第113回ILO総会結果(概要)

1.概要

  • 会期:令和7年6月2日(月)~6月13日(金)
  • 場所:スイス国ジュネーブ
  • 出席者等:
    政府側:田中厚生労働審議官、秋山大臣官房総括審議官(国際担当) 他
    労働者側:清水日本労働連合総連合会事務局長、郷野日本労働組合総連合会参与 他
    使用者側:市村日本経済団体連合会労働法規委員会国際労働部会長、長澤日本経済団体連合会労働法制本部参事 他
  • 本総会では、日本政府からは田中厚生労働審議官が代表演説を行った。その他、条約・勧告の適用状況、生物学的な危険に対する予防と保護に関する基準設定討議、プラットフォーム経済におけるディーセントワークに関する基準設定討議、インフォーマリティへの対処とフォーマリティへの移行促進のための革新的アプローチに関する一般討議等について議論が行われ、今後の対応策等をまとめた各議題の結論文書等が採択された。

2.本会議

 ウングボ事務局長から「仕事、権利、成長」をテーマとした事務局長報告が行われ、これを受けて各国政労使による演説が行われた。日本政府からは田中厚生労働審議官が代表演説を行い、以下の内容等を発言した。

  • 2022年のILO総会で基本条約に追加された第155号条約 (職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)の締結について、締結に向けた手続を進めていく。
  • 日本はアジア・太平洋地域における最大の任意拠出国として、これまで50年以上にわたり、ILO・日本マルチバイプログラム等を通じて、世界の国々の実態やニーズに合わせ、労働安全衛生水準の向上や社会保険制度整備などの様々な開発協力を行ってきた。
  • 日本は、ウングボ事務局長が主導する「社会正義のためのグローバル連合」に積極的に貢献してきた。特に、企業に責任ある行動を促すため、企業に対する人権尊重の取組を促すガイドラインの策定や、労働における基本的原則及び権利に関する周知を図るためチェックリストの作成等を行い、企業の理解を助け、取組を支援している。
  • 社会的パートナーとの対話を大切にしながら、仕事の世界における永続的な課題に取り組むためのあらゆる努力を行う。
 
 また、「社会正義のためのグローバル連合」について、ドミニカ大統領や各国の閣僚クラスの参加のもと、加盟パートナーが知見を共有するための場として年次フォーラムが開催された。
 

別添1 政府代表演説(日本語)[80KB]
別添2 政府代表演説(英語)[41KB]

3.主要議題

  • 総務委員会
(2025年の第2回世界社会開発サミットに向けたILO三者構成によるインプット)
「我々のコモンアジェンダのための新しい社会契約に関する作業部会」が作成した決議案が採択され、2025年11月にカタールで開催される第2回世界社会開発サミットに向けたILO三者構成によるインプットとして送付することが決定された。
(ミャンマーが調査委員会の勧告を遵守することを確保するための憲章第33条に基づく措置)
審査委員会の勧告をミャンマーが遵守することを確保するための憲章第33条に基づく措置を検討し、政労使にミャンマー軍事政権との関係見直しを求める等の内容を盛り込んだ決議案が採択された。
(2006年海上労働条約第8条に基づき設置された特別三者委員会において採択された規範改正の承認)
2025年4月に開催された第5回特別三者委員会において採択された海上労働条約規範改正案が採択された。
  • 財政委員会:財政委員会において、2026-27年計画予算案や2026年における分担金の加盟国の分担金率等が示され、これらに関する決議案が総会本会議にて採択された。
  • 基準適用委員会: 条約勧告適用専門家委員会の報告書及びILO・ユネスコ合同専門家委員会の報告書に関する一般討議並びに各加盟国における既批准条約の適用状況に関する個別案件(全24件。日本案件はなし)及びベラルーシに関する特別会合について審議を行った。
  • 生物学的な危険に対する予防と保護に関する基準設定討議:生物学的な危険(病原体、毒素、アレルゲン等)に関する2回目の討議が行われ、条約及び勧告案が採択された。すべての労働者を対象として、リスク評価に基づく予防・保護措置、緊急時対応計画、労災補償、監督体制強化などが盛り込まれ、使用者には防護措置の実施や情報提供、労働者には退避の権利や報告義務が定められた。
  • プラットフォーム経済におけるディーセントワークに関する周期的討議:プラットフォーム経済に関する新しい国際労働基準について、2回の討議のうち、1回目の討議が行われ、勧告付き条約の形式とすること、条約の適用範囲や定義等について取りまとめられた結論文書が採択された。
  • インフォーマリティへの対処とフォーマリティへの移行促進のための革新的アプローチに関する一般討議:インフォーマリティへの対処とフォーマリティへの移行促進のための革新的アプローチに係る一般討議が実施され、結論文書がコンセンサスで採択された。

4.二国間会談(田中厚生労働審議官)

  • ウングボ事務局長との会談:ILO基本条約(※)である第155号条約(職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約)について、締結に向けた動向の共有等を行うとともに、日本とILOとの間での人的交流を一層深めていくことを確認した。
    ※ILO基本条約:全てのILO加盟国が尊重等すべきとされる労働者の基本的権利に関する5つの原則(結社の自由等)を具体化した10個のILO条約が、ILO基本条約と呼ばれている。

  • 各国代表との会談:カンボジアのソム・チャムナン労働職業訓練省長官との会談では、育成就労制度に関する今後の協力等について意見交換を行った。米国のキース・E・ソンダリング米国労働副長官との会談では、次世代の労働市場を見据えて、AI等に対するリテラシー強化の必要性等について意見交換を行った。
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