第10回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」議事録

日時

令和7年5月14日(水)12時00分~14時00分

場所

東京都千代田区霞が関3丁目2番5号
こども家庭庁 共用大会議室(14階)

議題

議論の整理(案)について

議事

議事内容
○柴田保険局保険課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第10回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき、ありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにユーチューブにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承くださいますよう、よろしくお願いいたします。
まず、本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。
本日は、前田構成員、末松構成員、寺尾構成員より御欠席の連絡をいただいております。
また、御都合により、今村構成員、中西構成員、李構成員はオンラインでの参加をいただいております。
続いて、本日は参考人として、公益社団法人日本小児科医会会長の伊藤様、
一般社団法人日本助産学会理事長の片岡様、
一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤様、
公益社団法人日本産婦人科医会常務理事の宮﨑様、
末松構成員の代理出席として、鈴鹿市子ども政策部長の伊川様、
寺尾構成員の代理出席として、府中町福祉保健部長の中本様、
前田構成員の代理出席として、公益社団法人日本産婦人科医会会長の石渡様、
以上、7名の方々に参考人として御出席いただいております。
以上の7名の参考人の方々におかれましては、議論の中で座長から発言を促された際に、指名を受けて御発言いただくようお願いいたします。
また、構成員・参考人の皆様におかれましては、御発言ごとにお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。
それでは、以降の議事運営は、田邊座長にお願いいたします。
○田邊座長 それでは、早速でございますが、議事に入ってまいりたいと思います。
本日の議題は「議論の整理(案)について」でございます。
まずは、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
お手元の資料の確認をさせていただきます。
傍聴の方々は、厚生労働省ホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、議論の整理(案)として御用意しております。
また、会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの方は御退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○田邊座長 それでは、議事に入ってまいりたいと思います。
皆様のお手元に、本検討会でのこれまでの議論について、事務局のほうで整理した案が用意されております。
本日は、この案について御議論いただきたいと思います。
早速、議題に入っていきたいと思いますが、その前に、濵口構成員より発言のお求めがございましたので、濵口構成員、よろしくお願いいたします。
○濵口構成員 日本医師会の濵口でございます。
初めに、本日の提出資料の管理等についてでございます。
昨日、一部マスメディアより、厚生労働省は、出産費用に関わる妊婦の自己負担を2026年度にも原則無償化する方針を固め、具体策を検討する方向で調整に入ったとの報道がございました。
本日、このように論点整理の議論を行っているにもかかわらず、既に厚生労働省が方針を固めているといったような報道が先んじて出されることは大変遺憾であり、厚生労働省としては、この点、どのようにお考えかをお聞きしたいと思います。
私の理解としましては、報道記事が取り上げています「医療機関の経営実態にも配慮しながら、無償化に向けた具体的な制度設計を進めるべきだ」という記載は、資料にあるとおり、これまでの本検討会において発言された御意見の一部でありまして、このような誤解を招くような報道が行われないよう、資料の取扱い、あるいは管理については厳格に行っていただくよう、事務局におかれましては、いま一度見直しをお願いしたいところでございます。
○田邊座長 御発言ありがとうございました。
ただいまの発言に関しまして、事務局から何かコメント等がございましたら、よろしくお願いいたします。
○佐藤保険局保険課長 保険課長でございます。
報道があったことについては、もちろん承知しておりますが、当然ではありますが、現段階において、厚生労働省にて何らかの方針を決定しているという事実はございません。この点については、改めてこの場でも申し上げたいと思っております。
また、資料の管理の関係でございますが、我々として至らぬ点があった点については、率直におわび申し上げたいと思います。
いずれにしましても、今日の検討会の資料は、今朝ホームページにアップロードしたところでございますし、まさにこれから先生方に御議論いただいた上で議論をまとめていく形の段取りでもございますので、検討会での御議論は、我々としても正確に、しっかりとメディアの皆様にお伝えしていくように徹底してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○濵口構成員 どうぞよろしくお願いいたします。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、議事に入っていきたいと思います。
事務局より資料の説明をお願いいたします。
○佐藤保険局保険課長 保険課長でございます。
報告書の議論の整理(案)につきましては、これから担当補佐から詳細な御説明を申し上げたいと思っておりますが、冒頭に基本的な考え方について御紹介申し上げたいと思います。
御案内のとおり、この間、一時金の引上げという形で、13年ぶりに42万円から50万円に引き上げるという形で対応してきたわけでございますが、それに見合った形での出産費用も上昇していく。
これは物価・賃金の上昇等もありますが、出産費用の上昇もありますので、そういう観点から、妊産婦さんの経済的負担という観点からはいろいろな課題があるということで、また、価格であったり、サービスであったりについても、なかなか見える化されていないという課題があったものですから「こども未来戦略」において閣議決定されて、それを踏まえて、この検討会において御議論いただいているという経緯でございます。
内容は、議論の整理(案)にございますが、例えば経済的負担の軽減と周産期医療体制の確保をしっかりと両立していかなければいけないこととか、あるいは妊産婦自身による出産の自己決定権の確保のための環境を整えていく、あるいはサービスの内容とか費用のさらなる見える化を徹底していくことによって、妊産婦御自身のニーズに応じてサービスを取捨選択できるような環境整備を整えていく。こういう点については、恐らく、各構成員の皆様方からおおむね意見の一致が見られているのではないかと思っております。
他方で、それを具体的に検討していく上では、様々な立場の先生方から御意見を頂戴していると思います。
そういう観点で基本的な議論の整理(案)ということで事務局のほうで整理してございますので、内容については、これから御説明申し上げたいと思っております。
○柴田課長補佐 では、皆様、お手元にございます議論の整理(案)を御覧いただければと思います。
少々お時間をいただきまして、大部にわたりますので、かいつまんで内容について御説明さしあげます。
1ページでございます。
「はじめに」としまして、これまでの議論のプロセスについて記載しております。
もともと本検討会につきましては「こども未来戦略」が一昨年に閣議決定されましたが、この中で、2026年度を目途に、出産に係る支援等のさらなる強化について検討を進めると、このようにされたことを踏まえまして、昨年6月から、本日をもって第10回となりますが、議論を重ねてきたところでございます。
2つ目のパラグラフですが、本検討会におきまして、様々なお立場の方、医療関係者、医療保険者、被保険者の立場の方、自治体の方々、学識経験者の方、そして、本検討会の特色でございましたが、妊産婦の当事者の方、あるいはその声をお伝えいただく立場の方等、多様な観点から御議論いただいたということでございます。
また、複数回にわたりましてヒアリングを行いまして、全国の様々な妊産婦様のアンケート調査の報告をいただいたり、あるいは妊産婦の当事者の方のヒアリングを行いました。
また、産科医療関係者の方をはじめとして、様々な立場の方の御意見を伺い、また、調査についても活用しながら議論を行ってきたということを記載しております。
こうしたことを踏まえまして、妊娠・出産・産後に関する支援の様々な強化の在り方について、基本的な方向性と、今後検討を進めていくに当たって留意すべき論点などについて整理しているという構成でございます。
2ページ以降に具体的な内容を記載しております。
「(1)出産に関する支援等について」としております。
後ほど(2)として、産前・産後についての支援という大きな2つの構成としております。
1つ目でございますが、標準的な出産費用の自己負担無償化と安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の2つの両立を図っていくということで、まず現状として幾つかの数字を記載しております。
上から2つ目のパラグラフですが、全国の正常分娩の平均出産費用が、平成24年度は約41.7万円であったものが、右肩上がりに上昇を続けているといったこと、また、その次のパラグラフでは、都道府県によってばらつきがあるといったことについて記載しております。
3ページを御覧いただければと思います。
こちらは、出産費用に関するデータに続けて、我が国の周産期医療提供体制の実態について、下半分ほどに記載しております。
我が国においては、病院・診療所での出生がそれぞれ50%内外、また、助産所での出生が0.5%であるということなどについて記載しております。
我が国の周産期医療提供体制の特徴として、比較的小規模な多数の分娩施設が分散的に分娩を担うという特徴を有している、そうした中で、ハイリスク妊産婦に提供する医療の安全性確保といったことから、周産期医療提供体制の整備が進められていることについて記載しております。
また、3ページの下のパラグラフですが、これは検討会の中でも御報告いただきましたが、令和5年度は赤字施設となった産科診療所の割合が42.4%ということで、前年度よりも数が増加しているといったことについて記載しております。
4ページにいっていただきまして、こちらも同じく、この会の中で御紹介いただきましたが、日本産婦人科医会で実施された調査において、今後、正常分娩が保険適用となった場合に「分娩取り扱いを止める」と回答した医療機関が、全体785施設のうち60施設であった、また「制度内容により中止を考える」と回答した機関が426施設であったということについて記載しております。
また、次のパラグラフですが、我が国の周産期医療が、諸外国に比べ妊産婦死亡率・周産期死亡率ともに低く、安全性が非常に高いこと、そうした中で、病院・有床診療所が出産場所として大きな役割を担っていること、正常分娩に伴う入院日数が平均5.3日と、諸外国に比べ長くなっていること、こうした諸外国との比較についても、この会の中で御報告いただいたところでございます。
次のパラグラフですが、昭和2年の健康保険法施行以来、出産に関する保険給付、医療保険からの給付の方法については変遷があったということを書いてございます。
当初、現金給付として中心に始まったものが、療養の給付とは別建ての現物給付と現金給付の併給という形が取られていた時代もあり、その後、今の出産育児一時金につながる現金給付の支給方法が維持されているということでございます。
この議論の整理全体にわたってですが、妊産婦の方々からいただいた生のお声、あるいは産科医療関係者などからいただいたお声といったものを抜粋・引用する形で盛り込んでおります。
こうした出産費用に関する状況について、自己負担が少しでも減ることを望んでいるといったような妊産婦からの声があったことを御紹介しております。
一方で、産科医療関係者からは、安全な分娩体制を維持するために、多くの人的・物的投資を行っていることや、医療安全と産みやすい環境の確保が前提であるといったことについて御意見をいただいたところです。次ページにわたって、こうしたことについて御紹介しております。
5ページの上から2つ目の○から「あるべき支援等の方向性」ということで、この検討会の議論の中で見えてきたものについて記載しております。
ここは少し丁寧に御説明さしあげたいと思いますが、まず、物価・賃金の上昇等を背景に、出産育児一時金を増額した後も、出産費用が年々上昇していること、それに伴って、妊産婦の経済的負担が再び増加しているという現状、こうしたものを踏まえまして、出産にかかる標準費用を全て賄えるようにするという基本的な考え方に基づいて、妊産婦の実質的な経済的負担を軽減していく必要があるということを記載しております。
同時に、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保を進める中、こうした妊産婦の負担軽減策が、地域の周産期医療提供体制の確保に影響を与えないようにすること、これは検討の前提となるものであり、この2つの両立を図っていく必要があると記載しております。
このため、今後、令和8年度を目途に、産科医療機関等の経営実態等にも十分に配慮しながら、標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進めるべきであると記載しております。
また、今後の進め方に関して、その際、出産に伴う診療ケアやサービスの中には、医師等の判断に基づき実施されるものと、妊産婦が希望して選択するものがあると考えられ、その選別、情報公開の徹底を含め、それぞれに対する支援の在り方を検討することが考えられる、また、十分な実態や費用構造の分析に基づいて、それを踏まえて検討していくべきであると書いております。
なお、中長期的な視点に立った今後の我が国の周産期医療提供体制の在り方については、他の診療科とも関わる医療体制全体の中で、別の場を持って議論していくことについて記載しております。
こうした「あるべき支援等の方向性」に関する「今後の検討課題等」ということで、以下、この検討会の中で様々いただきました御意見について列記している構成としております。
まず、妊産婦の経済的負担軽減策については、5ページの一番下ですが、さらなる見える化が検討の前提となる、あるいは諸外国における保険給付範囲についても参考とすべきである、6ページにいっていただきまして、健保法体制の中で、時代時代に合わせた最も望ましいと思われる方法を検討すべきといったような御意見をいただいております。
また、6ページの2つ目の○ですが「標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた検討に関し」ということで、様々いただいた御意見を列記しております。
全て御紹介することはかないませんが、例えば1つ目のポツでは、仮に保険適用となった場合に、自由度が効かなくなることや、医療機関の経営が非常に悪化している中で、収入が落ちることに対する不安感が非常に大きくあるということ。
あるいは制度設計の中身次第であり、内容が見えない段階で、必ずしも経営悪化と捉えるべきではなく、両立させる方策を検討していくべきであるといった御意見。
また「標準的な出産費用」としておりますが、この「標準」とは何かについて、具体的な整理、検討を行う必要があるといった御意見。
また、分娩の経過は様々であり、非常に内容が異なっているというような御意見とか、多様なニーズに対して、様々なサービスが提供されている、その中身についてよく見ていくべきではないかといった御意見をいただいております。
また、同じページの下のほうにいきまして、自己負担が減ることを妊産婦は望んでいるというような御意見。
その中で、経済的負担を軽減する具体的な手法として、出産育児一時金のさらなる増額も考えられるのではないかという御意見。
一方で、先般の一時金増額後も出産費用が年々上昇している現状を見ると、一時金の増額という手法そのものには限界があり、別の方策を考える必要があるのではないかという御意見。
こうしたものについて、様々いただいているところでございます。
7ページに引き続き列記しておりますが、2つ目の○の給付と負担の関係ということで、保険適用の検討に当たっては、その範囲、あるいは現役世代をはじめとする保険料負担者の納得感につながる内容とすべきであるという御意見。
公費、保険料、自己負担のバランスを取っていくことが重要であるという御意見。
そして、同じ○の最後ですが、妊産婦の負担軽減、医療機関の経営、医療保険財政の安定が三方よしとなるように、今後、検討していくべきといった御意見をいただいております。
また、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保に関して、これは先ほど御紹介したデータの関連でございますが、日本産婦人科医会で実施された調査の中で、非常に御不安が広がっている、分娩取扱いが医療機関において中止された場合には、非常に大きな混乱と不安をもたらす可能性があるのではないかといった御意見とか、地域の産科を担う診療所が仮になくなった場合、質の高い周産期医療を国民に提供できなくなる可能性が考えられるのではないかといった御意見について記載しております。
8ページに参りまして、同じく周産期医療提供体制の確保に関して、妊婦の経済的負担の軽減と両立させるために、一体的に議論していく必要があるといった御意見とか、他方で、その具体的な支援の内容については、財源論としては、保険適用をめぐる財源とは切り離して、別途公費で検討していくべきではないかといった御意見などを記載しております。
続きまして、同じ8ページの②としておりますところが「希望に応じた出産を行うことのできる環境の整備」という大きな2つ目の柱でございます。
この中に、3つセクションを設けておりますが、1つ目が「出産費用の見える化の推進等について」でございます。
8ページに、妊婦の声ということで御紹介しておりますが、請求書が来るまで幾ら払うか分からないまま退院の日を迎えたとか、出産費用について予見可能性があまりないというような御意見、また、これは現在妊娠中の方からのヒアリングでございましたが、様々な不安がある中で、どう正しい情報を得ればいいか分からず、調べれば調べるほど沼にはまっていくような感覚があるといった声をいただいております。
9ページに参りまして、この検討会の中で御報告いただきました調査研究の結果によりますれば「お祝い膳」あるいはほかのサービスについて、妊産婦が選択できる施設が非常に低かったこと、あるいは料金が多くの施設で入院料等の他の料金に含まれ、個別に明示されていなかったことについて記載しております。
こうした中、2つ目の○ですが、厚生労働省において、昨年5月から出産費用とサービスの見える化を行う「出産なび」というウェブサイトを運営しております。全国の分娩取扱施設のほぼ全てに掲載の同意をいただいておりまして、妊産婦さんを中心とした方々から一定の評価をいただいていることについて記載しております。
9ページ中ほどからですが、この点について「あるべき支援等の方向性」として、この検討会で出た御意見をまとめてございます。
出産に対する妊産婦のニーズは様々であり、妊産婦がサービスや費用に関する十分な情報に基づいて、出産に関する自己決定を行える環境を整備する必要があるということ、そして、出産に関するサービスと費用の情報のさらなる見える化を推進し、費用に関する予見可能性を高め、希望して選択する診療ケアやサービスについて、取捨選択ができるようにしていくべきであるということを記載しております。
また「出産なび」については、情報や機能を充実させるということ、そして、妊娠前・妊娠初期の方にも利用していただくよう、周知広報に取り組んでいくべきであるといったことについて記載しております。
10ページに、その他、この点に関して、この検討会の中で出た御意見としまして、出産費用の透明性の向上の観点から、さらに取組を進めていくべきであるといった内容について記載を行っております。
続きまして「助産所・助産師の活用について」ということで、こちらも御議論いただきました。
「現状」として、助産所における出生の状況等について記載しております。10ページの下のほうの「あるべき支援等の方向性」というところで、妊産婦の多様なニーズが尊重されることが重要であり、地域の医療状況を踏まえた上で、希望に応じて、助産所においても出産や産後ケアを安全に行えるような環境を整備していくことが必要である、また、今後、具体的な制度設計の検討を行っていくに当たり、新たな枠組みの中にも助産所を位置づけ、妊産婦がどのような出生場所を選択したとしても、十分な公的支援が受けられ、選択の幅が狭められることのないようにといったことを記載しております。
また、助産師が多くの役割を担っていることについても、10ページの一番下の○で記載しておりまして、その活躍を促す環境を整備していくべきであるとしております。
11ページに参りまして「今後の検討課題等」といたしまして、助産所・助産師の活用に関して、助産所と周産期母子医療センターのオープンシステムの活用、あるいは産科混合病棟における産科区域の特定を推進すべきであるといったこと、院内助産・助産師外来の推進といったことについて御意見があった旨、記載しております。
続いて、無痛分娩に関しても、本検討会において御議論いただきました。
これまでJALAが組織され、安全な提供体制の構築に向けた取組が行われていると同時に、無痛分娩の実施率については、令和5年の調査では13.8%ということで、上昇傾向にあるということでございます。
妊産婦からも、無痛分娩に対するニーズについて、様々な面から御意見をいただいたところでございます。
「あるべき支援等の方向性」としまして、こうした妊婦の間で無痛分娩のニーズが増加している状況を踏まえ、希望する方が安全な無痛分娩を選択できる環境を整備すべきである、一方で、現状の分布には地域差があり、麻酔を実施する医師の確保や、安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩の提供体制の確保に取り組む必要があるとしております。
同時に、リスクやデメリットなど、こうした情報もきちんと踏まえた上で、また、周囲の方からの偏見をなくしていくことも念頭に、正しい情報、正しい理解を広めていく必要があるといったことを記載しております。
こうした今後の方向性に関しまして、検討課題として12ページに記載しております。
まず、安全で質の高い提供体制に関して、それを実施するには、一定の習熟が求められるということ、その研修体制などの実態把握も進めるべきであるということについて御意見がございました。
また、経済的な点からの無痛分娩に対する支援に関しまして、1つ目、無痛分娩のニーズが高まっている中で、地域によって、あるいは施設によって実施状況に差があるということ、そうした中で、無痛分娩の標準化と質の向上の観点から、保険適用とすべきであるといった御意見がありました。
一方で、中ほどになりますが、無痛分娩を実施している医療機関が少ない現段階においては、地域によって提供できる、できないといったことに不公平が生じるので、慎重に検討すべきではないかといった御意見、そして、保険適用かどうかはさておき、経済的な面で無痛分娩という選択を断念することがないように、負担軽減を図っていくべきであるといった御意見、こうしたものについて「今後の検討課題等」として記載しております。
続きまして、13ページからが大きな(2)ということで「妊娠期、産前・産後に関する支援等について」でございます。
まず「妊娠期から産後までを通じた切れ目のない支援の充実」ということで、妊産婦の方々からのお声として、伴走してくれる方がいると非常に心強いとか、あるいは産前から相談できる特定の方と知り合えていたら安心感があったであろうというような御意見をいただいております。
「あるべき支援等の方向性」としまして、妊娠期から出産・子育てまで一貫して、妊産婦本意での切れ目のない支援体制を構築していく必要がある、そうした中で、伴走型支援にもしっかりと取り組んでいくといったことを記載しております。
また「今後の検討課題等」としまして、専門家によるサポート体制の重要性に関する御意見があった旨、御紹介しております。
また、13ページ下に、②として「妊婦健診に係る経済的負担の軽減」についても御議論いただきました。
「現状」としまして、国で示しております望ましい基準に定める14回の妊婦健診に関して、必要な費用については、地方交付税措置を講じているが、改善傾向にはあるものの、自治体による公費負担の実施状況にはばらつきが見られるということでございます。
14ページに具体的なデータを御紹介しておりますが、令和6年4月における公費負担状況は、全国平均で前年度より改善しまして10万9730円ということでございますが、都道府県で見ますと、最も高い約13万6000円の福島県と、最も低い約8万円の神奈川県とで差があるということでございます。
また、国が示す望ましい基準における検査項目について、自己負担がないようにしている市区町村は全体の65%であるということについても記載しております。
こうした中、ヒアリングなどを通じて、妊産婦からは、妊娠初期の段階から非常に金銭的な負担感が大きい、それが今後の不安につながるといったようなことについて、あるいはオプションの国が示す望ましい基準を超えた検査項目についても、医療機関に言われれば、併せて受けてしまうといったようなお声を御紹介しております。
「あるべき支援等の方向性」としまして、妊婦健診として必要な検査の実施に際して、妊婦に自己負担が発生しないよう、一層の公費助成の充実を働きかけていくこと、また、令和7年度から、新たに市町村ごとの公費負担状況の公表も進めておりまして、こうしたことを通じて、基準内の健診について、妊婦に自己負担が生じないような公費負担をさらに推進していくこと、そして、分娩を取り扱わずに、妊婦健診のみを実施している施設を含めて、基準内外の検査内容、費用について明示し、また、自治体の公費負担状況についても併せて明示する、こうしたことを「出産なび」を活用して、予見可能性の向上を行っていくべきではないかといったようなことについて記載しております。
また「今後の検討課題等」としまして、妊婦健診に係る経済的負担の軽減に関し、見える化を図っていくべきであるといったこと、それから、基準外の検査についても、十分な情報開示を進めるべきであるといったこと、また、15ページに参りまして、御自身の持ち出し分について、予見可能性を高めるべきであるといったことについて御意見をいただきました。
また、③として「産後ケア事業等の推進」についても記載しております。
現在、これは法改正を行いまして、国において基本方針を定めるとともに、それぞれの地域において産後ケア事業の受皿の確保を進めているということでございます。
また、利用料の減免支援、あるいは周知広報についても行っているということを記載しております。
妊産婦からの声ということで、産後ケアのニーズが非常に高まっていることとか、あるいはその利便性の向上といったことについて御意見をいただいた旨、記載しております。
これに関する「あるべき支援等の方向性」として、必要な産婦が産後ケア事業を利用できるよう、受皿の拡大や、「出産なび」の活用も含めた分かりやすい情報提供の実施、認知度の向上、利用に係る手続の簡略化に取り組むべきであるとしております。
16ページに参りまして「今後の検討課題等」として、様々いただいた御意見について記載しているところでございます。
最後に「おわりに」として、17ページにまとめを記載しております。
年間の出生数が9年連続で減少している中で、希望する誰もがこどもを持ち、安心して子育てできる社会の実現に向けた支援策を検討していくことが急務であるとしております。
3つ目の○ですが、本検討会において、これまで様々な方のお声を丁寧に聴きながら検討してきたことについて、改めて「はじめに」と繰り返しになりますが、記載しております。
次の○ですが、本検討会におけるこれまでの議論の結果、安心して出産できる社会を目指し、妊娠期から産後までの全体を通じた妊産婦の負担軽減を図っていくこと。
特に出産については、標準的な出産費用の自己負担無償化と、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保・存続の両立を図ること。
費用負担を軽減するだけではなく、費用やサービスの見える化を推進し、妊産婦が十分な情報に基づき、出産に関する自己決定や取捨選択を行うようにできる、希望する出産場所や出産方法を選択できる環境を整備すること。
また、ケアやサービスを受ける立場である妊産婦の目線に立って、妊産婦本位の切れ目のない支援体制を構築していくことといった基本的な方向性について整理を行うことができたという形で記載しております。
今後、政府として支援を強化していくというメッセージを妊産婦の当事者に届けるため、また、周産期医療提供体制の確保に不安を抱く産科医療関係者の方々に、政府内の議論の状況を伝えるために、積極的に情報発信を行っていくことが重要であるとしております。
最後になりますが、今後は、本議論の整理にありますような基本的な方向性に沿って、それぞれの所管省庁・部局において、今後の検討課題として記載された内容を踏まえて、必要な制度的対応等に向けた議論を深化させていくことが求められる、引き続き、当事者・関係者の声を丁寧に聴きながら、客観的なデータに基づき、早期に検討を進めることの重要性を指摘し、本議論の整理の結びとする、こうした形で案を作成しております。
別紙として、名簿、あるいはこれまでの開催経過、ヒアリングの内容などについてもおつけしております。
大変お時間をいただきましたが、御説明は以上でございます。
○田邊座長 御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明も踏まえまして、これまで議論してきた全体について、また、この案について御意見、御質問等がございましたら、挙手にてお願いいたします。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 ありがとうございます。
健保連の佐野でございます。
本日まとめていただきました(あるべき支援等の方向性)や(今後の検討課題等)については、全体として異論はございません。
ただ、取りまとめに当たって、2点修正要望をお願いしたいと思います。
1点目は、最初の2ページのタイトルに「標準的な出産費用の自己負担無償化」とありまして、文章の中でも相当回数使われているのですが、この検討会においては、妊産婦の経済的負担の軽減を目指して議論してきたと理解しております。
「自己負担無償化」という言葉が独り歩きしたり、誤解を生む可能性もあるのではないかと思いますので、最終的に妊産婦の自己負担を無償化することを目指すとしても、出産における標準化とは何か、また、標準的な出産費用とは何かを見える化することが大前提だと思いますので、最低限タイトルにおいても「出産費用の見える化に基づく標準的な出産費用の自己負担無償化」というような形にしていただきたいと思います。
2点目は、15ページの「おわりに」でまとめの部分がございます。当然ながら、今後、この議論の整理をベースに具体的な制度設計等の議論が始まると思うのですが、保険適用への議論においては、医療保険制度の担い手である現役世代の負担軽減や、給付と負担のバランスという観点は非常に重要であると考えておりますので、そうした観点や趣旨をしっかりと15ページの「おわりに」にも追記いただきたいと思っております。
以上、2点が取りまとめ文書の修正に関する要望でございますが、最後に、今後必要な制度的対応等に向けて議論を行うに当たっては、これまでも「見える化」と「標準化」の2つが極めて重要なキーワードであることを繰り返し申し上げてまいりました。
現状の支援やサポート、実施主体、財源、費用構造等を見える化した上で、標準化を検討していくということ、また、出産に係る標準化された内容を保険適用とする場合においては、給付と負担のバランスを整理した上で、適切な保険適用範囲を設定すべきであり、こういった観点での検討をぜひお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田邊座長 どうもありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 連合の松野です。
初めに、座長、事務局におかれましては、これまでの議論で、様々な角度から多くの意見があった中、取りまとめに当たっては大変御苦労があったかと思います。本日、このように議論の整理としてお取りまとめいただいたことに心より感謝申し上げます。
標準的な出産費用の自己負担無償化と安全で質の高い周産期医療提供体制の確保、希望に応じた出産を行うことのできる環境の整備など、取りまとめいただいた方向性について、異論はございません。本日まとまれば、今後は議論の場を移して、方向性の具体化について引き続き検討が行われるものと認識しております。
そのため、今後の検討に当たって、改めてこれまで主張してきた意見を申し述べたいと思います。
まず、標準的な出産費用の自己負担無償化に向けては、医療の質の向上と標準化の観点から、保険適用を含めて検討するべきと考えております。
また、希望する妊婦が安全・安心に受けられるよう、無痛分娩をはじめ、WHOが推奨するエビデンスに基づいた産痛緩和ケア、助産所における出産についても、標準化と質の向上の観点から、保険適用とする方向で検討いただきたいと考えております。
今後、具体的な制度設計に当たっては、負担とバランスも考慮する必要がありますので、費用の見える化をさらに進めながら、標準的な出産費用とはどのような内容かを含めて進めていただきたいと考えております。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 これまでの議論のお取りまとめをありがとうございます。
私からは、6ページの1つ目の○になります。
その4つ目のポツになりますが「標準的な出産費用の『標準』とは何かについて具体的な整理、検討を行う必要がある」。
ここに関しましては、これまで多くの分娩施設で医学的に必ずしも必要でないサービスも含めた料金設定を行うことが標準的であったということが調査結果から明らかになったわけでございますが、こういったサービスを標準、もしかして標準外とした場合、どういった影響が出るのか。現場が混乱しないよう十分な検討が必要であると考えているところでございます。
また、6ページの終わりから2つ目のポツで「今後の具体的な制度設計の検討に当たっては、既に保険適用されている異常分娩の取扱いなど、既存の医療保険制度との関係を整理すべき」でございます。
今まで既に保険適用されてきた異常分娩については、療養の給付としたまま、自己負担3割の扱いをどうしていくのか、あるいは正常分娩と同様に無償化するのか、または異常分娩の場合には、これまでのように、療養の給付による保険請求、プラス妊産婦の判断で、出産育児一時金50万円から自己負担3割を含む患者負担分を支払ってもらう形を残すのかなど、かなり整理が必要ではないかと考えているところでございます。
また、7ページの2つ目の○、「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保」についてでございます。
地域の分娩施設は、収入の大半が分娩に関連する費用であると考えられるわけでございますので、安心・安全が保てる分娩施設として継続していける報酬を確保することが必要であり、別財源からの支援という方法も一つの考え方ではないかと思います。
また、11ページの<無痛分娩について>でございます。
無痛分娩を一般的な分娩と同様に取り扱うのは時期尚早という専門家からの意見もございましたが、妊婦からのニーズは高いものであるので、妊婦の経済的負担に関して、何らかの支援をしつつ、標準化されていくよう、質の向上が図れる体制整備が必要とも考えます。
最後に、13~16ページの「妊娠期、産前・産後に関する支援等について」の「妊婦健診に係る経済的負担の軽減」または「産後ケア事業等の推進」についてでございますが、受診する地域により、経済的負担、あるいは受けられる健診、産後ケアの内容に格差が生じないように、国として提供すべき健診、あるいは産後ケアの基準を設け、それ以外については、各自治体の判断による支援や事業の提供を行い、妊産婦さんが情報を簡単に入手できるよう、分かりやすい周知方法、あるいは情報提供の在り方を考えていただきたいと考えてございます。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、田倉構成員、よろしくお願いします。
○田倉構成員 構成員の田倉でございます。
ここまでおまとめになった関係者の方には、大変お疲れさまでした、と申し上げされて頂きます。その上で、今後、この議論を進めていかれる中において、記載において少し注目すべき点があるのかなということで意見を述べさせていただきます。
5ページ目の下から2つ目の○です。
この中に「他の診療科とも関わる地域の医療提供体制全体のバランスの中で捉える必要があり」というような言葉が入っておりますが、これは大変重要かなと思っております。
医療は、釈迦に説法ですが、いろいろな関係者の支援の下に最終的な診療成果とか、患者さんの満足が出てくるわけですので、広い視点から産科医療をどう支えていくのか、他の関係者の活動支援とか環境整備みたいなものも併せて考えていく必要もあるのではないかと思っております。
もう一点、場違いなのかもしれませんが、今回、産科医療の領域の議論をしている中において、少子化で需要が減ってきているとか、医療財政のお話もございましたが、この議論は、実は周産期のみならず、医療全体にも当てはまるところもあると思っております。
例えば、急性期の血行再建術などを担っている心血管分野とか、あとは腎不全分野における透析医療などについても、実は重なる状況にもあり同じような観点で、今、地域医療を大変議論しなければいけない時代になってきております。
何を申し上げたいかというと、この場で議論されたことが、ほかの領域の環境整備とか、方向性の議論に資するような形でお話を進めていっていただくと、医療全体においても大変意義があると思っています。そのため、ぜひここに書かれている地域医療構想とか医療計画の検討の場などにもうまくつなげていっていただければと思っております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。
では、石渡参考人、よろしくお願いします。
○石渡参考人 石渡でございます。
どうもこのように取りまとめていただきまして、誠にありがとうございます。
大きな異論はございません。
ただ、今回のペーパーの中に、日本が世界に冠たる、冠たるといいますのは、世界最高水準の周産期医療を提供しているわけです。それは、妊産婦の死亡率が低いこともそうだし、周産期の死亡率は世界で一番低い国です。この素晴らしい周産期医療を妊産婦・国民に提供していること、今回のペーパーの中に、盛り込んでいただきたい、と思います。
これは、ある程度の財源をきちんと確保されているからできることです。もう一つ大事なことは、いわゆる産科診療所を中心とする一次医療機関と二次医療機関、総合周産期センター等の三次医療機関の機能分担と緊密な連携がきちんとできている。そういう体制ができているからこそ、日本は世界に冠たる、誇れるような診療体制がつくられているのです。
その中で、特に正常分娩は、今現在、産科診療所が47%になっている状況の中で、地域では産科診療所が、今、経営的な逼迫状態から分娩から撤退しているところも多く見られている。そういうところに、いろいろと手当てしていく必要があるのではないかと考えているのです。
もともとこの議論は、日本の少子化対策が大前提になっています。その中で、もし少子化が進んでいきますと、国の衰退にもつながるわけですから、いわゆる保険医療財源に全て求めるのではなくて、新たな財源をきちんと確保すべきだと思うのです。
そのためには、これは国全体の問題ですから、もう少し少子化対策税とか、名称はどうでもいいのですが、今後、そのようなものを考えていく必要があるのではないかと考えております。
どうぞよろしくお願いします。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、井本構成員、よろしくお願いします。
○井本構成員 日本看護協会の井本でございます。
事務局におかれましては、本日、このような議論の取りまとめをいただき、ありがとうございます。私からは、今後検討される際に、より一層、出産・産後における妊産婦の支援策等が安全・安心・快適で充実したものになるよう、議論の整理(案)にもまとめていただいていますが、4点ほど改めてお話しさせていただきます。
1点目が、助産師のケアについてです。助産師は、医療機関や助産所、行政機関等においてプレコンセプションケアや妊娠前相談、妊娠・出産・産後のケアを含め、ケアの質を担保しながら、切れ目ない支援を続けてまいりました。例えば、出産時は、変化する母体と胎児の健康状態を随時観察し、バースプランに沿って産婦の力を引き出し、妊産婦とその家族が主体的に出産に臨み、出産が充実した体験として認識され、スムーズに育児に移行できるよう、個別のニーズに応じて、医師と協働しながら安全・安心・快適なケアを提供してまいりました。妊産婦が居住する地域にかかわらず、助産師のケアを受けられる体制づくりを今後の検討においても含めていただきたいと思います。
2点目が、議論の取りまとめの中でも触れられましたが、産科混合病棟における課題です。前回も発言いたしましたが、病院における助産ケア提供体制の課題として、現在、産科関連病棟の8割が混合病棟であることが分かっております。この中で、助産師が刻々と変化する分娩進行中の産婦と産科以外の患者様を同時に受け持つ状況が分かっており、その場合に、他科の患者さんのケアの状況に応じて、助産師が産婦の元から離れざるを得ない状況があることが分かっております。このような場合に、産科区域特定を行っていると、その中断が少ないことが分かっており、今後の検討には、ぜひこの課題を含めていただきたいと思います。また、前回、男性患者の受入れ等の懸念事項についても触れられましたが、こういった点も御認識の上、御検討いただきたいと思います。
3番目が、産後ケアです。産後ケアのニーズは高まっております。前回も述べましたが、産科混合病棟では、空床があっても、ショートステイ型に対応することが難しいということが分かっております。医療と母子保健の狭間にあるような、ややリスクが高い妊産婦さんに対しては、病院・診療所等で産後ケアを利用できる仕組みにしたほうが、常時対応が可能になるという利点も推測されることから、ぜひ今後は、様々な施設が役割分担しながら産後ケア事業を推進できるように、検討をお願いしたいと思います。
最後に、助産師による継続ケアについてです。産前・産後を通じた専門家によるサポートを提供できる仕組みづくりとして、助産師による継続ケアについては、議論の整理(案)11ページにも記載していただいているとおりですが、院内助産・助産師外来がより一層多くの施設で推進できるよう、検討をお願いしたいと考えております。特に、妊娠・出産・産後のプロセスを通じて、助産師の継続ケアを提供する院内助産は、田倉班の研究においても、出産場所を選ぶ際に、妊産婦が優先度を高く持っているという報告がございました。今後も、地域で伴走型の支援を構築できるよう、また、分娩取扱を中止した施設でも、医師と連携しながら助産師外来を継続できる等の体制整備をお願いしたいと思います。
この検討会では、日本の周産期医療提供体制は、歴史的に関係者が協議しながら、長い時間を費やして吸い上げて築き上げてきたことが共有されておりました。これまでに構築してきた仕組みが妊産婦に安全な医療を提供している結果につながっていることは、先ほど石渡構成員が述べられたとおりだと考えております。
妊産婦が居住する地域にかかわらず、経済的な負担を軽減しながら、妊娠・出産・産後の各期において充実した支援を享受できる仕組みの整備が必要だと考えます。仕組みの整備に当たっては、妊産婦の多様なニーズに応える仕組みと、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保が両立できるような設計がされるよう、次の検討の場においては建設的な議論がされることを望みたいと思います。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、中根構成員、よろしくお願いします。
○中根構成員 ありがとうございます。
日本助産師会の中根です。
このたびのおまとめをありがとうございました。中でも、助産所・助産師の活用についてということでおまとめいただいたところに感謝いたします。
まず、繰り返しになりますが、助産師は、妊娠中から産後の子育てに至るまで、継続的に妊産婦のニーズに応じて必要なケアを提供しております。
助産師は、地域の周産期医療提供体制の中で、主に低リスクの方を対象としたケアを担っていますが、例えば医療が必要になった場合には、速やかに嘱託医・嘱託医療機関と連携して対応いたしております。
また、出産を扱う助産所のほかに、産後ケアなどを主たる業務として、出産を扱わない助産所もございます。
どちらの場合にも、エビデンスや各種ガイドラインの規定を踏まえて、安全で安心・快適なケアを妊産婦の方々に提供する体制を取っております。
よって、改めてのお願いとなりますが、地域の周産期医療提供体制の中の一次医療機関として、ぜひ助産所を確実に位置づけ、十分に助産所が機能を発揮できるような仕組みを引き続き検討していただき、構築していただけるようにお願いいたしたいと思っております。
それによって、地域の周産期に関わる医療資源として、助産所も最大限の役割を果たし、関係各所と平素から顔の見える連携を深め、妊娠・出産・産後のケアに安全な環境を提供することに寄与できると思っております。これは、現在ある仕組みとは別に、新たな制度を設計する際にも、ぜひ適用をお願いいたしたいと思います。
何とぞよろしくお願いいたします。
以上となります。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。
では、家保構成員、よろしくお願いします。
○家保構成員 全国衛生部長会の家保でございます。
今回の取りまとめは、今までの議論を俯瞰したような形で非常によく取りまとめていただいたと思います。
地方行政を守る、維持する立場で言いますと、標準的な出産費用の自己負担の無償化と、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保・存続を図ることをきちんと明示していただいたのは非常にありがたいと思っております。
ただ、7ページにございますように、分娩の約半数を担っておられる産科診療所が非常に不安を持っておられます。
そこにありますように、今後の制度の仕方によっては、約半数が分娩のない、産科診療所のない医療圏になるということになります。
現在でも医療機関の経営が非常に苦しい状況でございますので、一度倒れられますと、それを復活させることは不可能となりますので、ぜひとも現在頑張っていただいている産科診療所の先生方が続けていきたいと思うような制度設計を維持していただきたいと思います。
本当にそう思えなくなりますと、全国の約半分の医療圏の住民の方が大変苦労されますし、仮に残った産科を持つ病院の先生方の負担が一層厳しくなると思いますので、ぜひ今後の議論では、そういう点にくれぐれも留意をお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
では、亀井構成員、よろしくお願いします。
○亀井構成員 今、家保先生のお話もございましたので、付け足しとして申し上げます。
そもそも少子化対策の一つとして、この検討会が始まったのだと理解してございますが、前回のお話にもありましたように、安心して出産をしていただける、安全に出産をしていただける地域が、今後、保険適用が始まりますと、だんだん減っていくのではないかと。
例えばうちの地域ですと、私の大学の病院は、埼玉西部地域、かなり広い地域をカバーしているのですが、今で産科の病棟の稼働率がほぼ100%ぐらいです。
ほかの科に比べても多いのですが、それが例えば埼玉県の西部地域で、全部の分娩数がうちに押し寄せてくるとなると、恐らく3倍ぐらいになってきて、とても対応し切れませんし、そこに加えて働き方改革がございますので、到底我々は対応できないなと非常に危惧しておりますので、どうか前回、8月に申し上げましたように、いずれ集約化を我々も避けられないというのは理解しているのですが、急激な集約化だけにはならないような形で結論を出していただきたいと思います。
ぜひよろしくお願いします。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。
では、新居構成員、よろしくお願いします。
○新居構成員 manmaの新居です。
お取りまとめいただき、ありがとうございました。
全体について、私も異論はございません。
改めて人口が減っていき、こどもを持つことに対する不安感とか負担感が若い世代の中で高まっている中で、こどもを持とうと願う人、思う人を社会全体でより一層強く支えていく。その一環として、今回、出産に関する経済的負担の軽減と、産前・産後の支援と、ああいうところの強化であると理解しておりまして、それについて非常に心強く感じております。
今後の検討課題として、妊婦健診について改めて発言させていただきたいと思います。
私自身も妊娠が分かったときに、妊婦健診の補助券を頂いて、これで全ての妊婦健診がカバーされるものなのだと誤解していたところがあります。周りの友人と話していても、補助券で全てカバーされると不勉強ながら思っていたというような方が非常に多いなと感じています。
一方で、今回の検討会を通じて、健診の中にも基準内と基準外があって、頻回にエコーの検査をするというようなものは基準外であるということを初めて知ったような状況でした。
例えば自己負担についての調査も、この検討会の中で拝見しましたが、東京都では、自己負担がないような公費負担をしているとありましたが、周りを見て、自己負担がなく産んだ人は、正直、探すのが難しいというような状況ですので、第一に、妊婦健診でどのぐらい妊婦が自己負担をしているのかというところは、クリアに、実態に即した形で把握していく、可視化していくことをぜひお願いしたいと思いました。
その上で、当然、基準内については、公費でカバーされていくべきと考えています。
全市区町村のうち65%が自己負担のない公費負担額を設定しているとこの書類の中にも書いてありましたが、これは本来100%になるべきものであると感じますので、今後、自治体の皆さんに働きかけをされると理解していますが、国からもここが必ず100%になるように、より一層働きかけをお願いしたいと感じました。
また、基準外のものについては、妊婦がそれが本当に必要なものなのか、基準内についてだけカバーされていて、基準外については、あくまで妊婦がそれがあったら望ましいと思っているであろうということによって追加されているものであると思いますが、それについては、妊婦がちゃんと理解した上で判断できるように、自己決定できるようにしていく必要があるのではないかと感じました。
私自身も、妊娠が分かった瞬間に、妊娠の陽性確定診断をするのに1万円ちょっと飛んで、そこから妊婦健診で毎回数千円の持ち出しがあってということで、ぱっと病院に行って1万何千円払うことは、ふだん風邪を引いたり、歯医者に行ったりする中ではないことだったので、正直、妊娠してこどもを持つということは、自分の趣味の世界とは言わないのですが、すごくお金のかかることなのだと、自己負担の世界なのだと非常に感じて、金銭的な不安を強く感じたことが記憶にあります。
なので、出産はもちろんですが、妊娠が分かった瞬間から、妊婦の期間についても、実質的な経済的負担の軽減が、今回、出産では保険適用ということですので、保険適用であれば、妊婦健診も保険適用にするということになるのかなと思いますが、何らかの形で経済的な負担の軽減策について、引き続き御検討いただきたいと思っております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、今村構成員、よろしくお願いいたします。
○今村構成員 今村です。
今回、取りまとめいただきまして、ありがとうございました。全体をうまく網羅してもらっていると感じました。
これから医療保険部会などで議論を進めていくということですが、私からは、もう一度今までの主張を繰り返させていただきたいと思います。
今回の議論は、出産の件数を増やしていただくことが一番の目的だと理解しております。
最初に書いていただいていますが、出生数が72万と減ってきていて、今、婚姻数がまた劇的に減っておりますので、72万で収まらずに、まだ60万、55万と下がっていく可能性がある。これに少しでも歯止めをかけることが本来の目的だと理解しています。
そのために、出産しやすい環境を整えるために、無償化などの方策を検討するのが大前提だと思いますので、制度をつくることをこれから検討していくのですが、大前提として、出産件数が日本で増えていって、日本の少子化のスピードが少しでもこれから緩くなるように制度設計をしていただくことをぜひ今後、それぞれの検討の場でも大前提としておいていただきたいと考えております。
今村の意見として、以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
山縣構成員、よろしくお願いします。
○山縣副座長 山縣でございます。
今村構成員からも最初からお話がありましたし、今日、亀井構成員からもありましたが、この課題は、少子化対策として考える必要がある。そのために、国民全体で議論し、理解を得る必要があると考えます。
こういう妊娠・出産の課題について、当事者が本当に切実な問題を抱えていながら、国民全体として、必ずしも十分な理解や関心が得られていないのが実態だということが今回の検討会でも分かりました。少子化対策は、国の根幹に関わる国民全体の問題であることを十分に皆さんに御理解いただきながら、当事者の経済的な負担の軽減を含めて、全国どこでも安心・安全に出産できるという環境整備に向けた、具体的な施策を進めていく。
そういう意味では、こういったことを十分に情報共有しながら、国がやる場合には税金の問題があるわけで、それは国民全体が負担していることを前提に考えていき、そういった方の御理解なく、この場だけで収束するような問題ではないと思いますので、私も含め、当事者でない方との議論も一緒にし、御理解を得る必要があると考えました。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。
では、中西構成員、よろしくお願いいたします。
○中西構成員 たまひよの中西です。
今回は、本当に議論の整理がすばらしく、こういうお話がいろいろあったなと思いながら、一つ一つ感動しながら読ませていただきました。ありがとうございました。
そして、どの意見も本当にもっともだなと思う意見ばかりで、これらが全てクリアになるような結論が最終的に得られるといいなと心から思った次第です。
先ほど先生方のお話にもあったのですが、今後一層、情報の開示、情報の提供で、国民の皆さんを巻き込むことが大切になると思います。先ほどのお話しにあるように、妊婦さんたちが、補助があるから妊婦健診は全部ただになるのだと思っていたら違ったとか、そのように思ってしまうのは、情報が届いていないからだと思います。正確な情報を細やかに発信することについては、別途ちゃんと考えていかないと、うまくいかないと思いますので、改めてそこら辺の意識も高めていただけたらいいなと思った次第です。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょう。
よろしゅうございますでしょうか。
それでは、御意見は一応、出尽くした頃かと判断させていただきます。
様々な御意見をいただきましたが、事務局で用意いたしました議論の整理(案)につきましては、取りまとめの仕方、そこで打ち出された方向性に関しては、大きな異論はないというのが私の理解でございます。
もちろん、個々の修文等に関しましては、必要な場合があるかもしれませんが、この点は修正させていただければと思った次第でございます。
ということで、この議論の整理(案)の取扱いに関しましては、おおむね皆様方の御賛同を得たということで、座長に一任させていただければと思いますが、どうでしょう。
(首肯する構成員あり)
○田邊座長 ありがとうございました。
では、個別の修正等に関しましては、事務局と調整の後に、構成員の皆様方にお送りいたしまして、御確認を得て、最終案という形で取りまとめさせていただきます。この点、御理解と御協力をお願いいたします。
予定よりはるかに早い感じはするのでありますが、本日、それから、これは最終回と理解しておりますので、議事は終了させていただきます。
では、事務局から一言お願い申し上げます。
○鹿沼厚生労働省保険局長 すみません。
私からも一言だけ申し上げさせていただければと思います。
昨年6月から、ほぼ月1ぐらいのペースで、10回に及びまして大変議論いただきまして、本当にありがとうございました。
出産の費用負担の話だけではなくて、妊娠・産後の話を含めて、まさに健診の話とか産後ケアの話もろもろ、本当にいろいろな話につきまして、多岐に御提言いただいた。恐らく、今までこれだけしっかりと御議論いただいた機会はあまりないのかなと思っております。本当にありがとうございました。
当然ながら、出産費用をいかに軽減し、自己負担をなくしていくのか、また、それに伴う産前・産後のケアをどうしっかりとやっていくのかといった点について、本日のこういった御提言を踏まえ、我々としてしっかりとこれからも議論していきたいと思っておりますし、これは当然の話ですが、医療関係の方々からも言われましたが、日本の今の産科の提供体制は、一次、二次、三次といったものが組み合わさってしっかりとできているものだということは、我々も本当に思っているところでございます。
こういった日本のすばらしい体制をこれからも維持していくことは大前提だと思っておりますので、そういったものにもしっかりと目配せしながら議論を進めていきたいと思います。
今後、医療保険部会等の各種審議会においてさらに議論していきたいと思いますが、役所といたしましても、こども家庭庁とも協力しながら、しっかりと対応していきたいと思いますので、どうもよろしくお願いいたします。
本当にどうもありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
事務局、ほかに何か付け加える部分はございますか。
○柴田課長補佐 それでは、これをもちまして、第10回の検討会を終了したいと思います。
どうもありがとうございました。
○田邊座長 本当に終了でございます。
10回、お忙しい中お集まりいただきまして、また、活発な議論を繰り広げていただきまして、皆様方に御礼申し上げます。
では、散会いたします。