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第213回労働政策審議会職業安定分科会 議事録
日時
令和7年5月16日(金)13:00~14:30
場所
- 会場
- 厚生労働省 職業安定局第1会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 12階公園側)
- 傍聴会場
- 厚生労働省 職業安定局第2会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階公園側)
議事
2025-5-16 労働政策審議会職業安定分科会(第213回)
○黒澤総務課長 定刻になりましたので、ただいまから第213回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
今回から原則としてペーパーレスとしておりますので、会場で御参加いただいている委員の皆様におかれましては、お手元のタブレットで資料を御覧いただきますようお願いいたします。操作方法に御不明な点がございます場合は、事務局にお申しつけください。
また、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、恐縮でございますが、支障がない限り原則として画面をオンにしていただけますと大変幸いでございます。よろしくお願いいたします。
本日は、4月27日の労働政策審議会の委員の一斉改選後初めての職業安定分科会でございますので、初めに職業安定分科会長の選出について、事務局より御報告させていただきます。職業安定分科会長は、労働政策審議会令第6条第4項の規定によりまして、労働政策審議会の本審に所属する公益委員の中から本審に属する委員により選出されることとなっております。これによりまして、事前に阿部委員が分科会長に選出されておりますので、その旨、御報告申し上げます。
それでは、以降の議事進行につきましては、阿部分科会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 阿部でございます。今後議事がスムーズに進むように努力したいと思っておりますので、皆様の御協力をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
労働政策審議会令第6条第6項の規定によりまして、分科会長である私が分科会長代理を指名することになっております。職業安定分科会の委員のうち、公益を代表する方の中から指名することとなっておりますので、こちらを小畑委員に事前にお願いしております。よろしくお願いいたします。
小畑委員、一言御挨拶をお願いします。
○小畑委員 小畑でございます。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 よろしくお願いします。
議事に先立ちまして、新たに就任された委員を御紹介させていただきたいと思いますので、一言御挨拶をお願いいたします。
まず、当分科会の公益代表委員として、成蹊大学法学部教授の原昌登委員が就任されておりますが、本日は御欠席と聞いております。
次に、労働者代表の委員として、UAゼンセン常任中央執行委員の原健二委員が就任されております。一言御挨拶をお願いいたします。
○原(健)委員 UAゼンセンの原と申します。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 また、日本私鉄労働組合総連合会組織拡大・中小対策局長の伊藤委員も就任いただいておりますが、本日は御欠席とお伺いしております。
次に、使用者代表の委員として、東北電力株式会社人財部部長の菅野委員が就任されております。一言御挨拶をお願いします。
○菅野委員 菅野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 また、使用者代表の委員として、日本商工会議所産業政策第二部担当部長の清田委員が就任されております。一言御挨拶をお願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 よろしくお願いします。
さて、当分科会の下に置かれております各部会に所属する本審の委員、その他の委員である臨時委員、専門委員については、労働政策審議会令第7条第2項の規定により、分科会長である私が指名することとなっております。配付しております名簿のとおり、事前に指名させていただいておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の橋本委員、原昌登委員、労働者代表の石橋委員、伊藤委員、平山委員、使用者代表の馬渡委員が御欠席です。
使用者代表の清田委員におかれましては、所用により14時頃に御退席と伺っております。また、事務局の青山審議官が公務のため、遅れて御出席ということでございます。よろしくお願いいたします。
それでは、カメラ撮影はここまでとさせていただきたいと思います。御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○阿部分科会長 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催となっております。オンラインでの発言方法等につきましては、事前に事務局より送付しております「職業安定分科会の開催参加方法について」に沿って操作いただきますよろしくお願いいたします。
では、議事に入りたいと思います。最初の議題ですが、「雇用調整助成金に係るコロナ特例措置の効果検証結果について(報告)」でございます。
本日は、効果検証を行ったJILPT研究会の座長であります大阪大学大学院経済学研究科教授、佐々木先生、JILPTの髙松統括研究員、高橋主任研究員にお越しいただいております。
まず、事務局から経緯を簡単に御説明いただいた後、佐々木先生から御発言いただき、JILPTの髙松統括研究員から検証結果について御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○渡辺雇用開発企画課長 雇用開発企画課長の渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私のほうからはコロナ禍における雇用調整助成金の特例措置の効果検証の経緯について、参考資料1のほうを先に御覧いただく形で御説明をしたいと思います。
1ページ目を御覧ください。今回の効果検証の経緯でございますが、厚生労働省からの要請によりまして、JILPTにおいて2021年10月から2025年2月まで計12回、佐々木先生を座長とする労働経済学の専門家の方々をメンバーとする研究会を開催していただきまして、業務データのエビデンスに基づき、特例措置の効果について検証していただいたものでございます。
資料の下にございますけれども、この間、2022年10月には諸外国の雇用維持政策、2023年3月にはコロナ禍の1年目における雇用調整助成金の支給実態、2024年3月にはコロナ特例の活用に関する調査を事業所アンケート調査でまとめていただいております。そして、本日御報告する効果検証の結果は、これらの研究成果を踏まえる形で、一番下のオレンジ色で帯づけしているところでございますが、業務データと事業所アンケート調査結果のデータを接続したデータセットを用いて行われたものになります。この効果検証の経緯についての説明は以上になります。
続きまして、効果検証の概要を速報版として今回まとめていただきました佐々木先生、JILPTの髙松統括研究員のほうから御発言、御説明をお願いしたいと思います。
○佐々木教授 大阪大学の佐々木と申します。
このたびは「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置の効果検証」の座長を務めました。先ほど渡辺課長がおっしゃったように、2021年10月から計12回の研究会を開催し、そこで私を含む研究者、そしてJILPTの研究員の方が雇用調整助成金、緊安金の特例の効果というのを検証しました。特にこれらのことで雇用の維持に効果があったのか、事業所の廃業率に効果があったのか、入職・離職はどうなったのか、そして転職するときに転職する確率にどう影響したのかということを事細かに検証しております。
データに関しては、雇調金の業務データ、雇用保険業務データを使っております。非常に大規模なデータでありまして、このようなデータを提供いただきました厚生労働省の皆様にはこの場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。
基本的に我々が研究をする際には学術的な貢献ということを気にすると思われるかもしれませんが、実はそれ以上にこの研究成果がその政策に生かされるということを非常に望んでおります。今回この研究成果を基に、皆様で今後の雇調金制度の在り方というのをぜひ考えていただきたいと思っております。
先日プレスリリースも公表し、そして今回の報告書でもエグゼクティブサマリーというのがあって、できるだけ分かりやすい言葉で説明しているつもりでおりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
今日は6月の最終版に向けての意見交換の場と聞いております。ぜひ忌憚のない御意見をいただければと思います。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
○髙松統括研究員 JILPTの髙松と申します。
資料のほうを説明させていただきます。資料2を御覧ください。めくっていただきますと、「雇用調整助成金のコロナ特例に関する効果検証の結果を速報します」ということで、プレス発表資料を入れさせていただいております。
まず、1ページ冒頭にありますとおり、本研究は、厚生労働省の要請に基づき、行政記録情報(業務データ)を用いて雇調金のコロナ特例の効果検証を行ったものでございます。報告書は6月頃に公表予定ですが、本資料は、それに先立って結果の概要を速報版として公表したものであります。
続いて、3ページを御覧ください。JILPTの研究員と外部の有識者で構成する研究会、先ほど佐々木先生からも話がありましたが、こちらで検討を進めてきたというものであります。
続いて、5ページを御覧ください。報告書の構成と書いてありますけれども、報告書につきましても、この研究会メンバーで分担執筆して、研究会において議論を積み重ねてきたというものでございます。
続いて、6ページを御覧ください。今回使ったデータについてです。本研究では厚労省の業務データを活用したというのが特徴になりますが、具体的には一番上のところ、下線を引いてありますが、雇調金の支給業務に関するデータのほか、雇用保険の業務で用いているデータも提供いただいております。また、業務データだけでは分からない情報を補完するために、2023年に行いました事業所アンケート調査のデータも活用しております。
データの説明ですが、まず(1)のところを御覧ください。第2章で、雇調金の支給状況全体の集計をしております。これについては、雇調金の支給件数全件のデータを用いております。ただ、ここにも記載がありますが、コロナ期におきましては、迅速な支給を優先した結果、システムへの入力を省略している項目がありました。このため、矢印のところにあります情報に限られるということで、限られた情報で全数の分析をしたというものなります。
ただ、これだけでは詳細な計量分析ができませんので、その下の(2)にありますとおり、各章の計量分析におきましては、雇用保険適用事業所から抽出したサンプル事業所について、業務データを整理したデータセットをつくって、それを用いております。
具体的には、①とありますけれども、アンケート調査に回答した事業所、これは約5,300事業所ですが、これのほか、②とありますが、雇用保険適用事業所台帳から無作為抽出しました6万事業所もデータセットの対象事業所として業務データを整理しております。
接続したデータの種類は下の表のとおりになりますけれども、まずアンケート回答事業所については、アとして書いてありますが、アンケート調査データを接続しております。その右の雇調金業務データは、雇調金を受給したところについては雇調金業務データを接続しております。
これについては、7ページのイのところにありますけれども、先ほど申したとおり、データ項目が全数のデータについては限られておりますので、それ以外の詳しいデータにつきまして、厚生労働省の協力を得て、「遡及入力」と書いてありますが、データを遡って入力していただきまして、矢羽根の2つ目のところのデータ項目についてデータ提供いただくことができたというものです。
判定基礎期間と書いてありますけれども、これによって実際にいつ休業したのかというのが分かりますし、あと、休業対象や教育訓練対象の労働者数もこれによって得ることができたというものです。
その下、ウ、雇用保険業務データですが、(ア)の事業所データ、(イ)の被保険者データ、その事業所に属する労働者のデータについても接続しまして、各事業所において各月の雇用量の増減などを把握したというものです。
以上のデータによる分析をまとめたのが次の8ページ以降になります。1、報告書全体の主な結果と政策的示唆として、(1)から(6)まで示しております。続いて、2として分析上の限界と課題について4項目示しております。順次説明します。
まず、(1)支給実態についてです。「今回の雇調金の支給規模はリーマン期に比べても大規模であり、幅広い産業で活用されるとともに期間も長期に及んだ」とまとめております。
具体的にはその下、第2章のところでは、全支給件数について分析しておりますけれども、雇調金受給事業所の割合を出しておりますが、これが高かったということを示しております。
その下、(2)雇用維持効果についてであります。ここでは「雇調金は一定の雇用維持効果を発揮した。特に初期の段階において雇用維持効果が確認されるが、反面、利用が長期に及んだ場合、その効果は失われる傾向がある」とまとめております。
これについては、その下、第3章で事業所の退出による影響について分析しておりますけれども、雇調金による退出時期の先延ばし効果が示唆され、労働市場環境が悪化したコロナ初期に大量の失業発生を回避する役割を果たしたと評価できると分析されております。
また、その下、第5章では雇調金の受給経験と、廃業確率や雇用量の変化率との関係を分析しておりますけれども、これによりますと、雇調金の受給は、廃業確率の低下及び雇用量の維持に対して短期的な効果にとどまること、また、特に支給延日数が多いなど手厚い支給内容の場合には雇用量維持の効果が見られるが、長期受給では雇用量の減少に歯止めをかけることは困難であることが確認された、としております。
続いて、9ページ、(3)雇調金による教育訓練の雇用維持効果についてであります。これについては、「コロナ期の早い段階から行うと一定の雇用維持効果があったが、長期やコロナ期の遅い段階に行うと効果が薄れ、雇用維持効果は限定的であった」というふうにしております。
これについては、その下、第8章におきまして、雇調金による教育訓練は、①コロナ期の早い段階で行われれば廃業リスクを低くする可能性があること、②受給期間中の入職率や雇用純増加率に正の効果(雇用維持効果)を持つ場合があるが、これが持続しないこと、③受給終了後に入職率を引き下げる効果を持つ場合もあること、④離職率を抑制する効果は観察されなかったというところから、雇調金の教育訓練による雇用維持効果は限定的である、と分析されております。
続いて、(4)労働者への影響については、「離職者の再就職には、概ね受給事業所の離職者の方が非受給事業所の離職者よりも再就職に時間がかかった」としております。
これについては、その下、第7章で、受給事業所と非受給事業所の離職者の再就職、その違いについて分析しておりますけれども、受給事業所の離職は再就職確率に有意に負の効果を与えている、と分析しております。
その下の太字のところですが、以上の(2)から(4)までを踏まえた政策的示唆として、「雇調金は緊急避難的効果を有しており、ショック発生時には期待されるような雇用維持効果を発揮したが、その効果は受給期間が長期化するにつれ失われる傾向がある。こうした点を考慮すると、制度そのものには意義があるが、反面、利用期間が長期に及ばないようにしておくことが考えられる」とまとめております。
続いて、(5)の非正規雇用労働者の雇用維持を想定して設けられました緊安金についてです。これについては、「一定の効果は確認されるが、雇調金に比べ効果はやや弱く、限定的であった」としております。
これについては、その下、第6章で雇調金と緊安金の雇用維持効果について分析しておりますが、緊安金は雇調金に比べ小規模企業の受給確率が高くなかった、小規模企業への制度周知が十分でなかった可能性が示唆される、緊安金受給により雇用が維持される程度が、雇調金受給により維持される程度よりもやや小さかったと、分析しております。
10ページに参りますが、政策的示唆として、「非正規雇用労働者については、雇用維持のために緊安金を実施する場合には小規模企業への周知に注力することに加え、雇用維持がなされなかった場合の別の支援策についても検討しておくことが考えられる」とまとめております。
次に、(6)事務手続の簡素化については、第2章のところで判定基礎期間終了日から支給決定日までのタイムラグを見ておりますが、これが2020年の半ばには平均60日前後まで短縮して、概ね同水準で維持されたということを示して、早々に簡素化されたというふうにまとめたものです。
続いて、2の分析上の限界・課題についてであります。4項目あります。まず、(1)コロナ特例の検証の限界として書いてあります。助成率や上限額の引上げなどコロナ特例の個別の内容については、検証が容易ではなく、結論に至っておりません。
これは矢印のところにありますとおり、コロナ期とリーマン期ではショックの性質が異なることから、単純比較により特例の内容の違いによる効果の違いを観察することは難しいといった背景がございます。検証が難しい背景について述べております。
次に、11ページ、(2)中長期的な効果検証とノウハウの蓄積の必要性についてです。「雇調金など繰り返し効果検証が求められるテーマについては、中長期的な研究として継続的に行い、ノウハウを蓄積することが必要」としております。
政策的効果を見るには、終了直後だけでなくて、数年後まで観察する必要があるといったことや、データ構築、分析のノウハウの蓄積の観点からも継続的な研究が望ましいというものです。
続いて、(3)分析の視角の更新と業務データの重要性としまして、「次回の効果検証が効果的・効率的かつ速やかに行えるようデジタル化・事務簡素化の流れの中で、業務データの整理、データ項目の検討、他の業務データとの接合等に備えることが望まれる」としております。
検証結果には必要なデータが整備されているということが前提になりますけれども、雇調金の効果を見るには、雇用量だけでなくて、賃金や労働生産性との関係なども見ることが重要でありまして、効果検証における視角のアップデートが必要であるということなどを述べております。
最後に(4)更なる研究の蓄積の必要性についてとして、「多くの分析者による検証の蓄積を図ることが有効」としております。本研究は限られた人員、期間で行われたものであり、限界があります。幅広く多くの分析者により、様々な観点、手法から分析が行われ、知見が蓄積された上で、総合的な分析を行うことにより、より適切な検証が可能となると考えるものであります。
次が12ページ以降になります。ここでは参考として各章の分析が大まかにイメージできるように、分析内容の一部について簡略化した図表を用いて紹介しております。ざっとだけ紹介いたします。12ページの上の図は受給事業所の割合の推移を示したものです。2020年には約18%まで上がっているということです。
その下の図は、判定基礎期間から支給決定までのタイムラグが各月によってどうなったかを見ていますけれども、2020年7月以降には平均60日前後で落ち着いたというものです。
13ページの上の図は第3章の図です。雇用の変化率について受給事業所と非受給事業所、継続事業所と廃業事業所のクロスで4つに分解したものになります。グラフを見ていただきますと、2020年の各月には非受給事業所の退出による寄与が大きく、2021年以降には受給事業所の退出が大きくなっているのが見てとれるかと思います。一番下のだいだい色のところですが、受給事業所の存続事業所でも雇用減が一貫して大きな割合を占めているということが見てとれます。
その下の図は雇調金の受給終了年次別に事業所の存続率を見たものです。下に行くにつれてどんどん廃業しているというのが見てとれますが、受給終了時点が遅いほど、2023年度終了のところを見れば分かりますけれども、退出が早いということを示しております。
14ページ、図表4の(A)は、雇調金の受給終了後に雇用量の変化率への雇調金受給の影響の大きさがどの程度かというのを、経過月数を追って見たものになります。これはリーマンのときと比べております。赤がコロナ期、青がリーマン期ですけれども、コロナ期のほうが受給終了後の雇用量の回復が鈍いということを示しております。
15ページは第5章で、雇調金の受給経験と雇用量の変化との関係について推計した結果です。
上の表を見ていただきますと、受給直後、ここでは1~6か月前に受給していた場合について言っていますが、その場合には雇用量の維持に一定の効果が見られますけれども、長期受給の場合、ここでは7~12か月前の間で何月受給していたかという月数を見ておりますが、長期受給の場合には雇用量が減少する傾向があるということを示しております。
続いて、16ページ、第6章になりますけれども、ここでは2019年の雇用量を100として、雇調金、緊安金の受給・非受給によって2023年の雇用量に違いがあったかを分析したものです。その差を見ますと、雇調金では-2%台にとどまっておりますが、雇調金では-3.5ポイントとなっておりまして、緊安金による非正社員の維持効果は、雇調金による正社員の雇用維持効果よりもやや小さいということを示しております。
17ページでは、雇調金受給事業所の離職が再就職確率に与える影響を推計しております。上のグラフは、受給事業所の離職者のほうが非受給事業所の離職者よりも再就職確率が低かったということを示しております。
18ページ、雇調金による教育訓練が雇用増加率に与える影響を推計したものです。これを見ますと、2020年度または2022年度に受給を終了した事業所では、受給期間中の雇用増加率を上昇させる効果を持つけれども、その効果はその後にまでは持続せず、受給終了後には雇用増加率に影響を与えないといったことを示しております。
以上について冒頭のポイントのところにまとめております。
説明は以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
それでは、本件につきまして御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。では、新田委員、お願いいたします。
○新田委員 経団連、新田でございます。
丁寧な分析と御説明ありがとうございました。取りまとめに御尽力された皆様に改めて敬意を表したいと思います。
ちゃんと読み込めていないので、不勉強な部分で何点か確認させていただければと思っております。資料2の8ページの(2)の雇用維持効果の部分で、雇調金について、当初は維持効果が確認されるけれども、反面、長期に及ぶと効果は失われるとありました。15ページの図表5では、1~6か月と7~12か月と2つに区分して分析がされていますが、これをさらに細分化したデータはあるのですか。例えば1~3か月と3~6か月とか、7~9か月とか、もう少し細かく区切ったものがあるか、教えていただきたいというのが1点目です。
もう一点は、9ページの(4)労働者への影響についてです。離職者の再就職には、受給事業所の離職者のほうが時間がかかったと分析されています。数値からそういう結果が導き出されたと理解をしましたが、その理由の分析をされているのであれば教えていただきたいと思います。
もう一点、9ページの(5)から10ページにかけて記述のある緊安金についてです。緊安金の評価について、確かに一般の雇調金に比べると効果がやや小さかったと記述されていますが、今回、雇用保険被保険者でない労働者向けに緊急対策として予算措置も設けた上で行った措置であることも考えると、ややネガティブな表現という気がしております。この部分について、検討に当たってどのような議論があったのか、差し支えない範囲で教えていただければと思います。また、緊安金は周知に注力する必要がもっとあったと10ページに書かれた上で。「別の支援策についても検討しておくことが考えられる」とありますが、別の支援策について、具体的策が検討されたのであれば教えていただければと思います。6月の取りまとめにには書かれるのかもしれませんが、差し支えない範囲で教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
3点御質問をいただきましたので、どなたから。では、髙松統括研究員からお願いします。
○髙松統括研究員 新田委員、御質問ありがとうございます。
まず、1つ目の質問ですけれども、8ページの雇用維持効果のところ、第5章について、今回1か月から6か月と、7か月から12か月で区切った分析のものを1つ載せております。それ以外に区切ったものはないかというお話ですが、実際の報告書の中では、もうちょっと短いスパンで、半年を3か月、3か月に区切って同様の分析をしたというモデルも入れておりますけれども、結果としては同様な形になっております。ですので、ここの区切り方でどうこうというよりも、相対的に長い場合に効果が見られなくなるといったようなところ、そういうふうに受け止めていただければいいのかと思っております
2つ目の質問、9ページの(4)で受給事業所離職者のほうが時間がかかったことについてですが、今回の分析自体は被保険者データでいつ離職したかというタイミングを見て分析したものですので、何でそういった違いが出たかといったところまで、データに基づいた分析というのはしておりません。ただ、担当の研究者の推察として報告書に書いておりますのは、雇調金の受給に伴う休業期間中に家庭や年齢も含めた何らかの要因で職探しへの意欲が低下、喪失したために、再就職までの期間が長期化したものというふうに推察として書いております。
(5)の緊安金のほうの表現ぶりについてですが、ネガティブな書き方ではないかというような御指摘だったのですけれども、今回の報告書自体はどういったふうに政策をしたほうがいいというような内容を検討するというよりも、データに基づいて淡々とどういうことが客観的に見えたかということに徹してまとめたものになります。ですので、今回、その効果がやや弱かったといったところも、「やや」ということも書いておりますけれども、それを淡々と述べたものです。ネガティブな意味合いで書いたわけではなくて、客観的に書いたつもりでおります。もちろん、一定の効果はあるのだけれども、雇調金と比べると弱いといったような書き方ということになります。
周知が不足していた可能性ということを書いてありますが、これについては、実際小規模企業のほうで利用が雇調金に比べて割と少なかったといったところもあったことから、こういったことを書かせていただいたものになります。
他の施策については検討しているかということですけれども、ここは施策を検討するような検討会ではなかったものですから、特にそこではデータに基づいてこうだということまでは言っておりませんが、一般的に考えられますのは、セーフティネットとして、非正規雇用労働者ですので、正社員に比べると解雇、雇止めをされやすいといったところがあるかと思いますので、雇用保険や求職者支援制度、そういったセーフティネットもありますし、その後の再就職のための就職支援や職業訓練、そういったところが考えられるのではないかということでございます。
以上でよろしいでしょうか。
○阿部分科会長 新田委員、どうでしょうか。
○新田委員 御回答ありがとうございました。
もう一点だけ確認です。8ページの雇用の維持の効果について、1か月から6か月、3か月ごとに区切って分析したという御説明があったところですが、例えば6か月のところと7か月のところに大きなデータの変化があったということなのでしょうか。長期にと言ったときに、これを見る限りでは、7か月に入ったところで雇用量は一気に落ちてきたのか、それともなだらかに落ちていっているのか、そういった変化率これについてはどうでしょうか。
○阿部分科会長 どうぞ。
○髙松統括研究員 それについては、雇用維持効果を見るために、研究者のほうでどういったモデルをつくるかといったところを試行錯誤する中でこの区切り方をしているもので、そこでがくっと変わるかといったようなところをもってこうしたわけではないかと思います。全てのやり方で網羅して分析したわけではないかと思いますので、明確には答えられないですけれども、この区切り方によっても長期のほうは相対的に薄れるといったところが出ておりますので、がくっとそこに断絶があったということではないのではないかというふうに推察はされますが、ここでは様々なモデルをした中でこれをピックアップしたということでございます。
○阿部分科会長 ということですが、新田委員、よろしいですか。
○新田委員 どうもありがとうございました。最終的な報告書を拝見してしっかり勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
その他、御質問・御意見、いかがでしょうか。清田委員、お願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田でございます。
内容に関する質問というよりも、雇調金全般に関する意見を申し上げます。今回の調査結果などを踏まえて、また政策的な御示唆もいただいているところかと思います。今回の結果を踏まえ、改めて非常事態における雇用の維持・安定にどのような支援が有効なのかということについては、非常事態に直面したときに慌てて検討するのではなく、平時に検討を行う必要があると考えております。検討にあたっては、雇調金を用いるかどうか、財源をどう考えるのかという点を併せて検討していただきたいと考えております。コロナのような国全体の経済活動が抑制されるような非常事態で雇調金を使うことが必ずしも適切ではなかったのではないかという点については、当初から我々として申し上げてきたところでございます。そうした全体的な検討についても、今回の検証を通じてこうした場で議論ができればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
まず、調査を実施いただきありがとうございました。検証結果にも記載がありましたが、コロナ特例は特殊な例であり、検証に限界があるということについては理解できるものと考えております。今後、検証を進めていく中では、可能であれば産業別や職種別の分析なども実施いただきたいと思っております。
また、「主な政策的示唆」も示していただいていますが、この内容だけでは腹落ちしない部分もありますので、多角的な視点から検証できる十分なデータを集め、議論できるようにする必要があると思いますので、意見として申し上げます。
以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
もしなければ、私からも2点ほど。まず、1点目ですが、マクロ全体で見て雇用を維持できたのはどれぐらいだったのか。難しいことは重々承知していますけれども、可能であれば分析していただきたいなと。今回の研究でできなければ、いつか何がしか、雇用維持がどれぐらいできたのか、できなかったのか。先ほど清田委員から財源のお話がありましたが、雇用保険財政がかなり厳しくなっていたわけですが、それに対してどれだけ雇用維持効果があったのかという分析というのは大事なのではないかなと思いました。
もう一点ですが、コロナ禍の雇用調整助成金では助成率が上がったり、緊急雇用安定助成金が創設されたりしたわけですが、これがどういった経緯で助成率が上がることになったのか、そして緊安金が創設されたのかといったところ、その経緯を報告書に入れていただけると、読み手側には分かりやすくなるのではないか。コロナ禍で制度変更が起こった背景を理解しやすくなるのではないかと思います。もし時間が許せば、その経緯も報告書の中で少しお触れいただいたらどうかなと思いました。
私からは意見として2点お話をさせていただきました。
もし何か事務局からあれば。
○髙松統括研究員 御意見ありがとうございます。
まず、前段のマクロで見てどれぐらい失業を抑えたかといったところですけれども、ここは関心のあるところではあるのですが、例えば令和3年版の労働経済白書の中で厚生労働省で推計されたものがあります。そこも様々な前提を置いて、仮定を置いた上でこれぐらいの効果があったのではないかと見ておるのですけれども、結局、その仮定の置き方によってかなり変わってきますし、実際今回ここまでの特例措置がなされなかった場合にどこまで使われたかといったところも、かなり前提を置かなければならないというところもあり、今回はこのデータの中ではやらなかったといったところがあります。ですので、全体について言えば、厚生労働省自身の分析もありますので、そういったところも参照いただければよろしいのかなと感じた次第です。
助成額、助成率や緊安金の経緯といったところで言いますと、そこは恐らく厚労省のほうでまとめられないと内容が分からないところですし、今回データの分析ということでJILPTが依頼を受けたものですので、どこまで書けるかといったところです。実際にどのように助成率が変わっていったかとか、そういった資料は厚生労働省の資料がありますので、そういったところはなるべく入れて、後から振り返ってどのような特例がなされたかというのが見られるようにしたいとは思いますが、そこにはどういう人たちが絡んでとか、そういった経緯という形ではちょっと難しいかと思いますが、どのように変わってきたかというのはなるべく資料を入れたいと考えております。
ありがとうございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
ほかに。黒澤委員、お願いします。
○黒澤委員 ありがとうございます。とにかくこのすばらしい研究に御尽力いただいた先生方に敬意を表し、本当にありがとうございましたと申し上げたい。
また、大規模な業務データを御提供くださり、それをベースに得られたエビデンスを政策論議に資する形で御提供くださったこと自体もすばらしいことだと思いました。
報告書でも示されているとおり、このような業務データを活用した検証のノウハウを蓄積し、今後も引き続き検証し続けること、そして何より今回得られた知見を今後の政策に生かしていただくということが大変重要だと思いますので、この場をお借りしてどうぞよろしくお願いします。
その上で1つお伺いします。雇調金のそもそもの目的には、一時的な景気の後退期に人的資本を獲得した従業員を解雇することなく、景気の拡大に応じて生産体制の拡大に速やかに対応できるように支援するという点もあったと思います。今回、長期にわたる雇調金の利用については、雇用維持効果が失われるという結果が出たわけですが、同じような業種であっても、雇調金が支給されたことによって景気拡大期に生産体制拡大がより速やかに行われたかという視点でみるといかがでしたでしょうか。
今般の研究では別途事業所アンケートを実施されたということなので、そちらで売上げ等のデータを取られたのであれば、そういった分析も可能かとは思いますが、第4章で雇調金を受給すると雇用回復が遅れるということだったので、恐らくそういった効果は大きくなかったのでしょうか。その辺り、業種ごとにもう少し詳細に分析していただけるとクリアになることがあるのかなとも思いましてお伺いする次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、統括研究員、お願いします。
○髙松統括研究員 黒澤委員、御質問ありがとうございます。
1つ目は、政策に生かす点という御意見ですね。ご質問の雇調金の目的が拡大期に備えるというところで、実際にコロナから戻った後に、業種によってはそれがあったからすぐに戻れたといったような個別の話も伺ったりしますので、確かに業種によってかなり違ってくるというところはあるかと思います。
まず、今回の分析について全体的に言いますと、もちろん業務データから業種は把握できておりますので、業種ももちろんコントロールする形で様々計量分析はしておりますし、固定効果分析とかで個別の事業所の、業種も含めた特性も踏まえて平均的にどうだったかといったところを今回出したというのが多くの分析でなされたところであります。
また、例えば第3章のところでは、雇用変動率について影響を特に受けた産業、宿泊・飲食や生活関連サービス業、そういったところだけ取り出して雇用量の変動について、廃業や継続事業所の影響がどうだったかというところを見ておりますので、データとしては今回見たところであります。
ただ、今回こういった形でまとめましたけれども、こういう研究がありますと、さらにもっと細かい産業ごとや、産業でサンプルを区切って分析したらどうかとか、これを御覧になった方からそういった御要望が出てくるかと思いますが、そういった意味でも継続的にやるというところは必要なのかなと感じた次第であります。
よろしいでしょうか。
○黒澤委員 ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
○髙松統括研究員 よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、ほかにいかがですか。
もしなければ、最後に山田職業安定局長から御発言がございます。お願いします。
○山田局長 今回コロナ禍や能登半島震災における雇調金の在り方について議論をする際、委員からの御指摘も踏まえて、昨年12月13日にJILPTの検証結果も踏まえて、今後労政審において雇調金の在り方についてしっかり検討していく旨の発言を私からさせていただいて、今回議題とさせていただいたところです。
ただ、一方で、現在、実は今、アメリカの関税措置の問題の雇用への影響を注視しなければいけないような状況の中で、あえて雇調金の在り方の検証をするということ、お約束した内容をするかどうかというのは、一定躊躇はありました。ただ、雇用調整助成金というのは、1970年代にオイルショックを契機に創設されて、既に半世紀近くがたっておりますが、その間雇調金の大規模発動というのは何度もされてきた、しかし、その検証が十分されてきたとは到底言えないという状況があります。
雇調金をめぐっては、今ではあまり信じがたい話ですけれども、廃止しろという議論が長く続いたこともありますし、時に拡張論、どんどん特例を発動しろといった議論も出るなど、この半世紀の間、雇調金をめぐる議論にはかなりの混乱が起きておりました。
そうした中で、ちゃんとデータを使ってしっかり検証をしてこなかったということが、恐らく議論を混乱させたことの背景にあると思います。今、我々のほうでも、今回はJILPTのコロナ禍での検証結果ですけれども、もう少し遡って雇調金がどういうふうに推移してきたかなど、幅広な検証を事務局的ではしております。資本主義社会においては、政策がどれだけうまく進もうが、景気循環は起きる。その影響をどれだけ最小限に食い止めるかということが政府に与えられたミッションだと思いますが、その中で雇用調整助成金というのは最も重要なツールではありますけれども、それをどうやって使っていくのかということについて、委員の中からの御意見にもありますように、今のような平時においてきちんと議論しなければいけないと思っております。今回はそのとば口としてJILPTのコロナ禍の検証ということを素材にして御議論いただきましたけれども、雇調金の検証作業については続けてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 それでは、本議題は以上とさせていただきたいと思います。
次は「将来を見据えたハローワークにおけるAI活用について(報告)」でございます。
それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○井上首席職業指導官 続きまして、議題2、ハローワークにおけるAIの活用について御説明をいたします。資料3を御覧ください。
まず、1ページをお開きいただきまして、これまでの検討状況を御説明したいと思います。ハローワークにおけるAIの活用につきましては、昨年度、職業安定局内に検討プロジェクトを立ち上げまして、外部の有識者の方々の協力の下、AI事業者、AI技術を用いたベンダー、そしてハローワークなどからのヒアリングを行ってまいりました。この中で活用できそうな業務に関し、導入の効果、開発のコスト、リスク、そういった評価項目を基に、実現性とか導入のタイミングの検討を行ってきたところであります。この結果につきましては4月22日にプレス発表をしておりますが、本日本分科会に報告するものになります。
2ページを御覧いただきたいと思います。AIを活用してハローワークの目指すべき姿として3点まとめております。1点目として、利用者からの問合せなど、こういったものに対して迅速な対応を図っていく。それを通じたハローワークインターネットサービス等の利便性の向上。2点目として、子育てのためになかなか来所することができない、時間が取れないという利用者の方々が幅広くハローワークにアクセスできるような幅広い利用者の拡大。3点目といたしまして、AIの活用によって事務作業のサポートをし、職員の負担軽減を図っていき、窓口のサービスの向上を図っていく。こういった3つの観点からハローワークにおけるAIを活用していこうということを取りまとめたところでございます。
具体的な中味については、3ページを御覧いただきたいと思います。まず、本年度におきましては、左側の説明になりますけれども、ハローワークにおいて職業紹介を行う職員向けに求人のレコメンドとか求人条件緩和指導の業務に関し、AIの活用を行う実証的な検証を全国10か所のハローワークで行うこととしております。取組のイメージにつきましては、4ページに資料をおつけしておりますが、AIがマッチングデータを学習いたしまして、その結果に基づき、職員に提示された内容を最終的には職員が目で見て判断した上で、求職者、求人者の方に提案する。こういった仕組みを考えております。開始時期につきましては本年の秋頃を予定しているところでございます。
3ページにお戻りいただきまして、ハローワークインターネットサービスの利用者向けのAIの活用についてです。右側の説明になります。こちらにつきましては、生成AIの活用を念頭に置いておりまして、技術、コスト、リスク、そういった点を考慮いたしまして、まずは利用者からの問合せに対して自動的に受け付け、そして回答する機能。これを便宜的に「コンシェルジュ機能」と呼んでおりますが、こちらの実証検証を行うこととしたいと思います。内容につきましては、5ページを御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げた生成AIの活用につきましては、回答の正確性の担保とか、回答の精度の検証、運用ルールの整備、こういったものに課題もございますので、まずはβ版という形でリリースをし、その際、この実証事業に協力いただける求人者、求職者を募りまして、あくまで利用者の方の同意を得た上でサービスの提供を試験的に導入したいと考えております。こちらの取組につきましては、今後調達の手続を進めたいと考えておりますので、開始時期は来年の1月以降を予定しているところでございます。
こういったAIの活用につきましては、9ページに課題やリスクを整理させていただいております。AIを活用するに当たっての課題はいろいろございますが、この部分につきましては一つ一つ丁寧に対応し、まずは実証的な取組からスタートし、これらの結果を踏まえまして、ハローワークにおいて今後AIを活用していく取組を進めてまいりたいと考えております。
説明は以上になります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
それでは、本件につきまして御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックし、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。では、西委員、お願いします。
○西委員 労働側の全建総連の西と言います。
職業紹介にAIを活用することについて、補足資料のほうも見せてもらったのですけれども、EUは少し高リスクというふうにしているという記載がありました。どこまで活用するかということについては、中途の検証もしっかりすべきと思います。少し懸念をしているという意味合いで意見を少し述べさせていただきます。ただし、先ほどの説明にもありましたとおり、対面の窓口対応の時間帯に行くことができない方がたくさんいらっしゃるわけですから、全てを否定するという意味合いではないということは付言をしておきます。
以上です。
○阿部分科会長 どうぞ。
○井上首席職業指導官 今、西委員より御意見をいただいておりますが、当然リスクというものは認識しておりますので、今回の試行の取組におきましては、あくまで職員がAIが判断した求人の中味につきまして確認した上で、求職者の方に提案するということを想定しておりますし、今後さらに活用を進める上では、EUの規制等もございますので、そういったリスクを認識しながら活用をしっかり促していけるように対応してまいりたいと考えております。
○阿部分科会長 それでは、オンラインで山田委員から手が挙がっていると思います。お願いいたします。
○山田委員 山田です。御指名ありがとうございます。
私から2点申し上げます。ハローワークが担う役割や業務が増加している中で、機能強化の観点からも、職員の業務をサポートするAIの利活用は考えられると思う一方で、AIによる雇用への影響やアンコンシャス・バイアスの再生産につながりかねないなどの懸念もございます。また、ハローワークの職員に対するAIの特性などを含めた適切な事前学習の実施も重要だと思います。こうした観点なども踏まえ、求職者保護の観点から丁寧な実証実験をお願いしたいと思います。
もう一つは、AI活用の検証に当たりましては、現場と十分にコミュニケーションを取っていただき、ハローワーク職員などにこれまで以上の負担や混乱が生じることのないよう御配慮いただきたいと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。では、新田委員、お願いします。
○新田委員 経団連、新田でございます。御説明ありがとうございました。
今、御説明いただいた資料3の3ページ、ハローワークにおける取組(全体像)のところで、左側に「ハローワークにおいて職業紹介を行う職員向け」というところがあります。別の委員からもあったとおり、ハローワークの職員に対して事前の研修をしっかり行っていただきたいということを私からも要望いたします。
加えて、下のところの3ポツの令和7年度のところに、全国10か所のハローワークでやっていくというくだりがあります。全国10か所の選定の仕方について、どのように行われているのか。本省が10か所選んでいるのか、それとも手挙げ制で行っているのか。仮に手挙げ制だとすると、例えば都市部ですとか同じような性格のハローワーク、あるいは近い地域のハローワークに偏ることなく、都市部であったり、地方部であったり、違う地域という形で選んでおく必要があるのではないかなと思いますので、この点について、確認と意見を申し上げておきたいと思います。
私からは以上です。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、御質問がありましたので、お願いいたします。
○井上首席職業指導官 まず、最初の研修という点については、しっかりやってまいりたいと思っています。
そして、10か所の選定につきましては、基本的にAIの活用について、職員の方に自発的にやっていただきたいと考えておりますので、全国手挙げ方式というものを予定しております。今回実証実験ということになりますので、都市部、地方部、そして労働市場圏、ブロック別、そういったところを考慮しながらバランスよく選定をしてまいりたいと考えております。
○阿部分科会長 新田委員、よろしいですか。
○新田委員 ありがとうございました。手挙げ制ということで、それを踏まえた上で、うまくバランスの取れた10か所を選定して、その結果の横展開をしっかりと行って今後につなげていただければと思います。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、黒澤委員、お願いいたします。
○黒澤委員 ありがとうございます。
先ほど山田委員からお話があったアンコンシャス・バイアスのところは大変大事だと思います。特にジェンダーや年齢、経験年数です。これまでの履歴を学習データとして用いるので、差別があったり合理的ではない判断に基づくマッチングが多くあったとすれば、そのままそれがベストなマッチングとしてAIはサジェストしてきますので、その辺りについては、リスクのところに明示的には書かれていないようですが、是非心して下さいますよう、よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として伺っておきます。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○山田局長 安定局長です。
私からも補足的に。今回リアルなハローワークとハローワークインターネットサービス双方でAIの導入、実証実験をするということでありますが、ハローワークにしても数百万件の求人、数百万件の求職者を有しておりますし、ハローワークインターネットサービスは月間アクセス件数7000万件ということで、国内でも最大規模のデータベースということで、AIの実証実験としても最大規模だと思っております。その一方で、日本の場合は、ハローワークの職員の人口当たりの数というのは、恐らく先進国で最少ということで、少ない人数でどれだけ効率的にやれるのかということは絶えず考えていかなければいけないということがあります。
何人かの先生から言われたとおり、EUなどだと、この職業紹介に関してはハイリスクの項目として挙げられているということでありますが、そうゆう意味で今回の取組はある種チャレンジングなものだと思いますけれども、挑戦していかなければいけない課題だと思っております。今回リアルなハローワークについては、実際AIを使うのはハローワーク職員になりますので、ハローワーク職員からのフィードバックというのは絶えず本省に送ってもらう、ハローワークインターネットサービスについては、実証実験に参加していただくことを了解した方からのフィードバックを受けるということで、これは年度途中で基本的にシステムの改変も行うというアジャイル型の開発の仕方で、役所ではそういうことはあまりしないですけれども、基本的にそれぐらい柔軟な形でどんどん改変をしていくということで考えております。
リスクについては、これは記者発表するときも、普通だったらAIを活用するからすごいだろうという感じで我々としても言いたいところではありますが、あえてリスクについてもかなり詳しく説明をして、だけど、そういう中で挑戦をするのだということでメディアに対しても発信をしております。
ということなので、実際始めてどういうことが起きてくるのかということについては、恐らくほかの業界、ほかの省庁からも注目されているところだと思いますが、確実に現場でのいろいろなプラス面、マイナス面を含めたフィードバックを受け止めた形で先に進んでいきたいと思っております。
また分科会のほうにも折々に途中経過は示していかなければいけないと思っておりますので、まずはこういった事業をスタートさせるということで御紹介をした次第でございます。
○阿部分科会長 では、ほかに皆さんのほうから御質問・御意見がなければ、本議題は以上とさせていただきたいと思います。
次の議題は、「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の改定についてです。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○高田労働市場情報整備推進企画室長 労働市場情報整備推進企画室長です。
私から議題の3番目「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の改定について御説明させていただきます。資料4を御覧ください。表紙をおめくりいただきまして、概要になりますけれども、個人の働き方のニーズが多様化していく中で、求職者と企業のミスマッチを解消して、希望する人の円滑な労働移動を促進していくためには、やはり企業のほうから求職者の方に求職者等が求める情報を適切に提供していくということが有効だと考えております。そういった中で、令和5年6月に閣議決定した規制改革実施計画で、労働者がより適切に職業選択を行うため、また、企業にとっては円滑な人材確保を図るため、職場情報の開示に関するガイドラインを策定するということが記載されておりまして、こういった背景を踏まえまして、この分科会でも御議論いただきまして、令和6年3月に「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」というものを策定しております。
この手引におきましては、各企業がよりよい採用活動を行う上で参考とできるようなものとするために、現行労働関係法令で定められている開示項目がどのようなものなのかを整理するということと、あと、私どものほうで委託研究を行いまして、求職者が求める情報はどんなものがあるかを例示したり、企業が職場情報を提供するに当たって、一般的な課題や対応策といったものを整理してお示しさせていただいたというものになります。
今回、この手引を策定して1年少し経過しておりますので、所要の改正を行いたいと考えております。
資料の2番の改定の概要のところが主な改正内容ということで、主に4点ほど記載しております。1点目ですが、インターネットやSNS等で労働者を募集する際の記載事項の追加ということです。労働者を募集する際に、犯罪実行者の募集、いわゆる闇バイト募集というふうに誤解させないように、募集する際には、事業主の氏名、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を必ず表示するように厚生労働省から周知を行っておりますので、この手引におきましてもそこを明記させていただくというのが1点目になります。
2点目、マル2ですけれども、職場情報総合サイト(しょくばらぼ)の令和6年度のリニューアルに伴う修正です。しょくばらぼにつきましては、厚生労働省が運営しているサイトで、働き方とか採用状況に関する企業の情報を検索したり、比較したりできるサイトですが、しょくばらぼに掲載している企業につきましては、若者雇用促進総合サイト、女性の活躍推進企業データベース、両立支援のひろばという3サイト、これらも厚生労働省が運営しているサイトですけれども、これらのサイトのいずれかに掲載のある企業のみがしょくばらぼに掲載できるというようにもともと限定されておったのですけれども、令和7年2月に機能改修を行いまして、この3サイトに掲載されている企業に限らず、法人番号を有している企業であれば、どの企業であってもしょくばらぼを活用できるようにシステム改修を行っております。それに伴いまして、手引においても、しょくばらぼに関する記載を修正させていただいたというのが2点目になります。
3点目は別表において労働関係法令等に定められている開示項目・提供項目について示しているのですけれども、こちらは令和6年3月に手引を示してから関係法令等が改正されている箇所がありますので、そこの反映をしたというものになります。
4点目はその他記載の明確化ということで、具体的には、職業安定法において求職者等に虚偽の表示、誤解を生じさせることは禁止されており、提供情報は正確かつ最新の内容である必要があるということが明記されておりますので、手引にそこが明記されておりませんでしたので、法令遵守の観点からその規定を明記するといったものになります。
このほか、形式的な修正は行っていますけれども、御説明は省略させていただきますが、具体的な修正につきましては、参考資料2に新旧対照表がありますので、こちらを御覧いただければと思います。
本分科会でこの改定について御了承いただきましたら、速やかに手引改正を行わせていただきますが、手引周知のためにリーフレットも作成しておりますので、そちらのリーフレットについても更新させていただいて、労働局や関係団体の皆様にも周知の御依頼をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
私からの説明は以上になります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
では、本件について御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。では、原委員、お願いします。
○原(健)委員 御説明ありがとうございました。
今回の改定内容につきましては、関係法令の改正を踏まえた内容だと思いますので、特段の異論はございません。企業から求職者に対して積極的な情報提供がなされることで、ミスマッチの解消につながるよう、改めてこの手引の周知と利活用の促進を図っていただきたいと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○阿部分科会長 それでは、原委員から手引の周知、活用について御意見がございましたが、手引の内容そのものについては、皆様から御意見をいただいておりませんでした。そういうことですので、本件についてはこのまま異議なしとさせていただきまして、事務局においては確定に向けた調整を進めていただきたいと思います。
そのようにさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
最終的に取りまとめた後については、厚生労働省において公表、周知等を行っていただきたいと思います。
それでは、本議題は以上とさせていただきます。
本日予定されている議題は以上で終了いたしましたが、この際、委員から御発言がございましたらお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、本日の分科会はこれで終了とさせていただきます。ありがとうございました。
○黒澤総務課長 定刻になりましたので、ただいまから第213回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
今回から原則としてペーパーレスとしておりますので、会場で御参加いただいている委員の皆様におかれましては、お手元のタブレットで資料を御覧いただきますようお願いいたします。操作方法に御不明な点がございます場合は、事務局にお申しつけください。
また、オンラインで御参加いただいている委員の皆様におかれましては、恐縮でございますが、支障がない限り原則として画面をオンにしていただけますと大変幸いでございます。よろしくお願いいたします。
本日は、4月27日の労働政策審議会の委員の一斉改選後初めての職業安定分科会でございますので、初めに職業安定分科会長の選出について、事務局より御報告させていただきます。職業安定分科会長は、労働政策審議会令第6条第4項の規定によりまして、労働政策審議会の本審に所属する公益委員の中から本審に属する委員により選出されることとなっております。これによりまして、事前に阿部委員が分科会長に選出されておりますので、その旨、御報告申し上げます。
それでは、以降の議事進行につきましては、阿部分科会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 阿部でございます。今後議事がスムーズに進むように努力したいと思っておりますので、皆様の御協力をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
労働政策審議会令第6条第6項の規定によりまして、分科会長である私が分科会長代理を指名することになっております。職業安定分科会の委員のうち、公益を代表する方の中から指名することとなっておりますので、こちらを小畑委員に事前にお願いしております。よろしくお願いいたします。
小畑委員、一言御挨拶をお願いします。
○小畑委員 小畑でございます。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 よろしくお願いします。
議事に先立ちまして、新たに就任された委員を御紹介させていただきたいと思いますので、一言御挨拶をお願いいたします。
まず、当分科会の公益代表委員として、成蹊大学法学部教授の原昌登委員が就任されておりますが、本日は御欠席と聞いております。
次に、労働者代表の委員として、UAゼンセン常任中央執行委員の原健二委員が就任されております。一言御挨拶をお願いいたします。
○原(健)委員 UAゼンセンの原と申します。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 また、日本私鉄労働組合総連合会組織拡大・中小対策局長の伊藤委員も就任いただいておりますが、本日は御欠席とお伺いしております。
次に、使用者代表の委員として、東北電力株式会社人財部部長の菅野委員が就任されております。一言御挨拶をお願いします。
○菅野委員 菅野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 また、使用者代表の委員として、日本商工会議所産業政策第二部担当部長の清田委員が就任されております。一言御挨拶をお願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 よろしくお願いします。
さて、当分科会の下に置かれております各部会に所属する本審の委員、その他の委員である臨時委員、専門委員については、労働政策審議会令第7条第2項の規定により、分科会長である私が指名することとなっております。配付しております名簿のとおり、事前に指名させていただいておりますので、よろしくお願いいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の橋本委員、原昌登委員、労働者代表の石橋委員、伊藤委員、平山委員、使用者代表の馬渡委員が御欠席です。
使用者代表の清田委員におかれましては、所用により14時頃に御退席と伺っております。また、事務局の青山審議官が公務のため、遅れて御出席ということでございます。よろしくお願いいたします。
それでは、カメラ撮影はここまでとさせていただきたいと思います。御協力をよろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○阿部分科会長 本日の分科会は、Zoomによるオンラインと会場での開催となっております。オンラインでの発言方法等につきましては、事前に事務局より送付しております「職業安定分科会の開催参加方法について」に沿って操作いただきますよろしくお願いいたします。
では、議事に入りたいと思います。最初の議題ですが、「雇用調整助成金に係るコロナ特例措置の効果検証結果について(報告)」でございます。
本日は、効果検証を行ったJILPT研究会の座長であります大阪大学大学院経済学研究科教授、佐々木先生、JILPTの髙松統括研究員、高橋主任研究員にお越しいただいております。
まず、事務局から経緯を簡単に御説明いただいた後、佐々木先生から御発言いただき、JILPTの髙松統括研究員から検証結果について御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○渡辺雇用開発企画課長 雇用開発企画課長の渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私のほうからはコロナ禍における雇用調整助成金の特例措置の効果検証の経緯について、参考資料1のほうを先に御覧いただく形で御説明をしたいと思います。
1ページ目を御覧ください。今回の効果検証の経緯でございますが、厚生労働省からの要請によりまして、JILPTにおいて2021年10月から2025年2月まで計12回、佐々木先生を座長とする労働経済学の専門家の方々をメンバーとする研究会を開催していただきまして、業務データのエビデンスに基づき、特例措置の効果について検証していただいたものでございます。
資料の下にございますけれども、この間、2022年10月には諸外国の雇用維持政策、2023年3月にはコロナ禍の1年目における雇用調整助成金の支給実態、2024年3月にはコロナ特例の活用に関する調査を事業所アンケート調査でまとめていただいております。そして、本日御報告する効果検証の結果は、これらの研究成果を踏まえる形で、一番下のオレンジ色で帯づけしているところでございますが、業務データと事業所アンケート調査結果のデータを接続したデータセットを用いて行われたものになります。この効果検証の経緯についての説明は以上になります。
続きまして、効果検証の概要を速報版として今回まとめていただきました佐々木先生、JILPTの髙松統括研究員のほうから御発言、御説明をお願いしたいと思います。
○佐々木教授 大阪大学の佐々木と申します。
このたびは「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例措置の効果検証」の座長を務めました。先ほど渡辺課長がおっしゃったように、2021年10月から計12回の研究会を開催し、そこで私を含む研究者、そしてJILPTの研究員の方が雇用調整助成金、緊安金の特例の効果というのを検証しました。特にこれらのことで雇用の維持に効果があったのか、事業所の廃業率に効果があったのか、入職・離職はどうなったのか、そして転職するときに転職する確率にどう影響したのかということを事細かに検証しております。
データに関しては、雇調金の業務データ、雇用保険業務データを使っております。非常に大規模なデータでありまして、このようなデータを提供いただきました厚生労働省の皆様にはこの場をお借りしてお礼を申し上げたいと思います。
基本的に我々が研究をする際には学術的な貢献ということを気にすると思われるかもしれませんが、実はそれ以上にこの研究成果がその政策に生かされるということを非常に望んでおります。今回この研究成果を基に、皆様で今後の雇調金制度の在り方というのをぜひ考えていただきたいと思っております。
先日プレスリリースも公表し、そして今回の報告書でもエグゼクティブサマリーというのがあって、できるだけ分かりやすい言葉で説明しているつもりでおりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
今日は6月の最終版に向けての意見交換の場と聞いております。ぜひ忌憚のない御意見をいただければと思います。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
○髙松統括研究員 JILPTの髙松と申します。
資料のほうを説明させていただきます。資料2を御覧ください。めくっていただきますと、「雇用調整助成金のコロナ特例に関する効果検証の結果を速報します」ということで、プレス発表資料を入れさせていただいております。
まず、1ページ冒頭にありますとおり、本研究は、厚生労働省の要請に基づき、行政記録情報(業務データ)を用いて雇調金のコロナ特例の効果検証を行ったものでございます。報告書は6月頃に公表予定ですが、本資料は、それに先立って結果の概要を速報版として公表したものであります。
続いて、3ページを御覧ください。JILPTの研究員と外部の有識者で構成する研究会、先ほど佐々木先生からも話がありましたが、こちらで検討を進めてきたというものであります。
続いて、5ページを御覧ください。報告書の構成と書いてありますけれども、報告書につきましても、この研究会メンバーで分担執筆して、研究会において議論を積み重ねてきたというものでございます。
続いて、6ページを御覧ください。今回使ったデータについてです。本研究では厚労省の業務データを活用したというのが特徴になりますが、具体的には一番上のところ、下線を引いてありますが、雇調金の支給業務に関するデータのほか、雇用保険の業務で用いているデータも提供いただいております。また、業務データだけでは分からない情報を補完するために、2023年に行いました事業所アンケート調査のデータも活用しております。
データの説明ですが、まず(1)のところを御覧ください。第2章で、雇調金の支給状況全体の集計をしております。これについては、雇調金の支給件数全件のデータを用いております。ただ、ここにも記載がありますが、コロナ期におきましては、迅速な支給を優先した結果、システムへの入力を省略している項目がありました。このため、矢印のところにあります情報に限られるということで、限られた情報で全数の分析をしたというものなります。
ただ、これだけでは詳細な計量分析ができませんので、その下の(2)にありますとおり、各章の計量分析におきましては、雇用保険適用事業所から抽出したサンプル事業所について、業務データを整理したデータセットをつくって、それを用いております。
具体的には、①とありますけれども、アンケート調査に回答した事業所、これは約5,300事業所ですが、これのほか、②とありますが、雇用保険適用事業所台帳から無作為抽出しました6万事業所もデータセットの対象事業所として業務データを整理しております。
接続したデータの種類は下の表のとおりになりますけれども、まずアンケート回答事業所については、アとして書いてありますが、アンケート調査データを接続しております。その右の雇調金業務データは、雇調金を受給したところについては雇調金業務データを接続しております。
これについては、7ページのイのところにありますけれども、先ほど申したとおり、データ項目が全数のデータについては限られておりますので、それ以外の詳しいデータにつきまして、厚生労働省の協力を得て、「遡及入力」と書いてありますが、データを遡って入力していただきまして、矢羽根の2つ目のところのデータ項目についてデータ提供いただくことができたというものです。
判定基礎期間と書いてありますけれども、これによって実際にいつ休業したのかというのが分かりますし、あと、休業対象や教育訓練対象の労働者数もこれによって得ることができたというものです。
その下、ウ、雇用保険業務データですが、(ア)の事業所データ、(イ)の被保険者データ、その事業所に属する労働者のデータについても接続しまして、各事業所において各月の雇用量の増減などを把握したというものです。
以上のデータによる分析をまとめたのが次の8ページ以降になります。1、報告書全体の主な結果と政策的示唆として、(1)から(6)まで示しております。続いて、2として分析上の限界と課題について4項目示しております。順次説明します。
まず、(1)支給実態についてです。「今回の雇調金の支給規模はリーマン期に比べても大規模であり、幅広い産業で活用されるとともに期間も長期に及んだ」とまとめております。
具体的にはその下、第2章のところでは、全支給件数について分析しておりますけれども、雇調金受給事業所の割合を出しておりますが、これが高かったということを示しております。
その下、(2)雇用維持効果についてであります。ここでは「雇調金は一定の雇用維持効果を発揮した。特に初期の段階において雇用維持効果が確認されるが、反面、利用が長期に及んだ場合、その効果は失われる傾向がある」とまとめております。
これについては、その下、第3章で事業所の退出による影響について分析しておりますけれども、雇調金による退出時期の先延ばし効果が示唆され、労働市場環境が悪化したコロナ初期に大量の失業発生を回避する役割を果たしたと評価できると分析されております。
また、その下、第5章では雇調金の受給経験と、廃業確率や雇用量の変化率との関係を分析しておりますけれども、これによりますと、雇調金の受給は、廃業確率の低下及び雇用量の維持に対して短期的な効果にとどまること、また、特に支給延日数が多いなど手厚い支給内容の場合には雇用量維持の効果が見られるが、長期受給では雇用量の減少に歯止めをかけることは困難であることが確認された、としております。
続いて、9ページ、(3)雇調金による教育訓練の雇用維持効果についてであります。これについては、「コロナ期の早い段階から行うと一定の雇用維持効果があったが、長期やコロナ期の遅い段階に行うと効果が薄れ、雇用維持効果は限定的であった」というふうにしております。
これについては、その下、第8章におきまして、雇調金による教育訓練は、①コロナ期の早い段階で行われれば廃業リスクを低くする可能性があること、②受給期間中の入職率や雇用純増加率に正の効果(雇用維持効果)を持つ場合があるが、これが持続しないこと、③受給終了後に入職率を引き下げる効果を持つ場合もあること、④離職率を抑制する効果は観察されなかったというところから、雇調金の教育訓練による雇用維持効果は限定的である、と分析されております。
続いて、(4)労働者への影響については、「離職者の再就職には、概ね受給事業所の離職者の方が非受給事業所の離職者よりも再就職に時間がかかった」としております。
これについては、その下、第7章で、受給事業所と非受給事業所の離職者の再就職、その違いについて分析しておりますけれども、受給事業所の離職は再就職確率に有意に負の効果を与えている、と分析しております。
その下の太字のところですが、以上の(2)から(4)までを踏まえた政策的示唆として、「雇調金は緊急避難的効果を有しており、ショック発生時には期待されるような雇用維持効果を発揮したが、その効果は受給期間が長期化するにつれ失われる傾向がある。こうした点を考慮すると、制度そのものには意義があるが、反面、利用期間が長期に及ばないようにしておくことが考えられる」とまとめております。
続いて、(5)の非正規雇用労働者の雇用維持を想定して設けられました緊安金についてです。これについては、「一定の効果は確認されるが、雇調金に比べ効果はやや弱く、限定的であった」としております。
これについては、その下、第6章で雇調金と緊安金の雇用維持効果について分析しておりますが、緊安金は雇調金に比べ小規模企業の受給確率が高くなかった、小規模企業への制度周知が十分でなかった可能性が示唆される、緊安金受給により雇用が維持される程度が、雇調金受給により維持される程度よりもやや小さかったと、分析しております。
10ページに参りますが、政策的示唆として、「非正規雇用労働者については、雇用維持のために緊安金を実施する場合には小規模企業への周知に注力することに加え、雇用維持がなされなかった場合の別の支援策についても検討しておくことが考えられる」とまとめております。
次に、(6)事務手続の簡素化については、第2章のところで判定基礎期間終了日から支給決定日までのタイムラグを見ておりますが、これが2020年の半ばには平均60日前後まで短縮して、概ね同水準で維持されたということを示して、早々に簡素化されたというふうにまとめたものです。
続いて、2の分析上の限界・課題についてであります。4項目あります。まず、(1)コロナ特例の検証の限界として書いてあります。助成率や上限額の引上げなどコロナ特例の個別の内容については、検証が容易ではなく、結論に至っておりません。
これは矢印のところにありますとおり、コロナ期とリーマン期ではショックの性質が異なることから、単純比較により特例の内容の違いによる効果の違いを観察することは難しいといった背景がございます。検証が難しい背景について述べております。
次に、11ページ、(2)中長期的な効果検証とノウハウの蓄積の必要性についてです。「雇調金など繰り返し効果検証が求められるテーマについては、中長期的な研究として継続的に行い、ノウハウを蓄積することが必要」としております。
政策的効果を見るには、終了直後だけでなくて、数年後まで観察する必要があるといったことや、データ構築、分析のノウハウの蓄積の観点からも継続的な研究が望ましいというものです。
続いて、(3)分析の視角の更新と業務データの重要性としまして、「次回の効果検証が効果的・効率的かつ速やかに行えるようデジタル化・事務簡素化の流れの中で、業務データの整理、データ項目の検討、他の業務データとの接合等に備えることが望まれる」としております。
検証結果には必要なデータが整備されているということが前提になりますけれども、雇調金の効果を見るには、雇用量だけでなくて、賃金や労働生産性との関係なども見ることが重要でありまして、効果検証における視角のアップデートが必要であるということなどを述べております。
最後に(4)更なる研究の蓄積の必要性についてとして、「多くの分析者による検証の蓄積を図ることが有効」としております。本研究は限られた人員、期間で行われたものであり、限界があります。幅広く多くの分析者により、様々な観点、手法から分析が行われ、知見が蓄積された上で、総合的な分析を行うことにより、より適切な検証が可能となると考えるものであります。
次が12ページ以降になります。ここでは参考として各章の分析が大まかにイメージできるように、分析内容の一部について簡略化した図表を用いて紹介しております。ざっとだけ紹介いたします。12ページの上の図は受給事業所の割合の推移を示したものです。2020年には約18%まで上がっているということです。
その下の図は、判定基礎期間から支給決定までのタイムラグが各月によってどうなったかを見ていますけれども、2020年7月以降には平均60日前後で落ち着いたというものです。
13ページの上の図は第3章の図です。雇用の変化率について受給事業所と非受給事業所、継続事業所と廃業事業所のクロスで4つに分解したものになります。グラフを見ていただきますと、2020年の各月には非受給事業所の退出による寄与が大きく、2021年以降には受給事業所の退出が大きくなっているのが見てとれるかと思います。一番下のだいだい色のところですが、受給事業所の存続事業所でも雇用減が一貫して大きな割合を占めているということが見てとれます。
その下の図は雇調金の受給終了年次別に事業所の存続率を見たものです。下に行くにつれてどんどん廃業しているというのが見てとれますが、受給終了時点が遅いほど、2023年度終了のところを見れば分かりますけれども、退出が早いということを示しております。
14ページ、図表4の(A)は、雇調金の受給終了後に雇用量の変化率への雇調金受給の影響の大きさがどの程度かというのを、経過月数を追って見たものになります。これはリーマンのときと比べております。赤がコロナ期、青がリーマン期ですけれども、コロナ期のほうが受給終了後の雇用量の回復が鈍いということを示しております。
15ページは第5章で、雇調金の受給経験と雇用量の変化との関係について推計した結果です。
上の表を見ていただきますと、受給直後、ここでは1~6か月前に受給していた場合について言っていますが、その場合には雇用量の維持に一定の効果が見られますけれども、長期受給の場合、ここでは7~12か月前の間で何月受給していたかという月数を見ておりますが、長期受給の場合には雇用量が減少する傾向があるということを示しております。
続いて、16ページ、第6章になりますけれども、ここでは2019年の雇用量を100として、雇調金、緊安金の受給・非受給によって2023年の雇用量に違いがあったかを分析したものです。その差を見ますと、雇調金では-2%台にとどまっておりますが、雇調金では-3.5ポイントとなっておりまして、緊安金による非正社員の維持効果は、雇調金による正社員の雇用維持効果よりもやや小さいということを示しております。
17ページでは、雇調金受給事業所の離職が再就職確率に与える影響を推計しております。上のグラフは、受給事業所の離職者のほうが非受給事業所の離職者よりも再就職確率が低かったということを示しております。
18ページ、雇調金による教育訓練が雇用増加率に与える影響を推計したものです。これを見ますと、2020年度または2022年度に受給を終了した事業所では、受給期間中の雇用増加率を上昇させる効果を持つけれども、その効果はその後にまでは持続せず、受給終了後には雇用増加率に影響を与えないといったことを示しております。
以上について冒頭のポイントのところにまとめております。
説明は以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
それでは、本件につきまして御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。では、新田委員、お願いいたします。
○新田委員 経団連、新田でございます。
丁寧な分析と御説明ありがとうございました。取りまとめに御尽力された皆様に改めて敬意を表したいと思います。
ちゃんと読み込めていないので、不勉強な部分で何点か確認させていただければと思っております。資料2の8ページの(2)の雇用維持効果の部分で、雇調金について、当初は維持効果が確認されるけれども、反面、長期に及ぶと効果は失われるとありました。15ページの図表5では、1~6か月と7~12か月と2つに区分して分析がされていますが、これをさらに細分化したデータはあるのですか。例えば1~3か月と3~6か月とか、7~9か月とか、もう少し細かく区切ったものがあるか、教えていただきたいというのが1点目です。
もう一点は、9ページの(4)労働者への影響についてです。離職者の再就職には、受給事業所の離職者のほうが時間がかかったと分析されています。数値からそういう結果が導き出されたと理解をしましたが、その理由の分析をされているのであれば教えていただきたいと思います。
もう一点、9ページの(5)から10ページにかけて記述のある緊安金についてです。緊安金の評価について、確かに一般の雇調金に比べると効果がやや小さかったと記述されていますが、今回、雇用保険被保険者でない労働者向けに緊急対策として予算措置も設けた上で行った措置であることも考えると、ややネガティブな表現という気がしております。この部分について、検討に当たってどのような議論があったのか、差し支えない範囲で教えていただければと思います。また、緊安金は周知に注力する必要がもっとあったと10ページに書かれた上で。「別の支援策についても検討しておくことが考えられる」とありますが、別の支援策について、具体的策が検討されたのであれば教えていただければと思います。6月の取りまとめにには書かれるのかもしれませんが、差し支えない範囲で教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
3点御質問をいただきましたので、どなたから。では、髙松統括研究員からお願いします。
○髙松統括研究員 新田委員、御質問ありがとうございます。
まず、1つ目の質問ですけれども、8ページの雇用維持効果のところ、第5章について、今回1か月から6か月と、7か月から12か月で区切った分析のものを1つ載せております。それ以外に区切ったものはないかというお話ですが、実際の報告書の中では、もうちょっと短いスパンで、半年を3か月、3か月に区切って同様の分析をしたというモデルも入れておりますけれども、結果としては同様な形になっております。ですので、ここの区切り方でどうこうというよりも、相対的に長い場合に効果が見られなくなるといったようなところ、そういうふうに受け止めていただければいいのかと思っております
2つ目の質問、9ページの(4)で受給事業所離職者のほうが時間がかかったことについてですが、今回の分析自体は被保険者データでいつ離職したかというタイミングを見て分析したものですので、何でそういった違いが出たかといったところまで、データに基づいた分析というのはしておりません。ただ、担当の研究者の推察として報告書に書いておりますのは、雇調金の受給に伴う休業期間中に家庭や年齢も含めた何らかの要因で職探しへの意欲が低下、喪失したために、再就職までの期間が長期化したものというふうに推察として書いております。
(5)の緊安金のほうの表現ぶりについてですが、ネガティブな書き方ではないかというような御指摘だったのですけれども、今回の報告書自体はどういったふうに政策をしたほうがいいというような内容を検討するというよりも、データに基づいて淡々とどういうことが客観的に見えたかということに徹してまとめたものになります。ですので、今回、その効果がやや弱かったといったところも、「やや」ということも書いておりますけれども、それを淡々と述べたものです。ネガティブな意味合いで書いたわけではなくて、客観的に書いたつもりでおります。もちろん、一定の効果はあるのだけれども、雇調金と比べると弱いといったような書き方ということになります。
周知が不足していた可能性ということを書いてありますが、これについては、実際小規模企業のほうで利用が雇調金に比べて割と少なかったといったところもあったことから、こういったことを書かせていただいたものになります。
他の施策については検討しているかということですけれども、ここは施策を検討するような検討会ではなかったものですから、特にそこではデータに基づいてこうだということまでは言っておりませんが、一般的に考えられますのは、セーフティネットとして、非正規雇用労働者ですので、正社員に比べると解雇、雇止めをされやすいといったところがあるかと思いますので、雇用保険や求職者支援制度、そういったセーフティネットもありますし、その後の再就職のための就職支援や職業訓練、そういったところが考えられるのではないかということでございます。
以上でよろしいでしょうか。
○阿部分科会長 新田委員、どうでしょうか。
○新田委員 御回答ありがとうございました。
もう一点だけ確認です。8ページの雇用の維持の効果について、1か月から6か月、3か月ごとに区切って分析したという御説明があったところですが、例えば6か月のところと7か月のところに大きなデータの変化があったということなのでしょうか。長期にと言ったときに、これを見る限りでは、7か月に入ったところで雇用量は一気に落ちてきたのか、それともなだらかに落ちていっているのか、そういった変化率これについてはどうでしょうか。
○阿部分科会長 どうぞ。
○髙松統括研究員 それについては、雇用維持効果を見るために、研究者のほうでどういったモデルをつくるかといったところを試行錯誤する中でこの区切り方をしているもので、そこでがくっと変わるかといったようなところをもってこうしたわけではないかと思います。全てのやり方で網羅して分析したわけではないかと思いますので、明確には答えられないですけれども、この区切り方によっても長期のほうは相対的に薄れるといったところが出ておりますので、がくっとそこに断絶があったということではないのではないかというふうに推察はされますが、ここでは様々なモデルをした中でこれをピックアップしたということでございます。
○阿部分科会長 ということですが、新田委員、よろしいですか。
○新田委員 どうもありがとうございました。最終的な報告書を拝見してしっかり勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
その他、御質問・御意見、いかがでしょうか。清田委員、お願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田でございます。
内容に関する質問というよりも、雇調金全般に関する意見を申し上げます。今回の調査結果などを踏まえて、また政策的な御示唆もいただいているところかと思います。今回の結果を踏まえ、改めて非常事態における雇用の維持・安定にどのような支援が有効なのかということについては、非常事態に直面したときに慌てて検討するのではなく、平時に検討を行う必要があると考えております。検討にあたっては、雇調金を用いるかどうか、財源をどう考えるのかという点を併せて検討していただきたいと考えております。コロナのような国全体の経済活動が抑制されるような非常事態で雇調金を使うことが必ずしも適切ではなかったのではないかという点については、当初から我々として申し上げてきたところでございます。そうした全体的な検討についても、今回の検証を通じてこうした場で議論ができればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
まず、調査を実施いただきありがとうございました。検証結果にも記載がありましたが、コロナ特例は特殊な例であり、検証に限界があるということについては理解できるものと考えております。今後、検証を進めていく中では、可能であれば産業別や職種別の分析なども実施いただきたいと思っております。
また、「主な政策的示唆」も示していただいていますが、この内容だけでは腹落ちしない部分もありますので、多角的な視点から検証できる十分なデータを集め、議論できるようにする必要があると思いますので、意見として申し上げます。
以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。
もしなければ、私からも2点ほど。まず、1点目ですが、マクロ全体で見て雇用を維持できたのはどれぐらいだったのか。難しいことは重々承知していますけれども、可能であれば分析していただきたいなと。今回の研究でできなければ、いつか何がしか、雇用維持がどれぐらいできたのか、できなかったのか。先ほど清田委員から財源のお話がありましたが、雇用保険財政がかなり厳しくなっていたわけですが、それに対してどれだけ雇用維持効果があったのかという分析というのは大事なのではないかなと思いました。
もう一点ですが、コロナ禍の雇用調整助成金では助成率が上がったり、緊急雇用安定助成金が創設されたりしたわけですが、これがどういった経緯で助成率が上がることになったのか、そして緊安金が創設されたのかといったところ、その経緯を報告書に入れていただけると、読み手側には分かりやすくなるのではないか。コロナ禍で制度変更が起こった背景を理解しやすくなるのではないかと思います。もし時間が許せば、その経緯も報告書の中で少しお触れいただいたらどうかなと思いました。
私からは意見として2点お話をさせていただきました。
もし何か事務局からあれば。
○髙松統括研究員 御意見ありがとうございます。
まず、前段のマクロで見てどれぐらい失業を抑えたかといったところですけれども、ここは関心のあるところではあるのですが、例えば令和3年版の労働経済白書の中で厚生労働省で推計されたものがあります。そこも様々な前提を置いて、仮定を置いた上でこれぐらいの効果があったのではないかと見ておるのですけれども、結局、その仮定の置き方によってかなり変わってきますし、実際今回ここまでの特例措置がなされなかった場合にどこまで使われたかといったところも、かなり前提を置かなければならないというところもあり、今回はこのデータの中ではやらなかったといったところがあります。ですので、全体について言えば、厚生労働省自身の分析もありますので、そういったところも参照いただければよろしいのかなと感じた次第です。
助成額、助成率や緊安金の経緯といったところで言いますと、そこは恐らく厚労省のほうでまとめられないと内容が分からないところですし、今回データの分析ということでJILPTが依頼を受けたものですので、どこまで書けるかといったところです。実際にどのように助成率が変わっていったかとか、そういった資料は厚生労働省の資料がありますので、そういったところはなるべく入れて、後から振り返ってどのような特例がなされたかというのが見られるようにしたいとは思いますが、そこにはどういう人たちが絡んでとか、そういった経緯という形ではちょっと難しいかと思いますが、どのように変わってきたかというのはなるべく資料を入れたいと考えております。
ありがとうございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
ほかに。黒澤委員、お願いします。
○黒澤委員 ありがとうございます。とにかくこのすばらしい研究に御尽力いただいた先生方に敬意を表し、本当にありがとうございましたと申し上げたい。
また、大規模な業務データを御提供くださり、それをベースに得られたエビデンスを政策論議に資する形で御提供くださったこと自体もすばらしいことだと思いました。
報告書でも示されているとおり、このような業務データを活用した検証のノウハウを蓄積し、今後も引き続き検証し続けること、そして何より今回得られた知見を今後の政策に生かしていただくということが大変重要だと思いますので、この場をお借りしてどうぞよろしくお願いします。
その上で1つお伺いします。雇調金のそもそもの目的には、一時的な景気の後退期に人的資本を獲得した従業員を解雇することなく、景気の拡大に応じて生産体制の拡大に速やかに対応できるように支援するという点もあったと思います。今回、長期にわたる雇調金の利用については、雇用維持効果が失われるという結果が出たわけですが、同じような業種であっても、雇調金が支給されたことによって景気拡大期に生産体制拡大がより速やかに行われたかという視点でみるといかがでしたでしょうか。
今般の研究では別途事業所アンケートを実施されたということなので、そちらで売上げ等のデータを取られたのであれば、そういった分析も可能かとは思いますが、第4章で雇調金を受給すると雇用回復が遅れるということだったので、恐らくそういった効果は大きくなかったのでしょうか。その辺り、業種ごとにもう少し詳細に分析していただけるとクリアになることがあるのかなとも思いましてお伺いする次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、統括研究員、お願いします。
○髙松統括研究員 黒澤委員、御質問ありがとうございます。
1つ目は、政策に生かす点という御意見ですね。ご質問の雇調金の目的が拡大期に備えるというところで、実際にコロナから戻った後に、業種によってはそれがあったからすぐに戻れたといったような個別の話も伺ったりしますので、確かに業種によってかなり違ってくるというところはあるかと思います。
まず、今回の分析について全体的に言いますと、もちろん業務データから業種は把握できておりますので、業種ももちろんコントロールする形で様々計量分析はしておりますし、固定効果分析とかで個別の事業所の、業種も含めた特性も踏まえて平均的にどうだったかといったところを今回出したというのが多くの分析でなされたところであります。
また、例えば第3章のところでは、雇用変動率について影響を特に受けた産業、宿泊・飲食や生活関連サービス業、そういったところだけ取り出して雇用量の変動について、廃業や継続事業所の影響がどうだったかというところを見ておりますので、データとしては今回見たところであります。
ただ、今回こういった形でまとめましたけれども、こういう研究がありますと、さらにもっと細かい産業ごとや、産業でサンプルを区切って分析したらどうかとか、これを御覧になった方からそういった御要望が出てくるかと思いますが、そういった意味でも継続的にやるというところは必要なのかなと感じた次第であります。
よろしいでしょうか。
○黒澤委員 ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
○髙松統括研究員 よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、ほかにいかがですか。
もしなければ、最後に山田職業安定局長から御発言がございます。お願いします。
○山田局長 今回コロナ禍や能登半島震災における雇調金の在り方について議論をする際、委員からの御指摘も踏まえて、昨年12月13日にJILPTの検証結果も踏まえて、今後労政審において雇調金の在り方についてしっかり検討していく旨の発言を私からさせていただいて、今回議題とさせていただいたところです。
ただ、一方で、現在、実は今、アメリカの関税措置の問題の雇用への影響を注視しなければいけないような状況の中で、あえて雇調金の在り方の検証をするということ、お約束した内容をするかどうかというのは、一定躊躇はありました。ただ、雇用調整助成金というのは、1970年代にオイルショックを契機に創設されて、既に半世紀近くがたっておりますが、その間雇調金の大規模発動というのは何度もされてきた、しかし、その検証が十分されてきたとは到底言えないという状況があります。
雇調金をめぐっては、今ではあまり信じがたい話ですけれども、廃止しろという議論が長く続いたこともありますし、時に拡張論、どんどん特例を発動しろといった議論も出るなど、この半世紀の間、雇調金をめぐる議論にはかなりの混乱が起きておりました。
そうした中で、ちゃんとデータを使ってしっかり検証をしてこなかったということが、恐らく議論を混乱させたことの背景にあると思います。今、我々のほうでも、今回はJILPTのコロナ禍での検証結果ですけれども、もう少し遡って雇調金がどういうふうに推移してきたかなど、幅広な検証を事務局的ではしております。資本主義社会においては、政策がどれだけうまく進もうが、景気循環は起きる。その影響をどれだけ最小限に食い止めるかということが政府に与えられたミッションだと思いますが、その中で雇用調整助成金というのは最も重要なツールではありますけれども、それをどうやって使っていくのかということについて、委員の中からの御意見にもありますように、今のような平時においてきちんと議論しなければいけないと思っております。今回はそのとば口としてJILPTのコロナ禍の検証ということを素材にして御議論いただきましたけれども、雇調金の検証作業については続けてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 それでは、本議題は以上とさせていただきたいと思います。
次は「将来を見据えたハローワークにおけるAI活用について(報告)」でございます。
それでは、事務局より説明をお願いいたします。
○井上首席職業指導官 続きまして、議題2、ハローワークにおけるAIの活用について御説明をいたします。資料3を御覧ください。
まず、1ページをお開きいただきまして、これまでの検討状況を御説明したいと思います。ハローワークにおけるAIの活用につきましては、昨年度、職業安定局内に検討プロジェクトを立ち上げまして、外部の有識者の方々の協力の下、AI事業者、AI技術を用いたベンダー、そしてハローワークなどからのヒアリングを行ってまいりました。この中で活用できそうな業務に関し、導入の効果、開発のコスト、リスク、そういった評価項目を基に、実現性とか導入のタイミングの検討を行ってきたところであります。この結果につきましては4月22日にプレス発表をしておりますが、本日本分科会に報告するものになります。
2ページを御覧いただきたいと思います。AIを活用してハローワークの目指すべき姿として3点まとめております。1点目として、利用者からの問合せなど、こういったものに対して迅速な対応を図っていく。それを通じたハローワークインターネットサービス等の利便性の向上。2点目として、子育てのためになかなか来所することができない、時間が取れないという利用者の方々が幅広くハローワークにアクセスできるような幅広い利用者の拡大。3点目といたしまして、AIの活用によって事務作業のサポートをし、職員の負担軽減を図っていき、窓口のサービスの向上を図っていく。こういった3つの観点からハローワークにおけるAIを活用していこうということを取りまとめたところでございます。
具体的な中味については、3ページを御覧いただきたいと思います。まず、本年度におきましては、左側の説明になりますけれども、ハローワークにおいて職業紹介を行う職員向けに求人のレコメンドとか求人条件緩和指導の業務に関し、AIの活用を行う実証的な検証を全国10か所のハローワークで行うこととしております。取組のイメージにつきましては、4ページに資料をおつけしておりますが、AIがマッチングデータを学習いたしまして、その結果に基づき、職員に提示された内容を最終的には職員が目で見て判断した上で、求職者、求人者の方に提案する。こういった仕組みを考えております。開始時期につきましては本年の秋頃を予定しているところでございます。
3ページにお戻りいただきまして、ハローワークインターネットサービスの利用者向けのAIの活用についてです。右側の説明になります。こちらにつきましては、生成AIの活用を念頭に置いておりまして、技術、コスト、リスク、そういった点を考慮いたしまして、まずは利用者からの問合せに対して自動的に受け付け、そして回答する機能。これを便宜的に「コンシェルジュ機能」と呼んでおりますが、こちらの実証検証を行うこととしたいと思います。内容につきましては、5ページを御覧いただきたいと思います。先ほど申し上げた生成AIの活用につきましては、回答の正確性の担保とか、回答の精度の検証、運用ルールの整備、こういったものに課題もございますので、まずはβ版という形でリリースをし、その際、この実証事業に協力いただける求人者、求職者を募りまして、あくまで利用者の方の同意を得た上でサービスの提供を試験的に導入したいと考えております。こちらの取組につきましては、今後調達の手続を進めたいと考えておりますので、開始時期は来年の1月以降を予定しているところでございます。
こういったAIの活用につきましては、9ページに課題やリスクを整理させていただいております。AIを活用するに当たっての課題はいろいろございますが、この部分につきましては一つ一つ丁寧に対応し、まずは実証的な取組からスタートし、これらの結果を踏まえまして、ハローワークにおいて今後AIを活用していく取組を進めてまいりたいと考えております。
説明は以上になります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
それでは、本件につきまして御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックし、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。いかがでしょうか。では、西委員、お願いします。
○西委員 労働側の全建総連の西と言います。
職業紹介にAIを活用することについて、補足資料のほうも見せてもらったのですけれども、EUは少し高リスクというふうにしているという記載がありました。どこまで活用するかということについては、中途の検証もしっかりすべきと思います。少し懸念をしているという意味合いで意見を少し述べさせていただきます。ただし、先ほどの説明にもありましたとおり、対面の窓口対応の時間帯に行くことができない方がたくさんいらっしゃるわけですから、全てを否定するという意味合いではないということは付言をしておきます。
以上です。
○阿部分科会長 どうぞ。
○井上首席職業指導官 今、西委員より御意見をいただいておりますが、当然リスクというものは認識しておりますので、今回の試行の取組におきましては、あくまで職員がAIが判断した求人の中味につきまして確認した上で、求職者の方に提案するということを想定しておりますし、今後さらに活用を進める上では、EUの規制等もございますので、そういったリスクを認識しながら活用をしっかり促していけるように対応してまいりたいと考えております。
○阿部分科会長 それでは、オンラインで山田委員から手が挙がっていると思います。お願いいたします。
○山田委員 山田です。御指名ありがとうございます。
私から2点申し上げます。ハローワークが担う役割や業務が増加している中で、機能強化の観点からも、職員の業務をサポートするAIの利活用は考えられると思う一方で、AIによる雇用への影響やアンコンシャス・バイアスの再生産につながりかねないなどの懸念もございます。また、ハローワークの職員に対するAIの特性などを含めた適切な事前学習の実施も重要だと思います。こうした観点なども踏まえ、求職者保護の観点から丁寧な実証実験をお願いしたいと思います。
もう一つは、AI活用の検証に当たりましては、現場と十分にコミュニケーションを取っていただき、ハローワーク職員などにこれまで以上の負担や混乱が生じることのないよう御配慮いただきたいと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。では、新田委員、お願いします。
○新田委員 経団連、新田でございます。御説明ありがとうございました。
今、御説明いただいた資料3の3ページ、ハローワークにおける取組(全体像)のところで、左側に「ハローワークにおいて職業紹介を行う職員向け」というところがあります。別の委員からもあったとおり、ハローワークの職員に対して事前の研修をしっかり行っていただきたいということを私からも要望いたします。
加えて、下のところの3ポツの令和7年度のところに、全国10か所のハローワークでやっていくというくだりがあります。全国10か所の選定の仕方について、どのように行われているのか。本省が10か所選んでいるのか、それとも手挙げ制で行っているのか。仮に手挙げ制だとすると、例えば都市部ですとか同じような性格のハローワーク、あるいは近い地域のハローワークに偏ることなく、都市部であったり、地方部であったり、違う地域という形で選んでおく必要があるのではないかなと思いますので、この点について、確認と意見を申し上げておきたいと思います。
私からは以上です。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、御質問がありましたので、お願いいたします。
○井上首席職業指導官 まず、最初の研修という点については、しっかりやってまいりたいと思っています。
そして、10か所の選定につきましては、基本的にAIの活用について、職員の方に自発的にやっていただきたいと考えておりますので、全国手挙げ方式というものを予定しております。今回実証実験ということになりますので、都市部、地方部、そして労働市場圏、ブロック別、そういったところを考慮しながらバランスよく選定をしてまいりたいと考えております。
○阿部分科会長 新田委員、よろしいですか。
○新田委員 ありがとうございました。手挙げ制ということで、それを踏まえた上で、うまくバランスの取れた10か所を選定して、その結果の横展開をしっかりと行って今後につなげていただければと思います。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。
では、黒澤委員、お願いいたします。
○黒澤委員 ありがとうございます。
先ほど山田委員からお話があったアンコンシャス・バイアスのところは大変大事だと思います。特にジェンダーや年齢、経験年数です。これまでの履歴を学習データとして用いるので、差別があったり合理的ではない判断に基づくマッチングが多くあったとすれば、そのままそれがベストなマッチングとしてAIはサジェストしてきますので、その辺りについては、リスクのところに明示的には書かれていないようですが、是非心して下さいますよう、よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として伺っておきます。
ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
○山田局長 安定局長です。
私からも補足的に。今回リアルなハローワークとハローワークインターネットサービス双方でAIの導入、実証実験をするということでありますが、ハローワークにしても数百万件の求人、数百万件の求職者を有しておりますし、ハローワークインターネットサービスは月間アクセス件数7000万件ということで、国内でも最大規模のデータベースということで、AIの実証実験としても最大規模だと思っております。その一方で、日本の場合は、ハローワークの職員の人口当たりの数というのは、恐らく先進国で最少ということで、少ない人数でどれだけ効率的にやれるのかということは絶えず考えていかなければいけないということがあります。
何人かの先生から言われたとおり、EUなどだと、この職業紹介に関してはハイリスクの項目として挙げられているということでありますが、そうゆう意味で今回の取組はある種チャレンジングなものだと思いますけれども、挑戦していかなければいけない課題だと思っております。今回リアルなハローワークについては、実際AIを使うのはハローワーク職員になりますので、ハローワーク職員からのフィードバックというのは絶えず本省に送ってもらう、ハローワークインターネットサービスについては、実証実験に参加していただくことを了解した方からのフィードバックを受けるということで、これは年度途中で基本的にシステムの改変も行うというアジャイル型の開発の仕方で、役所ではそういうことはあまりしないですけれども、基本的にそれぐらい柔軟な形でどんどん改変をしていくということで考えております。
リスクについては、これは記者発表するときも、普通だったらAIを活用するからすごいだろうという感じで我々としても言いたいところではありますが、あえてリスクについてもかなり詳しく説明をして、だけど、そういう中で挑戦をするのだということでメディアに対しても発信をしております。
ということなので、実際始めてどういうことが起きてくるのかということについては、恐らくほかの業界、ほかの省庁からも注目されているところだと思いますが、確実に現場でのいろいろなプラス面、マイナス面を含めたフィードバックを受け止めた形で先に進んでいきたいと思っております。
また分科会のほうにも折々に途中経過は示していかなければいけないと思っておりますので、まずはこういった事業をスタートさせるということで御紹介をした次第でございます。
○阿部分科会長 では、ほかに皆さんのほうから御質問・御意見がなければ、本議題は以上とさせていただきたいと思います。
次の議題は、「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の改定についてです。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○高田労働市場情報整備推進企画室長 労働市場情報整備推進企画室長です。
私から議題の3番目「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の改定について御説明させていただきます。資料4を御覧ください。表紙をおめくりいただきまして、概要になりますけれども、個人の働き方のニーズが多様化していく中で、求職者と企業のミスマッチを解消して、希望する人の円滑な労働移動を促進していくためには、やはり企業のほうから求職者の方に求職者等が求める情報を適切に提供していくということが有効だと考えております。そういった中で、令和5年6月に閣議決定した規制改革実施計画で、労働者がより適切に職業選択を行うため、また、企業にとっては円滑な人材確保を図るため、職場情報の開示に関するガイドラインを策定するということが記載されておりまして、こういった背景を踏まえまして、この分科会でも御議論いただきまして、令和6年3月に「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」というものを策定しております。
この手引におきましては、各企業がよりよい採用活動を行う上で参考とできるようなものとするために、現行労働関係法令で定められている開示項目がどのようなものなのかを整理するということと、あと、私どものほうで委託研究を行いまして、求職者が求める情報はどんなものがあるかを例示したり、企業が職場情報を提供するに当たって、一般的な課題や対応策といったものを整理してお示しさせていただいたというものになります。
今回、この手引を策定して1年少し経過しておりますので、所要の改正を行いたいと考えております。
資料の2番の改定の概要のところが主な改正内容ということで、主に4点ほど記載しております。1点目ですが、インターネットやSNS等で労働者を募集する際の記載事項の追加ということです。労働者を募集する際に、犯罪実行者の募集、いわゆる闇バイト募集というふうに誤解させないように、募集する際には、事業主の氏名、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を必ず表示するように厚生労働省から周知を行っておりますので、この手引におきましてもそこを明記させていただくというのが1点目になります。
2点目、マル2ですけれども、職場情報総合サイト(しょくばらぼ)の令和6年度のリニューアルに伴う修正です。しょくばらぼにつきましては、厚生労働省が運営しているサイトで、働き方とか採用状況に関する企業の情報を検索したり、比較したりできるサイトですが、しょくばらぼに掲載している企業につきましては、若者雇用促進総合サイト、女性の活躍推進企業データベース、両立支援のひろばという3サイト、これらも厚生労働省が運営しているサイトですけれども、これらのサイトのいずれかに掲載のある企業のみがしょくばらぼに掲載できるというようにもともと限定されておったのですけれども、令和7年2月に機能改修を行いまして、この3サイトに掲載されている企業に限らず、法人番号を有している企業であれば、どの企業であってもしょくばらぼを活用できるようにシステム改修を行っております。それに伴いまして、手引においても、しょくばらぼに関する記載を修正させていただいたというのが2点目になります。
3点目は別表において労働関係法令等に定められている開示項目・提供項目について示しているのですけれども、こちらは令和6年3月に手引を示してから関係法令等が改正されている箇所がありますので、そこの反映をしたというものになります。
4点目はその他記載の明確化ということで、具体的には、職業安定法において求職者等に虚偽の表示、誤解を生じさせることは禁止されており、提供情報は正確かつ最新の内容である必要があるということが明記されておりますので、手引にそこが明記されておりませんでしたので、法令遵守の観点からその規定を明記するといったものになります。
このほか、形式的な修正は行っていますけれども、御説明は省略させていただきますが、具体的な修正につきましては、参考資料2に新旧対照表がありますので、こちらを御覧いただければと思います。
本分科会でこの改定について御了承いただきましたら、速やかに手引改正を行わせていただきますが、手引周知のためにリーフレットも作成しておりますので、そちらのリーフレットについても更新させていただいて、労働局や関係団体の皆様にも周知の御依頼をさせていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
私からの説明は以上になります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。
では、本件について御質問・御意見がございましたら、挙手または「手をあげる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、お名前を名乗ってから御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。では、原委員、お願いします。
○原(健)委員 御説明ありがとうございました。
今回の改定内容につきましては、関係法令の改正を踏まえた内容だと思いますので、特段の異論はございません。企業から求職者に対して積極的な情報提供がなされることで、ミスマッチの解消につながるよう、改めてこの手引の周知と利活用の促進を図っていただきたいと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。
ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○阿部分科会長 それでは、原委員から手引の周知、活用について御意見がございましたが、手引の内容そのものについては、皆様から御意見をいただいておりませんでした。そういうことですので、本件についてはこのまま異議なしとさせていただきまして、事務局においては確定に向けた調整を進めていただきたいと思います。
そのようにさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
(首肯する委員あり)
○阿部分科会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきたいと思います。
最終的に取りまとめた後については、厚生労働省において公表、周知等を行っていただきたいと思います。
それでは、本議題は以上とさせていただきます。
本日予定されている議題は以上で終了いたしましたが、この際、委員から御発言がございましたらお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、本日の分科会はこれで終了とさせていただきます。ありがとうございました。