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「非感染症医とIDES」
IDESコラムvol.89
2026年3月19日
IDES養成プログラム11期生:福岡 裕晃
IDES養成プログラム11期生(2025年10月入省)の福岡裕晃です。
本コラムは、私のように感染症を専門としない医師においても、IDESを選択肢として検討してもらうことを目的に書いたものです。内容としては、IDES応募に至った経緯と、主に本省での経験を通して感じたことを簡単にまとめています。研修修了後のコラムではなく、研修の全体像を反映していないことはご留意いただきたいです。読み終えたあと、IDESプログラムは感染症医にはもちろんのこと、感染症を専門としない医師にも非常に良いプログラムであることが伝われば幸いです。11期の10月入省3名はいずれも感染症を専門としていません(採用当時)。特に私は、長く臨床からも離れていましたが、運にも恵まれ、採用されたことにまず感謝したいです。私の経歴としては、2015年卒、市中病院での初期研修後、後期研修には麻酔科を選択しました。しかし、上長とうまく折り合えず、1年足らずで退職し、転職エージェントの誘いで製薬業界へ転職しました。メディカル・サイエンス・リエゾンとして、上市前の製剤の臨床開発に従事していました。その後、ボランティアや大学院留学を経て、2025年春にIDESへ応募しました。感染症が専門でない私でよいのかという思いもありましたが、とりあえず受験してみようという気持ちでした。
理由としては、行政経験を積めると同時に、2年目に海外研修ができるというバランスの良いプログラム構成に魅力を感じたからです。学生の頃から行政には関心があり、夏の厚労省のインターンに参加したこともありました。一方で、プロパーとして入職するのはハードルが高く、IDESのような期間限定の研修は行政に触れられるとても良い機会だと感じました。運良く採用された後の実際の業務としては、これまでのブログにもある通り、感染症対策課(感対課)に配属されました。課の所管は非常に多岐にわたり、課員も比較的多い部署です。業務量は膨大で、課長も含め職員の多くは夜遅くまで業務に当たっています。そのような中でも、新人の私にも気遣いの声を掛けてくださる課長に感謝しています。
そんな激務の感対課で、少しでも役に立ちたいと思うものの、人事交流などで医局から派遣される医師と比較しても、研修生が本省にいる期間は非常に短く、教育コスト効率が悪い(教育を受ける研修生が戦力となる前に本省研修期間が終了してしまう)と言わざるを得ません。感染症を専門としない私はなおさらです。それでも、IDESという研修事業として、私でも対応できる案件を切り分けて指導・監督していただいた課長補佐の皆さんには感謝しています。
さて、ここまでの話だと、非感染症医にはIDESは不向きだと感じられたかもしれませんが、そうではありません。前述の通り、感対課は守備範囲が広いです。非感染症医の専門性を活かせる場面も多く存在すると感じています。私個人としては、3か月という短い本省期間で自身の経験を活かすまでには至りませんでしたが、民間企業で培ったビジネスパーソンとしての基礎的なスキルは大いに役立ちました。例えば、研究協力者とのコミュニケーションでは、難しい依頼をしなければならない場面もありましたが、カスタマーフェイシングとして培ったコミュニケーションスキルが、円滑な合意形成に繋がりました。そういった意味では、臨床を離れた多様な経歴を持つ医師にも活躍の余地があるように思います。
そもそも感染症医 vs 非感染症医という二項対立でIDES研修を理解しようとする試み自体が、感染症危機管理という全人的な広がりを持つ課題を矮小化していると言えるかもしれません。また研修生の視点からは、厚生労働省という全く臨床と異なる環境での勤務は、ある種のヘーゲル的な自己疎外の経験となり、大きな成長機会となり得ると感じています。
最後に、新型コロナウイルス感染症のような社会全体を揺るがすパンデミックは頻発しないことを願っていますが、SARSや新型インフルエンザなどは比較的短いスパンで発生しています。IDESといった研修機会を通じて感染症危機管理を体系的に学んだ医師ネットワークが広がり、有事の際に機動的な対応がなされることを願っています。私自身もそのような人材となれるよう、これからも研修に励みたいと思います。
- 当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
- IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

