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第35回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和6年11月29日(金)10:00~12:00
場所
厚生労働省共用第6会議室(3階)
出席者
- 委員(五十音順)
- 石﨑委員、石原委員、逢見委員、岡本委員、川崎委員、佐々木かをり委員、武田委員、守島部会長、山川委員、山田委員
- 事務局
- 田中厚生労働審議官、朝川政策統括官(総合政策担当)、中井賃金政策推進室長、宇野政策統括官付参事官、藤木政策統括官付労働経済調査官、山田雇用環境・均等局総務課長、黒澤職業安定局総務課長、松瀬人材開発統括官付参事官、佐々木労働基準局総務課長
議題
(1)これまでの議論の整理について
(2)その他
(2)その他
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより、第35回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
本日は所用により、入山委員、大橋委員、佐々木勝委員、冨山委員、春川委員が御欠席でございます。また、所用のため、オンラインではお名前が出ていますけれども、武田委員がちょっと遅れての参加ということを伺っております。川﨑委員、佐々木かをり委員は途中での御退席と伺っております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして事務局から御説明をいただきたいと思います。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 オンラインでの開催に関して留意事項を説明いたします。
まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートにしてください。委員の皆様は、御発言の際は参加者パネルの御自身のお名前の横にある「挙手」のボタンを押して、部会長から指名があるまでお待ちください。部会長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度「挙手」のボタンを押して挙手の状態を解除してください。通信の状態などにより音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。
以上になります。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。まず、進め方について御説明いたします。最初に事務局から資料について御説明があります。次に、本日御欠席の委員から御意見をいただいておりますので、それを事務局から代わって読み上げさせていただきます。その後、自由討議といたしたいと思います。
それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
○宇野政策統括官付参事官 事務局の参事官の宇野と申します。私から資料の説明をさせていただきます。
本日はこれまでの議論を踏まえまして、資料1、参考資料1を事務局から提出しておりますが、その前に資料1、参考資料1の関係でこれまでの経緯を御説明したいと思います。
まず、参考資料2を御覧ください。今回の第4期が今年1月から議論をお願いしていますが、前回、第3期の労働政策基本部会の報告書というのが令和5年5月に取りまとまっております。この報告書におきましては、変化する時代の多様な働き方に向けてとして、人材育成やリスキリング、ジョブ型人事等の人事制度、あと労働移動について議論し、これらについて社会全体で考えることの重要性、あとは労働者のスキルアップ向上を労働政策において重視すべきということを示していただいたものでございます。
この議論の過程の中で、複数の委員から労働者の多くを占める中小企業、地域密着型産業の働き方について考えることが重要なのではないかという御意見をいただきました。このため、参考資料3を御覧いただければと思いますけれども、今回の第4期の議論につきましては、この会が始まる1月に御議論いただきまして、雇用者の多くを占める中小企業や地域密着型の産業において生産性の向上と労働者が能力発揮できる環境づくりは重要で、全体の生産性や労働条件の向上にとっても重要な課題であるということを踏まえまして、人口減少社会における中小企業・地域の生活を支える産業における労働者の能力発揮というテーマで本年1月から議論を進めていただいたということでございます。
この参考資料3というのは、1月の議論を踏まえまして、本年7月の第30回労働政策基本部会で資料として提出したものでございます。このテーマに沿いまして、これまで委員の方のプレゼンテーションや、あとは企業の方や様々な有識者の方々のヒアリングを計6回いただいたところでございます。そういったものを踏まえまして、今回、事務局で取りまとめたものが資料1となります。
資料1で今回整理したものでございますけれども、その際、これまで我々がデータ等を十分に提出しなかったということもございますので、そのデータ等について参考資料1ということで併せて配らせていただきました。今回は時間の関係もありますので、資料1について簡単に御説明させていただきたいと思います。
それでは、資料1を御覧いただけますでしょうか。まず、1ページ目を御覧いただきますと、例えば最初のところに我が国においては人口減少・少子高齢化が進行しており、特に少子化が進んでいると書いてあり、後ろに「参考資料p.2」と書いてあります。これはそれぞれのファクトについて参考資料1との関係性を記述したものでございます。そういった形で御参考で見ていただければと思います。
まず、資料1の1ページ目から3ページ目にかけましては、我が国の現況についてということで、人口、経済、労働市場の関係についてまとめさせていただきました。例えば1ページ目の人口については、いろいろ書いてありますけれども少子高齢化が特に地方で進んでいるとか、あとは(2)の経済関係につきましては、地方というのは6割弱を占めており、日本においては地方の動向の与える影響は大きいことを示しております。
また、2ページ目を御覧いただきますと、労働市場の関係では、企業規模、労働需要、労働供給の観点からまとめております。例えば企業規模では、日本全体で中小企業の従業員数が7割を占めている。また、地方を見た場合には、地方全体の従業員数のうち中小企業が8割を占めている。労働需要面では、正社員に対する人手不足感が地方県で相対的に高まっているとか、労働供給の面を見ますと、1990年代からマンアワーベースで見た場合に緩やかに減少傾向に入っており、2020年代に入りまして人手不足の産業・職業の範囲が広がっていることなどをまとめております。
また、3ページ目でございますけれども、労働市場の見通しにつきましては、JILPTが行った推計についても御紹介をさせていただいております。その推計では、経済成長と労働参加が同時に実現するシナリオではほぼ現状の水準を維持する形になりますが、実質成長がゼロで、労働参加も現状から進まないと仮定した産業では、2022年と比べまして2040年の従業者数が約1000万人減少するということが示されているところでございます。
こうした我が国の現状を踏まえまして、事務局として今後の議論に資するように、人手不足の要望について考えられる類型について、先ほど紹介しました参考資料3の基本部会で示した資料の3つの類型も参考にしつつ、4つの類型として提案させていただいたのが4ページ目から8ページ目になってございます。4ページ目を御覧いただきますと、1つ目の要因として、少子高齢化が進んでいる中で大都市圏以外の生産年齢人口が大きく減少することにより人手不足が生じる「地域における生産年齢人口減少及び人口構成の変化」による人手不足というのを一つの類型としております。
また、5ページ目では、2つ目の要因として、企業はDX人材などの専門的なスキルを持った求職者を求めていますが、それらの求人に対する求職者が少ないことから人手不足が生じる「企業が求める技能とのミスマッチ」による人手不足というのを類型化しております。
6ページでございますけれども、3つ目といたしまして、女性のL字カーブの現象や若年層のテレワークをはじめとした柔軟な働き方を希望する声などの様々な制約や労働者の就業意識が多様化している中で、働く労働者に対応した職場環境等の整備ができていないことから人手不足が生じる「職場環境のミスマッチ」というものを3つ目の類型としてお示ししております。
最後に7ページでございますけれども、企業が仕事内容などの情報をしっかりと求職者側に伝えられていないことなどにより、情報量において企業と労働者との間にミスマッチが生じている可能性があり、労働者が求めるキャリアや職務内容などが企業情報から把握できないといった情報の非対称性から人手不足が生じる「情報のミスマッチ」による人手不足として、4番目の類型としてお示ししております。
次に、8ページ目を御覧いただきたいのですが、人手不足の4つの要因に加えまして、現状において地方で生産年齢人口が大きく減少するとか、人手不足は地方の中小企業に強い傾向があるということがございますので、地域、中小企業というところを中心に考えることが重要ではないかということで、地域や中小企業に着目しまして検討すべき課題の対応策について議論を進めることができるのではないかと考えております。
これらの4つの類型やこういう形での整理については、今日、御意見をいただきまして必要な修正や考え方の整理をしていきたいと思っております。
ただ、我々としましては、この4つの類型や考え方を踏まえてこれまでいただいた御意見を整理したものが9ページ目から18ページ目になっております。4類型ごとにこれまで御議論いただきました委員の皆様方の御意見、または提出された資料やヒアリングを踏まえて幾つかの小テーマを設けて整理をさせていただきました。
まず、9ページを御覧いただきますと、人手不足の要因ということで「地域における人口減少及び人口構造の変化による人手不足」といたしました。データ等におきまして、若年層の人口流出や地方のジェンダーギャップという小テーマを設けさせていただきました。
10ページ目を御覧いただきますと、そのテーマについて10ページで意見を整理しています。例えば10ページ目の若年層の人口流出につきましては、いかに少ない人数で価値創造をするか、働く一人一人の価値創造力をいかに高めるかという御意見や、地方からの人材が流出してしまうのは待遇の良い仕事がないからであり、賃金をはじめとした待遇改善をしない限り雇用を確保できないという御意見や、G型産業がホワイトカラー産業であるのに対し、L(地域密着)型産業はローカルのエッセンシャルワーカー産業であるが、現状、GDPでは3割がG形で7割がL型になっているといった御意見もいただいているところでございます。
また、その次の小テーマの地方のジェンダーギャップにつきましては、人口流出が若い女性層中心なのは、地方の古いしきたりやしがらみを嫌う傾向が強くなっている可能性があるということや、ジェンダーギャップという大きな課題があるのではないかというヒアリングの御意見がありました。また、若い人もアンコンシャスバイアスがあり、中高生、大学生と企業との対話をしていくというのは興味深い取組なのではないかといった御意見があったところでございます。
続きまして、11ページは「企業が求める技能とのミスマッチ」というところで整理させていただきました。11ページはファクトをまとめたところでございますが、12ページの御意見のところですけれども、まず全体の技能とのミスマッチの関係では、AI革命によりリスキリングが今後ますます重要になるとか、付加価値創出力の向上に対する支援が重要であるとか、リスキリングを行っている労働者を十分に評価できていないのではないか、DXみたいな局面でも全体を調整できるような人が今の日本には全く足りていないといった御意見をいただいたところでございます。
また、女性のキャリア形成は、非正規雇用で働く人たちは正規雇用と比べて能力開発機会が少ないということも大きな課題ではないかという御意見や、日本の人的投資が公的にも民のレベルでも国際的には劣っているという指摘もあるといった御意見をいただいているところでございます。
続きまして、類型の3つ目でございます。13ページのところで、人手不足の要因として「職場環境のミスマッチによる人手不足」となっております。労働時間・休暇関係、賃金、柔軟な働き方という小テーマを設けさせていただき、データについて整理しています。
14ページで御意見を整理しておりますが、労働時間・休暇関係については、女性の就業率が高い理由の一つには3世代同居というのがあるのではないかといった御意見や、職場環境の改善には長時間労働の削減が重要、労働時間規制を厳格化する中で長時間労働を短縮するためには、サービス供給が過度に消費者の利便性を追求された形になっているような商慣行について見直す必要があるのではないかといった御意見もございました。
また、賃金につきましては、中小企業や地域の雇用においては、賃金や労働時間など、ディーセントということで見ると遅れているところがあるのではないかという御意見、また、男女の職種別の格差の問題ではないか、若者のIターン・Uターンは非常に重要といった御意見もいただいております。また、柔軟な働き方のうち、テレワークに関してはオフィス勤務とテレワークのベストバランスを探ることが重要という御意見もございました。
15ページですけれども、柔軟な働き方のうち、副業・兼業に関する御意見としては、副業を行っている社員のウェルビーイングが明らかに高いのではないか、副業など他の仕事を行うことができる環境の整備も労働者のエンゲージメントの向上につながる可能性もあるのではないかといった御意見もある一方で、副業については労使がしっかりと話し合ってルールを決めていくことが重要であり、働き過ぎという部分が一番心配であるという御意見もいただいたところでございます。
16ページですけれども、この類型につきましては様々な意見をいただいているところになりまして、その他として整理しております。そこでは安心・安全に働ける職場とする観点から、カスハラ対策への社会的理解を含めていくべきといったヒアリングにおける御意見や、商慣行の見直しでは消費者や受け荷主、発注者にまで業界の範囲を広げて意識を変えていく必要があるといった御意見をいただいているところでございます。
次が17ページでございまして、「情報のミスマッチによる人手不足」でございます。これに関しましては、企業の情報開示、若者に対する情報発信という小テーマを設けさせていただき、整理しています。御意見といたしましては、採用に入社10年後の賃金カーブがどう変化していくのか見せていくことが必要ではという御意見や、企業横断的なキャリアを担保するインフラストラクチャーの整備が必要だといった御意見があります。
若年に対する情報発信については、自治体からのヒアリングでは、学生はそもそも地域の企業が何をやっているのかよく知らないため、中学・高校生の段階から住んでいる地方にも働くことができる職種等があることを知ってもらうことが重要といった意見もございました。
以上、これまでの意見を整理したものでございますけれども、18ページを御覧いただきますと、本日、御議論いただければと思うのは、こういった類型の整理についての問題と、それを踏まえ、今後の労働政策の課題について、より必要なものについて、我々としましてはたまたまここに3つほどポツとして書いていますけれども、これにとらわれることなく、今後の労働政策のこのテーマにおける課題とか、どのような対応策が考えられるかというのも併せて御議論を深めていただければ幸いでございます。
また、18ページの下にありますとおり、次回はヒアリングとして少し市町村のヒアリングとか、あとはデータを基にした政策展開といったことも、委員の方からまだヒアリングいただいていない方もいらっしゃいますので、ヒアリングを実施できればと思っております。その上で、来年3月までに当部会として報告書の取りまとめをお願いできないかと考えているところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。本日は御議論のほど、よろしくお願い申し上げます。
なお、今回、事前にこの資料をお送りした際に、本日欠席の委員の方の中で意見を提出された方が4名ほどいらっしゃいますので、調査官の藤木から読み上げさせていただきたいと思います。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 よろしくお願いします。事務局の調査官の藤木と申します。
続いて、本日御欠席の大橋委員、佐々木勝委員、冨山委員、春川委員より御意見をいただいておりますので、事務局から読み上げさせていただきます。
まずは大橋委員の御意見になります。読み上げさせていただきます。
「人口減少社会における中小企業・地域の生活を支える産業における労働者の能力発揮」をテーマに議論を進めてきて、一応の整理をしていただいたことに感謝申し上げます。企業を取り巻く環境は、働き手不足だけでなく、温暖化対策や経済安保、サイバーセキュリティーなど、求められる対策が累積的に増加している状況にあります。地域の中小企業には、承継問題を抱えるところも多くあります。
リスキリングも柔軟な働き方も重要ですが、労働供給に併せて労働需要を適正化していく視点がないと、なかなか根本的な解決にはならないようにも思います。労働政策と、企業組織や産業構造の転換に向けての政策、産業立地政策等との組合せで、これまでにないような労働政策の新境地を開いていく意気込みがないと、なかなか現状の打開策にはつながらないのではないかと感じましたとの意見をいただいております。
続いて、佐々木勝委員の御意見になります。佐々木勝委員からは4つの論点をいただいておりまして、1つ目が人手不足の要因について考えられる類型に関して、2つ目が都市部の中小企業、3つ目が技能のミスマッチ(人手不足の要因②)と職場環境ミスマッチ(人手不足の要因③)の区別、4つ目が人材育成と評価のミスマッチです。それぞれの論点について、事務局から意見を読み上げさせていただきます。
まずは1つ目の「人手不足の要因について考えられる類型」に関してです。読み上げさせていただきます。
「人手不足の要因について考えられる類型」よりも「雇用のミスマッチの要因について考えられる類型」に見える。人手不足とは、地域、職種、技能に関係なく、求人数に比べて絶対的に求職者数が少ないことを意味する。
例えば地域AとB、どちらも人口が減り、常に求人数に対して求職者が足りない状況である。その一方で、ミスマッチは地域別、職種別、または技能別に分けられたサブセクター間での求人と求職者との配分のずれから生じるものを意味する。地域Aから地域Bに労働者が移動したことで、地域Aは求人数に対して求職者が少なくなるが、反対に地域Bは求人に対して求職者が多くなる。
絶対的な人口の減少による労働市場への影響に着目し、その対策を考えるなら、少子化対策、外国人労働者の受入れ、無業求職者の就労支援、仕事と家事・育児・介護等と両立しやすい労働環境の整備等が考えられる。労働市場におけるミスマッチの解消に着目するなら、リスキリングの推進や情報共有の徹底等が考えられる。
現在の日本の労働市場を正しく描写すると、人口減少により、絶対数として労働者が減少しているため、日本全体で人手不足が進行していると同時に、部門によってはさらに人手不足の影響を受けているのが実態であろう。
例えば、地域A、Bとも求職者は減少しているが、地域間ミスマッチにより、地域Aではさらに人手不足が深刻化である一方で、地域Bでは労働者の転入により人手不足が緩和される。地域Aに該当するのが地方であり、この絶対的な労働者の減少とミスマッチという二重の危機に直面しており、その点を明確化し、強調すべきではないかと考える。地方の労働市場のみに着目するなら、ミスマッチによる労働者の転出イコール人手不足と解釈できるので、テーマである「人口減少に即した働き方」とは整合的と言える。以上が1つ目の論点でございます。
2つ目の論点が、都市部の中小企業についての意見です。今回は地方の労働市場に焦点を当てており、地方には中小企業が多いため、中小企業とそこで働く労働者の働き方を検討している。しかし、日本における企業が7割は中小企業で、労働人口が集まっている都市部にも多くの中小企業がある。地域と企業規模で分けるなら、都市部にある大企業、都市部にある中小企業、地方にある大企業、地方にある中小企業となる。今回は地方にある中小企業のみに焦点を当てていると考えていいのか、それとも、都市部にある中小企業、地方にある大企業も含むのだろうか。検討対象をもう少し明確化すべきであると感じる。以上が2つ目でございます。
3つ目の部分でございますが、技能のミスマッチと職場ミスマッチの区別についてということです。技能のミスマッチを解消するために、リスキリング等の職業訓練を通じて企業が求める機能を労働者が習得することが求められる。しかし、職場のミスマッチに関するスライドで述べられているように、週60時間以上働く長時間労働者の割合は減少傾向にあるものの、中小企業を中心に労働時間はまだ長く、新たな技能を身につけたくてもそうする時間的な余裕がないと考えられる。
2022年エン・ジャパンの調査によると、学び直しの際の課題として、約70%の回答者が「学習時間の確保」と回答している。働き方改革の浸透によって長時間労働に従事する労働者の割合が減少したり、有給休暇取得率が高くなったりしているが、まだ不十分と言える。ここは思い切って週休3日や長期休暇の導入を提案してよいのではないかと考える。地方の中小企業では導入が難しいが、先駆けて導入することで企業の魅力が高まり、リスキリングにより労働者の生産性が高まれば、企業の価値も高まる。
分かりやすくするために4種類のミスマッチに分けて議論することは異論ないが、4種類のミスマッチが独立しているわけではなく、上記のようにお互いに関連していることに留意すべきであろう。以上が3つ目でございます。
最後に、4つ目の部分は人材育成と評価のミスマッチについてです。「人材を育成しても辞めてしまう」と回答した企業は5割を超えているという結果があった。企業としては人的資本投資費用を負担しているのに、その投資のリターンを得る前に辞めてしまうため、人材育成に力を入れるインセンティブが湧かないのであろう。転職率が高まっているため、余計に人材育成にちゅうちょすると思われる。どこでも通用する技能の場合、企業にとって転職リスクがあるため、技能訓練費は労働者が負担するのが合理的と考える。
労働者は、「自分自身の成長できる機会」を持ちたければ、自分自身に人的資本投資すること、自己啓発を自分で負担することが重要と認識すべきというメッセージがあってもよいと思う。
以上が佐々木勝議員の意見でございます。
続いて、冨山委員の御意見になります。冨山委員については3つの論点をいただいております。1つ目が、労働者の選択として既存雇用継続と転職等の制度の中立化。2つ目が、働き方の選択としての中立化。3つ目が、最低賃金制について相対的貧困感を意識した基本水準の見直しです。
最初に、冨山委員からいただいた総論と1つ目について事務局から読み上げさせていただきます。人口減少、生産年齢人口比率の低下、労働需給における構造的・恒常的供給制約化、デジタル革命、さらにはAI革命による人間が付加価値を生み出せる産業と職種の劇的な変化、東京と地方の構造問題、そして全ての問題の根源にある我が国の労働生産性の低さの問題を解決するための労働市場改革に関わる具体的な制度論について、労政審及び本部会は積極的かつ迅速に議論して答えを得るべきである。以下、私が重要と考える具体的政策論点を3つ挙げる。
1番の論点でございます。労働者の選択として既存雇用継続と転職との制度中立化。具体的には、今後は企業、産業を超えた労働移動は生産性と賃金上昇を実現する上で不可避であり、既存の企業との雇用関係の維持と転職との間で働き手にとって中立的ではないあらゆる制度の改革は急務である。これは企業規模の大中小を問わない。従来、これを中立化すると深刻な失業問題や非正規増加を惹起する懸念を指摘されたが、構造的・恒常的人手不足時代に入っている我が国でそれは杞憂である。むしろ元の職場に働き手が過剰に誘引され、労働生産性と賃金を向上させる機会が失われることのほうが圧倒的な懸念事項である。
例えば不当解雇の救済制度は明らかに中立的ではなく、金銭的な救済を得て転職する選択を与えるべきである。あくまでも不当解雇を前提にした制度なので、不当な行為を行わないまともな企業にとって金銭救済水準の高低は問題にならないはずで、希望退職の上乗せ相場感で言えば、大企業の場合の2年を上限に下は1年くらいを下限として個別具体的な事情を勘案して決める制度にすればよい。また、判例法理である解雇4要件についても、社内での配置転換などの解雇回避義務ではなく、社外を含めた失業回避義務と広く捉えることを制度化するべきである。よって、他業種、他社への転職に向けたリスキリング支援の動機づけを企業に与えることができ、整理解雇に至る前に労働者よりも高い賃金の優良企業への転職可能性を高めることができる。以上が1つ目の意見でございます。
続いて、2つ目の働き方の選択としての中立化について読み上げさせていただきます。人手不足時代に入り、不本意な低賃金労働の受け皿として非正規雇用、ギグワーカーが多数存在する時代は終わった。むしろ自発的な選択として様々な働き方がフェアに共存する社会をつくるべき時代に入っている。今、議論されている様々な年収の壁も含め、働き方、働く時間の多寡によって有利不利が起きるような全ての制度は撤廃して、特に時間当たり賃金について徹底的な中立化を目指すべきである。従来のいわゆる「正規雇用」をより善なる働き方とし、そこに雇い主と労働者を誘導する諸制度は大きな見直しを図るべきときである。なぜなら今やその選択権は労働者側に移っており、自発的に非正規やギグワーカーを選択しても正規雇用と比べて賃金や収入において不利にならない制度こそが労働者全体の利益を押し上げることになるからである。
その脈絡で言うと、従来の労働市場では最も「正規」な働き方と想定していたホワイトカラー正規雇用はAI革命で減少、または両極分解するので、漫然と人々を正規雇用に誘導する政策や制度は日本国民をわざわざ不毛の地に導く危険性さえある。むしろAIが補完材となり、人手不足が深刻な現場型の職種や企業、その多くが既にジョブ型に近い領域で多様な高生産性・高賃金な働き方ができる労働市場への転換が急務である。以上が2つ目でございます。
最後に、3つ目の最低賃金制について相対的貧困感を意識した基本水準の見直しとまとめについて読み上げさせていただきます。現行、インフレ率などをベースに前年比での上昇率の議論が毎年なされている。また、基本要素の生活費、賃金相場、支払い能力の中で、企業倒産への懸念から、本制度の趣旨からは、優先順位の低い支払い能力の要素が依然、決定過程では大きく配慮されている。これに対し、先進国の最低賃金制度における「健康で文化的な最低限の生活」は、相対的貧困の解消の脈絡で議論されており、今の日本社会でも格差問題が懸念される中で、生活保護を上回ることはもちろん、趣味などの文化的な活動や自己能力開発など、幅広い経済社会活動を最低限のレベルで行えること、世代をまたいだ格差固定化をできるだけ回避することまで考慮に入れるべきである。また、支払い能力との関係で企業倒産の増加で長期失業が増えてかえって制度趣旨が実現できなくなる懸念は、先進国の中で圧倒的に小さい時代に我が国は入っている。
こうした観点から、現状の賃金中央値40%~50%という水準は欧州で一つの水準としてクリアした国も存在する60%と比べて低過ぎる。そして、欧州と比べて失業問題の懸念がはるかに小さい我が国の状況から見て、可及的早期に基本水準を中央値比60%に引き上げ、そこから先はインフレ率や賃金相場上昇率などを考慮してスライドさせていくべきである。
現在起きている人手不足も、デジタル革命・AI革命も、いずれもすさまじい勢いで加速していく。そこで情報や知識の非対称を埋めることや、ミスマッチングを解消する支援や、教育訓練を行うことは間違っていないが、それで全体の底上げを図ってもそれだけでは状況の変化スピードと変化幅に到底ついていけない。特に経営者が求められる変容の程度は実にすさまじく、この変化についていける経営者は限られ、特に中堅、中小では極めて貴重な資源である。だとすれば、そういう卓越した経営者が経営する企業体に転職なり再編なりで労働者が移動する、かつ、そこで自分のライフスタイルに合わせた多様な働き方を公平にできる仕組みに移行していかなければ、我が国の勤労者の労働生産性と実質賃金は持続的かつ大きく向上することは絶対にない。この厳然たる事実を踏まえたリアルでスピーディーな議論を基本部会には期待したい。
以上が冨山委員の意見でございます。
最後に、春川委員の意見を読み上げさせていただきます。春川委員からは、先ほど事務局から説明させていただいた資料に応じて3つの論点をいただいております。
まず、1つ目でございますが、資料の「これまでの部会での意見の整理について」のところでございます。意見といたしまして、4つの類型に分けることは理解するが、最後の「情報のミスマッチによる人手不足」は、ほかの3つのミスマッチの解消(改善)が前提になるのではないか。その考え方として、中小企業や地方における労働力不足は複合的要因が重なったものであるが、最も重要な問題は、賃金をはじめとする労働条件が必ずしも若者にとって魅力的なものとなっていないことではないか。この問題の解決なくしてミスマッチの解消はない、との意見をいただいております。
続きまして、資料の人手不足要因①の部分についての意見でございます。地方部から都市部への若年層の流出を防ぐためには、良質で安定的な雇用が確保されていることが重要。そのためには、まず「良質で安定的な雇用」とは何かを明確にした上で、労働政策と産業政策の両輪でそれを生み出す必要がある視点を追記すべき。その考え方としまして、資料1の10ページの3つ目の丸にあるとおり、都市部への若者の流出は、雇用があったとしても労働条件等に魅力がないことが一因。したがって、まずは若者が就職したいと思える「良質で安定的な雇用」とは何かを明確にした上で、それを労働政策と産業政策の両面で生み出すような視点が必要である。
最後でございますが、人手不足要因の④の部分でございます。意見としましては、ハローワークの機能強化も検討し、記載すべき。その考え方として、資料1の17ページの一番下の丸に(民間)求人サイトへの課題が記載されているが、ハローワークについても若者に対する情報発信を強化するなどが必要と考えられる、との意見でございました。
以上が御欠席している委員の意見になります。
逢見委員がオンラインで参加していただいているところなのですが、先ほど少し機器の調子が悪いということで事務局にチャットをいただきまして、意見があるということなので、今読み上げてもよろしいでしょうか。
○守島部会長 逢見さん御自身の発言はされないというイメージなのですか。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 機器の調子が悪い状況が続いているとのことで、そのようなに聞いております。
○守島部会長 そうですか、分かりました。では、読み上げてください。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 逢見委員の意見をチャットでいただきまして、2点ほどいただいております。1点目が先ほど事務局から説明した資料についてと、もう一点が冨山委員の意見についてということでございます。そのまま読み上げさせていただきます。
まず、事務局の資料のことでございますが、企業が求める技能とのミスマッチによる人手不足に関して、リスキリングによって能力が向上したことが評価され、賃金をはじめとした労働条件向上につながる仕組みの構築が重要であり、労働政策としてもその好循環を促していくべきではないか。12ページの一番下の丸にあるとおり、日本の人的投資は官民ともに少ないことから、官民を挙げて見直すことが重要。したがって、今後の議論に当たっては、官が行うことと民が行うことを整理していくことが必要ではないかとの意見でございます。
もう一つが、先ほどの冨山委員からの意見についてでございます。冨山委員の意見について、労働移動を促す文脈、解雇の金銭解決制度や整理解雇ルールの見直しの必要性について触れられている。これについて意見を述べたい。今でも労働者からの辞職や合意解約での労働移動は自由にできるわけであって、あえてこうした仕組みを設ける必要はないのではないか。解雇の金銭解決などは安易な解雇を促す懸念が大きい。不当な解雇を行わないまともな企業にとって金銭水準の高低は問題にならないとしているが、不当であるかどうかは司法の場で争うのであって、そこに金銭解雇を前提とするのはあえて紛争の解決を複雑化させることになるのではないかとの意見をいただきました。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、今度は御参加の皆様からの御意見を伺いたいと思います。御意見のある方は挙手をいただいて、私が指名いたしますのでよろしくお願いいたします。オンラインの方も指名マークを押していただければ御指名したいと思います。どなたからでも。
では、山田さん、お願いします。
○山田委員 ありがとうございます。私からは3点申し上げさせていただきたいと思います。
全体の整理を非常に分かりやすくしていただきまして、ありがとうございました。その上で、佐々木勝委員の御指摘にも少し関わっているのですけれども、4つの類型のところが人手不足の要因ということで大きくなっていますので、もしそれを維持するのだったら、付加価値労働生産性が低いという結果、労働力不足で余計に人が要るということですから、それを一つ大きく項目として設けたほうがいいのではないかなと。あるいは、書き方としては、佐々木勝委員がおっしゃったようにミスマッチのところにフォーカスするということであれば、そのようしてしまって、ただ、付加価値労働生産性のところは非常に重要だと思いますので、そこはその前の総論的なところでしっかり書き込んでいくことが大事なのではないかと思いました。それが1点目です。
それから、2つ目は、具体的にミスマッチを解消していくときにいろいろなやり方があるのですけれども、海外の事例などを見ていると、間に介在する、いわゆる日本だとキャリアアドバイザーということになるのだと思うのですけれども、海外ではパーソナルアドバイザーなどいろいろな言い方がありますけれども、その人たちの役割というのが非常に重要なのではないかなと思うのですね。もちろん日本はキャリアコンサルということでずっと長年やってきて、だんだんそれが高度化されてきていると思います。当然キャリアに対する考え方や心理学的なところが今、日本では重視されていると思うのですけれども、労働市場の情報としてどういうところにその仕事の必要性があり、具体的にはそれにどういった技能が必要かというところそれらの全部の知識というのは無理なのだと思うのですけれども、何かそれを例えば定期的にセミナーをやって情報が得られるとか、あるいはデータベースをしっかり整備していくとかが必要ではないか。現実にはキャリアコンサルの方というのは日本は人材ビジネスに多くいらっしゃると思います。ただ、こう言うとあれなのですけれども、人材ビジネスになってしまうとどうしても、できるだけ中立的にされているとは思うのですけれども、その辺りの中立性というところが少しケースによっては落ちるということなので、本当は独立系のキャリアコンサルがいて、本当に労働者の立場に立ってやっていくというところが重要ではないか。。今、取り組まれているところなどもさらに一段と強化していくことは必要だと思うので、そこは書き込んでいただくとありがたいなというのが2点目です。
それともう一点は、労働環境のミスマッチとも関わりまして、先ほど何人かの委員の御意見にもあったのですけれども、労働時間の問題はすごく大事だと思っていまして、理屈で言いますと、これは冨山委員がおっしゃったのですかね、時間で差別しないという話になってくるのですけれども、いきなりそちらに飛べるかというと、ちょっと間にステップが要るのではないかなと思っています。労働時間ごとの労働者の分布を国際比較すると、日本は非常に労働時間が短い人と長い人で二極化しているわけですね。中間的な働き方の人が非常に少ない。ここが一つの攻めどころというか、もうちょっと中間的な働き方の人たちを増やしていくということを一つのターゲットにしていくような取組をやっていくことが大事なのではないか。必ずしもこういう議論はなかったのですけれども、改めてこの労働時間の話が出ていましたので、この3点を御指摘、あるいは御提案させていただいたということです。
どうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか。
では、山川委員、お願いいたします。
○山川委員 先ほどの話にも、最初の方の読み上げていただいた意見に出てきたのですけれども、人手不足の話で、要するに今ある、あるいはこれからあるパイで既に労働市場に参加している人の生産性をどう高めるかとか、有効活用する、ミスマッチを解消していくという話と、人手がないよねという、パイが少ないよねという話は多分別で、そうなってくると入ってくる人を多くするという感じだと、従前の話から出ていますけれども、今まで労働市場に全面的に参加できなかった女性、外国人、それから高齢者ということになるかと思います。そこの点については、女性については随分私的には感動するぐらいいろいろ議論してすばらしいと思っているのですけれども、外国人の話を避けて通ることはできないと思って、外国人は今、都市部もそうだし、地方でも非常に活躍していただいていますけれども、様々な弊害、特に言語の問題などがあるので、そこは一度きちんと場を設けて議論するべきではないかなと思っているのが一つ。あと、高齢者のところですね。定年制の是非みたいなものは私は個人的にはちょっと気になりますし、そこも一つ別途検討すべきことではないかなと思います。
それから、これは各論になってしまうのですけれども、冨山委員が言うからあれなのですけれども、既存の社員と解雇の金銭解決については、私はそれこそ司法の場で様々な解雇事件を毎日のようにやっているのですけれども、結局裁判所に行っても実際はほとんど金銭解決になっているのですよ、首になった人が首になった会社に戻りたくないから。でも、その金銭解決のところが完全に交渉になってしまっているから、全く透明性にも欠けるし、透明性に欠けるというのも労働者側にとっても企業側にとっても非常にフェアではない。例えば企業がすごく交渉に弱腰だとか、逆に労働者がすごくちゃんと要求できる人だと高いところに行ったりとか、だから本当に場合によってがたがたになってしまっているので、実際金銭解決になっているのだから、当然そこはきちんとルールを定めるべきだろうというのが私の意見です。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどうでしょうか。
では、オンラインの武田委員が最初に手を挙げていらっしゃいますので、どうぞ。
○武田委員 どうもありがとうございます。また、資料の取りまとめ、御説明もありがとうございました。
少し大きな話になりますが、日本経済は30年間デフレの時代が続き、昨年頃から新たなステージに移行したという実感を持って見ています。これまではいかに雇用を守るか、あるいは需要を喚起するかが経済の中で非常に大きな課題でした。一方で、足元では供給不足が起こり、その供給力をどのように引き上げていくかをしっかり議論しなければ日本経済の成長が難しくなる転換点にあるという認識を持っております。
マクロでは人口が減少していく現実を直視し、その中で何ができるかという議論が必要と思います。引き続き労働参加を引き上げていくとともに、労働時間の観点でも労働力の減少ペースは抑制する余地があるという点、より本質的な問題として、生産性上昇を伴わなければ経済として難しい状況と思いますので、他の委員の御発言にもございましたように、労働政策と生産性戦略は完全に両輪で考えていく必要があると思います。
労働政策についても生産性上昇についてもやるべきことがあると思いますので、2つに分けてお話します。まず、労働政策について1点目、労働力のさらなる確保や縮小ペースを和らげる政策です。絶対数の減少ペースをできるだけ抑制する意味で、これまでも議論している女性や高齢者も含め労働参加を促す施策は引き続き必要と思います。
2点目、本日も多数議論になりましたが、スキルのミスマッチの問題です。絶対数の問題とは別に、産業構造や技術の進展による影響が大きい中で、リスキリングや労働移動を適切に促す環境整備がなければ難しいと思います。先ほど山川委員がおっしゃられたように、金銭解決も透明化することが重要という点は同意見です。
3点目、制度的な問題についても大いに課題があると思っており、労働移動にも未だ中立ではありません。以前から申し上げている退職金税制の問題や労働参加という観点で話題になっておりますが、制度的または心理的な問題と企業の慣行の問題が複雑に絡み合っているため、全てが労働の問題ではありませんが、国全体として、人手不足の時代に就労や移動に対して中立でない制度をどう見直すか議論をしていくべきと思います。税収との兼ね合いも考えていくべきですが、就労抑制的な制度を見直す発想が大前提にあるべきと思います。
4点目、社会的な問題は依然として多いと思います。先ほど女性についてはかなり進んだ議論があったとお話がありましたが、社会の意識として進んでいるかというと、民間で働いている一員として、地域の声として、あるいは冨山委員が提出された資料を見ても、意識のギャップは残っていると考えます。この点について引き続き働きかけていく重要性は、数の議論より意識を変え、能力ある方や働きがいを求めている女性がアンコンシャスバイアスにより抑制されない社会にしていくことが必要と思います。
次に、生産性を上げる話についてです。DXとセットで議論しなければ、地域の中小企業は人の取り合いになり、結果的に共倒れになりかねないと思います。DXを徹底して業務を効率化するにとどまらず、DXやAIによって中小企業でも付加価値を高められる余地が増えているので、そういった点とセットで議論が必要となり、併せてリスキリングの議論をしなければ本質的な解決にならないと思います。
また、違う視点として、戦略的に企業の統廃合を進めることも限られた人員の中で重要な論点かもしれません。スキルに基づく賃金制度はこれまでも議論してきましたが、DXを進める、スキルのミスマッチを進めることは必須で、さらに統廃合がセットになっていくことも重要と思います。
論点を五月雨的に申し上げましたが、大きく申し上げると、労働力の確保、縮小ペースを抑制していくために、絶対数の問題、スキルミスマッチの問題、制度的な問題、社会的な問題の4点、生産性を上げるためにDXの徹底、統廃合の問題、そして賃金制度の変革が組み合わさることが重要ということが私の意見です。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
続いて、オンラインの川﨑委員、どうぞ。
○川﨑委員 川﨑です。ありがとうございます。
資料の取りまとめ、どうもありがとうございました。多岐にわたる議論、それから、いろいろなヒアリングの結果も良い形でまとめていただいていると思いますし、感謝したいと思います。どうもありがとうございます。
私も少し先ほどの武田委員とかぶる部分もあるかと思いますけれども、考えていることを述べさせていただければと思います。今、企業の中でも特にいろいろな場所で人口減少、労働力不足というところが起こっているわけですが、それを埋め合わせていくというところでは、かなりいろいろな現場で外国人が入ってきているというところは大きい事実としてある一方で、また、DXをうまく使って、大がかりなシステムというわけではないのですけれども、いろいろなAIを使った機械化によって工夫をして、人材確保ができない部分を埋め合わせていくということもいろいろな現場の中での効果としては起きてきているのかなと見ています。
一方、生産性の低下、あるいは付加価値をつくるところの低下は国全体の大きい問題ではないのかなという認識は共通化させていくべきだと思います。一人当たりのGDPはずっと下がり続けていて、またさらに下がりましたということも考えると、賃金を上げていこうということを考えると、やはり企業の生産性を上げない限りは賃金も上がっていかないという構造になっているという認識に立つ必要があるのだと思います。そうすると、どうやってこの生産性を上げ、人口減少、労働力不足に対処していくのかというところは、幾つかの施策が取りまとめの中でも出てきていると認識していますが、私はその中でも特にどうやって働く人材の流動性を高くしていくのかというところがポイントになってくると思います。
流動性を高くするための方策としては幾つか挙がってきていますけれども、リスキリングの問題、情報提供の問題、それから解雇の補償の問題、それから働き方に中立的な社会保障の問題、企業の制度の問題といったものをもろもろ解決していくというところは、この部会としての発言の中身としても充実させていきたいと思うところです。
あと、最後の点になりますが、地方の中小企業の労働不足というところもフォーカスされていましたが、日本の中で中小企業のかなりの部分が地方に多いわけですけれども、地方の中でも立地グローバルな中堅企業というのはかなり地方にあると認識しています。ただ、その企業が地域でこれから働くであろう高校生や大学生にきちんと知られているかというと、実はBtoBの企業であるがためにあまり知られていないという状況もあります。そういうところを少し埋め合わせるようなことも地域の中では考えてほしいなと。そうすることによって、立地グローバルの地域の会社もより良い人材、地元に根差し、かつ、その地域の企業で働き続ける人材の確保にもつながっていくというところが広がっていければいいかなと思うところです。
いずれにしても、いろいろな議論が深くできてきているところは感謝するところです。
私からは以上になります。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、オンラインで岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。資料の取りまとめ、ありがとうございました。
私は「③職場環境のミスマッチによる人手不足への対応」について発言をさせていただきます。14ページにあるとおり、賃金をはじめとした労働条件を魅力的なものとしていくということが重要だと思います。これなくして地方や中小企業に人は集まらないのではないでしょうか。
その上で、このテーマに関して15ページにある副業・兼業について2点意見を述べさせていただきます。副業・兼業というとハイスペックな能力を持つ人が自分の活躍の場を広げたいといった高尚なものがイメージされますが、実態はそれだけではないと思います。JILPTが昨年行った副業者の就労に関する調査では、副業を行うのは「収入を増やしたいから」が54.5%で、「1つの仕事だけでは生活ができないから」が38.2%となっていました。この状況からすれば、本業だけで生活できる賃金を得られるようにしていくことこそが労働政策として取るべき道であり、その実態や働き方のリスクに目を向けずに副業・兼業の政策誘導を行うということは適当ではないのではないかと考えます。
また、副業・兼業の文脈に関連して、最近はスポットワークやスキマバイトという働き方が広がっています。しかし、募集時と実際の労働条件が違うなど、いろいろなトラブルが報告されています。また、最近では闇バイトが紛れ込んでいるのではないかという点も指摘をされています。これらは手軽さが強調されて、法的知識が十分ではない若者が安易に就業し、結果としてリスクのある働き方をさせられて、トラブルの沼にはまっているような実態があるのではないでしょうか。この点からも、労使双方に対するワークルール教育や情報リテラシーの啓発が必要で、部会報告にはそうした点も書き込むべきだと指摘をさせていただきます。
最後に、冨山委員の意見書にありましたし、先ほどから何人かの委員の方が解雇の金銭解決について意見を出されています。私は労働審判員として活動をしていますけれども、その中で強く感じているのは、一つ一つの事件ごとに当事者の事情が全く異なるということです。労働審判の調停や審判の中身としても完全に解雇が無効だなと思うものもあれば、グレーなものまで本当に多様です。こうした実態を踏まえると、金銭解決制度を導入して解決金の範囲などを法定化するということは現実的ではないのではないかと思っています。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
佐々木かをり委員、途中で出られるということで、どうぞお話しください。
○佐々木(か)委員 いろいろと御準備、御説明ありがとうございます。
私はまだ自分の中で論点というか、意見がまとまっていないのですけれども、中途半端ですけれどもここまでのところで述べさせていただきますと、地方と東京で分けたり、大企業と中小企業という分け方で今までも議論してきたのですけれども、もしかすると二極化が起きているということを意識してまとめていったり、もう一度整理するということが必要なのかなと考え始めております。つまり、東京でも地方でも、例えば企業の社長が、あるいは人事の政策をしている人たちが非常に意識高く学び、成長しようとしている会社さんもあるし、東京でも地方でも、情報にアクセスもしていないし意識も弱い、先ほど武田委員が社会的な意識の改革が必要だと最後におっしゃったのは本当にそうだなと日々痛感するのですけれども、何となくざっくりした言葉で言えば、30~40年前の文化的な意識をそのまま継続しているような環境に住んだり働いたりしているという地域なのか家族なのかの人たちもいるということで、これがロケーションの問題や企業のサイズの問題ではないなということをつくづく感じております。なので、政策を整備したり、報告書をまとめるに当たって、もう一度その辺りの観点でも何か整理ができたらいいのになと思っています。
本来であれば、求人に関しても、あるいは働き方に関しても、リスキリングに関しても、今の現代、国内にも国外にも無料で学べるものも含めて山ほどの学習機会というのがあふれているわけで、それは随分時代が変わってきている。なのにもかかわらず、アクセスしていない、あるいはできていない、知らないというこの二極化というのをどのように救っていくのか、あるいは教えていくのかということだと思います。なので、この二極化ということをサイズや地域でない観点からももう一回考えてみる必要があるのではないかなと思ったのが1点目です。
そして、2点目はその教育と伝え方で、既にアベイラブルなものも含めてどのように人の意識にプラスの影響を与えたりしていくのか、それはSNSの活用なのかもしれませんけれども、何となく充満している被害者意識というか、自分がとても損していると思ってしまうような労働者や不利な立場にいるのではないかと思うような地域だったりするようなところをポジティブに変えていくような教育やアベイラブルな情報の伝え方というところも熱心にやらないと、東京で一生懸命労働政策審議会で知見のある方がたくさん集まってヒアリングをしてまとめても、これでは実効性がないのではないかなと感じるので、意識や情報の二極化、それから教育や伝達の仕方の2つの観点からも取りまとめのときに意識していきたいなと思った次第です。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、石﨑委員、お願いいたします。
○石﨑委員 ありがとうございます。今回、お取りまとめいただきまして本当にありがとうございました。
私からは4点、あるいは5点ほど意見を述べさせていただければと思います。今回、人手不足の要因を4点まとめていただいたかと思うのですけれども、私としてはこのうちの4点目の対応が政策的には対応として比較的早くできる部分なのではないかと感じているところです。これまでもほかの委員の方々からも情報開示の重要性というところは御指摘があったかと思うのですけれども、また、資料の中では若者雇用促進法におけるデータ開示の重要性に関する意見なども入れていただいているところかと思いますけれども、この情報開示を基礎づける根拠法令は、御承知のとおり女性活躍推進法だったり次世代法だったり様々分かれているところでありまして、またはその情報開示の中身を何にするのか、例えばそこに労働時間の具体的ないろいろなところを義務として含めていくのかとか、あるいは人材育成に関わるような情報を入れていくのかによって恐らく厚生労働省の中で担当部局が様々オーバーラップしながら関わってくるところではないかと思っております。
ただ、いずれにしても重要なのは情報が一覧性を持って分かりやすくアクセスできるようになるというところにありますので、ぜひ厚生労働省の中で部局を超えた連携みたいなものを強化していただきたいということで、基本部会の目的自体もそうした部局横断的な問題を取り扱うというところにあるかと思いますので、そこはぜひ強くお願いしたいところと思います。
また、先ほど御意見の中で情報の受け手側のワークルール教育が大事ではないかというお話がありましたけれども、私もこの点は全く賛成でございまして、ワークルール教育とか、あるいは自分のキャリアをどう発展させていくのかといったところに関わるキャリア教育みたいなものの充実化というのも重要になってくるのではないかと思います。どうしても教育というと若年者を対象とするようなイメージがありますけれども、当然転職や新たな再チャレンジといったこともありますので、若年層に限らず広くそうしたことの普及というのを進めていただけるとありがたいというのがまず1点目になります。
それから、2点目になりますけれども、これもほかの委員の方々から既に出ているところではあるのですが、今回いただいた資料ですと、柔軟な職場環境というところではテレワークと副業・兼業が挙がっているのですが、柔軟な働き方というのを考えるときに労働時間の問題というのは非常に重要なのではないかと思っています。労働時間の問題には一方では長時間労働などを改善していくという方向性ももちろん非常に重要なことではあるのですが、他方で、より短時間の労働時間を選択可能にするということとか、先ほどお話に出ていたような訓練のための休暇などを取りやすくするといったアプローチもあるかと思いますので、そういったところも含めて検討していけたらいいのではないかと感じたというところが2点目です。
3点目と4点目はほかの委員の方の御発言に触発されてという点になります。佐々木勝委員の御意見の中で、要するに訓練の費用に関しては労働者負担とするメッセージをもっと発していっていいのではないかというところがあったかと思います。この点は御承知の方も多いかとは思いますけれども、他方で例えば訓練費用の返還条項など労働者の足止め策として使ってしまいますと、労基法の賠償予定の禁止に抵触してしまうみたいな問題も生じ得るところではあります。他方で、労働者が仕事に必要だからというよりも、むしろ自分自身のキャリアアップのための留学費用といったものに関しては、貸し付ける(退職した場合に返還を求める)ような契約をしていたとしても労基法にも触れないし、その契約自体有効だと認めるような裁判例も複数出ているところかと思います。この辺りは、要するに企業としては貸し付けるような形でそういった人的投資を行ってというときに、それが法違反に当たる可能性があるということになるとなかなかちゅうちょしてしまうような部分もあるかもしれないというところからしますと、その辺りはもう少し場合によっては解釈の明確化とか、こうした人的投資については労基法違反にならないみたいなところをメッセージとして周知していくみたいなことも一つ考えられるのかなと思いましたし、そういう自分のスキルアップのために自分で投資するということの重要性を広く伝えていくということも重要なのではないかと思ったというところになります。
4点目は、先ほどからいろいろな御意見が出ている解雇の金銭解決制度についてなのですけれども、まず私自身、この制度について特に現時点で導入に賛成や反対という特定の立場を取っているわけではないところではあります。というのも、制度の中身をどうするかによっても、先ほどの御意見にあったように安易な解雇を招く制度になってしまうのか、そうではないのかというところや、あるいはその制度がきちんと予測可能性を示せるのか、他方で金銭の額によって個々の事案の特徴に応じた具体的な妥当性みたいなものが欠けるようなことになってしまうのかとか、その辺りの制度の設計の仕方などもいろいろな形によって異なり得るものですので、それ自体賛成や反対ということはないわけですけれども、ただ、私自身が課題として感じるのは、先ほど司法の現場でのお話がありましたけれども、行政における紛争解決制度の中では、解雇に関して解決金といってもかなり低額で事件が終わっているようなケースもある。それをそのままにしておいていいのかという問題意識は個人的には持っているところではあります。
いずれにしてもどういう制度にするのか、そして入れるのかどうかを含めて、現在、厚生労働省でいろいろな実態を調べながら検討されているというお話を伺っているところでもありますし、そういう意味でかなり議論としては慎重に進めなければならないテーマなのではないかと思っているところでありまして、そういったことでこれに関して何かスピーディーに決めるといった方向性については私自身は反対であるということはここで申し上げておきたいなと思ったところです。
最後になりますけれども、まとめていただいた人手不足要因の中で、地方におけるジェンダーギャップの問題を取り上げていただいていたかと思います。こちらは非常に重要な課題だと思いますけれども、他方でこれも労働政策だけにとどまらない問題かと思いますので、これは最後に報告書に落とし込んでいくときにどこまで書けるのかなというところは気になったところではありますが、カスタマーハラスメントに関わる問題もある意味そうなのかもしれませんけれども、そういった意味での社会全体の意識変革に関わる問題の重要性というのはそのとおりかなと思っているというところになります。
以上です。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
石原さん、お願いします。
○石原委員 石原でございます。取りまとめありがとうございました。
私からは大きくは4点かなと思うのですが、人手不足を避けるだけの会社を助ける政策だけで本当にいいのかという話をしておきたいと思っておりまして、人手不足を解消した会社と解消できる会社にもっと投資をするみたいな方向はないのでしょうかというのを思っております。付加価値生産性を高める話ももちろんそうなのですが、そういうことをやっている会社にインセンティブを与える、リスキリングを実施してDXを成し遂げた会社に対してインセンティブを与えるという方向を検討すべきであって、人手不足だから何とかしてあげましょうというのは無理な話なわけであって、人数が減っているわけですからという話なのに、人手不足をどのように解消してあげるのかという観点だけで政策が考えられるのはちょっと違うのかなという気がしております。
ここに関連して、解雇も、私はいわゆるその会社で活躍していない方がその会社に長くい続けるというよりは、出ていただいて違うところで付加価値を生んでもらうということが労働市場全体で明らかに善という時代になって、これは最初のときに私のほうで発表させてもらったことの繰り返しではあるのですけれども、この会社を出ていって別のところで働くということが促進されることは全然悪ではないと思っております。解雇については皆様に様々な御意見があるのだなと改めて今回思いましたけれども、例えば先ほど言ったとおり金銭的解決ができるということであれば、例えば最低年収の1年分とか2年分と決めて、あとは予告を3か月前とか6か月前に決めて金銭的解雇ができるというのは、非常に合理的ですし、社会全体の人手不足を解消するときにも意味がある話なのではないかと私は思っております。
その次なのですが、人手不足の要因について、①と②はすごく分かるのですが、③と④は結局魅力のない会社に人が来ないという話だけなのではないかと思いました。③と④は分けていて、情報の開示ができないから人が来ないという人手不足を政策で何とかする必要はあるのですかという感じがすごくしております。結局賃金が低い会社や雇用環境が悪い会社、女性が面白い仕事に就けない会社には人が来ないという話をしているだけなのではないでしょうかという気がしております。
この観点から、例えば情報不足のところはキャリアコンサルタントをはじめとするインターメディエーターと言われる仲介する方々に正しい情報を伝えてもらう義務みたいなものがあると思いますし、いわゆる個人の側の労働環境に関する情報はこういうものを確認する必要があるのだよという教育が必要だと思うのですが、一方で、労働者に選ばれるかどうかという観点で企業に是正を求めていくようなコンサルタントみたいなものが必要なのではないかという気がしております。キャリアコンサルタントが個人に対して働き方をどう考えなさい、キャリアというものをこう考えるべきですよというアドバイスをするのと同様に、企業側にこの環境で人が来るわけないですよねということを指示・指導するみたいなことができるような存在が必要なのではないかなという気がしております。
最低賃金も上げればいいと思っています。賃金が低過ぎて人が来ない会社は賃金を上げる方向に舵を切るべきで、それで存続できない会社は倒産してもいいのではないかという考え方が必要なのではないでしょうか。先ほど言ったみたいに、うちは人手不足を解消できますよというふうに努力をしている会社がそういう会社の声を、ちょっと矛盾しますけれども吸収するとか、そこに転職するということが起こればいいわけであって、最低賃金が多少上がったときに払えなくなりますという会社があるので最低賃金をこの辺に抑えていますというのはもはや政策としては違うのかなと思っております。
もう一つ、キャリアコンサルタントの話がさっき出ましたけれども、キャリアコンサルタントは様々にどういう会社が良い会社なのかということも含めて個人の側を指導すべきなのですが、一方で、出口というか転職のところを本当に世話ができるキャリアコンサルタントは多くないようにも思っておりますということで言いますと、厚労省はキャリアコンサルタントの事業をここまで終始リードされてきたわけなのですけれども、そろそろキャリアコンサルタントの事業の投資対リターンというのを考えるべきではないか。キャリアコンサルタントがどれぐらい増えて、この方々が人々の労働市場の移動というものをどれぐらい本当にサポートできているのかということをしっかり検証して、キャリアコンサルタント事業の在り方を考え直すべき時期ではないでしょうかというのを口幅ったいのですが言っておきます。
もう一つなのですが、先ほどどなたかも言及されておりましたけれども、就労抑制的な制度についての見直しはよりスピードアップすべきだと思っています。この間、103万円の壁が見直しに入りますという話がありましたけれども、それ以外にも働かないでいたほうがいいのかなとか、働く時間を短くしておいたほうがいいのかなと個人に思わせる様々な施策があるわけで、そこに関しては見直しというのをぜひやって、労働参加できる時間を増やしていくことを考えていくべきかなと思っています。
そのつながりなのですけれども、副業についてという話がありましたし、副業・兼業について記載しようという動きもありますが、副業については、これは私が前職でおりましたリクルートワークス研究所の調査でも、実態として副業をやっているのは非正規の人が非正規で副業するというケースが圧倒的に多くて、これはもう明らかに生活のためなのだと。つまり、低技能・低賃金の労働をかけ持ちするという副業が幾ら増えてもほとんど何の意味もないと思っておりまして、付加価値生産性を高めるような投資がそういう方々にもされるべきだったりとか、付加価値生産性が高い方が1つの企業だけでは私の技能というものを使い切れませんというときに行う副業というのはもちろん人手不足の解消や労働生産性をより高めていくことに寄与すると思うのですが、諸外国でも副業を物すごく認めている国はないと思う中で、副業を物すごく推奨する動きに私はすごく違和感があって、人手不足の会社が副業を勧めたい理由もないはずという中で、このテーマの中でなぜ副業・兼業を推進すべきという話が出てくるのか、私はすごく疑問がありますということを言っておきます。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
これで御参加の方は全員お話しになったのですけれども、どなたか追加的に御発言になりたい方はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですね。
私から1点だけ、これは皆さん方の言われていることとほぼ同じなのですけれども、この報告書というか、次の報告書を人手不足対応と考えるか、それとも生産性アップをすることで今のアベイラブルな人たちでどうやってマネージしていくのかと考えるかということによって大きくトーンが違ってくるし、また、後者のほうですと、これは何度も私がここで申し上げたように厚生労働省の職掌範囲を超えてしまう部分というのもあるのではないかなと個人的には思います。
今、2つ申し上げたのですけれども、人手不足をどう解消するかという議論はちょっと不毛な感じもしていて、外国人を大量に連れてくるということがどこかで起こった場合でも、仮に人が入ったとしても生産性の低い職種にどんどんつけていくと、ある意味ではブラックホールに人をつぎ込んでいくようなものであって、結果的には経済成長にもつながらないし、賃金アップにもつながらないということが起こってくるのではないかなと思います。
ですから、この報告書が出すべき一つの視点というのは、実は人手不足をどうやって解消するかという視点でこれからの議論をするのではなくて、生産性という言葉がいろいろな方から出ていましたけれども、それをどうやって上げていくのかという視点でもう一回整理し直してこの報告書をまとめていくというのが一つのやり方だし、また、社会に対するメッセージとしても、人材不足・人手不足をどうやって解消するのかという議論はさっきも言ったように非常に徒労に終わる可能性はあると思いますので、もちろん部分的には解消するのかもしれませんけれども、徒労に終わる可能性があると思っているので、さっきちょっとワードサーチをかけたら「生産性」という言葉は今回の資料で1回ぐらいしか出てこないのですね。それもちょっと気になるところなので、そういう部分をもうちょっと見方を変えるということでやっていくといいかなと皆さん方の議論を聞いていて思いました。
以上です。
どうぞ。
○宇野政策統括官付参事官 事務局でございます。委員の方々、貴重な御意見をたくさんいただきましてありがとうございました。
ちょっと言い訳じみて申し訳ございませんけれども、今回、この資料1を作るに当たって、我々事務局側の反省の面もあるのですが、やはりヒアリングの設定をしていく中でどうしてもなかなか今日みたいな御意見というより、事実の確認が多うございましたので、我々はなるべく皆様の御意見を忠実にまとめていくという形になったところで、例えば今、部会長からもありましたけれども、「生産性」という言葉が結果的にはなかったという制約があった中で、本日高い見識を持っていらっしゃる方々からいろいろな観点から御意見をいただきましたので、これをベースに報告書としてまとめられるかなと考えております。今日はすばらしい御意見をたくさんいただきましたので、なるべく我々としましてもいろいろ各局横断的な部会の趣旨や、本来、労働政策審議会なので労働政策という観点、厚生労働省の労働政策という所管のところに限定されるというのはあるものの、そういう中でもこの部会としてはこういう部分も関係するのであるから、こういうことについてはこうすべきではないかというところも含めて限界のところを攻めて、少し我々としては工夫していきたいと思いますので、引き続きまた御指導いただければと思っております。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたか御意見のある方はいらっしゃいますか。オンラインも大丈夫ですね。
ありがとうございました。
それでは、このあたりで皆さん方の御意見が大体出たところなので、今回の議論はこれで終了とさせていただきたいと思います。活発な御議論をどうもありがとうございました。
最後に、事務局からお願いいたします。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 本日は活発な御議論をありがとうございました。
資料の説明の際に事務局から申し上げたとおり、次回は、ヒアリングを行いたいと思います。また、本日の議論を踏まえ、報告書取りまとめに向けた作業を進めてまいりたいと思います。
次回の日程でございますが、調整の上、追って御連絡いたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、これをもちまして、第35回目の「労働政策基本部会」を終わりにしたいと思います。
どうも皆さん方、お忙しい中、お集まりいただいてありがとうございました。