第108回ILO総会の開催

今般、国際労働機関(ILO)の第108回総会が、スイス国ジュネーブで開催されました。
ILO総会は、毎年1回(通常6月)行われ、ILO全加盟国の政府、労働者、使用者よりなる代表団が一堂に会する最高意思決定機関です。
本総会では、髙階厚生労働副大臣が出席し、女性活躍推進のため、ハラスメントのない職場づくりや「働き方改革」に尽力していくこと、「人生100年時代」を見据えて高齢者の雇用と就業機会の確保に取り組むことなど「仕事の未来」に向けた我が国の取組を紹介するとともに、本年議長国を務めるG20労働雇用大臣会合において「人間中心」の仕事の未来を形づくるという力強いメッセージを発信したい旨の演説を行いました。また、全体委員会(100周年宣言の策定)、仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉に関する委員会、テーマ別フォーラムにおいて議論が行われました。

1 会期

令和元年6月10日(月)~6月21日(金)

2 主な議題

(1) ILOの財政
(2) 条約及び勧告の適用状況
(3) 全体委員会(100周年宣言の策定)
(4) 仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉に関する議論
(5) テーマ別フォーラム

第108回ILO総会結果(概要)

日時:
 2019年6月10日~6月21日

場所:
 スイス(ジュネーブ)

出席者等:
 政府側:髙階厚生労働副大臣、麻田厚生労働省国際労働交渉官 他
 労働者側:逢見日本労働組合総連合会会長代行、郷野日本労働組合総連合会参与(ILO理事) 他
 使用者側:得丸日本経済団体連合会雇用政策委員会国際労働部会長、松井日本経済団体連合会労働法制本部参事(ILO理事) 他

本会議:
「輝かしい未来と仕事」(仕事の未来世界委員会報告書)をテーマに、各国政労使代表による演説が行われた。また、ILO創設100周年に際し、ハイレベル・セクションが設けられ、30ヵ国以上の各国元首級等が演説を行った。
日本政府からは、髙階厚生労働副大臣が出席し、女性活躍推進のため、ハラスメントのない職場づくりや「働き方改革」に尽力していくこと、「人生100年時代」を見据えて高齢者の雇用と就業機会の確保に取り組むことなど「仕事の未来」に向けた我が国の取組を紹介するとともに、本年議長国を務めるG20労働雇用大臣会合において「人間中心」の仕事の未来を形づくるという力強いメッセージを発信したい旨の演説を行った。

主要議題と結果:
  • 財政委員会では、2020-21年計画予算案について議論が行われた。全体では約7.9億USドル、2018-19年予算と比較して、約0.8%の増加となる計画予算案が提案され、本会議での投票の結果、賛成多数により採択された。
  • 基準適用委員会では、各国における条約の適用状況について個別審査等が行われ、24件すべてについて、政労使コンセンサスによる結論が採択された(日本案件はなし)。
  • 全体委員会(100周年宣言の策定)では、ILO創設100周年に際し、結成の理念(社会正義の実現)や三者構成主義の再確認、今後の取組の方向性(人間中心のアプローチ)などを謳う宣言の策定について議論が行われた。審議の結果、「仕事の未来のためのILO100周年宣言」及び決議が採択された。
  • 仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉に関する委員会(基準設定)では、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する初の国際労働基準の策定について議論が行われた(2回討議の第2回目)。審議の結果、委員会において条約案及び勧告案が採択され、本会議において投票の結果、条約・勧告ともに賛成多数により採択された。
  • テーマ別フォーラムでは、ILO100周年に関連した討議やイベントを7つのテーマで開催。「結社の自由と団体交渉権」をテーマとしたパネルディスカッションでは、結社の自由委員会政府側委員である寺本隆信氏がパネリストとして参加した。

その他の我が国の貢献と発信:
(1)ライダー事務局長との面談
髙階恵美子厚生労働副大臣はライダー事務局長と会談を行った。ILO100周年宣言と今年愛媛県松山市で開催されるG20労働雇用大臣会合は、ともに「仕事の未来」をテーマとするものであり、日本とILOが協力して課題に取り組む重要性について認識を共有した。また、日本とILOの間での人的交流を一層深めていくことについて確認した。

(2)各国代表との面談
髙階恵美子厚生労働副大臣は各国代表と二国間会談を行った。フィリピン・ベリョ労働雇用大臣及びマレーシア・クラセガラン人的資源大臣との会談では、日本との協力関係の強化や特定技能制度等について意見交換を行った。また、オーストラリア・キャッシュ雇用・スキル・零細・家族企業大臣と会談し、今年のG20労働雇用大臣会合の議題となる「仕事の未来」に関し、高齢化への対応等について意見交換を行った。

(3)G20労働雇用大臣等とのワーキングディナー(ライダー事務局長主催)
髙階恵美子厚生労働副大臣は、G20各国の労働雇用大臣等とのワーキングディナーにおいてスピーチを行い、今秋、日本が議長国を務めるG20労働雇用大臣会合(松山市)での議題の意義や問題意識を発信した。

(4)サイドイベント
ILO創設100周年を記念し、日本政府(外務省)は、「Seize the Future~Social Dialogue in the workplace for a Brighter Future~」と題したシンポジウムを開催した。ILO仕事の未来世界委員会の清家篤委員とトヨタ自動車株式会社人材開発部の奥山洋介海外労務グループ長が基調講演を行った。清家委員は、「仕事の未来世界委員会報告書」中の「人口動態の変化」に焦点を当て、高齢化への対応について論じた。トヨタの奥山グループ長は、同社が行ってきた労使コミュニケーションの取組を紹介し、企業側の視点からの社会対話の重要性を訴えた。基調講演の後、カエタノ国際社会保障協会事務総長、ベガ・ルイスILO仕事の未来イニシアティブ・コーディネーター及び日本労働組合総連合会逢見会長代行も参加したパネルディスカッションが開催され、仕事の未来における社会対話について活発な議論を行った。(開催概要:在ジュネーブ国際機関日本政府代表部HP



さらに詳しい内容についてはこちらをご参照ください。
ILO本部ホームページ:第108回ILO総会(英語)
 

政府代表演説(日本語)

第108回ILO総会(2019年6月17日)髙階厚生労働副大臣 日本政府代表演説


議長、ありがとうございます。私は、日本政府を代表して発言いたします。

まず、ILO創設100周年をお祝いするとともに、長年にわたり、ILOの活動を支えてきたILO事務局、加盟国、及び各国の労使の皆様に対して、敬意を表します。同時に、「仕事の未来世界委員会」の報告書をとりまとめられた、仕事の未来世界委員会、そして事務局長に感謝いたします。

今日、世界は、人口動態の変化、技術革新、グローバル化といった構造変化に直面しています。このような中、我々は、どのようにディーセントで持続可能な仕事を実現し、輝かしい未来を創ることができるか、考えていかなければなりません。

報告書では、未来は人間が選び取るという「人間中心」の考え方が示されました。これは、政労使が向かうべき基本的な方向性を示したものであり、我が国も強く賛同するものです。

報告書では、様々な政策が提言されています。特に、男女平等に向けたアジェンダの実施、生涯現役社会の実施、そして生涯学習の権利の確立といった政策については、我が国の政策と軌を一にしています。

我が国は、少子高齢化や生産年齢人口の減少といった大きな構造変化の中にあります。このため、女性や高齢者などを含む様々な方々が、それぞれの事情に応じて、自らの能力を発揮できる環境を整備することが重要です。

女性の労働参加については、女性活躍推進法等の改正法が国会で成立したところです。この改正法は、企業に女性活躍のための更なる取組を促すものとなっています。具体的には、女性の活躍に向けた行動計画の策定義務の対象となる企業の拡大等を盛り込んでいます。

この改正法では、ハラスメント対策を一層推進するための規定も盛り込んでいます。具体的には、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務の新設等を盛り込んでおり、ハラスメントのない職場づくりに向けて尽力していきます。

また、これまで、女性が、自らの個性と能力を十分に発揮することを妨げていた要因をとり除くことも必要です。長時間労働の是正や、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保といった「働き方改革」を着実に推進していきます。

さらに、日本政府は、今回の総会での「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約の採択に向けた議論を歓迎します。各国が効果的にハラスメント対策を進めていくことができる基準の内容となることを期待します。

高齢者の労働参加については、我が国は、「人生100年時代」を見据えた取組を進めており、70歳までの雇用と就業機会の確保について、検討を行っています。加えて、何歳になっても学び直し、職場復帰や転職が可能となるよう、リカレント教育の拡充にも取り組んでいます。

この他、国際社会において、人権の保護と促進を図るという観点も重要です。我が国は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を履行するための行動計画の作成に取り組んでいます。
本年、我が国はG20の議長国を務めます。

9月初めに開催する労働雇用大臣会合では、人口動態の変化、ジェンダー平等、新しい形態の働き方について議論します。

この機会に、「人間中心」の仕事の未来を形づくるという力強いメッセージを、国際社会へ発信したいと考えています。

我が国は、ILOの創設に関わった原加盟国として、ILOとのパートナーシップを長い時間をかけて築いてきました。

これからも、皆さんとともに、ILOの活動に協力するとともに、「人間中心の仕事の未来」を形づくることに取り組んでまいります。

ありがとうございました。