Bウイルス病に関する Q&A
(令和元年12月24日作成 第2版)
- 一般のみなさまへ:Q1~8
- 医療従事者・専門家のみなさまへ:Q9~16
- サル取扱従事者・専門家のみなさまへ:Q 17~20
一般のみなさまへ
Q1 Bウイルス病とはどのような病気ですか?
ヒトが、マカク属に分類されるサル(アカゲザル、ニホンザル、カニクイザル、ボンネットザル、タイワンザル、ブタオザル、ベニガオザルなど)に咬まれたり、引っ掻かれたり、これらのサルの体液(唾液など)を浴びたりすることで、サルが保有する Bウイルスに感染することがあります。これを Bウイルス病と呼びます。とても患者発生がまれな感染症です。
Q2 Bウイルス病に感染するとどのような症状が出ますか?
潜伏期間は通常2~5週間(早い場合は2日)で、サルとの接触部位(外傷部)周囲の水疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変や発熱、接触部位の感覚異常、麻痺等の症状が出ます。重症例では神経障害が後遺症として残ります。まれに感染後数年してから発症することもあります。
Q3 Bウイルス病の致死率はどのくらいですか?
無治療の場合は 70~80%とされています。治療薬として効果が期待される抗ウイルス剤がありますので、早期に治療が施されることが重要です。
Q4 Bウイルス病は、これまでにどのくらい発生していますか?
Bウイルス病はとてもまれな感染症です。米国 CDC の報告によると、ヒトの B ウ<イルス病患者はこれまで 50 例報告されています。これまで報告されている患者は全て、研究者又はサル飼育施設の従業者です。日本ではこれまで報告がありませんでしたが、2019 年に実験サル取扱施設の従事者で2例患者発生が報告されました
参考: 米国 CDC のホームページ
Q5 ヒトへはどのようにして感染しますか?
Bウイルス病の原因ウイルスは、マカク属サルが保有しています。サルの唾液、糞便、尿、脳や脊髄などにウイルスは含まれます。また、実験用にサルから採取された細胞にも含まれていることがあります。そのため、サルとの接触(咬傷、擦過傷)や、サルの唾液、尿などの体液に直接触れたり、かけられたりすることにより感染します。サルとの直接的な接触がない場合は感染することはありません(空気感染はしません)。実験室ではサルに使用した注射針の針刺し、培養ガラス器具による外傷によっても感染することがあります。
また、本疾患の患者は発症した後に外傷部、結膜、唾液からウイルスが分離されることが報告されており、これまでヒトの Bウイルス病患者のサルからの外傷を受けた皮膚病変に触れたヒトが Bウイルスに感染した事例が報告されています。しかし、皮膚症状のない患者からのヒト-ヒト感染は報告されていません。回復患者、安定期にある患者からのヒト-ヒト感染は起こらないと考えられます。
Q6 日本のマカク属サルから Bウイルスに感染する危険性はあるのですか?
網羅的な調査結果はありませんが、国内の実験動物施設で飼育されているサル、野生のニホンザルを問わず、マカク属のサルであればBウイルスに感染している可能性があります。
Bウイルス病はとてもまれな感染症であり、これまで世界的に 50 例報告されていますが、患者は全て研究者又はサル飼育施設の従業者に限られています。サルは Bウイルスを保有している可能性があることを認識し、サルにはむやみに近づくことはせず、咬まれたり引っ掻かれたりしないように気をつけることが重要です。
Q7 サルから Bウイルスに感染しないようにするためには、どのように予防すれば良いですか?
Bウイルス病はサルとの接触(咬傷、擦過傷)や唾液、尿などの体液に直接触れたり、浴びたりすることで Bウイルスに感染することによる感染症です。そのため、特にそうした接触が考えられる場面でマカク属サルを扱う際には、防護具を着用してください。また、感染したサルの体液がはねて眼に入って感染した事例も報告されているため、ゴーグルの着用も重要です。
Q8 もしサルに噛まれたり、引っ掻かれたりした場合にはどうすれば良いですか?
もしサルに咬まれたり、引っ掻かれたりした際には、傷口をできるだけ早く洗浄してください。
また Bウイルス病には効果が期待される治療薬があり、アシクロビル、ガンシクロビルが有効です。サルを扱った後に、水疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変や、接触部位の感覚異常、麻痺等があった場合は、早期に病院を受診してください。
医療従事者・専門家のみなさまへ
Q9 Bウイルスはどのようなウイルスですか?
ヘルペスウイルス科αヘルペスウイルス亜科に属する Macacine alphaherpesvirus 1[旧名は Cercopithecine herpesvirus 1(CHV‐1)]です。ヒトにおける単純ヘルペスウイルス 1型、単純ヘルペスウイルス 2型に相当するウイルスです。
Q10 Bウイルス病の潜伏期間は?
潜伏期間は通常2~5週間 (早い場合は2日) とされていますが、約 10 年の潜伏感染後、再活性化により発症した事例も1例報告されています。
Q11 診断方法は?
診断にはウイルス学的な検査が必須です。サルとの直接あるいは間接的な接触歴(マカク属サルとの接触(咬傷、擦過傷))や、それらのサルの唾液、尿などの体液に触れる、サルに使用した注射針の針刺しや培養ガラス器具による外傷を受けたことがあるなど)があり、サルとの接触部位(外傷部)周囲の水疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変等、発熱、接触部位の感覚異常、麻痺等があった場合、本疾患を疑います。
Bウイルス病は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で四類感染症に定められています。Bウイルス病が疑われる場合には、最寄りの保健所に報告して下さい。必要に応じて、国立感染症研究所では Bウイルス感染に関するウイルス学的検査を実施します。最寄りの保健所を通じて、または、国立感染症研究所(info@niid.go.jp)に相談してください。
Q12 鑑別を要する疾患は何ですか?
Bウイルス病と同様の症状を呈し得る疾患は様々なものが考えられます。具体的には、水疱性病変が症状として出現する感染症として、単純疱疹、帯状疱疹、伝染性軟属腫などが鑑別診断として挙げられます。また、神経症状が出現する病気としてヘルペス脳炎、日本脳炎、細菌性髄膜炎、脳膿瘍、インフルエンザ脳症などが挙げられます。
Q13 治療方法は?
Bウイルスはヘルペスウイルス科に属するウイルスであるため、アシクロビル[バラシクロビル(アシクロビルのプロドラッグ)]、ガンシクロビル[バルガンシクロビル(ガンシクロビルのプロドラッグ)]が有効です。初期にはガンシクロビルやアシクロビルの静注療法が推奨されます。
マカク属サルを扱った後に、水疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変や、接触部位の感覚異常、麻痺等があった場合は、抗ウイルス薬投与を可能な限り早期に開始しなければなりません。また、回復したとしても Bウイルスは潜伏感染し、再活性化して Bウイルス病を再発するリスクがあることから、長期間のアシクロビル予防投与が推奨されます。なお、回復したとしても重症化した場合は後遺症を残すことが多いです。
Q14 患者を取り扱う上での注意点は?
回復患者、安定期にある患者からのヒト-ヒト感染は起こらないと考えられます。発症期の Bウイルス病患者からは、外傷部、結膜、唾液からウイルスが分離されることが報告されています。このため、医療従事者が患者の治療や介護に当たる際に、これらに触れるおそれがある場合には必ず手袋をし、マスクや眼鏡等により粘膜を保護することで接触感染予防策を徹底してください。
Q15 患者検体(サンプル)を取り扱う場合の注意点は?
患者の検体を取扱う際には、標準予防策を遵守することが重要です。
Q16 検査方法等の技術的な内容に関する相談窓口はありますか?
国立感染症研究所(info@niid.go.jp)にお問い合わせください。
サル取扱従事者・専門家のみなさまへ
Q17 Bウイルスに感染したサルの臨床症状は?
マカク属サルの多くは Bウイルスを保有しています。マカク属サルの多くは不顕性感染であり、症状が出たとしても口腔内や性器に水疱性病変を生じる程度とされています。
Bウイルス抗体陽性のサルの2%程度がウイルスを排泄するとされ、ストレス下や繁殖中、免疫抑制下、健康状態が悪いサルほど排泄率が高いと言われています。
Q18 サルの Bウイルス感染の有無を検査する方法は?
現時点で、サルの Bウイルス感染の有無に関して確立された検査法はありません。
ただし、サルの Bウイルスとヒトの単純ヘルペスウイルスは抗原性が類似することから、単純ヘルペスウイルスに対する抗体検査を実施することで Bウイルス感染の有無を推測することは可能です。サルは単純ヘルペスウイルスに感染していることはないので、単純ヘルペスウイルスに陽性を示す抗体が検出された場合には、B ウイルスに対する抗体陽性と解釈できるからです。
Q19 マカク属サルを取扱う際の感染予防措置などの注意点は?
一般的にマカク属サルは Bウイルスを保有しているという認識を持ち、サルを取扱う場合には個人防御具の着用など接触予防策を徹底することが必要です。サルからの咬傷や引っ掻き事故、体液を浴びることを防ぐことが大切ですので、手袋等の防護具の着用を徹底してください。また、サルの体液等が眼に入って感染した事例が報告されているため、ゴーグルやフェイスガードにより粘膜を保護することが大切です。その他、実験使用後の機器、資材の滅菌等を励行してください。
また、マカク属サルからの外傷等を受けた際は、傷口をできるだけ早く洗浄し、速やかに医療機関を受診してください。
Q20 サル以外の動物は感染しますか?
マカク属のサル以外の動物での感染はありません。チンパンジーなど他のサルが感染した場合は通常死に至るため、ヒトへの感染源になったという報告はありません。

