OECD失職者レビュー日本報告書の公表について
失職者レビューとは
- 「失職者レビュー」とは、 OECD が本プロジェクト参加国 ( 現在、日本を含む 9 カ国 ) を対象に実施した調査報告。平成 27 年 1 月 19 日に日本報告書が公表。韓国に次いで2国目の公表。
http://www.oecd.org/els/back-to-work-japan-9789264227200-en.htm - 日本報告書の公表にあわせ、同日、厚生労働省で公表イベントを開催。
- 今後、各国のレビューがまとまった後、国際比較を踏まえた総合報告書がまとめられる予定。
OECD「失職者レビュー日本報告書」の概要、本報告書に盛り込まれたOECDの主要提言及び提言に対する厚生労働省の見解は以下のとおりである。
日本における失職者の状況
- 失職率は2002~2008年の1.4%が、世界金融危機の影響で2009年には2.0%を超える水準まで上昇したが、比較可能なOECD諸国の中では低い(図1)。なお、2012年には世界金融危機前の水準に低下した。
- 高齢者や教育水準の低い者、小規模企業、非正規労働者等で失職のリスクは高い。
- 2002~2013年の失職者のうち1年以内に再就職した者の割合は半数以下(48%)で、比較可能なOECD諸国の中では中位(図2)。3分の1が失業、4分の1が非労働力人口となっている。
- 高齢者や女性、教育水準の低い者の再就職率は低い。
- 再就職の際に賃金水準の大幅低下や非正規雇用となることも多い。


日本の失職者対策の現状
- 失職の予防及び(再就職支援のための)早期介入政策は発達しており、失職者数及び失職者が被る損失を低く抑えることに貢献。特に雇用調整助成金と雇用保護法制(失職予定の労働者への事前通告義務の他、特に重要なのが、大量雇用変動届の提出義務と再就職援助計画の作成提出義務)が重要な役割。
- 2013年の日本再興戦略で、行きすぎた雇用維持から、労働者の安定への影響を最小限に抑えながら労働移動を高める政策にシフトしたことは歓迎すべき。雇用調整助成金や労働移動支援の奨励金の効果について注意深く見守る必要がある。
- 予防及び早期介入政策が発達した理由には、雇用主が正規雇用労働者の失職を最後の手段と考える傾向が広く浸透していることがある。失職が避けられない場合も、特に大企業では、出向や民間再就職支援サービスを活用。
- 他方、特に非正規労働者等、こうした措置を受けない傾向がある者がおり、ギャップを埋める公共政策として、企業の解雇予防や再就職支援への公的支援や、労働者が前職にいるうちの労働市場政策による調整支援などがある。
- 企業による(再就職の)調整支援は好ましいが、公的支援との協働は複雑化する可能性もある。企業が支援する者とそうでない者とで必要とする公的支援の相違や、公共と(企業が活用する)民間で類似した支援を行っている場合の効率的な役割分担の調整がある。
- ハローワーク、産業雇用安定センター、民間再就職支援会社で紹介する仕事のタイプが違い、民間と公共に潜在的に相互の補完性があることを示している。
- 失職中の主要な所得補助は雇用保険の失業手当である。雇用主からの退職手当を受ける者もおり、一部大企業では手厚いが、多くは少額(か受け取らない)。
- 日本の公的な失業給付全体の手厚さは OECD平均よりやや低い 。勤続年数の長い失職者は給付日数が長いが、若年、女性、非正規労働者は手当ての支給額が少ない。給付妥当性や支援策等の効果を評価する十分な情報がない。手厚い退職手当てを受けた求職者への対応は公的雇用サービスの課題。
- 雇用保険が、転職が難しい勤続年数が長い層に手厚いのは道理に適っており、また世界金融危機の際、契約更新を断られた労働者等への緊急措置及び手当ての拡充は有効である。
- 日本の積極的労働市場政策への政府支出は OECD平均より低いものの、公的雇用サービスと職業訓練制度は非常にコスト効率的である。失職者の支援策についての情報は限定的だが、間接的な指標は高い効果を示している。
- 世界金融危機や東日本大震災の際には効果的な拡充も行われた。
- 世界金融危機や東日本大震災への対応のように、全国規模のハローワークのネットワークを活用し迅速にニーズを把握し必要なサービスの提供を通じて、大量の労働者が失職した際に迅速に追加的な支援を構築している。
- 地域の大量解雇発生の際、2012年の奈良のシャープ関係離職者等支援本部のように、国、自治体、民間等関係者が連携し、迅速な対応をした好事例がある。
OECDの日本の失職者対策の評価への厚生労働省の全体的な見解
- 報告書では、全体的には、日本の雇用政策について、効率的で特にリーマンショック後の世界金融危機や東日本大震災の際には、対策を拡充し、ハローワークの全国規模のネットワークを活かしながら、機動的に対応を進め、失職者の抑制につながった点を評価しており、また、現在の行きすぎた雇用維持から失業なき労働移動の支援という政策の方向性を評価している。このように、全体として高い評価が得られていると認識している。
OECDの主要提言と厚生労働省の見解・対策の状況
- 提言には、対策の状況も含め日本の実情を踏まえる必要があるが、労働市場の環境整備を図る上で参考となるものもある。個別の提言に係る厚生労働省の見解や対策の現状は以下のとおり。
主要政策提言 | 厚生労働省の見解・対策の状況 |
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