第39回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

日時

令和7年1月29日(水)16:00~18:00

場所

AP虎ノ門
(オンラインとのハイブリッド開催)

議題

  1. 1.臨床研究中核病院の承認要件見直し及び臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性について
  2. 2.臨床研究法省令改正について
  3. 3.臨床研究法に定める疾病等報告について
  4. 4.その他

資料

議事

議事内容

○医政局研究開発政策課室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、「第39回厚生科学審議会臨床研究部会」を開催いたします。本日も、前回から引き続きWebで開催させていただきます。会議全体でのお願いとなりますが、Webで参加されております委員の皆様におかれましては、御発言される前に画面下の「挙手ボタン」をクリックしてください。部会長の指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言いただきますようにお願いします。また、御発言終了後は、御手数ですが、再度マイクをミュートにするとともに「手を下げる」をクリックし、手を下げた状態にしてくださいますようお願いいたします。会議中に接続トラブル等が発生しましたら、事務局まで御連絡ください。注意事項は以上となります。
 本日は、部会の定数14名に対しまして、14名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。
 また本日は、3名の参考人の方にお越しいただいております。御紹介させていただきます。日本SMO協会より坂﨑参考人。千葉大学医学部附属病院より花岡参考人。
○花岡参考人 よろしくお願いします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 浜松医科大学より渡邉参考人。
○渡邉参考人 よろしくお願いします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 どうぞよろしくお願いいたします。また、昨年12月より、新たにこの部会の委員に神里委員に御就任いただいておりますので、御紹介いたします。神里委員、一言、御挨拶いただけますでしょうか。
○神里委員 国立成育医療研究センターの神里と申します。バックグラウンドは法律で研究倫理や生命倫理の政策研究を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
 続いて、本日の会議資料について御紹介いたします。会場参加の委員の皆様におかれましては、お手元の資料を御覧いただきますようお願いします。Webで参加されている委員の皆様におかれましては、事前に送付しております資料、又はWeb上で資料を投影しますので御覧ください。資料番号は資料1-1~1-4、続いて資料2、資料3、参考資料1~4となっております。お手元で不足等ございましたら、事務局宛てにお申し付けください。
 円滑な議事進行のため、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いします。以後の進行につきましては、楠岡部会長にお願いいたします。
○楠岡部会長 皆様、こんにちは。部会長の楠岡でございます。本日はお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。それでは、お手元に配布されております議事次第により議事を進めたいと思います。初めに議題1「臨床研究中核病院の承認要件見直し及び臨床研究・治験の推進に係る今後の方向性について」で、本議題は、前回に引き続き関係者からのヒアリングとなります。4名の方々に続けて発表いただきますが、その後、まとめて質疑応答の時間を設けたいと思います。
 それでは、まず初めに、日本SMO協会副会長坂﨑参考人から御説明をお願いします。
○坂﨑参考人 皆様、こんにちは。日本SMO協会から参りました坂﨑と申します。本日は、こういった貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 私どもSMOは、治験を実施される医療機関を支援する立場で、長年にわたって日本の治験に貢献をさせていただいてきておりますが、今日は改めて、皆様に一度、日本のSMOについてということを御紹介させていただいて、その後、論点であるポイントを幾つかお話をさせていただく流れで進めさせていただきたいと思います。スライド送りは事務局にお願いいたします。
 次、お願いします。まず、私ども日本SMO協会についてですが、ここにお示しさせていただいているとおり、2003年に任意団体として設立しておりますが、ここがちょうど、改正GCPでSMOの存在が明記された年となっております。現在、加盟企業としては23社で数字関係はここにお示ししているとおりですが、現場の最前線で働いている治験コーディネーター(CRC)、あとは治験事務局担当者(SMA)のスタッフは合わせると大体3,300人程度。この方々が日々、治験実施医療機関の現場で先生方が行う治験を支援させていただいております。また、本日の資料には無い協会内のデータになりますが、大体、年平均で、6万人から8万人の被験者さんと直にやり取りさせていただいている形になります。そして、当協会は任意団体ですので、一部加盟されていない企業もおりますが、私どもの認識としては、国内にあるSMOの9割以上は、当協会に加盟して活動されている認識でおります。
 次、お願いします。ここは皆様よく御存じのとおりですが、協会設立は先ほど2003年と申し上げましたが、我が国のSMOの業界自体が勃興し、活性化してきたのは2000年~2003年の辺りで、協会加盟企業の多くもこの頃に事業を開始しております。というのも、新GCPの公布後治験の空洞化と呼ばれる治験数の減少が課題となってきた時期に、医療機関の治験実施体制の整備を含めた様々な困り事の解決をするサービスプロバイダーの立ち位置でSMOが勃興し、大体2003年から2004年ぐらいまでに市場が形成されており、これ以降は、ここにある様々な国の施策とともに、治験の活性化の一助となりながら成長してまいりました。
 次、お願いします。こちらは、製薬協さんのデータからお借りしてきたものになります。国内治験にSMOがどの程度関与させていただいているかというものですが、左側がコロナ前の2018年です。右側が私どもが入手できている最新の2023年の数字になっております。既に2018年の時点で私立の病院、診療所、クリニックの治験においては、8割から9割ぐらいの割合で関与させていただいています。これは現状も変わっていない水準になっております。この5年で大きく変わってきた点としては、点線で囲んでいる国公立や私立の大学、あとは国立病院機構でSMOの活用が増加してきております。これは私どもも肌感覚で感じているところですが、恐らく、求められる治験環境や開発トレンドがこういった大規模な医療機関で行われる治験が増え、私どもSMOもこのニーズに合わせて支援範囲を拡げてきたことによるものと思っております。
 次、お願いします。これも参考データで、製薬協さんのものです。私どもはいわゆる人が足りない分を埋めるリソース面の支援だけではなく、自らもノウハウを蓄積し、業界を挙げた教育などの人材投資にも取り組んできておりますが、SMOが関わらせていただいている治験において、幸いにもこのように治験期間の面などで一定の効果が出ているようなグラフもあります。これは私どもSMOが業界を挙げて行ってきた取り組みの成果がこのような数字も表れてきていると感じているところです。
 次、お願いします。これがSMOを紹介する最後のスライドになります。こちらは実際に行われているSMOの契約と費用の支払いの流れを示すものです。
 一般的に、委受託関係であれば、直接委受託の契約があり、費用もこの契約に基づく流れで直接支払われるものになりますが、SMOを活用した治験においては、お示ししたような図のような形になっております。まず図の中央、治験依頼者と治験契約を交わし、治験を実施される医療機関からの委受託としてSMOは業務提供差し上げますが、その費用の支払いにおいては医療機関も御了解の下、三者で契約を取り交わし、直接治験依頼者からSMOが費用が支払われる流れが大半で、これが一般的になっております。 
 これは、図の右側にあるようにSMOがIRBの支援や、被験者負担軽減費の支払代行も行っていることが多いこと、また、図の上部に水色で記載されているとおり、特に中小規模の医療機関は、院内でSMO費用を含む治験実施のための外注費用、支払いの管理、あとは、治験依頼者と直接費用面のやり取りを行うノウハウや人的な体制を持つこともなかなか厳しいこともあり、この部分をSMOが代行してきた歴史があり、現在のような治験依頼者とSMOが直接費用面のやり取りを行う流れが一般的になっていると認識をしております。
 あともう1つは、この後に話に繋がるところになりますが、治験費用においても、ポイント算出が主である実施医療機関費用とSMO費用を、製薬会社さんの中で、費用交渉や契約を分けてこられた背景がありますので、このような形になっていると御理解いただければと思います。
 次、お願いします。ここからが、今回の臨床研究・治験推進に係る今後の方向性のテーマについて意見を述べさせていただければと思います。論点、議論のポイントを拝見し、色々な観点がありますが、今回は限られた時間の中で、コストの透明化と手続の効率化の観点で、フェアマーケットバリューを取り上げさせていただきました。
 次、お願いします。フェアマーケットバリューについては、この資料の左側にありますとおり、基本的には費用の透明化等の考え方と理解しております。その考え方に基づいた手段の1つが、ベンチマーク型コスト算出であると捉えております。私どもとしては、フェアマーケットバリューという観点で現行のSMO費用を見た時、先ほど申し上げた治験依頼者と直接費用のやり取りをしている実態の中で、右側にも書いておりますが、常に相見積りであったり、予算都合などの理由で価格・条件面に関するいろいろな御相談、御要望を受けながら、その都度真摯に協議をさせていただき合意に至った費用の中で行っています。各SMOが、このようなことを繰り返し行っているうちに、業務項目や費用の算定も大体同じものになってきています。こういうことを捉えると、実勢的に、実質的に、競争性がしっかりと担保された市場価格が形成されていると私どもは認識しております。
 また、タスクベース、Visit単価という観点においても、治験依頼者の御要望に応じた症例出来高といわれる、1症例が被験薬を投与された実績で支払われるということが、もう十数年来行われていることですが、これも、御要望に応じてそれぞれのvisitに応じた対価設定を行いながらやっておりますので、こちらもかなり、タスクベース、Visitベースに近い費用対価で取引させていただいております。あくまで、これは私どもSMOの認識ではありますが、SMO費用については、かなりフェアマーケットバリューの考えに基づいた取引になっているのではないかと考えております。
 次、お願いします。これは、これまで色々な所でベンチマーク型コスト算出の導入トライアルについて、医療機関の先生方のお話を聞いたり、様々な発表資料も拝見をしている中で、ベンチマーク型コスト算出を試された医療機関の課題感として、概ねこういったものがあるのではないかと認識しているものになります。特に費用算定や、実際に運用するための医療機関の負担、管理の業務負担がかなり大きくなるのではないかということです。あとは、ベンチマークの算出根拠や、海外手法を用いる際に日本のベンチマークをどのように捉えるのかなど、まだ疑問や不安を覚えている先生方もいらっしゃるのだなと思います。
 また、先ほど見ていただいたように、SMOを活用いただいている医療機関も多くなっておりますから、SMO費用やIRB費用、あとは日本特有のものと伺っている保険外併用療養費の取扱いを課題として伺っています。これらを大きく捉えると、FMV及びベンチマーク型コスト算出に対する理解に関する課題が1つと、導入に伴う業務負荷の増大、これらが一番大きな懸念として挙げられるのではないかということで、私ども医療機関の治験実施を支える立場としては、これらの課題に対してSMOとしてもしっかりと周知をお手伝いするなど、実務面での協力は不可欠であろうと捉えております。
 次、お願いします。このような中で、私どもが現在業界として危惧しておりますのが、SMOが医療機関からの支援契約という形になっている立場上、医療機関費用の一部としてSMO費用も含め、1つにまとめた形で現行のベンチマーク型コストの算出・推進が進んだ場合、右側に書いてある通り、非営利性が高い医療機関のコスト算出と、繁閑差のある治験業務をスポットで支援差し上げる営利のサービスプロバイダーである私どもSMOのコストの考え方や水準などが混在され、かなり大きな混乱を招くと考えております。
 もう1つは、これまで別々に行うことできれいに運用されている医療機関費用とSMO費用が、医療機関主体で、SMO費用も含めた全て管理される形になる場合、医療機関側の負担がかなり増大して、治験の円滑な推進が阻害されるのではないかと考えております。私どもとしては、SMO費用はFMVに基づいたものであるという認識がありますので、SMO費用に関しては一旦切り離し、医療機関費用の部分をFMVに基づいたものに移行を進めていくことが良いのではないかと考えております。
 次、お願いします。こちらの運用案には、1つの費用を医療機関とSMOで費用をタスクごとに分配することが書かれているのですが、これはかなり難しいと思っております。先ほどご説明した、別々の費用算定で運用してきた点、医療機関がこれまでSMO費用というものを直に取り扱ってきていないことを考えると、今まで主に治験実施の面で協議協力してきたところが、今度は費用をどう分けますかという議論を必ず挟まなければいけない関係になってくるので、これはその協議にかかる工数や、納得感の面など色々な面で相当な障害が生じるのではないかと危惧しており、ここを敢えて混在させる必要はないと考えるのが私どもの意見です。
 次のスライドをお願いします。これまでのお話をまとめます。今、課題感があって様々な医療機関でも言われているポイント算出の限界に関しては、FMVに基づくベンチマーク型コスト算定への移行を検討されることが良いのではないかと思っております。
 一方で、SMO費用については、先ほどから述べさせていただいた通り別として考えていただく。但し、SMO自体が日本特有の存在でもあるため、ここに関しては、国際的な理解が得られるよう、私ども自身も含め、海外に向けて、日本のSMOとはこういうもので、こういう役割を担っているということをしっかりと発信・啓発をしていく必要があると思っております。その上で最終的に世界に通ずる日本ならではの治験費用をという形で進んでいけば良いのではないかと、このような思いで今回の意見を述べさせていただきました。
 次のスライドをお願いします。最後にSMOから意見を申し上げるのは恐縮ですが、臨床研究中核病院について触れております。こちらについては、私どもSMOもここまで様々な経験をさせていただいて、ノウハウや人材を蓄積させております。やはり、SMO勃興当時では、なかなか支援できなかった中核病院で行われるような、かなり高難易度、高度な治験にも対応できるようにもなってきておりますので、繫閑ある治験のボリュームに応じてSMOも活用していただくことで、治験件数やスピードの維持に貢献できると考えております。併せて、現在治験エコシステムの中ではシングルIRB等様々なことが議論されている中で、SMOはセントラルIRBについてもいろいろなノウハウを持っておりますので、ここは是非、私どもの経験や機能を御活用いただきより良い治験実施環境を構築していくことの一助になれればと思って書かせていただきました。
 私からの発表は以上になります。ありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、日本医療機器産業連合会臨床評価委員会副委員長の谷岡委員から、説明をお願いします。
○谷岡委員 ありがとうございます。画面は見えていますでしょうか。
○楠岡部会長 見えています。
○谷岡委員 ありがとうございます。それでは、始めさせていただきます。日本医療機器産業連合会の谷岡と申します。よろしくお願いいたします。本日は、このような機会を頂きましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いします。
 医機連は、医療機器の20数団体の総元締という立場になりますので、医療機器全体に関して、こういう内容でお話をさせていただきたいと思います。その中で、今日は1.の医薬品と医療機器の違いや治験の現状という所を、少し詳しく説明させていただきたいと思います。先生方には釈迦に説法かとも存じますが、御容赦いただきたく存じます。よろしくお願いします。
 まず、医療機器開発の現状です。こちらに、医薬品と医療機器の違いとして医療機器の特徴をまとめています。次のページで、主たる違いについてもう少し御説明させていただきますので細かなところは省略しますが、真ん中の紫の所、医療機器の部分を御覧ください。有体物とSaMDと書かれています。これは、前の薬機法改正でプログラムのみであっても医療機器というものが定義されましたので、例えばAIを用いた画像診断系のプログラムや治療用のアプリなどが開発されてきています。医療機器の中でも有体物とSaMDというもので大きく違いがありますので、このように分けて記載しているところです。
 次に、もう少し違う観点も含めてまとめています。医療機器の特徴と言いますと、まず何と言っても多種多様というのが挙げられます。先ほど有体物とSaMDというお話をしましたけれども、有体物の中でもメス、ピンセットのような鋼製小物からコンタクトレンズ、人工心臓、内視鏡、画像診断システム、そして先ほどのSaMDなど、これ以外にも、ここに数字を挙げているようにたくさんございまして、道具として使用するものから臓器の代替となるものまで本当にいろいろあり、リスクレベルにも大きな違いがございます。実は我々の団体の中でもいろいろ意見交換をする際に、同じ単語を使っていても各社それぞれ異なる物を考えてしまい、まず意識合わせをしないといけないというところもございまして、そこがとても難しいところです。
 ここで、医薬品と医療機器の違いを少しイメージ的に見ていただきたいと思いまして、右上の図を見てください。以前、厚労省とPMDAにおられた俵木様が、医機連の若手人材育成の講演で「みらプロ」というのをやっているのですけれども、そのときに使われたもので、非常に分かりやすいまとめをされていますので使わせていただきました。医薬品は薬理作用がある化学物質、医療機器はデザインされた工業製品だということで、医薬品は研究室から出てくるものですけれども、医療機器は技術の応用によって作り出すものだということになります。
技術の応用ということは、研究・開発の初期から医療現場と企業が密接に関わることになります。それを示しているのが下の図になります。医療現場の要望を企業の技術で物として実現していって、それを改善・改良しながら臨床応用可能なものに作り上げていくという開発のスタイルになります。そして医療機器メーカーのほうで治験をやり、申請をし承認を取っていくという形で、その後も販売後にも情報を収集し、現場でより良いものとなるように改善・改良が繰り返される。こういうPDCAのサイクルが回ることをイメージしていただければと思います。
 何となくイメージしていただけたかと思いますので、左に戻りたいと思います。多種多様の所、診療報酬についてです。医療機器の場合は手術や検査などの技術料に包括されるものもありますし、公定価格として物に価格が設定されるものがあります。そして、この公定価格というのは医薬品のように銘柄別に値段が付けられるわけではなく、機能区分と言いまして類似のグループごとに価格設定がされるシステムになっています。そこが大きく違います。その下のニーズの所ですが、改善・改良を繰り返すというのは先ほど申し上げました。操作者の手技がアウトカムに影響という所ですが、こちらは、医療機器の場合は手術手技を伴ってアウトカムに影響を及ぼすのが多くあります。つまり、医療者へのトレーニングが必要だということになります。それから、装置物などはメンテナンスが絶対に必要ですし、先ほどのSaMDなどでもバージョンがどんどん上がっていきますので、バージョンアップはずっと必要だということになります。あと、企業規模に関して、事業規模もそうですけれども、比較的小さな中小企業が多いことが特徴になります。
 このページは、左に医療機器の開発から販売までのPDCAサイクルですが、医療機器のメーカーが行うアクションについて少し詳しく示しています。先ほどデザインされた工業製品だという言葉がありましたけれども、こんなふうに開発していくと思ってください。開発品特定がされると設計管理というシステムに入りまして、その中でデザインや材料などの設計開発がされ、そして臨床評価を経て承認申請というふうにいきます。ここも市販後を含めてPDCAが回るということになります。
 この各ステップごとの課題等についてどんな状況かということを右に示しています。まず設計開発の緑の所を見ていただきたいのですが、医療機器は、先ほども申し上げましたように企業単独ではなく、特定の医師と共同で開発することが多いです。ですから、開発医師主導でフィージビリティ試験等を行う場合もかなりあります。これは、前のページの図に臨床研究というのが医療機関のほうにあったと思います。それを思い浮かべていただければと思います。それから、治験施設は、こういう状態ですので開発医の所属する医療機関や開発品の分野を得意とする医師、医療機関にお願いすることが多く、比較的小規模な機関も多いです。このことが直接的にどう影響するかというと、治験に慣れていない小規模施設も存在しているということになります。それと、もう1つの課題である個人情報保護という所については今日の最後のほうに少しお話しますが、開発時に画像や検査データを含めて多くの医療情報が必要になる場合がありまして、その場合にこういう課題が出てきているとことになります。
 次に、臨床評価のステップ、青い所ですが、医療機器は実は海外臨床試験や類似製品との比較等による臨床評価が行われます。評価の結果、新たな治験の実施なしで承認申請に至るものが多いです。むしろ治験がないもののほうが多いです。ですから、どういうことが起こるかというと、治験の経験者が少ないことになります。それによる課題としては、企業内にノウハウが溜まりません。医療機器の多様性も手伝いまして、例えば我々のような団体で画一的な手順やガイダンスを作ろうとしても、なかなか難しいというのが現状です。これは開発業務委託先も同じような状況だと聞いたことがあります。そして実際に起こっていることとしては、比較的小規模な企業も多いので、治験が必要となった瞬間に、開発をやめますということが起こることも少なくない状況です。
 今、治験がないことが多いと申し上げましたが、ただ、医療機器の場合でも新医療機器やリスクの高いもの、治療用のプログラム等は治験が必要になってきます。多くの費用を要する治験の実施は、開発費を回収できるかどうかが投資基準の1つですけれども、診療報酬上の評価を含めた価格や事業規模の問題等から、新技術開発への投資が難しい悪循環が実際には発生しています。革新的医療機器の開発だったり、導入のためにも治験環境の改善、効率化等は重要だと私たちも考えていまして、我々としては治験の実態を知るためのアンケート調査などを実施しています。詳細な説明は省略させていただきますが、緑の所に課題につながるものを少し挙げています。治験数は医薬品に比較して少ない。こちらに少し治験届の数も挙げていますが、医薬品と比べると本当に少ないです。また右のほうで円グラフに示していますように、治験費用の内訳としてモニタリングに関係するモニターという所だけを見ても、割合が40%を超えている状況です。
 もう1つ、海外の治験と比較しました。そうすると、開始前の手続やモニタリングの回数が国内は大幅に多いことが分かりました。11.5と2.3、5.3と1.5を比べていただくと本当に違うのが分かります。SDVは、国内治験は全例実施されている状況だということも分かりました。このアンケートから、治験業務の更なる効率化に向けて手続の簡素化やSDVのあり方について、PMDAと協議をしないといけないと考えていまして、更なる推進につなげたいと考えています。
以上の状況を踏まえまして、厚労省からまとめていただいていた今後の方向性という所に沿って、医療機器業界からの意見を述べさせていただきたいと思います。まず、こちらは昨年の10月に厚労省に提出した資料になります。内容については、この後説明させていただくのですが、こちらの背景の所に少し書いていますとおり、医療現場での手続の複雑化や大きな負荷という所を踏まえまして、臨床研究・治験の更なる推進のために将来的に大きな改革が必要ではないかと考え、今年の意見交換会に提出したということになります。
 内容ですが、赤枠の所になります。こちらに「規制をシンプルに」としていますが、これはざっくり申しますと、1つにできないかなということになります。三角で書いているのは、一番左が薬機法、ここが臨床研究関係の臨床研究法、こちらが倫理指針となりますが、3つ山があって全部見ないといけないことになってくるので、これを1つにできないかというのが我々の考えているところです。薬機法上のものとしては、臨床研究関係の法律でできたものをアウトプットして、薬機法のほうへ使わせていただく形になるのかと考えているところです。あくまでもイメージですのでいろいろ課題があると思いますが、例えば治験というのは日本にしかない分類でもありますし、言葉の定義も含めて、国際整合のためにこういう動きも必要なのではないかと考えています。こちらは11月の官民対話という所でも医機連のほうから出させていただきました。こういうふうにできることが実現しましたら、医療現場の負担も減らせて環境を整えることにつながり、新たな医薬品・医療機器への早期アクセスにつながるのではないかと考えています。
 2つ目は、審査委員会の集約と手続の効率化です。真ん中に先ほどのアンケートの結果を少し出していますが、具体的な改善案としては四角の中に書いている手続や審査体制の集約化、シングルIRBの推進など、皆さんがおっしゃっている内容と同じような形になってまいります。先ほどの大きな改革が要るのではないかということもありますけれども、まずは現行の審査体制や手続の簡素化の検討を行うとともに、企業としてはモニタリング関連の再考とPMDAとの協議、関係者の人材育成に取り組む必要があると考えています。
 こちらは、Real World Data(RWD)の利活用ということになります。これについても11月に意見を出させていただいているのですが、意見としては2つの赤枠の所になります。これらについて次のページで説明させていただきますが、医療機器は先ほども申しましたようにPDCAを回していく必要がありますので、研究開発時点から市販後の臨床評価に至るまでRWDは非常に重要なデータであり、積極的に利活用したいという思いです。
 その内容ですが、左側がデータ利活用についてです。赤枠の所に「医療等データ提供に係る本人同意原則の見直し」と書いています。実際、何を言っているかと申しますと、オレンジの括弧の所です。例えば教師データ収集を含むAI機器開発というのは、医療情報を2次利用した臨床研究とみなされ、個人情報保護法や倫理指針の遵守が必要です。これは複数の法令調査が必要ですし、解釈などが非常に難しい状況になっているのが現実です。既に医療情報に関しては、別途、医療情報の2次利用に関するワーキングのほうで御検討いただいているということで承知しています。個人のプライバシー等々の保護は重要ですが、特別法やガイドライン等の制定で、研究開発を進めやすい環境整備を早期にお願いできたらと思っています。
 2つ目は、右側です。こちらは前回の部会で示された図です。こんなふうになっていただきたいと本当に心から思うのですが、赤枠にあるように、これらの中には医療機器の特定可能な情報が入っていないのがほとんどだと認識しています。そこで、製品開発、承認申請、市販後調査への利活用のために、医療機器の特定が可能なデータベースの構築、工夫等を、是非、進めていただきたいと思っています。実際にUDIのデータベースは法規制側の制度部会で検討されていますし、保険関係で特定のコードは業界からも要望しています。こういう形で別目的のデータであってもリンク可能で利活用が可能な状態に、是非、意識的に進めていっていただいて実現できればと強く願う次第です。
 次が中核病院の条件です。まず、中ほどの②と③から説明させてください。右側に背景ということで6ページの図を再掲しています。国際競争力が高くて優れた臨床開発力をということでしたので、我々のほうで考えさせていただいたのが、医療機器に特化した基幹施設の設置と、その施設による他施設の支援等の提案です。多種多様な医療機器でこの特化は非常に難しいと思いますので、例えば医療機器開発を宣言・標榜する形をとっていただいて、この施設で開発推進や開発の支援を行っていただくことができないかというところです。その場合、上に書いていますが、医療機器に特化した項目について評価に組み込んではどうかということです。その評価の項目として4つ書いていますが、臨床研究、医療機器の開発につながる臨床研究、先ほど申しました情報の加工や指導、中央IRBなどのリード、臨床研究の支援、教育セミナーや講演会の実施を責務として評価するとなっています。
 長くなってしまいましたが、今後、我々も医療機器や新たな技術開発を推進していきたいと思っていますし、様々な点について検討していきたいと思っていますので、御指導と御協力をよろしくお願いします。ありがとうございました。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、続きまして、臨床研究中核病院を代表しまして、千葉大学医学部附属病院臨床試験部の花岡教授から参考人として御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○花岡参考人 臨床研究中核病院連携協議会というのがございまして、そこで今回、本研究部会の要請を受けましてアンケートをさせていただきました。その結果について本日は申し述べさせていただきたいと思います。千葉大学の花岡と申します。よろしくお願いいたします。スライドをお願いします。
 本日の内容につきましては、ここに書いてある内容についてアンケートをさせていただいたところです。大きく1つ目が、中核病院の要件見直し、2つ目が将来の方向性についてです。スライドをお願いします。
 まず、この役割をどう考えるかというところですが、数値要件を満たすことに注力せざるを得ない状況が続いているというのが事実です。これは、これから中核になろうとする施設あるいは現在の施設共に、それを大事にせざるを得ないという状況についてはちょっとおかしいのではないか。KPIについては数年単位で長期的な取組を評価していただくことが必要ではないかと考えています。また、人員要件に関しても設定されていますが、臨床研究中核病院としては様々な他の医療機関を支援するような体制ができる、そういう支援体制の中核病院として、人員要件についても考えていただく必要があると考えたところです。スライドをお願いします。
 もう1点、この取組についてですが、基本的な機能については当然一定の承認条件を満たすべきです。ですから、その上に各施設が特徴、強みを一層発展させて日本の研究全体の底上げができるように、そういうことを目指す必要があると考えているところです。御承知のように臨床研究中核病院が承認されまして9年たっています。その間、方向性については今回、このように見直しということで、その中で臨床研究中核病院はいろいろありますけれども、それぞれの強みをいかした形の中でビジョン、ミッションをはっきりさせた上で、それを共有しながら変えていく必要があると考えたところです。是非、その協議においては私たちも一緒にさせていただきたいと考えているところです。スライドをお願いします。
 論点1、臨床研究中核病院の特色化をどうするかということですが、特色化に当たってはそれぞれの役割の強化、それに伴う人員の配置をしていく必要があり、これについての評価をしていただけると有り難いと考えているところです。それぞれ臨床研究中核病院は強みがございますが、そこの中で棲み分けも必要ですし役割分担が必要です。そして他の機関への支援体制についても十分強化していく必要がある。一方で、この評価については先ほども出ていましたが、非常にシンプルにしていただいたほうが、よろしいのではないかと思っているところです。そこを逆にいろいろな形で、これを推進するための支援について是非していただきたい。特に財源については、現在、多くはAMEDの研究費の個別の研究についてその業務の一部を請負い財源とするとか、いろいろなことの中で財源を集めてやっているかと思いますが、そういうところについても臨床研究中核病院だけでなく、臨床研究全体への支援を強化していただきたいと思っているところです。
 次に、論点2です。国際競争力が高く、優れた臨床開発能力を担うことについて、これに関しては臨床研究中核病院それぞれ、これを当然の役割ということを認識しているところです。また、そこの中でどのような形で能力を発揮するかについては、それぞれ強みが違うので、そこについては目線合わせが必要ではないかと考えています。また、その中でグローバルに先駆けた本邦でのFIH試験実施体制、あるいは臨床開発のゴールである薬事承認取得、こういうところも非常に重要な評価指標と考えています。そのため体制整備が必要と思っているところです。スライドをお願いします。
 論点3、特定領域に係る臨床研究中核病院の役割・機能についてです。これに関しては、この領域のそれぞれの機関についてハブとしての期待と、一方で懸念もあるということです。我が国には国立研究センター病院が領域別にございます。そこについては国として既に様々な取組をされていると思いますので、是非、そこの機能を十分に発揮していただき、そこの中でハブ、ネットワーク、データベース、それぞれについての役割を担っていただきたい。ただ、臨床研究中核病院の上にわざわざ位置付ける必要はないのかなと思います。むしろ今の体制を強化していただいて、一緒にやる体制、中核病院とのネットワークを作っていただくほうが、よろしいのではないかという意見が多かったところです。次のスライドをお願いします。
 その他の意見ですが、要件というよりは拡充を目指した適正な評価を実施していただきたいという意見が多かったところです。「数」ではなく「質」ということ。KPIについても少し幅を持った評価をしていただきたいということでした。あと、評価に当たってDCTなど、まだ評価基準が決まっていないことに関しては、慎重に考えていただきたいということです。そして、CRC、Study ManagerやDMなどの専門人材の流出という課題があります。これについては後でキャリアパスの所で申し述べますが、これについては対応が必要だと考えています。医療機関は、大学も同様に赤字の状況の中で研究に対して大きく投資することは非常に厳しい状況です。これについて診療報酬の中でインセンティブを付けていただくことも御検討いただきたいという要望です。
 次は、臨床研究・治験推進に係る今後の方向性についてです。まず、論点1で国際競争力の強化についてですが、治験に関して、ドラッグロスや国内創薬力の低下については、アカデミアとしても、是非、貢献させていただきたいところです。特に創薬力強化とP1の早期試験を実施する。こういうところも必要と認識しているところです。そして、アカデミアで開発していくに当たっては、治験薬の開発製造に関する支援が必要です。こういうところについても組織、会社が必要になってくると思っていますので、是非、そういうところの支援体制も作っていただけると有り難いところです。未承認・適応外の臨床研究に関しては、特定臨床研究と同等に評価療養等になることが望ましいという意見が結構ございまして、特定臨床研究と先進医療の両方へ出すことについては、結構、手続が煩雑ということで非常に時間が掛かる。あるいは、国際共同試験でGCP化してくる試験についても、我が国においては特定臨床研究と法律が違うということ。これについても差をどうするかという課題がございまして、こういうところも規制などを改正する必要があると考えています。あと、ドラッグロスを解決するための窓口の設置は非常に重要と思っています。海外との国際臨床研究の窓口は、いわゆるワンストップ窓口以外のところに関して多くの国立大学、臨床研究中核病院が、これに対して推進していこうということでトライしているところですが、是非、こういう機関についての支援いただきたいということです。
 論点2、症例集積性の向上についてです。症例集積性の向上については、20年来言われてきたことで一概に解決することではないと理解します。ただ、一方で我が国の医療環境はどこも非常にハイレベルということですので、どうやって地域の患者さんを集約し、一緒になって患者さんを治験に入れるかを、このDx、DCTを含めて発展する中で考えて方策を作っていく必要があると考えています。そして、集約にあたっては規制との調和も必要だと考えています。幾つか地域での患者さんの紹介システムや疾患レジストリなどの取組をしている施設もありますが、こういう取組、あるいはWebのオンライン診療を用いたDCTのシステム等についても、これから取り入れていく必要があると考えているところです。スライドをお願いします。
 論点3、臨床研究・治験の手続の効率化に関してです。昨今、シングルIRBの議論が進んでいるところです。これについては是非進めていただきたいと考えています。ただ、一方でシングルIRBを保持するに当たっての手続の簡素化、効率化についても必須だと考えているところです。治験の管理システムの導入、電子申請や文書の授受などが、現在、かなり可能になっていまして、申請に当たっては依頼者、医療機関を訪問せずに書類を提出することもできますし、IRBの承認も可能となっています。また、オンラインでのモニタリングも実施可能です。こういうのが各医療機関に備えられていますが、一方でシングルIRBになった場合、医療機関が各施設のシングルIRBの施設にアクセスするとなると大幅なシステムの見直し等も必要になってきます。これについてはどのような形でやっていくか、いろいろな立場での検討が必要と考えているところです。その他、文書作成については、是非、現在検討されているAIを用いた文書作成支援システム等の導入を期待しているところです。次、お願いします。
 論点4、コストの透明化です。治験において特に国際競争力評価という中、日本での治験のコストが高いのは有利な点ではありませんので、是非フェアマーケットバリューの導入を関係者を含めて全員で合意していただきたいと思います。そこの中でSMO賃金についても妥当なものを設定していただくことが必要と考えているところです。また、全ての研究においてマイルストーンに合わせた費用について適正な設定をしていただきたい。最近、企業による臨床研究法下の研究、あるいは市販後の観察研究等がございますが、これについては、とてもフェアマーケットバリューとは言えないようなコストの算定で、医療機関に来ているところです。これについても適切なコスト計算をしていただきたいというのが私たちの要望です。
 論点5、人材の育成・インセンティブです。研究医あるいは研究支援者の育成等については、臨床研究中核病院のみならず全国の医療機関あるいは大学にとって必須なことで、様々な取組を実際に実施しています。そこの中で良くなっていくために、一方で働き方改革の中で研究時間を割けないことが問題になっている点があります。こういう様々な問題を解決する必要があると考えているところです。また、支援者に対しては必要となるいろいろな機会、特に厚労省の事業の中で研究を支援するスタッフを対象とした研修が可能になっていて様々な選択肢があることは非常にすばらしいことですが、一方で、そういうことについては個人の自己研鑽というところも多く求められていて、それについても評価をしていくようなインセンティブを確保する方法を考えていく必要があると考えているところです。次のスライドをお願いします。
 そのほか、支援人材の評価に対しては最近の資格の認定についても、是非、各施設で能力、業績に基づく評価を実施していく必要があると思います。AMED国際交流の予算で海外の研究機関への研究者、研究支援者を派遣する事業が、今年度スタートしました。これは非常に貴重な事業となっています。是非、これを継続していただきたいと思っています。そして、キャリアパスにつながるようなシステムが必要です。それによって人材の流出ではなくて交流ができると思っていますので、そういうような仕組みが、これは各機関の努力が必要ですけれども、是非、サポートいただきたいところです。スライドをお願いします。
 最後、これは国立がん研究センター東病院の取組のポンチ絵です。NCC発Medtechベンチャーの躍進ということです。なぜこれを出したかと言うと、臨床研究中核病院という機関に認定いただいていることによって、ほかの事業を含めて相乗効果があると私は考えています。それによっていろいろな所との連携もできますし、それによって世界へのいろいろな新しい情報の発進もできると思っているところです。臨床研究中核病院は単に1つの医療法上の認定というだけでなく、それをベースにして、多方面に活動を広げることによって臨床研究中核病院としての役割が大きくなってきますし、それによって日本全体の研究の底上げになってくると思っています。今、我が国ではワクチンの開発事業あるいは再生医療製品の開発事業など様々な取組がございます。そういうところも、この臨床研究中核病院が一緒になってやることによって更に発展していく。その中で研究医の育成や支援者の育成もできると思っているところです。今後の国際化、創薬においてもこの臨床研究中核病院の役割が重要で、そういう面での評価あるいは支援を、是非、お願いしたいところです。以上です。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。それでは、最後に、浜松医科大学理事・副学長の渡邉参考人からの御説明をお願いいたします。
○渡邉参考人 本日はこのような機会を頂きありがとうございます。浜松医科大学の渡邉です。
 次のスライドをお願いします。本日、我が国の創薬力向上を目指して、非臨床研究中核病院の立場から、ここに挙げましたFIH試験実施体制の整備とシングルIRBの原則化・DCTの推進、ドラッグロスへの対応、臨床研究中核病院の意義について私の意見を述べさせていただきます。
 次のスライドをお願いします。臨床研究中核病院でのFirst-in-Human試験の体制については、臨床研究中核病院が、我が国における国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う拠点であることから、承認要件として規定されている事項の他に、以下の事項についても真摯な取組みを求めるとされ、First-in-Human試験が実施できる体制を確保することと示されています。
 次のスライドをお願いします。このような求めに応じて、左に示したようなP1施設、これはきれいな写真が載っていたので、北海道大学病院の臨床研究開発センターのホームページから引用させていただきましたが、臨床研究中核病院にはFirst-in-Human試験が可能なPhase1施設が整備されています。このこと自体はシーズを有するアカデミア内に整備されるという意義は非常に大きいと考えています。
 次のスライドをお願いします。これは各治験Phaseに必要なリソースを示したものです。治験には、臨床薬理試験、探索的試験、検証試験、それぞれPhase1、Phase2、Phase3がありますが、First-in-Human試験はこのP1試験に入るわけで、P1試験では場合によってはProof of Concept(POC)を得ていく場合もあります。研究資金については、Phase1からPhase3に進むにしたがって、サンプルサイズも大きくなるために、それだけ大きな資金が必要となる。そしてそこに係る人材としては、臨床薬理の先生方は、どちらかといえば早期探索的なところに関わりが深く、また生物統計家の先生方は、サンプルサイズが大きい試験でより積極的なコミットメントが必要になります。また薬事やプロジェクトマネージメントの方々は、最初から最後まで伴走をすることが必要になります。
 スライドをお願いします。今申しましたように、被験者数や費用を考えると、早期探索的試験から後期検証的試験に移るにしたがって、どんどん被検者数あるいは費用が大きくなって来ますが、右側に示した知財の点では、早期探索の部分に知財が存在すると言われています。ですから、なるべく早く、この早期探索的な試験の段階で多くの知財を確保することが非常に重要になります。
 スライドをお願いします。アカデミアや企業発のシーズを早期探索的試験、First-in-Human試験を通じて、後期相につないでいく、これは非常に重要な行いでして、この上流部分が枯れるとなかなか下流の部分にしっかりした流れが行かないということも考えられます。この流れを枯らさないためにも、日本が持つ医療環境の特徴を是非最大限活用したFirst-in-Human試験の体制を整備することが重要だと思います。付加価値の高いFIH試験が可能になるように整備をすることも重要です。この付加価値の高いという点に関しては、日本は新薬開発力を持つ企業が存在します。また、質の高い治験を実施する能力にも優れていると思います。PETやMRIなどの画像イメージング技術も優れたものがあり、さらにナノバイオロジーやiPS関連のバイオテクノロジーも進んでいます。各臨床研究中核病院にPhase1施設が整っているわけですけれども、同じようなPhase1施設ではなくて、先ほど花岡先生もおっしゃいましたけれども、それぞれの機関の特徴をいかした、具体的にはがん、神経、小児、感染症あるいは医療機器といった領域、あるいはPETなどの設備のアドバンテージをいかすような、FIH試験の体制整備というのが必要になるのではないかと思います。その際、参考になる施設を1か所紹介させていただきます。
 次のスライドをお願いします。これはオランダのライデンにあるセンターフォーヒューマンドラッグリサーチ(CHDR)という施設でして、ライデン大学に近接した所に存在する私的な早期探索的臨床試験実施施設です。ライデン大学の臨床薬理の現役教授が設立したプライベートの施設ですけれども、右側の写真にあるようにとてもきれいな施設となっています。そこはアーリーステージのクリニカルドラッグリサーチ、早期探索的な臨床試験医薬品開発に特化した施設です。特にここは神経系の医薬品開発に優れてる施設です。
 次のスライドをお願いします。整った設備ときれいな内部ですけれども、お示しした文章の赤線を引いた所には、アーリーフェイズの医薬品開発に的を絞って、できるだけ多くの情報をそこの部分で得るということが非常に重要であると述べています。
 スライドをお願いします。ここに示してありますとおり、最先端の設備に、イノベーティブな方法を組み合わせて、クライアントの成功確率を最大化することがミッションとうたっています。例えば、左側の写真では運転能力に候補医薬品がどのような影響を与えるかなど、さまざまな観点から神経系に関する情報を得るわけです。さらに新たなバイオマーカーを探索したり、中枢神経薬を開発する場合には必要ならば脊髄液を収集して、その薬に関するPK、PDデータを出来る限り収集する先進的な試みを行っています。このように特徴を持ったFIH試験体制の整備が日本でも求められると思います。
 スライドをお願いします。次にシングルIRBの原則化、続いてDCTの推進について述べさせていただきます。スライドをお願いします。シングルIRBを利用した場合のメリット、デメリットを示しましたが、実はこのスライドはもう十数年以上前、厚生労働省班研究の景山班に参加した当時、治験でシングルIRBを取り入れたときに作成したスライドです。その当時に議論は尽くしたと思っておりましたが、シングルIRBを使用したときのメリットとしては、薬事・臨床薬理・生物統計家など専門家の参加による質の高い審査が実現すること。現状の各施設でのIRB開催に伴う資源の節約につながり、何よりも依頼者の業務軽減にもつながるということが挙げられました。このことは今後、海外からの治験を呼び込む際にもハードルを低くすることにつながると思います。また、デメリットに関しては、シングルIRBでは各施設独自の考え方を表せないこと。あるいは各施設の審査レベルの向上を図れないこと。これはIRBでの審査自体が教育的意義を持つという観点からのものであり、同じように治験担当医に対する教育の場が失われること。またシングルIRBがそれぞれ各施設の適格性を判断することは困難であること。場合によってはアメリカでその当時問題になりましたけれども、すぐ承認が出るようなIRBに審査を依頼する所謂IRBショッピングの危惧があるということも指摘されました。ただ、今の日本の現状を考えると、実際には各施設での審査の質は様々であり、また各施設で倫理審査のために投入をされている膨大なリソースを考えると、この機会に審査内容の充実をシングルIRBで図り、業務の適正な遂行を行い、そのことが人的資源の有効活用につながるならば、シングルIRBを積極的に取り入れていくことが求められるのではないかと思います。
 続いて、次のスライドをお願いします。DCTを実施する体制整備のメリットについては、遠隔地や移動困難な患者さん、来院困難な疾患における臨床試験参加機会の拡大を促し、また日常生活時のリアルデータを収集することになりますので、実態に即した臨床評価が可能となり、試験の外的妥当性が向上し、治療の実用性が高まることが期待されます。また、近年グローバル企業は、国際共同試験のプロトコルで、DCTを組み込むケースが増えていると言われています。そういう場合には日本がDCTに対応できる体制を整備することが必要になると思いますし、参加機会を確保することが重要です。
 一方で、DCTは臨床試験を実施する手段の1つであるという認識を持つことも重要だと思います。医療アクセスのよい日本と海外では、DCTの必要性が異なり、また、DCTが適する試験であるかの検討も必要です。臨床試験を実施する上でDCTが真に効果的であるかどうかの吟味も必要であり、何よりDCTを本格的に導入するには電子カルテの標準化、遠隔診療の法的規制整備、またデジタルデバイスの普及など、医療DXの推進が前提となります。またDCTで得られたデータの品質の確保、遠隔モニタリングで医師の直接診療が減る場合などで、AEの発見が遅れるといったようなことがないような、そういう体制も必要だと思います。
 続いて、ドラッグロスへの対応に移りたいと思います。これは皆さんよく見るスライドだと思いますが、全世界で2020年の時点で246の承認品目があった中で、日本では176品目、72%が未承認であるという実態が報告されています。
 次のスライドをお願いします。以前はドラッグラグということが問題になりましたが、現在ではドラッグロスが問題となっており、その原因は様々言われています。ます、日本のマーケットとしての魅力が低下し、日本への投資優先度が低下していることは非常に大きな要因だと思います。同時に世界的に新薬開発はベンチャー企業によるものが多くなっていて、ベンチャー企業による医薬品開発が先行し、それらの企業はある程度進んだ段階で大手製薬企業にバトンタッチをする結果、日本はもうその時点では国際試験には出遅れていて、最終的には日本では治験が実施されないJapan Passingという事態が起きて、ドラッグロスが拡大していると考えられます。
 次のスライドをお願いします。このドラッグロスへの対応として、そのような日本への導入が期待される医薬品を有する製薬企業に対して、承認申請で優遇措置を取ったり、あるいは薬価でインセンティブを付ける方法もあると思いますが、そうやっても製薬企業が実施しないのならば、その引き受け手は日本での医師主導治験になると思います。医師主導治験を行う場合には、多くの場合、AMEDが研究費を負担する。そうなるとその費用は国費ということになります。国費を投入して最終的に承認を得る。そうするとその国費が使われる分だけ国の財源は減る。その上、承認された薬が海外企業の薬ならば、使用されるだけ輸入超過が増えるのみで、どんどん負のスパイラルに入ってしまうのではないかということが危惧されます。また、そういう状況が続けば、むしろ日本ではそういう優遇措置を取ってくれたり、あるいは最終的には、日本の中の医師が自発的に治験を行って、製薬企業が汗をかかなくても日本の中に薬を導入できるという認識が広がり、益々ドラッグロスが拡大してしまうのではないかということも危惧されます。そうなると対象とする疾患の重篤性や代替の可能性を考慮して、優先順位を付けて個々に対応せざるを得ないのではないのでしょうか。
 スライドをお願いします。最終的な解決策は、我が国で、医薬品や医療機器の臨床POCを迅速に取得し得る環境づくりを率先して進めるべきで、さらにPOCを取得した製品の海外展開を積極的にサポートする体制を構築して、これまで日本がなかなか行い得なかった、世界の患者さんの医療に日本の医薬品や医療機器、医療技術が貢献するということを実現していかなければいけないと思います。日本の医薬品・医療機器開発力を強化していくことが、最終的にはこのドラッグロスの対応につながるのではないでしょうか。また、国際共同試験に積極的に参加するためには、国際的に認知されるキーオピニンオンリーダーを育て、研究者間でのネットワークを太くしていくことも求められると思います。
 スライドをお願いします。最後に、臨床研究中核病院の意義について考えさせていただきます。臨床研究中核病院の承認要件は、私たち非臨床研究中核病院からするととても高いハードルで、臨床研究中核病院に手を挙げることはさらに難しくなったと思います。一方、私たちが臨床研究中核病院はすばらしいと思っている点は、日本発の革新的医薬品・医療機器等の開発を推進するため、国際水準の臨床研究等の中心的な役割を担う病院が「臨床研究中核病院」として医療法上に位置付けられていることです。
もちろんそれまでにも病院の医師あるいは医療者のmissionとして、日常診療ばかりでなく、臨床研究を通じた新しい医療の創出もあったとは思いますけれども、多くの場合には日常診療にかなりのエフォートが割かれてきました。このような状況の中で、臨床研究を通じて新たな医療をつくることも病院のmissionだということが明確に示された、その意義が非常に大きくて、その影響は、私たち非臨床研究中核病院にも浸透していると考えます。
 次のスライドをお願いします。この臨床研究中核病院の位置づけは、私たちのmissionの中に、日常診療とともに臨床研究があるということを強く訴えかけていると思います。臨床研究の倫理原則であるベルモントレポートでは、ジャスティスという項目で、臨床研究のベネフィットとリスクの公平・公正な分配を謳っています。私たちは日常、医薬品を使用し、その恩恵を享受していますが、その医薬品の多くは海外から輸入したものです。ベネフィットとリスクの公平・公正な分配の原則に照らせば、今こそ私たちは自らの手で医薬品あるいは医療機器を開発し、世界の患者さんの医療に貢献する、そういうことを実現していかなければいけないと考えています。私の発表は以上です。御清聴ありがとうございました。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。ただいま4人の参考人の方からいろいろ御説明いただきましたが、これに関して御質問、コメントがありましたら御発言をお願いいたします。花井委員どうぞ。
○花井委員 いろいろ教えていただいてありがとうございます。ちょっと教えていただきたいこと、御意見を伺いたいことがあります。まず、坂﨑参考人がSMOの紹介をしていただいて、非常によく分かりました。結局、国際化した以降に日本の治験関係の脆弱性をサポートするということで生み出されたという、歴史的背景は非常に参考になりました。
 私ども、お金の流れはよく分かったのですが、治験の場合は企業がスポンサーだから、そこからお金が配分されて、病院と直接やるという形になっていて、実務上はよく分かるのですが、結局のところ、CRO、共同研究医療機関、SMO、あるいは現場の医師など、それぞれ全体の臨床研究をするに当たって、作業タスクを結局分配しているという構造になっていると思うのです。そうしますと、治験の場合は企業が入るのですが、これが臨床研究の場合に、CROさん、SMOさんの各協力医療機関、主任研究代表者です。そうすると、プロトコルがあって、それを執行するために無限のタスクがあるわけです。それを誰がやるかという分配の問題でしかないと思うのですが、その辺のガバナンス的なコントロールはどうなっているのということを1つ教えていただきたいと思います。
 それから、渡邉先生に伺いたいのは、先ほどオランダの民間の施設のお話をしていただいたのですが、今日のいろいろなお話の中で、要は、日本のいわゆる急性期医療機関も兼ねている日本の病院、研究機関が、現場のリソースが非常に少ないというところが最大の問題になっていると思うのですが、アメリカなどは、NIHに研究病床があると聞いています。ただ、ヨーロッパなどはそういう臨床研究をするリソースというのは、日本と比べてどうなのか御存じだったら教えてほしいというのが、渡邉先生に対する質問です。
 それから、臨床研究中核病院としてお話いただいたのですが、林立していて、結局体力のないAROが林立しているというお話があったと思いますが、それについて、もしこのくらいの数に絞ればというようなお考えなどがあれば。また絞ったらというのは変ですが、やはり、質を高めるとある程度、資源、リソースを集約するという考え方になる。全体を増やすというのが最大いいのですが、現状からすると、その辺のお考えがあれば是非教えていただきたいと思いました。以上です。
○楠岡部会長 まず坂﨑参考人からお願いします。
○坂﨑参考人 御質問は臨床研究における役割についてですか。
○花井委員 私どもは、SMOさん、CROさんと仕事をしているのですが、このトップマネジメントからして、誰が何をやっているというところが、きちんと配分されていなくて、各契約書があるから、その契約書に基づいて、CROさんとか、これは私の仕事ではありませんよとか出てくるわけです。そうすると、このトップマネジメントの中で、結局は座組があって、タスク配分している話だから、お金の流れだけではなくて、指令系統というのは、SMOさんは病院と契約しているとはいえ、この共同研究の中で、多分、指令塔のCROさんが中心になるようですが、何か研究代表者が指令塔でもありという感じになっていると思うのですが、その辺のところはどのように動いているのですか。
○坂﨑参考人 まず私どもSMOは、医療機関さんと契約をさせていただく際、業務項目の明示をして、派遣ではなく委受託で業務を請負っており、そこには対価も明記しております。臨床研究の場合は、中央の臨床研究事務局があったり、治験とは座組も業務内容も違うこと、GCPではなく臨床研究法に準拠した形で業務支援するものもありますが、基本的には実施医療機関で行われる被験者対応や、それに伴う症例報告書に関するデータ入力などを中心に行っています。
 ただ、臨床研究の場合は、CROが担われていることもあるため、私は余りこの実務面には明るくないのですが、それぞれ役割を分けて行われているとは思っていますので、役割のお見合いが起こっているのだとするとタスク分担の面で少し抜け漏れてしまったことが原因になっているのではないかと思います。
○花井委員 最初の契約段階できちんと決まっていないと。つまり、現場の先生は、「えっ、何でこれやってくれないの」みたいな話が出てきたときに、「いやいや、これはもう普通は入っていませんから」みたいなことが起きるのではないかという。
○坂﨑参考人 そうですね。恐らく最初にその臨床研究をこの役割分担の取り決めが重要になってくるのかと思います。
○花井委員 ありがとうございます。おおむねはうまくいっていると理解していいですか。
○坂﨑参考人 はい。
○楠岡部会長 渡邉参考人、お願いします。
○渡邉参考人 花井先生、御質問ありがとうございました。リソースに関してだと思います。花井先生はよく御存じのとおり、アメリカはNIHで、クリニカルトライアルに特化しているような病院があります。また、もう何年も前ですが、シンシナティ小児病院に行ったときにも、その時点では500床ぐらいの病院だったと思いますが、600人以上のCRCがそこに配置されていました。そのような人員を雇用可能な臨床研究資金が投下されて回転している。恐らく、臨床研究自体がそういう回転が可能な利益をもたらす仕組みになっているのだと思いました。
 ヨーロッパでも、アメリカほどではないかもしれませんが、少なくとも臨床試験の意義や重要性に関して医療者の人たちは認識して、臨床試験が大事なものであり、やらなければいけないものであるという認識は浸透していると思いますし、リソースも日本よりも充実していると考えます。
○花井委員 もう1つは、花岡参考人のお話です。
○楠岡部会長 ちょっとお答えしにくい所があるかもしれませんが、よろしくお願いします。
○花岡参考人 今回の臨床研究中核病院の協議会として、千葉大学は参加させていただいておりますので、全施設を代表して、数が減らされていいとは言いにくい立場です。ただ、やはり、臨床研究中核病院は何を求めているかという方向性をはっきりさせた上での数の設定だと思います。私の個人的考えでは、AROというのは、いわゆるアメリカのコーディネートセンターであって、アメリカでは機能をコーディネートセンターとトランスレーショナルセンターを分けて考えているのです。両方の機能について、日本では橋渡し研究機関と、臨床研究中核病院ということでスタートしたのですが、今はかなり相まっているところもありまして、そこはどう考えていくかということも、医療法での臨床研究中核病院の位置づけや橋渡し期間の設定などもあり難しいところかと思っています。
 その中で、コーディネートセンターとしての役割を持っているような、日本でそういう施設が幾つ必要かということは議論すべきですし、それと、橋渡し研究との差をどう考えるか。そこはそこで別の認定が必要なのか、もちろん文科省のほうで認定していただいていますが、そういうことも含めた上での制度設計が必要だと思っております。今、何となく両方のことをやりながら、千葉大学は片方しか認定されていませんが、やはり、両方のことをやりながらやっていくということで、そこは数の設定は非常に難しいかと思っています。ただ全体としては、多分、今の認定された施設の数で十分なのかなというのが正直な印象です。
○花井委員 ありがとうございます。よく分かりました。変な聞き方をしてごめんなさい。要するに、決定的にシーンが足りないということだと理解しました。
○楠岡部会長 それでは、次に山口委員から、その後、近藤委員、藤原委員の順でお願いします。山口委員、どうぞ。
○山口委員 ありがとうございます。3点質問があります。まず、医療機器の特徴や治験に関する課題ということはよく理解できたのですが、例えば、必要なのに開発できていない医療機器が現状としてあるのかどうかということをお聞きしたいのが、谷岡委員への質問です。
 続けて、花岡参考人にお尋ねしたいと思います。数値要件を満たすことに注力していて、数値よりも、やはり強みをいかすという、質を指標にというお話があったかと思います。いろいろアンケートが行われた中で、評価の在り方で、質を指標にした場合の評価というのは、結構難しいと思うのですが、こういった評価の在り方があるのだということがアンケートの中で具体的に出てきたものがあれば御紹介いただきたいと思いました。
 3点目が、渡邉参考人にですが、First-in-Human の所で、付加価値の高いFirst-in-Human 実施のことについては、具体的な提案をしてくださったのですが、日本が持つ医療機関の特徴を最大限活用するという御意見は、具体的に言うとどういうことを指しているのかということを教えていただきたいと思います。以上です。
○楠岡部会長 それでは、谷岡委員、お願いいたします。
○谷岡委員 山口委員、御質問ありがとうございます。必要なのに開発されていない機器があるのかという御質問ですが、ニーズの高い医療機器の制度があります。そこにはニーズが高いのに、日本には入ってきていないというものを、厚労省のほうでも指定をして推進していくというもので、細かく全部データは見ていないのですが、そのニーズ品として、私の知っている範囲では、平成24年にニーズ品として認められたものが、現状としてまだ取られていないというのはあります。
 導入が難しい理由は、非常に事業として成り立ちにくい製品だということで実現していないと聞いております。あとはニーズ品ではないのですが、やはり、先ほど渡邉先生が出していただいたようなドラッグロスのようなものが、やはりデバイスロスとしてはありまして、日本は魅力が少なくなってしまった市場になっているのは、外資のグローバル企業の方からもよく聞くお話です。新しいものができても、日本では価格もつかないということで、対象にならないということを聞いたことはあります。すみません、お答えになっていますか。
○山口委員 ありがとうございます。具体的なことは分かりました。
○楠岡部会長 花岡参考人、お願いします。
○花岡参考人 少し先ほども申し上げましたが、御質問いただいたどういう評価かが適切かということについては基本的な項目を達成させていただいた上で、それぞれの特徴については、例えば、First-in-Human の成績、実施について評価していただく、国際的な臨床試験の実施について評価していただく、薬事承認について評価していただく、トップ10%論文についての数で評価していただくという、これをポイント制にしてはどうかという提案もあります。ただ、それらについては、具体的にどれを幾つにしたらいいかというのは非常に議論が難しいところですので、山口先生がおっしゃるとおり、機関のそれぞれの特徴を認定の要件にするには難しいと認識しておりまして、そういう意味で、臨床研究中核病院の中でもどうしたらいいかという、なかなか意見がまとまらない状況です。本当にこれについては、指標が大事というのはみんな分かっていますが、どう評価すべきかというのは単純ではないということで、是非、先生方にもいろいろお知恵を絞っていただいてご提案いただけると、私としてはうれしいと思っているところです。
○山口委員 ということは、同じ項目で数を求めるということではなく、いろいろな項目がある中で、うちはこれが強みですという所をポイント制にされるということですね。
○花岡参考人 基本的なところは、やはり要件を満たす必要はあると思いますが、その上乗せのところをどうするかということについて、それは今後の臨床研究中核病院の在り方も含めて、そこのところについて評価するところを上乗せして評価するともっと厳しい臨床研究中核病院の要件になってしまうかもしれません。しかし、そうではなくて、そこについては是非各機関について頑張ってほしいということでインスパイアするような評価システムにしてほしいということです。
○山口委員 分かりました。ありがとうございます。
○楠岡部会長 渡邉参考人、お願いします。
○渡邉参考人 御質問ありがとうございます。日本が持つ医療環境の特徴という御質問だったと思います。先ほども申し上げましたが、日本は新薬開発力を持つ企業がまだ国内に存在すること、また、そういう企業が持っているシーズが日本の中にはまだ潜在しているのではないかと思います。
 また、日本で行われる試験は、信頼性が高いデータを提供し、質の高い治験を実施しうるということです。
 さらに、日本の中にはPETやMRIなどの設備を備えた機関がたくさんありますので、そういうイメージング技術、設備の優越性も日本は有しています。ですから、Phase1の段階で、単なるPK試験ではなくて、できるだけ多くの情報をその時点で入手することが可能な環境にあると思うのです。そういう付加価値の高い試験を実施していただきたいということを申し上げました。
○山口委員 ありがとうございました。
○楠岡部会長 それでは、近藤委員、お願いします。
○近藤委員 ありがとうございます。近藤です。私もお三方に教えていただきたい点と、コメントも含めてですが、まず、1点目は、坂﨑参考人にです。まずコメントからですが、6ページに「治験期間の短縮にも寄与したと考えられる」というスライドがあったかと思います。こちらのスライドは製薬協のデータを御活用いただきありがとうございます。ただ、こちらは誤解されないようにコメントさせていただきたいのですが、SMOの関与なし、ありで直接同じ試験を比較しているというものではなくて、全く違う試験ですので、SMO関与なし、ありの比較したものではないということだけは御理解いただきたいと思います。
 もう一点は、今回、坂﨑参考人から御発表いただいた内容については、特に費用を中心に御発表いただいたかと思います。こちらに関しては、産官学の意見交換会で十分に議論いただけると認識しておりますので、是非、そちらのほうで深い議論を進めていただければと考えております。
 そこを踏まえて質問ですが、今回は費用について中心に御発表いただきましたが、そのほかに臨床研究治験推進に係る方向性について、こういうことをやったらいいのではないかという御提案があればお聞きしたいというのが質問です。
 次に、谷岡委員に教えていただきたいのですが、医療機器と医薬品の開発が違うということは非常によく分かったのですが、その中でも、医薬品の開発のメンバーや担当者と共同していろいろなことを改善できるような取組があるのではないかと、お聞きしていて感じたのです。例えば、リスクベースの考え方や審査体制を簡略化するなど、そういうところは一緒になっていろいろなことが改善できるのではないかと感じておりますが、その点についてコメントを頂ければと存じます。
 最後に、花岡先生にお聞きしたいのですが、スライドの12枚目で、企業による臨床研究で適正な費用を支払っていないというケースが挙げられていたかと思いますが、それはやはり好ましくないことだと個人的には考えておりまして、どのような形で算出してこういう問題が生じているのかというのを、もし御存じでしたら、是非もう少し詳しく教えていただければと存じます。以上です。
○楠岡部会長 坂﨑参考人、お願いします。
○坂﨑参考人 表の解釈の所についてコメントをいただきましてありがとうございます。いただいたコメントに対する質問になり申し訳ないのですが、因みにこの表はどういった形で解釈するものとして作成されたものでしょうか。私どもとしては同じ試験同志の比較でないことは、重々承知しているのですが、SMOの関与あり、なしで左右で比較する形のものと解釈しておりました。これがどういったものを指したものか、もしよろしければ持ち帰って共有を図りたいと思いますので、ご教示お願いいたします。
○近藤委員 ありがとうございます。こちらはただ単に、今の日本の現状がこういう状況にあるという形で示させていただいたデータになります。
○坂﨑参考人 承知しました。私どもも見たまま感じた解釈をして、このように考察を申し述べさせていただきました。
質問いただいた、今回取り上げた費用の部分以外の所についてですが、私どもSMOは勃興から今日に至るまで、治験に関する困り事を解決しながら、医療機関の治験実施を円滑にするための支援を行うことで、この国の医薬品開発の一助となるべく一生懸命やってきましたので、現状、治験を実施される医療機関が求めるニーズと同じ目線で考えております。その中では今、治験エコシステムで言われているような、シングルIRBを推進していくための課題やSMOとして何が出来るのかなどの議論や検討は協会の中、また各会員企業でも行われているところです。
 また、製薬協、日本CRO協会、日本SMO協会の3団体で定期的に情報交換や、これからどういったものに取り組んでいくのかなど、オープンな場で今回の論点の様なテーマを設けて意見交換を行い、学会や共同セミナー等で発表する等も行っております。この場で具体的なものはお示しできず申し訳ないのですが、よろしいでしょうか。
○近藤委員 ありがとうございます。
○楠岡部会長 谷岡委員、お願いします。
○谷岡委員 製薬様と一緒になって改善できることはないかという御質問、ありがとうございます。違う所ばかりを強調して説明してしまいましたので、違う違うと言ってしまったのですが、異なる所も多いですけれども、もちろん共通して考えるところというのは多くあると思いますし、やはり医療機器は医薬品の制度にならってきているところはありますので、いろいろ教えていただきたいところももちろんございます。
ですので最近ですと、FMVのところの議論に医機連も入れていただいたり、医薬品業界の皆様ともいろいろ議論をしながら、ここはもしかしたら医療機器にも展開できるかもしれないというようなところは、是非考えていきたいと思っておりますので、そうしたいなと思っています。
 実際に、SaMDなどでは、製薬企業さんなどもプログラム開発をかなりされており、今も医機連とコラボしたりということもございますので、どんどんそういうことが広がっていけばいいかなと思っておりますので、これまでも何度か意見交換等させていただいたことはありますけれども、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
○近藤委員 どうもありがとうございます。重複して作業するというのは非効率的だと思いますので、是非、効率的・効果的に一緒にやらせていただければと存じます。どうもありがとうございます。
○谷岡委員 よろしくお願いします。
○楠岡部会長 それでは花岡参考人、お願いいたします。
○花岡参考人 御質問ありがとうございます。個別の事例は今回アンケートの中で回答いただいていないので、御説明できないのですが、ただ私どもの医療機関でも、やはり同様の事例があり、それについて参考にお話させていただきたいと思います。
 特に最近、国際共同試験含めた観察研究というのが、外資の製薬企業さんから参ることが多いです。その場合、きちんとCROさんが支援に入っています。ただ施設については、2年間の契約で、1症例20万円ですよと、間接経費含めて20万円、それでCRCを付けて全部EDCのシステムにデータをいれてくださいというような依頼が少なくありません。
 もちろん意義のあるものについては、大学としてはやるべきということで対応しておりますが、ただ全てがそうできるわけではないということで、やはり意義のある試験については、きちんとコストを付けていただいた上で、私たちも対応させていただきたいと思っているところです。
 また、医師主導治験については、AMEDの研究費にどうしても制限がある中で、私たちも依頼するに当たって1施設当たりのCRC賃金を余り出せない。トータルで5,000万のときに、そこで全部で160例の患者さんを組み入れて、1施設当たり20人入っているところにも、年間160万しか出せない。果たしてそれが適切かと言うと、恐らくSMOさんだと引き受けていただけないような値段で、私たちは医師主導治験を実施しています。
 千葉大学でも現在20ぐらいの医師主導治験の参加依頼があり、受け入れているのですが、それについてのAMEDの研究費から、CRC賃金支払われることはございません。大学の持ち出しです。そういう意味で、大学として貢献すべきところはすべきと思っていますが、やはりそういう面もあるということは、御理解いただきたいところです。
 これはあくまで千葉大学の事例でして、ただ、多くのところでも同様のことになっているということを、承知しているところです。
○近藤委員 どうもありがとうございます。先生のおっしゃられるように、費用に関しては、適正に支払うという形で持っていかなければ意味がないと思いますので、今回は治験にフォーカスして費用について議論されているかと思うのですけれども、臨床研究等についても、引き続き議論させていただければと考えています。どうもありがとうございました。
○楠岡部会長 それではお待たせしました。藤原委員どうぞ。
○藤原委員 花岡参考人と渡邉参考人に、DCTと特定臨床研究における保険外併用療養費の適用について、シングルIRBについてお聞きしたいと思います。
 まず1つ目ですけれども、シンプルに先ほど渡邉先生がDCTというのは方法論の1つであってというお話をされていましたので、臨床研究中核病院の承認要件を新たに設定する際に、DCTをやらないといけないということを入れたほうがいいのかどうなのかということを、お聞きしたいのが1つ目。
 2つ目は、先ほど花岡参考人の資料9ページで、特定臨床研究を国際共同臨床試験とする際に、先進Bであったり、あるいは保険外併用療養費との活用などの兼ね合いでなかなかやりにくいという話がありましたが、ここは私もAMEDの審査等をしている中でいつも不思議に思うのは、保険外併用療養費というのは療養担当規則では、治験と先進医療Bと、それから健康保険法で言えば患者申出療養もありますけれど、それらに限定的に活用されるのみで、通常の特定臨床研究では保険外併用療養費は活用できないと理解しているのですけれども、その辺の理解は先生方ではどうなのかというのが2つ目。
 3つ目はシングルIRBで、これは花岡参考人の資料11ページに治験手続きの効率化や治験管理システムの導入について書いてありますけれども、シングルIRBの導入にあたっては金と人の予算措置をしっかりしないといけないと思っています。私の理解では、セントラルIRBやシングルIRBで治験をやろうと思うと、病院長が今はIRB審査の依頼をしますので、ほかの病院から審査を依頼される際には、各病院とのやり取りを、それぞれ臨床試験の事務局のCRBがやって、その際に病院ごとにシステムも違えば資料の様式も違ったりとばらばらで、そんなのを細かくやっていくと、もう膨大な手間がかかります。
 私はかつて病院勤めをしたときには、セントラルIRBは入れたくないという主張をしていたのですけれども、そうも言っていられないので今回はシングルIRBを早く考えたほうがいいかなと思いますけれども、この辺り、やみくもに、金も人も措置しないのに導入したときの混乱がどうなのかという、この3点をお聞かせください。
○楠岡部会長 花岡参考人、渡邉参考人の順で、3つまとめてお答えいただけますか。よろしくお願いします。
○花岡参考人 確かにDCTに関しましては、実際それを実施するに当たって、例えばWebを使った診療が、果たして本当に患者さんの安全性を確保できるかみたいな、そういう御指摘をPMDAから頂いて、やはりそこはGCP上の治験実施施設にするべきだろうと、いろいろな議論がされている最中でして、その中でDCT自体を臨床研究中核病院の承認要件とすることは、時期尚早かと思っています。私たちとしては、積極的に入れていきたいですけれど、恐らくDXの推進によって、もっとしやすい環境になっていくのではないかと理解していますし。
○事務局 音声が聞こえないようなのですが。
○花岡参考人 すみません、音が入っていなくて。DCTに関しては、現在様々な取組をされている中、私たちも医師主導治験の中でWebを使ったオンライン診療を実施したいということで、PMDAと相談したことがあります。その中で、やはりそれで本当に患者さんの安全性を確保できるのか、皮膚の病変が見えるのかというような御指摘を頂いて、そこの施設はあくまでもGCP上の治験実施施設として実施すべきだろうと。幾ら遠隔地の沖縄だろうが岡山だろうが、安全性を診るということで、御指導を頂くことがあります。
 そういう意味で、まだまだDXの推進の中で、こういう規制上の議論をPMDAとしていくのだろうと思うのですけれども、今の段階でDCT自体を臨床研究中核病院の承認要件とすることは、時期尚早なのかなと理解しているところです。是非私たちもそれを取り入れて、治験の活性化、臨床試験の活性化をしていきたいというのは思っていますが、まだまだというところと思っています。
 もう1点、先ほど藤原委員からあった、国際共同治験の中で、GCP下で試験が来たときに、日本で臨床研究法かというと、それは齟齬があるということで、そうしたら治験届を出していいかというと、そこはやはり問題がある。ただ未承認薬の場合ですと、それについては治験届を出したほうが、私たちはやりやすいと思っていますので、それがいい方法だと思っています。
 一方で、特定臨床研究の完全な未承認適用外で、なおかつ保険償還もされないところについては、ご指摘のような問題がある。保険償還という意味でも問題があるということで、それについては本来の制度にのっとったことですべきということを理解しています。ただ、なかなかそこについてはハードルが高いというのも事実でして、できるだけ保険償還できるような形でのプロトコルを書くようにすることに努めていることも事実です。
 3つ目が、シングルIRBの件です。それは本当に藤原先生がおっしゃるとおり、各事務局での対応が非常に煩雑ではないかと思っているところです。私たち千葉大学では現在DDワークスというシステムを使っています。これは国立がん研究センターと同じシステムで、これを使うことで、富士通のシステムですけれども、申請者自身が大学に来なくて申請できるし、なおかつ承認書の交付をシステムの中でできる、なおかつ変更申請もどこでもできますし、文書モニタリングも施設・会社にいながらできるというシステムで、最近非常に文書についての電子化が進んで、非常にお互いにとっていい面があります。
 ただこれが、藤原先生がおっしゃったように、いろいろな施設のIRBがシングルIRBになると、私たちがいろいろなところにアクセスすると、何が起きるのか。全てが富士通のDXで日本が統一されるなら、それは解消するでしょうけれども、そうもいかないでしょうから、ちょっとそこについては、どうしたらいいかということを、本当に現場レベルの人も集まって議論しないと解決しないのではないかと思っています。
 千葉大学含めた大学病院臨床研究アライアンスの事務局のメンバーで、一昨年AMEDの研究事業を契機にこの課題を議論しようということで、現在それについての議論をしている最中でして、各施設でそれについての申し合わせを作ろうということで進めているところです。これを実行するには、多くの皆様方のお知恵を投入しないと無理なのかなと。本当に効率化と言いながら効率化でないということが、このままいくとなってしまうので、現場での負担が非常に高いと思っています。
 こんなこと言ったらもう少し詳細な検討が必要だと指摘されるかもしれませんが、台湾みたいに国で定めたシングルIRBで承認したら、その施設だけの安全性とか施設要件だけ審議するみたいな、本当にドラスティックな変化をしない限り難しいのかなと考えているところです。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは渡邉参考人、お願いします。
○渡邉参考人 まずDCTについてですけれども、DCTについては臨床研究中核病院の要件としてDCT実施をマストとするよりも、DCTに対応できる体制を整備することが重要ではないかと思います。今後、来院困難な疾患の患者さんが治験対象になるということもあるわけですから、そういう患者さんに対しても、臨床試験の参加機会を拡大すること。国際共同試験のプロトコルにDCTが取り入れられるということも増大すると思いますので、そういう試験に対しても、臨床研究中核病院が参加可能な状況を作っておくことが必要だと思いますが、無理やりDCTを何試験か実施しなければならないという要件化は、余り良くないのではないかと思います。
 2番目の臨床研究法、規制に関しては、日本の規制は目的があって、それぞれの法律やあるいは規制ができていると思いますから、まずその一本化に当たっては、その目的を調和させる必要があるだろうと思います。もちろん、なるべくシンプルな形にしたほうが分かりやすいし、それが国際競争力の強化にもつながり、それが国際整合性を持ったものならば、海外から見て理解しやすいと思います。
 3番目のセントラルIRB、シングルIRBに関しては、今、日本の中で様々な機関が同じ治験について審議しており、その総和した人的、時間的、金銭的なリソースは非常に膨大なものではないかと思います。そういうことを考えると、セントラルになった機関の負担は、大きいと思いますが、日本全体を考えてシングルIRBを進めるべきではないかと考えます。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。まだまだ御質問があるかもしれませんけれども、時間が迫ってまいりましたので、御質問はここで終了させていただきたいと思います。事務局のほうでは、今回頂きました意見を整理して、今後の対応をよろしくお願いいたします。
 それでは続いて議題2、臨床研究法省令改正について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 事務局です。それでは資料2「付議・諮問書」の御説明をいたします。臨床研究法施行規則の改正内容については、第35回から第37回の本部会で臨床研究法省令改正という議題で御議論いただいております。その内容については、令和6年11月26日から12月25日の期間でパプリックコメントを実施いたしました。現在、パプリックコメントで頂いた御意見に対する回答を整理しているところではありますが、御意見を踏まえた改正内容の修正はありません。
 そのため、この度、臨床研究法第35条の2第1号及び第2号の規定に基づき、臨床研究法施行規則の改正について諮問させていただきたいというものになります。
 資料の説明に移ります。資料2の2ページ目以降の諮問書のとおり、厚生労働大臣から厚生科学審議会へ諮問をさせていただいており、資料2の1ページには付議書を付けていますが、こちらは厚生科学審議会から当部会へ付議をされています。
 諮問書の別紙2に該当する資料におけるページ番号で3~35ページですが、こちらで施行規則の新旧をお示ししております。施行規則の改正案については、本部会の委員の皆様に御議論いただいた見直し事項について、一部表現が法令上の表現に変わってはおりますが、その内容に変更はありません。事務局から本議題に関する説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 ありがとうございました。これまでも議論を重ねたところですので、特に御質問はないかと思いますが、よろしいでしょうか。藤原委員は、これは手を挙げられたのですか、もっと前のものですか。
○藤原委員 ちょっと、気になるところが1件だけあるので、お聞きしたいのですが。さっと言いますが、大丈夫ですか。
○楠岡部会長 よろしいですか。分かりました。そうしましたら、この件については、どうぞ。
○藤原委員 それでは、聞きたいのですが、省令案の2条の2のところです。臨床検査のところで、「著しい負担」について「通常行われる検査その他の行為と比して、相当程度高いと認められる」検査という表現があるのですが、最高裁の平成12年の判決で、治療の上での「相当程度の可能性」の判断に際し、適切な医療が行われていたならば患者がその死亡した時点においてなお生存していた確率が20%程度であれば「相当程度高い」という解釈を出しています。生存可能性という重大な法益の喪失に関する判例と、今回の臨床研究法の適応範囲の解釈とでは、前提も意味も当然大きく異なると考えています。しかし、見た面で「相当程度高い」という言葉自体が同じなので、医療の法律の実務家からすると、我々から見るとかなり低い20%程度の可能性でそれを適用している最高裁判決があるので、この「相当程度高い」という表現が、我々ぱっと読むと非常に高いのかと思いますが、かなり用心して運用しないといけない、現場で拡大解釈されて混乱する余地が大きいと考えています。私ども去年9月の臨床研究部会では「研究対象者に明らかに負担を課す、著しく大きい障害が発生しる可能性が高い」ようなという表現で議論しているので、この省令施行規則の通知を出す段階では、書きぶりに非常に注意していただきたいとぜひお願いします。以上です。
○医政局研究開発政策課室長補佐 事務局です。御指摘いただきありがとうございます。先生に御指摘いただきましたとおり、ここの部分に関しては、施行通知において、具体的な基準等を示していく予定としています。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございます。それでは、この件に関して審議、裁決に移ります。大臣より諮問がありました「臨床研究法施行規則」について、提案のとおり改正するということで御異議ございませんでしょうか。ありがとうございます。御異議ないものと思います。それでは、提案のとおり改正することで差し支えない旨、厚生科学審議会令第7条第2項の規定により臨床研究部会として議決いたします。また、この議決については厚生科学審議会長に報告させていただきます。どうもありがとうございました。事務局は速やかに施行に向けた手続を進めるようお願いいたします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 事務局です。どうもありがとうございました。手続を進めてまいります。
 こちら臨床研究法の施行規則については、改正臨床研究法の施行日と同日の令和7年5月31日の施行を予定しています。また、施行通知については遅滞なく発出できるよう準備を進めてまいります。以上です。
○楠岡部会長 よろしくお願いいたします。それでは、続きまして議題3「臨床研究法に定める疾病等報告について」、こちらは報告事項となりますが、事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発政策課室長補佐 続けて、事務局です。それでは資料3「臨床研究法に定める疾病等報告について」の御説明をいたします。1ページ目です。半年に1度、本部会で御報告しています疾病等報告について、今回は令和6年度上半期分を御報告します。
 1ページ目にお示ししていますとおり、臨床研究法第15条第1項の規定により、令和6年4月から令和6年9月末までの疾病等報告の状況について報告しています。なお、当該報告内容に関し、CRBから臨床研究の対象者の安全性に大きな影響を及ぼす疾病等や不適合への措置として、臨床研究を中止すべき等の特記すべき意見を述べられたものとして、大臣に報告されたものはありません。
 2ページ目です。こちらはPMDAから受領しています疾病等報告の整理結果通知書です。未承認の医薬品を用いる特定臨床研究の実施等によると疑われる疾病等は1件。適応外のものに関しては10件。全件とも医薬品を用いる特定臨床研究における報告となっています。
 次のページから2ページ目分ですが、字が小さいですが、こちらの詳細の一覧をお示ししています。幾つか転帰が死亡をたどったというものがありますが、いずれの報告も緊急対応を要するものはありませんでした。御報告は以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。ただいまの報告に関して、何か御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは「臨床研究法に定める疾病等報告について」に関して臨床研究部会で報告を受けたということで御了解いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 その他になりますが、事務局から何かありますか。
○医政局研究開発政策課室長補佐 事務局です。2点あります。1点目、参考資料の御紹介です。参考資料2について、CRBの設置状況を1、2ページ目に、jRCTに登録されている治験及び特定臨床研究などの状況についても3ページに御紹介しています。また、この度、参考資料3として研究開発政策課治験推進室における令和6年度補正予算及び令和7年度当初予算案の概要をまとめていますので、適宜御覧いただければと思います。
 2点目です。こちら事務連絡です。次回の開催ですが、2月26日(水)10時~12時を予定しています。委員の皆様におかれましては、追って事務局より御連絡差し上げます。事務局からは以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、これで本日は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。