労者の方が1人でもいる世帯数が14万7,650ということで、率にして全体で見ると12.1%でございます。類型で見ますと、母子世帯が45%、その他の世帯が33.5%となっております。そして、先ほど申し上げた勤労控除が適用されている世帯の平均の控除額の実績、これは1世帯当たりの月額でございますけれども、全体で見ますと、2万3,700円。これが母子世帯ですと2万7,300円、その他の世帯で2万6,100円ということでございます。
次は世帯員の1人当たりの基礎控除額です。先ほど各種控除を申し上げましたけれども、ここでは世帯員1人当たりの基礎控除額のみを取り上げております。その月額で生活保護世帯全体では1万5,700円でございます。母子世帯では1万8,300円、その他の世帯では1万6,600円となっております。
今、御説明したこの世帯員1人当たり基礎控除額について、その分布を見たものが4ページでございます。各世帯類型別にグラフをつくっておりますが、左上が全体、そして母子、その他、高齢者、障害という順に並んでおります。ごらんいただきますと、母子世帯員、あるいはその他世帯員の1人当たり基礎控除額は全体よりやや右寄り、額が大きい方に偏っているということで、高齢者世帯員及び障害・傷病世帯員は全体よりやや左寄り、額が小さい方に偏っているというような分布となっております。
続きまして、5ページでございます。各種勤労控除のベースになりますのが基礎控除でございますけれども、基礎控除の仕組みについて御説明を申し上げたいと思います。基本的には、基礎控除は就労収入額に比例して控除額が増えていくという仕組みになっております。
下にグラフがございますけれども、横軸が就労収入の額、そして縦軸が基礎控除される額ということとなります。基礎控除額は左の目盛になるわけでございますけれども、まず就労収入額0から出発して8,000円のところ、ちょうどAの点でございますが、ここまでは満額が控除される。4,000円収入があれば4,000円控除されますし、8,000円収入があれば8,000円満額控除されるということとなっております。
そもそも制度の経緯で申し上げますと、今の仕組みは昭和61年にでき上がったわけでございますが、そのときには4,000円でこの全額控除を設定しておりました。その当時、いわゆる不安定就労の方のための控除というものがあったわけでございますけれども、その額を参照して、4,000円で設定したということでございます。現在その額が8,000円になっておりまして、現在はこの全額控除の水準は8,000円という額となっております。これがAの点でございます。
そして、就労収入額の横軸をごらんいただきますけれども、就労収入が24万円のところに破線がございます。ここで基礎控除額の上限額、天井となっておりまして、縦軸のところをごらんいただきますと、C点でございますけれども、この3万3,190円というのが現在の基礎控除額の上限ということになっております。
ちなみに、この3万3,190円につきましては、やはり昭和61年に上限額を2万7,280円で設定いたしまして、そこから生活扶助基準の改定率で毎年毎年伸ばしてきた。その結果、現在、この3万3,190円になっているということでございます。
なお、その61年の考え方につきましては後ほど御説明させていただきたいと思います。そして、AからCのラインにつきましては、単純にAからCを直線で結ぶのではなくて、やや上に凸になるような線になっております。この点についても、先ほどの61年の経緯のところで御説明させていただきたいと思います。
下に表がございますけれども、このグラフを金額に直したものでございますが、就労収入額に対して対応する基礎控除額がございます。この基礎控除額を就労収入額で割ったものが控除率ということでございますけれども、先ほど申しましたように、8,000円までは100%の控除率。控除率はその後徐々に下がるわけでございますけれども、一番上限の3万3,190円のところでは、控除率も13から12%ぐらいになるということでございます。
続いて6ページでございます。それでは世帯員の中に複数働く方がいらっしゃる場合どうなるかということでございますが、基礎控除額について、1級地、2級地、3級地に分けまして、それぞれの級地について、1人目、そして2人目以降と欄が分かれております。この1人目というのは、その世帯で一番収入額の多い方がここに該当します。それ以外の働いていらっしゃる方については2人目以降の数字が適用されるということになります。
なお、2人目以降の方については、同じ収入の場合であっても、1人目に対して大体85%程度の数字になっております。
続いて7ページをごらんいただきたいと思います。これは具体的に単身世帯の方について就労収入別に見た可処分所得額がどのように増えていくかをグラフ化したものでございます。ここでは、単身世帯を41~59歳、その他世帯で一番多い類型の年齢層の方でございますけれども、東京都の1級地-1のケースについてグラフ化をしております。
このグラフの見方でございますけれども、横軸が就労収入額で、縦軸が可処分所得額ということで、いずれも円単位で記載しております。そして、0のところから右斜めに伸びている破線、これが就労収入でございまして、就労収入の増加に伴って、今度、青い線が右下がりになっておりますが、これが保護費でございます。就労収入が増えるとともに保護費は減るというような形になっておりますけれども、実際にその方のお手元に残る可処分所得、これは最低生活費に控除額を加えた額というのが、この世帯における実際の可処分所得となります。ここでは、シンプルにするために控除額については基礎控除だけを取り上げております。
2番目の○のところでございますけれども、この単身世帯のケースでございますと、最低生活費は13万6,600円、ちょっと濃い青いラインが水平に伸びておりますけれども、このラインが13万6,600円の最低生活費のラインでございます。これは、内訳としては生活扶助と住宅扶助ですが、住宅扶助については上限額の5万3,700円を適用しておりますが、青い水平のラインが最低生活費ということになります。ここに更に、就労収入に伴って基礎控除額がオンされますので、その上に基礎控除額というものが記載されるという形となっております。
就労収入額の0から、就労収入が増えるとともにこの基礎控除額も増えていくというような形になりまして、最終的には、保護廃止というラインがございますけれども、ここが16万4,490円という収入額のところになります。このラインが保護が廃止されるラインということになるわけでございますが、そこに相当する基礎控除額は2万7,890円ということになります。
2万7,890円に、先ほどの最低生活費13万6,600円を加えました16万4,490円、これが就労収入であると同時に可処分所得の額にもなるということになります。この16万4,490円を超えて更に就労収入が右斜めに伸びていっておりますが、こういった収入のある方については、まさに保護が廃止された後の収入ということになるわけでございます。しかし、(注1)にございますように、保護廃止後の可処分所得については、実際には、この後、税とか社会保険料、あるいは医療費負担、こういったものが保護廃止によって生じますので、そういったものが生ずる場合には、当然、可処分所得は影響を受けるということで、実際の額は、ここに書かれておりますように、まっすぐ右斜めに伸びるわけではないということでございます。
また、(注2)にございますように、計算上、ほぼ廃止のラインは16万4,490円でございますけれども、実際に保護が廃止されるかどうかというのは、定期収入の恒久的な増加が見込まれて、保護を再開する必要がないと認められるときに廃止されるものでございますので、たまたま、計算上16万4,490円の収入があるからといって、機械的に廃止されるものでもございません。ここは、グラフをわかりやすくするためにそのような金額を記載させていただいているところでございます。
続いて8ページをお開きいただきたいと思います。先ほど現在の仕組みは昭和61年からスタートしているということを申し上げましたけれども、昭和61年のときに契機になりましたのが、真ん中のところにございます昭和60年12月17日の中央社会福祉審議会の意見具申でございます。ここで勤労控除制度のあり方について検討し、見直しの方向性が提言されております。
改正の趣旨でございますけれども、マル1にございますように、61年よりも前は職種区分などかなり複雑な制度になっておりましたが、そういった職種区分を撤廃するとともに、勤労意欲増進のための経費としての性格を強めるため、基本的には収入金額に比例する方式に一元化するというような、まず基本的な考え方を打ち出しております。
そして具体的な改正の内容でございますけれども、最初の○にございますように、一般低所得勤労者世帯における就労関連経費、これが勤労収入の増加に比例して増加していく、特に知識・教養のための経費の伸びが顕著となっているということで、控除額は収入の金額に比例して増加させる方式に一元化することとしております。
具体的な控除率につきましては、その就労関連経費の支出状況が約20%であったということから、先ほどのようなラインを使っております。具体的には、先ほど5ページで見ていただきました勤労控除額のラインがございますけれども、当時のAに相当する点からB点に伸びるこの傾きがちょうど20%、0.2となっておりました。
なお、BからCについては約7%ということで、収入が低い方ほど基礎控除額が逓増していくという仕組みにして、ある一定収入を超える部分については基礎控除の増え方をやや抑えるというような形としております。したがって、先ほど申し上げましたように、5ページの基礎控除のラインがやや上側に凸になるような形になっているということでございます。先ほど申し上げましたように、61年の際には、全額控除は4,000円ということでございますが、現在は8,000円までが全額控除という形となっております。
そして、また8ページのマル2の3番目の○のところでございますけれども、同一世帯内で複数の就労者がいる場合にはその就労関連経費には共通する部分があるということで、2人目以降の控除額は一定割合を減ずることとしております。それが先ほどごらんいただきました6ページの1人目、2人目以降のところで、2人目以降については、1人目の85%と申し上げましたけれども、今申し上げた就労関連経費が共通する部分があるということで、2人目以降の控除額には一定割合、すなわち85%を掛けて減じるという取り扱いとしているところでございます。
以上が現在の勤労控除についての経緯、考え方でございますけれども、平成19年におきましても、この勤労控除の検証をしております。9ページがその際の論点と検討の方法でございます。平成19年の検討会における論点といたしまして、大きくは2つございまして、1つは、就労に伴う必要経費の補てん、あるいは勤労意欲の増進を趣旨とした現行の基礎控除の水準は妥当であるか。(1)としては、現行の勤労に伴う必要経費はどの程度と見るのか。それから(2)として、現行の勤労控除では、収入金額比例方式とされているけれども、実際に収入の増加に応じて必要経費は増加しているのかどうかということが挙げられました。
また、大きな2番目といたしましては、就労インセンティブを効果的に増加させる勤労控除の水準や仕組みは妥当であるかどうかということでございます。具体的には、単に勤労控除額を引き上げると、受給者の方の手元に残る金銭は増加しますけれども、被保護者の自立促進に果たして資するのかどうか。また、保護を受けていない方との公平性にも留意する必要があるのではないかというような論点を当時掲げております。
こういった論点を検証したものが10ページ以降でございます。まず10ページが最初の1番目の論点、「就労に伴う必要経費の水準について」ということで、就労に関連する経費を平成16年の全国消費実態調査の特別集計を使って検証しております。ここでは一般世帯の単身有業世帯と夫婦子1人世帯それぞれについて分析をしております。下の表の一番左側に就労関連経費をマル1から10まで取り上げております。
なお、なぜこういったものを取り上げたかという点については、※印にございますように、就労に伴う経費と考えられる品目を幅広く抜き出して集計したもので、実際には就労とは関係ない支出が含まれることがあること、また、むしろ家事上の支出と見るべきものも含まれることがあることに留意する必要がある、というような整理をしております。
そして、その一番左側から次に右側の欄が単身有業世帯、60歳未満の第1・五分位の世帯の数字でございます。そしてその右側が夫婦子1人世帯、有業1人のやはり第1・五分位の世帯の数字でございます。
いずれも、一番下の色つきの欄のところでございますけれども、就労に関連する経費を就労収入で割った率、これが10.4、あるいは10.7%ということで、いずれも平均で就労収入の1割程度になっているという分析をしております。
続いて11ページでございますけれども、先ほど、こういった関連経費が就労収入に応じてどのように増えていくのかという論点がございましたけれども、最初の○のところでございますが、単身世帯と夫婦子1人世帯いずれも、就労に関連する経費と就労収入階級の間に正の相関関係が見られるということでございます。
具体的には、下のグラフ、これはやはり平成16年の全国消費実態調査の特別集計でございまして、左側が単身世帯、右側が夫婦子1人世帯で、それぞれ、横軸に就労収入、縦軸に就労に関連する経費で回帰直線を引いておりますけれども、その結果、正の相関関係が見られるということでございます。
2番目の○でございますけれども、この回帰直線の傾きは約0.1ということになっておりまして、就労に関連する経費は、就労収入が1万円増えるごとに1,000円程度増える傾向があるということでございます。
こういった分析のもとに、最終的に19年の検証の際の結論といたしましては、12ページでございますが、19年11月30日に報告書がとりまとめられておりますけれども、その勤労控除についての記述を抜粋したものでございます。左側の欄は今の勤労控除の仕組みなり基本的考え方を整理したもので、右側の欄、具体的にはマル2以下が評価・検証の部分でございます。
まずマル2の「消費実態との比較による評価・検証」のところでございますが、先ほどデータをごらんいただきましたように、収入の大体1割程度が就労に関連する経費となっているということでございます。
マル3の「勤労意欲に関する議論の整理」というところでございますが、まず、勤労控除の2つ目の目的、「勤労意欲の増進及び自立の助長を図る」という役割については、収入の増加に伴って、その分保護費が減額されると勤労意欲を阻害すると考えられることから、一定程度の手元に残る金額を増加させる必要がある。特に保護からの脱却に資するような仕組みを検討するべきである。どのような仕組みが勤労意欲を高めるかについては実証的に検証する必要があるという一つの整理をしております。
一方、受給者について勤労控除を引き上げると手元に残る金額を増加させることになり、生活保護を受けずに働いている低所得者層との間で所得の逆転が起きるなどの問題がある。この点は、例えば先ほどの7ページの(注1)のところでは単純に、保護廃止後、いわゆる保護脱却後も就労収入が増えて、そのまま可処分所得につながるという形でラインは伸びておりますけれども、実際には、ここに税、社会保険料、あるいは医療費負担等々が加わりますので、実際の可処分所得、人によっては、この可処分所得のラインが更に下の方に来るということで、生活保護受給者中に比べて逆転するケースも考えられるということでございます。
12ページに戻っていただきますけれども、「逆転が起きるなどの問題がある。また、法の目的に自立の助長が含まれていることからその目的の範囲内であれば勤労控除により給付額が引き上がることにも正当性があるというような考え方も示された」「また、現行制度では、勤労控除で手元に残る金額が増えた場合、生活保護から脱却しにくくなる側面もある」ということでございます。この点も、また先ほどの7ページをごらんいただきますと、結局、基礎控除額と就労収入の交差した点、これが保護廃止のラインになるわけでございますけれども、ここの基礎控除額が更に上に伸びるということになりますと、結局、その就労収入と交差する点は更に右側の方にシフトするということになります。したがいまして、保護廃止の収入ラインというのは右側にシフトし、高くなるということでございますので、そういう意味からも、生活保護から脱却しにくくなるということでございます。
12ページに戻っていただきますけれども、「他方、生活保護を受けながら自立を図る世帯を想定した場合、勤労控除には就労を継続するという役割があるという指摘があった」ということで、「したがって、勤労意欲を一層増進する工夫を図るべきであるが、どのような工夫が可能かについては、上記の点を踏まえた検討を行うべきである」ということで、この19年のときには、こういった検討の論点ないしは視点を整理して、具体的な提言にまでは至っておりませんけれども、そういった整理がされたということでございます。
続いて13ページでございますけれども、自治体からは、就労インセンティブということで、この勤労控除などについても具体的な提言をいただいております。これは具体的には、昨年の10月20日に、指定都市市長会、いわゆる政令市の市長会で公表された提言でございますけれども、その中で、「就労へのインセンティブが働く制度設計」とございまして、就労等収入の本人還付ということが述べられております。すなわち、現在の基礎控除というやり方よりも、むしろ収入に応じて一定額を積み立てしておいて、実際に生活保護から脱却するような際に、むしろそこで、税・社会保険料・医療費などが発生してきますので、その際に積み立ててきたものを還付するというような仕組みがここでは提言されております。
しかしながら、これはこれで、資金の管理を実際に実施機関の方で運用上できるのかどうかといった管理の問題も生じようかと思います。また、勤労控除につきましては、未成年者控除の増額、あるいは新規就労控除の対象に就労支援プログラム対象者を含める等々の提言もいただいているところでございます。
続きまして、14ページは現在の「生活保護受給者に対する就労支援の概要」でございますけれども、3段階に分けておりまして、1つは、比較的就労意欲も高く、また、就労能力も高い方について、福祉事務所とハローワークの連携事業というような形で、マル1のような事業を実施しております。実際にこのプログラムに参加された方は、21年度で1万4,055人、実際に就職された方はその約半分ということでございます。
2番目としましては、福祉事務所独自の施策として、就労支援員といった就労の専門家の方を雇い上げていただきまして支援を行っております。21年度の対象者は4万2,550人、そのうち就職された方が約3割であったということでございます。それら以外の各福祉事務所における独自事業というものがマル3でございますけれども、支援対象者が1万7,914人、就職率は約25%ということでございました。
続いて15ページでございますけれども、今申し上げたようなさまざまな就労支援を福祉事務所、あるいはハローワークとも連携して実施しているところでございますけれども、今年度からは新たな仕組みということで、「福祉から就労」支援事業というものを実施しております。
これは、生活保護受給者だけではございませんが、いわば生活、就労が困難な方、例えば児童扶養手当の受給者、あるいは住宅手当の受給者も含めての事業でございますが、特徴といたしましては、福祉事務所、地方自治体とハローワーク、国との間で、福祉から就労事業の協定を文書によりあらかじめ締結しておく。その文章の中で支援の対象者、あるいは対象者数、それから就労などの目標、更には両者の役割分担、こういったものを最初に明確化した上で、両者で連携して受給者などの就労支援を行っていく。特にハローワークにはそのための専門の担当職員という形で、全国で現在、700名いらっしゃる就労支援ナビゲーターによって、そこに書かれているようなさまざまな就労支援メニューを実施していくという事業も行っているところでございます。
以上が勤労控除の御説明でございますけれども、併せて、今後のこの部会の進め方について、前回お話をさせていただきましたけれども、その中で特に9月以降については、各委員の方々から御報告をいただきたいということで、16ページに、大変僣越ではございますけれども、その進め方について御提示をさせていただいております。
基本的には、2つ○がございますけれども、「現行の生活保護基準においてどのような論点が考えられるか」「それらの論点について、今後どのような検証方法が考えられるか」。その中には、今後活用すべき統計調査、それは全国消費実態調査に限らず、その他のさまざまなデータ、あるいは全国消費実態調査の特別集計の方針、こういったものについて各御専門の先生方から御報告をいただければと思っております。
報告の内容例は、そこに記載させていただいているとおりでございますが、流れといたしましては、一番下にございますように、9月にはお二人程度、10月は3名程度、11月は3名程度というような形で順番で御報告をいただけたらと考えております。もし御承認いただければ、具体的に何月にどなたからどのようなテーマでということについては、またメール等で調整させていただければと思っております。
以上が資料2でございます。
続いて資料3について御説明させていただきたいと思います。基本的には、従前より全国消費実態調査などに基づく検証を行ってきたわけでございますけれども、一方でさまざまなほかのデータ等も新たに収集するなり活用すべきではないかというような御意見も伺っております。そこで、こういった生活の質に関する調査データがとれないだろうかということで、実はこれは社会保障・人口問題研究所の阿部部長のアドバイスなどもいただきまして、新たにこの調査を始めさせていただいたところでございます。
1枚おめくりいただきまして、調査の目的でございますけれども、一般世帯と生活保護受給世帯の生活実態と生活意識を把握するということでございます。調査の方法といたしましては、一般世帯は約3万2,000世帯、生活保護受給世帯は1,110世帯を対象に調査員が世帯を訪問して、実際に調査票に記入していただくというような形で調査したものでございます。
調査項目につきまして、詳細は後ろの方につけておりますけれども、主な項目としては、まず家庭の状況、世帯類型、住居、配偶者、金融資産、学歴、健康状態、就労状況のほかに、家庭の生活実態及び生活意識ということで、普段の生活、耐久財の保有状況、親族・近隣とのつき合い、住環境、レジャーや社会参加、家計の状況、生活の満足度、あるいは育児・子どもの教育についてというような幅広い項目について調査したものでございます。
そして、スケジュールでございますけれども、3ページでございます。昨年の7月に調査を実施いたしまして、今年の8月に国民生活基礎調査の公表が行われる予定です。そして、今年の8月以降に、本調査への二次利用申請をいたしまして、できれば今年の10月から、この国民生活基礎調査のデータの提供をいただきまして、この10月以降に、一般世帯ないしは生活保護受給世帯のデータについて集計ないしは公表できる運びとなっております。
調査票の具体的な質問項目については4ページ以降にございますので、適宜ごらんいただければと思います。
以上でございます。
○駒村部会長 それでは、ただいまの事務局の説明について質問等があればお願いいたします。
山田先生、お願いします。
○山田委員 どうもいろいろ貴重な資料をありがとうございました。私の方からは1点質問と、2点目は質問というよりコメントに近いものですけれども、まず1点目ですけれども、資料2の5ページに控除率というものがございます。今、御説明がありましたように、7ページでは、保護廃止以降、(注1)で書いてありますとおり、税・社会保険料・医療費負担等がかかるとあります。控除率というのも、昭和60年のときに実際そういう言葉でいろいろと書かれているので重要な指標だと思うのですけれども、もう一つ、限界税率。限界税率というのは、要は就労収入が1円増えたときに実際に何円増えるのかといった限界的な収入の増え方に対してどれぐらい収入が増えるのかという指標も大切なように思います。特に保護から脱出するときの限界税率がどうなるのかというのは、非常に重要な指標だと思いますので、そちらについて、もし同じような線を描けるのであれば是非教えていただきたいと思います。
とりわけ複数の就労者がいる場合に、場合によっては、何か予算制約のように屈曲が出ないかどうかというのがやや気になっております。と申しますのも、4ページの資料にございますように、世帯類型によって、一番多く人がいる階級値というのが違ってくるわけですね。母子世帯だと1.5~1.8万円で、高齢者世帯だと0.9~1.2万円。障害・傷病世帯だと0.9万円~1.2万円とほぼ同じですけれども、要するにモードができているところというのは、勿論、そこが一番就労機会が多いところという可能性もありますけれども、ひょっとしたら、何か予算制約が屈曲していて集中している可能性というのもありますので、限界税率とともに、そこら辺どうなっているのかというのが、今日でなくても構いませんので、もし資料としてできるのであれば見せていただきたいというのが1点目でございます。
2点目に関しましては、勤労控除を考えるときに制度的な枠組みをどのように考えたらよいのかということです。御指摘もありましたように、勤労控除を何らかの形で、今の形よりも変えて、就労収入に応じて増えるような形にしておくと、低所得の勤労世帯とのバランスというのが、平成19年の報告書にも指摘されていましたように、重要になってくるわけです。特に低所得勤労世帯に関しては、阿部先生も書いておられるように、給付付き税額控除というものが、今、具体的な制度の提案としてありますので、それを考えながら話していいのか、もしくは考えないで、そういったものは一切考えられないということであれば、おのずとその勤労控除をどう考えるのかというのは、低所得勤労世帯との公平性という問題から非常に難しいところがあって、13ページにあります「社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の提案」というのは非常に私にとっては興味深いものです。就労等収入の本人還付ということです。
質問と絡めて、質問かコメントかちょっとごっちゃになってきましたけれども、こういった一定額を積み立てて生活保護から自立する際に本人に給付するというのが実務的に可能なのかどうかということをわかる範囲で教えていただけたらと思います。
私からは以上です。
○駒村部会長 限界税率というお話もありましたけれども、7ページの(注1)のところは、確かにこのように右に上がっていればまあいいのですけれども、1万5,000円の、例えば年金を引いたり医療保険料を引いたり税金を引いたら、下手をすると折れているというか、もしかしたら逆転現象が既に発生しているという可能性もあるわけです。だから、東京の1級地-1の単身世帯、41~59歳の方のモデルで考えれば、本当にこれがカクンと折れてしまっているとするならば、その手前でとめた方がいいということになってしまいます。そういうことが起きているかどうかということが1つだと思うのですけれども、山田さんが今触れられた4ページのところも、これは1人当たりになっているわけですね。例えば母子で3万円ということになってくる、例えば3人世帯か2人世帯がわからないですけれども、6万円ということになるのですか。ちょっとこれは読み方を教えてください。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 こちらにつきましては、いわゆる勤労控除を適用されている方1人当たりということでございます。これはなかなかレアケースでございますけれども、5ページのグラフと比べていただきますと、就労収入が20万円に近いような方が、ごくわずかですが、いらっしゃるといったことになります。
○駒村部会長 見方によると、ちょっとこれは微妙かもしれませんけれども、5ページ、Aのところが8,000円、Bのところが2万3,000円ぐらいですね。そうすると、母子のところが2こぶの山にありますけれども、ちょうど傾きが緩やかになるところで就業を調整してしまっている可能性もあるということでしょうかね。山田さんの御質問は、そういう選択にゆがみが出ているのではないかという話をしているわけですね。
○山田委員 そうですね。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 これは難しいところがございまして、おっしゃるような複数人の組み合わせですとか、5ページのB点で屈曲が見られるといったことからどの程度影響があるかということにつきましては、現在、一斉調査の方で基礎控除を適用されている方1人ずつの就労日数ですとか就労収入月額、基礎控除の額といったものをとっておりますので、そのデータでできる範囲でしたら何らかの分析ができるかと思います。
また、山田先生から御指摘ございました限界税率、就労収入が1円増すごとに収入認定される額といった意味でございますと、A点までは限界税率という言葉で言えばゼロになりますし、24万円を超えますと税社会保険料を捨象すれば100%になるわけでございまして、5ページのA点とB点の間におきましては、傾きが約0.2でございますので、約80%、B点とC点の間では傾き0.07ですので、約93%、A点とC点の間の平均ですとおおむね90%程度になろうかと思います。
○三石社会・援護局保護課長 指定都市市長会からの提言にもございました13ページの本人還付のところでございますが、先ほど私の方からもお話をさせていただきましたように、実際に積み立てるということになりますと、Aさん、Bさん、Cさんそれぞれの名義上の何かアカウントをつくって、そこに積み立てるということになりますと、これは例えばその方が異動されたときにはではどうするのかとかいう、資金管理の問題なども生じまして、理念的にはきれいなものになったとしても、実際に運用できるかというような問題は生ずるかとは思います。
したがって、今、国と地方の協議の中でも一部の自治体からお話が出ておりますのは、そこまで完璧にしなくても、ある程度その方の就労期間なり、あるいはその間の平均的な収入に応じてポイントを付与し、生活保護から脱却する際に、そのポイントに応じた一時的なお金を支給する、還付でもいいのかもしれませんけれども、そういった仕組みが国では検討できないかというようなことも言われておりまして、そういうことであれば、運用上はいろいろ可能な部分もあろうかと思いますけれども、また、この基準部会でもちょっと具体的なその制度設計の是非も含めて御議論いただけたらと思っております。
○駒村部会長 ほかに、委員の皆さんいかがでしょうか。
道中先生、お願いします。
○道中委員 3ページをまず見ていただきたいのですが、ここのその他世帯ですね。世帯類型別の就労者のいる世帯数というのが出ているのですが、全体の中で33.5%という数字になってございます。これまで生活保護は非稼働世帯が87%ぐらいの構成割合を占めておったのですけれども、要するに、その他世帯を含む多くの人たちというのがいわゆる稼働年齢層にあるということで、随分とこれまでと様相が変わりまして、保護世帯が稼働世帯化してきているという大きな動きが、これまでとは違う様相を呈しているということです。そのことを考えますと、就労と自立の出口ということをこれまで以上に考えていく必要があるのかと思います。
特に就労自立という視点から、これまで資料でいただいた控除のところをちょっと考えますと、随分とわかりにくいものとなっていますね。これまでお話しいただいているのは、基礎控除ということがございますけれども、しかし、現場での実際のレベルでは特別控除というのは非常に大きなウエートを占めていまして、金額的にもこの特別控除というのは、現場の自治体は皆実施しておられるわけですね。ですから、5ページにしろ、あるいは7ページにしろ、ここに可処分所得ということになりますれば、当然、これは可処分所得ですから、実際の可処分所得、つまり手元に残るお金というのは、社会保険料控除も含めて、それ以外に控除の中でも特別控除というのが入るのですね。したがって特別控除の算定抜きにはなかなか論じられないなということがあります。
金額的にも非常に大きいのですけれども、そういった意味で、出口を広くするという意味で、今、三石課長のお話では、自治体の御意見も踏まえながらということですが、受給中から脱却してアウトカムを意識したときには、やはり退出時に特別控除相当額を給付の方に切りかえていくとか、もっと先の預託の方法とかいろいろあると思います。現実的になかなか難しいということであれば、その退出時にそういった特別控除や基礎控除相当額の部分をアウトカムとして給付するということでインセンティブを高めることができます。わかりにくい点がもう一つあります。実は控除の判定費目、入り口と出口と随分と違うということですね。入り口の場合は、基礎控除については70%程度で入り口のところで絞り込む。出口のところではそれは100%の控除をやってしまうということと、ほかの控除の関係とのバランスというようなところで、少し入り口のところとアウトカムのところについての全体の調整をする必要があるのではないかということになります。
そうしますと、このシミュレートした議論でいきますと随分と低いのですけれども、控除全体の実際のアウトカムで実施しているところは随分と高くなっており、生活保護から出られないといった実態があり、出口がないということになります。特別控除を入れますと保護からの退出は困難ということになりますので、そこら辺りで、非常に可能性の高いケースで意欲のあるケースについては、そういった特別控除とかほかの控除の部分を少し調整しながら、出やすいというようなところを少し御検討いただくことが大事ではないかなと思うのですね。
私からは以上です。
○岩田部会長代理 働く人が増えたというか、その他の世帯が増えたから大分様相が変わったというのは、半ば私もそうだと思うのですけれども、前回の年齢構成でいっても、60、70歳が3割以上あるのですね。世帯主年齢が。ですから、そこで読み違えない方がいいと思うのですよ。もうちょっと詳細なデータが常にないとまずいのですね。年齢と世帯類型と、それから保護開始の理由ですね。この3つのクロスをしていただかないと、まずわからない。
そうしますと、2つタイプがあると思うのですね。1つは、自立支援策を充実させることによって脱出が可能だというときに、この勤労控除をどう考えるかというその設計の問題。これは生活保護の内部の勤労控除だけではなくて、出た後の、さっきから出ている税制や社会保険料上の問題や、あるいは低所得対策をどうするかということとかなりかかわってくると思うのですね。
もう一つは、現実的に、例えば50代後半とか60代前半で生活保護を受けられている、例えば男性単身の方とか、母子もそうだと思うのですが、例えば1日3時間ぐらい、週4日ぐらい働いているようなケースがある。たとえば清掃などで働くということが多いですね。この場合は、生活保護プラス勤労収入である程度いかざるを得ないわけですね。もちろん60代前半だと年金支給によって変わるという可能性ありますけれども。そうすると、生活保護から出て勤労収入だけで自立できる層と、生活保護+勤労収入でいかざるをえない層とで、勤労控除などのあり方というのは、私は、種類がちょっと違うように思いますね。
実際上の控除額を見ていますと、勿論、特別控除が更に乗ると様相がかなり変わるというのは理解できるのですけれども、実際上それほど働いてない。だけれどもちょっと働くということによって、生活のリズムができるとか、社会参加ができるとか、そういう意味合いがあるので、そのような労働に対してこの控除というのをどのように考えていくかという、この2つは何か性格が少し違う。いずれにしても、余り現実とかけ離れたことを考えてもしようがないのではないでしょうか。それから、私は、もし可能なら、最近増えている、その他世帯だけでなくて、つまり、この1年新規に生活保護に入った方たちの詳細な調査のようなものがあるといいなと思っております。
○駒村部会長 今の道中先生と岩田先生の御意見に対して事務局から何かございますか。
○三石社会・援護局保護課長 制度設計のところはまさに今日材料は提供させていただいたわけでございますので、まさに勤労控除のところはさまざまな御議論があるかと思います。19年のときも、部会長御案内のように、いろんな御議論があったかと思います。まさにここはさまざまな案もございますので、御議論いただければと思っております。
ただ、幾つか御指摘のあった中で、1つは、特別控除について反映されてないではないかというお話でございます。確かに実務レベルでは特別控除の額がかなり大きいものでございますので、そこを無視しているわけではございませんが、最初の説明でも申し上げましたように、先ほどの可処分所得のグラフをつくる際には、シンプルなものにするために基礎控除だけを計上させていただいたものでございまして、必要があれば、特別控除、あるいはその他の控除の基本的な併給は可能でございますので、幾つかパターン分けをしてお示しすることも可能かと思っております。また、控除の考え方について、入り口と出口のところで差があるのではないかということでございますが、その点につきましても、よろしければちょっと一回整理をさせていただいて、次回にでもお示しをさせていただけたらと思っております。
それから岩田先生の方から、その他世帯について何回も御指摘をいただいておりまして、私どもも、その他世帯という形で一くくりで申し上げておりますが、たまたま今のデータでは、先生おっしゃったように、その他世帯といっても、世帯主が60歳、あるいは70歳以上という方も入らざるを得ないような取り方をしておりまして、その点のデータの制約は当然のことながらあるわけでございますので、今後、データを分析するに当たっては留意したいと思いますし、もしそういった年齢別にお示しできるようなものがあれば、今後データをつくるに当たってもその点は考えていきたいと思っております。
○駒村部会長 7ページの絵は、まず特別控除統計というのはあるのですか。実態把握というのは。
○三石社会・援護局保護課長 実績でですか。
○駒村部会長 はい。
○三石社会・援護局保護課長 一斉調査はたまたま7月1日時点でとっておりますので、その時点で特別控除が適用されていませんととれないということで、実際に分布とか平均でどうかというところは示し得ません。ただ、モデル的に、先ほどの可処分所得、例えば単身の方について、単に基礎控除だけではなくて、そこに特別控除をつけ加えたケースでありますとか、未成年者控除などはこの40代の方には関係ないと思いますけれども、幾つかパターン分けをしてお示しすることは、勿論、可能でございます。
○駒村部会長 7ページの赤い線の上にもう一本線を書いていく、比例で増えていって、マックスが月額1万数千円ぐらいのところでフラットになっていくと。そうすると、さっき道中さんがおっしゃったように、やはり自立の保護廃止のところで大きな逆転現象が発生しているようにも見えると。それが職場がない地域と職場がある地域ではまた意味が違ってくると思いますけれども、ちょっとそれもあるかもしれない。それから、先生がおっしゃったように、控除の意味がそういう部分就業的な人と自立・廃止というところになる人と違う、分けて考えるべきではないかというお話だった。
では、阿部委員の方からお願いいたします。
○阿部委員 勿論、限界税率ですとかそういう議論での、どれぐらいのレベルが適切かという議論もあるかと思いますけれども、そのもとのところの就労にかかわる費用という観点からの議論をしたときに、私もちょっと聞き逃してしまったのかもしれませんけれども、現行では、最初20%、それから7%になっていくというような形になっているのですが、平成19年のときの検証では、所得税でも大体1割、10%ぐらいの経費となっているという議論があったというお話があったと思います。
それを結局取り入れずに、20%、7%になったと思うのですけれども、これはこれから議論すべきことと受けとめていただければと思うのですが、この平成19年のときの資料を見させていただきますと、単身世帯と夫婦1人世帯、有業者1人というモデル設計なのですね。これは単身はともかく、夫婦1人世帯、有業1人なんていう世帯は現状の保護世帯に余りマッチしていなくて、母子世帯の観点が抜けているなあと。ここに挙がっているアイテムも、スーツ、ワイシャツ、ネクタイの被服費だとかクリーニング代だとか文房具だとか、すべて男性の働き手を想定していて、それも子どもがない人で専業主婦を持っているような。なので、これは母子世帯の実際に就労するために必要な経費ということと全く参考にならないと思うのですね。
ですので、もし勤労控除の見直しをするのであれば、やはり母子世帯でかかる費用というものの観点を含めないと、とてもではないけれども、母子世帯の母親にとって働きたいと思えるような状況をつくれないのではないかなあと感じましたので、そこのところをノートしていただいて、検証に含めていただきたいと思います。
○駒村部会長 10ページのこれは一番モデル世帯に近いのを選んだのではないのかと思います。この議論はこれからまた、勤労控除のフレームそのものも、水準そのものも、あるいはさっき言ったA点とかB点とかC点とかいう場所そのものも、根拠が何だったのかと。きちんとした統計的な根拠があるのか。今言ったような世帯類型別にもう少し細かく考えるべきではないのかというのは、これは1つこの部会のテーマになるのではないかと思いますので、事務局からは一度、前回もお話ししたように、加算なり本体の統計的な根拠を整理するとともに、こういう控除に関する、その設定されたときの根拠もいま一度整理し直してみるというのは今後の課題なのかなあと思います。事務局、そういう理解でよろしゅうございますか。
ほかに。
栃本先生、お願いします。
○栃本委員 まず、この勤労控除については次回以降も議論できるのですね。
○駒村部会長 はい。
○栃本委員 では、今日は一部だけ。それで、研究者の場合、皆さん御存じだろうと思うので、僕だけ知らないのかもしれないですけれども、そもそも被保護者ないし世帯で勤労収入が全くない人もいればある人もいるのだけれども、オールジャパンでというか、どのぐらいの額なのですか。勤労収入。そういう推計というのは社人研でやっていますか。
○阿部委員 人数ではなくて、何人就労しているかではなくて、その人たちが稼いだお金が全部で幾らですかと。それは数字は見たことないですね。
○栃本委員 つまりは、生活保護制度の中で、こういう勤労することによって、勿論、出口論で対比するということは重要だと思いますよ。生保の自立助長というのも重要だと思うのだけれども、部会長代理がおっしゃったように、言い方、ちょっと誤解されると困るけれども、いわゆる自立というのを完璧にすることは難しい人たちも現実的にはいらっしゃるわけですね。生保のいろんな世帯類型別を見てもね。その中にあって、就労しながらと言ったらあれだけれども、それを変な形でのレーバーリングプランみたいな形になるのはどうかと思うのだけれども、それでも就労しながら何とかやっているという層というのは極めて重要だと思うのですね。
そういうことから言って、我が国の生活保護制度においてこの就労ということがあることによって、どのぐらい助かっていると言うと非常に語弊あるけれども、助かるという言い方は非常に語弊があるから、助かるというのはなしですけれども、どのくらいというのは何かあるのですかね。もう既に資料としてありますか。
○西尾社会・援護局保護課長補佐 一斉調査におきまして、調査月7月の前月におけます就労収入月額といったものでしたら統計をとってございますので、また次回にでもお示しできるかと思います。
○栃本委員 では、次回。それともう一つは、先ほど、清掃について週3回やってとか、例示がありましたけれども、そもそもどういう形で収入を得ているかというもののデータというのもあるのですね。
○三石社会・援護局保護課長 自治体ごとではどういう職種に就職したかというデータをとっている自治体は結構あるかとは思いますけれども、私ども、全国レベルでそういう清掃とか飲食業とかいう形でとっているものはございません。
○栃本委員 わかりました。それとあと、先ほど、低所得者の関係における限界税率のことの御指摘ありましたけれども、高所得者における限界税率でなくて、低所得者についての限界税率論というのがあるというのはわかるのですけれども、日本の場合、課税の基準額というか、そういうのがアメリカと違いますね。そういうのと関係ないのですか。
○岩田部会長代理 課税最低限ですか。
○栃本委員 そう、課税最低限。社会保険を含めた意味での限界税率という言い方変なのだけれども。
○駒村部会長 山田さんがおっしゃったのは、主に社会保険を含めた限界税率ということ。
○栃本委員 わかりました。
○山田委員 申し上げたのは、多分、脱却するときに、限界税率がもう100を超えていると。部会長も御指摘のように。だから、そこを入れて考えるのが重要だというのが、先ほどの、限界税率を、特に脱却のときに見た方がよいのではないかというコメントです。
○駒村部会長 むしろ社会保険の方が決定的に重いと。
○栃本委員 それはすごくよくわかります。
○駒村部会長 今、栃本先生のおっしゃった、どういう形になっているのかというのは、14ページのところの資料、こういう事業についてもわからないのでしょうかね。就職率というのが約49%出ている一方で、廃止された方が、それに比べるとごくわずかということになっているわけですから、先ほど岩田先生がおっしゃったような、部分受給、部分就労、未就労みたいな形になっていると。全部はわからないとしても、マル1の方がまだ阻害要因がないタイプという理解でいいのですかね。マル2の方はちょっと課題が多いと。この辺が詳しくわかれば、もうちょっと、どういう形の就業になって、それが廃止にいくにはなかなかハードルは高いと。先ほど岩田先生おっしゃったようなその他の要因というのがあるのではないかと。この辺はデータはありますかね。
○三石社会・援護局保護課長 このマル1、2も全国の事業としていろいろ統計はとっているのですけれども、業種別、すなわちどういう業種に就職したかというデータは、残念ながら国ではとっておりませんので、もしお示しできるとすれば、先ほど申し上げましたように、結構大きな自治体ではそれぞれ自治体ごとの業種別就職状況みたいなものはとっておりますが、そういったものでお示しすることは可能かと思います。
○栃本委員 勤労控除などがあることによって、手元に残るお金が増えることによって脱却しにくくなるとか脱却できるとかいろいろあるのではないですか。その場合、どういう仕事にどのぐらい就いてというのはやはり決定打だと思うのですね。だから、どうしても、きれいな形と言うとあれだけれども、生保からの離脱につながるような場合の就労のパターンというか、そういうの、あるのではないかと思うのです。だから、そういう意味で、きめ細かい議論ということで言うと、先ほど、二番手の方の部分就労、部分給付みたいな、その部分でなおかつ、手持ち金と言うとあれだけれども、残ってというか、なおかつ、かなり仕事につく率を増やすというか、そういうのは非常に重要なことだと思うのでね。というので、また別の機会に。
○駒村部会長 ほかの委員はいかがでしょうか。
林委員、お願いいたします。
○林委員 ちょっと教えてください。今の14ページの実績のところで、廃止した者という数字が挙がっていますが、これは生活保護受給が廃止という意味ですね。先ほどの7ページの(注2)のところで、廃止は恒久的な増加でなかったら認めにくいみたいな表現があったと思いますけれども、さっきの14ページに戻ると、実績は平成21年度ということになっていますけれども、これは単年度という意味なのか、それとも前々からやっていて、たまたまこの年度に廃止された人がこれだけなのかということと、もう一つお聞きしたいのは、これはここから1年以上はたっていると思うのですけれども、廃止した方々が再び保護に戻られるというか、陥るというか、そういうケースというのは追跡されているのか、その辺のところはちょっと知りたいなと思いまして。
○三石社会・援護局保護課長 今の御質問でございますけれども、14ページの廃止された方というのは、例えばマル1のハローワークとの連携事業、これは21年度1年間実施してみて、この事業に参加された中で、21年度中に保護の廃止に至った方の数が894人であったということでございます。
なお、その後また保護を開始された方もいらっしゃるかもしれませんが、その数は私どもとしては把握しておりません。
○林委員 もう一度確認ですけれども、7ページのところで、機械的に廃止にはしないよと書いてあったと思うのですけれども、そうすると、単年度中に廃止するというのが、恒久的な増加というのは1年以内にあり得ると理解していいのですね。
○三石社会・援護局保護課長 といいますか、(注2)は、生活保護を受給されている方が就労されたとしても、結構月ごとに給与が変わる場合がございますので、たまたまある月に、この廃止ライン、例えば16万4,490円をある月に上回ったからといって、そこで直ちに廃止されるものではないということで、現場の方々はよく御案内だと思いますけれども、そこをよく誤解されるケースがあるものですから、念のため注記として書き加えさせていただいたものでございます。
○駒村部会長 ほか、いかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
それでは、予定時刻になりましたので、本日の審議を終了いたします。
最後に、次回の開催について事務局から連絡をお願いいたします。
○三石社会・援護局保護課長 次回は9月を予定しておりますけれども、詳細な時間、あるいは場所については現在調整中でございますので、後日御連絡をさせていただきたいと思います。先ほども資料のところで申し上げましたように、9月以降、各先生方に御報告をお願いすることになるかと思いますが、その順番、テーマなどにつきましては別途メール等で御連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。御多忙の中、ありがとうございました。
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