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第36回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和6年11月29日(金)10:00~12:00
場所
厚生労働省共用第6会議室(3階)
出席者
- 委員(五十音順)
- 石﨑委員、石原委員、逢見委員、大橋委員、岡本委員、川崎委員、佐々木かをり委員、佐々木勝委員、武田委員、守島部会長、山川委員、山田委員
- 事務局
- 田中厚生労働審議官、河野政策立案総括審議官、中井賃金政策推進室長、宇野政策統括官付参事官、藤木政策統括官付労働経済調査官、山田雇用環境・均等局総務課長、、松瀬人材開発統括官付参事官、佐々木労働基準局総務課長、福岡職業安定局地域雇用対策課長、橋本職業安定局雇用政策課課長補佐
議題
(1)地方自治体及び委員ヒアリング
(2)その他
(2)その他
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 定刻になりましたので、ただいまから、第36回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
本日は、所用により、入山委員、冨山委員、春川委員が御欠席と伺っております。また、所用のため、石原委員、大橋委員、山田委員、石﨑委員が遅れての御出席、川﨑委員、武田委員は途中での御退席と伺っております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして事務局からの御説明があります。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 事務局からオンラインでの開催に関して留意事項を説明いたします。
まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしてください。委員の皆様は、御発言の際は参加者パネルの御自身のお名前の横にある「挙手」のボタンを押して、部会長から指名があるまでお待ちください。部会長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度「挙手」ボタンを押して挙手の状態を解除してください。通信の状態などにより音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。
以上になります。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。まず、本日の進め方について御説明いたします。初めに、「気仙沼市の地域雇用活性化推進事業の取組について」ということで、気仙沼市産業部産業戦略課課長兼企業誘致推進官の平田智幸様、産業部産業戦略課課長補佐の齋藤一寿様、及び気仙沼市地域雇用創造協議会推進員の畠山輔様よりお話を伺いたいと思います。そのお三方のお話が終わった後に、「自治体や中小企業におけるEBPMのあり方」というタイトルで、佐々木勝委員のお話を伺いたいと思います。プレゼンに関する質疑応答と自由討議につきましては、皆様の両方のプレゼンが終了した後にまとめて行いたいと思います。
それでは、気仙沼市様、よろしくお願いいたします。
○気仙沼市(齋藤) 気仙沼市の齋藤でございます。本日はお時間いただきまして、ありがとうございます。初めに、当方の課長の平田は、今、別の会議が続いておりますので、私、齋藤と畠山で入らせていただきます。
今回、説明の機会をいただきましたので、私から地域雇用活性化推進事業を活用した本市の取組について御説明申し上げます。
初めに、気仙沼市についてでございます。宮城県の最北端にございます港町でございまして、2011年に発生いたしました東日本大震災の被災地でございます。震災前には7万4000人いた人口は減少が続いておりまして、現在は5万6000人弱となっております。
2ページには、本市の地域課題を記載しております。もちろん、このほかにも地域課題は様々ございますが、ここでは3点に絞って記載しております。
1つ目といたしまして、県全体の半分、約100万人が仙台市に集中しておりまして、仙台市のほうに一極集中しているという実態がございます。仙台市は、経済も教育も東北の中心でございますので、本市も含め、東北各地から人材が流れていく傾向がございます。
また、気仙沼市は仙台市から直線距離で100km以上離れた場所にございまして、現在でも車で2時間ほどかかります。震災前は自動車道開通前でしたので、仙台市まで3時間以上かかるなど、以前から陸の孤島と呼ばれることもございました。
また、高校を卒業すると進学や就職で多くの方が市外に出ていく状況がございます。
こうした課題は、本市に限らず、他の地方都市でも見られていると考えております。
3ページ目は、本市の人口の推移です。1950年の9万2000人を頂点といたしまして、年々人口減少が進んでおり、一方で65歳以上の高齢化率も増加してございます。
4ページ目は、本市の人口減少の現状と課題をまとめております。こちらは御覧ください。
こうした人口減少の状況が進む一方で、本市では、東日本からの復興事業により、ようやく事業が本格的に再開しようという段階になりまして、市内企業が求人を行っても、なかなか思うように人材確保ができない状況が続いておりました。このことから、厚生労働省の地域雇用活性化推進事業を活用いたしまして、市の企業への人材確保に向けた取組を実施してきたところでございます。
本市では、6ページ、7ページに記載しておりますが、令和元年度から3年度までが第1期、令和4年度から今年度までが第2期と、二度採択いただきまして事業を実施してきたところでございます。
本市で具体的にどういった事業を行ってきたかにつきましては、実際の事業を担当いたしました雇用創造協議会の畠山から御説明申し上げます。
○気仙沼市(畠山) 気仙沼市地域雇用創造協議会の畠山と申します。
ここからは、厚生労働省宮城労働局委託事業地域雇用活性化推進事業について説明させていただきます。
では、5ページ目に戻っていただきまして、こちらですが、詳しくは厚生労働省の皆様から説明があったかと思うのですが、簡単なスキーム図でございます。左下、A事業で事業所向けの事業、右下、B事業で人材育成の取組、求職者向けの事業。また、真ん中、C事業でマッチングということで行いまして、地域の就労人口の増加を図るというものでございます。
6ページ目と7ページ目に関しましては、当協議会の第1期、第2期の事業を詳しく書いております。
6ページ目に関しましては、第1期、令和元年10月1日から令和4年3月31日までとなっておりまして、主要ターゲットといたしまして、大卒のUIJターンと外国人の方ということで、地域の採用力向上の底上げを行いました。
また、7ページ目に関しましては、第2期ということで、第2期事業を推進するに当たりまして、特に女性・子育て層のUIJターン者を主要ターゲットとして、地域に人材が還流する仕組みづくりを行いました。今回、その中でも、第2期事業について詳しく御説明させていただきます。
8ページ目を御覧ください。こちらですが、第2期実施事業内容の一覧でございます。特に、女性や子育て層の人材活性化や、UIJターンを伴う大学・専門学校卒業予定者を対象とした事業を中心に行っております。
また、9ページ目、10ページ目に関しまして、9ページ目は事業の計画と採用人数の詳しい数字でございます。
また、10ページ目から17ページ目までに関しましては、第2期事業の詳細な事業内容でございます。こちらに関しては、特にその中でも工夫した点を説明させていただきます。
では、12ページ目を御覧ください。こちらですが、大学や専門学校卒業予定者を対象とした、新卒UIJターン合同企業説明会でございます。
(1)は、気仙沼市の人事課と市内企業が連携して行った事業でございます。気仙沼市が参加することによりまして、地方の公務員を希望する子が多いので、その学生に地域の企業に興味を持っていただくという仕組みを行いました。なお、開催した大学でも、行政と民間がタッグを組んで、このような場を持つことはなかったということで、東北では初めてだったということをお聞きしておりました。
また、実際に企業側で参加される方には、経営層の方に参加していただいております。経営層の方で、特に気仙沼でおもしろいことをやっている企業様から参加する社長の話が聞けるということで、参加された学生からもとても好評でございました。
また、15ページ目を御覧ください。こちらは女性や子育て層向けの合同企業説明会でございます。こちらは女性・子育て層の方が最も参加しやすい土曜日の日付を選びまして、その土曜日の午前中に開催させていただきました。時間も10時以降ということで、ゆったりとした時間です。無料の託児スペースも併設いたしました。
また、16ページ目を御覧ください。こちらは「企業ガイドブック」の発行でございます。令和2年度より、市内の企業情報が分かる「企業ガイドブック」を作成しております。当初は26社の掲載だったのですが、令和5年度より宮城県と合同で、気仙沼市の隣に南三陸町というところがあるのですけれども、そこの企業様も掲載し、今年度は89社の企業情報が掲載されております。こちらは市内の高校3年生全員、県内全ての公立高校、東北地方の専門学校・大学など、3500部作成し、配布しております。また、市の予算で増刷しまして、「二十歳を祝う式典」、成人式ですね。この前の日曜日に配布を行っております。
次の17ページ目を御覧ください。こちら「企業ガイドブック」の内容でございます。特に入社後のイメージがつきやすいように、入社後の流れと先輩社員の声を掲載しております。また、学生が一番重視するであろう各企業の給与や福利厚生、過去3年の定着率も掲載しております。掲載する企業様に関しましては、給与掲載を拒む、載せるのは嫌ですという企業様があるのですけれども、そういう企業様は掲載を一切お断りしております。
また、働きやすい環境ということで、厚生労働省様の認証制度などの御紹介も行っておりまして、優秀な企業の差別化を図っております。
こちらに関しましては、掲載される際に、業種別で五十音順で掲載するので、隣にばちばちのライバル企業が掲載されるということで、1回で分かるように、より比較しやすい表示となっております。
続きまして、18ページ目を御覧ください。当協議会では、毎月1回、ハローワーク気仙沼様、宮城県気仙沼市の担当者による定例会を行っておりまして、市内の雇用情勢や課題の共有を行っております。また、令和5年3月には、宮城労働局様と気仙沼市とで、三陸地方初となる雇用対策協定を締結されております。
また、ほかにも、移住・定住などを行うNPO、震災以降、NPOとかが入ってきておりまして、移住・定住・関係人口拡大ということで、民間団体とも2か月に1回程度のペースで担当者会議を行っております。これは雇用創造協議会、結構身軽に動けますので、雇用創造協議会がハブとなりまして様々な団体を結びつけて、効率的かつ無駄な事業を行わないという考えの下で行っております。
併せまして、12ページ目でも御説明いたしましたが、気仙沼市の人事課と連携することで、地域としての採用数を増やすという取組も行っております。
19ページ目以降は、具体的な事例でございます。
19ページ目を御覧ください。こちらは高校生しか採用できないという思い込みから、大学生や専門学生を対象とした採用活動により、自社の採用に結びついたという事例でございます。載っている双方の企業様に関しましては、どうせ大学生はうちなんかに来ないとか、大学生採用はすごく大変なのではないかという思い込みで、そういう採用活動のチャンスを生かせず、また自社の魅力等々も、実際、経営者とか人事採用担当者が気づいていないという事例でございます。結果として、両社とも大学生相手でも闘えるということを認識されまして、就労環境の改善を独自で行い、独自のインターンシップの受入れなど、高校生の採用等々につながっているということがございました。
では、20ページ目を御覧ください。こちらは逆に失敗事例でございます。定期的に採用できているのですが、就労環境の悪さや配属先での受入体制がなかったことにより、定着につながらなかった事例です。ただ、離職された方に関しましては、お話をお聞きしましたところ、気仙沼自体は好きなんだということで、気仙沼の別の企業に再就職されまして、そういう意味では地域内の人材の還流になったという事例でございます。
21ページ目を御覧ください。こちらは成功事例でございます。当協議会セミナーの全てに積極的に参加されまして、自社の状況を客観的に整理し、就職し、学生がやめない環境をつくった企業様でございます。若手社員中心の人事部人事課を設立されまして、給与も大事なのだけれども、一番学生が気にするお休み、年間休日の改善を行われました。
また、気仙沼の企業では、企業規模の関係から数名しか採用しないのですけれども、どうしても自分の同期が各企業様にいないのです。なので、うちのセミナーなどに採用された若手社員に積極的に参加していただいて、名刺交換、交流する場を持って、地域の同期というものをつくっていただきました。同じ年代のコミュニティーをつくることで、その子が地域内同期として離職を防ぐことに成功しております。
22ページ目を御覧ください。こちらはまとめでございます。
多くの市内企業では、高校生しか採用できない、採用しない現状でございますが、意外にやってみると簡単というか、大学・専門卒の採用活動は結構できるということでございます。どうせ来ないとか大変という思い込みがございます。また、最初の地域課題でも説明させていただいたとおり、9割以上が管外へ出ますので、高卒の求職希望者よりも分母が大きいというところがございます。チャンスが多いということですね。併せて、企業の経営者、人事担当者の方が自社の魅力に気づいていない。大学生や専門学生に対して、うまく情報が発信できていないということが課題だと感じております。
また、その下、東京や仙台より選ばれる理由といたしまして、経営者の生の声が聞ける環境と地域にどっぷりつかれる環境があるかなと思っております。大手企業より経営者と近く、若手社員でも大きなプロジェクトに関われることや、企業ガイドブックにより、悪い条件の会社が逆に目立ちまして、地域の就労環境改善の底上げにつながったと思っております。会社間の若手社員が交流する場をつくり、地域内同期としてコミュニティー形成できたこと。また、気仙沼市移住・定住支援センターMINATOという移住・定住を促進する団体があるのですが、そこと協力しまして移住者のお悩みに対応し、若い子たちがわいわい楽しくやっている環境をつくったことが大きいと感じております。
以上でございます。
○気仙沼市(齋藤) 再び、私、齋藤から御説明いたします。
当方の地域雇用活性化推進事業は、このような事業を行いながら、一定程度、事業をうまく行うことができておりまして、ある程度の実績が出たと考えております。それをまとめたものが23ページでございます。
1点目としては、中心となるスタッフ、畠山もそうですが、第1期から継続して6年間変わらずに協議会の事業を担当してきたということがございます。市内の多くの企業と直接関わる機会が多くございますが、スタッフが各企業に顔を覚えていただきまして信頼されることで、その経験から、新たな事業の企画もございました。
2点目としては、市全体として取り組んだことでございます。公共事業として行いましたので、これまで個社としての取組は限界があったものが、この事業を通じまして各社が新たな取組に参加するきっかけ、新たな取組に踏み出すきっかけをつくりました。また、他の企業の現状も知ることで、自社の状況を見直す契機となったとも考えております。
3点目としては、関係機関との連携を密にすることで、お互いに課題を共有してきたこと。また、市役所の担当課も、労働担当の課と地方創生・移住定住の担当部署、両方が当初から関わってまいりましたので、事業の企画・実施には効果があったものと考えております。
24ページには、事業実施前と実施後の状況をまとめてございます。
市内の企業の中には、求人にはあまり工夫したことがなく、大卒者を雇用したことがないという企業もございました。そもそも大卒の方がうちなんかに来るわけがないと思っていた企業も少なくございません。そういった企業が、厚生労働省のこの事業を通じまして、情報発信など、まだまだやるべきことがあったということに改めて気づきまして、そして、そういった取組をすれば、実際に人材を採れるということを肌で感じたところでございます。
また、この活性化推進事業は、魅力ある雇用の創出がそもそもの事業目的でございます。自社の魅力が実際あるにもかかわらず、その魅力に気づいていなかった企業もあります。それに気づかされるきっかけもございましたし、また、まだ魅力ある雇用には至っていない企業であっても、市内の他社の状況を見て、それと比較することによって、賃金や就労環境の見直しをするきっかけになったと考えております。
しかしながら、冒頭に話しましたが、こういった取組を実施しても、本市の人口減少の流れは止められない状況がございます。今後も就労環境の改善などにさらに努めていきまして、魅力ある雇用を創出し、若年層を呼び込み、定着していただけるように、市全体としての取組を実施して継続してまいりたいと考えております。
駆け足でございますが、我々からの説明は以上となります。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、続けて、佐々木勝委員からの御発表をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐々木(勝)委員 それでは、私のほうから発表させていただきます。タイトルは、このように「自治体や中小・中堅企業におけるEBPMのあり方」ということであります。
まず、EBPMとは何かと言いますと、英語で言えばエビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングということで、データに基づく政策立案ということです。これは2017年に策定された統計改革推進会議の最終の取りまとめで、データに基づくよりよい政策立案をしていこうということが決まりました。それまでの過去の経験からのようなエピソード・ベースから、もうちょっとデータを使ったエビデンス・ベースで定量的に政策を評価していこうということであります。
そして、個々の政策によるアウトカムへの影響について、原因と結果を明らかにし、そしてその原因が結果に具体的にどのような影響を与えるかという因果効果を明らかにしていこうということです。
地域が抱える様々な社会課題を効率的に解決するためにも、そのエビデンスをベースにした政策立案が効果的・有効ではないかと考えております。
次のページに進みまして、EBPMの手法ということを書いておりますけれども、一般に研究者が使うような手法であります。
1番目に実験的手法と書いておりますけれども、これは理系の実験の手法を社会科学の研究に取り込んだような手法でありまして、ランダム化比較実験(RCT)のことです。これはどういうものかというと、2つの同質のグループに対して、一方だけ何らかの処理を施した際に、そのアウトカムがどう違うかということを比較するわけです。
例えば、Aグループに50の高校、Bグループに50の高校をランダムに抽出したとします。ランダムに抽出しましたので、偏差値だったり、男女比だったり、そういう意味ではAのグループの高校とBのグループの高校というのは平均的に同質と考えます。基本的にこういうEBPMの手法というのは、同質の2つのグループを比較するわけですね。そこで、例えばAグループに授業料無償化という新しい政策を施し、Bグループはそのまま授業料ありとした場合、学力に差があるのかというのを検証します。そうすることによって、授業料無償化が学力に与える影響を検証することができます。
こう言えば非常に簡単に聞こえますが、じゃ、実際にこういうことができるのかというと、それは非常に難しいです。問題は何かというと、まず当然、お金も時間も非常にかかる。なおかつ、今の例から分かるように、倫理的にも道徳的にも問題があるわけですね。一方のランダムに抽出されたAグループの高校生だけに授業料無償化というのは非常に不平等だし、倫理的にも問題があるので、通常はそういうことはできません。
そこで、よく経済学者が考えるのは、偶然の制度変更を利用して、実験の枠組みに落とした上で政策効果を推定するということがあります。不連続回帰デザインや差の差分析と書いておりますけれども、今日、ここでは一つ一つ詳しくは述べませんが、1つだけ、傾向スコアマッチングについてお話しします。現在、私自身が労働政策研究・研修機構(JILPT)のプロジェクトに入っております。そこでの研究は、コロナ期における雇調金の教育訓練の助成金が特例措置として8265円から1万5000円ぐらいに増えたことから、その教育訓練を実施した事業所と実施していない事業所を比べて、その後の事業所の廃業率を比べました。
そこでも、同じように同質の2つのグループを比較するのですが、教育訓練を実施したグループと実施しないグループから似た者同士を抽出し、マッチングして、その2つのグループで廃業率を比較するわけです。似た者同士をどのように選ぶかというのが、ここで傾向スコアと書いておりますけれども、様々な事業所の属性をもとに傾向スコアを算出して比べるわけです。2ページ目に書いた研究方法というのは、研究者がよくやるような方法であり、こういうことは自治体の人たちがそこまでやるようなことではないと思っております。
では、EBPMの課題というか、特に自治体における課題は何かというと、3つあります。まずは統計人材の不足ということです。2点目が、統計データの整備が進んでいないということ。3点目が、効果検証する価値があるのか。すなわち、費用と便益のバランスがあるのかというところで課題があるかと思います。
まず、1番目の統計人材の育成ですけれども、事例を挙げますと、つくば市の場合、「データで市民を豊かにするまちの推進」ということで、データを使える人材の育成を目的とする職層別研修計画の立案と実施をしているということです。人事課の協力の下、研修制度を設計して行っており、しかもつくば市ということで、外部機関とも連携しやすいということであります。このようにして人材の育成に力を入れていりますが、そういうところまでできる自治体というのは、そう多くはないのかなと思います。
これは私個人の意見ですが、どこまで育成するかという線引きを明確にする必要がありです。先ほどのような傾向スコアマッチングとか差の差分析とか、そういうものは別に市の職員ができなくてもいいのです。正直、自治体の職員の全員が全員、データを使えなくてもいいのです。ただ、そういうふうなデータが意味するところを理解していただきたいと思います。
理解と言っても、基本的なところで十分です。基本的な統計の知識は知ってもらいたいのです。ここで言うと平均とか分散です。平均はみんな分かっていると思うのですが、分散というところまでなかなか理解していないと思います。分散というのは、言うならばデータの散らばり具合です。その真ん中がちょうど平均ということですが、分散についても理解してほしい。後で例をお話しして、分散が重要だというところをちょっとだけお伝えしたいと思います。
あとは、組織全体で統計マインドの形成に努めることです。何かあった場合に、こういうデータで見てみようよとか、すぐ関連するデータを収集して確認するというようなマインドをつくっていったらいいのではないかと思います。
あとは、政策評価のデザイン力を養うことです。すなわち、課題解決のための仮説を立てることですね。そのアウトカム、何をしたいかということを考え、それに対する要因とは何かという仮説を立てていく。その仮説を立てた上で、それの基になるデータを集めて比較するということができればいいと思います。実際に使う人は、先ほど言ったように、全員が全員、そのデータを扱える必要はないので、できる人がちょっといればいいのかなと思っております。実際にデータを扱う人も、高度な計量経済学の手法を駆使する必要はないと思います。ただ、市町村にあるようなデータは非常に大規模で複数なので、それを接合できるような人が少数いればいいのかなと思います。
これは福井県の糸島市職員の岡祐輔氏によるウェブ記事ですけれども、例えばふるさと納税に関するデータ分析がありまして、市としてはアウトカム、目的が何かというと、寄附金を増やすことです。じゃ、寄附金を増やすためにはどうすればいいかというところで、まずは自分のところだけじゃなくて、周りの市の状況もデータで集めてみようというところから始めて、糸島市だけじゃなく、A市からL市までのデータを集めます。そこが統計的なマインドですね。じゃ、データを集めてみようというところですね。
2つ目が、寄附金に影響する要因は何なのか。いっぱいありますが、ここでは返礼品数、サイト数、広告費です。ここの部分が、先ほど言ったとおり、政策評価デザイン力、すなわち仮説を立てるというところですね。あとは、データをばっと集めてきまして、やっていることは非常に単純なのです。この3つの仮説要因と寄附金の相関関係を調べるだけです。返礼品と寄附金との相関関係が0.85、サイト数と寄附額の相関が0.66、広告が0.45。このことから、どうやら返礼品数の相関関係が一番大きいということで、今後、寄附額を増やすためには返礼品数をもっと増やそうということになります。これが次の政策に生かされるわけですね。
この時点で、糸島市、1212ですけれども、調べたら、今、すごく多い。3000ぐらいあったような気がするのですけれども、そういうふうにして返礼品を増やすことによって、どんどん寄附額を増やしていく。データから、何を、どこに資源を集中して目的に達するのかということが明らかになるということであります。
次のページも例なのですけれども、これも同じようなソースからですが、これは喫煙者と非喫煙者の年平均医療費の差を示すグラフです。ぱっと見まして、たばこを吸っている人が年平均医療費35万円、たばこを吸っていない人が25万円です。差が10万円で、たばこを吸っている人は年平均医療費が高いんだなと思いますよね。そうですけれども、この差が本当に統計的に意味のある差なのかというところも、ちょっと理解してほしいなと思います。特に、平均だけでなく、先ほど言ったように分散、そして標準誤差とか標準偏差というのも理解してほしいなと思います。
例えば、たばこを吸っている人の医療費というのは平均35万円ですけれども、中には非常に医療費が低い人もいれば高い人もいる。だから、分散が大きいわけです。同じように、非喫煙者の場合も、もしかしたらすごく医療費が低い人もいれば、もっと高い、50万円ぐらいの人がいるかもしれません。データが散らばっているかもしれません。その散らばり具合を理解して、喫煙者、非喫煙者とも、もしデータが非常に散らばっているようであるならば、たとえ平均の差が10万円であったとしても、統計的な意味はない可能性があります。だから、その差を見ただけで、単に平均を見ただけで、35万、25万、差が10万円というふうに思わないでほしいなと思います。
あと、付け加えますと「選択バイアス」というのがありまして、これはどういう意味かというと、たばこを吸う、吸わないというのは実は選択なのです。ということは、もしかしたら喫煙者の人の医療費が平均的に高いのは、たばこを吸っている人は、お酒も飲むだろうし、もしかしたら健康に気を使わないし、規則正しくない生活を送っておらず朝食も摂らないかもしれません。そうなると、その人の健康に対する嗜好であったり、属性であったりが、結局この人の医療費を決めているわけであって、喫煙しているかどうかというところが過大に評価される可能性があるわけですね。できれば、そういうところも頭の片隅にとどめてもらいたいなと思います。だから、こういうグラフを見たときにそういうところに気づいてもらいたい。統計的マインドを持ってもらいたいというのはそういうことでもあります。
データの整備に関して、データがデジタル化されたことによって、収集や接合がしやすくなったと思います。
また、職員さんの人的資源や予算の制約の中、効率的に政策を立案し、実行する必要が高まっており、そのためには、データ分析をすることによって効率的な政策立案ができるのではないかなと思います。
実は、結構多くの自治体でEBPMによる政策立案の実例があいまして、近場で、まず神戸市です。神戸市は、効率的・効果的な政策立案のためにEBPMを積極的に推進しておりまして、①のように、神戸データラウンジというものをつくっておりまして、これは職員用です。職員さんが自由にアクセスし、政策立案しやすいようにデータ整備をしています。
②は神戸データラボと言って、これはオープンデータサイトでありまして、誰でも見れるものです。それから、人口だったり、就業状況だったり、人口移動に関する調査が一目で分かるようになっています。
神戸市はデータ整備に一生懸命頑張っており、本学の大学院生が週1回、神戸市で働いておりまして、データを利用して政策立案に関わっておられるようであります。バイトとかじゃなく、非常勤の職員になっていると聞いております。だから、内部でできなかったら、どんどん外部から人材を登用しているようであります。
2つ目は、地元、大阪大学の豊中キャンパスは豊中市にありますので、豊中市ですけれども、庁内のデータを接合した二次利用データがありまして、住民基本台帳や税務データをベースにして必要な情報を接合し、ライフイベント別のデータを作成しております。例えば、「とよなかこどもプロジェクト」と言って、庁内データと質問紙調査データを接合したパネルデータを構築したり、または、被保護者健康パネルデータを用いたりした分析も行っております。これらは、大学の研究者と一緒にやっているようであります。
そのほかに、書いていませんが、教育分野でも情報を研究者に公開しているような自治体は結構ありまして、有名なところは、埼玉県だったり、埼玉県の中でも戸田市だったりが学力テストの結果を研究者に提供して、学力を決める要因について分析をお願いしているということもあります。関西の場合だったら尼崎です。尼崎の場合も、学力テストの結果と、個人の健康診断、家庭の状況、就学の状況を個人レベルで接合し、分析に使っております。例えば、家族の状況、ワンオペの家庭が子供の健康リスクや子供の学力にどう影響を与えるかというところを分析できるようになっております。
データを収集する際、前のところに質問紙調査データのことを書きましたけれども、注意事項が必要でありまして、主観的なアウトカムに依存し過ぎないことです。満足度、理解度、幸福度というのは主観的な測定しかできませんが、あまりそればかりに依存し過ぎるべきではないと思います。例えば、幸福度を1から10で答えてくださいと尋ねます。私が7と言って、皆さんも7と言ったとき、私の7と皆さんの7は一緒なのか、なかなか比較できません。そういう意味では、主観的なアウトカムに依存し過ぎないほうが良いと思います。主観的アウトカムはなしというのはなかなか難しいので、依存し過ぎないということですね。
2番目は、比較することが重要なので、対照群と介入群、比較する2つのグループからデータを収集してくださいということです。
あとは、サンプルの集め方が偏らないようにしてくださいということであります。大体、時間的に余裕がある人だけがアンケート調査に回答するので、偏ってしまうわけです。そういうことも注意してほしいです。
あとは、サンプル数は多いほうがいいということです。
それらの問題がある場合、調査費のコスト負担の割には統計的に意味のある結果が得られないので、そんなときは、そういう経済実験的な枠組みに無理して当てはめる必要はないし、アンケート調査する必要もないと思います。それだったら、手元にある住民基本台帳や税データ、その他の二次利用データを活用したほうがいいのかなと思います。
先ほどの尼崎の話のとおり、二次利用データを接合し、変数間の相関関係のような単純な分析でも十分意味のある結果がわかるし、政策的なメッセージがあると思います。
高度な政策評価分析は研究機関と連携すべきであって、餅は餅屋にということですね。ただ、研究者が求めることと自治体が求めることのすり合わせが欠かせません。データ入手の覚書とか、そういう部分の簡素化にすること。研究者がやりたいことと、自治体の人たちが求めていることは、ちょっと違うときがあります。あとは、主任研究者人件費、PI人件費と言うのですけれども、大学の先生方と共同研究する際は、ある程度お金が必要ということです。あと、学術雑誌の投稿について、例えば自治体の名前を出すか出さないかというところも、よく問題になります。
あと、事後評価と事前評価です。これまで、事後評価の話をしてきたと思います。例えば、授業料無償化の効果とか、雇調金の特例措置である教育訓練実施の加算金の効果とか、そういう話をしていましたが、本来ならば事後評価の分析だけでなく、事前の評価も知りたいところですね。例えば、今後実施されると思われる103万円や106万円の壁の撤廃によって、女性の週労働時間はどう変わるのかというのは、やる前に知りたいところですね。テクニカルには可能なのですけれども、分析方法はあまりにもテクニカルなので、こういうものは研究者と連携したほうがよいかと思います。
中小・中堅企業ですけれども、基本的なスタンスとしては、自治体のお話と正直言って一緒でございます。これも個人的な意見ですけれども、データ分析よりもOR(オペレーションンズリサーチ)分析にたけたDX人材を多く育成したほうがいいかもしれません。ここで私が言いたいことは、第33回の部会のときに登場したハマヤさんの業務効率化を図るDXで、Google Workspaceとかを使っていたと思いますが、そういう人材を育成したほうがいいのではないかという意味です。
とは言うものの、これで中小・中堅企業の話を終えたら駄目なので、事例を1つお話しします。男女間賃金格差の要因についてです。この男女間賃金格差の開示は、女性活躍推進法により、常時雇用労働者が301人以上の事業主に対して義務付け化されておりまして、次の通常国会では101人以上の改正案が提出される予定だと聞いております。そこで、ある会社で社内に蓄積された人事データから分析したわけですけれども、これはその企業内にある研究開発組織と、弊学のELSIという社会技術共創研究センターとの共同研究ですけれども、男女の賃金格差の要因を明らかにしようということです。
まずは、そもそも男女の年収の平均格差は37.5%、男性の賃金を100としたら女性は62.5となっていました。その中で、年齢や経験年数等で説明できる格差が30.5%で、その残りが説明できない男女格差ということです。これは差別によるものと考えられます。
それを踏まえて、その企業はどういう対策をしたかというと、経営層から男女間賃金公平性を担保する方針を打ち出し、通常の昇給予算と別予算を確保し、対象の女性に対してベースアップをしました。組織外の賃金格差を引き継がないように採用の方法を見直しして、その結果、2023年8月には格差が約7%から約2.5%に縮小しました。
こういうふうになったわけですけれども、こういうふうに専門的な分析は外部に委託したほうがいいのですけれども、人事データを開示することはなかなかないと思います。ある意味、分析方法、こういうやり方さえ提供してそちらでやってもらったらいいのかなと思っております。
最後ですけれども、これも産学連携の共同研究なので、ちょっと研究に近いのでが、ある地方の中堅企業、パーティションの専業メーカーとの共同研究で、視覚的な開放度が高い会議室と低い会議室とでは、コミュニケーションの質・量がどのように違うのかを検証しました。視覚的開放度が高い会議室は、早い話がガラス張りの会議室です。ガラス張りで、周りに人が通ったりします。低いのは、壁に囲まれた普通の会議室であります。
そこで、4人1組のグループにお題を与えて、どういうふうなコミュニケーションが取られるか。特に着目したいのは、コミュニケーションの量、笑いの数や沈黙の時間。そして、質はテキスト分析の中にある感情極性値を調べました。そうすることによって違いがあるのかということを調べました。これは直接、それで専業メーカーの業績に影響するわけでもなく、本当に研究に近い内容でありまして、これがEBPMというふうにはなかなか言えないのかなと思います。
まとめはこういうことです。3つのトピックについて話しました。統計人材の不足。統計データの整備。価値があるかどうか。
重要なのは、統計マインドの形成。研究者の活用。二次利用データの活用ということであります。
ちょっと長くなりましたけれども、以上で私の発表を終わらせていただきます。
○守島部会長 佐々木先生、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、質疑応答と自由討議に入りたいと思います。ただいまのお二人の御説明に関しまして、御質問、御意見のある方は挙手をお願いいたします。
まず、武田委員、よろしくお願いいたします。
○武田委員 申し訳ございません。御指名ですので、先に質問と意見を述べたいと思います。
気仙沼の皆様、佐々木先生、大変貴重なプレゼンをいただきましたことをお礼申し上げます。ありがとうございました。
気仙沼様のお取り組みは、大学にお声がけしたら意外とという点や、逆にお声がけしていなかったという点等やってみて分かったことが興味深いと感じました。地元のために働きたい、地元で家族と一緒に暮らしながらお仕事をしたい、といったニーズは、どの専門分野・学歴でもあると思いますので、ぜひ今回の気づきを今後に生かしていただき、地元で生き生きと働く方のモデルケースを幅広く知っていただく取組があると良いと思います。
同時に、日本全体として見れば人口が減少していく中で、どの地域もそれぞれ取組をされると、取り合いになると思います。そのため、大前提として、地域で働きたい方々が、より好んで地域を選べるような環境づくりをするとともに、人口減少を前提とした上で、デジタルやAIなどを活用し、代替可能な業務は代替する。逆に、新たに地域で働きたいという方々には、人ならではの仕事により力を発揮していただきたいと思います。
人が少ない中で疲弊してしまうと、魅力が落ち、様々な取組をしても来てくださらない悪循環になるため、両立できる取組が必要と思いながらお話を伺いました。
佐々木先生におかれましては、大変詳しくEBPMについて御報告いただいて、ありがとうございます。統計的な手法や、統計を理解し、データを整備できる方が必要という点は完全に同意いたしますが、EBPMの意義は、政策・施策のアウトカム、目的は何かを全員で共通のゴールとして認識すること。それにより、施策遂行によりアウトカムに近づいているかを把握していくこと。また、そういった意識を持って取り組むマインドの改革につながることです。
マインドが変わっていけば、アウトカムに向かって頑張りますので、モチベーションも上がってくると思います。地方自治体も国・政府も、政策をつくっている人たちのマインド、モチベーション向上につながっていくことが、一番本質的に政策を変えていくと感じます。ゴールに対して、打った施策がよい効果をもたらしましたと住民に説明できれば、住民の財源を使った効果を政府、地方自治体にも示す効果があると思います。
さらに、データの分析ができる人材を多く確保できない中で、AIをうまく活用することが極めて重要と思います。EBPMを回すスピードも上げられると思います。つまり、EBPMの意義は、政策評価をきちんと行うことが一番重要ですが、それだけではなく、マインドの改革につなげ、それがモチベーションになり、結果的に施策の質が高まり住民にも見える化していくサイクルを回すこと、さらには、AI活用でEBPMの作業負担を減らすことがポイントではないかと思った次第です。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
石原委員、お待ちなのですけれども、川﨑委員と武田委員は今日、早く抜けられるということで、申し訳ありませんけれども、川﨑委員、次、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○川﨑委員 川﨑です。恐れ入ります。では、先に発言させていただきます。ありがとうございます。
気仙沼市の方と佐々木先生と、御説明どうもありがとうございました。
私のほうから、まず気仙沼市さんのほうに少し質問とコメントをさせていただければと思います。地方で働きたい人材、地方出身の人材の確保ということで、着実なお取り組みをされているなと受け止めたのですけれども、高校を卒業するときに地元を離れていく学生が大宗で、そのタイミングでいろいろなアプローチをしている、マッチングしているということは理解したのですけれども、高校を卒業して地元を離れるタイミングから就職するまでに2年ないし4年の期間があると思うのですけれども、その間に何らかのフォローとか、そういった取組をもしされているのであれば、少しヒントとして御紹介いただければというところが質問です。
もう一つ質問は、今回、その施策そのものは地域雇用活性化推進事業でされていたということでありましたが、学生たちが選んでいく大きい要素として賃金がありますと。賃金をこれからどうやって継続的に上げていくことができるか、ないしは一定の賃金を出すことができるのかということになってくると、企業の労働分配率がどうあるべきか、ないしは生産性を上げることによって賃金へ還元していくことができるかということもポイントになってくると思っていまして、そういうところでの話し合いがどういうふうな状況になっているのか、あるいは行政としてもどういうふうな働きかけを考えられているのかというところも、もし何かお取り組みがあれば御紹介いただければということであります。
地域で働きたい人たちがずっと働けて、そこで生活を成り立たせて、また地域の企業が発展することが地方創生につながっていくと思いますので、その企業自体の生産性というところも気になったので、質問させていただきました。
すみません、続けて発言してしまいます。佐々木先生、御説明、どうもありがとうございました。いろいろな形でEBPMが進んでいるということは理解したのですが、まとめの中でも課題点としてあったところが、統計データの整備がまだまだ進んでいないところがあるという御説明がありました。EBPMを進めていこうと思うと、いかに使いやすいデータが分かりやすいところにあるのかということもポイントになってくると思っています。
こういったものの取組が行政ベースで、これは地方でやっていくのか、国レベルでやっていくのか、省庁レベルでやっていくのか、いろいろあるかもしれませんけれども、この辺の整備の状況がどういうふうになっているのかというところも、少し何か御知見があるのであれば共有いただければと思います。データの整備と人材の育成は両輪で進んでいくと思っていますので、質問させていただきました。
それぞれ、よろしければ御回答いただければと思います。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、先に気仙沼市のほうから御回答いただけますでしょうか。
○気仙沼市(齋藤) 気仙沼市の齋藤でございます。御質問ありがとうございます。
まず、1点目でございます。高校を出て、皆さん離れますので、そこへのアプローチでございますが、現在は先ほどの資料の16、17にもありますが、「企業ガイドブック」というのを配っております。これは高校3年生全員に対して配っておりまして、進学の方についても全員に配っております。また、成人式、二十歳の式典のときにも全員に配っております。高校生とか大学生は、地元の企業を結構知らないのですね。知らなければ選択されませんので、知っていただきまして、地元にはこういった企業がある。そして、こういった取組をしているということで当たっております。
ガイドブックは、あえて冊子で作っておりました。ホームページにも載せておりますが、冊子で配っているのは、親御さんたちが地元の企業を結構知らないのです。御父兄の方々も知らないので、学生本人だけじゃない。田舎にいると、都会の企業のほうがいいんじゃないと親も言うので、そういった取組をして、まずは地元を知ってもらって選択肢に加えていただくという取組を考えて行っているところでございます。
それから、先ほどちょっと申しましたが、厚労省事業では賄えないところがございましたので、一部の成人式などは市の予算を活用して増刷作業をしているところが1つ。
それから、2点目の賃金につきまして、ここは難しい問題で、結局は売上げが上がらなければ賃金の向上にならないと思っております。また、生産性向上のほうも、先ほど委員さんからの話もありましたが、デジタルとか、そういうものを使った生産性向上の取組が必要と思っておりました。ですので、この事業とはまた別の話でございますが、IT化とかデジタル化に関する支援とか、あるいは業態を変更していくことによって生産性を上げる、売上げを上げる取組とか、事業を発展させる取組に対する支援というのも現在検討しておりまして、そういったことも実施してまいりました。
これまで労働集約型といいますか、大きな人数をどんと使って現場のほうで働くという会社もありましたので、人口減少もありますし、売上げもなかなか難しい中ではそういった転換が必要だと思っておりますので、事業の支援も行っているところでございます。具体的内容は、今、難しいのですが、そういった取組をしているところでございました。ありがとうございます。
○川﨑委員 ありがとうございます。
情報を提供することに加えて、魅力ある職場づくりも生産性の高い仕事というところになると思うので、産業振興とうまく連結していくことができるのもポイントかなと思いまして、よく分かりました。御説明ありがとうございます。
○気仙沼市(齋藤) ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、佐々木委員、いかがでしょうか。
○佐々木(勝)委員 ありがとうございます。
まず、武田委員のおっしゃったマインドの改革というのは非常に賛成するところであります。このEBPMのいいところというのは、アウトカムが目に見えやすいことです。そのアウトカムを決めて、そのアウトカムが本当にあったのかどうかを数量的に明らかにすることにあるので、非常に目に見えやすいです。そうすることによって、まずは職員の方が、じゃ、本当に自分が実施した政策がどれだけアウトカムに近づいて、どれだけ達したのかが目に見えやすいから、それがモチベーションにつながるというのは、おっしゃるとおりだと思います。
さらには、見えるがゆえに、それも住民の方にも見える化しやすくなります。このような政策の効果がありましたよ、というところが分かりやすいところで、EBPMの利点というのは、職員に対しても住民に対しても数量的に見える化というところが1つの利点かなと思います。
おっしゃるとおり、人材が不足するので、今後、AI活用というのは非常に重要でありまして、我々もよくプログラムで悩んだらChatGPTに聞きます。本当に教えてくれますから、非常にありがたいと思います。そういう意味では、人材不足の中で適切にAIを使うというのが有効かと思います。
次、川﨑委員の御質問の中でコメントでありましたように、各自治体において統計のデータの整備というのがまだまだ不十分です。今回も調べてみて、思った以上にあったなという感触がありますけれども、よくよく見れば、大きな、まあまあ、それなりの規模の市ばかりです。関西で言えば、神戸市だったり、尼崎だったり、豊中市だったり、隣の吹田市も30万人規模の人口でありまして、箕面市だったり。そういうところはデータを非常に整備していて、どこまで税務データを研究者に開示しているかどうかはちょっとわかりませんが、整備しているでしょう。
だからといって、実際、もっと小さな自治体はどうかというと、これはかなり怪しいと思います。例えば、ある県の村になると、そもそもマインドもないわけなので、そういう人と話すと、データを活用するという発想がありません。今後はある程度規模の大きい市町村は自分たちで整備していくことができると思いますが、小さい市町村では、マインドがないのと、それだけの予算がないというところから、難しいでしょう。県の行政が中心になって推進するような形にしなければいけないのかなというのは、個人的には思います。
以上です。
○川﨑委員 分かりました。ありがとうございます。
そういう意味では、県単位のところの取組が大きいといったところですね。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、石原委員、お願いいたします。
○石原委員 ありがとうございます。石原でございます。
どちらも非常にすばらしい御発表をいただきまして、本当に勉強になりました。ありがとうございます。
まず、気仙沼様のほうにお伺いしたいのは、途中、御発言の中で、雇用創造協議会のほうが自由度が高いのでというふうにおっしゃったところがあったかなと思って、それは非常に大事なところだなと思っております。様々な自治体が外部の協議会というところを活用しながら、女性の活躍推進とか若者に対する雇用のお世話とか、していると思うのですが、これが本当に自由度高く、市の公共だからできない部分ということ。何を申し上げているかというと、例えば先ほどおっしゃっていた企業ガイドを作りましたというときに、賃金を開示したくないという会社は載せなかったとか、同業他社、ライバル企業も隣同士のページに載りますというのが、私は非常によいことだと感じました。
この政策基本部会でもずっと言っておりますとおり、どの会社でも雇用を生み出す必要がある時代ではないと思っていて、逆に言うと、どの会社も雇用の受け皿だから生き延びなければいけないという話ではなくて、よい雇用を提供する企業が生き残っていく。そこによい人材が集まっていくということを、多分目指していくべきだと思うので、このよい雇用を提供できる会社が、そこを選ぼうとしたときに目に見える形で施策を進めていらっしゃるところは物すごくよいなと思ったのです。
感想も含めてですが、そのときに自治体と協議会というふうに2者が連携なさって様々にやると思うのですが、市では言いづらいことを協議会のほうが引き取るみたいに、よい形の自由度を高くできるのはなぜなのですか。自由度の低い2者の関係というのも、私、様々な地方自治体で見ているように思うのです。例えば、市の言うままですという協議会とか、ほとんどクリエーティブなことを何もおやりにならない協議会というのもあるのですが、自由度が高いということを上手に生かして、御協力もされつつ、意味のある政策を進められているというのは、どういう工夫で、どういう御関係性がおありなのかなというのをお伺いしたいと思いました。すみません、ちょっと長くなりました。
もう一つ、佐々木先生もありがとうございました。非常に勉強になったのですが、私が一番気になっているのは、まさに政策を振り返る形でのEBPMではなくて、先ほど103万円の壁、その後、女性の就業率がどうなるのだろうかという予測もできると先生がおっしゃったところが非常に関心の対象でございます。これを民間の、まさに中堅・中小の企業に置き換えたときに、例えばこの定食の値段を1000円から1300円に上げたら、実際にはお客さんはどうなるのかとか、従業員の給料を1.2倍にもししたら、その後、やる気が高まって生産性が高まる部分と自分たちの財務を圧迫する部分がある中で、どういうふうになるんだろうかというのを予測したいというニーズはめちゃめちゃあるのではないかと思うのです。
そのように企業の意思決定に関しても、エビデンス・ベースといいますか、統計的に予測して何かを考えていくことは、現実的にできそうですかというのをちょっとお伺いしたいと思いました。
すみません、長くなりましたが、以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、気仙沼市様、よろしくお願いします。
○気仙沼市(畠山) ありがとうございます。雇用創造協議会の畠山のほうからお答えさせていただきます。
私個人としましては、もともと被災者支援等々をしているNPOからこちらの団体に入っておりまして、そもそも比較的自由にやってきたという下地がございます。あと、基本的には、何かあったときに相談・報告はきちんとするのですけれども、気仙沼市としても自由にやっていいよということで、もともとの風土といいますか、ございます。申請書のとおりやらなければいけないという部分はあるのですけれども、市内ではいろいろな団体がいろいろなことをやっているのです。というのも、例えばDXのセミナーとなると、地元の信用金庫さんがやっていたり、県がやっていたり、国でやっていたり。10月、11月に同じようなセミナーを7個8個やっていたりするのです。
私はそういうところを見ていて、本当に意味があるのだけれども、もったいないなと思いまして、一言、同じことをやっている団体で1回集まりませんか。集まって、そこでちょっと調整しませんか。そして、そこを共催とかで潰せませんかねと言ったら、待ってましたみたいにいろいろな団体が参加しまして、そういうところで自由に、もともと団体の名前は知っていたけれども、実際何をやっているか分からなかった団体というのが結構あったりするので、そこを集めて。ということは、協議会がハブになって動けば、もっと地域としてよくなるのではないかなと思って、そこで自由度が高いのかなと思っております。
あと、先ほど言った、よい雇用が提供できる会社が目に見えてということですけれども、それもそうだと思いますし、あと、ちょっと手直しすればよくなる企業さんというのは地方に結構ございます。地方あるあるですけれども、隣の会社がここの大学でこういうことをやっているようだよと言ったら、じゃ、うちもやろうかみたいなことはよくあることです。なので、ちょっといい先進事例みたいなことを横に波及していって、私、大学に連れていってくれませんかみたいなことで一緒に行ったりして、地域の底上げを行っております。
○石原委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
佐々木先生、よろしくお願いします。
○佐々木(勝)委員 どうもありがとうございます。
事前の調査評価ですね。おっしゃるとおり、非常に重要な話でありまして、例を挙げたような103万円の壁や106万円の壁が撤廃することによって、女性の週労働時間がどう変わるかというのは、さっきお話しした神戸市がデータの提供に非常に積極的なので、もしかしたら税務データを使ってできないかと一瞬思って考えていましたが。しかし、よく考えたら税務データは非常に規模の大きいデータなんですが、欲しい情報は賃金と労働時間がなく、収入しか分からないというところが問題ですね。
だから、大きなデータにアクセスするときにいつも困るのが、この情報があったらいいのにということが非常に多くて、そのためになかなか思いどおりの研究ができないというところがあります。それが1つ。
もう一つ、事前の評価というときに、先ほど2ページ目にお話ししたような誘導形推定の方法ではなく、むしろ構造推定の方法が必要です。大橋先生が非常に得意な分野であると思うのですけれども、構造推定というのがあるのですが、正直言って非常にテクニカルであります。例えば、中高年者縦断調査という厚労省がお持ちのデータを使って、高齢者の退職のタイミングの要因を推定して、そこから今、議論されている在職者老齢年金制度の変更がどういうふうに引退のタイミングを変えるかということをやろうとしているのですけれども、難し過ぎて全然手に負えないというところであります。データさえあればできないことはないのですけれども、そういうものは私以外の研究者とぜひ連携していただきたいなと思っております。
以上です。
○石原委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、大橋委員、お願いいたします。
○大橋委員 ありがとうございます。
佐々木先生のお話の途中からしか参加できなかったので、佐々木先生に御質問なのですけれども、大変御無沙汰しています。政策立案の現場に統計人材をしっかり交えてしていくことは重要だということは、私も認識を同じです。政策立案に有効に統計が生かされるために、そうした人材をどう組織に入れたらいいのかというところです。ややもすると、統計は彼彼女にやらせておけばいいやみたいな感じになってしまいがちのような気もしますので。
他方で、政策立案は必ずしも統計だけじゃなくて、いろいろな部署とのコーディネーションとか、あるいはほかのステークホルダーとのコミュニケーションとか、いろいろなものが混ざっての政策立案だと思うので、この辺り、統計人材にどういうふうな関わらせ方をするのがプロフェッションとして一番伸ばせる機会になるのか、もし何か事例でそういうのを御覧になったあれがあれば教えていただければと思いました。ありがとうございます。
○佐々木(勝)委員 ありがとうございます。
事例というところまではないですが、最初に話したつくば市の話というのは、職層別研修制度とあるので、多分、全員に対してはそれなりの統計マインドを植え付けるような研修はしているのかなと思います。ただ、データを使える人は本当に一部だけでよくて、「あいつに任せておけ」みたいな形でいいと思うのですけれども、どういうふうにデータを抽出して、どういう目的で、仮説は何で、何を検証するのかというのは、できるだけ多くの人が共有できるマインドを持ったほうがいいのかなと思います。そうすることによって、統計人材育成のところで話したとおり、課題解決のための仮説を立てられるようになれるのではないかと思っております。
そういう意味では、できれば全員にそういう統計マインドを持っていただき、データを使えるのは一部でいいのかなと思います。理想的にはそうなったほうが一番いいのかなと思っています。
○大橋委員 ありがとうございます。
私は、幹部がしっかりそういうふうなマインドを持つというのがすごく重要なのかなと思いました。すみません、ありがとうございます。
○佐々木(勝)委員 そうですね。当然、幹部も含めて全員ということです。確かに、部下の人たちや若い人だけがそういうマインドを持っても、上層部の人がそういうふうなマインドを持っていなかったら、なかなかうまいこといきません。さっきちょっとお話しした、ある村の話ですけれども、村長は非常に若い人で乗り気だったけど、そこの幹部の人たちは全くそういうマインドがなくて、全然話がかみ合わなかったということはありました。
○大橋委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに御質問、御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。
では、山川委員、お願いします。
○山川委員 ありがとうございます。
気仙沼の方に質問なのですけれども、2点ありまして、1つは、第1期に外国人の雇用について取り組まれたと書かれていたかと思うのですけれども、それの成果とか、あるいは何か見えてきた課題というか、あれば、簡単に教えていただきたいというのが1つと。
あと、高齢者、定義として65歳以上を使っていますけれども、割合がすごく増えているわけですけれども、高齢者の方の就労状況とか、あるいはその点に関して何か取組をされているのか、予定されているのか、この2点をお聞きしたいと思います。ありがとうございます。
○守島部会長 気仙沼市の方々、どうぞ。
○気仙沼市(畠山) ありがとうございます。
第1期の外国人の成果に関しましては、令和元年度、令和2年度、いわゆる新型コロナウイルスの関係で、実はコロナ前は、気仙沼というのはもともと技能実習生がすごく入っているところですので、外国人を雇いたいという企業さんはすごく多かったのですけれども、そもそももう入ってこられないということになりまして、令和3年の申請書を書くときには、これはまだ2~3年続くのではないかということで、もともと主要ターゲットとして置きたいところであったのですけれども、はっきり言いますと全く成果が出せず、外国人の就業を希望する方は集まらずというところで、第2期目では申請に入れなかったという経緯がございます。
また、シニア向けの事業に関しましては、合同企業説明会などは第1期事業として行っております。ものすごく需要がございまして、本当に元気な、最高80歳ぐらいの方とかがお仕事をしたいということで来られるのですけれども、なかなかマッチングせず、シルバー人材の登録などで仕事を請負という形でやられている方も出ているのですけれどもね。本当に元気な方々が、1時開始と言っているのに12時に来たり、すごく早く来られたりして、需要がすごく高いのですけれども、なかなかマッチング先がなくて困っているところがございます。
○気仙沼市(齋藤) 補足します。
外国人に関しまして、先ほど申しましたように、コロナの関係でできなかったところでございました。現在、特定技能や技能実習が毎年、どんどん増えております。間もなく人口の1%ぐらいまでになっております。それらの対策は必要と思っておりますが、これは雇用創造関係とは別の形で。先ほど1点言い忘れましたが、私は商工労働係という担当をしておりまして、実は商工と労働を両方持ってございました。それで、先ほどの事項もそうなのですが、各企業における技能実習についても、また別の事業の中で団体のほうと相談しながら支援しているところでございました。
あと、高齢者につきましては、高齢者向けの合同企業説明会なども工夫して、これはハローワークさんとの話し合いの中で、こういった取組が必要だねと実施してきたのですが、人は来るのですが、なかなかうまくいかなかったということで、これは今後も工夫が必要かなと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
石﨑委員、続いてお願いいたします。
○石﨑委員 遅れての入室となってしまいまして、申し訳ありませんでした。
私も佐々木先生の御報告の途中から入らせていただいたのですけれども、御報告の中で男女賃金格差の分析に関する大阪大学のケースについて取り上げていただいていたかと思います。情報開示に係る規定が重要であるというような議論は、この部会でも過去にも何度か出てきているかと思うのですけれども、開示自体が目的なのではなくて、その格差があるとしたときに、その原因の分析が重要というところで、まさにそれを示していただいている例なのではないかなという印象を持って、興味深く伺いました。その辺りの統計等の分析ができる人材とうまく連携しながら分析していくみたいなことが、できるだけ広く可能になるような形での支援だったり、そういう方向性というのが大事なのかなという印象を持ったところであります。以上は、質問というよりはコメントになります。
その上で、すみません、気仙沼市の方に、御報告を伺えなかったのに、資料を拝見していて伺いたい点について伺わせていただければと思うのですけれども、もし既に御報告の中で触れられていたら大変申し訳ないですが、今回、就職に向けたいろいろな事業の中で、求職者に向けて人材育成とか、そういう研修等も行われているというお話があったと思います。
この辺りの取組というのは、現状、恐らく求職者がメインターゲットであるのかなということを、資料を拝見しながら思っていたところなのですが、最後のスライドに定着というワードも出ていましたけれども、今後、就職した後に定着していく過程の中で、さらなるスキルアップであるとか人材開発的な取組の動きだったり、そういった考えというのが出てきているのかどうかという辺り。この事業の外の話になってくるのか、中の話になってくるのかというところはあると思うのですけれども、その辺りについて教えていただけるとありがたいです。
私からは以上になります。
○守島部会長 ありがとうございます。
気仙沼市さん、お願いいたします。
○気仙沼市(齋藤) 気仙沼市、齋藤です。
この活性化推進事業とは別の事業といたしまして、人材育成の部分は求職者と行っておりました。特に今年度は女性の活躍ということで、女性のデジタル人材を育てる講座。これもレベルを分けて開催しておりまして、そういった取組をしてデジタル支援。人によっては、今、仕事をしている方がさらなるレベルアップとして使っている方もいらっしゃいますけれども、そういったことの支援も別途行っております。こういった事業は、今後もさらに力を入れていきたいと思っておりました。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、逢見委員、お願いいたします。
○逢見委員 逢見と申します。今日はありがとうございました。
気仙沼市の方に質問させていただきたいのですが、資料23ページの「本地域における取組の特長」の中の「関係機関等との連携強化」という部分で、労働担当部署と地方創生・移住定住関係の担当部署の両方が事務局に参加していることが特徴であると言われています。私は、地方移住を促進するNPOの方からお話を伺ったことがあるのですけれども、その中では最近は地方移住に対する関心が非常に高く、問合せや引き合いが結構あるということを聞いたことがあります。地方移住を促進することによって、そこで雇用の場も提供して、うまくマッチングすればいいものになっていくのではないかと思うのですけれども、地方移住と雇用創出の連携・強化によってどういう効果が出てきているのかを1つ伺いたいと思います。
もう一つは、資料24ページの「まとめ」のところで、地域雇用活性化推進事業前後の比較があるのですが、事業前は「賃金(初任給)が低いことがハンデとなり、そもそも管外から大卒者などを採用できると思っていない」という状況が、事業後になると、「賃金だけでなく、休日、勤務時間、就職後のキャリア形成、生活環境などをもとに就職活動を行う方がいることを認識」したとの変化が見られたとのことです。つまり、初任給だけ比較したらやや見劣りがするかもしれないけれども、それ以外の部分でいろいろ魅力があって、そういうものを選択する人もいるということが新たな気づきだったということであると受け止めました。そうだとすれば、これをどのように伸ばしていくのか、そういう魅力をどう生かしていくかということが出てくると思います。何かこれから取り組もうということがあれば、お伺いしたいと思います。
○守島部会長 では、よろしくお願いします。
○気仙沼市(齋藤) では、1点目の担当部局の話でございます。移住・定住というのは、単に地方への移住を希望する方はいらっしゃいますけれども、どうしても懸念となっているのは、生活、働く場というのが結構大きくありました。その中で、市内にも震災後、いろいろな団体がございますけれども、移住・定住関係の団体との連携を密にすることで、ワンストップで対応できるというのがメリットとしてあったところでございます。そういう意味では、効果としてはあると思っておりました。一緒にできたことがあると思います。
2点目の賃金以外の部分でございます。まさに、これは我々としても実際やってきたことの気づきでございますけれども、就労環境、賃金以外の環境を大学生とか学生が意外と気にしていることがある程度分かりました。とは言っても、企業によっては、年間の休日日数が100日を下回るといった企業が多々ございました。そういう中で、「企業ガイドブック」などでお互い比較してもらうことで自分の会社の位置を確認してもらって、少しでも改善に実際に取り組んでいただいた企業もございます。そういった取組もございます。
あと、前々回、第34回の部会のときにWill Labの小安さんが発表されていましたけれども、現在、気仙沼市では、ジェンダーギャップとかウェルビーイング、市民の暮らしやすさに取り組んでおります。この雇用の活動とは別でございますけれども、就労環境の改善が必要ということで、そちらの事業を通じて企業のほうの就労環境を改善していただいて、全体としての底上げを図ってきているところでございます。それも今後力を入れていきます。
○気仙沼市(畠山) 推進員の畠山のほうからも発言させていただきます。
私が20年ほど前の学生時代、新規求人とか新卒のときは、大卒は20万円を超えていればみたいな20万円議論みたいなものがあったかと思いますが、今の学生さんのお話を聞くと、お休みというところに注目することが結構多いなというのがございました。給料が低いから来ないというよりは、やることとか、どんな内容の仕事をするのかとか、やりがいとか、そういう部分にフィーチャーされることが多いなと感じております。
あと、気仙沼市としての魅力も、私も気仙沼市に住んでいて気づかないところがあるのですけれども、気仙沼がいいんだ。あと、震災関連とかで気仙沼に一度来たらすごくいいのだと、そのまま移住する子もございます。また、学生と話をしていると、意外に漠然とした考えじゃなくて、これになりたいという子たちはそれに進むのだと思うのですけれども、気仙沼で話をすると、全然聞いてくれないだろうなと思った子が、振り返って足を止めて話を聞いてくれることが結構ございます。
なので、いつも言っているとおり、知らないものから選べないということで、給料が低いから選んでもらえないではなく、こういうことをやって楽しいんだ、こういうことをやると自分がやりたいことを気仙沼市であればかなえられるのだというところを主にメインに話をしていると若い子たちに刺さるということで、気仙沼市が選ばれているのではないかなと思っているところです。
○逢見委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
続いて、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 ありがとうございます。
私も途中からの参加でしたので、佐々木先生の最後の3分ぐらいしか聞いていないのですけれども、まず、佐々木先生の御説明の資料の中に、中小・中堅企業のEBPMの事例として男女間賃金格差の例が載っていて、これは結構いろいろなところで紹介されている事例かなと思ったのですけれども、内容というより、これはどういう契機でこういうプロジェクトになったのか、可能な範囲で教えていただきたいと思います。というのは、御説明あったように、テクニカルの部分というのは専門家でないとできないということだと思うのですね。そうすると、1つのこれからの大学の役割ということで言うと、こういう民間企業との連携みたいな形で何かをやっていくことはあり得ると思うのですね。
そのときに、例えば私の仮説というか、思ったのは、まさに社会人教育みたいな中で、社会人の学生がそういうことを勉強していると全体像が分かっているので、そういう形で大学と連携しようという可能性というのがあるのではないかなと。
ですから、可能な範囲で、どういう経緯でこういう連携がされたのかということと、もう一つは、そういう社会教育という中で、今後の大学がこういう形で貢献していくという可能性に関して、どうお考えかということを教えていただきたい。
それと、すみません、気仙沼市さんのお話、聞いていないのに、資料をざっと見させていただいて非常に興味深いなと思っていまして、1点、非常に興味があったのは、3つの事例が載っていて、2つ目は、説明会で採用はできたけれども、定着ができなかった。3つ目のケースだと、それが定着したということで、まさに若い人の定着というのは非常に大きな問題になっている。採用も大事ですけれども、定着してもらわないと駄目で。1つ、地域同期会の立上げという話が載っていて、これはもしかしたらもうお話があったのかもしれません。私は、ここは非常に重要な大きなヒントがあるのではないか。
特に地方の場合は、さっきの御質問に対する御回答にもあったと思うのですけれども、給与もあるのですけれども、その地域が好きだとか、つながりがあるということで、こういうネットワークを意識的につくっていくことはすごく大事なのではないかと思うのですけれども、これはどういう経緯で、企業さんがやられたということなのか、行政の支援が何かあるのか、ここのプラスアルファのところをちょっと教えていただきたいということです。よろしくお願いします。
○守島部会長 では、佐々木先生のほうから、まずお答えいただけますでしょうか。
○佐々木(勝)委員 ありがとうございます。
この男女間賃金格差の要因の分析のところですけれども、書いてありますように、ある企業、中堅企業ですけれども、実は従業員数からしたら大企業と言ってもいいかもしれません。どういうふうな経緯だったかというと、この社会技術共創研究センターのセンター長と個人的なつながりが出発点だと理解してありまして、そこからこの研究開発組織といろいろ研究して、今では、たしか共同研究というプロジェクトを立てて、3年プロジェクトという形で契約していると思います。ですから、人文社会科学系の中で、こういう企業と共同研究をし、そして外部から資金を取ってくるというのは非常に珍しいことで、非常に喜ばしいことなのですけれども、スタート時点は、社会技術共創研究センター長とのつながりだったと思います。
あとは、こういうふうに協力してくれる企業というのは、トップダウンで上層部の方も非常に理解のある方で、アカデミックなスキルを利用して、このような男女間賃金格差の要因を分析するということに非常に理解がある方が多いです。
社会人教育ということですけれども、我々のところも博士後期課程の充足率が非常に低くて、何とかして入学者を増やしたいのですけれども、1つの方法は、社会人教育に入学してきて、計量経済学の基本的な使い方を習得したら、元の企業に帰ったときにこのようなことができるのではないか、または大学とこのように共同で研究できるのではないかという形で、企業と我々の間の橋渡ししてくれるような人材として社会人になってもらいたいなと心の中で思っています。
博士後期課程に入学する人が、もともとそれほどバックグラウンドとしてミクロ経済学やマクロ経済学を理解していない中で、いきなり博士後期課程というのはハードルが高いのが社会人の博士課程の難しいところであるのかなと思います。これが現状でございます。
ちょっと答えになっているかどうか分かりませんけれども、以上です。
○山田委員 いえ、ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、気仙沼市さん、お願いいたします。
○気仙沼市(畠山) ありがとうございます。
我々、辞めた方にお話を聞きますと、若い子はというわけじゃないのですけれども、共通する認識というのは、相談できなかったとか、状況を外に出せなかったというのが多いかと思います。また、気仙沼市は何千人単位の大企業というのがございませんので、多くても10名以下の新卒採用というところでして、同期がいないのです。なので、うちのほうから、例えば企業向けのセミナーに、初めて名刺交換する場として若い子を送ってくれませんかというお話をしまして、企業さんから若手3年目以内ぐらいの、1年目の子がいればベターですけれども、そういう子を送っていただいて、初めてそこで同期・同年の子と名刺交換して、そこでLINE交換とかしていただいて、自分のお話がいろいろとできる場をつくっていければなということで、地域同期というものをつくりました。
企業さんもそういう活動にすごく積極的ですので、地域同期に参加している企業様の離職率はすごく低くて、そこから、今の若い子は飲み会とかにあまり参加しないということはあるのですけれども、同期の子が、年齢が同じような子で、同じ気仙沼というところに縁もゆかりもない状態で来て、横でお話ができるということで、その子が頑張れる強みになれるといいますか、相談する相手となって、その子が残るケースがございます。
○山田委員 分かりました。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかに御質問、御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。
では、ちょっと私から気仙沼市の方に1点、それから佐々木先生に1点、御質問さしあげたいのですけれども、気仙沼市の資料の8ページ、9ページ辺りにABC事業というお話が出てきます。そこでセミナーをやったり、いろいろなことをやっているというお話が出てくるのですけれども、そのときのコンテンツ、例えばどういうセミナーをやるのかとか、どういうふうな内容をパンフレットに入れるのかとか、そういう部分の知識とか材料みたいなものは、今回やられてみて十分というか、ある程度あるなという感覚だったのか、それともそこの部分があまりなくて、セミナーの内容が薄かったという言い方はちょっと失礼な言い方かもしれませんけれども、結果としては難しかったということなのか、その辺のところの感触をちょっとお教えいただけますかというのが気仙沼市の方への質問です。
それから、佐々木先生に対する質問は、さっき石原さんが事前の予想みたいなことをやっていくことが重要。私も非常にそう思うのですけれども、そのときにお答えを聞いていて、ちょっと驚いたというか、多少分からなくなってしまったのですけれども、佐々木先生、資料の中でもコメントの中でも御発表の中でも、OR、シミュレーションというお話を大分されていたように思うのですけれども、そういう手法を使ってプレディクティブなEBPMをやっていくということは、もちろん精度とか、そういう問題ではいろいろなことが起こるかもしれませんけれども、そういう可能性というのは特にお考えになっていないのでしょうかというのが1つ質問であります。
では、すみません、気仙沼市の方、お願いできますでしょうか。
○気仙沼市(畠山) ありがとうございます。
実を言いますと、この地域雇用活性化推進事業というのは1期3年の事業でございます。申請書を作成するときにこういうセミナーをやりますということを書くのですけれども、いいものと悪いものがあるのですけれども、同じ内容ですと、1年度目に参加された企業さんが3年間、同じような内容を聞いてしまうということなので、我々、第1期のときに、これは少しカスタマイズしたいなということでいろいろ考えさせていただきました。
例えば、経営力拡大のセミナーに関しましては、単純にシンプルにSNSを使って売上げをアップしませんかみたいなセミナーを行わせていただきました。スマホを1台持ってきてくださいということで、こちらは企業様からすさまじく好評でして、ぜひ次回もやってほしいというお声がございました。
また、定着化のセミナーに関しましては、実は令和4年度にアンコンシャス・バイアスということでセミナーを行わせていただいております。ただ、令和4年度時点にそれをやったときには、今ほど騒がれていないというか、今ほど浸透していませんでして、アンコンシャス・バイアスって何ですかということで、全然人が集まりませんでした。ただ、その後、資料を共有してくださいということで共有させていただいたところ、去年、畠山さんがやってくれたセミナー、ようやく意味が分かってきたよ。実は、あのときに参加すればよかったというお声は今、出てきているところです。
我々も何が刺さるのかというのを試行錯誤でやっていまして、例えば女性人材の活用のセミナーに関しましては、面接で女性の様々な世代の方が来た場合、昔と違ってこういうことを言っては駄目だとか、そういうセミナーもロールプレイングでやらせていただいたり、ここは参加する企業様は少ないのですけれども、参加された企業様からはおおむねとても好評でして、もっとこういうことを。
先ほど言ったとおり、大学生が採れないという思い込みがある地域ですから、チラシとかを配布しても、アンコンシャス・バイアスって何ですかみたいな感じで参加されない企業様が多いのですけれども、その辺を丁寧にチラシを作成したり、商工会議所様のダイレクトメール等を出したり。
あと、気仙沼市の公式LINEというものがございまして、これが結構若い方とかは見ますので、DX化というわけではないのですけれども、そういう部分で周知して参加企業と参加求職者様のほうに促しているところでございます。
○気仙沼市(齋藤) 1点だけ補足すると、そういったセミナーは、協議会の推進員のメンバーだけではなくて、ふだんからいろいろな団体の方々と話をしていますので、いろいろな方から情報をいただきながら、こういうものもいいのではないかとか。例えば、女性団体から提案いただいたこともございますし、そういったネットワークの中で考えてきたところでございました。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
続きまして、佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木(勝)委員 どうもありがとうございます。
事前の評価という話ですけれども、ちょっと言いましたように、これは最初の2ページ目の傾向スコアマッチングだったり、差の差分析だったりとか、そういうものとはまた違って、よく言われる構造推定という方法でありまして、これは最初から経済理論モデルがありまして、そのモデルをベースに、経済主体が最適な意思決定を示す構造の関数を識別し、それに基づくパラメータを推定するような手法なのですけれども、非常にテクニカルな手法であります。
さっき私がお話ししたとおり、個人の高齢者の退職の意思決定モデルを、一応経済モデルをつくってデータに当てはめてパラメータを推定し、その得られたパラメータからデータを再現したときに、本当に実際のデータと合うのかどうかを確認します。非常にテクニカルな話で、正直言って、口で言っていますけれども、私自身、全然できていないというのが実情です。ただ、そういう手法があります。2ページ目で言ったような事後の政策評価という方法もあると同時に、事前の評価もやる手法というのがありますよということであります。
ORの話は、経営改革という話だと思いますけれども、僕の言葉の使い方が悪かったかもしれませんが、ここで言いたかったのは、こういうデータ分析よりも、もっとこの業務を効率化するように、第33回の部会で報告されたハマヤさんの、GoogleのWorkspaceを使って業務の効率化を推進し、DX人材を育成し、そして業務の効率化をしていくということをどんどん推進したほうがいいのかなということでありまして、ORで事前の評価をするという意味では、ここで僕は言っていないつもりであります。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですか。オンラインの方も大丈夫ですね。
ありがとうございます。時間も大体よくなってきましたので、これで気仙沼市様と佐々木委員の御発表に関しての自由討議を終わりにさせていただきたいと思います。
と同時に、今回の審議会もこれで終了とさせていただきたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。
最後に、事務局から次回日程について、お願いいたします。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 事務局から次回の日程についてですが、本日の議論を含め、前回行った、これまでの議論の整理を踏まえつつ、今年度末の報告書取りまとめに向けて進めてまいりたいと思います。
なお、次回の詳細な日程については、調整の上、追って御連絡いたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、今日の審議会をこれで終わりにさせていただきたいと思います。御多忙の中、皆様方、御出席いただき、どうもありがとうございました。