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第40回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録
日時
令和7年2月26日(水) 10:00~12:00
場所
AP新橋
(オンラインとのハイブリッド開催)
(オンラインとのハイブリッド開催)
議題
- 1.臨床研究中核病院の承認要件見直し及び臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性について
- 2.臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性について
- 3.その他
資料
議事
- 議事内容
○医政局研究開発政策課課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから「第40回厚生科学審議会臨床研究部会」を開催いたします。本日は、前回から引き続きWebで開催いたします。
会議全体でのお願いとなりますが、Webで参加されております委員の皆様におかれましては、御発言される前に、画面下部の「挙手ボタン」をクリックしてください。部会長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。また、御発言終了後は、再度マイクをミュートにするとともに、「手を下げる」をクリックし、手を下げた状態にしてくださいますようお願いいたします。会議中に接続トラブル等が発生しましたら事務局まで御連絡ください。注意事項は以上となります。
本日は、川上委員、新谷委員から御欠席との連絡を受けております。部会の定数14名に対しまして12名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。また、本日は一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパンより八木参考人、国立成育医療研究センターより中村参考人にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
続いて、本日の会議資料について、会場参加の委員の皆様におかれましては、お手元の資料を御覧いただきますようお願いいたします。Webで参加されております委員の皆様におかれましては、事前に送付している資料、あるいはWeb上で資料を投影いたしますので、御覧ください。
資料は資料1-1、1-2、2となっており、参考資料は、参考資料1、2となっております。お手元で、不足等がございましたら事務局宛てにお申し付けください。円滑な議事進行のため、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。以後の進行については、楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 部会長の楠岡でございます。おはようございます。本日も、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。
それでは、お手元に配布されております議事次第により、議事を進めさせていただきます。まず始めに、議題1)臨床研究中核病院の承認要件見直し及び臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性についてです。本議題は、前回に引き続き、関係者からのヒアリングとなります。2人の方に続けて発表していただき、その後、まとめて質疑応答の時間を設けたいと思います。
それでは、はじめに、一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパン運営委員の八木参考人から御説明をお願いいたします。
○八木参考人 先生、ありがとうございます。私のほうからお話させていただきます。今、スライドを共有しますので少しお待ちください。見えているかと思います。すみません。ちょっとテクニカル面でスライドショーにすることができないので、この形でよろしくお願いいたします。
改めまして、一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパンで運営委員をしております八木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今日は、一般社団法人ピー・ピー・アイ・ジャパンにおける活動を中心に、取り分け、レイサマリーに関する活動を中心にお話させていただきたいと思います。本ヒアリングに対して、頂いている質問については、やはり、私どもの方として、お答えできるところは限られております。私どもの方でお答えできる範囲で意見を述べさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まず、ピー・ピー・アイ・ジャパンの活動です。運営等に関しては少し割愛させていただきます。ピー・ピー・アイ・ジャパンは2020年4月から活動しております。様々な立場の方とともに、いわゆる相互理解と協働を推進する真の「産患官学」連携を実現する母体です。役員、運営委員の皆さん、こういった方が今、活動されています。
ピー・ピー・アイ・ジャパンは、大きくは、まず1つ、欧州の患者教育団体である「EUPATI」というところの日本における協業母体であること。それから、患者・市民とともに医療や地域社会を取り巻く関係者とのオープンな対話、協働を促進していくといったところが主な事業活動となります。
続いて、EUPATIとの連携です。取り分け、我々、ピー・ピー・アイ・ジャパンのホームページ上で、EUPATIのTool boxの日本語訳版を提供させていただいております。また機会がありましたら御覧いただければと思います。
こちらのスライドは令和4年に実施された動向調査の結果です。今後、更にPPI活動を実りあるものとして推進していくためのアイデアとして御回答いただいた課題、幾つか頂いている御意見を抜粋しております。こちらは、今後どういった形でPPIを実践するかという貴重な御意見を頂いておりますので、御参考にしていただければと思います。
こういったことを踏まえ、ピー・ピー・アイ・ジャパンでは、今後、「PPIの5年後の未来」ということで「対話化」、「みえる化」、「つづける化」を当たり前にするといったスローガンの下に、現在、活動をさせていただいております。次のスライドに書いてあるとおり、端的に言うならば、PPIが当たり前になる、そういった環境を構築していきたい、その御支援をさせていただきたいというのが我々の活動の趣旨です。
そういった中で1つ、実はこの臨床試験のレイサマリーの普及啓発という活動を2022年6月より実施しております。活動の1つの成果として、「レイサマリー作成の手引き」は、本邦では初めてのレイサマリーに関するガイダンスとなるわけなのですが、こちらを一昨年、2023年10月に公開いたしました。公開後、様々な御意見を頂きまして、それを踏まえた改訂の第2版を、実は今年の1月、臨床薬理の本年第1号に掲載しておりますので、是非こちらも御覧いただければと思います。
さて、レイサマリーという話をしておりますので、このレイサマリーについて少し御説明をしていきたいと思います。最初のスライドは、ちょっと釈迦に説法的なところもあるのですが、レイサマリーという言葉、「Lay」というのは法律、医学の専門家ではない方、一般の方、市民を指す言葉になります。「Summary」は、もちろん御承知のとおり、要約ということになるのですが、そのまま訳すと、「専門家ではない、一般の人向けの要約」となります。この言葉ですが、取り分け臨床試験の結果に対して、現在、広く使われている言葉となります。
このレイサマリーの活動のきっかけですが、実は日本と欧米、特に欧州とは、情報のギャップがあるのではないかといったところから始まったわけです。日本では、患者・市民が簡単にレイサマリー、この分かりやすい要約を手にすることが残念ながらできません。また、欧州のようなレイサマリーに関する規制やガイダンスといったものもありません。また、そもそも患者・市民と研究者・企業がレイサマリーについて十分議論をしてきたかというと、そういうわけではないのです。我々は、こういった課題について、是非、一歩、先に進めてみようということで、このレイサマリーに関する活動を始めた次第です。
実際に海外では、このレイサマリーの実装あるいは義務化にどういった活動がなされているかといったところ、義務化としては欧州がこの制度を義務化しております。遡ること2014年、EUの臨床試験規則で、レイサマリーの提供が義務付けられました。その後、もろもろの準備に少し時間を要したというように理解をしているのですが、2021年、Good Lay Summary Practice(GLSP)、後で少し御紹介しますが、いわゆる手順書が公表されております。その下で、このEUの臨床試験規則が、実際にレイサマリーに関して実装が始まったわけですが、今年1月31日をもって、進行中及び今後の全ての試験、新規の全ての臨床試験についてレイサマリーの提供(登録)が義務付けられております。一歩、米国ではトランセレレート(TransCelerate)あるいはMRCTのグループから同様のガイダンスドキュメントを出しておりますが、FDAに関しては、特に制度化しているわけではありません。
このレイサマリーのワーキンググループですが、実際には2年半、我々は活動しているわけですが、その中で、国内でレイサマリーを広く普及・活用するきっかけを投じられたかなと考えております。もともと「レイサマリーとは」という、レイサマリーを知ってもらう活動から始まり、その作成の手引きを作り、それを普及させるという活動に移行してきております。レイサマリーを知ってもらう活動としては、いろいろな立場の方に集まっていただき、共に学び、考える場を作ってまいりました。さらに、作成の手引きに関しては、患者団体の方等と初期の段階から共創させていただき、一緒にこの手引きを作ってきた経緯があります。また、先ほども少し第2版のお話をしましたが、作成の手引きに関しては、公開後も協働ワークショップ等々を開き、さらに、様々な方から御意見を頂き、それを改訂した経緯があります。加えて、講演や勉強会、意見交換会といったものを継続的に実施してきております。
では、実際に、このレイサマリーとは何かということを少しお話します。まずは、欧州の規制ガイダンスであるGood Lay Summary Practice (GLSP)、これが何かというところを少しお話いたします。Good Lay Summary Practice(GLSP)は、レイサマリーが何の目的で、だれが、どこへ、いつ、どのように登録、提供するかを書いている手順です。レイサマリーは、臨床試験あるいは情報の透明化を促進すること、そして、患者・市民へ臨床試験の結果への公平なアクセスを提供するという2つの大きな目的を基に実装されているものです。臨床試験のスポンサーは、企業、医療者を問いません。欧州では、臨床試験のスポンサーがCTISという公的なデータベースへ、臨床試験終了後12か月以内に登録することが義務付けられております。第1相~第4相までの全ての臨床試験の結果が対象になります。こういった形で、より具体的に、どういうようにレイサマリーを作成し、登録するかという手順が書かれているドキュメントです。
このGLSPによると、レイサマリーとはどんなものかといったところで、もちろん、試験結果全般のまとめではありません。あくまで、分かりやすい要約です。スポンサーが臨床試験計画時から準備する、それも患者や患者団体と共に創っていくものだということが明確にうたわれております。公平、かつタイムリーなアクセスを保証し、そして、何よりも重要なのは、これは決してプロモーション目的ではないということです。
本邦における治験に係る情報の公開については、令和5年に厚生労働省から出た「治験に係る情報提供の扱いについて」という通知で、分かりやすい平易な表現を使って治験の情報を公開することが可能となりました。これを受け、同年11月には、日本製薬工業協会が加盟各社に対して、業界への通知として厚生労働省の通知に則って様々な媒体あるいは方法を通じて提供することが可能ですという通知を出しております。これにより、実際に日本語版のレイサマリーを患者等と共に作成する、あるいは自社治験情報サイト、やjRCTで公開する企業も徐々に出てきております。
さて、レイサマリーを活用する意義とはというところですが、我々が、このレイサマリーの活動をするに当たって、このレイサマリーが、一体、社会にどういった価値をもたらすかという議論をさせていただきました。もちろん、患者・市民の皆さんにとってのメリットは、言うまでもなく、医療者の方にとっても臨床試験を理解する一助となる、あるいは患者さんとのコミュニケーション、PPIというものの関わり、あるいはモチベーションのアップにつながるであろうということ。広くは、あらゆる全ての関係者にとって、例えば、医師、患者・家族の間での情報の非対称性の改善につながるであろうということ。また、臨床試験の理解が深まることで参加の壁が低くなり、臨床試験が加速化する、促進できるであろうということ。更には、臨床試験をする側と社会とのつながりに関する共通認識が醸成されてくるであろうといった社会的価値があるものだというように我々は考えている次第です。言い換えると、患者・市民が共創することで、より早く新しい治療法を必要な方に届けることができるものではないかと考えております。
今後の活動ですが、これまでの様々な意見交換、学習、啓発機会の提供に加え、レイサマリーの事例が徐々に出てきておりますので、その事例分析をするということ。さらに、研究者・医療従事者向けの啓発活動といったものも考えていきたいと、今現在、検討をしております。後で少し詳しく述べます。
また、今は出口の話をしてきたのですが、入口、プロトコールの方ですが、このLay Protocol Synopsisについても、昨年末より国際ワーキンググループが立ち上がっております。こちらのほうにピー・ピー・アイ・ジャパンも参画させていただき、Lay Protocol Synopsisといったものをどういうように実装していくかという議論を、今、まさに進めているところです。説明同意文書とは別に、治験計画が分かりやすい形で提供されること、これはある種、社会の期待というように考えておりますので、これに対応する取り組みと我々は考えている次第です。
その研究者・医療従事者向けへの勉強会ですが、どういった形でということは、今、AMEDの方と共に検討をしていることではあるのですが、例えば、臨床研究中核病院を対象に、まず1段階として、基本的な理解を今あるリソース、資材等でしていただき、その後、具体的に実践的な体験をしていただけるといった場を提供したいと考えております。そういったことを通じて、より自分事になるような、そういう仕組を作っていきたいと考えております。実際には、治験のことを理解していただいている患者の方、治験アンバサダーの方々の協力の下に、一緒に勉強会ないしワークショップをし、レイサマリーをきっかけに、PPIについて少しどんなことができるかを考える場を設けたいと考えております。こちらは「ICR臨床研究入門」の案内となりますので、また後ほど。これはWebで公開されているものですので、御覧いただければと思います。
また、治験アンバサダーについては、私が代表を務めている一般社団法人YORIAILabで提供をしている患者・市民向けの医薬品開発、治験に関する教育プログラムです。これは、もともとベーリンガーインゲルハイム社がオーストリアで始めたことなのですが、2021年から、患者団体の方や研究者の方と一緒に日本版をデザインさせていただき、それを複数の企業、複数の患者団体、研究者の方々と今、実装しているものになります。前期は、ついこの間、1月に終わったのですが、そこまでで21名の方が修了し、今期は今スタートしているのですが、7月に終わると、合わせて34名の方に修了いただくことになっております。
それでは、今日、頂きましたお題と質問に対して、少しコメントさせていただければと思います。冒頭、申しましたとおり、我々ピー・ピー・アイ・ジャパンとしては、直接、臨床試験、臨床研究に関わっている団体ではありませんので、お話できるところは限られているのですが、少し思ったところを御紹介、共有させていただければと思います。
そこに入る前に、少し臨床研究におけるPPI(患者・市民参画)についてということで振り返っておきたいと思います。このPPI、研究領域での患者・市民参画、幾つかの団体が定義を公開していると思います。大体どれも同じような理解の下、同じようなメッセージで定義が公開されているかと思います。
あと、施策のほうでも、臨床研究部会のほうでの取りまとめに端を発して、がん対策基本法、認知症基本法、さらに、第3期の医療分野研究開発推進計画においても、このPPIというエッセンス、PPIのことが盛り込まれていると、私どもも理解しております。
そういった状況を踏まえ、今回、頂いたお題について少し整理させていただきました。まず、1点目、臨床研究中核病院の承認要件見直しということです。具体的な承認要件の見直しに我々がコメントをする立場ではありませんし、知識等も持ち合わせていません。一方で、PPIという観点から考えたときに、例えば、臨床研究中核病院の新たな役割として、臨床研究、臨床試験におけるPPIの取組を試行されている点を評価に加えることを検討できるのではないかと考えております。PPIの取組といっても、やはり一歩一歩進めていくことが必要になってくるので、例えば、そういった取組を支える担当部門とか、担当窓口が設置されているといった最初の一歩を評価に加えることを検討いただけるのではないかと考えている次第です。
2点目、臨床研究・治験推進に関しては、同じくPPIの観点でできることは何かなという形で我々も少し検討させていただきました。例えば、臨床研究中核病院における患者・市民との協働による手順書あるいは実施支援といったもの、Lay Protocol Synopsis、先ほどお話したテーマです、それからレイサマリー、あと、説明・同意文書の補助資料の作成といったところで、まず実施してみるといった点を考える余地はあるのではないかと考えている次第です。余り多くの意見を出すことはできないのですが、我々のほうから、こういう形で今日は意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。続いて国立成育医療研究センター研究開発管理部開発企画主幹の中村参考人から、御説明をお願いいたします。
○中村参考人 よろしくお願いいたします。今、スライドを共有いたしますのでお待ちください。成育医療研究センター研究開発監理部の中村でございます。発表を始めさせていただきます。
成育医療研究センターは今、非臨床研究中核病院として臨床研究センターを中心に、充足性の検討をしていただいております。三上副センター長からいただいているスライドで現状を御紹介いたします。まず1番の体制要件です。何とか全て満たしています。ただ、「病院機能評価一般3」というのが、450床レベルの成育医療研究センターでは非常に厳しく、かなり苦労されたと聞いております。2番の能力要件については、2つの要件のどちらかが○ということで、3つとも何とか満たしているところです。3番の論文要件は、現在は19本ということで、まだ達成できておりません。4番の人員要件は、医師又は歯科医師が△、看護師が×となっております。そういうことで、体制要件と能力要件は何とか充足していますけれども、論文要件が不足していることと、特に人員要件の看護師の確保が難しいという状況を御紹介させていただきます。
これは事務局からもお話いただいたことで、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが今、小児で解決しているのかという御紹介になります。これは製薬協の資料で、厚労省の薬事規制の検討会の資料です。欧米で承認された薬の中で2016~2020年に限って、2023年3月に開発情報がないものが、御覧のように日本は86件と多く、そのうちオーファンが47%、小児が37%でした。ベンチャーが56%というのは昔から言われていることです。
これは2006年に、東大の津谷先生の所で調べられた希少疾病のデータです。残念ながらPMDAのデータベースでは、小児としてパッと検索できず、希少疾病で検索していますが、ドラッグ・ラグがどれぐらいあるか、最初の国の承認から時間が掛かっているか、そしてその承認割合を調べています。日本は圧倒的にラグが長くて承認割合が低い。
この承認状況を見ると、今も昔も変わってないことを示している図です。日本では、申請企業がベンチャーだから、多くの薬が日本にないということが2006年から言われているにもかかわらず、先ほどのスライドのように、いまだに解決していないというのは非常に問題であると認識しております。
これは薬事規制のあり方検討会のスライドに、枠と矢印を加筆しております。我々にとっては非常に有り難いことに、この検討会でも小児用医薬品について特出しして議論を頂いております。ただ、今日の議論は開発の受皿をどう強化するかということだと理解しています。それから、後でちょっとだけ御紹介しますけれども、リアルワールドデータの収集体制や、海外ベンチャーが気軽に相談できる体制という辺りも、セットで議論が必要かと思われます。
希少疾病の多くは小児発症です。患者会の方は大人なので、小児のことに余りフォーカスして議論されませんが、実は全ての悪性腫瘍は希少疾病で、世界に7,000を超える希少疾病があります。非常に重篤で、3分の2が2歳未満で発症し、2分の1は生命が奪われています。
私は今日、小児にフォーカスしております。例えば小児以外の精神神経病などもそうだと思いますが、希少疾病治療開発にはオールジャパンで、更に、国際連携が必須であり、これをやらないと、どこか1つ欠けても開発が進まないと認識しております。欧米には、希少疾病医薬品開発を促進する活動がいろいろあります。ここにあるのは、そのほんの一部ですけれども、かいつまんで御紹介させていただきます。
まず、IRDiRC(国際難病コンソーシアム)です。これにはPMDAやAMEDも参加されていると思います。希少疾病研究におけるギャップと問題点を特定し、ガイドライン、推奨事項、リソースを作成します。実は先日、参加者の70%は小児科医だということを聞いてきました。これは各国で詳細な部分を議論し、最終的に方針を決めるという形でIRDiRCで議論されています。しかし、AMEDやPMDAなどからも参加されているけれども、明らかに国内での関係者との情報共有が不十分で、連携・活動にまで反映されていません。これについては一度、精神・神経センターの中村治雅先生とも、AMEDの関係で議論したことがあります。ここはもっと強化すべきであろうと思います。
もう1つ、ERICAというのを御紹介させていただきます。米国にも10幾つかの希少疾病のネットワークがありますけれども、ヨーロッパには、24の希少疾病の治療開発ネットワークがあります。さらに、それをヨコ串で刺して、新しいネットワークを作ろうとか、効率的なデータ収集をしよう、参加しやすい環境をつくろう、質と効果の向上をしようと。例えば、ここに所属すると、各ネットワークで取り組んでいるいろいろな臨床試験や、例えばバイオマーカーの権利などが全て見られて、一緒に仕事をしたい人がすぐに連絡できるというものまでできていると聞いています。日本では、残念ながら本当に単発で2年間でちょっとお金を落とすようなことはあっても、連携体制はほぼ皆無です。これだと欧米と連携した開発は、なかなかできないと私は思います。
それから、小児のネットワークを1つだけ申し上げます。connect4childrenは、ヨーロッパのネットワークで、国のネットワークや疾患領域のネットワークなどが、ワンストップショットでハブになっていて、1つの所にコンタクトしたら医薬品開発について、症例調査や、どこでできるかなど、入口から出口まで支援するというような、しかも持続可能な統合プラットフォームがあります。もともとは、EU政府とEFPIAの半々のファンドで、その額は年10億円程度だと聞きました。これが2020年から、やっと法人化して活動しているというところです。これは治験のみならず臨床試験の支援もするということで、このパートナーには企業の方も入っておられます。
それから、がん領域です。ITCCというのは、小児がんに対する新規薬剤の早期相臨床試験を推進するもので、ACCELERATEは、小児がんの医薬品開発を加速させるためのコンソーシアムです。日本のがん研究センターや成育なども、ITCCの主導している一部の国際共同試験に参加しています。また、パートナーシップを継続しようとしている施設もありますし、ACCELERATE年次会議には日本からも参加されていますが、今の段階では組織立った参加ではないと思います。ですので、海外と連携できる国内ネットワークの維持が必要であるということは、がん研究センターの先生や成育の小児がんセンターの先生からも聞いております。
既存のネットワークの例の1つとして、小児がんを挙げさせていただきます。小児がんの中央機関が2つあります。国立がん研究センターと国立成育医療研究センターですが、それぞれ役割が違うとお聞きしております。ITCCと連携したり、ITCCの臨床試験にも参加しています。患者が多いのは、小児がん拠点病院の15施設ですが、がん種や治験ごとに、こういった拠点病院と連携したネットワークを構築して開発しないといけない。また、右のほうにJCCGというのがあります。これは非常にしっかりした研究グループだと思いますが、JCCGは主に小児がんに対する標準治療の開発を担当しています。
ここで、新規薬剤開発を推進するためのネットワークを維持するための恒常的な予算の確保が大きな問題であるということを特出しさせていただきました。がんというのは、小児の中でも特に力を入れて扱うべきだと私は思います。小児の中のがんではないし、がん領域の中の小児がんでもないと思っております。
それから小児腎です。これにはJSKDCというグループがありますが、AMED研究費をずっと違うプロジェクトで取り続けているので、いまだに存続できていて、薬事承認につながるような試験をやっておりますが、これも研究費依存です。ほかにも研究費依存でやっていたり、国際ネットワークに個人で参加される先生もいらっしゃいます。しかし、研究費や特定の企業治験が終了した段階で、構築したネットワークが消滅することも多く、これが世界的に問題視されています。それで、先ほどのようなconnect4children、あるいはアメリカではiACT for Childrenなどが公費で整備されています。
日本の小児医療施設に訊くと、小児医療施設等でもまだまだ十分なCRCが確保されていません。それから、先ほども申し上げましたけれども、小児がんは他の小児領域や成人がん領域と異なり、独立した開発連携が必要です。また、先ほど2枚のスライドを示しましたけれども、希少難病をヨコ串で刺して、ノウハウを共有・連携できるような体制がないと、非常にもったいないと思います。
小児領域で、私が小児科学会関係でやっている取組を2つ御紹介させていただきます。まず、日本小児科学会薬事委員会です。これは先輩たちが脈々と、小児の医薬品開発推進に取り組んでこられて、2017年には「小児医薬品開発ネットワーク」が設立されております。また、これと並行する形でAMED研究班もあります。これを見ていただくと、薬事委員の方や委員長の方が、ずっと研究代表をされているのです。ここで、よりフレキシブルな情報交換や情報共有など、いろいろな取組もしています。ですので、小児科領域というのは世界でも珍しく、薬のことについて関連分科会と、こういった連携体制ができており、小児医薬品開発推進に向けての情報や、ノウハウの共有ができています。AMED研究班の活動を通して毎年1回、代表の方が集まっていろいろな情報共有や意見交換をしているという状況です。
小児医薬品開発ネットワークは、AMEDの研究として始まって、その後も厚労省の支援事業として続いているものです。ここでは小児医薬品開発に取り組む企業や治験国内管理人等に対して、開発についての入口から出口までのアドバイスをオールジャパンでします。ここにも書いてあるように、医薬品開発は、請負仕事ではなく、学会も協同して参加するという姿勢を周知することに注力しております。
主体になるのは、もちろん意思決定は理事会ですけれども、薬事委員会が中心となってオールジャパンで、開発に理解のある小児科医が協力しています。専門領域によっては治験の経験がなかったり、過去に治験が一度なくなったりすると、なかなか企業が手を出しにくいということがよくあったのです。そういった場合にも、他の領域の経験のある小児科医や成育医療研究センター、あるいは後ほど御紹介する小児治験ネットワークのノウハウを提供することによって、治験の成功可能性を最大化します。また、進捗が思わしくない場合には、その解決について最大限の助言と協力をすることをモットーとして行っております。これがそのときのポンチ絵です。右にあるように、18の領域の分科会が「ワーキンググループ設置済」と書いてありますが、依頼があれば、いつでもWGが立ち上げられる体制を取っております。
企業から応募を受けますと、小児医薬品開発の支援チームがWGを立ち上げます。これを企業がやるのはなかなか難しいのですが、複数の領域から、例えば新生児の感染症と呼吸器などの専門家を集めることも可能です。企業と面談をしてアドバイスをするWGには、対象疾患領域の専門家を複数、規制科学・開発薬事専門家や臨床薬理の専門家など、小児治験ネットワークの小児CRC部会のCRCが複数参加し、多角的視点から助言をしております。1回の助言が2時間で、複数回の開催も可能で、かなり幅広いアドバイスをしているということです。
それから、すぐに海外の治験がパッと来るわけにはなかなかいきませんけれども、米国のI-ACT for Childrenと守秘義務契約を結び、また、EMAのほうは、先ほどの臨床試験規制の中で規定されているEMAがヨーロッパのネットワークを全て登録するという中に、日本からのネットワークとして登録しております。また、英文のホームページも準備をしております。
相談内容はサッと飛ばしますが、ここで申し上げたいのは、入口から出口まで、いろいろな内容について相談に乗りますというものです。この中には小児治験ネットワークを通じた実施可能性調査というのがあります。ここは後で御紹介します。それから、小児医療情報収集システムを活用した該当症例数等の調査ですが、これも後で御紹介させていただきます。
WGでの助言を反映して、治験が円滑に進行した事例もありますし、リピーターとなった企業もあります。一方で現時点では、まだ大企業からの相談が多いのですが、せっかくWGで助言しても、なかなか反映されないことが多く、これはグローバルでプロトコールが決まっているとか、既に治験が始まっているので難しい等、理由は様々です。
我々の議論として、厚労省とも議論をさせていただきましたけれども、早期に相談いただく必要があるということで、国内外のベンチャー企業の相談にも迅速に対応する必要があります。そこで簡易相談、シーズ・早期開発相談、実施可能性相談等のように、よりスピーディにサッと回答できるとか、文書は理事会を通らないと出せませんけれども、面談を早くやって早く回答するというものを作ろうとしています。また、英文のホームページは、案がもうできており、製薬協に見ていただいたものを修正してから最終化したいと思っています。海外ベンチャーやグローバル企業というのは、先生方の中にはアドバイスをしたいとおっしゃる方もおりますので、そういった方の情報をしっかり束ねていきたいと思っております。
もう1つが、先ほど申し上げた小児治験ネットワークです。これは医薬品開発ネットワークとは別のネットワークで、厚生労働省の補助で開始されたものです。設置母体は、一般社団法人日本小児医療施設協議会で、委託により国立成育医療研究センターに事務局があるものです。2014年に設立し、55施設、小児病床数は6,900床、38施設が中央IRBの一括審査が可能です。現時点では企業治験に限っておりますけれども、38施設では可能です。
このように、実績としても治験数がかなり増えております。かつて小児病院というのは、ほとんど治験をしていなかった所がいっぱいあったのですが、右上で御覧いただけるように、かなりの施設で10件以上の治験を実施しており、様々な領域にわたっていることが御理解いただけるかと思います。
もう1つ、小児CRCの養成については、小児治験ネットワークのCRC部会が設立されています。部会長は、都立小児総合医療センターの友常さんです。友常さんをリーダーとして、小児CRC養成の教育研修、CRC間の情報共有・連携等もされております。
それから、先ほどのスライドの中で、リアルワールドデータという話をしました。「小児と薬」情報収集ネットワーク整備事業というのは、厚労省の安全対策課の事業で、適応外使用等、あるいは「適応外」とまでは言わないまでも、特定の年齢で安全性が確立しないものについて、安全性情報がどれぐらいあるかをまとめて情報発信できないかというものです。これがやっと、かなり稼働してきております。小児病院で11施設、クリニック32施設からの電子カルテ情報ですね。今年度末ぐらいまでには、レセプト情報やDPCの情報も入るということで進めております。これを先ほど申し上げた症例数調査や、患者のスクリーニングなどに使えないかということを、今、中野ユニット長をリーダーとして取り組んでおられます。試行的に小児医薬品開発ネットワークに御相談いただいた企業に対しては、症例数調査をするということで、2022年の4月から5件について調査を実施したという実績もあります。
ちょっと話を変えますが、小児を対象とした医師主導治験の問題点と解決策については、AMEDの規制科学の研究の中でやったものです。小児医師主導治験の問題点として、治験デザインの難しさ、検査手順や採血量に関する問題、臨床検査基準値の問題、小児剤形の問題、小児治験の位置づけ、研究費不足等、いろいろな問題がありますけれども、やはり小児治験に精通した「専門家チーム」のアドバイスを受ける必要があろうと思います。真ん中に書いている医師主導治験の場合、特にプロトコール作成より前段階で、コンセプトの検討や医師主導治験実施の可否も含めた開発戦略・ロードマップの検討・提案、剤形、評価項目とその評価のタイミングなど、企画する医師やその支援スタッフの理解度・経験度や体制に応じて、より細かなコンサルテーションが行われる必要があると思います。
他の臨床研究中核病院でやろうとされていたものについて、私も、研究費の獲得まで幾つかの支援をさせていただいた経験があります。臨床研究中核病院には必ずしも小児疾患に詳しい人材がいるとは限らないと思いますが、プロトコールが確定し、実施体制が決まって走り始めれば、支援できる体制は十分にあると思います。小児主導治験の経験が比較的豊富な小児専門医療施設は存在しており、小児CRCが幾つか参加するということを先ほど言いました。ただ、臨床研究中核病院に指定されるほどの規模ではないことが多いということで、そこが一つ難しいところです。
これが、最後のスライドです。繰り返しになりますが、希少疾病の多くは小児発症で、小児科領域のオールジャパン体制と国際連携が必須であると思います。一医療機関で全ての希少疾病に対応することは不可能です。例えば成育研究センターに7,000の希少疾病の専門家がいるわけではありません。ですので、中心となる機関は毎回変わると思います。ただ、共通基盤としての方法論等の助言・支援や体制・連携体制整備などのフレキシブルな支援は必須になってきますし、国際連携のできる体制も必須になってくると思います。この状況というのは、例えば精神神経領域とか、他の希少疾病領域でも似た状況だと認識しております。
繰り返しになりますが、小児医療施設は規模が小さい。ただ、幾つかのコアとなる医療施設も体制整備を行って、これらの医療施設と連携し、既存ネットワークも活用して支援をすることができれば、かなりオールジャパン体制で医薬品開発が支援できると思っています。前回の千葉大学の花岡先生の発表にもありましたけれども、「数値要件を満たすことに注力せざるを得ない」状況ではなく、どうやったら本当に小児医薬品開発が進むかという視点で議論ができればと思っております。以上です。ありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対して、御意見、コメント等をお願いいたします。
最初に私から八木参考人に、EUのレイサマリーを作る規制に関しては、これはEUですから、企業治験とか、日本で言う医師主導治験とか、そういうのに差はないと思うのですが、これは全部の臨床試験に関して係っている規制と考えてよろしいのでしょうか。
○八木参考人 はい、それで結構です。企業、医師主導を問わず、全ての臨床試験に対してです。
○楠岡部会長 分かりました。ありがとうございます。それでは、御質問がある方は手挙げをお願いいたします。花井委員、どうぞ。
○花井委員 ありがとうございます。まず、八木参考人のほうにお伺いしたいのですが、レイサマリーはとても重要だと考えています。私どもも、いろいろな企業の治験が始まったりとかするのは、大体うわさによって医師側からの情報で始まったことが分かるとか、パイプラインの前方ではなかなか分かりません。一部、やはり企業としても、そこは隠したい部分があると思うのですが、プロトコールの作成とか、レイサマリーみたいな、まだ承認申請する前の治験の結果というのは、ある種、今は全部まだ透明化していないと思いますが、その辺の企業の知財的なところと、その関係はどうなっているのかを教えていただきたいというのが、1点です。
それから、中村参考人にお尋ねしたいのは、今回の御発表で、やるべきことはもう見えているという感じがしていて、それが今、臨床研究中核病院という制度と、どう関係するかというのがテーマだと思います。例えば、NCと臨床中核という制度は、どうあるべきかとか、いわゆるリソース、中心となる小規模な病院がばらけていて、支援は可能と言いながら、その支援体制として、例えば、アドホックに研究費とか、スポンサーがいてお金が出る場合であれば、そこでCROとか、SMOを使うこともあると思うのですが、私どもが共同研究をやっている中で、逆に事務局があって、そこから各施設に支援に行ったほうがてっとり早かったりとか、ある種、そういう体制が持続的にあれば逆によいと思います。そうすると、持続的な人材がそれで育成されると思うのですが、そういった理想像と、今の制度設計との間で、どのようなお考えを持っているかをお尋ねしたいと思いました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。では、八木参考人からお願いいたします。
○八木参考人 御質問、ありがとうございます。まず、臨床試験の情報提供、例えばレイサマリーの中にある情報、あるいはそれ以外の情報も含めて、基本的にはCT.govとか、jRCTのような公的治験情報サイトに開示しているものがベースになっていますので、そういう観点からは、知財等に抵触するような、そういう内容を求められているわけではございません。1点だけ申し添えますと、例えば、臨床試験、今後どういった臨床試験があるのか、あるいはそういったことに関して、レイサマリーは欧州のGLSPについては、そういった情報も提供してくださいと書かれているので、その点は、もしかすると将来的な部分では企業等が少し配慮をしている部分があるかもしれません。
最近は、患者・市民参画ということが、例えば、治験のデザイン等に患者さんの声や、当事者の声をという活動がありますので、そういった中では知財等に抵触しない範囲で治験の計画等を議論する場というのはあります。
○楠岡部会長 中村参考人、お願いいたします。
○中村参考人 中村でございます。なかなか難しい御質問を頂きましたが、臨床研究中核病院の要件だからというよりも、やはり小児の医師主導治験の経験が多い機関、これが臨床研究中核病院の中にもあると思います。それから、小児治験ネットワークに所属しているような小児医療機関の中にもあると思います。そういった施設のノウハウをできるだけ共有できるような体制というものや、そういったところに、もう少し人的なリソースを割けるような補助を出すということが、ひとつあるといいのかなと思います。
今、臨床研究中核病院であったり、あるいは臨床研究中核病院になろうとしている医療機関がいろいろあるので、医師主導治験等が立ち上がっても、肝の所のアドバイスをもらったら、後は自分たちでやりますという所もたくさんあるわけです。そうすると、成育はフルスペックで支援する必要はないけれども、どうしても分かっていない所を、しっかり支援してあげないと、その医師主導治験が転ぶということがたくさんあります。そういったところをきちんと分かっている人が支援してあげれば、かなりいろいろな所で医師主導治験が効率よく進むというように認識しております。
○中村参考人 すみません。事務局から、支援に行けばという話がありまして、実は、最近はイギリスの情報を収集していないのですが、かつて、イギリスで公費で小児のネットワークがあった時代に行ってきましたが、あそこは、全ての所がNational Health Systemに所属しているので、看護師が特定の医療機関に所属しているのではなく、NHSの職員なのです。なので、そこでGreat Ormond Streatで登録している看護師が、臨床試験がある度に、近隣の病院に行ってやっていたという事例があると聞いて、すごいなと思いました。それを日本でやるとすると、日本の制度上なかなか難しいのではないかと思いますが、ただ、少なくとも、ノウハウを提供したり、アドバイスをするということはできるのではないかと認識しております。以上です。
○花井委員 ありがとうございます。私どももCINから支援を受けていて、これはNCの機能として6NCCINという形で機能していると思います。それと、臨中とは、どう違うのかということもあるのですが、そこも支援してもらっているのですが、やはりマンパワーとしては十分とは言えない中で御支援いただいているところがありまして、やはり、そういう恒常的なマンパワーの確保が課題だと思いました。ありがとうございます。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、次に山口委員、その後に渡部委員、そして神里委員、藤原委員の順でお願いいたします。山口委員、どうぞ。
○山口委員 ありがとうございます。私は中村参考人にお尋ねしたいことがございます。お話をお伺いすると、やはり小児領域は希少疾患ということで、オールジャパンのネットワークと恒常的な予算の確保ということがとても大事なのだということを改めて感じました。質問は、成育医療研究センターが、臨床研究中核病院になることを内部で希望されているのでしょうか、もし、そういうことがあるとしたら、どういう理由なのかということをお尋ねしたいと思います。もし、臨床研究中核病院になるとしたら、人員要件としては、看護師の数が足りない、論文が足りないということがございましたが、その理由があれば教えていただきたいと思います。以上です。
○中村参考人 御質問ありがとうございます。私が直接、臨床研究センターの指揮官ではないことと、成育の意思決定の最終権者ではないので、私見として御理解いただければと思いますが。臨床研究中核病院になろうという方もおられますし、一方で、臨床研究中核病院になった場合に、うちの規模で厳しい見方をされると、大赤字の成育医療研究センター病院で、臨床研究センターにこんなに人が一杯いてどうするのだという厳しい経営の見方をされる先生方もおられます。なので、私どもとしては、やはり臨床研究を推進するためには、臨床研究中核病院の今の仕組みかどうかは別として、リーダーシップをとる体制は絶対必要ですし、私のスライドにもそれを込めたつもりでございます。ただ、やり方をどうするかというのは、ちょっと検討が必要ではないかと思います。それから、すみません、2つ目の御質問をもう一度よろしいでしょうか。
○山口委員 看護師と論文が、今の要件であれば足りないということなのですけれども、この辺りは、人員不足ということなのでしょうか。
○中村参考人 人員不足というよりも、規模として、そこまで。これはあくまで私見ですが、例えば、看護師さんというのは、主に治験の実施支援になると思いますので、実施している治験数に応じた数になってくるということです。それから、例えば小児治験ですと、うちは確か60件前後の小児治験をやっていると思いますが、成人と違って1つの治験の症例数が非常に少ないので、そんなに収益が良いわけではなくて、数千万円規模でございます。そうすると、ペイしませんので、そうでなくても赤字の病院で、大赤字の部門をどう維持するかというところは非常に難しい問題になってくると思います。そこを、いかにバランスを取ってやっていくかというところで、むしろ、やるとしたら、そこまで数を増やさなくても、臨床研究センターの機能を強化して、他の経験豊富な小児医療施設とも連携して、全国の小児科医とも連携できるような機動的な連携体制を作ると。そして適材適所で、できるだけ人をスリムにしつつ人材育成を進めていき、徐々に体制を強化するということです。いきなり大きい数の方を雇っても、これは多分、病院の経営側から見たら赤字でしょうということになると思います。なので、やはり医薬品開発というものの位置付けをどうするかとか、研究開発をどうするかということのバランスを取りながらやっていかないと、うちのように小さい医療機関というのはなかなか厳しいと思います。
○山口委員 ありがとうございました。よく分かりました。
○楠岡部会長 それでは、渡部委員、どうぞ。
○渡部委員 ありがとうございます。八木参考人にお伺いしたいと思うのですが。レイサマリーについて、以前、私もワークショップに参加させていただきましたが、非常に重要な試みだと思います。特定臨床研究ですと、JCOGさんが積極的にされていますし、企業治験の場合ですと、外資系企業が随分用意されていると思うのですが、実際に、どの程度、今、臨床研究においてレイサマリーの活動が普及しているのかを、まずお伺いしたいと思います。
それから、13ページのスライドに関してなのですが、レイサマリーをせっかく作っても、それが患者さんの手に渡らないとか、公開されていないということに関して、JRCTのような所で公開してしまえば、いろいろな方の目に触れることになるのではないかなと思うのですが、なかなか作っても患者さんの手に渡らないという理由について、もう少し、状況を把握されているようでしたら教えていただければと思います。以上です。
○八木参考人 ありがとうございます。まず、レイサマリーの普及度についてですが、明確な数字を私自身は持ち合わせておりません。ただ一方で、GLSPにより、提供が必須となっていますので、欧州で治験をする企業は、欧州では、必ずレイサマリーを作成しなければならないということになります。ただ、これはあくまで英語、又は、欧州における実施国の言語ということになりますので、これが必ずしも日本語のレイサマリーが作られるということにはつながらないということを、1点、申し添えておきます。
研究者側のほうですが、医師主導治験に関しては、御承知のとおり、JCOGさんのほうは積極的に作られてはいるのですが、それ以外の事例としては、若干認識しているだけで、それ以上のところは私のほうでは把握していないのが現状です。内資系(注:内資系製薬企業のこと)ではまだ取組途中と理解しております。
あと、2点目は何でしたか。
○渡部委員 スライド13ページ目の。
○八木参考人 そうですね。ありがとうございます。提供の所ですね。従来、企業がその治験の情報を提供するということに関しては、製薬協等の行動指針等もあり、なかなか積極的にということができない、あるいは、その解釈に温度差があるということで、これまでは医療者、治験の責任医師の方を通じて治験の参加者に提供するという、それが一般的な方法であったことは事実です。そこには、先生方あるいは医療者の方の御協力がやはり必要だということで、なかなか先に進んでないという実態も把握してはおります。
一方で、公的なサイトで提供するということであれば、あるいは個社のサイトで提供することによってより広くアクセスができるという環境整備ができるので、その辺りは変わってくるのではないかと考えております。
○渡部委員 ありがとうございます。
○楠岡部会長 それでは、次は神里委員、その後に藤原委員、そして佐原委員でお願いします。神里委員、どうぞ。
○神里委員 ありがとうございます。八木参考人に2点ほど御質問をさせていただきたいと思います。臨床研究中核病院への期待と御提案を頂きましてありがとうございます。それに関連しまして、EUの臨床試験規則につきまして教えてください。2014年に義務化に踏み切ったその背景を教えていただきたく、また、それに関連して、2014年に発出していますが、施行が2022年ということで、かなりの時間を要したことの理由に、企業等からの見解あるいは反応というものがあって、それへの調整などが必要だったのかということ。2点目は、現在、2022年1月31日に発出されて、まだ時間はそれほどたってはいませんが、現場からの声というもの、企業さん、患者さん、そして市民から何か声が挙がっていれば、それについて教えていただければと思います。以上です。
○八木参考人 EU CTR(注:EU臨床試験規則のこと)の実装や導入について、私のほうではその背景等は持ち合わせていないのですが、1つの視点は、いわゆる治験情報を広く公開する、いわゆるバイアスのかかった形で特定の治験に関する情報等が公開されないことのないよう、Clinical Trials,gov等もそうですが、そういったところが一つの背景かと考えております。ただ、私自身は明確に、この背景がどうだということはちょっと申し上げることはできません。
施行が、その後数年たってということに関しましては、実際に制度はできたものの、では、どういうふうな形でこの制度を実装するか、いわゆる具体的な手順の検討に時間がかかったということと、CTISと言われる公的な登録プラットフォームがあるのですが、これの実装に、いわゆる技術的な部分で時間がかかったということが主な点だと聞いております。企業とのやり取り等で、特にそれが障害になったという話は聞いておりません。
一方で、企業のほうは、いわゆるGLSPないしはEU CTRの実装、レイサマリーの提供ということは、このGLSPによらず、実は先行して、多くの外資系企業が進めておりましたので、そういう意味では、企業治験の方が割とCTISはともかくとして、個社のサイト等でレイサマリーを提供するという取組は既に始まっております。
患者さん等から、その後どうなったかというコメントあるいは御意見等は、まだ残念ながら収集されてはおりませんので、そこはまた後日、期待したいところだと思います。以上です。
○神里委員 ありがとうございました。
○楠岡部会長 藤原委員、お願いいたします。
○藤原委員 2点、お聞きします。1つは八木委員に、もう1つは中村委員にお聞きします。1つ目ですが、八木参考人にお聞きしたいのは、臨床試験のレイサマリーは非常に大事なのですが、negative result、失敗した臨床試験結果を企業さんは隠したがりますよね。EUでもEMAを中心にTransparencyに長らく取り組んでいますが、企業からの一番の反対は、negative resultの公開とか、申請資料の公開とか、要するに取り下げられた品目です。非承認でなくても取り下げられた品目に関しての情報を出すのをみんな嫌がって、結局うまくいってないのですが、このレイサマリーというのは、negative resultについては、どういうふうに対応されているのでしょうか。
○八木参考人 そうしましたら、まず、1つ目を私のほうから答えさせていただきます。欧州のGLSPによると、この治験の成否を問わず、必ず公開あるいは登録するものとなっておりますので、各社は決して良い試験の結果だけではなく、ネガティブな、実際には目的が達成されなかった試験のレイサマリーも提供しています。ただ、あくまで企業の努力ということになってくるのですが、そういう形になります。
○藤原委員 ありがとうございます。では次に、中村参考人に2つお聞きしたいのですが、成育医療研究センターで非常に頑張ってらっしゃると思うのですが、私は臨床研究中核病院も含めて、臨床試験をしっかり熱心にやっている病院の大きな課題は、一般の看護師、臨床検査技師や薬剤師が、治験や臨床試験に対する理解がないとか、興味がないというところです。治験管理室が看護部や薬剤部から業務上もキャリア場も独立して運用されていて、そのためにいつまでたっても人が育たない、あるいはキャリアデベロップメントもないので治験管理室に定着してくれる新しい人が入ってこないというところが課題だと思っています。小児科領域も、非常に数が少ない中で、治験だけ専門にやっている部門には、やはりどうしても新しく良い人は入って来づらいので新陳代謝が進まないと思うのですが、何か、その辺の工夫をされているのかというのが1つです。
2つ目は、今日は触れられませんでしたが、小児の治験で、企業が一番逡巡する要因としては、やはり製剤の問題があると思います。顆粒剤とか液剤とか、それから香りとか、味とか、小児についての製剤化には様々な課題があって、そんなところにお金をかける余裕は企業にはないのでいつまでたっても小児製剤が製造されず、結果的に小児の効能、あるいは小児の用法・用量が設定できないという問題があるのですが、その辺りは小児科学会や成育医療研究センター臨床研究部門では、成育は確かそういうのを院内製剤で作っていると思いますが、将来はどういうふうに考えたらいいのか、中核病院はその辺に対してどういうふうに対応したらいいのかということのアイデアを教えてください。
○中村参考人 ありがとうございます。実際の治験の管理部門と私は最近関わっていないのですが、私の理解の範囲で、まず1つ目の御質問にお答えさせていただきます。やはりほかと同じで、看護師さんとかで、ローテートで回って来られる方がいると、せっかく認定CRCを取っても、また他に戻って、それが役に立たなかったということをおっしゃっていた方がいるのは認識しております。今、三上副センター長も関わって、成の教育のシステムをいろいろ検討されていると理解しております。できるだけ啓発のことは進めようとしているのだと認識しております。とはいえ、CRCのキャリアラダーなどのところは、成育に限らず、やはり小児医療施設でも、なかなか人が長く育っていくという環境にないというのが現状かと思います。すみません、ちょっとそれ以上は、特に大きい工夫というのは私が理解できておりません。
それから、製剤の問題ですが、いろいろな研究費が今年度で終わってしまったのですが、AMEDの研究班の中では、昭和大学の原田先生等、あるいは薬剤学会で小児製剤のフォーカスグループを作っていただき、さらに、欧州のコンソーシアムとの連携というところを、正式に守秘義務契約を結んで昨年から始めていて、そこで製剤問題、あるいは添加剤の情報が足りないところについては議論をしております。その内容の一部は、医薬品審査管理課の指定研究の中でも提言に盛り込もうと思っております。
製剤をどうするかという問題は、結局、欧米で小児治験が義務化されていることから、小児製剤の検討は、まずEUで行われ、その後、米国で行われる。恐らく、EUが成人のⅠ相試験が終わった後、米国でⅡ相が終わった後というルールになっていて、それよりできるだけ早くということになっていますので、欧米での開発をベースにして議論されている中で、今、何とか薬剤学会にもちゃんと委員会ができましたし、私ども成育の一部の有志が関わる形で、日本の製剤でどんなものが服用されているとか、例えば、服用試験を昭和大学のほうでやっていただいたりしながら、その情報を共有するということはしています。
今後、やはり日本の小児製剤というものを、どう海外にアピールしていくかというところは、臨床研究中核病院の中で一個一個それができるかどうかというのは、私もまだアイデアが湧かないのですが、日本として、やはり日本の子供に必要な小児製剤というものを海外に発信し続けない限り、なかなか分かってもらえないと思っています。
AMEDのヒアリングのときに、海外の小児製剤の会議に幾つか行きたいのだということを、しかも私だけではなくて、むしろ薬剤学会の方に行っていただきたいのだということを申し上げたのですが、ちょっと旅費が多いねということで今回は落ちてしまいました。海外では、今度、メリーランド大学などが、そういった小児製剤のシンポジウムをやるのです。どんどん小児製剤が世界的にどうあるべきかという議論がされていますので、そういった所に日本人が行って議論できるような環境がないと、そもそも向こうの人たちは、日本で何をやっているか分からないのです、なので、臨床研究中核病院の議論にマッチするかどうか分かりませんが、そういったことに、アフィニティのある人がもっと情報発信できるような環境が頂ければいいかと思います。以上です。
○楠岡部会長 それでは、佐原委員、お願いいたします。
○佐原委員 日本医師会の佐原でございます。中村先生の話を伺いまして、課題の整理ができました。ありがとうございました。臨床研究中核病院の設置の趣旨の中に、「他の病院又は診療所に対して特定臨床研究の実施に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言、その他の援助を行う能力、特定臨床研究に関する検証を行う能力を備え、係る病院としてふさわしい人員配置、構造設備等を有するもの」という記載があります。現在、この部会では、臨床研究中核病院の承認要件の見直しの検討をしているのですが、医師主導治験や論文の数値の要件を満たすことに注力せざるを得ないという状況の中で、先生は、承認要件を見直すとすれば、どのようにあるべきかということをお尋ねしたいのですが、いかがでしょうか。
○楠岡部会長 どうぞ。
○中村参考人 大変、重たいお題を頂きました。これはあくまで私見でございます。私は小児科医でございまして、小児の視点だけでしか、あるいは一緒に議論している希少難病の先生との視点からしか発言できませんが、やはり、ほかの臨床研究中核病院の臨床研究支援センターの方たちと一緒に仕事をしても、PMDA相談に行っても、結局、小児のことは余りお詳しくなくて、PMDA相談でいろいろとやり取りした後には、「勉強になりました」とおっしゃるということを何度となく経験しています。
何を言いたいかというと、小児とか、もしかすると他の希少疾病領域で精神神経、がん、小児がんなど、特定の病気もそうかもしれませんが、そこの専門的なところの知識、ノウハウを持ったクリティカルマスというか、そういう人たちがある程度いないと、その領域の臨床試験の支援はできない、アドバイスや助言ができない。
例えば大学病院ですと、規模が大きくて臨床研究中核病院になるだけの数の要件はありますが、必ずしも小児科が強くて全ての領域をカバーしているかというと、そうではない。小児科医の数だけからすれば、成育医療研究センターのほうがはるかに多くて、それでも全ての希少難病をカバーできませんが、小児病院や成育などでこれまで貯めてきたノウハウを提供できれば、そこの支援のパワーアップが、もっとできると考えております。
なので、私はよく、臨床研究中核病院はツールであって目的ではないと言うのですが、いかに小児医薬品開発をこの国で進めるようにするかというのが私の人生の目的でして、それを達成するためにどういう体制が必要かというところでは、今、申し上げたようなノウハウを持った人間の力を結集して、いろいろな病院、特に臨床研究中核病院というのは医師主導治験の支援もさすがにしっかりされていますので、最初のところさえクリアすれば、あとは自然に流れていく医師主導治験も一杯見ておりますので、そういうところの一番大事なところを支援できる体制というものがあればいいのかなと思っております。以上です。
○佐原委員 ありがとうございました。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御質問、コメントはございますでしょうか。
私のほうから、これは八木参考人にという特定の話ではなくて、やはりPPIそのものが研究者に全然理解されていない。2019年の臨床研究・治験に関する今後の方向性の中にも、PPIのことは少し触れておりますし、AMEDも今は研究費の申請に関しては、わざわざPPIに関するセクションを設けて記載を求めているのですが、これは必須でないので、申請書を私が見る範囲においては、PPIに関してはほとんど記載されていない。あるいは、PPIに関して誤った認識で、例えば臨床試験を行うので、説明と同意をしているからPPIを満たしているというような書き方。それから、基礎研究であるからPPIに該当しないという書き方。だから、PPIそのものが、やはり研究者に余り理解されていないので、レイサマリーという、そういう結果の方向と同時に、スタート時点の研究者に対するPPIに関する何か徹底させるような方策を考えないと、ここのところはなかなか進まないのではないかと思いますので、多分、PPIも引き続き、今後のテーマの1つにはなっていくのではないかと思っております。
それでは、特に御質問がないようでしたら、事務局は、今回頂いた意見を参考に、今後のとりまとめに対応をお願いしたいと思います。
それでは、次の議題2に移らせていただきます。議題2は、「臨床研究治験推進に係る今後の方向性について」です。事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 ありがとうございます。それでは資料2「臨床研究・治験推進に係る今後の方向性について(臨床研究・治験コストの透明性の向上について)」の御説明をさせていただきます。資料2を御覧ください。
2ページです。臨床研究・治験推進に係る今後の方向性については、第36回の本部会において、6つの議論のポイント(案)を御提示させていただきました。本日の部会においては、議論のポイント(案)の4つ目、臨床研究・治験コストの透明性の向上について御議論いただきたいと考えております。
3ページです。改めて、治験費用のポイント表について御説明させていただきます。治験費用の算出方法については、日本では、国立病院機構が算定要領、いわゆるポイント表を策定しており、国立病院機構以外の多くの医療機関においても同様のポイント表を準備していると承知しております。
一方、ポイント表に基づく治験費用の算出方法については、日本独自のシステムであり、施設ごとにポイントの付け方、項目、係数などが異なることで、ばらつきが生じて透明性に欠けることで、グローバルに対して費用算定の説明が困難な場合があるということ。また、ポイント表の概念が導入された時代と比べ、治験の複雑性が変化しており、現在の複雑な治験においてはポイント表では治験費用の適正な算出ができないという課題が指摘されております。
4ページです。このような背景から、昨年4月の創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制の在り方に関する検討会報告書においては、治験費用の算定方法について、業務量や市場価格に基づいた算定(欧米ではFair Market Value(FMV)と呼ばれ、広く浸透している概念)の国内の導入の実現性を含め、医療機関・治験依頼者双方が納得感を得られる方法について必要な検討を進めるべきこととされました。
これを受けて今般、産業界、臨床研究中核病院その他産官学関係者による意見交換の場を設置し、FMVの国内への導入の実現性を含め、医療機関・治験依頼者双方が納得感を得られる方法について議論を実施しました。本日は、議論の概要を御報告させていただきますので、意見交換会での議論結果も踏まえ、臨床研究・治験推進に係る今後の方向性について御議論いただきたいと考えております。
5ページです。まず、臨床研究・治験推進に関する産官学意見交換会について御説明させていただきます。産官学の意見交換会では、臨床研究中核病院や非臨床研究中核病院に所属する先生方、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、日本CRO協会、日本SMO協会から御参画いただきまして、昨年12月から合計3回、FMVに基づく治験費用算定の国内への導入について、医療機関・治験依頼者双方が納得感を得られる方法について議論を実施しました。
6ページです。産官学意見交換会の議論の概要です。下の現状の課題のところです。産官学意見交換会では、治験費用の算定について新たなモダリティへの対応、治験デザインの多様化、物価高や人件費の上昇などにより、現行のポイント表では、実情に即した適正な費用算出を行うことが困難であり、ポイント表に基づく治験費用算定には課題があるということがあげられました。
このような課題の解決にあたって、対応の方向性としては、国際共同試験が増加している中、国際的な理解が得られる治験費用算定の国内導入は必須であり、日本の国際競争力の強化を考え、日本の特殊性は最小限にすべきであるという考えの下、企業治験について、国際競争力の観点から、国際整合性のとれた治験費用算定の導入が必要であり、FMVに基づく治験費用算定の考え方の推奨を行いつつ、海外で広く用いられているFMVに基づくタスクベース型の費用算定の国内導入を進めるべきとされました。
具体的には、治験実施医療機関費用については、従来のポイント表からFMVに基づくタスクベース型費用算定への移行を進めるべきであり、SMO費用については、SMOの業務形態を国際発信するだけではなくてSMOのタスクをより詳細にしたタスクベース型の費用算定への移行を進めるべきとされました。
一方、FMVに基づくタスクベース型の費用算定の導入にあたっては、引き続き検討が必要な課題があることから、今後の対応としては、導入可能な当事者は積極的に導入を進めつつ、一部の医療機関においてモデル事業を実施し、ノウハウの集積・課題の抽出・解決策の検証を行うべき、国内導入に向けた課題を解決するため、引き続き産官学での議論を継続していくべきとされました。
7ページです。国内の導入を進めるべきとされたFMVに基づくタスクベース型の費用算定の概要について、御説明させていただきます。まず、左上のところですが、サービスプロバイダーは、製薬企業等が実際に医療機関と合意した治験費用をベンチマーク(市場価格)として、データベースに蓄積しております。製薬企業等の治験依頼者はサービスプロバイダーが提供する最新の市場価格のデータに基づいて、プロトコールごとに必要な業務を積み上げ、医療機関に支払う治験費用案を算定いたします。そして、市場価格のデータに基づくタスクベースで算定した治験費用案を医療機関側に提示し、医療機関は過去の費用算定実績などを参考にして、提示された治験費用案について検討を行います。その後、治験費用案について依頼者と医療機関間で交渉・協議を行い、最終的に双方で合意された価格を治験費用として決定することで、透明性が高く適正な治験費用となります。この合意された治験費用については、依頼者を通じてサービスプロバイダーに提供され、市場価格が更新されます。多くの依頼者が、実際に医療機関と合意した治験費用の情報を共有することにより、実績が積み重なり、より日本の実態に合った市場価格が蓄積されることになります。
FMVに基づくタスクベース型の費用算定にあたって重要なこととしては、ベンチマーク(市場価格)については、あくまで依頼者側から提示を行う際の基準であり、市場価格に固定された費用で契約を行うものではなく、当事者間で交渉・協議を行い、納得した上で治験費用に合意し、契約を行うというFMVに基づく治験費用決定のプロセスが重要となります。
最後に8ページです。FMVに基づくタスクベース型の費用算定の国内導入に向けた今後の対応について御説明させていただきます。臨床研究・治験推進に関する産官学意見交換会では、FMVに基づくタスクベース型の費用算定の国内導入にあたって、引き続き検討が必要な課題や取組があることがあげられました。具体的には、当事者間で交渉し、納得した上で合意して契約していくというプロセスが重要であるというFMVに基づく治験費用算定の考え方を普及する必要があるということ。治験依頼者から医療機関への提示金額の算出根拠については、透明性を確保する必要があるということ。FMVに基づくタスクベース型の費用算定の導入にあたってはノウハウの集積・導入する医療機関の負担の軽減や体制の強化を行う必要があるということ。日本の実態をより反映するためには日本におけるベンチマークのデータ蓄積を推進する必要があるということ。FMVに基づくタスクベース型の費用算定の導入とともに、SMOの業務形態の国際発信や保険外併用療養費制度の統一した運用など、日本の医療制度・治験環境を国際発信していく必要があることが上げられました。これらの課題を解決していくために、FMVに基づくタスクベース型の費用算定の国内導入にあたっては、日本の特殊性が少なくなるよう意識し、導入可能な当事者での継続的な導入、一部の医療機関におけるモデル事業の実施を通じたノウハウの集積・課題の抽出・解決策の検証を行いつつ、引き続き産官学において、課題解決のための議論を継続していきたいと考えております。
資料2の説明は以上となります。よろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明に関しまして、御議論いただきたいと思います。御質問、御意見のある方は手を挙げてください。山口委員、どうぞ。
○山口委員 御説明ありがとうございました。2点お尋ねしたいと思います。まず、ポイント制が問題ということで、FMVというのは方向性としてはいいと思うのですが、これは事務局にお尋ねすればいいのか、製薬協の近藤委員にお尋ねすればいいのか、適切な方にお答えいただければと思います。ポイント制を取っていることで、国内でどのくらいのばらつきが実際に起きているのかということと、FMVを取り入れることで適正価格に落ち着いていくことになるのかということの方向性のようなものを教えていただきたいのが1点目です。
それから2点目として、基本的なところを教えていただきたいのですが、日本特有のSMOということですけれども、海外ではSMOがなくても成り立っているのに、日本だけSMOが必要ということが、どういう理由なのかというところを教えていただきたいと思います。以上、2点です。
○楠岡部会長 事務局と、近藤委員にもお答えいただければと思いますが、まず事務局からお願いします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 2点目につきまして、事務局から御説明させていただきます。SMOがなぜ日本独自であり、海外にはないのかという点につきましては、事務局で明確な回答があるわけではありませんが、欧米と日本とでは、治験を実施する医師への支援体制等の治験環境の違いによる要因が大きいのではないかと考えております。1点目については、近藤委員からお願いできますでしょうか。
○楠岡部会長 近藤委員、お願いできますでしょうか。
○近藤委員 近藤でございます。御質問いただきありがとうございます。頂いた御質問は、日本の現行のポイント表での算出とFMVに基づく算出と比較してどうかというところがメインになってくるかとは思いますが、データとして、日本とアメリカの両方が参加したような国際共同治験で、16試験をまとめたデータがあるのですが、同一治験における医療機関ごとの症例単価、そのばらつきについて、アメリカと日本ではどうかということを見てみております。やはりアメリカと比べて、日本では医療機関ごとのばらつきが大きいというような形で報告されております。
そのケースでは、複数の治験なのですが、最大値と最小値で、医療機関によっては4倍ぐらいの差があったということなので、アメリカのほうが、よりコンパクトと言いますか、均てん的に算出されていると考えられます。
それと、少し別の視点ですが、治験デザインや難易度、複雑性、これは課題の所でも触れられていましたが、海外で行われるベンチマーク型の算出の場合には、難易度や複雑性によって算出の指標を用いて補正を掛けるなどをしますが、日本のポイント算出表のケースの場合には、治験の複雑性や難易度は適切に反映されるような形には余りなっていないという状況がありますので、海外の場合は複雑、かつ難易度が高ければ費用が、ある程度は高くなってくるといったところがあります。そういうところを将来的にきちんとステークホルダー間でディスカッションして、納得した形で価格を決められていくことによって、適正な価格になってくるとは考えております。お答えになっていますでしょうか。
○山口委員 はい、どうもありがとうございました。
○楠岡部会長 部会長ですけれども、私も国立病院機構におりましたので、私見を少し述べさせていただくと、まず1つは、ポイント表というのが、国の時代に国立病院用として作られたものが、全国各地でそれと同じようなものが作られて、必ずしも同じ項目、同じ点数というわけではありませんが、ほぼ似たようなものです。
しかしながら、1つの治験に対して、ほぼ似たようなポイント表で算定したにもかかわらず、今、近藤委員から御指摘がありましたように、結構ばらつきが出てきていて、それはどのポイントを当てはめるかという解釈の問題であったり、それから先ほど、難易度の問題で、これはポイント表で算定するよりも、もう少し高く頂かないと難しいといった個別交渉などか入ったりして、ポイント表がベースになっていても必ずしもそのとおりに全国一律にはなっていないという現状が結構ありましたので、この辺りのところを今後、どのようにしていくかが1つ大きな問題ではないかと思います。
それから、もう1つ、SMOの問題ですが、やはり、日本では治験を実施している施設が小規模の所が多く、あるいは診療所であったりするわけです。そうしますと実施施設で、CRCや治験事務局のスタッフを抱え込むだけの余裕がない。たまに治験が来るので、そのときだけ作業を外注委託するということで、SMOというものが出てきたような状況です。
したがいまして、今度、FMVを考える場合には、非常に大規模施設で、CRCをはじめとするスタッフがたくさんいて、常に治験業務があるような所と、スタッフは持っているけれども余り治験の件数がないので、いわゆるアイドリングタイムが非常に発生するような施設とでは、やはりFMVのときに、どのようにそこを評価するかといったところが一つ、日本の独得の問題として出てくる可能性があるかと思います。
海外の場合は、治験施設そのものが結構大きく、多くの症例数を受託しているので、アイドリングが発生することが余りないのに対して、日本の場合は、中小規模の医療機関ではやはりそういうことが出てきますので、そこをどう評価するかというところが、やはり問題になってくるのではないかと思います。そこでSMOをどう活用するかということも1つの課題になってくるのではないかと思います。私見ですが、少し追加させていただきました。
それでは、藤原委員、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。
○藤原委員 最後の8ページ目の一番下の今後の対応の中で、治験環境や医療制度の国際発信ということが2点述べられていて、これは非常に大事かなと思って、将来に向けて研究開発課にお願いしたいことがあります。
1つ目は、費用算定で、FMVを入れても費用算定をきちんとやって、今のドラッグ・ロスを解決するには、国内では治験数はそんなに増えないでしょうから、海外からの企業治験の委託がないと多分無理なので、それをやるためには何をやればいいかというのは、費用の透明化であることは間違いないのですが。気を付けないといけないのは、韓国のような何千床という病院で効率的に治験をやるような所でのコストの掛け方と、フェーズ1や、TR、フェーズ1/2のように、早期開発の段階での費用の掛け方というのは大きく違うので、そこの算定は分けて考えていただきたいと思います。
アメリカでも、私が見ている限り、有名病院のフェーズ1施設のコストが非常に高いですし、日本よりも全然高い所もたくさんありますので、フェーズ3とearlyのコストの算定は分けるということはお願いしたいです。それから、ここにはSMOの業務形態の国際発信をしていくと書いてありますが、そもそも先ほど楠岡先生もおっしゃいましたように、SMOが日本で発展しているのは、日本の医療機関が臨床試験や治験に対する体制整備等に理解がないために、自立できていないのでコストが掛かるだけの話で、臨床試験や治験が大事だと思えば、もっと自分たちの病院を整備して、一般の看護師や薬剤師や臨床検査技師をトレーニングして、みんなが臨床試験に参画しよう、あるいは患者を集めようという意識に変わっていきますが、それがない限りSMOは残っていくので、それだと国際競争には負けると思います。
SMOを宣伝しても、それが治験の振興につながるとはとても思えないということが1つと、それから、このコストの算定において、いつも私が疑問に思うことは、製薬企業さんは高い高いなどとおっしゃいますが、私が自分でやったいろいろな過去の医師主導治験の算定、例えば、アジアの国際共同医師主導治験もやりましたが、日本ほど安くできている所はないのです。それを企業さんに完全にオープンにしてもいいですかと聞くと、大体、皆さんコストを完全にオープンにすることは嫌がるので、もっと透明化して、一体、幾ら人件費が掛かっていて、幾ら契約に掛かっていて、あるいはSMOさんだと、SMOの企業にたくさんお金が入っていくわけですが、SMOから来ているCRAさんやCRCさんの給与は余り高くはありません。なのに契約費用は非常に高いですから、そういうところをオープンにして、全額幾らかというところをきちんと示さないと意味がないと思います。
それから、8ページ目の一番下の2つ目の保険外併用療養費制度の運用、これは非常に大事です。例えば、抗がん剤ですと、内服期間中には保険外併用療養費は算定するけれども、3週間の内服が終わって次の1、2週間の観察期間中は保険外併用療養費は算定しませんとか、あるいは治験に入る前に適格性確認のために臨床検査や放射線の検査をやりますが、そのような事前検査に関しては保険外併用療療費を認めませんといった運用をしている所もたくさんあって、これらの運用は統一化してあげたほうが、海外のベンチャーさんなどが日本に入ってくるときに有益だと思います。
この保険外併用療養費制度を持っている国は非常に少なくて、アメリカにはMedicare Clinical Trial Policyという制度が、公的研究費の入っている臨床試験については同じような仕組みがあるくらいです。日本が勝てる唯一のポイントはここなので、ここに関してはもっと宣伝をできるように保険局医療課とも相談しながら、統一された運用、適切な運用、かつ日本が臨床試験の場として魅力的に見えるようにしていただきたいと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますでしょうか。保険外併用療養費制度は、確かに最初にできたときには、企業の治験費用を、ある意味、企業が負担すべき部分を、保険診療の中でやる、あるいは個人の負担でやることはフェアじゃないから、そこは少し企業にも分担してもらわないといけないのではないかというところで、今の制度ができたわけですが、その後、治験の内容もどんどん複雑化し、また、さらに医師主導治験も加わりということで、制度そのものが非常に複雑化してしまっている。もう一度原点に戻って、企業がどの程度負担すべきかという、その割合をもう一度見直して、どの部分に適用するかというようなことも考えていく必要があるのではないかということは、私も同感ですので、また検討をお願いしたいと思います。
それでは、近藤委員、お願いします。
○近藤委員 ありがとうございます。近藤でございます。まず、方向性について意見交換会でまとめていただき、ありがとうございました。非常に良い形でまとめられているのではないかと思っております。その上で3点コメントさせていただきたいのですが、意見交換会で御議論いただきましたように、国際競争力の観点からも国際整合性がとれた治験費用導入が必要、これも本当におっしゃるとおりかと思います。そういうことを考えますと、海外ベンチャーや国際共同治験といったようなケースは、すぐにでも導入していく、開始していく必要性があるかと思いますので、その点が1つ目のコメントです。
2つ目は、対応を進めていく上では、各ステークホルダーが納得して進めることが重要であるということは、もう本当におっしゃるとおりです。ただ、その際に、先ほども藤原先生がおっしゃっておりましたが、算出するようなタスク項目、その内容について、きちんと合意、納得して適切な費用になってくるということが重要かと思いますので、タスク項目について明確にしていただくような取組は是非進めていっていただければと思います。
最後ですが、その目線を合わせる際には、とりまとめにも記載されていましたが、引き続き産官学で議論させていただくことが重要となってくるかと思いますので、是非、引き続き意見交換をさせていただければと思います。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますでしょうか。中村参考人、どうぞ。
○中村参考人 成育医療研究センターの中村です。今日、栗山部門長が実は小児治験ネットワークの事務局をしていて、話を聞いているのですが、今の算定方式というのは、医師や看護師やCRCなどの作業時間を洗い出して、単価を掛けて、ある程度計算をしてやっていると理解しています。
それで、お願いなのですが、小児をやられる場合は、やはり小児での難しさもあると思うのです。そういったところも十分に検討いただくために、是非、小児治験ネットワークのほうにも御相談いただいて、小児でも使えるものを作っていただけるとよろしいかと思いますので、よろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかにありますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、今回頂きました御意見を整理いたしまして、今後の対応を事務局のほうにお願いしたいと思います。
そのほかに何か事務局からありますか。
○医政局研究開発政策課課長補佐 参考資料1について、CRBの設置状況1、2ページ目に、jRCTに登録されている治験及び特定臨床研究などの状況についても、3ページに御紹介しておりますので適宜、御覧いただければと思います。
最後に事務連絡です。次回の開催については、3月19日(水)16時~18時を予定しております。委員の皆様には、追って事務局より連絡を差し上げます。事務局からは以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。非常に活発な御議論、ありがとうございます。それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。