ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第2回社会保障審議会生活保護基準部会議事録




2011年5月24日 第2回社会保障審議会生活保護基準部会議事録

社会・援護局

○日時

平成23年 5月24日(火)15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
庄司 洋子 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
林  徹 (委員)
道中 隆 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・生活保護基準の体系等について
・その他

○議事

○駒村部会長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
 まず本日の委員の出席状況について、事務局よりお願いいたします。
○三石保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、本日は全委員の御出席をいただいております。
 それから、大変恐縮でございますが、私どもの局長、総務課長は、今、国会の関係で、もしかしたらこの後遅れて参るかもしれませんけれども、御容赦いただきたいと思います。
 それでは、この後の議事進行は部会長の方でよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 まず事務局より本日提出された資料1、資料2-1、資料2-2について、併せて御報告をお願いしたいと思います。
○三石保護課長 お手元の資料1から御説明をさせていただきたいと思います。
 これは、前回4月の部会の際に委員の方から御指摘あるいは御依頼のございましたものをまとめたものでございます。これ以外にも多々ございましたけれども、データの集計等でお時間のかかるものについては、大変恐縮でございますが、来月の次回以降で提出をさせていただきたいと思います。
 それでは、まずおめくりいただきまして、最初の「昭和58年中央社会福祉審議会意見具申における変曲点について」です。これは岩田先生から御依頼のございましたものでございまして、ちょうど岩田先生が平成15年の専門委員会の座長をされていたときに、58年の意見具申におきましては、単に水準均衡方式についてとりまとめただけではなくて、そのときに変曲点についても検証したはずである、その資料を出していただきたいというお話だったかと思います。これは1ページから8ページまで、平成15年の生活保護制度の在り方に関する専門委員会に提出された資料でございます。
 その中で変曲点の考え方でございますけれども、2ページのところの2番目の○にございます。生活保護基準の水準評価については、意見具申において、当時の生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上、ほぼ妥当な水準に達しているとの評価を受けたところであり、その水準の検証に当たっては、変曲点という概念を用いたものであります。
 下に考え方をまとめた概念図がございますけれども、変曲点につきましては、ちょうど収入階級と消費支出で縦軸、横軸をとった場合、急激に下方へ変曲する所得分位があることが認められる、これを変曲点と解釈するということで、この変曲点を境として、以下の水準では最低生活を営むことが難しくなるものと考えられる、という解釈がされておりました。
 それでは、具体的にどうやって変曲点を出すのかということでございますけれども、3ページをおめくりいただきますと、これは意見具申が出された昭和58年当時、このときには昭和54年の家計調査特別集計結果を用いまして変曲点を出しておりますが、結論を申し上げますと、変曲点の分位は収入階級を50分位で分けた場合の2.99分位のところに相当いたしまして、それを縦軸の消費支出で見ますと、消費支出総額が15万7,943円であったということでございます。
 この変曲点の考え方を用いて、平成15年の専門委員会で当時のデータを使って変曲点の導出を試みられたと承知をしています。それが4ページ以降のデータでございます。
 4ページで、このときには勤労者3人世帯における変曲点の導出がされております。
 そのときの消費支出総額は、5ページのところに折れ線のグラフがございますが、平成8年から平成12年にかけての勤労者3人世帯における収入階級別消費支出額を見まして、全体の消費支出の傾向から変曲点が50分位の中の第3から第5付近に存在するという仮定をまず置いております。
 4ページに戻っていただいて恐縮でございますけれども、左側の3番目の○のところでございますが、50分位のうちの第3、第4、第5に変曲点があると仮定した場合、それぞれ変曲点と消費支出額の算出を行っております。
 具体的には注2にございますように、相関式を連立方程式として、ここから両者の交点を求め、これを変曲点における分位としております。
 例えば右側に参考とございますけれども、50分位のうちの第3のところで変曲点が存在すると仮定した場合、グラフでいきますと、6ページのグラフになりますが、まずは第1から第3の分位における方程式をつくりまして、第3から第12分位の方程式をもう一つつくり、この交差する点に変曲点が出てくるという形で計算をしております。
 同じような形で、第4あるいは第5・50分位に変曲点が存在する場合、連立方程式を解くような形で算出をしております。それぞれの変曲点における分位あるいは支出額につきましては、4ページの表にまとめられているところでございます。ここはむしろ岩田先生から当時の御議論を御紹介いただければと思いますけれども、いろいろ導出をしてみましたが、これが正当な変曲点であるというところについては、当時さまざまな御議論があったと伺っております。
 続いて9ページでございますけれども、駒村先生から、前回各生活保護の世帯類型ごとの数字を御紹介した際に、世帯の定義、特に重複するようなケースについては、どういうふうに定義づけられるのかという御照会がございました。
 そちらにございますように、上から高齢者世帯、一番下にその他の世帯と並べておりますけれども、分類の順序といたしましては、上にある方を優先するということでございまして、例えば高齢者世帯であって障害者世帯であるような世帯については、高齢者世帯として分類をすることになります。
 続いて、10ページあるいは11ページでございますけれども、その他の世帯の構成割合について、ある程度のタイムスパンでデータを示してほしいという御依頼がございました。
 そこで、10ページにつきましては、年齢階級別に見たものでございまして、1番が世帯主の年齢、2番が世帯員の年齢で見たものでございます。いずれも11年度、16年度、そして、直近の21年度で見ております。これを見ますと、その他の世帯の中で比較的高齢な方の割合が高くなっていることがおわかりかと思います。
 続いて11ページでございます。やはりその他の世帯について、3番は世帯人員数別に見たものでございます。これをごらんいただきますと、いわゆる単身世帯、1人というところが11年度は40.9%に対して、21年度は57.9%ということで、単身世帯の割合が高くなっているということがおわかりかと思います。
 4番は受給期間別に見た場合でございます。11年度から21年度を見ますと、平均受給期間は7年2か月から4年8か月ということになっておりますが、これはむしろ新規のその他の世帯の方々が多く加わってきますと、その分平均受給期間は短くなりますので、その影響かと思われます。
 一方で、受給期間5年以上の方の割合を見ますと、例えば16年度から21年度を見ますと、16年度29.3%であったものが、21年度には33.6%という形で増えていることがおわかりかと思います。
 最後に12ページでございますけれども、医療扶助費と住宅扶助費の動きの比較でございます。たしか先般阿部委員から御指摘があったもので、医療扶助、住宅扶助とも伸びているけれども、伸び率で見た場合、住宅扶助の方が大きく伸びている理由はどういうことかという御指摘だったかと思います。
 一番下のところにその解説を付けさせていただいておりますけれども、まず医療扶助費の総額あるいは住宅扶助費の総額はいずれも増加傾向にありまして、それぞれ扶助の対象人員数、住宅扶助であれば世帯数の動きに連動している、相関係数で見てみれば、それぞれ0.99なり1ということでかなり高い相関関係にあるということになります。
 住宅扶助の伸びが医療扶助の伸びよりも大きいのは、持ち家のない被保護世帯の割合が最近増えているといったことなどによって、住宅扶助対象世帯数の伸びが医療扶助対象人員数の伸びよりも高いことが主な原因であると私どもとしては考えております。
 以上が前回の御依頼の資料のうち、今回データ整備などが間に合った部分のものでございます。
 続いて、資料2-1、更には資料2-2について、御説明をさせていただきたいと思います。
 まず資料2-1でございますけれども、現在、政府の中で社会保障と税の一体改革ということで、集中検討会議におきまして検討がなされているわけでございますが、今月の12日に厚生労働省からそのたたき台として、社会保障制度改革の基本的方向性についてのペーパーを出させていただいたところでございます。それが資料2-1でございます。この中では医療、介護、年金、あるいは低所得者対策等々、社会保障改革の基本的な方向性について出させていただいたところでございます。
 それについてのそれぞれの各論をそれ以降の集中検討会議に更に提出をしておりますけれども、それが資料2-2になります。特に生活保護の問題につきましては、ここでより詳しく述べられておりますので、資料2-2に沿って御説明をさせていただきたいと思います。
 まず資料2-2の1ページをお開きいただきたいと思います。ここで貧困・格差に関する基本的な現状認識を上の○で書かせていただいておりますけれども、ここ十数年にわたり非正規労働者や長期失業者が増加傾向にあり、世帯構造・産業構造の変化によって、家族、地域社会とのつながりが希薄化している。一旦失業などで生活保護に至ると脱却が困難になる。これらの影響により、貧困・格差が拡大・固定化しているという現状認識に対して、施策の方向性といたしまして、重層的なセーフティネットの構築が重要であり、まずは雇用・就労対策の充実が必要である。そして、重層的なセーフティネットと言った場合、第一のセーフティネットである雇用保険、それでも対応し切れないケースについて、速やかな再就職支援を行う第二のセーフティネットを構築する、そして、更に最後のセーフティネットとしての生活保護制度の見直しが必要であるという考え方をお示ししております。
 具体的な改革案のポイントでございますけれども、その下にございますが、現役世代のセーフティネットの充実による自立支援を図る必要があるという認識にございまして、雇用・就労対策の充実、先般国会で成立いたしました求職者支援制度の創設等々、その他第二のセーフティネットの施策が切れ目なく連携する必要があるということが述べられております。
 2番目のポツといたしましては、地域の支え合いの基盤となる体制の強化ということで、生活支援から就労支援までの伴走型の一貫した支援、いわゆるパーソナルサポートなどを含めた支援が必要であるということが述べられております。
 3番目のポツでございますが、最後のセーフティネットである生活保護の見直しということで、生活保護制度の見直しの基本的方向性について整理させていただいております。
 具体的なイメージでございますけれども、まず第二のセーフティネットのところでございますが、2ページをごらんいただきたいと思います。今、申し上げましたように、第一のネット、第二のネット、最後のネットたる生活保護制度ということで、特に第一のネットと最後のセーフティネットたる生活保護制度の間の第二のネットについて、切れ目なく連携し、雇用・生活・住居に関する総合的な対策を推進する必要があるということで、具体的には求職者支援制度、社会福祉協議会が行っております各種貸付制度、自治体が行っております住宅手当についてまとめさせていただいております。
 ちょっと間を割愛させていただいて、生活保護の見直しの関係について御紹介したいと思います。7ページでございます。7ページからは生活保護制度の見直しということで、まず生活保護をめぐる現状でございます。これは前回のこの部会でも御紹介させていただいたものでございますので、説明は割愛させていただきたいと思いますが、生活保護受給者の動向についてまとめたものでございます。
 8ページも前回部会で御紹介させていただきましたけれども、その他の世帯の割合が大きく増加しているというものでございます。
 9ページも前回部会で御紹介させていただきましたけれども、生活保護費全体の推移、そして、その中の約半分は医療扶助が占めているというものでございます。
 10ページでございますが、生活保護をめぐる現状、特に医療扶助について、国民健康保険と比較をしたデータでございます。平成20年度における年間のデータでございますが、私どもの分析といたしましては、枠囲いのところにございますように、レセプト1件当たりの医療費における両者の差というのは小さいけれども、生活保護の医療扶助は国民健康保険などに比べて受診率が高い、その影響で1人当たり医療費は国民健康保険などよりも高額となっているということでございます。
 具体的なデータといたしましては、その下の表に入院、入院外、生活保護と国民健康保険あるいは高齢者については後期高齢者のデータを比較したものがございます。ごらんいただきますと、例えば入院では1人当たり医療費を見ると、生活保護が年間で50万5,000円、市町村国保などが19万ということで大きく差が出ておるわけでございますけれども、レセプト1件当たりの医療費については41万円と48万円ということで、生活保護の方がやや低い額となっております。しかし、差がどこから出ているかと申しますと、いわゆる受診率、1人当たりのレセプト件数ということになりますけれども、ここで1人当たりの医療費の差が出ているということがおわかりかと思います。同様のことが入院外についても言えるかと思います。
 実際にそれをグラフにいたしましたのが、その下のグラフでございまして、棒グラフがございますけれども、左側が生活保護、右側が市町村国民健康保険又は後期高齢者の1件当たりの医療費を比較したものでございます。
 折れ線グラフでございますが、上側の折れ線グラフが生活保護の受診率、下の折れ線グラフが市町村国保などの受診率ということになりますが、例えば入院についてちょうど矢印でギャップが書かれておりますけれども、特に若い層から高齢層にかけまして、受診率について国民健康保険などと比べて差が出ているということがおわかりかと思います。
 勿論生活保護受給者の方については、そもそも傷病あるいは障害をお持ちの方が多いということも考えられますけれども、一方で、受診率の差について重複受診の可能性でありますとか、不適切な受診といったものを問題として指摘する御意見もございます。
 11ページでございます。こちらは生活保護の見直しということで、左側に先ほど申し上げたような生活保護に関する現状の認識、問題を4つにまとめさせていただいておりまして、右側に具体的な対策を整理したものでございます。
 対策のところで、上の枠囲いについては、特に制度の見直しに関連する部分でございまして、生活保護に関する国と地方の協議、これは実際に厚生労働大臣と知事会あるいは市長会、町村会の代表の方と今月30日に第1回の協議をスタートさせることとなっておりますけれども、そちらで具体的対策をまとめる予定しております。主な項目といたしましては、自立・就労支援の強化、子どもの貧困連鎖の防止、不正受給対策の徹底などが挙げられております。
 なお、生活保護基準につきましては、まさにこの部会で検証が行われておりますので、こちらの検証結果を待つということでございます。
 基準の検証の関係の資料といたしましては、ちょっと飛ばさせていただいて15ページでございます。生活扶助基準の検証ということで、平成19年の検証結果、そして、現在、生活保護基準部会において検証作業中であり、その結果などを踏まえまして、国民の理解が得られるような生活保護基準の在り方を検討する必要があるという形で、集中検討会議の方には報告をさせていただいているところでございます。
 なお、16ページ以降につきましては、貧困・格差の総合的な指標を整理する必要があるということ、あるいは生活保護を受給し続けた場合と就業した場合の社会保障に与える影響について1つの試算を行っております。あるいは低所得者対策の一環といたしまして、自己負担に関する総合合算制度、今、医療についてはいわゆる高額療養費制度というものがございますが、介護あるいは障害、保育、こういった社会保障に関わるさまざまな自己負担について、総合的に合算をして一定程度の自己負担に抑えることとしています。ただし、これは社会保障・税に関わる番号制度ができませんと、必要なデータの把握ができませんので、その番号制度を前提として、こういった総合合算制度も検討すべきであるという報告をしているところでございます。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの事務局の説明について、質問があればお願いいたします。
 山田先生、お願いします。
○山田委員 テクニカルなことと、あと根本的なことの2種類に分けてお尋ねしたいと思います。
 1つはテクニカルな点なんですが、資料1にございます、変曲点に関する質問でございます。収入階級ごとの消費支出額と書いてありますけれども、消費支出額というのは具体的な定義がもしあれば教えていただきたいということです。
 あと、4ページになりますけれども、変曲点の算出結果というのが右上の表にまとめられております。ここで変曲点における消費支出額というのが第3、第4、第5でそれぞれ少しずつ高くなると思ったんですけれども、第5の方でやや下がっているということで、これは単にデータのnが小さいことによる分散の問題なのかどうかということです。
 特に算出で、表の下に(参考)ということでyとxがありますけれども、yとxに入れた具体的な数字、データというのは何かということです。xのところに第1、第2、第3と収入階級の平均値みたいなものをデータとしてとって入れているのか、それともxは別のとり方をしているのかというのがちょっとわからなかったので教えていただきたい。
 また、これをどうして詳しく聞きたいかということなんですけれども、具体的な会議名を失念しましたが、第1所得10分位との比較をするようになったという経緯とちょっと結び付かないものですから、そこについても教えていただきたいということがテクニカルな話になります。
○駒村部会長 山田先生、まずテクニカルなところだけ、随分詳細な質問ですので、ここで1回切りたいと思います。もし事務局で用意があれば、あるいは先生方から何かあればと思いますけれども、お願いします。
○三石保護課長 まず最初の御質問、ここで言っている消費支出のデータはどのようなデータをとったのかということでございますけれども、それぞれ家計調査の特別集計によるものということでございますが、そのときにどの品目を集約したのかというところについては、確認をしておりません。大分前のものでございますので、もし岩田先生が覚えていらっしゃるようであれば、後ほど補足していただければと思います。
 それから、4ページの50分位のうちの第5のところで、ここだけかなり下がっているわけでございますけれども、これも算式としては第3、第4を出したときと同じやり方をとっておりますが、そのときの下がっているものの解釈については、議事録等を確認してみませんと確認できませんので、大変恐縮でございますが、確認の上でお答えをさせていただきたいと思います。
 それから、x、yのところに具体的に何を入れたかということでございますけれども、例えば6ページでごらんいただきますと、これは50分位のうちの第3に変曲点が存在すると仮定した場合でございます。そこの式にございますように、第1から第3の相関式はこういう形になるということです。第1から第3のところに赤と青の点がございますけれども、この相関式を出して、具体的には各点を結ぶ相関式を算出したときのそれぞれの係数がyイコール何とかxの何とかという形で出しております。そのときのx、yにどの値を具体的に使ったのか、という点についてですが。
○山田委員 具体的には今の6ページですと、1、2、3の収入階級50分位のところに赤いダイヤが2つと青い丸が1つあって、この観測値をxとyに代入して出したのか、それとも何か別の方法で第3収入階級50分位までに入るような個人のデータを入れたのか。個人のデータを入れたのか、それとも第1、第2、第3収入階級50分位で丸めたものを入れたのかということです。nというのは要するに観測値として3つの観測値を入れたのか、それとも第3収入階級50分位に入る人々全員のデータを入れたのか。そこを教えていただきたいと思います。
○三石保護課長 ここも当時の議事録を確認してみませんとわかりませんので、そこも確認をさせていただきたいと思います。
 それから、最後の19年のときに第1・10分位のところで検証しているということですが、ここはむしろ当時委員であった駒村先生の方がお詳しいかと思いますけれども、このときには第1・10分位だけではなくて、第1・5分位などについても一応検証し、最終的には第1・10分位で比較をしました。これは、従来から第1・10分位で比較をするというやり方をとってきたんですが、19年の時もデータを見て、第1・10分位で比較するのが適当なのではないかという整理をされたと伺っております。
 当時の先生方からもし補足があれば、お願いしたいと思います。
○駒村部会長 今のところは、特段変曲点の話とは別に、従来から第1・10分位を一応目安にとってきたので、前回も第1・10分位との比較においてどうなのかという議論をやったという記憶があります。
 それに関連する変曲点の推計については、岩田先生の方が多分記憶があると思います。
○岩田部会長代理 生活保護制度の在り方に関する専門委員会の議事録を見た方が正確ですが、その委員会では、昭和58年の中央社会福祉審議会が水準均衡しているとしたときの方法を用いるとこうだという形で、この資料が出てきたわけです。3ページが昭和54年の消費支出総額となっていますが、このときはモデルが勤労者4人世帯だったわけです。だから、多分58年の水準均衡だといったのは、これを使ったんだろうと思われるわけですが、それでこの間私が質問したのは、この変曲点の考え方の基になるもっと細かい資料や計算式があるだろうかということでした。探していただいたんですが、倉庫を見ても無かったそうです。平成15年の在り方に関する専門委員会では、変曲点とは何かみたいな話になって、結局これを採用しなかったわけです。
 ちなみに、多分昭和54年の変曲点という考え方は、その前提にS字カーブというか、あるいは生活構造の抵抗というか、例えば3ページの図で見ると、これもちょっと怪しげなんですけれども、曲がる前にある程度じぐざぐしながら、どこかを保とうしている、抵抗する点があって、その抵抗が一気に崩れて、がっと下がるという点が多分変曲点という考え方です。そうすると、変曲点をとるのか、それとも抵抗しているところの抵抗点をとるかという考え方の両方があり得るだろうと思います。
 もう一つは、今後私たちが検証する場合も問題になってくると思うんですが、この場合はまだ家計調査の特別集計ですから、よけいデータ数が非常に少ない。それを勤労者4人世帯で50分位にしますから、サンプルは小さい。だからじぐざぐになる。
 それから、もう一つの留意点というのは、私たちも全消を扱うことになると思うんですが、全消は2か月の調査、場合によっては1か月も含まれてしまっています。そうすると、1か月の変動的な項目が入って、ばかに高い買い物をしちゃったとか、あるいはたまたま非常に切り詰めてしまったというような両極が入ってくることになります。細かくそれを分位で刻むと、こうした極端なケースの影響が大きくなってしまうわけです。だから、もしやるとすると、その月だけ非常に特殊になったデータをはじかないと難しいだろうと思います。
 それから、ちょっとよけいなことですが、ついでにいいますと、データで勤労者世帯の家族や、単身の60歳以上は大丈夫だとは思うんですが、稼働年齢期の単身世帯は、どうも調査が難しいので、例えば一般の調査からはじかれるような独身寮に住んでいる人たちがかなりの割合で含まれているようです。ですから、そういうケースは除いて、独立して賃貸住宅に住んでいるというような、何かそういうものをつくらないと、検証のための資料としてはなかなか難しいと思っています。整理しますと、この資料のような考え方は全く成り立たないとは思わないんですけれども、変曲より、むしろ抵抗がどのぐらいあるか。抵抗というのは、要するに赤字になっても頑張ってある水準を維持しようという、それをもって最低限だとする考え方です。ですから、それは今回確かめる必要があると思います。また、その前提にデータをかなり精査しないといけないということがあると思います。
 専門委員会に戻りますと、先に申し上げたように、この資料を1~2回検討しましたが、結局やめてしまいました。そして、単に昭和58年のときにやった第1・10分位でまず検証して、しかし、世帯類型の中では、例えば母子などは第3・5分位まで見ました。だから、第1・5分位を使ったり、第1・10分位を使ったり、第3・5分位を使ったり、いろんなことをやったということですね。
 以上です。
○駒村部会長 どうもありがとうございました。
 先生、変曲点アプローチというのは、現在ではどういう評価を受けているのか。今でもこういうアプローチというのは学会であるのか。これは家政学なんですか。それとも栄養学か何かの影響を受けているんですか。
○岩田部会長代理 変曲点アプローチという言い方ではなくて、家計実態アプローチとか抵抗点とか、そういう言い方です。これは昔エンゲル方式の展開から格差縮小方式にいったときに、審議会で中心的な役割を果たされた篭山先生や中鉢先生の理論で、S字カーブというような言い方もしますけれども、2つ抵抗する点があって、所得が下がるとずっと下がるのではなくて、1回抵抗し、また下がって、また抵抗する。このどちらかの抵抗点の辺りをとるという考え方のようです。
○駒村部会長 お願いします。
○栃本委員 篭山先生と中鉢先生、そのころ私は院生だったので、やはり生保の見直しということで、たまたま会計検査院か何かの担当者が来るということで同席させられたことがあります。今まさに部会長代理がおっしゃった北大の実際の調査から日本初の研究としてかなり重要な概念で、中鉢先生の生活の履歴効果が非常に重要なポイントで、そこで抵抗するポイントみたいなものが現にあるということは、いわゆる東大系の生活構造論ではなくて、実態にそれを明らかにしたという非常に重要な知見なんです。その部分を活用して、当時行った調査ということです。
○駒村部会長 そういう研究の背景があるわけでしょうけれども、若干水準均衡というんでしょうか、実態との均衡と変曲点アプローチというのは必ずしも整合性があるような感じもしない部分があるんですけれども、この辺はどういう議論だったんですか。
○岩田部会長代理 これはここでしたというよりは、水準均衡とは何かということに多分関わると思うんですけれども、格差縮小に転じたときに、いつまでも格差縮小はしない。つまりそのときにゴールをつくっていた。一般世帯の6割強というか、大体そのぐらいのゴールをつくって、私も今はっきり覚えていませんけれども、8年で達成するというか、そうした見通しを作っていた。所得倍増計画を出したときですが。一番下というのは第1・10分位ですけれども、そこからすごく離れた生活保護はあり得ないという考え方です。ですから、そのときにそういう目標をつくって、8年では達成できなかった。大分かかったんですけれども、それを検証したら大体第1・10分位の真ん中にくっ付いたわけです。それが一般の消費支出に対する生活扶助相当額ですけれども、これは我々が検証したとき、どの階層でも生活扶助相当額は7割と出てきます。
 そうすると、こんなにややこしいことをしなくても、一般平均の消費水準の7割の7割、大体消費支出の半分ということになりますね。そうすると、OECDの50%水準みたいになってしまう。どうしてそうだったのか、たまたまなのか、よくわかりませんけれども、そういういきさつもあって、ここでほぼ妥当と判断したんです。しかし、何か理屈としてこれがあるんだろうとも思うんですけれども、私もそこがよくわからなくて、基礎になった資料があったらいいと思ったんです。
○駒村部会長 58年の基準というのは、ある種今日の基準のスタートになってくるわけですので、その辺は詳しく確認や現代的な意味を検証しなければいけない。
 先ほど山田先生がおっしゃったことで、私も資料を見ていて、どういう推計方法でこれが出たのかいま一つわからなくて、5ページでも5分位のところと12分位のところでかくかくと折れているわけでして、考えてみれば、細かく分けて更に3人世帯とデータを絞り込んだ上で平均値をとれば、非常にサンプルが少ない可能性もあって、かくかくとれるということもあると思いますので、どういう推計プロセス、サンプル数はどうなっているのか、どういう推計方法を行ったのか、この方法が本当によかったかどうなのかも含めて、あるいは変曲点アプローチをもう一回検証するならば、その辺を明らかにしておかないといけないところがあると思います。やや統計技術的なところもあると思いますけれども、その辺は次回以降の宿題とさせていただいて、事務局にお願いしたいと思います。15年の方でしたら、まだ記録が残っているのではないかと思いますので、お願いできればと思います。
 山田さん、後半のもう一つの質問の方をお願いします。
○山田委員 資料2-1の「社会保障制度改革の方向性と具体策について」及び資料2-2の「貧困・格差、低所得者対策に関する資料」ということで、基準をどう考えるのかという話が出てくると思うんですけれども、その際にこれよりも約1か月も前の新聞記事なので経緯がよくわからないんですが、日経新聞2011年4月26日の3面に基礎年金、最低年金との逆転現象から、生活保護費の減額を検討というものが出てきまして、更にその中でもっと具体的に、これは記事の文章のままなんですが、「住宅補助費の減額などを対象としている」とあります。
 私はこうした資料提出の際の背後の議論というのはあずかり知らないものですから、勿論この資料が出る1か月近くも前ですから、これは全く日経新聞独自の考え方なのか、それともこうした具体的な話がどこかで進んでいるのであれば教えていただきたいということです。
○駒村部会長 事務局からお願いいたします。
○三石保護課長 日経新聞あるいはもう一つ別の新聞もあったかと思いますけれども、生活保護基準の部会が始まって、何か結論を先取りして書かれたような記事がございました。私どもとしては全くそういったことを申し上げたこともございませんし、私どもとしては事実生活保護基準部会を立ち上げて、まさにこの資料に書かれておりますような基準の検証を客観的なデータに基づいて専門家の方にしていただくということを申し上げただけでございます。
 先月の1回目の部会の際にも、岡本政務官がこちらに参りましてごあいさつをさせていただきましたけれども、資料2-2の15ページの基準のところに書かれておりますが、そのときに国民の理解が得られるような生活保護基準の在り方を検討していただきたいということを申し上げたかと思いますけれども、まさに国会等で聞かれた際にもそういうふうにお答えをしておりますし、私ども事務方としてもそのような同じ認識でおります。
○山田委員 ありがとうございます。
○駒村部会長 ほかはいかがでしょうか。御質問があればお願いします。
 岩田先生、お願いします。
○岩田部会長代理 私も資料2-2の「貧困・格差、低所得者対策に関する資料」です。この部会とは直接関係しないんですけれども、同じ生活保護をこれからやるので多少気になるんですが、現状の認識の仕方で、1ページの最初の○に書いてあるように、失業等で生活保護に入って、そこで生活保護に至ると脱却が困難だとあります。だから、こうしましょうみたいな感じがあるわけですけれども、先ほど御説明いただきましたように、その他の世帯というのは生活保護の開始の理由を見ると、確かに失業と収入の低下あるいは貯蓄の減少というのが増えているということは事実なんですけれども、世帯主の年齢階級を見ますと、高齢世帯ではないけれども、60代、50代が半分以上を占めるわけです。勿論50代で自立支援と言ってはいけないということはないわけですけれども、労働市場の状況から見て非常に難しい層であろうと思うので、そういう層の問題と、そんなに極端に増えているわけではないけれども、一定程度存在している20代から40代をどうするかという問題はやはり分けて考えた方がいいと思います。
 そうしますと、そこがすごく増えて、何とかしようというような乱暴な話ではなくて、つまり25%ぐらいのその他の世帯が大体どのぐらいの人たちで、どういう世帯で、どういう理由で入ってきてどうしたいか、どのぐらいで出られているのかというような、かなり細かい説明を保護課の方でされた方が誤解がないのではないかという気もするんです。
 これは保護基準の問題とも関わってくると思うんですけれども、しようがないといったら変ですけれども、最後のセーフティネットなので、結局こぼれれば最後に生活保護を受けるのはどうしても仕方がないわけで、そういう層がこれだと仮に考えた場合、勿論、制度の運営をどうするかという問題はあるとは思うんですけれども、前提がやや乱暴ではないか。もうちょっときめ細かく、どこにターゲットを絞って、どこをどう変えたらいいのかというのは、生活保護利用者の中でも区別してやった方がいいのではないかという感じがしまして、今日の資料1と資料2-2の中にやや齟齬があるような気がいたします。
○駒村部会長 ありがとうございます。
 一番増えているのは、増加率だけだとその他の世帯が一番多いものの、それはどういう経緯というか、方たちなのかを見るためには、もうちょっと細かいクロス集計みたいなものを見て検証していただかないと、今、先生が御指摘になったような誤解みたいなものもあるのではないかということです。その他も一要因ではなくて、クロス集計的なものがあった方が、余りにもnが少なくなってしまう集計にならないかもしれませんけれども、もうちょっとメッシュをかけて見た方がいいのではないかという御指摘ですし、それによって政策の在り方なり基準なりも変わってくるという御指摘ですので、この辺も事務局に宿題としてお願いしたいと思います。
 ほかにいかがでしょうか。山田先生、どうぞ。
○山田委員 今の点について私も同意見で、その他の世帯が増えているということで、資料1の10ページを見まして、岩田先生も御指摘のように、実は50代がかなりを占めている。世帯の年齢階級別に見ても50代、60代がかなり含まれているというのは衝撃を受けまして、欧米の方では早期引退給付の方にひょっとしたらいくような人々がこうした生活保護で、セーフティネットとしてカバーされているということに驚きましたので、もう少し細かいメッシュで見ていただけたらと思います。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
 私から1つだけ、資料2-2の10ページです。受診率の違いというのは、事務局からも御指摘があったように、傷病、障害世帯も多いという構成の違いもある一方で、本当に重複受診みたいなものや何らかのモラルハザード的なものがあるのかどうなのか。モラルハザードといってもいろいろな種類があって、御本人のモラルハザードなのか、医療機関のモラルハザードとかいろいろとあると思います。そこまでは識別不可能かもしれませんが、どういう理由でこういう受診率に差があるのかというのは、電子化されていくとある程度検証は可能になってくる、現時点ではなかなか難しいという理解でよろしいでしょうか。この辺の検証可能性についてはいかがでしょうか。
○三石保護課長 今のところはこの程度のデータしか御用意できないんですけれども、今、部会長から御案内がございましたように、この4月から今まで紙媒体だったレセプトが電子化されますので、かなりいろいろな集計が迅速かつ正確にできますと、また自治体ごとにも比較することができるようになります。
 また、そもそも他の国民健康保険などのデータもナショナルデータベース化されて、それとの比較もしやすくなるということでございますので、今後はもう少し細かいさまざまな分析、先ほど申し上げた受診率が高いのはどういうところに原因があるのかというところについても、そういった電子データなどを使うことによって分析も可能になろうかと考えております。
○駒村部会長 栃本先生、お願いします。
○栃本委員 前回お尋ねしたというか、いずれ教えてくださいということでお話しましたが、世帯類型のことで、9ページのところで説明がありましたけれども、どちらに含んでやるかというものです。世帯類型の定義で、分類方法について、分類の順序で高齢者世帯とかそういうことで残ったものがその他の世帯になっているわけなんだけれども、その他の世帯と障害と傷病というものの3つの関係がすごく面白い関係になっていて、障害者世帯に精神が入っているかということなんだけれども、加算が付いているものだけ入っているだけで、それ以外のものは違うんです。そのことから、先ほど医療費のことがありました。障害は関係ないんだけれども、傷病とその他の医療費のあれを分析するとすごく面白い。面白いというか、そういう議論をしないと、先ほどの世帯別の生活扶助をどうこうという議論をするときに、実行ある議論ができないはずなんです。
 あと、もう一つは、生活扶助の方の基準を考えるというのが基本なんだけれども、ただ、その一方で、類型ごとに見ると、それ以外のものが加わっているから、基準が基本なんだけれども、基準だけで収まらない部分をどう見るかということをしておかないと、本当の意味での効率的というか、効果的というか、実際に必要なところに出して、そうでない部分についてどうするかという議論がなかなか出にくくて、基準の部分ばかりにいってしまって、肝心な部分が抜け落ちてしまうとだめだということになってしまうから、そこら辺は、この間お話したように、急ぎませんので、是非そういうものも見せていただきたいと思いました。
 以上です。
○駒村部会長 今の点、事務局から何かございますか。
○西尾保護課長補佐 ただいまの先生の御質問につきましては、出せるところと、出せないところがございます。生活扶助、住宅扶助、教育扶助につきましては、世帯類型別の推計が一定可能でございます。
 ただ、一方で、医療扶助、介護扶助は実態調査をしておりません関係で、ちょっと難しいかと思われます。
○栃本委員 先ほど部会長からのお尋ねでモラルハザード、実際に別の何とか部会のもので、午前中1件、午後2件、地域をまたがって受診して、向精神薬みたいなことがすごくありました。だから、個々でかなりいろんな問題が発生しているということがありますね。だから、一度少し調べていただきたい。調べてはいないんですか。どうなんですか。
○西尾保護課長補佐 重複受診といったことにつきましては、レセプトの名寄せといったことをする必要がございますので、電子整理ができていない現段階では難しいです。
○三石保護課長 まさに先ほどお話に出ました重複受診でありますとか、あるいはたまたま向精神薬を大量入手してインターネットで転売したという事件がありましたけれども、ああいったものも電子レセプトであれば一定の薬の名前を入れる、ハルシオンならハルシオンと入れると、それを重複処方されている方がどのぐらいいらっしゃるのかとか、そういったことの把握は可能になってまいります。
 いずれにせよ今の紙レセプトでは全部手作業でいちいち調べないといけないということでございますけれども、電子レセプト化されることによって、相当程度のものは今後データとしても御提供できるかと思っております。
○駒村部会長 よろしいですか。
 特異なケースなのか、制度的に対応しなければいけないケースなのか、領域なのかというのは、電子レセプトで検証してもらうことになると思います。
 ほかにいかがでしょうか。阿部さん、お願いします。
○阿部委員 いろいろな資料を提供していただいて、私も初めて見るデータもありまして、勉強させていただきました。
 今後の進め方について、根本的なところで申し訳ありません。この後、御説明があるのかもしれませんけれども、お聞きしたかったのは、いつごろまでにどのようなデータをどのような形で作業をしていくのか。また、実際の検証方法として、先ほど変曲点の話もありましたけれども、それ以外のものも検証するのかですとか、そこら辺のロードマップ的なものを示していただけると、こちらとしても心づもりができるかと思います。
○駒村部会長 事務局からお願いいたします。
○三石保護課長 1回目のときに口頭で申し上げさせていただきましたけれども、また次回にペーパーで確認をさせていただきたいと思いますが、まずは来月にもう一度予定をしておりますが、それぐらいまでに、19年の検証を含めてこれまでどういう分析をしてきたのか。あるいは今の基準の体系などはどういう形ででき上がっているのか。言わばこれまでの復習のようなことになりますけれども、そういったことを事務局が中心になって資料をお出ししたいと思っております。
 夏休みを挟みまして、それ以降につきましては、既に各先生方が独自にさまざまなアプローチの研究などをされておりますし、いろんなお考えもお持ちだと思いますので、各先生方の研究成果あるいは御自分で考えられるアプローチなり論点、そういったものをそれぞれ御報告いただけたらと思っております。
 1回目のときに申し上げたかと思いますが、中心になる全国消費実態調査、21年のものが最新でございますけれども、この個別データを総務省から借りてきて使えるようになるのが早くても今年の11月以降ということでございますので、それまでの間については、そのような先生方の御報告などを含めまして、今後データを使って具体的にどういうアプローチができるか、あるいはそのデータ以外にどんなデータが活用できるのかということを御議論いただけたらと思っております。
 そして、全国消費実態調査についても、特別集計の作業にはそれなりの時間がかかりますので、それを来年にまたがってしていただき、最終的には来年の後半の時期に何らかの意見のとりまとめをしていただけたらと思っております。ただ、それまでの間においても、例えば論点の整理とか中間的なとりまとめとか、そういったものは適宜必要に応じて行っていただければと考えております。いずれにせよ、もう一度ペーパーで次回にお示ししたいと思います。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局から資料3について御報告をお願いいたします。
○三石保護課長 それでは、資料3についてでございます。「生活保護基準の体系等について」ということで、特に生活扶助基準と本体の基準の算定の考え方、更には生活扶助基準の場合いろいろな加算がございますけれども、その加算の概要、更にはもう一つの扶助として教育に係る扶助がございますが、教育扶助、これらを中心に今日は御説明をさせていただきたいと思います。
 まずおめくりいただきまして、2枚目でございますけれども、生活保護基準における各扶助の概要をお示ししたものでございます。それぞれの基準の趣旨、内容、1級地-1の場合における現在の基準額をお示ししております。それが3ページまででございます。
 なお、たしか前回のときに道中先生から勤労控除には基礎控除以外にもいろいろな控除があるのではないかという指摘がございましたけれども、3ページの一番下のところに特別控除、新規就労控除、未成年者控除という形で整理をさせていただいております。
 勤労控除につきましては、そもそも就労インセンティブを働かせるという意味でどういう効果があるのか等々さまざまな議論がございますので、今後更に詳しいデータ等については、次回御説明をさせていただきたいと思っております。
 4ページでございますけれども、最低生活保障水準の具体的事例ということで、今回は生活扶助基準と教育に関する扶助のところを中心に取り上げさせていただきますので、ここのモデル例といたしましては、1番が標準的な3人世帯、2番が母子世帯、3番がお子さんが2人、その場合、小学生と未就学児のお子さんがお二人いるケース、したがいまして、生活扶助、住宅扶助のほかに教育扶助が入りますけれども、そのケースを挙げております。4番は、そのお子さんが10年後に高校生、中学生になったケースでございますけれども、ここでは教育扶助のほかに、高校生の場合には生業扶助という形で高等学校等就学費が出ますので、それを更につけ加えた額となっております。それぞれ級地ごとに示したものでございます。
 5ページでございます。生活扶助基準についてですが、現在の基準の展開の方法について御説明をしたいと思いますけれども、その際の前提となりますのが、標準世帯でございます。標準世帯の考え方につきましては、2つの意味がございまして、1つの意味は1にございますように、基準額の説明に用いる世帯です。いわゆる具体的金額をモデルとして示すために用いる世帯という意味がございます。
 もう一つの意味としましては、基準改定の際に用いる世帯ということで、基準改定に際しては、まず標準世帯の基準額に改定率を乗ずることにより、基準となる新規基準額を設定し、これを各世帯類型別に展開するために使う標準世帯という意味が2つ目でございます。展開の方法については、次ページ以降で御説明をさせていただきたいと思います。
 このことにつきましては、19年の生活扶助基準に関する検討会報告書でも書かれておりまして、それが破線で枠囲いをした報告書の抜粋の部分でございます。
 なお、生活保護における世帯人員につきましては、その下に表がございますように、直近の平成21年でございますと、1人世帯、いわゆる単身世帯が全体の75.6%ということで、単身世帯の割合が相当程度を占めているという実情にございます。
 6ページでございますが、現行の生活扶助基準の設定方法であります。先ほど申し上げましたように、2つ目の標準世帯の意味といたしまして、現在は3人世帯を標準としておりますが、それを基軸として設定しております。
 矢印に沿ってごらんいただければと思いますが、3人世帯の生活扶助基準額は現行の16万2,170円を例にとりますと、33歳、29歳、4歳を標準モデル世帯として取り上げております。なぜこの年齢になるのかというのは、最も頻度の高いところということで、考え方といたしましては、5ページの右下にどういう形でこの年齢を出してきたかということが書かれております。
 16万2,170円につきまして、まず一般世帯の消費実態における第1類費、すなわち食費、被服費などが相当しますが、それと第2類費、いわゆる世帯共通ということで光熱水費、家具、家事用品などが相当いたしますけれども、この構成割合を参考として16万2,170円を分けます。これも現行の額を書いておりますけれども、第1類費が10万6,890円、第2類費が5万5,280円という形となります。
 それでは、第1類費をそれぞれの年齢ごとにどういうふうに展開をするかということでございますけれども、まず第1類費につきましては、年齢別の栄養所要量を参考とした指数で展開することとなります。このときに20歳から40歳を100といたしまして、各年齢ごとの栄養所要量に基づいて指数展開をしたものが0~2歳なら51.9、70歳以上が80.3という形になりました。これを先ほどの10万6,890円に当てはめますと、20~40歳が4万270円、それ以外の年齢についてはそれぞれの指数に応じた数字になります。
 第2類費についてでございますけれども、こちらの場合には一般世帯における世帯人数別の消費支出、この実勢データを参考として指数を展開することにしております。ここでも標準3人世帯を取り上げております。それをまず100といたしまして、1人世帯が81.5、5人世帯が104.3という形で指数が設定されますけれども、3人世帯の5万5,280円を100として展開いたしますと、1人世帯で4万4,270円、5人世帯ならば5万7,850円という形で展開されることになります。
 7ページでございますけれども、今ごらんいただきましたように、生活扶助基準はまず世帯員の年齢に応じて設定される第1類費と、世帯の人員数に応じて設定されている第2類費を合計して生活扶助基準額を算定することとされております。
 しかし、マル1の第1類費につきましても、基本的には世帯の年齢に応じて個人単位で設定するわけでございますけれども、世帯人員の伸びに応じて均等に増えるということではなくて、ここでは世帯員のスケールメリットが働くということで、一定人員数以上については逓減措置を講ずることとしておりまして、注1にありますように、世帯人員が4人の場合には0.95、世帯人員数が5人以上の場合には0.9を乗じて算定することとなっております。
 第2類費については、先ほど申し上げましたように、世帯人員数に応じて世帯単位で設定した経費になります。なお、実際の消費支出のうち何が第1類費で、何が第2類費かという概念的なものを表にさせていただいておりますけれども、この中で例えば交通費でも鉄道運賃などについては第1類費、自転車購入代などについては第2類費という区分けです。あるいは教養娯楽費についていえば、月謝類などについては第1類費、新聞代などについては第2類費という区分けをしております。
 こういった第1類費、第2類費を足し合わせて、先ほどの標準3人世帯について、1級地-1を計算いたしますと、16万2,170円になるということでございます。
 8ページでございますが、なぜこういう区分をしているのかということでございますけれども、そもそも区分をした理由でございますが、標準とする複数人員世帯についてはマーケットバスケット方式により算定された最低生活費から、すべての世帯構成に対応した基準額を設定するために設けられた技術的な理由でございます。
 なお、法律上最低基準の設定についてどういう規定になっているかということでございますが、生活保護法の第8条の第2項というのが一番下にございますけれども、基準は要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地別、その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつこれを超えないものでなければならないということで、基準設定に当たっての考慮事項の1つとして、世帯構成別というものが挙げられております。
 ただし、上の枠囲いの2段目にございますように、世帯構成別というのは世帯として配慮を必要とする事項を広範に含んでいますけれども、必ずしも現行の生活扶助基準の第1類費と第2類費の区分を想定した規定ではないと考えております。
 9ページでございますけれども、これは基準改定の考え方あるいは標準世帯の推移を示したものでございます。
 10ページにつきましては、前回のときにもお示しいたしました基準の改定方式の変遷ということで、昭和59年以降はマル5の水準均衡方式を現在に至るまで採用しているということでございます。
 11ページでございます。先ほど資料1のところでも御議論ございましたように、格差縮小方式から水準均衡方式に移行するきっかけになりましたのが、58年の中央社会福祉審議会の意見具申でございました。この審議会で一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているということで、当時の生活扶助基準を評価しておりますが、その根拠といたしまして、一般世帯と被保護世帯の消費支出格差ではなくて、変曲点という概念を用いました。先ほど岩田先生からも御紹介がございましたけれども、そういうことでございます。
 なお、参考までに、この当時における一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯の消費支出の格差は約6割でございました。
 変曲点の考え方は先ほどの資料でございますので、12ページは割愛をさせていただきたいと思います。
 ちなみに、一般世帯と被保護世帯の消費支出の格差の推移は13ページでございますけれども、先ほど6割と申し上げましたのは、昭和58年の中央社会福祉審議会意見具申の際に検証したものです。58年検証データのところの年度では、ちょうど54年度のデータでございますが、このときに一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯の格差比率が62%でございました。
 その後、同じような形で計算をいたしまして、年々格差は縮小されておりまして、直近の21年度につきましては、色をつけております77.8%といったところにきております。
 ただ、下の四角のところにございますように、そもそも一般勤労者と被保護勤労者について世帯人員や世帯類型を合わせておりませんので、必ずしも厳密な比較ではないということを申し添えたいと思います。
 14ページからが各種加算の概要でございます。今、申し上げましたように、本体基準、要は基準生活費は第1類費と第2類費を分けて計算をするということでございますが、本体基準には反映されない被保護世帯の特別な需要、支出ベースにおける特別な需要に着目して加算を設定することが基本的な考え方ではございますけれども、実際上歴史的経緯あるいは他の制度との見合い、例えば児童手当制度ができたときに児童養育加算ができたとか、そういった他の制度による収入ベースといったものに着目して設定された加算も多いということでございます。
 現在8つの加算がございますが、細かい中身についてはいちいち御紹介いたしませんけれども、それぞれ加算の趣旨、対象者、あるいは実際の認定件数について記載をしたものでございます。
 以上が生活扶助基準の本体あるいは加算のことでございます。
 18ページをおめくりいただきたいと思います。ここからが教育に係る扶助等についてということで、まず基礎となる教育扶助は義務教育に伴って必要となる費用について給付を行うものということで、小学生、中学生のお子さんを持っている世帯が対象になるということでございます。そちらの表にあるようなものが対象になるということでございます。
 なお、一番下に学習支援費とございます。趣旨としては、学習参考書の購入費あるいは課外クラブ活動費という形で小学校、中学校それぞれ2,560円あるいは4,330円の定額が支給されておりますが、これは21年度に子どもの貧困対策ということで新たに創設されたものでございます。
 なお、教科書については、義務教育の場合は無償給与、修学旅行費については文部科学省が自治体を通じてやっております就学援助制度の支給対象となっております。
 19ページでございますが、高校生の場合でございますけれども、高校生は義務教育ではございませんので、生業扶助の中に高等学校等就学費という形で必要となる費用について給付を行っております。こちらもそちらの表に記載されているとおりでございます。
 高校生につきましても、平成16年の専門委員会の報告書におきまして、生活保護を受給する有子世帯の自立を支援するという観点から、平成17年度より高等学校等就学費の支給が開始されたところでございます。
 また、先ほど小中学生のときに申し上げましたけれども、高校生につきましても、21年度の補正予算で学習支援費を創設しております。趣旨といたしましては、末尾にございますように、参考書の購入費、課外クラブ活動費という形で月額5,010円が支給されているということでございます。
 なお、授業料につきましては、昨年度以来、高校無償化ということで給付対象外となっております。
 ここまでは、教育扶助あるいは生業扶助における高等学校と就学費のいわゆる現金給付でございます。
 20ページをおめくりいただきたいと思います。これ以外にも現物給付という形で、特に生活保護受給世帯で育ったお子さんが大人になって再び生活保護を受ける、いわゆる貧困の連鎖を防止するために、子どもの進学に関する支援などを行うということで、子どもの健全育成支援事業というものを平成21年度から実施しております。ちなみに、今年度からは社会的居場所づくり支援事業という名前で再編されておりますが、いずれにしても、地方自治体がこういったお子さんの学習支援等を行う場合、国が10分の10補助をするということでございます。
 22年度で導入している自治体数は35でございますが、新聞報道等で御案内の向きもあろうかと思いますが、例えば埼玉県では昨年の10月から中学3年生を対象に学習支援事業を開始しております。こちらの特徴といたしましては、教員OBなどのほかに市民のボランティアということで、実際に県内の大学生のボランティアなどが中学3年生に授業を教え、それによって高校進学をサポートするという事業を行っております。その成果といたしまして、中学3年生が160人参加しましたけれども、その高校進学率が97.5%になるということで、前年度の進学率に比べても10%増になったということでございます。今年度は更に箇所数を倍増して、対象も中学1年生から3年生に広げるということでございます。
 なお、オールジャパンで見た場合の生活保護受給世帯と一般世帯の高校進学率については、そちらの表にあるとおりでございます。
 21ページ以降が、平成19年に検証された際の生活扶助基準の水準、体系に関して、用いられたデータ、資料でございます。
 22ページでございますけれども、一般低所得世帯の消費支出額ということで、このときには平成16年の全国消費実態調査を使っておりますが、先ほど申し上げましたように、第1・10分位、第1・5分位、まずマル1は夫婦に子1人の3人世帯について比較をしたものでございます。マル2が60歳以上の単身世帯について、やはり第1・10分位、第1・5分位で比較をしたものでございます。
 23ページでございますけれども、先ほどのマル1の夫婦子1人世帯における消費実態と生活保護基準額とを比較しておりますが、その場合の第1・10分位、月収22万円のところで生活扶助相当支出額と生活扶助基準額を比較すると、生活扶助基準額がやや高目になっています。その場合のそれぞれの消費支出項目ごとの内訳が細かく書かれた数字を記載しています。
 続いて、そのケースについて第3・5分位を仮に100%とした場合、それぞれの第1・5分位あるいは第1・10分位等々の分位について、どのような指数になるかということを展開したものが24ページでございます。
 25ページでございますけれども、単身世帯における消費実態と生活保護基準額との比較についてということで、第1・5分位、月収だと10万円相当の生活扶助相当支出額と生活扶助基準を比較しております。この際には一般低所得者世帯の消費支出と生活扶助基準はほぼ均衡していることとなっております。
 26ページは、単身世帯の60歳から69歳について、先ほどと同じように第3・5分位を100%とした場合、それぞれの分位がどのぐらいの指数になるか、パーセントになるかということお示ししたものでございます。
 そして、70歳以上について、同じように第3・5分位を100%とした場合のそれぞれの分位のパーセントを示したものが27ページになります。
 このときに同時にほかのアプローチもしておりまして、28ページでございますけれども、一般世帯における耐久消費財の普及率についてということで、まず夫婦子1人世帯において、さまざまな耐久消費財の普及率を見ております。夫婦子1人世帯において、普及率が70%を超える品目の普及率の平均を見ると、平均が86.6%に対して、第1・10分位で80.1%となっており、大きな差はない。こういったことも第1・10分位で比較をする1つの材料になったと伺っております。
 30ページに飛びますが、単身世帯についても同様に、単身世帯において普及率が70%を超える品目の普及率の平均を見ると、平均が82.7%、第1・5分位で78.7%となっており、ほぼ同水準となっているということでございます。
 32ページをごらんいただきたいと思いますが、一般世帯におけるそれぞれの品目の購入頻度についても分析をしております。まず夫婦子1人世帯について申し上げますと、夫婦子1人世帯の第3・5分位において、年間1回以上の購入頻度がある品目は食事代等々ということで、そこに掲げられたものでございまして、おおむね遜色がないという整理をしております。
 この数字をそれぞれグラフ化したものが33ページになります。
 同様に34ページは単身世帯について、年1回以上の購入頻度がある品目を分析しまして、こちらについてもおおむね遜色がないという分析がされております。
 36ページでございますけれども、被保護世帯における消費実態等についてということで、家計全体の状況を見て、実収入と実支出の差額をとっております。右上のところに差額(収入-支出)というところがございますが、1万5,645円、これは60歳以上の方の場合でございます。
 37ページでございますけれども、被保護単身世帯の消費支出額、60歳以上の方です。先ほどの参考資料でございますし、また60歳以上の方についての耐久消費財の普及状況も示しているところでございます。
 ここまでがいわゆる水準について、19年検証で使われたデータでございます。
 39ページ以降が体系の検証に用いたデータでございます。世帯人数別の生活扶助基準額を検証しております。これをごらんいただきますと、ほぼすべての費目でスケールメリットが働いていることがおわかりかと思います。
 そうはいっても、多人数世帯におきましては、生活扶助基準額と消費支出額の乖離が大きくなっていると思います。
 これをグラフにしたものが40ページでございます。
 41ページでございますけれども、今度は年齢別で生活扶助基準額を検証しておりますが、20歳以上の単身世帯の生活扶助相当支出額を60~69歳の額を1ということで置いてみますと、20~39歳が1.09、40~59歳は1.08、70歳以上は0.88という比率になっております。
 今のは全体の水準でございますけれども、参考までに費目別に消費支出に年齢差があるかということを見てみましたのが42ページでございます。統計的分析によると、ほぼすべての費目で年齢別の消費支出額に差がある。そういう意味では、年齢別に基準額を設定することについて一定の合理性があるという整理がなされたと承知しております。
 以上が生活扶助基準の体系等についての資料でございます。
 それから、参考資料1と参考資料2でございますけれども、参考資料1は最近の生活保護の動向で、直近の数字が平成23年2月に出されております。23年2月の被保護人員は198万9,000人ということでございますけれども、実は地震の関係で郡山市以外の福島県からは報告が出てきておりません。したがって、仮に23年1月の福島県のデータを当てはめますと、新聞報道等でもございましたけれども、200万人を超えるような数になりつつあるということでございます。
 一番最後の参考資料2でございますけれども、先ほど申し上げましたように、制度の見直しに関する国と地方の協議を開催するということで、来週月曜日になりますが、厚生労働省の政務三役と知事会、市長会、町村会の代表者の方々との協議が開始されるということでございます。
 以上でございます。
○駒村部会長 どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまの事務局の説明について、質問等があればお願いします。
 山田先生、お願いします。
○山田委員 今の資料の平成19年生活扶助基準に関する検討会における検証関係の参考資料で教えていただきたいんですが、これは単身世帯も夫婦子1人世帯も両方とも第1・10分位もしくは第1・5分位をお使いになっていますけれども、世帯類型ごとの第1・10分位ということですね。そうすると、例えば世帯類型によっては、相対貧困率で見てみると、かなり第1・5分位でも高くなる、別の尺度でみて貧困層が非常によく含まれている世帯類型とそうではない世帯類型というのが出てくると思うんですけれども、何かそこの辺の議論というのはあったんでしょうか。世帯類型ごとに同じ世帯類型内の第1所得10分位、もしくは第1所得5分位でやったのであれば教えていただければと思います。
○三石保護課長 今、手元に議事録がございませんので、確認をさせていただきたいと思います。
○駒村部会長 道中先生、お願いいたします。
○道中委員 技術的な問題かもわかりませんけれども、多人数世帯の逓減率の導入ということで、現在それが行われているわけなんですが、既に5年ぐらい経過しているということなんです。導入の経緯といいましょうか、確かに現在1類経費の部分でのスケールメリットがあるということなんですが、それが生かされるということがされていないということなんですが、この考え方として、素朴な疑問ですけれども、2類経費は一体どうなったんだろうという部分がございます。1類経費と2類経費で、特に1類の方が多かったのかどうかということで、1類経費で逓減率が導入されているというところの経緯みたいなものがございますれば、それを1点教えてほしいということです。
 それと、前の方の生活保護基準の考え方で、8条の方で示されていますけれども、実は現在男女別の精査の部分が消えています。かなり大昔だったと思いますけれども、園田外務大臣のころだったと思いますが、男女差が解消したということが経過の中であったんですが、実際に男女差の区分というものがあるのか、ないのか。その辺の部分がわかりましたら、教えていただきたいと思います。
 この2点です。
○駒村部会長 これはいずれも体系論に関わる部分かと思います。資料でいうと、5ページからと最後の前回の検証でスケールメリットに関わる部分の両方に関わる部分だと思いますので、事務局からまず御説明があればと思います。
○三石保護課長 多人数世帯が導入されたときのデータにつきましては、具体的にそのときに検証して0.95あるいは0.9を乗じたということでございますけれども、今そのときのデータを探しますので、場合によっては次回になるかと思いますが、精査してお出ししたいと思います。
 それから、男女差につきましても、かつては男女差を設けておりましたが、これもある時点で男女差は余りないということで統一をしました。これは更に古いデータになるかと思います。どういうデータが出せるかどうか確認をさせてください。
○駒村部会長 8ページのところには、法律上は性別とありますけれども、たしか扶助本体は85年か83年ぐらいから性別が多分消えてしまったのではないかと思いますが、ほかにも性別によって差をつけている部分が完全になくなっていて、この法文のこの部分については空文になっているという理解でよろしいんでしょうか。扶助以外に加算などで何か残っているかどうかだけ、まずお願いできますか。
○三石保護課長 今、男女で差を設けるということは、ほかの加算なども含めてございません。
○駒村部会長 それから、道中さんの前半部分の御指摘にも関わるところで、6ページ、7ページ、40ページ、この辺は少し丁寧に確認をした方がいいと思います。
 ちょっと質問をさせていただきたいんですけれども、6ページ栄養所要量というのは何かデータ、統計があるということでしょうか。
○伊沢保護課長補佐 データといたしましては、平成11年の公衆衛生審議会の日本人の栄養所要量に基づきまして、数字の方は指数化しております。
○駒村部会長 それが年齢別の差の根拠になっているということですね。
○伊沢保護課長補佐 はい。
○駒村部会長 そうすると、次の1類、2類がおおむね2対1のようになっているのはどういうことですか。
○伊沢保護課長補佐 これは昭和62年の総務省の家計調査で1類相当、2類相当の割合を出してきているということでございます。
○駒村部会長 それ以降は変わっていない。これも本当にそれでいいのか、どうなのかを検証しなければいけないということですね。
○伊沢保護課長補佐 はい。
○駒村部会長 更に先ほど道中さんがおっしゃった2類で一定のスケールメリットを効かしているようである。100と81.5と4.3というのは、全消の最新データでこうだ、相当額はそういう差があるんだという分析結果ですか。
○伊沢保護課長補佐 2類につきましても、かなり前の数字になりますけれども、家計調査の特別集計で第1・5分位、昭和47年、48年の平均でございます。その後、何度かの改正がございます。
○駒村部会長 その時代の家計の消費行動によって多分違っていると思いますので、その辺もどう見直しをされているのか。
 その上で、道中さんのおっしゃった7ページの1類についてもスケールメリットの思想で、一応0.95、0.9とあります。この根拠というのは調べていただくということだと思うんですけれども、これもある意味食生活とか家計技術の変化、あるいは中食が増えてくるとか、牛乳1本200ccずつ買うのがいいのか、1Lで買った方が安いのとか、そういう価格の在り方にも影響があると思います。この辺も先ほど道中さんがおっしゃったように、検証しなければいけないという理解でよろしいですか。
 その上で、40ページのところにおいては、見方としては、1類がスケールメリットを余りにも見ていないのではないかと見える一方で、2類の方は逆にスケールメリットを大きく見過ぎているような感じにも見えるということで、1類、2類のバランスというか、基本構造、パラメータまでさかのぼって細かく検証していこうということも、これから見てとれると思いました。
 何か先生ありますでしょうか。
○岩田部会長代理 1類と2類の割合については、前の専門委員会でやったときに、その割合は修正が必要だということはもっと前から保護課で認識されていて、何とかしなければという話ではあったんです。しかし、この両者を分けられるかどうかということ自体が非常に難しい時代に入ってきましたので、参考の1類と2類の大分類で見たときには一見いけそうなんですけれども、費目別といいますか、用途別で見ると、世帯用途なのか、個人用途なのかというのはケース・バイ・ケースになってしまうので、そもそもそういうことができるんだろうかということが根本的なことになるだろうと思います。そこまで今回できるかどうかわかりませんけれどもね。
 先ほどの1類のさまざまな年齢別の問題や世帯人員が増えたときの乗数の問題の一番基本にあるのは、食費なわけです。栄養基準なわけですけれども、それだけで見ていいかという問題です。
 これはこの間たまたま私たちが阿部さんたちとやったほかのやり方の最低生活費をやっていて気がついたんですけれども、これだと例えば12~19歳が一番高くなっていますが、先ほど出たように中学生の場合ですと、義務教育の給食費が無償なんです。だから、私たちが中学生で計算すると、食費は低くなるんです。だから、ここは実はダブルカウントになっているんです。
 そんな細かいことまで考えるべきなのかどうなのかはちょっとわかりませんけれども、そのように時代とともにいろんなものがあります。給食費はもともとあったと思うんですけれども、どうして調整しなかったのかやや不思議で、多分全体が低かったから、調整しようもなかったんだと思います。そういう課題は多分あるだろうと思います。完全にそういうことができるかどうかわからないですけれども、1類、2類をやめて、世帯モデルをいっぱいつくって、あとは増えた場合にどうするかということだけ考えていくというのが1つあると思います。
○駒村部会長 従来とは違う設計なり検証というアイデア、この辺もこれから少し現代的な家計の消費行動みたいなものを考慮しながら、あるいは物の値段や調理の在り方も評価しながらやっていく必要がある。昔設定したもので本当によいのかという問題意識だと思います。
 ほかにございますか。阿部先生、庄司先生の順番でお願いします。
○阿部委員 お聞きしたいのは、加算の方の額の算定なんですけれども、例えば教育の係る扶助等についていろいろな基準額が出ていますが、これは消費支出ですから、子どもの経費などを基に出されている値段なんでしょうか。
○三石保護課長 例えば学習支援費の額とかということですか。
○阿部委員 そうです。18ページにある基準額の小学校2,150円ですとか、学習支援費2,560円というものです。
○三石保護課長 具体的にはこのときに手に入るデータ、実態を調べて、その額を掲示したということでございます。
○阿部委員 小学校の子どもが幾らというのは、全消でわかるんですか。それとも文科省がやっているような調査などがあるんですか。
○三石保護課長 それぞれの費目において若干根拠となる統計データが違います。必ずしも全国消費実態調査ではございません。
○駒村部会長 阿部先生どうしましょうか。よろしいでしょうか。もう少し具体的に知りたいですね。
○阿部委員 そうですね。
○三石保護課長 今どのデータでどうなったかというデータがございませんので、確認をしてみます。
○阿部委員 ぱっと見た感じ、実際に係る費用よりも大分少ないのではないかという気がいたしますので、何らかの基準でやっているのであれば、本体の方の改定もそうですけれども、加算額の改定も考えていかなければいけないのではないかというコメントです。
○駒村部会長 庄司先生、お願いします。
○庄司委員 更に加算で瑣末なところになるかもしれませんが、14ページの母子加算のところは、この趣旨は今もこれをこういう形で使っているのかどうか。昭和55年の時期は私もこの分科会にいたかもしれなくて、自分にしているような面もあるんですが、ただ、この当時はこういう考え方だったかもしれないんですが、結局21年にまた復活したあれがありまして、説明を置いておくというのは非常にまずいのではないかという気が個人的にはします。これは母子だけではなくて、父子にもということになったんですが、説明は乳幼児を支える母親は中等程度以上の労働に増加熱量分を補てんとあるんですが、これはもう使わないことになったと思います。
 更に被服費のところなどは、一人親で身ぎれいにしなければいけないからというのは非常にまずいようなものがまだ残っていて、これは課題として即刻直そうとか、何かないんでしょうかということです。
○三石保護課長 まさに母子加算につきましては、御案内のように21年4月に廃止をされまして、21年12月に復活をいたしました。復活させるに当たって、専門の審議会などに諮って復活させたわけではございませんので、そのときに当時の大臣などが国会答弁などで申し上げましたのは、やはり子どもの貧困対策といったものにきちんと応えていくためには、一人親、必ずしも母親とは限りませんが、一人父親も入りますけれども、こういった一人親に対する加算といったものを復活させる必要があるということでやったものでございます。そういう意味では、55年の中間報告にかわる専門家としての加算の評価というものはないんです。
 大変恐縮でございますけれども、やや古いものでございますが、55年のものを付けさせていただいています。むしろこの部会で今回お示ししましたのは、本体に加えまして、いろんな加算、ごらんいただきますと、かなり古い経緯、先ほど申し上げましたように、いろいろな歴史的な経緯あるいは他の制度で、例えば福祉年金ができたからこの加算とか、そういったものがいろいろございますので、この際、本体基準と加算との関係も含めて、今の目から見たらどういうふうに定義づけられるのか、評価すべきなのかということを御議論いただければと思っております。
○駒村部会長 ありがとうございました。
 確かに加算のところですけれども、例えば母子加算は昭和24年に制度ができたわけですが、その制度の説明というか、加算の根拠は昭和55年の文章ということでいいわけですか。
○三石保護課長 一番直近のいわゆるこういった専門家の委員会といいますか部会などで、加算の意味づけをされたものは、古いんですけれども、昭和55年ということでございます。
○駒村部会長 昭和55年にこれを全部加えたのか、昭和55年に従来からあるものに何かを加えてこれが完成したのか、その辺はどうなんですか。というのは、昭和24年にできて、そのときの生保水準というのはある種絶対貧困というか、マーケットバスケットに乗っていた。その後、必要に応じて加算ができた。しかし、80年代半ばになって、相対基準に変わってきた上で、なおかつ加算の説明がそのままでいいのかどうなのかというのは、確かにもうちょっと現代的な意味がないと、おやつ代、エネルギー補てん、身ぎれいにするとかこういう根拠が本当に本体とのバランスも含めて意味があるというか、制度化することになるのかどうか、それはちょっと悩ましいと思います。
 庄司先生、続けてお願いします。
○庄司委員 ここは非常に議論のあったところで、それゆえ廃止になったとは思うんですが、いろいろ政治的な事情の中で復活した。それにしても、母子加算という名前で一人親全体に出すのかとか、そういうところも含めて、これは一度ちゃんとしないといけないのではないかという意見です。名称も含めてです。
○駒村部会長 岩田先生、どうぞ。
○岩田部会長代理 私も余り経緯はわからないですけれども、昭和55年に次のページの障害者加算も中社審の専門部会で報告していますので、この並びで58年の水準均衡になだれ込んだと思うので、その前に加算の整理がどうもあったようなんです。老人加算は廃止されましたけれども、それもそのときにかなり細かい特別需要についての説明があって、例えば高齢者になるとやわらかいものを食べなければならないから食費がかかるとか、そういうことがあったんです。全体としては、加算をどういうふうに合理的に説明するかという後付けをこのときにしたんだろうと思います。加算はいろんな経緯でできています。そして、55年はそれでよしということですけれども、その後、またこの間の専門委員会の辺りで加算問題ができて、そのときは特別需要を認める、認めないではなくて、世帯類型ごとに相対比較をしてしまったわけです。加算をした場合、どちらが上がという相対比較をやったわけです。片方は廃止して、片方は復活したという形になったわけですが。
 だから、いろんな問題があるんですけれども、加算というのはそもそも加算を含めた相対比較をするようなものなのか。それから、加算やすべての根拠に食費がある。エネルギーがあって、これはマーケットバスケットがずっと続いているわけですけれども、これは絶対基準なわけです。これが片方にありながら、ずっと相対比較を格差縮小以降取り入れて、特に水準均衡はそれでやっているんです。ところが、内容的には絶対基準がかなり働いているんです。だから、どう検証するかというのは大変悩ましいところで、特に加算が入ると難しいですね。勿論説明をこのまま残すかどうかというのは非常に大きな問題であって、加算のありよう自体も含めて、そこまでできるかどうかわかりませんけれども、本体だけやるのか、加算はまた別途やるのかという問題が残ります。
○駒村部会長 事務局からお願いします。
○三石保護課長 なぜ55年に押しなべてこういった報告が出ているかということでございますが、今、岩田先生が言われましたように、障害者加算、母子加算については、それぞれ昭和24にできまして、当初は生活保護独自で算定をしていたんですけれども、福祉年金が昭和35年にできました。そのときにこれらの加算は、基本的に福祉年金と併せて改定されてきました。福祉年金並びで改定されてきたということでございます。ちなみに、廃止されました老齢加算についても、福祉年金が創設された昭和35年にできて、福祉年金と同額で改定されていました。
 しかしながら、昭和50年に福祉年金の大幅な改善が行われまして、ここである意味生活保護と福祉年金の水準が泣き分かれをしました。泣き分かれをするに当たって、昭和51年以降は生活保護独自に加算額を算定してきたんです。そこでこれら加算の考え方を1回整理しようということで、昭和55年のときにそれぞれの加算について、岩田先生のお言葉をかりれば、後付け的なことも含めて1つの考え方の整理をされたと承知しております。
○駒村部会長 このときの議論の記録とか、そういうものはあるんですか。
○三石保護課長 55年の意見具申をするに当たっての議事録ということですか。
○駒村部会長 はい。
○三石保護課長 古いので探すのはなかなか難しいかと思います。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
 もしよろしければ、そろそろ予定の時刻になりましたので、本日の審議を終了いたします。
 最後に次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
○三石保護課長 次回は6月28日の10時からを予定しております。場所は厚生労働省9階の省議室でございます。
 次回のテーマといたしましては、本日御報告できませんでした生活扶助基準につきましても、地域差、いわゆる級地の問題でございますとか、勤労控除あるいは住宅扶助などの問題について御説明をしたいと思います。なお、本日も幾つかの御指摘をいただき、前回の積み残しの御指摘もいただいておりましたので、そこら辺も整理をして御報告をさせていただきたいと思います。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上にさせていただきます。御多忙の中、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第2回社会保障審議会生活保護基準部会議事録

ページの先頭へ戻る