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2011年2月2日 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第1回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年2月2日(水)12:30~14:00


○場所

経済産業省別館1012号会議室(経済産業省別館10階)
(東京都千代田区霞が関1-3-1)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

戒能民江、加茂登志子、黒木宣夫、水島郁子、山口浩一郎

(厚生労働省:事務局)

尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、幡野一成、板垣正、西川聡子

○議事

○幡野職業病認定対策室長補佐 傍聴される方におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みのうえ、会議の間はこれらの事項を守って傍聴いただくようお願い申し上げます。
 定刻になりましたので、ただいまから「第1回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を開催いたします。先生方におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 会議を始めるにあたり、事務局から資料の確認をさせていただきます。資料1「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会の開催について」資料2「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会における検討の進め方(案)」資料3「本分科会における論点(案)」資料4「論点に関する労災補償の現状」資料5「ヒアリングの実施について」資料6「団体からの意見要望」資料7「『精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会』の論点」。また、参考資料として、親検討会である精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会の第1回の資料の一部をご用意いたしました。こちらは、参考1「精神障害の労災認定に関する関係法令」参考2「精神障害の労災認定に関する関係通達」参考3「ICD-10(国際疾病分類)第5章精神および行動の障害」参考4-1「精神障害の労災認定に係る専門検討会報告書(平成11年7月)」参考4-2「職場における心理的負荷表の見直しに関する検討会報告書(平成21年3月)」となっています。資料の欠落等ございましたら、お申し出ください。
 それでは、議事に入る前に本日の分科会出席メンバーのご紹介をさせていただきます。50音順で申し上げます。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授の戒能先生、東京女子医科大学女性生涯健康センター所長の加茂先生、東邦大学医療センター佐倉病院精神医学研究室教授の黒木先生、大阪大学大学院法学研究科准教授の水島先生、上智大学名誉教授の山口先生です。それでは、開催にあたり事務局を代表しまして、労災補償部長の尾澤よりご挨拶申し上げます。
○尾澤労災補償部長 皆様には、本日大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。労働基準局労災補償部長の尾澤です。本日は、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」の第1回の開催です。開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 本日お集まりの先生方におかれましては、労働基準行政、なかんずく労災補償行政に日頃よりご支援、ご理解を賜っておりますことを、改めて御礼申し上げたいと思います。また、今回の検討分科会を開催するにあたりまして、大変ご多忙の中お引き受け、ご参集いただきましたことを、改めて御礼申し上げたいと思います。
 精神障害の労災認定ですが、昨年10月より「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催しているところです。これは、年々精神障害に関する労災請求が増加している中にありまして、その認定の審査に平均して8.7カ月という期間を要しています。こうしたことの中で、その労災請求にかかる審査の迅速化、効率化を図るという観点から、この検討会を開催していまして、現在まで4回議論を重ねているところです。
 こうした中において、セクシュアルハラスメントに関しては、従来より精神障害においては、職場における心理的負荷となる具体的な出来事の1つとして捉えています。実際に、被害を受けられた方々が労災請求をするうえでの困難があるというようなご意見をいただいているとともに、私どもも労災請求を受け付け、また審査するにあたり、その事実関係を明らかにするといったことについての困難もみられているところです。
 そうしたことから、このたび精神障害に係る専門検討会の下に、本分科会を設けまして、セクシュアルハラスメントの実態を詳しく把握した上で、精神障害の労災認定の基準の検討に活かしていきたいと考えているところです。
 本分科会においては、特にセクシュアルハラスメントを始めとする女性問題にも詳しい法学、医学の専門家の皆様にもご参集いただいておりまして、その検討結果を専門検討会に報告していただきたいと考えているところです。本日ご参集の先生方におかれましては、本分科会の趣旨についてご理解を賜るとともに、忌憚のない活発なご議論、ご検討を賜りますようお願い申し上げる次第です。簡単ではございますが、第1回の検討会の開催にあたりご挨拶を申し上げました。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○幡野職業病認定対策室長補佐 ここで、本検討会の庶務を務めます事務局を紹介します。先ほどご挨拶を申し上げました労災補償部長の尾澤です。補償課長の河合です。職業病認定対策室長の渡辺です。補償課長補佐の神保です。職業病認定対策室長補佐の幡野です。中央職業病認定調査官の板垣です。職業病認定業務第一係長の西川です。続いて、本分科会の座長についてお諮りしたいと思います。専門検討会にならい、座長は互選によりお願いしたいと存じます。どなたかご推薦等ございませんでしょうか。
○戒能先生 労働法がご専門で、親会議専門検討会の委員でもいらっしゃる、上智大学の山口先生にお願いしてはいかがかと存じますが、いかがでしょうか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 それでは、山口先生に座長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございました。皆様のご賛同を得ましたので、山口先生、恐れ入りますが、座長席にお移りいただきたいと思います。それでは、座長に一言ご挨拶をいただいたあと、以降の議事運営をお願いいたします。
○山口座長 皆様のご賛同を得まして、僭越ではございますが座長を務めさせていただきます。先ほど、労災補償部長からご紹介がありましたように、この分科会は「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の下に設けられたものです。セクシュアルハラスメントの業務上の認定については、いろいろ事実関係、因果関係等々、特別に検討しなければいけない問題があるということで、この分科会が設けられたわけです。委員の先生方には、各々専門の分野で造詣の深い方に来ていただいていますので、分科会の中ではどうぞ忌憚のないご意見をいただいて、検討会に報告をさせていただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○幡野職業病認定対策室長補佐 写真撮影等は以上とさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。
○山口座長 それでは、議事に入りたいと思います。最初に事務局から、本日の資料の説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 資料に基づき、説明をさせていただきます。資料1は、セクシュアルハラスメント事案に係る分科会の開催の趣旨等を、先ほど補償部長の尾澤からも挨拶の中で触れさせていただきましたが、説明をさせていただいています。セクシュアルハラスメントを受けたことについては、職場における心理的負荷、ストレスとなる具体的な出来事の1つとして、いま私どもが精神障害に係る業務上外、労災認定の基準としています判断指針の中で、別表に職場における心理的負荷評価表がありまして、この中の1つとして位置づけられています。この辺りは後の資料とも関係しますので、少し説明をさせていただきます。
 参考資料の17頁をご覧ください。参考資料には判断指針が入っていまして、16、17頁が心理的負荷評価表となっています。17頁の真ん中辺りの⑥の対人関係のトラブルという所で、2番目にセクシュアルハラスメントを受けたという出来事が書かれています。
 判断指針ですが、私どもが精神障害の労災認定を行うやり方について、ごく簡単に説明させていただきますと、参考資料の5頁ですが、判断指針で判断要件が示されています。いちばん下に、「第3 判断要件について」とあります。(1)精神障害を発病していること、(2)対象疾病の発病前、おおむね6カ月の間に客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること。(3)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により発病したとは認められないこと。この(2)の強い心理的負荷があったかどうかの判断の際に、17頁のこの表が使われるということです。
 17頁の表ですが、セクシュアルハラスメントを受けただけではなく、職場で起こり得るいろいろな出来事を示させていただいています。実際請求があった場合には、その方にどういったことが起こったのかを監督署で調べまして、具体的な出来事の中のどこかにまず当てはめることになります。例えば、セクシュアルハラスメントを受けたのであれば、先ほどの所に当てはめるわけですが、ここで隣に☆が付いていますが、こういった出来事の普通の平均的な心理的負荷の強度、ストレスの強さは、☆が真ん中のIIの欄に付いていますので、中程度だと考えているわけです。これは、あくまで平均的なということですので、その隣の欄のセクシュアルハラスメントの内容、程度等と書いてありますが、実際の事案の内容、程度に応じて、これをIIIに上げたりIに下げたり、IIのままであったりというような判断をします。そのあと、さらにこういった出来事があった後の状況を、この表の右側、出来事後の状況が持続する程度を検討する視点とありますが、ここで例えば対人関係のトラブルがずっと続いて持続していて大変だというようなことなどを評価しまして、出来事後の状況も判断します。そして、出来事と、出来事後の状況の組み合わせによって、全体として心理的負荷が強かったのか、強いとはいえなかったのか、出来事がIIIでその後が相当程度過重以上であれば強かったと判断していますし、出来事の評価がIIでその後が特に過重ということであれば、心理的負荷の強度が強かったと考えているところです。こういった全体の中の1つとして、セクシュアルハラスメントというものは位置づけられている仕組みになっています。
 資料1に戻りまして、セクシュアルハラスメントについては、その性質から先ほどお話がありました、被害を受けて精神障害を発病した労働者の方の労災請求が難しかったり、あるいは労働基準監督署における事実関係の調査が困難となる場合が多いなどの、他と異なる特有の事情があると考えまして、より深く実態を把握したうえで精神障害の労災認定の基準の検討を行う必要があると考えて、この分科会をお願いしたところです。
 この分科会では、専門検討会の下で検討していただくということで、セクシュアルハラスメントをはじめとする女性問題に詳しい法学、医学の専門家の方々にお集まりいただきまして、詳細な検討を行っていただき、その検討結果を本体の専門検討会に報告していただきまして、本体での基準全体での検討に活かせるものとしていただくように考えています。また、この関係で専門検討会を始めてから、各団体さんからもご意見、ご指摘などをいただいていまして、こちらが資料6になります。15頁からになりますが、働く女性の全国センターさんほかからは、セクハラの被害実態調査やプロジェクトチームの設置やヒアリング等の実施の希望がありました。また、19頁からの全国労働安全衛生センターさんからの要望は、セクシュアルハラスメント以外についても多岐にわたりますが、その中には女性団体等からの意見聴取の要望やセクシュアルハラスメントの負荷評価についての問題提起などがなされていたところです。こういったこともありまして、事務局で検討をして分科会をお願いしたいということです。
 資料2は、この分科会の検討の進め方の案ということで、提案をさせていただいています。この分科会では、セクシュアルハラスメント事案における特有の事情や認定実務上の課題、論点になるようなことを整理していただきたいと思います。今回は第1回ですが、お集まりいただいた先生方による議論と、関係者の方からのヒアリングを通して、論点を整理していきたいと思います。その後、整理した特有の事情や課題等に対しての対応策を議論いただきたいと思います。そのうえで、本体の専門検討会に提出する取りまとめを議論いただきたいというようなことで考えていますが、進め方についても検討いただければと思います。
 資料3は、事務局で現時点で想定される特有の事情や検討すべき論点、考えられる論点について示しています。あくまで、議論の叩き台ということで参考までに見ていただければと思っています。まず、想定されるセクシュアルハラスメント事案特有の事情と課題ということで、①から⑧まで挙げています。①は、ある出来事がセクシュアルハラスメントに当たるかどうかについては、基本的に被害者の方の意思によって決まると。同じ行為であっても、受け手の方、あるいは受け手と行為者の方の関係によって、セクシュアルハラスメントになる場合、ならない場合があるというような事情があるかと思います。そこで、加害者は、いや、これはセクシュアルハラスメントではなかったといって否定されるようなおそれなどがあり得ると考えています。
 ②は、セクシュアルハラスメント事案は、公然となされる場合もあるでしょうが、当事者のみの関係の中においてなされる場合もあります。その事実関係を当事者のみが知るというようなケースが少なくないというような独自性があるのではないかと考えています。そうしますと、客観的な証拠などがなくて、加害者がセクシュアルハラスメントの事実を否定するおそれがあったり、あるいは監督署が調査を行っても事実認定が難しいというような課題が出てこようかと思います。
 ③は、セクシュアルハラスメント行為の詳細です。加害者がそれを否定したいという気持ちも当然あるでしょうし、被害者の方においてもほかの人にはあまり知られたくないというような場合が少なくないものと考えています。このことによって、被害者が労災の請求を断念したり、あるいは請求いただいたあとで、やはり細かいことをお話いただくのになかなか抵抗があるというようなことが考えられます。また、加害者でも虚偽を話されるおそれや、監督署は事実を調べなければいけないわけですが、どこまで調べていいのか、探求を躊躇するおそれもあるかと思います。
 ④は、セクシュアルハラスメントの被害を受けて精神障害を発病された方が、申請をされるなり、その後の聴取などで実際にどういったことがあったというようなお話になってくるかと思うのですが、そこで被害の事実を想起することによって病状が悪化してしまうというような場合もあるかと思います。こういったことで、被害者が請求を断念されたり、詳細な事実の申述がなかなかできなかったりというようなおそれがあります。また、監督署としてもやはり事実の探求を躊躇するおそれもあるかと思います。
 ⑤セクシュアルハラスメントと一言で言っているわけですが、その態様は非常に様々です。強姦のような本当にひどい事案から、言葉でなされるようなものまで、いろいろな形の幅があるかと思います。これによる心理的負荷の強度も、弱いものから極めて強いものまで幅広く存在するかと思います。こういったことで、実際心理的負荷の強度をどのように認定していいのか、そこが難しくなってくるという問題があるかと思います。
 ⑥それから、長期にわたって繰り返される場合があり得るかと思います。出来事が繰り返されるときに、どうやって心理的負荷の強度を認定していくか、そこが難しいというような問題があるかと思っています。
 ⑦は、セクシュアルハラスメント事案はセクシュアルハラスメントに留まらず、セクシュアルハラスメント行為中及びその終了に伴いとありますが、例えば被害者が加害者にもう嫌ですとはっきりお断りをして、セクシュアルハラスメントは終わったのだけれども、加害者からいじめ、嫌がらせが発生するようになってしまった。あるいは、セクシュアルハラスメントの行為中に、加害者と被害者の関係は周りから見ればごく親密に見えたりなどして、被害者が周りから浮いてしまう、いじめ、嫌がらせなどが起こるというようなこともあり得るかと思います。こういったセクシュアルハラスメントとそれ以外の複数の出来事がある場合の心理的負荷の強度の認定をどうやっていくかという問題もあるかと考えています。
 ⑧は、セクシュアルハラスメント事案は、セクシュアルハラスメントがある、何とかしてほしいということで、被害者が会社内で訴えられるということもあり得るかと思います。その後職場の人間関係が悪化したり、あるいは社内で一定の対応がなされる場合もありますし、なされない場合もそれぞれあるかとは思います。そういった評価が、先ほどの出来事後の状況の評価になってくるかと思います。この評価を、どのようにやったらいいかも課題となってくるかと考えています。
あくまで、これは事務局でいま考えていることで、もちろんほかにご指摘等もあろうかと思いますので、参考に議論いただければと思います。
 これを受けて考えられる論点ですが、大きく2つに分けています。(1)は、セクシュアルハラスメントによる精神障害の認定の基準について、判断指針に関係するようなことと、(2)は実際調査や申請のときの手続き、運用に関することで、2種類分けさせていただいています。
 特に認定の基準については、親検討会である専門検討会の議論とも関わってくるところになってまいりまして、専門検討会で検討しているものの一部として、親検討会の検討の範囲を踏まえて検討いただければと思っています。先ほどの特有の事情でいきますと、⑤の関係です。いろいろなものがあって、強度の認定が難しいということですが、セクシュアルハラスメントを受けたという出来事の平均的な強度について、どのように考えていけばいいかということがあると思います。親検討会の関係では、資料7の25頁をご覧ください。いちばん上の資料は、第1回専門検討会に提出しました、この先の論点としてどういったことがあるかですが、2の(2)にいろいろ検討すべき論点を挙げています。その④に心理的負荷の強度の見直しがありますが、ここと関連してこようかと考えています。
 現在、このセクシュアルハラスメントを受けたという出来事を含めまして、いろいろな出来事についてのストレス評価に関する調査研究を行っていますので、この結果は3月にまとまる予定ですので、また結果が取りまとまれば報告させていただきたいと考えています。
 次に、強姦や強制わいせつなど、特に心理的負荷が強いセクシュアルハラスメントがいくつかあるのかと思います。こういったものの取扱いを明確にしてはどうかと。先ほどの、幅が広いという関係で、そういったところも論点になってくるのかなと考えています。こちらは、25頁の(2)の③に評価基準の明確化についての論点がありますので、これとも関係してこようかと考えています。
 さらに、セクシュアルハラスメントは繰り返されるということがありますので、そういうものを適切に評価するためにどのような方策を取ることが適当かということです。これは、先ほどの明確化にも関係してまいりますし、その上の②の判断枠組みそれ自体についても関係してこようかと思います。第2回の専門検討会で、資料としては28から29頁にかけてになりますが、④、⑤ですが、いまは出来事と出来事後の状況を区別して認定をしているわけですが、ここを対人関係のトラブルのようにずっと繰り返されていくことで強い心理的負荷となるようなものについても、出来事と出来事後をはっきり分けて個々に評価するというのはなかなか難しいのではないかというようなことも、専門検討会では議論いただいているところです。
 7頁④、6カ月より前に発生したセクシュアルハラスメントが原因で業務上と認められる精神障害があるかどうか。あるいは、こういった事例があるとして、発病前おおむね6カ月の出来事の評価を適切に行うことで対応することができるのではないかというような論点を挙げさせていただいています。先ほどの判断指針全体は、セクシュアルハラスメントに限らず、心理的負荷、ストレスの評価の対象となる職場における出来事は、発病前おおむね6カ月以内に発生したものと考えて、限定しているところです。
 これに関しての専門検討会の論点は、25頁では⑤の心理的負荷の評価対象についてです。具体的には、第4回の検討内容になってまいりますが、37頁です。評価対象について、発病前おおむね6カ月にしているのは、最近の知見においても適当かどうかを検討いただいているところです。
 ⑤は、セクシュアルハラスメント事案において起こる複数の出来事のうち典型的なものについて、総合評価の方法を具体的に示すことができないかということです。これも明確化の関係になるかと思いますが、専門検討会では第3回の論点となっていました。32頁の1の①明確化の中で、複数の出来事が存在する事案について、これは総合的に評価しますということはいまの取扱いでもやっているのですが、どのように総合的に評価すればいいのかというようなことも具体的に示せないかということで、議論をいただいているところです。セクシュアルハラスメント事案についても、いくつか典型的な複数の出来事があるかと思いますので、具体的に評価の方法を示すことができないかを論点として挙げさせていただいています。
 さらに、出来事後の状況の関係で、会社の対応などについて典型的なものがあり得るかと思いますが、こういったものをどのように評価する、あるいは評価しないことが適切かを明確にすることができないかということで、これもやはり全体の明確化の論点の中にかかってこようかと思います。先ほどの、出来事と出来事後を厳密に区別できるのか、対人関係のトラブルについてはなかなかそれも難しいところもあるのではないかという、第2回の論点とも関係してくるかと思います。
 ⑦は、どの程度の事実関係が確認できれば、心理的負荷の強度を適切に判断できるかです。やはり、監督署としては適切な労災認定のためには、事実関係を確認しなければならないわけですが、やはりどこまで突っ込んでお話を聞くことができるのか、あるいはどこまで基準が明確になっていれば、どこまでを確認すればいいのかということで関係してくるかと思いますが、どういった事実を確認してそれによって強度の適切な判断ができるのかも論点になり得るかと考えています。
 (2)ですが、こちらは運用の関係で課題となり得るところがあるかと考えています。①は、被害者の方が相談や労災請求を控える場合があるとすれば、その原因はどういったことか。そうであれば、それは解消していかなければいけないということで、これを解消するためにどういった方策を取ることが適当かが論点になってこようかと思います。まず、パンフレット等の情報提供に関しての工夫、あるいは監督署等における相談・窓口体制に関する工夫、あるいは請求手続における工夫があり得るかと思いますが、この辺りを議論いただく必要があるかと考えています。
 ②請求のあと、監督署において調査を行うことになりますが、この過程で留意すべき事項があるかです。特に、被害者の方から聴取をする、あるいは加害者の方、同僚の方から聴取をすると。対人関係のトラブルですと、この聴取が監督署の調査手法として非常に重要になってまいりますが、その際に留意すべき事項にどういったものがあるかです。
 ③当事者にしか事実関係が明らかでないというような場合があるかと思いますが、何かこれを明らかにするために有効な手法があるのか、なかなか難しいのか、そういったようなことも議論いただければと考えています。
 資料4は、こういった論点やセクシュアルハラスメントに関する労災補償の現状ということで、数字的なデータをいくつか挙げさせていただいています。(1)(2)は、全体に関することです。(1)は精神障害等の労災補償状況です。これはセクシュアルハラスメントに限りませんが、精神障害に関する労災請求、あるいは支給決定、認定の状況です。グラフを見ていただきますと明らかなように、平成10、11年度辺りから急に請求が増えてきていまして、平成21年度の請求件数は1,136件で、うち支給決定件数とありますが、これが労災と認定された件数で、234件となっています。平成11年の9月に、いまの判断指針を作ったことが、こういった数字の変化の背景にあろうかと考えています。
 (2)は、平成21年度に認定された234件、あるいは認定、不認定いずれかの決定をした852件のうちの出来事別の件数です。6の対人関係のトラブルの2番目に、セクシュアルハラスメントを受けたという出来事がありまして、確かにこういったものが何がしかあったと監督署で認定したのが16件、そのうち4件は強い心理的負荷で業務上と判断したものとなっています。
 次の頁は、(3)セクシュアルハラスメント事案についての統計です。平成16年度から資料がありまして、業務上と認めたもの、業務上と認められなかったものということで、平成16年度から21年度の合計で業務上と認めたものが22件、業務上と認められなかったもの、業務外とされたものが39件という状況になっています。それぞれの中身を見ていきますと、先ほどIからIIIの出来事の評価をするというお話をしたかと思いますが、業務上となったものの22件では、強い心理的負荷だったと判断して、出来事の評価をIIIとしたものが20件、IIの真ん中程度のものが2件で、業務外としたものではIIIにしたものは2件、IIにしたものが35件、Iの軽いものが2件です。IIIのものは、IIIのあと相当程度過重以上であれば業務上となったわけですし、業務外となった2件はその後の状況が特に評価すべきものが何もなかったとされたものです。出来事がIIで業務上となった2件については、その後が特に過重であったと評価されたものですし、特に過重と評価されなかったもの35件が業務外となっています。
 それぞれの事案のセクシュアルハラスメントとされた行為の中身ですが、強姦や暴力的なものは業務上となったものでは10件、それ以外の体を触られたというようなものが6件、言葉だけあるいは盗撮なども入っていますが、体を触られたというものではないものが6件です。業務外では、1件、14件、24件となっています。また、加害者ですが、上司がいちばん多くて、業務上で10件、業務外で28件、同僚は業務上で5件、業務外で6件です。その他の方というのは、取引先の方、あるいは病院ですと患者さん、介護施設では利用者さんで、上司でも同僚でもない方々ですが、業務上で7件、業務外で5件となっています。また、事案が繰り返し行われるものであったか、1回きりのものであったかですが、業務上では繰り返し行われていたケースは14件、単発のものは8件、業務外は繰り返しものが33件、単発が6件となっています。
 資料5は、先ほど資料2の進め方(案)でも申し上げましたが、今回この分科会を始めるにあたり、より深く実態を把握したうえで検討を行う必要があるという問題意識があります。また、団体さん等からの要望もありまして、ヒアリングを実施してはどうかと提案させていただいている資料です。セクシュアルハラスメントの実態を把握するため、支援団体、相談機関等において、セクシュアルハラスメントを原因とする精神障害を発病した事案に多数接している方からヒアリングを実施してはどうかと。対象の候補者ということで、被害者という考え方もあるかとは思いますが、個別の症例の検討ではなく、認定基準自体の検討ということもありまして、先ほど申し上げたような事案に多数接している方、例えば被災労働者の支援組織において多数の事案の支援活動を行っている方、あるいはカウンセラーとしてカウンセリングを行っている方、あるいは男女共同参画支援施設等で、女性労働者あるいは事業主からの相談を受け付けておられる方、あるいはそういった事案を取扱われた経験のある弁護士等の法曹関係者等からヒアリングをしてはどうかということで、事務局から提案させていただいています。また、この候補者についても議論をいただければと考えています。
 資料6、資料7については、先ほどまでの説明で少し触れさせていただきましたので、事務局からの説明は以上です。
○山口座長 ありがとうございました。ただいまの事務局の説明につきまして、ご意見、ご質問等がございましたらご遠慮なく。今ここでわかったらで結構ですが、いただいた資料4の11頁でセクハラを受けたという決定件数が16で、支給決定件数が4になっていますね。4というのはどんな内容だったのか、皆さんに簡単にでもご紹介できたらわかりやすいのではないかという気もしますが。
○渡辺職業病認定対策室長 件数が少ないのである程度のことを言ってしまうと、少なくともご本人様は自分のことというのがわかってしまうので、そこは適当ではないというのが私どもの考えです。ご紹介は控えたいと。
○山口座長 そうですか。そういうところが問題の難しいところなのですね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうなのです、ええ。
○戒能先生 私も、今の4件というのは少ないので特定されるおそれはよく理解しましたが、例えば12頁に業務上と認められたか業務外などがありまして、強度IIIでも業務外となっているものがかなりありますよね。しかも、その中の回数の継続という所、先ほど別のところでもご説明いただいたわけですが、それ、すぐに疑問が出てくると思うのです。どういうポイントなのかとか、そういう実情をまず知りたいと思ったのですが、その辺はいかがでしょうか、ご説明はやはり無理なのでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 IIIになっていて業務外になった事案は2件ですが、先ほどの判断指針の作りからしまして、IIIで業務外になるパターンというのは、出来事の評価はIIIなのだけれどもその出来事後の事情が特に何もなかった、何もなかったというのも変なのですが、「相当程度過重」とは言えなかったと判断したケースなのです。そこをなぜそう判断したかというご質問なのかと思うのですが、そこは。
○山口座長 これを見たら、出来事の評価でIというのもありますね。Iというのはあるのですか。これ、評価表では大体IIになっているけれども。
○西川職業病認定業務第一係長 出来事の評価がIになっているものは、まずは平均的にはIIなわけですが、事案の形態を見てIIほどもいかないと、それで評価をIに下げた事案です。Iですと、その後を見るまでもなく、強い心理的負荷があったとはいえないとなってしまいますので業務外になったということなのです。またこれをなぜIに下げたのかということをお話しすると、そこまでは。
○山口座長 そこまで言うとあれですが。ただ、いままで我々が見ていて、評価表で出来事の平均的な評価がIにちゃんとあって、それは出来事の抽象的な一般的な評価だから、いろいろな具体的な事情を見て修正する視点というのがあって、それを加味して変えているわけですね。いままで見てきたのは大体プラスの要素ばかりだったものですからちょっと下がるというようなときもあって、それはどういう場合かというご質問ではないかと思ったのですが。
○戒能先生 そういうことですね、継続というのはかなりプラスになる要因だというように普通は考えられるのではないかと思ったものですから。
○西川職業病認定業務第一係長 そして、この継続とIであったりIIIであったりの関係は、いま直ちにはわかりません。
○渡辺職業病認定対策室長 具体的な事例として申し上げるのではないのですが、先ほど説明の中にもありましたように、セクシュアルハラスメントというのは非常に広い概念があります。例えば、職場にヌードカレンダーが張ってあるというのもセクシュアルハラスメントに該当するわけですよね。たぶん、そういうものだとするとIぐらいの評価になってくるのかなと思います。これは実際の例として、申し上げているわけではないのですが、それぐらい非常に幅広いので、心理的負荷としてそれほどではないと思われるようなものもやはりセクシュアルハラスメントには該当するというのがセクシュアルハラスメント事案の1つの問題と言いますか、課題なのだろうと思っています。
○戒能先生 ただ、この分科会は労災認定についてなので、セクシュアルハラスメントの概念一般としては、それは全くそのとおりであるというように、非常に幅が広いというのはそうなのですが、労災認定をするまでのご事情というかそういう事実というか、そういうことを議論する場ではないかと思いまして、その辺は。今のご説明はもっともなことなのですが、ここの場では前提をきちんとはっきりさせたほうがいいかなとは思っております。
○山口座長 ほかの先生方は何か。
○黒木先生 たぶん、いろいろな事案があると思うのです。例えば会社で、実際に精神保健の相談を月に2回やっているので、私もセクハラの相談を受けたことがあります、それから、実際の具体的な事例として、例えば身体的な接触が数回あって、セクハラ的な言葉もあったという事例です。そのあと、1年ぐらいして本人が会社にセクハラを受けたと申し入れました。会社はそれを調査して、回数が少ないにしてもやはりそういう事実があったということで謹慎処分にして、そのフロアを変えて、別の建物にしたわけです。別の建物にして数カ月経って、本人がそのフロアにいないのに、外出していたわけですが、その男性がそのフロアに現れ、そこで吐き気がしたりいろいろな症状が出て、精神科を受診して診断がついた事例です。そういったものをどう考えるかということです。その発症要因としてどういう事実が関係しているか、ここがやはり基本だと思うのです。だから、事実内容がどういうものであったのか、ここをしっかり押さえる、これがやはり基本だと思います。この事例は、その男性が職場に現れたことを聞いたという伝聞体験によって発症していますので、業務外ということになります。
○河合補償課長 今の関係ですが、やはりこういう中で公然と説明というのはちょっと厳しいものですから、別の会を開くか、それとも個別にご説明するか、何らかの形をとらないと、やはりここでは説明しづらいものですから。また別のやり方を考えさせていただくということでよろしいですか。
○山口座長 私ももちろん、そうしてくださればそれでいいと思います。いちばん配慮しなければならないのは、ここで説明して具体的なケースがわかってはいけないということでしょう。
○河合補償課長 はい。
○山口座長 その要請はよくわかります。ただ、他方、いままで認定されたのがどのような事例なのかがある程度わからないと、こちらも雲をつかむような感じになりますので、そうしていただければ助かります。議論が前進すると思います。
○河合補償課長 では、別にまた、説明の機会等を含めて。
○山口座長 ええ、適当なときにそうしていただけたらと思います。
○河合補償課長 抽象的に話をしても、きっと何の話だろうということになってしまうものですから。これはもともと、この会をやるに当たってもそれがいちばんやはり、我々としても考えたところですので。では、そういう形で別にしましょう。
○山口座長 それはそうしてください。というのは、黒木先生のように患者をよく診ておられて、医学の方で自分で判断能力のある方はいいですが、我々は評価表による分類、その評価の仕方、修正の視点、最終的な状況を見て、強・中・弱の判定の仕方を見ているわけですから、認定された例で「この事例はこういうふうにして認定されたんですよ」というのがわかれば、そのような形で事件を見ていけばいいということがわかりますので、ぜひ、サンプルでもいいですから、認定された事例をご紹介いただいたほうがいいように思います。
○河合補償課長 では、そういう形でやらせていただきますので。
○加茂先生 認定された事例だけでなくて、やはり認定されなかった事例が非常に大きな問題ではないかと思うのです。検討なさるときに、平成21年度だけではなくてここに書いてある61例を含めて検討していただけると、多少なりとも個別性が薄まると思うので、出せるものも出てくるのではないかと思います。
○河合補償課長 わかりました、宿題ということで検討させていただきます。
○山口座長 それと、いま黒木先生からご紹介があり、ほかの先生方からも問題提起がありましたが、セクハラの場合は行為の範囲がものすごく広いですから、どのようなものが申請の事例で上がってきているのかというのもちょっと知りたいような気がします。
○河合補償課長 では請求の形態別という、変な話ですが、そういう感じですか。
○山口座長 それは、もし差障りがなければここででも結構ですが。
○加茂先生 あとは、非常に関係があるポイントとして。セクシュアルハラスメントの上の項目として「ひどい嫌がらせ、いじめまたは暴行があった」というのがあると思いますが、これはセクハラとかなり被っている部分があるのではないかと。いわゆるパワハラですよね。
○河合補償課長 いわゆるパワハラと言われるものの一形態がセクハラでもあるという、そういう感じですか。
○加茂先生 一般的にもそう言われているところもあると思うのですが。例えば同じ女性の事案でもパワハラと判断されたものとセクハラと判断されたものがあったりすると思うので、もし可能であれば、上の事例がどのような形なのかということもちょっと見ていただけるといいのかなと。これは簡単で構わないのですが。
○西川職業病認定業務第一係長 「ひどい嫌がらせ、いじめまたは暴行があった」の中にセクハラのような事案があるかどうかを調べることはできると思います。ただ、上司とのトラブルの中にセクハラのような事案があるかどうかを拾うのはなかなか。
○加茂先生 ちょっと難しいですね。
○西川職業病認定業務第一係長 ちょっと難しい感じですが、上のひどい嫌がらせ、いじめ等の中で拾うことはできるかと思っております。
○山口座長 ご覧になっていて要素が複合的になっている事案が多いですか。
○加茂先生 複合事案はそれなりにあると思います。というのは、やはり断わったあとに非常に嫌がらせを受けたりするケースはもちろん入っているわけで、それを全部セクシュアルハラスメントで見ると、先ほど複合事案が問題だろうということがありましたが、これをセクシュアルハラスメントだけで評価するのか、プラスいじめで評価するのかだけで見ると、それでまた強度の判断が変わってくると思うのです。例えばそういったところ。
○山口座長 それは、事務局のお考えも聞いてみなければいけませんが、私が判例などを見ている限りでは、複合事案のほうが圧倒的に多いのではないかと思います。
○加茂先生 それはそうです、はい。
○山口座長 それは、複合事案をどのように扱うべきかということをここで議論すればいいので、必ずしも単純な事件に限定する必要はないという気がします。
○戒能先生 今の議論と関係して、むしろその次の「論点」のほうに入るのかもしれませんが、よろしいでしょうか。
○山口座長 どうぞ。
○戒能先生 この論点には入っていないのですが、今の心理的負荷評価表というのをご説明を受けて初めて拝見しました。いままでこういう労災の負荷表を拝見したことがなかったものですから、ああ、セクハラはどこに入っているのかなというように拝見して。対人関係のトラブルと、確かにそのように検証しますが、今の複合のこともあるのですが、ここに位置づけるのが適切かどうかということも是非。認定されたものは、いままでは件数が少ないようですが、たぶん申請はこれから、2005年か何かに通達みたいなものが出ていますよね。どうも職場でも、私は大学に所属しておりますが、セクハラが全然なくならないという状況があります。そうしますと、もう少しきちんと位置づけていくというのも1つ考えるべき論点かなと思います。ちょっと先走ってしまいましたが、申し上げました。
○山口座長 そういうご意見ですから、どこかで議論できればと思います。ただ、評価表自体をいじるということはものすごく難しい問題があるのです。これをいじる場合には、それに見合った件数がないと客観性がなくてこの体系自身が崩れる心配があります、どこに問題があるのかという議論はしたほうがいいと思いますが。なかなかそれだけの客観的な資料、匹敵するものが出てくるかどうかですね。
○加茂先生 3月に出てくる調査報告というのは、そういう具体的な件数も上がってくるのですか。
○山口座長 ええ、それは3月に出てくるようです。そうすると、場合によっては、一般的にIIというのが妥当かどうかということもそれに基づいて議論の対象になるのですかね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね。
○山口座長 あるいは、加茂先生のご質問はそういうことではないかもしれません。
○加茂先生 いいえ、そういう。
○渡辺職業病認定対策室長 調査結果が3月の半ばぐらいに出ますので、それについて次回の親会議のほうでその調査結果に基づいてまた個々の出来事の評価のことを検討しますが、その中に当然、セクハラのことももちろん調査結果の中に入っていきます。また、その位置づけの問題は位置づけの問題としてまた議論はできるのだろうと思います。
○山口座長 それでは、特にご意見がございませんようでしたら、事務局のペーパーによりまして検討を進めていってよろしいでしょうか。それではそのようにさせていただきます。進め方というのは資料2ということになるわけです。次にこの分科会、既に論点につきましてご意見が出ておりますが、先ほど資料3に基づいて論点の説明がありましたが、セクハラの事案特有の状況、要素、論点、さらにその他検討すべき論点等々がございましたら、ご自由にご議論いただきたいと思います。先ほど戒能委員から1点ご指摘がありましたが、ほかの先生方はどうでしょうか。
○戒能先生 「論点」と「考えられる論点」と、その2つからの意見でもよろしいですか。資料3のほうだけでもよろしいですか。資料3の事務局のほうで「考えられる論点」で大きく2つ考えてくださいまして、1と2と基準と運用ということでご検討いただいてお示しいただいて、大変整理されているのですが。1は「相談や請求を控える場合があるとすれば」という書き方になっています。そこでは周知とか請求手続とか相談体制とか、そういうことをご指摘いただいているのですが、むしろ5頁のセクシュアルハラスメント。私の大学とかそういう所で経験した範囲の話ですが、手続的なこともあるかもしれませんが、むしろ特有の事情のほうに。なかなか訴えられないとか、相談できないとか、そういうものが構造的にあるような気がずっとしているのです。
 ですから、①は受け手ですが、②以降もそのとおりだと思うのですが、やはりそういう顕在化しにくいというところ、個人だからということではなくてセクハラ特有の、ほかの労災の事案とは違ったものがありはしないかということも1つ入れていただくと。そうすると、労災申請してから期間が長いということだけではなくて、その前の期間が大変長いというのを見ていて感じるものですから、その辺も特有の事情というように入れてご検討いただければとは思っております。
○山口座長 ほかにどうでしょうか。
○加茂先生 その6カ月以内に関する問題ですが。発症の時点に遡る6カ月ということでいま専門部会では検討されていると思うのですが、誰にも相談しないでくると、おそらくその発症の時点をどこにするかという問題が大きく変わってくるのではないかと思うのです。本人はずっと具合が悪いと思っていたけれども、自分でもどこから具合が悪いのかもわからなかったというようなことを考えるときに、6カ月を切り取ることが難しくなる事例がわりと多いのではないかと思うのです。それをどのように表現したらいいのかよくわからないですが、6カ月について検討するときにそういったこともちょっと念頭に入れて検討していただければと思います。
○山口座長 それはこの前も問題になりまして。どんな議論だったかをご紹介してください。
○渡辺職業病認定対策室長 6カ月というか、発症時期ですよね。発症時期は確かに特定が難しい場合もありますが、やはり専門医の方はちゃんとそこを見極められると、そういうご議論だったと承知しております。黒木先生もそういうお話だったかと。
○黒木先生 発症の時点から遡って6カ月ですから、その受診がいつということではないのです。では、本人がどこから具合が悪くなったか、どのように感じているのか、それは振り返ってみて、この辺から自分は具合が悪くなったと言う場合もあります。しかし、そこが発症しているかどうかということはわからないわけで、そのために専門部会の中で、どこで発症したのかということは、本人だけの訴えではなくて、あるいは第三者の訴えも聞いて、やっぱりこれはここで発症しているのではないか、あるいは家族の話も聞いて、そこで特定した時点から遡って6カ月ですから、発症時点から出来事を6カ月で見るということですが、6カ月以前からセクハラを受けていれば、当然、それ以前にも遡って調査が行われ、その出来事がずっとつながっており、さらにそれ以前にも調査をしなければいけなくなると思います。したがって一応6カ月以内の出来事で大体は出てくるのではないかということだったと思います。
○山口座長 よろしいですか。
○加茂先生 専門部会の判断をということになるわけですよね。
○山口座長 そういうことになりますね。ですからそれは、一連の過程をよく調べて判断されるということになると思います。発症前6カ月間に出来事が行政上の認定の手続としては何も出てきていないと、専門委員会で調べた結果、やはりこの辺でこういう出来事があってこれが原因になっているのではないかというので認められれば、そういう判断になると思います。逆に、出来事がはっきりしていて発症がはっきりしないというのもあるのです。いちばんよくあるケースは自殺のケースです。出来事があって、翌日自殺したと。果たして発症していたかどうかというのはよくわからないです。そういう難しい点はもちろんあると思います。そういう点に先生のお知恵を借りたいということだと思います。
○黒木先生 今の話ですが、その出来事があって、翌日自殺をしたと。では、果たしてその出来事はその発症の後なのかあるいは前なのかということがありますので、その辺は、いろいろな詳細な資料からどこを発症時期とするのか。あるいは、出来事の直後にやはり発症していた可能性が高いということも、当然あり得るわけですよね。そうすると、出来事はやはり発症前ということになりますから、そこで判断できるのではないかという気はします。
○山口座長 わかりました。
○水島先生 ご質問なのですが、よろしいでしょうか。
○山口座長 はい。
○水島先生 今のように発症時点をどんどん前のほうにしますと、実際にセクハラがあったときから2年や3年が経過しているということはよくあると思うのです。そのような場合に事実確認がますます困難になるということが予想されるのですが、まず1つ目としましては、そのようにかなり以前のことに関して労災補償の申請をするときにその期間は問題にはならないのでしょうか、というのが第1の質問です。第2の質問は、3年前、5年前となって調べられないような状況のときにそこはどうやって調べるのでしょうか、ということです。
○山口座長 難問ですね。では現実的には。
○西川職業病認定業務第一係長 これは別にセクハラということには限りませんが、実際、かなり以前に発病していたということになれば、発病の時点を調べる。例えば5年前の発病だと言われるような事案であれば、5年前プラス6カ月の出来事などを調べるというやり方で現在でもやっているわけです。その際の調査の方法としては、ご本人さんからお話を聞く、同僚の方からお話を聞く、事業場からお話を聞くということになるわけです。あるいは主治医の方から医証をいただくというようなことになりますが、カルテも廃棄されている、当時の方がいらっしゃらない、認定が非常に難しくなっているという事案は、現実問題はもちろんあります。ご本人さんのお話などの心証からたぶんあっただろうなのか、ご本人さんはおっしゃっているけれどもほかに何もなくて、それだけではたぶんあっただろうとも言えないからむしろ認定できないとか、それは事案によっていろいろあるかと思います。実際問題としては、結論は出さなければいけませんので、集まったものの中であったかなかったかという判断をせざるを得ないという状態にはあるかと思います。
○黒木先生 たまに、発症してから例えば20年経って請求してきたとか、こういう事例もあるわけですよね。そういう方は大体病院にかかっているので、やはり医証がいちばん参考になると思うのです。医証の中にいろいろな書類が書いてあったり、あるいは、最初の記録が残っていると大体いつごろからどのような状況で発症したかということが大体わかるので業務がどの程度関係したかというのは業務上外は別として判断できるのではないかと思います。
○水島先生 医証の中に発症したかということが書かれているのはわかるのですが、原因というのはそこに書かれるものなのでしょうか。
○黒木先生 大体は、私どもは患者さんが来たときにまずどういうことで来られたかという話を聞くので、そこでこういうことですというようなことをいうので、誘因については、大体そのカルテに書かれていることが多いです。逆に、例えば労災請求をするときに、自分は仕事で病気になったと言うのですが、医証を取り寄せてみると、家族の死、奥さんが亡くなったことが原因であったり、そのことが詳細に延々とカルテに書いてあるということになると、やはり実際はこっちではないかなということはあり得るわけです。
○山口座長 よろしいですか。水島さんが考えておられたのは、発症してからおおむね6カ月前までに出来事がないと、出来事が何かもう5年も6年も先だと、それで、その間に何もないというケースなのではないですか。
○水島先生 はい。ただ、そのような場合でも発症時期を何とかして前のほうに遡らせるという前提で先ほど質問させていただいたのですが。
○山口座長 ただ、それが、我々は法律家の癖ですぐそのようにしますが、お医者さんから見ると、それはよく見たら間に何かあることが多いのですよと、そういうことだと思います。
 それでは、一応今日ご議論いただく点につきましてはご意見を伺ったかと思いますので、次に、ヒアリングの実施について候補者の案が出ておりますので、それについてご意見をお伺いしたいと思います。資料5です。
○戒能先生 質問してもよろしいでしょうか。ヒアリングというのは1回、例えばこういう会議のうちの1回をヒアリングに当てると。
○山口座長 現在は1回です。
○戒能先生 複数の方というのは何人ぐらい、というのはこれから決めるということですか。
○山口座長 はい、これでどうかということですが。
○幡野職業病認定対策室長補佐 一応、それぞれのポツで4名程度と考えているところです。
○戒能先生 先ほどのご説明があって個別の事案の検討ではないのでということがありましても、もし可能でしたら、支援していらっしゃる方、カウンセラーの方、弁護士の方などが挙がっていますが、やはりその実情がわかるという意味では、可能な方ということなのですが、そういう方がいらっしゃればということなのですが、当事者の方のお話を短い時間でもお伺いしたいというのは私の個人的な意見です。
○山口座長 その点、どうですか。事務局のほうで少し考えておいていただけますか。あるいはこの進め方から。
○黒木先生 当事者の方というのはどういう方でしょう。
○戒能先生 ですから、抽象的にいまあれなのですが、労災認定された方でもよろしいし、労災認定されなかったという方でもよろしいのですが、労災認定に至る経過とか、どういう。お医者様がいらっしゃるのでわかるかもしれませんが、先ほどの論点の手続的なことも含めて、運用のところも含めてやはり当事者の方のお話をお聞きする機会があったほうが、より実効性のある基準と言いましょうか、ができるのではないかと考えたものですから、ご検討いただければと思います。難しければ、それはもちろん。
○山口座長 確かにおっしゃった点がわかればいいと思いますが、普通の認定の手続と別に、セクハラ特有の問題でどうなったかというのをそのケースから聞き出すのはなかなか難しいような気もします。何か適切なあれがあればと思いますが。
○幡野職業病認定対策室長補佐 私どもも、一応出すに当たりましては検討していたところです。問題と言いますか、なかなか乗り越えられないかなと思われたのは、1つはプライバシーの問題があります。それと、仮に治っていたとしても、一応そういった発症を見た方たちですので、再燃ないしは再発のような形になるおそれということを考えたところです。前者のプライバシーは一定限、例えば非公開であるというところではいけるのかなとも思われるのですが、後者はどうも。この辺のところはなかなか確たるものが持てないというものもありましたので、今回のご提案はこの形でさせていただいた次第です。
○山口座長 ですから、プライバシーの点はもちろんあるのですが、いまヒアリングでいろいろ意見を言っていただく対象は、支援活動をしておられる方とカウンセリングをしておられる方と相談対応をしておられる方と具体的な個別の事件を担当しておられる法曹の方ですから、何か出てくるのではないかという気もします。
○戒能先生 可能であればということで、是非ご検討ください。
○幡野職業病認定対策室長補佐 そこのところは先ほど申し上げたとおりです。今回、精神科の先生に2人入っていただいておりますので、そちらのほうとも相談させていただきながらまたということにさせていただければと思います。
○黒木先生 具体的な事例、例えば裁判事例とか、それはたぶん出してもいいのですか。実際に訴訟になっている事例とかですね。
○山口座長 ええ。だからどういう形でお伺いするか。A事件ならA事件と。それで、名前を伏せて伺うと。しかし、名前を伏せてもわかったら困りますね。だから。
○黒木先生 特定できないような形で。裁判などの場合は一応出ますよね、弁護士の。
○山口座長 だから、そういう事件の個性を全く取っ払って。ですけれども、一応法曹、弁護士さんですから専門的な知識はもちろんお持ちですから、そこのいちばん重要なところだけを分析し、整理してお話をいただくのか、それはヒアリングをするときにご相談すればいいのではないかと思います。
○水島先生 戒能先生のご意見もごもっともだと思って伺っていたのですが、もし可能でしたら、間接的な形にはなりますが、ヒアリングの対象候補者として挙がっている方にこのようなご意見が出たということをお伝えして、もし必要であれば間接的に何らかの声をいただいたらいかがでしょうか。
○渡辺職業病認定対策室長 私どもも、この選定をするに当たってはそういった実際の例をたくさん知っていらっしゃる方ばかりだろうと思いまして、その方から間接的に実際の例の経過なりも含めてお話いただけるのではないかと考えています。依頼する際には、そんなお話もしていただければというようなことで依頼をしたいと考えてはいたところです。
○山口座長 それでは、資料5に示されている案のとおり、次回にヒアリングということにさせていただいてよろしいでしょうか。
○戒能先生 わかりました。
○山口座長 それでは、特に強いご意見がございませんようですので、次回、ヒアリングを実施するように事務局のほうで手配をしていただきたいと思います。今日、併せて出ましたのは、こういう意見が出ていると、だからそれを踏まえてお願いいたしますということをお伝えください。それでは、以上で本日検討すべき事項はおおむね終了したかと思いますが、事務局から次回以降の開催等について何かありますか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 次回の日程につきましては、これから調整という予定としております。調整の上、改めてお知らせしたいと考えております。ヒアリング等もありますので、そちらのヒアリングされる方等の日程等も確保するということでこのようにさせていただいております。本日はどうもありがとうございました。これをもちまして本日の検討会は終了いたします。ありがとうございました。
○山口座長 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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