第130回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

1.日時

令和8年8月5日(水) 10時00分~10時48分

2.場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール14D(一部オンライン)
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング14階)

3.出席委員

公益代表委員
  • 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
  • 明治大学法学部教授 小西 康之
  • 慶應義塾大学医学部・大学院健康マネジメント研究科教授 武林 亨
  • 名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
  • 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
  • 読売新聞東京本社編集委員室 宮智 泉
労働者代表委員
  • 日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 岩﨑 優弥
  • 日本化学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長 片山 哲生
  • 日本食品関連産業労働組合総連合会副会長 白山 友美子
  • 日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 菅村 裕子
  • 全日本海員組合中央執行委員政策局長 立川 博行
使用者代表委員
  • 三菱マテリアル株式会社執行役常務CTO 足立 美紀
  • 一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹 笠井 清美
  • 東京海上ホールディングス株式会社人事部シニアマイスター 砂原 和仁
  • 日本通運株式会社人財戦略部次長 武知 紘子
  • 日本製鉄株式会社人事労政部部長 福田 寛
  • 西松建設株式会社安全環境本部安全部担当部長 最川 隆由

4.議題

  1. (1)労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律について(報告)
    (2)労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行に向けた政省令改正事項について

5.議事

○小畑部会長 定刻となりましたので、ただいまから、「第130回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」を開催いたします。本日の部会は、会場及びオンラインの両方で実施いたします。本日の委員の出欠状況ですが、松尾委員が御欠席と伺っております。それから、お一人少し遅くなられるということです。出席者は現在16名、そしてお一人いらっしゃるということで17名の予定でございますが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がありますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
まず、この度、新たに就任されました委員を御紹介いたします。冨髙裕子委員に代わりまして、日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長の菅村裕子様でございます。
○菅村委員 よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございます。続きまして、金井一久委員に代わりまして、日本化学エネルギー産業労働組合連合会副事務局長の片山哲生様でございます。
○片山委員 片山と申します。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございます。また、事務局の人事異動がありましたので、御紹介をよろしくお願いします。
○大臣官房審議官(労災、賃金担当) 8月4日付けで労災、賃金担当の審議官に着任しました牛島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○小畑部会長 カメラ撮影等はここまでといたしますので、御協力をお願いします。
それでは、議題に入ります。本日の議題は、1つ目が「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律について(報告)」、そして2つ目が「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律の施行に向けた政省令改正事項について」です。それでは、事務局から続けて説明をお願いします。
○労災管理課長 それでは、資料1を御覧ください。労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律についてです。1ページが法律の概要です。就業構造の変化や働き方の多様化等を踏まえ、労働災害に対する幅広いセーフティネットを整備するという趣旨から、遺族補償年金における支給要件等の見直しなど5つの事項について改正しました。施行期日は、3の労災保険の適用事業に関する暫定措置の廃止を除き、令和9年4月1日、3については公布の日、すなわち令和8年7月17日から起算して5年以内の政令で定める日としております。
2ページ、衆議院、参議院におけます審議過程をまとめています。衆議院厚生労働委員会では令和8年5月29日、参議院厚生労働委員会では7月9日に質疑が行われ、7月17日に令和8年法律第60号として公布されました。
3、4ページが衆議院厚生労働委員会の附帯決議です。全部で12項目付されております。1は、遺族補償年金における夫婦間の支給要件の差の解消に関するものです。今後、生計維持要件、給付期間、支給要件、その他遺族補償年金制度の在り方を検討するに当たっては、年金給付に加え、就労支援、心理的支援、子育て支援その他の生活再建支援との連携の在り方についても検討することとされております。
2は消滅時効に関するものです。消滅時効期間の周知に取り組むこと。相談支援、周知啓発及び運用改善に取り組むこと。本法施行後は、対象となる疾病の範囲について、施行状況を踏まえ、必要な拡大を検討することとされております。
3は暫定任意適用事業の廃止に関するものです。新たに事務的負担等が生じることから、必要な支援を検討すること。対象となる経営体の把握、個別周知、加入手続支援及び関係機関との連携体制の整備に努めること。労災保険法の適用対象となるのかについて、具体例を含めて分かりやすく明示すること。公布後5年以内とされる施行期日を待たず、任意加入の促進も含め、可能な限り速やかな移行を促すこととされております。
4~8までは特別加入に関するものです。まず4です。承認要件の法定化に当たっては、加入時の審査や業務災害防止措置の実施状況を厳格に判断する基準を策定すること。不適切な特別加入団体に対しては、承認取消しも含めた厳格な指導・監督を行うこと。特別加入者が不利益を被ることのないよう、救済措置を設けるなど万全の措置を講ずること。
5、特別加入団体に係る省令その他の運用基準を定めるに当たっては、労働保険事務組合と特別加入団体の役割の違いを明確にすること。特に、特別加入団体については、加入者の就業実態を踏まえた業務災害防止措置、労災保険給付等請求支援、事故発生後の相談対応その他の継続的支援を担う主体であることを踏まえた制度設計とすること。
6、特別加入団体が行う業務災害防止措置については、団体間で実施内容、実施量及び継続的支援体制に差異があることを踏まえ、取組状況を的確に把握すること。好事例の横展開その他の措置により、業務災害防止の実効性を高めること。
7、特別加入者の保険料につきまして、建設業分野において建設業法等に則り、安全衛生経費等として適切に確保する取組が進められていることや、芸能分野におきましては、文化庁が作成しましたガイドラインにおきまして、発注者と保険料負担について協議をすることが望ましいとされていることを踏まえ、その取組が広がるよう、厚生労働省において周知すること。
8、「曖昧な雇用」で働く者も含め、労働基準法の「労働者」に該当する者は確実に労災保険法の適用対象とすること。本来、労働基準法の「労働者」に該当する者が強制適用の労災保険本体ではなく、本人の保険料負担による特別加入を強いられることがないよう、厚生労働省及び特別加入団体における審査体制を抜本的に強化すること。「実態は労働者」と思われる者が特別加入している場合には、速やかに強制適用への是正を指導することとされております。
9は、今般の法改正には盛り込まれなかった家事使用人に関するものです。労災保険適用については、労働基準法の改正論議を注視しつつ、必要な検討を行うこととされております。
10についても特別加入に関するものです。特別加入者に係る業務災害については、労働保険事務組合その他の関係機関が、形式的な判断により給付請求を妨げ、いわゆる労災かくしに類する事案を生じさせることのないよう、必要な監査、指導及び是正措置を講ずることとされております。
11と12は法律改正に関するものではなく、徴収に関して本部会でまとめていただいた内容に関するものになります。まず11です。政府は、メリット制と労災かくし、労災保険給付受給者への報復行為等との因果関係について実態調査を実施すること。その結果に基づき、労災かくし等を行う事業主への対応強化も含め、メリット制の在り方について検討を行うこと。労災かくしの実態把握に当たっては、相談件数、是正指導件数、労災申請を断念した事案、労災保険給付の請求又は受給を理由とする退職勧奨、復職拒否、雇止め、配置転換、評価上の不利益その他不利益取扱いに関する相談等も含め、労働者が労災申請をためらう実態を的確に把握することとされております。
12は事業主への情報提供に関するものです。提供する情報を必要最小限の範囲に限定すること。労災かくしや不利益取扱いを行った事業主に対しては情報提供を停止するなど、労働者の保護に万全を期すこととされております。
5、6ページについては、参議院厚生労働委員会の附帯決議です。衆議院の附帯決議と異なる主な部分を中心に御説明します。まず、4の1行目に、「広告・勧誘の適正化や加入者からの相談体制の整備などの具体的な承認要件や」という表現が、衆議院の附帯決議の4から追加されております。
続いて、特別加入に関する5ですが、表現が若干異なりますが、衆議院の附帯決議の5番と同趣旨の内容と考えております。
6、特別加入者本人の請求機会が損なわれることのないよう、必要な措置を講ずること。
8の児童に関する労働基準法の適用、11の社会復帰促進等事業の給付に関する決定に対する不服申立てについて、裁決までの標準的な審査期間を定めるなど、迅速かつ効率的な審査を実施することは参議院独自のものです。
13については、衆議院の附帯決議12と同内容ですが、「不利益取扱いの禁止規定を設ける等、必要な措置を検討することや」という表現が追加をされております。
14、スポットワークに関するもの、こちらも参議院独自のものとなっております。
続いて資料2を御覧ください。政省令改正事項一覧になります。それぞれの項目の最後に法律改正、附帯決議、建議のいずれかを表記しまして、改正する根拠を示しております。なお、建議につきましては本部会の取りまとめを指します。
まず、(1)暫定任意適用事業についてです。1つ目の○ですが、暫定任意適用事業の廃止に伴い、暫定任意適用事業に関する整備政令、整備省令の規定を削除します。整備政令等の名称は※で記載しているとおりです。また、2つ目の○ですが、施行期日を具体的に特定するための政令を新規に制定する予定です。
次に(2)特別加入制度についてです。特別加入団体の保険関係の承認や消滅の要件、保険関係の承認後に特別加入団体に求める事項について、省令である労災保険法施行規則に規定します。なお、承認後に特別加入団体に求める事項には、労災保険料の納付その他の労災保険に関する業務を適切に実施すること、特別加入者の事業・作業や属性に応じた業務災害の防止に関する活動に係る業務を適切に実施すること等を含みます。
(3)消滅時効についてです。消滅時効については、労災保険法と労働基準法の関係規定を改正しました。このため、労災保険法に基づくものは労災保険法の政令と省令を改正し、労働基準法に基づくものは新規に労働基準法の政令と省令を制定する予定です。内容は、消滅時効期間を2年から5年とする疾病について規定することになります。
(4)社会復帰促進等事業についてです。保険給付と同様に労働保険審査官及び労働保険審査会法による不服申立ての対象とする社会復帰促進等事業について、労災保険法の政令と省令に規定する予定です。社会復帰促進等事業では、事業主に対する助成事業や未払賃金立替払事業も行っていますが、今回は被災労働者や遺族に対する事業について限定をして規定をすることになります。
(5)遅発性疾病に係る給付基礎日額についてです。この改正は、法律改正や附帯決議に基づくものではなく、建議、労災保険部会の取りまとめに基づくものになります。1つ目の○です。有害業務に従事した最後の事業場を離職した後、別の事業場で有害業務以外の業務に就業中に発症した場合における給付基礎日額の算定方法を、労災保険法の省令に規定をします。
また、2つ目の○です。疾病の原因となった業務に従事した事業場のメリット収支率に反映する額は、ばく露時賃金額をもとに算定した保険給付額に相当する額に限る旨を、労働保険徴収法の省令に規定する予定です。
続いて、参考として、上記の改正後に対応するものを2つ記載しております。いずれも、労災保険法の省令改正で対応するものになります。1つ目が、(1)特別加入制度の対象拡大についてです。対象として、例えば、家族従事者、BtoCのフリーランス、「採捕の事業」への「養殖の事業」の追加を考えております。
2つ目は、(2)労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題についてです。本部会でも議論をされましたが、事業主への情報提供に関するものです。メリット制の労災かくし・不利益取扱いに関する実態把握を含めて対応したいと考えております。いずれも、建議に記載されているものであることから、上記(1)~(5)までの改正後、速やかに対応する予定です。
参考資料についても簡単に御説明します。1、2ページが今年1月14日にまとめていただきました労災保険部会の報告の概要になります。4ページは農林水産業における暫定任意適用事業の対象数です。農業、林業、水産業別にまとめております。農業であれば、19万8,199経営体がありますが、既に加入済みの2万3,563、こちらを引きました約17万4,000経営体が対象となるものと推計しております。
5ページは、労働保険事務組合の概要になります。7ページは特別加入制度に関する改正後の労災保険法第35条の規定。8ページは特別加入団体の要件をまとめております。労働基準局長の通達によりまして定められているものですが、上半分はすべての特別加入団体に対し、下半分は特定フリーランスの特別加入団体に課しているものです。これらを参考に省令を作成することになります。
10ページは消滅時効に関する改正後の労災保険法第42条の規定、11ページは改正後の労働基準法第115条の規定です。
12ページは現行の労働基準法施行規則別表第1の2です。この別表は、業務上の疾病及び療養の範囲を定めるものです。第8号に脳出血、くも膜下出血など脳・心臓疾患を、第9号に精神疾患が規定されております。
13ページは、いわゆる石綿救済法同施行令同施行規則における石綿関連疾病の規定ぶりです。法律では中皮腫、気管支又は肺の悪性新生物その他石綿を吸入することにより発症する疾病であって政令で定めるもの。政令では、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺や著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、省令では、じん肺管理区分が管理4に相当すると認められる者に係る石綿肺などと規定をされております。これらを参考に、時効の延長の対象となる疾病を政省令に規定していくことになります。
15ページです。社会復帰促進等事業に関する改正後の労災保険法第38条の規定。16ページは、被災した労働者や遺族向けの社会復帰促進等事業の一覧です。労働保険審査官、審査会法による不服申立ての対象とする事業として、これらの事業を規定することになります。
18ページ、これまでの労災保険部会でも提出している資料になりますが、遅発性疾病に関する労災保険給付の給付基礎日額について、現状の取扱いということをまとめております。御説明は以上になります。
○小畑部会長 ありがとうございました。それでは、ただいま事務局から御説明がありました内容につきまして、御意見、御質問等をお伺いしたいと思います。御意見等がございましたら、会場の委員におかれましては挙手を、オンラインで参加の委員におかれましてはチャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡をお願いいたします。御質問、御意見等いかがでしょうか。菅村委員、お願いいたします。
○菅村委員 御説明ありがとうございました。連合の菅村でございます。今回の改正法は、遺族補償年金の夫婦間格差の是正、暫定任意適用事業の廃止、消滅時効期間の延長など、労災保険制度のセーフティネット機能の強化に資する内容が多く含まれています。今後は、円滑な施行に向けて政省令の検討を進める必要がありますが、その際には、これまでの労災保険部会において指摘されました事項や、衆参両院の厚生労働委員会において採択された附帯決議の内容を受け止めて検討いただく必要があると思っております。
その観点から、特別加入制度やメリット制における労災かくしの実態の把握等について、幾つか意見を申し上げたいと思います。
まず、特別加入制度についてです。今回の法改正によって、特別加入団体の承認・消滅要件が法律に明記されたものの、その詳細は省令委任事項となっています。この点、法案審議過程での部会においても議論になりましたが、特別加入団体の要件は、現在の通達をそのまま横滑りさせるということではなく、厳格に定めるべきであると考えております。この点、国会審議でも議論となり、衆参両院での附帯決議においても付されているものと認識しております。特に、「特別加入者が特別加入の要件に該当するかを適切に確認すること」や、「広告・勧誘の適正化」は重要でありますので、この点を省令に盛り込んでいただきたいと思っております。
また、今般の法改正において、特定フリーランス事業以外の特別加入団体にも災害防止教育などが義務付けられましたが、その義務が正しく履行されているか、行政としてきちんと確認していくことが重要であると思っております。この点についても附帯決議にて「実施報告、監査その他適切な方法により取り組み状況を的確に把握すること」とされております。こうしたことを踏まえて、行政として履行確認の手段について、どのように考えているのか、この点をお伺いします。
その次に、資料2の末尾に【参考】として記載されているメリット制の労災かくしに関する実態把握についてですが、この点は改正後に対応するものとされており、今後の議論という点は理解しております。これについて、衆参両院で詳細な実態把握を行うべきという附帯決議が付されておりますが、こうした立法府の意思は重く受け止めるべきであると考えており、実態把握の時期などについて具体的なめどが立っているのであれば教えていただきたいと思います。この点は質問でございます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。それでは、御質問が含まれておりましたので、事務局からお願いいたします。
○労災管理課長 1つ目の質問の特定フリーランス事業以外の特別加入団体への災害防止教育の実施状況につきまして、行政の確認方法はどのようなことをするのかということでありますが、例えば特別加入者から相談を契機として、団体の健全かつ適切な運営を確保するために必要があると認められるときには、労災保険法第46条の規定に基づき、業務災害の防止に関する活動に係る業務の状況の報告を求めることができますので、このような規定も使いながら対応していきたいと考えております。
それから2つ目のメリット制の労災かくしに関する実態調査の実施時期につきましてですが、こちらについては資料2(1)から(5)までの政省令改正が終わった後、速やかに実施したいと考えております。
○小畑部会長 ありがとうございます。菅村委員、いかがでしょうか。
○菅村委員 御回答ありがとうございました。1点目については、特別加入者からの相談を契機として、必要があると認めるときの業務の状況の報告を求めることができるということですが、そういった相談を見逃さないようにしていただきたいと申し上げておきます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。それではほかにいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 経団連の笠井でございます。まず、先月10日に労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律が可決、成立したことにつきまして、厚労省の皆様の御尽力にお礼を申し上げます。この法律は、労災保険制度の在り方に関する研究会の中間報告書、それから労災保険部会の9回にわたる議論を、おおむね踏まえたものでございます。労災保険制度が抱える現代的、制度的な課題を踏まえて、制度全体にわたり幅広い見直しを行ったことは意義のあることと評価しております。
その中では、業種によらず業務上災害に対し、労働者が適切な保険給付が受けられるようにする観点からの暫定任意適用事業の廃止、それから災害防止教育など特別加入団体が期待される役割を果たす等の観点からの団体の要件の法定化など、労使が方向性を共有して推進する部分も少なからずございます。厚労省におかれては、この改正を踏まえた政省令の改正、整備、周知を含めて必要な準備を速やかに行い、施行に備えていただきたいと思います。先ほど御説明いただいた政省令への対応に加えて、建議に記載されたその他の課題については建議の指摘を踏まえた対応をお願いいたします。経団連といたしましても、今般の法令の改正について会員企業への周知を進めていく所存でございます。
その上で、御説明いただいた政省令改正事項一覧について異論はございません。必要な措置を速やかに行い、準備期間を十分確保した上で施行に備えることが重要と考えております。
消滅時効について一点申し上げます。建議では、発症後の迅速な保険給付請求が困難な場合があると考えられる疾病を原因として請求する場合には、消滅時効期間を5年に延長することとし、まずは脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病等について対象とすることが適当であるとされ、その後の国会審議を経て、法律上の要件としてはその疾病の性質上、災害補償の事由に該当するか容易に判断できない疾病である場合とされました。衆参厚労委員会の附帯決議においては、事務局からも御説明のとおり、本法施行後は対象となる疾病の範囲について、施行状況を踏まえ必要な拡大を検討するとされたと承知しております。仮に対象となる疾病の範囲について拡大を検討する場合には、時効徒過した件数や、医学的知見など相応のエビデンスを踏まえて、要件に該当する疾病であるか、当部会で議論する必要があると考えております。
次に政省令改正後に対応する課題について申し上げます。まず、労災の支給決定等に関する事業主への情報提供についてでございます。情報の提供を求める理由として、労使一体で災害防止対策に取り組む観点を使用者側から訴えてまいりました。労災保険の支給決定は、労働基準監督署が客観的な立場から業務起因性を肯定したものであり、その情報を提供することで、事業主が類似災害の早期の再発防止に向け、実行性ある取組を行うことが期待できます。このことが情報の早期提供を求める最大の理由でございます。事業主に対する手続保障の観点も重要であり、国の制度である以上、労災保険給付が適正に行われることは、事業主のみならず労働者にとっても重要な前提と考えます。保険料を全額負担する立場にある事業主が制度の運用の適正さを求めることは当然ですが、保険財政の規律の維持、支給の公平性という観点は労働者にとっても意義があると考えます。
以上、申し上げた観点から建議の内容に基づき、事業主に対し情報の提供が実施されるべきことを改めて申し上げます。厚労省におかれましては、建議の記述に従い、情報提供の在り方に関する検討を当部会で着実に行うための前提として、メリット性の懸念に関する実態把握の結果を当部会に早期に提示するようお願い申し上げます。検討に役立つ結果とするためには、指摘される懸念が根拠のあるものかが確認できる必要がございます。そのため、実態把握に際しては、仮に報復行為や不利益取扱いがある場合、労災の給付請求や支給決定、またその結果としてのメリット制の下での保険料増額を理由とするものなのかといった因果関係があるか、またその行為が事業主による正当な人事権の行使ではなく、不当な不利益取扱いといえるものか正確に事案を確認し、分析することが重要であることも申し上げたいと思います。
次に、特別加入制度の対象拡大についてでございます。例示されている対象について、労災保険の特別加入の対象とするためには、それぞれ業務の実態や災害の発生状況から見て、労働者に準じて保護することがふさわしいものと整理される必要がございます。特別加入制度は、災害補償責任を基礎とする労災保険制度の趣旨を損なわない範囲で認められる特例であると理解しております。今後の検討に際しては、対象拡大にふさわしい根拠があるのか、当部会としてしっかり確認していく必要があると考えます。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。それでは、ほかにいかがでしょうか。白山委員、お願いいたします。
○白山委員 私からは遺族補償年金と暫定任意適用事業の2点について、質問と意見を述べさせていただきます。まず、今回の大きな法改正の項目の1つは遺族補償年金の夫婦間格差です。これまでジェンダー平等などの点で課題のあった、遺族が夫の場合のみ課されていた55歳以上という支給要件の撤廃、それから、遺族が55歳以上の妻の場合のみ175日という支給日数を夫にも平準化するということは前進であると考えております。その上で、今回の政省令改正事項には、遺族補償年金について特に記載がありませんでした。質問ですが、この点は基本的に法律の改正で全てが対応できているという理解でよろしいでしょうか。
あと、もう1点の暫定任意適用事業の廃止についてです。労災保険制度は全ての労働者に等しく適用、補償されるべきであるとともに、農林水産業の労働実態も現代化してきていることを踏まえれば、小規模農林水産事業者に対しても、早くそして確実に労災保険を適用していくことが必要であると考えております。
一方で、この点は他の法改正事項が令和9年4月1日施行となっているのと異なり、施行期日が公布後5年以内、つまりは、令和13年までのいずれかの日と理解しており、この期間がかなり長く取られていると受け止めております。円滑な施行に向けた対応であるということは理解しておりますが、衆参両院の附帯決議にあるように、施行に向けて任意加入を着実に促進していく必要があると考えております。ただ、参考資料の4ページを拝見すると、任意加入済みの事業者数はまだ限られていると捉えております。この点、政府としては、どのように任意加入を進めていくお考えなのか、もし目標数などがあれば教えていただきたいと考えております。お願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございます。それでは、御質問ですので事務局から御回答をお願いいたします。
○労災管理課長 まず、1点目の遺族補償年金の支給要件の見直しですが、こちら法律改正により足りていまして、政令事項、省令事項で対応するものはありません。
それから、2つ目の暫定任意適用事業廃止までの任意加入の促進の見込みや方策、何か目標というものがあるかということで、暫定任意適用事業の事業主に対しては施行前の任意加入を促進していくということになります。我々としましては、農林水産省とも協力しながら令和11年度末までに任意加入率8割を目指すという目標を立てています。必要に応じて労働保険事務組合や社会保険労務士の活用を促していきたいと思います。また、行政が作成、配布します、労働者に該当するか否か、分かりやすいように工夫しました自己チェックシートを活用いただき、労働者性に疑義がある場合には労働基準監督署に相談いただくよう御案内をすると、そういった取組も併せてやっていきたいと考えています。
○小畑部会長 ありがとうございます。白山委員、いかがでしょうか。
○白山委員 御回答ありがとうございます。暫定任意適用事業の対応は実務が増える部分で大変なこともあるかと思いますが、是非、スムーズに任意加入を施行へと進めていけるよう、お願いします。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。立川委員、お願いいたします。
○立川委員 先ほど菅村委員からも特別加入制度について発言がありましたけれども、私からも2点ほど述べたいと思いますのでよろしくお願いします。
まず、第1点、資料2の政省令改正事項一覧では特に触れられていない事項なのですけれども、特定フリーランス事業における特別加入団体の、いわゆる事務所要件についてです。この点は、法案策定過程の部会で論議がありました。その際も労働側から発言してきておりますけれども、特定フリーランス事業の特別加入団体に事務所要件を課してきた理由として、加入希望者などが確実に対面相談できるという目的があったと理解しています。また、副次的には、全国に相談窓口を設置できる事務体制と能力を担保するという面があったと考えているところです。そういう議論過程があったにもかかわらず、この要件を部会で論議を経ずに、「貸し会議室でもよい」と緩められました。内容としても、手続としても問題があると考えているところです。今回の政省令の改正とともに、この点について、対応をいただくことを求めていきたいと思っております。
2点目ですけれども、「労働者」への確実な労災保険の適用という点についてです。今回の法改正により特別加入制度の適正化を図り、フリーランスなどの労災補償をしっかり図っていくことは重要であると考えているところです。そのような中で、実態として、「労働者」と認められる者が労災保険本体ではなく、保険料を自腹で払う特別加入を強いられるといったことがないようにすることが非常に重要です。この点、衆参両院の附帯決議でも「厚生労働省及び特別加入団体における審査体制を抜本的に強化する」とされているところですが、厚生労働省と特別加入団体のそれぞれでどのような審査体制の強化を行うか、どのような形で想定しているのかということについてお教え願えればと思います。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。それでは、御質問ですので御回答をお願いいたします。
○労災管理課長 1つ目、フリーランスの特別加入団体の事務所要件につきましては、今後、それを規定していく上で、今回頂いた御意見も踏まえて反映できるものは反映していきたいと考えております。
それから、2つ目です。形式上は請負や委任の契約形態となっていても、特別加入を希望される方が実態として労働者に該当する場合は、労災保険に加入するということになりますが、改正法の施行に向けて、特別加入団体に対しましてはこの取扱いについて周知をするということ、また、労働者性に係る自己チェックシートを配布し特別加入申請時に確認すること、労働者性があるのではないかと疑われる事案を把握した場合は、労働基準監督署等に相談するよう促すことなどの対応を求めることを検討しております。また、特別加入団体においてこうした労働者性の判断が適切に行われるよう、厚生労働省においても団体に対する指導や支援のために必要な都道府県労働局の体制などを確保してまいりたいと考えております。
○立川委員 回答ありがとうございます。まず、1点目の事務所要件です。当初の目的を踏まえて、対面相談がしっかりできるような形であるとか、副次的な全国に相談窓口を設置できるような事務体制や能力を担保するということをしっかりとお願いします。
それから、2点目です。指導をしっかりしていただいて、的確な審査ができる体制を、厚生労働省ないしは地方労働局でも確保いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。片山委員、お願いいたします。
○片山委員 私からは、消滅時効について2点お願いをさせていただきたいと思います。政省令改正事項一覧では、「消滅時効期間を2年から5年延長する疾病について政省令で規定」するとされています。先ほど笠井委員からも引用がありましたが、部会報告では、まずは脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病であると理解はしているのですけれども、我々のスタンスとして、本来は疾病の種類にかかわらず一律で5年に延長するべきだという考え方を持っています。施行状況を踏まえた上で将来的な対象拡大を求めたいというのがまず1点目です。
その上で、こちらも部会報告で示されているのですが、制度の不知や手続の失念、事業主との関係悪化の懸念などから請求をためらって、結果として時効が過ぎて保険請求ができなくなってしまったというケースが生じることのないように、改正内容の周知啓発、相談支援、運用改善に万全を期すようにお願いします。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。岩﨑委員、お願いいたします。
○岩﨑委員 私からは、遅発性疾病に関する給付基礎日額の算定方法の見直しに関しまして、意見と質問を述べさせていただきます。部会でも労側から発言をしてきたように、年齢・勤続年数に応じて賃金上昇することが一般的な雇用慣行の中、石綿などの遅発性疾病が発症したときの賃金がばく露時の賃金より高くなっているのにもかかわらず、数十年も前の低い賃金で労災保険給付が計算されてしまう現行の運用につきましては、労働者にとっては余りにも酷であるいう受け止めを持つものです。部会報告にもありますように、高いほうで計算をするということは、発症時の生活補償を充実させる観点で重要と考えております。その上で、高いほうで計算するという方法の対象とする遅発性疾病について、石綿はもちろんですが、それ以外の遅発性疾病についても精査いただきまして、被災労働者の保護に資する制度設計としていただくようお願いを申し上げます。
また、本件見直しにつきまして、被災労働者保護の観点からできるだけ早いほうがよいと考えております。施行時期は、現時点ではいつを考えておられるのでしょうか。めどが立っているということでありましたら、是非、教えていただきますようお願いを申し上げます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。それでは、御質問への回答をお願いいたします。
○労災管理課長 資料2に記載してあります政省令改正事項一覧のうち(1)から(4)までにつきましては、法律の施行に伴うものですので、法律の施行日であります令和9年4月1日の施行を予定して準備を進めております。一方、(5)は建議、労災保険部会の報告に基づくものですので、我々としましては、令和9年4月1日より早く、できるだけ早期の施行を目指したいと考えております。
○小畑部会長 岩﨑委員、いかがでしょうか。
○岩﨑委員 御回答いただきましてありがとうございます。我々といたしましても、是非、できる限り早い施行を望むものですし、先ほど来ありますように、遅発性疾病、様々な種類があります。等しく受けられるようにするべきだという思いも持つところですので、その点についても、よろしくお願いいたします。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。それ以外にいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 先ほど片山委員から消滅時効についての御発言があった点について申し上げたいと思います。繰り返しになりますが、仮に対象となる疾病の範囲の拡大を検討する場合には、相応のエビデンスを踏まえて、要件に該当するかを当部会で議論する必要があると考えております。その上で、災害補償請求権については2年が維持されております。その理由は、業務起因性の立証は時間とともに困難となることから、早期の権利確定による被災労働者の救済が必要であること。それから、早期の保険給付請求を通じた事業主の安全衛生対策、再発防止対策の促進であると理解しております。これらの必要性は変わっておらず、労災保険の短期給付の消滅時効期間についても同様に、2年が原則とされていることには合理性があると考えております。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。事務局からは何かございますか。大丈夫でしょうか。それでは、本日予定した議題は以上ですので、部会は終了といたします。事務局から次回日程につきましてお知らせをお願いいたします。
○労災管理課長 次回の日程につきましては、事務局から追って連絡させていただきます。
○小畑部会長 本日は以上といたします。皆様、お忙しい中、誠にありがとうございました。