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第34回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和6年10月23日(水)10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第21会議室(17階)
出席者
- 委員(五十音順)
- 入山委員、石﨑委員、石原委員、逢見委員、佐々木かをり委員、佐々木勝委員、守島部会長、山川委員、山田委員
- 事務局
- 朝川政策統括官(総合政策担当)、河野政策立案総括審議官、中井賃金政策推進室長、宇野政策統括官付参事官、藤木政策統括官付労働経済調査官、山田雇用環境・均等局総務課長、吉田職業安定局雇用政策課長、福岡職業安定局地域雇用対策課長、松瀬人材開発統括官付参事官、佐々木労働基準局総務課長
議題
(1)ヒアリング
- リクルートワークス研究所 主任研究員 古屋 星斗 様
- 株式会社Will Lab 代表取締役 小安 美和 様
- 富山県 知事政策局次長 山本 美稔子 様
- 富山県 商工労働部労働政策課長 赤崎 友美 様
(2)その他
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 それでは、開始させていただきたいと思います。
定刻になりましたので、ただいまから、第34回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席、お集まりをいただき誠にありがとうございます。
本日は所用により、岡本委員、川﨑委員、武田委員、冨山委員、春川委員、大橋委員が御欠席の予定でございます。また、所用のため、入山委員、山川委員は途中の御退出と伺っております。
議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして、事務局から御説明があります。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 オンラインの開催ということで、私から説明させていただければと思います。
9月より労働経済調査官を拝命いたしました、藤木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
オンラインでの開催に関しまして、留意事項を説明させていただきます。まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしてください。委員の皆様は御発言の際、参加者パネルの御自身のお名前の横にある挙手のボタンを押していただいて、部会長から指名があるまでお待ちください。部会長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度挙手のボタンを押して挙手の状態を解除してください。通信の状態などにより音声での発言が難しい場合には、チャットでの発言をお送りください。また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。
以上となります。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、本日の進め方について御説明いたします。初めに、労働供給制約下における地方中小企業の現状と課題についてというタイトルで、リクルートワークス研究所主任研究員、古屋様。それから、地方・中小企業における男女格差是正に向けた取組についてというテーマで株式会社Will Labの代表取締役、小安様。それから3番目に、女性活躍に向けた富山県内の取組についてということで、富山県知事政策局次長、山本様、商工労働部労働政策課長、赤崎様に御説明いただきたいと思います。プレゼンに関する質疑応答と自由討議につきましては、皆様3人のプレゼンが終了した後でまとめて行いたいと思います。
それでは、早速ですけれども、リクルートワークス研究所の古屋様、よろしくお願いいたします。
○古屋様 守島先生、ありがとうございます。私からまずお話をさせていただきます。
労働市場は非常に大きな転換を迎えていると私の研究の中で分かってきておりまして、そういったことを含めて地方の企業における現在の状況、そして今後の労働政策に求められるものということで私からお話しさせていただこうと思っております。
自己紹介は割愛させていただきます。
採用難ということでございます。日経新聞さんが毎年やっている調査においては中小企業だけではなく大手企業も非常に苦しんでいて、中途採用数を急増させております。今日、まさに朝刊に計画数ではなくて実績のほうの結果が載っておりましたが、5割近くになっていると。大手企業の中途採用と新卒採用の単年度の採用人員というのがついに5割になってしまった。もともと1対9と言われていたわけですが、これが5対5になってきている。実数でいうとこの約10年で中途採用計画数というのは10倍になってきている。中途だけかというとそうではなくて、大手企業は採用難でございますので新卒採用も急増させていて、うちの研究所が30年程度ずっとやっている採用計画調査の結果でございますが、21万1900人という大卒採用計画数、こちらは実は統計が残る以来過去最高値を更新したという数値になっています。もちろん皆様御承知おきのとおり、大卒だけではなくて高校卒に関しても大変なことになっているという状況です。約4倍ということで、バブル期を既に昨年超えていますけれども、それをさらに更新して、一人の高校生を4社が取り合っているという状況、特に工業高校さんに行くと20倍、30倍という倍率が平気で聞こえてくるという状況です。
中小企業の新卒採用充足率というのは本当に徐々にこの10年間で下がっておりまして、直近、中小企業さんにおいては60.0%ということで、3人採用したいという中小企業さんが2人採用できていないというのが平均的状態ということでございます。全体の充足率が74.7%ということで、大企業さんが40人取りたいけれども30人取れていないというのが平均的状態ということでございます。こういった状況を背景にして、中小企業の賃金をめぐる二極化ということが顕在化しているなと感じます。
最低賃金、これは昨年の調査、つまり今年の2024年10月の最低賃金引上げがどれぐらい許容できるのかという質問に対して、中小企業さんで許容できないと答えている会社が16%もいらっしゃったわけです。実際、弊社が持っている手元のアルバイト・パートの募集賃金を3大都市圏で見ると、実に34~35%が9月時点で最低賃金を下回る時給で出していたということが分かっています。
一方で、私が同時に注目するのは、この調査における最高項目である100円以上と答えた会社も25%いらっしゃるということでございます。賃金を上げないと採用はできませんから、これをめぐって中小企業の中でも二極化が起こっているということでございます。これは最低賃金だけでなくて、正社員のいわゆるベースアップに関しても徐々に賃金をめぐって、小規模企業であっても99人以下の40%近くがベースアップをしているという状況になってきている。賃金をめぐる二極化が起こっている。
こういった採用難の背景に何が起こっているのかということで、労働需給のシミュレーションというのを我々は実施しておりまして、こちらの部会でも既に様々な方から共有があったものと思いますが、我々が行ったシミュレーションにおいては、労働の需要と供給のギャップがこれからどんどん開いていくよと。2030年に340万人規模、2040年に1100万人規模の働き手不足に直面するということが分かってきている。この点について、各地域、特に今回は都道府県別で生活維持サービスといういわゆるエッセンシャルワークの職種に限定して分析し、どれぐらい不足するのかということを結果として出しておりますが、こちらに一覧として表示をさせていただいております。今回、富山県庁さんがいらっしゃっていると思いますが、2040年に73.1%ということで、不足率でいうと27%ぐらいエッセンシャルワーカーが不足するという推計値になっております。
こういったことはなぜ起こるのかということを1点御留意いただきたいと思っております。御推察のとおり、高齢化でございます。日本は人口減少になりますが、85歳以上人口だけは増え続けるという状況に今後2040年までの約20年間は突入する。600万人ほどだった85歳以上人口が1000万人を超え、急速に85歳以上人口だけが増える。逆に65歳から84歳の方は一切増えないわけで、こういったフェーズに入ろうとしているということ。それと、85歳以上の方々が2040年代前半に10%程度まで行きますので、10人に一人が85歳以上の方々といった状況が労働市場にどんな影響を与えるのかということ。もちろん年金や社会保障という観点ではずっと議論がされてきていると承知をしておりますが、労働市場にどんな影響を与えるのかということを研究しているのが私でございます。
労働投入量、労働供給側と労働需要側ということがございます。労働供給側にまず視点を当てると、2000年から2010年代前半までは、労働投入量ということが長期的に減少する局面に日本はあったわけですが、その後、2010年代前半以降の10年間は高齢化がどんどん進んでいる、人口減少も進んでいる中でも就業者数を増やしながら何とか労働投入量を維持してきたという過去がございます。この労働投入量の維持に物すごく貢献してきたのは日本の女性と、そしてシニアでございました。
一方で、65歳以上の就業者は増加を続けています。今後も増加が見込まれますけれども、他方で平均労働時間の縮小幅も物すごく大きいということが分かっていて、つまり今後、65歳以上の就業者の増加はもちろんどんどん続いていきますが、労働時間は直近でも減少していますが、さらに減少してくだろうと考えられて、なぜかというと、高齢者の高齢化が起こっているからです。先ほど申し上げたとおり、65歳以上で増える方というのはより年齢の高い方々でございますから、そうすると、働けるとしてもその労働時間というのは短くならざるを得ないということが労働供給の伸びづらさということを生む。
一方で、労働需要に対して、労働需要と高齢化ということに関しても分析しております。本件については世帯構造の変化というのが非常に大きなファクターで、高齢化が進むと高齢世帯が増えるということによって一世帯当たりの人員数が減っていくわけです。高齢者世帯の特徴というのはもう80年代からずっと一貫していたのですが、高齢者世帯の約半数が単身世帯でございます。すると、一世帯当たりの人員というのがどんどん減っていく。特に高齢化が進む地域ほどどんどん一世帯当たりの人が減っていく。これが消費やその背景にある労働消費にどういった影響を与えるのかということです。人口動態の高齢化が進みますと、単身世帯が増えます。高齢者世帯の半数以上が単身世帯ですから、世帯数が結果として増加していく。全体の世帯数というのは人口減少に入って以降もずっと一貫して伸び続けてるわけですね。高齢化が進んでおります70歳以上世帯が増加していくとともに、消費総額に占める70歳以上世帯の割合というのは13.8%から2023年に29.7%へと急増していて、60歳以上の消費割合というのがもうほぼ半分を占めているわけです。48.5%に到達しています。何が言いたいかと申しますと、こういったことによって、先ほどの需給シミュレーションにおいて労働の需要がほぼ横ばい、もしくはやや微増という状況になったわけですけれども、この背景にあるのは、世帯人員が減っていますから一世帯当たりの消費額は確かに減少していますけれども、ただ、実は世帯人員が減っていて消費額が減少しているが、それ以上に世帯数が増加しているのですね。このために消費総額はほぼ横ばい、やや微増で推移してきているという状況があります。高齢者世帯の増加が消費総額の維持に大きく寄与している。ひいてはその消費を支える労働消費の量というのを高止まりさせているという状況がある。
また、項目別にも様々な変化が見られていて、現役世代で一番多い50代世帯と70歳以上世帯の2023年とその20年前の一世帯当たりの項目別消費額を比較すると、両世代で増加しているのは保険医療費なわけです。あと、交通・通信費です。高齢者世帯だけで増加しているというのは光熱費、水道費と、一人暮らしで御自宅にいる時間がなくなってしまうということもあるのでしょうが、いずれにしろこういったインフラを支えるとか、保健医療を支えるといったサービスに従事する人の数というのはこうしたペース、もしくはさらに速いペースで増えていく可能性があるということでございます。
この労働需要と高齢化の問題をまとめますと、世帯数が増加していくという傾向が高齢化によって起こる。一世帯当たり人員が減少しますから、世帯数が増加していく。すると、消費総額が横ばいというか、世帯数増加は消費総額に押し上げ効果が働きますので、世帯数増加によって消費総額が減少しないという現象が起こります。この結果として、特に生活維持サービスの需要が高まる。生活維持サービスは労働集約的でございますから、労働需要の増加に寄与するという状況が人口減少下なのに働き手不足が起こっているという非常に不思議なことを生んでいると考えています。
日本社会に何が起こるのか。今、起こっているのは単なる人手不足ではありません。つまり、需要の増減をベースにして労働者過不足を決定するという単なる従来型の人手不足ではなくて、労働供給制約である。景況感や企業業績に左右されずに、労働の供給がボトルネックになって生じている。その社会で必要な労働の需要量をその社会の労働供給が下回っている状況にあるという構造的な人手不足の状況です。私はこれを「令和の転換点」と呼称していて、御存じのとおり「ルイスの転換点」というものがあったわけですが、現代日本にこの次の人口動態に起因する転換点が起こりつつあるのではないかなというのが、ルイスの転換点は、トリガーを引いたのは御存じのとおり農村の若者がみんな都市部に移って製造業で働き始めたということなのですね。それをやると高生産性産業ですからGDPがどんどん伸びていく。一方で、農村の若者の労働力を使い果たしてしまうと、今度は人手不足になって賃金が上がり始めるという、このときのトリガーは農村の若者の移動だったわけですけれども、日本でも1950年代から60年代に起こっていたのが集団就職と所得倍増なわけですけれども、中国でも2000年ぐらいに起こったと言われています。そして現代日本では、まさに今、ルイスの転換点の次の転換が起こりつつあるのではないかというのが私の仮説でして、2回目の構造的な転換のトリガーを引いたのは、ここまでお話ししてきたとおり御高齢人口の増加、特に80歳から85歳以上の人口の増加にあるのではないか。それによって非常に不思議なこと、つまり賃金上昇がなぜか起こり始めているとか、設備投資が長期的に増加局面にあるとか、物価の話もそうかもしれませんが、いずれにしてもそういった経済に対する、特に労働経済に対する大きな影響があるのではないかというのが私の仮説でございます。
「令和の転換点」のメカニズムを詳述すると、高齢人口比率増によって労働需要は増加するということが分かってきております。あわせて、労働投入量が減少しますので、慢性的な人手不足になります。人手不足がまず何を起こすかというと、生活維持サービスの縮小と消滅を引き起こしますので、そうすると日本に住まう人々のシャドーワークを増やします。可処分時間が減り、さらに労働投入量が減少する。生活が大変で仕事どころではなくなるという状況が起こり、人手不足が加速するということが地域社会で起こっている。下線部分でございますが、高齢人口比率増によって労働需要が増加。先ほどお話ししましたが、労働人口比率増によって労働集約的分野の需要が高まります。生活維持サービス、エッセンシャルワークの需要が高まりますので、結果として社会全体の労働生産性を押し下げて、必要な需要量を満たすために相対的に多くの労働投入が必要になるということが大きなメカニズムとしてあるのではないかということです。
そういった労働市場の変化の瞬間にある中で、課題点が浮き彫りになってきております。ここでは4点ほど提示させていただいておりますが、1点目は量的な人手不足の問題と、併せて質的な人手不足の問題。量的な人手不足の話がよく注目されますが、質的な人手不足の話がより深刻であるということ、特定職種において深刻化している質的な人手不足、特にハイエンド層とエッセンシャルワークという二極化された部分に需要が出てきているわけです。特にハイエンド層の問題においては、設備投資計画が今、大幅に未達の状況にあるわけですね。これについては様々な理由があると思うのですが、一つの理由として設備投資導入人材が不足しているのではないかという意見があります。設備投資をするためにそれを丸々持ってきて、外部の人材で全てそれが導入できるならいいのですけれども、それはできません。ソフトウエアにしろ、ハードウエアにしろ、それを導入するために現場を知悉した人材が必要になりますので、設備投資導入に関わる人材というのをいかに育てていくのかという点に質的な人手不足の問題がございます。私はそういったDXというか、現場の機械化といったことを導入する介護現場とか、飲食店の現場といったところに設備投資を導入する際に、必ず現場参謀というのが経営者の方側にいるということに注目しておりまして、一つのテーマなのかなと思っております。
2点目は、生活維持サービスの深刻な人手不足であること。ハイエンド層ではなくてエッセンシャルワークの分野の人手不足が仕事どころでなくなってしまうと、労働投入量に対して悪い影響がありますので、単なる成長分野の移動ということでは、むしろこの生活維持サービスはそもそも今、生産性が低いわけですから、悪化してしまう。生活が大変で仕事どころではなくなるというところで、私は今後の日本を担うような人材像としてエッセンシャルホワイトカラーというのが必要になってくるのではないかなと。つまり、エッセンシャルワークの現場に先端技術を用いて現場のオペレーションをよりよくするという技術職・企画職のことですけれども、現場人材の技術リスキリングや、逆に先端技術人材の現場リスキリングという2種類の方向からのリスキリングによってこういったエッセンシャルホワイトカラーを生み出していくということに雇用吸収力があるのではないかなと考えております。
3点目、地域におけるその地域の企業同士の働き獲得競争。本当に地域の中小企業の社長さんとお話しすると、地元の会社さんはここにいる社長さんがみんなで高校生を取り合っているという話になるわけですよ。ゼロサムゲームです。取り合いでは誰かが負けてしまう。そういった中で関係社員、関係人材、富山県庁さんの資料にもございますが、副業・兼業、スポットワークみたいなことをいかに活用していくのかということが必ず欠かせなくなってくるかなと思っております。
あと、労働投入量をいかに維持するのかということです。GDPの一つの計算式というのは労働投入量掛ける労働生産性なわけですから、労働投入量を増やすことは日本には無理にしても、いかに一定程度維持していくのかということが大きなテーマになっていきますが、この点でフルタイムワーカーの方に労働時間をさらに長くしてということでさらに働かせることの効果は限定的でございます。働きたいけれども働けなかったという人が活躍する、より働いてもらうといった環境をつくり出すということのほうがキャパシティーははるかに大きいわけですね。ここ10年の日本が人口減少下において労働投入量を維持できたのは、そういった働きたいけれども働けなかったという方が活躍できるような方向に労働法が変わってきたということが大きなポイントだったと私は考えております。
最後に、令和の転換点後の労働・人材政策立案の3つの要点ということで、僭越ながら3つ申し上げさせていただいておしまいにしたいと思っておりますが、労働市場における圧力を保つというのが1点目と考えております。働き手の働きたいという人と採用したいという企業で言うと、圧倒的に採用したいという企業が多いという状況になっている。逆に言うと働き手というのが本当に希少な経営資源になってきているわけですから、そういった希少な働き手という大切で希少な資源を守ると発想で、単なる規制ではなくて今後の労働市場の供給が乏しいということを生かして企業に労働環境改善、生産性向上のインセンティブをつくるということが労働政策における大きなミッションになってくるのではないかなと思っていて、あまり注目されませんが、若者雇用促進法という法律が実はこの分野における好手なのではないかなと私は思っております。これはデータ開示法ですね。データ開示によって何が起こったかというと、当時から若者を採用しづらくなってきてたわけですから、2016年に施行されていますけれども、採用しづらくなってきた中で採用したいと思うと、労働環境を良くしよう、賃金を上げようという発想になるわけですね。先日も高校生の就職の合同説明会に行ったところ、本当に建設会社さんは盛んに初任給が幾らですといったことをアピールされていらっしゃいましたが、そういったことのデータ開示などによってもインセンティブをつくっていけるということ、それによって全体の生産性を上げていくといったことが労働市場における圧力を保つというお話でございます。
2点目、「所得停滞」こそが労働政策の対処すべき課題ではないかと申し上げます。つまり、失業率というのがこれまで労働政策における非常に重要なファクター、KPIだったわけですけれども、失業率はもうずっと2.6%前後なわけですね。構造的なある種の完全雇用下にあるわけですから、そう考えると特にインフレ基調の経済に今後なっていくとなったときにいかに所得を上げるかが最重要課題になっていくわけですね。これまでのデフレ下においては所得が上がらないということは全く問題がなかったわけですが、今後の日本においては所得が上がらないということは貧しくなっていくということと同義でございます。ですので、所得を上げられているか、もっと言うと所得停滞率、これは手元のデータですとここ3年間で所得が一円も上がっていないという方々が45%ぐらいいらっしゃいます。こういった所得停滞をしている方をいかに減らしていくのかということが所得を上げられる企業をどうつくるのかということと併せて大きなミッションになっているのではないか。
3点目が働き損をなくすということで、特に高齢者と若者の関係がよく指摘されるわけですが、若者を採用するために高齢者を働かせないというシステムがあるわけですね。労働力に余剰があった時代というのは失業を防ぐために働かないほうが特だよ、働かせないほうが得だよという働くことに対するディスインセンティブがありました。こういったことをいかになくしていくのか。例えば在職老齢年金、これはかなり制度改正が進んでいると承知しておりますが、まだまだ特に建設現場でがっつり働きたいという方々とか、はたまたシステムの現場ですごく高年収で働かれていたみたいな方に対しては働かないほうが得という状況を生んでしまっておりますので、こういった制度をなくしていくということ、130万の壁みたいなことをどうやって考えていくのかということ、定年制みたいなことは本当に必要なのかといったこともそうですし、御高齢者が働けば働くほど健康保険の自己負担割合が増えていくなど、いろいろなことが働かせないようにしているわけですけれども、今後の日本において、これだけ人手が足りない状況になっている中において本当に必要なのかということを議論しなくてはいけない。別にフルタイムで働く必要はないわけですけれども、御高齢者においてはフルタイムで働かなくても例えば週に数時間とか、週に3日、2時間ずつみたいな就労をする小さな仕事という研究をうちの研究所でしている坂本という研究員がおりますけれども、彼などはデータ分析から働かない人よりも働いている方のほうがその後の幸福感が高まっているといったことも指摘しております。そういう意味では、以上3点を今後の労働人材政策立案の3つの要点としてお伝えさせていただいて、私の話をおしまいにしたいと思っております。
以上でございます。
○守島部会長 どうもありがとうございました。
続きまして、Will Labの小安様、よろしくお願いいたします。
○小安様 皆様、おはようございます。株式会社Will Labの小安と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、始めさせていただきます。ただいま、古屋さんからマクロ視点のお話がございました。私からは、地方中小企業の男女格差是正に向けた事業展開を全国でやっておりますので、現場の実践の視点からより具体的な、リアルな声をお伝えしますので、よろしくお願いいたします。
私自身は8年前までリクルートにおりました。アルバイト・パート領域のメディアの経営担当の執行役員をやっていたのですけれども、そのときに、人口減少の中でいかに働き手を確保していくかといった課題感から女性の就労のプロジェクトを立ち上げまして、それがきっかけとなって今は起業をして、自分の事業として全国で展開をしているという背景がございます。ですので、もともとはまさに人口減少と人手不足解消のために、女性もいかに生かせるかという視点から事業を始めたというのが原点としてはございます。
ただ、やっていくうちに、これは社会課題であり、まさにジェンダー課題、ジェンダーギャップの課題なのであるというところに行き着きまして、現在はジェンダーギャップのない多様性を認める社会の実現を目指し、内閣府や地方自治体、そして企業、起業家、NPOと連携をして、女性の就労だけではなくて女性の就労を促進するためにも企業側の職場の改善や、自治体と連携をして地域そのものを変えていくといったプロジェクトをやっていおります。
昨今特に人口減少、少子化、そして地方の女性流出ということがテーマとして多くのメディアで取り上げられるようになっておりますし、政府のほうでも大きなアジェンダになっていると思いますけれども、こういった背景を受けまして、ジェンダーギャップについてお話をする機会がとても増えてきております。その際に、人口減少、特に地方の女性流出の背景にジェンダーギャップという大きな課題があるということをお伝えしています。根強い性別役割分担意識、アンコンシャスバイアス、そしてハラスメント、あと、ちょっときつい言葉かもしれないのですけれども、最近、「因習」という言葉も使い始めております。データからはなかなか見えないのですが、例えばある地域のある会社で、月経のときに職場のトイレを使ってはいけないという不文律があるとつい2週間ほど前に聞きました。そういったなかなかデータには出てこない部分も含めてリアルな声をお届けしたいということで、現在、いろいろな地域で活動しております。
この10年ぐらい、いかに女性が労働参画できる社会をつくれるかということで、様々なビジネスを通した打ち手をやってきた中で、5つの構造的な壁があると伝えていますが(資料のP.4の図参照)、当初は壁は2つだと思っていました。女性自身の意欲を醸成し、そして職場環境を改善すれば、女性の就業率が上がっていくのではないか。実際に就業率は上がりましたし、M字カーブの改善というものは進んだと思っております。ただ、L字カーブは残りますし、非正規から正規になかなか転換されない、そして管理職比率が上がっていかない。採用、配置、育成、登用のプロセスにおいて無意識の偏見、もしくは意識的な仕組みというものが結構いろいろな企業に入り込んでいくと実はありまして、そういったもので結果として男女の賃金格差というものが残っていると考えています。
当初、この図の①と②をやることによって女性の就労、そして管理職登用や最終的には男女賃金格差を解消していけるのではないかという仮説で事業を開始したのですけれども、その先に④の家庭の家事・育児負担、そして、その先にアウトソースするサービスがその地域にないといったことで、結果、女性が労働分野においてリソースを割けないという現状が見えてきましたので、このあたりから自治体と連携をして、地域を挙げて企業だけではなくその地域のケアサービスや機運の醸成といったものも含めたプロジェクトを推進するようになっています。やはり最も根深い、そして高い壁、社会規範と考えています。固定的な性別役割分担意識というものがなかなか変わらないという、若い世代はもう既に大分変わっているのですけれども、やはりシニア層が変わらないことには、特に地方においてはコミュニティーのつながりが強いものですから、会社がいかに男性の育休取得を推進しても、女性の管理職を推進しても、地域の皆さんからの言葉がけ、そんなことをやっていてまだ子供が生まれないのかとか、男のくせにとか、息子がかわいそうといった声を実際に私自身も聞いておりますけれども、そういったことでなかなか社会規範が変わらないと労働市場も変わっていかないのではないかなと感じております。
ただ、実はこの性別役割分担意識を基にしてつくられた社会保障制度、税制、そして企業の家族手当といったものから変えることができるのではないかということでいつも主張を提言しています。特に中小企業が多い地域によっては男女賃金格差是正の動きというのは自ら生まれづらいということで、自治体が率先垂範して課題解決していくべきだと考えています。社会保障制度や税制、企業の家族手当においてはこちらの皆様とぜひ検討を進めていただけるとうれしいなと感じているところです。
私はなぜ日本でジェンダーギャップ指数がなかなか上がらない、もしくは後退していくのかということを常に残念に感じておりまして、であるならば、15年間ジェンダーギャップランキング世界1位のアイスランドは何をしたのかということを取材するため、今年5月に視察に行ってまいりました。いろいろな背景があるが、私個人としては男性の育休取得、それから上場企業の役員クオータ40%、男女賃金統一認証制度が従業員25人以上の企業に適用されているというところに非常に驚きを感じました。私自身も中小企業には難しいという思い込みがあったのかなとこの視察を通して一番感じたところです。現在、日本においては301人以上の企業にのみ男女賃金格差の公表義務があると思うのですけれども、私が今行っております地方においては301人以上の企業というのはほぼない地域が多いです。そして、100人から300人という企業が数社あっても、基本的には50人前後、20~30人という企業が非常に多い地域において、中小企業で男女格差を是正していくのは難しいということを言っていますと、大手と中小の格差、ひいては都市部と地方の格差につながっていきます。
私が行く先々で言われる言葉に、まず地方は難しい、特にこの地域は難しいとあらゆる地域の方がおっしゃいます。次に、中小企業は難しい。そして、家庭内では女性が強いから問題ないではないか。女性自身が年収の壁を越えたがらないのだ。都市部では違うかもしれないけれども、この地域では活躍したい女性なんていないよ。取引先が男性を求めるので仕方ないよね…といった思い込みにとらわれて、ここから先に進めていないという地域や企業がとても多いと感じています。
これは参考ですけれども、今年度から、気仙沼市では人口減少対策を背景としてジェンダーギャップ解消プロジェクトを立ち上げました。私がアドバイザーとして入り、まず経営者のワークショップから行っています。経営者によっては、こういった先ほどのような言葉が出てくるわけですけれども、このままいくと、さっき古屋さんの話にもありましたけれども、生活サービスも維持できなくなるということが目に見えている中で、このままの未来でいいのでしょうかとして今商工会議所と市役所の官民連携プロジェクトとして、地域と共に考えるということをやっています。
そして、これも現在、気仙沼で進めていることなのですが、1社だけが変わるというのは非常に難しいのですね。例えば男性に育休を取ってくださいと言っても、例えば配偶者や家族がそれを反対することがあります。女性にももちろん無意識の偏見がありますので、妻がいいよ私がやるからということだったり、もしくは地域コミュニティーにおいて反対があるといったこともありますので、地域の企業で連携して地域・職場の男女格差の是正をするというプロジェクトを各地で行っております。
先行事例としましては、兵庫県豊岡市で地域の企業連携によるワークイノベーション推進に取り組んでいます。ワークイノベーション推進会議という会議体を商工会議所の会頭が会長となって立ち上げ、地域の各地場産業、それから建設業もありますし、金融もありますし、各企業のリーディングカンパニーに市役所も含めて入っていただきまして設立をし、現在、120社になっております。KPIとしましては、女性従業員の3分の2以上が働きやすく、働きがいがあると意識調査で評価している事業所の数を10年で50社つくると。これは仮置きでもあるのですけれども、8万人の町で50社の女性たちの3分の2がこう言っていれば、この町は働きやすいと感じていただけるのではないかということでKPIを置いています。現在、2023年度の目標は15社ですけれども、今年で18社になってございます。来年度30社ですので、ここが非常に大きな壁なのですけれども、30社を超えていきますと町全体の空気が変わるということで、現在、地域の皆さんと共に取り組んでいます。
豊岡市では「あんしんカンパニー」という表彰制度をつくったのですが、制度の有無だけではなく実際に従業員がどう感じているかを審査に反映していることが特徴です。KPIは女性の3分の2だったのですけれども、あんしんカンパニー自体は女性の3分の2、男性の3分の2、そして全従業員の3分の2、それぞれが働きやすく働きがいがあると感じている企業のみが表彰されますので、かなりハードルが高く、現在、4社の表彰となっております。これをいかに増やしていくかということをみんなでナレッジを共有しながら取り組んでいます。
取り組みの中でこだわっているのは、実際に働いている人の声です。地方では女性が声を上げるという風土がないために本当の課題が見えないことが課題。ですので、ちょっとしたもやもやでも声を上げていいのだよという場づくりをしながら、ただのもやもや、愚痴ではなくて、それをロジカルに言語化していくトレーニングを行うことによって、市長、副市長、それから経営幹部に女性側からプレゼンをするという形で、課題解決につなげていく取り組みも行っています。そういった中から経営者の皆さんが職場改革をされ、中田工芸は厚労省のサイトに、かばんの大手、株式会社由利は「中小企業のためのダイバーシティ経営」に掲載されています。なかなか一気には変わらないのですけれども、1社でも2社でもこういった企業が生まれ、目指すべきロールモデルというものをつくることによって地域の中小企業が変わっていく。女性活躍推進法にも働き方推進法にも対象とならない企業がほとんどの地域ですので、そういった手法で推進しています。
そして、こちらは皆様と考えていきたいところなのですけれども、厚労省が先般、都道府県の男女賃金格差というものを公表されまして、とても地域に影響を与えています。ただ、県レベルだと思ってください。例えば気仙沼で宮城県の男女賃金格差がこれだけだよと言っても、誰も経営者は自分事になりませんし、本気になって動く人は一人もいないというのが現状です。気仙沼のデータというものを出さなければいけない。
ただ、男女賃金格差のデータなのですけれども、現在、市単位で把握するためには税収データから出すしか方法がないのではないかと考えております。ですので、そういったやり方で各市町村が税収データから出してくださいねということもありだとは思うのですけれども、市町村レベルまで実態把握できるという仕組みができないかというのが私からの提言です。
女性の管理職比率や男性の育休取得率も実は市町村単位では捉えられていません。国としても旗振りをしていただけるとありがたいなと思ってございます。
最後は参考です。これは気仙沼の市内の事業所経営者のアンケートをやったものです。気仙沼市は人口減少対策に向けてWell-beingプランというものを発表しております。誰もがWell-beingを感じる町、そのための一つの柱として職場が働きやすく働きがいがある、男性も女性もということでやっていますが、それに向けた調査をしたところ、現在、男女の平均賃金に格差がありますかといったときに、これを見ていただくとお分かりになりますように、賃金格差はないと答えた会社が3割あるということです。これが本当なのかというのは、先ほど申し上げたように実態のデータがないというところで、これから精査をしていきたいと思っているところです。
次のページに行きますと、別の調査なのですけれども、気仙沼において働く女性の調査から、男性のほうが優遇されているという方が4割います。こういった感覚、意識をいかに実態のデータとして把握をしながら中小企業の働く職場の改善につなげていくかということを引き続きやっていきたいと思っています。先ほどの古屋さんの話につながると思うのですけれども、中小企業において人手不足については実はまだまだやれることがあるのではないかと思っています。女性がまだまだ意欲があるけれども100%活かされていない。そういった女性人材ですら行かせていないというところから手を入れていくことで、外国人、それから障害を持った方、多様な方が働ける職場を増やし、そして地方・都市部の格差を是正していけたらと考えております。
長くなりましたが、以上となります。ありがとうございました。
○守島部会長 小安様、ありがとうございました。
続きまして、富山県の山本様及び赤崎様にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○赤崎様 よろしくお願いいたします。富山県庁労働政策課の赤崎です。
本県からは、「女性をはじめ誰もが活躍できるウェルビーイング富山を目指して」と題しまして、冒頭、私から本県の産業や労働関係のデータを御説明した後、県の人材確保に関する主な取組について御紹介いたします。その後、知事政策局次長の山本より、本県の女性活躍に関する取組について御紹介いたします。
ページをおめくりください。まず、我が国と本県の人口推移です。本県の人口は全国より10年早い平成10年をピークに減少に転じております。年齢3区分別の人口構成では65歳以上が拡大する一方で、15歳未満は減少が続いておりまして、人口構成が変化しております。
次をお願いします。産業別総生産構成比です。本県は、第1次産業が0.9%、第2次産業が37%、第3次産業が61.9%となっております。全国と比較すると第2次産業の割合が高い点が特徴的と言えます。
続きまして、本県の労働力人口と労働力率の推移でございます。本県の労働力人口は、全体的にやや下降・横ばい傾向で推移しております。令和2年の女性の労働力率は54.7%で、全国の54.2%をやや上回っている状況です。
続きまして、労働力人口の年齢構成です。本県は全国とともに40歳、50歳代の割合が高くなっていますが、全国と比べると50歳代以降の割合がやや高いところが特徴となっております。
続きまして、本県の人材の過不足の状況についてです。人材の過不足の状況については、県内の7割以上の企業が人手不足と回答しております。企業規模が大きくなるほど人手不足と答える企業の回答割合が高くなっております。
続きまして、不足感のある職種についてでございます。半数超の企業が専門的・技術的職業従事者に不足感があると回答しています。それに続いて生産工程従事者、管理的職業従事者が続いているといった状況となっております。
このような状況を踏まえまして、本県では人材確保策として幾つかの取組を行っております。まずはUIJターン就職の推進です。現状では、富山県出身の大学進学者の約75%が県外に進学しておりまして、その約4割が県外に就職しているという状況となっておりまして、Uターン就職率は55.3%となっております。課題としては、富山県の企業の情報提供が十分に学生に届いておりませんで、県内企業が就職の選択肢となっていないという点が挙げられます。そのため、県では企業と学生をつなぐプラットフォームである「就活ラインとやま」の運営を始め、Uターン就職応援イベントや県内企業就活バスツアーなど、学生に対する県内企業の情報提供や支援を実施しているところでございます。
続きまして、高年齢者の就業支援についてでございます。この11年間に60歳以上、とりわけ65歳以上の労働者数が大きく増加している状況です。より働く意欲・能力のある高年齢者が本県産業や社会の担い手として活躍できるように、就業機会の確保に取り組む必要があると認識しております。このため、県では専門知識・技術を有するシニア人材と県内企業とのマッチング推進のための組織「とやまシニア専門人材バンク」をハローワーク富山と連携して運営しておりまして、仕事の相談から紹介までワンストップで支援しております。就職件数は徐々に増加しておりまして、昨年度は613件に達しまして過去最高となっておる状況でございます。
続きまして、高度外国人材確保支援についてです。本県の外国人労働者数は約13万人で、10年前より約2.2倍増加しているという状況になっております。在留資格別では技能実習が約4割、専門的・技術的分野の在留資格が約2割という状況になっております。人材確保の取組として外国人材を活用すると回答した県外企業は約1割にとどまっているという状況です。こうしたことから、技能実習生を中心に外国人労働者の活用は一定数進んでいる状況ではございますけれども、高度外国人材も含めた外国人材の活用を認識している企業は一部にとどまっておりまして、県内企業に対して高度外国人材などの受入れを後押しするとともに、高度外国人材の供給ルートの確保が重要であると認識しております。そのため、県では県内中小企業が即戦力となる高度外国人材を確保できるように、アジア諸国の理系人材と中小企業のマッチング、それと採用内定者に対する日本語教育などを実施するアジア高度人材受入事業を実施しています。また、企業の外国人材受入れを総合的に支援するための相談窓口「外国人材活用支援デスク」を昨年9月から開設しているところでございます。このデスクでは、企業向けに活用セミナーであったり、相談対応であったり、マッチング支援を実施している状況です。
最後に、副業・兼業人材の活用です。県内企業では、副業・兼業人材について関心があり、活用したことがあると回答した企業は約1割となっておりまして、十分に活用されているとは認識しておりません。即戦力となる人材のマーケットは地方において十分ではなく、都市部などのプロフェッショナル人材や副業・兼業人材の確保・活用の支援が重要な課題だと認識しております。
そのため、県では「富山県プロフェッショナル人材戦略本部」を拠点に、金融機関などと連携しながら県内企業の人材ニーズの把握や民間人材ビジネス事業者を通じたプロフェッショナル人材などとのマッチング支援を実施している状況です。事業実績としては、経営相談実績は約2,500件と人口当たり全国第7位、マッチング実績は約1,000件と、人口当たり全国第2位となっている状況でございます。
私からは以上です。
○山本様 続きまして、知事政策局の山本でございます。私からは、本県の女性活躍の取組につきまして御説明をさせていただきます。
本県では、これまでも女性リーダー塾の開催や女性が活躍している企業の表彰等の取組によりまして、女性活躍を推進してまいりました。一頃と比べますと女性活躍の機運は確実に高まっておりまして、県内企業におきましても実績が出てきていると感じておりますが、その一方で、他県と同様、若年女性の社会減が続いておりまして、人口減少の要因にもなっております。
次のページをお願いします。社会減の多くが20代前半の就職期に集中しておりまして、特に男性より女性の転出超過の幅が大きいことから、就職期の若者、特に女性に選ばれる職場環境づくりに重点を置いて取り組んでおります。
県内の女性を取り巻く環境ということで、データを見ていただきたいと思います。次のページをお願いいたします。就職率や平均勤続年数、正社員の割合は全国トップクラスでございますが、管理職の割合となりますと13.3%、全国44位と下から数えたほうが早いという状況でございます。また、男女間の賃金格差は76.8、全国で見ると格差の小さいほうから21番目ということで全国平均を上回ってはおりますが、依然として格差がある状況でございます。この賃金格差は採用の形態や管理職割合、勤続年数の男女差など、構造的な要因で生じておりまして、様々な課題がここに集約されているものと考えております。
なお、男性の育児休業の取得率は令和4年度が15.6%、そこから令和5年度は33.9%と大きく伸びたところでありますが、女性と比べますと取得率、取得期間ともにまだまだ低い水準にとどまっております。
次のページをお願いします。こうした課題に対応するために、令和4年3月に女性活躍推進戦略を策定しまして、女性が働きやすく、生活しやすく、そして活躍できる環境の整備を進めております。その中で昨年度から力を入れている取組が、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)の解消でございます。職場、家庭、そして女性の意識等の課題の背景にはこのアンコンシャスバイアスがあるということを前提にこの戦略を推進しております。アンコンシャスバイアスに関する取組につきましては最後のほうで説明をさせていただきます。
次のページをお願いします。まず、本県の課題である女性の管理職登用につきまして、何が障壁となっているのか、企業と従業員にアンケートを実施いたしました。その結果ですが、企業の半数以上が女性本人に昇進意欲がないと思っていることや、また、男性の約4割が女性自身が管理職を希望していないと思っている反面、実際に希望していない女性は3割程度であるということ。また、女性が上司や同僚が女性リーダーを希望していないと感じている一方、企業は職場の認識や理解が不十分とは思っていないなど、女性と企業、女性と男性との間に思い込みや意識のギャップがあるということが分かりました。
次のページをお願いします。そこでこうした意識にずれがあることも踏まえながら、女性が働きやすく、働きがいを感じられる職場を増やそう、また、就職期の女性に選ばれる職場環境を整えていこう、そしてそのキーマンは企業経営者の皆さんであるとセミナー等を通じまして企業経営者や業界団体に強く訴えまして、女性の社会減が続いている危機感やその課題を共有し、官民一丸となって取組を進めているところでございます。
次のページをお願いします。また、企業の取組を後押しするために、富山版えるぼしといたしまして「とやま女性活躍企業」の認定制度を令和4年に創設いたしました。国のえるぼし認定へのステップといたしまして、本県の課題であります女性管理職比率と働き方改革の基本であります時間外労働等の時間数、この2つの評価項目に絞ったシンプルな制度設計で行っておりまして、認定企業は現在76社となっております。
次をお願いいたします。今後は賃金格差の改善にも力を入れていきたいと考えております。そのためには、まず自社の差異の理由をよく認識することが大切であります。先般、賃金差異の要因分析に係るセミナーを開催したほか、改善に向けて取り組む企業に専門コンサルタントを派遣するなど、意欲ある企業の取組をしっかり後押ししていきたいと考えております。
次をお願いいたします。就職期の女性に選ばれる職場環境づくりについてであります。県外に進学してUターン就職をしなかった学生にその理由を聞きますと、県内に志望する仕事がなかったからという言葉が必ずと言っていいほど返ってきます。特に本県はものづくり県を標榜しているため、文系の女性の就職先の選択肢にはなかなか入りにくいようであります。でも、本当に理由はそれだけなのか、県内には職場環境の改善にも積極的に取り組み活躍できる企業がたくさんあるということが知られていないからではないかと考えております。志望する仕事がないと思い込んで県外に進学し、そのまま戻ってこないような、ある意味「不戦敗」だけは避けたいと思っております。そこで、県内に様々な業種・職種があることを中高生の段階から知ってもらい、将来、就職活動をするときに、県内就職も視野に入れてもらおうと、昨年度から県内で活躍する女性社員と中高生が交流する機会を設けています。
次のページをお願いします。実際に参加した中高生からは、「富山にも幅広い業種・職種の企業や働き方があることを初めて知った」とか、「県外に行きたい気持ちが強かったけれども富山で働くのもいいなと思った」など、好意的な意見が多く寄せられております。こうした取組はこれからも続けていきたいと考えておりまして、若者の将来の選択肢が増えるように、企業だけでなく例えば農業で働く人、起業した人などの幅広い大人、面白い大人と中高生がつながれるように工夫して実施をしていきたいと考えております。
次のページをお願いします。最後はアンコンシャスバイアスに関する取組であります。アンコンシャスバイアス、私たちはこれを略して「アンコン」などと申しておりますけれども、こうしたアンコンに気づいて意識と行動を現代社会に合うようにアップデートしていこうということで、昨年度、「あなたにも思い込み『アルカモ』キャンペーン」を実施いたしました。これってアンコンかもと思う言葉やアンコンに気づいた結果、良い変化をもたらしたエピソードを県民の皆様から募集したところ、104件の応募がございました。専門家の監修の下、特設サイトにおいてこうした言葉やエピソードなどを漫画にして分かりやすく紹介をしております。
次のページをお願いします。また、座談会を開催いたしまして、大学生から働きたいと感じる企業やアンコンシャスバイアスを感じた経験について生の声をお聞きしました。「男女問わず活躍でき、平等に評価されない会社は選ばない」、「一人一人がアンコンシャスバイアスを持っていることを意識している会社になればいい」など、ジェンダー平等やアンコンシャスバイアスの解消に向けた意見が大学生から自然と出てくるというところに我々はもっと意識を向けていかなければならないと強く感じたところであります。
最後のページをお願いいたします。アンコンシャスバイアスの解消には今後も力を入れていきたいと考えております。今年度は企業の取組を深掘りいたしまして特設サイトで紹介したり、中高生の保護者や教員向けの出前講座などを予定しております。また、これは本県の特徴的な取組だと思っておりますけれども、県内の市町村に約500名の男女共同参画推進員を配置しております。この推進員の活動にアンコンシャスバイアスの解消を組み込むなど、個人や家庭、地域、学校、職場におけるアンコンシャスバイアスへの気づきを促しまして、その解消に向けた取組を今後ともしっかり進めていきたいと考えております。
以上でございます。どうもありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
それでは、ここから自由討議、質問に入っていきたいと思います。最初に、オンラインで早く抜けられると伺っております入山先生、それから山川さんはまだお入りになっていらっしゃいますかね。それでは、どちらでも構わないのですけれども、よろしくお願いいたします。
○入山委員 早稲田大学の入山でございます。ありがとうございます。私は所用であと10分強で抜けなければいけないので、先に御質問させていただきます。ありがとうございます。
富山県さんも含めてお三方ともとても参考になりまして、問題意識もとてもよく分かりますし、加えて新しい視点みたいなものが非常に私も参考になったので、とても感謝しております。
それで、まず、本当はいっぱい質問があるのですけれども、時間の制限もあると思うので古屋さんに1つと、それから小安さんと富山県の皆様に1個、合計で2つ御質問なのですけれども、一個は、古屋さんのものはめちゃめちゃなるほどなと思ったのですけれども、ホワイトエッセンシャルワーカーが足りないという視点は私も最近結構痛感するところがありまして、おっしゃるとおりだと思うのですよ。意外とここは盲点だなと思っていて、例えば今日は設備投資のお話もいただいたのですけれども、私は結構デジタル系の会社と付き合っているので、例えばDXみたいな局面でも、結局もともとエンジニアは少ないのだけれども、エンジニアが足りないだけではなくてそもそもこのプロジェクトをどうやって回すのだっけというところのまさに全体を調整できるような人が今の日本にはめちゃめちゃ足りていないというのを最近痛感していまして、アクセンチュアさんが強いのは逆にそこができるからだと思っているのですけれども、これは足りないというのはよく分かるのですけれども、どうやったら増やせるのかという、つまり結局企業内努力で市場のメカニズムでやるという話なのか、それ以外にリクルートワークさんの中でこういう人材はどうやったら育てられるのだろうみたいな議論はあるのかというのを教えていただきたいというのが古屋さんへの御質問です。
それから、小安さんと富山県の皆様にお伺いしたいのは、私も男女の格差のことは本当に課題だと思っていまして、とても重要なポイントだと思います。その上で、これは結局、まさにおっしゃったように経営者さんなどに意識を喚起してもらうしかないのだけれども、もちろんは行政はすごく頑張られていますけれども、当たり前ですけれども、行政がやることはどうしてもお願いしますというレベルなので、もう少し強制力がある意味必要ではないかと思うときもあって、私は結構ポイントになるのが地銀ではないかと勝手に思っているのですよ。地方銀行ですね、銀行さん。なぜかというと、結局今、東京の大手企業で少しずつ男女格差が若干減ってきているのは、結局外発なのですね。投資家からめちゃめちゃプレッシャーがあって、投資家がお前らちゃんとこういうことをやらないと駄目だよと言われているので、正直強制的で若干いやいやみたいな部分も経営者さんにはあると思うのですけれども、それでもだんだん変わってきているというのがあると思っていて、そうすると、地方の中小の非上場企業というのはそうした外圧が弱いのですよ。そのときに鍵なのは、結局お金を出しているところが強いので、そうすると地銀しかないなと思っていて、こうすると実は厚労省さんというよりは金融庁さんのほうになってしまうのですけれども、実際僕は今、金融庁さんともそういう話をしていて、当然地銀を押さえているのは金融庁なので、結構いろいろなプレッシャーをかけようとしているのですよ。そういう地銀というのをうまく使えないのでしょうかみたいなことについて、小安さんや富山県の皆さんに御質問させていただきたいなという以上の2つです。
とても勉強になりました。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、古屋さん、お願いします。
○古屋様 入山先生、御質問ありがとうございます。
私も全く共通する認識を持っていて、本当にエンジニアみたいな方もそうですし、プロジェクトマネジメントする方も全く足りていないというのが設備投資の現場に起こっているのかなと思っております。こういう人材を育てていくという意味では2方向の方向性があるのかなと思っていて、一つは現場のオペレーションに物すごく詳しい方にある種のリスキリングというか、学び直しの機会を提供するということです。
ただ、この学び直しというと、リスキリングをやっているという日本企業の85%は座学によるリスキリングだという結果もあります。実際そうではないですか。オンラインラーニングなどといった座学による学びなってしまっていて、これだと本当に役に立つのかという疑問がありますので、実践による学びを組み合わせる必要がある。この視点で、例えばイギリスなどが大規模に導入しているアプレンティスシップみたいな発想で、座学を終えた方々を実践の学びの場として受け入れる会社に例えば補助金をつけるみたいな仕組みをつくっている国があるわけですけれども、これが今の日本に欠けたパーツなのではないかなと思っているのです。
これが一つの方向で、もう一つの方向は、今、エンジニアをやっているよとか、今、プロジェクトマネジメント、プロダクトマネジメントをやっているよという方々がエッセンシャルの場に入っていくという方向性なのですけれども、これは賃金水準の問題が現実の問題としてありますので、順序としてはまず現場を知る方々の座学アンド実践によるリスキリングによって徐々に生産性を引き上げた上で賃金水準を引き上げていった結果として、2つ目の方向性による人材育成ということも起こっていくのかなと考えております。
以上でございます。
○入山委員 なるほど、分かります。結局、結構プロマネを育てるのは爆発なのですよ。大変ですね。
とても参考になりました。ありがとうございます。
○古屋様 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、小安様、お願いいたします。
○小安様 御質問ありがとうございます。
まさに男女賃金格差は外圧というか、何らかのプレッシャーがないと取組は進まないと考えていまして、一つは法律で301人以上というものをさらに適用拡大していただくということが一番パワフルかなと思っているところです。
もう一つは、先生がおっしゃっていただいたようにやはり金融だと思っているのですけれども、実は地銀自体の男女賃金格差が非常に大きいという課題がございます。ですので、まずはそこからかなと思っていまして、アプローチとして法律の適用拡大、それから交付金によって何か差をつけられないのかなということをどなたかとディスカッションしたいなと思っているところと、あとは自治体の例えば入札加点みたいなもの、それからおっしゃった金融というふうに思っています。
実は兵庫県豊岡市のワークイノベーション推進会議は政策金融公庫さんと連携をしていまして、ワークイノベーション推進会議に入会をすることで融資の優遇がある。そういったことが地銀とさらに連携強化できたらとは感じているところですが、一つ前提の課題があるということです。
○入山委員 そうですね、よく考えると確かに地銀の中にありますからね。これはぜひ金融庁の伊藤局長に言いましょう。
○小安様 ぜひお願いします。
○守島部会長 ありがとうございます。
富山県、何かございますか。どうぞ。
○山本様 御質問どうもありがとうございます。
今ほど小安様からおっしゃっていただいたとおりですけれども、地元の富山の話でお話ししますと、例えば地銀さんがSDGs投資ということで多少そういう金利などの優遇みたいなことがあったり、日本政策金融公庫さんから男女共同参画というところで連携していこうとお声がけをいただいたりということで、取組の進んでいる企業に対する優遇は若干行われております。それから、本県でも男女共同参画を進めている企業につきましては入札の加点で優遇をしております。
あと、先ほど女性活躍推進法のお話もございましたけれども、情報公表の義務づけの対象範囲が少しずつ広がっていくというときに、富山県といたしましては、ただ広がったから、義務がこうなったからというのを啓発するだけではなくて、社会保険労務士さんを企業に派遣いたしまして、一般事業主行動計画の策定支援なども行っております。ただ、そういう支援の中で、例えば先ほど賃金差異の話で自分の会社のことを見つめ直す必要があるというお話をさせていただいたのですけれども、そういうところをもうちょっと丁寧に、どうしてこういうことをやらなければいけないのか、賃金差異がどうして生まれているのかということをしっかり御理解いただけるような具体的な指導みたいなこともしていきたいなと思っております。
以上でございます。
○入山委員 どうもありがとうございます。
守島先生、先に質問させていただいてありがとうございました。とても参考になりました。
○守島部会長 ありがとうございます。
山川先生は後でまたもう一回戻られるということなので、ほかの委員の方、オンラインでもどちらでも構わないです。
では、石﨑委員、お願いいたします。
○石﨑委員 大変貴重な御報告をいただきましてありがとうございました。大変勉強になりました。古屋様に2点と、それから小安様、富山県様に2点ほどお尋ねできればと思います。
まず、古屋様に対してでございますけれども、最後のところで労働環境改善のインセンティブとしてデータ開示が重要であるというお話を若者雇用推進法を引きながらお話しいただいたかと思います。現状のデータ開示でここがまだ足りないのではないかとお感じになられている点などがあれば、教えていただきたいというのが1点目でございます。
2点目は先ほども話題に上がりましたホワイトカラーエッセンシャルワーカーの不足という部分で、ここは私もあまりこれまで意識していなかったところで、非常に新しい気づきをいただいたところなのですけれども、他方で、ホワイトカラーではないエッセンシャルワーカーの方の不足というのも課題として重要ではないかと思うところでして、そこを増やしていくためにどういった方策が考えられるのかというところも教えていただけるとありがたいというところになります。
それから、小安様、富山県様の取組を伺っていまして、非常に官民の連携ということが重要なのだなというところを感じさせていただきました。また、小安様から提起いただいた市町村レベルのデータが必要ではないかという問題提起も非常にそのとおりだなと共感を持って聞かせていただいたところであります。既にお話の中に出ている部分はあるのですけれども、地方と民間、そして場合によっては業界団体を巻き込んだ取組が重要であるというのはそのとおりであるとして、それにプラスして国に対して期待されるところとか、国がどういった役割を果たすべきかというところについてのお考えがあれば、お聞かせいただきたいというのが一点。
それから、両方ともアンコンシャスバイアスの解消に向けたいろいろな調査だったり、周知というのが必要だというお話があったのですけれども、アンコンシャスバイアスに気づいて、恐らくその後、それを改善につなげていかなくてはいけないと思うのですけれども、そのプロセスをうまく回していくに当たっての工夫されているところや気をつけられているところなどがあれば、また改めて補足をいただけるとありがたいです。
私からの質問は以上になります。
○守島部会長 では、どうぞ。
○古屋様 石﨑先生、御質問いただきましてありがとうございます。
1点目から、ここがまだ足りないというデータ開示については2点ございまして、一点は入った後の伸びというか、その推移でございますね。つまり今、例えば若手に対しては初任給というデータがもちろんあるわけですけれども、それがどのように実績として伸びていっているのか。実際に今、初任給だけがんと引き上げて賃金テーブルを非常にフラットにして、もちろん守島先生は非常にお詳しい分野なので釈迦に説法でございますが、そういった状況の会社も出てきております。その後、どのように伸びているのかという実績をしっかりと示すというところは非常に大事だなと。キャリアパスも含めて入った後にどうなのかということですね。それは例えば年代別で示すということがあったほうが、より正確にその会社がどれだけ人的資本投資をしているのかということを判断できると思います。
もう一点は、同様に人の分野で言うと育成投資でございます。今も人的資本経営の文脈で開示している会社が出てきておりますけれども、どのようにこの枠組みを公的につくっていくのか。公的な枠組みというのは頑張っている会社がしっかりとアピールできる場になりますので、こういった学びの状況や、例えばリスキリングによってどれだけ年収を上げることができたのかといったことをしっかりと育成投資の文脈で判断するという2点が今のデータ開示にはまだ不足しているなと感じます。
もう一点、エッセンシャルホワイトカラーについてでございますが、私はこの人口動態のままというか、今後の日本の人口動態を踏まえると、今のエッセンシャルワーカーの方々の働き方のままにしていては、どんどんエッセンシャルの現場で働かれている方々が大変になっていくと考えております。例えば労働投入量で申し上げますと、つまり就業者数掛ける平均労働時間ですけれども、日本全体では先ほど申し上げたとおりこの10年間横ばいで、何とか頑張っているという状況なのですが、医療福祉の分野だけで何と1.5倍になってしまっているわけです。つまり、全体の労働投入量はもうこれ以上伸びようがないわけですけれども、その中で医療福祉だけでこの10年間で1.5倍ぐらいの数字になってきている。今後、さらに増えることが当然予測されますので、そうなったときにこれまでのやり方ではないやり方をエッセンシャルワークの現場でつくっていくという意味で、エッセンシャルの今の現場にいらっしゃる方々が起点となってエッセンシャルホワイトカラーみたいな新たな職種を生み出され、それによってエッセンシャルワークの現場の一人一人が1時間働くことによって笑顔にできる方の数を増やすということがすごく重要なポイントになってくるのではないかなと思います。
そういう意味では、エッセンシャルワークで働く方を増やそうということはあまり重要ではないのかなと私は思っていて、つまり人数を増やすことだけを追求すると本当に現役世代を全部エッセンシャルワークに突っ込まないといけなくなる。それよりもまず先決なのは、エッセンシャルワークの現場でいかに一人一人の御活躍できる力を高めていくのか。そのためにエッセンシャルホワイトカラーみたいな職種が現場起点で起こってくるのではないかなと考えている次第でございます。
○石﨑委員 分かりました。ありがとうございました。
○守島部会長 小安さん、お願いします。
○小安様 御質問ありがとうございます。
まず、1つ目の国に期待することという点でお答えさせていただくのですけれども、地方の中小企業を巻き込んだ職場改善、ジェンダーギャップの改善なのですけれども、1年では結果が出ないのですね。ですので、中長期視点というものを非常に大事にして、例えば交付金にしても中長期視点というものを意識していただけるとありがたいなと思っています。例えば豊岡市においては、実はワークイノベーション推進戦略というものを10年計画でつくっています。私自身も1年、2年、3年、なかなか結果が出ずに非常に苦しい思いをしたのですけれども、正直、町の空気が変わってきたな、経営者の皆さんの言うことが変わってきたなと全体的に感じることができたのは5年を過ぎたあたりからでした。4~5年のところをどう耐えられるかということが官民連携、自治体連携でやるときには非常に重要になってきますので、中長期で自治体には計画を立てていただき、モニタリングをしながらしっかりと進めていただきたいと思うのですが、そこに例えば地域女性活躍推進交付金というのがあると思うのですけれども、単年度の審査になるというところで、中長期で結果を見ていただくということと、何らか中長期で支援いただくような制度があると、非常に自治体としてはいいのではないかなと感じているところです。
2つ目のアンコンシャスバイアスなのですけれども、実はこれに関しましては、これも兵庫県豊岡市を中心に様々な取組をやってまいりました。結論としては、変わる人は変わるが変わらない人は変わらない。ですので、理解を促進するという意味で研修やワークショップはやるべきと思いつつ、アンコンが悪さをしている、アンコンによって成り立っている企業の中の仕組みを見つけ出すということが重要だと思います。ある企業では、男女平等だと経営者が言っていながら、制度を見に行くと女性の昇給にキャップがかけられていたりということが無意識に行われているということもありました。
あとは、中小企業において人事制度が何となくあっても、評価制度が明文化されていない企業は非常にたくさんありますので、ここでアンコンシャスバイアスが男女賃金格差に影響すると感じています。アンコンは啓発・啓蒙としてやるべき、しかし、実際に変化を起こすためには制度をしっかり見に行くべきと思っております。
○石﨑委員 ありがとうございます。
○守島部会長 では、富山県、よろしくお願いいたします。
○山本様 どうも御質問ありがとうございます。
まず、国に対して女性活躍等につきまして何かということなのですけれども、国のほうでは法律を改正していかれますが、中小企業がすっと腹落ちできるようにその辺りをもうちょっと何か工夫といいますか、お願いしたいと思います。
あと、国では「女性の活躍推進企業データベース」をつくり、女性活躍に関する企業の諸データを公表する場として提供いただいております。これを学生さんがよく見て就職活動で利用しているというお話も聞きますので、このデータベースの活用についてもっと推進していただいて、我々ももちろんなのですけれども、企業の方に活用してもらえるようにしていけたらなと思っております。
それから、アンコンシャスバイアスにつきましては私どももまだ始めたばかりなので、あまり大きなことは言えないのですけれども、アンコンシャスバイアスという名前を聞くとまた片仮名を使って行政がまた何か言い始めたみたいに取られてしまうのも良くないので、「アンコン」とか、「アルカモ」という言葉で、少しソフトな形で入っていきたいなと思っております。
それから、この行為がアンコンだとか、いろいろな事例の紹介はしているのですけれども、やはりその時のシチュエーションなど、それを受け取った方にどう受け取られるかという問題もあるので、あまりこれがアンコンでこれがアンコンではないと決めつけていくというのもまたおかしなことなのかなと思っております。アンコンシャスバイアスというのは自分の心の中にあって、あること自体は問題ではないのですけれども、それを不用意に表現してしまったところでいろいろな軋轢が生じるという問題であると思っております。そういうことに自然と自分で気づけるようにということで、先ほど申し上げましたが、男女共同参画推進員が市町村に約500名おりますので、その人たちの活動、例えばちょっとした寸劇みたいなことをして、何かおかしいことがないか気づいてもらうといった地道な取組でまずは地域のほうに入っていきながら、我々行政としましては、先ほどのサイトなどを通じましていろいろな事例を分かりやすくそっと提供していくような形にしていきたいと思います。
ただ、いろいろな難しい問題もはらんでおりますので、専門家の方にしっかり監修していただきながら、その辺りはやっていきたいと思っております。
以上でございます。
○石﨑委員 ありがとうございました。
お二人からお話を伺って、アンコンシャスバイアスに関して本人の気づきであったりといったものを促していくことが大事なのだというところと、あとは先ほど企業の中の仕組みへのアプローチというお話もありましたけれども、そういったところで専門家の方などの関与や助けみたいなものも重要なのだなということを認識しながら伺いました。
ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
オンラインで2人の佐々木委員が手を挙げていらっしゃいます。まずは勝委員からお願いいたします。
○佐々木(勝)委員 どうもありがとうございます。大阪大学の佐々木勝のほうでございます。3人の方々に貴重な御報告をいただき、私も新たな気づきがあると同時に、地方の現状ということを知ることができて非常に有意義でした。
最初に古屋委員に対する質問を2つ、そして小安委員と富山県さんに対してはそれぞれ1つずつ質問させていただきたいと思います。古屋委員のお話の中で本当にまさしくそうだなと思ったところがあって、ちょっと気づかなかったところですが、単身高齢者が増えることによって世帯数が増えても、1世帯当たりの消費は低くなるため、総合的に財やサービスの需要は実は横ばいになるということです。労働人口や労働供給の制約がある中、または少なくなる中であっても実は消費総額はそんなに変わらないというところはなるほどなと思いました。私も今まで気づかなかったのですけれども、さらに高齢人口比率が増えることによって、社会全体の消費の構造そのものが変わってしまって、むしろ労働集約的な分野の財やサービスの需要が増えてしまう。そういうところは基本的に労働生産性が低いので、ますます社会全体の労働生産性が低くなるというお話があったと思います。ちょっと大きな話になってしまうと、そのように労働生産性が低くなり、そして人手不足になるということになりますけれども、本来ならば市場全体が競争的であるなら供給と需要が調整されて、それに対して価格や賃金が調整されていくはずです。人手不足があるということは、新たな均衡への移動期間かもしれませんが、もしかしたら何らかの要因により賃金が硬直であるかもしれません。今までのこれらのお話の中で様々な問題があると思いますが、もしもう少し市場全体が競争的、そして柔軟に賃金が伸縮するような経済社会であったら、このような問題は市場メカニズムが機能することで解決するのかどうか、ちょっと大きな課題なのですけれども、教えていただきたいのが1点目でございます。
2点目は、こういう高齢者の増加というのは日本だけでなくて他の国にもあるかと思います。アメリカも当然ながら高齢化社会になりつつありますけれども、そこは若い年齢層の移民で補うので日本とはちょっと異なる部分があるかと思いますが、例えばヨーロッパ諸国の中でもあまり移民を受け入れていないような国々では同じような高齢化の問題が発生し、高齢者が増えることによって消費の構造が変わっているところがあると思います。海外の情報ももし御存じなら教えていただきたいと思います。
次に、小安さんから地方の状況を教えていただきましたが、これはあくまで私の予想程度なことですが、地方の中小企業になりますと、意外と同族の経営者が多くて、大阪でもそうなのですけれども、多分、先代が引退したとき、大体その息子だったり、娘だったりという方が次の社長になると思うのですね。例えば東京で大学を過ごし、20代は東京で働いていた人が30代になって中小企業経営の親元に帰って継ぐということになると、考え方として、女性に対するアンコンシャスバイアスという意識は低く、女性を非常に重要な労働力として有効に活用していこうという考え方にならないのかなと思いました。仮に代替わりする若手の数が少なかったとしても、そのような人は青年会議所の会員になり、他の会員にかなり影響力があるのかなと思うのですけれども、そういうことはないのかということを教えていただきたいと思います。
あと、富山県さんの話ですが、ある研究では日本の北部の海岸線沿い、山形県から新潟、富山、石川、福井、ちょっと京都、兵庫は飛ばして島根、鳥取などは女性の就業率が高いという研究結果が出ております。そこではなぜ高いかというと、一つは3世代同居というのがありまして、結局子供の世話を自分の親がしてくれるという意味で女性も社会進出しやすいというのがありました。ただ、親と一緒に住むということは、親の性別役割みたいな古い考え方に影響されやすいのかなと思います。その意味で良いところもあれば悪いところもあるのではないかとは思っております。さっきの富山県さんの結果で就業率は非常に高く、全国3位、そして平均勤続年数も全国1位ですけれども、男女賃金格差や管理職の割合がそれほどでもないのは、何か上の世代の同居している親からの影響を受けているのではないかなと思いますが、いかがでしょうかということです。
以上です。
○古屋様 佐々木先生、ありがとうございます。
2つ御質問いただきましたが、1点目から、高齢化に伴って、実は今、今日お話ししたような話を都道府県パネルを構築してマクロ分析をかけているのですけれども、実は高齢化人口比率以上に世帯人員の低下というのがこの労働供給制約の状態にすごく大きなインパクトをもたらしている。そういう意味では先生の考察というか、解説のとおりでございまして、そういう意味である種の消費の稠密性というのが低下することによって、例えば行政サービスにおける水道インフラや電気設備士さんといった方が1時間働くことによって、これまでは10人の方に水道を提供できていたのだけれども、それが1人になっているみたいなことが、結局日本の今の大きな構造的な働き手不足の背景にあるという中で、市場メカニズムで解決できるのかということについては私もすごく懸念というか、問題意識を持っておりまして、結論だけ申し上げれば、基本的には私は調整期間だと考えているのですね。今の非常にドラスティックな賃金向上の状況や、政府による様々な施策ももちろんありますが、基本的に調整期間に入っているので、これからかなりこれまでの30年と違うメカニズムで労働市場が動き始めていると考えているわけですが、ただ、最大の懸念は間に合うのかという問題なのですね。つまり、この働き手不足の問題というのに一番直面するのは生活維持サービスと私が呼んでいるエッセンシャルワークの現場でございますから、ここの生産性向上、さらには賃金向上の速度が間に合わなければ、どんどんシャドーワークが増えていってしまうわけですよ。ごみを捨てるために例えば焼却場までみんな出勤前に持っていかなくてはいけないみたいなことになる。そうすると、みんな短時間労働者になって労働投入量が下がるみたいな、さらに働き手不足になりますから、そういった悪循環に突入する一歩手前になるという状況で考えると、今の市場メカニズムだけで間に合うのかというある種の別の意味でのシンギュラリティー、働き手不足が働き手不足を生むという特異点に間に合うのか、もしかするとそこに政府の打ち手、ある種の市場のメカニズムを超えた加速が必要なのではないかと考えているというのが1点目の御回答となります。
もう一点、2点目も本当に全くおっしゃるとおりだと思っていて、これは日本だけの問題ではない。特に日本の地域が直面している問題ですが、日本の地域は決して孤独な戦いではないわけですね。なぜかというと、我々の後を猛然とした勢いで追っている国が出てきていて、この20年間の最大の人口動態的な世界の変化というのは日本にほかの国が追いついてきたという変化なわけですね。20年前と比べてほかの国々が日本の高齢化率に追いつくスピードというのが速くなっている。特に例えば欧州においてはスペインやイタリアといった国々、アジアにおいては韓国が2030年代に高齢化率で日本を追い抜く、さらに言うと中国の人口減少に突入するタイミングがかなり早まり同時に高齢化率の上昇スピードも加速している、そういった国々が結局日本のことを非常に注目せざるを得なくなっているということがあるのかなと。
そういう意味で、移民の問題がやはりありますので、例えばアメリカなどというのは高齢化比率が日本の2000年ぐらいの水準になってきていますが、労働市場の状況はやや日本とこれから違ってくるのかなと思っていますが、私が日本と一番類似しているのではないかなと思う世界の国というのはヨーロッパで言うとオランダでして、オランダはもちろん移民を中長期的にゆっくりと受け入れて、ずっと歴史的に増えてきていますが、ドイツなどと比べると移民の出身の比率というのは高くないということですが、高齢化に伴って非常に深刻な労働供給制約が起こっている状況になると私は認識しておりまして、高齢者の独居率も高く、今後日本と同じような状況になっていくのかなと考えております。あと、これはデータではないですけれども、この前、スペインのTVEという国営放送を見ていたら、スペインの田舎町で御高齢者ばかりになっていて、介護が本当に大変なのだけれども、誰も助けられる若い人がいないのだ、もう自分がやるしかないのだと言っているおじいちゃん、おばあちゃんの声がニュースになっていましたが、本当に日本と同じような状況になってきているなと感じたりいたしました。
そういう意味では人口動態の問題でございますので、決して日本は孤独な戦いではないということを佐々木先生の御質問から改めて私も感じさせていただきました。ありがとうございます。
○守島部会長 では、小安さん。
○小安様 ありがとうございます。
地方の中小企業の課題の中で、ファミリービジネス、家族経営ということが一つあるのではないかという御指摘かとお伺いしました。地方の中小企業は、ファミリービジネスであることが多いです。そして、40~50代の経営者に代替わりをした企業がこのジェンダーギャップの課題に関しては非常に敏感に受け止め、動いてくれているというのが、データはないのですけれども、印象です。
そして、ジェンダーギャップ解消や働き方改革といったテーマで、父親である社長を説得できないと言った悩みを持った若手ジュニア経営者もいらっしゃいます。そこで、各地でJC、それから商工会議所のユース部会とは必ずインタビューをさせていただいて、お父さん世代と今の若い世代、両方の意識ギャップがあるということを前提にプロジェクト組成するようにしています。これから未来を見据えたときに、どのように組織や地域を変えていきたいかということをより強く思っているのはやはり若い世代と感じていますので、そこを1人で家業の中で戦うのは非常に難しいこともあります。家業の中で変革を起こすのは難しいので、地域で連携して変革をしていきましょうという動きを今、しているところです。
○守島部会長 ありがとうございます。
富山県さん、いかがでしょうか。
○山本様 どうもありがとうございます。
日本海側の県に共通するところで3世代同居が多くて親の影響がという御質問だったかと思います。3世代同居が多いというところでは、どちらかというと3世代同居に頼って子育てしやすい環境があり、親の力を借りながら、女性に例えば育児や介護というものが偏り過ぎているというのは、日本海側全体はちょっと私どもでは分からないのですけれども、少なくとも北陸3県ではその辺りは一致した共通の課題であります。今、就職活動で会社一つ決めるにも親の影響というのはよく言われているところですけれども、確かに親の影響というのは大きいと思っております。
ただ、今の親の世代が若かった頃は恐らく専業主婦が割と理想のライフコースであったのが、今は夫婦共にどちらもキャリアを諦めることなくワークライフバランスを取りながら活躍していきたいというのが若い人たちの理想のライフコースでありますし、当時と違って今は女性も男性も大学の進学率などもほとんど変わらないような状況になってきています。親世代の方々に自分の若い頃と今も同じ価値観で世の中が動いているという思い込みがあることをきちんとデータなどでお示しし、また、そういう親の教育で育ってきた学生さんたちにも実はこのように世の中が変わってきているのだよということをデータできちんと示しながら、ライフプランを考えてもらえるような機会を設けていきたいと考えております。
以上でございます。
○佐々木(勝)委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
続いて、佐々木かをり委員、お願いいたします。
○佐々木(か)委員 ありがとうございます。3人の発表、大変勉強になりました。どうもありがとうございます。
質問としては、古屋さんと皆さんになのですけれども、古屋さんには質的な人的不足の話でございます。先ほどエッセンシャルワーカーに関しての件はお聞きしたので、一般的というかそれ以外のところで、量的な話はよく話題に出ますけれども、質的なところはなかなか話題に出てこないと思うのですけれども、一番ここが私も心配をしているところでございます。質というと知識やスキルだけでなくて意欲、体力、倫理感みたいなこの5つぐらいが質に影響すると思うのですが、そもそも一般的に調査されている、研究されている中で、高校生、大学生を含めた若手、それから20代ぐらいの働き手の質をそもそも高めるという方法について、それから2つ目は、30代以上、あるいは40代、50代、60代以上の人たちの質を上げるということについてどのように分析されたり提案があられるのかと思うのですね。特に昨日今日のニュースだと闇バイトで中学生や高校生までがお金欲しさにそんなことをすると。町なかアンケートみたいなものをニュースで聞くと、7割の子がバイト探しはSNSでやっているという中で、質の人手不足というところの解消についてお伺いしたいです。
それから、お三人皆様にということになるのですが、先ほどから出ている地方銀行というのは私は結構鍵だと思っていまして、地方銀行の賃金格差も非常に大きいですし、頭取をはじめとして意識が東京の大きな銀行、あるいは都会の会社とプライム企業とは当然随分違うのですが、地方銀行が変わっていくと随分影響があるのではないかなと思っておりまして、この辺りをどのようにお考えなのかをお三方に聞きたいと思います。富山は大好きでしょっちゅう行くので応援しているのですけれども、ぜひ伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○守島部会長 まず、古屋さん、お願いします。
○古屋様 佐々木社長、御質問いだきましてありがとうございます。
質的な人手不足ということで、若手とシニアの方々ということ、20代の働き手の質を高める方法は、私は常々入社前の社会的経験と申し上げているのですけれども、実は分析すると、今の新入社員の方々は入社の前でかなり差がついてしまっているのですね。何が差をつけているかというと、ある種の社会的体験といったものがどの程度あったのか、はたまたそれがあったのか、なかったのかということによって非常に大きな差がついています。こうしたことを考えると、これまでの日本社会というのは若手を企業がしっかり育ててきたという社会だったわけですが、今後、もしかすると大学の役割や高校の役割、はたまたハローワークさんの役割といったこともひっくるめてみんなで若手を育てるという時代にならざるを得ないですね。だって、育てても若手が辞めてしまうわけですから、企業さんの育てるインセンティブが低下してしまいますね。ですから、これまでどおりの企業さんが若手を育てるという時代から、みんなで若手を育てる時代にならざるを得ない。入社前の社会的経験を提供できるのは学校ではなくて企業さんなわけですから、企業さんが採用だけではなくてその前のある種の種まきということに、説明会型のではなくしっかりと実践の場を提供するというインターシップや様々なプロジェクトベースドラーニングといった形で大学のコンテンツ開発に携わっていくということが、今、各地域の大学さんで幾つか始まっていて、こういったことが今後、20代の働き手の質を高める方法としてすごく重要になってきているのではないかなと考えております。
○佐々木(か)委員 それは結局海外のようにインターンシップを例えば3か月やるとか、4か月やるということも含めて、しっかり高校生、大学生ぐらいでインターンというのを教育プログラムの中にも入れてマストにしていくということも御提案の中ですか。
○古屋様 全くおっしゃるとおりです。私は順序が逆だと思っていて、つまり学習の前に体験があったほうが学習動機を調達できますので、順番が逆なのですよ。例えばこれはエッセンシャルの現場で看護師さんを育成するという資格取得の現場でも、まず座学をやってその後に実習に行くわけですね。これは普通に考えて逆なのではないかと思っていて、実践の場に行けばなぜ学ぶのか、なぜこの知識が必要なのかということが分かるわけですから、まず現場を体験して、なぜこの知識を学ぶ必要があるのかということを体感させたほうがはるかに効率が高いわけですね。やはり学びの順序が逆になってきているのではないかなということでございます。
あと、シニアの方に関してでございますが、これは明らかに定年後再雇用によって、制度的に一律で待遇が下がってしまうというシステムが結局シニアの方々の質を下げざるを得なくなっているというか、それは待遇が下がってしまうわけですから、やる気が湧かないではないですか。そういった仕組み自体のところが非常に足を引っ張っているのではないか。まずそこからできるのではないかなと考えております。
御質問ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、小安さん、お願いします。
○小安様 ありがとうございます。
まさに地方銀行が鍵になると私自身も思っていまして、事例収集をしているところです
例えば七十七銀行がサステナビリティ・リンク・ローンで気仙沼のアサヤという会社にローンをしたのですけれども、アサヤが、そのローンを使って男女の賃金格差を是正しますというKPIを掲げました。そのような事例が広がっていくと面白いと思います。
2つ目なのですけれども、京都信用金庫などがソーシャル企業認証制度 S認証という取組をしています。そのS認証の中に男女賃金格差という視点が入るとよいと思っています。
地銀や信金などの地方の金融機関は必ず核になっていくと思っておりますので、そういった情報を引き続き収集してモデル化していけたらと考えております。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、富山県さん、お願いします。
○山本様 どうもありがとうございます。また、富山県にもいろいろと関わっていただきましてどうもありがとうございます。
確かに地方銀行さんは特に地方に行きますと非常に存在が大きくて、融資などの本業の部分ではもちろん、銀行さんのアドバイスなどを通じていろいろ企業が変わっていくというシーンもよく見たり聞いたりするところでありますので、ぜひ地銀さんとは一緒にやっていきたいなと思っております。
現在、富山県でそこまで具体的なものはやっていないのですけれども、女性の活躍推進委員会という県で持っております委員会がありまして、そういうところには地銀さん2社に入っていただいていまして、一緒に取組を進めていただいておりますし、例えば先ほど申しました女性のリーダー塾みたいなときには、そこの銀行員さんが指導者として、あるいは参加者としてということで、いろいろな意味で県の施策に関与していただいております。今日はこういうお知恵もいただきましたので、また銀行さんとお話をしまして、賃金格差も含めまして女性活躍が進むように一緒に歩調を合わせて進めていきたいと思っております。どうもありがとうございます。
○佐々木(か)委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 大変ありがとうございました。勉強になりました。
お三方1つずつというか、幾つかですが、古屋さんは令和の転換点という大きな問題提起で、非常に興味深く聞かせていただきました。その中に、賃金の上昇局面と設備投資増の局面と物価上昇の3つの増加が起こり始めて、まさにこの点を御指摘されているということなのですが、これが望ましい形でいくのか、あるいは悪い形になるのか。佐々木先生のさっきの質問の中にもあったと思うのですけれども、それを分けるのはどういうところがポイントになっていくのかというところを改めてお考えをお聞かせいただきたいなというところです。
それと、エッセンシャルワーカーの話は私も実はそこに問題意識を持って、勝手にアドバンスドエッセンシャルワーカーと言っていまして、ブルーもホワイトも含めて何か新しい職種、そこに対しての社会的認知も上げていくということをやっていかないと駄目なのではないかなと思っているのですけれども、これはコメントです。ありがとうございます。
小安様、ありがとうございました。一つ非常に興味があったのは、豊岡市で面の取組をすごくされていると。多分個別の企業でやっていくよりは、ある地域で広がっていくと、例えば30%の閾値を超えると一気に進むみたいなものがありますから、これはすごく有意義な取組だと思うのですけれども、これをやっていくときに、どこかの段階で企業としてのメリットみたいなものが目に見えてこないと進まないのではないか。もちろん何か表彰するということもあるのですけれども、結果としては本当の意味で女性の活躍が進んだとか、離職率が低下したというインセンティブみたいなところでトリガーになっているものはあるのかというのを教えていただきたいと思います。
それから、富山県さんの特に最後のほうが興味を引いたのですが、非常にいろいろな取組をされていると思うのですけれども、私は別のところでアンコンシャスバイアスの問題を扱っている研究会みたいなところに参加しているのですけれども、意外に若い人もアンコンシャスバイアスがあるというのが実態ではないかなと思うのですね。そのときに、まさに中高生と企業との対話をしていくとか、あるいは大学生と対話をするというのはすごく興味深い取組なのだと思います。これの今後の発展系みたいなことが何か今の段階でおありでしたら、というか、ぜひこれは発展していただいて一つの大きなモデルをつくっていただくと大変いいのではないかなと思うのですけれども、以上、お願いいたします。
○古屋様 山田先生、ありがとうございます。
令和の転換点ということでポイントとなる事象ということでございますが、こちらは本当に釈迦に説法でございますが、私はそういう意味では一点、マンアワー当たりの労働生産性が大きなポイントになってくるだろうと考えております。基本的に日本というのは就業者の御高齢者の占める割合というのもとても高くなってきますので、一人当たりGDP、ひいてはGDPもそうなのですけれども、伸びるはずがないのですね。そうではないですか、御高齢の就業者が増えるということは短時間労働者が増えていくということですから、一人当たりGDPを勝負しても全くしようがなくて、ただ、唯一絶対減ってはいけないのはマンアワー当たりGDPなわけですね。時間当たり労働生産性ですが、これが下がってしまっておしまいになる。実質賃金も上がりませんし、時間当たり賃金をどう上げていくのか。この問題は一人一人の人間の生活面で言うと結局可処分時間を増やすという問題にもつながるわけですね。可処分時間が増えれば、いわゆるコミュニティーに対するいろいろな活動や、生活維持サービスがもしだんだん縮小していったとしても、ちょっとした日々のトラブルに対応する時間も増やせますし、時間当たりの賃金をいかに伸ばしていくのか、物価上昇の速度を超えて実質賃金をどう上げていくのかということ。私は経営指標としても最近、ROLIという提案をしていて、Return On Labor Inputですね。労働供給量利益率という概念を提唱していて、要するにROEとROIではなくて、人的資本が希少資源になるわけですから、労働投入量当たりでその会社が雇っている方々が何時間働いてその利益を出しているのかを高めている会社さんがすごくこの社会にとって重要なのではないかということですね。そういった会社を考えると、短時間労働者の方をうまく組み合わせてとか、活躍していただいて、実は同じ利益額なのだけれども、同じ従業員数なのだけれども、短時間労働者の方が多くて利益は出しているよといった会社がすごい会社だということになるわけです。こういうことをしっかり評価していかなくてはいけないなと。
あと、山田先生のアドバンスドエッセンシャルワーカーは、実は私、昨日、今日はいらっしゃっていない冨山和彦委員の本を読んでいたときにこういうことをおっしゃっているなと思いまして、私も勉強させていただきました。そういう意味では、まさにアドバンスドにしていくために私が申し上げるエッセンシャルホワイトカラーが必要になるのかなと。エッセンシャルワークの現場の一人一人の活躍できる力を高めていく、それによってアドバンスドにしていくために技術のハードウエア、ソフトウエアを導入していく、そういった設備投資導入を行っていく人材が必要になるのかなというエッセンシャルホワイトカラーがアドバンスドエッセンシャルワークの世界をつくっていくのではないかなと山田先生の御指摘を踏まえて考えている次第でございます。またぜひディスカッションさせていただければと思います。
○小安様 ありがとうございます。
トリガーは何かというお話だったのですけれども、大前提として、私の資料にも入っているのですけれども、豊岡市ではこれをやらなかったら経済的損失、社会的損失にとどまらず、「公正さの欠如」であるということを言って取り組みを始めています。気仙沼市も「ウェルビーイング」のためなのだという大義を掲げています。
もう一つは、やはり採用です。売上げや利益みたいなものはやはり時間がかかりますし、それをKPIにしてしまうと、ほら伸びていないではないかと別の要素を持って横槍が入ってしまいますので、採用にフォーカスをしています。先ほど私が挙げました豊岡市の2社も、例えば中田工芸さんで言うと、ジェンダー平等を掲げ、さまざまな取り組みを行うことで、市外から大卒の女性を2人採用したというのが昨年の事例になります。
もう一つはとにかくナレッジを共有する。市内の事業所のナレッジを可視化して共有することがもう一つのトリガーになっていくのではないか。同じ地域でどこかで採用がうまくいったというときに、それがプレッシャーであり、トリガーになっていくのではないかと考えています。
○守島部会長 ありがとうございました。
では、富山県さん、いかがでしょうか。
○山本様 どうも御質問ありがとうございます。
中高生、大学生との交流事業の発展系ということで、なかなかまだそこまで考え切れていないのですけれども、例えばという話でございますが、高校から県外の大学等に進学して、さらに県外に就職してしまうといろいろ手は尽くしているのですけれども、どうしても富山県とのつながりが切れてしまうというのがやはり課題であります。もちろん若い方々が県外に出て行って御活躍されるということは大変応援したいと思っていて、何が何でも富山県に帰ってきてもらわなければいけないとはもちろん思っていないのですけれども、ただ、県内のことを知らないまま出て行ってしまうといった不戦敗は避けたい。また、学生さんにとってもそれはもったいないことではないかなということで、今、この事業をしているところであります。
今、中高生と県内企業をつなぐ取組をしておりますけれども、これがこれでまた大学に進学したときにこのつながりが切れてしまうというのはもったいないと思いますので、このつながりを何とか続けていけないか、それで仮に県外で就職されたとしても、県内とつながることができないか、つながる仕組みを少し考えていきたいなと思っております。学生さんでしたらもちろんインターンシップなどで県内に帰ってくるということもあると思いますし、富山県では関係人口施策にも重点的に取り組んでいるのですけれども、関係人口として例えば副業・兼業で関わってもらうなど、いろいろな関わり方というのはあろうかと思いますので、そういったつながる仕組みを考えたい。
それで一つの取組としまして、今、大阪でそういう「つながる富山」という学生さんのコミュニティーをつくって運営を始めたところであります。あまり何か縛りつけるようなコミュニティーだと、そういうところは今の若い方にとってはあまり面白くないのかなと思うのですけれども、そうしたソフトなつながりを続けられるような仕組みを併せてつくっていきたいなと思って、今、頑張っているところであります。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、続いて逢見委員、お願いいたします。
○逢見委員 ありがとうございます。時間も限られているので、なるべく絞って質問したいと思います。
古屋様については、最後に「労働・人材政策立案の3つの要点」として、「労働市場における圧力を保つ」「所得停滞こそが労働政策の対処すべき課題」「働き損をなくす」を挙げられました。納得できるところも多いのですが、3つ目の「働き損をなくす」のところでいろいろ課題を挙げています。いずれも論点としてはずっと前からある話なのですが、なかなか変わらない課題です。
例えば、在職老齢年金について言うと、定年で一旦再雇用になると賃金がぐっと下がってしまいます。そうすると年金をもらいながら就労することを選択せざるを得ない状況にあります。
それから130万円の壁、社会保険の問題ですが、税について103万円の壁があって、これは例えば基礎控除を上げてもっと壁を上に持っていけばいいではないかという議論があります。一方で、社会保険はパートの適用拡大という形で年収要件は引き下げや撤廃の検討が行われており、ベクトルがちょっと違う感じがあります。制度として支え手を増やすという感覚でみんなが負担するという方向に行くと、どういう行動様式が変わっていくのか。
また、失業給付や育児休業給付についてはなるべく100%保障に近づけて十分な給付水準としたいというのはあるのですけれども、財源が雇用保険である以上、モラルハザードの議論があるわけです。失業給付などを不労所得として捉えた場合、みんなが負担している保険料を財源として本当に100%の所得保障を行うのがいいのかは論点になりえます。
それから、提言にある「健康保険自己負担」は、高齢者の窓口負担のことではないかと思うのですが、70歳になると一律に2割負担になるのですけれども、応能負担という感覚で言うと、現役並みに所得がある人は3割でいいのではないかという議論があります。この点はまだ決まっていないのですけれども、保険料の応能負担という観点で言うと、所得があればそれに見合った負担をすべきという社会保険の原理・原則があるわけです。この応能負担と「働き損」をどう考えるか伺いたいと思います。
あと、富山県から説明のあった若者のIターンやUターンは非常に重要だと思うのですけれども、若者に戻ってもらうには生活や育児で非常に魅力があるという地域のメリットと併せて、やはり賃金の問題があるのではないかと思うところです。この賃金については、大都市との格差というのをどのように捉えて、その解消をどう考えておられるかというのを伺いたいと思います。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、古屋委員、お願いします。
○古屋様 逢見先生、御質問いただきましてありがとうございます。
論点としては本当にずっとある論点ですが、全く解消されないという状況にあるというのは本当におっしゃるとおりで、今、労働市場が急速な転換を迎える中でどう考えていくのかということの論点提起をさせていただいております。そういう意味では確かに失業保険というのは財源でございますから、今、ございましたような在職者のうちからどのように支援していくのかというところを改めて考えなくてはならないのではないか。日本の特に現役世代の労働者というのはオンザジョブサーチでございますから、失業せずに労働移動していくといった方々の潜在的な失業リスクといったものをどう軽減していくのかという視点が必要になりますし、同時に、年齢に応じて外形的にセーフティーネットの在り方が変わるという在り方が本当に正しいのかどうかということを踏まえてこの議論はしていかなくてはいけないのではないかなと考えております。
発想としては、もちろん応分負担ということが原則としてございますが、その負担の程度ということが果たして労働のディスインセンティブになっていないのかということを、もちろん財源の議論は最重要なわけですけれども、それをさらに包含して、日本社会がどのように働き手が不足していく中で社会を持続可能にしていくのかという観点で、労働市場への影響を勘案する仕組みを導入してより広い観点で政策を考えなくてはいけないのではないかと考えているということでございます。
以上でございます。
○守島部会長 富山県の方、いかがでしょうか。
○赤崎様 富山県庁の赤崎です。御質問いただきありがとうございました。
今、御指摘いただいたとおり、都市と比べると地方である富山県というのは賃金格差というのがあるというのは厳然たる事実だと認識しておりまして、ただ、UIJターン向けに学生さんや若者に対してそういった点について御説明する際は、富山県は生活費や家賃なども比較的都会と比べると抑えられるというところがありますので、可処分所得の観点では比較優位であるという点であったり、あとは暮らしやすさというところで持ち家比率が高いなどという賃金以外の生活の質の点で都会に比べて豊かであるよといった点など、うまく富山の良さというところをPRしながら、若手の方やそれ以外の方も含めて富山県に来ていただきたいなと思っています。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、石原委員、お願いいたします。
○石原委員 ありがとうございます。
時間がない中ですみません。短くいきたいのですが、質問というより感想と、この後の政策につなげるところですけれども、古屋さんのおっしゃっていたエッセンシャルホワイトワーカーに関しては、普通のDX人材といっている人と何が違うのですかとちょっと思っていて、エッセンシャルワーカーの高度化というのは必要です。今と同じように技能は大して要らないけれどもなくてはならない仕事で、安い賃金で働かざるを得ないというエッセンシャルワーカーをいかにもう少し生産性が高く賃金が上がっていく仕事にできるかというのは物すごく大事で、これは冨山さんの言っているエッセンシャル何たらみたいなものもすごく大事だと思うのですけれども、一方で、そのエッセンシャルワーカーが多数雇用されている会社のDXを推進して彼らの仕事を高度化するのはいわゆるDX人材と言われている人たちであって、それは別にエッセンシャルホワイトとつけて新しい分類にする必要は全くなくて、DX人材が足りていませんよとずっと言われている今の日本の社会の構造がそのままそこにもあるということかなと思っていて、これはそこが足りているとか、そこは十分にいるでしょうと言うつもりは全くなくて、まさに足りていないのですが、そこは新しいジャンルではないなと思いましたというのが一つ。
入山先生も質問されていましたけれども、その会社のビジネスが分かっている人がデジタルのことも分かるようになるという方向のリスキリングと、デジタルの人材で今でもITやシステムが分かっている方々がそのビジネスを分かっていただくという形の両方のリスキリングが必要と思われておりますので、それはもうおっしゃるとおりと思いますので、いかに様々な仕事を高度化するための仕組みを導入できる人を増やすかというのは日本企業の大きな問題だと思いました。ただ、新しい名前をつけてしまうとエッセンシャルワークというものの意味が取り違えられそうな気がしてちょっと気になりましたというのが一点です。
もう一つなのですけれども、今度は小安さんがおっしゃったところにも近いのですけれども、中小企業になると、これこれのルールに縛られなくていいという抜け道みたいなことがいっぱい存在していることが結局男女賃金格差も縮まりませんとか、女性の管理職が増えませんということにそのまま直結しているだけなのではないかと私は思っていて、人々の意識を変える取組はもちろん様々なレイヤーでやるべきなのですけれども、それが労働政策ですとは言えないと思っていて、だとすると、結局300人以下の会社は何とかの開示をしなくていいとか、人的資本情報開示に関しても例外があるとか、例の女性の何とか推進ポータルにも発表しなくていいとか、行動計画を立てなくていいみたいな、中小企業はそこは難しいよねと言って温存されている部分をいかに少なくしていくかという話だと思っていて、プレッシャーのかけ方はそちらなのではないですかというのを今日のお話を伺いながら非常に強く感じたところでございました。
私からは以上です。
○守島部会長 感想めいたコメントでしたけれども、いかがですか、古屋さん。
○古屋様 御質問ありがとうございます。
DX人材と要件が全く異なると思っていて、DXという現場、例えば介護施設さんの現場において、生成AIというのは、事務的な部分の業務改善にはもちろんすごく裨益していますが、現場の抱き起こすとか、寝ているときに寝返りをといったことにはロボット技術のさらなる進展が必要になってくるみたいなことがあるわけですけれども、そういったことを考えたときに、現場の仕事をどのように高度化していくのかということは、もちろんDX人材の一部のスキルセットは必要になりますけれども、どこに無理があるのか、どこに無駄があるのかというオペレーションに対する現場レベルの困っている、こういう課題がある、これを何とかしたいという知見がどうしても必要になるのではないか、スキルセットの根幹にあるのではないかなと考えております。また、プロダクト・マネジメントスキルのような少しDX人材とは毛色の違う知見も重要になります。その点、先ほど申し上げたとおり労働投入量がどんどん医療福祉分野で増えているというところが実態としてある中で改善するために、物流の人材もそうかもしれませんし、建設現場もそうかもしれませんし、そういった分野をより豊かにする方々のスキルセットにはどうしても現場のオペレーションの知見が必要になってくるのではないかということを踏まえて、私はエッセンシャルホワイトカラーと呼んでいる次第でございます。
そういう意味では石原委員の御指摘は全くそのとおりの部分があり、やはりDX人材の要件を当然ながら一部踏まえる必要がある。そう考えると、今のDX人材とおっしゃっている方々の中からそういった方々が生まれてくるという可能性もありますが、ただ、賃金ギャップが現実にありますので、そういった方々をいきなり内部に雇うというよりは、外部化していくというフェーズがまずあるのかなとも思います。
誠にありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
小安さん、何か今のコメントに対して。
○小安様 ありがとうございます。石原委員、力強いお言葉をありがとうございます。
まさに中小企業は難しいというのは本当に現場でよく聞きます。商工会議所等も中小企業は難しいと言って、なかなか推進連携をしていただけないケースなども地域によってはございます。ですので、何が難しいのかということの解像度を上げていきたいと思っています。一方で、すばらしい中小企業もたくさんありますので、取り組む企業と取り組めない企業、取り組まない企業というふうにセグメントをして、しっかりと解像度を高めて推進し、本当に社会が変わる、中小企業が変わるというレベルに持っていければと思います。
○守島部会長 ありがとうございます。
富山県さん、ちょっと言いにくいかもしれませんけれども、何か一言ございますか。
○山本様 どうもありがとうございます。
確かに最後のほうで言われました中小企業と大企業の線引きが今は従業員300人というところであるかと思うのですけれども、それが今、法律によってここのところは公表しなければいけないなど義務づけの範囲が変わってきていまして、それは国の施策により拡大していっているというところであります。
ただ、我々地方としましても、ここが富山県の課題だというところであれば、条例でその義務づけの範囲を国を上回る形でやっている事例もございますので、その辺りはそれぞれの地域、地方の実情に応じて、どこの範囲までを法律の目指すところにまで持っていくかというところはよく考えていきたいと思っております。
お答えになっているか分かりませんけれども、以上でございます。
○石原委員 ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
皆さん方の白熱した議論で大分時間を超過してしまったのですけれども、これで時間となりますので、今回の審議会はこれで終わりにさせていただきたいと思います。
古屋様、小安様、山本様、赤崎様、非常にすばらしいプレゼンテーションをどうもありがとうございました。
それでは、事務局にお戻しいたします。次回の日程等についてお知らせをお願いいたします。
○藤木政策統括官付労働経済調査官 次回の日程については調整の上、追って御連絡いたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして本日の「労働政策基本部会」は終了いたしたいと思います。
御多忙の中、お集まりいただきどうもありがとうございました。