第41回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

日時

令和7年3月19日(水) 16:00~18:00

場所

AP赤坂
(オンラインとのハイブリッド開催)

議題

  1. 1.臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性について
  2. 2.臨床研究中核病院の承認要件見直しについて
  3. 3.その他

資料

議事


○医政局研究開発政策課課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから「第41回厚生科学審議会臨床研究部会」を開催いたします。本日は、前回から引き続きWebで開催いたします。会議全体でのお願いとなりますが、Webで参加されております委員の皆様におかれましては、御発言される前に画面下部の「挙手ボタン」をクリックしてください。部会長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。また、御発言終了後は、再度マイクをミュートにするとともに、「手を下げる」をクリックし、手を下げた状態にしてくださいますようお願いいたします。会議中に接続トラブル等が発生しましたら事務局まで御連絡ください。注意事項は以上となります。
 本日は、部会の定数14名に対しまして13名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。なお、川上委員から遅れて御参加される旨、承っております。
 続きまして、本日の会議資料についてですが、会場参加の委員の皆様におかれましては、お手元の資料を御覧いただきますようお願いいたします。Webで参加されている委員の皆様におかれましては、事前に送付しております資料、あるいはWeb上で資料を投影いたしますので御覧ください。資料は、資料1、2となっており、参考資料は、参考資料1、2となっております。お手元で不足等がありましたら、事務局宛てにお申し付けください。
 円滑な議事進行のため、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。以後の進行につきましては楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 こんにちは。部会長の楠岡でございます。この年度末、非常にお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。それでは、お手元に配布されております議事次第により、議事を進めさせていただきます。まず、議題1)「臨床研究・治験推進に係る今後の方向性について」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 事務局です。それでは、資料1「臨床研究・治験推進に係る今後の方向性について」を御説明させていただきます。資料1を御覧ください。
 2ページです。これまで、臨床研究・治験推進に係る今後の方向性につきましては、第36回の本部会においてお示しさせていただきました6つの議論のポイント案につきまして、御議論やヒアリングを実施してまいりました。次ページ以降、これまでの部会における主な御意見等を整理しましたので御説明させていただきます。
 3ページです。国際競争力のある臨床研究・治験体制の強化に関して、主な御意見としましては、国際共同治験のためのワンストップ窓口について、積極的に国内での治験の実施を誘致していくことが重要であるという御意見。日本への治験の依頼、契約を増やすためには、医療機関の医師や研究のレベル、世界的な評価を上げる必要があるといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、グローバルに通用する体制として、英語資料の受入れ・共通言語化を進めることが重要であるという御意見。海外の製薬企業やEBP、海外CROが国際共同治験に日本を組み入れたいと思えるような環境を作って、それを積極的にアピールしていくことが重要であるという御意見。我が国で臨床POCを迅速に取得し得る環境づくりを率先して進めるべきといった御意見がありました。
 4ページです。症例集積性の向上につきましては、サテライト施設での治験業務分担ができるようになると、症例集積性を高めるだけでなく、患者にとっても利便性が高くなり、治験という機会が広く提供できるようになるという御意見。DCTを導入するだけで、全ての疾患の治験が推進できるとは思わないほうがよく、得意な領域とそうではない領域を分けて考えるべきという御意見。製薬企業ごとにDCTのシステム・ソフトが異なると、各医療機関がそれぞれのシステムへの対応が必要となり、コストが上がってしまうようなことが懸念されるといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、DCTで得られたデータの品質の確保や遠隔モニタリングで有害事象の発見が遅れるといったことがないような体制を作るべきであるという御意見。小児科領域の開発促進のためには、オールジャパン体制と国際連携が必須であり、一医療機関で全ての希少疾病に対応することは不可能であるため、共通基盤としての方法論等の助言・支援や体制・連携体制整備などの支援が重要であるといった御意見がありました。
 5ページです。症例集積性の向上のうち、リアルワールドデータ(RWD)の利活用促進につきましては、医療情報の医療機関間の連携を推進していく必要があるという御意見。質の高いレジストリを継続的に運用していくには、国として何らかの継続的な支援が必要であるという御意見。RWDについては、既にあるデータの利活用を進めていくことも重要といった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、治験での症例エントリーが非常に難しい疾患や希少疾病に対して、レジストリやRWDも含めた各種のデータベースを使ったエントリーを容易にする仕組みがあれば、特に海外のEBPにとって、日本に来るための大きなインセンティブになるという御意見。医療情報を二次利用した臨床研究は、個人情報保護法や倫理指針等の遵守が必要となり、複数の法令調査や解釈が難しいため、研究開発を進めやすい環境の整備をお願いしたいといった御意見がありました。
 6ページです。症例集積性の向上のうち、国民・患者の理解や参画促進の観点につきましては、日本は特に臨床試験の情報が患者に対して見えづらいと思うという御意見。海外と比べて、治験や開発に対する国民・患者の理解が異なるため、理解を深めることが重要という御意見。患者・市民参画(PPI)が研究者等に理解されていないと感じる。研究者に対してPPIとは何かを啓発する方策を考えていかないと進まないのではないかといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、臨床研究中核病院において、患者・市民との協働によりレイプロトコルシノプシス、レイサマリー、説明・同意文書の補助資料の作成や実施の支援をしてみてはどうかといった御意見がありました。
 7ページです。臨床研究・治験手続きの効率化につきましては、AIやマシンラーニングの活用について検討が必要であるという御意見。ICH-E6の改定を踏まえた取組の検討が必要という御意見。中央IRBに関連して、Commercial IRBに関して、委員会の質や透明性の担保に課題があるという御意見。小児や再生医療等製品など特殊な領域のものに関しては、しっかりと審議できるIRBを指定する考え方も必要ではないかといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、原資料を電子化し、HL7 FHIRなどの国際標準のフォーマットで電子カルテとEDCシステムをデータ連携するような仕組みの整備を進めることが重要という御意見。治験依頼者と治験実施医療機関の間の契約書テンプレートの統一化も進めてほしいという御意見。研究結果の利用目的や試験の種類に応じて利活用しやすい法体系とすることが、医療現場の負担を減らすのではないかといった御意見がありました。
 8ページです。臨床研究・治験コストの透明性の向上につきましては、国際競争力の観点からも、日本の独自性を最小限とし国際整合性のとれた治験費用にしていくことは重要であるという御意見。医療機関において、来院履歴を残せば自動でカウントできるようなDX化は必要という御意見。常に治験業務があるような大規模な医療機関と治験数が少ない中小規模な医療機関では、例えばアイドリングタイムの評価の方法が変わってくるため、そのような違いも考慮してほしいといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、FMVに基づく治験費用算定の推進に当たっては、小児治験特有の事情も踏まえた検討をしてほしいといった御意見がありました。
 9ページです。臨床研究・治験に関わる医師や研究支援人材の育成・インセンティブにつきましては、研究を支援するスタッフの育成は行っているが、定着が課題であるという御意見。日本では、臨床試験を実施するインセンティブが現状なく、資格制度の検討や報酬面での改善をもっと検討してもいいのではないかという御意見。臨床研究従事者はキャリアトラックも十分に整備されておらず、病院の中でのプレゼンスが非常に低い。臨床研究を行う意義を周知し、医療機関の臨床開発に対するリテラシーの向上を行わないと環境整備は進まないといった御意見がありました。
 また、ヒアリングにおける主な御意見としましては、働き方改革及び医療機関の経営状況の悪化により、研究時間の確保が難しくなっており、これを解決する方策が必要と考えるという御意見。研究支援人材に対するキャリアパスにつながるシステムの導入が必要である。AROの給与の低さは、人材の育成及び雇用に大きく影響し、人材の流出につながるため、これを解決することが必要といった御意見がありました。
 10ページです。これまでに頂きました御意見等を踏まえまして、事務局で臨床研究・治験推進に係る今後の方向性に関する基本的な考え方の案につきましては整理を行いましたので、お示しいたします。
 1つ目、「国際競争力のある臨床研究・治験体制の強化」です。日本の創薬力の向上のためには、世界に通用する臨床試験成績をいち早く取得できる国際レベルの臨床研究・治験が実施できる体制強化を行い、日本の臨床研究・治験体制の世界的な評価を上げる必要があるのではないかというものです。
 2つ目、「症例集積性の向上」です。DCT(分散型臨床試験)を実施可能な体制の整備や、レジストリ・リアルワールドデータ(RWD)利活用の促進等により、国内の臨床研究・治験ネットワークを強化し、症例集積性を向上させることが重要ではないかというものです。
 3つ目、「臨床研究・治験手続きの効率化」です。中央IRBの推進、AIやマシンラーニング等の利活用によるプロセスのDX化等によりまして、手続きの効率化を進めていくことが重要ではないかというものです。
 4つ目、「治験コストの透明性の向上」です。適正な費用算定及び国際競争力の観点から、企業治験について、FMV(Fair Market Value)に基づく費用算定の考え方の推奨を行いつつ、FMVに基づくタスクベース型の費用算定の国内導入を進めていく必要があるのではないかというものです。
 5つ目、「医師や研究支援人材の育成・研究従事者へのインセンティブ」です。医療機関における臨床研究・治験に対するリテラシーの向上を行い、臨床研究に従事する医師等に対するインセンティブの設定、臨床研究支援人材のキャリアトラックを整備していく必要があるのではないかというものになります。
 6つ目、「臨床研究・治験に対する国民・患者の理解・参画促進」です。国民・患者が必要とする情報にアクセスしやすい環境作りを進めていくとともに、PPI(患者・市民参画)の啓発を行っていく必要があるのではないかというものになります。
 6つ目の国民・患者の理解・参画促進につきましては、これまで、2つ目の症例集積性の向上の項目で御議論いただいておりましたが、これまでの御意見等を踏まえまして、別途、項立てをさせていただいております。また、DCTの体制整備やAI等を用いたDX化の推進など、「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について(2019年版)とりまとめ」には含まれていなかった新たな取組につきましては、下線を引かせていただいております。
 11ページです。今後のスケジュールです。先ほど御説明させていただきました「基本的な考え方(案)」を基に、本日の部会における御意見も踏まえた上で、事務局において、とりまとめ案を作成させていただきます。次回の部会におきまして、とりまとめ案につきまして御議論いただきまして、今年5月をめどに、とりまとめの公表を行いたいと考えております。
 13ページです。参考資料としまして、「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について(2019年版)とりまとめ」の概要を載せております。事務局からの説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 ありがとうございました。これまでのヒアリング並びにそのときのディスカッションを踏まえて取りまとめていただきましたが、ただいまの事務局からの説明に関して、御意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。今、投影されている画面に6つ出ておりますが、基本的に6つ目の所は、説明にありましたように症例集積性の所に2019年版では入っていましたので、基本的な骨格は5つ、これは2019年版とそれほど大きくは変わっていません。いずれも、この臨床研究・治験の活性化等に関しては、基本的な事項なので、柱は変わらずに、そのときそのときでどういうところに重点を置いていくか、あるいは、新しく出てきたものにどう対応していくかというところになるかと思います。
 では、まず藤原委員、その後、近藤委員でお願いいたします。
○藤原委員 4つのポイントについてお願いがあります。1つ目です。10ページの基本的な考え方で、治験や臨床研究、臨床試験など様々な用語が出ておりますので、実際にファイナライズするときは、統一化していただきたいというのが1つです。
 もう1つは、第3期健康・医療戦略で、様々なKPIが示されております。それに対してどう対応していくのかを次回の「とりまとめ案」に書いておかないと、後から困ると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 具体的には、1と3と5について、それぞれ意見があります。まず、国際競争力のある臨床研究・治験体制の強化ですが、これも先ほど申し上げたように、第3期健康・医療戦略では、いろいろなKPIが具体的な数字として挙がっています。これを達成するために国内外の臨床試験ネットワークを強化したり、拠点の臨床研究中核病院のようなAROの機能の強化をどうしたいとか、国際水準にするためには英語資料を受け入れるということが健康・医療戦略には書かれていますので、それに向けて必要な人員体制や待遇などをちゃんと考えてほしいというのが、盛り込まれていないといけないと思います。
 3番目の手続きの効率化ですが、ICH-GCPのE6のR3というのが来年に向けて通知化されて、日本の省令GCPに反映されると思うのです。今回のICH-GCPのE6のR3のこれまでと一番大きく違う点は、英語の文章を読んでもらったら分かりますが、これまでは医薬品と医療機器を曖昧に扱ってきましたが、今回のICH-GCPのE6の英語版を読むと、医療機器については一切明言されていません。言及されていないのです。医薬品を対象とするということがきっちり書かれていると思うので、これは医薬局の話かもしれませんが、皆さん方もいろいろ考える上で、医療機器の臨床研究や臨床試験のあり方は、医薬品と同じではない、あるいは、臨床研究法上の運用も分けて考えないと、混乱を招くということを考えていただきたいと思います。
 中央IRBの導入ですが、これも何度か申し上げたかもしれませんけれども、審査を依頼してくる様々な施設のシステムに対応して、いろいろな資料を見たり、保険外併用療養の運用も施設によってばらばらなので、これを中央IRB化して審査しようとすると、ものすごく人員とお金の掛かる話になりますが、体制整備の話が一切出ていません。そこを書いておかないと、医薬局でICH-GCPのR3の導入と言って薬事法令は変わったとしても、施設側が人とお金が付いていない中で対応を求められても大変になると思いますので、医政局のこちらの会では、その辺の対応をしっかり考えておいてほしいと思います。
 最後は、人材育成とインセンティブです。これも第3期健康・医療戦略で、臨床試験などに従事する者のインセンティブの設計や、処遇やキャリアアップの構築が明言されているのです。それを受けて、この臨床研究部会では、それに向けてどういう策を練るのかという具体的な方向性を示すとか、ファースト・イン・ヒューマンや臨中を整備しろと健康・医療戦略には書いてありますから、それに向けて診療報酬上の処遇を考えたり、各ナショセンや大学病院などの運営費交付金を増やさないと、そんな対応はできません。今、大学病院は皆赤字になっていますから、そういう議論になるでしょうから、補助金で対応するのですかとか、具体的な誘導策も書いておかないと、机上の空論に終わるのではないかと思います。
 最後、とりまとめの方向性についてですが、今の事務局の話では、4月に1回ぐらいの議論で済むのではないかなどというイメージを聞いていて思いました。これはなかなか重い問題なので、1回の議論ではなくて2回ぐらいはしないと大変ではないかと感じました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。続いて、近藤委員、お願いいたします。
○近藤委員 近藤でございます。私からは2点、コメントさせていただければと思います。まず1点目が、3番目の項目の臨床研究・治験手続きの効率化です。臨床研究・治験プロセスのDX化等により、手続きだけではなくて、例えば臨床研究や治験の実施方法や体制の効率化に大きく結び付いてくる可能性もあるかと思います。そこを進めていくという点も重要かと思いますので、御考慮いただければと思います。
 もう一点は、臨床研究・治験コストの透明性の向上なのですが、8ページに記載されていますように、国際競争力の観点からも、日本の独自性を最小限として、国際整合性のとれた治験費用にしていく必要性はあるかと思います。治験などに掛かってくる費用について、透明性を高くして、必要な費用を正当に計上していただいて、その費用を適切に活用できるようにすることは、非常に重要と考えております。今後、タスク項目について議論が進められると期待しておりますが、企業側がメインになるかと思うのですけれども、支払った費用が適切に使用されているという観点でも検討が進められることを期待しております。
 例えば、現在、一部の医療機関では間接経費などがあるかと思います。間接経費は一律に計上されて、具体的に何に使用されているのかが不透明な部分もあるかと思います。10ページに記載されておりますように、臨床研究に従事する医師等に対するインセンティブの設定や、臨床研究支援人材のキャリアトラックを整備していく必要性に加えて、この方向性自身は全く異論はありませんが、例えば、実際に治験などに従事されたスタッフの方々が所属する支援部門に対して、きちんと還元されるように、適切に使用できるようになることで、透明性も高くなってくると思います。透明性が高くなってきますと、海外企業からも理解される費用体制になってくるかと思いますので、その点も御考慮いただければと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、佐藤委員、その後に渡部委員でお願いしたいと思います。佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(典)委員 佐藤です。ありがとうございます。今までの議論をきちんとまとめていただき、事務局の皆さん、御苦労さまでした。藤原委員、近藤委員がおっしゃったことと重なるところはありますが、御容赦ください。2点申し上げさせてください。
 1点目は、2番と3番に重なるところなのですが、日本の臨床試験が海外から見て遅れている理由の大きなところは、恐らくDXの導入が非常に遅れているということ、これは日本社会全体だと思います。DXについてまとめの案で記載していただいているのですが、2番と3番に分散してしまって、症例集積性や効率化など、そういったところに分散してしまって、DXの推進を明確に進めていかないと臨床試験がどんどん遅れていくということを、メッセージとしてもう少し分かりやすくしていただくといいかと思いました。書いてあること、議論されたことは多分、今まで十分に議論されているのだと思うのですが、症例集積性や効率化など、何となくそういった方向に分散してしまっていて、きちんとDXを国を挙げて推進するのだということを前面に出したほうが、メッセージとしては伝わりやすいのではないかと思ったところが1点目です。
 2点目は5番ですが、両委員からもインセンティブという形でお話いただきました。大変有り難いと思っていますし、私もふだんAROを運営していて、この点は自分たちとしても、しっかりやっていかなければならないと思っています。ただ、背景としてというか、根本として臨床研究、臨床試験にはお金が掛かるのだということを、日本中、しっかり認識を新たにしてもらいたいと思います。リテラシーの向上などといって、何となく医療機関の臨床研究に対する認識が足りないのではないかと思われてしまいがちに見えるのですが、そうではなくて、根本的に臨床研究にはしっかりお金を掛けるところは掛けて、それに対して臨床研究支援の我々のような者が対価をしっかり取るのだと。その上で、そのスタッフの地位なり何なりの向上が得られるということです。大学やナショセンで制度をしっかりやれば、人材が満足できるのではないかというメッセージに見えますので、そこのところを勘違いしないようにしていただきたいと思います。
 AROは各施設からの費用でも賄われますが、臨床試験を支援することで人材を確保し、費用を確保しています。ですから、研究費の根本を上げるか支援組織に対する補助を高めるかどちらかにしないと、意識や制度だけの向上ではできないといったところをはっきりさせていただければと思っています。以上2点でした。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。では、渡部委員、その後に谷岡委員でお願いいたします。渡部委員、どうぞ。
○渡部委員 私も先の委員の先生方のコメントと多少かぶるかと思うのですが、3番と5番についてコメントさせていただければと思います。その前に、先ほど近藤委員が言及された間接経費のことに関しては、国立大学病院の臨床研究推進会議で、人材雇用とサステナビリティに関する議論を行っているトピックグループ5というものがあり、そちらで先月だったか、「臨床研究に関する間接経費の適正活用に向けた提言」を出しておりますので、是非御参照いただければと思います。
 あとは、3番の効率化の所、DXとありますが、システム等を入れたり、そういう初期投資が必要になってくると思いますので、そういった間接経費なども有効に使いながら初期投資をして、施設で円滑に受け入れる体制整備が必要かと思います。インセンティブに関しても、この数十年こういったことが必要という議論が続いている状況で、なかなか進んでおりませんので、藤原委員もおっしゃったように、具体的な数値目標など、そういったものを今後の議論で掲げていただくといいかと思います。中核の要件などもそうなのですが、何名とか、そういった要件はあったとしても、有期限雇用の職員で賄っていたりするので、そういった方々の正規職員化とか、そういったことも数値的な目標などに盛り込めるといいと思います。昨今、いろいろな学会で資格認定もできておりますので、そういったものを持っている人材、すごくスキルのある人材を無任期化していくなど、そういった政策が必要かと思っております。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、谷岡委員、その後に佐原委員でお願いいたします。谷岡委員、どうぞ。
○谷岡委員 御説明ありがとうございました。先生方の御意見はそのとおりだとお伺いしたのですが、2と3について少しだけ述べさせてください。2に関しては、例えばDCTに関して、医療機器のほうでも少し議論をしましたが、医療機器の場合は手術を伴ったりということがありますので、それをクリニックでフォローいただくという様な形でうまく使えないかなど、非常にいろいろなアイディアが出ております。そういう意味でも、先ほど藤原委員がおっしゃっていた医療機器の特性的に全然違うところに着目して考えていかないといけない部分について、それができると医療機器の治験や臨床研究試験が進んでいく方向につながっていくのではないかと思います。それが2番に関してです。
 3番に関してです。効率化というところでなのですけれども、資料の7ページのヒアリングの所には少し入れていただいているのですが、法制度の見直しも、今すぐにはできないかと思いますが、それを目指した形で検討していくということを含めていただけると有り難いと思っております。これは、もしかしたらもっと議論が必要なのかもしれませんが、検討いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、佐原委員、お願いいたします。
○佐原委員 日本医師会の佐原でございます。少し移動の関係で遅れてしまいまして、申し訳ございませんでした。資料1の参考資料で、2019年版のとりまとめを示していただき、ありがとうございます。前回の2019年から今までの間でどう変わったかについて、PDCAサイクルを回すという点で、2019年版ができた点とできなかった点を明らかにして、前回との比較として示すほうが分かりやすいように思います。この5年間の中で何が変わったか、先ほども御意見がありましたが、やはりDX化だと思いますし、これは今後更に発展して、広がっていく領域だと思います。
 7ページの「3.臨床研究・治験手続きの効率化」ということで、確かに中央IRBの推進は効率化そのものだと思うのですけれども、AIやDXは、単なる効率化というよりも、今まで人の頭でできなかったことを更に深く考えていく、あるいは深くデータを活用するための手段だとも思うのです。そういうことが分かるように書いたほうがよろしいように思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見のある方はいらっしゃいますか。ありがとうございます。ただいまの中で、全体に関わるものとして、1つはDXの問題、もう1つは、藤原委員からも指摘がありましたように、モダリティによって結構大きく変わる所と、モダリティにかかわらず共通な所とがあるので、それを全部書き出すと大変なので、モダリティによって少し違いがあるという点。DXとその2点に関しては、各論に入る前の一番最初の総論のような所で書いておいて、以下1から6を読んでいただくときには、それを頭に置いて読んでいただくというやり方も1つあるのではないかと思いますので、また御検討いただければと思います。
 一通り御意見は頂きましたので、事務局においては、今後、本日頂きました御意見について検討し、次回、とりまとめ案を提示するということで進めるようにお願いしたいと思います。藤原委員から1回では難しいかもしれないという御意見もありましたので、それも考慮して、集まるのが難しければ、案を提示して御意見を頂いた上で、なるたけまとまった形で次回出していただくというやり方もあると思いますので、御検討いただければと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、議題2)に移りたいと思います。議題2)「臨床研究中核病院の承認要件見直し」について、事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課課長補佐 事務局です。それでは資料2「臨床研究中核病院の承認要件見直しについて」の御説明をさせていただきます。資料2を御覧ください。
 2ページです。まずは、臨床研究中核病院のあり方そのもの、承認制度について頂いた御意見です。1つ目、それぞれの臨床研究中核病院が持つ特長をいかした国際的な創薬・育薬加速化の取組を評価すべき。2つ目、我が国の国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う拠点として、人員に対して専門性と実績に相応しいインセンティブが用意されるべき。3つ目、医療機器開発につながる臨床研究(feasibility study、FIH;first-in-human、観察研究等)の実施、医療機器治験や臨床研究の支援(中央IRBなど倫理審査のリード役等)、臨床研究関連の教育セミナーや講演会の実施を責務として評価すべき。このような御意見を頂いています。
 その一方で、4つ目、数値要件達成に邁進をするとともに、既に承認を受けている機関は数値要件を毎年維持することを第一に取り組み、それに疲弊している。本来の臨床研究中核病院としてのKPIは、毎年ではなく数年単位で評価すべきではないか。特に、臨床研究法下の臨床試験の煩雑さが現場を疲弊させるとともに、臨床研究全体の質の向上に役立っていないと考える。また、これを達成することが臨床研究中核病院の目的と化しているといった御意見を頂いています。
 続いて、前回のヒアリングにおいて頂いた御意見です。臨床試験におけるPPIの取組を支援している点を評価に加えることを検討してはどうか。また、医療機器に関しては、最後の○になりますが、多種多様な医療機器での施設特化は困難と思われるため、例えば“医療機器開発”を宣言・標榜する形をとり、当該施設への開発推進、他施設の開発支援を行うことを求めたらどうかといった御意見を頂いています。
 続いて、3ページです。国際競争力のある拠点についてですが、1つ目の○、日本の臨床試験(あるいは臨床研究)を推進し、国際競争力を高め、世界の中で日本のプレゼンスを向上し、革新的な医療を患者さんへ提供することに貢献することは共通の認識と考える。しかしながら、2つ目の○、臨床研究中核病院が各自で強みを発揮できるような役割分担(疾患領域ごと、モダリティごと)はあってもよいが、何をもって国際競争力が高いと評価するのか、臨床開発力が優れているか等については、ステークホルダーの目線合わせが必要である。3つ目ですが、グローバルに先駆けた本邦でのFIH試験実施体制の整備や実績、臨床開発のゴールである薬事承認取得への貢献度も加味した評価となると、極めて長い期間を要するので、適切な評価指標の検討が必要であるといった御意見を頂いています。
 4ページです。続いて、特定領域に関してですが、特定領域に係る臨床研究中核病院は、疾患領域あるいは疾患ごとのネットワークを構築し、迅速に臨床試験を実施するためのハブとなることが期待されるという御意見があり、かつ、2つ目の○ですが、特定領域を専門とする医療・研究機関と連携しながら、臨床研究の立案・実施の支援を行うといった御意見を頂いています。
 その一方で、3つ目の○です。ナショナル研究センターは既に疾患ごととなっており、特定領域に係る臨床研究中核病院のメリットは余りないのではないかといった御意見も頂いています。また、前回、成育医療センターの中村先生より頂いた御意見で、4つ目の○ですが、小児に加え、精神神経領域・希少疾患領域では、研究の中心となる専門家や機関が毎回変わるが、その一方で、共通基盤としての方法論等の助言・支援や体制・連携体制整備などのフレキシブルな支援は必須となっており、国際連携のできる体制も必須である。5つ目の○ですが、小児医療機関は規模が小さいため、幾つかのコアとなる医療施設に体制整備を行い、他施設と連携し、既存ネットワークも活用して支援をすることで、かなりオールジャパン体制で医薬品開発を支援できるのではないかといった御意見を頂いています。
 5ページです。以上、頂いた御意見を踏まえ、事務局として、臨床研究中核病院のあり方として、従前の「臨床研究中核病院に対しては、これまで質の高い臨床試験の実施、人材育成、多施設支援等の役割や機能が求められ、それに対応した承認要件を設定している」といった立ち位置から、下の枠ですが、日本の創薬力及び国際競争力の向上に資するため、従前の「承認要件を充足するためだけの臨床試験」を実施立案するだけではなく、各拠点が特色をいかし、真に実施すべき「質の高い」臨床試験を主導的に実施し、国内における国際水準の臨床試験の中心的役割を担うこと。また、非臨床研究中核病院や関係医療機関に対して、臨床研究の実施に関する相談・助言などの連携・支援、人材育成を行い、加えて、希少疾患領域においては、専門研究機関・研究ネットワークとの連携を介し、我が国全体の臨床研究・治験を実施する体制を疾患横断的に底上げすることを求め、上記を達成するために十分な人員配置、構造設備等の体制を有すること。これを、臨床研究中核病院のあり方としての事務局案としてまとめさせていただいています。
 6ページです。それらを踏まえ、下記について御議論いただければ幸いです。まず、1つ目、これまでの役割や機能に加えて、臨床試験の企画立案から、その後の薬事承認・医療機器の承認取得までの中心的な役割を担うことで「創薬」、「医療機器開発」への貢献を評価することとし、承認要件の一部に各拠点の特色を評価できるポイント制を導入してはどうか。
 2つ目として、臨床研究全体の質の確保、研究実績の継続性及び災害等の外的要因による影響の低減を図るために、実績の要件を評価する年数を延長することとしてはどうか。
 3つ目として、承認要件の見直しの検討に合わせて、承認の停止・取消し基準を明確化してはどうか。例としては、組織的な研究不正、研究における重大な医療事故に対する不適切な対応(隠蔽、放置、虚偽説明等)、また、研究関連の不正請求、悪質な虚偽の実績報告、複数年に及ぶ承認要件未達等が該当します。
 続いて、4番目として、日本起点の国際共同試験の実施の能力を有し、領域横断的に国内の大規模多施設共同試験を主導的に実施、かつ海外からの国際共同試験にも対応できるような中核的な役割を担う拠点として、既存の臨床研究中核病院制度の上に「国際拠点型臨床研究中核病院」を新たに設けることとしてはどうか。
 そして、5番目、6番目については、特定領域についてですが、特定疾患領域(小児・希少疾患等)の臨床試験については、臨床研究中核病院は国立高度専門医療研究センター(NC)と協働・連携した上で、着実に推進する体制としてはどうか。6つ目、特定領域型の臨床研究中核病院の制度については、これまで活用の実績がなかったことから、廃止を含めて制度の見直しを検討してみてはどうか。
 以上、6点を事務局案とさせていただいています。これらについて、御審議をお願いいたします。
 7ページです。最後に今後のタイムスケジュールです。令和7年3月から6月をめどに、拠点の役割・機能のとりまとめ。その後、令和7年度中に具体的な要件項目を検討、別途、厚生労働科学特別研究班などを想定しています。その後、臨床研究部会で報告・議論の後に、令和7年度をめどに公布、令和8年度中に施行を予定しています。資料2の説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明に関して、御議論いただくこととなりますが、6ページに6つ挙がっています。これを順番にと言いますか、幾つかのグループに分けて、それぞれの所で御議論いただきたいと思っています。まず、1番目から3番目の所、承認要件等が中心になりますが、この点に関して御意見があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。まず、佐藤委員、その後、藤原委員、それから山口委員でお願いいたします。まず、佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(暁)委員 中核病院の立場からして、1番目の所は特に気になっています。特色を評価できるポイント制というのが、具体的にはこれからの議論だと思いますが、実際に創薬への貢献ということをどう評価するのかというのは、治験の数なのか、承認を取った数なのかというのはいろいろあると思いますので、ここはしっかり議論したほうが、後でまたクリアするのにすごく大変みたいなことにならなければいいなという気がしました。
 あと、ここではないのですが、1個前の所で「上記を達成するための十分な人員配置、構造設備等の体制を有すること」といって、これは簡略化も含めてお願いしたいのですが、今の人員配置の数、例えば医師の数や看護師の数、薬剤師の数など、特に看護師と薬剤師の数を単純にカウントするのは臨床研究中核病院として何の意味があるのかを、我々はいつも考えながらカウントしているところもあったりしますので、この辺りの人員配置の意味付けなども、どういった人員が臨床研究中核病院として必要かというのは十分、見直しの対象としていただけたらなと思います。私からは以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、藤原委員、どうぞ。
○藤原委員 私はやはり1つ目の所に意見があります。まず、特別研究班あるいはここの部会で、しっかりと臨床研究中核病院の役割や目的などを今後も議論する必要があるかなと思っています。例えば、今日、事務局から付けていただいたこの資料の9ページ、10ページ、11ページ、臨床研究中核病院の今の承認要件と、文科省がやっている橋渡し研究支援機関認定要件を比べてみると、ほとんど同じなのです。ですから、文科省のお金が入っている所に、何で臨床研究中核病院のお金がまた入るのかなど、非常に疑問に思うので、やはり差別化をきっちりする。文科省は臨床試験をやらずに基礎研究をやってもらえればいいのですからと、きちんと区分けをするなどやらないと、今、この境目が非常に曖昧になっています。
 その中で、ここに書いてある薬事承認などを目標とする、これは非常に大事なことなのですが、中核病院だと、例えばアメリカで昔あったフラミンガムスタディ、生活習慣を変えることによって、いろいろな生活習慣病が予防できるなど、そういう大規模な疫学研究も大事な臨床研究ですから、そういうものをやる所があってもいいでしょう。それから標準治療の選別です。アメリカではcomparative effectiveness researchと言いますが、日本で言えば新薬でもゾロ新のような新薬は山ほどあって、一体どれが一番優れているのかという比較研究は、企業さんは絶対やりませんから、そういうものを臨床研究中核病院がやる。コストは安いが有効性や安全性は優れているあるいは同様であるという治療法や医薬品や医療機器は山ほどあるはずなので、そういうものを中核病院もやるなど、何かもう少し医療の改善につながるようなことを臨床研究中核病院がやるという目的を、しっかり議論していただきたいと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、まず山口委員、それから花井委員、お願いいたします。山口委員、どうぞ。
○山口委員 ありがとうございます。6ページの事務局案の所には具体的にはないのですが、ポイント制という所に関係するかと思います。2ページの論点1の臨床研究中核病院の承認制度という所に、「臨床試験におけるPPIの取組を支援している点を評価に加えることを検討してはどうか」と書かれているのですが、これは、専門家のPPIの理解、周知、浸透ということがないままに要件にしてしまうと、非常に形骸化するのではないかなと危惧しています。と言いますのも、AMEDで、研究開発提案書にPPIの取組を書くという欄ができて、それの具体例のようなものを示されたときに、研究者からいろいろな患者会に、ちょっと協力してくれないか、名前だけ貸してくれないか、こういう団体を作るので一緒にやらないかというような依頼が届いて、非常に患者会の中で困った状況に陥ったということが数年前にありました。やはり、要件にしてしまうと、中身を分からないままにやらなければいけないという方向に走ってしまうこともあるので、まずはPPIということを専門家の方たちにしっかりと御理解いただくことのほうが先決だと思っています。このポイント制が出てきたときに、もしその中に入るということであれば、ちょっと慎重に扱う必要があるのではないかなと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。花井委員、手挙げが消えていますが、御発言はありますか。
○花井委員 ありがとうございます。先ほど藤原委員が指摘されたことと関係するのですが、臨床研究中核なら、どうしても特定臨床研究と治験にスポットが当たっていて、いわゆる指針で行っている研究の領域なのですが、先ほどの企業が余りやらずに医療の質が向上するような研究というのは、割と治験というよりも臨床の医師が臨床の現場で考えたリサーチクエスチョンに基づいて研究するということが起こるわけですが、なかなかそういう先生方の研究資源というのはなくて、それをサポートするというのが臨床研究中核の重要な課題だと思っています。全体としては、言ってみれば、特定臨床研究は臨床試験ではないですか。特定臨床研究は臨床試験、治験に近くて、特定ではない臨床研究という領域にそういった研究が入るのかなと思いますが、ある意味、疫学的研究も入ると思いますが、そこのところの整理が、前のとりまとめでも、今回もちょっと明確ではないような気がしています。そこの考え方をどう整理するかというのは、事務局の考えもお聞きしたいし、今回、先ほど藤原委員が指摘したところの機能を、どういうふうにポイントというか評価指標に入れていくかというところも、御検討いただけたらと思います。質問と意見です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。事務局から何かありますか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 事務局です。花井先生、御質問いただきありがとうございます。臨床研究中核病院のあり方としては、やはり他施設、自施設、多施設での研究を実施、また支援するという立ち位置ですので、そちらに関しては明確にしていきたいと考えてはいます。
○花井委員 ありがとうございます。先ほどAROの先生方からも、いわゆるインセンティブや適切な評価ということがあったと思いますが、やはりそういうところが充実していくと、そういうサポートというのが非常にできると思います。前にも申しましたが、レジストリ構築では、AROに御支援いただいて、それに対価を払って、それがなければ構築できないぐらいのサポートを受けることが必要だったので、そういうことをどんどんやっていくことによって、あらゆる疾病レジストリ、余り研究といっても資源が少ない領域の先生方のネットワークをサポートするということができるようになると、その辺が充実すると思いますので、是非、お願いします。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。神里委員が途中で退室される予定ですので、ちょっと順番を繰り上げて、神里委員にまず御発言いただいて、その後、佐藤委員、佐原委員にお願いしたいと思います。神里委員、どうぞ。
○神里委員 恐れ入ります。ありがとうございます。先ほど山口委員がおっしゃられたことと同じなのですが、そのポイント制にPPIの活動を導入するという点です。私自身、そこの評価の1つとしてPPIを入れることに関しては、いいアイディアだと思っていますが、先ほど山口委員もおっしゃられたとおり、また前回、座長からも御指摘があったと思いますが、研究者自体がPPIについての理解がないままに、何かそのタスクを消化するためにPPIをやるということになりかねないという御指摘があったと思います。そこのしっかりとした理解を促すということもできるような形での評価、そして、患者と市民がPPIを通じて治験に参画できるという機会ですので、いい形でこれをポイント制に導入していただくということについては、前向きに御検討いただければと思います。以上です。ありがとうございます。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、佐藤委員、その後に佐原委員でお願いします。佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(典)委員 藤原委員、花井委員がおっしゃったことと重なってしまって恐縮なのですが、全体を見たときの印象がすごく開発寄りになっているなという気が非常にします。創薬とか医療機器を新たに作るということは非常に大事なことで、エネルギーがすごく掛かることで、そこをしていただくというのは大変いいと思いますけれども、一方で、臨床研究と臨床試験の目的というのは、やはり患者さんの標準治療を確立するということも非常に大きなミッションで、それを大規模試験でしっかりやるということも中核病院の役割ではないかと思うのですけれども、そこのところが、随分小さくなってしまったなと思います。
 先ほどの議題1)の今後の方向性のところで、19年版のまとめのⅠでも、新薬の開発と診療最適化のための研究のバランスを取るということが一番先に書いてあって、そこのところは5年たっても、いささかも変わっていないのではないかと私は思っています。もっとDXは進みましたから、レジストリとか大規模な観察研究的なところというのも、もっと力を入れていかなければならないですし、疾患によっては、学会とコラボレーションする形で中核病院が手をつないでやっていくと。そういったところの中で標準治療をつくっていくということがありますので、開発が大事だということは、重々承知の上ですけれども、やはりちゃんとした治療法を確立するのだというところが軽く見えるので、そこをきちんとして、もうちょっと考えていただきたいと思います。
 併せて、花井委員もおっしゃっていましたけれども、どうしても今の中核病院というのは臨床試験なのですね、特定臨床研究という名の下の。そうではなくて、先ほど言った日常的な診療のレジストリも含めた、大規模なものも含めて、実はそういった仕組みがなくて、日本の臨床研究というのが進まないというところもありますから、これを機会に、中核病院の評価も特定臨床研究、いわゆる介入研究だけではなくて、もっと臨床的な価値のあるものも評価していくという方向で、論文数もそうですけれども、論文数は特定臨床研究しか数えないということになっていますけれども、そうではなくて、価値のあるものは、ちゃんと数えていくという方向で考えていっていただければと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、佐原委員、お願いいたします。
○佐原委員 日本医師会の佐原でございます。臨床研究中核病院と非臨床研究中核病院の違いというのを、もう少し分かりやすくできればと思います。その明確化ができないと、要件を議論するのもなかなか難しいように思います。非臨床研究中核病院でも臨床研究をしっかり行っている所はたくさんあるわけで、非臨床研究中核病院ではできないけれども、臨床研究中核病院ならできるという点を、しっかり評価するような仕組みが必要なのかなというように思いました。
 そういう意味では、5ページにあります「臨床研究中核病院の役割・機能」の所で、3点示されておりまして、2番目の点、「非臨床研究中核病院や関連医療機関に対して」、という箇所は、これは確かに臨床研究中核病院ができて非臨床研究中核病院にはできないところなのかと感じました。
 一方で、1番目の丸のご趣旨を明確にするための質問なのですが、現行の「承認要件を充足するための臨床試験」を実地立案するのではなく、とありますが、これは「するのではなく」ではなく、「するだけではなく」でしょうか。その辺が分かりにくいように思いました。それから、「質の高い」臨床試験を主導的に実施したり、国内での国際水準の臨床試験の中心的な役割、これは非臨床研究中核病院でも行っている所はあるのではないかと思います。前回の国立成育医療研究センターの話などを聞いてみても、そのように思ったので、この辺りの役割と機能を、まず明確にすべきではないかと私は思いました。以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがですか。佐藤委員から御指摘いただいたように、イノベーションと既存の治療法の組合せとを見たもの、その2つの方向性のバランスはやはり非常に大事なところで、どうしてもこの5年間、あるいは、その前から、すごくイノベーションが重要視された結果として、そちらのほうにかなり偏っている状況は否めないところがあるかと思います。
 これに関しましては、確かにイノベーションの結果、新しい治療法が出てくると、その分、これまで治療法のなかった患者さんが救われるという一面はあるわけですけれども、それは、逆に言うと、医療費が更に増える可能性も十分ある。一方、今ある治療法を整理して、より効率的なものが出てくれば、むしろ、コストカットにつながるところもあって、逆に言うと、医療費を削減する方向性もあり得る。今、医療費の問題が大きくなっている中で、その辺りのバランスも考えていく必要はあるのではないかと思います。
 あと、藤原委員から御指摘がありましたように、橋渡し支援と臨床研究中核が、非常に渾然としているところがありますけれども、これは、橋渡し支援の医療機関とか拠点の要件を決めたときに、1つの大学等の中に同じような機能を持つ部署が2つあったら、やはり無駄だろうからということで、橋渡しのほうは、例えば臨中でやっているようなことがあれば、それと兼ねて構わないというような形の立て付けになっている、そのために、藤原委員の指摘されるように、非常に境目が曖昧模糊としてしまっている現状はあるかと思います。この辺りは、制度を基盤とかで評価するのではなくて、それぞれの所で、どういうようなアウトプットというか、業績を上げたかというところで評価して、区別していかざるを得ないかと思いますけれども、この点も、橋渡しのほうは相手が管轄外のところですけれども、それも踏まえて考えていくところはあるかと思います。
 AMEDのほうで、革新的医療技術創出拠点というのを、橋渡しと厚労省の両方が重なった形でされているので、サイトビジットにお伺いしても非常に渾然としていて、どちらがどちらというのが、なかなか分かりにくいところもありますので、この辺りは、次のところで少し整理していく必要があるのではないかと考えております。今、頂きました意見を参考に進めていきたいと思います。
 それでは、次は論点4です。「国際拠点型臨床研究中核病院」に関しまして御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。それでは、藤原委員、お願いいたします。
○藤原委員 この国際拠点型とそのほかの臨床研究中核病院の差別化、先ほど佐原先生もおっしゃっていましたけれども、いろいろなネーミングとそれが意味するところが曖昧になってくるといけませんので、国際拠点型とその他の臨中の違いは何かということを具体的に示していただきたいと思います。
 もう1つは、日本が一番遅れているのは、世界を臨床研究領域で何もリードしていないということですね。そこを変えていくためには、例えば臨床試験、治験を受託する能力を高めて、世界中からシーズを集めて、日本で開発するなど、そういうことも1つの手ではあると思いますけれども、そういう中で、今の病院で、外国の企業と普通にやり合って、あるいは外国の研究機関と普通にやり合って、いろいろな契約も進め、あるいは世界中の医療機関を束ねるという作業は、医療法上、健康保険の中では全く関係ない話なので、ものすごく人件費とか、体制整備をするのが大変だと思います。ですから、国際拠点型のときには、かなり予算をそこに割くとか、あるいは、しかも恒常的に割かないと、先ほど渡部委員もおっしゃっていましたけれども、ほとんどの臨床研究中核病院は任期付常勤だけで、3年とか5年の任期だけだと、いい人が集まってこないのですね、今は。それも考えていかなければいけないので、人的体制あるいは予算的な措置をどのようにやっているかというのを、具体的な方向性を示したほうがよいと思います。以上でございます。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、山口委員、お願いいたします。
○山口委員 山口です。事務局に質問です。国際拠点型臨床研究中核病院というのは、今、臨床研究中核病院になっている所で、こういった機能がある所を分けて、特別な機能を持っていますと位置付けるのか、全くそうではなくて、臨床研究中核病院と別途こういう機能があるという所で手を挙げてもらって承認するというイメージなのか、その辺りがややこしいなと思ったので、イメージを教えていただければと思います。
○医政局研究開発政策課課長補佐 事務局です。山口先生、御質問ありがとうございます。頂いた質問で、前者のほうを想定しております。
○山口委員 ということは、臨床研究中核病院でありつつ、こういった機能も持っていますというような、二階建てみたいな感じですか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 そうです。既存の臨床研究中核病院の基準の上に乗る形を想定しております。
○山口委員 そうしたら、基本的には臨床研究中核病院であって、さらに国際拠点型のというような、スペシャリティのある臨中みたいな感じになるというイメージですか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 二階建てのイメージを想定しておりまして、既存の臨中の基準の上に上乗せになる形で基準を設けた上で評価を行うことを想定しております。その目的としては、国際レベルの治験、臨床研究の実績、実施体制を評価していくことを想定しております。
○山口委員 分かりました。どこから変わってくるのかというのを分かりやすく提示しないと混乱すると思いましたので、そこは議論が必要ではないかと思いました。
○楠岡部会長 ほかにございますか。今の山口委員の御質問に関連するのですが、「既存の」という言葉だと、今ある臨中に限られてしまうようなイメージがあるのですけれども、今後、臨中になった所がこの機能を持つという、新たにできる臨中も、一応、応募資格はありということですか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 楠岡先生、ありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。
○楠岡部会長 そうしますと、国際型を念頭に置いて体制を作るという臨中病院が新たに出てくる可能性もあり得るということですか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 そうです。
○楠岡部会長 そういうような状況です。あと、最初のところの議論で、臨中としての機能の停止・取消しの話がありましたけれども、この国際型というのは、例えば国際型になったのだけれども、余り国際的な機能が発揮できなかった場合は、そこだけ取り消すとか、あるいは、どこか別の所が手を挙げたら、一応、複数も可能、あり得るというような想定で、今、考えておられるということですか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 楠岡先生、その想定でおります。
○楠岡部会長 今、事務局の御説明にあったような形で考えているということですので、その辺も配慮いただければと思いますが、よろしいですか。何か新たに御質問というか、今、すぐに想定しにくいところなのですけれども、お願いしたいのですが、よろしいですか。
 それでは、5、6番目の所、特定領域に関する臨中の問題ですけれども、これにつきまして御意見がありましたらお願いしたいと思います。それでは、佐藤先生、お願いいたします。
○佐藤(暁)委員 こちらはどういった形を想定されているか教えていただきたいのですが。我々も、感染症ネットワークに対する協力病院とか、そういったものをお願いされていたりして、特定領域の試験をやるときに、我々がサポートに入るような形を求められることがあるのですけれども、ここの「連携した上で」というのは、我々NCでもあるのですが、これは中核病院がNCに対して協力をお願いする感じですか、それとも、逆なのでしょうか。
○楠岡部会長 事務局、どうぞ。
○医政局研究開発政策課課長補佐 事務局です。佐藤先生、ありがとうございます。今、想定しておりますのは、双方向の協力体制ということで、臨中側からNC、NC側から臨中の両方を想定しております。
○佐藤(暁)委員 分かりました。また、具体的にどういったことが、これは要件に入るものではないのかなとは思いますけれども、どういった役割がお互いに求められるかというのは、今後、ディスカッションの中で出てくるかというように理解しました。ありがとうございます。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、藤原委員、どうぞ。
○藤原委員 この6番の特定領域型の臨床研究中核病院の制度を廃止してはどうかというのは、これまで応募がなかったので仕方ないかなと思いますけれども、一方で、5番に書いてあるナショナルセンターが疾患別に設置されていて、いろいろな役割を果たしてきたというように言われていますけれども、私もナショナルセンターの出身者ですが、病院側は、運営費交付金、国からの金はほとんど入っていないのです。多分、教育費だけで、診療報酬で全部やっております。そういう診療報酬の中で新たに臨床研究をやろうとすると、治験を受託するとか、共同研究をやるとか、あるいは、AMEDとか科研費、文科の科研費を取ってくるかという、競争的研究資金に頼らざるを得ず、そういう中で臨床試験、臨床研究をやるというのはものすごく大変なので、ナショナルセンターは中核病院になっていないと臨床研究を非常にしづらい状況にあります。ですから、特定領域の臨床研究中核病院を減らして、ナショナルセンターの役割を上げるのであれば、やはり運営費交付金などをしっかりあげて、本来、ナショナルセンターが臨床研究を引っ張っていく病院であるという、この設立のときの概念に戻って予算措置をしないと、結局、ここに書いてある小児、希少疾患、小児であれば成育がやっていますし、希少疾患の多くは、神経難病を多くやっているのは精神・神経センターです。臨床研究のために運営費交付金等を措置するか、臨床研究中核病院等として予算事業で支援するか、どちらもしなければ、そういう所が非常に良い仕事をされているのに、潰してしまうことになるので、慎重な対応が必要かなと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はいかがですか。先ほどの佐藤委員からの御意見ですけれども、今のNCでカバーしていない領域に関して、それを扱っている病院が幾つかネットワークを組んで臨床試験などを行うときに、それのARO的な機能を果たしてもらえる病院がない場合には、どこかの臨中にそれをお願いするという形になってくるのが、1つ、理想的な形ではないかと思います。それに対して、どういうサポートをするのか、例えばAROを引き受けた所に何らかの予算措置とかを考えるかどうかというのは、これはまた別の問題として、体制としては新たにNCを作るというのではなくて、それはまた大変ですし、また、それだけの規模の疾病というのも、もうほとんどないと思われますので、その辺りのところは、今の臨中がそういうARO機能を発揮しながら維持していくような形になるのではないかと考えております。これは私個人の意見でありますけれども、そのような理解でもいいのではないかと思っております。花井委員、どうぞ。
○花井委員 今の議論ですけれども、字面上は5の双方向のということで説明されるのでしょうけれども、先ほど藤原委員がおっしゃられたようなことがあって、双方向でありながら、NCが中心のハブになるとか、NCがこちらの病院のハブの部分で、NCがサポートするとか、いろいろケースは考えられると思うのですけれども、やはりそこのところは、結局リソースの配分の政策側の考え方で、お金をどこへ流すかという話でもあるので。あと、JIHSができると、6NCとCINの事務局は、一応、JIHSがそのまま持っていくと言っていますけれども、やはり国立国際医療センターが、全疾患を診ている所が、6NCに関してはその事務局機能を担うということを言われていて、それがJIHSに移るときに、JIHSの中でその機能をどれだけサポートするのか、お金を出すのか。そういうところは行政側のある種の予算配分とか、そういうことなので、運営費交付金が廃止された以降、インハウス研究費というのは、一応、入っている格好にはなっていますけれども、やはりどんどん細くなっているという部分はありますので、今ある希少疾病のネットワークを組んで、やっと、息絶え絶えにやっている所を潰すような政策決断はやめてほしいというのは、私も藤原委員の意見と同じです。そこは、臨中とNCの機能も含めて、ある種、やはりリソース配分をそちらに的確にやっていただくということが前提にあると思います。字面で連携とか協働と書いたところで、やはり実態をサポートする体制がないと机上の空論になることをおそれているので、よろしくお願いします。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はございませんか。よろしいですか。それでは、今、6つの論点に関しまして御意見を頂きましたので、この意見を整理して、今後の対応を事務局のほうで検討していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から、ほかに何かございますか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 事務局です。参考資料1について、CRBの設置状況を1、2ページに、jRCTに登録されている治験及び特定臨床研究などの状況について3ページに御紹介しておりますので、適宜、御覧いただければと思います。
 最後に、事務連絡です。次回の開催については、5月8日(木)の16~18時を予定しております。委員の皆様には、追って事務局より御連絡を差し上げます。事務局からは以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、今日は大分短く終わりましたけれども、これにて閉会させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。