第215回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

日時

令和7年7月23日(水)14:00~16:00

場所

会場
厚生労働省 職業安定局第1会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 12階公園側)
傍聴会場
厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)

議事

2025-7-23 労働政策審議会職業安定分科会(第215回)
 
○阿部分科会長 では、出席予定の委員の皆様方、既に御着席ですので、若干定刻より早いですが、ただいまから第215回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催したいと思います。
 皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、労働者代表の平山委員、使用者代表の久保委員、小阪委員が御欠席と伺っております。
 また、事務局である職業安定局の幹部に異動がございましたので、御報告いたします。
 まず、村山職業安定局長。
○村山局長 村山でございます。よろしくお願い申し上げます。
○阿部分科会長 溝口職業安定労働市場政策調整官。
○溝口調整官 溝口です。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 澁谷総務課長。
○澁谷総務課長 よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 立石雇用開発企画課長。
○立石雇用開発企画課長 立石でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 それぞれ就任しております。よろしくお願いいたします。
 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催となっております。オンラインでの発言方法等につきましては、事前に事務局より送付している「職業安定分科会の開催・参加方法について」に沿って操作いただきますようよろしくお願いいたします。
 当会議においては、原則ペーパーレスとしております。また、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、原則として画面をオンにしていただくようお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 議題1「同一労働同一賃金部会の議論の状況について(報告)」です。では、事務局より説明をお願いいたします。
○中嶋需給調整事業課長 承知いたしました。1月の当分科会で同一労働同一賃金制度の施行5年後の見直し検討につきまして、部会のほうで議論を行っていく旨と、併せまして部会における議論の状況は、適時に当分科会に報告させていただく旨、申し上げたところです。
 同一労働同一賃金部会での議論は2月に開始しまして、その後の開催状況について、本日の資料1-3のほうにまとめております。3月から4月に有識者・労使関係者からのヒアリングをいたしました。その後、各論の議論に入りまして、5月はパート・有期関係の各論、そして6月25日には労働者派遣関係の各論を議論いただきました。この後も、ガイドライン等の論点、併せて御指摘いただいた事項に関する、いわゆる宿題対応をさせていただくことを想定しております。
 本日は、6月25日の各論回を中心に、派遣労働に関して、これまで部会で行ってきた議論の状況を報告申し上げます。
 まず、資料1-1です。こちらが6月25日の部会に事務局から提出した論点(案)となります。基本的な認識や論点(案)の趣旨を冒頭の数行に記載いたしましたが、要すれば、改正法の施行後、派遣労働者の待遇改善の取組は進んできたが、非正規雇用全体に係る賃金等の底上げの取組が進む中、派遣労働者についても公正な待遇の推進を加速させる必要があるということ。
 こうした状況を踏まえ、派遣労働者の待遇改善に向けた労使の取組をさらに促進する観点、また、行政による履行確保を徹底していく観点から議論をいただいているところでございます。
 まず、「労使の取組促進」については、(1)を均等・均衡待遇とし、論点として、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式、この2つの待遇決定方式と、これらを機能させるための関連規定について、施行後の状況を踏まえ、どのように考えるかといたしました。
 関連する規定というのは、※印のところに4つ書きましたが、比較対象労働者の待遇情報の提供、これは特に派遣先均等・均衡方式との関係であります。それから、労使協定方式における過半数代表者の適正選出と労使協定の周知の規定。そして、両方式に関わるものとして、派遣料金への配慮であります。
 これらのほか、さらなる処遇改善につなげていくための方策については、(3)として議論いただきました。
 次に、(2)、待遇に関する説明義務であります。論点ですが、調査結果でも、説明に対する一定の納得感はあるものの、説明を求める労働者の割合は低い状況にあります。この点について、説明を求めたことがない理由も踏まえ、どのような改善方策が考えられるかといたしました。
 続く(3)、その他の取組促進のための方策。
 まずは、ア 公正な評価であります。ここは、2つのパラグラフで論点を書きました。
 1パラはパート・有期の議論と同じものでありまして、均等・均衡待遇や賃金に関する努力義務の履行の前提になると考えられる公正な評価の促進、その課題について、どう考えるかというものであります。
 その上で、2パラは派遣について特出しをしたものであります。労働者派遣の場合、キャリア形成支援が派遣元の義務とされており、他の雇用形態に比べてもキャリア形成と就業機会を確保する仕組みが整備されておりますところ、その機能を通じて処遇向上につなげていく工夫について議論いただきました。本人へのフィードバック、評価にふさわしい職務へのアサインなどを例示させていただきました。
 続くイ 未経験者の登用拡大、従事する業務の高度化も同じ趣旨からであります。職種の転換などで、就こうとする業務が未経験という方についての登用拡大、そして高い評価があれば、より高度な業務に就く機会などの拡大をしつつ、アの公正な評価と相まって、処遇を向上させる仕組みや工夫。
 また、派遣先や行政による協力・支援として、どのようなものが考えられるか等、議論いただきました。
 ウは派遣労働者の意見の反映。労使協定方式の締結主体となる過半数代表者の適正選出を徹底した上で、派遣労働者の意見をより的確に反映させることができるようにするための方策として、どのようなものが考えられるか。
 そして、エは情報公表の促進です。パート・有期の場合と同様、求職活動に資する情報の公表に関する企業の取組促進について、どう考えるかという論点であります。
 2は「行政による履行確保」であります。この点については、都道府県労働局において、許可事業者に対する指導監督の一環として、この同一労働同一賃金関係の履行確保につきまして、相談対応なども含めて厳正に執り行っておりますが、行政ADRや事業主に対する支援なども含めまして、行政による履行確保をさらに実効性あるものにするために、どのような方策が考えられるかといたしました。
 これらの論点を中心に、これまで部会で行っていただいた議論の主な内容・状況について整理いたしましたものが、資料1-2であります。
 まず、総論や基本スタンスとして、委員の皆様からいただいたものであります。
 「1.総論」の最初の2つの○は、労働側委員からいただいたものであります。
 基本的な視点として、どのような雇用形態を選択しても納得できる待遇を受けられるようにすること。その目的が果たされているかどうかに重きを置いて、検証と必要な見直しを行っていくべき。
 確かに派遣労働者の待遇改善は一定前進しているが、賃金に満足していないという方があまり減っていない等の実態を踏まえ、根本的改善、見直しの議論が必要ということ。
 続く2つの○は、使用者側委員からいただいたものであります。
 法の施行以降、賃金等が大きく改善していると認識。賃金等への評価に関する労働者調査を見ても、労使協定方式が大宗を占める中、労使の真摯な取組によって功を奏している。
 今後は、実務が着実に行われることが重要であり、労使の取組への支援が必要。併せて好事例の共有などを積極的に進めていくことが必要というものであります。
 その上で、「各論」の状況であります。
 1の(1)は、「均等・均衡待遇」をめぐるものであります。4つほどにポイントを絞り、簡潔に申し上げます。
 1つは、2つの待遇決定方式をめぐる評価や認識に係るものであります。今、御覧の1ページの下半分がこれに当たります。最初の2つの○は、労働側委員からいただいたものであります。
 原則である派遣先均等・均衡方式があまり活用されていないことについて、政策的な課題があるのであれば解消していくべき。また、例外である労使協定方式については、手続・内容ともに適切に運用されることが非常に重要。加えて、原則と例外の関係について、法令や指針に位置づけるべき。
 そして、派遣先均等・均衡方式では、派遣先から比較対象労働者の待遇情報の提供を受けることが重要なので、労働局による指導監督の例も踏まえて、実務上の課題も捉えて議論すべきとの御意見でございます。
 続く一番下の○と、次のページ、1つ目の○は、使用者側委員からいただいたものであります。
 派遣労働者の賃金の安定や円滑なキャリア形成の観点から、労使協定方式が設けられ、選択できる制度となったところ、今後も2つの方式を維持し、派遣先の業務特性や派遣労働者のメリットなどを考慮して選択できることが適切。
 中小企業では、職務内容等が同じ正社員がおらず、比較対象労働者の待遇情報の提供が困難という状況。また、派遣先として、自社の労働者や業績に関する詳細を提供することに、一定の心理的・実務的ハードルがあると推察するといった御意見をいただきました。
 続いて、この2ページで御紹介いたしますのが、まず、一般賃金額の関係であります。こちらは、4つ目の○を御覧ください。労働側委員からいただいた意見で、労使協定方式について、基準となる「一般の労働者の平均的な賃金の額」の妥当性の検証を行うべき。例えば、どんな点かについて、括弧書きでいただいた御意見を付しております。職業安定業務統計に基づき求人賃金の下限を集計する点、賃金構造基本統計調査による「勤続0年」の賃金の求め方。それから、統計の公表から労使協定の施行までにタイムラグがある点などです。このほか、この括弧内に記載したものも含めまして、制度制定時の議論等を整理して部会に供するよう、事務局にお求めいただいたところであります。
 それから、過半数代表者についても御意見をいただきました。これは下から4つ目と3つ目の○を御覧ください。
 労働側委員からは、労働条件は集団的労使関係に基づく労使の話し合いで決めるべきものであり、協定締結の都度選ばれる過半数代表者に賃金交渉と協定締結の役割まで担わせることは適切ではない。労働組合が責任を持って対応する「労働協約方式」とすることが本来の姿であるという御意見。
 使用者側委員からは、過半数代表の適正選出については、派遣元で労力をかけて取り組んでいる。また、手続に瑕疵があった場合には、効力を認めないという制度的な手当てはなされている。今後も仕組みを維持した上で、適正選出や選出後の過半数代表に対するサポートを含めて好事例の共有が有効といった御意見をいただいております。
 そのほかは、派遣料金に関する配慮義務であります。これは一番下の○と、次の3ページの最初の2つの○でございます。
 労働側委員からは、派遣先による派遣料金への配慮の前提となる料金交渉、それを求める要望自体していない派遣元も少なくない。派遣元が交渉を要望するよう政策的な誘導も必要ではないか。
 また、料金交渉に一切応じない場合は指導対象になる旨を、実効性を強化する観点から、派遣先指針に格上げして指導を強化する必要があるという御意見。
 使用者側委員からは、派遣料金に関する要望に対し、9割超の派遣先は引き上げる対応を行っており、配慮に対する派遣先の理解・認識は高い。適切な価格転嫁が重要であり、改めて法の趣旨を周知していくべきという御意見をいただいております。
 続いて、(2)、説明義務に関する御意見です。
 こちら、最初の2つの○で労働側委員からの御意見を紹介させていただきます。
 待遇に関する説明義務について、その施行実態は不十分であり、義務が適切に果たされるために、「求めがあったときは」を削除するなど、一層の強化が必要。
 それから、自分の待遇決定方式を知らない、過半数代表者のことを知らないという回答が多い状況を踏まえると、説明義務や明示義務について強化が必要という御意見。
 使用者側委員からの御意見を4つ目と5つ目の○で紹介させていただきます。
 様々な派遣労働者がいる中で、現行の仕組みは維持されるべき。法の理解と周知を促進する必要がある。
 「求めがあったとき」を削除すると説明のタイミングが分かりづらくなる。労働者が自身と比較対象労働者の働き方、待遇について理解したタイミングで納得できないことがあれば、説明を求めることが最も効果が高まる措置であり、削除する必要はないといった御意見をいただきました。
 このほか複数の委員から、説明を求めることができることを派遣労働者が知ることが重要であり、明示義務の中に待遇に関する説明を求めることができることを入れて、注意を喚起していくことが重要である旨の御意見をいただきました。
 続いて、(3)、その他の方策について。
 まず、ア 公正な評価の関係であります。
 1つ目の○は労働側委員からいただいたもので、能力や成果が公正に評価されて賃上げにつながることが重要。このサイクルを回すためには、派遣先から働きぶりに関する情報が提供されることが重要で、その仕組みが必要といった御意見。
 使用者側委員からは、4ページのほうになりますが、これまで派遣元による取組が行われているということと、2つ目の○は、雇用する労働者をどのような制度で評価し、生産性向上につなげるかは、事業主の裁量に委ねるべき事項。一律の考え方を示すと、創意工夫を阻害する恐れがあるといった御意見をいただいております。
 続いて、イ 未経験者の登用拡大、従事する業務の高度化に関する御意見です。
 2つ目の○は使用者側委員からいただいた御意見で、派遣元と派遣先が連携し、派遣労働者の評価・育成に取り組み、個人に合わせた業務の高度化や、処遇改善につなげることも重要。ただし、現場実態や働き方は多様であり、法令で厳格に決めるのではなく、まずは企業の好事例を積極的に共有することが効果的といった御意見。
 労働側委員からは、3つ目の○でありますが、キャリア構築の観点から、雇用安定措置を実効性あるものにすべきであり、労働者の希望に合った措置が講じられているか検証が必要といった御意見をいただいております。
 続く、ウ 派遣労働者の意見の反映に関する御意見です。
 1つ目と2つ目の○は労働側委員からの御意見であります。
 過半数代表者については、労働条件分科会での労働基準法における見直し検討の議論を踏まえて適正化に向けた見直しを行うべき。適正選出手続や選出後の意見集約に一層の配慮や工夫が必要。配慮の具体的内容は法令、指針等に明記すべき。
 また、労使協定の周知等がされていなければ違法・無効であることを明確にする必要があるといった御意見であります。
 3つ目の○は使用者側委員からの御意見です。
 現状、派遣元各社で丁寧な対応が行われており、現行の仕組みを見直す必要性は低い。意見集約の方法に一律のものを求めると、各社の実情に応じた意見集約に支障を来すおそれがある。工夫として、アンケート調査や車座対話、1on1などで促していくことが必要といった御意見をいただいております。
 エの情報公表の促進について、労働側委員からは、労働者派遣において重要な情報の一つはマージン率であり、労働者が認識できることが必要。インターネット公開がまだ十分進んでいないので、より積極的に促していくべき。
 使用者側委員からは、次の5ページになりますが、法定事項を超える情報開示は、企業ごとの人材確保戦略であり、自主的な公表判断に委ねられるべき。公表義務が拡大している中、特に中小企業はマンパワーでの負荷になるといった御意見をいただいております。
 最後に、「2 行政による履行確保」に関する御意見です。
 適切・厳正な取組が行われているとの認識や、引き続き、指導、監督等を通じた履行確保とともに、行政ADRのPR、セミナー等における処遇改善に関する好事例展開など、事業者へのサポートを強化していくことも有効。
 また、派遣を受け入れている業種の所管省庁とも連携しつつ、業種特性の観点からも取り組むと、履行確保がより進むのではないかといった御意見をいただいております。
 以上でありますが、今後の同一労働同一賃金部会については、ガイドラインに関する議論等のほか、これまでにいただいた御指摘を踏まえた宿題対応をさせていただくことも想定しているところです。
 また、今後の議論の進捗を踏まえまして、当分科会にも適時に議論の状況の報告を再度させていただきます。
 私からは以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして、御質問、御意見がございましたら、挙手または「手を挙げる」ボタンをクリックし、私が指名した後にお名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。
 では、原委員、お願いします。
○原(健)委員 御説明ありがとうございました。
 分科会での議論は、総論、各論ともに派遣労働者の待遇改善のために制度見直しを求める側の意見と、現行制度の維持を求める側の意見の2つに分かれているように受け止めております。現行制度を維持すべきという御意見は、ある程度待遇改善が進んでいるとの主張と受け止めますし、確かに我々、UAゼンセン傘下の組合でも派遣業で働く仲間の組合があり、法改正をテコに待遇改善を進め、結果が出ている組合もあります。
 ただ、現状で改善が十分かというと、決してそうではなく、参考資料1-2で施行状況をお付けいただいておりますけれども、例えば71ページを見ると、法改正前後で賃金が増えたという派遣労働者が約50%いるものの、賃金が変わらないという派遣労働者も約50%おられます。また、72ページの各種手当の改善状況につきましても、無期と有期での差も大きく、まだまだ道半ばであるということが見てとれます。
 同一労働同一賃金の目的は、どのような働き方であっても公正な待遇を受けられるようにするというものであったと思いますが、現状のデータを見る限り、目的が達成できているとは言いがたいと思っております。労働組合がある職場は、法律の遵守は当然のこととして、さらに法を上回る労働条件確保の取組を労使で進めることができます。ただ、労働組合がない職場ではその取組は難しく、法律が大きな後ろ楯となります。同一労働同一賃金が当初想定していた法律の趣旨や目的をきちんと果たすことができるよう、現行制度の維持・周知だけではなく、制度の根本の議論が行われることを期待したいと思っております。
 以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
 馬渡委員、お願いいたします。
○馬渡委員 御説明ありがとうございました。全国中央会の馬渡でございます。
 今年の2月から検討が開始されており、具体的な検討は部会で行われるというふうに思っておりますけれども、事業者の立場、それから、中小企業の立場として一言申し上げたいと思います。
 先ほどお話があったように、待遇改善というのは、人手不足も相まって着実に進んでいるというふうに考えますけれども、事業者のほうから言うと、その場合に現行制度は継続的かつ安定的に運用していただくと、課題に分かりやすく変更していけるのかなというふうに思っています。
 ニーズを言いますと、非正規・正規を問わず、ニーズに沿う潜在的な人材の方を登用したいという思いはございますけれども、自社で待遇改善、同一労働同一賃金、きちんとやれているかという部分を、我々が自主点検しやすいように、ガイドラインとかマニュアルなど、これまでにいろいろな方の御意見があったと思いますけれども、そういった意見を反映して、より具体的で分かりやすいものにしていただきたいなと。そうすると、我々のほうも、こういうふうにきちんとやっていったほうがいいなというのが分かりやすい。
 反面で、いろいろな手続の問題は、中小企業にとってはいろいろな書類とか手続が煩雑になりますと、なかなか対応しづらい。マンパワーもございませんので、なかなか対応しづらい場合が多いので、手続面は画一的にみんなやらなければいけないという義務づけ等はやめていただきたいなというふうに思っています。できるだけ簡素で分かりやすくしていただければなと思っている次第でございます。
 こういった同一労働同一賃金の部会の今後の議論も、適切なタイミングにおいて、この分科会に共有いただけましたら幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○阿部分科会長 御意見ありがとうございました。
 清田委員、お願いいたします。
○清田委員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田でございます。私、同一労働同一賃金部会に参加させていただいておりますが、改めて意見として申し上げたいと思います。
 参考資料によりますと、同一労働同一賃金の法施行以降、賃金格差というのは縮小しております。パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善は進んでいるものと受け取っております。中小企業においても、大企業と遜色なく対応できており、基本給の見直しも含めて進んでいる状況と見てとれます。
 派遣労働者につきましても、均等・均衡方式、労使協定方式、それぞれによって派遣労働者の満足度、賃金水準も大きな差がなく労使協定方式も現場の実態として有効に機能している状況であると感じております。今後も、この現行の2つの方式を選択できる制度として維持するべきだと考えています。正規社員とそれ以外で賃金の差というのがあるのは事実ですが、必要なのは、キャリアアップのための支援、それから両立支援と働きやすい環境整備ではないかなと考えております。
 引き続き、不合理な待遇改善の是正に向けて、均等・均衡待遇を推進していくということは当然重要ですが、判例、他社の取組事例などを適切に周知していくことが有効だと考えております。
 他方で、これまでの進捗を踏まえ、引き続き現行制度の運用を進めていくべきであり、企業に必要以上の負担を課すということについては、慎重に検討していただきたいと考えております。
 引き続き、本部会においても、こうした観点から議論していきたいと考えております。私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
 それでは、橋本委員、お願いいたします。
○橋本委員 学習院大学の橋本です。
 派遣法30条の4の労使協定方式の参考となるのが、ドイツの労働協約による派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇原則の例外を認める制度ではないかと思っています。ドイツでは労働協約であるところが、日本では労使協定であるというところが大きな違いではありますが、産別の労働協約という制度が欠けている日本では、労使協定という手段を取ったのはやむを得なかったと理解しています。
 ドイツでも、当初、この均等待遇原則が2000年代初頭に入ったときに、産別の労働協約、これは派遣会社の使用者団体と全ての産別組合を当事者とする労働協約なのですが、これで派遣労働者の賃金を決めれば均等待遇原則を課さないという制度が導入されたのですが、現在は強化されておりまして、当初、限定はなかったのですが、現在は派遣労働者が同一派遣先で派遣を開始してから、原則9か月まで、この例外が認められるということになっています。
 また、原則9か月まで均等待遇原則の適用を除外するという規制にはさらに例外もあって、個別の産別協約で賃金の上乗せをすれば、最大15か月まで例外が認められるという制度になっています。日本でもいろいろ御意見があるかと思うのですが、均等・均衡原則を強化していく1つの方策としては、労使協定方式の例外が認められる期間に上限を設けていくということが考えられるのではないかと思っております。
 もう一点、待遇に関する説明義務とはちょっと問題がずれるかもしれないですが、派遣労働者のキャリアアップという論点もありましたので、それにやや関連するかもしれないと思いまして、ちょっと気になっていることを申し上げられればと思います。派遣労働者のスキルが期待に満たないということで、派遣先の要請で派遣労働者の就労が中止になる場合もあると思います。この場合、労働者派遣契約の解約というのは、派遣法27条で禁止されていない限りは基本的には自由だと理解しております。
 また、この場合、派遣元も派遣労働契約の残りの期間の賃金を払えば法的には問題ないと思いますが、派遣先でなぜ就労が継続できなくなったのかということについて、十分な説明義務というのが、これをどう構成するかはまた難問だと思うのですけれども、派遣先が派遣労働者に対して直接説明するというのは難しいかもしれないですが、それができれば望ましいと思いますし、就労が派遣先の要請で中止になってしまったような場合の説明義務というのも、今後の課題としてあるのではないかと考えています。
 以上です。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 原健二委員、馬渡委員、清田委員、橋本委員から御意見ありましたが、事務局何かありますか。
○中嶋需給調整事業課長 皆様、各般の御指摘、大変ありがとうございます。
 それぞれの観点につきましては、もとより議論を通じまして事務局としても承知しておりますけれども、改めまして、それぞれの観点、それから主訴といいますか、ポイントについて理解をしているところでございますので、よく心得てまいりたいと存じます。
 それから、今、各論の議論を6月25日にやったわけでありますが、今後、さらにこれを深めるというフェーズになります。私どもも、いただいた宿題がございますので、それについて準備をしながら、また議論に供していくということでございます。それぞれいただきましたような観点も含めて、各側からまた深掘った意見をいただきながら議論を深めてまいりたいと存じますし、事務局としてもしっかりと役割を果たしてまいりたいと存じます。
 また、御指摘いただきました、適時に報告を当分科会にするようにというお求めにつきましても、よく承知いたしましたので、そのようにさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ほかに御意見、御質問があれば。よろしいでしょうか。
 それでは、議題1は以上とさせていただきたいと思います。
 続いて、議題2「令和6年能登半島地震等後の石川県内事業所における出向・休業の状況について(報告)」です。では、事務局から説明をお願いします。
○立石雇用開発企画課長 それでは、資料2をお開きいただければと存じます。こちらの「令和6年能登半島地震等後の石川県内事業所における出向・休業の状況について」、御説明させていただければと存じます。
 まず、能登半島地震・豪雨に係る雇用調整助成金の特例措置につきましては、昨年12月に新たな特例措置につきまして、こちらの職業安定分科会で御議論いただいたところでございます。その際には、委員の皆様方から、この能登の特例とかコロナ禍の特例のような非常時の雇用調整助成金の在り方につきましては、まずは労政審職業安定分科会でしっかりと議論いただくことが必要であるという御指摘を賜ったところでございます。そして、厚労省のほうでは重く受け止め、今後は委員の皆様への事前の御説明、御意見のお伺い等を含め、丁寧な対応に努めさせていただきたいという旨をお答え申し上げていたところでございます。本日は、前回12月のこのような御指摘も踏まえまして、昨年答申いただきました特例の現在の状況につきまして御報告させていただければと存じます。
 それでは、資料のほうでございますけれども、まず、恐縮でございます。2ページのほうをお開きいただければと存じます。こちら、昨年12月に分科会に提出した資料でございますけれども、おさらいという形でございますが、改めて御説明させていただければと存じます。
 2のスキーム図のところを御覧いただければと思いますが、令和6年1月に地震が発生したことを受けまして、雇調金の能登半島地震特例、内容といたしましては、支給日数につきまして、通常1年100日のところを300日であるとか、助成率につきまして、通常、中小企業が3分の2、大企業は2分の1であるところを、それぞれ5分の4、3分の2などとすることを内容といたします特例措置、1年間ということを措置させていただいたところでございます。
 ところが、9月に豪雨災害が発生いたしまして、地震から1年も経たないうちに激甚災害となる豪雨災害が重なるという、極めて特異な災害状況になってしまったところでございます。さらに、半島という地理的制約でありますとか、過疎地域というような極めて困難な事情・特殊性に鑑みた上でということで、この令和7年1月1日から切れ目のない支援を実施というところでございますけれども、まずは、在籍型出向支援ということで、産業雇用安定助成金の特例措置、併せて在籍型出向に係る取組を事業者の方に行っていただいた上で、また、在籍型出向が困難な方も労働者の中にはいらっしゃいますので、そのような方の雇用維持を図る場合には、雇用調整助成金で令和6年の特例措置と同じ内容のものにつきまして、ハローワーク七尾・輪島管内の事業者に限り、同様の特例を設けさせていただくということにしたのが、この特例の内容でございます。
 この特例の出向・休業の現在の状況でございます。恐れ入ります、1ページのほうにお戻りいただければと存じますけれども、まず、左側のほうに棒グラフがございます。こちら、石川県内の雇調金の活用事業所数の推移のグラフでございます。令和6年1月の発災時、839となっているところでございますが、こちらがぐっと減っていきまして、令和6年12月の時点では241所ということで、839所を100%とした場合には29%まで減ってきたことが見てとれるところでございます。
 さらに、ここから令和7年の新特例に切換えを行った事業所につきましては、186となってございまして、発災当初の22%まで減少したということで、ここは雇調金については、こういった状況で順調に減っているというところでございます。
 一方で、出向についての取組状況でございます。右側のほうに書いてございますけれども、こちらは産業雇用安定センターにおきまして精力的な取組を行っていただいているところでございます。具体的には、こちらにございますように、事業主に対する説明会、マッチング会といったことを行うとともに、事業所への1件1件のアウトリーチの訪問を行わせていただきまして、そこで希望の内容とか出向人数などの情報ということを収集させていただきまして、マッチングを進めさせていただいているところでございます。これらの取組につきましては、石川県庁さんとも連携させていただいておりまして、在籍型出向の利用に向けた機運の醸成といったことに取り組んでいるところでございます。
 もとより在籍型出向につきましては、出向先との調整ということがございますので、なかなかマッチングが難しくて、どうしても休業のほうに傾きがちな企業も少なくないという中ではございますけれども、左の表を御覧いただければと思います。こちら、産雇センターによる出向の実績につきまして、全国と石川県を令和5年度と令和6年度で比較させていただいたものでございますけれども、全国の状況が、御覧のとおり、前年度比11%減というところでございますけれども、石川につきましては、43人から96人で、125.9%増となっているところでございます。
 また、現時点では、126の事業所、福祉や建設など様々な業種がございますけれども、そういったところから出向先の企業として登録を受けているところでございまして、引き続き在籍型出向の支援を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 御報告につきましては以上でございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして、御質問、御意見がございましたら、挙手または「手を挙げる」ボタンをクリックし、私が指名した後にお名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。
 新田委員、お願いします。
○新田委員 経団連の新田でございます。
 以前のこの分科会での意見等を踏まえて、現状について詳細に御報告いただきまして、まずは感謝申し上げます。
 御報告いただいた内容を見ますと、雇用調整助成金の活用数は順調に減ってきている一方で、1件1件、産雇センターの職員の方が訪問されるなどの御尽力によって、在籍型出向は着実に成果も上がってきていると理解したところでございます。
 今回の特例の期限は今年の年末と承知しております。年末の時点で、この特例措置の扱いをどのようにするのか、現地の状況や雇用調整助成金の活用事業所件数、在籍型出向の活用状況等々を十分踏まえた上で、この分科会でしっかりと議論して結論を導き出せればと思っておりますので、引き続き、この点について、よろしくお願いします。
 私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 では、清田委員、お願いします。
○清田委員 ありがとうございます。日本商工会議所の清田でございます。
 この能登半島については、資料でも御説明いただいたとおり、震災と豪雨が続いたということ。それから、半島という地理的な要因という特殊な事情であるというふうに理解してございます。現場からは、道路・水道など、社会インフラの復旧が遅れている。それが長期化しているという観点から、人口流出に悩む声というのを非常に受けてございますし、引き続き、雇用維持に向けた支援を求める声もいただいているところでございます。
 非常に厳しい中で、産雇センターさんを含めて、雇用維持の取組に尽力いただいていることに改めて敬意を表しますし、引き続きの御支援をお願いしたいと思ってございます。今後、令和7年末でこの支援が切れる中で、現場の状況、ニーズを丁寧に見ながら、在籍型出向をはじめとした有効な支援の在り方というのを検討していくことが必要であろうと考えてございます。
 私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 丁寧な御説明ありがとうございました。
 今、お二方からもありましたけれども、産雇センターの取組等、非常に丁寧に取り組まれているという印象を持っております。前回も申し上げましたが、特例措置の趣旨である被災地で働く労働者の雇用確保や維持、これに沿った利用が図られることが重要と考えておりますので、そうした観点から、助言・指導を含めて、引き続き丁寧な対応をお願いしたいと思います。
 以上でございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
 ほかに。
 新田委員、清田委員、冨髙委員から御意見がありましたが、事務局のほうで何かありますか。
○立石雇用開発企画課長 御指摘を賜りまして、ありがとうございます。
 御指摘いただきましたとおり、引き続き、この能登におけます雇調金、在籍出向の活用の状況につきましては、しっかりと把握させていただきますとともに、対象となっております事業者さん、労働者の皆様の実態、ニーズなんかもしっかり把握した上で、分科会にも御報告させていただければと思っております。
 引き続き、何とぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ほかにございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、この議題は以上とさせていただきたいと思います。
 本日予定されていた議題は以上で終了いたしましたが、この際、委員から御発言があればお願いしたいと思います。よろしいですか。
 それでは、本日の分科会はこれで終了したいと思います。ありがとうございました。