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- 第122回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録
第122回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録
1.日時
令和7年10月22日(水) 10時00分~11時29分
2.場所
厚生労働省専用第14会議室(※一部オンライン)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館 12階)
3.出席委員
- 公益代表委員
-
- 京都大学大学院人間・環境学研究科教授 小畑 史子
- 明治大学法学部教授 小西 康之
- 慶應義塾大学医学部・大学院健康マネジメント研究科教授 武林 亨
- 名古屋大学大学院法学研究科教授 中野 妙子
- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 水島 郁子
- 読売新聞マリクレールデジタル編集室長 宮智 泉
- 労働者代表委員
-
- 日本基幹産業労働組合連合会中央執行委員 岩﨑 優弥
- 日本食品関連産業労働組合総連合会副会長 白山 友美子
- 全日本海員組合中央執行委員政策局長 立川 博行
- 日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長 冨髙 裕子
- 使用者代表委員
-
- 一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹 笠井 清美
- 東京海上ホールディングス株式会社人事部シニアマイスター 砂原 和仁
- 日本通運株式会社人財戦略部次長 武知 紘子
- 日本製鉄株式会社人事労政部部長 福田 寛
- 西松建設株式会社安全環境本部安全部担当部長 最川 隆由
4.議題
- (1)特定フリーランス事業の特別加入団体に関するヒアリング
- (2)労災保険制度の在り方について
5.議事
○小畑部会長 定刻となりましたので、ただいまから「第122回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会」を開催いたします。本日の部会は、会場及びオンラインの両方で実施いたします。
本日の委員の出欠状況ですが、金井委員、松尾委員、足立委員が御欠席と伺っております。出席者は現在15名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がありますので定足数を満たしていることを御報告いたします。カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
それでは、議題に入ります。1つ目の議題は、「特定フリーランス事業にかかる特別加入団体のヒアリングについて」です。本日は、フリーランス保険組合の団体からのヒアリングを予定しております。まずは資料についての御説明を頂いた後に、質疑応答に入りたいと思います。それでは、フリーランス保険組合の竹内様、御説明をお願いいたします。
○フリーランス保険組合 ありがとうございます。フリーランス保険組合の副理事を務めております竹内と申します。本日は、このような機会を賜り、厚く御礼申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、当組合における特別加入制度への取組について、資料を基に御説明をさせていただきます。次のページを御覧ください。本日の御説明は、会社概要から今後の予定まで、全12項目に沿って進めさせていただきます。
1ページを御覧ください。当組合の本部は愛知県にあります。現在、厚生労働省のホームページで公表されております承認団体の中では最も西に位置する団体となっております。
2ページをお願いします。経営理念です。当組合は、母団体を含むグループ共通の理念として「関わるすべての人、会社を幸せにする」を掲げております。この理念に基づき、「三方良し」という考え方を重視しております。三方とは、第一に、買い手良し。加入者様が安心できるか、すなわち、お客様の視点に立つこと。次に、世間良し。社会にとって有意義であるか、これは行政役所の皆様方に御理解いただくことができるかです。そして最後に、売り手良し。私どもが満足できる仕事であるか、これは私どもの立場を表しております。この考えに基づき、社会全体の円滑な運営に貢献できるよう努めてまいります。
次のページをお願いします。私どもの価値観、すなわちValueとしては、必要なときに、必要なものを、必要なだけ提供することを基本としております。加入者様にとって不必要なサービスや負担は提供しない方針です。
4ページをお願いします。母団体及び設立背景です。当組合の母団体は、建設業の一人親方を対象とした特別加入団体「RJC」です。平成4年に建設業に特化した社会保険労務士事務所を開業し、その後、平成11年に特別加入団体としての活動を開始いたしました。母団体の会員数は、2005年8月末時点で延べ約7万5,000人となっております。フリーランス保険組合では、当面の間、事務手数料を徴収せず会費のみで運営を行ってまいります。
設立背景としては、私たちは33年以上にわたり、建設業及び建設業に従事する一人親方等を対象とした労災保険団体として活動してまいりました。その過程で、建設業に該当しない業務、例えば造船・樹木の剪定・ハウスクリーニング・設備の定期点検・除草・販売といった業務に従事される方が多数存在するという実態に直面いたしました。これらの業務は建設工事には分類されないものの、高い労災リスクを伴い、保険加入の必要性が極めて大きい領域です。これまでも私たちは、こうした方々に対し、災害防止や安全対策に関する啓発活動を継続して行ってまいりました。こうした背景を踏まえ、建設業には限定せず、幅広いフリーランスの方々が安心して業務に従事できる環境を整備する必要があるとの考えから、本組合を設立いたしました。
5ページをお願いします。次に、当組合の相談体制について御説明させていただきます。当組合の相談体制は、主に3本の柱を特徴としております。1点目は、電話対応の充実です。他団体様の中にはメール等でのやり取りが中心で、電話対応が限定的なケースというのも見受けられるようです。当組合では、平日フリーダイヤルでの電話相談を積極的に受付けております。スタッフは20名以上が常駐し、全員が特別加入制度に関する教育研修を修了しております。フリーランスの特別加入制度は新しい制度であり、業務内容の聞き取りや加入者様からの御質問のニュアンスがメールでは伝わりにくいといった課題が生じています。そのため、現在は多くの方からお電話にての問合せを頂いている状況です。
2点目は、オンライン体制についてです。24時間お見積りからお申込み、お支払までを完結できるシステムを構築しております。公式サイトのよくある質問も充実させ、公式サイトからメールでお問合せを頂いた場合は担当者が確認の上、メール又はお電話にて御対応させていただいております。
3点目が、全国47都道府県での面談対応の実施です。シェアオフィスを活用し、完全予約制にて個別面談に対応していきます。面談の御希望がありましたら、担当者が出向くか、又はZoom等のオンラインで対応させていただいております。特別加入制度に関する説明会についても、御要望があれば出張形式での説明会を実施する予定です。
次のページをお願いします。先ほども申し上げました対面での対応について詳細に御説明いたします。全国1,000か所以上の拠点を持つシェアオフィスを活用し、加入希望者様の御都合に合わせた場所で面談対応を可能としております。
次のページをお願いします。シェアオフィスに加え、愛知の本部事務所を含めて各本部事務所においても、予約制での面談が可能となっております。
8ページをお願いします。現在の加入状況等について御報告申し上げます。令和7年9月30日時点の状況は、申請済みの方が120名、労働局より承認を確認している方が89名、電話等による問合せの総件数は756件となっております。職種別の加入者の内訳を見ますと、製造・生産・組立関連が20%、次に清掃業が17.1%、設計技術系が15.7%と続いております。傾向としては、母団体が建設業の一人親方様が多いことから、建設業に付随するこれまで労災保険の対象となり得なかった業種が多くなっていることが特徴です。
次に、右の都道府県別グラフです。本部所在地の愛知県が25%を占めております。その他は首都圏に偏ることなく、全国各地から広く御加入いただいている状況です。
次のページをお願いします。お問合せから各段階において加入希望者様等をどのように支援しているかについて御説明申し上げます。まず、お問合せの段階です。先ほども申し上げましたとおり、電話でのお問合せを大変多くいただいております。自分の業種がフリーランス労災保険の対象となるかといった御相談がやはり多いです。また、フリーランス御本人様だけではなく、業務を委託される事業者様からの問合せも多く、「これから業務委託をお願いするが、会社が労災を掛けるのか」などの多岐にわたる質問が寄せられております。私どもはお話を詳細にお聞きした上で、フリーランスの労災保険を御案内するか、あるいは同グループ内の事務組合、建設業の一人親方団体、ITフリーランス団体、その他適切な別団体様を御案内するようにしております。電話での記録は、クラウド型のCRMツールを用いて管理しており、過去の記録を迅速に確認し、適切な団体へ御案内を可能としております。
次に、加入のお手続についてです。オンラインにてお見積りからお支払までを完了できる体制を整えております。手続完了時には、メールにて加入証明書をPDF形式で発行させていただいております。今後は、マイページでの証明書発行を準備し、再加入や脱退のお申込みも全てオンラインで完結できるよう更なる加入者様の利便性の向上に努めてまいります。加入時には、これからフリーランスとして独立するという御相談も頂くことが多くあります。その際には、適宜、業務委託契約書や請求書等のひな型を提供して支援を行っております。
次に、更新時のお手続についてです。更新時にも、加入時と同様に再度、業務委託の契約書を御提出いただく予定です。また、更新対象者には転倒防止に関する注意喚起として、タオルと災害防止に関する御案内を送付しております。更新時には、メールマガジン等でのリンククリックやQRコードのエンゲージメントを計測し、災害防止教育の受講確認を行ってまいります。
最後に、労災申請のサポート体制についてです。同グループ内の社会保険労務士チームが有料にて対応しております。元厚生労働事務官をアドバイザーとして常駐していただいており、書類作成や申請等の代行を行っております。主な業務は、労災申請書類の作成、申請後の給付状況の確認などです。御自身で申請されたいという方には、団体証明員の押印は無料で対応をしております。
次をお願いいたします。母団体を含むこれまでの活動実績について、お話させていただきます。母団体のRJCでは、建設業の一人親方を対象にアンケートを実施し、建設業以外に行っている特定フリーランス事業について御回答いただきました。右側の円グラフがアンケートの事業の内訳です。保守点検が14.2%、修理業務が9.6%、樹木の剪定伐採・管理が8.5%と続いております。この建設業以外の特定フリーランス事業も行うと回答された方の中には、最長で20年間一人親方労災保険に加入している方も含まれております。母団体では、これらの方々を含め、設立当初より延べ7万人以上に対して建設業及び複数業種にわたる災害防止の啓蒙活動を継続して実施してまいりました。
次をお願いいたします。次に、フリーランス保険組合としての直近の活動実績について御説明いたします。まず、会員向けの活動です。オンラインでの質疑応答可能な形式で、今年は6月に災害防止研修を実施いたしました。内容としては、最も多い災害事例である転落・転倒を中心に、業種ごとの「あるあるの災害事例」を紹介しております。6月の参加者は2名でしたが、今後もオンライン研修は継続して実施をしてまいります。研修にされなかった会員の方には、メールにてスライドのリンクを配布していく予定です。その他、毎月のメールマガジンにて安全対策などを配信しております。
次をお願いいたします。次の直近の活動実績は、会員ではない一般の受託事業者・業務委託事業者に向けての活動です。お問合せの多い業種を主眼にランディングページの公開を進めております。フリーランスの労災保険は特に業種の幅が広いため、個々の職種に寄り添った加入促進がより一層必要であると考えております。SNSとも連動させ、職種ごとに広告によるPR活動を行っております。フリーランスの方々はホームページを持たず、インスタグラムなどで自社サイトを兼ねているケースも多く見受けられ、インスタグラムとの親和性は高いかと感じております。
また、商工会様からは、「これはどのような保険ですか」というお問合せを多くいただきます。商工会の方々も、フリーランスの方から御相談を受けても制度自体を知らなかったり、フリーランスの保険に該当される業種なのか分からないという御相談が多く寄せられております。こうした状況も踏まえて、全国の商工会・商工会議所様にフリーランスの労災保険制度に関する御案内の配信も実施しております。
次のページをお願いします。最後に、今後の予定についてお話をいたします。組合の今後の活動予定については、年間スケジュールとして計画し、着実に進めてまいりたいと存じます。オンライン研修は年間2回の実施を予定しております。商工会・商工会議所の会員様向けの会報にPR広告を掲載するなど、まずは、この新しいフリーランスの労災保険制度の周知を積極的に図ってまいりたいと存じます。ホームページでのマガジン記事や会員向けメールマガジンを通じて、フリーランスの方に役立つ最新情報を随時発信してまいります。内容としては、労災防止や安全衛生のポイント、制度改正や手続方法など日々の業務に直結する実用的な知識を提供してまいります。
当組合の災害防止教育は、製造業、メンテナンス、造船、清掃業のフリーランス加入者が多いという特性を考慮し、現場での実用性に沿った内容としています。具体的には、転落・転倒などの具体的事項例を用いた教育を核とし、安全意識低下の主要因となり得る熱中症や過重労働の予防を教育に組み込むことで、フリーランスの方々の自己管理能力と災害防止能力の向上を図ってまいりたいと思います。
最後ですが、私たちフリーランス保険組合は、「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」をモットーに、承認申請から加入希望者の審査、災害防止啓蒙活動まで誠実かつ公正に取り組んでまいりました。今後も透明性の高い運営を継続し、フリーランスの皆様の安全と安心を守ることを使命としてまいります。本日は、このようなお時間を頂きました厚生労働省の御担当者の皆様、そして労災保険部会員の委員の皆様に心より感謝申し上げます。御清聴いただき誠にありがとうございました。以上となります。
○小畑部会長 竹内様、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問等がありましたら、会場からの委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましては、チャットのメッセージから発言希望と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡をお願いいたします。いかがでしょうか。立川委員、お願いいたします。
○立川委員 御説明ありがとうございました。私からは、団体の安定的な運営の観点から質問させていただきたいと思います。まず、4ページを見ますと、「当分の間、事務手数料は徴収せず会費のみで運営」との記載があります。災害防止教育の実施も含めまして、安定的に団体運営を行っていくためには一定のコストが掛かるため、コストに見合った収入源を確保していくことが重要だと思うところです。
そういう意味で、会費等はどの程度徴収しているのかをお聞かせいただきたいと思います。また、貴団体としまして、当分の間は無料としている事務手数料の収入のあり方を含めまして、安定的な団体運営のための財政の見通しについて、どのように考えておられるのか、会費を納入する会員の増加予測も含めまして、お考えをお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問を頂き、ありがとうございます。会費について御質問いただきました。御説明をさせていただきます。まず、現在の当組合の会費につきましては、12か月間で1万2,000円という設定をしております。そのほかに掛かる費用は保険料のみとなります。
御存じのとおり、当組合は非営利団体であり、当分の間、事務手数料は徴収しておりません。運営資金はその会費のみで賄っております。安定的な運営のために、今年度は既に会員が100名を超えており、現状では会費収入で十分な健全な運営が可能です。母団体の基盤がしっかりしておりますので、人的リソースも確保できていることから、安定した体制を維持できるのではないかと想定しております。
もう1つ頂きました、今後の会員増加の見通しについてです。見通しについては、まだ具体的な数値というのは、目標をこれから定めるところでございます。ただ、今年のペースを見ている限りは、まだまだフリーランスの方からのお問合せの件数や企業様からのお問合せのお話をお聞きする限り、需要がまだまだあるのではないかと感じております。以上となります。
○小畑部会長 よろしいでしょうか。
○立川委員 会員が100名で年会費が1万2,000円ということなので、収入総額はすぐ計算ができます。専任のスタッフが20名いるというお話がありましたから、現状の収入額で本当に安定的に運営できるのかという点について、疑問に思ったところです。
○小畑部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。他はいかがでしょうか。最川委員、お願いいたします。
○最川委員 西松建設の最川と言います。御説明ありがとうございました。私も、今、立川委員がおっしゃられたとおりだと思うのですが、私も感覚的に、20名スタッフがいて、会員が今100名ですかね。母体のRJCは安定していると思うのですけれども。その20名のスタッフは、そのほかの仕事を兼務されていて、その一部の仕事として、この仕事をやられているのか、この100名の会員の保険料と会費で、今後も運営されていくのかお聞きしたかったのですが、よろしいですか。
○小畑部会長 お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきありがとうございます。20名のスタッフにつきましては、フリーランスの保険だけを専任としているわけではなくて、母団体のRJCのほうも兼任しております。フリーランスの方からのお問合せも頂く中で、どうしてもフリーランスだけ、建設業の一人親方だけというふうにスタッフを切り離してしまうと、お客様の話を聞いたときに、そちらは建設業のお仕事もされるし、フリーランスのお仕事もされるのであれば、両方の御加入をお勧めしますというお話ができなくなりますので、今のところは兼任を行っております。
○小畑部会長 最川委員、よろしいでしょうか。
○最川委員 ありがとうございます。ただ、気になるのは今回のフリーランス保険組合が、もしRJCと切り離してフリーランス保険組合はやめましょうという話になったときに、それが、RJCがそのまま引き継いでいただけるのか。フリーランスの100名の方の会費というのは、具体的に言うと、1年分の会費を払いましたと。2か月ぐらいたって、保険組合は成り立たないのでやめましょうとなったときに、残りの10か月分はRJCで引き継いでもらえるのか、そういう体制が整っていればいいと思うのですけれども、どうお考えなのでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、いかがでしょうか。
○フリーランス保険組合 御意見を頂きましてありがとうございます。同じグループ団体と考えておりますので、切り離すというわけではなくて、フリーランスのほうもRJCのほうできちんと行っていくという方向でおります。
○小畑部会長 ありがとうございます。最川委員、よろしいでしょうか。
○最川委員 すみません、何度も申し訳ないのですけれども。新たに、このフリーランス保険組合というのを立ち上げるメリットは何なのかなと思いまして。母団体でそのままやれないのですか。母団体がそのまま業種を増やして、フリーランスを受け入れるというのはできないのでしょうか。そのフリーランス保険組合を立ち上げる意味合いというか、将来像みたいなものがないと、例えば将来は1万人を目指しているのでやっていきましょうというところなのか。今お話を聞くと、100名ぐらいで成り立っていますというお話だったので、ちょっと不安になってしまったのですけれども、その辺をお聞かせいただければと思います。
○小畑部会長 竹内様、お願いします。
○フリーランス保険組合 御質問ありがとうございます。フリーランス保険組合の展望としては、今後、もちろん加入者を何万人単位で増やしていきたいと考えてはおります。そのために、別の組合として承認を申請し、今回頂いております。当分の間、事務手数料を徴収しないという方針については、制度開始の今は、当初の加入促進及び事務手続の円滑化を目的として、今も事務手数料を徴収しないという方針ではおります。ただ、今後、理事会で組合運営の実情を踏まえながら適時、適切に判断してまいります。一方で、今後、同様の取組を行う団体の新規参入が見込まれますので、その中には、もっと会費を極端に下げるとか、そういった持続的な運営が難しい価格設定を行うケースも想定はされます。そのような状況が広がると、当組合の会員数、提供のメリットにも影響が及びますので、今後、ほかの組合さんや市場を注視しつつ、事務手数料の在り方や会費の在り方、持続可能性について理事会で慎重に検討してまいりたいと思います。
○最川委員 御説明ありがとうございました。とにかく安定的に継続していただけることが一番だと思っていますので、母団体はしっかりしているので、その辺は最初、心配していなかったのですけれども、長い安定的な運営を是非お願いいたします。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。13ページの直近の活動実績を拝見いたしました。災害防止対策として、脚立からの墜落・転落、カッターでの切創、転落・転倒の防止に注力されたものと認識いたしました。また、15ページの今後の予定では、加入者の特性を考慮して現場の実用性に沿った内容の災害防止教育を実施しているとの記載も頂いており、特別加入団体として実効性ある災害防止対策に取り組んでいる御様子を伺えたものと思います。非常に重要な取組だと感じます。
そこで質問です。現場の実用性に沿った災害防止教育を提供する前提として、加入者の災害情報を収集・分析する必要があろうかと存じます。特別加入団体として、どのように災害情報を把握しているのか教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。フリーランス保険組合での災害状況の分析等は今後、必ずやっていかなければいけない業務だなと考えております。ただ、まだ労災の実例の件数が1つもございません。今後、労災事故が発生した場合、必ず当組合に、まずは加入者様から御連絡を頂くこと、そして、どういった状況で、どういったおけがをされているのかというデータをツールにきちんと保管して、今後の啓蒙活動に活かしてまいりたいと考えております。
○小畑部会長 笠井委員、よろしいでしょうか。
○笠井委員 ありがとうございます。是非そのようなツールの開発を含めた取組を進めていっていただければと思います。
今後の労災保険制度の見直しの議論にも関係する点でもありますが、今後のヒアリングの仕方について改めて申し上げたいと思っております。これまでヒアリングに対応した団体は承認後であったと理解しております。ヒアリングの実効性を高める観点からは、労働局長の承認よりも前の時期に実施いただくとともに、各団体による説明事項を統一いただくことも改めて要望したいと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございます。白山委員、よろしくお願いいたします。
○白山委員 御説明ありがとうございました。私からも災害防止教育についてお伺いをしたいと思います。資料の中の「11-1 直近の活動実績」にも記載がありましたけれども、2025年6月に開催した災害防止研修の参加者は2名であったと御説明いただきました。
研修不参加の方に対しては、メールで資料のリンクなどを配信しておられるという御説明もありましたけれども、やはり研修参加者の拡大ということも大事であると思っております。これまでヒアリングを行った特別加入団体にも共通する課題であると思いますが、加入者の方々に災害防止研修をきちんと受講していただくことは災害防止の意識や気付きを促していく意味でとても重要です。そうした中、受講者が少ないことは課題であると感じております。この点、貴団体として災害防止研修の受講者拡大に向けて検討している方策などがありましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。2025年6月に実施した災害防止教育の参加者は、2名にとどまりました。当組合でも、加入者の災害防止教育への意識が十分に高まっていないなというのは課題として認識しております。今後の取組としては、開催日時の柔軟化、平日の日中ではなく、夜間の時間帯や土日の開催の検討もしていかなければならないと感じております。また、これまでどおりオンラインでの受講機会を進め、参加しやすい環境を整えてまいりたいと思います。さらに、受講状況を確認した上でフォローアップ・メールを送信する場合、重要なポイントや受講のメリットを簡潔にまとめた本文を添えるほか、あとは理解確認テストなど、ちょっと見てみようかなと思ってもらえるような工夫をしてまいります。
ただ、やはり現状の課題としては、周知をしてもなかなかフリーランスの皆様の災害防止意識は依然として低いままです。これが、民間の障害保険や生命保険会社などでは業務災害防止の啓蒙活動というのは特に行われていないという背景もあり、保険が補償を受けるものというような意識が強く、教育や啓蒙活動を行うこと自体が、同じ保険でも特異なような取組に見えるのかもしれません。また、建設業のように現場での安全教育が日常的に行われている業界とは異なり、フリーランスの方々は、自分が安全教育を受けなければならないという実感を持ちにくい状況があります。こうした点からも、啓蒙活動を行っても行動変容に結び付かないという難しさを感じております。実際、こうした課題が当組合の理事会でも議題に上がっており、どこまで啓蒙していくか、どのような形で意識を高めていくかを議論を重ねております。ほかの組合さんでも、承認前から300回以上セミナーを実施しているにもかかわらず、加入者さんが10名以下にとどまっている例があるなど、ほかの組合さんでも同様の課題が見られます。私たちとしては、将来的に当組合が数万人規模の加入者を擁するようになった際に、こうした安全教育の取組が標準的なモデルになるよう努めていきたいと考えております。そのためにも、今後、安全教育を推進する上での課題につきましては、有識者の皆様方の知見を是非、伺いたいと考えております。
○小畑部会長 白山委員、いかがでしょうか。
○白山委員 ご回答ありがとうございました。団体として御苦労されているということは理解できましたが、引き続き周知活動も含めて受講者拡大の取組を続けていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○小畑部会長 ありがとうございます。他はいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 竹内様、本日はどうもありがとうございます。今の御質問、御回答とも少し関連しますが、09の各支援体制で、災害防止教育の受講率の計測をされようとしていることが印象的でした。これは既に母団体で行っておられるのか、もし母団体で行っておられるのであれば、受講率が極めて低い方にどのように対応されているのか教えていただけますでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。受講率の計測につきましては、フリーランス保険組合ではこれからの実施となります。母団体では、既に実施しております。大体、メールマガジンなどで安全教育の配信をさせていただいて、リンクの計測を測ると、5~10%の方に御確認いただいていることは分かっております。ただ、やはり時間帯や業種によっては、見られる率が低いものもございます。どういった業種の方がなかなか見ていただけないのかとか、どういった時間帯に見ていただけるのかという分析を重ねて、それをフリーランス保険組合のほうにも反映をさせていきたいと考えております。
○水島委員 ありがとうございます。すみません、もう1つ質問があるのですが。労災防止と直接関わるものではないのかもしれませんが、フリーランスの方は、その特性ゆえにハラスメントの被害をより受けやすかったり、またメンタルヘルス対策について特別の配慮が必要だったりするかもしれません。こうしたことに対する取組が、もしありましたら教えていただけますでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、お願いします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。メンタルヘルスに関する啓蒙というのは、まだ行ったことがございません。これから組合の中で勉強も重ねて、安全教育の議題の中に入れ込んでまいりたいと思います。
○小畑部会長 それでは、岩﨑委員、お願いいたします。
○岩﨑委員 御説明、ありがとうございました。私からは、資料の左肩の05~07の相談体制について御質問させていただきます。まず、05のページの一番左の「フリーダイヤル電話対応」の部分で、「20名以上の専門スタッフが常駐」し、「特別加入制度の教育を修了したスタッフが対応している」との記載があります。まず、この特別加入制度の教育というものが具体的にどのようなものかをお聞かせいただきたいと思います。
次に、先ほどの最川委員の御質問の答弁にもあったと思いますが、20名の専門スタッフの方は、フリーランス保険組合専業ではなく、建設業の一人親方やITフリーランスの方々の特別加入の相談にも対応していると理解しているところです。フリーランス保険組合以外の相談に対応されている中で、相談体制について特段の支障が生じているということはないのかということについても、併せてお聞かせをお願いします。よろしくお願いします。
○小畑部会長 よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。まず、1つ目に御質問いただきました、特別加入制度の教育について御説明をいたします。こちらは、特に当組合独自の教育を行っております。まずスタッフの方には、入社後3か月間は、特別加入に関する勉強会、テスト、研修を行っていただきます。さらには、電話対応のスキルの勉強会などもOJT、OFF-JT合わせて行っております。
次に御質問いただきましたのは、スタッフが複数の団体の兼任をしている点で支障がないかという点です。やはり、お客様からお問合せを頂いて、これはフリーランスの保険に該当する従業員を雇っているのかいないのか、もちろん幾つか迷うところはたくさん出てきます。やはり迷ったときには都度、労働局のほうに御相談をさせていただいて、また、労働局の御回答を社内で共有することで、更にスタッフの知識も上げていくように今努力をしているところでございます。
○小畑部会長 岩﨑委員、よろしいでしょうか。
○岩﨑委員 ありがとうございます。今後も様々な事案等もあるかと思いますけれども、適切な相談対応ができる方向での体制づくりを期待しております。ありがとうございました。
○小畑部会長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。フリーランス保険組合の竹内様、御対応いただきまして誠にありがとうございました。本日はお忙しいところ、御説明を賜りまして、質疑応答でも丁寧にお答えいただきまして感謝申し上げます。ありがとうございました。この後は、御退席いただいて差し支えございません。ありがとうございます。また、委員の皆様におかれましては、本日お聞きした内容につきまして、今後の議論の参考にしていただければと存じます。ありがとうございました。
○小畑部会長 それでは、続いて議題2に移ります。議題2は、労災保険制度の在り方についてです。事務局より、御説明をお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、資料2を御覧ください。第119回から121回までの労災保険部会における委員の主な御意見をまとめています。まず、1の適用関係です。(1)家事使用人に係る論点です。論点①の労災保険法を強制適用することについて、労働者代表委員からは、強制適用の対象とし、労災保険法の保護を受けられるようにすることが重要である。使用者代表委員からは、制度を知らずに特別加入していない人もいる。現行制度の周知・広報に注力すべきという意見がありました。
また、論点②の運用上の課題について、労働者代表委員からは、労働保険事務組合等の仕組みも活用して前向きな制度設計を行っていくべき。使用者代表委員からは、技術的な課題の整理も必要という意見がありました。
続いて、(2)暫定任意適用事業に係る論点です。論点①の労災保険の強制適用について、労働者代表委員からは、強制適用していくべき。使用者代表委員からも、強制適用していくことに賛同という意見がありました。公益代表委員からは、強制適用することに賛成。農林水産事業者の理解に加え、事業者の把握や保険料徴収上の課題を具体的に検証していくことが必要で、それに当たっては農林水産業界の団体の方から御意見を伺う機会を頂きたいという意見がありました。
続いて、(3)特別加入制度に係る論点です。論点①の特別加入団体の承認や取消しの要件を法令上明記すること等についてですが、労働者代表委員からは、法令上明記することに賛成。特別加入者が、団体の承認取消しによって突如無保険になったり、納めた保険料や手数料の払戻しが受けられなかったりといった不利益を被らないよう、法令化とセットで労働局のフォローアップの仕組みも検討いただきたい。使用者代表委員からは、承認や取消しの要件を法令上明記することと、承認の取消し等に先立って段階的な手続を設けることの双方に賛成という意見がありました。
論点②の特別加入団体に災害防止措置を求めること等について、労働者代表委員からは、法令上の根拠を設けるべきで、特別加入団体の役割について加入者の審査を行う義務を法令に明記する必要がある。使用者代表委員からは、特定フリーランス事業に係る特別加入団体以外の団体にも、災害防止措置に関わる役割や要件を求めるとともに、法令的根拠を求めることに賛成という意見がありました。
次に、6ページ、2の給付関係です。(1)遺族(補償)等年金に係る論点についてです。論点①の遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差の解消についてですが、労働者代表委員からは、夫婦間の支給要件の違いを解消することが当然である。解消の方法としては、夫のみに設けられている要件を撤廃するのが適当ではないか。使用者代表委員からは、支給要件の夫と妻の差を解消することは社会通念から言えば当然のことである。ただし、それに当たり、夫の支給要件を撤廃するという結論を単純に導くのは適切ではないという意見がありました。
7ページの論点②の給付期間についてです。労働者代表委員からは、現行の長期給付については、遺族(補償)等年金の目的である「被扶養利益の喪失の補填」をどのように考えるかということに直結すると考えており、短期間で結論が出るものではない。まずは夫婦間の要件の差を是正することに注力すべき。使用者代表委員からは、遺族(補償)等年金の長期給付の妥当性を検討すべき時期が来ていると考えるという意見がありました。
論点③の特別加算についてです。労働者代表委員からは、妻のみに加算を設けることは合理性がないと考える。また、高齢の妻以外にも障害のある遺族や子供のみの場合の生活困窮度は高いと考えられ、政策的に適切なのか疑問である。今回の見直しでは、夫と妻の格差解消に留まらず、対象範囲を拡大する方向で見直していくべき。使用者代表委員からは、特別加算制度は廃止が妥当であるという意見がありました。
続いて、(2)遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額に係る論点です。論点①について、労働者代表委員からは、発症時賃金を原則とし、発症時賃金がばく露時賃金より低くなる場合は、ばく露時賃金を用いる方向で見直すべき。使用者代表委員からは、ばく露時より発症時の賃金が高くなった場合に、給付基礎日額の算定に発症時賃金を用いるのは、労災保険給付が生活保障であるという立場に立てば理解できる。しかし、その立場に立ったとき、ばく露時より発症時の賃金が低くなった場合に敢えて、ばく露時賃金を使うのは、同じ生活保障の考え方から説明することが困難という意見がありました。
論点②について、労働者代表委員からは、退職後の発症の取扱について詳細な検討が必要である。労働基準法第12条第8項に基づき発出されている通達の考えに照らせば、ばく露時賃金と推認される発症時賃金を比較して高いほうを取るという方法も考えられるのではないかという意見がありました。
続いて、(3)消滅時効に係る論点です。論点①の見直しの要否、論点②の見直す場合の方策について、労働者代表委員からは、早期に解決すべきであり、5年に延長することが当然である。使用者代表委員からは、消滅時効期間の延長ありきではない十分な議論が必要。仮に消滅時効期間を見直すのであれば、相応のエビデンスの存在が前提となるべきであるという意見がありました。
論点③の労災保険特有の事情について、労働者代表委員からは、労災保険は業務遂行性・業務起因性の観点があり、外形的な事実だけでは容易に判断できない。使用者代表委員からは、社会保険制度が様々ある中で、制度によって消滅時効期間が異なることのデメリットもあるのではないかという意見がありました。
続いて、12ページの(4)社会復帰促進等事業に係る論点です。論点①の特別支給金等の処分性を認めることについて、労働者代表委員からは、処分性を認め、被災労働者に審査請求の機会を保障すべき。論点②の労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすることについても、こちらも労働者代表委員からは、社会復帰促進等事業の審査請求も労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすべきという意見がありました。
3の徴収等関係の(1)メリット制に係る論点についてです。論点①のメリット制の意義・効果について、労働者代表委員からは、研究会で検証は一定程度行われたが、十分とは言えない。労災かくし等につながっていないということの検証も不十分。そうした中で、「メリット制は存続させ、適切に運用することが適当」と結論づけることは時期尚早である。改めて、詳細な分析を行った上で、根源的な検討を行う必要があるのではないか。使用者代表委員からは、研究会で示されたメリット制の検証結果について、事業主の負担の公平を図ること、事業主の自主的な災害防止努力を促進することについて一定の効果を裏付けるものと認識している。中間報告書の結論に従い、メリット制を適切に運用し、存続させるべきであるという意見がありました。
論点②について、使用者代表委員からは、原則として発症時賃金を用いるとした場合、研究会報告書のとおり、有害業務への従事が行われた最終事業場に対するメリット制の適用において、被災労働者のばく露時賃金を基礎とした給付のみを加味すべきという意見がありました。
続いて、(2)労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題に係る論点です。論点①の支給決定(不支給決定)の事実を、事業主に対して情報提供することについて、労働者代表委員からは、事業主に対する情報提供は慎重であるべき。被災労働者等に対する不当なプレッシャーを与えることが懸念される。使用者代表委員からは、労災保険の支給、不支給の情報は労働災害の再発防止に必要な情報であり、保険料を事業主が全て負担していることからすると、労働者に通知されている情報と同じ情報を同じタイミングで全事業主に通知すべきという意見がありました。
論点②のメリット制の適用を受ける事業主に対して、労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報を提供することについて、労働者代表委員からは、メリット制適用事業主に、労災保険給付に関する情報を伝えることは問題が大きく、労側としては情報提供自体に反対。労働者にとってはセンシティブな情報が含まれていることから、労災請求をためらってしまうことにもつながる。使用者代表委員からは、メリット制で労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報が提供されないのは、保険料の負担者としては是認し難い。メリット制の影響を受ける企業側の立場として、当然にして情報提供はされるべきであるという意見がありました。
以上、部会における委員の発言のポイントについて説明いたしました。事務局からの説明は以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。資料2につきまして、前回までの部会で頂いた御意見を論点ごとにお示しいただいております。こちらにつきまして趣旨を補足したい、修正したい、あるいは追加したいということがありましたら、御意見をお願いいたします。白山委員、お願いいたします。
○白山委員 ありがとうございます。私からは、資料6ページの給付関係の(1)遺族(補償)等年金に係る論点について意見を申し上げたいと思います。まず、夫婦間の支給要件は当然解消すべきです。解消の方法としては、夫に設けられている要件を撤廃して、妻に合わせることが適当と考えております。この点は、使用者側委員の方からは、資料にあるとおり、支給要件の撤廃自体について異論はないということでしたが、解消の方法については生計維持という点に着目しており、妻に「55歳以上または一定の障害状態にある」という夫の要件を課すことも排除すべきではないという意見が示されております。
この意見については、労働側としては賛同できません。
遺族(補償)等年金は、死亡した夫婦生活を支えていた被災労働者の収入が途絶えたことに対する填補という目的がありますので、この目的は妻だけでなく、夫にも共通しますし、年齢で区切られるものではないと考えます。したがって、夫婦間の支給要件の違いの解消方法につきましては、夫の年齢要件を撤廃して妻に合わせる形とするべきという点を改めて強調したいと思います。
もう1点、7ページの論点3の特別加算についてです。この論点については、使用者側委員から妻のみを対象とする特別加算も廃止が妥当という意見が出されておりますが、特別加算の趣旨・目的を踏まえれば単純に廃止すべきという結論には至らないと考えております。妻に特別加算が設けられている趣旨は、高齢又は一定の障害の妻は働くことが困難で生活が困窮しがちであるため、それを防止する目的があったと捉えております。この生活困窮の防止という趣旨を踏まえれば、特別加算を単純に廃止するという形ではなく、現行の水準の維持を前提に、「55歳以上または一定の障害状態にある妻」だけではなく夫も含めて広く生活困窮の可能性があるものを対象とする方向で見直すことが必要だと考えております。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他は、いかがですか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 ありがとうございます。私からは、適用関係全般について意見を述べます。労災保険の本体、基本的部分は、労働基準法の災害補償の規定が根本にあり、迅速で公正な保護を行うために労災保険法があると認識しています。そのため、まず家事使用人については、労働基準法が家事使用人に適用されたら、直ちに強制適用できるよう準備が必要と考えますし、また、暫定任意適用事業につきましては、前回発言しておりますが、施行期日はともかくとして、廃止の方向の道筋を早くにつけるべきと考えます。
一方、特別加入は、本体そのものでなく、加入が任意であることも影響してか、これまで特別加入団体について我々研究者の側の関心が薄かったと反省しているところです。労災保険の本体が政府の管掌により行われていることからすれば、特別加入も、同じ労災保険制度に属する以上、特別加入団体の承認取消し、災害防止措置、報告義務等々、労働者側、使用者側からも意見がありましたが、こうしたことをきっちりできるように法令等を整備することが重要であると考えます。
また、今回のペーパーを見ておりますと、公益代表委員の見解がほとんど示されておりませんが、公益委員のほとんどが労災保険制度の在り方に関する研究会の委員を務めており、研究会のほうで、それぞれ意見を申し上げていることを申し添えさせていただきます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかに、いかがですか。福田委員、お願いいたします。
○福田委員 私からは、先ほども少しありましたが、給付の関係で、夫と妻の支給要件の差の解消についてです。これは、私も会議の部会のときにも発言しましたが、これに関しては、やはり考え方の一貫性を是非、大事に考えていただきたいなと思っております。以前は、こういうふうに受けていたけれども、今はそれだと都合が悪くなってきたので、こういうふうに変えるということで、ときどきの状況によって考え方を変えていく形でやりますと、制度の安定的な運営という観点からは非常に問題があると思っておりますので、考え方の一貫性を持ちながら、今変えるのであれば、どういう理由で、どう変えていくのかということを、しっかりと理由づけしていくことが必要だという考えで私は意見を申し上げましたので、夫と妻、どちらかに合わせるという結論ありきではなく、どういう考え方で新しい結論を導いていくのか、その際には、従来からの考え方について、どのように評価して、どう変えていくのか、いかないのかと、一貫性もしっかり大事に捉えながら検討いただけたらということで改めて発言いたします。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。他は、いかがですか。立川委員、お願いいたします。
○立川委員 私からは、(3)消滅時効に関しての意見を述べたいと思います。9ページの下段以降になります。労働側として、災害補償請求権と労災保険請求権の消滅時効の期間は、5年に延長することが当然であると考えております。使用者側委員からは、延長ありきではない議論をという意見が提示されており、その理由として10ページの〇にあるように、早期に権利を確定させて被災労働者の救済を図る必要性や、早期の労災保険請求を通じた安全衛生対策、再発防止対策の促進の必要性が挙げられています。この点について考えると、早期に労災請求を行えば、証拠の散逸もなく、一定の給付がなされる可能性が高まることは確かにあることです。
しかしながら、早く労災請求することと、時効によって早く請求権を消滅させることは全く別次元の問題です。また、使用者側がもう1つの理由として掲げている事業主の安全衛生対策や、再発防止の促進については、時効により労働者側の請求権を早期に消滅させることと関係があるのか、理解し難いと言わざるを得ません。
なお、消滅時効を議論した第120回部会では、事務局から、時効を徒過したことによって労災保険が不支給となった件数は少なかったといったデータが開示されておりますが、支給・不支給の決定以前の問題として、時効が到来していると指摘をされれば請求自体をあきらめてしまうケースが多いことが明らかになっています。したがって、時効徒過による不支給件数が少ないから、時効を延長しなくてもよいといった結論にはならないと思います。改めて、労災保険給付請求権などの消滅時効の期間は5年に延長すべきだと考えております。
○小畑部会長 ありがとうございます。続きまして、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 私からも、6ページから7ページの遺族(補償)等年金について、若干の発言をさせていただきます。遺族(補償)等年金について、支給要件の男女差をなくす必要があるという方向性自体については、労使の代表の御意見が合致していると思いますが、具体的にどう解消するのかについては意見が別れており、おおむね労働者代表委員からは夫の年齢要件を廃して、夫にも妻と同様に、年齢を問わず終身給付を支給すべき、使用者代表委員からは、男女ともに遺族厚生年金のように、有期給付化することも検討すべきではないかといった御意見が示されているかと思います。
遺族(補償)等年金の給付内容のあり方を考えるに際しては、労災保険における遺族(補償)等年金の趣旨・目的をどう考えるか、労災保険が提供すべき公正な保護とは何なのかということを御検討いただくことが不可欠であり、その点について様々な御理解、御見解があるものと受け止めています。ただ、研究会の中間まとめでも指摘されていることではありますが、我が国では、労災補償と損害賠償を合わせて請求することが認められているため、民事損害賠償との関係を考慮することも必要になります。遺族(補償)等年金を有期給付化する、つまり給付を大幅に縮小するという場合、労働者側にとっては、給付が縮小された分を民事損害賠償で使用者に請求する負担が増えることになります。使用者側にとっては、保険給付と損害賠償が調整される部分が縮小されることになるため、保険を通じたリスク分散が働く部分が減ることになり、個々の使用者が直接損害賠償として負わなければならない責任が増えることになります。
ですので、その辺りのことも視野に含めた上で、この問題をどう着地させるべきなのか、労使の代表の御意見を伺いたいと思っております。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他は、いかがですか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。各論点に対する私の意見はこれまでの部会で述べたとおりです。資料2に適切に反映いただいていますので、本日、追加で要望する事項はございません。少し付け加えたい点を改めて強調したいのですが、それを申し上げる前に、遺族(補償)等年金の夫と妻の支給要件の差の解消方法や、長期給付の見直しについて御発言を頂きましたので、その点について少し補足させていただきたいと思います。
まず、生計維持要件について、白山委員から御指摘がございました。中間報告書では、この生計維持要件については家族や家計維持の在り方が多様化していることを踏まえれば、遺族(補償)等年金の制度趣旨の検討と合わせて、引き続き、専門的見地から議論を行う必要があるとされています。現在は、主に遺族が死亡労働者の収入によって消費生活の一部を営んでいた事実が認められれば、生計維持要件を満たすと理解しています。これを前提として、夫にも稼得能力の喪失の填補や、被扶養利益の喪失の填補という目的で給付することが適当かについては、共働き世帯の増加や、女性の就労増加をはじめ現在の状況に照らし、遺族(補償)等年金制度の趣旨・目的も踏まえ、専門的見地からの議論の積み重ねをお願いしたいと思うところです。福田委員からも、結論ありきではなく、考え方をしっかりと整理した上で検討が必要と指摘されたこと、私も同じように考えます。
それから、ただいま中野委員から御指摘いただいた民事損害賠償との兼合いも含めて検討することが必要との御指摘に関連して申し上げます。使用者側にとりまして、民事損害賠償額と相殺可能となる額が減少する可能性については、そのとおりかと思います。同時に、給付が有期給付化された場合であっても、企業にとっての影響はケース・バイ・ケースではないかと思います。仮に、夫の支給要件を妻に合わせる形で見直した場合には、民事損害賠償額のうち、妻の死亡に際してなされる給付と相殺できる部分が追加で出てくるケースもあろうかと思います。いずれにいたしましても、遺族(補償)等年金という制度が、死亡に対して、どの程度の手当をすることがふさわしいかについては、これまでの部会でも申し上げましたが、他の社会保障制度の状況も踏まえながら、制度の趣旨・目的の今日的意義に照らして議論をすべきであると思うところです。
それから、これまでの論点の中で、使用者側として特に重視する点について改めて申し上げます。事業主への情報提供の必要性についてです。まず、研究会の中間報告書では、労災保険給付の支給・不支給の決定の事実を事業主に提供すること。それから、労災保険率の決定の基礎となった保険給付に関する情報を特定事業主に提供することが適当と結論づけています。中間報告書は、学識経験者の先生方が議論を重ねた結果であり、特に事業主への情報提供については委員の意見が一致していますので、重く受け止めるべき提言だと考えています。
その上で、前回の発言と重複する部分がございますけれども、私どもとして情報提供を求める理由を2点申し述べます。1点目は、類似の労働災害の再発防止に資するからです。労働者の安全と健康の確保は事業者の責務ですので、労災の支給・不支給決定以前から、事業主として事業場内の災害を把握し、再発防止対策に取り組むことは重要です。ただし、業務起因性のない災害に対してまで、事業主が効果的な対策を検討・実施することは現実的ではありません。その意味で、労災の支給・不支給の情報や、支給決定の判断に至った理由について事業主に情報提供いただきたいと思います。取り分け、脳・心臓疾患や精神障害については、業務が主な原因となって発症したかどうかの判断が難しいケースが少なくありません。監督署がどのような判断をしたのか、理由を含む問合せに対する回答についても、請求人と同様の機会を保障していただきたく、御配慮をお願い申し上げます。
2点目は、手続保障の実効性の確保に必要だからです。あんしん財団事件の最高裁判決をどのように解釈するか、労使で見解の違いがあるようですが、手続保障に欠けない理由とされた、自己に対する保険料認定処分についての不服申立又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張できるためには、個別の労災保険給付に関する具体的な情報が必要です。そのような情報がなければ、不服申立てや取消訴訟の必要性を判断するのが困難となりますので、あらかじめ事業主に情報提供されるべきだと考えます。
先ほど、立川委員から消滅時効のお話もございました。これまでの発言の繰り返しとなりますが、労基法改正当時、消滅時効期間を維持する理由とされた早期に権利を確定させて被災労働者の救済を図る必要性、それから、早期の労災保険給付請求を通じた事業主の安全衛生対策、再発防止対策促進の必要性については、今なお、妥当すると思います。法改正に先立つ労政審の建議では、災害補償請求権や労災保険給付請求権の消滅時効の見直しに当たり、他の労働保険、社会保険を含め一体的に検討が必要であるとされております。研究会でも、労災保険特有の事情の有無も含めて統一的な見解を得るには至っておりません。その意味で、消滅時効期間の延長ありきではなく、ただいま述べた視点も含めて当部会において十分な議論が必要だと思います。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 ありがとうございます。皆様の御意見を伺い、私も給付関係で2つ意見を述べさせていただきます。まず、民事訴訟との関係は確かに考慮すべき問題ですが、労災補償が無過失責任であるのに対して、民事は過失責任ですので、完全に同一ではないことを忘れずに議論しなければいけないと思います。また、現在は労災でカバーする、保険でカバーできるというのはそのとおりですが、労働者に甚大な損害が発生し、かつ、使用者に非常に重大な責任がある場合には、使用者がそれなりに民事損害賠償責任を負うべきでないかと思います。労災でカバーすればよい、という考えだけではいけないと思います。
2点目は、遺族(補償)等年金に関して、遺族(補償)等年金の制度創設時と現在とでは、男性および女性の働き方も家族のあり方も大きく変わっていることは、疑いのない事実です。改めて、遺族(補償)等年金の役割、それから、どのような給付が適切であるかをしっかり議論することが必要と考えます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。最川委員、お願いいたします。
○最川委員 私のほうは、支給決定の通知の件、事業者に対する通知について、また強調させていただきたいのですが。先ほど、笠井委員からもありましたけれども、労働災害防止の観点からも、決定になったのかどうかというところは重要です。私も以前にお話したかもしれませんが、自分たちの現場の中で災害が起きたのかどうか分からないまま、監督署に報告され、業務起因性があったのか教えてもらえないまま、後にメリット制の還付金の金額で判断してくださいと言われ、1年後とか、そういうところで確認できたみたいな、何が悪かったのかも分からないまま支給決定されてしまうこともあります。特に現場で起きた災害であれば、再発防止をどうしていくかということは、どこの会社もやっていると思いますけれども、業務起因性がどうだったのかというところを通知していただいてその原因を潰していかないと、災害はなくならない。これは労使が同じところを目指していると思いますので、通知しないというメリットは、私はないと思います。
よくプレッシャーがかかると言われていますが、私の現場の経験では、支給決定された、されないというよりも、それを出す、出さないというか、例えば5号様式を出すとか、23号様式を出すとか、そういうところの話であって、出された後の支給決定にプレッシャーがかかるということは、検討会の報告書にも書かれていますけれども、ないと認識しているところですので、是非、支給決定のほうは、事業者に対しても情報提供していただきたいと強調させていただきます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。まず、12ページ以降のメリット制についての意見です。労働側としては前回部会でも発言したとおり、現状ではメリット制の災害防止効果や労災かくしを助長していないかという部分の検証が十分であるとは言い難いことから、「存続させることが妥当」とまで言い切れる状況にはないと認識しています。
その上で、災害防止効果という意味では、特にマイナスのメリット制適用事業場においては、その効果が判然としないと前回指摘したところです。使用者側委員から、13ページにもありますが、マイナスのメリット適用事業場はもともと被災労働者数がゼロであるために、被災者数を減らすことが一切できなことも考えられるとの指摘がありました。
これは正にそのとおりですけれども、だからといって、マイナスのメリット制の効果が証明されたというわけでもなく、そうした事業主は、たとえメリット制がなかったとしても被災労働者数がゼロであったり、災害防止に取り組んでいる可能性も考えられると思います。だからこそマイナスのメリット適用事業主については、効果が判然としないのではないかと申し上げたということです。
一方で、幾つか前提条件を付した上ではありますが、今回、プラスのメリット適用部分を中心に一定の効果があったということが確認されたことは事実として受け止めているところです。ただ、前回部会でも申し上げましたが、メリット制の廃止を求める声もあることを踏まえると、存続という結論ありきではなく、更なる検証を行いながら、労災かくしなどの懸念を払拭、是正することが必要です。こうした対応も含めて再度検証を行い、制度のあり方を検討することが必要であることを改めて申し上げておきます。
次に、先ほどから意見のある、資料14ページ目以降の労災決定事実や保険料算定基礎情報の事業主への伝達の部分について意見を申し上げておきたいと思います。
改めて申し上げますが、労働側としては、事業主への情報伝達は反対であるということを、明確にしておきたいと思います。使用者側からは手続保障や災害防止を講じる観点から、請求人に通知される情報と同じものを同じタイミングで教えてほしいという意見がございますが、何度聞いても、なぜ労災支給決定などの情報がないと再発防止を講じることができないのかということが、理解し難いところです。労災支給、不支給に関わらず、事故が起こった際には事業主として再発防止を講じること、少なくとも検討することは当然の責務だと考えているところです。
加えて、前回、使用者側委員から、メリット制適用事業主には障害等級や傷病等級に関する情報も含めて情報提供すべきという御意見もありました。しかしこの点は、障害等級は何級かといった労働者にとって非常に機微な情報がなければなぜ再発防止努力ができないのかということが全く理解できず、非常に疑問です。むしろ、使用者側からも発言がございましたけれども、事業主は労災保険給付の請求手続における事業主の証明欄の記載や、また監督署の調査への協力の場面を通じて、何らか労災請求があること自体は当然のことながら把握しているはずです。そうであるならば、その情報を基に、社内でどのような事故があったのかを調べて再発防止に努めること自体が筋であり、現行以上の情報伝達というものは不要ということを改めて申し上げておきたいと思います。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。まず、冨髙委員から御指摘がありましたメリット制と情報提供について、改めて申し上げたいと思います。メリット制につきましては、前回の部会で申し上げたとおり、使用者側としては、研究会で示されたメリット制の効果検証の結果は、制度に期待される効果を一定程度裏付けたものと認識しています。今後もデータが取得可能な範囲で効果検証を継続することには反対しませんが、研究会の委員の結論が一致する形で制度の存続と適切な運用を提言していることからも、メリット制自体の根源的な検討が必要な段階にはないと考えます。
それから、先ほど情報提供についても、事故が起こった場合には労災かどうかにかかわらず、事業者としては対応すべきとの御指摘がありました。確かに、事業者には労働者死傷病報告の提出義務もありますし、報告事項には災害の発生状況や発生原因も含まれますので、これらの情報をもって再発防止に取り組める場合もあろうかと存じます。しかしながら、死傷病報告は、「労働災害等」として就業中や事業場内、付属施設内における休業や死亡も対象としているように、報告の対象は業務上の災害に限られません。このうち、再発防止に向け事業主が適切かつ有効な対策を取ることが現実的なのは業務上の災害です。会社としては業務起因性がないと考える場合もあります。しかしながら、労災であるとして、業務起因性があるとして支給決定がなされたことが分かることは非常に重みを持つものですし、そのような決定がなされたということは、会社が判断するのではなく、ある意味で第三者による客観的な判断でもございます。そのような判断に基づいて業務起因性の有無や理由を確認することは、他の類似の災害防止を効果的に行うに当たり非常に重要だと考えます。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。小西委員、お願いいたします。
○小西委員 議論が少し戻るかもしれませんが、遺族(補償)等年金に関して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。まず、既に御議論があったかと思いますけれども、男女間の支給要件の差については解消するべきだと考えております。そして、その差の解消の方法については、研究会の中間報告書では、夫に課せられた支給要件を撤廃することが適当であるとの意見が太宗を占めたとされていて、具体的には生計維持関係が緩やかに認定されているという実務を踏まえると、パートタイムの妻を亡くした夫にも被扶養利益の喪失が認められることから、被扶養利益の喪失は、妻を亡くした夫にも認められ得るという意見があったり、あとは、遺族(補償)給付等を被災労働者の得べかりし賃金の代替物と見るならば、生活保持義務関係にある配偶者には、その賃金によって支えられた共同生活が続いた期間は支給すべきであり、年齢要件は不要とする意見というのがあったところです。
この点につきましては、被扶養利益の喪失の補填という遺族(補償)等年金の制度趣旨を踏まえますと、男女ともに年齢等の要件を設けず、夫に課せられた支給要件を撤廃するという選択肢を取っていくことがいいのではないかと考えています。それと併せてですが、将来的には、遺族(補償)等年金の制度趣旨を踏まえて、遺族(補償)等年金制度全体の在り方について、引き続き議論を行っていくことが必要ではないかと考えている次第です。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。特にございませんか。では、意見は出尽くしたと受け止めさせていただきます。皆様、御意見を頂きまして誠にありがとうございました。
事務局におかれましては、本日の議論を踏まえて整理をして、次回以降の資料に反映していただくようにお願いいたします。それでは、本日予定した議題は以上となりますので部会は終了といたします。事務局より次回の日程についてお知らせをお願いいたします。
○労災管理課長 次回の日程につきましては、事務局より追って連絡させていただきます。
○小畑部会長 本日は以上といたします。皆様、お忙しい中、誠にありがとうございました。
本日の委員の出欠状況ですが、金井委員、松尾委員、足立委員が御欠席と伺っております。出席者は現在15名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がありますので定足数を満たしていることを御報告いたします。カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
それでは、議題に入ります。1つ目の議題は、「特定フリーランス事業にかかる特別加入団体のヒアリングについて」です。本日は、フリーランス保険組合の団体からのヒアリングを予定しております。まずは資料についての御説明を頂いた後に、質疑応答に入りたいと思います。それでは、フリーランス保険組合の竹内様、御説明をお願いいたします。
○フリーランス保険組合 ありがとうございます。フリーランス保険組合の副理事を務めております竹内と申します。本日は、このような機会を賜り、厚く御礼申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、当組合における特別加入制度への取組について、資料を基に御説明をさせていただきます。次のページを御覧ください。本日の御説明は、会社概要から今後の予定まで、全12項目に沿って進めさせていただきます。
1ページを御覧ください。当組合の本部は愛知県にあります。現在、厚生労働省のホームページで公表されております承認団体の中では最も西に位置する団体となっております。
2ページをお願いします。経営理念です。当組合は、母団体を含むグループ共通の理念として「関わるすべての人、会社を幸せにする」を掲げております。この理念に基づき、「三方良し」という考え方を重視しております。三方とは、第一に、買い手良し。加入者様が安心できるか、すなわち、お客様の視点に立つこと。次に、世間良し。社会にとって有意義であるか、これは行政役所の皆様方に御理解いただくことができるかです。そして最後に、売り手良し。私どもが満足できる仕事であるか、これは私どもの立場を表しております。この考えに基づき、社会全体の円滑な運営に貢献できるよう努めてまいります。
次のページをお願いします。私どもの価値観、すなわちValueとしては、必要なときに、必要なものを、必要なだけ提供することを基本としております。加入者様にとって不必要なサービスや負担は提供しない方針です。
4ページをお願いします。母団体及び設立背景です。当組合の母団体は、建設業の一人親方を対象とした特別加入団体「RJC」です。平成4年に建設業に特化した社会保険労務士事務所を開業し、その後、平成11年に特別加入団体としての活動を開始いたしました。母団体の会員数は、2005年8月末時点で延べ約7万5,000人となっております。フリーランス保険組合では、当面の間、事務手数料を徴収せず会費のみで運営を行ってまいります。
設立背景としては、私たちは33年以上にわたり、建設業及び建設業に従事する一人親方等を対象とした労災保険団体として活動してまいりました。その過程で、建設業に該当しない業務、例えば造船・樹木の剪定・ハウスクリーニング・設備の定期点検・除草・販売といった業務に従事される方が多数存在するという実態に直面いたしました。これらの業務は建設工事には分類されないものの、高い労災リスクを伴い、保険加入の必要性が極めて大きい領域です。これまでも私たちは、こうした方々に対し、災害防止や安全対策に関する啓発活動を継続して行ってまいりました。こうした背景を踏まえ、建設業には限定せず、幅広いフリーランスの方々が安心して業務に従事できる環境を整備する必要があるとの考えから、本組合を設立いたしました。
5ページをお願いします。次に、当組合の相談体制について御説明させていただきます。当組合の相談体制は、主に3本の柱を特徴としております。1点目は、電話対応の充実です。他団体様の中にはメール等でのやり取りが中心で、電話対応が限定的なケースというのも見受けられるようです。当組合では、平日フリーダイヤルでの電話相談を積極的に受付けております。スタッフは20名以上が常駐し、全員が特別加入制度に関する教育研修を修了しております。フリーランスの特別加入制度は新しい制度であり、業務内容の聞き取りや加入者様からの御質問のニュアンスがメールでは伝わりにくいといった課題が生じています。そのため、現在は多くの方からお電話にての問合せを頂いている状況です。
2点目は、オンライン体制についてです。24時間お見積りからお申込み、お支払までを完結できるシステムを構築しております。公式サイトのよくある質問も充実させ、公式サイトからメールでお問合せを頂いた場合は担当者が確認の上、メール又はお電話にて御対応させていただいております。
3点目が、全国47都道府県での面談対応の実施です。シェアオフィスを活用し、完全予約制にて個別面談に対応していきます。面談の御希望がありましたら、担当者が出向くか、又はZoom等のオンラインで対応させていただいております。特別加入制度に関する説明会についても、御要望があれば出張形式での説明会を実施する予定です。
次のページをお願いします。先ほども申し上げました対面での対応について詳細に御説明いたします。全国1,000か所以上の拠点を持つシェアオフィスを活用し、加入希望者様の御都合に合わせた場所で面談対応を可能としております。
次のページをお願いします。シェアオフィスに加え、愛知の本部事務所を含めて各本部事務所においても、予約制での面談が可能となっております。
8ページをお願いします。現在の加入状況等について御報告申し上げます。令和7年9月30日時点の状況は、申請済みの方が120名、労働局より承認を確認している方が89名、電話等による問合せの総件数は756件となっております。職種別の加入者の内訳を見ますと、製造・生産・組立関連が20%、次に清掃業が17.1%、設計技術系が15.7%と続いております。傾向としては、母団体が建設業の一人親方様が多いことから、建設業に付随するこれまで労災保険の対象となり得なかった業種が多くなっていることが特徴です。
次に、右の都道府県別グラフです。本部所在地の愛知県が25%を占めております。その他は首都圏に偏ることなく、全国各地から広く御加入いただいている状況です。
次のページをお願いします。お問合せから各段階において加入希望者様等をどのように支援しているかについて御説明申し上げます。まず、お問合せの段階です。先ほども申し上げましたとおり、電話でのお問合せを大変多くいただいております。自分の業種がフリーランス労災保険の対象となるかといった御相談がやはり多いです。また、フリーランス御本人様だけではなく、業務を委託される事業者様からの問合せも多く、「これから業務委託をお願いするが、会社が労災を掛けるのか」などの多岐にわたる質問が寄せられております。私どもはお話を詳細にお聞きした上で、フリーランスの労災保険を御案内するか、あるいは同グループ内の事務組合、建設業の一人親方団体、ITフリーランス団体、その他適切な別団体様を御案内するようにしております。電話での記録は、クラウド型のCRMツールを用いて管理しており、過去の記録を迅速に確認し、適切な団体へ御案内を可能としております。
次に、加入のお手続についてです。オンラインにてお見積りからお支払までを完了できる体制を整えております。手続完了時には、メールにて加入証明書をPDF形式で発行させていただいております。今後は、マイページでの証明書発行を準備し、再加入や脱退のお申込みも全てオンラインで完結できるよう更なる加入者様の利便性の向上に努めてまいります。加入時には、これからフリーランスとして独立するという御相談も頂くことが多くあります。その際には、適宜、業務委託契約書や請求書等のひな型を提供して支援を行っております。
次に、更新時のお手続についてです。更新時にも、加入時と同様に再度、業務委託の契約書を御提出いただく予定です。また、更新対象者には転倒防止に関する注意喚起として、タオルと災害防止に関する御案内を送付しております。更新時には、メールマガジン等でのリンククリックやQRコードのエンゲージメントを計測し、災害防止教育の受講確認を行ってまいります。
最後に、労災申請のサポート体制についてです。同グループ内の社会保険労務士チームが有料にて対応しております。元厚生労働事務官をアドバイザーとして常駐していただいており、書類作成や申請等の代行を行っております。主な業務は、労災申請書類の作成、申請後の給付状況の確認などです。御自身で申請されたいという方には、団体証明員の押印は無料で対応をしております。
次をお願いいたします。母団体を含むこれまでの活動実績について、お話させていただきます。母団体のRJCでは、建設業の一人親方を対象にアンケートを実施し、建設業以外に行っている特定フリーランス事業について御回答いただきました。右側の円グラフがアンケートの事業の内訳です。保守点検が14.2%、修理業務が9.6%、樹木の剪定伐採・管理が8.5%と続いております。この建設業以外の特定フリーランス事業も行うと回答された方の中には、最長で20年間一人親方労災保険に加入している方も含まれております。母団体では、これらの方々を含め、設立当初より延べ7万人以上に対して建設業及び複数業種にわたる災害防止の啓蒙活動を継続して実施してまいりました。
次をお願いいたします。次に、フリーランス保険組合としての直近の活動実績について御説明いたします。まず、会員向けの活動です。オンラインでの質疑応答可能な形式で、今年は6月に災害防止研修を実施いたしました。内容としては、最も多い災害事例である転落・転倒を中心に、業種ごとの「あるあるの災害事例」を紹介しております。6月の参加者は2名でしたが、今後もオンライン研修は継続して実施をしてまいります。研修にされなかった会員の方には、メールにてスライドのリンクを配布していく予定です。その他、毎月のメールマガジンにて安全対策などを配信しております。
次をお願いいたします。次の直近の活動実績は、会員ではない一般の受託事業者・業務委託事業者に向けての活動です。お問合せの多い業種を主眼にランディングページの公開を進めております。フリーランスの労災保険は特に業種の幅が広いため、個々の職種に寄り添った加入促進がより一層必要であると考えております。SNSとも連動させ、職種ごとに広告によるPR活動を行っております。フリーランスの方々はホームページを持たず、インスタグラムなどで自社サイトを兼ねているケースも多く見受けられ、インスタグラムとの親和性は高いかと感じております。
また、商工会様からは、「これはどのような保険ですか」というお問合せを多くいただきます。商工会の方々も、フリーランスの方から御相談を受けても制度自体を知らなかったり、フリーランスの保険に該当される業種なのか分からないという御相談が多く寄せられております。こうした状況も踏まえて、全国の商工会・商工会議所様にフリーランスの労災保険制度に関する御案内の配信も実施しております。
次のページをお願いします。最後に、今後の予定についてお話をいたします。組合の今後の活動予定については、年間スケジュールとして計画し、着実に進めてまいりたいと存じます。オンライン研修は年間2回の実施を予定しております。商工会・商工会議所の会員様向けの会報にPR広告を掲載するなど、まずは、この新しいフリーランスの労災保険制度の周知を積極的に図ってまいりたいと存じます。ホームページでのマガジン記事や会員向けメールマガジンを通じて、フリーランスの方に役立つ最新情報を随時発信してまいります。内容としては、労災防止や安全衛生のポイント、制度改正や手続方法など日々の業務に直結する実用的な知識を提供してまいります。
当組合の災害防止教育は、製造業、メンテナンス、造船、清掃業のフリーランス加入者が多いという特性を考慮し、現場での実用性に沿った内容としています。具体的には、転落・転倒などの具体的事項例を用いた教育を核とし、安全意識低下の主要因となり得る熱中症や過重労働の予防を教育に組み込むことで、フリーランスの方々の自己管理能力と災害防止能力の向上を図ってまいりたいと思います。
最後ですが、私たちフリーランス保険組合は、「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」をモットーに、承認申請から加入希望者の審査、災害防止啓蒙活動まで誠実かつ公正に取り組んでまいりました。今後も透明性の高い運営を継続し、フリーランスの皆様の安全と安心を守ることを使命としてまいります。本日は、このようなお時間を頂きました厚生労働省の御担当者の皆様、そして労災保険部会員の委員の皆様に心より感謝申し上げます。御清聴いただき誠にありがとうございました。以上となります。
○小畑部会長 竹内様、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして御意見、御質問等がありましたら、会場からの委員におかれましては挙手を、オンラインから御参加の委員におかれましては、チャットのメッセージから発言希望と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡をお願いいたします。いかがでしょうか。立川委員、お願いいたします。
○立川委員 御説明ありがとうございました。私からは、団体の安定的な運営の観点から質問させていただきたいと思います。まず、4ページを見ますと、「当分の間、事務手数料は徴収せず会費のみで運営」との記載があります。災害防止教育の実施も含めまして、安定的に団体運営を行っていくためには一定のコストが掛かるため、コストに見合った収入源を確保していくことが重要だと思うところです。
そういう意味で、会費等はどの程度徴収しているのかをお聞かせいただきたいと思います。また、貴団体としまして、当分の間は無料としている事務手数料の収入のあり方を含めまして、安定的な団体運営のための財政の見通しについて、どのように考えておられるのか、会費を納入する会員の増加予測も含めまして、お考えをお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問を頂き、ありがとうございます。会費について御質問いただきました。御説明をさせていただきます。まず、現在の当組合の会費につきましては、12か月間で1万2,000円という設定をしております。そのほかに掛かる費用は保険料のみとなります。
御存じのとおり、当組合は非営利団体であり、当分の間、事務手数料は徴収しておりません。運営資金はその会費のみで賄っております。安定的な運営のために、今年度は既に会員が100名を超えており、現状では会費収入で十分な健全な運営が可能です。母団体の基盤がしっかりしておりますので、人的リソースも確保できていることから、安定した体制を維持できるのではないかと想定しております。
もう1つ頂きました、今後の会員増加の見通しについてです。見通しについては、まだ具体的な数値というのは、目標をこれから定めるところでございます。ただ、今年のペースを見ている限りは、まだまだフリーランスの方からのお問合せの件数や企業様からのお問合せのお話をお聞きする限り、需要がまだまだあるのではないかと感じております。以上となります。
○小畑部会長 よろしいでしょうか。
○立川委員 会員が100名で年会費が1万2,000円ということなので、収入総額はすぐ計算ができます。専任のスタッフが20名いるというお話がありましたから、現状の収入額で本当に安定的に運営できるのかという点について、疑問に思ったところです。
○小畑部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。他はいかがでしょうか。最川委員、お願いいたします。
○最川委員 西松建設の最川と言います。御説明ありがとうございました。私も、今、立川委員がおっしゃられたとおりだと思うのですが、私も感覚的に、20名スタッフがいて、会員が今100名ですかね。母体のRJCは安定していると思うのですけれども。その20名のスタッフは、そのほかの仕事を兼務されていて、その一部の仕事として、この仕事をやられているのか、この100名の会員の保険料と会費で、今後も運営されていくのかお聞きしたかったのですが、よろしいですか。
○小畑部会長 お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきありがとうございます。20名のスタッフにつきましては、フリーランスの保険だけを専任としているわけではなくて、母団体のRJCのほうも兼任しております。フリーランスの方からのお問合せも頂く中で、どうしてもフリーランスだけ、建設業の一人親方だけというふうにスタッフを切り離してしまうと、お客様の話を聞いたときに、そちらは建設業のお仕事もされるし、フリーランスのお仕事もされるのであれば、両方の御加入をお勧めしますというお話ができなくなりますので、今のところは兼任を行っております。
○小畑部会長 最川委員、よろしいでしょうか。
○最川委員 ありがとうございます。ただ、気になるのは今回のフリーランス保険組合が、もしRJCと切り離してフリーランス保険組合はやめましょうという話になったときに、それが、RJCがそのまま引き継いでいただけるのか。フリーランスの100名の方の会費というのは、具体的に言うと、1年分の会費を払いましたと。2か月ぐらいたって、保険組合は成り立たないのでやめましょうとなったときに、残りの10か月分はRJCで引き継いでもらえるのか、そういう体制が整っていればいいと思うのですけれども、どうお考えなのでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、いかがでしょうか。
○フリーランス保険組合 御意見を頂きましてありがとうございます。同じグループ団体と考えておりますので、切り離すというわけではなくて、フリーランスのほうもRJCのほうできちんと行っていくという方向でおります。
○小畑部会長 ありがとうございます。最川委員、よろしいでしょうか。
○最川委員 すみません、何度も申し訳ないのですけれども。新たに、このフリーランス保険組合というのを立ち上げるメリットは何なのかなと思いまして。母団体でそのままやれないのですか。母団体がそのまま業種を増やして、フリーランスを受け入れるというのはできないのでしょうか。そのフリーランス保険組合を立ち上げる意味合いというか、将来像みたいなものがないと、例えば将来は1万人を目指しているのでやっていきましょうというところなのか。今お話を聞くと、100名ぐらいで成り立っていますというお話だったので、ちょっと不安になってしまったのですけれども、その辺をお聞かせいただければと思います。
○小畑部会長 竹内様、お願いします。
○フリーランス保険組合 御質問ありがとうございます。フリーランス保険組合の展望としては、今後、もちろん加入者を何万人単位で増やしていきたいと考えてはおります。そのために、別の組合として承認を申請し、今回頂いております。当分の間、事務手数料を徴収しないという方針については、制度開始の今は、当初の加入促進及び事務手続の円滑化を目的として、今も事務手数料を徴収しないという方針ではおります。ただ、今後、理事会で組合運営の実情を踏まえながら適時、適切に判断してまいります。一方で、今後、同様の取組を行う団体の新規参入が見込まれますので、その中には、もっと会費を極端に下げるとか、そういった持続的な運営が難しい価格設定を行うケースも想定はされます。そのような状況が広がると、当組合の会員数、提供のメリットにも影響が及びますので、今後、ほかの組合さんや市場を注視しつつ、事務手数料の在り方や会費の在り方、持続可能性について理事会で慎重に検討してまいりたいと思います。
○最川委員 御説明ありがとうございました。とにかく安定的に継続していただけることが一番だと思っていますので、母団体はしっかりしているので、その辺は最初、心配していなかったのですけれども、長い安定的な運営を是非お願いいたします。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。13ページの直近の活動実績を拝見いたしました。災害防止対策として、脚立からの墜落・転落、カッターでの切創、転落・転倒の防止に注力されたものと認識いたしました。また、15ページの今後の予定では、加入者の特性を考慮して現場の実用性に沿った内容の災害防止教育を実施しているとの記載も頂いており、特別加入団体として実効性ある災害防止対策に取り組んでいる御様子を伺えたものと思います。非常に重要な取組だと感じます。
そこで質問です。現場の実用性に沿った災害防止教育を提供する前提として、加入者の災害情報を収集・分析する必要があろうかと存じます。特別加入団体として、どのように災害情報を把握しているのか教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。フリーランス保険組合での災害状況の分析等は今後、必ずやっていかなければいけない業務だなと考えております。ただ、まだ労災の実例の件数が1つもございません。今後、労災事故が発生した場合、必ず当組合に、まずは加入者様から御連絡を頂くこと、そして、どういった状況で、どういったおけがをされているのかというデータをツールにきちんと保管して、今後の啓蒙活動に活かしてまいりたいと考えております。
○小畑部会長 笠井委員、よろしいでしょうか。
○笠井委員 ありがとうございます。是非そのようなツールの開発を含めた取組を進めていっていただければと思います。
今後の労災保険制度の見直しの議論にも関係する点でもありますが、今後のヒアリングの仕方について改めて申し上げたいと思っております。これまでヒアリングに対応した団体は承認後であったと理解しております。ヒアリングの実効性を高める観点からは、労働局長の承認よりも前の時期に実施いただくとともに、各団体による説明事項を統一いただくことも改めて要望したいと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 ありがとうございます。白山委員、よろしくお願いいたします。
○白山委員 御説明ありがとうございました。私からも災害防止教育についてお伺いをしたいと思います。資料の中の「11-1 直近の活動実績」にも記載がありましたけれども、2025年6月に開催した災害防止研修の参加者は2名であったと御説明いただきました。
研修不参加の方に対しては、メールで資料のリンクなどを配信しておられるという御説明もありましたけれども、やはり研修参加者の拡大ということも大事であると思っております。これまでヒアリングを行った特別加入団体にも共通する課題であると思いますが、加入者の方々に災害防止研修をきちんと受講していただくことは災害防止の意識や気付きを促していく意味でとても重要です。そうした中、受講者が少ないことは課題であると感じております。この点、貴団体として災害防止研修の受講者拡大に向けて検討している方策などがありましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○小畑部会長 竹内様、お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。2025年6月に実施した災害防止教育の参加者は、2名にとどまりました。当組合でも、加入者の災害防止教育への意識が十分に高まっていないなというのは課題として認識しております。今後の取組としては、開催日時の柔軟化、平日の日中ではなく、夜間の時間帯や土日の開催の検討もしていかなければならないと感じております。また、これまでどおりオンラインでの受講機会を進め、参加しやすい環境を整えてまいりたいと思います。さらに、受講状況を確認した上でフォローアップ・メールを送信する場合、重要なポイントや受講のメリットを簡潔にまとめた本文を添えるほか、あとは理解確認テストなど、ちょっと見てみようかなと思ってもらえるような工夫をしてまいります。
ただ、やはり現状の課題としては、周知をしてもなかなかフリーランスの皆様の災害防止意識は依然として低いままです。これが、民間の障害保険や生命保険会社などでは業務災害防止の啓蒙活動というのは特に行われていないという背景もあり、保険が補償を受けるものというような意識が強く、教育や啓蒙活動を行うこと自体が、同じ保険でも特異なような取組に見えるのかもしれません。また、建設業のように現場での安全教育が日常的に行われている業界とは異なり、フリーランスの方々は、自分が安全教育を受けなければならないという実感を持ちにくい状況があります。こうした点からも、啓蒙活動を行っても行動変容に結び付かないという難しさを感じております。実際、こうした課題が当組合の理事会でも議題に上がっており、どこまで啓蒙していくか、どのような形で意識を高めていくかを議論を重ねております。ほかの組合さんでも、承認前から300回以上セミナーを実施しているにもかかわらず、加入者さんが10名以下にとどまっている例があるなど、ほかの組合さんでも同様の課題が見られます。私たちとしては、将来的に当組合が数万人規模の加入者を擁するようになった際に、こうした安全教育の取組が標準的なモデルになるよう努めていきたいと考えております。そのためにも、今後、安全教育を推進する上での課題につきましては、有識者の皆様方の知見を是非、伺いたいと考えております。
○小畑部会長 白山委員、いかがでしょうか。
○白山委員 ご回答ありがとうございました。団体として御苦労されているということは理解できましたが、引き続き周知活動も含めて受講者拡大の取組を続けていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○小畑部会長 ありがとうございます。他はいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 竹内様、本日はどうもありがとうございます。今の御質問、御回答とも少し関連しますが、09の各支援体制で、災害防止教育の受講率の計測をされようとしていることが印象的でした。これは既に母団体で行っておられるのか、もし母団体で行っておられるのであれば、受講率が極めて低い方にどのように対応されているのか教えていただけますでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、お願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。受講率の計測につきましては、フリーランス保険組合ではこれからの実施となります。母団体では、既に実施しております。大体、メールマガジンなどで安全教育の配信をさせていただいて、リンクの計測を測ると、5~10%の方に御確認いただいていることは分かっております。ただ、やはり時間帯や業種によっては、見られる率が低いものもございます。どういった業種の方がなかなか見ていただけないのかとか、どういった時間帯に見ていただけるのかという分析を重ねて、それをフリーランス保険組合のほうにも反映をさせていきたいと考えております。
○水島委員 ありがとうございます。すみません、もう1つ質問があるのですが。労災防止と直接関わるものではないのかもしれませんが、フリーランスの方は、その特性ゆえにハラスメントの被害をより受けやすかったり、またメンタルヘルス対策について特別の配慮が必要だったりするかもしれません。こうしたことに対する取組が、もしありましたら教えていただけますでしょうか。
○小畑部会長 竹内様、お願いします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。メンタルヘルスに関する啓蒙というのは、まだ行ったことがございません。これから組合の中で勉強も重ねて、安全教育の議題の中に入れ込んでまいりたいと思います。
○小畑部会長 それでは、岩﨑委員、お願いいたします。
○岩﨑委員 御説明、ありがとうございました。私からは、資料の左肩の05~07の相談体制について御質問させていただきます。まず、05のページの一番左の「フリーダイヤル電話対応」の部分で、「20名以上の専門スタッフが常駐」し、「特別加入制度の教育を修了したスタッフが対応している」との記載があります。まず、この特別加入制度の教育というものが具体的にどのようなものかをお聞かせいただきたいと思います。
次に、先ほどの最川委員の御質問の答弁にもあったと思いますが、20名の専門スタッフの方は、フリーランス保険組合専業ではなく、建設業の一人親方やITフリーランスの方々の特別加入の相談にも対応していると理解しているところです。フリーランス保険組合以外の相談に対応されている中で、相談体制について特段の支障が生じているということはないのかということについても、併せてお聞かせをお願いします。よろしくお願いします。
○小畑部会長 よろしくお願いいたします。
○フリーランス保険組合 御質問いただきましてありがとうございます。まず、1つ目に御質問いただきました、特別加入制度の教育について御説明をいたします。こちらは、特に当組合独自の教育を行っております。まずスタッフの方には、入社後3か月間は、特別加入に関する勉強会、テスト、研修を行っていただきます。さらには、電話対応のスキルの勉強会などもOJT、OFF-JT合わせて行っております。
次に御質問いただきましたのは、スタッフが複数の団体の兼任をしている点で支障がないかという点です。やはり、お客様からお問合せを頂いて、これはフリーランスの保険に該当する従業員を雇っているのかいないのか、もちろん幾つか迷うところはたくさん出てきます。やはり迷ったときには都度、労働局のほうに御相談をさせていただいて、また、労働局の御回答を社内で共有することで、更にスタッフの知識も上げていくように今努力をしているところでございます。
○小畑部会長 岩﨑委員、よろしいでしょうか。
○岩﨑委員 ありがとうございます。今後も様々な事案等もあるかと思いますけれども、適切な相談対応ができる方向での体制づくりを期待しております。ありがとうございました。
○小畑部会長 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。フリーランス保険組合の竹内様、御対応いただきまして誠にありがとうございました。本日はお忙しいところ、御説明を賜りまして、質疑応答でも丁寧にお答えいただきまして感謝申し上げます。ありがとうございました。この後は、御退席いただいて差し支えございません。ありがとうございます。また、委員の皆様におかれましては、本日お聞きした内容につきまして、今後の議論の参考にしていただければと存じます。ありがとうございました。
○小畑部会長 それでは、続いて議題2に移ります。議題2は、労災保険制度の在り方についてです。事務局より、御説明をお願いいたします。
○労災管理課長 それでは、資料2を御覧ください。第119回から121回までの労災保険部会における委員の主な御意見をまとめています。まず、1の適用関係です。(1)家事使用人に係る論点です。論点①の労災保険法を強制適用することについて、労働者代表委員からは、強制適用の対象とし、労災保険法の保護を受けられるようにすることが重要である。使用者代表委員からは、制度を知らずに特別加入していない人もいる。現行制度の周知・広報に注力すべきという意見がありました。
また、論点②の運用上の課題について、労働者代表委員からは、労働保険事務組合等の仕組みも活用して前向きな制度設計を行っていくべき。使用者代表委員からは、技術的な課題の整理も必要という意見がありました。
続いて、(2)暫定任意適用事業に係る論点です。論点①の労災保険の強制適用について、労働者代表委員からは、強制適用していくべき。使用者代表委員からも、強制適用していくことに賛同という意見がありました。公益代表委員からは、強制適用することに賛成。農林水産事業者の理解に加え、事業者の把握や保険料徴収上の課題を具体的に検証していくことが必要で、それに当たっては農林水産業界の団体の方から御意見を伺う機会を頂きたいという意見がありました。
続いて、(3)特別加入制度に係る論点です。論点①の特別加入団体の承認や取消しの要件を法令上明記すること等についてですが、労働者代表委員からは、法令上明記することに賛成。特別加入者が、団体の承認取消しによって突如無保険になったり、納めた保険料や手数料の払戻しが受けられなかったりといった不利益を被らないよう、法令化とセットで労働局のフォローアップの仕組みも検討いただきたい。使用者代表委員からは、承認や取消しの要件を法令上明記することと、承認の取消し等に先立って段階的な手続を設けることの双方に賛成という意見がありました。
論点②の特別加入団体に災害防止措置を求めること等について、労働者代表委員からは、法令上の根拠を設けるべきで、特別加入団体の役割について加入者の審査を行う義務を法令に明記する必要がある。使用者代表委員からは、特定フリーランス事業に係る特別加入団体以外の団体にも、災害防止措置に関わる役割や要件を求めるとともに、法令的根拠を求めることに賛成という意見がありました。
次に、6ページ、2の給付関係です。(1)遺族(補償)等年金に係る論点についてです。論点①の遺族(補償)等年金における夫と妻の支給要件の差の解消についてですが、労働者代表委員からは、夫婦間の支給要件の違いを解消することが当然である。解消の方法としては、夫のみに設けられている要件を撤廃するのが適当ではないか。使用者代表委員からは、支給要件の夫と妻の差を解消することは社会通念から言えば当然のことである。ただし、それに当たり、夫の支給要件を撤廃するという結論を単純に導くのは適切ではないという意見がありました。
7ページの論点②の給付期間についてです。労働者代表委員からは、現行の長期給付については、遺族(補償)等年金の目的である「被扶養利益の喪失の補填」をどのように考えるかということに直結すると考えており、短期間で結論が出るものではない。まずは夫婦間の要件の差を是正することに注力すべき。使用者代表委員からは、遺族(補償)等年金の長期給付の妥当性を検討すべき時期が来ていると考えるという意見がありました。
論点③の特別加算についてです。労働者代表委員からは、妻のみに加算を設けることは合理性がないと考える。また、高齢の妻以外にも障害のある遺族や子供のみの場合の生活困窮度は高いと考えられ、政策的に適切なのか疑問である。今回の見直しでは、夫と妻の格差解消に留まらず、対象範囲を拡大する方向で見直していくべき。使用者代表委員からは、特別加算制度は廃止が妥当であるという意見がありました。
続いて、(2)遅発性疾病に係る労災保険給付の給付基礎日額に係る論点です。論点①について、労働者代表委員からは、発症時賃金を原則とし、発症時賃金がばく露時賃金より低くなる場合は、ばく露時賃金を用いる方向で見直すべき。使用者代表委員からは、ばく露時より発症時の賃金が高くなった場合に、給付基礎日額の算定に発症時賃金を用いるのは、労災保険給付が生活保障であるという立場に立てば理解できる。しかし、その立場に立ったとき、ばく露時より発症時の賃金が低くなった場合に敢えて、ばく露時賃金を使うのは、同じ生活保障の考え方から説明することが困難という意見がありました。
論点②について、労働者代表委員からは、退職後の発症の取扱について詳細な検討が必要である。労働基準法第12条第8項に基づき発出されている通達の考えに照らせば、ばく露時賃金と推認される発症時賃金を比較して高いほうを取るという方法も考えられるのではないかという意見がありました。
続いて、(3)消滅時効に係る論点です。論点①の見直しの要否、論点②の見直す場合の方策について、労働者代表委員からは、早期に解決すべきであり、5年に延長することが当然である。使用者代表委員からは、消滅時効期間の延長ありきではない十分な議論が必要。仮に消滅時効期間を見直すのであれば、相応のエビデンスの存在が前提となるべきであるという意見がありました。
論点③の労災保険特有の事情について、労働者代表委員からは、労災保険は業務遂行性・業務起因性の観点があり、外形的な事実だけでは容易に判断できない。使用者代表委員からは、社会保険制度が様々ある中で、制度によって消滅時効期間が異なることのデメリットもあるのではないかという意見がありました。
続いて、12ページの(4)社会復帰促進等事業に係る論点です。論点①の特別支給金等の処分性を認めることについて、労働者代表委員からは、処分性を認め、被災労働者に審査請求の機会を保障すべき。論点②の労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすることについても、こちらも労働者代表委員からは、社会復帰促進等事業の審査請求も労働保険審査官及び労働保険審査会法の対象とすべきという意見がありました。
3の徴収等関係の(1)メリット制に係る論点についてです。論点①のメリット制の意義・効果について、労働者代表委員からは、研究会で検証は一定程度行われたが、十分とは言えない。労災かくし等につながっていないということの検証も不十分。そうした中で、「メリット制は存続させ、適切に運用することが適当」と結論づけることは時期尚早である。改めて、詳細な分析を行った上で、根源的な検討を行う必要があるのではないか。使用者代表委員からは、研究会で示されたメリット制の検証結果について、事業主の負担の公平を図ること、事業主の自主的な災害防止努力を促進することについて一定の効果を裏付けるものと認識している。中間報告書の結論に従い、メリット制を適切に運用し、存続させるべきであるという意見がありました。
論点②について、使用者代表委員からは、原則として発症時賃金を用いるとした場合、研究会報告書のとおり、有害業務への従事が行われた最終事業場に対するメリット制の適用において、被災労働者のばく露時賃金を基礎とした給付のみを加味すべきという意見がありました。
続いて、(2)労災保険給付が及ぼす徴収手続の課題に係る論点です。論点①の支給決定(不支給決定)の事実を、事業主に対して情報提供することについて、労働者代表委員からは、事業主に対する情報提供は慎重であるべき。被災労働者等に対する不当なプレッシャーを与えることが懸念される。使用者代表委員からは、労災保険の支給、不支給の情報は労働災害の再発防止に必要な情報であり、保険料を事業主が全て負担していることからすると、労働者に通知されている情報と同じ情報を同じタイミングで全事業主に通知すべきという意見がありました。
論点②のメリット制の適用を受ける事業主に対して、労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報を提供することについて、労働者代表委員からは、メリット制適用事業主に、労災保険給付に関する情報を伝えることは問題が大きく、労側としては情報提供自体に反対。労働者にとってはセンシティブな情報が含まれていることから、労災請求をためらってしまうことにもつながる。使用者代表委員からは、メリット制で労災保険率の算定の基礎となった労災保険給付に関する情報が提供されないのは、保険料の負担者としては是認し難い。メリット制の影響を受ける企業側の立場として、当然にして情報提供はされるべきであるという意見がありました。
以上、部会における委員の発言のポイントについて説明いたしました。事務局からの説明は以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。資料2につきまして、前回までの部会で頂いた御意見を論点ごとにお示しいただいております。こちらにつきまして趣旨を補足したい、修正したい、あるいは追加したいということがありましたら、御意見をお願いいたします。白山委員、お願いいたします。
○白山委員 ありがとうございます。私からは、資料6ページの給付関係の(1)遺族(補償)等年金に係る論点について意見を申し上げたいと思います。まず、夫婦間の支給要件は当然解消すべきです。解消の方法としては、夫に設けられている要件を撤廃して、妻に合わせることが適当と考えております。この点は、使用者側委員の方からは、資料にあるとおり、支給要件の撤廃自体について異論はないということでしたが、解消の方法については生計維持という点に着目しており、妻に「55歳以上または一定の障害状態にある」という夫の要件を課すことも排除すべきではないという意見が示されております。
この意見については、労働側としては賛同できません。
遺族(補償)等年金は、死亡した夫婦生活を支えていた被災労働者の収入が途絶えたことに対する填補という目的がありますので、この目的は妻だけでなく、夫にも共通しますし、年齢で区切られるものではないと考えます。したがって、夫婦間の支給要件の違いの解消方法につきましては、夫の年齢要件を撤廃して妻に合わせる形とするべきという点を改めて強調したいと思います。
もう1点、7ページの論点3の特別加算についてです。この論点については、使用者側委員から妻のみを対象とする特別加算も廃止が妥当という意見が出されておりますが、特別加算の趣旨・目的を踏まえれば単純に廃止すべきという結論には至らないと考えております。妻に特別加算が設けられている趣旨は、高齢又は一定の障害の妻は働くことが困難で生活が困窮しがちであるため、それを防止する目的があったと捉えております。この生活困窮の防止という趣旨を踏まえれば、特別加算を単純に廃止するという形ではなく、現行の水準の維持を前提に、「55歳以上または一定の障害状態にある妻」だけではなく夫も含めて広く生活困窮の可能性があるものを対象とする方向で見直すことが必要だと考えております。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他は、いかがですか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 ありがとうございます。私からは、適用関係全般について意見を述べます。労災保険の本体、基本的部分は、労働基準法の災害補償の規定が根本にあり、迅速で公正な保護を行うために労災保険法があると認識しています。そのため、まず家事使用人については、労働基準法が家事使用人に適用されたら、直ちに強制適用できるよう準備が必要と考えますし、また、暫定任意適用事業につきましては、前回発言しておりますが、施行期日はともかくとして、廃止の方向の道筋を早くにつけるべきと考えます。
一方、特別加入は、本体そのものでなく、加入が任意であることも影響してか、これまで特別加入団体について我々研究者の側の関心が薄かったと反省しているところです。労災保険の本体が政府の管掌により行われていることからすれば、特別加入も、同じ労災保険制度に属する以上、特別加入団体の承認取消し、災害防止措置、報告義務等々、労働者側、使用者側からも意見がありましたが、こうしたことをきっちりできるように法令等を整備することが重要であると考えます。
また、今回のペーパーを見ておりますと、公益代表委員の見解がほとんど示されておりませんが、公益委員のほとんどが労災保険制度の在り方に関する研究会の委員を務めており、研究会のほうで、それぞれ意見を申し上げていることを申し添えさせていただきます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。ほかに、いかがですか。福田委員、お願いいたします。
○福田委員 私からは、先ほども少しありましたが、給付の関係で、夫と妻の支給要件の差の解消についてです。これは、私も会議の部会のときにも発言しましたが、これに関しては、やはり考え方の一貫性を是非、大事に考えていただきたいなと思っております。以前は、こういうふうに受けていたけれども、今はそれだと都合が悪くなってきたので、こういうふうに変えるということで、ときどきの状況によって考え方を変えていく形でやりますと、制度の安定的な運営という観点からは非常に問題があると思っておりますので、考え方の一貫性を持ちながら、今変えるのであれば、どういう理由で、どう変えていくのかということを、しっかりと理由づけしていくことが必要だという考えで私は意見を申し上げましたので、夫と妻、どちらかに合わせるという結論ありきではなく、どういう考え方で新しい結論を導いていくのか、その際には、従来からの考え方について、どのように評価して、どう変えていくのか、いかないのかと、一貫性もしっかり大事に捉えながら検討いただけたらということで改めて発言いたします。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。他は、いかがですか。立川委員、お願いいたします。
○立川委員 私からは、(3)消滅時効に関しての意見を述べたいと思います。9ページの下段以降になります。労働側として、災害補償請求権と労災保険請求権の消滅時効の期間は、5年に延長することが当然であると考えております。使用者側委員からは、延長ありきではない議論をという意見が提示されており、その理由として10ページの〇にあるように、早期に権利を確定させて被災労働者の救済を図る必要性や、早期の労災保険請求を通じた安全衛生対策、再発防止対策の促進の必要性が挙げられています。この点について考えると、早期に労災請求を行えば、証拠の散逸もなく、一定の給付がなされる可能性が高まることは確かにあることです。
しかしながら、早く労災請求することと、時効によって早く請求権を消滅させることは全く別次元の問題です。また、使用者側がもう1つの理由として掲げている事業主の安全衛生対策や、再発防止の促進については、時効により労働者側の請求権を早期に消滅させることと関係があるのか、理解し難いと言わざるを得ません。
なお、消滅時効を議論した第120回部会では、事務局から、時効を徒過したことによって労災保険が不支給となった件数は少なかったといったデータが開示されておりますが、支給・不支給の決定以前の問題として、時効が到来していると指摘をされれば請求自体をあきらめてしまうケースが多いことが明らかになっています。したがって、時効徒過による不支給件数が少ないから、時効を延長しなくてもよいといった結論にはならないと思います。改めて、労災保険給付請求権などの消滅時効の期間は5年に延長すべきだと考えております。
○小畑部会長 ありがとうございます。続きまして、中野委員、お願いいたします。
○中野委員 私からも、6ページから7ページの遺族(補償)等年金について、若干の発言をさせていただきます。遺族(補償)等年金について、支給要件の男女差をなくす必要があるという方向性自体については、労使の代表の御意見が合致していると思いますが、具体的にどう解消するのかについては意見が別れており、おおむね労働者代表委員からは夫の年齢要件を廃して、夫にも妻と同様に、年齢を問わず終身給付を支給すべき、使用者代表委員からは、男女ともに遺族厚生年金のように、有期給付化することも検討すべきではないかといった御意見が示されているかと思います。
遺族(補償)等年金の給付内容のあり方を考えるに際しては、労災保険における遺族(補償)等年金の趣旨・目的をどう考えるか、労災保険が提供すべき公正な保護とは何なのかということを御検討いただくことが不可欠であり、その点について様々な御理解、御見解があるものと受け止めています。ただ、研究会の中間まとめでも指摘されていることではありますが、我が国では、労災補償と損害賠償を合わせて請求することが認められているため、民事損害賠償との関係を考慮することも必要になります。遺族(補償)等年金を有期給付化する、つまり給付を大幅に縮小するという場合、労働者側にとっては、給付が縮小された分を民事損害賠償で使用者に請求する負担が増えることになります。使用者側にとっては、保険給付と損害賠償が調整される部分が縮小されることになるため、保険を通じたリスク分散が働く部分が減ることになり、個々の使用者が直接損害賠償として負わなければならない責任が増えることになります。
ですので、その辺りのことも視野に含めた上で、この問題をどう着地させるべきなのか、労使の代表の御意見を伺いたいと思っております。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他は、いかがですか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。各論点に対する私の意見はこれまでの部会で述べたとおりです。資料2に適切に反映いただいていますので、本日、追加で要望する事項はございません。少し付け加えたい点を改めて強調したいのですが、それを申し上げる前に、遺族(補償)等年金の夫と妻の支給要件の差の解消方法や、長期給付の見直しについて御発言を頂きましたので、その点について少し補足させていただきたいと思います。
まず、生計維持要件について、白山委員から御指摘がございました。中間報告書では、この生計維持要件については家族や家計維持の在り方が多様化していることを踏まえれば、遺族(補償)等年金の制度趣旨の検討と合わせて、引き続き、専門的見地から議論を行う必要があるとされています。現在は、主に遺族が死亡労働者の収入によって消費生活の一部を営んでいた事実が認められれば、生計維持要件を満たすと理解しています。これを前提として、夫にも稼得能力の喪失の填補や、被扶養利益の喪失の填補という目的で給付することが適当かについては、共働き世帯の増加や、女性の就労増加をはじめ現在の状況に照らし、遺族(補償)等年金制度の趣旨・目的も踏まえ、専門的見地からの議論の積み重ねをお願いしたいと思うところです。福田委員からも、結論ありきではなく、考え方をしっかりと整理した上で検討が必要と指摘されたこと、私も同じように考えます。
それから、ただいま中野委員から御指摘いただいた民事損害賠償との兼合いも含めて検討することが必要との御指摘に関連して申し上げます。使用者側にとりまして、民事損害賠償額と相殺可能となる額が減少する可能性については、そのとおりかと思います。同時に、給付が有期給付化された場合であっても、企業にとっての影響はケース・バイ・ケースではないかと思います。仮に、夫の支給要件を妻に合わせる形で見直した場合には、民事損害賠償額のうち、妻の死亡に際してなされる給付と相殺できる部分が追加で出てくるケースもあろうかと思います。いずれにいたしましても、遺族(補償)等年金という制度が、死亡に対して、どの程度の手当をすることがふさわしいかについては、これまでの部会でも申し上げましたが、他の社会保障制度の状況も踏まえながら、制度の趣旨・目的の今日的意義に照らして議論をすべきであると思うところです。
それから、これまでの論点の中で、使用者側として特に重視する点について改めて申し上げます。事業主への情報提供の必要性についてです。まず、研究会の中間報告書では、労災保険給付の支給・不支給の決定の事実を事業主に提供すること。それから、労災保険率の決定の基礎となった保険給付に関する情報を特定事業主に提供することが適当と結論づけています。中間報告書は、学識経験者の先生方が議論を重ねた結果であり、特に事業主への情報提供については委員の意見が一致していますので、重く受け止めるべき提言だと考えています。
その上で、前回の発言と重複する部分がございますけれども、私どもとして情報提供を求める理由を2点申し述べます。1点目は、類似の労働災害の再発防止に資するからです。労働者の安全と健康の確保は事業者の責務ですので、労災の支給・不支給決定以前から、事業主として事業場内の災害を把握し、再発防止対策に取り組むことは重要です。ただし、業務起因性のない災害に対してまで、事業主が効果的な対策を検討・実施することは現実的ではありません。その意味で、労災の支給・不支給の情報や、支給決定の判断に至った理由について事業主に情報提供いただきたいと思います。取り分け、脳・心臓疾患や精神障害については、業務が主な原因となって発症したかどうかの判断が難しいケースが少なくありません。監督署がどのような判断をしたのか、理由を含む問合せに対する回答についても、請求人と同様の機会を保障していただきたく、御配慮をお願い申し上げます。
2点目は、手続保障の実効性の確保に必要だからです。あんしん財団事件の最高裁判決をどのように解釈するか、労使で見解の違いがあるようですが、手続保障に欠けない理由とされた、自己に対する保険料認定処分についての不服申立又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張できるためには、個別の労災保険給付に関する具体的な情報が必要です。そのような情報がなければ、不服申立てや取消訴訟の必要性を判断するのが困難となりますので、あらかじめ事業主に情報提供されるべきだと考えます。
先ほど、立川委員から消滅時効のお話もございました。これまでの発言の繰り返しとなりますが、労基法改正当時、消滅時効期間を維持する理由とされた早期に権利を確定させて被災労働者の救済を図る必要性、それから、早期の労災保険給付請求を通じた事業主の安全衛生対策、再発防止対策促進の必要性については、今なお、妥当すると思います。法改正に先立つ労政審の建議では、災害補償請求権や労災保険給付請求権の消滅時効の見直しに当たり、他の労働保険、社会保険を含め一体的に検討が必要であるとされております。研究会でも、労災保険特有の事情の有無も含めて統一的な見解を得るには至っておりません。その意味で、消滅時効期間の延長ありきではなく、ただいま述べた視点も含めて当部会において十分な議論が必要だと思います。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。水島委員、お願いいたします。
○水島委員 ありがとうございます。皆様の御意見を伺い、私も給付関係で2つ意見を述べさせていただきます。まず、民事訴訟との関係は確かに考慮すべき問題ですが、労災補償が無過失責任であるのに対して、民事は過失責任ですので、完全に同一ではないことを忘れずに議論しなければいけないと思います。また、現在は労災でカバーする、保険でカバーできるというのはそのとおりですが、労働者に甚大な損害が発生し、かつ、使用者に非常に重大な責任がある場合には、使用者がそれなりに民事損害賠償責任を負うべきでないかと思います。労災でカバーすればよい、という考えだけではいけないと思います。
2点目は、遺族(補償)等年金に関して、遺族(補償)等年金の制度創設時と現在とでは、男性および女性の働き方も家族のあり方も大きく変わっていることは、疑いのない事実です。改めて、遺族(補償)等年金の役割、それから、どのような給付が適切であるかをしっかり議論することが必要と考えます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。最川委員、お願いいたします。
○最川委員 私のほうは、支給決定の通知の件、事業者に対する通知について、また強調させていただきたいのですが。先ほど、笠井委員からもありましたけれども、労働災害防止の観点からも、決定になったのかどうかというところは重要です。私も以前にお話したかもしれませんが、自分たちの現場の中で災害が起きたのかどうか分からないまま、監督署に報告され、業務起因性があったのか教えてもらえないまま、後にメリット制の還付金の金額で判断してくださいと言われ、1年後とか、そういうところで確認できたみたいな、何が悪かったのかも分からないまま支給決定されてしまうこともあります。特に現場で起きた災害であれば、再発防止をどうしていくかということは、どこの会社もやっていると思いますけれども、業務起因性がどうだったのかというところを通知していただいてその原因を潰していかないと、災害はなくならない。これは労使が同じところを目指していると思いますので、通知しないというメリットは、私はないと思います。
よくプレッシャーがかかると言われていますが、私の現場の経験では、支給決定された、されないというよりも、それを出す、出さないというか、例えば5号様式を出すとか、23号様式を出すとか、そういうところの話であって、出された後の支給決定にプレッシャーがかかるということは、検討会の報告書にも書かれていますけれども、ないと認識しているところですので、是非、支給決定のほうは、事業者に対しても情報提供していただきたいと強調させていただきます。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。まず、12ページ以降のメリット制についての意見です。労働側としては前回部会でも発言したとおり、現状ではメリット制の災害防止効果や労災かくしを助長していないかという部分の検証が十分であるとは言い難いことから、「存続させることが妥当」とまで言い切れる状況にはないと認識しています。
その上で、災害防止効果という意味では、特にマイナスのメリット制適用事業場においては、その効果が判然としないと前回指摘したところです。使用者側委員から、13ページにもありますが、マイナスのメリット適用事業場はもともと被災労働者数がゼロであるために、被災者数を減らすことが一切できなことも考えられるとの指摘がありました。
これは正にそのとおりですけれども、だからといって、マイナスのメリット制の効果が証明されたというわけでもなく、そうした事業主は、たとえメリット制がなかったとしても被災労働者数がゼロであったり、災害防止に取り組んでいる可能性も考えられると思います。だからこそマイナスのメリット適用事業主については、効果が判然としないのではないかと申し上げたということです。
一方で、幾つか前提条件を付した上ではありますが、今回、プラスのメリット適用部分を中心に一定の効果があったということが確認されたことは事実として受け止めているところです。ただ、前回部会でも申し上げましたが、メリット制の廃止を求める声もあることを踏まえると、存続という結論ありきではなく、更なる検証を行いながら、労災かくしなどの懸念を払拭、是正することが必要です。こうした対応も含めて再度検証を行い、制度のあり方を検討することが必要であることを改めて申し上げておきます。
次に、先ほどから意見のある、資料14ページ目以降の労災決定事実や保険料算定基礎情報の事業主への伝達の部分について意見を申し上げておきたいと思います。
改めて申し上げますが、労働側としては、事業主への情報伝達は反対であるということを、明確にしておきたいと思います。使用者側からは手続保障や災害防止を講じる観点から、請求人に通知される情報と同じものを同じタイミングで教えてほしいという意見がございますが、何度聞いても、なぜ労災支給決定などの情報がないと再発防止を講じることができないのかということが、理解し難いところです。労災支給、不支給に関わらず、事故が起こった際には事業主として再発防止を講じること、少なくとも検討することは当然の責務だと考えているところです。
加えて、前回、使用者側委員から、メリット制適用事業主には障害等級や傷病等級に関する情報も含めて情報提供すべきという御意見もありました。しかしこの点は、障害等級は何級かといった労働者にとって非常に機微な情報がなければなぜ再発防止努力ができないのかということが全く理解できず、非常に疑問です。むしろ、使用者側からも発言がございましたけれども、事業主は労災保険給付の請求手続における事業主の証明欄の記載や、また監督署の調査への協力の場面を通じて、何らか労災請求があること自体は当然のことながら把握しているはずです。そうであるならば、その情報を基に、社内でどのような事故があったのかを調べて再発防止に努めること自体が筋であり、現行以上の情報伝達というものは不要ということを改めて申し上げておきたいと思います。以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。笠井委員、お願いいたします。
○笠井委員 ありがとうございます。まず、冨髙委員から御指摘がありましたメリット制と情報提供について、改めて申し上げたいと思います。メリット制につきましては、前回の部会で申し上げたとおり、使用者側としては、研究会で示されたメリット制の効果検証の結果は、制度に期待される効果を一定程度裏付けたものと認識しています。今後もデータが取得可能な範囲で効果検証を継続することには反対しませんが、研究会の委員の結論が一致する形で制度の存続と適切な運用を提言していることからも、メリット制自体の根源的な検討が必要な段階にはないと考えます。
それから、先ほど情報提供についても、事故が起こった場合には労災かどうかにかかわらず、事業者としては対応すべきとの御指摘がありました。確かに、事業者には労働者死傷病報告の提出義務もありますし、報告事項には災害の発生状況や発生原因も含まれますので、これらの情報をもって再発防止に取り組める場合もあろうかと存じます。しかしながら、死傷病報告は、「労働災害等」として就業中や事業場内、付属施設内における休業や死亡も対象としているように、報告の対象は業務上の災害に限られません。このうち、再発防止に向け事業主が適切かつ有効な対策を取ることが現実的なのは業務上の災害です。会社としては業務起因性がないと考える場合もあります。しかしながら、労災であるとして、業務起因性があるとして支給決定がなされたことが分かることは非常に重みを持つものですし、そのような決定がなされたということは、会社が判断するのではなく、ある意味で第三者による客観的な判断でもございます。そのような判断に基づいて業務起因性の有無や理由を確認することは、他の類似の災害防止を効果的に行うに当たり非常に重要だと考えます。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございます。小西委員、お願いいたします。
○小西委員 議論が少し戻るかもしれませんが、遺族(補償)等年金に関して若干の意見を述べさせていただきたいと思います。まず、既に御議論があったかと思いますけれども、男女間の支給要件の差については解消するべきだと考えております。そして、その差の解消の方法については、研究会の中間報告書では、夫に課せられた支給要件を撤廃することが適当であるとの意見が太宗を占めたとされていて、具体的には生計維持関係が緩やかに認定されているという実務を踏まえると、パートタイムの妻を亡くした夫にも被扶養利益の喪失が認められることから、被扶養利益の喪失は、妻を亡くした夫にも認められ得るという意見があったり、あとは、遺族(補償)給付等を被災労働者の得べかりし賃金の代替物と見るならば、生活保持義務関係にある配偶者には、その賃金によって支えられた共同生活が続いた期間は支給すべきであり、年齢要件は不要とする意見というのがあったところです。
この点につきましては、被扶養利益の喪失の補填という遺族(補償)等年金の制度趣旨を踏まえますと、男女ともに年齢等の要件を設けず、夫に課せられた支給要件を撤廃するという選択肢を取っていくことがいいのではないかと考えています。それと併せてですが、将来的には、遺族(補償)等年金の制度趣旨を踏まえて、遺族(補償)等年金制度全体の在り方について、引き続き議論を行っていくことが必要ではないかと考えている次第です。私からは以上です。
○小畑部会長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。特にございませんか。では、意見は出尽くしたと受け止めさせていただきます。皆様、御意見を頂きまして誠にありがとうございました。
事務局におかれましては、本日の議論を踏まえて整理をして、次回以降の資料に反映していただくようにお願いいたします。それでは、本日予定した議題は以上となりますので部会は終了といたします。事務局より次回の日程についてお知らせをお願いいたします。
○労災管理課長 次回の日程につきましては、事務局より追って連絡させていただきます。
○小畑部会長 本日は以上といたします。皆様、お忙しい中、誠にありがとうございました。

