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2013年7月30日 第74回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成25年7月30日(火)18:00~20:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石祐二、犬飼米男、岡本浩志、小畑明、勝野圭司、栗林正巳、城内博、新谷信幸、鈴木睦、角田透、土橋律、中澤喜美、中村聡子、縄野徳弘、半沢美幸、山口直人、上條氏(中村(節)委員代理)

事務局:

半田有通 (安全衛生部長)
井内雅明 (計画課長)
奈良篤 (安全課長)
泉陽子 (労働衛生課長)
森戸和美 (化学物質対策課長)
角田信二 (化学物質評価室長)
毛利正 (調査官)

○議題

(1)労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則等の
一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)建設業労働災害防止規程変更案要綱について(諮問)
(3)第12 次労働災害防止計画を踏まえた検討について(各論その2)
(4)その他

○議事

○分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第74回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。
 まず、委員の交代がありましたので、お知らせいたします。全国中小企業団体中央会の瀬戸委員が退任され、同じく全国中小企業団体中央会の総務企画部長でいらっしゃいます中澤様が就任されましたので、御紹介いたします。
 次に、本日の出欠状況です。公益代表では、桑野委員、三柴委員、水島委員。労働者代表では、辻委員。使用者代表では、中村節雄委員が欠席されており、その代理として日本商工会議所産業政策第二部労働担当課長の上條様が出席されております。
 議事に入る前に、事務局の安全衛生部で人事異動があったようですので、一言挨拶をお願いします。
○半田安全衛生部長 7月2日付けで、安全衛生部長を拝命しております。これまでは、安全課長として先生方の御指導をいただきましたが、引き続きよろしく御指導を賜りますようお願い申し上げます。
○奈良安全課長 同じく7月2日付けで安全課長を拝命しました奈良です。化学物質対策課長から異動いたしました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
○泉労働衛生課長 同じく7月2日付けで労働衛生課長を拝命いたしました泉と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○森戸化学物質対策課長 7月2日付けで化学物質対策課長を拝命いたしました、森戸です。よろしくお願いいたします。
○分科会長 それでは、議事に移ります。本日の議題は、諮問が2件と、第12次労働災害防止計画を踏まえた検討について、本日は各論その2になります。本日は、審議事項が多くなっておりますので、円滑な議事進行への御協力をあらかじめお願いいたします。それでは、1つ目の議題「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令案要綱の諮問」について、事務局から説明をお願いします。
○角田化学物質評価室長 資料1-1が、政令案の要綱の諮問文です。資料1-2が、省令案の要綱の諮問文です。その内容について、資料1-3に基づき説明いたします。資料1-3を御覧ください。前回の分科会でも同様の図をお示ししておりますが、化学物質管理の体系図です。化学物質のグループ分けを三角のピラミッドで示し、それに対応する規制を右側に示しております。ピラミッドの一番上の所は、石綿等で製造禁止とされているものです。その下の段ですが、健康障害が多発し、特にリスクが高い業務がある物質ということで、特別規則で規制しているものです。3段目は、特別規則で規制はされておりませんが、労働者に危険や健康障害が生ずるおそれがあるもので、産衛学会等で許容濃度の勧告があるものなどです。譲渡する場合に、SDSの交付をする必要があるものです。
 今般、胆管がん事案の原因物質と考えられる1,2-ジクロロプロパンについて、リスク評価結果を踏まえて政省令改正を行い、現在3番目の段に書かれていますが、1つ上の段に持っていき、特別規則で規制を導入しようとするものです。3段目には、事業者の有害物ばく露作業報告と書かれていますが、その結果を踏まえて高いリスクがあると推定される事業場でばく露の実態調査を行います。そのばく露評価と文献調査等による有害性評価を踏まえ、図の左上にありますがリスク評価を行い、作業態様等から高いリスクが確認されれば、特別規則で規制をします。今般、1,2-ジクロロプロパンについて、リスク評価を実施したところですが、その結果については次のページを御覧ください。
 真ん中に表がありますが、一番右の欄にリスク評価結果があります。労働者が健康に悪影響を受けない水準の評価値に対し、実際の濃度がどうであったかを比較し、リスクを評価しております。評価値10ppmに対し、洗浄・払拭業務に関して、73.6ppmという高い数値となったところです。これを踏まえ、表の上の結果の概要欄がありますが、洗浄又は払拭の業務について、リスクが高いので健康障害防止措置の検討を行うべきとされ、それを受けて健康障害防止措置に係る検討を実施し、政省令改正案を取りまとめたところです。その改正案については、次のページを御覧ください。
 改正の内容ですが、1,2-ジクロロプロパンについて、措置の対象物質に追加をします。主要な措置は、下記のとおりで、まず政令です。1つ目は、名称等を表示すべき有害物として追加します。2つ目は、健康診断を行うべき有害な業務に追加いたします。3つ目は、健康管理手帳を交付する業務に追加いたします。特定化学物質(第2類物質)に、1,2-ジクロロプロパンを追加いたします。その結果、作業主任者の選任の義務付け、作業環境測定の実施の義務付け、特殊健康診断の実施の義務付けがなされることになります。
 次は、省令、特化則です。まず、物質の類型として、エチルベンゼン等に指定と書かれております。エチルベンゼン等は、第2類物質の中の1つのグループですが、必要となる措置等を踏まえて、このグループに位置づけをしたものです。それにより、容器の使用、貯蔵場所への関係者以外の立入禁止、洗浄設備の設置、緊急時の医師による診察・処置、保護具の備付け、特殊健康診断の実施等の義務付けが行われることになります。
 作業主任者は、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任ということです。これは、1,2-ジクロロプロパンが溶剤として使用される実態を踏まえ、局排の設置や保護具の使用について、有機則の規定を準用するということです。このため、こうした有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任する形にしています。
 それから、洗浄・払拭の業務について、局所排気装置の設置等の措置を義務付けるものです。特別管理物質に追加です。特別管理物質は、がんなどの遅発性の健康障害を生ずるおそれがあり、特別な管理を必要とするものです。それに追加することで、ここにあるとおり作業記録等の30年保存等が義務になるというものです。
 その下は、安衛則です。安衛則においては、健康管理手帳の交付要件に当該業務に3年以上従事した経験を有すること等を規定することとしております。
 公布期日等ですが、平成25年8月公布予定、10月1日施行の予定にしておりますが、一部の規定については、必要な経過措置を定めることとしております。
 最後のページは、化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価制度について、参考として付けたものです。このような改正案についての要綱を、資料1-1、1-2として提示しているところです。説明は以上です。
○分科会長 ただいまの説明について、審議をお願いいたします。質問等ありましたら、挙手をお願いいたします。
○新谷委員 ただいま説明をいただいた1,2-ジクロロプロパンについて、政令、特化則、安衛則の改正を行い規制の対象とするという提案ですが、基本的にこの内容については労働者の健康障害防止に資するという理解ですので、労働側としては了承申し上げたいと思っています。ただ、要望というか質問をさせていただきたいのですが、これは以前からも申し上げておりますけれども、周知をどのように行っていくのかということです。施行日が10月1日ということで、施行まであと2か月強の間、どのような周知を行うのかということです。1つは、事業主に対する周知の問題です。これについては、既にこの物質名自体がかなり新聞等にも出ておりますし、また厚労省でも個別の事業所に対する監督指導を含めて周知を行っていただいているとは思います。ただ、昨年の7月に厚労省が発表された一斉点検の結果によると、昨年の段階で77.5パーセントの事業所で問題があったという結果が出ているわけです。この1年の間にかなり個別に対策を打っていただいていると思いますが、10月1日の施行までにどのような形で事業主に対する周知を行っていくのか確認させていただきたいのが1点です。
 周知にはもう1つありまして、これは健康障害のリスクにさらされている労働者に対する周知の問題です。1,2-ジクロロプロパンは物質名ですが、労働者は、例えば化学物質が含有されている洗浄剤を、具体的に商品として目にしているわけですので、多分商品名が特定されると思います。この1,2-ジクロロプロパンを含有する商品でどのようなものが職場の中にあって、それに対してどのようなことを避けるべきなのかといった点について、特に今度は表示についても扱うということですので、対象の商品名が分かりやすく、これは非常に危険である、このようなリスクがある、ということを労働者に対してどのような方法で周知をしていくのかについて、お聞かせいただきたいと思います。
○角田化学物質評価室長 今回の1,2-ジクロロプロパンに係る改正については、公布後速やかに法令改正の内容を解説し、通達を発出したいと考えております。全国の労働局を通じて、9月に労働衛生週間、準備期間の集団指導などもありますので、その機会を捉えて周知に努めていきたいと思っております。
 また、この物質については、印刷業での使用が多かったこともありますので、各印刷事業所に行き渡るように周知を行ってまいりたいと考えておりますが、印刷業に限らず製造業を中心とする業界団体、400団体以上に対しても文書を送付し、傘下企業への周知を要請する予定です。
 ラベル表示の関係ですが、容器等へのラベル表示は手に取った誰もが化学物質の有害性を理解できるように、厚生労働省のホームページにもモデル表示を掲載しておりますので、今般の義務化に対応して更新をし、製造業者や取扱業者に周知をしてまいりたいと考えております。それから、改正にあたり、分かりやすいパンフレットも作り、周知を図っていきたいと考えております。
○新谷委員 分かりました。よろしくお願いします。このような物質を含有するもののうち、国内で製造されているもの、あるいは輸入されているものの商品名については既に把握をされていて、その流通経路も含めてどのような職場でその商品が使われているのか、ということも当然把握をされているという理解でよろしいのでしょうか。
○角田化学物質評価室長 今のところ、個別の商品名の統一的な調査はしておりません。個々に商品名等で公表されているような資料で情報を得ているものはありますが、全体的な取りまとめはしていない状況です。
○新谷委員 多分、1,2-ジクロロプロパンそのものが商品名として職場で使われるということではなくて、先ほどおっしゃっていたような印刷事業場における洗浄剤の中に実は1,2-ジクロロプロパンが入っているということだと思うのです。ですから、できるだけ労働者が目にする商品名で流通経路をたどっていただいて、このような商品に実は1,2-ジクロロプロパンが入っているのだと分かるようにしていただくと、周知が徹底できるのではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○角田化学物質評価室長 御要望ということで承ります。パンフレット等を通じて、極力労働者の方々にも分かるような形で周知をしていきたいとは考えております。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、ただいまの要綱について、当分科会として妥当と認めるということでよろしいでしょうか。
                  (異議なし)
○分科会長 ありがとうございました。事務局におかれては、所要の手続きをお願いします。
 それでは、次の議題に移ります。議題2「建設業労働災害防止規程変更案要綱の諮問」について、事務局から説明をお願いします。
○井内計画課長 建設業労働災害防止規程の変更について、説明いたします。資料2-1が諮問文で、資料2-2で概要を説明いたします。まず、「労働災害防止規程とは」とありますが、これは労働災害防止協会が労働災害の防止に関する設備や作業の実施方法について、講ずべき具体的措置などを設定するものです。労働災害防止団体法に基づいているもので、会員には当該規程の遵守義務が課せられています。今回のこの規程については、前回の変更が平成20年で、その後5年程経っての変更となります。
 主な変更点としては、昨年度この審議会でおまとめいただいた第12次労働災害防止計画を踏まえた変更と、平成20年以降にいろいろな規則改正が行われているものに合わせた変更です。まず、12次防の関係で言いますと、ハーネス型の安全帯の普及を推進するものです。背景としては、建設業で墜落・転落災害に着目して対策を推進していくわけですが、一般的に広く使用されている胴ベルト型の安全帯は墜落時の身体への衝撃が大きいということで、新設の内容として作業者に安全帯を使用させる場合は、ハーネス型の安全帯とするように努めることが1点目です。
 それから、熱中症対策ですが、夏季を中心として依然として頻発している熱中症に関して、WBGT値という暑さ指数の活用、あるいは熱への順化状態の管理、7日間ぐらいで熱に慣れていくようなことに努めることです。そういった対策の充実をしていきます。従前から推奨していたのは、温度計や湿度計の活用、あるいは水分、塩分の摂取、休憩時間、休憩設備の確保などでしたが、これに暑さ指数等の活用が追加されております。
 それから、最新のガイドライン等を導入したものとして、平成24年5月に「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」が策定されております。これに合わせて、今回この規程でも、石綿含有建築物の解体工事にあたり、石綿粉じんの外部への漏洩を防止するために、作業に支障がない限りですが、負圧、1気圧以下に保つ作業空間を、できる限り小さく設定することが盛り込まれております。
 また、その他として、東日本大震災の発生や豪雨の発生などに対応するものとして、緊急時の対応策として、自然災害発生に備えて事前に緊急対応計画の策定、あるいは避難訓練等の体制の整備に努めるというような内容が盛り込まれております。今出てきたような内容について、資料2-1で、ハーネス型の安全帯とはどういうものか、あるいは暑さ指数WBGT値がどういうものか、それから熱への順化や石綿の関係ですと、石綿の技術上の指針については、建築物にアスベストを使用されているか否かの事前調査やそれを除去する際の措置などについて、留意事項を示しています。簡単ですが、説明は以上です。
○分科会長 ただいまの説明について、審議をお願いいたします。質問等はありますか。
○犬飼委員 この労働災害防止規程で、会員には労働災害防止規程の遵守義務が課されるということなのですが、建設業にも解体、土木や建築など、いろいろな業種があると思うのですが、建設業の労働災害防止協会、いわゆる建災防の会員となっている企業の業種、あるいは建設業界の企業全体に対する建災防の会員数、カバー率はどのぐらいになっているのかが分かれば、教えていただきたいのですが。
○井内計画課長 今年の3月末での建災防の会員数は、36万1,863です。平成24年度の建設許可業者数が、48万3,639ですので、したがって会員の構成率は約75%です。
○犬飼委員 75%と大変広くカバーされています。ハーネス型の安全帯の利用は、労働者の身体の負担が抑えられるという意味ではいいと思いますので、この普及を進められることは、第12次労働災害防止計画の趣旨でもありますので、今回は努力義務ですが、それが普及されて、是非義務化へと進むような配慮をお願いしたいことが1点です。
 それから、こうした積極的な取組を、是非他の労働災害防止団体にも考え方が波及していくような努力や、厚労省からの働き掛けもお願いしたいと要望しておきます。
○奈良安全課長 ただいま、ハーネス型の安全帯についての要望を頂戴いたしました。平成25年度から、このハーネス型の安全帯の普及を進めるための委託事業を開始することとしております。そのような委託事業を通じて、このハーネス型安全帯の有用性を広く普及していきたいと考えております。また、労働安全衛生総合研究所の研究において、墜落・転落災害を防止するための機材、手法に関する研究を行っているところで、我々の普及のための事業、あるいは研究所の研究結果を踏まえ、一定の条件下でのハーネス型安全帯の義務付け等についての検討を行いたいと考えております。以上、補足的な説明です。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○勝野委員 全建総連の勝野です。ハーネス型の安全帯の普及を推進していくことについては、現場サイドからも是非積極的に推進をしていただきたいと思っております。ただ、その際、これまでのベルト型のものと比べると、少し値段が高いといったようなことがあります。元請等で、しっかりとそうした安全経費について準備をしていただけるのであればいいのですが、なかなかそこまで至っていないのが現実で、下請の事業主、事業者なりが準備せざるを得ない現実もあります。そうした点からも、予算的な面で、かつては先行足場等では一定助成措置も取られた経緯があるかと思いますので、このハーネス型の普及についても、そうした予算措置等についても是非検討をお願いしたいと思います。
○奈良安全課長 ただいまの御要望の件についてですが、種類は義務付けてはおりませんが、法律で使用が義務付けられている安全帯について予算措置を講ずるのは、正直いってなかなか難しい面があろうかと思います。今回、建災防で労働災害防止規程を変更いただき、その中でこのハーネス型の安全帯の普及の推進、ということを謳っていただきました。このように、建災防が正に先駆けとなって、業界におけるハーネス型の普及を推進されることに、期待感を強く持っています。これは、普及が進めば、当然のことながら商取引の常として値段は低下してくるというようなことを期待しているところです。そういう意味で、建災防の取組に対して大きな期待感をもっていることを、重ねて強調させていただきたいと思います。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、建設業労働災害防止規程変更案要綱について、当分科会として妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。
                  (異議なし)
○分科会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。
 次に、議題3に移ります。「12次防を踏まえた検討(各論その2)」です。本日は、6月10日の分科会で取り上げた7つの論点のうち、前回6月27日の分科会で議論をしていない残りの4つの論点について、議論をしていただきます。最初に、「第三者に施設等を使用させる施設等管理者の安全衛生管理」について、事務局から説明をお願いします。
○井内計画課長 資料3-1に基づいて御説明します。「問題の所在」ですが、労働者の安全衛生の確保は、労働者を使用する事業者が必要な措置を行うことが基本なのですが、一方で、他の事業者が作業に係る施設や設備を管理している場合などで、その労働者を使用する事業者の権限だけでは十分な安全衛生対策を講じることが困難な場合があります。このような場合には、労働者を使用する事業者以外の者が安全衛生措置を実施することが求められるということで、12次防の関連記述が下にあります。
 2ページは、既存の制度としてどういうものがあるかということです。労働者を使用する事業者以外の者が安全衛生措置を実施するように定められているものです。上のほうの左側ですが、建設業の元方事業者が設置した足場を、関係請負人の労働者も利用する場合です。真ん中の枠にありますが、安衛法の第31条で、「特定事業の仕事を自ら行う注文者が、請負人の労働者に建設物、設備、原材料、建築物等を使用させるときは、その建築物等について、以下の措置を講じなければならない」ということで、クレーンや局所排気装置等の安全基準への適合、あるいは物品揚卸口からの墜落防止のための手すりの設置、あるいは、足場の最大積載荷重の表示や悪天候後の点検修理といったようなものが規定されています。こういったことで、注文者と請負人の関係の問題、労働災害の防止が図られるということです。
 左下ですが、爆発危険のある化学物質の製造設備の改造、修理を請負った事業者が、仕事の注文者から設備内の化学物質の危険性の情報を十分知らされないままでは、爆発火災の対策を十分取ることができない場合があります。これは法の第31条の2ですが、「化学物質等を製造して取り扱う化学設備の改造・分解清掃の仕事の注文者は、次のことを記載した文書を請負人に交付しなければならない」ということで、化学物質等の危険有害性作業での注意事項、注文者が講じた安全衛生措置を記したものを請負人に交付しなければならないということです。これで、関係請負人が知らないことによる災害を防止できるということで、措置が取られているものです。
 3ページは「その2」ですが、工場の建築物を貸与されて生産活動を行う事業者は、自らだけでは労働者の安全衛生のための通路や局所排気装置等の設置の変更を行えないということです。こちらについては法の第34条ですが、「事務所又は工場の用に供される建築物の貸与者は以下の措置を取る」ということで、2以上の事業者が共用する避難用の出入口、通路等について、避難用の表示をして容易に利用できるようにすること。局所排気装置、騒音防止障壁のほか、労働災害防止のために必要な設備の設置について、貸与を受けた事業者から、建築物の変更の承認や設置工事に必要な施設の利用等の便宜の供与を求められたときは、供与するようにするということです。これによって、貸与された建築物による労働災害の防止を図っているということです。
 次に4ページの「論点」です。こういった施設等の管理者等が、自ら管理する施設等を自社労働者以外の労働者に使用させる場合に、今見ていただいたような既存の制度に加えて、施設等管理者等に労働災害防止措置を求めることが適当と考えられるものがあるかということです。「例えば」ということで、運送事業者は、荷主先での労働者の荷の積卸作業における安全措置を自らだけでは十分に確保できないことについて、荷主に対して措置を求めることはどうかという論点です。
 5ページは、道路貨物運送事業の関係での労働災害の発生状況です。休業4日以上の労働災害が平成24年に1万2,771件です。そのうち130件の死亡災害が発生しています。下に円グラフがありますが、左から1として、貨物自動車運転者の労働災害は7割が荷役作業で発生しています。その発生場所は、真ん中ですが、荷主先等の倉庫などが7割ということです。事故の型としては一番右ですが、荷台や荷の上からの「墜落・転落」が最も多く、全体の約3割を占めています。それ以外にも「挟まれ・巻き込まれ」等々ということです。
 6ページです。道路貨物運送事業での荷主先での労働災害の事例ということで3つ挙げさせていただいていますが、1としては荷主先で、荷主先の所属の作業員がフォークリフトを運転していて、トラックを運転してきたトラック運転者がH型鋼の積込み作業を行っていた。そのときにフォークリフトの運転者のほうが気づかずにH型鋼を押してしまったところ、トラック運転者が押されて荷台から転落したという状況です。こういったものについては、荷主の対策としては、作業床の設置をするといったことが挙げられます。
 2ですが、荷主先のターミナル敷地内において灯油の積込作業中にタンクローリーから後ろ向きで転落・墜落をしたというものがありました。これは右の絵にありますが、上の所に安全帯の取付設備があれば、安全帯を掛けて、転落はなかったという例が2つ目です。
 3は、荷主先の鮮魚市場で積込作業を行った後、トラックから降りようとしたときに荷台で足を滑べらせて転落・墜落したということです。こういったものの対策の例としては、荷台への昇降設備の設置が考えられます。
 そういった災害事例がありまして、12次防を議論いただいた後に策定したものですが、7ページ以降に「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」を載せております。この中で「目的」があり、「陸運事業者の実施事項」があるわけですが、御覧いただきたいのは「第3」ということで右側の枠の中にあります。特に下のほうで、グレーになっている色付けの所ですが、2「荷役作業における労働災害防止措置」ということで、今、ガイドラインではこういったことになっているわけですが、(1)「基本的な対策」の中では、ア「陸運事業者の労働者が荷主等の事業場において行う必要のある荷役作業について、陸運事業者に通知をすること」や、イでは荷役時間などについては「着時刻の指定については余裕を持った設定とすること」、ウでは、場所については必要な広さの確保、床の凹凸や照度、整理整頓したりということで、安全な場所の確保、通路の確保等に努めることとなっています。
 8ページの右上ですが、エとして「陸運事業者から改善要望があった場合には、それに対して適切に対応すること」や、オ「陸運事業者の労働者と荷主の労働者が混在して作業を行う場合には作業間の連絡調整を行う」。また、(2)ということで、先ほどもありました墜落・転落による労働災害の防止対策としては、ア「荷主等が管理する施設において、できるだけプラットホームや墜落防止柵、安全ネット、荷台への昇降設備等の設備を用意すること」ということ。イとして、タンクローリー上部に登って作業を行う場合、荷台に積み上げた荷の上での作業などでは、墜落・転落災害を防止するために、できるだけ施設側に安全帯取付設備、親綱やフック等を設置することということで、こういうガイドラインでもって、現在、荷役作業の安全対策が取られている状況です。
 最後に12ページで御覧いただきたいのは、安全作業連絡書の例として挙げているものです。参考ですが、陸運業者の労働者であるドライバーに提供するための連絡書の例として、こういったものを渡して運んで、向こうで作業するということです。この発地と、右のほうの着地ということで、そこに、場所がどういう所なのかや、そこにフォークリフトがあるのかないのか、免許資格等が要るのかどうかということを記入して、明確にしてドライバーに渡して安全を図っていくという状況です。
 論点としては、先ほど4ページで御説明したような論点ですが、御議論をいただければと思います。説明は以上です。
○分科会長 それでは御議論をお願いいたします。
○新谷委員 この第三者が管理する施設について、資料3-1の1ページの「問題の所在」に書かれている囲みの中の認識は私どもも共有するところです。事業主の権限だけでは十分な安全対策が講じられないケースについて、施設の管理者が安全衛生措置を実施することが求められているという認識は、正しくそのとおりだと思っています。もともと労働災害は、被災する労働者自身もそうですし、その家族もそうですが、社会的なロスだと思います。そういった意味でいくと、社会全体で、その施設を管理する者は、その施設で働く、あるいは施設を利用する労働者に対しての安全衛生措置を講ずることが求められるというのは、正しくここの認識のとおりです。
 今回の論点メモで、4ページに「例えば」ということで、道路貨物運送業者における労働災害の実態が出ていて、そこでの荷役における被災状況が出ています。客先構内での荷役作業中の労働災害が非常に多いという実態が出ているわけです。こういう、荷主側でしか行えない安全対策があることも事実ですので、荷主側としてしっかりとした安全対策を取っていただきたいと思います。
 ただ一方で、様々な作業環境なり作業形態がありますので、一律的な安全衛生措置義務を課すというものも、実効性の問題でなかなか困難な場面も想定されると思いますので、様々な現場の実態を踏まえて、規制のあり方を検討していくことが必要だと思っております。
 そういった意味では、今回添付されているガイドラインが3月25日に発出されていまして、この中で、荷主側の実施すべき安全衛生対策についても具体的に、詳細に記載されているわけですので、このガイドラインの実効性をどう高めて、徹底を図っていくのかということも重要ではないかと思っております。
 このガイドラインの中には、運送業者のやるべきこと、荷主のやるべきこと、それぞれ役割分担等々が記載されていますし、また、安全衛生教育の内容についても記載されていますが、3月25日に発出されたこのガイドラインについて、実効性あるものとするために、運送業者に対する指導徹底、あるいは荷主側に対する指導徹底ということを厚労省として、まずどのようにされるのかをお聞かせいただきたいと思います。
○奈良安全課長 ガイドラインの周知をどうするのかという御質問です。現在、労働基準監督署を通じて、反復定例的に荷役作業がある荷主事業場、あるいは陸運事業者に対する集団指導を行っております。この際にガイドラインも併せて周知を行っております。
 一方、国交省との協力も行っておりまして、国交省の本省、あるいは国交省の地方の出先機関が開催する「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」に担当者を派遣して、陸運事業者、荷主に対しての周知も行っております。
 さらに、本年度、まだこれからということではありますが、委託事業として、47の都道府県で荷主向けの説明会を開催することとしております。さらに、御承知のように、国交省がモデル運送契約書というものを示すために省令改正の作業を進めておられるところでして、これらの法令改正が整い次第、そういう契約の推進に関するような説明会を行うということです。これについても、労働局の担当者を派遣して、国交省と連携しながらガイドラインの周知をやっていきたいと考えているところです。
○新谷委員 取組の状況は分かりました。ただ、国交省は、運送業者の皆さんに対する所管省庁ということですが、この運送契約の非対称性を考えたときに、当然、荷主側の力が強いわけですので、国交省ルートでのモデル運送契約書の徹底が、荷主に対してどれほど効力があるのか、非常に難しいところではないかと思います。
 やはりこれは、監督行政権限を持っている厚労省として、是非、もう一歩踏み込んだ対策を打つべきではないかと考えておりますので、これについても、今後の検討を見させていただきたいと思っております。
○奈良安全課長 今の御指摘を頂いた点ですが、国交省が開催する予定である説明会で、労働局、あるいは監督署が、連携していく所存です。
○角田委員 資料2の中で既存の制度についての御説明を既に頂戴しているわけですが、その資料の3ページにありますが、そういう施設の所有者が貸与している場合には所有者の方には従来以上に負担・義務を負って頂くのもよろしいかと思います。最近、大きなトラックターミナルや港湾施設、あるいは空港などもそうですが、いわゆる物流拠点というものが増えています。建物の所有者と使用者が異なるケースが少なくないと思いますので、既存のルールの中にも、ただいまのお話にあったような、荷主が安全に配慮するとともに、いろいろな場合を想定して検討なさるとよろしいのではないかと思います。
○城内委員 資料の2ページに化学設備の改造等の工事の注文者による措置が示されているわけですが、実は、危険物輸送に関しては、危険有害性がきちんと運転者や労働者に伝わるシステムが日本では欠けているところもあるわけです。そうすると、この化学設備改造等のうんぬんという所と、5ページにある、道路貨物運送事業の労働災害防止ということで考えると、どちらにも係るということで、私は化学物質の危険有害性の周知が大切ではないかとも思っていますので、施設の労働者及び運転者の安全を考えた場合に、そこの点も少し考慮していただければいいかなと思います。
 あと、角田委員の繰り返しになりますが、道路貨物運送事業の労働災害が非常に多いというデータがありますので、一歩進んだ対策が必要だとも思っています。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。陸運事業者については12次防でも重点業種として盛り込まれていまして、労働災害の防止の取組を進めていく必要があるということについては労使で異論のないことだと思います。ガイドラインができていますので、ガイドライン策定後の状況も踏まえて、引き続き検討していくこととさせていただいてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○分科会長 では、そのように進めさせていただきます。
 それでは、次の論点「企業における安全衛生管理体制の適正化」について事務局から説明をお願いします。
○井内計画課長 資料3-2です。労働災害の発生状況を表に載せておりますが、製造業が大幅に減少しておりまして、平成11年、平成24年で見てみると23.7%へ減少。建設業も14.3%と占める割合が少なくなっています。これに対して安全担当者が選任されていない業種が多い第三次産業では、28.5%から43.4%と大幅に増加をしています。真ん中以降に、安全の担当者の有無別に見た労働災害の発生状況ということで下の表2ですが、安全管理者、安全衛生推進者の選任業種で減少傾向にあるということで、平成15年の75.2%から平成24年の66.3%。一方、これらの選任義務のない業種では増加傾向にあるということで、24.8%から33.7%です。
 2ページです。もう少し業種などで見ていきますと、安衛令の第2条に1号業種、2号業種、3号業種とあります。1号業種は一番左で、林業や鉱業や建設業等、2号業種は製造業、電気、ガス、熱供給、その下に通信や各種商品小売といったようなものが入っています。1号業種、2号業種については規模が左に書いてありますが、50人以上であれば安全管理者を選任しなければならない。10~49人であれば安全衛生推進者を選任するといった業種で、工業や製造業の業種ですが、そういったところでの死傷災害の件数は平成24年の合計で示し、またそれぞれの規模の括りでお示しをしています。片や一番右ですが、3号業種としてその他の業種ということで、2号業種も一部第三次産業で業種は入っておりますが、基本的には社会福祉施設、飲食店、小売業、警備業で、ここで平成24年の死傷災害件数と規模の括りでお示ししていますが、1万4,501件と真ん中に記述しております。また、その下の小規模の所は1万8,095件ですが、こういった色を掛けてあるような安全の担当者の選任義務がない業種あるいは規模では、死傷災害が多発している状況にあるということです。
 3ページは御存じかと思いますが、労働安全衛生法において選任が義務付けられている管理者等の種類、要件・資格あるいは職務、選任義務のある規模ごとの事業場を載せています。こういった事業、大きな規模の所についていえば、基本的には総括安全衛生管理者、その中でも危険性のある所については1,000人ではなくて、100人や300人ということになっておりますが、そういった選任義務があり、安全管理者、工業的な業種については安全管理の義務があり、50人以上の事業場で衛生に係る技術的事項を管理するということです。下から2つ目の安全衛生推進者、衛生推進者については10~49人の事業場で、これについては免許の取得や研修の受講ということではなくて、実務経験があれば安全衛生に係る、あるいは衛生に係る業務を担当するということで選任されています。一番下に産業医が出ています。
 こういった管理者がある中で、4ページは論点です。1番目の論点として、こういった安全衛生管理体制、企業における管理体制、特に論点1の第三次産業における労働災害発生件数が今見ていただいたように増加している状況において、第三次産業は安全管理体制を整備する義務がないことについて問題がないかということで、第三次産業に含まれる多くの事業場では安全の担当者、総括安全衛生管理者、安全管理者、安全衛生推進者の選任が義務付けられていないということで、こうした業種について安全の担当者の選任を義務付ける事業場の範囲の拡大を検討することが必要ではないかというのが1番目です。
 2番目は、その場合に業種規模をどこまで広げるべきかということです。第三次産業に含まれる業種については、各種商品小売業等の一部の業種を除くと、50人以上の安全管理者、10~49人は安全衛生推進者の選任を義務付けていないわけです。片や一方、9人以下の事業場については安全だけではなくて、衛生に係る業務の担当者も選任を義務付けていないという状況の中で、範囲、業種規模をどこまで広げるのかが2番目です。
 3番目は、第三次産業では製造や建設に比べて労働災害の重篤度が低い傾向にあるので、選任を義務付けるのは技術的事項を管理する「管理者」よりも、安全に係る業務を担当する「推進者」とすることでよいのではないかという論点です。
 2つ目の論点は5ページです。第三次産業における安全衛生管理体制の現状について、多店舗展開の小売業からヒアリングをしたので、その結果をまとめてお示ししております。総合スーパー、食料品スーパー、家電量販店とヒアリングをしてみましたが、意識としては小売業での大半は軽微の労働災害で、店舗の管理者、負傷した労働者の双方ともに、労働災害防止を軽く考える傾向がある、ということが共通しておりました。その下の店舗ごとの安全衛生管理については、太字の所を御覧いただくと2として、数百人規模の店舗であっても安全衛生の担当者は1名とか2名である。また、ほかの管理業務との兼務をしているということです。
 3はスーパーですが、転倒・腰痛が多いですが、設備改善で本質的な安全対策を取ることが難しいということです。したがって店長以下、全ての労働者の安全に対する意識付けが大事だということです。安全管理者等の配置、設置は現行どおりの店舗ごととしたほうが、関係者の意識付けの点で良いのではないかということでした。これは一定程度、店舗間の距離があるような、そういう分布をしているようなスーパーではこういうことです。
 4は家電量販店。駅前に複数の店舗が隣接して集中している場合がありますが、そこでは現行の制度の店舗ごとから複数店舗で共同選任あるいは共同設置できるようにすることが望まれるということで、もちろん店舗間の距離を考慮の上ということですが、安全管理者等の共同設置をできるようにすることが望まれるという結果でした。
 論点2は6ページです。こういった状況も受けて、各事業場の従業員数が少ない第三次産業については、事業場単位とされる安全衛生管理体制について、企業の実態に応じた体制は考えられないかということで、1にあるように多店舗展開の小売業においては間接部門の人員が限られて、複数の業務を兼任している実態があって、安全衛生の専門知識を持った人員を全ての店舗に配置することは難しいという意見が寄せられております。こういった企業の実態に応じた体制を検討することが必要ではないかというのが1点目です。
 2点目は、そういう検討をする場合に現状の事業場単位とされる体制のほか、一定の条件の下で安全衛生管理体制を複数の事業場で共有することが考えられないか。3点目は共有する場合の条件として、業種、規模、事業場間の距離等はどのようなことが考えられるか。また、共有することができる安全衛生管理体制として、どのようなものが考えられるかということで論点としてお示ししております。説明は以上です。
○分科会長 ただいまの安全管理体制について、論点は1、2の2つがありましたので、論点ごとに議論をしていきたいと思います。まずは論点1について御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○小畑委員 論点1についてですが、安全の担当者の選任が義務付けられていない3号業種において、多くの労働災害が発生している現状からすれば、1号業種あるいは2号業種と同様に、3号業種についても安全担当者の選任を義務付けるべきだと考えています。本来であれば安全管理者というのが望ましいでしょうけれども、そこまで義務付けることになると実務経験や研修等の選任要件がありますので、この3号業種については重篤な労働災害が比較的に少ないということを踏まえるならば、まずは安全衛生推進者の義務付けから進めるところからスタートして段階を踏んでいくことが必要であろうと思っていますので、そのような形でお願いをしたいと思っています。以上です。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○明石委員 最初に、1ページ目のデータの取り方に疑問があります。これは12次防でも指摘されていますが、製造業と建設業の労働災害発生が減少したことはわかりますが、労働力人口の移動とか、そこら辺りは全く加味をされていなくて、ただ災害件数とそれの比較になっています。こういうデータを出すときはまず度数率や強度率を出していただかないと、真っ当な比較ができないと思います。
 論点1ですが、小売業等に状況を尋ねてみると、今は従来にない厳しい行政指導が行われているようです。12次防は5年計画ということもあり、まだ全くその結果やPDCAを一度も回していません。そこは十分に加味していただくとすると、この安全管理者の選任等は時期尚早です。
○分科会長 ほかにいかがでしょうか。
○中澤委員 質問というよりも私の勉強不足でお教えいただきたいです。5ページのヒアリング結果は「ヒアリング企業、各種商品小売業」と書かれていますが、今御説明をいただいた2ページでいくと3号業種というよりは2号業種、各商品小売業とかの形のカテゴリーに入るのではないかという感じがします。よく分かっていませんが、5ページのヒアリング結果というのは、飽くまでも3号業種の管理体制のあるいは事故がどのぐらい起きているかということのバックデータとして出されているものであれば、ヒアリング企業の中の各種商品小売業は2号業種に該当するのではないかという疑問がありますが、いかがでしょうか。
○奈良安全課長 最初に、最後にお尋ねがあった件ですが、ここのA、B、C、Dの4つの社のうちのA、B、Dに関しては、安全管理者の選任義務が掛かっている所です。
 併せて、最初に度数率か強度率のデータを示して議論すべきではないかという御指摘がありました。お手元の資料には御用意していなくて恐縮ですが、私どもで安全管理者の選任義務のある業種とない業種について、雇用者数1,000人に占める休業4日以上の死傷者数の割合、いわゆる年千人率と称しているものを算出してみたものがあります。具体的に申し上げると、安全管理者で選任義務がある業種として建設業について、これ以下全て平成15年から平成24年までにどう変化したかというものですが、建設業については年千人率が5.0%が4.2%、製造業に関しては3.4%が2.8%、各種商品小売業は7.4%が5.0%。それに対して、安全管理者の選任義務がない業種の年千人率推移です。小売業は1.0%が1.5%、社会福祉施設は1.5%が1.9%、飲食店は1.9%が2.1%、医療保健業は0.9%が0.9%という感じで、安全管理者の選任義務のある業種についてはおしなべて年千人率が低下している中で、安全管理者の選任義務がない業種については増加あるいは横這いという数字が出ています。
○上條氏(中村(節)委員代理) 2ページで、1から9人までの規模の事業場における1号、2号、3号業種での災害件数が挙がっていますが、それぞれの母数はどのくらいの数になるのでしょうか。4ページの論点では「9人以下の事業場については選任を義務付けていない」ということなので、この点についてもこれから検討することになるとすれば、対象となる1~9人規模の事業場、それには商店街の家族従業員の商店のようなところまで入ってくるのかなというイメージですが、それがどのくらいの数かを教えていただければと思います。
○井内計画課長 今の御質問についての数字は調べて、もしあれば今日お伝えしたいと思います。今の論点で4ページの2に書かせていただいていますが、私ども安全管理者や安全衛生推進者それぞれ50人以上とか、安全衛生推進者10~49人の選任が、一部の業種を除くと選任されていないということですが、9人以下の事業場については安全だけではなくて衛生に係る業務の担当者も選任を義務付けていませんので、ここではあまり明確ではないかもしれませんが、衛生についても選任を義務付けていないものを安全について選任を義務付けようという考えはないということをはっきりと申し上げさせていただきたいと思います。
○分科会長 ほかに御意見はありますか。
○城内委員 第三次産業で労働災害件数が増加しているということは事実ですので、何らかの対策が必要だろうと思っています。どういう形でやるかは今後議論が必要だと思いますが、私は第三次産業での労働災害の発生は、従来安全管理者を置いた形態と違うのではないかという気がしていますので、教育も含めて議論するかどうかは別として、どういう対策が必要かは検討する必要があるのではないかと思っています。以上です。
○分科会長 時間の関係もありますので、ここでまとめさせていただきますが、少なくとも労働災害が増えている第三次産業で労働災害を減らしていくためには、一層の安全対策の取組を進めていくことが求められている点については、皆様異論のないことかと思います。その上で、第2号、第3号の業種については、現に労働災害が増加しており、安全意識の向上という観点からも安全の担当者を置くなど、安全管理体制を整備することを検討していくことになろうかと思いますので、引き続き分科会で議論していく。その際には関係者のヒアリングも行っていくというふうに進めたいと思いますが、いかがでしょうか。
                  (異議なし)
○分科会長 そのように進めさせていただきます。
 次に、論点2について議論をいただきたいと思います。御意見等はありますか。
○縄野委員 論点2の中で、まず安全衛生管理体制を複数の事業場で共有することが考えられないかという提起が出されておりますが、基本的な考え方としては効率性やコストといったものを重視するあまりに、職場における安全衛生管理が疎かになることがあってはならないということを申し上げたいと思います。その上で先ほど来ありますように、比較的重篤な労働災害の起こりやすい1号業種、2号業種については、現状の管理体制あるいは管理者等の選任要件を緩和することについては、労働側としては基本的に反対ということを申し上げたいと思います。
 一方、先ほど論点1でも取り上げられた3号業種についてですが、例えば新たに安全担当者の選任義務を課すような業種であって、かつ重篤な労働災害が比較的少ない業種については、一定規模以下の事業場に限って専任の安全担当者を配置するといった一定の安全の質が確保される場合に限って、複数の事業場を管理することも検討に値するのではないかと考えます。いずれにしても、既存の管理体制を緩めるということではなくて、あくまで新たに安全担当者の選任義務を課す事業場に限って、複数事業場の管理を認めるというスキームで考えるべきではないかということを申し上げたいと思います。以上です。
○分科会長 ほかに御意見はありますか。
○角田委員 今の論点2についてのお話で、これは個々としては規模の小さい店舗形態の事業場が想定されていると思いますが、幾つか複数の事業場があるような場合、店長は正規の雇用だけれども、他の人はアルバイトという業態は数多くあると思います。規模が10人未満ということもあるかもしれませんが、少し大きいですと10人以上となり、それなりの安全に対する、あるいは衛生に対する配慮が必要となります。そういう中で、産業医の共同選任のような形ですが、ある担当者が幾つかある店舗をまとめて巡回・巡視して安全衛生に関して面倒を見るのも1つの工夫かなという感じがいたします。
 その種の業種で思い出しましたが、昨年度でしたが、前の宮野安全衛生部長のときに、3か年続けての労働災害増加に対しての緊急要請があったことを皆さまもよく覚えていらっしゃると思います。その要請の際にただ今は正確な記憶ではありませんが、第三次産業のことが問題として大きく取り上げられ、全体として増加している中で第三次産業の部分が、確かに千人率とか強度率とか、あるいはハイリスクアプローチやポピュレーションアプローチということへの検討が必要ですが、全般的に大きく網を掛けていくのはよいことと思います。ですから論点2の方向性は、大変よろしいのではないかという感じがします。印象ですが、付け加えさせていただきます。
○分科会長 ほかに御意見はありますか。
○明石委員 論点2については1か所をヒアリングしただけですので、もう少しヒアリングをしていただいて、ニーズがどの辺りにあるのかを細かく調査していただければと思います。
 先ほど論点1をまとめられましたが、もう一度データを度数率、強度率を入れて出し直してもらえませんか。そうでないと、ちょっと考えにくいので。
○奈良安全課長 先ほど御説明をしたデータについて、きちんと資料として再度提出させていただきます。
○角田委員 業種別の強度率や度数率に関しては、お手元のブルーの資料集の資料2に、業種別のものがある程度は載っていると思います。資料2の後ろのほうです。
○分科会長 御参照いただければと思います。
○新谷委員 論点1でも論点2でもないですが、安全衛生管理体制の中で先ほど角田委員から産業医のお話もしていただきましたので、産業医に関連して最近気がついた事案がありましたので、確認を求めたいと思います。産業医については2、3ページに、要件と職務内容と選任義務について記載があります。産業医は、医師という立場で職場に密着した安全衛生管理についての職務を行っていただくということですし、場合によっては事業者に対して必要な勧告を行う、あるいは職場巡回についても月1回巡視をして、必要な措置を講ずるといった重要な役割を担っていただいています。
 最近分かった事案というのは、この産業医を派遣労働者として派遣する会社が出てきていて、派遣先においてこの選任義務の要件を満たすがために、派遣労働者として産業医を派遣することを専門とする派遣会社が出てきているということです。特に職場と密着した中で非常に重要な役割を担っていただく産業医が、派遣労働者に置き換わっていくことについては、場合によっては産業医が頻繁に替わり、ただ選任要件を満たすだけということにもなりかねないと思っております。派遣法上は特に違法ではないとしても、労働安全衛生法からいくと、どうも潜脱ではないかという懸念がありまして、この派遣による産業医という新しい形態に対して、安全衛生としてどのように考えていくのかをこの場でお分かりになればお答えいただいても結構ですし、また次回でも結構ですが、考え方があれば聞かせていただきたいと思います。
○泉労働衛生課長 産業医については今御紹介いただいたとおり、業者に対する勧告や月1回以上の作業場の巡視といった職務がありますので、当然事業場の作業環境に通じた産業医によって、労働者の健康管理が継続的に行われるということで、この産業医に求められる職務は果たされると考えております。今御紹介があったような事案について詳細は承知しておりませんが、このような産業医の業務が適切に行われるように指導してまいりたいと考えております。
○新谷委員 詳細に承知されていないということですが、職業安定局では毎月1回、派遣業を開始する際の許可の審査を労働政策審議会の労働力需給制度部会で行っておりまして、実は具体的に上がってきた事案です。これについては、当該局の前任の課長に多分内容について照会があったと思います。これは厚生労働省の中でも局が違いますが、実際に事案としては起こっておりますので、職業安定局と連携を取っていただいて、具体的にどのような形で、派遣会社で産業医が派遣されて、どのような実態で産業医が職務を遂行しているのかを調査をしていただきたいと思います。それが本当に潜脱ではない、労働安全衛生法の求めている産業医の要件を満たして職務が行われているというのであれば構いませんが、どうもそれは潜脱だという実態があるのであれば、労働安全衛生法上の指導を行うべきではないかと思っておりますので、詳細について承知をしていないということではなくて、調査をしていただきたいと思います。
○泉労働衛生課長 情報収集してまいりたいと思います。
○角田委員 参考になるかどうか。正確な記憶ではありませんが、産業医の業務というのは専属ではない場合が随分あることは確かだと思います。そして、産業医として複数の事業場をお引き受けになることがあるのでしょう。そのような場合、総数の労働者数が3,000人以上ですと2人という基準がありますが、確かそのような数を想定して、それを超えないようなことの指導というかガイドラインというか、そのようなものがあったようなおぼろげながらの記憶がございます。ご参考までに申し上げました。
○分科会長 本題とずれてしまいました。こちらのほうも情報収集を事務局側でお願いしたいと思います。論点2については、まずは第三次産業についての議論から行うことになろうかと思います。その場合、一定の条件を付した中では体制を共有できることも検討できるのではないかと思います。引き続き、どのような場合に認められるかのあたりを議論していきたいと思います。論点1と併せて関係者からのヒアリングを行いながら進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                  (異議なし)
○分科会長 そのようにさせていただきます。
 次の論点、「規制・届出等の見直し」について事務局から説明をお願いします。
○井内計画課長 資料3-3です。安全衛生法上の事業者の義務です。事業者は、1にあるような安全衛生管理体制を確立して、労働災害を防止するための具体的措置を実施する義務を負います。管理体制、具体的措置は、御覧いただくような形で取っていくということです。
 2ページは、今回の規制・届出等の見直しの方向性です。新たな課題が出てきた場合には、それに対する規制の充実を検討する一方で、事業場での自主的な取組、技術水準の向上により、規制の目的が実質的に達成できるようなものについては、実態に合わせた合理化を検討することは考えられないかということです。下に、「危険・健康障害防止基準等」「手続規定」と分けて記載していますが、例えば機械であれば、覆いや囲い、安全装置などの、設備上の安全基準とか、合図、作業帽の着用などの、作業時の安全基準。別のテーマとして議論いただいていますが、こういったものによって、機械等の回収・改善命令の範囲、公表の検討を併せて行っています。
 これに対して、右のほうの手続規定です。計画届、特定機械等の検査について、合理化が検討できないか、外部委託化の促進ということです。
 左下で、化学物質です。譲渡提供時の表示、SDSの交付、保護具の使用等の作業管理、局排等の工学的な対策の作業環境管理、健康診断等の健康管理といったものから、多様化する取扱物質に対応した連続的な規制の充実を検討していただいているところです。それに対して手続規定としては、計画届等について合理化を検討することができないかということです。
 3ページは、現在の安衛法第88条に基づく計画届について概要を載せています。第88条第1項に、「工場の新設等」というものがありまして、下にあるような業種で規模の事業場に係る建設物・機械等の設置、移転、主要構造部分の変更については、真ん中にあるような、必要な書類等、事業場の周囲の状況、あるいは敷地内の建物、主要な機械等の配置図、原材料の取扱い等といった、必要な書類をもって、監督署長に工事開始日の30日前までに届け出ることが規定されています。
 その下ですが、危険・有害な機械等の設置については、第88条第2項に、動力プレス、足場、局所排気装置等の25種類の機械等の設置、移転、主要構造部分の変更については、構造図、配置図等をもって、監督署長に工事開始日の30日前までに届け出るということです。
 4ページです。大規模な建設工事、そこにあるような、塔、ダム、橋梁、ずい道等について、これについても周囲の状況の図面、建設物等の概要、機械、設備、建設物等の配置図をもって、厚生労働大臣に宛てて、工事開始日30日前に届出をするというのが、第3項です。
 左の下ですが、それよりも小規模な、一定規模以上の建設工事、建築物、工作物、橋梁、ずい道、石綿等の除去について、同様の書類をもって、工事開始日14日前までに、監督署長に宛て、届出をするというのが、第4項に規定されています。
 5ページの「検討の論点」です。最初に申し上げたような、技術革新に対応した規制のあり方については、長期的に検討していくわけですが、12次防でも言われていますように着手可能なものから順次見直すということで、具体的には、事業場での自主的な取組、技術水準の向上によって、規制の目的が実質的に達成できるようなものについて、実態に合わせた合理化や民間活力の促進等の観点から、見直しを検討することが考えられないかということで、その論点としては、各論にありますが、産業実態に合わせるように、産業界から要望が上がっている安衛法第88条第1項に基づく計画届について、見直しを検討すべきではないか。
 これは、一般的な建築物等の設置等についてで、年間に1万2,000件ぐらいの届出が出ているわけですが、そういったものについての検討をすべきではないか。その他、規制の合理化等を図るべき内容はないかということが、検討の論点です。
○分科会長 御議論をお願いします。
○犬飼委員 産業界から要望が上がっている第88条第1項の計画届の見直しということですが、ここに「合理化」という言葉が強く出ていますので、単に「合理化」を目的とするのではなくて、しっかり根本的なものを踏まえて、是非見直しということを検討していただきたいと思っています。
 一方で、技術水準の向上、機械・設備の回収・改善の規制ということも入っていますから、そこで必要な安全措置が担保できているということがあれば、当然状況の変化を踏まえる必要があると思います。一方、事前届出によって行政のチェックに相当なマンパワーが割かれているというのは、事実としてあると思いますので、限られた行政のヒューマン・リソースを労働安全衛生の向上のために効果的に使うという観点の検討も必要だと思っています。
 そこで、1点質問です。工事前の事前チェックで現に指摘された事項について、他の規制によってもチェックが働く体制になっているのでしょうか。その観点だけ教えていただければと思います。
○奈良安全課長 第88条第1号に基づく計画の届出の実施状況は、平成24年について見ますと、1万2,516の届出がなされています。このうち、届出の内容から見て変更指導がなされているものが、19件です。その中で、法違反が認められて指導しているのが1件で、他の18件については、法違反というよりも、法定基準以上の安全措置を取ったほうがいいのではないかという意味での指導を行っています。
○犬飼委員 結果的に、指導の件数が少なくなっているのも事実でしょうけれども、私が心配しているのは、労働災害の危険性を見落とさない体制になっているか、安全がカバーできる体制になっているかどうかということです。1件であろうと、10件であろうと、労働災害の危険性が見落とされることを懸念しているのです。件数の多い少ないも大事なことですが、その観点を重要視してほしいということです。
○奈良安全課長 全然違う観点からのお答になってしまうかもしれませんが、青い資料の中の、資料16-1に、リスクアセスメントの実施状況のデータがあります。これで見ますと、平成17年と平成22年の調査を比べたものですが、「リスクアセスメントを実施している」というのは、全産業では20.4%が33.8%、届出の対象の多くが入ってくる製造業については、22.2%から42.5%です。さらに事業所の規模別のデータがあればいいのですが、それがないものですから、下のほうの事業場の規模別のデータを御覧いただきますと、50人~99人の所を見ますと、26.6%が45.6%になっています。1,000人以上の規模の大きな所は、平成22年時点で86.5%になっています。
 これに加えて、さらに12次防を作る際の参考データとして、平成23年時点でのリスクアセスメントの実施状況を調べた数字がありますが、さらに1年間に10ポイント近く実施率が上がってきているデータがあります。
 それと、第1項の計画の届出の対象が、定格電力量が300kwになりますから、かなり多種類の機械を置けるような電力定格容量で、いろいろな要素を考えますと、現段階においては、第1項の計画の届出をしなければいけない事業場の多くにおいて、既にリスクアセスメントが実施されていて、第1項でやらなければいけない内容について、それよりも詳細な安全衛生管理上の事前チェックがなされていると考えられるところで、そういう意味で第1項の審査にかけている業務量は、監督官が実際に事業場というより見なければいけない所に出かけて行って、監督指導を行うように振り向けることができれば、行政効果としては、更に大きなものが得られるのではないかと考えています。
○岡本委員 計画の届出の話と、年次点検の話と2つあります。
 計画の届出という観点からいえば、本来の趣旨は、機械が労働者に危害を与える状態であってはいけないということだと思うのですが、工場の新設時に届け出るというのは、最近できたPL法もありますし、昨年には機械の設計、製作をした人が、使用者に残存リスクを通知するという仕組みもあるので、新設だから一律に全部届け出るというのは、考える余地があるのではないかと思います。
 年次点検の話です。天井クレーンなどは年次点検していますが、それなどは技術の水準が大分進んでいて、40年前に作ったクレーンも、2、3年前に作ったクレーンも、一律に毎年検査をするのはいかがなものかと思っています。車でも、新車と10年超えの車の車検のピッチは違うと思います。そういうことも含めて、是非検討していただきたいと思います。
○奈良安全課長 2点目について、私たちの考え方を御説明させていただきます。御承知のように、クレーンそのものに対する負荷というのは、使用頻度とか、定格荷重に対する割合を占める荷重をどの程度の頻度で使うか、どういう状況に置かれているのか。例えば海に近い所で使われているのか。様々な使用環境の問題、さらにはクレーンのメンテナンスがどのように行われているかという、管理の状況によって、実際上かなり異なってくると思います。ですから、一概にこの検査間隔を、新しい、古いということで延ばすことは、問題があるのではないかと考えています。
 ちなみに、ISOの9927-1に、クレーンの点検に関する国際基準がありまして、その中では、日常点検、6か月以内ごとの定期検査、12か月以内の年次点検、2年以上の間隔での詳細な検査という規定が定められていまして、一定の期間ごとに自主的な検査を行うのは、国際的にも一般的に認められていると考えています。
 また、自動車の検査ですが、確かに車検は、初期検査と継続検査について、一般乗用車であれば、御承知のように、最初は3年、その後は2年となっていますが、そのほかに、使用者の義務として、点検、整備がありまして、その中で乗用車についていえば、1年に1回の自主的な点検は、車の使用年数に関わらず、定期的に義務付けられていると承知しています。
○井内計画課長 併せまして、先ほど業務量を振り替えていくこともどうかということでお話を頂きました。そういうところについては、確かに重要な観点だと思いますので、また検討させていただきたいと思っています。
○分科会長 公益側からはどうですか。
○城内委員 技術水準の向上で、規制の目的が実質的に達成されるときは合理化すべきであるというのは、そのとおりだと思います。
 ただ、安全や健康に関する規制の見直しの検討等であれば、かなり困難なこともあると思いますが、資料にあるような届出の手続等に関しては、合理化がスムーズではないかと思っておりますので、是非検討していくべきだと思います。
 あと、企業もそうだと思いますが、行政も効率化が言われていますので、そういう面からも進めていったほうがいいのではないかなと思っております。
○分科会長 本件に関しては、現場の実態に合っていない手続面の規制の合理化については、技術水準の向上等により、現在では規制の目的が果たされている場合であれば、廃止を含めて合理化をする方向を検討してもいいかと思います。そういった結論でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○新谷委員 今、まとめていただいたのですが、先ほど岡本委員がおっしゃっていた、クレーンの点検間隔の点について、先ほど安全課長が御答弁いただいた内容で維持するべきだということを申し添えておきます。
○分科会長 その辺も付け加えて進めたいということでお願いいたします。
 次に、前回の建議後の状況を踏まえて議論すべき論点というのが残っています。まず、「メンタルヘルス対策」について、事務局から説明をお願いします。
○井内計画課長 資料3-4です。前回廃案になった、改正法案のメンタルヘルス対策の抜粋を、1ページに載せています。御案内のとおりですが、医師又は保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査、チェックを行うことを、事業者に義務付ける。検査の結果を通知された労働者が、面接指導の申出をしたときは、医師による面接指導を実施することを事業者に義務付ける。これを受けて事業者は、必要な場合には作業の転換、労働時間の短縮、その他の適切な就業上の措置を講じるという内容です。
 2ページは、現在の取り巻く状況です。1に自殺者の推移があります。平成24年は15年ぶりに3万人を下回っていますが、真ん中辺りに「勤務問題」がありますが、平成20年から平成24年を見ても2,400人台ということで、勤務問題を理由とするものは、依然として一定の割合を占めています。
 その下は、精神障害の労災補償状況です。請求件数は、平成12年からずっと増加をしていまして、最近は毎年1,200件以上の請求がきているということです。認定についても、平成24年は大幅に増えている状況です。
 3ページは、メンタルヘルス不調による休業・退職の状況です。過去1年間に、メンタルヘルスの不調により、連続1か月以上の休業あるいは退職した労働者がいる事業場の割合は、平成19年は7.6に対し、平成23年は9.0ということで、増加しています。
 その下は、対策の取組状況です。第12次防の目標は、平成29年までに80%ですが、平成23年の段階では43.6%、その下に規模別が出ていますが、事業場でのメンタルヘルス対策は年々進んできておりますが、小規模事業場での取組が遅れている状況です。
 4ページは、規模別、内容別の対策の取組内容です。たとえば、左から4番目、5番目で、労働者への教育研修・情報提供、あるいは管理監督者への教育研修・情報提供については、規模の大きなところは進んでいまして、ある程度小さなところでもかなり進んでいますが、左から3つ目の、メンタルヘルスケアの実務を行う担当者の選任などについては、規模間でかなりのばらつきのある状況です。
 以上のように、平成22年12月の建議を踏まえた、改正法案提出後の労働者の心の健康を取り巻く状況を見ると、メンタルヘルス対策の必要性は引き続きあるものといえます。特に、小規模事業場におけるメンタルヘルスケアへの取組が遅れていて、12次防の達成に向けた対策の促進が必要な状況です。
 検討の論点としては、法案提出後の状況の変化等を踏まえ、改めて検討すべき事項はあるかということです。御議論をお願いします。
○分科会長 前回の建議でまとまったものですので、基本的にこれを尊重していくことになろうかと思いますが、その後の状況変化等も踏まえまして、御意見がありましたらお願いします。
○山口委員 新任の委員で、前回の議論に加わっていませんので、若干の意見を申し述べます。
 職場のメンタルヘルス対策が喫緊の課題であることは皆さんが共有していることだと思うのですが、現実を見ますと、多くのメンタル不調者は、精神科とか心療内科に受診する、あるいは仕事の継続ができなくなって、自宅療養という形になって、初めて顕在化するということが、現実の姿なのではないかと思います。
 予防という意味で考えますと、未然の防止、あるいは早期に発見し対応することが求められるのですが、なかなか進んでいないのが現実だと思います。
 背景は何かと考えると、未然防止、早期発見、早期対応の基礎になる情報ソースが、決定的に不足していることだと思います。身体的な病気の場合には、定期健康診断という貴重な情報ソースがありまして、そこで未然防止、早期発見、早期対応が着実になされると。これは大企業であっても、中小の企業であっても、同じような役割をきちんと果たしているわけですが、それに対応するものがメンタルヘルスには不足していると考えますと、前回の廃案になってしまった改正案の中のストレスチェック、あるいはその結果に基づく面接指導が果たす役割は、極めて大きいのではないかと、私はそのときは外野でしたが、そのように強く感じておりましたので、意見を申し上げました。
○栗林委員 山口委員の意見も含めて、4ページにあるように、「対策の必要性は引き続きあるものといえる」には異論はありません。ただ、本案が検討されてから数年たっていますので、その状況の変化を踏まえて、意見を述べさせていただきます。
 ポイントは2つあります。1つは、まず時代の変化として、従来ですと、いわゆる従来型のうつ、典型的なうつが多かったわけですが、ここ2、3年で急激に、「未熟型うつ」と言われている、「現代型うつ」とも言うことがありますが、そういうものが非常に増えてきています。その類のものは、薬の効果が薄い、医療として取り組む効果が薄いところが、1つの特徴だと思います。
 どう対応するかというと、カウンセリングですとか、心理療法によって、そういう人たちは回復していくという可能性が増えている状況があります。
 2つ目は、もともとストレスチェックを質問形式でやることの元来の特性として、1つは、いわゆる第一種の過誤、健常な人をストレスとみなしてしまうという過ちです。第二種の過誤として、高ストレス者を見逃がしてしまうという過ちです。その確率が、いわゆる血液検査などで行うようなフィジカルな検査よりも高くなってしまうのは、否めない事実だと思います。
 以上の2点から考えますと、高ストレスと判断された人が、産業医あるいは保健師に申し出て、面談するところの行為が、一足飛びになっているという印象を受けます。
 1つ対応として考えられるのは、何らかのストレスチェックを行うのは賛成なのですが、その結果を従業員全員に通知する際に、カウンセリング窓口を同時に告知するとか、そういう方法もあるのではないかと思います。公的機関でいえば、精神保健福祉センターでもいいですし、労災病院の窓口でもいいでしょうし、地産保センターでもいいと思います。そういう所の連絡先を、結果とともに告知することにより、軽い状態のときに相談、カウンセリングを使うことによって、未然防止につなげる手段のほうが、むしろ効果が上がるのではないかという気がしていますので、ストレスチェックをした後の処置方法について、議論を深めていく必要があると感じています。
○泉労働衛生課長 2点御指摘いただきました、1つは現代型あるいは新型うつと言われるものが増えているのではないかということです。確かに、マスコミなどで取り上げられることが増えておりますが、これを単一の病態として括ってよいのか、従来からあるうつとどう違うのかといったところについては、まだ学術的にも様々な検討がなされているところだと思います。
 2つ目に、ストレスチェックについては、いわゆる感度、特異度について、一般の臨床検査と比べて低いのではないかという御指摘がございました。こうした、学問的により適切な手法を検討するということについては、引き続き専門家などの意見も聞きながら進めていく必要があると思っております。
 併せまして、それを基にどのように御本人に通知していくのか、どのように面談、カウンセリングにつなげていくのかについても、具体的には法案成立後になると思いますが、運用方法については専門家の御意見も聞きながら、よく検討していきたいと思っています。
○半沢委員 山口委員、栗林委員の御発言からも、現状の実態を見ても、引き続きメンタルヘルス対策強化の必要性はあるという御意見だったと思います。労働側としても、引き続き対策強化の必要性はありますし、状況から見ましても、建議当時よりも必要性は増してきていると考えております。
 ですので、この先、今おっしゃったような議論の余地があるとしても、まずは建議の内容に沿った労働安全衛生法改正案の成立が、早急に求められていると思っていますので、是非とも厚生労働省の皆様にも力を尽くしていただきたいと思っています。
○栗林委員 確認です。先ほどの泉課長の御発言は、「医師による面談」というのはそのまま記載するという意図の表れですか。
○泉労働衛生課長 資料3-4の1枚目にある基本的な枠組みを変えるということではなく、この枠組みを運用する中において、様々な工夫が必要になってくるだろうということを申し上げています。
○明石委員 論点にありますが、「法案提出後の状況の変化等を踏まえ」ということなので、平成19年の資料はぽつぽつと出ていますが、山口委員がおっしゃった、早期発見、予防ができていないというのは、我々はそうは思っていなくて、かなり力を入れて行っていますので、最後の取組の内容は、平成19年を載せていただけると、かなり伸びが分かるのではないかと思います。
 それと、せっかくこういう公正な議論をする場なので、もう少し資料をそのまま出していただく必要があると思います。平成19年と平成23年、それからまだ平成24年のものが出ていません。平成24年は秋に出ると統計情報部には聞いていますので、それが出てから本格的な議論かなと思っています。
 もう1つですが、3ページの上に「メンタルヘルス不調による休業・退職の状況」があります。これは事務局で、メンタルヘルス不調によって休業・退職した労働者のいる事業場は増加と書いていますが、重点調査にはもう1つ調査がありまして、同じ対象に1年前との比較を聞いているのですが、減少が4.6、増加が3.2なので、1年前に比べたら減っています。こういう意図的な注釈を付けるのではなくて、全てそのまま出していただければ検討がしやすいので、よろしくお願いします。
○泉労働衛生課長 統計につきまして、平成19年と平成24年、平成23年というお話がありました。平成19年、平成24年というのは、労働者健康状況調査で、平成19年の結果は出ていますが平成24年はまだ出ていないという、御紹介のとおりです。
 今回、メンタルヘルス対策の取組内容などは、平成23年のデータを出していますが、これは労働災害防止対策重点調査ということで実施したものです。平成19年の調査と、基本的な枠組み、調査項目、設計等を同じ形でしておりますので、この点については、平成24年度の結果を待たずに、平成23年度の結果を用いて御議論いただけるものと考えております。よろしくお願いいたします。
○中村(聡)委員 精神的健康状況を把握するための検査、この法案を検討しているときの御説明では、これは健康診断とは別の流れを作るものであって、従来行われている健康診断に変更を加えるものではないということでしたが、実際の改正案では、現在行われている健康診断から「精神的健康の状況に係るものを除く」と変更が加えられています。
 心の健康と体の健康を別のものとして扱えるという考え方に基づいた表現ですが、これは正しいものではないと考えます。健康診断を分離するという考え方は修正が必要ではないかと思います。
○泉労働衛生課長 御指摘のあった点ですが、従来から一般健診において、心の問題も含めて把握していこうということでされてきたことは、十分に承知しております。
 法律案にそういった文言が入っているという御指摘ですが、新たなストレスチェックについて、この情報については一般健診の結果と異なって、労働者の同意があった場合のみ、事業者に伝わるというルートを作るために、そういった改正案としたもので、従来から行われている一般健診の取組については、大きな変更なくやっていただけるような形で考えているというのは、従来の御説明のとおりです。
○岡本委員 2ページですが、精神障害の労災補償状況で、請求件数が増加傾向、認定件数も若干増加傾向です。この請求件数のうち、メンタルヘルスに取り組んでいない事業場が多いのでしょうか、それともメンタルヘルスに取り組んでいても請求されるようなことがあるのでしょうか。取り組んでいない事業場からの請求が多いのでしょうか。
○泉労働衛生課長 今、資料を持っておりません。取り組んでいる、取り組んでいない、を区別できるのかどうか分かりませんが、確認の上、お答えできるようであれば後日お答えさせていただきたいと思います。
○岡本委員 メンタルヘルスに取り組んでいないがゆえに請求件数が多いのであれば、メンタルヘルスの取組を推奨するのは意味のある行為なのですが、取り組んでいても請求されているのであれば中身が問題であって、そこが議論の分かれ目ではないかと思います。
○新谷委員 使用者側の皆さんからの御発言が続いたので、労働側も一言申し上げます。
 検討の論点にありますように、法案提出後の状況の変化を踏まえて、改めて検討するということだったかと思います。いずれにしても、法案提出の際には、建議を踏まえて法律案要綱の確認もこの審議会の場で行っているわけですから、枠組みについて、その後、確認された法律案要綱の内容を大きく変えるほどの、事情を変更するような要因があるのかどうかが大事だと思っています。
 今、御発言いただいている内容については、それぞれの御指摘を頂いていますが、その内容が提出された法律案の枠組みを変えるといったものではないのではないかというのが、私どもの認識です。メンタルヘルス対策の重要性は、山口委員の御発言にあったように、ますます高まっているという認識でいますので、速やかにこの法案を通すということで、厚生労働省としても御努力いただきたいと思うし、できたらこの場でも、その方向で確認を頂きたいと思っています。
○角田委員 一言だけ付け加えさせて下さい。私も、当初、この法案案を見た時には、健康診断は、こころと身体を一括して診るのが方向性としては正しいと考えておりましたので問題があるかな、と思っておりましたが、資料3-4の1枚目の下の図にありますように、労働者と医師の間を、図の下のほうですが、医療機関、相談機関を介しますが、「連携」ということが書かれています。
 条文を詳しく読んで考えていきますと、政省令の中でどうなるかは問題かもしれませんが、こころと身体を併せて、医療スタッフ、産業保健スタッフが担当できる余地があるように、私は考えていいのではないかと思います。
 そして、メンタルヘルスに関しては大変デリケートな問題ということなので、法案を作成なさった意図は、労働者のプライバシーを守るような配慮は色濃く出ていたということかと思います。ただ、それは仕事を分けるということではなくて、その労働者の健康の保持・増進という意味では、併せて、産業保健スタッフ、医療関係者がアプローチできることが担保できれば、よろしいのではないか、という印象を持っています。
○分科会長 メンタル不調という事態ですが、労働者のみならず事業者にとっても大きな損失です。メンタルヘルス対策の重要性、ストレスチェックを行うことの重要性について、異論がないところは再確認できたかと思います。今後も検討を進めていくということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○分科会長 それでは最後の議題、「受動喫煙防止対策」についてです。説明をお願いいたします。
○井内計画課長 資料3-5です。廃案になった受動喫煙対策の抜粋です。御案内のとおりですが、全事業者に対し、屋内作業場を全面禁煙又は空間分煙する措置を講じるということでしたが、右のほうの、飲食業、宿泊業、娯楽業の事業者については、労働者の受動喫煙の程度を低減させるために、次のいずれかの措置を講ずるということで、たばこの煙の浮遊粉じん濃度の基準を守る、喫煙エリアの換気の一定の基準を守るということが、併せて含まれました。
 2ページは、その後の状況です。最初の取組は、事業者、労働者の意識についてです。全面禁煙、空間分煙について、事業場の規模が小さくなるほど対策が遅れています。規模の大きな事業場ほど、空間分煙により対策を講じている割合が高くなっています。
 業種で見ますと、業種によって実施状況に差が認められます。下から4番目では、接客業、サービス業あるいは土木系の業種の対策が遅れている傾向にあります。
 3ページは、取組における問題の有無です。事業所の回答は、「問題がある」とするのは34.4%です。問題の内容は、「喫煙者の理解が得られない」、多いのは「機器等で、たばこの煙の漏えいを完全に防ぐことが困難」、あるいは「顧客に喫煙をやめさせるのは困難」「資金がない」ということです。
 労働者の意識は、8割超が、空間分煙、全面禁煙という、空間分煙以上の対策を望んでいます。
 4ページは、厚生労働省の支援の事業です。(1)では相談窓口、電話相談、実地指導なども行っています。(2)は、たばこ煙の濃度等の測定機器の貸出しです。(3)として、受動喫煙防止対策の助成金です。これは平成23年度から行っていますが、平成25年度からは対象事業主、助成率を拡充し、全ての業種の中小企業事業主を対象とし、費用の2分の1、上限200万円ということで、助成金を支給しています。
 5ページは、これまでの経緯です。平成23年12月に一部改正する法案を臨時国会に提出し、その下の※で、通常国会の期間中に、受動喫煙防止対策の部分について、与野党間で修正の協議があり、義務化を努力義務化、国の支援を併せて規定するという修正の動きが、水面下でまとまりました。ただ、その後の政治状況により継続になり、その次の国会で廃案となっています。
 検討の論点として、法案提出後の状況の変化等を踏まえ、改めて検討すべき事項はあるかということで、御議論をお願いしたいと思います。
○分科会長 御意見をお願いいたします。
○半沢委員 御説明にありましたように、労働者の意識としては、8割を超える人が空間分煙以上の対策を望んでいることもありますし、事業規模や業種等によって対策が遅れているという現実があると認識しています。
 ですので、受動喫煙防止対策について、2010年12月の建議に沿った内容の労働安全衛生法改正法案の成立が求められていると考えておりますので、早期成立のために進んでいくべきではないかと思っております。
○明石委員 先ほどと同様なのですが、資料が不足していると思います。資料を全て出していただきたいと思います。
 それと、今、指摘のあった3ページの右下の注釈ですが、これは労働者の全面禁煙に対する意識調査です。質問票を読むと、「あなたは職場における全面禁煙について、どう思いますか」と聞かれているので、何で「望んでいる」ということになるのか。その下に、「職場における喫煙対策として、何を望みますか」とあるのに、何で違う設問を出してきて、このように断定されているのですか。これはおかしいと思います。
 もう1点指摘させていただきます。1ページ目の「全事業者」と書いている左の、「喫煙室の要件(予定)(省令事項)」と書いていますが、これはいかにも、予定として掲げるにはいきすぎだと思います。建議にも付されていません。
 時間も過ぎたので、せっかくの公正の場なので、次回にきちんとしたデータを出してください。
○分科会長 事務局側、いかがですか。
○泉労働衛生課長 御指摘の点について、この場では確認できませんが、資料の作り方については工夫して出させていただきたいと思います。
○分科会長 ほかに御意見はございますか。
○上條氏(中村(節)委員代理) まずは、受動喫煙防止対策の助成金を拡充していただき、特に対象業種を広げていただいたということは、非常に有り難く思っております。ただ、拡充は平成25年度から始まったばかりですので、この助成金の効果がどのくらい表れるかについての効果測定がまず行われるべきなのではないかと考えています。
 受動喫煙防止対策が進んでいない中では、対策が広がることが重要であって、義務化することが目的ではありません。受動喫煙防止対策が義務化されると助成金を受けられなくなり慌てて対策を立てようと思っても、資金がないということだとその対策が広がらないことになりますので、まず、この助成金の周知徹底をした後で、効果測定をし、その上で義務化するのかどうかの議論が必要なのではないかと思います。
○分科会長 ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。
 少なくとも、受動喫煙防止の対策を講じていくことは、異論のないところかと思いますが、今回の資料の件を含め、もう少し検討していくところがあるということかと思います。引き続き検討を深めていきたいと思います。そういった進め方でよろしいでしょうか。
(異議なし)
○分科会長 ありがとうございました。
 以上で、一通り論点について御意見を頂きました。各論点において、一定の共通の認識は得られたのではないかと思います。次回は、これまでの議論を踏まえ、論点ごとの意見と、得られた共通認識、今後議論を進めるべき点など、そういったものをまとめた資料を事務局から提示していただき、進めていきたいと思います。
 また、幾つかの論点においては、実態調査も必要なこともあったかと思います。それについては、ヒアリングその他、具体的にどのように行うかについては、事務局で調整していただきたいと考えています。
○泉労働衛生課長 1つ前の議題のメンタルヘルスの関係ですが、最近の事情ということで、専門家の団体等からのヒアリングを提案させていただきます。
○分科会長 よろしいでしょうか。
(異議なし)
○分科会長 それもお進めいただきたいと思います。
○勝野委員 今回提示された資料で、災害発生件数の統計資料が幾つか出ています。その件で発言させていただきます。
 例えば今回の資料3-2で、先ほども出ましたが、建設業は「大幅に減少している」という表現で、発生状況が出されているわけですが、災害が減少していること自体は、評価をしていかなければいけないと認識しています。ただ、一方でこうした統計の数字が、果たして現場の実態を正確に反映しているものなのかという点について、疑問が残ります。
 例えば私どもの組合で、組合員を対象とした特別加入を含めた、休業4日以上の労災の申請状況の調査を毎年行っています。例えば2011年度の数字で申しますと、8,335件でした。2012年度で見ますと、8,019件ということで、若干減少したものの大きな変化は出ていないと認識しています。
 この中で特徴的なのは、2011年度の死亡事故で言いますと、60件の死亡事故がありました。そのうち、一人親方と中小事業主、いわゆる特別加入の方が31件ということで、半数を超えているわけです。また、昨年の事例なのですが、四国のある県で見ますと、16歳と17歳の型枠工が労災事故に遭って、労災申請しています。ただ、労災区分が一人親方であったということで、資料統計の中には反映されていない数字になっていると思っています。
 建設業では、近年労務提供のみでも、労働者とみなされず、一人親方とされてしまう状況が進んでいまして、結果として、16歳とか17歳ですから、入職して1年未満であったとしても、労働者とみなされない、特別加入をしなければならないといった実態が増えていると認識しています。
 今回の青いファイル、資料9-2で、建設業における一人親方の発生状況の統計を出していただいていますが、こうした点からも、基本的には偽装請負みたいなことをやめさせていくことが、まず必要なわけですが、安全対策という意味からすると、特別加入の人たちについても、これは違うものだという認識を改めるというか、特別加入も含めた実態から、安全対策を講じるなり、検討していく必要があるのではないかという点について、是非御検討なり、配慮のお願いをしたいと思います。
○奈良安全課長 ただいまの御要望の件に関してですが、いわゆる一人親方の方々の災害発生状況をどうやって把握していくかについては、今後検討していきたいと思っています。平成25年7月以降、死亡災害に限って、一人親方の方々について把握していきたいと考えています。
○分科会長 よろしくお願いいたします。
○犬飼委員 今日、総務省消防庁が熱中症の搬送の数字を公表しておりまして、2万6,860人ということです。これは2か月間の数字ですが、このうち、労働災害にかかわるものはどのぐらいでしょうか。
○泉労働衛生課長 7月26日時点で把握をしている、今年の職場での熱中症の発生状況は、労災とおっしゃいましたが、業務上外の確定しないものも含めた速報値ですが、死亡災害が12件で、これは昨年7月末時点では11件ですので、ほぼ同数です。休業4日以上の死傷災害は68件です。把握している数字は以上です。
○分科会長 よろしいでしょうか。熱心な御議論ありがとうございました。事務局から連絡事項をお願いします。
○井内計画課長 御了解いただいた2件の諮問案件については、早急に所要の手続を進めさせていただきます。
 次回の分科会は9月以降の開催を予定しています。日程調整させていただきますので、また改めて御連絡を差し上げます。
○分科会長 本日の第74回労働政策審議会安全衛生分科会を終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は新谷委員、使用者代表委員は岡本委員にお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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