第107回ILO総会の開催

今般、国際労働機関(ILO)の第107回総会が、スイス国ジュネーブで開催されました。
ILO総会は、毎年1回(通常6月)行われ、ILO全加盟国の政府、労働者、使用者よりなる代表団が一堂に会する最高意思決定機関です。
本総会では、牧原厚生労働副大臣が出席し、女性活躍推進に関する対応や「働き方改革」など我が国の取組を紹介するとともに、他国に先駆けて少子化や長寿化が進み、人手不足を抱える課題先進国として、日本の経験を世界の課題解決に役立てられるよう、共に取り組んでいくことを呼び掛ける演説を行いました。また、持続的な開発目標の支援におけるILOの効果的な開発協力、仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉、社会対話と三者構成主義に係る周期的議論と、これらの課題に関する各国の取組状況を踏まえ、今後の対応策について議論が行われました。

1 会期

平成30年5月28日(月)~6月8日(金)

2 主な議題

(1) 条約及び勧告の適用状況
(2) 持続的な開発目標の支援におけるILOの効果的な開発協力に関する議論
(3) 仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉に関する議論
(4) 社会対話の戦略目標と三者構成主義に係る周期的議論
(5) 条約の廃止
(6) 海上労働条約の改正

第107回ILO総会結果(概要)

日時:
 2018年5月28日~6月8日

場所:
 スイス(ジュネーブ)

出席者等:
 政府側:牧原厚生労働副大臣、本多厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官 他
 労働者側:逢見日本労働組合総連合会会長代行、郷野日本労働組合総連合会参与(ILO理事) 他
 使用者側:得丸日本経済団体連合会雇用政策委員会国際労働部会長、松井日本経済団体連合会労働法制本部参事(ILO理事) 他

本会議:
ILO事務局長より、ILO創設100周年に向けた7つのイニシアチブの1つである「職場における女性イニシアチブ」をテーマに、労働の世界における女性を巡る課題について、各国政労使代表による演説が行われた。
日本政府からは、牧原厚生労働副大臣が出席し、女性活躍推進に関する対応や「働き方改革」など我が国の取組について紹介するとともに、他国に先駆けて少子化や長寿化が進み、人手不足を抱える課題先進国として、日本の経験を世界の課題解決に役立ててられるよう、共に取り組んでいくことを呼び掛ける演説を行った。
また、郷野日本労働組合総連合会参与(ILO理事)が労働者側副議長を務めた。

主要議題と結果:
  • 基準適用委員会では、各国における条約の適用状況に関する個別審査等が行われた。日本のILO第87号条約(結社の自由及び団結権の保護に関する条約)の適用が個別審査の対象となった。公務員の労働基本権の制限が論点であり、審査の結果、自律的労使関係制度についての慎重な検討に加え、消防職員と刑務官への同条約の適用において警察と同視できるかや、人事院の手続が中立かつ迅速な調停・仲裁を確保しているかについての検討を、社会的パートナーと協議しながら行うことなどを要請するとともに、これらの勧告を実施するための期限を定めた行動計画の策定及び2018年秋までの報告を要請する結論が採択された。
  • 持続的な開発目標の支援におけるILOの効果的な開発協力に関する委員会では、ILOの開発協力について、持続可能な開発目標(SGs)への貢献、三者構成と社会的対話による付加価値、他の国際機関との関わり方、資金調達の在り方等について議論が行われた。審議の結果、ILOによる国連開発システム改革のプロセスへの参加、ILOの開発協力のための指針とロードマップが提示され、今後、行動計画を策定の上、取組を進めていくことが採択された。
  • 仕事の世界における暴力とハラスメントの終焉に関する委員会(基準設定)では、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する初の国際労働基準の策定について議論が行われた(2回討議の第1回目、2019年ILO総会で策定予定)。審議の結果、文書の形式を「勧告により補完される条約」とすることが採択されたほか、定義及び範囲、条約の主な内容(包摂的で統合されかつ性別に応じたアプローチ、防止措置、支援とガイダンス等)について議論がなされた が、勧告の主な内容については今回全ての審議を行うことができなかった。条約案及び勧告案については来年さらに議論が行われる予定。
  • 社会対話と三者構成主義に係る周期的議論に関する委員会では、ILO総会では、1.雇用、2.社会的保護、3.社会対話、4.労働における基本的原則及び権利の4つの目標に関してILOや加盟国の取組について周期的に議論を行っており、今回は、上記3.について議論が行われた。審議の結果、加盟国に対する社会対話のための法的・制度的環境の促進、ILO事務局に対する情報分析や加盟国への支援等の取組を求める結論が採択された。
  • 条約の廃止に関しては、第21号(移民監督1926年)、第50号(先住民労働者募集、1936年)、第64号(先住民労働者雇用契約、1939年)、第65号(刑罰(先住民労働者)、1939年)、第86号(雇用契約(先住民労働者)、1947年)、第104号(刑罰廃止(先住民)、1955年)の6条約の廃止及び第7号(最低年齢(海上)、1920年)、第61号(労働時間短縮(繊維)、1937年)、第62号(安全規定(建築)、1937年)の3勧告の撤廃について議論が行われ、本会議での投票の結果、全て提案のとおり廃止・撤回することが決定された。
  • 2006年海上労働条約第8条に関する第3回特別三者委員会の結論に基づき提案された同条約の改正提案について、本会議での投票の結果、賛成多数で承認・採択された。

政府代表演説(日本語)

第107回ILO総会(2018年6月6日)牧原厚生労働副大臣 日本政府代表演説


議長、ありがとうございます。私は、日本政府を代表して発言いたします。

まず、日本の雇用情勢についてご紹介します。

日本では、完全失業率は2.5%となっています。有効求人倍率については、1.59倍を記録し、全ての都道府県で1倍を超えており、正社員に関して言えば1.08倍を記録しています。また、今春卒業の大学生の就職率は98.0%と過去最高を記録しています。このように、我が国の雇用情況は歴史的にみても高水準であり、むしろ、人手不足が深刻です。

一方で、女性活躍については、日本政府としても、事務局長報告で述べられているように重要なものであると認識しています。

女性の活躍のためには、仕事を続けやすい環境が、職場の内外について整うこと、また、女性の活躍を企業が積極的に後押しすることが必要であり、そのための施策を進めています。

具体的には、2013年度から2017年度末までの5年間で約52.3万人分の保育の受け皿拡大を進めてきました。さらに、2018年度から3年間で約32万人分の受け皿を拡大すべく取り組んでいます。

さらに、子育てや介護をしながらキャリアを中断せずに働き続けられるよう、例えば、2014年から、育児休業開始後6箇月までの育児休業給付の比率を50%から67%に引き上げています。

企業における取組の推進としては、女性活躍推進法に基づき、301人以上の大企業に、自社の女性活躍の状況に関する把握・分析を踏まえた行動計画の策定等を義務付けています。

これらの取組の結果、女性の就業者数はこの5年間で約201万人増加するとともに、これまで30~40%台で推移してきた女性の「第一子出産後の就業継続率」が、最近では、50%台まで増加するなどの成果が出ています。

また、来年10月の消費税率引き上げによる増収に合わせて、3歳から5歳までの幼児教育・保育の無償化を進めることとしています。

日本の人口は、2008年には約1億2810万人とピークを迎えたものの、わずか9年で約140万人減少し、2055年には1億人を下回ることが予想されています。

そのような状況において、我が国では、高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害を抱える人も、誰もが活躍できる一億総活躍社会の実現を安倍内閣の最重要課題として取り組んでいます。

その最大のチャレンジである働き方改革は、一人ひとりの意思や能力、置かれた事情に応じた多様な働き方の選択を可能とするため、働く方の視点に立って行う改革です。

具体的には、長時間労働の是正に向けて、時間外労働の上限について、特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間、複数月平均80時間を限度に設定し、違反があった場合の罰則を設ける規制を創設します。

我が国の非正規雇用労働者は、現在、全雇用者の37.3%となっており、非正規雇用の68.2%は女性です。また、不本意ながら非正規の職に就いている方の割合について、2017年は14.3%となっています。
このため、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差や差別的取扱い等を禁止する規定の整備などを行います。

このような改革を実行に移すため、本年4月に働き方改革法案を本国会に提出し、本格的に議論を行っています。

日本は他国に先駆けて少子化や長寿化が進み、人手不足を抱える課題先進国です。そのような状況下で、例えば、AI等のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に積極的に取り入れ、様々な社会課題の解決を目指しています。日本の経験を世界の皆さんの課題解決に役立てて頂きたいと願っています。

情報交換や意見交換を通じ、女性をはじめとするより多くの人々が活躍できる社会をつくるために、ともに取り組んでいきましょう。

ご清聴ありがとうございました。