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第8回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」議事録
日時
令和7年3月19日(水)15時00分~17時00分
場所
東京都千代田区霞が関3丁目2番5号
こども家庭庁 共用大会議室(14階)
議題
(1)希望に応じた出産を行うための環境整備について(助産所・助産師の活用等について、無痛分娩について)
(2)出産に係る妊婦の経済的負担の軽減等について
(3)分娩取扱施設における出産に係る費用構造の把握のための調査研究について(報告)
(2)出産に係る妊婦の経済的負担の軽減等について
(3)分娩取扱施設における出産に係る費用構造の把握のための調査研究について(報告)
議事
- 議事内容
- ○柴田保険局保険課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより、第8回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただきありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。
まず、構成員の出席状況について御報告いたします。
本日は、今村構成員、前田構成員より御欠席の連絡をいただいております。また、御都合により、末松構成員、寺尾構成員は、オンラインでの参加をいただいています。
なお、このたび、構成員の交代がございましたので、御報告いたします。
公益社団法人日本助産師会の髙田昌代構成員におかれましては、2月16日付で退任され、後任として同会会長の中根直子氏が同日付で構成員として着任されました。
それでは、新しく構成員となられました中根構成員より、一言、御挨拶を頂戴できればと思います。
○中根構成員 ただいま御紹介にあずかりました、中根直子と申します。日本助産師会の会長に2月16日をもって就任することになりました。このたびの検討会においては、助産師の代表ということになりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
○柴田課長補佐 中根構成員、どうもありがとうございました。
続きまして、本日は、参考人として公益社団法人日本産婦人科医会会長の石渡様、公益社団法人日本小児科医会会長の伊藤様、日本医師会総合政策研究機構主席研究員の江口様、一般社団法人日本助産学会理事長の片岡様、一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤様、早稲田大学政治経済学術院教授の野口様、日本医師会総合政策研究機構主任研究員の羽藤様、公益社団法人日本産婦人科医会常務理事の宮﨑様、以上8名の方々に御出席いただいております。
以上の参考人の方々におかれましては、議論の中で座長から発言を促された際に、指名を受けて御発言いただくようお願いいたします。
また、構成員、参考人の皆様におかれましては、御発言ごとにお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。
それでは、会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの方は御退室をお願いいたします。
では、以降の議事運営につきまして、田邊座長にお願いいたします。
○田邊座長 それでは、早速でございますけれども、議事に入ってまいりたいと思います。
まずは、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。お手元の資料の確認をさせていただきます。
傍聴の方は、厚生労働省のホームページに資料が掲載されております。
本日の資料は、資料1、資料2-1、2-2、2-3、資料3、以上でございます。
過不足、落丁等ございましたら事務局にお申しつけください。
○田邊座長 早速ですけれども、議事に入ってまいりたいと思います。
まず、議題1「希望に応じた出産を行うための環境整備について」を議題としたいと存じます。
資料1に関しまして、事務局から説明をお願いいたします。
では、よろしくお願いいたします。
○近藤医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室長 地域医療計画課でございます。資料1の御説明をさせていただきます。
まず、「希望に応じた出産を行うための環境整備について」、2ページを御覧いただければと思います。
「これまでの主な御意見」としましては、出産に係る経済的負担の軽減と同時に、出産費用の予見可能性を高めるべき。また、出産に対する妊婦のニーズは様々でありまして、妊婦が十分な情報に基づいて出産に関する自己決定を行えるようにすることが重要である。「出産なび」について、一定の評価をする意見と、さらなる掲載情報・機能拡充を求める意見があったと承知をしております。
これに対しまして、「検討・対応の方向性」としましては、妊婦の方々が費用とサービスの関係を踏まえて出産施設を選択できる環境を整備するため、「出産なび」を通じた見える化を進める。同時に、正しい理解に基づく選択を行えるよう、妊娠中やその前段階から情報発信、啓発を行っていく。妊婦の方々の希望に応じて、助産所等での出産や産後ケアを行えるような環境の整備について、次回以降、引き続き議論することとしてはどうか。無痛分娩など、出産に関する個別のニーズについても、次回以降、引き続き議論することとしてはどうかといったこととなっております。
1枚進んでいただきまして、「前回までの主な御意見と検討の方向性」ですけれども、助産所の果たす役割として、エビデンス・ガイドラインに基づいた助産ケアと緊急時に嘱託医・嘱託医療機関と連携して、低リスク妊産婦を安全に管理・評価し、また、妊娠期から育児期までの継続的・個別的なケアを提供していただくような、女性が満足できる出産をサポートしているといった御意見があったと思います。
また、妊産婦の経済的負担を軽減すること、妊産婦の多様なニーズが尊重されることは大変重要でありまして、そのために、継続ケアや寄り添いなども含む助産師のケアについても適切に評価していただき、新たな制度になったとしても、その制度の中に助産所を位置づけていくべきといった御意見。
また、地域での伴走型の支援を構築するに当たって、産前から信頼関係が構築された担当者による継続的なケアが望ましい。周産期医療だけでなく、妊婦の目線から見た「周産期支援」の提供体制の確保として捉えて、地域の関係機関の連携によって、産前から産後まで広く支援体制を構築する観点から議論すべきといった御意見があったというところでございます。
したがいまして、「御議論いただきたい点」としては、妊婦の方々の希望に応じて、助産所も含め、出産や産後ケアを行えるような環境を整備していくことが必要。妊産婦等が抱える妊娠・出産や子育てに関する悩み等に関する相談対応に当たり、助産師等の専門家等が果たす役割も大きいと考えられる。妊産婦の希望に応えるために、どのような方策が考えられるかといったところが挙げられると思います。
次をお願いします。
無痛分娩についてです。
無痛分娩についてはニーズが非常に高まっている中、無痛分娩の手出しが減ればありがたい、夜間・休日でも無痛分娩を含む分娩方法やサービスの選択ができる体制整備をしてほしいといった御意見がありました。また、十分な情報に基づかず安易に無痛分娩を選択したことへの後悔等も聞かれましたので、メリットだけでなくて、リスクやデメリット等の情報提供の重要性を指摘する御意見もありました。
妊婦の希望を踏まえて選択できる環境を整備し、産科医療の標準化と質の向上につながるといった観点から、無痛分娩や産痛緩和を目的とした処置も保険適用する方向で検討いただきたいといった御意見もありました。
無痛分娩について、医療者としては医療安全が第一であるが、安全で効果的な無痛分娩を実施するためには、産科医・麻酔科医に一定の習熟が求められる。ただ、提供体制には大きな地域差があって、その確保を都道府県に丸投げしても難しい部分がある。普及率はまだ低い状況にあって、麻酔科医の体制等、議論すべきことも多々あるというような御意見がこれまであったと理解しております。
「御議論いただきたい点」としましては、無痛分娩を希望する妊婦が選択肢として持てる環境を目指すことが重要。また、妊婦や関わる人々が無痛分娩のメリットやリスクを十分に考慮した上で選択できるよう、無痛分娩に対する正しい理解を広める必要がある。これらを踏まえ、安全な無痛分娩の実施体制を確保するためにどのような対応が考えられるか。また、無痛分娩を希望する妊婦に対してどのような支援が考えられるかといった点を考えております。
以降は、関連資料ですので、議論の間に御参照いただければと思います。
以上でございます。
○田邊座長 御説明ありがとうございました。
ただいま説明のございました資料1に関しまして、御意見、質疑等がございましたら、挙手にてお知らせいただければ幸いです。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 ありがとうございます。健保連の佐野でございます。
論点に沿って2点申し上げます。
まず1点目は、資料3ページの「助産所・助産師の活用等について」ですが、これまでの本検討会における議論においても、助産所・助産師の果たしている役割は、大変重要であると考えております。資料に「助産所も含め、出産や産後ケアを行えるような環境を整備していくことが必要」との記載がございますが、妊婦の方々の希望に沿うという点からも、この方向で検討を進めていただければと思っております。
2点目は、無痛分娩についてです。妊婦の方の間で無痛分娩のニーズが高まっていることはもちろん理解しておりますが、これまでの議論においても、無痛分娩にはリスクやデメリット等の御指摘もありましたので、どの医療機関においても、人的、また技術的な安全性をしっかりと確保した上で実施されることが大前提だと思います。
そういう意味で、まずは、現在実施している医療機関の体制や、研修等の実態把握を進めるべきだと思います。また、無痛分娩を実施している医療機関数はまだ約3割にとどまっていることを踏まえれば、現時点においては無痛分娩の保険適用については慎重な検討が必要ではないかと考えております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。ほか、いかがでございましょう。
では、松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 連合の松野です。御説明ありがとうございました。
まず、第1回でも申し上げましたとおり、連合はかねてより安全体制の確立の観点から、出産の保険適用を求めてまいりました。この方針を確認したのは、ちょうど20年前の2005年になります。当時の連合のアンケート調査でも、出産費用の経済的負担が課題となっておりました。そして、今回この検討会に臨むに当たり、連合は改めて考え方の整理を行い、産科医療の標準化と質の向上、それから、希望する人が安全・安心にこどもを産み育てられる環境整備に向けて、正常分娩はもちろんのこと、無痛分娩をはじめ、産痛緩和ケア、また、助産所における出産も含めて保険適用を求めていくことを確認しております。
私は被保険者の立場でこの検討会に参画し、連合の考え方を踏まえて発言しております。当然ながら、被保険者の中には妊産婦の方々もいらっしゃいます。各種調査からも妊産婦の方々は、妊娠・出産・産後に際して様々な不安や悩みを抱えていることが明らかとなっています。経済的負担、つわりなどの体調不良、体の変化、赤ちゃんの健康状態、出産の痛み、育児がきちんとできるかなど、多くの妊産婦の方々が、個人差はあるものの様々な不安や悩みを抱えながら日々過ごされているかと思います。私自身の経験を振り返っても、正直いろいろつらかったなと思い出されます。
そうした中で、この検討会では、妊産婦の方々が安全・安心に妊娠・出産・産後を過ごせる環境整備について検討していると理解しております。このような観点からも、妊産婦の方々の不安や悩みに寄り添ってこられた助産師をはじめとする専門家の方々、また、助産所が果たしてきた役割は大変大きいと考えております。ついては、私どもは、助産所における出産も保険適用とする方向で検討するべきと考えております。
また、無痛分娩については、この間のヒアリングや各種調査からも、妊婦のニーズは非常に高まっており、今後も無痛分娩の助成を検討する自治体、無痛分娩を取り扱う施設が増えていくのではないかと考えております。一方で、地域間、施設間で無痛分娩の取扱いに差があること、妊婦への情報提供が不十分であること、安全な提供体制の構築に課題があることなど、私どもも懸念しているところです。だからこそ、無痛分娩についても希望する妊婦が安全・安心に受けられるよう、無痛分娩の標準化と質の向上の観点から、保険適用とする方向で検討するべきと考えております。
また、今回の論点では、無痛分娩のみが書かれておりますが、各病院、診療所、助産所では、妊婦の出産の痛みの緩和に向けて、無痛分娩に限らず様々な産痛緩和ケアも行われていることと思います。こうした産痛緩和ケアも評価されてよいのではないかと考えておりますし、妊婦の出産の痛みに対する不安軽減の観点からも、産痛緩和にも様々な選択肢があることをもっと周知していくべきだと考えております。そのため、WHOが推奨しているような、エビデンスに基づいた産痛緩和ケアも標準化と質の向上に向けて、保険適用とする方向で検討していただきたいと考えております。
以上になります。
○田邊座長 ありがとうございました。ほか、いかがでございましょう。
では、末松構成員、よろしくお願いします。
○末松構成員 ありがとうございます。オンラインから失礼いたします。
産後ケアについて、本市の現状や環境整備、また、伴走型相談支援体制についての助産所や助産師の活用について、少し申し上げたいと思います。
産後ケア事業における本市の状況でございますが、令和5年度の利用者、延べ人数246人に対しまして、令和6年度は1月末現在で既に363名、約1.5倍の利用者がございます。この要因といたしましては、産後ケア事業の市民への啓発及び医療機関や助産所からも御紹介をいただいているだけでなく、今年度から国の補助金を活用させていただき、全ての利用者を対象に、利用者負担の軽減措置を行ったことが大きく関係していると考えております。
利用施設は、宿泊型は医療機関が約90%、通所型は約90%が助産所で実施され、ともに生後4か月までの利用となっております。一方で、訪問型は生後1歳までの幅広い月齢の方が助産所での産後ケアを受けられております。また、本市では、助産師資格のある方に新生児訪問、赤ちゃん訪問を行っていただいており、また、妊婦教室などの産前産後サポート事業も御協力をいただいている状況であり、助産師との連携なしでは母子保健事業は成り立たないという状況であると感じております。本市におけます産後ケアや新生児訪問等、母子保健事業の充実に伴い、出張専門の助産所の開設も増えてきております。
課題といたしましては、産後ケアを御利用いただいた方からは、「産後の不安な時期に専門家の方にお話を聴いていただき、赤ちゃんを見ていただけるので心強い」。あるいは、「心配事がないか丁寧に寄り添ってくれて安心した」というようなお声もいただいております。一方で、「気軽に利用できることをもっと周知してほしい」「市外の施設でも利用できるとよい」「制度上は産後1年の利用となっているが、医療機関等では実際には4か月が過ぎると利用が難しい」との声もいただいております。
国におかれましては、産後ケア事業における市町村の財政負担の軽減と補助金制度の拡大を図っていただいており、本市も利用希望者や受入れ施設と密接に連携をするとともに、国の補助制度を用いて事業拡大を行っているところでございます。本事業のユニバーサル化、受け皿拡大のためにも、妊産婦家庭や医療機関等の受入れ施設の意見を十分に踏まえ、今後も制度設計、また、財政支援もお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。
私から、以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、佐藤参考人、よろしくお願いします。
○佐藤参考人 オンラインから、すみません。参考人の全国妊娠SOSネットワークの佐藤です。
今回、「助産師の活用等について」というタイトルで、これだけ御議論いただきたい点をまとめていただいて、すごくうれしく思っています。
妊娠・出産するということは、プロセスも長く、その間の体のケア、心のケア、また、赤ちゃんが生まれてきてからの赤ちゃんのケアと家族のケア、夫も含めてということも、長く考えていかなければならない期間もあるわけで、それにおいて伴走型の支援をすることもできる助産師を活用していただくことは、非常に重要ではないかと思っています。
これは令和6年6月の子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案の参議院の附帯決議の中でも、「『伴走型相談支援』と呼ぶにふさわしい、産前産後を通じて専門的知見を有する伴走者が一貫したサポートを提供できる仕組みについて検討を進めること」と書かれておりまして、「一貫した」というところがすごく重要だと思います。日替わりメニューの支援者ではなく寄り添った形で、その人が不安に思っていることも、妊娠・出産のことも知っている専門職が寄り添い支援をするということが、今こそ本当に求められていると思います。
ぜひともここのところも検討していただき、あるいは、妊娠・出産した人の満足度も、費用のこともあるかもしれませんが、それよりも質的なところで満足度がどうなったかというようなことの検証も、国にやっていただけるとありがたいと思ったところです。
以上です。ありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 日本医師会の濵口でございます。コメントさせていただきます。
まず、助産所・助産師の活用等についてございますけれども、皆さんおっしゃられるように、妊産婦の選択肢という点では、助産所の出産、あるいは産後のケアの環境整備は、非常に大事だと考えております。ただし、助産所での出産に関しましても、安全な出産環境を整備することは最も大事でございますので、これは重要なポイントだと考えております。
それから、無痛分娩でございますけれども、何度かこの検討会でも議論いたしましたけれども、無痛分娩を希望する妊婦が選択できる環境を目指す。そして、正しい理解を広めることは非常に大事なことでありますが、現場において、痛みが緩和されるというメリットだけが一人歩きしているような感じもしており、どんなリスクがあるのか、無痛分娩を行えないケースもあるということなど、正しく理解してもらうための方策も検討していただく必要もあるかと思います。
また、集患のために粗悪な環境での提供を容認することがないように、そして、無痛分娩が安全に、そして、経済的にも過剰な負担とならないよう、正しく標準化されていくことが必要でありますし、適切な施設基準等の設定などの検討も今後必要になると考えております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、家保構成員、よろしくお願いします。
○家保構成員 衛生部長会の家保です。
まず、助産師につきましては、産前産後、分娩も含めて非常に重要な役割を今後果たしていただきたいと思っております。
ただ、地域格差を見ますと、全国平均が人口10万対30.5人、高知県も30.5人でほぼ全国並みですが、多い都道府県は、島根県で50.8、低いところは、埼玉県で22.0というような状況で、かなり格差がございます。一方で分娩については、資料の11ページを御覧いただきますと、人口10万人当たりの助産師数が最も多い島根県は、分娩を実施している助産所はゼロでございます。このように地域によって助産師の果たす役割は大きく異なってくると思います。
先ほど、濵口構成員がおっしゃられたように、安全ということを考えれば、産婦人科施設や産科医との連携が非常に取りやすく、かつ、時間的、密集的なところでは助産所で分娩が可能かもしれませんが、当県のようなところ、島根県もそうですけれども、現実に産婦人科医が非常に厳しい状況では、分娩を助産所でやることは、安全性の面で非常に危惧される部分があります。そのような状況をきちっと説明していただいて、住民の方にも納得いただかないといけません。分娩以外の産前産後のケアはどの地域でも重要ですので、そういう意味で、助産師の活躍を増やしていただきたいと思っております。
実は当県は平成16年の頃、助産師が県内に103人しかいませんでした。非常に少なかったので、奨学金制度を設けました。今、県内の養成校ですと月10万円、県外の養成校は15万円の奨学金で、年7人給付しております。令和4年の数は206人と、約2倍になっております。各県、非常に取組もしていますし、そういう部分を国から基金等で支援をしていただいて、何らかの平準化、均てん化が図られるような施策を、ぜひとも考えていただきたいと思います。
無痛分娩につきましても、36ページに示されているように、各都道府県で無痛分娩が実施できる医療機関について、青が「医学的適応のみ」、赤は「希望による」、緑が「対応しない」とあり、高知県だけ青、赤共にゼロです。ということで、来年度から高知大学の麻酔科と産婦人科の連携によりまして寄附講座を設けて、計画的に無痛分娩ができる医療機関を3年ほどかけて増やしていこうという取組もしております。
技術、安全性を確保する意味では、きちんと研修を受けてやっていけるような体制確保が必要で、それをやったとしても、県内の妊婦の希望に全て応えられるか非常に不安な状況でございます。ほかの県でも、青森県と岩手県は1か所ですので、これをどういうふうに安全に、かつ、実施できるところを増やしていくのかという施策も考えないと、制度を導入し、仮に無痛分娩を保険適用しても、希望する妊婦さんに適用できない状況が続きます。
そうすると、無痛分娩を実施できる医療機関にかかっている方は給付が受けられ、そうでない方は給付が受けられないというのは非常に不公平です。その辺りも考えていただきたいと思います。同時に保険適用がないと、東京都のように地方自治体の給付で支援するとなりますと、これもまた、地方の都道府県、財政力の弱いところには非常に厳しいというのは前回お話をさせていただきました。そういう地域間格差を十分に認識の上で御議論していただきたいというのが希望でございます。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
細野構成員、よろしくお願いします。
○細野構成員 周産期・新生児医学会の細野です。小児科側のほうからお話を1点させていただければと思います。
助産師、助産所の活用というのは一定のニーズがあって、今までも重要な役割を果たしていることは承知しております。今、妊婦のところですけれども、実際に赤ちゃんは生まれてくるわけなので、その後、必ず状態の悪いお子さんは出てくるわけです。そのときに、助産所と嘱託の産婦人科の先生との連携というところがあるのですが、これから産婦人科の先生方が減ってくると、嘱託医との距離が遠くなる。
これは時間的・距離的な問題もあると思いますけれども、そうなると、産科の先生も助産師も真面目な先生が多いので、電話相談だけではなく、実際に赤ちゃんを産科の先生にお見せすることもあります。そのときに搬送距離が伸びるとか、今、自治体で搬送用のクベースを減らしていて、搬送用のクベースを積んだ救急車が来るのに時間がかかるという問題も出てきていますので、その辺のところを、産科の先生のお許しがあれば、周産期センターと直接新生児のところはひも付けしていただいて、そことの連携を強化するようなことも考えていただければと思います。
あと、搬送用クベースに関しても、今、我々のチームで災害時用とか途上国用の簡易の保育器も作成していますので、そういうのが実際に活用できればと思いますので、ぜひご検討いただければと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、石渡参考人、よろしくお願いします。
○石渡参考人 石渡でございます。
今、いわゆる標準化というお話がございました。医療の標準化、周産期医療の標準化ですけれども、その標準化をどこのレベルに置くかということは非常に重要だと思います。例えば、日本の周産期医療は、世界に冠たるすばらしい医療を国民に提供しているわけです。その指標となるのは、いわゆる妊産婦死亡率、あるいは周産期死亡率、新生児死亡率。世界でトップです。このトップのレベルを維持する。国民に安全な医療を提供するには、それなりの安全コストがかかるということを、ぜひ念頭に置いていただければありがたいと思います。標準化するのであれば、高いレベルで標準化すべきだと思っております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
新居構成員、よろしくお願いします。
○新居構成員 NPO法人manmaの新居です。
まず、無痛分娩について申し上げます。私自身も出産の際に無痛分娩を選択しまして、痛みが緩和されるということが分かった状態で妊娠期間を過ごせて、すごく不安が軽減されたという実感がありました。一方で、今、無痛分娩はぜいたく品とか、それこそ、痛みを感じて出産すべきだという特に親世代からの偏見もある中で、甘えだったり、ぜいたく品というようなイメージがまだ根強くあるということも実感しています。
お金があったらやりたいけれども、節約のために無痛分娩はやめておこうという人たちもいる現状を踏まえると、一方で、出産に関する不安は痛みというところがすごく大きい現状を考えると、これから妊娠・出産をする人たちの不安を軽減するという観点からも、保険適用ではないにしても、経済的な支援だったり、もちろん安心・安全に無痛分娩ができる環境を整えた上で、経済的負担の軽減についても検討していただきたいと思います。
もちろん体制が整うまで時間がかかるとか、47都道府県横並びということも分かるのですけれども、首都圏に住んでいる人たちにとって無痛分娩というのはかなりアクセシブルな選択になっていて、ほかの都道府県がついてくるのを待つ間、ぜいたく品、甘えという状況というのは、少し時間がかかり過ぎるかなという体感を持ちました。
もう1点目が、助産師の活用についてです。私自身も産後ケアに非常に助けられたこともあって、出産だけではなく、特に産後ケアの部分で助産師の皆さんが妊産婦にとって非常に心強いということは、当事者として強く感じています。
先ほど佐藤参考人もおっしゃっていましたけれども、今、伴走型の支援がありますけれども、こま切れ感になっているというところは私も非常に同意します。今、3回伴走してもらえるタッチポイントがあるということですけれども、向こうが来たいタイミングで来ているというのがこちら側の体感で、こっちが困ったときにいつでも頼れるような専門家は、今いないというのが状況かなと思います。いつでもこちらが困ったときにリーチアウトできる専門家がいるという状態が伴走型の寄り添いだと思うと、例えば、いつでも相談できる助産師が誰にとっても1人いるというような環境が将来的にあるといいなと思います。
個人的な事例ですけれども、うちの近くにある助産院は、費用的にはかなり高いですが、月額8,000円払うとLINEでいつでも相談できて、その助産院にいつでも来てよくて、2時間までですが託児もかなり低額で利用できるというサービスをやっています。そこに私も助けられて、そこの助産師が、もちろん自分のこどもがいつ生まれたかとか、お産の状況も全部知っている人だったので、こどもが1歳過ぎてから自分が乳腺炎で困ったときも、そこに1本電話したら、「これをやったらいいよ」とアドバイスをもらえたというようなことがあったので、困ったときにいつでも相談できるというのが、高額でなくてみんなが使えるようなものとしてあるとすごくいいなと感じています。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、中根構成員、よろしくお願いします。
○中根構成員 日本助産師会の中根直子です。
本会は、第2回の検討会のヒアリングでも御報告をさせていただき、また、その後の検討会でも申し上げてきたとおり、身近な地域でお産がしたい、あるいは、助産師の継続的なケアと介助を受けてお産がしたい。あるいは、住み慣れた御自宅でお産がしたいというような妊産婦のニーズを受けて、嘱託医師、嘱託医療機関の皆様との連携の下に、安心・安全な出産環境を提供してまいりました。また、資料にありました、妊婦の目線から見た周産期支援という点においても、産前産後、そして、育児期を含めた女性とその家族へのケアの専門家として地域で活動してまいりました。その点から、繰り返しになりますが、改めて2点お願いしたいと存じます。
まずは、今後整備されていく妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策の中には、我々助産所及び地域で活動する助産師の活用もしっかりと位置づけていただき、助産所や自宅での分娩及び継続ケアを望む妊産婦の皆様が、産む場所の選択によって不利益を受けることがないように、しっかりと支援の手を伸ばしていただければと存じます。これは、ひいては、少ないながらも一定数存在する自宅分娩の安全・安心を確保する施策にも結びつくものだと考えております。
資料12ページに円グラフがございますが、出張分娩、いわゆる自宅分娩に出張しているというのは助産師しかいないわけで、ニーズがある限りそれへの対応も必要になってまいります。本会会員の調査では、出張分娩は、2013年から2024年までの12年間において3,089件ございました。これは1年にしますと、年間257件ほど自宅で生まれている赤ちゃんがいるということです。例えば、自宅分娩を新制度から除外した場合には、支援がないために自宅に助産師を呼ばず、医療者の立ち会わない無介助分娩が起きてくる可能性も否定できません。助産師の取り扱う自宅分娩については、安全面についても嘱託医、嘱託医療機関との関係の中で、しっかりと安全を確保しつつ対応しておりますことも申し添えます。
もう1点は、安全確保についてですが、嘱託医師、嘱託医療機関との連携は極めて重要になってまいります。ついては、助産師活用推進事業としても挙げられておりますが、助産所と嘱託連携医療機関等の連携に係る支援事業を今後ともますます推進していただき、全国でも各地域でも、周産期医療提供体制における主に低リスク分娩を扱う機関、これは資料の8ページにございますが、周産期医療体制のところで1次医療機関のところに、主に低リスク分娩を扱う医療機関ということで、一般病院、診療所、助産所がございますが、ここに一翼として助産所を位置づけていただけるように、引き続きよろしくお願いいたします。
また、御議論いただきたい点に、助産所と助産師の活用とその支援の在り方というものがございます。資料12ページの円グラフに戻っていただきますと、ここにオープンシステムという見慣れない単語があるかと思いますが、これは妊産婦当事者の方にもあまり知られておりませんが、今後、推進していく一つの方法としては、分娩場所の確保と妊産婦の安心・安全確保の上で重要であると考えております。
このオープンシステムを含めて検討されていくことを期待しておりますので、周産期医療提供体制の在り方については、前回の検討会の資料によりますと、「今後、地域医療構想や医療計画に関する検討の場において」と記載がございますので、今後の検討の場が、あるいはいつ頃検討されることになるのか教えていただきたいと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
○田邊座長 ありがとうございます。
地域医療構想の中でということですけれども、では、よろしくお願いします。
○近藤室長 地域医療計画課でございます。
ただいまのお尋ねですけれども、昨年、新たな地域医療構想に関するとりまとめというものがありましたので、これを踏まえて、今、法案審議に向けた準備作業をしているところでございまして、具体的なスケジュール等は、これも踏まえて検討させていただきたいと考えているところでございます。
以上です。
○田邊座長 中根構成員、よろしゅうございますでしょうか。
では、亀井構成員、よろしくお願いします。
○亀井構成員 産婦人科学会から申し上げます。
助産所の活用は、我々学会としましても特段の異論はございません。特に産後のケアに関しまして、我々医師とは違って非常に手厚いケアをしていただけると信じておりますので、それは構わないのですけれども、一方で、分娩数がどこも減っておりまして、従来であれば我々の施設、大学や総合医療センター、あるいは1次施設などに送られてきたような、紹介いただいて来たような妊産婦を助産所で抱えてしまわれることが、うちの県内では散見されまして、1次施設ではかなり困っているという状況がございます。これは1件1件の分娩の費用のことも含めて、もう一度考えていただいたほうが、助産所の経営も含めまして大切なのかなと思ってございます。それが1点。
それから、無痛分娩に関しましては、先ほど、標準化あるいは質の向上というお話もございましたけれども、そもそも無痛分娩、私も先年、学術集会を主催させていただきましたけれども、かなり方法が多彩です。それをどのような形で標準化されると言っておられるのか私にはさっぱり分からなくて、時期尚早ではないかと個人的には思っています。いずれ普及してまいりましたら、その時点で保険化ということは改めて考えていただくとして、今の段階で保険化云々という話は、早すぎると私は考えます。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、井本構成員、よろしくお願いします。
○井本構成員 日本看護協会、井本でございます。
本日は助産師の活用等について御議論、そして、様々な御意見ありがとうございます。
第2回の検討会でもお話させていただきましたが、私からは、安心・安全な環境整備ということで、特に病院での助産師の活用について、意見を述べさせていただきます。
まず1点目が、産科混合病棟の課題でございます。少子化によって、病院では産科病棟の混合病棟化がかなりの割合を占めていることを申し上げましたが、今般、第8次医療計画の中でも、産科区域の特定を推進するということが入っております。その割合は、この検討会でデータが出された出産なびのデータによると「産科区域の特定なし」は15%というところでございますが、本会調査によりますと、病院に限定しますと産科区域の特定を実施しているのは6割弱になっているかと思います。
本会の調査から、産科混合病棟では、産科以外の患者に対応するために、分娩経過中の産婦のケア、助産ケアを中断するようなことも起きていることを把握しております。ですので、安心・安全な環境整備の中には、ぜひ産科混合病棟の課題について視点を入れていただきたいということが1点でございます。
2点目でございますが、3ページに、「産前産後を通じた専門家によるサポート体制が提供できる仕組みを検討すべき」とありますが、特に病院、そして、診療所では、院内助産、助産師外来が取り組まれており、これもまた第8次医療計画の中で盛り込まれています。本会としましては、かねてより日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会に協力をいただきながら、安全に院内助産・助産師外来が実施できるようガイドライン等を作成してきたところでございます。
推進状況を見ると、産科が混合病棟の病院では、院内助産・助産師外来の実施割合が低い状況がありますので、産前産後を通じて伴走型の支援を行う体制づくりとして、院内助産、助産師外来の推進も含めていただきたくお願い申し上げます。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
本日、例によって議題がまだ残っておりますので、一旦ここで区切らせていただきまして、最後、時間が余りましたら、戻って御発言いただいて一向に構いませんのでよろしくお願いいたします。
次の議題である、「出産に係る妊婦の経済的負担の軽減等について」に移りたいと存じます。資料の2-1につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
資料2-1「出産に係る妊婦の経済的負担の軽減について」を御覧いただければと思います。これまで、本検討会において御紹介してきた資料が中心になりますけれども、正常分娩の出産費用の状況について改めて資料をお付けしております。
2ページに、まず概念としまして、妊婦合計負担額というのが、室料差額やその他の費用も含めた全体の額、そのうち、室料差額、産科医療補償制度の掛金その他を除いたものを出産費用という、この2つの概念を用いて出産費用について分析を行っております。
3ページでございますが、平均出産費用が年々上昇してきているということでございまして、令和5年度から、出産育児一時金の支給額が42万円から50万円に引き上げられました。それに伴って費用についても上昇が見られるというところでございます。
4ページについては、出産費用を地域別に、都道府県ごとの平均という形でお示ししております。東京都で63万円、熊本県で39万円ということで、地域によって平均費用にもばらつきが見られるという状況でございます。
5ページについては、妊婦合計負担額について同様の観点からお示ししております。
6ページでございますが、これは都道府県別に、それぞれの施設ごとに妊婦合計負担額の平均分布をお示ししているものでございます。先ほど、都道府県ごとの平均額を御覧いただきましたが、同じ都道府県の中でも施設によって費用にばらつきがあることが見受けられるかと思います。
7ページ、8ページについては、これまでの検討会の中でもお示ししてきたものですので、割愛をさせていただきます。
9ページを御覧いただければと思います。前回の検討会においてお示しした、「検討・対応の方向性」の中から一部抜粋をしております。出産育児一時金の支給額の引上げ後も、出産費用が年々上昇している現状は、今、データで御覧いただいたとおりでございます。出産に係る平均的な標準費用を全て賄えるようにする。こうした基本的な考え方の下で、支援策の在り方を検討していくとしております。
その際に、2つ目のポツにありますが、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保を進める中で、現在、検討いただいております保険適用を含む負担軽減策、これが地域の周産期医療の確保に影響を与えないようにすることが、検討の前提となるものであるということを確認させていただきました。
また、前回、分娩に伴う診療・ケア、サービスの中には、妊婦の希望にかかわらず提供されるものと、妊婦が希望して選択する性質のものがあるのではないか。それぞれに対して検討を進めていくべきではないかということで、御提案を申し上げたところでございます。
今回、それをもう少し深掘りする形で、下の箱に論点という形でお示ししています。
まず1つ目、分娩に伴う診療・ケアやサービスのうち、妊婦の希望にかかわらず提供されるものについて、先ほど申し上げました出産に係る平均的な標準費用を全て賄えるようにする、こうした基本的な考え方に照らした際に、出産費用に施設間で格差が生じているという現状について、どのように考えるかということ。そして、出産育児一時金の支給額の引上げ後も、出産費用が年々上昇している現状をどのように考えるかということ。また、保険適用を含む負担軽減策が地域の周産期医療の確保に影響を与えないようにするために、どのような方策が考えられるかということ。こうした点について御議論いただければと思っております。
そして、分娩に伴う診療・ケア、サービスのうち、妊婦が希望して選択するものについても、妊婦が希望に応じた出産を行うための環境を整備するという観点から、どのような支援の在り方が考えられるかということについても、御意見をいただければと思います。
資料2-1について、事務局からは以上でございます。
○田邊座長 御説明ありがとうございました。
引き続きまして、資料2-2につきまして石渡参考人から、また、資料2-3につきまして羽藤参考人から御説明をお願いいたします。説明はそれぞれ10以内でお願いしたいと存じます。
では、まず資料2-2につきまして、石渡参考人から御説明をお願いいたします。
○石渡参考人 石渡でございます。
今日お話する内容は4つございます。1つは、「出産」をめぐる今後の傾向・動向、2つ目が、分娩の半数を担う産科診療所の特別調査、3つ目が、地域における産科診療施設の事業継続見込に関する調査、4つ目が、今後、検討(解決)すべき課題をお話ししたいと思います。
スライドをめくってください。
1949年、第1次ベビーブームは、約270万人お産・出産がありましたけれども、その後は減少の一途でありまして、2024年、とうとう72万を切るような状況になってきております。少子化の背景として、皆様御存じのように、未婚化あるいは晩婚化の進展が一つの要因になっていると思います。また、出産に対する意識として、育児に対する経済的負担に不安を感じている点も指摘されております。そして、出産に対するニーズとして、これまでも本検討会で妊産婦さんから御意見もございました。無痛分娩、あるいは和痛分娩の選択肢、あるいは、妊娠期から産後までの一貫した助産師の伴走など、ニーズの多様化が進んでいます。
スライドをおめくりください。
一方、医療供給体制としては、医師の働き方改革が2024年4月に始まりました。地域医療構想、医師の偏在対策については、今、取組中ではありますけれども、著しい進捗はないように思います。
スライドをおめくりください。
出産に関わる費用についてですが、妊産婦さんからの分娩施設選定、あるいは出産費用の把握のための情報を求める声が強く、本検討会でも、妊産婦さんからこのような御要望をいただいているところでございます。これに対応するように、厚生労働省には「お産なび」が公開され、ほとんど全ての分娩施設がこれに協力し、一定の効果が得られていると思います。さらなる内容の充実と周知を図っていく必要があろうかと思います。
出産費用の保険適用化の検討については、これまで出産は異常が起きない限り疾病にはならない。そして、妊産婦さんの多様なニーズに応えるためにも、保険は決してなじまないとされてきました。また、5時間かかる分娩もあれば、2日かかってもお産にならない状況もございます。正常分娩は医療機関の裁量によってその費用を設定し、妊産婦さんのニーズに応えるとともに安全面の確保を図り、世界最高の安全で質の高い周産期医療を提供してきたという歴史がございます。出産費用の保険給付をするためには、納得がいく説明、あるいは、なぜ保険にするか詳細な定義づけ等も必要になろうかと思います。
スライドをおめくりください。
出産育児一時金については、一部に、42万円から50万円に引き上げられたこと、これは便乗値上げというような意見もございました。
次の7ページに医療保険部会の資料を載せておりますが、全国の分娩施設の平均出産費用を基に設定されているものであります。出産費用はここ10年、毎年平均で1.4%上昇しております。これは出産数が年々減少している中で、妊産婦さんの安心・安全のために24時間対応のための人員確保、あるいは設備の状態、必要な対応を維持していくためのものであります。しかし、近年の出生数の減少の加速、あるいは急激な物価高騰、人件費の上昇等の要因が加わりまして、施設維持のための苦渋の選択の中で出産費用を引き上げている、これが実態であります。
ここからは、産科診療所の特別調査についてお話しさせていただきます。日本産婦人科医会の会員を対象に、アンケート調査を実施したものでありまして、スライド8、ここに書いてあります。
次のスライドをおめくりください。スライド9です。
産科診療所の診療体制ですが、回答施設の院長の年齢は平均して60.2歳です。50歳代、60歳代を合わせますと、全体の3分の2を占めております。産科診療所の医師数は常勤換算にして平均2.8人であります。非常勤も含め麻酔科医のいる施設は全体の16.3%、7割の施設では麻酔科医はおられません。
スライドをおめくりください。10です。
助産師、看護師、准看護師の勤務状況です。助産師数は常勤換算で平均8.8人、看護師数は平均4.7人、准看護師は平均2.7人であります。総職員数は平均して29.3人であり、多くのスタッフを擁しているわけであります。産科はほかの科と違いまして、助産師、看護師、厨房職員など、多くの従業員を雇用している状況でございます。
スライドをおめくりください。
回答施設の8割を占める医療法人の経営状況についてお示ししております。医業利益率、あるいは経常利益率、補助金を除いた経常利益率のいずれも2023年度は悪化しております。医業収入が対前年度比減少したのに対して、医業費用が増加したためであります。
スライド12をおめくりください。
収益と費用の変化を見たものですが、2022年度に比べて2023年度は、医業収益が0.6%減少し、医業費用がプラス0.4%と増加していることから、経常利益は13.3%の減少となっております。収益の減少に対して物価高騰等の影響による医業費用の増加が大きく、この結果、2023年度の損益分岐点比率は97.5%となって、まさに倒産の危機、そういう水準に近づいているのではないかと危惧しております。
スライドをお願いします。
2022年度の赤字施設は41.9%でしたが、23年度には42.4%に増加しております。赤字施設が全体の約4割を占める、こういう厳しい経営状況になっているわけで、このスライドには載せておりませんけれども、補助金を含まない場合には、2022年度で46.7%、23年度で47.2%の赤字となっております。
スライド、次、お願いします。
都市規模別の利益率と給与比率等を示した資料ですが、人件費上昇、あるいは、大都市と中都市では給与の比率が非常に高くなっているということ。また、小都市・町村では分娩数が少ないこと、これが産科診療所の経営を著しく厳しいものにしているのではないかと思います。
スライドをおめくりください。
この資料は、収益と赤字割合を示したもので、仮に分娩料が現在よりも一律5万円減少した場合、あるいは5万円増加した場合をシミュレーションしております。この1、2年、物価や人件費が高騰すれば、さらにこの赤字の割合が増加してくると思います。仮に5万円減少した場合、赤字施設の割合は2割増加して、6割の施設が赤字になってしまいます。一方、5万円増加した場合、赤字施設は確かに減りますけれども、29%、約3割の施設が赤字のままになっているわけであります。
スライド、次、お願いします。
これまでお示ししました産科診療所、医療法人の経営状況をまとめたもので、23年度の経常利益率は前年度からさらに悪化し、赤字の施設の割合が4割を超えてきました。医療スタッフの維持・確保も困難な中、このままでは分娩をやめざるを得ない産科診療所も増加し、その結果、ローリスク、正常分娩を地域の病院が担うことになってきます。病院の医師が減少し、医師等の働き方改革も相まって、産科のない病院、あるいは地域が増加してくるのではないかと危惧しております。都道府県よっては、産科診療所が7割のところがございますけれども、妊産婦のかかりつけ医として安心・安全な分娩を継続できるのかどうか。国からの全面的な支援が必要ではないかと思います。
スライド、次、お願いします。
ここからは、日本産婦人科医会の会員で、分娩取扱いをしている1,417施設の今後の事業継続見込み等について調査したものであります。
有効回答率は58.4%と高く、関心の高さがうかがえます。正常分娩の費用が保険適用となった場合、「分娩取扱いをやめる」または「制度の内容によっては中止を考える」と回答した施設は、産科診療所と病院を合わせますと785施設中486施設であります。この486施設の分娩数は全体の58.4%を占めております。中止の可能性がある医療機関が実際に分娩を中止した場合、今後、居住地にもよりますけれども、遠くの分娩施設に変更せざるを得ない患者が出てこられます。また、分娩施設がなくなった地域には、大きな混乱と不安をもたらす可能性もございます。
スライドをおめくりください。18です。
正常分娩の費用が保険適用となった場合、「分娩中止」、あるいは「内容によって中止」と回答した産科診療所は、590施設中401施設であります。二次医療圏では、二次医療圏は全国に335ございますけれども、もともと産科診療所がない二次医療圏が86医療圏、回答施設401のうち、回答した産科診療所全て分娩を中止する可能性がある場合、これは86医療圏、合わせて172医療圏ということになります。病院等もございますから分娩が全くできなくなるわけではありませんけれども、かなり厳しい状況になることがうかがえます。
スライド19をお願いします。
最後に、今後検討または解決すべき課題としてお話し申し上げます。
1つ目は、様々な要因によって出生数の減少は今後も続くと思われます。妊産婦のニーズはますます多様化し、そして、分娩施設が存続していくためには、妊婦のニーズに対応しつつ、安全な医療提供を継続していく必要がございます。
2つ目は、24時間対応が必要な産科診療所では、多くのスタッフを抱えております。人材流出防止のためにも、社会的な賃上げにも対応しつつ、さらなる人材確保のための委託費の上昇も加え、物価高の高騰で支出の増加が増えてくるわけでありまして、さらなる大変厳しい経営状況になってくることが予想されます。
3つ目、一方で、少子化対策として妊産婦の経済的負担を軽減するために、正常分娩の保険適用も含めた検討が今まさに行われているわけでありますが、本検討会でこれも検討していく必要がございます。
4つ目は、日本の分娩は長年にわたって正常分娩に係る分娩費用は療養の給付、つまり、保険診療の適用外としてきました。その費用の設定は医療機関の裁量に委ねられてきたわけであります。そのため、様々なサービスがあり、あるいは安全のための対応等を全て勘案して、各医療機関で何とか分娩を提供してきたわけであります。その中で、世界最高の周産期医療を提供しているわけであります。
妊産婦の経済的負担の軽減は大変重要なポイントと認識しておりますが、それだけに焦点を当てて産科医療機関が分娩を継続できない、地域の周産期医療が崩壊してしまう。こういうことがあっては本末転倒と考えます。このようなことから、将来的にも安心・安全な産科医療を安定的に継続できるということが大前提。その上で、妊産婦の経済的負担の軽減も実現できるような検討が必要と思います。
現在、全国の分娩数、出生数の47%を地元の産科診療所が担っております。分娩機関がなくなった地域は、そこで少子化がますます加速すると思われますし、国是としている少子化対策に逆行することにもなり、また、地域創生、地域を生き生きとさせる政策にも逆行するのではないかと考えております。分娩費用等の保険化が少子化対策に本当になるのか、改めて問いかけたいと思っております。また、国が早急に財政支援をしなければ、地方は持ちません。
以上です。ありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
続きまして、資料2-3につきまして、羽藤参考人から御説明をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○羽藤参考人 よろしくお願いいたします。日医総研、羽藤と申します。
私からは、諸外国での妊娠・出産に関する公的医療保障制度の適用について、先行研究や公開されている情報を基に、簡単にではございますが、まとめましたので紹介させていただきます。なお、必ずしも公的機関サイトでの確認が取れているもののみならず、先行研究等での知見も含まれておりますことを御了承ください。よろしくお願いいたします。
スライドをおめくりいただきまして、2ページです。
本日は、「公的医療保障制度について」という題目ではございますが、背景となる各国の周産期の状況について、まず簡単に触れさせていただきます。
4枚目をおめくりください。各国の30年間での合計特殊出生率の推移になります。フランスのように比較的維持している国もございますが、総じて各国ともに少子化傾向ではあります。中でも、韓国、イタリア、日本と低くなっております。
続きましてのスライドが、諸外国、日本を含めてですが、産婦の平均年齢になります。日本は産婦全体、それから、初産婦ともに年齢が高い群となっております。同じような傾向がイタリアや韓国でもみられます。
続きましてのスライドは、低出生体重児の割合になります。2,500グラム未満で生まれた赤ちゃんの割合になりますが、日本での高さというのが目立っております。
スライド7ページは、死亡率のグラフにしております。日本は低出生体重児の割合が、先ほど述べましたように高く、また、妊産婦の平均年齢も高めではありますが、いずれも死亡率は低く、非常に周産期安全性の高い国の一つであるということが示されております。妊婦の死亡率の高い国としては、アメリカやカナダなどがございます。
次ページをめくっていただきまして、こちらは各国と日本での出産方法や正常分娩の入院日数を示したものになります。帝王切開率が高い国としては、韓国、オーストラリアが高くなっております。日本はスウェーデンやフィンランド、フランスと同程度、20%前後になっております。また、先ほど来出ておりますが、硬膜外麻酔併用率に関しましては、日本は低い値となっております。一方、正常分娩の入院日数でみますと、今回の対象国の中で日本は5.31ということで長い傾向にございます。イギリス、カナダは2日を切っておりますので、かなり早い段階での退院となっております。
次ページをめくっていただきまして、こちらは各国の産婦人科医師数と助産師の数になります。医師数で見ますとドイツやイタリアが比較的多く、一方、助産師はスウェーデンやオーストラリアで多くなっております。ただ、あくまでも産婦人科医師数ですので、必ずしも全てが分娩に関わっている方とは限らないということでございます。
続きまして10ページ目、こちらは日本のみのデータではございますが、日本の周産期医療の特徴の一つとして、比較的規模の小さな施設での分娩が多いということが先行研究等で挙げられておりますが、2022年度でも19床以下の診療所が半数を占めています。
これらを基に、日本の周産期医療の状況につきまして、簡単に各国の比較を込めてまとめたものでございます。資料の下から3つ目、「病院ではなく」となっておりますが、「病院だけではなく」です。
続きまして、12ページをめくっていただきまして、ここからが各国の医療保障制度、妊娠・出産に関わる保健医療サービスと公的医療保障制度の適用についてというものになります。
一言で申し上げますと、今回の対象国では、全て妊娠・出産に関して公的医療保障制度での現物給付が行われております。もっともアメリカに関しましては、メディケイドの対象者の方のみになりますので、それ以外の一般の方々については、御自身の加入する民間保険の範疇となります。
また、各国の公的医療保障制度を主たる財源というところで見ていただきますと、主に税方式の国と保険方式の国がありますが、今回の対象国では税方式の国が多くなってございます。保険方式の国としては、ドイツ、フランス、韓国、日本ということになりますが、フランスや日本は主たる財源は保険料ではありますが、それ以外の公費の割合も高い国ではございます。一方、ドイツに関しましては、医療保険の主財源は保険料ですが、妊娠・出産に関する母性保護ということでいきますと税を財源としております。
一方、日本では、皆さん既に御存じのように、医療機関等で受ける保健医療サービスに対する費用負担ということで、育児金として現金給付を行ってございますが、このような保険医療サービスに対する現金給付を行っている国としては、韓国がございます。韓国では現物給付も行っておりますが、さらに国民健康保険から発行されるカードにチャージという形で現金給付が行われており、それをもって自己負担、医療機関での支払等に充てることになっております。
また、全妊産婦を対象とする現金給付ということでいきますと、フィンランドでも「マタニティグラント」という名称で、日本円だと約2万円程度の給付がございますが、こちらは保健医療サービスに対する給付ではなく、赤ちゃんを迎えるに当たってのベビーグッズ購入等に充てられることが多いようで、現金ではなくパッケージというグッズを選択することもできるということです。
そのほか、イギリスやオーストラリアもそうですけれども、公的医療保障制度の中でも自己負担分について妊産婦の減額、あるいは免除という形で、間接的に費用負担を行っている国もございます。
次のページをめくっていただきまして、こちらは、妊娠から出産、産後の期間別に医療保障制度の適用を見たものです。お示ししておりますように、今回の対象国では妊娠期から分娩時、そして、産後までの期間を通じて、一貫して公的医療保障制度の適用となっております。ただ、フランスでは、時期によって出産保険を医療保険と別立てで設定されております。また、韓国では、産後の時期につきまして、医療機関で受ける新生児の診察などは医療保険の適用となっておりますが、退院後に多くの妊婦が利用される産後調理院というところでのケアについては自費、保険適用外となっております。
14ページを見ていただきますと、こちらはフランスの医療保険と出産保険を、期間によって別立てで設けているというところを図示したものになります。
続きまして15ページ、妊娠・出産に関わる保健医療サービスの具体的な内容としては、主にこちらに記載のようなものが挙げられますが、今回の対象国では、基本的な妊婦健診や医療機関での分娩、産後の母体や新生児の診察などの基本的なところは現物給付の対象となっております。両親学級やバースセンター、自宅での出産等に関しましては、国によって、あるいは州や自治体によって適用が変わっている部分がございます。
公的医療保障制度の現物給付とはいえ、全てが対象となっているわけではなく、制限もございます。例えば、受けられる検査の種類や超音波の回数、あるいは公的医療機関に限られる、あるいは、連携に限られるなどの制約がございまして、それを超える場合には自己負担が発生してきます。こういった場合に、オーストラリアやイタリアでは、公的医療機関による現物給付と私立医療機関等による自費でのサービス、その併用といったものも一般的に行われております。
また、出産場所に関してですが、いずれの国でも多くが病院ということになっておりますが、健診や産後のケアは病院ではなく、近くの保健センターやクリニック主体で行われておりまして、妊娠期と出産期の医療機関が異なること、あるいは担当者が異なることというのが一般的のようです。また、主たる担当者として産科医以外の関与も国によって異なりまして、スウェーデンでは正常分娩では助産師主導で提供されることが多いとなっておりますし、カナダやオーストラリアでは、健診や妊婦健診、産後の診察といったところに関しては、GPですとか家庭医の関与が大きいとなっております。
次ページは字が小さくて申し訳ないのですが、幾つかの具体例を挙げております。
17ページを見ていただきまして、以上、各国の制度を簡単にまとめますと、各国ともに現物給付で全期間を通して行っております。各国の医療保障制度自体には税方式ですとか保険方式がございますが、保険方式で行っている国のうち、フランスは医療保険とは別立てで制度を持っておりますし、ドイツでは母性保護に関する給付が税を主たる財源ということで、通常の医療保険とは少し異なる扱いとなっております。
先ほど申し上げましたように、現物給付の対象ですとか給付外サービスとの併用ということに関しますと、その国ごとの医療保障制度に基づいて実施されております。日本と同じように、保健医療サービスに対する費用負担を行っている国としては、韓国でございます。また、間接的に自己負担の免除というような形で費用負担を行っている国もございます。 次のページをめくっていただきまして、多くの国で全てが保健医療サービスの提供対象となっているわけではないということですが、例えばイギリスでは、もともとGPが登録制ですので、連携助産師の予約に限るということです。自分で助産師をお願いしたいというところで、プライベート助産師などを希望する。あるいは、民間の病院を希望するといったときには、公的医療保障の対象外となります。
また、フランスでは公的医療保険の制度適用であっても、費用がそもそも一律とは限りません。受診する医療機関や受診する医師によって割増料金、協約以上の費用が請求できるという仕組みがございますので、差額は自己負担となります。
また、オーストラリアでは、私立病院や公的医療機関であっても、差額、プライベート患者として受診するような場合には、公的医療保険の対象外となるために自己負担が発生してきます。
こういった自己負担分や公的医療保障の給付外サービスとの併用について、民間保険の割合が比較的大きい国もございます。したがって、ほかの国との比較をする際には、そもそもの医療保障制度が異なるということを念頭に置く必要があると思います。また、日本において検討する際には、既存の医療保障制度との整合性というところも検討する必要があると考えられます。
次のページに行っていただきます。妊娠・出産に係る保健医療サービスとしては、妊婦健診や産後の健診も重要なパートとなりますが、そもそも国によって医療保障制度が異なるという点では、日本では健診や予防接種、予防は公衆衛生で行われ、現物給付の対象外となっております。多くの諸外国では予防や健診も医療給付、現物給付の対象となっている、こういった違いもあるというところです。
20ページは、日本の周産期医療の状況について再掲になりますが、現物給付化を検討する際にこういった観点は必要かと思います。例えば、今後もハイリスク妊婦や管理が必要な新生児は増えてくる可能性がございます。このような中、これまで日本が誇ってきた安全性、あるいは、身近でいつも同じ先生に診てもらえる、同じチームに診てもらえるといったような利便性の維持は必要と思われます。
入院日数も海外と比べると長いとされますが、海外出産を経験した方のブログ等では、早すぎる退院に戸惑うような声も見かけられます。妊娠・出産に関する保健医療サービスについて産後のケアなども含めて、産科医のみならず、助産師、かかりつけ医機能を持つ医師たちを含め、誰が、どこで、どのように提供していくのかといった体制は国ごとに異なりますので、支援体制などの社会背景を考慮する必要もあるかと思います。
21ページです。諸外国での妊娠・出産に関する公的医療保障制度についてこれまで述べましたように、背景が異なりますので、海外の適用をそのまま日本に当てはめることはできないと思いますが、日本の社会、医療保障制度の中において、妊娠から出産、産後までの一連をどのように位置づけ、どのように制度設計していくのか、現状の課題や周産期医療の今後の状況を見据えて検討していく必要があると考えます。
次ページをめくっていただきまして、繰り返しにはなりますが、日本ではこの20年間でも妊産婦死亡率は減少しております。
最後、まとめになりますが、各国ごとに社会保障制度、医療保障制度は異なり、その国の医療保障制度の下に医療提供体制、もちろんここでは医療資源の配置や規模にとどまらず、誰がどういったサービスを提供するのかといったところまで含めて構築されております。日本においては、正常分娩は民間の規模の小さな施設が中心的な役割を占めながら、自由診療の下で各医療機関、人員配置や設備投資、高次医療機関との連携体制等を構築して、世界でも最も周産期医療の高い安全性を維持してきたという背景がございます。
この背景を十分認識した上で、日本において妊娠から出産、産後までの一連のサービスを、どのように制度の下で、どのように提供していくのがよいのか、様々な視点から御検討いただき、妊産婦やこれから妊娠しようと思う当事者の方々、それを支える医療提供者の方々、そして、社会全体にとってよりよい方向に進むことを祈念して発表を終えたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
○田邊座長 御説明ありがとうございました。
それでは、ただいま説明のございました資料2-1、2-2、2-3につきまして、御意見、御質問等ございましたら、挙手にてお願いします。
では、濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 日本医師会の濵口でございます。
まず、資料2-1でございます。「出産に係る妊婦の経済的負担軽減について」ということで、御議論いただきたい点というところで、「出産に係る平均的な標準費用を全て賄えるようにするとの基本的な考え方に照らし、出産費用に施設間格差が生じている現状をどう考えるか」という点でございますけれども、出産費用においては施設間の格差が大変大きいものでございます。
前回の検討会でもお話しいたしましたが、標準費用という定義がないためであり、出産費用に何を含めるのか、各医療機関がそれぞれ十分配慮した形で費用が設定されてきた歴史があります。そういったことで、標準費用というのはどういった費用が含まれるものなのか、具体的な内容について、整理、検討が必要であり、今後も慎重な検討が引き続き必要であるということを、ここでもう一度指摘させていただきたいと思います。
また、「御議論いただきたい点」の最後の○、「妊婦が希望して選択するものについて」ということでございますけれども、希望して選択するものについては、選択されることが少ないサービスもあれば、最終的にコスト削減の観点から提供を断念するものも出てくることが予想されるということも御理解いただきたいと思います。
それから、資料2-2、資料2-3についてお話をさせていただきます。
先ほどお話がございましたけれども、日本の分娩というものは自由診療の下に地域性を加味しながら、そして、安心・安全を守ってきた世界で最も周産期死亡率が低く、妊産婦死亡率も最高水準を保ってきたものであります。これについて、羽藤参考人がお話をされた2-3の3ページのデータでお示しをいただいたところです。
また、石渡参考人の資料2-2の10ページでございますけれども、産科診療所で働く人数に関する調査結果をお示しいただきましたけれども、1施設当たり総職員数が29.3人と多くの職員が従事しており、この中に専門職である助産師も含まれています。このような診療体制を築いていることこそが、世界的に見ても日本が安心・安全な分娩、そして、周産期医療を提供している根幹であると考えているところでございます。
また、資料2-2の14ページでございますけれども、産科診療所の給与比率がお示しされています。中には50%を超える地域もございますが、先ほど述べましたように、専門職である助産師の確保をはじめとする人員体制の影響もかなり受けているものと考えられます。
また、15ページでございますけれども、仮に分娩数が現在より一律に5万円減少することがあれば、約2割の施設がさらに赤字に転落すると書いてあります。いまだとどまることを知らない物価の上昇、あるいは人件費の上昇が続けば、この数字がさらに悪化することは明らかだと考えます。
これまでの議論の中で、出産費用の保険適用などの経済的な妊婦の軽減の議論、そして、周産期医療体制の議論は、切り離して別途解決策を考えるべきだという御意見がありました。妊産婦の経済的負担の軽減といったものは、地域の分娩提供体制が十分に確保された上で実現されなければ、全く意味のないものだと考えています。幾ら分娩に係る費用負担が軽減されたとしても、地域に分娩施設がなく、遠方の施設に行かざるを得ない状況になれば、妊娠中から産後のケアまで、交通費の負担という新たな経済的な負担が生じることになります。また、分娩施設が遠方のため、切迫早産などの緊急を要する場合には、母体・胎児の安全の面から精神的な負担も生じると考えます。
最後に、妊産婦の経済的負担の軽減の前提には、地域の分娩提供体制が安定して、かつ、継続していることが必要であると考えます。なお、分娩提供体制の安定化につきましては、出産費用にかかる議論とは別財源による対応を検討するということであれば理解できますけれども、どちらか片方だけが守られたとしても、安定的な分娩提供は望めませんので、その点には注意して今後も議論していただきたいと考えております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 ありがとうございます。
資料2-1について、コメントを申し上げます。資料2-2と2-3については質問させていただきます。
まず、資料2-1の9ページ、論点について3点申し上げます。
2つ目のポツの「出産育児一時金の引上げ後も、出産費用が年々上昇している」とありますが、この現状を見ると、これまでの出産育児一時金の引上げという手法には限界があるのではないかと考えます。したがって、このままであれば、費用を負担している現役世代の理解も得られないと考えますので、別の手法も併せて検討すべきだと思います。
それから、3つ目のポツの「保険適用を含む負担軽減策が地域の周産期医療の確保に影響を与えないよう、どのような方策が考えられるか」については、従来、申し上げてきたように、本件は国のインフラ基盤、インフラ整備に関わる問題ですので、社会保険料財源を使って事業主や被保険者が負担すべきものとは思いません。少なくとも、出産費用の保険適用を巡る財源とは切り離して別途解決策を考えるべきです。これは濱口構成員が先ほどおっしゃったのと同じですが、周産期医療提供体制の確保に必要な費用については公費、すなわち税財源で賄うべきだと考えております。
それから、この中の1つ目と最後のポツでございますが、施設間格差が生じていること、また、妊婦が希望に応じた出産を行うための環境整備に関して、これは出産費用の経済的負担の軽減の観点から重要であることはもちろん理解します。一方で、保険適用の検討においては、保険給付範囲の標準化や、保険料負担者の納得感につながる内容とすべきだと思います。いずれにしても、地域や施設間の格差がどうやって起こっているのかという要因であったり、費用内訳の見える化が前提になるものだと考えております。
資料2-1については以上です。
次に、資料2-2については2点御質問させていただきたいと思います。
この資料の17ページ以降に、「地域における産科診療施設の事業継続見込み」に関する調査が記載されており、正常分娩の費用が保険適用となった場合には、「分娩取扱いをやめる」「制度内容により中止を考える」という記載がされています。こういう表現かた、保険適用すると経営が悪化するということを懸念されているような感じを受けるのですが、保険適用イコール経営悪化と考えておられるのか、また、この場合の保険適用とはどういったものをイメージされているのかということについてお伺いしたいと思います。
2点目は、19ページの最後に、産科医療の安定的な継続と妊産婦の経済的負担の軽減に関して記載がありますが、具体的にどういう方法であればこの2つを両立することが可能とお考えになっておられるのかについて、お伺いしたいと思います。
次に、資料2-3については、1点だけ御質問させてください。8ページに、正常分娩に係る入院日数の記載がございます。イギリス等の短い国においては1日程度で、長くても3日程度ですが、一方で、日本では5.3日とあり、最後のまとめにも、入院日数が長いと記載されています。この要因としてどういったことが考えられるのか、教えていただければと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
御質問がございましたが、なかなか難しい質問のような気はいたしますけれども、石渡参考人、何か御知見がございましたらお願いいたします。
○石渡参考人 1つの御質問は、保険適用になった場合、なぜ経済的・経営的に圧迫するかという御質問だったと思います。今、実際のところは、妊娠から出産、育児も含めて、具体的なことが全然進んでいないわけです。その中で、保険適用になった場合、自由度が効かなくなってくることが一つあります。保険点数がものすごく高くなるということなら、もちろんある程度の対応はできると思うのですけれども、一般的に今までの医療保険のことを考えますと、高い点数を設定するのは非常に難しいと思います。
そういう意味においては、それでなくても、今、分娩医療機関が経済的に非常に逼迫している中で、保険化することに対する会員の考え方としては、収入が落ちると考えている会員が非常に多いのではないかと思います。
もう一つの御質問は、いわゆる産科医療を安定的に継続することと、妊産婦の経済的負担の軽減のことでしょうか。これにつきましても、果たして保険化になった場合に、患者の負担が軽減するかということにつきましては、例えば今、保険ということになりますと3割負担とかそういうこともありますし、その手当についてどういうふうにするのか、あるいは、分娩機関が安定的に医療供給ができなくなったときに、これに対して経済的負担を軽減されるとしても、分娩機関がなくなること自体、患者にとってのデメリットは非常に大きいのではないか。それを総合的に考えていくと、決して妊産婦の経済的負担が軽減するとは思えないです。
例えば、医療機関がなくなれば、どこか遠くに行かなければいけないし、遠くでお産する場合には、家族と一緒に行けることはないでしょう。特にこどもがおられた場合には家族で一緒に行けることも少ないと思います。いろいろな観点から考えて、保険化にした場合、分娩機関がなくなることが考えられますので、妊産婦にとってそれが経済的な負担につながっていく。妊産婦にとって、経済的な低減につながってはいかないのではないかと考えております。
○田邊座長 2-3に関しましても御質問がございましたので、よろしくお願いいたします。
○羽藤構成員 御質問ありがとうございます。
私からは、あくまでも今回、海外との客観的な数字で比較というところでこれを示しています。要因に関しては、おそらく一つではなく、複合的だろうと推測しております。ただ、具体的に妊産婦が入院されて、その間何をなさっているのかといったことに関しましては、現場の先生方、臨床の先生方がお詳しいと思いますので、そちらの先生方に御説明いただければお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田邊座長 何か臨床の現場からの御知見、いかがでしょう。
○宮﨑参考人 発言、よろしいでしょうか。
○田邊座長 まず、宮﨑参考人。
○宮﨑参考人 海外で2日という入院期間の設定ですけれども、海外留学をされている先生方にお聞きしますと、医療事故、あるいは医療安全を考えると、出産後48時間以内にいろいろなアクシデントが起こるので、2日という期間になっているだけです。日本はその後も、母乳だとか育児のこと、アフターケアのことまで含めた形での入院期間ということですから、単なる入院期間だけで比較してもあまり意味がないのではないかと感じます。もちろん保険の入院、保険の疾患でということを考えた場合には、当然入院期間が長くなれば保険の入院日数は問題になるかもしれませんけれども、諸外国での短期間の入院期間というものに関しては、そういうことと聴いております。
以上です。
○田邊座長 濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 入院期間の話でございますけれども、今、宮﨑参考人がお話ししたことが非常に大きいと思います。
私もアメリカで出産を経験しておりますけれども、出産をする前に、妊婦健診中にプレネイタルビジットという非常にしっかりしたものがございまして、途中の期間中に小児科医が紹介されます。出産したらこの小児科医にいろいろ相談してくださいという体制が完全に出来上がった上で出産を迎えるという形を取るわけです。だから、出産をしたら新生児医が1回診るだけ。それが小児科医でもあって、その後は産後のケアやいろいろなことは、その先生が中心となって相談を受けたりして動いていく。
日本の場合は、今、宮﨑参考人が言われましたように、新生児ケア、産後の乳房ケア、あるいは妊産婦に対するメンタルヘルスのケア、非常にきめ細かいサービスをするわけです。簡単に言うと、最低それぐらいの期間があったら、例えば御自宅に帰ったときに、いい形で育児を迎えられるだろうと、私はそういうふうに認識しております。でないと、特に御家族が近くにおられなかった場合に、いきなり退院して、御主人は仕事に行っていて、赤ちゃんと私だけという状況をつくるととても不安になって、どうやって育児をすれば。私が女性であってもそういうふうに考えますから、やはりいろいろな話をしっかり聴いて帰りたいというのは当然だと思います。その期間だということで、休息も必要ですけれども、そういった意味合いが非常に大きいと思います。
それから、先ほど佐野構成員が言われましたアンケート調査のことで、この時点では、分娩の保険適用化といっても、一体何が保険適用化になるのか何も分かっていないわけです。その各論に対してまだ議論されていないわけです。ただ、この時点で質問した内容は、例えば今の制度と違うその中に保険化というものがあった場合に、非常に不安感を感じているというデータの表れなのです。だから、保険化がだめだというよりも、制度設計が変わることによって、私たちは一体どうなっていくのだろうという感覚の表れが58.4%に出ていると私は理解しています。そのために、今言われたように、この内容について今からしっかりと議論していくということに尽きるのではないかと考えているところでございます。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
石渡参考人、どうぞ。
○石渡参考人 石渡です。日本で新生児死亡が一番世界で低い大きな理由は、医療機関の中で、あるいは助産所の中で5日間とか6日間とか赤ちゃんの経過観察ができる。これは、赤ちゃんが生まれてから外界に適応できるまである程度時間がかかりますし、その間にいろいろなトラブルが起きます。そのときに、きちんとした対応医療をするために5日間ぐらいの入院は必要ではないか。
もちろん母と子の絆といいますか、愛着形成といいますか、そういうことにも深く関わっています。お母さんと赤ちゃんを2日後に退院させた場合に、例えば家族で支えられるかといえば、必ずしもそうではないこともありますし、産後ケアもこれからいろいろ進んでいくのではないかと思いますけれども、そういうものが充実していない中で、2日間の入院期間というのは早すぎるのではないか。そういうふうに考えております。
○田邊座長 ありがとうございます。
佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 1点目に申し上げた、保険適用イコール経営が悪化するかに関しては。石渡参考人のおっしゃるとおり内容次第だと思いますので、あまり内容が見えない中で保険適用イコール経営が悪化して成り立たなくなるとするのではなく、今後の検討に向けて少し違った見方をしていただいたほうがいいと思います。
それから、入院日数について、皆さまのご意見は理解しますが、諸外国に比べて明らかに日本が圧倒的に長いわけです。よく理解できていないのかもしれませんが、世界標準と比べて日本だけ違うのか、なぜ世界は入院日数が短いのかというところを、もう少し検証する必要があると思います。
以上でございます。
○田邊座長 細野構成員、よろしくお願いします。
○細野構成員 今の点につきまして、石渡参考人からもお話がありましたけれども、新生児には新生児黄疸という現象があります。これは、ビリルビンという物質は脳障害を起こす物質で、これを見逃せば、後々の脳性まひという運動系の障害を来す疾患の、昔は三大原因の1つでした。日本人の黄疸のピークは、赤ちゃんの場合5日から7日ぐらいです。これはアジア人種に特有で、ここに出ているような欧米の人種はほとんど黄疸が出ないです。
そういうことから、日本の場合、以前はお母さんの入院期間も7日あったのですが、今それがさらに短くなって、赤ちゃんを残してお母さんが先に退院する例も出てきています。そういったことで母子分離も出てきていまして、そういうところも問題化しているので、さらにこれを短くすると、お母さんが先に退院して赤ちゃんが残るという率がさらに上がっていくということで、親子関係の確立に非常に問題になって、後々の虐待に通ずる可能性が出てきますので、そういった背景があるということを御承知いただければと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 御説明ありがとうございました。連合の松野です。
平均出産費用は様々な費用が含まれておりますので、施設間に加えて、費用の内訳はどうなっているかなど実態を把握できるよう、今後の費用構造把握のための調査で分析していただきたいと思っております。その上で、石渡参考人も御指摘のように、出産費用を保険給付とするためには、詳細な定義づけが必要となると思いますし、標準とは何かについて改めて議論する必要があると考えております。
また、先ほど亀井構成員から無痛分娩は多彩であり、どのような標準化と質の向上を求めるのかというお話がありました。まさに無痛分娩といっても様々な方法がある中で、無痛分娩とひとくくりにされている状況を私どもも危惧しております。
また、石渡参考人から日本の産科医療は世界最高レベルにある中で、どこに標準を合わせるのか、保険適用に当たっては明確な定義づけが必要とご指摘がありましたように、標準化とは何かという点も含めてしっかり議論していく必要があると思っております。
私どもも、安全・安心に出産できる環境整備という観点から求めておりますので、やみくもに保険適用するべきというわけではなく、安全な提供体制の整備がセットだと思っております。事務局に前回お聞きしたとおり、令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」において、今回の出産費用の保険適用の導入を含めた検討とともに、「無痛分娩について、麻酔を実施する医師の確保を進めるなど、妊婦が安全・安心に出産できる環境整備に向けた支援の在り方を検討する」とありますので、厚生労働省が安全な提供体制の整備に取り組まれていることと思っております。
その上で、少子化、人口減少が進む中で、未来を担うこどもたちとその家族を社会全体で支える環境整備は不可欠だと考えております。出産に係る妊婦の経済的負担に向けては、保険適用とすることで窓口負担が増加することのないよう、羽藤参考人が御紹介された諸外国のように、別途負担軽減を講ずる措置が必要だと考えております。また、安心して出産できる良質な周産期医療体制の確立に向けた対策を講じることも必要だと考えております。
一方で、医療保険財政には限りがございますので、施策を検討するに当たっては、これまでの取組、税と保険の性格の違いを踏まえ、それぞれの目的に応じて分けて考える必要があると考えております。
なお、先ほど入院日数について議論がございましたけれども、文化的背景、それから、体力や体格差、産後ケアなどの支援策の充実度合いなど、入院日数で一概に比べるのは難しいと考えております。
以上になります。
○田邊座長 ありがとうございました。
濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 追加になりますが、結局、各国の状況を見ますと、基本的な医療保険制度が異なるところから始まって、妊娠・出産、そして、産後という一連の流れが出来上がった何十年もの歴史がある中で語っているわけです。だから、入院日数がどうこうというよりも、いろいろなところのサポートができた上でのワンポイントが出産です。
今、ここで議論しているのは、出産についてという非常に狭いところで話をしていますので、入院日数ということも考えるとそういった背景が違うということと、日本はきめ細かいサービスももちろんしていますし、新生児の面からもそうですし、母親の面からもトータルで見ている出産というのは、根本的に外国の出産とは違うと思います。
今、佐野構成員が言われましたように、アンケートの見方をしっかり考えてほしい。確かにそうです。ただし、「保険化」という言葉が世間で踊ると産婦人科医はこれからどうなっていくのだろうと、懸念を大きく持ったという表れであることはぜひ御理解いただきたいと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。ほか、いかがでございましょう。
では、中西構成員、よろしくお願いします。
○中西構成員 たまひよの中西です。
まず、入院日数についてですけれども、イギリス帰りの先生に伺ったことがあるのですが、イギリスは退院したらすぐに助産師が家を訪問してくれて、手厚くケアしてくれるということでした。また韓国は産後ケア入院が発達している国だったりするので、日本の場合そこら辺の体制が整っていないため、入院日数が長いということだけを問題視して一足飛びに短くできるという話にはならないというか、してはいけないというか、体制を整えてから減らそうねという方向に行かないと、結局、産婦が困ってしまうことになるのではないかと思いました。
保険適用については、この検討会に出ていて「保険適用になると先生たちはボランティアになっちゃうの?」みたいな印象で聞いていたので、そういうことでは絶対ないというところは確認したいとことです。今、訪問介護の保険点数が下がったせいでその介護施設がどんどん閉鎖していて社会問題になっていますけれども、産婦人科がそんなことになっては決していけないので、そこは慎重に検討していくべきではないかと思っています。
また、保険適用も、保険適用で3割負担だと出産費60万円以上ぐらいの人はメリットがあるけれども、ほかの人たちは損をすると私は思っていたので、3割負担かどうかとか、そういったところも検討するべきだろうし、既にお産の中で医療行為が行われて3割負担になっている部分とか、帝王切開の人は3割負担なのに、正常分娩の人は全額保障されるとかになると、これもおかしな話になっていくので、そこら辺の検討も必要ではないかと考えています。
ただ、全額保障で妊産婦の負担を軽くしたいとは思いますが、財源は当然限られているというか、保険料を払うのも妊産婦を含めた国民だったりします。底なしに何でも保障できるものでもないだろうから、保険だけで保障できるのかというところも、きちんと考えていかないといけないだろうと考えています。
それから、資料2-1の9ページで、「妊婦が希望して選択するケアやサービスについて」とありますが、この中によく議題に挙がっていたエステとかもあるのですが、陣痛中の痛みをケアするマッサージとか、いきみ逃しのマッサージとか、痛みを緩和するためのアロマの温浴とかは、産後のそういうものとは別だと思うので、細かく分けて評価していくべきではないかと考えています。
いずれにしろ、妊産婦の負担軽減と、医療機関の経営と、医療保険財政の安定とが三方よしになるように、今後検討が進められていったらいいなと考えております。
○田邊座長 ありがとうございました。ほかはいかがでございましょう。
では、新居構成員、よろしくお願いします。
○新居構成員 manmaの新居です。幾つか質問と意見をお話しさせていただきます。
まず、資料2-2ですけれども、今まで皆さんがお話しされていたところに少し重なるところもあると思うのですが、17ページ、「制度内容により中止を考える」と回答した医療機関を合わせると、全体の分娩数の58%ということで資料に記載されています。今までのお話の中でも、皆さんそれぞれ想像されているものは違うという話はあったと思うのですが、具体的にこの調査の中で制度内容によって中止を考えるという方々が、どんな制度内容だったら中止を考えると、何か具体的に御回答されているところがあればお伺いしたいと思いました。それに合わせて、「取扱いをやめる」と回答された方と「制度内容による」と回答された施設の割合が、58%の中の内訳があればお伺いしたいです。質問、1点目です。
2点目は、資料2-3に関する意見ですけれども、国によって違うので一概にまとめることはできないということだったと思うのですけれども、今後、保険適用を考えるのであれば、諸外国ではどこまで保険適用で、どこからが保険適用外なのかという、諸外国のスタンダードのようなところをもう少し具体的に見ていく必要があると感じました。それこそ、産後ケアもある程度、日本ではオプションと思われているようなものも含むのか、出産の分娩のところだけなのかというのも気になりました。
また、日本でオプションと思っているようなものも含むとしたら、どういうところを含んでいる事例が多いのかというところも気になりましたし、どのぐらいの人が保険適用内で産んでいるのか。諸外国は保険適用といいつつも、基本はみんな自己負担があるというのが当然なのか、みんな自己負担なしで産めているというのが諸外国の現状なのか、その辺も気になったので、ぜひ調べていただけたらうれしいなと思います。
保険適用の議論全般に関してですけれども、妊婦の負担軽減という観点でこの議論が始まったということを踏まえると、保険適用を仮にされた場合に、妊婦が、実際に負担が減ったと感じるような制度にならなければ意味がないと思っています。
一方で、分娩について今回保険適用になったとして、オプションは当然適用外なので、分娩は保険適用になったけれども、オプションで何十万も取られて、結局、自己負担は減らないみたいな状況になってしまうと、保険適用したのに負担軽減感がないという、もったいないことになってしまうなと思っています。それを防ぐためにも、あくまでオプションに関しては、この病院で産むなら何について幾ら自分で負担するという情報を得た上で自分で選べているというような環境を作っていかないと、保険適用になったけど、オプションでお金がめちゃめちゃかかるみたいな状況になっていくのは避けなければいけないと思いました。
そういう意味でも、先ほど、一時金の範囲内で産めていた人が20%ぐらいいるというような資料が事務局の皆さんからもありましたけれども、保険適用になったときに、自己負担なしで産める人が20%を超える数いるというような状況にならないと、負担軽減になったことにはならないと思うので、負担なしで産める人ができる限り増えていく。それ以上について、自己負担がある場合は自分たちで選べる。何について幾らお金を払うのかというのを、自己決定できるような在り方になっていくことが望ましいと感じました。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございます。1点、内訳はお分かりになりますかという質問だと思います。
○石渡参考人 初めの御質問は、いわゆる事業継続見込みのことで、「分娩の取扱いをやめる」あるいは「制度の内容によっては中止を考えている」、この割合というか、内訳ということだと思いますが、これは分娩数で考えますと、4.9%のところが「分娩取扱いをやめる」、「制度の内容によって中止を考える」は53.5%。これを合わせたものが58.4%ということになるわけです。
これを分娩数ではなくて、分娩施設で考えますと、今、「分娩取扱いをやめる」が60施設、「制度の内容によっては中止を考える」が426施設。それぞれ7.3%、54.3%で、合計61.9%の施設が今のような状況なってくるわけです。
制度をどうすればいいのかということになりますと、妊娠から出産、育児のところまで含めて、いろいろなオプションがあるわけです。そこのところをどのような保険化にしていくのかということについては全く議論がなされていないので、その内容によってはということだと理解していただければいいと思います。特に、初めにお話ししましたように、今、産科診療所の経営が非常に悪化している中で、経営ができるということは一つの大きな条件になってくるのではないかと思っています。
○田邊座長 ほか、いかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 波紋を呼んでしまったようで申し訳ございません。
入院日数については、短くすべきだということを申し上げているのではなくて、この違いはどういう要因なのかを調べておいたほうがいいのではないかということで申し上げました。
保険適用について保険者の立場で申し上げると、出産を保険適用して、妊産婦の方の経済的負担を減らすとなると、我々の現役世代である被保険者からは保険料負担が増えるのではないかという声が上がります。難しいとは思いますが、保険適用の検討に当たっては、周産期医療体制の維持・確保や、保険料負担者と妊産婦の方の負担のバランスをどう取るかということが重要だと思っています。誤解を招くようなことを申し上げていたら、お詫びを申し上げたいと思います。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございます。
どうぞ。
○石渡参考人 入院期間のことについては、例えば今、タンデムマス・スクリーニング、赤ちゃんたちのマススクリーニングを5日目ぐらいにやっています。そのために、また来ていただくのは大変なことだと思いますので、それも一つの要点であります。
もう一つは、妊産婦の経済的負担を軽減していく中で、今、日本は非常に出産育児一時金、これをされているわけですけれども、先ほどお話ししましたように、全国で分娩費用というのは本当に違いがあります。東京と、例えば九州でも違いますし、もし出産育児金の中で余剰があれば、妊産婦が自由に使うことができます。
この出産育児金が、例えば70万、80万になった場合には、もっとその余力が出てくるわけなので、確かに出産育児金は保険財源から出てくるとよく知っておりますけれども、それも一つのオプションとして、これは妊産婦の経済的負担、その後のいろいろな支援といいますか、育児のことについても支援策の一つになると思うので、少子化対策と考えたときにはよろしいのではないかと思います。
少子化そのものが、今、国の一番大きな問題になって、赤ちゃんの数、生まれる数が少ないというのは、国が今後とも衰退していくことが十分考えられます。そういうことを考えていけば、当然のことながら、全国民が負担していくことを考えると税がそこに入っていくことは当然のことだと考えておりますし、いろいろな考え方があろうかと思いますが、最終的には日本で最高の周産期医療が提供できる、出産する場所が提供できることと、もう一つは、妊産婦の経済的負担を軽減していく。これをどういうふうにしたらいいかということについて、検討していく必要があるのではないかと思っております。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
李構成員、よろしくお願いします。
○李構成員 赤ちゃん本舗の李です。
出産育児一時金や保険適用の話は、もちろん妊産婦の経済負担を軽減するのが前提だと思っています。今回の検討会の議論タイトルにもあるように、経済的負担の軽減を考えると、その課題の中で、例えば妊産婦にとって必要なもの、必須なものと、そうでないオプションのものを選択するときに、そこの内容が分かりづらいというのがある。妊産婦の選択権を尊重するためには、まずは費用感だったり、サービスの内容を見える化することが大前提だと思っています。
その上で、さらに今の保険適用や一時金の話を含めて考えたときに、妊産婦の希望に応じた選択を支援するのであれば、まず、現行で今やっている出産育児一時金のような仕組みを、もっと柔軟に使えるようにしてもいいのではないかと考えています。一律のサービスとか一律の保険適用という形だけではなくて、現行の出産育児一時金のように、用途を限定せずに何かに使うという形を支援する。例えば、一定額の現金を支給して、さらに保険適用も一部の金額でやるとか、そういうような柔軟な仕組みを支援するという考え方で、もう少し議論があってもいいのかなと考えておりました。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
田倉構成員、よろしくお願いします。
○田倉構成員 時間がない中恐縮です。
石渡参考人にお聞きしたいのですけれども、14ページ目の診療所の経営のところで、安定経営で、地域で盤石な産科施設があることが、この議論の大前提であるというのは重々理解しておりますが、経営が大変になってきているという話の中で、先ほども費用構造の話があったのですが、中都市でボリュームゾーンとして大きいサイズが100のところについて、経常利益率が2%から3%に改善しています。
一方で、給与比率とかは大きく変わっておりませんし、病床の届出の規模、スケールも変わっておりません。さらに、分娩数も変わらず、帝切の割合もあまり変わっていない中において、この数字が改善しているというのは、今後、この分野の経営改善において一つのヒントになるのではないかと思ったところです。そこで、この数字の見方について、御紹介というか、解釈があればいただきたいと思って御質問させていただきます。
○田邊座長 では、よろしくお願いいたします。
○江口参考人 参考人の江口でございます。御質問ありがとうございます。
私どもも、中都市の100施設について、赤字割合も下がり、利益率も上がっているということに驚いたのですが、今おっしゃいましたように、一つのモデルというか、その辺りで悪化していないということは、今後この部分について分析していく必要があると思っております。
ただ、給与比率は、多少ですけれども上がっておりますし、人件費が21大都市と同じようにこれからも上がっていくことを考えると、中都市においても、今後厳しくなる可能性はあると考えております。小都市の分娩数が激減しているのに対し、中都市はそれほど下がっていないというところも、何とか経営できている理由ではないかと考えているところでございます。
○田倉構成員 分かりました。ありがとうございました。
○田邊座長 ほか、いかがでございましょう。
○羽藤参考人 先ほど、諸外国での産後の、具体的なものがあればということでしたので、簡単に、フランスの事例で少しだけ御紹介させていただきます。
大変短いですけれども、そういった方向けに産後12日までは、出産保険でカバーされるような助産師のフォローというのがございます。ただ、それは事前に、退院前にこの人と連絡するようにといった形できちんと連絡ができていることが条件かと思いますけれども、一応そういったことはございまして、12日以降になると、今度は健康保険、医療保険でカバーされているということでございます。
8割近いお母さん方がこのサービスを使われているというようなこともありますので、逆に言うと、それだけのニーズがあるということで、今の日本では、おそらく退院前にそこまでを医療機関で、授乳の仕方だとか、もく浴だとか、そういったものも含めて、包括化された料金の中でそこまでされているということも言えると思います。
以上、参考までに。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、次にまいりたいと思います。
引き続きまして、議題3「分娩取扱施設における出産に係る費用構造の把握のための調査研究について(報告)」に移ってまいりたいと思います。
資料3につきまして、野口参考人から御報告をお願いいたします。
では、よろしくお願いします。
○野口参考人 本日はこのような報告の機会を頂戴し、誠にありがとうございます。
まずは、大変お忙しい中、昨年度の調査に御協力いただきました分娩取扱い施設の皆様に、厚く御礼申し上げます。また、本調査の実施に当たりましては、日本産婦人科学会、日本産婦人科医会、日本助産師会をはじめ、数多くの関係団体、学会様に御協力をいただきました。この場を借りて心より御礼申し上げたいと思います。
本日は、本研究の背景・目的・体制及び調査票の回収状況について、簡単に御報告を申し上げます。
まず、資料の2ページをおめくりください。研究の背景と目的については、昨年度のパイロット調査のときに御説明させていただきましたので、省かせていただきたいと思います。
3ページ目をおめくりください。まず、研究対象は、全国の分娩取扱施設。目的は、施設の構造や実績・患者の実態・費用構造等を調査すること。調査方法は郵送とオンラインの併用調査とさせていただきました。
昨年6月に皆様にも御報告させていただいたパイロット調査の結果に基づいて、回答率の比較的高かった回答しやすい調査項目については全数、つまり、悉皆で行わせていただきました。より複雑で、回答がなかなか難しい項目については、約2分の1の抽出によるサンプル調査とさせていただきました。結果、調査票はここにお示しした5種類となります。
なお、助産所票につきましては、日本助産師会の皆様の御厚意により、全ての調査項目について悉皆調査で実施させていただくことができました。改めて助産師会の皆様に厚く御礼申し上げます。
4ページ目をおめくりください。まず、悉皆調査、A票につきましては、調査期間は昨年の9月の1か月。ただし、助産所につきましては、分娩数が少ないため9月、10月のいずれかの1か月とさせていただきました。A票の内容につきましては、施設情報、病棟情報、外来情報となります。
次に、サンプル調査、B票は、業務時間情報、いわゆるタイムスタディ。各施設3例までの患者情報、経営実態等、パイロット調査で回答率が低かった内容を含んでおります。調査対象は、分娩件数、設置主体、機能・地域により層別化して、抽出率2分の1で無作為抽出をいたしました。
このサンプリングの根拠は、ここにお示ししたように、パイロット調査の回答率約30%を基にして、1,000名前後の妊婦の情報を回収することを想定すると、各施設3例をランダムに抽出した場合は約333施設からの回答が必要となる。そのことを根拠としてこういった抽出率とさせていただきました。
5ページ目をおめくりください。この表が最終的な回収結果となります。
まず、悉皆調査、A票の行をそれぞれの医療施設について御覧ください。病院、診療所、助産所での回収率を見ると、病院が911施設、341、回収率が37.4%。診療所が936施設、465で、回収率が49.7%、助産所が326施設、206で、回収率が63.2%となっています。したがって、一番下の緑色のA票を御覧いただくと、全体で2,173施設に調査票を配付させていただきましたが、1,012施設と回収率は46.6%となっています。
次に、サンプル調査B票に関連する、その下の3つの行を御覧ください。B票は施設全体に係る項目と患者情報に係る項目と、大きく2種類の調査項目からなります。4ページ目のスライドで御説明したように、各施設からランダムに日にちを決めて妊婦3名に対する記載を各施設にお願いしましたので、患者個票の対象数は病院の場合が500施設×3で1,500名、診療所の場合が469施設×3で1,407名、助産所の場合が326施設×3で978名の妊婦が調査対象となっております。
まず、病院では、500施設のうち145の施設がB票のいずれかの項目について回答してくださったので、回収率は29%となっています。うち、患者情報を回答してくださったのが124施設でしたので、施設としての患者票の回収率は24.8%となっています。ここで御注意いただきたいのは、こういった施設の機能に関わらず、患者情報については施設間で当方が指定した3名全員について回答があった施設もあれば、1名、2名のところもあってばらつきがありますので、結果、事例としての回収率は対象者1,500名のうち308名となっていて、20.5%の回収率となりました。さらに308名のうち254名の妊婦に係るタイムスタディに回答が寄せられました。
次に、診療所では469施設のうち196施設の回答があり、回収率は41.8%となっています。うち、患者情報を回答してくださった施設が174施設でしたので、回答率が37.1%。結果、事例としての回収率は対象者1,407名のうち477名で33.9%の回収率。さらに、タイムスタディに関しては、408名のタイムスタディが回収されました。
助産所では326施設のうち161施設の回答があり、回収率は49.4%となっています。うち患者情報を回答してくださった施設が150施設でしたので、施設としては回収率46%。事例としての回収率は978名のうち287名で、29.3%の回収率でした。246名の妊婦に係るタイムスタディに回答が寄せられました。
以上、この緑色のところを見ていただきたいのですが、全体としてB票を配付した1,295施設のうち、502施設からの回答があり、回収率は38.8%。患者情報については、1,295施設のうち448施設から回答があり、回収率は34.6%。事例としての回収率は対象者3,885名のうち、1,072名の妊婦からの情報が得られましたので、回収率は27.6%。タイムスタディは908となっております。
以上の結果から、当初の目標どおり1,000名を超える妊婦に関する詳細な情報と分娩前後の、どういった職種の人が、どのぐらいの時間関わっているのかという情報が得られました。タイムスタディは大変な調査だったと思います。こういった調査に御協力いただきました全ての皆様に、深く感謝申し上げるものです。
最後に、その後のスライドで有効回答率に対する分析を載せていますが、スライドの14ページまでお進みください。ここに有効回答数や率に対する分析結果をまとめておきましたので、後ほど御参考にしていただければと思います。
今後は、この回答率に影響を与えた地域であるとか、それぞれの施設の属性を考慮に入れながら解析を進めてまいりたいと思います。解析の詳細な結果につきましては、日程は未定なのですが、本検討会で報告させていただきますので、本日における私からの御報告は回収状況にとどめさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○田邊座長 御報告ありがとうございました。何よりも結果が早く知りたいなというところではあるのですが、濵口構成員、よろしくお願いします。
○濵口構成員 ありがとうございました。
回収率を見ますと、多くの分娩施設が本調査に協力していただいて、特に診療所、助産所の回収率が高いです。これは、この中の議論にもございますように、出産費用の保険適用の導入に対して、多くの分娩施設が関心と危機感を持っていることの表れではないかと考えております。その上で、先ほどから何度もお話をしておりますけれども、こういった詳細な分析結果を踏まえて、この内容を丁寧にぜひ議論していただきたいと考えております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
申し上げましたように、調査の回収まできちんとやったということでございますので、この調査票の詳細な分析に関しましては、また改めて研究班より結果を御報告いただくということで、引き続き分析をよろしくお願い申し上げます。また、こんなに協力していただけるというので、私からも感謝を申し上げたいと思います。
本日は様々な御意見を頂戴いたしました。事務局におかれましては、次回以降の議論に向けまして準備いただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
これをもちまして、本日の議事は終了といたします。今後の予定つきまして、事務局からお願いいたします。
○柴田課長補佐 次回の開催日程につきましては、追って御連絡さし上げます。
○田邊座長 これをもちまして、第8回の検討会を修了いたします。
本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、また、活発な御意見を賜りましてありがとうございました。これにて散会いたします。