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2011年1月31日 第75回職業安定分科会議事録

職業安定局総務課

○日時

平成23年1月31日(月)13:00~15:00


○場所

経済産業省別館 1014会議室


○議事


○大橋分科会長 皆さんお集まりになりましたので、ただいまから第75回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
 本日の出欠状況ですが、欠席が公益代表岩村委員、白木委員、清家委員、宮本委員です。労働者代表は斉藤委員、住野委員、古市委員がご欠席です。使用者代表としまして、荒委員、上野委員、久保委員がご欠席ですが、代理出席として深井様に出席していただいています。高橋委員がご欠席です。
 それでは、議事に入ります。本日の議題は、「求職者支援制度について」、「雇用保険部会報告書について」、「その他」です。
 最初の議題は、「求職者支援制度について」です。本件につきましては、先週27日に開催されました雇用保険部会において報告が取りまとめられています。本日は清家雇用保険部会長および岩村雇用保険部会長代理がご欠席されていますので、事務局よりご説明をお願いいたします。
企画課長(土屋) 派遣有期・労働対策部企画課長の土屋です。どうぞよろしくお願いいたします。私のほうから、「求職者支援制度」についてご報告申し上げます。
 資料1です。求職者支援制度については、いま分科会長からご紹介いただきましたように、これまで雇用保険部会でご議論いただきまして、昨年2月から計18回にわたり部会でご議論を重ねていただきました。その結果として、先日27日に雇用保険部会において、いまお手元にお配りしている資料No.1のとおりに取りまとめが行われました。本日は、部会長、部会長代理ともにご欠席ですので、事務局から内容のご報告を申し上げます。
 資料No.1の最初の2枚をおめくりいただきますと、3枚目に別添として「求職者支援制度について」という取りまとめの文書があります。これに沿ってご説明申し上げます。
 この報告書は大きく第1、第2、第3と3つの構成になっています。第1では「現状及び課題」、第2として「求職者支援制度の方向性」、第3として「求職者支援制度の財源について」ということで、大きく3つの構成になっています。
 1頁目第1の「現状及び課題」ですが、現下の雇用失業情勢は持ち直しの動きが見られるものの、依然として厳しい状況にあることに加えて、2つ目の○にありますように、労働市場の最近の動向として、非正規労働者が雇用者に占める割合が3割を超えるというような状況がある、あるいは失業者が占める長期失業者の割合も、すう勢的には上昇していると、そういった現状認識をまとめていただいています。
 その上で、3つ目の○は、このような情勢を踏まえて、特に非正規労働者に対するセーフティネットの強化のために、平成21年、22年に雇用保険法の改正を行ってきました。ただ、この雇用保険法の改正後においても、3行目にありますように、短期に離職することにより、受給資格を満たさない者とか、受給期間が終了しても再就職できない者が依然として存在する状況です。
 4つ目の○では、一方、生活に困窮した場合に、最後のセーフティネットとして生活保護制度があるということですが、その生活保護制度においては、4行目にありますように、利用し得る資産、能力等をすべて活用した上で、それでもなお困窮していなければ対象にはならないという意味でも、セーフティネットの限界があるということです。
 「このため」ということで、5つ目の○にありますように、雇用保険と生活保護の間にあるセーフティネットが必要であり、政府は平成21年度から雇用保険を受給できない方々に対する新たなセーフティーネットとして、基金を造成して、ハローワークが中心となって職業訓練と訓練期間中の生活給付を行うことを内容とした緊急人材育成支援事業(基金事業)を実施していますが、この事業については、緊急の時限措置であり、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」においては、「『第二のセーフティネット』の整備(求職者支援制度の創設)の機能強化に取り組む」こととされており、求職者支援制度の創設は平成23年度に実施すべき事項とされています。
 このような状況を踏まえて、最後の○で非正規労働者への新たなセーフティネットを恒久制度として創設することは、いますぐに実施すべき最重要課題であることから、次のとおり求職者支援制度を創設することとすべきであるとおまとめをいただいています。
 2頁からは第2として、「制度の方向性」です。最初に1として、「制度の趣旨、目的」です。求職者支援制度の趣旨、目的は、雇用保険を受給できない求職者に対するセーフティネットとして、当該求職者の就職に必要な、基礎的、実践的な職業能力を高める訓練を受講する機会を確保するとともに、当該求職者が一定の要件を満たす場合には、その訓練期間中の生活を支援するための給付を支給し、併せてハローワークが中心となってきめ細やかな就職支援を行うことにより、当該求職者の早期の就職を支援する制度とすべきであるとされています。
 対象者ですが、求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者の就職を支援する制度であることから、就職を希望し、支援を受けようとする雇用保険の被保険者及び受給資格者でない者を対象者とすべきであるとされています。
 次の○では、具体的に受給終了者や受給資格要件を満たさなかった者、あるいは学卒未就職者、自営廃業者等の離職者ではない求職者が対象者となっています。
「訓練について」です。求職者支援制度の趣旨、目的を実現するためには、公共職業訓練などとは別の新たな訓練を設定する必要があり、その訓練は真に就職に結び付くような訓練である必要があるとされた上で、そのためにも、労使の意見を反映し、ニーズのある訓練が認定されるような仕組みを設けること、例えば労働局を中心として、労使団体等の関係者が協議する場を設け、実情を踏まえた訓練実施計画を取りまとめる仕組みを構築することが必要であるとされています。また、就職支援に当たっては、ハローワークが中心となって、訓練実施機関と緊密な連携を図りつつ、一貫した支援を行う必要があるとされています。
 この新たな訓練の具体的な内容については、別途、職業能力開発分科会において検討していただいており、先日27日に分科会としての取りまとめをしていただいていますが、こちらの報告の中でも、その取りまとめに沿った訓練が実施されることが適当であるとされています。なお、職業能力開発分科会の報告については、こちらの資料No.1の8頁のあとに1月27日の取りまとめを参考として添付させていただいています。
 「給付について」です。給付の目的、位置付けについては、対象者が就職するために必要な訓練を受講する期間中の生活を支援するための給付とすべきであるとされた上で、その趣旨から、個人に対する給付と位置付けつつも、世帯の状況を勘案したものとすべきであるとされています。
 「給付の要件」です。給付要件については、以下の要件を満たすことが確認できた場合に支給するものとすべきとされた上で、対象者本人に訓練期間中に一定の収入があれば、支援の必要性が低いということで、訓練期間中に一定の収入がないことを要件とすべきであるとされています。この水準については、雇用保険の被保険者とならない程度の働き方を勘案したものとすることが適当であるとされています。
 「世帯の状況」です。世帯の支援が期待できるか否かまで含めて給付の必要性を判断すべきだということで、具体的には世帯で一定の収入や資産があれば、その生活を支援する給付を支給する必要性は低いということで、それを要件とすべきということです。
 具体的な水準については、「その場合」以降ですが、収入要件の水準については、複数人員世帯における標準生計費を踏まえたものとすべきであるということです。具体的には、2、3人の世帯の標準生計費はおよそ300万円ということですので、年収換算で300万円程度のところを水準とすることで部会の中でもご議論いただいています。
 世帯の資産要件の水準についても、同様に年間の標準生計費程度の金融資産があれば、支援の必要性は低いということで、それを踏まえたものとすべきであるとしています。金融資産の範囲については、現行基金事業と同様の扱いとすべきとされています。
 土地・建物についても、現行の基金事業で科せられているのと同様に、対象者本人が居住している土地・建物以外の土地・建物を所有していないことというのも引き続き要件とすべきであるとされています。
 世帯の範囲については、同居の親、子、配偶者を原則としつつ、生計維持関係にある別居の者も含めるべきとされています。
 要件の3つ目として、訓練の出席の要件です。訓練にはすべて出席することを求めつつ、病気等欠席をせざるを得ない場合については、それを除くということで、なお、その場合でも正当な理由があっても、その出席は8割以上とすべきであるとされています。
 世帯で何人まで受給できるかということについては、世帯の者すべてが同時にこの給付を受給し、生活を賄うということになると、社会通念上適当ではないと考えられる場合も生じ得るということ、現行の基金訓練においても、給付の受給は1世帯1人に限られていることとの継続性を考慮して、制度創設時においては、世帯で受給できるのは1人に限定すべきであるとされています。その上で、主たる生計者に限らないで受給できることとすべきとされています。
 (3)として、給付額と種類です。額については、モラルハザードとなるものであってはならないけれども、生活を支援するための給付として一定の水準とすべきであるとされた上で、具体的な水準については、現行の基金事業の水準も考慮しつつ、制度創設時においては、現行と同様の水準である月10万円とすべきであるとされています。
 それに併せて、地域によっては、交通費負担が重くなる場合があり、それが訓練受講の妨げとなることがあることから、生活を支援するための手当に加えて、交通費も支給することとすべきであるとされています。
 また、雇用保険の給付が、求職者支援制度の給付と比較して低い額となる者が存在する場合が出てきますが、そのバランスについては引き続き検討する必要があるとされています。
 「給付の期間」です。給付を受給できる日数には制限を設けるべきであるとされた上で、原則1年として、訓練が1年を超える必要がある場合には、例外的に2年まで認めるとすることが適当であるとされています。循環的にこの給付を受給をし、これに頼ることを防止する必要がある一方、給付を受け、就職をして、また離職したあと再度訓練が必要だという場合もあるということで、そのため、その受給開始時点から一定の期間を1つの単位として、その期間に原則1回、複数受講の場合には2回給付を受けられるような仕組みとすべきであるとされており、具体的な期間としては、非正規労働者の平均勤続期間が5年を超えるというようなところを勘案して、6年と設定すべきであるとされています。すなわち、6年に1回受給ができる制度にすべきということです。
 「融資」ですが、対象者において、その地域差や家族構成等様々に状況の異なることについて、必要に応じて融資が利用できる仕組みを設けるべきであるとされた上で、給付を補完する位置付けとして、受給期間中に給付に上乗せして融資が受けられるようにすべきということです。融資額については、現行の仕組み、他の融資制度とのバランスも考慮すべきであるとされております。
 「適正な給付のための措置」です。給付が適正に行われることについては、社会的にも評価をされるために欠かすことのできないものということで、一定の措置を設定すべきであるとされた上で、具体的にはハローワークでの就職支援を拒む場合には、一定期間給付を受けられないようにすべきであるということと、併せて不正によって受給した場合には、一定期間給付が受けられないこととするとともに、返還等のペナルティを科すべきであるとされています。その際、雇用保険制度においては、いわゆる受給額の3倍納付を命じる3倍返しの制度があることを参考にすべきであるとされています。
 以上、「給付」で、次に、「就職の支援について」です。訓練開始前、期間中、修了後と一貫して就職支援が行われることが必要であると。そのためハローワークが中心となり、訓練実施機関と密接な連携を図りつつ、支援をしていくことが求められるとされています。具体的には、ハローワークにおいて、訓練受講者ごとに個別に支援計画を作成し、訓練期間中、訓練修了後、定期的に来所を求め、個々の実情に応じた支援を行う仕組みとすべきであるとされた上で、また必要に応じて、担当者制、マンツーマンでの就職支援を実施すべきであるとされています。また、この受講者が支援計画に従わず、来所しない等の場合にはペナルティを科すべきであるとされています。就職状況については、訓練受講者本人がハローワークに報告する仕組みを設けることと併せて、訓練実施機関も効果的な就職支援を行い、訓練受講者を就職につなげるような訓練を行っていくという観点から、就職状況について把握することとすべきであるとされています。
 6、「その他」です。創設後、円滑に施行できるように、必要な施行準備ができるようにするとともに、十分な周知を行うということです。事業規模については、創設時においては、基金事業における事業実績を踏まえたものとするとともに、創設後においては、そのセーフティネットとしての雇用情勢や施行状況を踏まえた適正なものとなるようにすべきであるとされています。以上が「制度の方向性」第2の部分です。
 次に第3として、「求職者支援制度の財源について」です。最初の○では、この新たなセーフティネットとして位置付けられる求職者支援制度は、雇用保険を受給できない求職者が安定的な職業に就けるようにする制度だという意味で、その対象者は、雇用保険の受給資格がないか、その受給を終了した者であり、給付と負担の関係が明確であるべき保険制度にはなじまない。したがって、雇用保険制度の枠外の制度として、本来国が全額負担すべきものであるとご指摘をいただいています。
 次の○では、「一方」ということで、国の財政状況が厳しい中で、いわゆる財源確保のルール(ペイアズユーゴー原則)が閣議決定されている。そのルールの下では、求職者支援制度を国が全額負担するための財源確保は困難な状況にあるということです。
 3つ目の○では、そうした中、昨年12月17日、国家戦略担当大臣、財務大臣及び厚生労働大臣の合意として、求職者支援制度を雇用保険制度の附帯事業として位置付け、国庫負担を原則2分の1とする旨の方針が示された。そういった三大臣合意があったことは、財政が厳しい状況にあるとはいえ、求職者支援制度の本来あるべき姿とは異なるものであり、何よりも当雇用保険部会における議論の積み重ねを全く踏まえておらず、ILOの基本原則である公労使三者構成によって合意形成を行うという労働政策の意思決定のあり方を尊重しないと受け取られる進め方であり、極めて遺憾であるというご指摘をいただいています。
 その上で、次の○ですが、制度の本来の趣旨からすれば、国が全額負担すべきものであるが、現下の厳しい雇用失業情勢や労働市場の変化を踏まえれば、早急に求職者支援制度を創設することが必要であり、緊急的な対応であることを前提に、雇用状況の改善につながるものであることから、労使負担を取り入れた制度として検討を行うこともやむを得ないものと考えるとされています。
 次の○では、その具体的な内容ですが、緊急的な対応として、国による負担を主軸としつつ、労使による負担を踏まえ、制度を運営するに際しては、以下のとおり対応すると書いた上で、具体的な点を5つ掲げていただいています。最初の黒ポツでは、国に相当の一般財源の拠出を求めることを大前提とした上で、雇用保険制度において労使が一定の負担を行う枠組みとし、制度の趣旨・目的に鑑み、少なくとも半分は国の負担とし、国庫が2分の1、労使が4分の1とすることが、緊急対応としての現実的な選択肢としてやむを得ないものと考えるということです。
 2つ目の黒ポツでは、雇用保険の国庫負担と同様に、暫定措置が適用される。それについて、できるだけ速かに暫定措置の廃止を行うべきであるとされています。
 3つ目の黒ポツでは、今回の制度は基金事業を恒久化するものであるということに鑑み、先ほどの三大臣の合意にも、この内容が盛り込まれていますが、基金事業終了後の基金の残額について、その残額はすべて求職者支援制度の財源として活用し、平成23年度は実質的に全額国庫、その後当分の間は実質的に国庫負担2分の1を確保すべきであるとされています。
 次の黒ポツでは、雇用保険制度の安定的運営に影響を与えない範囲で実施すべきであるとされています。具体的には、過去の保険料の剰余を、積み立てた雇用保険の積立金の規模を勘案して事業を実施する必要があるとされてあります。具体的な内容として、積立金に係る弾力倍率が1倍を下回る場合には、給付等について見直すとともに、労使の負担については、積立金との関係で上限設定などの制約を設けるべきであるとされています。
 最後、5つ目の黒ポツでは、予想を超えて情勢が悪化して、制約を超えて大規模な事業の実施が必要となるような場合には、必要に応じて補正予算による国庫を投入し、あるいは場合によっては、求職者支援制度に加えて、別の緊急臨時措置を設けて対応をすることも考えられるとされています。
 以上が具体的な制度、財源の考え方の整理の問題で、最後の2つの○は、今後の検討についての部分です。今般の制度の創設に当たっては、緊急の課題であるという認識に立って、特別な緊急対応としてやむを得ず取るというものであり、施行後3年を経過した時点で、雇用保険制度とは切り離し、財源についても全額一般財源で措置するという本来あるべき制度に見直すべく、引き続き検討していくべきである。この検討の見直しについては、法律上も明記すべきであるとされています。
 また、今後、社会保障改革とその財源について検討が進められる中で、求職者支援制度、雇用保険制度に関する国庫による財源についても、その確保に向けた必要な検討が行われるべきであるとされています。
 今回おまとめいただいた報告の内容は以上のとおりです。資料No.1の表紙の次の頁の2枚目は、清家部会長から大橋分科会長への報告書の写しですが、記のところにも記載していますように、その点については、雇用保険部会として結論に達した報告として、厚生労働大臣に建議すべきであるという報告としておまとめをいただいている状況です。
 私からの説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。
○大橋分科会長 ありがとうございました。本件についてご質問、ご意見があればご発言ください。
○新谷委員 ただいまご報告いただいた雇用保険部会のご報告については、清家部会長をはじめ、雇用保険部会の皆さまのご労苦に感謝申し上げます。省令委任事項もありますので、詳細については部会で詰めていただきたいと思っています。その上で、何点か意見を申し上げさせていただきます。
 1点は、部会報告の中にも盛り込んでいただきました財源の問題です。この問題については、12月17日に三大臣合意で、財源の取扱いについて雇用保険の附帯事業とするということが3大臣で決定されたわけです。この内容は、それまで部会の中で労使が一致して、一般会計での制度設計をするべきであると主張していたものに対して、まったく異なる内容となっていました。この三大臣合意については、いわゆる労働政策審議会の軽視に当たるのではないか、ILOの三者構成原則にも反するのではないかということで、このような取扱いが今後前例とならないように、是非政府としてもご留意いただきたいと思います。これが1点目です。
 この部会報告にもありますように、本来、求職者支援制度については労使ともにまさしく国として設けるセーフティネットであるという趣旨から全額一般財源によって、制度を設計するべきと主張をしてまいったわけですが、今回、労使で半分を負担することについては、あくまでも緊急避難の措置として受け入れるものであるということを改めて申し上げておきたいと思います。今後、速やかに安定財源を確保した上で、本来あるべき姿であります労働保険の特別会計の雇用保険制度から切り離した一般財源で全額を負担する仕組みに移行するべきであると考えていますので、意見として申し上げておきます。
 なお、今回の第二のセーフティネット、求職者支援法として恒久化するという法案が今後法案要綱を含めて確認され、国会に出ていくと思いますが、政府としても通常国会において成立を図るべく全力を挙げて取り組んでいただきたいとお願い申し上げたいと思います。私ども労働組合としても、すべての働く者の連帯で運動を進める立場から今後も引き続きこの制度の内容を論議させていただきたいと思います。以上です。
○大橋分科会長 その他いかがでしょうか。よろしいでしょうか。特にないようでしたら、報告文案の配布をお願いします。
                (報告文案配布)
○大橋分科会長 お手元に配布していただきました報告文案により、労働政策審議会長宛に報告することとしてよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○大橋分科会長 そのように報告させていただきます。これをもって、厚生労働大臣に対する建議となりますので、ご了解ください。
 次の議題「雇用保険部会報告書について」です。こちらについても、1月27日に開催された雇用保険部会において報告が取りまとめられています。同じく事務局より報告をお願いします。
○雇用保険課長 雇用保険制度についても、昨年9月以降、求職者支援制度の議論と併せて、雇用保険部会でご議論いただき、いまありましたように、1月27日の雇用保険部会で報告を取りまとめていただきました。内容について事務局から報告させていただきます。お手元の資料ですが、資料No.2-1が報告書です。資料No.2-2は、その関係で参考となるような資料をつけさせていただいています。
 資料2-1に添って報告申し上げます。1枚めくっていただきまして、雇用保険部会報告から安定分科会への報告文ということで、もう1枚めくっていただきまして、別紙ということで、雇用保険部会の報告書です。
 1頁の第1です。「雇用保険制度の現状等」というところで1つ目の○、2つ目の○でここ1、2年の雇用保険制度の改正・制度見直し、あるいは近時の雇用情勢、あるいは収支の状況について記載をしています。
 第2からが「雇用保険制度の見直しの方向」です。大きくは、給付の関係と財政制度の関係についての方向のご提言をされた報告書となっています。
 具体的には、2頁の1として、失業等給付についての提言の報告です。(1)として、基本手当の水準の見直しです。1つ目の○にあるように失業給付、基本手当の算定の基礎として、賃金日額の下限額は制度創設時に地域別の最低賃金の全国加重平均等を勘案して決定された額を、これまで平均給与額の変化に応じて法律に基づいて自動変更してきました。法定額を改正する際の自動変更に基づいた額で設定してきました。「また」というところにもありますが、下限額については、これまで最賃の加重平均額を常に上回ってきたというのが現状です。
 2つ目の○の「しかしながら」というところです。近時の状況ですが、最賃の引き上げが図られる一方、下限額を法改正で法定額を改正したのが平成15年です。ほぼ毎年マイナスの自動変更に相成った結果、平成22年度については初めて下限額が最低賃金を下回る状態となった状況を踏まえて、部会ではこうした逆転現象を鑑み、早急に解決すべき課題であり、上限額が直近の賃金分布をもとに決定されてきた経緯を踏まえ、下限額についても賃金分布に基づいて新たなルールを設定して引き上げを図るべきという提言です。次にあるように、上限額についても下限額の見直しと併せて見直してきたということで、上限額などについても併せて見直しをする必要があるとされています。
 という状況で、いちばん下の○です。こうした観点から上限額、下限額などについて法定額を賃金構造基本統計調査の賃金分布を踏まえ、以下のとおり見直すべきであるということで、具体的に2頁から3頁に掲げている表のとおり改定すべきということで、括弧書きが現行の適用額です。括弧書きの上の段に改定すべしという報告です。
 3頁の1つ目の○です。そういった上下限額の見直しに当たっては、これまでも高年齢雇用継続給付などの支給限度額などについても見直しされてきたということで、これについても上記見直しと併せて見直すべきとされています。
 次の○です。基本手当については、この上下限等の問題以外にも給付率や給付日数等の問題があるということで、これらについては今次もご議論いただいたのですが、引き続き過去の改正経緯も踏まえつつ、給付率が低所得者に対しては十分な保護を図るとともに、高所得者に対しては再就職意欲を阻害することのないように設定されていることや、給付率、給付日数が労働市場の変化や雇用就業形態の多用化に対応するとともに、求職者の意識、行動に大きな影響を与えていることも考慮して、平成23年度末に暫定的に講じることとされている個別延長給付などの取扱いと併せて部会において引き続き検討すべきとされたところです。
 (2)の給付の関係の大きな2点目です。安定した再就職に向けたインセンティブの強化、恒久化です。1つ目の○については、安定した再就職に向けたインセンティブの強化を引き続き実施していくような現状にあることを踏まえた上で、2つ目の○の「具体的には」というところです。「再就職手当の給付率の引き上げなどの措置を平成23年度末まで暫定的に講じているところであるが」ということですが、?@、?Aのような暫定措置の効果が出てきていることと、先ほどのような早期再就職のインセンティブを引き続き重要だということを踏まえて、再就職手当については、引き続き「所定給付日数の3分の1以上」の残日数があれば受給資格を満たすとするとともにということで、現在暫定措置上も45日以上の残日数がなければならないという要件を緩和していますが、要件緩和を暫定措置から恒久的に、引き続き受給資格とするということと同時に給付率についても、暫定措置では支給残日数が3分の2以上の場合に50%、3分の1以上の場合に40%となっているものをそれぞれ60%、50%と10ポイントずつ引き上げた上で恒久化すべきであるという報告です。
 また、障害者等の就職困難者ですが、支給残日数が3分の1以上ない場合でも、そういった方については再就職での初期費用補填ということで、常用就職支度手当という制度についても暫定措置で給付率を40%に引き上げていますが、この引き上げを恒久化すべきであるという報告です。なお、常用就職支度手当については、暫定措置上、対象者を年長フリーター等にまで拡大していますが、この取扱いについては個別延長給付等の取扱いと併せて検討すべきという報告です。
 以上が給付の関係です。続いて4頁の2からが財政運営についてです。(1)失業等給付に係る国庫負担です。1つ目の○にあるように、失業等給付に係る国庫負担については、原則の4分の1の国庫負担割合を平成19年度から当分の間として、その55%ということで13.75%となっているのが現状です。
 昨年も当分科会でご審議いただきました平成22年の雇用保険法改正において、平成22年度中に検討して、平成23年度において安定財源を確保した上で暫定措置廃止とされたところですが、部会で政府内での予算と調整も踏まえつつということで、2つ目の○にありますように、雇用保険の保険事故である失業は政府の経済対策、雇用対策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきであり、失業等給付に係る国庫負担割合は、法律の本則である4分の1とするのが本来であるとされた上で、国の厳しい財政状況等を勘案すると、平成23年度において国庫負担を法律の本則に戻せないことについてはやむを得ないものと考えるが、国庫負担の趣旨を踏まえ、できるだけ速やかに法律の本則に戻すべきであるという報告とされたところです。
 (2)は、平成23年度の失業等給付に係る雇用保険料率についてです。平成23年度の雇用保険料率については現下の状況等を勘案して、原則の法定の保険料率が1,000分の16ですが、本年度に引き続き平成23年度についても弾力条項による下限の1,000分の12に引き下げることとすべきであるという報告です。
 (3)は、平成24年度以降の失業等給付に係る雇用保険料率についてです。いま申し述べたように、失業等給付に係る雇用保険料率は原則1,000分の16となっていますが、平成15年の状況を踏まえて、給付の見直しとともに1,000分の16に引き上げられた料率です。しかしながら、実際の保険料率は今年度もそうでしたが、1,000分の12という弾力の下限になっているのが近時の状況です。
 という状況を踏まえて、5頁の1つ目の○にあるように基本となる失業等給付に係る雇用保険料率を引き下げることが適当であるとした上で、少なくとも5年程度の安定運営を勘案して基本となる失業等給付に係る雇用保険料率を平成21年度以降、1,000分の14に引き下げるべきである。1,000分の16が基本のところ1,000分の14に引き下げるべきであるという報告です。結果、弾力条項、発動との関係でいきますと、次の○です。積立金が雇用失業情勢等の状況により、労政審の意見を聞いた上で弾力の幅から1,000分の10まで引き下げることが可能になる制度設計になるという報告です。
 (4)は、雇用保険二事業に係る財政運営の問題です。雇用保険二事業については、機動的な運用についての適切さと昨年設けられた失業等給付の積立金からの借入措置の現状を踏まえた上で2つ目の○にあるようにPDCAサイクルによる目標管理の徹底強化、事業内容の不断の見直しをさらに推進していくべしという報告です。以上が財政運営についての報告です。
 3その他ということですが、いままでのところで引き続きご議論という報告もありましたが、その他「マルチジョブホルダーへの対応」、「65歳以降への対処」、「高年齢雇用保険継続給付制度のあり方」、「教育訓練給付のあり方」などについても今後も引き続き検討すべきであると報告をいただいたところです。以上、事務局からの内容の説明です。
○大橋分科会長 ありがとうございました。本件についてご質問、ご意見があればご発言ください。
○新谷委員 2点、労働側としての見解を申し上げます。
 まず、1点は財源の問題です。今回、雇用保険の国庫負担の本則戻しについては昨年末の3大臣合意によって先送りをされたことについては、大変遺憾であると重ねて意見を表明しておきたいと思います。厚生労働省においても、国庫負担を1日も早く本則4分の1に戻すよう、引き続きご努力をいただきたいと思っています。
 2点目は、先ほどご報告いただいた報告書の4頁(3)にある、平成24年度以降の基本料率の引き下げについてです。今回、1,000分の16から1,000分の14に引き下げることで取りまとめしていただいたわけですが、我々労働側としては、縮小均衡ではなく、平成12年、平成15年の改正によって下がったままの給付の回復を目指すべきという考え方をいまでも引き続き持っています。ただし、現在のような可処分所得の減少が続く中で、基本料率の引き下げによって、いくらかは改善すると見込まれるということ、ならびに今回の部会報告の中に基本手当に係る給付率、給付日数については引き続き検討するという文言を盛り込んでいただいていましたので、次回以降、改めて検討させていただきたいということを申し上げて、今回の雇用保険部会の報告については労働側としては了解したところです。以上です。
○大橋分科会長 そのほか、いかがでしょうか。ございませんか。特にないようですので、本報告は、雇用保険部会の報告書として了承したこととします。
○雇用保険課長 ありがとうございました。先ほど、ご答申、ご建議いただくことと相成った求職者支援制度の関係、雇用保険制度に関しては、今後事務局で法律案要綱を作成して分科会でご議論をお願いする予定ですが、そのスケジュールについて説明等を申し上げます。通常のスケジュールでは、まず当安定分科会を開催して、同法律案要綱について諮問した上で雇用保険部会においてご議論いただいて、部会の意見を踏まえて再度分科会開催後、答申という運びになるところが本来のスケジュールですが、今回については両法案を早期に国会に提出するということや部会委員の皆様方の日程等もご考慮させていただいて、予め明日の午前中に雇用保険部会で両法律案要綱についてご意見をいただき、その意見を踏まえて続けてで恐縮ですが、午後の安定分科会においてご議論いただくようにお願い申し上げたいと思いますので、ご了承いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○大橋分科会長 議題の「その他」として「出先機関改革関係資料」が配布されていますので、事務局より説明をお願いします。
○総務課長 資料No.3をご覧ください。出先機関改革については、地域主権戦略会議において議論が行われ、私ども厚生労働省からもヒアリングや資料提出が行われてきたところですが、昨年12月28日に出先機関改革に関するアクション・プランが地域主権戦略会議並びに閣議決定されたところですので、その内容について報告申し上げます。
 1頁は、アクション・プランです。柱書きにあるように、出先機関改革について住民に身近な行政ができる限り、地方自治体、地域における行政を地方自治体が自主的、かつより総合的に実施できるよう、出先機関の事務・権限をブロック単位で移譲することなどにより、出先機関改革を下記のとおり進めるということで、直轄道路、直轄河川及び公共職業安定所、ハローワークを中心として閣議決定がなされました。
 2の(3)ハローワークについてです。利用者である地域の住民の利便性を向上させる観点から希望する地方自治体において、国が行う無料職業紹介、雇用保険認定・給付等の事務、地方が行う無料職業紹介、職業能力開発、公営住宅、福祉等に関する相談業務等が地方自治体の主導の下に一体的に実施され、利用者のさまざまなニーズにきめ細かく応えることが可能となるよう所要の措置を講ずるということで、内容については地方自治体の実情に応じて、地方自治体が協議して設計することが第1段落目に記載されています。これについては、速やかに着手した上で、当該一体的な実施を3年程度行って、その過程においても成果と課題を十分検証して、その結果、広域的実施体制の枠組みの整備状況が別途行われることですので、整備状況なども踏まえて、地方自治体への権限移譲について検討するということに相成ったわけです。検討の際に当たっては、ILO88号条約との整合性や県域を越えた職業紹介の適切な実施、あるいは雇用対策における機動性の確保、雇用保険の保険者の変更等雇用保険財政の根本に関わる議論などには留意する必要性がある旨が記載されています。
 このような改革を進めるための仕組として1枚めくっていただいて、「アクション・プランの推進体制」という資料がついています。25日に地域主権戦略会議において提出された資料ですが、1番にあるように、地域主権戦略会議の下にアクション・プランの推進委員会を設けるということです。2番にあるように、委員長は片山内閣府特命担当大臣(地域主権推進)が委員長となって構成されます。その推進委員会のもとに、公共職業安定所ハローワークチームを設けて、そこで一体的な実施について検討し、フォローしていく状況になっています。現在までの状況は以上です。報告を終わらせていただきます。
○大橋分科会長 ありがとうございました。本件についてご質問、ご意見ありましたらお願いします。よろしいでしょうか。特にないようですので、本日の分科会は、これで終了させていただきます。
 本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規定第6条により、会長のほか2名の委員にご署名いただくことになっています。つきましては、労働者代表の澤田委員、使用者代表の坂倉委員にお願いします。よろしくお願いします。
どうも、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

職業安定局総務課総務係

: (TEL)03-5253-1111(内線5711)

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