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2014年2月3日 薬事・食品衛生審議会  医薬品第二部会 議事録

○日時

平成26年2月3日(月)15:00~



○場所

厚生労働省専用第23会議室


○出席者

出席委員(16名) 五十音順

○新 井 洋 由、 大槻  マミ太郎、  奥 田 真 弘、  川 崎 ナ ナ、
  菊 池    嘉、 清  田      浩、  関 水 和 久、  田 島 優 子、
  田 村 友 秀、 豊  見   雅 文、 中 島 恵 美、  濱 口    功、
  半 田    誠、 福  山       哲、 前 崎 繁 文、◎吉 田 茂 昭
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)

庵 原 俊 昭、 佐 藤 俊 哉、 鈴 木 邦 彦、 増 井   徹、
山 本 一 彦

行政機関出席者

今別府 敏 雄 (医薬食品局長)
成 田  昌 稔 (大臣官房審議官)
佐 藤  岳 幸 (審査管理課長)
森 口    裕 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
山 本 弘 史 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
山 田 雅 信 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
中 野   惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

 

○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、「薬事、食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催させていただきます。

 本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。本日の委員の出席については、庵原委員、佐藤委員、鈴木委員、増井委員、山本委員より、御欠席との御連絡を頂いております。また、豊見委員は遅れていらっしゃるとの御連絡を頂いております。現在のところ、当部会委員数21名のうち15名の委員方の御出席いただいており、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 それでは、吉田部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 では、本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目、競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。資料1~11をあらかじめお送りしています。なお、資料7-2については、議題を取り下げていただいたため欠番となっています。このほか、資料12「医薬品第二部会における薬事分科会における取り扱い、毒薬、劇薬の指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の要否について()」、資料13「ロンサーフ配合錠T15、同配合錠T20専門委員リスト」、資料14「競合品目、競合企業リスト」、資料15「佐藤委員からの御質問」を配布しています。

 本日の審議事項に関する資料14「競合品目、競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。

 資料14の1ページを御覧ください。ロンサーフ配合錠T15、同配合錠T20ですが、本品目は「治癒切除不能な進行、再発の結腸、直腸癌」を予定効能、効果としており、同様の効能、効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページを御覧ください。イクスタンジカプセル40mgですが、本品目は「去勢抵抗性前立腺癌」を予定効能、効果としており、同様の効能、効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページを御覧ください。Pralatrexateですが、本品目は「末梢性T細胞リンパ腫」を予定効能、効果としており、同様の効能、効果を予定している薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページを御覧ください。アビガン錠200mgですが、本品目は「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」を予定効能、効果としており、同様の効能、効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上でございます。

○吉田部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等ありますでしょうか。

 ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目、競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。なお、本日、退席委員はいらっしゃいません。

 議題1「ロンサーフ配合錠」、議決には参加しない委員は清田委員、田村委員です。議題2「イクスタンジカプセル」、議決には参加しない委員は大槻委員、前崎委員です。

議題3「Pralatrexate」、議決には参加しない委員は奥田委員、清田委員です。

議題4「アビガン錠」、議決には参加しない委員はなしです。以上です。

○吉田部会長 本日は審議事項が4議題、報告事項が7議題となっております。

 それでは、審議事項の議題1から機構からの説明をお願いします。

○機構 審議事項議題1、資料1-1及び1-2「医薬品ロンサーフ配合錠T15及び同配合錠T20の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明させていただきます。

 本剤は、トリフルリジンとチピラシル塩酸塩を2対1のモル比で含有する配合剤です。有効成分であるトリフルリジンは、主にDNAに取り込まれることにより腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。また、チピラシル塩酸塩は、トリフルリジンの代謝酵素であるチミジンホスホリラーゼを阻害することで、トリフルリジンの血漿中薬物濃度を維持し、腫瘍増殖抑制作用を増強させると考えられています。

 今般、本剤は「治癒切除不能な進行、再発の結腸、直腸癌」を効能、効果として承認申請されました。審査報告書の5ページに記載しているとおり、平成2510月時点において、本剤の承認を取得している国又は地域はありません。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料13に示すとおり8名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に本剤の承認審査の概要を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、本邦で実施された第II相試験成績が提出されました。有効性については、審査報告書46ページ下から10行目以降、及び71ページ本文上から11行目以降に示すとおり、2レジメン以上の化学療法歴を有するフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、イリノテカン塩酸塩及びオキサリプラチンに不応又は不耐な治癒切除不能又は再発の結腸、直腸癌患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討した国内第II相試験の結果、対照群として設定されたプラセボ群と比較して、本剤投与群で高い臨床的有用性を推測させる全生存期間の延長効果が認められたことから、本剤の有効性は期待できると判断いたしました。

 安全性については、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書49ページ上から3行目以降、及び72ページ下から13行目以降に示すとおり、骨髄抑制、感染症、下痢、悪心、嘔吐、食欲減退、末梢神経障害、心臓障害、イレウス、間質性肺疾患及び肝機能障害であると考えています。

 これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を有する医師により、有害事象の観察や管理、休薬、減量、投与中止等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られており、審査報告書59ページ上から16行目以降、及び75ページ本文上から5行目以降に示すとおり、製造販売後には本剤を使用した症例を対象として、目標症例数800例、観察期間を4コースとする調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しています。

 以上のような審査の結果、機構は標準的な治療が困難な患者に限定すれば、当該患者に対する治療選択肢として、本剤は臨床的に意義があると判断し、審査報告書56ページ上から20行目以降、及び72ページ下から3行目以降に示すとおり、「治癒切除不能な進行、再発の結腸、直腸癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能、効果として、審査報告書3ページ下から3行目以降に記載されているような承認条件を付した上で、本剤を承認することは可能と判断いたしました。

 本剤は新有効成分含有医薬品、及び新医療用配合剤であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断いたしました。また、原体のうちトリフルリジン及び製剤は、いずれも劇薬に該当し、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、資料15にございますとおり、事前に佐藤委員から御意見を頂きましたので、機構より回答させていただきます。まず、委員からの御意見を読み上げさせていただきます。

 申請者は当初、国内第I相試験を終了後に、第II相試験を実施せずに第III相試験を実施することについて機構と相談を行っています。機構は日本人での使用経験が少ないこと、検証的試験を実施するに足る情報に不足があることなどを理由に、有効性及び安全性を探索的に検討する第II相試験の実施を勧め、申請者は第II相試験を計画いたしました。この時点では、機構の意見、助言どおり、第III相試験を予定していたのではないかと思います。

 その後、TAS102-J003試験(II相試験)の結果が予想以上によかったため、この第II相試験の結果をもって申請することに至ったと推察され、申請者は機構と医薬品申請前相談を行いました。機構は第III相試験を速やかに実施し、早期に第III相試験の結果が得られることを前提として、承認申請を行うことは可能と判断しています。その後、申請者は2012年6月から国際共同第III相試験を開始いたしました。

 これまで本部会においても抗がん剤の審査で何度か議論がありましたが、米国同様にaccelerated approvalfull approvalの制度が我が国でもあれば、今回の試験結果をもって迅速承認とし、TPU-TAS-102-301試験の結果をもって本承認の可否を審査することができ、実際にそのようにすべきものと考えます。というのも、機構が第III相試験の速やかな実施を前提としていたこと、また申請者も「TPU-TAS-102-301試験の結果において、生存期間の延長に寄与しない懸念が認められた場合には、製造販売承認の取り下げに係る企業見解を提出する」としていることは、機構、申請者ともに本試験の結果のみでは、日本人患者に関する情報が不十分であることは認識しているものと考えられるからです。

 専門協議でも委員から意見があったように、有効性と安全性を探索的に検討する第II相試験の結果が予想外によかったからといって、その試験のみの結果から承認することについては疑問がありますし、TPU-TAS-102-301試験は既に患者登録を終了しており、2014年6月に主要アウトカムに関する情報収集終了、201412月に試験終了の予定となっています。もし国内第II相試験でみられた本剤による生存期間の延長効果が、TPU-TAS-102-301試験でも再現されるのであれば、中間解析で早期中止となることも十分考えられますから、現行の制度のもとでは、本剤の承認審査はTPU-TAS-102-301試験を臨床データパッケージに加えて実施すべきだと考えます。

 以上の御意見に対する機構の考えを御説明させていただきます。本剤の承認の可否については、平成1711月1日付け、薬食審査発第1101001号「「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂について」の別添のIIIの3)承認申請時の第III相試験成績の提出の項において、「第II相試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認められる場合には、第III相試験の結果を得る前に、承認申請し承認を得ることができる。その際は、承認後一定期間内に、第III相試験の結果により速やかに、当該抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性及び第II相試験成績に基づく承認の妥当性を検証しなければならない」との記載を踏まえた上で判断いたしました。

 なお、本ガイドラインのQ&AのQ5において、高い臨床性的有用性を推測させる相当の理由について、「奏効率、生存期間に関する代理指標、QOL等で、極めて高い効果が認められる場合や、極めて優れた安全性が認められる場合を指す」と説明されています。また、審査報告書46ページ下から10行目以降、及び71ページ本文上から11行目以降に示すとおり、国内第II相試験の結果、対照群として設定されたプラセボ群と比較して、本剤投与群で高い臨床的有用性を推測させる全生存期間の延長効果が認められたことから、本剤の有効性は期待できると判断いたしました。

 以上の検討の結果及び専門協議での議論も踏まえて、現在実施中の国際共同第III相試験の結果を得る前に本剤を承認することは、本剤の投与対象である標準的な治療が困難な患者に対する薬剤を、早期に医療現場に届けるという点においても意義があると考えたことから、本剤の承認は可能と判断いたしました。

 なお、国際共同第III相試験の成績については、中間解析が予定されていないため、中間解析結果に基づく早期有効中止は予定されていません。また、仮にこれから中間解析を計画して実施したとしても、その準備等に時間が掛かるため、国際共同第III相試験成績は得られる時期に大きな差異がないことを申請者に確認しています。

以上の内容について、事務局を通じて事前に佐藤委員に御説明させていただきました。佐藤委員からは、以上の状況であれば機構の説明を了承するが、中間解析が計画されなかった理由を申請者に確認の上、事後でもよいので報告してほしい旨の御回答を頂きました。

 中間解析が計画されなかった理由について申請者からは、国際共同第III相試験は予後不良の患者を対象としていることから、症例登録及びイベント集積が速やかに進むと予想したため、中間解析を予定しなかった旨が先ほど回答され、佐藤委員に御報告させていただきます。説明は以上になります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、委員の委員方からの御質問、御意見をお願いいたします。

○関水委員 この加えられている薬剤というのが2種あり、1つは酵素の阻害により、有効成分の体内動態を改善するものだとありますが、このデオキシトリフルオロメチルウリジンという化合物が、制癌効果の本体であるという可能性はないのでしょうか。

○機構 トリフルリジンの薬物代謝酵素を阻害すると考えられているのはチピラシル塩酸塩(以下、「TPI」)であり、TPI単独投与での臨床試験成績は得られていないのですが、審査報告書9ページの一番上の図にありますように、非臨床の薬理試験において、2つの成分を配合している本剤と、チピラシル塩酸塩のみ配合した試験を行っており、ヌードマウスでの試験結果ではありますが、この本剤投与群においては、溶媒群に対して有意な腫瘍増殖抑制作用が認められたのに対して、TPI投与では有意差が付かなかったという非臨床の成績があります。ただ、先ほども申しましたが、臨床試験成績では本剤の有効性は期待できる結果が得られています。

○関水委員 TPIには効果がなかったということですが、少し問題だと思うのですが、デオキシトリフルオロメチルウリジンによる制癌効果ではないということは、何かデータがあるかというのが私の質問です。

○機構 先ほどの審査報告書9ページに示すとおりです。

○関水委員 TPI自体では活性はないということですね。

○機構 はい。

○関水委員 TPIでない片方の方が活性物質であるという可能性が残るわけですね。

○機構 はい、そうですね。TPI単独では腫瘍増殖抑制作用が示していないというのが、この非臨床の結果から示唆されているところです。

 セルラインの試験結果としては7ページにあり、トリフルジン(以下、「FTD」)を単独で投与した場合に、腫瘍増殖抑制作用を有しているという試験結果もあります。以上より、TPI自体に腫瘍増殖抑制作用があるわけではないことが示唆されました。

○吉田部会長 よろしいですか。

○関水委員 添加して物質に制癌剤効果があることは考えられないことを示す証拠が何かあるのでしょうか。この物質が癌細胞のDNA合成を抑制することは私は十分考えられると思うので、これが活性の本体だということではないということは示しておく必要があると思うのですが。

○吉田部会長 活性がないというのはvitroのデータで、これ以外にデータはないのですね。

○関水委員 vitroのデータでも、デオキシトリフルオロメチルウリジンに活性がないということが示されているデータは、今の御説明の範囲からではないですね。

○機構 審査報告書9ページの所の上の図において、TPI単独投与では腫瘍の増殖抑制作用が示されていないので、このTPI単独に抗腫瘍作用があるとは考えにくいだろうと判断しております。

○関水委員 それはそうなのですが、その加わっているものが効果を示しているのではないかという可能性が、非常にこのグラフで明確ではないですか。失礼、私が勘違いしました。今のは撤回させてください。この15日間のデータで1つだけですね、統計学的有意な差があるのは。このデータからTPIは活性の本体ではないと、そのように判断するということですがそのようなことが学術的に認められるとは、私は思いません。

○機構 機構としては、非臨床の観点からは、この結果でTPIに腫瘍増殖抑制が示唆されないというところは判断できるものと考えております。

○吉田部会長 この有意差が付いているのは、溶媒群に対してだと。

○機構 そうです。溶媒群に対して本剤、つまりFTDとTPIを配合した製剤の投与においてのみ、腫瘍の増殖抑制作用が認められています。

○吉田部会長 ですからTPI、118とか、TPI、33.35とかというのは黒丸とか四角になっていますね。

○機構 はい、そうです。

○吉田部会長 増量していっても増殖抑制はなかった、単独では。

○機構 有意な差は認められなかったということです。

○吉田部会長 そういう説明なのでしょ。それだけでは不十分という御指摘ですか。

○関水委員 いいえ、この件了解致しました。

○吉田部会長 よろしいですか。ほかにありますでしょうか。

 佐藤委員のコメントにもあるのですが、この開発経緯が少し分かりにくいので説明していただきたいのです。普通、第II相試験というと奏効率でいくのですが、第II相試験でサバイバルをもってきたというのがよくわからない。恐らく機構と相談済みなのだろうと思いますが、サバイバルをエンドポイントにして、ランダマイズドフェーズII試験をやったというのは何か特別な理由があるのですか。

○機構 今回の国内第II相試験に先立って実施された第I相試験においては、奏効が少なかったので、そういった点も加味して主要評価項目を生存期間と設定したのではないかと考えています。

○吉田部会長 何が認められなかった。第I相試験で。

○機構 第I相試験での奏効率が低かったということです。

○吉田部会長 奏効率が低かったと。

○機構 はい。

○吉田部会長 低かったので、もし有効であれば生存で見られるかなということで、ランダマイズドフェーズIIをやった。やってみたらかなり大きな差が出たのですが、このような結果が出てしまうと、第III相試験に進めなくなります。なぜならば第III相試をやろうとしても、患者さんにプラセボ群に入ってくださいということを言いにくくなるからです。III解説にも書いてありますが、完全にきちんとしたデータではないにしろ、かなりソリッドなデータが出てきますので、先の展開が難しくなってしまいます。ですから、こういうことをやるのだったら、第II相試験を飛ばして第III相試験にいきなりいった方がすっきりするかもしれません。

 私見ですが、結論これからこういう類の試験、例えばファーアドバンストステージで、しかもフォースラインとか、サードラインとかの患者さんに対してなら、生存で有効性を見ようという手法もある程度いけるかもしれません。佐藤委員がいるといいのですが、危険率をどのぐらい見るか、どのくらい幅を緩めにするかが問題かもしれませんが、第III相試験の形にしてくれた方が、白黒はっきり付けやすいと思うのですが、いかがでしょうか。

○機構 御指摘ありがとうございます。経緯については、今、御説明させていただきましたが、試験開始前の治験相談では奏効が見づらいことで、タイム、トゥ、イベントを指標とした探索試験を実施することについて議論したところです。第II相試験をやらないで第III相試験という話になった場合には、本剤の有効性がまだ探索できていない段階で、大規模な試験に入っていくことになりますので、そういうことについて機構としては、助言としては適切ではないと判断しています。

○吉田部会長 言っている意味も分かります。この生存率の差がぎりぎりぐらいで「有意差が分からないので、もう少し数を増やして」ということだったらよかったのですが、これ程大きく開いてしまうと、この先に行けなくなってしまいます。確かにフェーズIだけで、いきなり第III相試験にいくというのは倫理的にも厳しい部分はあるのかもしれないのだけれども、先の治療法がもうないといった場合には、効くか効かないか分からないことを承諾して入ってくれる患者さんはかなりいると思うし、それはそれで試験そのものもある程度成り立つとは思います。今後さらに新しいメカニズムの薬剤が数多く出てくるようになってくると、恐らくいわゆる今までのフェーズI、フェーズII、フェーズIIIみたいな順序にいかない場合も、少なからず出てくるような気がするのですが。

○審査第五部長 委員が御指摘のように、確かに今回のランダム化比較第II相試験については、プラセボに対して、非常に大きな全存在期間の延長が認められたわけですが、検証と探索の部分においては、探索なしで検証はなかなか難しいものもあります。最近は様々なシームレスなデザインで、第II相試験と第III相試験を連結するとか、そういったものも我々の相談にきている事例もあります。また新しい臨床評価法も含めて、今後検討させていただきたいと思っています。

○吉田部会長 是非お願いします。田村委員、臨床試験のやり方について何かコメントありますか。

○田村委員 第I相試験の時点でよほどプロミシングの結果で企業も腹をくくれるのでなければ、なかなか直接第III相試験にはいけないと思います。実施にここでは第III相に進みきれずランダム化第II相試験で手応えをみることにした。そうしたらとても大きな生存の差がでてしまった。もう承認してもらうしかないのでは。いずれ国際第III相試験の結果はでますし。

○吉田部会長 なるほど。

○田村委員 当初から有用性がかなり期待されるのであれば、先ほどの第II/III相試験デザインとするのは一つの方法ですね。

○吉田部会長 IIのデータで、中間解析をやってよさそうだったらIIIにいくと。試験に参加している研究者には結果を公表せず、データセンターでずっと追っていくというのは確かに現状では一番いいですね。ほかにありますでしょうか。それから国際治験はいつ終わるのですか。

○機構 第III相試験の総括報告書が完成するのが、本年の第3クォーターか、第4クォーター頃と聞いております。

○吉田部会長 9月か、12月か。

○機構 大体、秋頃です。

○吉田部会長 ということは承認して、秋頃になって追認されれば様々な承認条件とかがまた変わるということになりますが、もしネガティブが出たらどうなるのですか。

○機構 審査報告書72ページを御覧いただければと思います。ご指摘の点については、申請者に見解を伺っております。72ページの中ほどですが、申請者は現在実施中の国際共同第III相試験の結果において、生存期間の延長に寄与しない懸念が認められた場合には、製造販売承認の取り下げに係る企業見解を提出すると申しております。

○吉田部会長 ということを含めて、その承認条件に幾つか書いてあるのですか。

○機構 はい、そうです。国際共同第III相試験の試験成績が得られた後に、速やかにその結果を提出していただくという承認条件を今回付けさせていただいて、その結果を踏まえて、その後、適切に対応してまいりたいと考えております。

○吉田部会長 ということだそうです。ほかに御意見ありますでしょうか。特段、コメントありませんか。

 では、議論も出尽くしたようですので、議決に入りたいと思います。なお、清田委員、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加は御遠慮いただくことといたします。お諮りいたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 異議がないようですので、承認を可とし薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは、議題2に移ります。機構から概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品イクスタンジカプセル40mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明させていただきます。

 本剤の有効成分であるエンザルタミドは、アンドロゲンのアンドロゲン受容体への結合を競合的に阻害し、転写因子であるアンドロゲン受容体の核内移行及びDNA上の転写因子結合領域との結合を阻害することにより、アンドロゲン受容体を介したシグナル伝達を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤です。

 今般、本剤は「去勢抵抗性前立腺癌」にかかる効能、効果で承認申請されました。本剤は審査報告書の3ページに記載していますように、平成2510月時点において、去勢抵抗性前立腺癌に関する適応にて、35の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議に参加していただいた専門委員は、資料13に記載の7名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に承認審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では主な臨床試験成績としては、海外で実施された第III相試験であるCRPC2試験と、本邦で実施された第I/II相試験が提出されました。有効性については、審査報告書50ページの上から14行目以降、及び69ページの上から13行目以降に示しますように、2レジメン以内で、かつ少なくとも1つはドセタキセル水和物(以下、「ドセタキセル」)による化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺癌患者における本剤の有効性及び安全性を検討したCRPC2試験の結果、対照群とされたプラセボ群と比較して、本剤群で全生存期間の優越性が検証されたことから、当該患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書51ページ本文の下から10行目以降、及び69ページの下から19行目以降に示しますように、痙攣、高血圧及び心電図QT/QTc延長が認められており、注意喚起が必要と考えております。

 これらの有害事象については、癌薬物療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、対応可能と判断いたしました。ただし、本剤の日本人における検討症例は限られており、審査報告書の58ページ下から18行目以降、及び70ページの下から6行目以降に示しますように、製造販売後には目標症例数450例、観察期間1年の使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。

 以上のような審査の結果、機構は「去勢抵抗性前立腺癌」を効能、効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、資料15にありますとおり、事前に佐藤委員から御意見を頂きましたので、機構より回答させていただきます。まず、委員からの御意見を読み上げさせていただきます。

 国内第I/II相試験の計画の詳細は分かりませんが、審査報告書47ページの最後に、「本試験において事前に設定された閾値奏効率は5%とされていた」と書かれています。これを通常の第II相試験での閾値奏効率だと考えると、国内第I/II試験の奏効率の90%信頼下限が5%を上回っていないと「奏効率に関して本薬の効果あり」と判断できないはずですが、審査報告書48ページの表では「RECIST判定委員会及び治験責任医師評価」「治験責任医師評価」ともに90%信頼下限は5%を下回っており、本剤の効果があるとは言えない結果となっています。

 審査報告書51ページの「3)日本人患者における有効性について」では、機構は「CL-0111試験において本薬の一定の薬効(腫瘍縮小及びPSA奏効)は認められている」と考えていますが、事前に設定した基準をクリアしていないので、腫瘍縮小に関してそのような判断はできないと思います。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。したがって、日本人におけるドセタキセルによる化学療法歴を有する去勢抵抗性前立腺癌患者に対する本剤の有効性は、国内第I/II相試験では示されていないと考えます。

 以上の御意見に対する、機構の考えを御説明させていただきます。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。また、一般に抗悪性腫瘍剤の開発における日本人の有効性評価につきましては、限られた患者数での探索的な検討にとどまることが多いことから、専門家の御意見も参考にして総合的に検討させていただいております。

 佐藤委員の御指摘のとおり、国内第I/II相試験のRECIST奏効率は、事前に設定した基準を満たしていない結果ではありますが、先ほど御説明させていただいた機構の考え方も踏まえまして、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□し、日本人患者に対しても本剤の有効性は期待できると総合的に判断させていただいております。なお、前立腺癌に対する探索的な有効性評価において、PSA奏効を指標とすることにつきましては、専門協議において専門家の意見も確認しましたが、支持されております。

 以上の内容について、事務局を通じて事前に佐藤委員に御説明させていただいた結果、機構の説明を了承するが、添付文書の臨床成績の項に、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、国内第I/II相試験におけるRECIST奏効率の90%信頼下限が、事前に設定された閾値奏効率である5%を下回った旨を記載するよう御意見を頂きましたので、申請者に対応を指示することとしております。

 また、事前に川崎委員から、審査報告書4ページ15行目、及び5ページ11行目の記載について、CQAを特定し、DoEを実施するステップなので、「リスク評価」ではなく、「リスクアセスメント」という表現が適切ではないかという趣旨の御意見を頂きました。御意見を踏まえ、審査報告書を修正させていただきます。御指摘どうもありがとうございました。説明は以上になります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の委員方からの御質問、御意見を頂きますが、川崎委員、よろしいですか。

 佐藤委員の件ですが、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。清田委員、いかがですか。

○清田委員 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

○吉田部会長 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。あとほかに、有用性とか様々臨床的に、清田委員、コメントはございますか。

○清田委員 もう既に海外で使われている有望な薬剤ですので、早く日本でも使われることが望まれています。特に問題はないと思います。

○吉田部会長 この薬は、痙攣とか有害事象が普通の化学療法と違うパターンで出てくるのとか、QTが延長するとか様々通常とは違うような有害事象の出方をしているのですが、恐らくこの薬は泌尿器科の先生方は使えますね。その化学療法に慣れたというような意味でいうと、そうではない方も使う可能性がありますね、いかがですか。

○清田委員 まず、きちんとアナウンスしていただいて、比較的慣れた方から使われるのではないかと思うのです。この有害事象を御説明になれば。それでその後、果たして本当にそうなのかどうか、というような流れになると思います。

○吉田部会長 その辺の市販後の扱いはどうなっているのですか。

○機構 御指摘の痙攣につきましては、専門協議でも注意すべきという御指摘がありまして、医師向け資材、それから患者向け資材というところで、痙攣に特化した形での資材の作成を申請者に求めまして、注意喚起の徹底を図ってまいりたいと考えています。

○吉田部会長 市販後に全国一斉に販売するのか、ある程度拠点的な病院からやっていくのかは、申請者は何か言っていますか。

○機構 本剤に限っての話ではありませんけれども、市販直後調査の制度を利用しまして、申請者には今日御指摘があった点についてお伝えし、慎重な使用の徹底を促してまいりたいと思っております。

○吉田部会長 取扱いを注意する説明の書類とか、絵とか何かありますね。

○機構 資材の中味につきましても、適切なものになるように対応してまいりたいと思います。

○吉田部会長 それがあれば大丈夫ですね。

○清田委員 結局、ドセが駄目だという方が対象になってまいりますので、現実的には割と限定された病院から始まるというように理解してよろしいかと思います。

○吉田部会長 そうですね。ほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。なお、大槻委員と前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題3に移ります。事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題3、資料3「pralatrexateを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」機構からの評価報告書に従って事務局より御説明いたします。「評価報告書」のタブをお開きください。

 申請者はムンディファーマ株式会社、予定される効能、効果は「末梢性T細胞リンパ腫」となります。希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明いたします。

 「対象患者数」については、厚生労働省の平成23年患者調査及び文献報告によると、本邦における「末梢性T細胞リンパ腫」の総患者数は約1万5,000人と推計されることから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。

 「医療上の必要性」については、末梢性T細胞リンパ腫に対する治療法として、シクロホスファミド水和物等の複数の薬剤を併用する、いわゆるCHOP療法を中心とした治療等が行われておりますが、海外を含めて確立された標準的な治療法はなく、治療選択肢が極めて限られていることから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 「開発の可能性」については、米国において「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能、効果として迅速承認されており、本邦においても現在、第I/II相試験が実施されていることなどから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。

 以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 対象患者数もクリアしていますし、NCCNでも新たな治療法の開発が望まれているというコメントが出ているということ。単剤での有効性も示されていて、更に海外の第III相試験が実施中であるということですので、開発の可能性も高いということでよろしいですね。3条件をクリアしていますので、議論の余地がないと思いますので、議論を省略して採決に行きます。なお奥田委員と清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題4に移ります。議題4について機構からの概要説明をお願いいたします。

○機構 議題4、資料11「医薬品アビガン錠200mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より御説明いたします。

 アビガン錠200mg(以下、「本剤」)の有効成分であるファビピラビル(以下、「本薬」)は、富山化学工業株式会社により創製された抗インフルエンザウイルス薬です。本薬は細胞内酵素により、本薬のリボシル三リン酸体に代謝され、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することで、インフルエンザウイルスの増殖を阻止することとされています。

 本剤は既承認の抗インフルエンザウイルス薬とは異なる作用機序を有し、in vitroでヒト由来のA、B及びC型全ての型、亜型のインフルエンザウイルスに対して効果を示し、トリ及びブタ由来を含めた各種の株に対して幅広い抗ウイルス活性を示すことが確認されています。また、in vitroでアマンタジン、オセルタミビル、ザナミビル耐性インフルエンザウイルスに対しても抗ウイルス活用を示すことが確認されています。

 本剤については、A型又はB型インフルエンザウイルス感染症を対象に、日本、韓国及び台湾での国際共同第III相試験(312試験)が実施され、当初「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」を効能、効果として申請がなされました。なお、海外において本剤が承認されている国はございません。本申請の専門委員としては、資料13に記載されている9名の委員を指名しました。

 「審査の内容」について、申請時に提出された臨床試験成績をまず説明させていただきます。審査報告書132ページの表を御覧ください。国際共同第III相試験(312試験)においては、機構は申請者が設定した有効性解析対象について、有効性の主たる解析対象から除外された集団の詳細を確認した結果、除外された集団を含めて解析することが適切であると判断いたしました。以下、再解析後の有効性の主たる解析集団を機構FASとさせていただきます。機構FASにおける主要評価項目におけるインフルエンザ主要症状罹病期間のハザード比の95%信頼区間の下限は0.707であり、事前に設定された非劣性マージンである0.784を下回っていたことから、対照薬であるオセルタミビルリン酸塩に対する本剤の非劣性は検証できておらず、本剤の季節性のA型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対する有効性は示されていないと判断いたしました。

 次に「安全性」についてです。審査報告書138ページ以降を御覧ください。生殖発生毒性試験の結果より、ヒトで妊娠検査が陰性を示す妊娠初期に本薬を投与することにより、受精卵の発育遅延又は致死が引き起こされる可能性が示唆されております。また、胚、胎児試験を実施したラット、マウス、ウサギ及びサルの全ての動物種で催奇形性が認められていること。動物における催奇形性に関する無毒性量のばく露比は、申請時用法、用量におけるヒトのばく露比と比較して同程度又は下回っていることから、本剤投与時にはヒトにおいても催奇形性作用が強く懸念されます。また、申請効能、効果である「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」は、急性期の疾患であり、流行期には極めて多くの患者が罹患すること等を考慮すると、催奇形性リスクを回避するには、厳格な管理方策を実施する必要があると判断しました。

 しかし、季節性インフルエンザ流行期における妊娠への投与や、本剤投与後の妊娠を完全に防ぐことは困難であり、本剤投与後に妊娠に気付く又は妊娠する例が発見されることが想定されることから、催奇形性のリスクは本剤の安全性上極めて重大な懸念であると判断しました。

 以上から機構は、本剤の季節性のA型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対する有効性は示されておらず、本剤による催奇形性のリスクは安全性上極めて重大な懸念であることから、「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」の治療薬としては、本剤によるベネフィットがリスクを上回るとは認められないと判断し、申請時に提出されたデータでは、申請された効能、効果において承認することは不可能であると判断し、追加の臨床試験及び催奇形性に対する安全対策の検討を申請者に求めておりました。

 その後、季節性インフルエンザウイルス感染症患者を対象に実施された米国第II相試験(US204試験)の成績が得られました。審査報告書161ページ、米国第II相試験(US204試験)の項を御覧ください。当該試験においては、有効性の主要評価項目であるインフルエンザ主要症状罹病期間において、本剤群とプラセボ群の対比較を行いましたが、統計学的に有意な差は認められませんでした。

 本試験では、有効性が検証されなかったものの、当該試験の追加解析が行われ、本剤高用量群の投与2日目の最低血漿中濃度が20μg/mL以上の集団では、有効性が得られる可能性が示唆されたことから、米国においてMediVector社により、より高用量での有効性及び安全性を検討するため、米国第I/II相試験(US213試験)が実施されました。

 審査報告書162ページを御覧ください。米国第I/II相試験(US213試験)において、有効性の主要評価項目であるインフルエンザ主要症状罹病期間(中央値)については、本剤1,800mg/800mg(1日目は1回1,800mgを2回、2~5日目は1回800mgを1日2回投与)82.3時間、プラセボ群では97.3時間であり、対比較において統計学的に有意な差が認められました。なお、本剤2,400mg/600mg(1日目初回は2,400mg、2回目及び3回目は1回600mg、2~5日目は1回600mgを1日3回)とプラセボ群との対比較では、統計学的な有意な差は認められませんでしたが、その理由については明確になっておりません。

 米国第I/II相試験(US213試験)において、本剤の有効性が示唆される結果が得られたことから、引き続き有効性を検証する第III相試験が米国を中心に開始されています。また、日本においても追加の第I相試験が実施され、申請時よりも高い用量で有効性を検証する試験が検討されております。通常の審査においては、第III相試験で有効性の検証結果等が重要な評価資料となるため、本来であればその提出を待つところですが、新型インフルエンザを取り巻く最近の動向として、2013年3月に鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)のヒト感染例が初めて報告され、同ウイルスは既存のノイラニダーゼ阻害剤に対する感受性が低いとの報告もあるなど、パンデミックに対する危機管理は喫緊の対応を要する状況にあると考えられていることから、機構は厚生労働省と協議の上、本剤を「オセルタミビルリン酸塩やザナミビル水和物等の既存の抗インフルエンザウイルス薬に耐性を有し、かつ高病原性のインフルエンザウイルス感染症の蔓延に備える医薬品」として位置付けることで、現時点で得られている情報に基づき、本剤の承認の可能性を検討いたしました。

 審査報告書168ページを御覧ください。本剤の効能、効果については、既承認の抗インフルエンザウイルス薬と異なる作用機序を有しており、非臨床の検討のみではあるものの、鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及びA(H7N9)等に対する抗ウイルス作用が期待できることから、他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分な場合の新型又は再興型のインフルエンザウイルス感染症に限定し、流通を制限しつつ、本剤をいつでも使用可能な状況にしておくことには意義があると考え、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」とすることが適切であると判断いたしました。

 また、審査報告書165ページの下から8行目を御覧ください。本剤の用法、用量については、米国第I/II相試験(US213試験)において有効性が認められた用法、用量から、日本で追加実施された第I相試験結果を基に、日本人でも同様の血漿中濃度推移が得られる用法、用量を推定した結果、日本人の用法、用量として「1日目は1600mg、2~5日目までは600mgを1日2回経口投与する」と設定いたしました。

 なお、通常の季節性インフルエンザウイルス感染症に対する本剤の有効性は十分に示されていないこと、本剤は催奇形性等のリスクを有すること、海外で実施された臨床試験成績を中心に国内では検討されていない用法、用量が設定されていることを踏まえると、現段階で承認を考慮する場合には、審査報告書175ページに記載した承認条件を付与する必要があると考えております。

 承認条件の内容は順に、薬物動態試験の実施、有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験の実施、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されない厳格な流通管理の実施、本剤の使用に際して患者等に対し文書による説明と同意の取得の実施です。

 以上の経緯を踏まえ、記載のような効能、効果、用法、用量、承認条件において、本剤は承認する意義があるものと判断し、「医薬品第二部会」で御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。

 また、佐藤委員から事前にコメントを頂いております。

 非常に丁寧に、また慎重に審査がなされており感心いたしました。審査報告()での機構の結論、催奇形性に対する懸念及び頑健性の高い有効性が示されていないことから、「申請効能に対する本剤の承認は困難であると考える」ことに賛成します。

 一方、新型、再興型インフルエンザに対してですが、季節性インフルエンザで劇的な効果を示しているのであればともかく、オセルタミビルを対照薬とした国際共同第III相試験(312試験)では、機構の詳細な検討によりオセルタミビルに劣っているという結論ですし、追加提出された米国第I/II相試験(US213試験)では、1日2回投与群では、プラセボ群に対し、統計的に有意にインフルエンザ主要症状罹病期間が短縮していますが、血中濃度がより維持できるはずだと思うのですが、1日3回投与群ではプラセボとほとんど差がなく、なかなか解釈しにくい結果となっています。

 季節性インフルエンザに対してこの程度の有効性ですから、新型、再興型インフルエンザに効果があったとしても、オセルタミビルなどよりは劣ると考えることは自然だと思いますし、「他の抗インフルエンザ薬が無効又は効果不十分」である場合に限定したとしても、致命率の高い新型、再興型に対する本剤の有効性はどの程度あるか疑問に思います。

 新型、再興型インフルエンザに対する備えは重要ですが、通常の新医薬品の承認とは異なり、パンデミック対策としてのみ承認するのであれば、パンデミック時の本剤の有効性、及び本剤が備蓄されることにかかる費用対効果も考慮すべき問題だと思われますが、上記の理由から費用対効果がありそうだとは判断しにくいデータではないかと思います。

 以上の佐藤委員のコメントについては、審査管理課に確認の上、次のように回答させていただいております。

 頂いたコメントについて、審査報告書3ページで御説明しておりますとおり、現状、得られている臨床試験成績では、本剤の季節性のA型又はB型インフルエンザウイルス感染症に対する有効性はいまだ検証されたとはいえず、米国において臨床での有効性が示唆された段階にすぎないと考えております。

 一方、本剤は既承認の抗インフルエンザウイルス薬とは異なる作用機序を有しており、非臨床での検討のみではあるものの、鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)及びA(H7N9)等に対する抗ウイルス作用は期待できることから、最近のインフルエンザを取り巻く現状を踏まえると、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対して、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分であり、本剤の有効性が期待できる可能性のある場合に、本剤を使用可能な状況にしておくことは意義があると考えております。

 なお、承認条件において有効性の検証を行う追加の臨床試験の実施を求めており、引き続き本剤の有効性の確認について十分に検討していくよう、製造販売業者に対して求めることとしております。

 また、実際に国の新型インフルエンザ対策において、本剤の活用を検討する場合には、委員からの御指摘のとおり、費用対効果も十分に考慮した上で、かつパンデミック時に実際に使用するかどうかは効能、効果のただし書きのとおり、その際に得られているウイルスの既存の抗ウイルス薬への薬剤耐性の情報も考慮して、慎重に判断すべきと考えており、本剤が承認された場合には、本審査報告書も新型インフルエンザ対策の部局に提供の上、活用を慎重に検討するよう伝達いたします。

 以上の内容を佐藤委員に事前に御連絡させていただき、了承していただいております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 なかなか難しそうな薬ですけれども、委員の委員方からの御質問、御意見をお願いいたします。

○前崎委員 季節性のインフルエンザに使わないというのは確かにそれでいいと思うのですけれども、高病原性の鳥インフルエンザに効くという理論が少し分からないのです。例えば、新型インフルエンザとか鳥インフルエンザというのは、我々が抗体を持っていないので、それでいわゆる病原性が強くなるわけです。インフルエンザそのものはA型のインフルエンザなので、生物学的な増殖の過程とか、そういうものは季節性インフルエンザと全く変わらないわけです。どうしてこの薬が、季節性インフルエンザに効かないのに、そういう高病原性、あるいは新型のものに効くかという根拠が今一分からないのですけれども、そこをしっかり説明していただけますか。

○機構 最初の312試験などで用いられた季節性インフルエンザに対する臨床試験については、設定された用量が現在から考えてみるとやや低かったと考察されております。トラフ値で20μg/mL以上を確保することが1つの条件ではないかというのが提案され、それで高用量の試験が現在米国で行われているということで、それでプラセボに対する有効性が見られたというデータが出てきております。

 高病原性についてですが、in vitroの部分、それからマウスに高病原性の、今まで得られているH5N1などを感染させて、それで本剤を投与した実験がなされております。これに対してはタミフル等を投与したものと比較して、本剤ついてはタミフル耐性を示すウイルス群に対しても。

○吉田部会長 質問の意味はそういうことではないと思いますが。

○前崎委員 vitroのデータは季節性インフルエンザにもある程度効いているわけですね。それで、これだけ臨床試験をして差があるとは言っていますけれども、いわゆるオセルタミビルとか、他の抗インフルエンザに比べるとほとんど差がないというデータです。その結果を持ってvitroで効いているから、高病原性インフルエンザにも同様に効くという理論は理解できません。その理論では恐らく有効なはずなのに、用量が少しそれぐらい増量したぐらいで劇的に差が出るというのは確信が持てないのですが、いかがでしょうか。

○吉田部会長 そうですね。全てのタイピングでもって、vitroでは有効性があったのだけれども、それだったら普通のインフルエンザだってもっと効いてもいいではないのか。普通のインフルエンザに効かないのだけれども、鳥インフルエンザだけ効くという根拠がどこにあるかということだと思いますが。

○機構 御指摘の部分はまだ明確にはなっていないと考えております。その部分はまた検討が必要になってくるのだと思います。

○前崎委員 危機管理の意味で、パンデミック時に備えたいということと思いますが、パンデミック時にもしこれを使うとなると、現場はかなり混乱すると考えます。そのため慎重を期さないと、社会的に大きな問題になると思います。例えば、前回の2009年の新型インフルエンザのパンデミック時には、妊婦さんは重症化のリスクファクターでした。実際に新型インフルエンザが起こって、妊婦さんに処方する際に「子供はどうでもいいから自分の命を助けてほしい。この薬を投与してほしい」と言われたときに、それは倫理的に許されるかどうかという問題もあります。添付文書上はやってはいけない行為になります。

 そういうことも含めて、新型インフルエンザ対策委員会などでも協議されていると思いますが、薬の面から見て、そういうことが本当に倫理的に許されるのかどうかというのは十分考えておかないといけないと思いますその辺はかなり慎重に考えておかないと、大きな社会問題になるのではないかという危惧があるのですが、いかがでしょうか。

○事務局 委員のご指摘のこの薬の位置付けですが、通常の新型又は再興型インフルエンザウイルスが発生しただけでは、本剤を使うものではありません。本剤は、効能、効果にただし書きをしておりますとおり、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタなどの既存の薬が効果がない、そういう場合にのみ使うという位置付けにしております。

 実際に万が一そういうウイルスが蔓延した場合に、どういう患者さんに投与するかについては、新型インフルエンザ等の対策の関係部局において検討がなされるものと考えておりますが、具体的には新型インフルエンザ等対策政府行動計画に基づき、新型インフルエンザ等に関する様々な情報を国内外から系統的に収集、分析することとされており、新型インフルエンザが発生した場合においては、厚生労働省においてそれらの情報に基づき、アビガン錠の使用の必要性や、その投与対象も含めて検討がなされるものと考えております。

 その検討結果に基づいて、アビガン錠については製品の出荷自粛要請の解除を行うとともに、製造販売業者において適切な投与対象の考え方、及び安全対策の徹底のために必要な情報の周知に対応するように求め、また国においても情報の適切な周知等に協力していきたいと考えております。

○吉田部会長 いかがですか。

○前崎委員 それは、私も佐藤委員と同じ意見で、今ここで承認しなくてはいけないのかという疑問があるのです。もう少しきちんと、論点を整備した後でもいいのかと思います。これは薬だけの問題ではない要素がかなりあるので危惧しております。佐藤委員と同じように、例えばパンデミックが起こっても、それが耐性であるかどうか、あるいはタミフルが効かないかどうかというのは、ある一定の期間経過しないと分かりませんし、ある程度の時間的猶予もあると思いますので、緊急性が現時点であるとは考えません。

○審査管理課長 一方で先ほど前崎委員の方から、いつぐらいにパンデミックが起きるか分からないというお話がありました。10年先かどうかも分からない、1年以内かも分からないところがあります。昨今は中国等の状況において、様々新たな事象が発生しているところから、まずその薬の承認をしておく。流通させるかどうかということと、誰に投与させるかというのは厳格にするということです。薬の承認をすべきかどうかというところで、準備をしておくというのも、また一方で非常に意義があるのではないかと考えて、今回この部会にお諮りしたということです。

○吉田部会長 それはわかりますが、本薬の場合、有効性もさることながら有害事象にもかなり厳しいものがありますし、使うか使わないかの判断はドクターではなくて、多分行政がするのだろうと思うのです。そうすると、実際にどういうシミュレーションが存在していて、どういう場合はどう対応するというようなマニュアルまできちんとしておかないと、なかなか簡単に決められないということもあろうかと思います。これで良いのか、悪いのかというところを含めて、もう1回皆さんの御意見をお伺いしてみたいような気もします。

 私たちの立場としては、色々と問題があるにしても効く可能性がどれぐらいあるかどうかということについては、少なくとも専門的な立場からコメントしておくべきだろうと思います。先ほど前崎委員が言われたように、vitroでは効くはずなのに、臨床では普通のインフルエンザにも余り効いていないの、なのに、どうして鳥インフルエンザだけ効くかもしれないと思うかと言われれば、確かにこれはきついです。今、アメリカで様々なデータを見ているようですけれども、これは今後どういう展開になりそうなのですか。

○機構 米国では、現在第III相試験が行われていて、これが大体年ぐらいで行われて、それで結果を得た後に承認申請ということになります。

○吉田部会長 あと年もかかるのですか。

○機構 はい。

○吉田部会長 例えば、□□□□とかもしないのですか。

○機構 そうです。□□□□は行わないように聞いております。

○吉田部会長 そうすると、我々の手持ちのデータとしてはvitroのデータしかないということになってしまうのですか。

○豊見委員 この薬を、例えば使用するという決断が行政で下されたときに、メーカーとしては1か月で何人分ぐらい用意できるとか、この製造工程とか。それで許可してもできなかったら意味がないわけです。そうかといって、あらかじめ用意しておくものでも聞いているとなさそうだし、その辺のシミュレーションはどのように考えておられますか。

○事務局 製造業者の方でどれだけ生産ラインを確保できるかということですが、1か月当たり□□□人規模は製造する能力はあると聴取しております。

○吉田部会長 何人分ぐらいになるのですか。

○事務局 1か月当たり□□□人分と。口頭での聴取ですので正確な数字は後日でないと申し上げられませんけれども。

○審査管理課長 追加ですが、一応日本国内での製造施設は既に確保してあると聞いております。

○吉田部会長 備蓄分はどれぐらいを予定しているのですか。

○事務局 まだ、備蓄に関しては何の検討もなされておりませんので、何も申し上げることはございません。

○吉田部会長 そうすると、これがもし承認されたら備蓄計画に取り掛かるということになるのですか。

○事務局 備蓄のことに関しては他部局の施策ですので、何もそういった具体的な検討は聞いておりません。

○関水委員 これは、メカニズムが新しいということなのです。そういう観点から応援させていただくと、新しいメカニズムのものについてはそれだけで、評価ができると思うのです。私から別に質問させていただきたいのは、本剤のRNAポリメラーゼが作用点であるために、他の抗ウイルス薬に耐性なものについてこれが効くという、そういうエビデンスはないのですか。

○事務局 審査報告書16ページを御覧ください。非臨床試験ではありますが、in vitroで新型インフルエンザウイルスA(H1N1)及びA(H5N1)を含むA型株に対する本薬の抗ウイルス活性が検討され、本薬の各ウイルス株に対するEC50は軒並み小さい値であり、新型インフルエンザウイルスが本薬に感受性であることが示されております。

 また、ウイルス感染動物を用いた実験では、ヒト由来オセルタミビル耐性A(H5N1)ウイルス感染マウスモデルに対して、本薬投与時に対照薬と比較して、投与21日後の生存割合について、統計学的に有意な差が認められたとの文献報告や、鳥インフルエンザウイルスA(H7N9)に対して、本薬投与時に対照薬と比較して有意な肺内ウイルス量の低下が示されたとの文献があります。

 本剤に関しては、これまでのノイラミニダーゼ阻害剤とは作用機序が異なりますので、インフルエンザ患者を対象とした、ヒトの患者を対象とした試験ではなかなか有効性が見えづらい点もあるかもしれませんが、本剤は通常は使う位置付けではありませんけれども、既存の抗ウイルス薬が無効な場合の最後の手段としての位置付けであれば、本剤を現時点で承認しておく価値はあるのではないかと考えております。

○新井部会長代理 新しいメカニズムということはいいのですけれども、いわゆる催奇形性を含めて生殖発生の毒性が、作用メカニズムディペンデントなのかどうか。要するにRNA。酵素活性して阻害することのディペンデンシーはどのぐらい分かっているのか。もしそれが根本的な原因だとすると、開発も含めて今後の方針点が変わってくるかと思うのです。

○機構 どのぐらい構造等にディペンデントなのかというところまでの検討は、なされていない状況です。

○吉田部会長 菊池委員、ウイルスは違いますけれども何かコメントを頂ければ。

○菊池委員 今、私が添付文書で見て医者が考えたときに、行政的な判断でなくて、普通の医者は効かないから使うという判断だと思うのです。例えば、1日目に効かなかったから、2日目から使い始めてしまう人が出てきてしまうかもしれない。本日の話だと、添付文書でウイルスに効いたかという判断は、行政側で流行したかどうかの評価をした後での判断だということであれば、本薬剤の場合に限ってはこの添付文書で言及している耐性ウイルス的な判断は行政が行うということをうたってしまった方が間違いがないと思うのです。今までに行政の判断が添付文書に反映されることはないと思うのですけれども。

○吉田部会長 そうなのです。

○菊池委員 そういうことですね。

○吉田部会長 完全にコントロール下に置いてしまうのです。

○菊池委員 ですから、この薬は通常の添付文書に書いてある適応条件とか、例えばMRSAの薬、これは効かないのだと医者が言っている意味と違います、という言い方をまずしなければいけないような気がしています。

 また、これはJP118試験の中では、1,600mg400 mgのAコースと、1,200 mg600 mgのBコースの2群間の試験でやっていて、最終的には保険の認可の方では1,600 mg600 mgという、AコースとBコースの中から都合の良いものを選択して合わせたもので認可するような形になっていますね。これは合わせ技になってしまっていますけれども、これもいいのですか。

○事務局 前半部分の特定に関して御説明させていただきます。流通管理の承認条件の関係ですので、審査報告書4ページ[承認条件]「3.流通管理の承認条件として、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されることのないように、厳格な流通管理及び十分な安全対策を実施すること」としております。この条件に基づき、本剤が承認される場合には、本剤の効能、効果で規定した「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」が蔓延している、又は蔓延するおそれがある際まで製品の出荷を差し控え、製造販売業者において、製品を適切に管理するべき旨指導することとしております。

 万が一、本剤を使用せざるを得ない状況になった場合には、国から「出荷自粛を解除する」という通知を出して、その際にはどういう患者に使うべきなのかという考え方も含めて適切に指導してまいりたいと考えております。

○菊池委員 言っている意味はすごく分かりました。そしたら、今言われた国が予め制限をかけていて、しかるべき時に解除して使用を許可する旨を添付文書に書いてしまった方がいいと思うのです。

○事務局 はい、検討させていただきます。

○菊池委員 ここに書いてあるのは、新型又は再興インフルエンザが出て、それで従来の薬が不十分だということで、医者はこの効能、効果でものを考えていきますから、これだけだったら製薬会社に「ください」と言って、「なんでくれないんだ」ということになってしまうと思うのです。そういうことも考えると、やはり、医薬品第二部会でそれだけの議論があることを普通の人は分かりませんから、聞いていてよく分かりましたので、そこのところは現場で迷わないようにした方がいいように思いました。

○吉田部会長 添付文書の書き方が一般の医薬品とは違うので、そこのところは再検討する必要があると。

○菊池委員 ええ、行政的な判断が入っているかどうかです。

○吉田部会長 濱口委員、臨床と前臨床とのギャップも含めてコメントを頂けますか。

○濱口委員 臨床試験のデータに基づいて判断されるべきだろうと思います。ただ先ほどありましたように、かなり行政的な判断がこの中に入ってくるのだろうと思います。先ほど言葉で説明された幾つかのステップを踏んでから使うということがされるのであれば、全く準備をしておかないよりも、しておいた方が良いのかと思います。

○吉田部会長 やらないよりは、しておいた方がいいと。

○濱口委員 ええ。その際に希望としては、ここの部会というよりも、インフルエンザ対策の部会の中で、薬をどのようにして使うのかという、そのガイドラインまでいかないにしても、手順をある程度決めておいて、その中で的確に使っていく。コントロールすべきところはコントロールするのだということを、どこかに残しておく必要があるのではないかと思います。

○吉田部会長 関水委員もそういう意味で、何もないよりは持っていた方がいいかもしれないという御意見でしたけれども、今のお話だと本当に作戦要務令というか、誰が号令して、誰が使うようにして、もし投与するとなると保健所なのか病院なのか、診療所はやらないのかとか、様々具体的な状況設定を明確に出しておいた方がいいと思うのです。その辺は何か考えておられますか。とにかくパンデミックになってくると、マスコミは騒ぐし、本人は不安がるし、サーズのすごいのを一応想定しておけばいいわけでしょうから、そうすると他人よりも自分というように多分殺気立っている状態だと思うのです。その辺も含めて、Standard Operating Procedureのようなものをきちんと作っておいてもらえるといいと思うのですが。

○事務局 本剤に関しては、本剤が必要となるときまで不適切に使用されることのないよう、先ほど申し上げましたとおり出荷を差し控えるように事業者を指導する予定としております。また、本剤を使用するに当たっての安全面での検討ですが、本日皆様の机上にアビガン錠200mgファビピラビルリスク管理対策関連資料()をお配りしておりますが、こちらのような同意書、また説明文書等を用い、万が一本剤を使用せざるを得ないときには、安全性の確保を徹底するように検討しております。

 また、本剤を投与すべきかどうか、使用すべきかという判断に関しては、政府の新型インフルエンザ対策本部、又はその具体的な内容については厚生労働省で検討がなされますが、その関係部局に対してきちんと情報提供を行って、慎重な判断を求めていきたいと思います。

○吉田部会長 そういう危機管理の一環として先ほどあったように、ないよりは持っていた方が何か良いことがあるかもしれない。使わないかもしれないし、役に立たないこともあり得るけれども、という条件だと思うのです。そういう危機管理の一環として、いわゆる管理運営を保証するためという条件を付けさせていただいてなら、よろしいですね。まだ何かありますか。

○菊池委員 HIVをやっていてもそうですが、新しい薬は有り難いわけです。そういうことであればもちろんいいのですけれども、これはJP118の、先ほど言った2番目の質問ですけれども、1,600mg600mgを認証するのであれば、この薬剤を使用することになる前までに、これである程度の血中濃度がきちんと維持されていくという検討をされた方がいいと思います。これで何百万人の人に本当に投与するようになったとしたら、その基礎実験もしていないのにということになった場合に、結局この医薬品第二部会では薬学というか、医学的なことで、それが正しいかどうかの判断をしているわけであって、行政的なことの意見を私たちは求められているわけではないと思うのです。

○吉田部会長 ないです。

○菊池委員 ですから、今回科学的な根拠を欠いているあたりを皆さんが否としている部分はそういう部分であって、その辺はどうなっているのでしょうか。

○事務局 審査報告書の4ページを御覧ください。承認条件の1つ目です。承認用法、用量における薬物動態試験を実施し、終了後速やかに試験成績及び解析結果を提出することというのを付けております。今回、承認しようとしている用法、用量に関しても、きちんと薬物動態試験での裏付けを取るように指示をしたいと考えております。

 また2.ですが、通常のインフルエンザウイルス感染症を対象に、本剤の有効性の検証及び安全性の確認を目的とした臨床試験を実施し、今はなかなか十分でない有効性のエビデンスに関しても、今後きちんと収集していくように事業者を指導してまいりたいと考えております。

○菊池委員 1,600mg600mgの投与量での検討は実際には行われていないので、はやるまでに追加試験を後追いでいいのでやっておいた方がいいと思います。

○吉田部会長 解析ですね。

○菊池委員 後追いでいいですからやっておいて、ある程度それで効くのだというか、それをやっておかないと、私たちは実際にやっていないことで認可しているということでは少し引け目があるわけです。アメリカの用量でもないし、日本独特のもので、それもかつAとBの試験のアームが混じってしまっています。そこはやっていないですね、どこかに書いてありますか。

○機構 こちらの承認条件の試験については、速やかにさせるように考えております。

○吉田部会長 そうではなくて、データを再解析してみたらどうですか、合わせ技のようですが。

○菊池委員 ですから、JP118の中は1,600mg400mgですね。あとは1200mg600mgのアームでやっていますね。それで、最終的には1,600mg600mgでいくというふうにしているではないですか。それは科学的にというか、臨床的な根拠がないですね。実際に投与していませんよね。それで認可していること自体にすごく違和感があるのです。血中濃度がそれなりに上がっているからというのは、理屈でそうかもしれないのですけれども、それは本当に大丈夫なのですかと思っているわけです。

○機構 この部分については、実際の血中濃度の推移について、薬物動態パラメーターを検討し、それでシミュレートとして、それでその最低の部分が20μg/mLを超えるということをシミュレーション上で確認したものです。委員御指摘のとおり、実際にヒトへ投与されたものではありませんので、その部分については我々も懸念していて、ヒトで検証したいということを考えております。

○吉田部会長 データの検証も含めてよろしくお願いいたします。それとここには書いてないのだけれども、管理を厳重にするとか、適切と判断される症例のみを対象にということで書いてありますけれども、それよりも、わが国のインフルエンザ危機管理上の中で使われるとか、先ほど言った、使用するかしないかの判断は銘々の医師が決めるのではないとか、そういう箍を一発はめておく必要はあるのではないかと思うのです。承認条件ではなくて、注意でも何でもいいのですけれども、そういう薬であるということを明確にしていただくことにすれば、そう皆さんも不安にならないのではないかと思います。

○豊見委員 菊池委員のお話を聞いても、4ページ[承認条件].に記載があるように、これからすぐにその試験をやるのですね。それでしたら、なぜこれが今月、今の段階で出てきたのかが理解できないのです。

○吉田部会長 そうなのです。

○豊見委員 もう少しそれをやってから来月でも、ちょうど季節でもありますし、出きてもいいのではないかと思ったりします。

○吉田部会長 ただ、いつになったらというめどが実は立っていないのです。そうすると、それまでの間に何か起こったらどうするのかという話になってしまいます。12か月後とか、3か月後とか見えるのであれば、それはそれで様々考えることはできるかもしれないのですが、その辺りはどんな感じなのでしょうか。

○審査管理課長 申請者の方も様々と時期が、どういう計画でやるのかを等を含めて未定です。この動態試験だけでいいのか、そもそもそれ以上の本剤の有効性の検証データ等を合わせて出す必要があるのか。若干時間がかかることもあり、今回このまとまった段階で私どもも昨今の様々な状況を踏まえ、今回この部会に上程させていただいたのが実情です。

○菊池委員 こだわって申し訳ないのですけれども、166ページにあるように、このグラフから1,600mg600mgにするというように考えたわけですから、それはそれとして今回は了承してもいいです。普通の試験は、プロトコールがちゃんとあって、それが実施されて結果で認可されて保険収載されていくわけです。今回はそれがないので、危機管理上必要であるということであれば、取りあえずこれで了承しますけれども、必ずこの1,600mg600mgでいくのだったら、それのフェーズIIIぐらいはやっていただかないと、そういう所ではないかと私は少なくとも思っているのです。危機管理の所ではなくて、薬として認可するかどうかがここの委員会の目的なのですから、そこがないこと自体が少ししっくりしないところなのです。

○吉田部会長 効かない量で認可しても仕方がないのではないかということですか。

○菊池委員 はい。実際に検討されていない用量で保険収載しようとしているので、そこはものすごい合わせ技ですね。Aのアームの良い方と、Bのアームの良い方を取って、これでいこうということをやっていますから、これはここの委員会ではアウトだと思っています。ただし、本日の議論で承認条件が今までの薬と違って、承認条件に記載がある1~4まで重いこともあるので、その政府を敵に回す気にはもちろんなりませんし、そういうことだと思うのです。

○事務局 委員がおっしゃいましたとおり、今、用法、用量として承認しようとしているものは、実際に患者さんに投与されたものではありませんので、推定です。正に委員のおっしゃっている御懸念がありますので、承認後にはこの薬物動態試験でも、その1,600600をきちんと検証してもらいますし、また有効性、安全性の臨床試験でもきちんと1,600600の投与を日本人で行って、その有効性を確認するということをさせる予定です。お答えになりましたでしょうか。

○菊池委員 最後に言わせていただきますけれども、それをはやる前にやってくださいということです。

○事務局 速やかに行うよう、申請者へ伝達いたします。

○菊池委員 それだけやらないと、私たちはそれを認められないと。危機管理的なことがあるから、今回はそれで了承しますけれども、今までそういうことで、他のプロトコールでやっていないことを認証している薬は、私が参加しているときには多分なかったと思うので、そこの居心地が悪いということです。

○吉田部会長 効かない量で認可していたとなれば、後で笑い話になりますし。ですから、それは承認後にある程度そのデータを示してもらうなりして頂くとして、どっちにしても効く量を少し探索的に調べていく作業は必要なのだろうと思うのです。ということで、この成績だけでは用法、用量に関しても不完全ではないかという話にもなりますが、危機管理は分かるので早急に至適な投与法の解析をお願いしたいということですね。

 保留という手も考えていたのですけれども、いつまで保留したらデータが出るか分からないのですね。そうすると、少なくとも1年後にはアメリカの方から少しはデータが見えてくるのですね。あとは国の管理に委ねることが1つの条件と、もう1つは至適な投与法を含めて承認後も引き続き検討してほしいという条件と、あとは新しい情報が入れば、それを知らしめてほしいということで、承認はするけれども、後から様々と我々も検討させてもらうというようなことでいかがですか。

 一般に流通するわけではないので、そういう意味では後から我々が様々なコメントを言っても、それはそれで反映できる部分もあると思うので、よろしいですか。そういう付帯条件を付けるということで、そろそろ議決に入りたいと思います。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは報告事項に移ります。報告事項について事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、報告事項議題1、資料4「フィルグラスチムBS注75μgシリンジ『サンド』、同BS注150μgシリンジ『サンド』及び同BS注300μgシリンジ『サンド』の製造販売承認について」報告いたします。

 本剤は、フィルグラスチム(遺伝子組換え)[フィルグラスチム後続3]を有効成分とする注射剤であり、サンド株式会社よりグランを先行バイオ医薬品とするバイオ後続品として製造販売承認申請がなされました。

 機構における審査の結果、本剤とグランの同等性、同質性が認められ、平成21年3月4日付け厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「バイオ後続品の品質、安全性、有効性の確保について」に基づき、本剤はグランのバイオ後続品に該当すると判断いたしました。したがって、グランと同じ「造血幹細胞の末梢血中への動員」「造血幹細胞移植時の好中球数の増加促進」「癌化学療法による好中球減少症」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療に支障を来す好中球減少症」「骨髄異形成症候群に伴う好中球減少症」「再生不良性貧血に伴う好中球減少症」及び「先天性、特発性好中球減少症」の効能、効果で承認して差し支えないと判断いたしました。

 続きまして、報告事項議題2、資料5「硫酸ストレプトマイシン注射用1g『明治』の製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。

 ストレプトマイシン硫酸塩(以下、「本薬」)は、細菌リボソームの30Sサブユニットに結合し、細菌のタンパク合成の開始反応を阻害することで、グラム陰性菌及び抗酸菌に対して抗菌活性を示す薬剤です。マイコバクテリウム、アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症は、進行は緩徐ですが無治療の場合、最終的に呼吸不全に至る難治性疾患であり、早期の治療開始が望まれる疾病です。現在、本邦における非結核性抗酸菌症に対する治療としては、クラリスロマイシン又はアジスロマイシン、リファンピシン又はリファブチン及びエタンブトールの3剤併用療法やリファンピシン、イソニアジド及びエタンブトールの3剤併用療法が一般的に行われておりますが、重症例や既治療例などではこれら3剤に本薬を加えた4剤併用療法が有用とされており、非結核性抗酸菌症に対する治療法として各種ガイドライン等で推奨されています。

 このような状況を踏まえ、「医療上の必要性の高い未承認薬、適応外薬検討会議」において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成25年7月26日に開催された「医薬品第二部会」における事前評価を踏まえて、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。

 機構における審査の結果、資料に記載いたしました効能、効果及び用法、用量にて承認して差し支えないと判断いたしました。

 続きまして、報告事項議題3、資料6「ダラシンS注射液300mg及び同S注射液600mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。

 クリンダマイシン(以下、「本薬」)は、グラム陽性球菌群、嫌気性菌群及びマイコプラズマに対して抗菌活性を示すリンコマイシン系抗生物質です。本剤は、海外においては、歯科、口腔外科領域の感染症に対する適応で承認されており、国内外の教科書及びガイドラインにおいても、歯科、口腔外科領域の感染症に対する治療法として推奨されております。また、本邦においては、クリンダマイシン塩酸塩の経口製剤が「顎骨周辺の蜂巣炎、顎炎」の適応症を有していますが、一方で、注射剤である本剤についてはこの適応症を有しておりません。

 このような状況を踏まえ、「医療上の必要性の高い未承認薬、適応外薬検討会議」において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成25年7月26日に開催された「医薬品第二部会」における事前評価を踏まえて、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。

 機構における審査の結果、資料に記載いたしました効能、効果にて承認して差し支えないと判断いたしました。

報告事項議題4、資料7-1「優先審査指定品目の審査結果について(ダクルインザ錠60mg、スンベプラカプセル100mg)(バニヘップカプセル150mg)」御報告いたします。優先審査の取扱いについては、資料の2ページに概要をお示ししています。この制度は、薬事法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断されます。

 資料の1ページにお戻りください。対象品目は、販売名ダクルインザ錠60mg、一般名ダクラタスビル塩酸塩、及び販売名スンベプラカプセル100mg、一般名アスナプレビル。申請者はいずれもブリストル、マイヤーズ株式会社です。ダクルインザ錠60mg及びスンベプラカプセル100mgは併用して使用するものであることから、合わせて説明いたします。また、これらは記載のような「C型慢性肝炎等におけるウイルス血症の改善」に係る効能、効果で承認申請がなされています。

 事前に取りまとめられた機構の報告書に基づき、当該薬剤の優先審査の該当性について御説明します。資料の一番下のページ数で10ページの下段、総合判断の項を御覧ください。

 「適応疾患の重篤性」については、C型慢性肝炎は、治療を行わない場合、最終的に肝硬変や肝細胞癌を発症する危険性がある疾患であり、本邦においては、肝細胞癌発症リスクの高いと考えられる高齢のC型慢性肝炎患者が多く存在していることを踏まえると、当該疾患は、ア「生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患である)」に該当すると判断されました。

 次に「医療上の有用性」については、ダクラタスビル塩酸塩及びアスナプレビルの併用療法は、国内臨床試験においてHCVジェノタイプ1b感染患者のうち、インターフェロン治療不適格未治療患者、インターフェロン不耐容患者及び前治療無効患者に対して高い有効性が示されており、また、テラプレビル療法を含むインターフェロン治療と比較して良好な安全性及び忍容性が示されていることから、当該薬剤は、イ「有効性、安全性、肉体的、精神的な患者負担の観点から、医療上の有用性が既存の治療法、予防法若しくは診断法より優れていること」に該当すると判断されています。

 以上を踏まえ、当該薬剤は優先審査品目に該当すると判断しました。当該薬剤の承認の可否については、今後、機構での審査を経た後に、改めてこの部会で御審議いただく予定です。

 続きまして、資料7-2として報告を予定しておりました医薬品の優先審査については、企業から優先審査の希望が取り下げられましたので議題から削除し、資料7-2は欠番となっております。事前にお送りした資料で御検討いただきまして大変恐縮ですが、御了承いただきますようお願いいたします。

 続きまして、資料7-3を御覧ください。資料の1ページを御覧ください。対象品目は、販売名バニヘップカプセル150mg、一般名vaniprevir、申請者はMSD株式会社です。本剤については、記載のような「C型慢性肝炎におけるウイルス血症の改善」に係る効能、効果で承認申請がなされています。事前に取りまとめられた機構の報告書に基づき、本剤の優先審査の該当性について御説明します。

 資料の一番下のページ数で11ページの中段、総合判断の項を御覧ください。「適応疾患の重篤性」については、先ほどのダクルインザ錠60mg等と説明が重複しますので説明は省略いたしますが、ア「生命に重大な影響がある疾患(致死的な疾患)である」に該当すると判断されました。

 「医療上の有用性」については、これまでに実施された国内臨床試験を踏まえると、C型慢性肝炎においてペグインターフェロン及びリバビリンの2剤併用療法、並びにテラプレビルを含む3剤併用療法より優れた有用性を示す可能性があると考えられることから、本剤は、イ「有効性、安全性、肉体的、精神的な患者負担の観点から、医療上の有用性が既存の治療法、予防法若しくは診断法より優れていること」に該当すると判断されています。

 以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断しました。本剤の承認の可否については、今後、機構での審査を経た後に、改めてこの部会で御審議いただく予定です。

続きまして、報告事項議題5、資料8「医療用医薬品の再審査結果について(注射用シナシッド)」報告いたします。資料は「医薬品再審査確認等結果通知書」であり、一般的名称はキヌプリスチン、ダルホプリスチン、販売名は注射用シナシットに係るものです。こちらの品目につきまして、製造販売後の使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能、効果、用法、用量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー1と判定したものです。

続きまして、報告事項議題6、資料9「医療用医薬品の承認条件について(タシグナカプセル150mg、同カプセル200mg)」事務局より御説明いたします。

 資料2ページを御覧ください。ニロチニブ塩酸塩を有効成分とする医薬品タシグナカプセル150mg、同カプセル200mgは平成21年1月21日に承認され、中ほど、「承認条件」の所にお示しいたしました全例調査に関する承認条件が付されております。この度、承認取得者でありますノバルティスファーマ株式会社から、調査に係る報告書が提出され、機構において審査されましたので御報告いたします。

 3ページを御覧ください。報告された調査は、本剤を使用した全症例を対象に目標症例数は700例、観察期間は最大3年間とされており、平成22年3月31日までに登録された770例に加え、平成25年4月30日までの期間で調査票が新たに回収、固定された計865例の情報を基に調査結果がまとめられております。

 安全性につきましては4ページ「2.安全性」に記載しております。安全性解析対象848例のうち、副作用が76.3%、重篤な副作用が33.4%に認められました。また、5ページの表にお示ししておりますように、本剤に特徴的と考えられる副作用として、心疾患、心電図QT延長、体液貯留、間質性肺疾患等が重点調査項目とされておりますが、これらの発現率が臨床試験と比較して顕著に高い傾向は認められず、添付文書上で更なる注意喚起を要するような問題となる事象は認められませんでした。

 有効性につきましては5ページ「3.有効性」に記載しております。本調査での血液学的効果及び細胞遺伝学的効果は、慢性期の慢性骨髄性白血病患者で、それぞれ93.2%及び83.4%、移行期の慢性骨髄性白血病患者で、それぞれ67.4%及び60.0%とされております。本調査と承認審査時の臨床試験とでは、血液学的効果については特に問題となる違いはありませんでした。細胞遺伝学的効果で承認審査時の臨床試験と比べて高い傾向にあった理由としては、本調査ではより軽度な患者も登録されたことなどが影響している可能性があると説明されております。

 これらの結果に基づきまして、6ページの下の方に掲げておりますとおり、添付文書の使用上の注意を自主改訂したほか、資材や学会等における情報提供により適正使用に関する措置が講じられております。

 以上を踏まえ、製造販売後調査が適切に実施され、患者背景、本剤の安全性及び有効性に関する情報が適切に収集されていること、また、収集された情報に基づいて本剤の適正使用に必要な措置が講じられていることから、本剤の全例調査に関する承認条件の内容につきましては確認できたものと判断しております。

報告事項議題7、資料10「希少疾病用医薬品の指定の取消しについて(ガンシクロビル眼内埋植用製剤)」御説明いたします。届出者はボシュロム、ジャパン株式会社、医薬品の名称はガンシクロビル眼内埋植製剤です。本剤は、平成12年4月、「後天性免疫不全症候群におけるサイトメガロウイルス網膜炎」を予定される効能又は効果として希少疾病用医薬品に指定されました。しかしながら、現在では後天性免疫不全症候群への治療として多剤併用療法が普及したことから、日和見感染症であるサイトメガロウイルス網膜炎の発症率が減少していること、また、ニーズの低下により米国でも販売を中止していることを踏まえ、本剤の臨床的な必要性が低下したと判断し、今般、開発を中止することとして「希少疾病用医薬品試験研究中止届」が提出されたものです。よって、本剤の本効能、効果に係る希少疾病用医薬品の指定を取り消すこととしました。以上、御報告いたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。特によろしいでしょうか。

 ないようです。それでは、報告事項につきましては御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会ですが、2月28()午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、本日はこれにて終了とさせていただきます。御苦労様でした。


(了)

備  考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 井本(内線2746)

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