ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第14回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録(2013年12月4日)




2013年12月4日 第14回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録

年金局

○日時

平成25年12月4日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省9階 省議室
東京都千代田区霞が関1-2-2


○出席者

吉野 直行 (委員長)
小塩 隆士 (委員)
小野 正昭 (委員)
川北 英隆 (委員)
駒村 康平 (委員)
武田 洋子 (委員)
西沢 和彦 (委員)
山田 篤裕 (委員)
米澤 康博 (委員)

○議題

(1)年金財政における経済前提のあり方について
(年金部会への議論の経過報告について)
(2)積立金運用のあり方について
(3)その他

○議事

○吉野委員長 まだお見えでない方もおられますけれども、時間になりましたので、ただいまから第14回「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」を開催させていただきたいと思います。

 委員の皆様には、御多忙のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日の出欠状況でございますけれども、植田委員だけが御欠席で、あとの委員の方々も来られると思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、カメラの方はここで御退席をお願いしたいと思います。

(報道関係者退室)

○吉野委員長 事務局のほうから、森参事官、今日の資料について確認をお願いいたします。

○森大臣官房参事官 おはようございます。年金局資金運用担当参事官の森でございます。

 私のほうから、資料の確認をさせていただきます。

 資料1-1と資料1-2は「年金財政における経済前提のあり方について(専門委員会における議論の経過報告)」ということで(案)と参考資料集でございます。

 資料2関係は「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」の概要と本文でございます。

 資料2-3は「厚生年金・国民年金の積立金運用について」。

 資料2-4は「専門委員会での積立金運用に関する主な意見の整理(未定稿)」。

 参考資料は「今後の年金部会における議論の進め方」でございます。

 皆様、お手元にございますでしょうか。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 それでは、議事次第にございますように、今日は2つの議題がございます。

 最初に、今、森参事官から御説明のあった「年金財政における経済前提のあり方について」の部分と、後半では「積立金運用のあり方について」、大体1時間ぐらいずつ御議論していただければと思います。

 まず初めに「年金財政における経済前提のあり方について」であります。

 今日を含めまして、全部で14回の専門委員会、それから一部の先生方には3回の検討作業班に入っていただきまして、議論をしていただきました。今月開催が予定されております年金部会で、ここでの議論を報告することになっております。その経過の報告につきまして、皆様に今日は議論していただきたいと思っております。

 資料としましては、資料1-1「年金財政における経済前提のあり方について」、資料1-2「年金財政における経済前提のあり方について-参考資料集-」を準備していただいておりますので、事務局の山崎数理課長から御説明をお願いいたします。

○山崎数理課長 それでは、御説明申し上げます。

 まず、資料1-2の参考資料集の3ページをお開きいただきたいと思います。

 前回の専門委員会におきまして、御議論の中で、今回の経済前提の設定に用います経済モデルの概念図、フローチャートのようなものがあると理解にいいのではないかということで、宿題を頂戴しておりまして、それを準備いたしましたのがこちらということで、ます初めに、こちらの説明をさせていただきたいと存じます。

 これは長期の経済前提の設定に用いる経済モデルの概念図ということで、足下の前提につきましては、内閣府の中長期試算を踏まえてということになるわけでございますが、その期間が過ぎました後の長期の平均的な経済前提の設定ということで、基本は一番上の囲いにございます「コブ・ダグラス型生産関数」に基づきます成長方程式でございますが、こちらに基づいて推計を行うということで、実質経済成長率が労働の寄与でございます「労働分配率」×「労働成長率」の部分、それと「資本分配率」×「資本成長率」という資本の寄与の部分、さらにその残差として技術進歩等で説明されます「全要素生産性(TPP)上昇率」と分解されるということでございます。

 どのようなものを外生で与え、どのようなものが内生的に算出されてくるのかというところでございますが、まず「労働分配率」と「資本分配率」は外生で与えて、推計期間中一定ということになるわけでございます。

 「全要素生産性(TPP)上昇率」が実質経済成長の大きさに大きな影響を与えるわけでございますが、これも外生で与えるということで、これの与え方次第で経済成長率は大きく変わってくるというものでございます。

 その上で「労働」のブロックを見ていただきまして「労働投入量」でございますが、これは基礎となります人口推計、さらには労働力の需給推計によりまして労働力率、就業率、失業率というものを推計することによりまして設定されるということになるわけでございます。

 「資本投入量」につきましては、「資本減耗率」を外生で与えますとともに、「総投資率」も外生で与えまして、この両者によりまして逐年資本投入量の推移というものが推計されてくるという構造になるわけでございまして、賃金上昇率は実施経済成長率と労働投入量から労働者1人当たりの実質経済成長率が実質の賃金上昇率として反映されてくるというメカニズムになっているわけでございます。

 コブ・ダグラス型の生産関数に基づきまして生産されたものが、まずは下の枠囲いでございますが、この生産物であるGDPが、支出面では「消費」と「投資」に分解されるということでございまして、一方で分配面では、その下の欄でございますが「賃金」と「利潤」に分解されるということになるわけでございます。

 この場合の「投資」と申しますものには、資本減耗を補う部分も入っているということで、いわゆる粗投資と呼ばれるものになるわけでございますし、下の利潤もやはり資本減耗を補う部分も含むという意味で、粗利潤ということになるわけでございます。

 基本的には、一国経済全体で閉鎖経済でございますと、「貯蓄」=「投資」となるわけでございますが、実際には開放経済ということで、貯蓄と投資の差が経常収支ということで、海外とのお金のやりとりになるということでございまして、従来はこの投資のほうだけを考えまして、総投資率というのは過去のトレンドを外挿して与えていたわけでございますが、今までの御議論で、これについて海外とのやりとりをある程度考えるべきだということで、経常収支が将来どうなっていくのかということの見込みに応じて、貯蓄率と投資率の差がどういうふうに推移していくかというものを考えて、ある程度の幅を持って総投資率の推計を行うべきではないかという議論がなされてきたところでございます。

 下の欄に参りまして、GDPに関しまして、稼働率を考えて、ある程度需要というものを考慮することができないかということで検討してまいったわけでございますが、稼働率そのものを直接的にフローに組み込むというのは技術的に難しいということで、考え方といたしまして、景気の循環的な変動によりまして稼働率というのは推移してまいりまして、その結果、需給ギャップというのが変化していくわけでございますが、将来における長期の平均的な状況を見極めるという意味では、これを景気の循環をならした平均的な稼働率で日本経済が動いた場合に、どのぐらいのGDPになるのかというものを見込む必要があると。

 従来の方式では、足下の実際のGDPを初期値として推計を行っておりましたので、そのスタート時点におけるたまたまの景気変動上の状況が将来にずっと影響するという構造になっていたわけでございますが、将来の平均的な状況を推計するという意味では、これを潜在GDPに置きかえることによりまして、より中立的な推計ができるのではないかということで、そういう御議論をいただいているところでございます。

 「利潤」のところから矢印が上がっておりまして「利潤率」となっておりますが、こちらの利潤率は資本減耗分を差し引いたものとしての純利潤率ということでございまして、これが右上にございます「実質長期金利」と長期的には相関があるという考え方で、実質長期金利を整合的に推計する。それに分散投資効果の分を加えることによって、実質の運用利回りを算定するという構造になっているところでございます。

 物価上昇率につきましては、長期の平均値というものは外生的に与えるということでございますが、現実には、景気の循環に応じて物価上昇率は変動があり得る。これについては、マクロ経済スライドの効果に影響するということでございますので、別途、変動を織り込む場合の前提を設けるのがよいのではないかということで、当然物価上昇率の変動というのは需給ギャップと相関があるということで、この下の欄に設けているような姿になる。

 おおむねこのような概念図で全体像が見えるのではないかということで、準備させていただいたところでございます。

 フローチャートの説明はこの辺で切り上げまして、続きまして、資料1-1でございます。

 前回までの御議論を踏まえまして、事務局のほうで準備させていただきました専門委員会における議論の経過報告の案ということで、委員の先生方にはあらかじめ送らせていただいておりますが、改めてこちらで読み上げて御確認をいただきたいと存じます。

 

 1 報告の趣旨

 

  厚生年金及び国民年金においては、法律の規定により、少なくとも5年に一度、「財政の現況と見通し」を公表する、いわゆる財政検証を行うこととされており、次回の財政検証を平成262014)年までに行うことになっている。本専門委員会では、社会保障審議会年金部会における討議に資するため、年金財政における経済前提や積立金運用のあり方など、専門的・技術的な事項について、平成232011)年10月から平成252013)年12月までの間に14回の会合を開催し、検討を行ってきた。

  本専門委員会における検討事項のうち、主に年金財政における経済前提のあり方に関する事項について、現在までの議論の経過を報告するものである。

 

 2 財政検証に用いる経済前提の基本的な考え方

 

 (1) 平成16年改正では、少子高齢化が急速に進展する中、将来の現役世代の負担を過重なものとしないために、最終的な保険料水準を法律で定め、その負担の範囲内で給付を行うことを基本に、給付水準を自動的に調整する仕組み(いわゆるマクロ経済スライド)が導入された。財政検証は、このような給付と負担の均衡を自動的に図る仕組みの下で、厚生年金及び国民年金の長期的な財政の健全性を定期的に検証するものである。

 

 (2) 財政検証の結果は人口や経済の長期的な前提に依存するが、これらの前提については財政検証を行う時点において使用可能なデータを用い、最善の努力を払って長期の平均的な姿として妥当なものを設定する必要がある。しかし、人口や経済の長期的な見通しには限界があり、時間が経つにつれて新たなデータが蓄積されると、実績との乖離も生じてくる。このため、少なくとも5年ごとに最新のデータを用いて諸前提を設定し直した上で、現実の軌道を出発点として新たな財政検証を行うことが法律で定められている。

     そもそも、財政検証の結果は、人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影(projection)という性格のものであることに留意が必要である。このため、財政検証にあたっては、複数ケースの前提を設定し、その結果についても幅を持って解釈する必要があるものである。

 

 (3) 長期の経済成長率等の前提を設定するにあたり、平成21年財政検証および平成16年財政再計算において長期の経済前提を設定する際に用いられてきたマクロ経済に関する試算に基づく設定方法は、諸外国における経済前提の設定方法と比べても工夫されたものとなっていることから、今回も基本的には同様の手法を用いることとする。ただし、これまでの設定方法全般において、改良の余地が残されていると考えられる点については可能な限りの改善手法を採ることとする。

 

 (4) マクロ経済に関する試算とは、具体的には、成長経済学の分野で2030年の長期の期間における一国経済の成長の見込み等について推計を行う際に用いられる標準的な生産関数(コブ・ダグラス型生産関数)を用いて、過去の実績を基礎としつつ、日本経済の潜在的な成長力の見通しや労働力需給の見通しを踏まえたパラメータを設定し、経済成長率等の推計を行うものである。

     経済モデルとしてコブ・ダグラス型生産関数を用いることから、供給側の状況のみを考慮したモデルになっているのではないかという指摘が考えられる。これに対しては、供給されたものの全てが自ずと需要されるという仮定に立脚するのではなく、裏付けとなる需要があるという想定(シナリオ)の下で整合的なパラメータを設定することにより、需要を考慮した供給と考えるという立場をとるものとしてはどうかと検討したところである。

 

 3 経済モデルの建て方とパラメータの設定について

 

 (1) マクロ経済に関する試算の枠組み(経済モデルの建て方)は、平成21年財政検証や平成16年財政再計算で用いられた枠組みと同様、以下の式によるものを採ることとする。

 

 式は省略させていただきます。

 

     これらの式を用いると、全要素生産性(TPP)上昇率、資本分配率、資本減耗率、総投資率および労働投入量のパラメータを設定すれば、マクロ経済の観点から整合性のとれた、経済成長率(実質GDP成長率)および利潤率の値を推計できる。

  ※ 経済モデルの枠組みとしては、最近の計量経済モデルの一例として世代重複モデル(OLGモデル)についても検討した。世代重複モデルとは、生存期間が有限である個人が毎期複数人存在することを想定し、世代毎のライフサイクルにおいて個人の効用に基づいて最適化された消費貯蓄行動を試算するモデルである。個人の行動のほか、資本蓄積、労働供給、人口動態が内生化され、様々な政策を比較する際には有用であると考えられるものの、効用の前提に恣意性があることや、利子率などの収束計算の労力が非常にかかることなどから、これまでの財政検証に用いられてきたモデルに代替することは困難であると考えた。

 

 (2) 平成21年財政検証での長期の経済前提の設定においては、将来に対する不確実性がとりわけ大きいと考えられる全要素生産性(TPP)上昇率について3通りの設定を行い、幅を持たせた経済前提の設定が行われた。

     将来に対する不確実性という観点で考えれば、全要素生産性(TPP)上昇率だけでなく、その他のパラメータも不確実性を伴うものであることから、それぞれのパラメータ毎に幅を持った設定を行うという方法も考えられる。

     幅を持ったパラメータを設定するにあたっては、現時点で得られるデータの将来への投影(projection)という観点で、長期的に妥当と考えられるシナリオを想定した上で、どの程度の幅に入るかを検討する必要があるのではないか。その際、パラメータに応じたシナリオの設定に留意する必要があり、よって、パラメータ毎に幅を持たせる場合、それぞれをどのように組み合わせるかという課題が生じることになる。全ての組み合わせに即した経済前提を設定するのは適切ではなく、背景となるシナリオがそれぞれ整合的な組み合わせとするべきである。したがって、パラメータ毎に幅を持たせるとしても、結果として設定すべき経済前提の数は限られたものになると考えられる。

 

 (3) これまでのマクロ経済に関する試算に対して改良の余地が残されている点の1点目として、需要側の要素を考慮するという論点について、潜在GDPを算出するための潜在資本投入量を推計する際に用いられている「稼働率」に着目することとした。ただし、一国経済における稼働率に関する統計が完全には整備されていないことや、稼働率を乗じる対象となる資本ストックが「粗資本ストック」(除却のみを考慮)である一方、マクロ経済に関する試算に用いられている資本ストックは「純資本ストック」(除却と減価償却を考慮した市場価値に相当するもの)であることもあり、稼働率を直接的に組み込むことは困難であると考えた。

     そこで、マクロ経済に関する試算の初期値として用いる足下のGDPを「(景気循環の中で)平均的な稼働率で生産要素を使用したときに達成できる潜在GDP」に置き換えることで、稼働率の要素を間接的に組み込んではどうかと検討した。

 

 (4) これまでのマクロ経済に関する試算に対して改良の余地が残されている点の2点目として、海外経済との関係を考慮するという論点について、「総貯蓄率」と「総投資率」の関係性に着目した。これは、政府部門を含めた一国全体の貯蓄と投資の差がおおむね海外経済とのやりとりによるものと考えられるためである。

     過去の実績をみると、総貯蓄率は総投資率よりも高く、総貯蓄率から経常収支対名目GDP比を控除するとおおむね総投資率の水準となる。これまでのマクロ経済に関する試算での総投資率は、長期的に低下している傾向を外挿して設定していたが、このことは一定の経常収支対名目GDP比が勘案されているものと考えられる。経常収支の先行きについては、赤字化する、黒字が継続するなど様々な見方がある。したがって、今回の総投資率を設定するにあたっては、過去からの傾向を単に外挿するものだけでなく、総貯蓄率の傾向を外挿したものも勘案しつつ、幅をもった設定とする必要があるのではないかと考えた。

 

 (5) 資本分配率および資本減耗率については、これまではそれぞれ直近の過去10年間における実績値で一定と設定されてきた。資本分配率については、労働分配率の推移と賃金の動向との関係性に留意しながら設定する必要がある。過去の実績をみると、2000年代に入り、賃金が低下する時期に資本分配率が上昇している。このため機械的に直近の過去10年平均をとる場合だけでなく、長期的な動向という観点からさらに長期間の平均をとることも検討した。

     資本減耗率については、過去の実績は緩やかな減少傾向にあるが、資本分配率と同様に幅をもった設定とすることも考慮しうるのではないかと考えた。

 

 (6) 経済成長の原動力となる全要素生産性(TPP)上昇率については、19701980年代は経済成長率のうちTFPの寄与が2%台と高かったが、1990年代に大幅に減速し、2000年代は1%弱の成長寄与と若干回復しているところであるとの分析がある。また、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(平成25年8月8日、経済財政諮問会議提出)では、全要素生産性(TPP)上昇率として、経済再生ケースで2020年代初頭にかけて1.8%程度まで上昇、参考ケースで2020年代初頭におけて1.0%程度にまで上昇するとの前提が置かれている。このような過去の実績に関する分析や平成26年初に公表が見込まれる新たな内閣府の試算等を踏まえつつ、上記試算のみに捉われない幅広い設定を考えるべきではないかという議論をしている。

 

 (7) 労働投入量については、平成21年財政検証では、雇用の非正規化が進む中で、頭数だけではなく、延べ労働時間でどのように推移するかを捉える必要があることから、従来のマンベース(労働力人口)ではなくマンアワーベース(総労働時間)を推計し設定した。これは、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」を基軸とした上で、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計」を用いて、さらに、過去の傾向から雇用者比率を算出し、フルタイム雇用者及び短時間雇用者のそれぞれについて見通しを作成し、総労働時間を計算するものである。今回も基本的に同様の手法を採るものと考えられるが、平成26年1月を目途に「日本再興戦略(25年6月)」を踏まえた新たな労働力需給推計がとりまとめられる予定であり、具体的な数値については改めて本専門委員会にて議論を行うものと考えている。

 

 4 経済前提の設定に係る他の論点について

 

 (1) 運用利回りの設定については、以下の項目について検討した。

 

  (ア)実質長期金利については、実質長期金利と利潤率とは、経済学的に関係が深いものであるため、平成21年財政検証の時に採用した過去の実績を基礎としつつ利潤率と関連づける方法を利用できるのではないか。ただし、実質長期金利と利潤率の相関関係は、バブル崩壊前後を含む長期間を取った場合に高くなることに留意し、実質長期金利を利潤率と関連させて推計する際の過去の平均値は長期間にわたってとる必要があると考えられる。

 

  (イ)また、長期金利については、実際の金融市場では長期的な動向がどう予想されているかといった情報も参考になると考えられる。長期債のイールドカーブを観察し、市場関係者がフォワードレートをどの程度の水準で見ているかを検討すると、名目値でおおむね2~3%程度の金利が予想されているのではないかと考えられる。

 

  (ウ)平成21年財政検証では、長期間の平均として実質長期金利(国内債券の運用利回り)を日本経済の長期的な見通しと整合性をとって設定した上で、それに対し内外の株式等による分散投資でどのくらい上積みできるかという考え方で設定した。今回の長期の運用利回りの設定にあたっても、前回と同様の考え方に立つこととし、長期間の平均としての国内債券の運用利回りに分散投資による効果を上積みすることとする。

 

   積立金運用に関しては、より高いリスクをとってでも期待リターンを高めるべきという考え方もあり得るが、本専門委員会では、内閣府の試算をもとに一定の前提を置いて、平成21年財政検証と同様に、全額を国内債券で運用した場合のリスクと等しいリスクの下で最も効率的なポートフォリオを設定した場合において想定される期待リターンの上積み分を基本として設定することを念頭において試算した。複数のケースを想定した試算結果をまとめると、分散投資効果は、おおむね0.3%~0.9%の範囲の数値となった。また、平成21年財政検証と同様の手法のほかに、賃金上昇率を上回る実質的な運用利回りによる分散投資効果について試算した。その結果、実質的な運用利回りによる分散投資効果は、おおむね0.4%前後となった。

 

 (2) 物価上昇率の設定について、これまでの財政検証では、日本銀行の見解、過去の実績の平均値、内閣府による試算などを参考にして設定されてきた。日本銀行は「物価安定の目標」を新たに導入し、消費者物価の前年比上昇率で2%とすることとされたが、こういった事項をどの程度まで考慮するのか検討する必要がある。

 

 (3) 足下の経済前提の設定について、平成21年財政検証では平成272015)年以前の経済前提を内閣府「経済財政の中長期方針と10年展望比較試算」(平成21年1月)に準拠して設定していた。内閣府による経済見通し/経済前提の中長期試算は例年年明けに公表されることから、平成26年初に公表が見込まれる新たな試算を踏まえつつ、足下の経済前提をどのように設定するかは改めて本専門委員会で議論するものと考えている。

 

 (4) 長期的な経済前提を設定するだけでなく、変動を織り込む場合の経済前提についても設定が必要であると考えた。これは、平均的には同水準の経済前提であっても、変動がない場合と変動が大きい場合でマクロ経済スライドによる調整の効き方が異なることから、変動を織り込んだ場合における経済前提も別途設定してはどうかと考えたものである。変動の周期については、これまでの景気循環の長さを参考とし、また変動の幅については物価、賃金の過去の実績をみながら設定する必要があるものと考えている。

 

 5 具体的な経済前提の設定について

 

  前項までにおいて、長期的な経済前提を設定するにあたっての基本的な考え方を整理してきた。しかし、パラメータ等の具体的な設定については、平成26年1月にとりまとめ予定の日本再興戦略を踏まえた新たな労働力需給推計や、例年年明けの時期に内閣府から公表される経済見通し/経済財政の中長期試算等を踏まえて、改めて本専門委員会において議論を行い、検討結果をとりまとめ、年金部会に再度報告することとしたいと考えている。

 

 次の8ページは、今までの開催状況を記載したものでございますので、読み上げは省略させていただきます。

 資料1-2の参考資料集でございますが、こちらは基本的に前回4分冊でお出ししたものから年金部会に報告するに当たりまして、これは必要であろうというものをピックアップした資料が中心でございまして、逐一の御説明は時間の関係で省略させていただきますが、1点、前回御質問いただいたこととの関係で御説明しておきたいことがございます。

37ページは、参考ということで「内閣府『中長期の経済財政に関する試算』について」の資料抜粋でございます。

 これをめくっていっていただきまして、39ページに「(2)マクロ経済に関する主要な前提」がございますが、これの「労働力」のところで「『日本再興戦略』で掲げられている政策により女性、高齢者を中心に各性別年齢階層別労働参加率が上昇」という記述がございまして、こちらの括弧書きの中で下から3行目のところでございます。「男性の労働参加率は、平成222010)年度の49%程度から、平成352023)年度の59%程度まで上昇」ということで、実は前回の資料は、私どもの手落ちで誤植がございまして、これが「50%」という数字になっておりました。その関係で御質問を頂戴したのでございますが、内閣府の資料はちゃんと「59%」になっておりまして、私どもの転記ミスで誤っておりまして、今回「59」に直させていただきました。

 あわせて、日本再興戦略でどのような労働政策が掲げられているかということについても御質問を頂戴いたしましたので、おめくりいただきまして、41ページに日本再興戦略の中での労働政策の部分を抜粋したものを掲げてございます。

 これも時間の関係がございまして、詳しくは御説明いたしませんが、この中で左の欄の上から5行目ぐらいのところ「少子化対策に直ちに取り組むと同時に、20歳から64歳までの就業率を現在の75%から2020年までに80%とすることを目標として掲げ」ということがございまして、日本再興戦略を踏まえた労働力人口の推計は、雇用政策研究会で今、取り組まれておりまして、年明けに報告をということでございますが、内閣府が8月にこの試算を出されたときには、ここにございます2020年までに足元の75%を80%にすると、このレベル感に基づきまして、暫定的に推計をされたと承知しておりまして、そういう意味では、こちらにございます逐一の政策を詳細に織り込んだものではないと承知しているところでございます。

 あと、42ページの参考4で世代重複モデルの概要もつけ加えてございます。

 お時間をとってしまいまして恐縮でございますが、御説明は以上でございます。

○吉野委員長 山崎数理課長、ありがとうございました。

 それでは、委員の先生方から、ただいまの資料1-1を中心に、あるいは資料のほうもあれば資料1-2で御議論いただきたいと思います。どなたからでも結構です。

 山田先生、どうぞ。

○山田委員 まずは簡単な質問です。

 最後に御説明いただきました参考資料集の39ページです。単なる事実確認なのですけれども、労働力の括弧内の数値は、どちらが出したものでしょうか。JILPTとの関係が最後の説明で混乱してしまいました。

○山崎数理課長 こちらの数字は、内閣府のほうで出された数字ということでございます。

○山田委員 41ページの数値は、単に目標だから、JILPTも関係ない数値だということですね。暫定的にとさっきおっしゃったのは、どこが暫定的にやったのでしょうか。

○山崎数理課長 この日本再興戦略では、2020年までに80%ということで目標が掲げられておりまして、以下、いろいろ政策が述べられているわけでございまして、ただ、6月にこれが出まして、内閣府は8月に試算を出されたということで、間がありませんので、そういう意味では、JILPTがやられるのであれば、かなり政策をそれぞれ入れて推計されるところでございますが、内閣府のほうで、そこまでやるゆとりはないということで、この7580のレベル感に基づいて、ある意味、かなりざっくりとした形でこちらの39ページにありますような数値を設定したと承知しているところでございます。

○山田委員 労働力の需給推計について、JILPTの推計は同様の手法をとるだろうということが書かれていたと思うのですけれども、同様の手法ということですが、新たな設定とか、そういうものは一切されなくて、前回のモデルを機械的に今回の新しい政策に当てはめてやるのでしょうか。

 と申しますのも、以前、モデル内で出てくる賃金率について、こちらのほうで御議論があったと思いますので、そこが論点としてありますので、どういうふうに扱われているのかということと、あと、短時間労働者への適用拡大の話もございますので、そういった影響というのはどこかでモデルに取り込まなくてはいけないので、そういったことについて、おわかりになる範囲で御存じでしたら、教えていただきたいと思います。

○山崎数理課長 政策をどのように織り込むかという部分は、日本再興戦略ということで、また新たに出ている政策もありますので、そこは雇用政策研究会での御議論の中で、従来のものから織り込み方が変わる部分というのはあり得ると考えているところでございます。

 基本となります労働力需給をどのようにマッチングさせていくか。有効求人倍率に基づいて失業率関数をコントロールしてとか、その辺の技術的な根幹の部分については、基本的に変わらないのではないかと認識しているところでございまして、従来、専門家の方に来ていただいて伺ったところでも、ある意味、需要と供給をマッチングさせるのだけれども、基本となるシナリオの中で余り需要と供給がかけ離れて、失業率が著しく高くなったり、著しく低くなったりというケースは生じないような形でシナリオがコントロールされていると承知したところでございまして、その結果、賃金率はある意味、内生的に出てくるものと。ただ、それはそれぞれのシナリオで想定している経済成長率と整合性のとれたものになっているはずだと承っているところでございます。

○山田委員 ありがとうございました。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。

 米澤先生、どうぞ。

○米澤委員 全体としては、もちろん今までやってきたので異論はないのですが、改めて本文の2ページの(4)です。需給の話で、下のパラグラフ「経済モデルとしてコブ・ダグラス型生産関数を用いることから」云々のところで、「需要を考慮した供給と考えるという立場をとるものとしてはどうかと検討したところである」ということで、このエクスキューズがよくわかないというか、余りエクスキューズになっていないのではないかという感じがして、やっていることを変えろというわけではなくて、実際に後で言いますが、今の労働力のところも、ぎちぎちの完全雇用を前提としているわけではないですし、一定の失業率も想定していますし、それから、次の4ページの(3)ですが、稼働率のところで発射台をどこにするかということで、「平均的な稼働率で生産要素を使用したときに達成できる潜在GDP」に置きかえるということもやっていますので、こういうことで自然に需要のことも取り込んでいるということを書かれたほうが説得力があるのではないかと思います。

 ですから、やっていることを変えろというわけではなくて、ここのところの言いわけをもう少し根拠を立てて、2つぐらいのところから書いたほうが説得力があるのかなと思います。

○吉野委員長 米澤先生がおっしゃるとおりで、生産関数と聞くと供給だけと見られてしまうのですけれども、ここでは稼働率とか、そういうものをきちんと考慮しているので、一応そちら側で需要面が入っているということを意味していますので、表現だけ少し考えさせていただきます。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 本文の3ページの(1)の下の脚注で、諸外国でも余りOLGモデルを使ったりしていないわけですけれども、ここのモデルのよさを言うのであれば、一度諸外国のいろいろなモデルを見せていただいたのですが、ここでやっているモデルというのは、結構ほかの国と比べれば、相当いい、まじめにやっているモデルのように思いますので、そこら辺のことを少し、諸外国と比べても全く引けをとらないですし、優れたモデルがあるとかを入れていただいてもいいかなと。それは私の感想です。

 もう一つは、これはほかの先生にもお聞きしたいと思いますか、4ページの(4)の2行目の「総貯蓄率」と「総投資率」のところです。ここの総貯蓄率も総投資率も政府部門は入っていないと思うのです。そうしますと、ここの言い方で(4)の下から3行目で、経常収支の先行きについていろいろあるときに、この総貯蓄率、総投資率がまた動くだろう説明ですが、それと同時に、政府の赤字が大きくなるか、小さくなるかでも、この総貯蓄率、総投資率が影響されるような気がするのですけれども、この総貯蓄率と総投資率には政府部門が入っていないと考えていいのでしょうか。それとも入っているのでしょうか。お願いいたします。

○山崎数理課長 総貯蓄率、総投資率とも政府部門も含めました、一国全体ということで、全て計数もとっているところでございます。

 一応、その辺のところは誤解のないようにというつもりで、その後の「これは」のところに「政府部門を含めた一国全体の貯蓄と投資の差が」と書かせていただきまして、使用しております計数の総貯蓄、総投資は、どちらも政府部門を含めた一国経済全体ということで準備いたしているところでございます。

○吉野委員長 そうしますと、資料1-2の8ページを見ていただきたいと思います。

 ここの総貯蓄率、総投資率の書き方が、私は民間しか入っていないように見えたものですから、そうすると8ページの上から3行目と4行目ですけれども、この貯蓄というのは政府部門を含む貯蓄であり、下のほうの総固定資本形成も在庫品増加も民間と政府を含む固定資本と在庫であるということでよろしいのですね。

○山崎数理課長 さようでございます。

○吉野委員長 わかりました。

 それだったら結構ですけれども、どこかに入れておいていただくといいかもしれません。

○山崎数理課長 では、8ページのところにしっかり注を書いておきたいと思います。

○吉野委員長 そうですね。8ページのところに明記していただいて、政府部門も含む貯蓄であり、政府部門も含む固定資本形成であると入れていただければ明らかですね。ありがとうございます。

 川北先生、どうぞ。

○川北委員 非常に細かい点で恐縮なのですけれども、読んでいて少し気になったところがございます。本文の5ページの(6)の一番最後のところです。全要素生産性に関する議論で「上記試算のみに捉われない幅広い設定を考えるべきではないかという議論をしている」と。ここだけ進行形で書かれていて、ほかのところは全部過去形で「検討した」とか「考えた」とかとなっているので、ここの意味がどういう意味なのかということをお教えいただければと思います。

○山崎数理課長 このTFPのところは、まだ基本的にデータを眺めただけで、余り突っ込んだ議論がされていないということを踏まえまして、この程度の表現かなということで準備させていただいたのでございます。

 もちろん先生方の御意見で、ここはもうちょっと断定的に書くべきだということであれば、当然そういうふうに書きますので、それは御意見を賜れればと存じます。

○川北委員 だから、事務局として、今後もう少し議論をして深めたいということで考えられていると理解してよろしいのでしょうか。

○山崎数理課長 年明けに内閣府のほうで中長期の試算が出て、その中に多分ケース分けして、それぞれTFPの値も出てまいるわけで、それは8月に出ました1.81.0という数値とは異なるものにもなり得ると思いますので、基本的にはそれを見た上で、また御議論をいただいてということだと思いまして、そういう意味では、8月の試算の数値に捉われないのは、ある意味当たり前かもしれないのですが、その辺のところも含めて、進行形で書かせていただいております。

○吉野委員長 山田委員、どうぞ。

○山田委員 私もこちらの(案)の5ページの(6)が気になっていたのですけれども、これから考えて、いろいろとこちらでも議論するということで理解いたしました。

 そのときに、やはりこれはこの後の議論になると思うのですが、労働力のほうから見れば、短時間労働者が増えていくというのをどういうふうに考えるのかということについて、もう少しこの生産性と絡めて議論していただきたいと思います。

 と申しますのも、特に一橋大学の研究グループが出しているのは、やはり日本では短時間労働者に代表される非正規雇用の増大によって、労働者の質の伸びというのが抑制されてしまっている。もちろん生産性にも影響を及ぼしている。あと、興味深いことに、短時間労働者の賃金というのは、むしろ生産性よりも高く設定されて、一種の賃金プレミアムを、切りやすい非正規雇用のほうに支払っていると。

 そういった近年の研究動向も踏まえて、一体短時間労働者の増大というのはどういうインパクトを与えるのかというのも、こちらは全要素生産性ですけれども、生産性のシナリオを書くときに、特に考えていただきたいと思います。

 あと、幾つか研究で高齢化が進んでいくに従って、TFPはどうなっているのかという研究もあると聞き及んでいますので、そちらのほうも含めて、もちろん幅広い議論ということですけれども、エビデンスに基づいた議論は当然必要となりますので、そちらがどうなっているのかということをある程度整理していただきたいというのがお願いでございます。

 私からは以上です。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 武田委員、どうぞ。

○武田委員 ここの整理は大変わかりやすいと思います。フローチャートと各項目の説明書きがありますと、理解がしやすいと感じています。

 次のステップとして、先ほどTFPについての御意見もございましたが、複数のケースの前提を設定する際に、では、どのパラメータをどの程度幅を持たせるのかという整理の仕方があると思います。たとえば、パラメータの幅の持たせ方として、今、お話しがあったように、こういう理論的な裏付けがあるので、この程度の幅、あるいは近年環境が変化してきたので、今までは平均で見ていたけれども、少し下方トレンドないしは上方トレンドを持たせたほうがいいなど、一つ一つブレークダウンしていくと、次のステップとしてはわかりやすくなるのではないかと考えました。

 以上です。

○吉野委員長 どうもありがとうございます。

 これで検討して、うまく入れられれば、考えたいと思います。ありがとうございます。

 ほかにございますでしょうか。

 小塩先生、何かつけ加えることがあればお願いします。

○小塩委員 御指名ですので、コメントいたします。

 2つございまして、1つは、運用利回りの設定の件です。5ページの一番下のところに、実質金利と利潤率の相関関係が最近低下しているという御指摘があります。長期的に見ると、その相関は高めになるという御指摘です。それは事実ですが、それをどのように踏まえて今後の見通しに生かすかということが、やはりポイントになると思うのです。ここでは長期にわたって両者の関係を見て、それで将来の見通しに反映させましょうというスタンスなのですが、もう一つ逆のスタンスがあって、最近では相関が落ちているから、もう少しいろいろな要素を勘案して、議論しましょうという考え方があると思うのです。この書きぶりだと、どちらかというと長期を見ましょう、最近の変化については軽視するというまではいかないものの、それにこだわらないようにしましょうと、そういうニュアンスがあるのですが、私は両方スタンスがあるのではないかと思います。

 次のページに金融市場の動きについても議論しましょうという話がありますので、書きぶりの話なのですが、いろいろな要因を見ましょうというほうがいいのではないかと思います。相関関係が低下しているからということです。それが1つです。

 もう一つは、先ほども御議論がありましたけれども、内閣府の試算との関係をどう考えるかということです。現在、8月の数字が出ておりますが、私の個人的な感じでは、TFP1.8%の上昇というのは、ちょっと高過ぎるのではないか。参考ケースの1%というのは、まあそんなものかなという気がします。年明けに新しい数字が出るということで、もう一回仕切り直しということだということで、それは結構なのですが、私たちのスタンスとして、内閣府の数字をどこまで重視するのか。この点については、これから議論になるかと思うのですが、この書きぶりでは、そんなに拘泥しないといいますか、そういうスタンスになっている。私はそれで結構だと思うのですが、そこら辺についての事務局の方々の考え方を、現時点でお聞きしたいと思います。

 以上です。

○吉野委員長 お願いします。

○山崎数理課長 まず、第1点でございますが、この相関につきまして、短い期間をとると相関が落ちているというのは、一つには、相関分析を行います場合には、レベルの違うところでデータをとると、それなりに相関が見えるのでございますが、レベルが同じようなところでデータを拾いますと、その他のノイズのほうの影響が大きくなりますので、そういう意味ではテクニカルに言いますと、水準の違うところが含まれているデータでないと相関がうまく出てこないという部分はあろうかと思うところでございます。

 そういう意味では、相関分析に基づいて何か物を言うには、ある程度、長期の期間をとったものでないと、それは説得力がないのではないかというのが1点。

 ただ、そういたしますと、長期の間に構造変化があったようなときに、そこの部分のところの最近の状況が見えてこないという問題点がございますので、そういう意味では、相関分析一点だけでやるのでは、ちょっと幅の狭い議論になるのではないかということで、複眼的視点ということで考えますと、御指摘がございましたように、(イ)のほうの視点でございますね。今の市場関係者がどう見ているか。

 ただ一方で、こちら側はある意味、移ろいやすい部分もございますので、そういう意味では、両方複眼的ににらむ必要があるのではないかということで、(ア)と(イ)ということで並列して書かせていただいているつもりでございまして、両方書いてあることによって、基本的に幅を持った設定ということの中で、両者が考慮されるという整理かと考えておるところでございます。

 2点目の内閣府の試算をどのように考えるかということで、これはまさにこちらの専門委員会でも、来年最終的に出てくるものを踏まえて、よくよく御議論をいただくということだと思うのでございますけれども、事務局といたしましては、政府部内で丸っきりスタンスの違うようなものでというのは、なかなか説明しづらい部分もあるのかなということは考えているところでございまして、そういう意味では、全く捉われないというわけにもいかないだろうし、一方で、それに捉われて機械的にそれと同じにするということでもないのだろうということで、ここはよく先生方に御議論をいただいて、それなりの幅を決めていただくということではないかと存じております。

○吉野委員長 今のことに関して感想ですけれども、資料1-2の3ページのフローチャートの一番上を見ていただきますと、まさにこれが実質経済成長率がどうなるかというところで、ここでは最初の「労働分配率」とか「労働成長率」は非常に一生懸命細かくやられて、資本のところもやられて、最後のTFPのところで、ここでうんと数字がずれてしまうと、せっかく一生懸命最初のところをやったのにということになりますので、やはりこのTFPのところは、少し考えていただいたほうがいいかなというのが、ひとつ印象です。

 それから、小塩先生の実証金利と利潤率のところは、金融市場から見ますと、国債のところというのは、今、日銀がたくさん買ったり、国債のほうに少し需要が行っているということは、多分銀行部門で考えると、貸出しをするか、国債運用をするかで、普通そこで裁定が行われるわけですけれども、今の市場のところはちょっと違ってきていますので、それが最近の乖離につながっているということはあると思います。ありがとうございます。

 ほかにございますでしょうか。

 西沢委員、どうぞ。

○西沢委員 小塩委員が言われた内閣府の試算は、私も拘泥する必要はないと思いますね。それは生産性の上昇率、TFPの上昇率もありますけれども、あと、前に植田委員がおっしゃっていた長期金利と名目成長率の関係で、結局財政が発散していくようなシナリオであるわけであって、やはり経済財政政策として財政が安定的に推移していくというシナリオが出ていれば、参照して、我々としても責任が持てるかもしれませんけれども、そこもTFPだけではなく、政策全体としてどうなっているか。長期的な持続可能性は保たれているのかといったことも見るべきかなと思いますので、ここでも改めて議論する時間をとると6ページに書いてありますので、ここはじっくり議論させていただきたいと思います。

 もう一つ、山田委員がおっしゃっていた賃金上昇率のところですが、私もこれと関連するのかもしれませんけれども、前から気になっていたのが、足もとで女性の就業率が高まって被保険者が増えると、男女間賃金格差があるので、標準報酬月額自体が少しそれに影響されて下がっているという現象があったと前に聞いたのです。そうすると、女性の就業率が進んでくると、それに応じて男女でならしてみると、平均賃金が下がっていくかもしれないし、あるいは女性と男性の賃金格差が今、1対0.7ぐらいなのが、1対1に縮まっていくとすれば、女性の賃金上昇率は男性の賃金上昇率を上回っていくので、長期的には女性の就業率は高まっても、男女平均で見た賃金上昇率は一定と置いていいのかもしれませんが、そこら辺、足下には、実際に女性の就業率が高まることによって、それが賃金上昇率に影響を与えているので、それを正規、非正規という言葉に置きかえても同じようなことが言えるのかもしれませんが、ですから、経済前提として賃金上昇率を例えば2.5と置くとしても、その背後には、我々としては、男女の就業率が変わっていくという前提を置いているので、背景には、男性はこういう賃金上昇率、女性はこういう賃金上昇率、就業率はこう上がって、結果としては平均としてならしてみれば、何%でいいのですよというシナリオを書かないとしても、説明できるシナリオがあったほうがいいというふうに思って、山田委員の話を伺っていて、そんなふうに感じました。

 感想です。

○吉野委員長 西沢委員、ありがとうございました。

 お願いします。

○山崎数理課長 賃金上昇率、例えば2.5%という数字、財政検証の将来推計に使いますときには、男性も女性もどちらも2.5%ずつ上がっていくという前提で、今の平成21年財政検証ではそういうふうに使っておりまして、男性と女性の労働力の比率が変わってくると、女性の割合が高まると、賃金全体は2.5で伸びないではないかという御指摘かと思いますが、それはまさにそういうことを織り込んで、財政検証というのは行われておりますので、賃金上昇率を2.5と置いた場合には、男性も女性も2.5ずつ伸びても、女性の比率が高まっていくと、総賃金は2.5伸びないということは、既に織り込まれているということでございます。

 その上で、男女の賃金格差が縮小していくとすれば、賃金上昇率が2.5といっても男性と女性で違うのではないかというのは、今の財政検証にはそういうものは織り込んでおりませんけれども、当然そういうトレンドがあれば、かつ将来の労働力、女性の労働参加がふえていくということの中に、男女の賃金格差の縮小というものが織り込まれているということであれば、当然それと整合的な形で設定しなければならないというテーマはあると思いますので、そちらについては、引き続き研究させていただきたいと考えているところでございます。

○吉野委員長 小塩委員、小野委員からもしあればお願いします。

 小塩委員からどうぞ。

○小塩委員 一つ、今までの御議論を伺っていて追加なのですが、3ページの下のところに、これから私たちがするのは将来へのprojectionであるという御指摘がありましたね。いろいろなパラメータに幅を持たせた試算が必要なのだけれども、いろいろな組み合わせが考えられるが、実際にありそうなものというのはそんなに多くないので、全部やる必要はないという御指摘は、私はそのとおりだと思います。

 ただ、先ほど吉野先生がおっしゃったように、我々の作業というのは結構フリーハンドでできるところがあります。特にTFPをどういうふうに設定するかとか、あるいは運用利回りをどう利潤率と関係づけるかは、我々の議論に結構左右されるところがありますね。

 そういうことを考えると、もちろんprojectionというか、見通しを立てるということは重要なのですが、ここまで行ったら今の制度はもたないとか、そういう一種のストレステストはやっていいのではないかと思うのです。現行制度のロバストネスをチェックする作業というのは、見通しを立てるときにちょっと見ておいたほうがいいのではと思います。

 以上です。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 小野委員、もしありましたらお願いします。

○小野委員 済みません、発言が最後になってしまいました。

 特に御指摘を申し上げるところはないのですけれども、中長期見通しの話ですが、確かに非常に難しいという面はありまして、特に難しいのは、平成21年の財政検証のときにはシナリオが3本あったのです。ですから、中庸のシナリオをメーンにするということができて、その上下に関しては、中長期見通しの上で若干触れ幅の少ないような前提を置いたのではないかと理解しているところですが、今回は、恐らくシナリオが2本で出てくるので、そうなるとどちらかというのを選択せざるを得ないというところが非常に難しさとして出てくるのではないかと思います。

 それから、6ページで、これは御指摘ということではなくて、確認なのですけれども、積立金の運用利回りは設定しないといけないということで、この6ページの真ん中あたりにいろいろ考え方が書いてございますけれども、国内債券と同程度のリスクとした場合の分散投資効果を前提として期待リターンを設定しましたという話なのですが、その設定の際には、基本的に例えばいわゆる伝統4資産というものを運用対象にするであるとか、あるいは各4資産のリターン・リスクの設定の仕方であるとか、そういったものがいろいろあって、最終的に分散投資効果が出てくるということと思うのです。

 ですが、それは基本的にprojectionをやるときに設定をした期待リターンだということであって、このこと自身が実際にGPIFが運用戦略を立てるということを制約する要因にもならないのではないかということです。それと、これは再三申し上げていますとおり、長期の前提を議論している話でありますので、結果が出た後で、何かにつけて足下の運用実績と長期の前提とを名目値で比較するという話が必ず出てくると思うのです。そのあたりも基本的にはそうではありませんということを押念的に申し上げたいと思います。

 以上です。

○吉野委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、皆様から御意見をいただきまして、一部修正させていただいて、これを私と事務局で相談させていただいて、ただいまの御意見を十分に盛り込んだ上で、年金部会への報告とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○吉野委員長 どうもありがとうございます。

 それでは、今日の部分に必要な修文を加えまして、年金部会において、私から皆様の合意とさせていただき、報告させていただきたいと思います。

 それでは、後半の部分「積立金運用のあり方について」に入りたいと思います。

 資料2-1から2-4について、森参事官、御説明をお願いいたします。

○森大臣官房参事官 ただいま御議論がございましたように、本専門委員会では、経済前提について御議論をいただいておるところでございますが、あわせて今、小野委員からも御指摘がございましたが、積立金の運用のあり方、いわゆるGPIFに対してどのように運用目標を示すか等につきましても、鋭意御議論をいただいておりまして、その関係で先ほど1120日でございますが、内閣官房のほうから「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議報告書」をいただきましたので、これにつきまして、私のほうから紹介させていただき、あわせまして、厚生年金、国民年金の積立金は現状どうなっているかという御議論と、今まで縷々先生方に御議論をいただいた主な意見につきまして、未定稿でございますが、整理したものを紹介させていただき、積立金の運用のあり方全般について御議論を賜れればと存じます。

 では、最初に資料2-1の有識者会議の報告書の関係、資料2-1の概要を御覧いただきながら、説明は資料2-2の本文でやらせていただきたいと思います。

 報告書でございますが、めくっていただきまして、2ページでございます。

 本有識者会議につきましては、公的・準公的資金ということで、中ほどでございますが、公的年金はGPIF、共済、2ポツ目でございますが、独法、国立大学法人等の資金について、広く横断的に検討しております。

 運用目的のところでございますが、そもそもこれはデフレからの脱却を見据えた運用の見直しということが先生方の念頭にございまして、「1 運用目的」の下から3行目でございますが、年金の被保険者の利益を優先する資金運用は、結果的に、日本経済に貢献することになり、また、各資金は、資金運用により経済成長の果実を享受する立場にもあることから、経済成長と資金運用との好循環が期待されるということで、年金運用の目的に即してやればウイン・ウインということで、経済成長も促進するという考え方が示されております。

 3ページ「2 運用目的・方針」のところでございます。

 1のところでは先生方の認識、デフレからの脱却を図り、適度なインフレ環境へと移行しつつ、我が国経済の状況を踏まえれば、この国内債券を中心とするポートフォリオについては見直しが必要であるという認識が示されております。

 2のところで収益目標及びリスク許容度の設定ということでございまして、これは一部の資金では名目賃金上昇率や物価上昇率に連動して給付を行っておることから、収益目標もそれにあわせて定めていますけれども、これまでのデフレ経済下では、当該目標が著しく低い水準になった可能性がある。

 他方、これからのデフレ脱却を見据えますと、今後は当該目標が現在より高い水準となる可能性もあるので、このような点を踏まえまして、適切に収益目標を設定する必要がある。

 また、目標と表裏の関係にあるリスク許容度のあり方についても検討すべきということでございまして、このリスク許容度については注1でございますけれども、フォワード・ルッキング的な検証モデルとか、リスクシナリオ分析とかを使いまして実施することが望ましいと書いてございます。

 また、3の運用コストにつきましては、低い手数料ではかえって十分な情報は得られず、貴重な運用の機会を逃している可能性があるということで、そこも検討すべき。

 4ページ、ポートフォリオでございますけれども、運用対象の多様化ということでございまして、これは市場環境の整備状況を踏まえつつ、リスク管理体制の構築を図った上でということでございますが、今までの伝統4資産ではございませんで、例えばREIT・不動産投資、インフラ投資、ベンチャー・キャピタル投資、プライベート・エクイティ投資、コモディティ投資などを追加し、運用対象多様化を図り、分散投資を進めることを検討すべき。

 2アクティブ比率につきましては、現状ですと、アクティブ運用比率は総じて低くなっているので、それを高めることについて検討すべきということがございます。

 5ページ、3パッシブ運用のベンチマークにつきましては、現行、東証1部上場全銘柄を対象とするTOPIXを忠実にトラックしている場合が多いけれども、その対象先には、十分な収益性が認められない先も含まれることから、より効率的な運用が可能となる指数ということで、例えばJPX日経インデックス400が新しく運用されますが、そういうものも利用したらどうかということが書いてございます。

 4でございますが、経済環境や市場環境の変化が激しい最近の傾向を踏まえれば、ポートフォリオについても適宜点検し、機動的な見直しが必要ではないかと書いてございます。

 6ページ、ガバナンスの関係でございます。公的年金につきましては、年金財政ということはございますけれども、例えば大臣は理事長等の任命責任を負い、当該運用機関は大臣に受託者責任を負うという前提の下、自主性や創意工夫を十分に発揮し得る体制とすべきであるという御指摘をいただいております。

 また、合議制ということで、資金運用については、各運用機関が真の受託者責任を果たし得る体制ということで、常勤の専門家が中心的な役割を果たす合議制により実質的な決定を行う体制が望ましい。

 また、3専門人材の確保ということで、独法の場合、なかなか人員数なり、給与水準

経費等の面における制約が厳しいということで、特に7ページの5でGPIFにつきましては、そのような制約を解消する必要、改革の必要が特に強いということでございまして、将来的には立法化も検討する必要があるという御指摘をいただいております。

 7ページの下「2 リスク管理体制」のところでございますが、フォワード・ルッキングな見方ということでございまして、過去のデータに依存したリスク分析を行うだけでは不十分であり、今後の経済状況の見通しを踏まえて、フォワード・ルッキングなリスク分析を行う必要がある。

 8ページ、3デフレ脱却を見据えた対応策でございますが、金利上昇に備えたリスク管理や資産評価のあり方について十分検討すべきであるということでございます。

 また「4 エクイティ資産に係るリターン最大化」でございますが、これは議決権行使の話でございまして、これにつきましては、英国で機関投資家の自主的なルールでございますスチュワードシップ・コードというものがございまして、これを今、金融庁のほうで日本版のものを検討しているのですが、その検討結果等を踏まえて、方針の策定や公表を行って、運用受託機関に対して当該方針にのっとった対応を求めるべきである。

 また、なお書きでございますが、企業評価に関しまして、財務的な要素に加えて、非財務的な要素である「ESG」を考慮すべきという意見もあり、各資金において個別に検討すべきものと考えられるという話を御提言いただいております。

 また、GPIFにつきましては9ページでございまして、概略の裏にあるのですけれども、工程表ということで、直ちに取り組むべき課題、今後1年を目途に取り組むべき課題、法律改正を行った上で目指すべき姿ということで、資金運用の観点から御提言をいただいておるところでございます。

 それがこの報告書概要でございます。

 ちなみに、資料2-3でございますが、厚生年金・国民年金の積立金運用について、今どんな考え方でやっているかについて、現状を御説明させていただきます。

 何回か出した図でございますけれども、運用の基本的考え方は、もっぱら被保険者の利益のために他事考慮をしないで運用しろという形で法律に書いてございます。

 また、3つ目の◇でございますが、国内債券中心という考え方、あとインデックス運用中心でございますので、アクティブ運用は抑え目。あと、ポートフォリオ全体のリスクを抑制ということでございますが、下の基本ポートフォリオの枠を見ていただくと、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式ということで、基本的には伝統4資産の分散投資という形でやってございます。

 また、運用の仕組みにつきましては、従前は理事会を持っている特殊法人だったわけでございますが、今は年金積立金管理運用独立行政法人のところで独法制度、ポートフォリオの委員会など、事後的にチェックする仕組みで資金運用をやらせていただいているということでございます。

 2ページでございます。

 積立金運用のリスク・リターンにつきまして、現行どんな考え方があったか整理しております。

 リスク・リターンの考え方につきましては、自主運用を始めるときでございますけれども、年金積立金の運用の基本方針に関する検討会で、年金資金が毀損してはどうしようもないということでもございまして、年金積立金の運用につきましては、年金事業の運営の安定化が目的ということで、必要な利回りを最小限のリスクで確保することが基本という考え方が示されております。

 年金給付につきましては、基本的には名目賃金上昇率に連動して増減するため、これに対応した自主的な運用利回りを確保することが必要ということで、考え方が示されております。

 この考え方に基づきまして、独法ができました第1期中期目標期間につきましては、今、皆様方から御議論をいただいている経済前提、点線の※にございますけれども、その当時の賃金上昇率や運用利回り、物価上昇率等に基づきまして、これを確保するような形でGPIFについては定量的な目標を提示したわけでございます。

 ただ、3ページでございますが、第2期におきましては、年金の抜本的な改正を予定していたために、リターン目標を示さなかったということでございまして、GPIFのほうはどうやったかというと、むしろリスク許容度といいますか、国内債券並みのリスクでどんな形でポートフォリオが組めるかということで組みまして、また、今年の6月にはそれに基づきまして、ポートフォリオを改定したところでございます。

 4ページでございます。

 このような運用利回りの設定と年金財政上のリスクの考え方について、まとめさせていただいております。

 運用利回りにつきましては、まず、名目長期金利+分散投資効果ということでございまして、分散投資効果自体は国内債券だけではなく、国内株式や外国資産など、他の資産を含めて投資した際に得られる期待リターンの増分ということでございまして、客観的な概念でございますが、これを運用利回りとして設定することによりまして、インプリシットに国内債券並みのリスクという形で運用利回りを設定してきたところでございます。

 年金財政上のリスクにつきましては、シミュレーションALMALMにつきましてはバランスシートをつくりまして、その差分を管理するサープラスALMとか、キャッシュフローマッチングでのものとかがございますけれども、賦課方式ということもございまして、そこにございますように、モンテカルロシミュレーション、乱数を発生させまして、GPIFにおきましては、例えば、2038年度末の予定利回りのバリューアットリスクを見てみる、もしくは2038年に財政検証上予定された積立金を下回るとしたら、その不測の平均額、コンディショナルバリューアットリスクを見てみて、最適なものを見るという形でポートフォリオを選んでおります。

 また、フォワード・ルッキングな検証というものが有識者会議の話もございましたけれども、リスクシナリオとしましては、長期金利は急増した場合ということでございまして、そのシナリオのもとのバリューアットリスクとか、コンディショナルバリューアットリスクにつきましても見ておるところでございます。

ALMとは若干関係ありませんけれども、フォワード・ルッキングな見方ということでは、国内債券の平均残存期間の長期化ということも視野に入れております。

 基本はこのような形で必要な運用利回りを最小のリスクで確保するということでございますが、アクティブリスクといいますか、確たる根拠がある場合には超過収益を追求することも、中期計画上認めておりまして、運用実績を勘案し、適切に確たる根拠を説明する場合には、アクティブリスクをとることも可能という仕立てにしております。

 ちなみに、今回の5ページでございますが、海外の主な年金基金、ノルウェーは原資も給付が必ずしも年金ではないということでございまして、ちょっと違うのですが、そのようなものにつきまして、運用目標とリスク許容度がどうなっているかにつきまして調べてみました。

 米国は、そもそも運用手法が限定されていますので、運用目標もリスク許容度もないのですが、非市場性国債でいつでも額面で償還できるということでございますので、結果的に国債並みのリターンで国債以下のリスク特性となっている。

 カナダにつきましては、法律上は過度の損失のリスクを伴うことなく、最大限のリターン達成ということでございますが、過度の損失のリスクというのは定量化されていませんで、実質的には州と連邦の財務省が想定しています年金財政検証時の想定利回り、75年で4%というものでございますが、この実質運用利回りでポートフォリオを組みまして、ただ、CPPIBの内部でアクティブリスクということで、基準ポートフォリオと実際のポートフォリオとの間に一定の乖離が認められているという形でございます。

 韓国につきましては、目標ということで、名目経済成長率+αということを示す一方、リターン許容度としまして、5年間の累積リターンが累積インフレ率を下回る確率を10%未満に抑えるというものが、あわせてポートフォリオ等を策定する場合に、所与として与えられています。そのもとで、実際運用していますNPSのほうではリスクパジェッティングという手法で運用を管理しております。

 フランスは賦課方式なのですけれども、やはり高齢化に備えて、毎年定額の拠出をするために国有企業等を売却しまして基金をつくりましたが、そういう観点から毎年定額のものの拠出のために行うという目標が立てておりまして、リスク許容度でございますが、これは毎年定額の許容の8割ぐらいを債券等で賄うというLDIの考え方をとりまして運用しているところでございます。

 スウェーデンでございますが、運用目標上につきましては、リスクレベルは低いものでなければならないとし、その中で長期的に高い利益を達成できるよう設定するということでございまして、年金庁はメーンシナリオで5~6%の運用利回りを想定しておりまして、4つの基金で分散して運用しているわけでありまして、各基金で運用目標は違うのですが、AP1につきましては、大体その中間の5.5%の運用利回りでポートフォリオを策定しておるということでございます。

 ちなみに、ノルウェーは、外貨準備を運用しているところは割とこういう運用目標が多いのですけれども、国際購買力の最大化の追求ということを目標にしておりまして、これはシンガポールの政府投資公社もそういう目標なのですけれども、国際購買力の最大化を目標として運用をしていまして、大きなリスクで最大限のリターンと書いてあるのですが、「穏健なリスク」につきましては定量的に定められていませんで、大体4%の目標をとるために株式6割、債券35%のポートフォリオを財務大臣が示しているというたてつけになっております。

 これが現状でございます。

 先生方の御意見で出されたものにつきまして、簡単に資料2-4で御説明させていただきたいと思います。

 まず、目標利回りの示し方ということで、最初に賃金上昇率+αか金利+αかという形について御議論がございました。

 市場との関係でいいますと、御意見としましては、金利を基準に考えていくやり方は、必ずしも市場連動性が高いわけではないという御意見がありましたが、ただ、上から4つ目にございますけれども、運用利回りというのは資本収益率なので、やはり市場との連動性というのは限定的に見るべきではないかという御意見も両論並列であったということでございます。

 あと、年金財政の観点からいいますと、上から5つ目でございますけれども、物価上昇率で見ても、賃金上昇率で見ても、それはフロリダ州の公的年金もありますが、両論あり得るのではないかという御意見は出ていたところではございます。

 目標利回りの意義でございますけれども、これはポートフォリオ策定のときの利回りという観点では、目標利回りは重要であるが、実施の段階でありましては、なかなか事後的評価しかならないだろう、もしくはこれは実際の現場では、ベンチマーク収益率を達成するというオペレーションをやっているので、なかなかポートフォリオ策定時から離れて目標利回りという意義は薄いのではないかという御意見。

 また、(2)の下から2つ目でございますけれども、目標利回りにつきましては市場が変わるので、相対的にしか示せない。もしくは時期がいろいろ足下とか長期とかございますので、やはり固定値で示すのはいかがかという御意見が出ておるところでございます。

 目標期間の話でございますが、これは上から3つ目で、100年という目標期間を切り離して、5年程度のシナリオを考えるべきかという御意見もございますが、他方、5年で切って、その間のシナリオを考えるとしても、それは一体どういう特性を持っているかということを見るのはなかなか難しいよという御意見もあったということでございます。

 また、100年間でブレを考えていくのか、5年間でブレを考えていくのかという御意見が下から3つ目の間でなされております。

 3ページでございます。

 その中で、現行100年の目標を立てながら、5年でローリングをしているわけでございますけれども、それにつきまして適当ではないかという御意見が複数あった。

 また、運用期間につきましては、5年は短過ぎるので、10年、20年という御意見があったということでございます。

 運用に係るリスクの示し方でございますが、目標利回りとリスクの考え方は一体的に検討することが必要であるという御意見。

 また、一つの手法としましては、名目賃金上昇率に対する実質リターンという形でリスクを捉えてもいいのではないかという御発言がございました。

 なお、2の後半でございますけれども、我が国の年金のリスクというは、長期運用といっても、余り高くないではないかという御意見が複数見られたところでございます。

 リスクの示し方として具体的御提案がありましたものにつきましては、4ページでございます。

 例えば損失の絶対額とか、内外の株式比率とか、あと韓国と同じでございますが、運用収益率が物価上昇率を下回る確率をある程度考えていくというのもあるのではないかという御提案もいただいたところでございます。

 年金財政の関係でございますが、上から3つ目でございます。やはり年金財政の十分な情報をもとにポートフォリオを決めていくべきではないかという話がございました。ただ、賦課方式ということもございまして、なかなか債務だけで議論することについては、かなり制約を受けるという御議論もあったということでございます。

 また、下のほうでございますが、年金のキャッシュアウト、これは予定外のものもありますし、昨今、キャッシュアウトが増えているという状況もございましたが、それも踏まえて、やはり積立金の運用を考えていくべきだという御議論がございました。

 5ページでございます。

 デュレーション・マッチング、LDIの関係でございますけれども、賦課方式の場合には既発生債務を確保するのではなくて、バッファーファンドであること。給付が賃金や物価にスライドしていくなど、そういう特性を踏まえて、どういうふうに議論していくかにつきまして御議論をいただいたところでございます。

 4の運用手法でございますが、国債のみで運用することにつきましては、おおむね分散投資やデフレ脱却を見れば、それは問題であると。

 投資対象につきましては、米国やカナダの例を見ると、やはり伝統4資産が一般的だろうという御意見がありますが、他方、下のほうでございますけれども、やはりオルタナティブについて取り組むことは重要だが、ただ、必要かどうかということも含めてやるとすれば、徐々にやっていくことが賢いと思うという御意見も出たところでございます。

 また、(2)の真ん中のポツでございますが、エマージング市場を評価するという御意見があった一方、やはり米国のように収益率が高い国の投資を重視する考え方もございました。

 あと、GPIFの体制の関係でオルタナティブみたいなものをやる場合には、人員面、予算面の制約があるだろうという御意見をいただいたところでございます。

 7ページでございます。

 パッシブ運用とアクティブ運用ということで、これはやはりベンチマーク、この枠組みの中でもベンチマークについては今、トピックスでございますけれども、議論の余地があるのではないか。

 アクティブ運用とパッシブ運用については、やはりこれを併用するという議論になるのではないか。ただ、やはりそれは取ったリスクに対比してどのようにアクティブ運用を考えていくべきかという御意見がございました。

 (4)その他でございますが、運用手法は、基本的に想定利回りや基本ポートフォリオを決めた先の問題であり、運用先に任せる問題であって、ポリシーとして与えることにはならないのではないかという御意見もいただいたところでございます。

 組織につきましては、運用の専門家でなくて、運用の管理の専門家が必要である。

 独法という形については制約があるので、日銀型がいいのではないか。

 または、やはり市場にいろいろGPIFの動きを織り込まれるといけませんので、織り込まれないような工夫をした情報提供の仕方が必要ではないかということでございます。

ESGに関しましては、パフォーマンスが必ずしもよくないので、それをどう見るかということでございます。

 (3)その他につきましては、今の論点とかぶるところが多いのでございますけれども、シナリオ分析の是非、もしくはリスクに関してどう考えるか。

 あと、マーケットの考え方等につきまして御議論いただいたところでございます。

 大変駆け足でございましたが、私からの説明は以上でございます。

○吉野委員長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に関しまして、米澤先生はこれに出られていらっしゃったので、コメントをお願いしたいと思います。

○米澤委員 この報告書に関しましては、もちろん私も委員ですので、この報告書の内容とかに関しましては、これがけしからんとか、全くそういうつもりはなくて、私もこの報告書に関しては内容に責任を持って、いいと言っていいかどうかわかりませんけれども、きちんとした報告書が出たと思っております。

 先ほどからも出ていたのですけれども、やはりリスク許容度とかいうのは、そういうところから少しポートフォリオを見直すにしても、そこから出発してくださいよということは盛んに主張して、部分的にそういうことは入れられていますので、デフレ脱却だから、日本経済に資するためだから、もっとリスク資産をたくさんふやすべきだよとかいう議論は、なるべくトーンダウンさせていただいています。

 ですから、もっと言いますと、年金財政まで立ち戻って、そこでの運用でリスク許容度をもう少し皆さん方が納得するような格好でもって入れていただいたもので、ポートフォリオを組んでいってということを、本文のほうをよく読めば、そういうことが出てきているかと思います。そのもとで、もっとリスク資産をふやすのであれば、それは株式をふやすというのはやぶさかではないですけれども、単にもっと日本経済のためにとか、デフレ脱却のために株式をふやすというのはちょっとサイエンティフィックではないので、勘弁してくださいということは何回も言ったかと思います。

 ですので、特にこの委員会、ないしは親の会である年金部会かどこかで一度リスク許容度に関しまして御議論いただくといいかなと思っています。

 ポイントは何かといいますと、目標としては、賃金上昇率+αというのは避けられない重要な目標だと思っております。ただ、そのαをどのレベルのαにするかどうかというのはいろいろあるわけで、高望みするαもあるかもしれませんし、非常に低いところでαを決めるということもあるわけですので、その際に、今まで我々がとってきたのは、ポートフォリオをつくった場合に、そのリスクは、全額債券運用と同じところのリスクで押えましたよという合意があったわけですね。ですから、それイコールリスク許容度ではないですけれども、そういう考え方に基づくリスク許容度と言えば、それでリスク許容度になりますので、それが改めていいのかどうかということも、特に年金部会のほうで議論していただければいいのかなと思っております。

 ですから、そこのところに関して、もう少しリスクをとってもいいのではないだろうかという議論がもし出てくるとすれば、ポートフォリオの中身としても、もう少しリスク資産がふえてくる可能性はあるということですので、そこのところは改めてどうするかという御議論を広く国民的に同意が得られればいいのかなと思っています。

 以上です。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 それでは、ほかにいかがでしょうか。

 川北先生、どうぞ。

○川北委員 この有識者会議のところ、今、米澤先生から説明があったところとも関係するのですけれども、まず、経済前提の議論のほうで、6ページで、全額国内債券で運用した場合のリスクと等しいリスクのもとで、効率的なポートフォリオを設定した場合、そのときのプラスαを取りにいきましょう、分散投資の効果を取りにいきましょうという議論になっていて、これは前回も少し質問したところでもあるのですが、国債並みのリスクといっても、短期債で運用するのか、超長期債で運用するのか、全く違ってくるわけなので、どの範囲を想定するのか。このあたりは少し議論しておかないといけない。それによって分散投資の効果が変わってくることがありますので、その議論がまず必要ではないのかなと。

 その結果として、もう一点は、では超長期で運用した場合、前半の議論でも年金財政の破綻の可能性みたいなものをシミュレーションすればどうかという御意見もあって、そういう裏付けというのですか。超長期で運用した場合に、それが現実的であり、破綻をそんなにもたらさない、リスクが非常に小さいのだということも検証しつつ議論すべきではないのかなという気がしました。

 それともう一点、ここから離れるというか、米澤先生のほうから少し説明をいただいたところなのですけれども、この有識者会議の議論にどの程度捉われて我々の経済前提のところの分散投資の効果を考えればいいのか。極論すれば、国内債券での運用は離れてしまってということだってあり得るわけなので、そこも少しスタンスを決めておかないといけないのではないかと思いました。

 少し感想と、国内債券を運用する場合、どの程度のリスクか、そこは今後議論をするのかどうか、そのあたりは少し質問も兼ねているわけですけれども、以上です。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 これは、この委員会で、この報告をどこまでということと関係してきまして、米澤先生、何かコメントがあればお願いします。

○米澤委員 今のところに関しては、先ほど年金部会で丸投げという言い方に近いことを言って責任転嫁なのですが、最終的には、どうなったらどうなるということは、ここできちんと示しておく必要があると思いますが、そのもとでどこを選んでもらうかというのは、もう少し広いところで決めていただくのかなと思います。

 ですから、川北先生がおっしゃったように、いろいろ破綻のケースも含めて、ここまでリスクをとると、いいときはすごくいいけれども、破綻になる確率が随分出てきますよということも示せれば、私はそういう材料を何かしらの格好で、最終的ではなくて、途中の段階で少し広い人たちに示せれば、おのずとその選択肢の幅というのは決まってくるのかなという感じがします。

 その点を事務局などにもお話ししたら、後ほど説明していただくかもしれませんけれども、最終的には、先ほど言ったコンディショナルバリューアットリスクというものをやっていただいているのですが、これはこの経済前提が済んで、その後、財政検証を行いますね。それでもって大丈夫だということがわかりますと、予定利率がGPIFに与えられて、そこでGPIFが改めて少し細かなポートフォリオを組んで、そこで計算するという手続になっているそうなのです。ですから、かなり後半の段階に行かないとシミュレーションしにくいということになっていますので、できればもう少し粗っぽい計算でいいので、年金財政との関係で計算できると、情報量としてはいいのかなと感じています。

 ですから、このぐらいのリスクをとったらどうなります、このぐらいのリスクをとったらどうなりますということを幾つかのケースみたいなところで見ていくというのが、ひとつそこを見て、そこから決めていくというのが一つあるのかなと思っております。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 事務局のほうから、森参事官、お願いします。

○森大臣官房参事官 1つは、諸外国の例を何で私どもは勉強してみたかという話がございまして、これは全く事務的な話でございますけれども、リスク許容度からポートフォリオを決めるというのは、一体そういうことをやっている国があるのかということでながめてみました。リスク許容度はいろいろな立場の方が言っておられますが、なかなかそういうものからポートフォリオを決めているケースというのは、私どもが主要国を見たところにおきましては見当たらなかったので、これを御議論いただいて、そこからポートフォリオを決めていくというのは難しいプロセスなのかなというのが感想めいた話でございます。

 2点目でございますけれども、一応、私どもの今までの考え方としましては、長期金利、これは川北先生からいろいろ御指摘をいただいているところでございますが、長期金利に国内債券だけではなくて、ほかの資産に分散投資を行ったら、平均的にどのぐらいで超過収益率がとれるかなという話でございますので、ある種、年金財政上は一般的な数字につきましてお示ししているところでございます。

 なので、むしろいろいろな資産を運用する中で、一体どのような形でブレ幅が出てくるかということで、ポートフォリオ策定の最終段階ということでございますけれども、実際の策定の段階でシミュレーションALMという形で、年金積立金の予定された積立金の額と運用に当たってどういうことがあり得るのかというブレ幅を検証させていただいていると、そんな手続でございます。

○吉野委員長 駒村先生、どうぞ。

○駒村委員 私も今日、この資料をどういう形で議論するのかよくわからなくて、これはこれで、こういう有識者会議でも発表されたと。

 仕組みについて確認なのですけれども、もしこのとおりになるとすると、資料2-3の絵の運用の仕組みのGPIFの構造が資料2-1の別紙のどちらかの構造になるよということを意味しているわけですね。ちょっとそこは確認です。

 その上で、そうなった場合に、パターン1でも、パターン2でもいいのですけれども、担当大臣、年金の場合は厚労大臣だと思うのですが、今の厚生労働大臣の年金部会がここにあって、制度設計とか、検証とかを行っていますけれども、それとの関係というのが変わってくるのですか。それとも、単にGPIFに相当する組織の構造が変わるということなのでしょうか。その辺をまず確認させていただきたいと思うのです。

 報告書の6ページあたりで、運用の自主性や創意工夫ということで、非常に独立性と専門性を主張されているようなのですけれども、例えば厚生年金に照らし合わせてみると、年金部会とGPIFに相当する新しい組織になるか、構図が変わるかわかりませんが、関係性はどう変わるのか。そこら辺を教えてもらいたいなと思っています。

○吉野委員長 森参事官、お願いいたします。

○森大臣官房参事官 ガバナンスの体制のお話でございますけれども、まず、繰り返しになりますが、6ページの1に戻っていただきまして、特に公的年金、私どもの場合におきましては、運用機関、GPIFを所管する大臣の立場に加えまして、保険者としての立場、つまり、年金財政上、責任を持つという立場にもありますので、ほかの共済とは違う立場にある。

 ただ、こうした場合でございましても、資金運用の観点から考えますと、大臣は理事長等の任命責任を負い、当該運用機関は大臣に受託者責任を負うという前提のもとで、自主性や創意工夫を十分に発揮し得る体制とすべきということでございまして、特にGPIFにつきましては、先ほど申しました人員数、給与水準、経費等、もしくは合議制という形ができないという形で制約を受けているということで、立法化ということも考えられるということで、パターン1、パターン2を示している。

 パターン2は、OECD、民間の年金基金のガイドラインということで、ステークホルダーが理事会にございまして、そのもとで執行と監督の分離という形で実施されているパターン。もしくはパターン1につきましては、むしろ日本型といいますか、CIOみたいな理事会の代表者がそもそも運用に参画するパターンという形で、運用の観点からお示しいただいたものでございます。

 これに関しまして、まさに年金の運用につきましては、ステークホルダーに参画していただいている年金部会をどう考えていくかというものは、また違う観点があるかと思いますので、仮にこれが立法化という形であれば、このような資金運用と違う観点から、もしくは行革の観点からも含めて検討する必要があると考えています。

○吉野委員長 駒村先生、どうぞ。

○駒村委員 まさにそこの部分でありまして、特に厚生年金の場合は、拠出者は労使ですから、その拠出者の意見というのがどうなっているかというと、年金部会をルートで入っていくという形になっていると思うのです。

 6ページの4にわざわざステークホルダーの参画で中途半端というか、7ページにかけて「選任された者は」と書いてある、この「選任された者」は一体誰を指しているのかよくわかりません。誰が誰を選任するのかというのは、どこかに書いてあるかわかりませんけれども、選任された人が専門家で、なおかつステークホルダーを代表するかのような書き方をしているので、ちょっと気になったので、年金部会との関係とか、これでもしかしたらステークホルダーが関わっているよと読めてしまうならば、この関わり方は非常に弱いというか、曖昧ではないかと思ったので、確認させてもらいました。

 別途考えていらっしゃるならば、それはそれで部会との関係があるならば、それはそれでいいかと思いますけれども、この辺はどういう意味で書いているのか。

○吉野委員長 どうぞ。

○香取年金局長 今の話は、私から御回答いたします。

 この伊藤先生の有識者会議の基本的な立ち位置ということなのですが、米澤先生はずっと御参加されていたので、後で補足をしていただければと思いますが、基本的には経済状況が変わる、あるいは運用環境が変わる中で、日本の公的資金あるいは準公的資金、年金を含めた公的部分の資金の運用をどうやって高度化していくのか。言わば、いかに運用という観点から、各資金のパフォーマンスと経済成長との関係を整合的に考えるかというのが基本的なお立場だと理解をしています。

 なので、先ほどの分散投資の話もそうですし、運用の高度化の話、あるいは運用体制の話もそうですが、基本的には各資金に横断的に検討してもらいたい課題ということで論点が整理されている。

 他方、例えば年金であれば、我が方は公的年金の資金ですし、共済は保険者たる共済組合が自分で運用しているという形になりますし、それ以外にも、先ほどもありましたが、大学法人等々、それぞれさまざまな運用の形になる。なので、それぞれの資金の規模なり、公的な性格に合わせて、この課題をこなしてくれというのが報告書の基本的なたてつけだという理解です。

 もう一つ、これは若干テクニカルな話になるのですが、実際に運用を行っている運用機関の言わばガバナンスの問題というのを一つの問題にしていて、要は例えば年金であれば、ある程度、運用の目標が設定されて、一定の運用を運用機関に任されるとなったときに、当該運用機関がどれだけ専門性を持って、言わば専門的な観点から合理的な判断ができるかと、そういう体制をつくりなさいという御観点で、この運用体制の話というのは、そういった市場に対して専門家である当該投資機関が、できるだけ主体的に、かつ専門的な観点から合理的な、機動的な判断ができるように意思決定プロセスを透明化するとか、あるいは決定に当たって、ある程度独任制ではなくて、合議制の形をとるとか、そういった言わば機動的な運用ができるような体制をとるとすれば、こういった組織体制をとってくれと。基本的にはそういう観点でものが言われているのだと思います。

 今、参事官から特に申し上げたように、年金の場合、もちろん運用という観点からは、それなりに多事考慮をしないで専門的な運用ができる体制をとるというのは、それはそのとおりなわけですけれども、年金財政全体について、例えば厚労大臣が責任を持っている。あるいは資金について法的な制約があるという観点からすれば、別途そういう観点からの大臣なり、何なりのコミットメントというのがあるわけで、それはまさにそれぞれの資金の性格によっていろいろな強弱が出てくるだろうということだと思います。

 もう一つは、仮にここで議論されているような形で、例えば合議制を敷く、あるいはCIOみたいなものを中に置いて運用の執行体制をつくるということになりますと、現在の独立行政法人の法形態だと、その形がとれないということになります。

 この有識者会議の報告書は、その場合には、場合によっては法律改正をしてでもそういうことを考えるべきであるというのが御提言ということになります。

 法律改正をして、法形態を変えるということになりますと、これは言わば政府全体として、この種の公法人について、どういう法体系を認めるのか、あるいは新しい形態をつくるのか。これは行革の観点から、別途の制約がかかる。現在でも、例えばGPIFは、定員でありますとか、賃金でありますとか、そういったものについて、かなり公務員に近い縛りがかかっているので、そういったものをどうやって外していくのか。これは運用の観点から、こういう形が望ましいという御議論と、政府全体の行革の方針の中で、各独法についてどういう法形態を認めるのか、別途の議論になりますので、そこは言わば政府側として、政府全体として、各法人のあり方について検討するという場がありますので、そこで並行して議論するということになります。

 なので、その意味で言うと、運用形態の話というのは、どちらかというとそういう実際に運用の執行の形でどうするかということになりますので、その部分はあまりここの御議論とはかかわらない。むしろここの御議論との関係は、どういう運用目標を与えるか。その与えられた運用目標について、この法人がどういう体制で実際にそれをこなしていくか。

 先ほど米澤先生からありましたように、実際の運用ポートフォリオを組む段階というのは、GPIFの中でまさに専門的に行われるプロセスで、そこで議論されるべきレベルの話と、入口のところで財政検証の中でどういう目標を与えるかというレベルの議論というのは、多分ディメンジョンが違うのだと思うのです。

 言わばそういったものも含めて、運用全体について、各論についてさまざまな御意見、御提言をいただいたというものとして御理解いただければと思います。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 西沢委員、どうぞ。

○西沢委員 私が強調したいのは、運用の見直しは議論していいと思うのです。リスクをとるということも、例えばリスクをとって、その収益が将来世代につけかえられるのであれば好ましいことだと思いますし、2008年ごろに出てきた議論というのは、そういう趣旨が入っていたと私は記憶しています。

 今の年金制度でリスクをとる体制ができているかというと、例えば今の場合ですと、仮に損失が発生した場合は、このマクロ経済スライドの長期化で吸収するしかありませんし、あるいは将来的に支給開始年齢引き上げですとか、さらなる保険料率引き上げですということで、対処が後手に回ってしまうのが今の年金の財政上の負担と給付の仕組みだと思います。

 一方で、資料2-3の5ページのスウェーデンとかですと、バランスシートをつくって、アセットが積立金と保険料資産、負債が給付債務で、このバランスが一度崩れると、すぐに自動収支均衡装置が発動して、バランスを回復するように仕向けていくということで、投資の意思決定をしている世代が、損失が発生した場合、その責を負うという仕組みになっていると思うのです。ですから、そのように投資判断をしている我々の世代が仮に予定利回りというか、想定利回りを下回った場合に、損失をすぐにカバーするような仕組みができていれば、そのリスクをとっていってもいいと思うのですけれども、今の仕組みのままだとちょっと難しいのかなと思います。

 ですから、例えばこういった運用資産の多様化とか、もう少しリスクをとるという提言を受けた際に、ではどういった負担と給付の制度的な見直しをしておけば、仮に損失が発生したときも、その損失を将来世代につけ回さないといったことができるかといったアイデアとかをリプライとして返していくのかなと思ったのです。

 ですから、例えば損失が発生したら、損失が発生した年度の翌年度に特別保険料をとって、みんなから保険料をとりますよとか、損失が発生した分、翌年の年金を減らしますとか、そういったセットであれば、そのリスクをとっていいと思うのですけれども、要するに、運用の多様化というのはどんどん議論したらいいと思いますが、一方で、年金制度としてリスクをとれるような体制を確保していくという議論が今後必要なのかなと思っております。

 あともう一個、つまらないのですけれども、資料2-3の4ページ目の一番下に「適切に確たる根拠を説明できる場合はアクティブリスクをとる」というのはあり得るのかなという感じもちょっとしますので、これはどうかなと思いましたので、表現として。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 ほかにございますか。

 小野委員、どうぞ。

○小野委員 この有識者会議の報告書を拝見していまして、いろいろ御提言いただいているので、是々非々で取り込めばいいのではないかなというところが正直なところです。

 若干、私が印象として持っているのは、この運用の議論というのは、1980年代以降、いろいろ議論が始まったときに、アメリカのいわゆる近代投資理論とかというものから始まって、なおかつアメリカの企業年金にあるような受託者責任という議論があって、発展してきたということがあると思うのです。報告書には、そういった民間の企業年金的な発想というのがやや入っている箇所もあるという感じがしておりました。

 2点申し上げたいのですが、1つは、報告書の中で出てくる「フォワード・ルッキング」という言葉なのですけれども、これは資料2-3にある意味でのフォワード・ルッキングとはやや違うような気がするのです。

 報告書の7ページでいうと、先行きを見据えたということで「今後の経済状況の見通しを踏まえ」とありますが、これは見方によっては、相場を読みにいくとか、そういう印象が出てきてしまう。

 それに対してGPIFのほうは、これはある種ストレステスト的な感じでフォワード・ルッキングという言葉を捉えているという意味では、同じ言葉でも多分捉え方が違うのだろうなということがあります。

 もう一つは、確かに運用方針、運用目標を決めるのは大事なのかもしれないのですけれども、それを議論するときの冷静な土台として、例えばGPIFの利回り、昨年度ということで非常によかったわけですが、それをGPIFとしては、やはり賃金上昇率と比較して、全体として過去から見ると、このぐらいの剰余がありますということを、ある種、年金財政と絡めて評価をされているというところだと思います。

 ただ、GPIFは、運用成績に関しての評価ということですので、それは制度全体ということの評価には多分ならなくて、その評価をしているのは、恐らく年金数理部会の報告書だと思うのです。端的に言うと、想定どおりに賃金が上がらなければ、それは将来の年金債務も上がらなかった分だけ増えないということになるわけですから、それも含めて、この運用成果なり、運用成果以外の1年間の動きというものが、年金財政にとってどういう形で影響しているかということを既に情報としては出ているわけです。それを広めて、定着させて、冷静な議論ができるような土台ができることが非常に重要なのではないかと考えております。

 以上です。

○吉野委員長 どうもありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 米澤委員、どうぞ。

○米澤委員 今の点に関して多少補足すると、私もフォワード・ルッキングというのはよくわからないので、

 多分、モンテカルロシミュレーションみたいなものをもっとたくさんやりなさいということで、その中には金利上昇とかいうことも含めてやりなさいということだと思いますし、イメージ的には多分それで間違いない。それでもって、どこかで財政を評価しなさいということかと思います。

 それから、西沢委員とか、今の小野委員と絡めて、私もお願いというか、もしかしたら勉強不足かもしれないのですが、年金数理部会で評価をやっているのはよく存じ上げているのですが、何か報告書で難しくて、それから毎年経過は出てきているのでしたか。それがどうも余り伝わってこないし、ここの検討会でもそういう数字を教えてください。要するに、対賃金上昇率でどうなのかということですね。それによって積立金が想定どおりに推移しているかどうかということ。そこはもう少し広く伝わるような格好でもってやれば、西沢委員がおっしゃったようなことで、制度自体としては、今と同じ制度でも、やはり我々国民的にワーニングが早く気づくというのは非常に重要なことではないかと思いますので、そこのところはもう少し広報をうまくしていただけたらいいなという希望でございます。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 年金数理部会に入っていますので、今の点です。

 毎年やっていて、実績評価も非常に丁寧にやって、サマリーも出ていて、現時点では実質残高で見れば、ほとんど誤差の範囲、非常に狭い中で収まっているということになっていて、ミニ財政検証みたいなものを毎年やっているという状態です。

 ただ、おっしゃるとおりで、余り出回っていない。多分、インターネットで報告書はダウンロードできると思うのですけれども、いま一つ注目度が低いので、数理部会のほうでも議論したいと思います。ありがとうございます。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 大体皆様の御意見で、この報告書の位置づけが、運用のあり方についてという形で考えればいいということで、あと我々のほうは、もう少し大きな流れのところから考えたいと思います。

 ほぼこれで時間になりましたので、本日の議論を終了させていただきたいと思います。

 事務局のほうからお願いいたします。

○森大臣官房参事官 次回の日程につきましては、改めて調整させていただきたいと考えていますので、後日、改めて連絡させていただきます。

○吉野委員長 本日も活発な御議論をどうもありがとうございました。

 これで終了させていただきたいと思います。

 


(了)

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