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年金将来の基礎年金の給付水準の底上げについて
令和7年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を第217回通常国会に提出し、衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しました。
本ページでは、将来の基礎年金の給付水準の底上げについて説明します。
1.現在の基礎年金の仕組み
基礎年金とは、国民年金の加入者も、厚生年金の加入者も共通して受け取ることができる定額の年金です(一定の要件を満たすことが必要です)。
基礎年金は、全国民共通の年金として、国民年金加入者と厚生年金加入者が負担能力に応じて支える仕組みです。基礎年金の財源の半分は国庫負担で賄われています。
国民年金の加入者は基礎年金を受け取れ、
厚生年金に加入したことがある人は基礎年金に加えて、厚生年金(報酬比例部分)も受け取れます。
国民年金加入者(第1号被保険者)は、毎月「国民年金保険料」を、
厚生年金加入者(第2号被保険者)及び事業主は、毎月「厚生年金保険料」を納めます。
「国民年金保険料」は、基礎年金の給付に充てられ、
「厚生年金保険料」は、基礎年金と厚生年金(報酬比例部分)の給付の両方に充当されています。
また、これらの保険料が年金給付に充てられますが、保険料の残余がある場合は積立金として取り置かれます。
2ー①.基礎年金の持つ機能①(賦課方式)
基礎年金は「人口構造や就業構造の変化に対応する機能」や「所得の低い方に比較的厚く給付する機能」を持っており、それぞれについて説明します。
①人口構造や就業構造の変化に対応する機能(賦課方式)
日本の年金制度の財政方式は、積立金も活用した賦課方式です。
賦課方式とは、現役世代が納めた保険料を、その時の受給者の年金給付に充てる財政方式です。保険料を固定し、賃金や物価が伸びるときに、現在の受給者の給付の伸びを一定期間抑えること(マクロ経済スライド)により、現役世代の将来の給付を確保しています。また、少子高齢化が進む中でも、受給者が少ないときに保険料の一部を積み立てており、受給者が多くなったときに過去に形成された積立金を活用することで、現役世代の保険料負担を抑えつつ、給付を確保しています。
基礎年金は全国民共通であり、受給者がどの制度にどれだけ加入していたかにかかわらず、給付の費用をその時の現役世代の負担能力(人数比)で分担しています。
「国民年金と厚生年金で支え合う仕組み」であるため、産業構造や就業構造が変化する中でも、安定的に基礎年金が給付できます。
2-②.基礎年金の持つ機能②(積立金)
②人口構造や就業構造の変化に対応する機能(積立金)
賦課方式の年金制度における積立金には、個人の持ち分という考え方はなく、加入する制度が国民年金と厚生年金の間で変わっても、積立金は元の制度に残り続けます。
現在の積立金は、過去の世代が支払った保険料の残余が積み立てられ、運用等によって増大してきたものです。そのため厚生年金、国民年金の積立金は今の被保険者が積み立てたものではありません。
こうした性質から、積立金は賦課方式による支え合いの中で活用しています。
2-③.基礎年金の持つ機能(所得再分配機能)
③所得の低い方に比較的厚く給付する機能(所得再分配機能)
長い人生の中では、会社の倒産や失職など、誰もが収入が低くなるリスクがあります。その中で安定的に老後の所得保障を行うため、公的年金には所得の低い方に比較的手厚い給付を行い、支え合う仕組み(所得再分配機能)があります。
3.経済が好調に推移せず、基礎年金のマクロ経済スライドが長期化する場合の課題
経済が好調に推移せず、基礎年金について、給付の伸びを一定期間抑えるマクロ経済スライドが長引けば、厚生年金受給者を含む基礎年金を受給する全ての方の給付水準が低下します。基礎年金の給付水準の低下は、厚生年金加入者の中でも、特に所得の低い方の年金額が低くなることが考えられ、所得の低い厚生年金受給者に比較的手厚い給付を行い支え合う仕組みである、所得再分配機能の低下に繋がります。
4.将来の基礎年金水準の低下への対応
令和6年財政検証では、将来の基礎年金の給付水準は、経済が好調に推移すれば、調整が比較的早く終わるので概ね維持されますが、一方で好調に推移しない場合は調整が長引き、低下することが見込みであることが示されています。
仮に経済が好調に推移しない場合には、特に所得の低い方の給付水準が低下することから、衆議院での修正により、将来の基礎年金の給付水準の低下に対応する措置が盛り込まれました。
具体的には、物価や賃金が上昇し経済の局面が変わってきている中で、社会や経済の変化を見極め、次の財政検証(2029年の予定)で、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、給付と負担の均衡をとりつつ、厚生年金の方も受給する将来の基礎年金の給付水準を向上させるため、基礎年金のマクロ経済スライドの調整を早く終わらせるように必要な法制上の措置を講じることとされています。併せて、この措置を講じたことにより、基礎年金と厚生年金の報酬比例部分の合計額が低下する方には、その影響を緩和するための措置を講じることとされています。
この基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置により、これから年金を受け取り始める多くの方の年金が増額します。特に、若い世代や年金額が低い方、長生きされる方ほど、増加額が大きくなります。
なお、この措置を実施するに当たって、公的年金の保険料は、現在の水準(※)を維持し、これにより引き上げることはありません。
※国民年金の保険料は2004年の価値で17,000円
厚生年金の保険料は労使で賃金の18.3%
5.基礎年金の底上げのイメージ
この基礎年金の底上げの具体的な方法の1つとして厚生年金の積立金を活用する方法が検討されています。この措置を実施した場合、厚生年金の保険料および積立金を、より多く基礎年金に充て、また安定財源を確保したうえで国庫負担を増額することで、基礎年金と厚生年金の給付水準のバランスを回復し、所得再分配機能を維持します。
これにより、基礎年金の財政が安定し、追加の国庫負担も相まって国民年金加入者も厚生年金加入者も基礎年金の底上げが図られます。
この措置を講じることで、令和6年度財政検証を基に機械的に計算したモデル年金(1人分)でみれば、62歳以下の男性、66歳以下の女性は、生涯に受け取る年金総額が増える見込みです。
また、38歳以下では、一部の高所得者を除き、99.9%の人の生涯に受け取る年金総額が増える見込みです。
なお、年金額がこの措置を講じなかった場合の額を下回るときは、その影響を緩和する措置を講じることとされています。
6.よくいただくご質問・ご意見
Q1.これまで厚生年金に加入したことがない方の基礎年金の底上げにも厚生年金の積立金を使うのは流用ではないですか。
A1.基礎年金の底上げ措置の1つとして、厚生年金の積立金を活用することが検討されています。
厚生年金の保険料には基礎年金分も含まれており、従来から、厚生年金の保険料や積立金は、基礎年金にも充てられています。
また、賦課方式の公的年金における積立金に個人の持ち分はなく、厚生年金や国民年金の積立金は、賦課方式による支え合いの中で負担能力に応じて基礎年金に活用されていますが、この基本的な考えを変更するものではありません。
さらに、厚生年金の受給者は基礎年金も受給しており、厚生年金の積立金と追加の国庫負担を活用して基礎年金の底上げを図ることにより、将来の幅広い世代の厚生年金受給者の年金(基礎年金と2階の報酬比例の合算)も底上げされることから、いわゆる「流用」には当たらないと考えています。
Q2.基礎年金の底上げのために、今の厚生年金受給者の給付水準が下がることに対して、何かしらの配慮はありますか。
A2.仮に経済が好調に推移せず基礎年金の底上げ措置を実施する場合、厚生年金の報酬比例部分のマクロ経済スライド調整が、現在の見通しよりも延長されることになるため、一時的に厚生年金受給者の給付水準が低下します。
ただし、基礎年金の底上げを実施した場合に基礎年金と厚生年金の報酬比例部分を合わせた年金額が、この措置を講じなかった場合に支給されることとなる金額を下回るときは、その影響を緩和するための措置を講じることとされています。
Q3.基礎年金の底上げのためには、将来的に必要になる国庫負担の財源はどうするのですか。
A3.基礎年金の底上げの措置に必要な追加の国庫負担は、令和6年財政検証の実質ゼロ成長を過程したケースによると、2038年度から発生し、その規模は徐々に増加することが見込まれており、すぐに財源が必要となるものではありません。
その上で、この追加の国庫負担が必要な時期やその所要額は、社会経済情勢等により変動することから、仮にこの措置を実施する場合には、次期財政検証の結果等を踏まえつつ、制度を支える安定した財源の在り方についても適切に検討することとされています。