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2013年7月2日 障害者の芸術活動を支援するための懇談会(第2回)議事録

○日時

平成25年7月2日(火)13時~15時


○場所

文部科学省(中央合同庁舎第7号館東館3F2大会議室)


○議題

(1)論点整理
(2)意見交換

○議事

【青柳座長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会を開会いたしたいと思います。

 構成員の皆様方におかれましては、大変、 、お忙しい中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

 では、まず事務局の方から資料の確認をよろしくお願いいたします。

【文化庁文化部舟橋芸術文化課長】  お手元の資料の確認をお願いいたします。まず、本日の会議の議事次第でございます。その後、クリップを外していただきまして、資料 1 が構成員名簿、資料 2 が前回の議論の整理、それから、参考資料といたしまして、今中構成員から第 1 回に提出を頂いた資料をとじたものになっております。そのほかの参考資料ということで、全国肢体不自由児者父母の会連合会からの提出資料。また、全日本手をつなぐ育成会の田中常務理事からの御提出資料、そのほか参考の資料となってございます。不足等ございませんでしょうか。

 それから、引き続きまして、先日の会議で御欠席をされまして、今回初めて出席をされる構成員がいらっしゃいますので、御紹介させていただきます。今中博之構成員でございます。

 また、前回の会議以降、構成員の追加がございましたので、御紹介をさせていただきます。全国肢体不自由児者父母の会連合会の上野密構成員でございます。なお、本日、上野構成員は御欠席で、代理で事務局次長の橋本利成様に御出席を頂いております。

 続きまして、事務局に異動がございましたので、御紹介をさせていただきます。 7 2 日付けで厚生労働省障害保健福祉部長に異動になりました蒲原部長でございます。部長から一言御挨拶をさせていただきます。

【厚生労働省障害保健福祉部蒲原部長】  ただいま紹介いただきました蒲原と申します。きょう付けで辞令をもらいまして、部長ということに相なりました。初仕事がこの会議でございます。

 私自身は、この部長になる以前、障害関係の仕事を 3 年ほどやっていまして、その中でいろいろな芸術の分野も見た経験がございます。是非この懇談会でいろいろな角度から御議論いただきまして、私どもといたしましても、文科省とも協力しながら対応していきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

【青柳座長】  それでは、引き続いて、前回欠席されました今中構成員から、御挨拶と、それから資料の説明をよろしくお願いいたします。

【今中構成員】  初めまして、アトリエインカーブ、今中です。第 1 回目は欠席させていただいて、ちょっと病院の方がありましたので、今回、初参加ということです。

 まず、我々のアトリエインカーブの御説明をするとともに、実はこの会議の前身の会議のようなものが 5 6 年ほど前にありました。テーマ的にはさほど今回も変わってないんですね。アール・ブリュットとはどういうものか。こういう障害者のアートの活動をどういう形で普及啓蒙するべきかということをちょうど 5 6 年ほど前にやりました。僕個人的には、なかなか据わりが悪いというか、空中分解のまま終わったような印象があります。

 また、今回、こういう会議に、 2 回目に出席させていただいて非常に有り難く思いますし、僕は 50 年間、障害を持って生まれて現在に至ります。僕の周りには、 30 名近い知的障害、あと精神をお持ちのアーチストが全国から集まってこられました。アトリエインカーブというのは通所の施設です。元々は大阪市にありました作業所から前身は活動をしています。トータルで言うと 17 8 年になります。それまでは、僕はデザインの方のお仕事をしておりまして、 20 年ほどお仕事をして、それから作業所を運営し、今、アトリエインカーブの活動をしているということであります。

 では、インカーブの簡単な説明をレジュメに沿ってさせていただきます。我々は今回議論されていますアール・ブリュットという言い方をしません。現代アートという切り口で活動しています。ただ、初めは、ちょうどまだ日本がバリアフリーと言っているぐらいの時代、ユニバーサルまでたどり着いていない時代に、ニューヨークのアウトサイダー・アートフェアというものに参加をしました。我々が参加をした、展示をしたということではなくて、ニューヨークのギャラリーと契約を結んでアウトサイダー・アートフェアに出品をしました。出展ではありません。現場に行かせていただいて見たときに、そもそもそれに出展しようと言ったのは僕なんですね。何でそれに出展しようかと思ったかというと、厚生労働省の方はお分かりなんですけれども、そのころは授産施設というのがありました。障害者の方が就労し、そこで工賃を得るという活動がありました。名前を変えて今でもあります。当時、我々アトリエインカーブは授産施設でした。

 アーチストの収益を確保していくということがどうしても必要だったんです。そんな中で、日本で彼らは、僕らはアートだと思っていたんですけれども、新聞等々が論じるときには障害者アートという色眼鏡というんですか、そういう目で見られた。いやいや、これは障害者アートというカテゴライズ要らんの違うかなと思いながらも、日本の美術館等々も評価はしません。で、ニューヨークに行きました。

 アウトサイダー・アートフェアはどういうものかという本当に真に迫ったところまで僕は理解ができていずに、現場に行って見たときに、はたと、アウトってだれが呼んだんやろと思うたんですね。アウトサイダー・アートのアウトは、きっとインの人間が言ったわけで、彼ら、少なくともアトリエインカーブのアーチストは、自らをアウトとは呼びません。で、自分の失敗に気付きました。それから我々は、カテゴライズされたものをやめましょうよ、普通の現代アートと一緒じゃないでしょうかということで、僕らの活動はあります等と述べたのが 1 ページ目。

2 ページ目。ニューヨークで評価を受けました。今言ったアウトサイダー・アートフェアに出た作家さんということでスタートは切りました。それから、ニューヨークでもまだ活動が続きまして、ギャラリーと契約して発表するときには、アウトサイダー・アートの作家、それはやめてくれませんかということで、いうところと、ギャラリーと契約をして発表していきました。割に作品が売買されるようになってきました。

 日本に帰ってきて、とある広告代理店でお力添えを頂いて、企業さんのCSRさん、割に大企業、CSRさん担当の方が二、三百名来られたと思うんですけれども、その方々にアトリエインカーブの御紹介をしたんです。それから現代美術館と言われるところで 2 年に 1 回ぐらい展覧会を行っています。それは、我々持込みではなくて、向こうの美術館の企画展です。という活動を行ってきました。この前、直近では東京のオペラの方で展覧会が終わりました。

 そんな中で、前段申し上げた授産という色がインカーブの場合は残っていますので、アーチストたちの収益を確保せなあかんぞということもあって、ただ見て、しまいということでは福祉のこういう活動はないんです。そういう意味で、アートフェアというところに我々、昨年ぐらいから参画をしています。まず皮切りにアート京都というフェアで、去年がアートフェア東京という、これが一番日本で大きいアートフェアというものです。それは特別枠ではありません。特別枠ではなくて、普通のコマーシャルギャラリーとして出展をし、収益を確保しました。当然その収益は必要経費を除いてアーチストに 1 分の 1 で還元をしています。というのがざっくりと 2 ページ目。

3 ページ目。ちょっと早口で申し訳ないんですけど、事前に課題はどんなものですかとおっしゃったので、こんな堅苦しいことを書きました。課題の 1 、これは皆さん御存じのように、我々は社会福祉法人なので、民間ギャラリーではありませんし、美術研究家ではありません。あくまでもアーチストの収入、プライドとかいうものを加味した法人なんですね。そうしたときに、僕らの立脚するのは、例えば直近で言えば障害者差別禁止法、堅いですよ。すいません。国連の権利条約に向けて日本がどう言うてるかといったら、こういうことなんですね。分類から統合しましょうよ、行く行くは包括しませんかということを今、日本は述べようとしている。これをこの分野、今お集まりの方々の分野に対応させるならば、あえて僕はカテゴライズするような名称は必要ないだろうし、先般議論されたみたいに、上から下へお金の流し方、いわゆるナショナルセンター的なものじゃなくて、地域の活動をどう応援していくかというところにシフトしていくのがいいだろうと思っています。

2 つ目、これも前回の御議論あったままです。インカーブは 100 %、美大・芸大の出身者です。というのは、まず、こういう分野で福祉だけを習っていてはなかなかできないのが実情です。どういう活動で我々、美大・芸大からスタッフが増えていっているかといったら、これは金沢美術工芸大学というところと非常に近い存在でして、僕の先輩、後輩が向こうの教授になってということもあるあるんですけれども、向こうで我々が授業を行います。インカーブというのはこういう活動。我々はこれを現代アートとして見る。「君たちはアール・ブリュットとして見ますか。」「はい、見ます。」という方もおられます。「いやいや、そういうカテゴライズは必要ないでしょう。」と言う学生さんもおられる。そういう意味では、非常に多様性のある議論を展開して、その中で、インターンでうちとこに来て、そのまま根付いてということもあります。

 だから、福祉現場でデザイン・アートという意味で先般の議論にあったんですけど、もう少し深めていくと、後ほどになるかもしれませんが、僕はあえて、きょう提案したいのが、日本に 5 芸大あるんです、国費の投入した。金美もそうです。東京も、京都も、繊維もありますね。そういうところと地域のNPO、社会福祉法人でこういう活動をやっているところを結び付けられへんのかな。これは昔、次官会議か何かで僕は話をしたんやけども、現実できひんかったんやけど、地域に分散した。ただ、アートスタッフの卵のいるところ。そういう意味では 5 芸大を中心に、アール・ブリュット、いやいや、違う現代アート、いやいや、エイブル・アート、そういう議論を巻き起こし、普及啓蒙していくということは、即、現実しやすいんかなと思ったりしています。

 急ぎ足やったんですけども、アトリエインカーブというのはそんな活動をして、本当にアール・ブリュットというチームとは全く関係なく、スタンドアローンで活動しているので、今回お招きいただいたのは場違いかなという思いもあったんですけど、以上です。ありがとうございました。

【青柳座長】  どうもありがとうございます。それでは、上野構成員の代理でいらしている橋本さんの方から御発言をお願いしたいと思います。

【上野構成員代理橋本氏】  全国肢体不自由児者保護の会連合会の代理でございます。よろしくお願いいたします。本来、上野がこちらの方に参りまして御意見を述べるところでございますが、出張中のため、代わりに私、橋本の方から御説明をさせていただきます。

 資料 1 ページには、上野密のプロフィールが載っております。 2 ページから 3 ページ、全肢連の取組ということで、「グラフィックアート・コンテスト」というのを行っております。これは、肢体不自由児者のリハビリテーションの一助として活用されていた電動タイプライターの活字や記号を組み合わせて、絵やデザインを創作した作品の発表の場として、昭和 57 年、今年で 32 年目を迎えます。「タイプアートコンテスト」をスタートしまして、これも時代の流れとともに、今年からコンピュータアート、それとデジタル写真、動画といったもので募集をしております。この中で社会に対する啓蒙活動として、優秀作品を表紙にしたノート、レポート用紙などを頒布しております。また、ホームページ「響」などにも載せまして広報に努めております。

4 ページに載っておりますのが、今年の優秀賞の作品と、一昨年までの優秀作品をノートの表紙にしたものを幾つか、御紹介という意味でこちらの方に載せております。

 それともう一つ、日本肢体不自由児協会の主催します「肢体不自由児・者の美術展」、それと「肢体不自由児・者のデジタル写真展」、こちらの方の運営委員を務めておりまして、美術展の方は全国から、肢体不自由児者から美術作品を、絵画ですとか、書、コンピューターアートなどを募集しまして、これに対し、肢体不自由児者の生きがいづくりに資するということと、一般の人たちに障害者に対する理解を促進するということを目的に、毎年 12 月の障害者週間に合わせまして東京池袋の方で展示会を開催しております。

 同じく「肢体不自由児・者のデジタル写真展」ということで、こちらの方も全国の特別支援学校ですとか、肢体不自由児・者施設などに働き掛けまして、デジタル写真の作品を募集して、こちらの方も 12 月の障害者週間に合わせて展示会の方を開催しております。

 この中で全肢連の取組としましては、先ほど申し上げましたが、発足当時から運営委員を務めまして、絵画、書の部門で全肢連賞を設けるなどしまして、芸術活動に寄与しております。次のページの方に、第 30 回と第 31 回の書の優秀作品と絵画の優秀作品、全肢連賞を載せてございます。

 以上でございます。

【青柳座長】  ありがとうございます。それから、前回の会議で、十分な時間がなかったので発言いただけなかった中久保構成員の方から、著作権など障害者の権利保護についての御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

【中久保構成員】  中久保でございます。前回から今回の第 2 回の懇談会で、法的観点から権利保護のためにどういう視点が必要かということをお話しするようにということでしたので、 10 分程度をめどに、 2 年前に研究会に参加して行いました滋賀県の今回の懇談会を先取りしたような、同じような検討の成果も踏まえまして、少しお話をさせていただきたいと思います。

 今お話が出ましたのは、今回の懇談会で御議論いただきたい事項ということで前回配られましたもののうち、「障害者の芸術作品の著作権等の権利保護のためにはどのような支援が必要か。(契約の在り方等々)」、このテーマに関する部分であると認識しております。我々弁護士の立場から、障害者の方の芸術作品の権利保護という観点で物事を見た場合に、どういう権利保護が必要なのかという観点で見ますと、 2 つあると思います。

1 つは、作品の所有権の保護。これは著作権以前の問題として、例えば障害福祉サービス事業所に所属している作家の方が美術作品、工芸作品を創作した場合に、その所有権は果たして施設に帰属するのか、作家御本人に帰属するのかという問題として現れます。それから、もう一つは、この中の 1 つの大きなテーマだと思いますが、作品の著作権法上の権利の保護をどのように実現していくか。実体法上はこの 2 つの視点があると思っています。

 それから、手続的な側面で申し上げますと、そのような今申し上げましたような所有権とか著作権法上の権利を保護するために十分な意思が表示できないという方に対しては、後見人制度という制度が設けられているわけですが、実務では通常、後見人というのは、まず近しい親族の方、もしその候補者がいないときは家庭裁判所の方で持っているリストに従った全く第三者の弁護士、このいずれかが後見人に付くわけですが、この後見人が付いた場合に、これから我々が支援として考えていくような内容なくして、適切な権利保護ができるのか。こういう手続的な側面があると思っています。

 順次、今申し上げた問題について、こういう点が問題なのではないかということをまず申し上げた上で、では、何ができるのかということについて、具体的な支援策についての意見を申し上げたいと思います。

 まず、作品の所有権の帰属の問題ですが、これは滋賀県で行った研究会のときにも議論として出た点ですが、障害福祉サービス事業所に例えば所属している作家の方が作品を生み出す活動としては、大きく分けて生産活動と、その生産活動以外の活動の場が想定されます。生産活動以外の活動の場というくくりの中には、職業指導、それから、余暇活動、こういったくくりがあると認識していますが、それぞれの活動の場に、どのような活動の場によって作品が生み出されたのかということによっても所有権の帰属の取扱いというのは変わってき得るのだろうと。

 しかし、最大の問題は、この点について所有権がどちらに帰属するかというのは、本来入所時に施設側と個々の入所者との間で合意をして契約で定める。あるいはサービス事業所の方にそのような取扱いの規程があって、それに準拠して権利は取り扱いますということが明確になっていればいいんですが、そういった権利関係の整理が不明確なまま、例えば多くの作家の方、多くの入所者の方の作品は材料代程度で売られるものなんですが、その中に特別に価値のある作品を生み出す作家の方がいたと。しかし、それが販売されて得られた代金はすべて施設に帰属して、創作者に何ら還元されない。これが果たしていいのだろうか。こういう問題意識が出てきまして、所有権の帰属について法的にはどういう考え方をすればいいのか。じゃ、合意をするというけれども、もし契約をするとすれば、どういう契約をすればいいのか。入所の方というのは数が多いので、そういうものを規定で設けるとしたら、どういう規程例があり得るのか。こういったところを検討して、ガイドラインの形で成果を見たということがございます。

 それから、もう 1 点の著作権法上の権利という言い方を先ほどさせていただきましたが、こちらは、今申し上げた所有権よりはかなり難解な権利でございまして、単に著作権と申し上げなかったのは、著作権保護上の権利としては、大きく分ければ財産的な側面を持つ、いわゆる著作権、これは著作財産権と呼ぶときもありますが、著作権と呼ばれる権利の束と、それから、著作者に一身専属する著作者人格権と呼ばれるものの大きく 2 つにくくりが分かれるわけです。そうすると、果たして著作権の中にどういう種類の権利があるのかということ自体、関係者の方に十分な認識がない。いわんや、著作者人格権とは何なんだ、どういう権利なんだということは、弁護士でも著作権になじみがないとなかなか理解がない方も多いくらいの部分でございますので、この権利内容、それぞれ権利内容について理解し、作品の利用態様に応じて、どういう権利が働く場面で、作家の方からどういう許諾を取らなきゃいけないのか。許諾を取るとしたら、どういう形式の承諾書を取ればいいのか。こういったことについては、恐らく相当の労力を使って啓発活動を行うとともに、単なる著作権法の読み物ということではなくて、例えば承諾書のフォーマットであるとか、著作権法上の取扱いに関する規程例であるとか、よくある質問に対するQ&Aの形での回答であるとか、具体的な行動指針となるような形で示していかないと、なかなかこれを浸透させるというのは難しいだろうな、かなり根気と労力の要る作業だろうなと、こんな印象を持っています。

 時間の関係もありますので、今申し上げたような法的な視点から見たときに、結局どんな方向で支援をしていくことが必要なのかということにつきましては、まず 1 つは、今申し上げたとおり、著作権法上の権利というのが非常に難解な権利であって、各障害者の方の芸術活動の現場に携わっている方々の理解をまずは深めていただくということが非常に重要だと。その観点ではどういう権利があって、どういう作品の利用場面においてどういう権利が実は作家の方にあって、その権利を保護するためにはどういう手続を踏まなければいけないのかということをきちんとしたガイドラインなり、事業所の規程例なり、それから承諾書のフォーマットなり、そういった具体的なものを示して啓発活動を行っていく。それから、施設の職員の方々を集めて、場合によっては専門家の研修会のようなものを開催する。そういった形での知識の浸透というか、権利意識を浸透していくということがまずは著作権法に関しては大変重要なんだろうと思っています。

 それから、後見人を付けた場合を想定しても、後見人の方というのは、先ほど申し上げたとおり、作家の方の親族の方が選ばれるケースが通常は多いので、そうすると、著作権を行使する場合に何が被後見人である作家のためになるかという視点で見たときに、まだ著作財産権の方は財産的な価値を実現する、したがって、有償で許諾すべきものはきちんと対価を取ってやるというところで保護されるわけですが、先ほど申し上げたような著作者人格権、これは氏名を公表するかどうかとか、作品そのものを公表するかとか、あるいは作品が非常に売れるので、一部色違いのものを出しましょうと、一部改変するというような場面で、これは経済的に見てどっちが有利かという話ではなくて、あくまでも著作者本人の意思がどうなのかということが大変重要な権利になりますので、その権利行使の場面でも、後見人の行動指針になるような啓発活動も欠かせないんだろうなと、このように思っています。

 それから、もう一つ、これは滋賀県の取組の中でもやったことですが、ガイドラインであるとか、承諾書のフォーマットであるとか、規程例、こういうものを具体的に示すのはいいとしても、具体的に直面した場面で、では、どう対応したらいいのかという疑問というのは必ず出てくると思うんです。ガイドラインを参照すればすべての問題が解決するようなものを作る。これは不可能なので、そこで、何か法的な問題で、権利保護の関係で相談したいということがあったときに、相談に応じてもらえるような機関、相談機関を常設する。そこでは本来から言えば専門家のアドバイスが得られるのが望ましいんだと思いますが、しかし、それを常設するのは難しいということであれば、それなりに権利関係について精通したスタッフが場合によっては必要に応じて弁護士にも相談するような体制を整えて、年に数回、例えばですけれども、定期的に専門家の判断を仰げるような、何か困ったときに権利の取扱いについて相談できるような機関を設ける。この視点も啓発活動のもう一方の柱として重要なんだろう、そんなふうに考えております。

 以上でございます。

【青柳座長】  どうもありがとうございます。それでは、第 1 回の会議で構成員の皆様から頂いた御意見を事務局の方で整理してありますので、それについて、井上課長の方からよろしくお願いいたします。

【厚生労働省障害保健福祉部井上企画課長】  それでは、事務局の方で前回の議論を整理した資料を資料 2 として用意させていただきましたので、こちらを御説明申し上げます。前回いろいろな幅の広い御議論を頂きましたところですけれども、項目を整理して、項目ごとにまとめております。

 まず、障害者の芸術活動の意義についてということでありますけれども、 1 つ目、障害のある人たちの社会参加を目的とした芸術活動を支援するということは非常に喫緊で、重要な課題。アートを通して幸福で豊かな生活を営むことはすべての人の権利。また、共有し合える共生社会の実現、共存感の共有に寄与することが重要というような社会参加とか、共生社会の実現とか、そういった意義があるというような御意見でございます。

 それから、常に国際的な視点を含めた上で考えていきたいというような御意見。また、いろいろな作品が生まれる中で、伝統的な美術の評価軸を変えるきっかけの 1 つがアール・ブリュットの隆盛にあるとか、社会全体の中の美術や美術教育そのものを考えるきっかけになるのではないか。また、より芸術の範囲が広がったり、深まったりするのではないかといった、芸術の在り方そのものに影響を与える、こういう側面があるのではないか。こういう御指摘がございました。

2 つ目に、障害者の芸術活動への支援の方向性についてということでございます。支援の方向性ですが、 1 つは、すそ野を広げるという観点と頂上を目指していくという観点で仕組み作りが必要、こういう御意見がありました。

 それから、地域に根差した活動をしている地域の美術館や施設に国が支援することが理想的なモデルではないかというような御意見。

 次のページですが、アール・ブリュットの発信は、一極集中で上から下に下ろすのではなく、各地域で発信していくものがふさわしいし、その方が発信力も強いといった御意見でございます。

 委員の方々から頂いた御意見は白丸で表示しておりますが、黒丸で書いてあるところは事務局としての問題意識といいますか、問題提起ということで掲げておりまして、こういった点については、更に 、御議論を深めていただければ有り難いと思っておりますが、 1 つ目の黒丸です。前回の全体の御議論を踏まえると、障害者が芸術活動を行う際に、障害者、その家族、支援者等に対して地域で直接支援を行う仕組み、相談支援ですとか、権利保護などですが、これが 1 つの大きな柱と考えられるが、どうかということ。

 それから、併せて障害者のすぐれた芸術作品の展示・販売・発信等を推進していくための仕組み(評価・発掘・収集・保存等の推進、国内外における幅広い展示機会の確保等)がもう一つの大きな柱と考えられるが、どうかということでございます。これは、ある意味この 2 つの黒丸は、すそ野を広げるということと頂上を目指していくという構成員からの御指摘もありましたけれども、それにおおむね対応しているのかなと考えております。

 それから、上記 2 つの支援の柱を支える人材が相互に連携・協力して支援に取り組む仕組みについて、どのように考えるかといった点でございます。

 次に、障害者の芸術作品の呼称、特にアール・ブリュットという呼称についていろいろな御意見がございました。まず、アール・ブリュットのような象徴的な名称の下でバックアップしてほしいという御意見。

 それから、障害者がつくり出す作品を評価し、発信していく上では一定の共通言語があった方が良く、国内外に伝わるアール・ブリュットという言葉はいいと思うというような御意見。

 それから、アール・ブリュットという概念の下で価値観等に関する議論がされており、アートという上位概念ではここまで盛り上がらない。最終的に名称は何でも良いが、アール・ブリュットという名称が既にあるので、その名称を使うことで発信していくことが重要ではないかというような御意見。

 それから、芸術活動においては、障害の特性が能力として生かされ、評価され、社会参加のきっかけになる。アール・ブリュットという概念はこの推進力を持つ位置付けになっていることが非常に重要というような御意見がございました。

 その一方で、アール・ブリュットの作品の質や歴史は非常に重要であるが、アール・ブリュットに対するそれぞれの認識が非常に異なっていると危ぐしているという御意見もありました。障害のある人が表現したら、それがアール・ブリュットになるのかという疑問があるというようなこと。単純にアール・ブリュットという言葉を使ってしまうことへの危機感もあるというような御意見もございました。

 アール・ブリュット、イコール障害者アートととらえられがちだが、それだけではここまで広がらなかったのではないか。アール・ブリュットに対するそれぞれの想像に白黒を付けるよりは、個々の解釈を残していけるアール・ブリュットが考えられないか。また、市民が主体となって自分たちの文化・芸術活動を生んでいく 1 つの市民活動として、エイブル・アート・ムーブメントに取り組んでいる。その中で障害がある方の表現を支えるということをメーンにしている、こういうお話もありました。

 アール・ブリュットとエイブル・アート、アウトサイダー・アートという様々な呼称があるわけですけど、それぞれについてどのようなスタンスを採ればいいのかという御意見もありました。

 アール・ブリュットには、ジャン・デュビュッフェによる作品のコレクションの意味と、作品から抽象化される概念、価値観に共感してほかの人が選んだものという 2 つの意味があるというお話がございました。アール・ブリュットの定義の議論をし始めると闇の中に入っていってしまうので、この場はシステムやプラットフォーム作りのための議論に集中した方が良いのではないかという御意見もございました。

 この辺はかなりいろいろな御意見が出たところでございまして、更に本日もこの点について議論を深めていただければ有り難いと思います。

3 つ目に、障害者の芸術活動への具体的な支援の在り方についてということで、( 1 )障害者、その家族、支援者等に対する支援の在り方について(相談支援の充実)の関係でございます。作品や展覧会を作るという点での情報提供、作品を出展したい方と社会がつながるための中間支援、作者の権利を守ることで安心して造型作品に取り組めるようなサポートの 3 つを柱とする相談事業を行っているという取組の御紹介がありました。

 作者やその家族からは、展示機会の情報を求める相談が多い、障害福祉サービス事業所からは、作品やグッズ製作に関する場合の著作権の取扱いなど、権利保護に関する相談が多いということで、実際に相談業務を取り組んでいる方からの御紹介がございました。

 相談支援について、県外からの相談の場合、全国の情報を網羅できないため、なかなか対応ができない。身近な地域で相談できる仕組みや、こちらで受け止めた相談が近い地域につながる仕組みがあればいいと思うという御意見。

 それから、作品が生まれる現場の課題は共通していると思う、成功、失敗、トライ・アンド・エラーの事例を学べるような機会を作っていくことが非常に重要といった御意見がございました。

 それから、また、障害者御本人のお立場からの意見として、出展依頼などのやり取りをする中で、どのように返事すれば良いのか悩むことがあるということでありまして、相談先や手伝いを頼める人がなかなか見つからなくて困っている。気軽に相談できる機関や人があればいいと思う。こういう御意見を頂きました。

 作業所は零細で、忙しく、相談センターに相談に行く人を出せない、巡回相談のような視点、仕組みが必要でないかという御意見もありました。

 次に、権利保護の仕組みでございます。滋賀県で 1 年間、権利保護の在り方についての研究会で議論して、著作権等保護ガイドラインを作成して配布する。また、常設の相談機関を設置する。こういう取組の御紹介がございました。

 それから、著作権は非常に高度な知的財産権で、障害の有無にかかわらず、権利保護が大変難しい。障害者の著作権の保護が実現するような仕組みができれば、ほかの権利も含めて障害者の権利全体の底上げにつながるのではないか。

 それから、出展や作品の 2 次利用に関する契約に当たって、判断能力のない作者について、成年後見制度を活用することを支援している、権利侵害を守るということだけでなく、本人の可能性を伸ばすことにもなるというような御紹介がありました。

 著作権に配慮した作品の利用方法や障害福祉サービス事業所での造型活動における著作権保護に関する状況としては、まだ十分認識されていないため、研修会などの継続的な啓発が必要という御指摘がございました。

 次に、人材の育成の関係ですけれども、障害のある方の芸術活動を支えるという側の人材の育成と、それを評価したり、発信したりする側の人材の育成の両方が必要という御意見がございました。

 また、美大を出た人材が福祉現場で活躍している例があるが、その割合は少ないと思う。芸術分野の人材が福祉分野で活躍することは双方にとって有益であり、双方向を結び付ける仕組みが必要である。

 事務局の方からの問題提起といたしまして、障害者の芸術活動を地域で直接支援する観点から、どのような人材をどのように育成すべきかという点について、更に御意見を頂ければと思っております。

 ( 2 )障害者のすぐれた芸術作品の展示等を推進する仕組みについて(評価・発掘・収集・保存等の推進)の関係でございます。全国を対象とした作品調査を行っているという御紹介がございまして、NOMAのアートディレクター、福祉関係者、美術館の学芸員に調査員という形で依頼して、そのネットワークやNOMAに寄せられる情報などを基に製作現場を訪問調査して報告書にまとめているような御紹介がございました。

 それから、キュレーターだけが評価していくのでなく、福祉現場・医療現場など、様々な人と一緒に調査して、評価を練り上げていく枠組みが必要、こういう御指摘がございました。

 県の補助金で作品を保管する倉庫を借用しているけれども、単年度事業ということで、永続的に収蔵場所が確保できていない。国内外で評価される作品が出てきているが、安定的に保管できる場所が求められているという御意見。また、収蔵する作品の選定方法について、アール・ブリュットの広がりとともに、収蔵の申出が増えており、保管場所が限られている中では一定の客観性の担保が必要という御指摘でございます。

 アール・ブリュットは今までの美術の評価の物差しとは違う新しい評価軸を作るべきといった御意見でございます。

 事務局の問題提起といたしまして、芸術作品の評価・発掘・収集・保存等を行うに当たっては、だれがどのように行うことが望ましいか。こういった点について更に御意見を頂ければと思っております。

 展示機会の確保の関係でございますが、東京都美術館での「魂の対話」展覧会など、美術館での取組を初期に行っていた。一方、近年はむしろコミュニティーをベースにした取組を行っているといった取組の御紹介がありました。

 それから、次の 6 ページに参りまして、「アール・ブリュット・ジャポネ展」については、日本のアール・ブリュットの魅力を国外に広く伝えるというだけでなくて、国内にも広がっていくきっかけになったという御紹介。それから、公募展を増やしていくこと、既存の公募展を活用していくこと等により、発表の場を確保することが求められているという御意見がございました。

 事務局といたしましては、障害者の芸術作品の展示機会を確保していくためには、どのような方法により推進することが望ましいかということで、更に御議論いただければと思っております。

 次に、障害者の芸術作品の販売や商品化への支援の関係でございます。障害者の表現活動が評価されることで、障害のある人や家族の方の自尊心や人間関係が豊かになることはあるが、障害のある人たちの暮らしは苦しい。少しでも生活を楽にするための手段として、アートを仕事にするということもあり得るという御意見。

 それから、企業や作品を使いたいという方々と障害のある人の間でエイブル・アート・カンパニーによる中間支援を行っているというような御紹介がございました。

 事務局からの問題提起といたしましては、障害者の自立と社会参加を進める観点から、障害者の芸術作品の販売や、その 2 次利用による商品化を進めるために、必要な支援はどのようなものか。また、障害者の芸術作品の販売や、その 2 次利用による商品化を進めるに当たり、実績・知見のある先進的な取組のノウハウの共有化を図っていくことについてどのように考えるかといった点について、御意見を頂ければと思っています。

 次に、人材の育成の関係でございます。これは先ほども出ましたけれども、芸術活動を支える側の人材の育成、それから、評価して発信する側の人材育成の両方が必要ということ。

 それから、芸術分野の人材が福祉分野で活躍する双方を結び付ける仕組みが重要という御指摘。

 それから、アール・ブリュットというのは、今までの美術の評価の物差しとは違う評価軸、新しい評価軸を作るべきという御指摘がございます。

 事務局からですが、障害者の芸術作品を評価・発信していく観点から、どのような人材をどのように育成していくべきかといった点について、御意見を更に頂きたいと思います。

 ( 3 )関係者のネットワークの構築等について(関係者のネットワークの構築)関係ですが、障害者の造型活動の支援について情報交換ができる障害福祉サービス事業所や病院等のネットワークの構築が必要ではないか。

 それから、これも先ほど出ましたが、芸術分野の人材と福祉分野の人材を結び付ける仕組み作りの御指摘、それから、従来の特別支援教育にあった美術教育の在り方だけじゃなく、専門家の作家の目や技法や素材の視点を与えるだけで、子供たちの作品がすばらしく変化する。様々な表現分野の専門家と教育現場・福祉現場の連携ができればよりすばらしい作品が出てくるのではないか。

 それから、キュレーターだけが評価していくのではなく、福祉現場・医療現場など、様々な人と一緒に調査して評価を練り上げていく枠組みが必要。先ほども出てまいりましたが、こういった御指摘。

 それから、また作品が生まれる現場の課題は共通している。成功、失敗、トライ・アンド・エラー、こういったことを学べる機会を作っていくことが重要だという御指摘でございます。

 事務局からでございますが、障害者の芸術活動を普及・発見させていくために、障害者やその家族、特別支援教育の教員、障害者の芸術活動を支援する事業者、障害者の芸術活動に理解があり、その芸術活動の芸術性を評価することができる学芸員などの美術関係者、こういった方々のネットワークを構築するということについて、どう考えるかという点について、更に御議論を深めていただければと思っております。

 それから、ナショナルセンターということについての御意見が幾つかございました。障害者スポーツ等の活動を参考に、ナショナルセンターという位置付けで背骨のある形で支援していくことが必要であるというようなことで、また、大阪で展開されるようなことについては、もう少し数がある必要があるのではないかという御意見です。

 それから、アール・ブリュットというものをメーンにしたナショナルセンターを作ることについては非常に疑問である。美術というものは本来自由なものであるはずだ。それを統合してしまうというのはどういうことかという御意見もありました。

 そして、アートは多様性が面白いところだが、ナショナルセンターで絶対的な基準を作るようことになってしまうと、逆に多様性が見えてこなくなるということで、地域に根差した活動をしている地域の美術館と施設に国が支援することが理想的なモデルだ。こういった御意見。

 それから、アール・ブリュットの発信は、一極集中で上から下に下ろすのでなく、各地域で発信していくものがふさわしいのではないか、こういう御指摘がございました。

 このようにいろいろな観点からの御意見があったところでございまして、ナショナルセンターについては、現時点では、その概念についての共通の認識というのがまだ十分に形成されてはいないのではないかということで、障害者の芸術活動の支援の取組を進めていく中で、関係者の間で更に議論を行うこととしてはどうかということでございます。

 事務局から、説明は以上でございます。

【青柳座長】  どうもありがとうございます。それでは、大体前回お話しいただけなかった方、それから補足、そして、今、事務局の方で整理させていただいた、前回の議論の整理、この 3 つのことをやってまいりましたので、ここからは自由に御発言いただきたいと思います。挙手していただければと思います。どうぞ。

【田中構成員】  全日本手をつなぐ育成会の田中です。 はペーパーを急きょ出させていただきましたのと、お手元に、私たちの会で発行しています「ステージ」という障害のある方を中心に分かりやすい情報提供をしようということで作成しているものがあります。一番最新号で、 、話題になっておりますアール・ブリュット特集と。特にイタリアのベネチアのビエンナーレ展、こちらの方に展示された澤田さんの作品を中心に、アール・ブリュットという概念と世界的な動きがありますということを御案内している紙面になります。

 これを参考にしていただきながらと思いまして用意したペーパーが表裏で整理させてもらったものですが、まず、今の論点整理の中で幾つかの視点に分かれてしまっていたような位置付けになっているので、論点整理の漏れと書かせていただきましたが、アール・ブリュットという言葉は国際的にも認知されており、芸術の枠組みを広げたり、深めたりする作用もできるということが非常に力強い装置だとなっておりまして、それが概念であったり、ジャンルであったりというようなとらえられ方になっているかと思いますが、その辺のことはまた美術関係の皆さんに御指摘いただきたいと思いますが、前回の会議では、保坂委員から日比野委員、そして、青柳座長というふうに話がつながっていって、今、整理させてもらったような言葉で、こういった概念が今、最も美術業界には求められていると発言があったと私自身は理解しました。ですから、この「ステージ」にも、そのような視点で、澤田さんという作業所に通う方がつくった作品がアール・ブリュットという視点で評価された結果、世界の現代アートの展覧会に展示される。ここでも表記させてもらいましたが、芸術の分野のオリンピックと、そういうステージがあるということが今、今日的な、前回の会議でも極みとか、頂とか、そういった目指す部分があるということが大事ではないかと思いましたので、いろいろな御意見を聞かせていただくときの障害者芸術をとらえる立場が障害分野からのとらえ方と私自身も感じることがあって、昔、インテグレーション、統合と呼ばれた時代から、インクルージョンというふうに今は変わってくるときに、障害のある人も社会の困りぐあいの一部を持つ人だというようなとらえ直し方があると、インテグレーションと呼ばれたものがインクルーシブとなってきましたので、アートという分野の現代アートの一部、そして、いろいろな名称で、アウトサイダーとか、エイブルとかというような名称の一部も重なりつつ、このアール・ブリュットというものが提示され始めているのではないかと理解したところです。

 ですから、障害というような視点をラベリングとか、コロニアルとか、そういうふうにとらえるのではなくて、障害ゆえに一般的には特性が障害とされてしまう部分が、特性が生かされて評価される、そういったかかわり方としてアール・ブリュットというものがあると理解していますので、マイナスなイメージでとらえる必要はなくて、もっとポジティブに打ち出していくべきものなんじゃないかというのがこの論点として、「国際的にも」から始まる座長が発言していただいた言葉は、そのまま拾わないと、途中で拾うと意味がよく分からなくなるんじゃないかということで、漏れという表現で書かせていただきました。

 とりあえず、論点の全体の中でちょっと欠ける部分については以上になります。それ以外の部分については、また別な方の意見を聞いてから、発言の機会が得られればと思いますので、とりあえずここで一段落付けたいと思います。

 以上です。

【青柳座長】  ありがとうございます。今の田中構成員のお話と、それからこれまでの様々なお話、何でも結構ですから、どうぞ御意見がございましたら。お願いします。

【保坂構成員】  東京国立近代美術館の保坂です。アール・ブリュットという言葉がいろいろと話題に上がるんですけれども、前回も申し上げましたし、論点整理の方にも書かせていただいたんですが、余りその言葉に集中すると僕ばかり話すことになってしまうので、もう別の話題に移った方がいいとは思うんですけれども、ただ 1 つ、確認をしておきたいのは、先ほど今中構成員の方からカテゴリーという指摘がありましたけれども、僕自身は、アール・ブリュットをカテゴリーだとは思ってはいないんです。アウトサイダー・アートという言葉が日本では最初に広まった流れもあって、アウトサイダー・アートとほぼ同義で使われるアール・ブリュットが、カテゴリー、あるいはアウトサイダー的なものを意味するととらえられがちなんですが、とにかく強調しておきたいのは、アール・ブリュットというのはあくまでも形容詞的な概念であって、作品に対するカテゴリーではない。つまり、ほかにも美術の概念としてミニマル・アートとか、コンセプチュアル・アートとか、いろいろなアートの形容詞的概念があるんですけれども、そういったものの 1 つとしてアール・ブリュットがある。だから、何もカテゴライズしてその中に閉じ込めようという意味ではなくて、作品に対するある種の形容としてアール・ブリュットという言葉を使っているんだと、そこはちょっと述べておきたいなと思います。

【青柳座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【今中構成員】  ありがとうございました。きっとおっしゃるとおりなんですね。僕もそうに思います。けども、きっと障害分野の方々はそうとらまえてないかなという気がしますね。ダブルスタンダードみたいな形で、ブルトンと争ったときの本来のデュビュッフェが言ったあの言葉と、日本全体が今使おうとしているというのは、非常に雑ぱくに言うと障害者アート、アール・ブリュット、アウトサイダー・アートというのがそういう座り方を僕はしていると思うんです、新聞紙上も含めて、僕の周りの方々。大学でお話をしたときも、学生の中には、僕が今言ったような、それは障害者アートですよね、美大・芸大の子たちさえもそう言ってしまっている。そういう意味では、今、委員がおっしゃったような内容をもう少し普及啓蒙していくということも必要やなとは思いますね。

 先ほど田中構成員から話があったんやけども、僕はずっと障害者をやってるので、ずっと枠にはめられてきたわけです。僕はたまたま養護学校に行かなかったんですけど、階段が登れたから。階段が登れなかったら、養護学校に確実に僕は行ってたんですけども、いつも僕らは選択を迫られるんです。いつも名前を付けられちゃうんです。唯一、僕、パラリンピックというのもどうも好かんなと思うたんやけど、僕が、ほんなら 100 メートル何秒で走れるかいうたら、走られひんのやけど、そういう意味ではパラリンピックありかなと思ったりして。

 でも、よう考えてほしいんやけど、画用紙の上で障害も、女性も、男性も唯一ない世界なんですわ。だから、そこに僕はいろいろな名前を付けて、垣根を造って、今でも垣根ありますやん。いろんな名前出してきて、私、こちらだし。そんなことやめて、もう普通のアートでええんちゃうかいな。そうしたときに、僕もデザイン上がりですから、よう分かんのやけども、フレーム作らんなお題に上がりませんね。それはアール・ブリュットでもいいし、エイブル・アートでもいいんやけど、ある一定のフレームを作らんな議論をしにくいんですよ。しにくいんやけども、一般にそういうカテゴライズするような名称を付けたときに、泣いてはる方がいはるでというのも、もしこれでアール・ブリュット行かれるのは結構なんです。我々は参加しませんけども、もしそういう言い方で行かれるんやったらば、そういう人らもきっといはるでということも、ちょっと頭の隅に置いておいてもらえたらなと思います。

【青柳座長】  どうぞ。

【保坂構成員】  でも、喜んでくれる人もいるわけですね、きっと。泣く人もいるけども、多分、喜んでくれる人もいる。どうなんでしょう。

【今中構成員】  喜んでくれはる人、いはるでしょうね。これだけ大きな会議になるんやからね。僕、滋賀の活動って非常に評価してます。これだけたくさんの大きな会議を開き、政治も金もある程度パッケージした形で動かれる。当然我々にはできないですね。こうしなければ、きっと昔々、僕がちょうど知ったころの 15 年、 20 年前のこんなものバザーで売っておいたらええでという時代から考えると大いに飛躍。そういう意味では喜んでいらっしゃる方がたくさんおられるけども、でも、よくよく考えたときに、僕は、福祉関係者がアール・ブリュットに対して称賛されている方はたくさんおられます。けど、よく考えてほしいのは、先ほど言ったとおり、あえてそういう形で名前を付けていかんな僕らのこの活動あかんかいなと言われると、現にインカーブはそういう活動をせずに日々送ってますんで、もっと違う方の売り出し方、フラットな打ち出し方を僕らは建前、建前を理想と言うならば、建前を持ってやっていかなあかんのちゃうかなと思ってますけどね。

【青柳座長】  どうぞ。

【田中構成員】  先ほど保坂さんからも形容詞だと言われた部分は、非常に重要だと思っていまして、なぜ形容詞が必要なのかということについては、この後、具体的にしていく活動ですね。ある一定の領域を示して、その活動の中でその人たちの存在が浮かび上がるというようなことをねらって進めていくということで、ですから、アール・ブリュットというのがもし手あかにまみれてネガティブな要素があるんであれば、そのことも含めてポジティブにしていくということが大事なんじゃないかなと思うので、この分野じゃないと、この作品は評価されませんよということではない。それが逆に今中委員が打ち出されている運動、働き方の 1 つでしょうし、たんぽぽの取組もそうだろうと。

 ですから、この全体の底を上げていくときに、日が差しにくかった分野ですね。病院の治療の一環だとか、子供の療育の一環で、絵は描きましたが、だれも評価しないので、多くの人に見る機会があれば澤田さんのような機会が得られた人も、だれにも評価されずに終わっていたというようなことに日を差すということが 1 つのポジティブなねらいだとすると、そこにあるのは、障害ゆえにいろいろ割り引かれた部分をお持ちの方が障害というカテゴリーになるようなイメージを持ってしまうからなんだと思うんですね。

 ですから、アール・ブリュットという言葉で進めていくということ自身が何かマイナスな作用があるんじゃなくて、そのように映った結果として、障害ゆえに割り引かれたという思いをお持ちの方がちょっとフラッシュバックしてしまうというようなとらえ方だとすると、前に進めていくということに、一歩でも今は踏み出す時期じゃないかと思っています。

【青柳座長】  どうぞ。

【今中構成員】  僕は美術を研究しているわけではないので、ちょっと教えていただきたいんですけど、そもそもアール・ブリュット、前も言われたかもしれないけど、障害者のアートではないですものね。当然、ブルトンは狂気と言いながら、ブルトンは狂人と言って、それに対してデュビュッフェは、いやいや、狂気の芸術ですよという話をされて、そういう意味では、そもそもアール・ブリュットと言ったら、アマチュアの画家さんも集めていかなあかんの違います?

 子供の絵というのは、初期の段階で否定は彼はしたと思うんですけれども、その辺は大丈夫なんですか。

【保坂構成員】  ここでどこまで、そのディティールまで話すかによるんですけれども、アマチュアの画家を対象にしなければならないというのがアール・ブリュットの 1 つの困難であり、 1 つの面白いところであると。

【今中構成員】  そうですね。

【保坂構成員】  アマチュアを対象にしなければならないが故に、ナショナルが、国が中心となって主体的にやることはむしろ難しい。つまり、国民全員を対象にしなければならなくなるので。通常の現代アートと言われるアートの世界では、基本的に、プロを対象にすればいいわけです。自発的に作品を発表し、それが更にギャラリストやキュレーターなど第三者の目を通して選ばれるなど、フィルタリングがいろいろな段階でかけられたものを対象にすればいいので、美術館による調査や研究が成立するんです。でもアール・ブリュットの場合、それがなかなか成り立たないわけです。であるが故に、国ではなくて地域が中心となった場合には、市民や県民の顔がもう少しは良く見えてくるでしょうから、調査や研究が実効的に行われる可能性が出てくると考えています。そういう意味でも、前回、このアール・ブリュットにおけるナショナルセンターの在り方というのは、国が主体的となってやっていくのではなくて、国が地域の機関をサポートしていくべきだと申し上げました。地域であればアマチュアにも面白い人がいるといううわさは耳に入ってくるだろうという願いというか期待もあって、前回のような発言をさせていただいたわけです。

【今中構成員】  何かそれが、座りが僕は悪いんですね。アール・ブリュットの原理に基づいてと、非常に堅い話です。いうところをきっと探っている方はたくさんいるんです。現にうちとこの見学者、来られた人でも、アール・ブリュットでこれはないですよねと。僕はないと思うよという話をして、探る方は美大生や芸大生もたくさんおられて、そうしたときに、いろいろな方便を使っていかなあかん言葉やなと僕思ってますねん。いわゆるダブルスタンダードのような言葉をジャパンだからいいんだということではないだろうと。そういう意味では、言葉じりばかりなんやけど、使うのはどうかなという気はやっぱりまだぬぐい切れないんですけどね。前回、岡部さんの方から挙げられた身体のことやったっけな。せっかくこのアートをやっていて、またアール・ブリュットに絡み取られるのかということをおっしゃった。僕もそういう意見はよく聞きます。

【青柳座長】  どうぞ。

【保坂構成員】  僕と今中さんばかり話していて申し訳ないんですけど、 1 つは、ダブルスタンダードにならないようにやっていくというのが恐らく重要で、今までダブルスタンダードになってしまっていたのならば、それを変えていくというのがむしろ今回のチャンスなんだろうと。例えば美術館に勤務していて、アール・ブリュットにかかわっていると、「草間彌生さんはアール・ブリュットなんですか。」とよく聞かれるわけです。正直言って、もちろん作品にもよりますけれども、一部の作品については、現代アートでもあり、アール・ブリュットでもある、その両面を持っていると言うことができます。でも、草間さんを時にアール・ブリュットと言い、草間さんを時に現代アートと言ったからといって、その姿勢を、ネガティブな言い方でダブルスタンダードというふうには言わないわけで、それは結局のところ、作品の持っている二重性や多様性を反映しているのであると考えていけばいいだろうと思います。

 もちろん、これが著作者人格権と抵触するのかよく分かりませんけれども、自分の作品はアール・ブリュットではないと制作者本人ないしその後見人が判断し、アール・ブリュットという文脈における収蔵は認めないと言われるケースも出てくるでしょう。それはもちろん主張していいことだと思いますし、実際、美術館においても、アール・ブリュット以外の概念において、そうした事例はあるわけです。日本画という、あるいは写真という文脈で評価されるのは好まないとかそういう感じで。また、自分の作品は、こういう美術館に収蔵してほしい、こういう美術には収蔵してほしくないと思うケースというのももちろんありますので、美術館は美術館でその良心に基づいて活動していく必要があるし、これまで実際そうしてきた。ですので、もう少し美術館的な存在や価値観を信用していただければうれしいなというのが正直なところです。

【今中構成員】  その美術と福祉という観点の違いでしょうね。僕らはやっぱり福祉なんでね。美術のフレームが成立したと言っても、福祉の立場、一障害者の立場からすると、もう一つ、納得できんなというのが僕です。

【青柳座長】  恐らく我々のこの会は、ここでいろいろ御議論願いたいのは、普通の美術が好きで、それで美術を勉強して、美術の専門高校に行ったり、あるいは大学に行ったりということを自分自身の生活設計、あるいは人生設計としてできる人と、それから、いろいろな障害を持っていて、そういう普通の戦略的な人生設計ができない人がいるわけで、そういう一般的な人生設計ができない場合の人の中にもすばらしい才能がある。そういうものをどうにか芽生えさせたい。そして、それが本当に芽生えたときには、もうほかのそういう戦略的な訓練を受けた人たちと同等に扱っていく。

 しかし、そうじゃない段階をどう、失望するとか、あきらめるとかなしに、少しでも自分の才能に気が付いていただく、それから、周りも気が付いていただけるようにしていく。それをどうするかがここの懇談会の一番の使命だと思うので、そのために、おっしゃるとおり、いろいろな言葉の定義というようなもの、あるいはカテゴライズとか、あるいは形容詞であるとかということを話してはいかなくちゃいけないんだけど、その原点を皆さんいろいろお考えいただきたいと思うんですけれども、岡部さん、何か。

【岡部構成員】  すいません。前回の言い出しっぺみたいな感じで。きょう、今中さんが来たら、こういう話には絶対なるだろうなとは思っておりました。

【今中構成員】  やめとこうと。

【岡部構成員】  でも、この手の話は、多分もう数十年前から繰り返されてきたことだと思いますし、この溝は埋まるかどう分からないんですけれども、先ほど青柳座長がおっしゃられたように、言葉のことだけではなくて、今回の懇談会というのは障害者の芸術活動の支援ということで、それがアール・ブリュットかどうかというのは、まずは、議論はいっぱいあるとは思うんですけれども、本質の部分を話していかなければいけないと思っています。先ほどおっしゃったように、自分が芸術的活動、教育とかも含めてなんですけれども、していきたいと思ったときに、困難というのは実は日本の中では障害者に限ったことではなくて、御存じのように美術関係、美大に進むにも、そこから先自立していくにも非常に経済的に困難という形で、あとあきらめていく人というのは全く障害者に限ったことではないんですね。

 障害者の芸術活動を支援するということは、恐らくそうでない人たち、一般の人たちの芸術活動も支援することにもなると考えています。逆に評価という話も出ると思うんですけれども、一般的なこれまでの美術的な評価だけではなく、全くアートに興味がなかったような人たちも、自分たちで評価できるようなコミュニティーができると信じていますので、障害者というのは 1 つの象徴と言うと変ですけれども、際立った人たちと考えておりまして、私個人的には、ソーシャルインクルージョンというのは何度も出てきますけれども、すべての人が芸術・文化を享受するということのための方策かなとは思っているんですけれども、済みません、まだまとまってないんです。

【青柳座長】  どうぞ。

【今中構成員】  じゃ、発展的な意見を。うちインカーブと金沢芸術工芸大学でやっている取組、手前みそなんですけど、すごくいいと思うんです。本当、僕、向こうで議論するのは、我々大阪なんですが、大阪から金沢行ってするんじゃなくて、金沢のあの地域の中で絡みと結び付いて、例えばNPO、社福なんですね。結局こういうアーチストがいはる、存在してはって、ほとんどが作業所、NPO、社会福祉法人の中にいはります。若しくは、毎日行かんでも、月 2 回、顔出ししてはります。所在とともに、体調を理解しているのは福祉のチームがいて、その福祉のチームだけでもこの活動は成り立たんのです。いわゆる卵からふ化させて鳥になったときにはどうぞということになります。そこまで培養させるというのが非常に困難なんです。何で困難かというと、これは厚労省的な話なんですけど、人件費が安いんです。福祉のスタッフでデザイン畑から来るなんていう人は、まあ、いないです。よっぽど例えばお身内に何かの障害をお持ちのお子さんがいはった、お母さんがいはったという方々、若しくは御兄弟が。そのスタッフがうちとこ、多いんですけども、そういう方々ならすっと来るんですが、お給料が非常に安い。

 そういう意味では、ちょっと遠回りの話になるんですが、人権の問題も大きく作用します。と言うても、前に進めへんので、そうなったときに、僕は先ほど言った、できるかどうか分かりません。例えば国公立の 5 芸大を中心にその地域の法人と結び付いて、事業を行っていく。障害者の方を見ることによって理解も深まる。どういうサポートが要るんだ。こういう世界には例えば芸大・美大の子たちの居場所があるんだ。活躍できる場所がここにあるぞと思うてくれはるというのは、やっぱり一緒に釜の飯を食うてという意味では、大阪から金沢に行くんやなくて、東京は東京、金沢は金沢で、 5 つの拠点を中心に授業、出前授業もいいんです。そこに国がお金を投資するのも当然、教材を投資するのも当然、そういう活動というのは、僕やっていて非常にいいなという気はするんですが、実感です。

【青柳座長】  その辺に携わっている本郷先生とか、重光構成員、何かございますか。

【重光構成員】  私どものところは設立 2 年目のNPOですが、資金が少なく、専任の者を雇用するようなことはできませんので、平均年齢 50 歳ぐらいの者がへろへろになりながら頑張っておるわけなんですけれども、ボランティア募集で芸術系の大学、京都には芸術系の大学、たくさんありますので、ボランティアで少しずつ来てもらっているんですが、彼女、あるいは彼らが福祉現場への就労というのは余り考えてないですね。場所も少ないし、多分最終的に、今、今中さんおっしゃったように、給料を聞いたら多分辞めてしまうん違うかなと。ほとんどの人は今、多くのこの、私、アール・ブリュットという言葉、学生も良く知っていますのでこの言葉を使うわけなんですけれども、非常に興味持っている人が多いですね。障害のある人のアートについて、 20 代以上の美大・芸大の学生、多分ほとんど 100 %近い、みんな知っているようですね。

 これが、私は今、教員、学校現場におりましたけれども、 35 以上ぐらいの人に聞いたら、変な顔をしますね。知っているかと言うと、えっというような顔をします。ですから、 20 代ぐらいの人は今ほとんど一般的に知っていると思います。興味持っていて、教員を志望する学生さんがいるんですけれども、教員を志望して、特別支援教育の学校現場で是非自分がその才能を引き出すような仕事をしたいということを言っている人はたくさんおります。それはええことやいうことで、どんどん今、講師で、まずは講師採用、講師になってもらって、それから正式採用を目指すというような方法で、今せっせと声掛けしたりしているんですけれども、福祉現場では、給料が安い部分がかなり足かせになるだろうなと思っています。この辺をどうしていくかということですね。これは 1 つ、大事な観点になるだろうと思います。

 それから、とりあえずそんなことでよろしいですか。

【青柳座長】  続いて教育の関係で。

【本郷構成員】  今中さんのお話、大変共有できるところがあって興味深く聞かせていただきました。 5 芸大という国公立の芸術系の大学の組織があって、様々な取組をやっている中で、こういう話題を出して議論するということは可能だと思います。ただ、実際にどれぐらいの議論になるかというのは今後の問題として、議論を立ち上げる必要があれば立ち上げていくことが大切と思います。そして、議論を通して各大学の考えを聞くことが必要と思います。そして、今中さんのお話のような、今回の懇談会で議論している内容の大事さをしっかり伝えるということがまず先なのだろうと思います。

 それから、もう一つ、関東に、私立と東京藝大も含めて美術系大学の協議会というのが立ち上がっています。これからの美術教育とか、これからの美術大学の在り方というようなことを話し合っているようです。大学の存亡を掛けてというところもあると思うのですが。そういうところの会議の中でも十分に議論になる内容と思って受け止めていましたので、少し整理したら、一度どういう反応があるかということは見てみたいというところです。

 あともう一つ、今の話で、金沢だけじゃなくて、東京藝大も一部ですが、少しそういう取組を始めたところです。これはボランティアに近い状態で始まっているもので、有志の教員と学生たちというところで実施しています。そしてあちこちからニーズがたくさん出てきています。こうした活動は、大学としての大きな組織としではなく、気持ちとしてというか、一部の考えとして取り組んでいた内容だったのが、 1 つの文化といいますか、大学でみんなが共有できる課題にまで発展してきたように思います。ですから、こういう会議の中で議論されるというのは、時代が変わってきたなということだと思っています。第 1 回のときにお話しさせていただきましたけれども、文化庁と厚労省が一緒になって会議を開くということ自体の意味が、大変日本が何かを必要としている時期であって、美術の分野にとっても、このことが美術全体、芸術全体を考える良いきっかけになるのだと思っています。美術側にとっては大変大事なことですが、厚労省側の考え方というのは、多分少し違いがあるところもあると思うんですが、本来美術が生かされることは大切で、本来の芸術とはそう言うところもあるのではないかという学生たちの意見は結構多いものです。今の芸術は何か、美術作品を売れるというのは何か、美術評価は何かというような根本的な問題の議論が大事になってくるというところだと思うのです。大学というのは若い人たちが研究する機関ですから、美術大学なら、大いに議論をした方が良いのではと。しかし、それを社会的に位置付けていくためには、ただ議論しているだけではなくて、実際に啓蒙的な活動も必要だし、実際の取組の活性化ということが必要になるわけです。

 ただ、美術界とか、今ここに関係者の人たちが集まって議論しているのですけれども、世の中で言えばほんの一部です。もっと世論とか、そういうところまで広げるための活動というのは、これは実行するとか、活性化するとかということになると思うのですが、それをどうやって活性化したらいいかという議論がここの問題で、言葉の意味合いというのはそれぞれあると思うのですけれども、本質的に、今中さんが最初におっしゃった、カテゴライズの問題じゃなくて、本当に大事なもの、大事なことをすぐれた芸術がその人たちの中にあったら、それは現代アートとして取り組むのも 1 つだし、障害者のアートとして取り組むのも 1 つだし、既にここの議論でも 2 つに分かれていること自体がちょっと不自然な感じがするので、言葉の違いだと思うのです。

 何かに向かって 1 つの考え方というのがここにはあるはずです。共有しているものが。そこを議論して、言葉は後付けでもいいのではないかという考え方を私は持っています。座長がお話になった内容から、私は自分のできる範囲で、美術系大学の協議会の方で 1 度、諮ってみようと思います。東京藝大の授業でも、今、学芸員科目というのがあります。それから、教職の科目があります。 5 芸大の話があって、今中さんがそういうことをお考えなのだということを知ったのですが、できるだけ多くの学生にます、考えるきっかけを作るために、そういうところの科目で、この問題といいますか、アール・ブリュットならアール・ブリュット、また、障害のある方々の美術をどう考えるかというようなことを授業の中に一度取り入れていくということは大変大事なことかもしれないと思ってます。積極的に担当の教員と話してみたいと思っています。

 それから、もう一つ、別々にカテゴライズされたて、障害のある方々の教育や、人材を作るのかということについてですが、私は別個に作るのではなくて、専門性が 2 種類必要だとしたら、 2 つの分野や、今の専門家が連携を組むという形を模索した方がいいのではないかという考え方を持っているんです。これ以上複雑な社会にしない方がいいのではと。またどこかで良い事例が御報告できたらと思います。

【青柳座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【岡部構成員】  美大の学生さんが福祉施設に入るというのは、私も賛成といいますか、また僕自身がその立場ですというか、国立ではないですけど、美術大学のデザインを勉強しまして、たんぽぽの家の施設の方で働いた経験があります。個人的な経験からいって、とてもいいことだと思っています。美術大学の学生というのは、常に多分葛藤を持っていると思うんですね。作家として、特にファインアートの世界ですけれども、作家として自立する、生活していける人というのはかなり圧倒的な存在感というか、在学中から異彩を放っているというか、そういった人たちはほんの一握りなんですね。やっとの思いをして美術を勉強して、自分の好きなことをして大学まで行ったんだけれども、その後、その先は美術をあきらめるしかないという人を何人も目にしてきました。そういった意味で、今中さんのおっしゃるようことはいいと思います。ただ、福祉施設に入る、職員となるというのは、また別の考え方が必要になると思っていまして、たんぽぽやインカーブはむしろアート活動というのを推し進めているんですけれども、多くの福祉施設というのは、アート活動というのは余りしていないわけです。

 福祉という言葉が出てきていますが、福祉というのは、基本的にはそこにいる人たちの生活、日々、安全に生活していけるということを最重視する場所であるはずです。アート活動に特化してしまうことに、とても私自身、疑問を感じているんですけれども、そこにいる人たちが描かなくなったらどうするんだという問題がいつもあると思います。前回、御紹介した山野さんも、 1 年以上、何も描かないということはざらにありましたし、その人がもう絵を描くことが嫌いになってしまうということもよくあることだと思います。

 アートというカテゴライズというわけではないですけれども、アートを勉強してきた人がアートを生かす場所としての福祉施設というのは、それはありなんですけども、もう少し広い考え方を持たないといけないと思っています。だから、アートでなくてもいいというか、福祉施設においては、別に選択肢の 1 つとしてアートがあるんじゃないかということです。そういう意味では、実は芸大・美大を出た人たちだけではなくて、福祉の勉強をした人でない人たちがアートにアクセスする機会というのを増やすというのも 1 つ、手だと思っています。

 もう一つは、すべて福祉側の職員になってしまうのではなくて、常に外部にそういった協力者ですとか、ファンのような人たちがいて、そこの間をつなげるような人というのが福祉施設の職員には必要なんではないかなと感じています。

 前回来て思ったんですけども、この懇談会でも、実践者はほとんど西日本なんです。なぜかなと思ったんですけれども、この懇談会か終わった後に、ちょうど翌日に障害とアートについて考えるトークカフェがあって、行ったんですけれども、もうそこでも非常に活発な議論が行われているんですが、そこには、何でかなと思ったんですけれども、多様な人たちが入り混じっているんですね。福祉でもアートでもない人たち、例えば学生さんとか、教育関係者とか、デザイン関係者とか、ありとあらゆる人たちがその施設を出入りしているんです。職員ではないんだけど、出入りして、自分たちができることを自分たちのできる範囲でかかわっている。そういうような 1 つの世界のようなものが出来上がっていて、そういったものが西日本には点在しているのかなと思います。何度も言われているように、地域の中でどう支えるかということが出ていますが、そういったことにもつながっていくのかなと思います。

 ちょっと話がばらばらとしてしまいましたけれども、意見です。

【青柳座長】  何か。

【本郷構成員】  今の岡部さんの話にかかわって、先ほど言い忘れたのですが、ここは美術が中心ということですので、美術系大学でもいいと思うのですが、こういう考え方を世の中に知ってもらうというのは、教育機関で学生たちにしっかりと議論してもらうというのはいいことだと思いまして、福祉系大学でも、授業や科目の中に取り込んでいただけたらと思います。多分既にそうした授業があるのだと思いますが、その中身が重要かもしれません。福祉系大学、美術系大学、教員養成系大学でもいいと思うのですが、そういうところの連携した議論ができて、それをそれぞれ各大学に持ち帰って授業展開できたら、きっと広がりは持てるのではないかなという感じはしています。先ほど福祉系大学を少し忘れましたので、今、改めて付け加えておきたいと思います。

【青柳座長】  どうぞ。

【保坂構成員】  ちょっとうろ覚えなんですけど、今、皆さんのお話を聞いていて思い出したのが今、教員になりたい人は、福祉施設に研修というか、行かないといけないんですよね。

【本郷構成員】  介護等体験。

【保坂構成員】  介護等体験ですね。それで、武蔵野美術大学の方でその制度を利用して、教員希望の美大生を、通年の形で地元の小平市の社会福祉施設で研修させる、それも単に研修させるのではなくて「造形ワークショップ」をさせるというのを、ある先生が 9 年ぐらいやっていたケースがあったりします。そうしたケースを聞いていると、これは制度的にうまくできるのかどうか分かりませんけれども、学芸員の資格所得課程の中に介護等体験も必修的に入れていくというのも 1 つ、面白いことなのかなと、ふと思いました。自分がもし学芸員の資格を取るときにそういうチャンスがあったら、人生がまた随分変わっただろうなと思いますし、恐らく今回の論点整理でも幾つも書いてありますように、作品を評価する人をどう育てていくかというのが今後の大きな議論になっていきますので、難しいかもしれませんけれども、そういう制度設計も必要なのかなと思います。

 あと、実際、美大は福祉に注目しています。皆さん御存じかと思うんですけど、東北の芸工大が今度、コミュニティデザイン学科というのを作りますが、その中には福祉も、学ぶべき対象というか、学生が実践をしていく場として想定されているようです。美大や大学の生き残りという中での動きでもあるとは思うんですが、一方で、この事例がすんなりと受け入れられるように、美術と福祉が意外と近いところにあるというのはみんな薄々感付いているところだと思うんです。なので、もし大学と福祉施設が連携をするとしたら、それは 5 芸大に限らず、多くの私大には結局公費が入っていますから、助成金という形で、だから是非いろいろな大学も視野に入れていただきたいなと思う次第です。

 以上です。

【青柳座長】  どうぞ。

【今中構成員】  インカーブはじめ美大・芸大からのインターンは多かったんです。最近はちょっと変わってきていまして、例えば京大、大阪の市大、東大、哲学、宗教、人類文化学、さっき岡部さんがおっしゃったみたいに、僕らから見たら外野の方々ですね。福祉でも、美術でもない、外野の方々の興味が喚起されてきているなというのを実感します。それはどこから来るのかなと思いますと、きっとたんぽぽの家もそうなんですけれども、アートだけに固執しているわけではない。それをつくり出すための市民運動であるとか、システムの作り方であるとか、本来難しいアートというものでどう収益を得ていくのか、それを 2 次利用、デザインという世界に持ち込んでどういう形で市場に乗せていくのかというところまでのシステム作りに特に外野の方々が興味がわいていらっしゃるなというふうに気がありますし、また、企業でもあえて福祉系に、例えば障害者雇用をたくさんしている企業さんが例えばインカーブに興味を引いているかということではなくて、うちとこで言うたら広告代理店さん、それこそミュージアムを持っている企業さん、あと、お洋服の海外のメーカーさん。だから、今現時点では局所的に見ていくんやなくて、もう少し外野の広がりを見詰めたような普及啓蒙ということも、伝わる土壌はできつつあるんかなと思ったりします。

【田中構成員】  この場は、先ほど本郷委員からもお話があったように、厚生行政と文化庁の行政の融合の場をどう見付けていくかということが非常に大事だと理解しての発言をさせていただきたいと思うんですが、今、福祉現場で多様な人をどれだけ活性化して活用していくかというのは、福祉サイドから見た展開としては、それこそ障害者芸術に限らず、いろいろな方たちと混ざり合っていくと、結果として共生社会の実現になっていくということで、まさにそこは実践をどんどん膨らませていけばいいと理解しています。

 今回、障害者芸術ということで特にアート的な展開を軸に議論をしていますので、そこもまだ障害者芸術ということのかかわりどころは多様にまだあると思うんですけれども、せっかくここまで議論が詰まったところでは、 1 つ、福祉サイドの今、様々な展開は、例えば事業所がプログラムとしてアート活動をやるということに対しての支援者が専門性があった方がいいかどうかというようなことで、それはもっとどんどん深めてまいりましょうということだと思うんです。

 そして、その事業所がそのようなプログラムを持たなくても、アートに携われる、若しくは芸術文化に携われるような機会というのは、例えば地域で行われるワークショップなど、プログラムを通して、そういったものも用意していくということで、そういうことをどんどん活性化していった方がいいんじゃないかということを今回、私のペーパーでは裏側の方になりますけれども、交流支援という形で、造型活動を支える福祉施設などのネットワーク構築と、芸術分野の人材と医療・福祉現場との出会い促進というような形で少し絞り込んだ形になっていますけれども、事業所ベースでやるか、自治体ベースでやるか、そして、それにナショナルセンターが 1 つのきっかけになるかというようなことで言うと、参考になる例がビッグ・アイの取組だったりするかと思うんですが、こういったものはいろいろなエリアを想定したり、対象者層を想定して幾重にも作っていくというようなことが大事だと思っています。

 それから、今回、 1 つ、文化行政の方で特に美術館機能におけるナショナルセンターというのが、これは特別にかつて話題になった漫画館のように特別な名前を冠した美術館ということではなくて、既存の美術館に、きょう、少し入り口でこだわらせてもらった、こういう澤田さんのような登れるステージがあるような、そういうものを具体化するような少し収蔵機能を備えて、そして、ここでも書かせてもらいましたが、キュレーションする学芸員を専門性を持った視点で用意して、アール・ブリュット分野のひとつ価値創造を促進するような、そういったものも軸として持つと、それがすべてではないんですけれども、一番大事なのは交流支援ということで、とにかく障害のある方が地域で、共生的社会の中で共に楽しく暮らしていく、悩みや苦労があるとしても分かち合っていけるというようなことをベースにしながら、今回、この 2 つの違う分野をつかさどっている行政の皆さんで共に話し合っているということでは、何とか一歩具体的に踏み出せるものが持てないかということで、そういう意味では、言葉には、保坂さんと同じで、アール・ブリュットという言葉を付けないと駄目だというところまでそこはこだわりませんけれども、そういう考え方によって成り立つような 1 つの価値観を創造するような機能は、是非この会議が行われたということで、踏み込んでいただける機会を特に両部長には伏してお願いをしたいと。せっかくのいい機会だということで、御議論をまた煮詰めていっていただく機会に私たちのこの議論がなれば幸いだなと思っています。

【青柳座長】  ありがとうございます。鈴木さん、何かありますか。

【鈴木構成員】  今おっしゃっていただきましたように、ビッグ・アイというのは専門家を育てたりとか、そういうことをする場所ではなくて、障害のある人たちが芸術・文化に触れる機会を作るところであったり、交流するところであったり、それが先に社会参加につながるようなことを生み出すきっかけになる場所として今まで事業を行っております。

 たまたま先日、兵庫県のある文化施設にちょっと相談があるということで行ったところ、隣に社会福祉センターがあったけれども、文化施設でやっている事業について、障害のある方が来るということを余り想定して今までやってこなかった。よく考えてみたら、隣にある福祉センターと連携すればできるんじゃないかなということで、どういったことができるかという相談を受けたんですけれども、まさに先ほどから議論になっています地域がどういった連携に取り組んでいくか。意外と地域の中にある中で連携すれば、こういった文化に触れる機会を作るきっかけはたくさんあるのじゃないか。ただ、それを知るきっかけがなかなかないとか、そういうことなので、私どもは、ビッグ・アイの中でそういった文化に触れる拠点としてやっていくことと、もう一つ、こういったところに何か情報発信していくということも含めて今後は、まだ新体制になって 3 年目なんですけれども、調査を含めてやっていくことが必要だなと。先日そういうこともありましたので、改めて痛感しました。

【田端構成員】   、お話ししようと思ったことがもう出てしまったという感じなんですけれども、前回の本郷構成員と重光構成員の話を聞いて、芸術系の大学から特別支援学校に派遣するという取組があったので、それを社会福祉法人や障害福祉サービス事業所に派遣する仕組みがあれば良いのではないかという提案をしようと思ったら、先に今中構成員の方から出されました。今は、今中構成員の個人的なつながりで金沢の大学からということだったんですけれども、これがたまたま個人がつながっていたというところだけで起きるのではなくて、仕組みとして起きたら本当にいいことだと思っています。

 そうやって美術系の学生の方に来ていただいて、勤めていただくことにつながったら、もちろんいいんですけれども、学生の方を事業所で受け入れていくという経験を持つことで、実際に美術系の学生さんが就職していただいた後に、長く勤めることにもつながるのじゃないのかと思っています。幾つか例を見ているのですが、美術系の大学の方が障害福祉サービス事業所に就職しても、ずっとその生活支援だけに追われてしまって、自分は何のためにここに勤めたんだろうということとかに迷ってしまって長続きしなかったり、一方では、サービス事業所も、そういう方々を受け入れることに慣れていないということもあって、全部アート系のことはその人一人に抱え込ませてしまうというような過度な期待もあったりするので、その辺の折り合いを見付けていくためにも、美術系の大学から障害福祉サービス事業所への派遣ということは有益だなと思っています。

 多様な目線を持った人が生活の場だったり、日中活動の場だったりするところに来るということで、さっき福祉側にとってもいいということがあるんじゃないかというお話が本郷構成員からもありましたが、今、どの施設も地域に開かれた施設を目指していて、自分たちが取り組んでいることを発信していかなければいけない。しかしどうしても福祉関係者だけだと限りがあって、そこにアートの知識を持っている方々に加わっていただくと、より本当の意味で開かれた施設になっていくんじゃないかなと思います。

 あと、関心を持ってくださっている層というのも、これも今中構成員が先ほど言われたのですが、福祉とか、美術だけじゃない。うちの方にもアール・ブリュットで卒論を書きたいですという学生さんが毎年のようにお話を聞きに来てくださいますが、哲学という観点で書かれる方もいて、本当にいろいろなところで、分野を問わずに関心を持っていただいているなという実感があります。

 以上です。

【青柳座長】  どうもありがとうございました。今までの皆さんの話を少し整理しますと、恐らく文化庁と厚生労働省が一緒になってこの懇談会を開いている。ですから、文化的なものの大きな輪と、それから、福祉厚生というものの大きな場との重なり合っているところをこの懇談会でどうにかしようと考えているわけです。だけど、今までの話の中でお分かりのように、ただ、それと重なったところだけというんではなくて、それが本当に効果的に有効に、将来的にいい方向に行くためには、そこに教育の要素であるとか、あるいは国という概念、地域という概念、福祉医療現場の概念、それから、それを取り巻く社会、それから、社会がどれだけそういうものに対して認識しているか、あるいは理解を持っているかという様々な重なりがあって初めて本当はうまくいく。だけど、それを我々は期待しながら、今のこの段階では、厚労省と文化庁の重なりぐあいの中で我々が 1 つの政策になるように提案をして、そして、それを政府としてのそしゃくをして、そして、予算なり何なりに落としていくということだと思うんですね。

 そう考えるならば、 1 つの、これは私からの提案なんですけど、アール・ブリュットにはもちろん障害を持っていらっしゃる方も含まれるけれども、そうでない、普通の方のアール・ブリュットも含まれる。だけども、今ここで話題にしているのは、厚労省と文化庁の重なりのところでいろいろ政策に落としていこうとしているわけですから、その場合には、広いアール・ブリュットの中の障害を持っていらっしゃる方々のアール・ブリュットと考えながら、その人たちの可能性をどう開いていくのかということをお考えいただいて、そして、それをもう少し具体的にいろいろ提案していただきたい。

 それから、今まで明らかに国の関与というのはいろいろ予算としてとか、いろいろあるけれども、その現場、それを実際に使っていったり、あるいは役立てていったりするのはあくまでも地域という、もっと詳細な現場でなければやっていけないということは皆さんも共通の認識だと思うので、そのあたりも頭に入れながら、それで、さっき田中さんが出してくれた、この裏のところのナショナルセンターの機能についてというようなあたりのことも踏まえながら、少し議論していただければいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【今中構成員】  今の御意見は良く分かります。きょう頂いた 6 ページの中で今まで議論ができていないところを何点かお話をします。 6 ページの 1 つ目の黒丸のその下の白丸、アートを仕事にするということ、これは前回、お話に出ていたと思うんです。よくこれも御意見を頂くんですけれども、アートを売っていいのかという方々もいらっしゃいます。それはデザインではないのか。アートは売るべきものではないという美術関係者の方もおられる、福祉関係者の方もおられる。

 インカーブは売っています。何でか。彼らの収益を確保するために。そもそも授産施設というのがあるんですね。だから、そういう意味で、アートを仕事にしていく。たんぽぽさんもそうですけれども、我々もしています。それも、かすみを食っているわけではない。常とう句なんですけれども、やっぱりいい作品をファンの方に買っていただくというのは非常に大事なことです。我々、初期の段階は美術館での展覧会を主に売っていましたが、これは御存じのように作品の販売ができません。なので、今アートフェアに軸を移しているという時期です。

 そうでなければ、例えばインフラの活動というのはグッズの売上げでしかないんですね。グッズの売上げも御存じのように、社会福祉法人ですのでそんなに多額のお金が入っているわけではありません。なので、例えばアジアで物を作って、どーんと大量に作って薄利多売で売っていくということはどこの法人もできないはずです。どうしているかというと、まず、我々のやり方でいくと、まず、僕らがプロットタイプを作るんです。グッズのプロットタイプを作って、それをお店に持ち込んで、ほんなら置いていきよしと言われて、販売がスタートするんですね。ただ、この置いていきよしというのも、 1 個作るのにとんでもない時間とお金が掛かっちゃうんですね、たくさん作らないから。内職の方を使っても非常に高価なものになっちゃう。

 どこでこれが売れるんかというていくとミュージアムショップなんです。それがロフトではないんです。ロフトのような商売は、日本のショップには無理ですね。企業が相当資金提供すれば別です。ただ、現状の支援費の中だけでやろうというのは絶対にできません。ゆえに、ミュージアムショップやったら、お客さんも払ってくれはるやろう、高価なものでも買ってくれはるやろうということで我々は行きました。今、全国に 30 店舗、インカーブは展開してます。ミュージアムショップを含めてです。

 そこでのキーワードは本当に 1 つなんですけれども、クオリティーですね。今まで作業所で作った白布の長テーブルの上で置いて 300 円というバザー商品やったんです。これではいつまでたってもお客様が増えないし、こういう障害バザーとか、障害グッズの認知というのがいつまでたっても、言葉は悪いんですけど、お涙ちょうだいで買ってあげましょうというようなところのお客さんばっかりなんです。それでは、作っている我々法人、施設側のプライドも保たてられなければ、アーチストのプライドもたもてないという意味では、クオリティーの高いものを販売をしていくという、まずグッズへの展開と、もう一つは、作品を販売していくという機会を設けなければ、アートで仕事というのは非常に難しい。展覧会ではなくて、国内外のアートフェアに展開をしていくというのは、今、我々、 15 年ちょいやっていますけど、ようやくたどり着いたところです。

【青柳座長】  何かございますか。どうぞ。

【本郷構成員】  今お話があったクオリティーという問題があると思うのですが、これは今の若い作家たちも同じで、結局、作品の質というところをどうするかと。今あちこちで、特別支援学校の方に派遣する学生たちについても指導する内容というのがあるので、ただ芸術系の大学生であるからだれでもいいというわけではない。そこにはそれぞれの場所で必要とする内容があるわけで、そのことをこちらの方が、例えば東京藝大で言えば教育連携企画・支援室という小さいのを作りまして、そこでコーディネートをしている。ニーズに合わせて、それに必要な専門性のある学生を派遣する。そういうふうにしないと、ただ美術をやっているからできるというわけでもないし、ある部分ではデザイン的なものが必要だと言うところもあるし、あるときには油絵の描き方とか、道具の使い方とか、工芸の学生も必要になるだろうし、そういうものの間に立つ、ニーズを理解して必要な学生を派遣する。若しくは、大学でなければ、どこかの美術関係者を派遣するにしても、そういう中間的な、つなげる相談窓口と言うのが、そういうコーディネートをするような 1 つの枠組みといいますか、そういうところがないとただ派遣するだけでは、必要なところに必要な内容の人材が行かないということがある。一応、東京藝大の場合はそういうニーズと相談をまずするということが基本でやっているということをお話ししておきたかった。それは、作品のクオリティーを上げるためにとか、美術教育の質を向上したいということが、特別支援学校でも多くなってきていることのようにも思います。

【青柳座長】  どうぞ。

【田端構成員】  作品を売るとか、商品化するというときに、中久保構成員から滋賀県で作者の権利保護のためのガイドラインや作品取扱い規程を定めたということの話がありましたが、御本人との手続的みたいなことを事業所としてもすごい知りたいと思っているという実感がありまして、実際に滋賀県が策定したガイドラインを基に、実はうちの事業所でも作品を売りたいと思っているので、そういうときに利用者さんとの間でどういう取決めをしておいたり、どういう手続をしておくことが必要かという問い合わせがあります。その取扱い規程も滋賀県から示されたのですが、実際使うとなると、すべて網羅できているわけでなくて、その施設でやりたいと思っていることにカスタマイズしていくというか、使ってこそどんどん精度が上がっていくということがあると思うのです。

 自分たちの団体が滋賀県にあるので、今は滋賀県の中でのそういう一定の方向性は出たのですけれども、もっと全国では、インカーブさんも、たんぽぽさんも商品化したり、作品を売るということをしているので、御本人との手続的なことを全国で共有できるようなというか、いろいろなパターンを知る機会、提示される機会があると各事業所もこういうことに取り組みやすいのではないかと思っています。

【青柳座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【重光構成員】  鈴木委員からの話に似ているんですけれども、人材育成について思いますのは、人材育成は現場でということです。大学ですとか、ナショナルセンターですとか、どこかに集めて研修会等の場は当然必要ですが、やはり現場で育っていくものだと思っています。今、例えば京都市内で学校現場ですとか、あるいは京都府内の福祉現場とか含めて取り組んでいるところで聞くと、美術系の大学を出た人が担い手となっているのですが、試行錯誤しながら、いろいろ苦労しながらやっています。

 例えばちょっとその例を 2 つ、お話ししたいと思います。京都府の城陽市というところに、青谷学園DOというアートをやっておられる福祉施設があるんです。京都でも草分けで、設立 40 年ぐらい施設ですが、通所、入所合わせて 120 人ほどおられる非常に大規模な施設です。 3 年前にそこが作品展をされたので、見に行ったんですが、そのときは、それほどの作品はみかけなかったのですが、今回また 5 月にされて、見に行ったのですが、そうしたら、びっくりするような作品がずらっと並んでいて、それで 6 月に見学させてもらいました。施設長さんと話していたら、 3 年前に美術系大学を卒業した学生さんを 2 人採用して、去年でしたか、新たに更にもう 1 人採用して、現在 3 人採用されている。それから変わってきたということをおっしゃっています。その美術系大学を出た 3 人の方と話しましたが、 3 人とも若い女性の 20 代の方ですが、ものすごく悩んでいると。最近はようやく軌道に乗ってきたと思っているけれど、それでもこれでいいのかと日々思いながら取り組んでいるということで、見学に行った我々が逆取材されたような形です。

 もう 1 件、学校現場での話ですけれども、京都市総合支援学校で、常勤講師をしている、これも美術系大学を出た方ですけれども、民間会社に、デザイン会社らしいんですけど、 2 年ほど勤めて、自分に合ってないことで辞めて、 4 年前に教員を志望してきた。その人は障害のある人の芸術に理解があるし、取り組みたいということで来たんです。ところが、なかなかいい作品が出ないで、 3 年間、試行錯誤して悩んでいた。そんな時に昨年の 4 月に開催した展覧会を見にきて、びっくりしたと本人が言っていました。それから、我々がしているアトリエ会を見にきてそれでノウハウを取り入れて授業のやり方を変えたところ、手ごたえが出てきたということです。

 ということで、苦労をすることは人材を育てるんですが、彼女にしてみれば、 3 年間、無駄な 3 年でもあったようだということですね。そうすると、ノウハウとか、情報交換する場が必要ですが、そのときに地域単位、都道府県とか、政令市とか、地域単位で相談支援や情報提供したり、福祉と現場と実際アートに取り組んでいる福祉現場と教育現場の担当者が交流したり、情報交換したりできる場、そこへ美術系の大学の先生とか、美術館の学芸員の方なんかが入って情報交換できる場が、あるいはお互いに見学し合ったりできるような場があればいいのかなと思います。

 ナショナルセンターがもし可能であれば、それはそれでいいと思うんですが、地域の拠点のセンターとの役割分担とか、連携性とかいうことは十分担保される必要がある。地域の拠点がまずしっかりして、地域のニーズと密着した取組の場が欲しいなと思います。その上に立って全国的な情報交換とか、交流できるようなセンターがあれば、それは良いだろうと思うんですけど、まずは地域という足元をしっかり整えていくことがいいのじゃないかなと思っています。

【青柳座長】  どうぞ。

【田中構成員】  ナショナルセンターについて先ほどのペーパーでも提案させていただいているんですけれども、先ほど漫画館のようにならないナショナルセンターということで、繰り返しちょっと強調したいのは、 1 か所というイメージではない提案をさせていただいているという御理解いただいて、今中構成員の方からも、 5 芸館ですか。

【今中構成員】   5 芸大。

【田中構成員】   5 芸大を中心にと言っていらしたような、そういうネットワークを 1 つの選択機能にするというようなイメージも、美術館を幾つか連ねて、ここではアール・ブリュットと書かせていただいているので、そのまま行きますが、その価値を想像して評価する。その役割を担いつつ、先ほどの作品のクオリティー、特にショップで売るクオリティーも、付加価値が付いてクオリティーが上がるというようなこともあると思いますので、展示、収蔵されているものは買えないけれども、そのレプリカなら欲しい、そういったようなことも含めて交流支援、相談支援のところで様々なネットワークを作りながら、造型活動や展示機会などに関する情報提供と併せて作者の権利に関する情報提供ということで、今、田端構成員のかかわっている滋賀の方ではアイサ、アール・ブリュット・インフォメーション・サポートでしたっけ。

【田端構成員】  サポートセンターです。

【田中構成員】  ということで、これもセンターという名前が付きながらも、地域に根差した様々な支援体制を整えているということなので、センターと言うと、どうしても中央に 1 か所というようなイメージになりがちな部分がありますので、そこはそういった視点ではないということをちょっと御理解いただければと思って付け加えさせていただきました。

 以上です。

【青柳座長】  ありがとうございます。どうぞ。

【今中構成員】   1 点だけ。芸術系の大学で、僕、言いたいと思うんですけども、アート系とデザイン系とあります。僕、この作品とか、グッズとか、仮にこれをコンテンツと言うならば、それを動かしていくのはデザイン学科の方が強いところがありまして、そういう意味でシステム作りにデザイン部門、コンテンツ作りのサポートにアート部門という形で学生もどっちか、ぜいたくなんですけれども、芸術系もデザイン系も含めてこういう議論を行っていけば、作品そのものに対しての興味がわく方、いやいや、そうじゃなくて、それを 2 次利用、市場に乗せていくときに興味があるぞというデザイン学科の子たち。だから、もう少しレンジを広くお話をしていければいろいろな、それこそ多様な学生さんが興味を持ってくれはるのかなと思いました。

【青柳座長】  どうぞ。

【岡部構成員】  ナショナルセンター構想の中にある情報交換とか共有の場なんですけれども、前回もお伝えしたんですけれども、たんぽぽの家の方でもそういった場を作っておりまして、「福祉をかえるアート化セミナー」というタイトルで 10 年ほどやっているんですけれども、基本的には創作活動をどう支援するかということも大事なんですけれども、ちょっと繰り返し言っているように、それがただ単にアート作品をつくり出すための支援ではないよということを先に言っています。というのは、何度も言いますけれども、福祉の現場というのがその人の生活を豊かにするとか、その人の可能性を引き出すという場で、アートというのは結果的な外からの目というか、ここでも言っている多様な視点によって選ばれたものにすぎないという結果的なものであると考えていますので、そこは併せて伝えていって、その上で、じゃ、実際にそういった可能性がある人たちをしっかりサポートするためには、権利関係も含めてどうサポートしていったらいいかということをやっています。

 本当に地域ごとという実感がありまして、ここ 3 年ぐらいは各地方自治体からセミナーの実施依頼がありまして、ある自治体は 3 年ぐらい連続でやっていたりとか、非常にニーズがあるんだなというふうな実感をしておりますが、その中で、きょうもお配りしましたけれども、障害者アートと著作権というような中久保さんですとか、滋賀の方々も研究されているような著作権、本当に難しいと私も思っていますけど、こういったことに関してほぼ必ず講座を持ちまして現場の職員の方々と共有しているという状況です。なので、ナショナルセンターができたら、我々がやっていることと競業してしまうなと思って、ライバルが増えるのか、それとも何か一緒にできるのかというのを今、正直考えているところではあります。

【青柳座長】  どうもありがとうございます。いろいろまだまだ御意見あると思いますが、そろそろ時間ですので、きょうの御議論はこのあたりにしていただきたい。今、簡単に整理しますと、恐らくナショナルセンター、ハコモノというよりも、クリアリングハウスであるとか、あるいはコンソーシアムのようなネットワーク形式のものを作って、それがそれぞれの地域や、あるいは現場というものを活性化したり、あるいはエンカレッジするような、そういうものになるのじゃないかなと、まだもちろん皆さんの合意を得ているわけじゃないんですが、何となくそんな気がします。

 それから、それぞれの現場で携わっている人たちを支援するための人材をどうするのかというようなこと。そのためには、恐らく各地域でのパイロット的な現場というものを育成していくということ。それから、コンソーシアムの中には、中久保先生のような法律問題に相談を受けて、そして、それが徐々により厚みのあるマニュアルや、あるいはQ&Aになっていって、それが全国の現場で活用できるようにしていく。

 それから、もう一方では、それぞれの現場の特殊性もあるでしょうから、その多様性を生かしていくというようなこと、そういうことができるようなものを是非お考えいただければと思います。

 それでは、ちょっと私、不手際で時間が過ぎてしまいましたが、本日はここまでといたしまして、事務局の方から何かございますでしょうか。

【文化庁文化部舟橋芸術文化課長】  御議論ありがとうございました。次回の本会議の予定でございますけれども、次回は 7 25 日の木曜日、午後 2 時から 4 時まで開催をいたしたいと思っております。

 なお、厚生労働省、文化庁におきまして、 8 月末に来年度の予算の概算要求を行う必要がございますので、それに向けた検討を行っていく必要があることなどを踏まえまして、次回の会議におきまして、これまでの議論についての中間的な取りまとめをさせていただきたいと考えております。次回の会議までに、事務局におきまして中間取りまとめ案を準備したいと考えておりますので、それに沿って次回の会議で御議論をお願いしたいと考えております。会場等の詳細についてはおって御連絡をさせていただきます。

 それから、 2 点目ですけれども、報道などで御承知かと存じますが、座長をお務めいただいております青柳先生におかれましては、 7 8 日付けで文化庁長官に就任されるというご定になりました。これに伴いまして、本懇談会の構成員としてのお立場からは離れられるということになっております。このため、次回の会議につきましては、青柳座長から御指名を頂きました座長代理に議事進行をお願いしたいと考えておりますが、構成員の皆様方から御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【文化庁文化部舟橋芸術文化課長】  それでは、青柳座長から座長代理の御指名をお願いいたします。

【青柳座長】  それでは、大変僣越ではございますけれども、本郷構成員に座長代理をお願いしたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

(  拍手 )

【本郷構成員】  青柳座長の後で大変役不足と思いますが、あと 1 回ということもありまして、努力してみたいと思いますが、皆さん方、また御協力もお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【青柳座長】  それでは、これで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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