輸入食品監視業務FAQ

Q.1 輸入食品の安全性確保はどのように図られていますか?

A.1
日本の食料は、現在、カロリーベースで約60%を海外に依存しており、輸入食品の安全性確保は非常に重要な課題です。
厚生労働省では、食品衛生法に基づき、毎年度、輸入食品監視指導計画を策定し、輸入食品の安全性確保対策を講じています。
本計画では、重点的、効率的かつ効果的な監視指導を実施するため、
(1)輸出国における安全対策
(2)水際(輸入時)での対策
(3)国内での対策
を定めて実施しています。

監視体制の概要

Q.2 輸出国での安全対策はどのようにして進めているのですか?

A.2
違反の可能性が高いとして、輸入時の検査を強化している食品については、輸出国の政府等に対し、違反原因の究明及びその結果に基づく再発防止対策の確立を要請するとともに、二国間協議を通じて、生産現場における適正な管理、輸出国政府による監視体制の強化、輸出前検査の実施等、安全管理の推進を図っています。また、必要に応じて、専門家を輸出国に派遣し、安全管理状況の確認を行うほか、輸出国の政府担当者及び輸出国の生産者等に対して我が国の食品安全規制等について、セミナーを開催しています。

Q.3 輸入時(水際)での対策とはどのようなものですか?

A.3
食品衛生法により、販売の用に供し、又は営業上使用することを目的として輸入する食品、添加物、器具又は容器包装、乳幼児用おもちゃについては、輸入者に対し、そのつど厚生労働大臣に対して届け出ることを義務付けています。
この届出については、全国で32か所の検疫所食品監視窓口において受理し、輸入される食品等が食品衛生法に基づく規格基準等に適合するものであるか食品衛生監視員が審査を行うとともに、違反の可能性に応じたモニタリング検査や検査命令等を実施しています。

Q.4 モニタリング検査とはどのようなものですか?

A.4
多種多様な輸入食品等の食品衛生上の状況について幅広く監視するため、輸入食品監視指導計画に基づきモニタリング検査を実施しています。モニタリング検査のサンプリングは各検疫所食品監視窓口において行い、試験分析は、高度な検査技術、機器を必要とする検査を効率的に行うために設置した横浜及び神戸検疫所の輸入食品・検疫検査センターなどで実施しています。
モニタリング検査は、違反の可能性が低い食品について検査を実施し、必要に応じて輸入時検査を強化する等の対策を講じることを目的としているため、その費用は国が負担しています。なお、検査結果の判明を待たずに輸入することは可能です。

<モニタリング検査の概要>
  • 抗生物質、合成抗菌剤、ホルモン剤等の残留動物用医薬品(抗菌性物質等)
  • 有機リン系、有機塩素系、カーバメイト系、ピレスロイド系等の残留農薬
  • 保存料、着色料、甘味料、酸化防止剤、防ばい剤等の添加物
  • 腸管出血性大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、腸炎ビブリオ等の病原微生物
  • 成分規格で定められている大腸菌群等の成分規格
  • アフラトキシン、デオキシニバレノール、パツリン等のカビ毒
  • 安全性未審査の遺伝子組換え食品の使用の有無
  • 認められていない放射線照射の有無

(モニタリング検査の具体的な情報は、「監視指導・統計情報」を参照)

Q.5 検査命令とはどのようなものですか?

A.5
輸入時の自主検査やモニタリング検査、国内流通段階での収去検査等において法違反が判明するなど、法違反の可能性が高いと見込まれる食品等について、輸入者に対し、輸入の都度、検査の実施を命じる制度です。
検査の費用は輸入者が負担し、検査結果判明まで輸入することができません。

(検査命令の対象となる品目などの具体的な情報は、「監視指導・統計情報」を参照)

Q.6 輸入食品について、日本では全体の約1割しか検査が実施されていないと聞きますが、食の安全は十分に確保されているのでしょうか?

A.6
我が国では、食品ごとのリスクに応じて計画的に検査を行うことにより、効率的、効果的に輸入食品の安全性確保を図っています。
検疫所においては、多種多様な輸入食品を幅広く監視して食品ごとのリスクの状況を把握するため、モニタリング検査を実施しています。
この検査は、食品衛生法違反を一定の確率で把握できるよう、食品群や検査項目(動物用医薬品、残留農薬、添加物等)ごとに統計学的な考え方に基づいて年間計画を定めて実施しています。
また、モニタリング検査の結果、法違反の可能性が高いと判断される食品については、輸入の都度、全ロット検査を行うよう輸入業者に命じ、食品衛生法に違反する食品が輸入されないよう取り組んでいます。
今後とも、こうした輸入時の検査を行うほか、二国間協議や現地調査を通じて輸出国における衛生対策を推進するなどを通じて、輸入食品の安全確保を進めていきます。

(年間計画及び監視指導結果の具体的な情報については、「監視指導・統計情報」を参照)

Q.7 日中食品安全推進イニシアチブの内容と成果について教えてください。

A.7
日本の厚生労働大臣と中国の担当大臣が署名を行った「日中食品安全推進イニシアチブ」は、中国における日本向け輸出食品の安全対策を充実する取り組みの一つとして、日中間で輸出入される食品等の安全分野における交流や協力を促進させることを目的に定期的な協議、調査、情報共有の枠組みを構築したものです。
具体的には、閣僚級会議の開催、実務者の協議及び現地調査の実施、2国間の残留農薬を始めとした食品安全問題を解決するための行動計画を策定して、実行しています。

(協議結果等の情報については、「輸出国対策」を参照)

Q.8 中国産食品の危険性を指摘する報道がありますが、中国から日本に輸入される食品は大丈夫ですか?

A.8
中国では、輸出される食品は、中国食品安全法の規定により、輸出先国・地域の基準等に適合することが求められています。
このことも踏まえ、出入国検査検疫当局である海関総署が、原料の生産業者や最終製品の製造・加工業者の登録、輸出前検査などの監督・管理を行い、輸出される食品の安全性を確保しています(参考:中国食品安全法第91条、第99条)。
政府としては、海関総署との情報交換を密にし対日輸出食品の安全性問題に迅速に対応できるよう在北京日本大使館には食品安全の専門家を配置しています。
さらに、輸入の際には、他国からの輸入食品と同様にA.3の内容の対策を講じるとともに、中国当局及び在中国の日本大使館等から情報を収集し、必要に応じて検査強化等を行っています。
なお、中国から輸入される食品については、令和5年度において、約91万件の輸入届出件数に対して206件の食品衛生法違反があり、違反率は0.02%でした。一方、全輸出国における違反率は0.03%であり、中国からの輸入食品の違反率が特に高いという状況ではありません。

(参考)中国食品安全法
(仮訳)
第91条 国家出入国検査検疫部門は輸出入食品の安全の監督管理を実施する。
第99条 輸出食品の生産企業は、その輸出食品が輸入先の国(地区)の基準又は契約書の要求事項に合致するよう保証しなければならない。
輸出食品生産企業及び輸出食品の原料の作付け農場と養殖場は、国家出入国検査検疫部門に届け出なければならない。

Q.9 中国から輸入される食品の残留農薬や残留動物用医薬品(抗菌性物質等)の検査状況はどうなっていますか?

A.9
畜産食品及びその加工品(牛、豚、鶏)、水産食品及びその加工品(魚類、甲殻類(えび、かに)等)、農産食品及びその加工品(野菜、果実、穀類、豆類及び種実類及び茶)について残留農薬及び動物用医薬品(抗菌性物質等)の検査を実施しています。
過去3年間の検査実績(検査品目、検査件数、違反件数)は次のとおりです。
中国産食品における残留農薬及び残留動物用医薬品の検査実績
年度 品目分類
(加工品を
含む)
残留農薬 残留動物用医薬品
中国 その他 中国 その他
検査件数 違反件数 検査件数 違反件数 検査件数 違反件数 検査件数 違反件数
令和3 畜産食品 37,091 0 94,070 1 716 0 18,527 1
水産食品 105,276 6 83,233 1 4,098 0 23,948 16
農産食品 389,745 35 575,016 112 1,799 0 4,447 0
その他食品 27,445 0 53,891 1 1 0 91 0
令和4 畜産食品 35,728 0 96,976 1 708 0 17,737 0
水産食品 78,666 0 80,829 2 3,979 2 25,064 33
農産食品 388,267 53 530,771 85 2,104 0 3,996 0
その他食品 25,189 0 53,043 0 3 0 148 1
令和5 畜産食品 34,434 0 98,502 0 675 0 16,871 0
水産食品 80,921 0 86,440 0 4,232 3 29,325 28
農産食品 391,484 75 536,537 90 1,920 0 3,730 0
その他食品 20,652 0 53,592 0 7 0 409 0

Q.10 米国の牛はホルモン剤を使用している一方で、EUはこれらの牛肉の輸入を禁止していると聞きました。安全性に問題はないのでしょうか?また、ラクトパミンについては、安全性に問題ないのでしょうか?

A.10
ホルモン剤及びラクトパミンの使用については、専門家が参画した審議会、国際機関等で、安全性の評価が行われ、我が国ではそれらを踏まえた食品中の残留基準を設定して規制しています。
なお、世界的に見てもEUを除き米国、カナダ、豪州でホルモン剤及びラクトパミンの使用が認められており、国際基準(Codex基準)においても、適正に使用される場合、ヒトの健康への影響はないと判断されています。
  • 日本における残留基準値
<合成ホルモン(牛)>
  筋肉 脂肪 肝臓 腎臓 その他食用部
ゼラノール 0.002 0.002 0.01 0.01 0.01
酢酸トレンボロン 0.002 0.002 0.01 0.01 0.01
酢酸メレンゲステロール 0.001 0.02 0.01 0.002 0.01
(単位:mg/kg(ppm))

<天然ホルモン(牛)>
エストラジオール 基準値なし(食品において自然に含まれる量を超えてはならない。)
プロゲステロン
テストステロン

<塩酸ラクトパミン>
  筋肉 脂肪 肝臓 腎臓 その他食用部
0.01 0.01 0.04 0.09 0.04
0.01 0.01 0.04 0.09 0.04
  • 牛肉におけるホルモン剤の検査実施状況について
ホルモン剤 豪州 米国 その他(注1)
検査件数 違反件数 検査件数 違反件数 検査件数 違反件数
ゼラノール 335 0 766 0 68 0
酢酸トレンボロン 672 0 1,548 0 134 0
 α-トレンボロン 336 0 774 0 67 0
 β-トレンボロン 336 0 774 0 67 0
酢酸メレンゲステロール 95 0 311 0 55 0
エストラジオール 252 0 230 0 106 0
 α-エストラジオール 126 0 115 0 53 0
 β-エストラジオール 126 0 115 0 53 0
テストステロン 134 0 101 0 59 0
プロゲステロン 104 0 122 0 62 0
総計 1,592 0 3,078 0 484 0
 ※期間:令和元年4月1日~令和6年3月31日
注1:その他はカナダ、ニュージーランド等
注2:プロゲステロンについて、0.001~0.027ppmが109件検出されているが、残留基準「食品において自然に含まれる量を超えてはならない」に適合している。
注3:テストステロンについて、0.002ppmが1件検出されているが、残留基準「食品において自然に含まれる量を超えてはならない」に適合している。
  • ラクトパミンの検査実施状況について
畜種 豪州 米国 その他(注1)
検査件数 違反件数 査件数 違反件数 査件数 違反件数
牛肉 113 0 637 0 61 0
豚肉 0 0 37 0 127 0
総計 113 0 674 0 188 0
※期間:令和元年4月1日~令和6年3月31日
注1:その他はカナダ、ニュージーランド等

Q.11 米国産オレンジ等に使用されている防かび剤の規制はどうなっていますか?

A.11
収穫後のかんきつ類等の作物に使用される農薬は、一般的にポストハーベスト農薬と呼ばれています。
このうち、かび等による腐敗・変敗の防止など「防かび」目的に用いるものは、「食品の保存の目的」で食品に使用するものに該当することから、食品添加物として、使用基準等の設定をし、違反する食品の輸入・販売を禁止しています。
なお、消費者庁において、防かび剤の表示が義務づけられています。

<添加物として指定済み>
農薬名 適用作物
アゾキシストロビン かんきつ類(みかんを除く。) 、ばれいしょ
イマザリル かんきつ類(みかんを除く。)、バナナ
オルトフェニルフェノール かんきつ類
オルトフェニルフェノールナトリウム かんきつ類
ジフェニル グレープフルーツ、レモン、オレンジ類
ジフェノコナゾール ばれいしょ
チアベンダゾール かんきつ類、バナナ
ピリメタニル あんず、おうとう、かんきつ類(みかんを除く。)、すもも、西洋なし、マルメロ、もも、りんご
フルジオキソニル アボカド、あんず、おうとう、かんきつ類(みかんを除く。)、キウィー、ざくろ、すもも、西洋なし、ネクタリン、パイナップル、パパイヤ、ばれいしょ、びわ、マルメロ、マンゴー、もも、りんご
プロピコナゾール あんず、おうとう、かんきつ類(みかんを除く。)、すもも、ネクタリン、もも
過去3年間の検査実績(検査項目、検査件数、違反件数)は次のとおりです。

<米国産果実における防ばい剤の検査実績>
項目名 令和3年度 令和4年度 令和5年度
検査件数 違反件数 検査件数 違反件数 検査件数 違反件数
アゾキシストロビン 0 0 2 0 0 0
イマザリル 238 0 284 0 246 0
オルトフェニルフェノール 227 0 270 0 236 0
ジフェニル 227 0 270 0 236 0
チアベンダゾール 227 0 272 0 239 0
フルジオキソニル 0 0 2 0 0 0
合計 919 0 1,100 0 957 0
 

Q.12 米国では、日本において認められていない食品添加物が多数使用されており、その一部が日本にも輸入されているのではないですか?

A.12
日本の食品添加物には、(1)安全性と有効性を確認し、国が指定した添加物(指定添加物)、(2)平成7年の食品衛生法の改正の際に、それまでに使用経験がある天然添加物として継続して使用が認められた添加物(既存添加物)、(3)天然香料、(4)一般飲食物添加物があり、指定添加物と既存添加物をあわせると833品目(香料を除く。)あります(令和6年3月31日現在)。
一方、米国の食品添加物の数は香料を除き、約1,600品目程度と考えています(平成25年2月時点)。この品目数の中には、(1)果汁や茶など日本では添加物に含まれないものや、(2)日本では1品目として計上されている品目が、米国では、物質ごとに指定され数十品目となっているものが含まれています。
米国をはじめ、輸入される食品については、輸入時にモニタリング検査等を行い、日本で認められていない食品添加物が含まれていないかチェックを行っています。
添加物規制に関する国際比較について

<指定外添加物による違反状況について>
輸出国 米国 米国以外
年度 違反件数 指定外添加物の種類 違反件数 指定外添加物の種類
令和3 7 3 48 7
令和4 3 1 38 15
令和5 0 0 42 7

お問い合わせ先

健康・生活衛生局 食品監視安全課 輸入食品安全対策室