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第5回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」議事録
日時
令和6年11月13日(水)15時00分~17時00分
場所
東京都千代田区六番町15
主婦会館 クラルテ
議題
(1)出産費用の見える化等の効果検証について
(2)ヒアリング
(2)ヒアリング
議事
- 議事内容
- ○柴田保険局保険課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより、第5回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき、ありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにユーチューブにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承くださいますよう、お願いいたします。
まず、本日の構成員の出席状況について御報告いたします。
本日は、今村構成員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、御都合により、寺尾構成員、中西構成員、新居構成員からはオンラインでの御参加との連絡をいただいております。
それでは、会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの方は御退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○柴田課長補佐 以降の議事運営につきましては、田邊座長にお願いいたします。
○田邊座長 それでは、議事に入ってまいりたいと存じます。
まずは、事務局から資料の確認と、それから参考人の御紹介をお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。
傍聴の方は、厚生労働省のホームページから資料を御覧ください。
本日の資料は、
資料1-1 出産なびの妊産婦に与える影響について
資料1-2 出産なびの運用状況等について
資料1-3 出産費用の状況等について
資料2-1 小暮参考人提出資料
資料2-2 井上参考人提出資料
資料2-3 白井参考人提出資料
資料2-4 前田構成員提出資料
また、参考資料として、参考資料1から3までをおつけしております。過不足、落丁等ございましたら、事務局にお申しつけください。
また、本日は参考人として、井上法律事務所所長の井上様、東京大学大学院講師の小暮様、一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク代表理事の佐藤様、静岡大学人文社会科学部社会学科教授の白井様。また、オンラインで、公益社団法人日本小児科医会会長の伊藤様、一般社団法人日本助産学会理事長の片岡様、公益社団法人日本産婦人科医会常務理事の宮﨑様。以上の7名の方々に御出席いただいております。
以上の参考人の先生方におかれましては、議論の中で座長から発言を促された際に、指名を受けて御発言いただくよう、お願いいたします。
また、構成員・参考人の皆様におかれましては、御発言ごとにお名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、早速でございますけれども、議事のほうに入ってまいりたいと存じます。
まず、議題(1)「出産費用の見える化等の効果検証について」です。まず、資料1-1「出産なびの妊産婦に与える影響について」に関しまして、田倉構成員から説明をお願いいたします。説明は10分以内でお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○田倉構成員 構成員の田倉でございます。今日は、「出産なび」に関わる研究班の代表という立場でお話しをさせていただきます。
「出産なび」については、多様な検証・評価のアプローチを現在検討しているところでございますが、アンケート調査について初期的な整理がまとまりましたので、今日、御報告させていただきます。
2ページ目を御覧いただけますでしょうか。本日の構成となります。最初に調査方法、回答者の背景を御説明して、「出産なび」の利用目的と実態整理について解説させていただきます。それを踏まえて、「出産なび」の利用別の傾向と評価について、お話しをさせていただきたいと思っております。
では、3ページ目を御覧いただけますでしょうか。調査方法の概要となります。
調査時期は2024年9月で、調査方法としてパネルを利用したウェブ調査となっております。
調査対象者は、妊娠中または2024年6月以降に出産した全国の産婦となっております。
ちなみに、調査条件として、地域(都道府県別)及び年齢(5歳帯)の条件で、妊産婦さんの日本全国の人口構成に補正させていただいております。
サンプル数は3000となっております。
4ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは回答者の背景と「出産なび」サイトの利用の割合になります。
左側の円グラフ、回答者の集団分類で、回答者3000人の背景は、出産経験がある妊娠中の集団が43.5%、次いで2024年6月以降に出産を経験した集団が29.2%となっております。
右のグラフはサイト利用の割合となりますが、「出産なび」サイトを知っていた人は回答者全体で35.9%、サイト利用者は回答者全体の18%を占めておりました。
続いて、5ページ目を御覧いただけますでしょうか。「出産なび」サイトを利用した回答者の背景について御説明させていただきます。
左側がサイト利用と妊産婦さんの背景要因についての図となりますけれども、こちらの図はロジスティック回帰分析という形で、左側のほうに妊産婦さんの背景要因を並べておりますが、そういった要因が増えるか減るかによってサイト利用の割合が増えるか減るかというものです。オッズという形で整理しております。簡単に申し上げると、真ん中の1というところに線があって、右側に行きましたらサイト利用が増える、左側に行きますと減るという形になっておりますが、御覧いただいて分かるとおり、妊産婦さんの最終学歴が高いと割合が大きくなり、一方で、妊産婦さんの年齢が高いと割合が小さくなるということであります。いずれにせよ、サイトの利用については多様な要因が複雑に関わると推察されたところであります。
右側の図、御覧いただけますでしょうか。こちらはサイト利用の割合、利用率と地域別の人口密度を示したものでございます。まず、利用率というものは縦軸になりますが、都道府県別で大きく振れているのが御覧いただいて分かると思います。一方で、地域特性の一つである人口密度との関係は認められませんでした。
続いて、6ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらはサイトを利用した理由となります。
サイト利用の割合は、出産経験による差は大きくありませんでした。
サイト利用の理由としては、右側になりますけれども、今後の出産施設を探すという割合が58.8%、既に通っている施設の情報収集も36.6%ございました。
次に、7ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは「出産なび」サイトの利用時期と情報収集の実施度合いとなります。
左側がサイトを利用した時期で、横軸に妊娠周期がございまして、その割合がタイプ別に整理されているということでございますが、妊娠初期が42.2%、妊娠前が25.5%、妊娠後期以降でも17.2%の利用があったということであります。
右側がその情報収集の項目と収集の実施度合いとなります。棒グラフが2つございますが、オレンジ色がナビを利用した方、ブルーが利用していない方で、横軸に各施設のサービス・機能についての項目があって、縦軸に実施の度合いが整理されております。ちょっと御注意していただきたいのは、スコアは小さいほど高いというような形になっております。御覧いただきますと分かるとおり、サイト利用群のほうが総じて高く、特に施設機能、アクセス、分娩サービスが顕著な傾向にございました。
続いて、8ページ目を御覧いただけますでしょうか。出産サイトを通じた情報収集の達成度と満足度ということで、先ほどと同じような形でグラフを御覧いただければと思うのですが、左側、情報収集の項目と達成度でありますが、その達成度は分娩サービスを中心にサイト利用者のほうがよい傾向にあり、右側が満足度になりますが、費用の説明内容を中心にサイト利用者のほうが高い傾向にあったということでございます。
続きまして、9ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは妊産婦さんが施設を探す上での重要度を項目ごとに整理しておりますが、縦軸に各項目があって、横にとても重要からふつうを通して、まったく重要ではないというのが右端にございまして、カテゴリー別に整理されておりますが、分娩費用に関する情報、個室の有無及び費用に関する情報は、他項目に比べて重要視される傾向があったということであります。また、妊娠期や産後に関わる情報も重要視される程度が高いということが明らかでありました。
続いて、10ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは利用した感想となります。サイトを利用した感想として、安心感、納得感、効率性という側面から、多くの項目において肯定的な回答が占める割合が高かったということでございます。
続きまして、11ページ目は「出産なび」への今後の期待ということになります。情報の追加、検索の機能、サイトへのアクセス向上は、「出産なび」に対する今後のリニューアルの期待として、比較的高い傾向にございました。
その具体的なものを少し整理したものが次の12ページ目になりますけれども、今後追加してほしい項目として、妊婦健診と産後ケアの実施内容や平均費用、あとは自治体の支援内容とか補助内容の掲載が挙げられておりました。
続いて、13ページ目は出産費用に関わる見込みとその評価ということでございます。
左側が出産費用に関わる見込金額と支払金額の差異の評価をしたもので、左側の山が利用なし、右側が利用ありということで、かなり高かった、ほぼ見込みどおりだった、かなり安かったという5段階の評価をしていただいておりますけれども、御覧いただいて分かるとおり、見込金額と支払金額は大きな差がなかったということであります。
一方で、右側を御覧いただきたいと思いますが、こちらは出産費用の妥当感でございます。自然分娩の場合についてでありますけれども、高い、妥当、安いという整理の中において、サイト利用者のほうは、自然分娩の出産費用になりますけれども、それに対する妥当感が高かったというところで、グラフの中のオレンジが妥当の回答割合を示しておりますが、御覧いただいて分かるとおり、左の利用なしに対して、利用ありが8.6%高くなっていたということであります。
続いて、14ページ目を御覧いただけますでしょうか。こちらは支払金額の把握時期及び「出産なび」での費用説明に対するお話になります。
左側が支払金額を把握した時期についてです。生存時間解析というのを応用したものでありますが、グラフの解説をさせていただきます。縦軸が支払金額を把握している割合ということで、基本的には把握していないという状態を基準に、どんどん把握していって数が減っていくというような見方になります。横軸に妊娠周期があって、御覧いただくと分かるとおり、オレンジのサイトを利用している方々が、妊娠中期ぐらいから利用していない方々に比べて支払金額を把握するのが早くなってきているということが、統計学的にも明らかになっているということであります。
右側は、「出産なび」に関しての費用説明の内容の理解でございますが、御覧いただいて分かるとおり、左側のよく理解できた、だいたい理解できたというもので、60から70%ぐらいの方が理解できていたという形になっておりました。
続いて、満足度の話をさせていただければと思います。15ページ目は、入院サービスと情報収集の主な項目について満足度を整理しております。ちょっとビジーな表で恐縮ですが、左側、入院サービスと情報収集について。入院サービスについては、表の中にございますとおり、心理的ケアと医学的処置を記載しております。横にサイト利用あり、なしで整理させていただいておりますけれども、満足度が4段階ですから、1が最高で数字が小さいほど良いということになりますが、利用の有無で差がないということです。
2番目の情報収集についても、施設機能と分娩関連について整理しておりますが、こちらも差がなかったということであります。
右側には、参考として妊産婦さんの背景を補正するため、年齢とか基礎系の疾患が両方で同じにしたうえで、実際、満足度はどう変わっているのかというのを整理したのですが、このような傾向スコアマッチングを使っても差がなかったということであります。
16ページ目、その満足度を集団特性と地域特性で整理したものがこちらになります。左側のグラフは、先ほど申し上げた入院サービスと情報収集についてです。こちらは出産された集団で比較しております。オレンジが利用した方々でありますが、ブルーの利用していない方々に比べると、総じて結果の値が良い形になって満足度が高いという傾向になっておりました。
右側は、横軸に先ほど御紹介した利用率と、縦軸に今、お話ししていた中において、情報収集の中の施設機能についての満足度を整理しております。下に行けば良いという形であります。真ん中辺りの利用率、つまり10%から30%ぐらいの利用率のところは、利用率が変化しても、この満足度は大きく変わりませんが、極端に小さいところとか極端に大きいところというのは、満足度が低かったり、高かったりというような形になっているということであります。この理由については、図の右側に簡単な解釈、推察を記載しておりますので、御関心がありましたら御覧いただければと思います。
最後になります。まとめをさせていただきます。17ページ目、御覧いただけますでしょうか。
2024年9月時点の当調査において、調査対象の妊産婦さんの中で「出産なび」サイトを知っている方は約36%、利用者は18%ということでありました。
その方々は、「出産なび」サイトを利用したことによって、出産費用を把握する時期が利用していない方に比べて有意に早まっていました。
さらに、情報収集の程度は、サイト利用群のほうが総じて高かったほか、費用に関する情報収集への満足度、または出産費用が妥当と感じる割合も高かったということであります。
それらを踏まえて、妊産婦にとって「出産なび」が出産費用等の情報へアクセスするツールとして活用され得ることができると示唆されたところであります。
なお、本資料に関する報告というのは、「出産なび」サイトの評価データの一部の整理に過ぎませんので、今後さらに検討が必要であると考えております。
「出産なび」サイトの開始からまだ間もないということで、データ(普及やサンプル)の制約もありまして、今後も分析等を継続する予定でございます。
御清聴ありがとうございました。
○田邊座長 御説明ありがとうございました。
引き続きまして、資料1-2「出産なびの運用状況等について」、資料1-3「出産費用の状況等について」、この2つに関しまして事務局のほうから説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
まず、資料1-2を御覧ください。「出産なびの運用状況等について」でございます。
1ページに改めて「出産なび」の概要をお示ししておりますが、厚生労働省において、本年5月30日から運用を開始し、約半年が経過したところでございますので、ここまでの運用状況等について御説明いたします。なお、先般、9月30日に社会保障審議会医療保険部会においても報告を行っております。
2ページを御覧ください。「出産なび」については、年間の分娩取扱件数が21件以上であるといった要件を満たす施設を主な掲載対象としておりまして、そのうち99.9%と、ほぼ全ての施設に掲載に同意いただいております。また、その条件を満たさない、年間分娩取扱件数が20件以下の施設からも任意で掲載希望を受け付けておりまして、全体で2075の施設の情報を掲載しているところです。改めて関係団体の皆様、また施設の皆様の御理解と御協力に感謝を申し上げます。
同じ資料、右上ですけれども、開設から3か月で約174万ページビューを獲得したということで、現在は若年女性と推定されるユーザーを中心に、月間で約3万3000件程度の安定したアクセスをいただいております。
また、先ほど田倉構成員からも御発表がありましたが、「出産なび」のウェブサイト上に設けたアンケートフォームにおいても、開設されてよかったといったお声をいただいているほか、産前産後に関する情報をはじめ、情報や機能のさらなる充実について御要望いただいているところでございます。
次、3ページを御覧いただければと思います。妊娠中の方、あるいは妊娠前の方をはじめとして、多くの方々に「出産なび」について知っていただけるように、様々な方法で周知に取り組んでいるところでございます。サイト開設時、ローンチイベントを行いましたほか、各種メディア、また自治体や薬局・ドラッグストアなどの御協力もいただいております。
参考資料として、「出産なび」の掲載内容について各種分析を行ったものをおつけしております。
続いて、資料1-3を御覧いただければと思います。「出産費用の状況等について」でございます。
まず、2ページを御覧ください。出産育児一時金については、昨年、令和5年4月に42万円から50万円へ支給額を引き上げたところでございます。引上げ前の令和4年度の出産費用の状況については、本検討会の初回に事務局より御説明しておりましたが、今般、令和5年度、そして令和6年度9月までの上半期のデータが整いましたので、御紹介させていただきます。
3ページを御覧いただければと思います。この後の説明において、出産費用と妊婦合計負担額という2つの観点で御説明いたしますが、まず、その定義についてでございます。表の上部にお示ししております入院料からその他までのそれぞれの項目の合計を、妊婦が実際に負担することとなる金額ということで妊婦合計負担額と表現しております。この全ての合計のうち、室料差額、産科医療補償制度の掛金、また、その他の費用を除いたものを出産費用としております。これが一番右の赤枠の部分でございます。
この表を御覧いただきますと、正常分娩の平均出産費用は、令和4年度に約48.2万円であったものが、令和5年度には約50.1万円、そして令和6年度上半期には約51.8万円となっております。なお、このデータについては、出産育児一時金の直接支払制度の請求データに基づき、事務局において集計を行っております。
続いて、4ページを御覧いただければと思います。施設種別ごとの費用の推移をグラフでお示ししております。上から2つ目の濃い青色の線が、先ほど申し上げた全施設の平均ですが、その他、公的病院、私的病院、診療所・助産所という3つの区分でお示ししております。繰り返しになりますが、令和6年度のデータは9月までの半年分のデータであるということに御留意いただければと思います。
続いて、5ページには、令和5年度に請求のあった分娩について、全体と、そして正常分娩のみで件数と平均値をお示ししております。令和5年度は、全体で約72.3万件の請求があり、そのうち正常分娩の請求は約38.4万件となっております。
6ページでは、経年の比較をしております。右側の正常分娩のみの推移というものは、先ほどグラフで御覧いただいたものと同じ内容を表示しておりますが、左側には分娩全体での数値も記載しております。
続きまして、7ページでございます。正常分娩の平均の出産費用と妊婦合計負担額について、それぞれ請求月ベースで月次の推移をお示ししております。この請求月ベースといいますのが、直接支払制度の実施要綱において、分娩の請求は出産後、退院をした日の属する月の翌月の10日までに行うことを基本とするとされておりますので、出産育児一時金の引上げが行われた令和5年4月の分娩については、基本的には翌月である5月の請求分以降から反映されることとなっております。
こちらを御覧いただきますと、令和5年4月請求分から5月請求分にかけて費用が大きく上昇しているということに加えて、その後も上昇傾向が続いているということが読み取れるかと思います。
8ページでございます。こちらは令和5年度の正常分娩の平均出産費用を都道府県別にお示ししております。令和4年度のデータにおいても同様の地域差が見られましたが、令和5年度においても最も高いのが東京都の約62.5万円。また、最も低いのが熊本県の約38.9万円となっております。
続いて、9ページでございます。同じように妊婦合計負担額について分析を行っております。出産費用と同様に地域差が見られまして、最も高いのが東京都の約72.3万円、最も低いのが熊本県の約45.7万円となっております。
続く10ページと11ページについては、今、グラフで御覧いただいたものと同じ情報を表の形でお示ししております。
続いて、12ページを御覧いただければと思います。令和5年5月請求分以降の正常分娩を1件ずつ見た際に、出産費用が出産育児一時金の支給額を上回ったものがどの程度あったかということを分析しております。右側にあります全国で見ますと、約45%の分娩の出産費用が出産育児一時金の支給額を上回ったものであったということでございます。こちらについても都道府県によって差が見られます。
13ページは、妊婦合計負担額について同様の分析を行っております。
続いて、14ページでございます。令和5年5月請求分以降の正常分娩の妊産婦の経済的負担の状況ということでございまして、出産費用、妊婦合計負担額、それぞれと出産育児一時金の支給額との差額がどの程度であったか、その金額の幅についてお示ししております。
左側の出産費用との差額ということで御覧いただきますと、出産費用が出産育児一時金の支給額を上回ったもののうち、その差額が1円から5万円未満であるものが最も多かったということでございます。また、出産育児一時金の支給額以内であったものについては、差額が0円から5万円未満であるものが最も多くなっております。
そして、右側の妊婦合計負担額のほうを御覧いただきますと、こちらが出産育児一時金の支給額以内となったもの、いわば妊婦さんの手元に残った差額ということでございますが、0円から5万円未満が最も多くの割合を占めたということでございます。
続きまして、15ページを御覧いただければと思います。出産育児一時金の増額前後の妊産婦の経済的負担の変化ということで分析しております。
左側、青色の棒グラフが平均の出産費用、だいだい色が出産育児一時金の支給額を示しておりまして、両者の差分、すなわち妊婦の平均的な負担分というものを緑色でお示ししています。出産育児一時金の増額の直前である令和5年4月請求分においては、緑色の部分が約7.7万円であったものが、出産育児一時金の増額の直後、令和5年5月請求分においては約2.3万円まで減少しております。出産育児一時金の引上げ幅は42万円から50万円の8万円でございましたので、そのうち約5.4万円が妊婦の経済的負担の軽減効果として現れていると言えるかと思います。一方で、直近の令和6年9月請求分を御覧いただきますと、出産費用の上昇に伴い、緑色の差額の部分が約3.2万円まで増加しておりまして、引上げの直後に比べて妊婦の経済的負担が再び増加してきていると考えられるかと思います。
右側の妊婦合計負担額についても、同様の傾向が見られます。
続いて、16ページを御覧ください。出産費用や妊婦合計負担額が出産育児一時金の支給額以内となった分娩の割合について、先ほど令和5年5月請求分以降をまとめて計算した結果をお示ししておりましたが、月次推移の内訳で見ますと、出産育児一時金の支給額以内となった割合が徐々に減少しているということが分かるかと思います。
続いて、17ページでございますが、15ページで御説明した出産育児一時金増額前後の妊産婦の経済的負担の変化について、都道府県別にお示ししております。都道府県によって出産育児一時金増額前後の妊婦の経済的負担の変化の度合いや、その後、現在に至るまでの変化の度合いにばらつきがあるということが御覧いただけるかと思います。
18ページは、同様の分析を妊婦合計負担額について行ったものでございます。
その他、参考資料をおつけしておりますので、適宜御参照いただければと思います。
事務局からの説明は以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、ただいま説明のありました資料1-1から資料1-3までにつきまして、御意見、御質問等ございましたら挙手にてお願いいたします。
佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 御説明ありがとうございました。
ただ今、御説明いただきました資料1-3の4ページ目、平均出産費用の年次推移を見ますと、全施設の出産費用の平均が令和5年度には50.7万円、令和6年度上半期では51.8万円というように、このグラフを見ますと急上昇しているなという印象を受けます。この結果を見ると、出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げたことに伴って出産費用が上昇しているという印象をぬぐえない部分がございます。そういう意味で、これまでも繰り返し申し上げてきましたが、出産費用の見える化は、今後の保険適用の議論を行う大前提だと思いますので、地域差や分娩施設ごとの費用内訳、上昇している要因等の詳細なデータ分析をぜひ行っていただいた上で御提示いただければと思います。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、松野構成員、お願いします。
○松野構成員 連合の松野です。御説明ありがとうございました。
ちょっと長くなりますが、まず「出産なび」の分析結果から、このサイトが活用され、見える化に役立っているということが分かりました。ありがとうございます。一方で、資料1-1の4ページ、回答者の6割はサイトのことを知らずに、知っていてもその半数が利用していないとのことですから、引き続き周知を図るとともに、アンケート調査やユーザーの声を踏まえて、掲載内容など、さらなる工夫が必要だろうと感じた次第でございます。
そのユーザーの声としては、資料1-2の2ページに「サービス内容や出産費用などを比較検討できる機能を追加してほしい」とありますので、きちんとした情報に基づいて選択できる環境整備が求められている、つまりは、さらなる見える化が必要ということだと受け止めております。
事務局に2点質問でございます。資料1-3です。
出産費用の状況を見ると、金額は先ほどもお話ありましたとおり、年々上昇しております。3ページで項目別を見ると、令和4年度から今年度のその他は18%と、特に上昇率が大きいです。この項目は、「文書料、材料費及び医療外費用(お祝い膳等)等、7項目に含まれていないもの」とのことですが、その中の何が金額を押し上げているのか、詳細が分かれば教えてください。もし分からないのであれば、そのほかの内容も詳細に分析していく必要があるのではないかと考えております。
また、出産費用はもともと地域差がありますが、17ページ、18ページの差額の状況を見ますと、もともと費用が高い東京都や神奈川県は上昇が目立ちます。ほかにももともと平均費用が高い地域もありますが、どこも同じように上昇しているわけではないようです。都市部だと人件費等の諸経費がかかる、地方だと分娩数が限られるといった要因から、1人当たりの費用がかかることは考えられるところですが、単純にそうとも言い切れないようにも感じます。何が要因なのかなど、地域ごとの分析が分かれば教えていただければと思います。
以上になります。
○田邊座長 ありがとうございました。
2点ほど御質問ございましたので、よろしくお願いします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
御質問いただいた1点目、その他の内訳でございますが、こちらは直接支払制度の専用請求書における項目ごとに、医療機関において記入いただいた数値を集計して分析しておりますので、その他の内訳まではこのデータでは分からないところでございます。
そして、2点目でございますが、御指摘のように、都道府県によって上昇の度合いというものが異なることが見てとれますので、こちらについては引き続き分析を進めてまいりたいと考えております。
○田邊座長 どうぞ。
○松野構成員 御説明ありがとうございます。
そうしましたら、冒頭申し上げたとおり、今後の議論に向けてはさらなる見える化が不可欠だと思っておりますので、調査研究も通じて詳細を分析していただき、御提示いただけたらと思います。
以上になります。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。
では、井上参考人、どうぞ。
○井上参考人 参考人ですが、失礼いたします。
こちらの「出産なび」、最初、私も実はいろいろな要望を出して、その後、保険局などと調整したところで聞いたところだと、正直言って、ちょっと物足りないかなと思っておりました。ところが、実際にできて、むしろ知りたい機関などのホームページと、この「出産なび」を対比しますと、私、弁護士なのですけれども、弁護士からすると知りたいと思う情報がホームページには載っていなくて、「出産なび」に載っているという状況がございます。そういうのが現実の傾向としてあるのですが、その辺りの対比、またはむしろホームページのほうへの働きかけなのでしょうか、今後の「出産なび」の関連する運用としてお考えのところというのはあるものなのでございましょうか。
○田邊座長 この点、いかがでございましょう。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
「出産なび」は今年の5月に開設したところでございますが、順次、その内容の充実ということを図ってまいりたいと思いますので、御指摘も踏まえて、今後の内容について検討してまいりたいと思います。
○井上参考人 すみません、私の言い方がちょっと悪かったかもしれませんが、「出産なび」の充実というより、ホームページのほうの関係との兼ね合いで、むしろホームページに記載すべき事項が、「出産なび」にはあるけれども、ないという対比関係というのは、今後、何か検討していったり、改善していったりする可能性はあるのかどうかという質問です。
○柴田課長補佐 我々としても、それぞれの施設のホームページにどういった情報が掲載されているかということを網羅的に把握しているわけではございませんので、それは一つ一つ見ていくことが現実的かということも含めて考えていくのかなと思っております。
○井上参考人 ありがとうございます。
○田邊座長 ほか、いかがでございましょう。
では、家保構成員、よろしくお願いいたします。
○家保構成員 ありがとうございます。全国衛生部長会の家保です。
「出産なび」によって、費用や設備、スタッフについて非常に分かりやすく示されたことは、良いことだと思います。その中で人員については、産科医師、助産師、小児科医師、いろいろ示されていますけれども、産科医師だけが整数で、それ以外は小数点がある。これは多分、常勤換算だと思います。医療機関の状況を見ていますと、産科医師が1人で年間1000件を上回る分娩というような事例がございます。その数は絶対おかしいはずだと思いましたので、同じ厚生労働省がつくっているナビイでスタッフ数が分かりますので、検索すると、ナビイでは検索できませんでした。
前回、説明いただきました、無痛分娩関係の学会のJALAのホームページがあります。そこでは、常勤医数、非常勤医数を出していますと、当該医療機関は時点が違いますけれども、常勤医2人で非常勤7人、麻酔科医も勤務されており得心しました。1000件も分娩している医療機関で産婦人科医1人なんてあり得ないですので、その辺りはきちんと分かるようにしていただくのが良いと思います。また、同じ厚生労働省の情報提供のシステムであれば、医政局と保険局と所管が違うと言いましても、掲載される医療機関は両方載るようにできるだけしていただければいいのかなと思います。
それから、先ほど井上参考人がおっしゃられた各医療機関のホームページは、多分、医政局の総務課が持っています広告のガイドラインの話が出ていまして、あれも保険外診療については、一定、額を書くなり、基準があったと思いますので、その辺りをきちんと関係機関と話をしていただいて、掲載するのが良いと思いました。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。参考人の方もぜひ御発言いただければと思いますけれどもね。
それでは、よろしくお願いいたします。
○新居構成員 NPO法人manmaの新居と申します。
改めて今回の御発表資料を拝見して、費用が分かることで安心感、納得感があるということがデータからも分かったかなと思いますし、私個人としても、最初から費用が分かっていると、このぐらいの費用がかかるんだという心持ちができた状態でお支払いができるというのは、すごく意味があることだなと感じました。
これまでの当事者の皆さんのヒアリングも踏まえて、想定と実際の支払額とのギャップがあるのは、出産費用だけじゃなくて健診費用もそうであるということは明らかだと思っています。なので、今後、「出産なび」のアップデートに当たりまして、出産費用だけではなくて健診の費用というところについても、それぞれの病院でどのぐらいかかるのか。可能であれば、例えば何区だったらどのぐらいの補助があるので、補助と実際の額のギャップはこのぐらいなので、あなたの持ち出しは大体このぐらいの金額になりますよというところまで分かっていると、出費がかさむ出産の前後に自分たちがどのぐらいの費用が必要なのかというのが分かって、非常に安心感につながるかなということを感じました。
また、産後ケアについても「出産なび」の中で触れていただいているところかなと思いますけれども、例えば何か月まで利用できるのかというところも施設によって違うと思いますので、そういうところの詳細ですとか。例えば、この施設は受入れの数がすごく多い施設だということが分かれば、こんなに受け入れているなら、ここで産後ケアを使ってみようかなというような参考情報になるかなと思いますので、その辺りの情報も充実していくと利用者として非常に使いやすいかなと思います。
将来的には、産後ケアの施設についても「出産なび」のような形で、例えば自分がこの区に住んでいるのだったら、自分の住んでいるところの近くの産後ケア施設はどういうところがあるのかなというようなことを一覧で見ることができれば、皆さんも安心して産後ケア施設を探せるようになってくるかなと思いますので、出産だけじゃなくて、産後についても、こういうような情報提供が充実していくと非常に安心につながるかなと感じました。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。
白井参考人、よろしくお願いします。
○白井参考人 参考人なのですが、白井と申します。私自身は、REBORNという、出産する人と医療をつなぐ市民活動をもう30年ぐらいしておりまして、そのときのことからコメントさせていただきたいと思います。
私たちREBORNという市民団体では、女性たち自らが病院や診療所などにアンケートを配らせていただいて、女性たちが欲しい情報を頂いて、それを出版したり、インターネットが始まってからはウェブに掲載するということをしてきました。そのときに、女性たちが欲しい情報がこの「出産なび」に十分入っているかというと、産む視点で言うと、もう少し増やしていただきたいところがあります。
例えば、REBORNで病院などに回答していただいたのは、退院してから1か月後のいわゆる母乳率とか、会陰切開をルーチンでしているのかとか、そういった女性の身体や望む出産ができるのかどうかということに女性目線での情報を頂いていました。今の「出産なび」というのが、どうしてもインターネットでショッピングをするときに安い順にするとか、条件を入れて、その中で価格で選ぶとか、そういったように使われてしまわないかというのが大変懸念するところで、いろいろな視点で使えるようなサイトにしていただくために、またヒアリングをしていただいて、もう少し項目を増やして充実していただけたらと思いました。よろしくお願いいたします。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、次の議題もございますので、本議題は一旦ここまでとさせていただきます。最後に時間があるようでしたら、全体を通じた意見交換の時間を設けたいと存じます。
続きまして、議題(2)「ヒアリング」のほうに移ってまいりたいと思います。資料2-1から資料2-4まで順に御発表いただいた後に、質疑応答、それから意見交換の時間を取りたいと思います。各資料につきまして、発表時間は10分以内でお願いいたします。意見交換の時間をできるだけ確保できますよう、御協力をお願いいたします。
では、まず、小暮参考人、よろしくお願いいたします。
○小暮参考人 よろしくお願いいたします。本日、「医療保険制度における出産の取扱いの歴史的変遷」についてお話しさせていただきます、東京大学の小暮と申します。どうぞよろしくお願いします。
次ページに行きます。こちらは出産育児一時金を開始する前の出産に対する給付についてお示ししております年表です。特に給付方法の歴史的変遷について、本日、お話しいたします。先にお断りしておきますと、給付方法の変遷についてお話しする関係上、主に健康保険法に基づいてお話ししますことを御容赦ください。
次にお願いします。そもそも出産の際に出産育児一時金が給付されるのは、健康保険法または国民健康保険法という法律に基づいた出産給付というものだからです。
健康保険法の第1条を見ていただきますと、疾病、負傷もしくは死亡または出産に対して保険給付を行うということが記載されております。健康保険法、今から97年前と大分古く、1927年時点に施行されておりまして、当初は被保険者本人の女性に限られておりましたので、給付対象は限られていたのですけれども、健康保険法ができて以来、ずっと出産給付は保険給付の対象に含まれております。
また、国民健康保険法においては、できた当初、今の国保とは少し仕組みが違いましたので、単純に比べることはできないのですが、やはり出産給付を行うことが法律で書かれておりました。つまり、健康保険法、国民健康保険法ともに、制定当初より疾病や負傷と並んで出産に対する保険給付を行うことが定められておりました。
次にお願いします。出産が健康保険の給付対象に含まれた主な理由、2つございます。1点目は、妊娠・出産というものが病気や負傷、死亡と同じく、その発生を予見できないと考えられていたからです。2点目としては、母体の健康を保護するため、また経済的な救済をするためです。
背景として、国で定められた教育を受けた産婆による分娩介助がちょうど増えてきた時期というのが、この1920年代になります。一部地域では産科医もおりましたが、まだ少なく、医療者の分娩介助といえば産婆というものが中心で、そうでない場合には無介助の分娩、あるいは近所の親族だったり、無資格者による分娩介助というようなことがまだまだ行われていた頃になります。そのため、医療専門職である医師や産婆による分娩介助、また産前産後の診察支援というものを専門職から受けるために必要な経費、これを支払うために分娩費を支給することになったというような記録が残っております。
次にお願いします。さて、御存じの方も多いとは思いますが、ここで保険給付の方法について御説明させていただきます。
まず、私たちがいわゆる保険給付と言ったときに思い浮かべる病気のときの保険診療は、こちらの図の左側、現物給付というものに当たります。被保険者が医療機関を受診しまして治療を受けます。その治療の対価については、病院側は患者に一部のみ請求し、残りは保険者、つまり健康保険組合に診療報酬で定められた額を請求します。ですので、被保険者側から見ると、治療というものを給付される。そのものを給付される方法が現物給付です。
それに対して、その右側、治療の対価は病院や被保険者、患者本人に請求して、被保険者が健康保険組合から一定の金額を直接給付される、この方法が現金給付で、現在の出産育児一時金はこちらの方法に当たります。こちらの場合には、実際の治療の内容にかかわらず、つまり、治療の内容が少なくても多くても金額は一定であり、お釣りが出る人もいるし、全く足りない人もいるというような形になります。
日本の健康保険においては、表のように現物給付、現金給付、どちらの方法も使われております。さらに出産について見てみると、給付方法に変遷がありまして、健康保険法の施行規則には現金給付だったものが、現物給付と現金給付の併給という形が取られており、さらにその後、現金給付に変わって、それが現在まで続いております。変化が大きかったのは、この戦前、1927年から1943年にかけてです。
次にお願いします。健康保険法の法律上の位置づけとしては、法律の始まった1927年時点、こちらでお示ししているように、現金給付、または現物給付と半額にした現金給付の併給という2つの方法が記載されておりました。ただ、実際のところは、現金給付がほとんどだったようです。
その後、法解釈の変更と道府県令という形で、法律の改正を行わずに現物給付と現金給付が原則ということになり、さらにその後、1943年に健康保険法改正で現物給付の方法の一つであった助産の手当というものが廃止されまして、その後、現金給付の金額についてはどんどん変わっていきますので、そういう法律改正はあったのですけれども、それ以外の部分に関してはほぼ変わらず、1994年の出産育児一時金で大幅に変更があったというような形になります。
次にお願いします。こちらは、その変化が大きかった時期の給付の実態をお示ししたグラフになります。水色のグラフが分娩費の給付を受けた人数、つまり出産した被保険者の人数になります。オレンジ側は、その出産した人数のうち、現物給付を受けた人の人数です。見ていただきますと、1927年から31年までは、水色の棒が示している被保険者のうち、オレンジの現物給付も受けたという人はほとんどおらず、9割以上が現金給付を受け取っているのみでした。それが1932年から40年の間に関しては、突然、給付人数の8割以上が現物給付と現金給付、両方給付を受けていたというような実態があったようです。
次にお願いします。では、なぜ健康保険法の施行当初、出産給付が現金給付だったのかという理由につきましては、当時の保険者と契約方法上の理由が大きかったと思われ、また産科医も産婆も拡大途上であり、地域によってあまりにも状況が大きく異なったということがあったようです。
特に保険者との契約方法という点については、これは今とはかなり仕組みが異なっておりまして、療養の給付、つまり傷病の場合は、医師会と契約を行って現物給付を行うという方法が取られておりました。医師会が各保険医から請求を取りまとめて行うというような仕組みを取っておりまして、契約先というものが重要だったのですが、1927年の初めの時点で産婆会は全国組織がなく、また地域によっては、そもそもその地域産婆会もないというような地域があったということで、相手がないと契約ができないということが記録に残っております。
次にお願いします。その5年後に、先ほど申し上げたように、解釈変更で現物給付がすごく広く行われていた時代があるのですけれども、それまでの背景について、大きく2点御説明します。
まず、1点目は、今、産婆会がなかったと申し上げたのですけれども、健康保険法が施行された約半年後に大日本産婆会というものができ、全国の産婆会組織が確立されるようになり、現物給付のための契約先というものができたという点があります。
2つ目に、これがいろいろなところで出てくるのですけれども、分娩費の目的外使用が問題視されたということがあるようです。本来、医療職の分娩介助とその前後の診察処置に充ててほしいということで分娩費の支払いが始まったわけですけれども、そのように使われていないということが明らかになった。例えば、本当に全く無駄遣いの例として亭主の酒代にしてしまったみたいな事例も残っておりますけれども、ここまでひどくなくても、地域によっては、そもそも医師も産婆もあまりいないということもあったりして、本来の目的である医療者の診察を受けるために使われないということがあったようです。
こちらにお示ししているグラフは、時代が下がってなかなかデータがなくて、1939年のデータになってしまうのですけれども、この時点でさえ、各都道府県で緑色は医療者の分娩介助を受けていない人の割合です。なので、医師でも産婆でもない素人、もしくは無介助分娩だった人の割合になりますので、地域によってはそのような人がまだ50%以上という地域が複数あります。ですので、現物給付が始まります1932年当時だと、さらに多かったと考えられます。ほかにもいろいろな理由があったと思いますが、今お話ししたような理由があり、実際に分娩介助、産前産後の診察をちゃんと専門職から受けてもらうということで、ほかのものに使いようがない現物給付が望ましいということになったようです。
次にお願いします。では、実際に出産の現物給付というものがどのように運用されたかということをお示しします。出産の現物給付、これは今の法文にはないのですけれども、当時の健康保険法第51条というところに助産の手当を行うというものがありました。この助産の手当を行うというものが一応法律には載って、あまり使われていなかったのですが、法律解釈でこちらを原則とするというように変更されました。皆様、療養の給付という言葉はもちろん御存じだと思うのですけれども、これは正確には傷病に対する現物給付の法律上の名前が療養の給付です。それに対して、出産の現物給付の名前が助産の手当でした。ですので、疾病・負傷の現物給付は療養の給付、出産の現物給付は助産の手当というように、疾病・負傷とは別建てで別の枠組みで並立しておりました。
さらに正確に申し上げますと、この助産の手当がなされていた当時は、出産の現物給付だけではなく、助産の手当とプラスして半額の現金給付、この両方が併せて給付されていました。ですので、両方とも給付されているような形です。この助産の手当は、どのように、誰が給付するのかと申しますと、この当時は産婆が主に想定されておりました。もちろん、異常時には保険医からの給付も受けられるようにというような仕組みにはなっていたのですけれども、正常お産については道府県知事から指定された保険産婆というものがおりまして、実際の分娩介助や新生児の診察処置というところまで請け負っておりました。
次にお願いします。では、その出産の現物給付といったときに、実際、何が含まれていたかというところになります。これは今で言うところの妊婦健診、分娩介助、さらに産褥期と新生児も含めた診察や処置、保健指導、このようなところまで含まれていたようです。見ていただければ分かるように、病気かどうかというよりも、出産にまつわる給付が行われていたという形です。
回数や多胎の場合などの細かな規定については、道府県ごとでかなり差があるのですけれども、妊娠中、分娩、産後、この大きく3つが含まれていたという点は全国で共通していました。具体的には、妊娠中の診察として3回前後の診察。さらに、分娩介助は、いわゆる赤ちゃんを取り上げる分娩介助に加えまして、後産の処置、新生児の沐浴、臍帯処置、点眼など、必要なことを行う。また、産後については、生後7日目までほぼ毎日、新生児の沐浴と産婦に対する診察を行い、必要な指導を行うと記載されておりました。この内容を実施して、右にお示ししているような助産手当報酬請求書というものを産婆会が取りまとめ、保険者に請求したという形で運用していたようです。
次にお願いします。では、このように広く行われていた現物給付が、なぜ再び現金給付になったのか、詳しいことは明確ではありませんが、第2次世界大戦下の政策方針によるものかと考えております。
まず、1941年、人口政策確立要綱が閣議決定されたりした影響もかなり大きかったのではないかと思いますが、詳細についてはあまり分かりません。ただ、1941年を最後に、先ほど申し上げた医師会との契約というものが終了されました。ですので、助産の手当や保険産婆に関する契約であったり、指定についても、順次廃止されていったという経緯があります。法律上では、1943年の健康保険法改正で助産の手当が廃止され、その代わり、分娩費が実質的に現物、足す10円だった時代から、一気に30円まで、かなり大きな増額がありました。また、当時は無料だったり、軽費の産院が設立されていたというような背景もあったようです。
最後にお願いします。最後にまとめで、日本においては、健康保険法の給付方法に現物給付、現金給付、現物給付と現金給付の組合せという3つの選択肢がこれまでありました。出産給付に関しましては、療養の給付とは別のものとして現物給付をしていたということが過去にありました。また、その過去の制度は、それぞれの時代における状況や課題に応じて改正されておりました。
ですので、以上より、現代においてはどのような制度がいいのかということを、出産は病気かどうかという枠組みではなく、また療養の給付の診療報酬体系とは異なったものでもよいので、最も望ましいと思われる方法が新しい視点で考えられるとよいのではないかと考えており、その一助となることを祈念して発表を終わります。
御清聴ありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
引き続きまして、資料2-2に関しまして、井上参考人から御説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 弁護士の井上清成です。よろしくお願いいたします。私の場合、「出産費用の保険適用に関する法的論点の整理」というテーマでお話しをさせていただきたいと思います。
2ページ目、御覧ください。まず、自己紹介、ちょっと補足ですが、このような席に呼んでいただき、ありがたく思いますが、皆さんとしては弁護士が何でだということをちょっと思われるかもしれませんので、自己紹介をさせていただきます。
私自身は、病院とかクリニック、通称医療側の弁護士でございます。ですが、2ページの真ん中辺り、2010年に皆さん御存じの出産育児一時金の直接支払制度、受取代理制度ができたことがございます。ちょうどその頃に社保審の医療保険部会の専門委員として、当時の日本産婦人科医会の寺尾会長、日本産科婦人科学会の吉村先生の御指導の下で、北里大の海野教授と3者で、実は都度都度、打ち合わせながら、その辺りの問題を医療側としてうまく乗り切るためにはということで委員をやっておった経験がございます。ですので、久しぶりということにはなります。
めくっていただきまして、3ページですが、私自身は通常、弁護士で医療側ですので医療事故を扱いますし、医療安全の問題をずっとやっておりますので、医療安全学会などやっておりますが、助産の関係につきまして、正直、医療安全についての活動という点で、普通の平準化された基準となるものがちょっと薄いというのが私の認識だったので、助産部会を開催して助産部会長、第1代目ということでやっております。
内容に入らせていただきます。4ページ、御覧ください。まず、1つ目の課題です。本日は、2つの課題についてお話しをさせていただきます。まず、1つ目は産科医業・助産業の市場拡大を目指して--多様な市場ニーズに対応した新たな標準化戦略--。多様性ということと標準化ということが、親しい言葉という感じでなじみがあると必ずしも思われない方も多いかと思いますので、その辺りのお話から始めさせていただきまして、それで、今回、テーマになっております正常分娩の保険適用、ざっくり言えば現物給付化のお話につきまして、その意味。
私の考えといたしましては、費用の無償化ということに尽きるものではない、非常に大きな意味を持っているということを述べたいと思っております。妊産婦の選択の自由を保障するというふうに、その効果が十分あると考えておりますので、今日はその辺りのお話しをさせていただきます。
戻りまして、4ページですが、表題に続きまして、(1)で市場ニーズと標準化。標準化と言いますと経済産業省でございますので、経済産業省のほうで行われているようなプログラムをちょっと抜粋させていただいております。確かに通常、医療の関係者ですと、標準化と言いますと画一化してしまうと思われる嫌いがございますが、それは当初のお話としては事実かと思います。もともと標準化というのは、コストを低下する、大量供給するところにメリットがあるというところからスタートしておりますが、その頃から短所、欠点としましては、多様な市場ニーズに対応困難。下線を引いておきましたが、その辺りが大きな短所であるということで、当然、そのような懸念が表されるのは当たり前のことかと思います。
ここで、ちょっと古いお話でございますけれども、自動車産業のお話ですが、皆さん御存じ、昔はフォードというのが先駆的に爆発的に売れるわけですが、徹底的な標準化を行ってコスト低下、大量供給を行うので、T型フォードの1機種だけで進めていくという大量生産を採用しました。そのうちに消費者のほうが物足りなくなってくるところがありますので、それを今度はGM(ゼネラルモーターズ)が追い抜いていきます。消費者の多様な嗜好・需要に対応するため、安価な大衆車から高価な高級車まで、多様な市場ニーズに対応した複数車種戦略を取って顧客を獲得してフォードを抜いていくという過去の経緯。比較的よく取り上げる例でございます。
ここでは、古い車で高級車と言うとキャデラック、大衆車というとシボレー、5車種出して、それでということで、しゃれみたいなものですが、全ての財布と目的に合った車を生産ということがGM車の標語になったということです。
5ページ、御覧ください。標準化の意義はそんなことでありますので、時間の関係上、省略させていただきますが、④のところは私の追加した言葉でございます。目標はGM社のように基本的な考え方をまず変えてはいかがか。多様な市場ニーズに対応した。現実に出産の関係で多様なニーズがあるというのは事実ではないかと思います。後ほど申しますが、対応した新たな標準化戦略の一環として、GM社のようなモデルを参考にして、正常分娩の保険適用(現物給付化)制度を創設ということが望ましいのではないかと思っております。
勘違いしてはいけませんで、出産の保険適用を現物給付化するというと、1種類ではないわけですね。もう既にお分かりのとおり、複数の出産の現物給付化をする。どれを選択するかという問題になるので、妊産婦の選択の自由につながる。簡単に言うとそんな話です。
(2)、ついでですので、私自身は比較的いっぱい食べるほうでございますが、フランス料理ということで、フランス料理と言うと昔は高級料理で、偉いシェフがこれ1個ということでお任せ料理みたいな、うちはこれがいいのだということで決め打ちとなっていたというのがあるかもしれませんけれども、それで衰えていって、またそれが現在、再興しております。御存じのとおり、1品料理の選択、アラカルトで全部買うと高くなる。こういうのを簡単に言うと出来高払いと申します。そこで、高級フレンチもカジュアルフレンチも高コスト化・高価格化してしまうのを避けるため、コース料理として包括払いを行っている。そういうことで、幾つものコースが最近のフランス料理だとできているという感じになります。
美容院でも、私自身は詳しくございませんが、サイトでカリスマの美容師さんなのか、またはどんなコースなのかを選択していくというのが、むしろ当たり前になっているようでございますので、出産の分野でも同じようにできないのかなと思っております。
6ページ、御覧ください。多様なニーズと言ってもいろいろあるということ。ここに下線を引いておきました。分娩台ありとかフリースタイル。それから、継続か一時的か。かかりつけかアドホックか。見守り(専従)なのか、ローテしてラウンドなのか。それから、検査についても内診などということで、下手なお医者さんがやると痛いという感じが非常に強うございますが、そういうところは嫌だということもあり得るかもしれません。エコー、CTGもどの程度使うのがいいかなどというようにいろいろな問題があります。
めくっていただいて、7ページ。これも出産の一環にはなりますが、母乳育児とかミルクとか混合とか、いろいろあります。それから、後ほど申しますが、キャッシュバック。差額の現金給付というのを構成して考えられないかということです。先ほどの小暮参考人も、現物給付と現金給付が併用されていたということをおっしゃっておられました。
ということで、8ページ、御覧いただきます。多様なニーズに応える産科医療は標準化になじまないかどうかということですが、もう既に結論が出ておりますが、標準化。もちろんGM社的な、または現在のフレンチ風というところで標準化の知恵を絞れば十分できるのではないかと考えている次第でございます。
ということで、8ページ、9ページと続いて、10ページです。強調したいところですが、【2】女性の選択肢・自由度の多様化というのがございます。下線を引いたところだけ読みますと、自由診療一辺倒は、産科医療機関が現代女性に多くの選択肢を提供することを怠り、結果として、悪口を言っているわけではございません。いわゆる決め打ち、パターナリズムに陥りやすい弊害を有している。いいことだと言っても、1つになる。いいことだからこそ1つになってしまうこともあり得るということで、パターナリズムに陥りやすい弊害を有しています。現代女性(妊産婦)としては、実際には自由診療一辺倒にこそ、むしろ不自由さを感じる方もいるのではないかというようなところを申し上げたかったわけです。
あと、11ページでございますが、保険化に対する不安はあるかもしれませんが、正直、産科以外の他の診療科、美容は除きまして、みんな保険化して全国一律でやっておりますので、出産が何でできないのかということについては、法律家の私、というか、私自身はいろいろな医療をやって、各診療科を全部やっております。産科も含めてやっておりますが、何でだというのは、私自身はよく分からないかなと思いますので、同様に行えるのではないかと思っています。当然、知恵とかが必要かと思います。
14ページで多様なニーズへの対応ということになりますが、お時間が来てしまいました。話が長くて申し訳ございませんが、後半部分の現物給付の意義については、妊産婦の選択の自由ということで、最後に1ページだけ読ませていただきます。最後の26ページ、御覧いただきたいと思います。恐縮ですが、私自身の所感ということでお聞きいただければと思います。
26ページ、第3次お産革命。このように、妊産婦たちの多様なニーズに、分娩介助等の行為類型の面において、この面と、それから自己負担無償化やキャッシュバック等の費用負担の面、この両面で対応していくことこそが、真の妊産婦等の支援策となるのであると、このように考えております。
そして、正常分娩の保険化が真の妊産婦等の支援策となるのであれば、それは第1次お産革命、第2次お産革命と通称言われているものに引き続いて、第3次お産革命(正常分娩の保険適用。妊産婦中心のお産の普及)とでも称すべきものとなるのではないかと考えておりますので、こちらの検討会でぜひ御審議いただければと思っている次第です。
では、これで終わらせていただきます。
○田邊座長 ありがとうございました。
続きまして、資料2-3につきまして、白井参考人のほうから御説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○白井参考人 お産を女性たちの手に取り戻すネットワークの1人として参りました白井千晶と申します。
まず、このネットワークについて御説明させていただきたいと思います。健康保険適用が議論されていると聞きまして、女性たちに動揺が走ったというのが発足のきっかけでした。草の根のそれぞれの地域の女性たちのネットワークや個人の集まりが私たちです。夏には合宿をして、赤ちゃんを抱っこした人もいましたが、出産の未来について朝から晩まで話し合いました。そのときに女性たちの声を届けたいということで、アンケートを実施することにいたしました。
また、女性たちがLINEグループなどで話し合いや作業分担をし、まさに女性たちの全国の声ということになります。できるだけいろいろな声と経験を集めようと、また偏りもないように、直接的に活動に参加していない人にも発信して回答してもらったというのが本日のアンケートになります。
次のページ、お願いします。このアンケートについてですけれども、地域の偏りがそれほどないようになっているというのが、地図を見てお分かりいただけるかと思います。全41問の質問をインターネットでいたしました。詳しくは参考資料のほうにありますので、御覧いただければと思います。こちらは出産時期について、特に回答の制限をしなかったので、幅広い年代の出産経験または声というのが聞かれました。本日は出産費用等に関する議論と伺っておりますので、2015年以降の出産に限定して再集計したものを報告させていただきたいと思います。
次の3ページに進んでいただいて、今日報告する基本属性などにつきましては、御覧いただいてスキップしたいと思います。
また、出産場所、希望場所で出産ができたかどうかということについても、簡単に御覧ください。全数調査における回答とは若干異なっておりますけれども、できるだけ幅広い声が集まるようにということで工夫したつもりです。
次に5ページですけれども、まず、出産前の産前教室について、産前教室で学んだことについて回答してもらいましたら、帝王切開についての情報提供が不足している可能性というのが浮かび上がってきました。様々な理由で帝王切開を予定的に、あるいは緊急で行うことがあると思いますけれども、その点に関する情報が足りていないのではないかということが浮かび上がります。
次のページですけれども、出産中に受けた医療介入あるいは医療処置について、女性たちに伺いました。その医療行為、医療介入か医療処置か、何とも定義は難しいですけれども、それらが一律にルーチンで必要なのか必要でないのか、あるいはその人に必要だったかどうかというのは大変難しい判断ではありますけれども、結果としては、このような結果になっております。医療介入や医療処置は、この図にありますように、内診、分娩監視装置の継続的な装着。それから、血管確保のための点滴、会陰切開の割合が高くなっています。
次のスライドに進んでいただいて、これを出産時の立会い有無別に医療介入・医療処置・医療行為について調べてみました。そうしましたら、内診以外の部分につきましては、出産時の立会いがないケースについては医療介入の割合が大きいということが示されると思います。特に、会陰切開、血管確保のための点滴、陣痛促進剤などの違いが大きいということが言えると思います。これについての判断は、立会い出産の効果があるのかもしれませんし、また立会い出産だから介入や処置が少ないということもあるかもしれません。また、その医療機関の出産ケア全体の姿勢が現れていると見ることもできるかと思います。様々な解釈ができますが、このような結果が出たということを御報告したいと思います。
次のスライドに進んでいただいて、出産時に受けた医療介入について、助産師の継続ケアがあったかどうかということについて、助産所、自宅出産は除きまして、医療施設の出産についてのみ、また経膣分娩のみ、初産婦のみで分析してみました。そうしましたら、先ほどと同じように、助産師のケアの有無別で見ても、同様に医療介入の何がどのようにされているのかという経験率に違いがあるということが分かると思います。
そして、次に9ページですけれども、医療処置の事前説明を受けたかどうか、また受けたときにどのように感じているのかということをお尋ねしました。医療処置があった場合に限って集計いたしましたが、38%は説明があり、そして安心して身を任せられたというふうに答えていますけれども、34%は説明があった、専門家が言うならそうだと思ったというような回答をしていることが分かります。また、9%はどういうことか分からなかった。7%は説明があったけれども、違和感や嫌悪感が残った。また8%は説明がなかったと言っています。その選択が納得できているのかどうか、その処置が納得できているのかどうか、理解できているのかどうかということが、当人の感覚でこのような違いがあったということが言えると思います。
次のスライドで、帝王切開についてお話ししたいと思います。このアンケートでは、18%が帝王切開で、予定帝王切開と緊急帝王切開がありました。
次のスライドで、帝王切開の説明についてですが、この説明の有無というのを見ますと、その説明があったという回答が大変低くなっている項目があります。例えば、帝王切開のバースプランであるとか、術後に帝王切開になった理由を説明されたかどうか、起き上がり方や歩き方の説明、抱っこの仕方を教えてもらったなどについては、説明を受けたと回答する人の割合が小さくなっていることが分かります。
次のスライドで、出産直後の気持ちについて伺いました。出産直後は、赤ちゃんの誕生を大変うれしく思っている、あるいは感動した、赤ちゃんがいとおしいと感じたなどの肯定的な感情がたくさん表現されていますけれども、これを施設の種別に見てみました。そうしましたら、いわゆる精神的な満足度の高い出産というのは、小規模施設に多い傾向というのが見てとれます。また、ハイリスクを受けている影響もあるとは思いますが、ネガティブな感想というのが病院・クリニックに若干多いような結果が出ております。
次に、こちらについて、陣痛誘発有無別にこれらの出産直後の気持ちについて集計いたしました。そうしましたら、陣痛の誘発ありの場合には、ポジティブな感想の割合が小さくなり、ネガティブな感想の割合が高くなっているということが分かりました。この陣痛の誘発をどのように捉えているのかということや、全体としてどのような出産であったのかということが自由記述では読み取れるわけですけれども、陣痛の誘発の有無によっても、その出産の肯定的な割合に違いが出てくるということが読み取れると思います。
また、硬膜外麻酔分娩について見たのが次のスライドになります。病院出産に限定して、硬膜外麻酔の有無によって出産直後の気持ちというのを集計いたしました。そうしましたら、硬膜外麻酔の場合には、産んだという実感がなかった、赤ちゃんの容体が気になったというところが高くなっていることが分かると思います。痛みのコントロール自体を否定するわけではありませんけれども、硬膜外麻酔のときの説明の仕方、選択の仕方、出産ケアの在り方など、改善できる点があるのではないかということがここから見えてくると思います。
出産時の立会い有無別が次のスライドになります。立会い出産があった場合にポジティブな感情の回答をした者の割合が高くなっていることが分かります。これについても、出産時の立会いの効果あるいはその出産全体の姿勢というのもあると思いますが、結果としてとてもポジティブな感情が得られていることが分かります。
次のスライドですが、病院・クリニック、医療施設で助産師の継続ケアの有無別に、ポジティブな感情について、あるいはネガティブな感情がどうであったかというのを集計したのがこちらになります。病院・クリニックでの継続ケアがあった場合にはポジティブな感想の割合が高くなっており、どのようにポジティブな出産を支援していくか、ヒントが得られるのではないかと思います。
助産師の継続ケアについて、次のスライドですが、かかわりがあって、よかったという回答がある一方で、同じ助産師ではなかったという回答もあることが分かります。
次に、出産中にどのようなケアを助産師から受けたのかということですが、全ては述べられませんけれども、大変多様なケアを助産師から受けているということが分かります。これを、例えば保険の議論になったときに、ケアというのをどのように評価していくのか。時間なのか、内容なのか、配置なのか、人数なのか、どういうふうにしていくのかということが議論になるかと思います。
次のスライドが、それらの出産場所別に見たものになります。時間の関係で少しスキップいたしますが、次に出産場所別に見た陣痛中の付き添いについて御紹介します。コロナのとき陣痛中の付き添いが大変減った。特に病院でその割合が減ったことが分かりますが、特に今回強調したいのは、2023年、2024年など、コロナ前の水準にいまだ回復していないということが言えると思います。
また、先ほどは陣痛中の付き添いですが、次には出産時の立会いにつきましても、このようにコロナ前の水準に、医療機関においては全く回復していないということが分かると思います。
最後に、出産費用についての考えというのを女性たちに尋ねました。そうしましたら、一律に無償にしてほしいという回答が66%と、最多でありました。また、無償化を提言に含めることについての賛否について尋ねましたら、86%が賛成と答えています。
これらのアンケート結果から、次のスライドですけれども、言えることを簡単にまとめますと、継続ケア、陣痛時の寄り添い、そして立会い出産の重要性というのが指摘できると思います。産前から同じ担当者による伴走型の継続ケアが望ましいということ、声をかけるなどの寄り添いが必要であるということ、家族が一緒に赤ちゃんを迎えられる分娩環境が求められるということ、これらがポジティブな出産体験と関連しているということが言えますし、医療介入が減っているということも示されたと思います。
次のスライドにつきましては、自由記述。全ての自由記述をインターネットで公開しておりまして、とてもたくさんの声が集まっているので部分的に紹介したかったのですが、時間の関係もありまして、これらについてスキップさせていただきます。
最後、提言についてですが、1番から9番までまとめさせていただきました。
まず、実質無償化。
それから、保険適用の範囲の明確化。
一時金と両立する場合であっても、保険に加入できない、あるいは取り残された方がいらっしゃるかと思いますので、1人も取り残さないための制度づくりが必要。
また、WHOの推奨項目に沿った産科ケアを求めたい。
助産師の継続的なケア。
そして、帝王切開と麻酔分娩のガイドラインの整備をお願いしたいということ。
女性と赤ちゃんが受けるケアについて十分な情報を得るということ。
そして、コミュニケーションの構築。
また、嘱託医制度、嘱託医療機関とも関わりますが、出産場所の確保をお願いしたい。
最後に、検討会へのお願いとしてまとめさせていただきました。
保険適用を検討する前に、まず、どんな出産を実現していきたいのかというビジョンを検討していただきたいと思います。そのビジョンをかなえるために、どのような制度が望ましいのかというところに落とし込んでいただきたいというのが願いでございます。
また、2番目に、制度外となる人、はざまに陥る人が生じないシンプルな制度にしていただきたいということ。完全無償化のほうが事務作業を減らすのではないかという考えもございます。
次ですけれども、不要な医療介入がパッケージ化されないように精査していただきたいということ。このアンケートの結果からも明らかかと思います。
また、助産師の継続ケアのニーズと効果について評価していただき、それをどのように組み込んでいくのかということを考えたいと思います。
また、妊産婦が主体的に選択できるよう、出産方法を選択できる環境を整えていただきたいということ。
また、女性の様々な経験を聞いていただき、妊産婦本人を検討会の場に入れていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
○田邊座長 ありがとうございました。
続きまして、資料2-4につきまして前田構成員から御説明をお願いいたします。では、よろしくお願いいたします。
○前田構成員 前田でございます。皆様の資料2-4です。
私は、地方県の産科診療所(一次施設)の現状について話をしてもらいたいということで、今日、御指名いただきまして、お話しをさせていただきます。
まず、私、静岡県から参りましたので、白井先生と一緒ですが、静岡県の産科医療機関ということについて簡単に述べたいと思います。静岡県の二次医療圏が8つございまして、この表に市町村と分娩施設のある市を入れてみました。
静岡県は地方県としてはまだ恵まれているほうでありますが、医療機関のないところがございまして、4番目の紙でございますが、大体、東海道本線に沿って医療機関がございまして、かつてより大分まばらになってきております。今、静岡県で産科の医療過疎と言われているのが伊豆半島、遠州灘沿岸と北遠。北遠というのは、遠江の国の北のほうの山間部でございます。その3つにはほとんどございません。下田に1軒、産婦人科診療所と助産所がございます。
それぞれの二次医療圏と分娩施設の内訳を次のスライドに示しました。
我々、診療所でございまして、有床診療所の数の変遷ですが、平成8年に114施設ございましたが、徐々に減りまして、今年は31施設。来年の春でやめると、もう宣言しているところが3施設ございまして、ますます減ることになろうかと思います。驚くべきことに、昔の清水市、静岡市清水区は来年の春で診療所が一軒もなくなります。静岡市葵区、駿河区も、あの都市にしては2施設ぐらいずつしかございません。
私の医院のことになりますが、私は近隣の周産期センターから独立して平成5年に開業いたしました。32年間やってきておりますが、現在2万3000件の分娩を取り上げた計算になっております。先ほど家保先生が1000件を1人でなんてあり得ないとおっしゃいましたが、私、900件を1人で取ったことがございますので、無理すればできますが、実際にはなかなか大変ではございます。令和5年の分娩数は529件で、大分減ってまいりまして、17床ありますが、横に産後ケアに特化した助産院を併設しておりまして、家内が助産師ですので、そこの施設長をやっておりまして、診療所と助産所でチームワークよく産後ケアを回しているという現実がございます。
私、常勤医1名で、今日もそうですが、留守番の医師を置いておりまして、これが13名の非常勤医。365日24時間換算で、約2.7名の医師が常駐している計算になります。看護師・助産師19名、その他の職員を含めて40名を雇用しております。
分娩数の変遷ですが、直近の10年間、平成27年には714件ございまして、コロナの頃に一気に減ってまいりました。今、529件、今年は500件を切る勢いです。これは自然の少子化と同時に、後でちょっと申し上げますが、東京からの里帰り分娩の減少、それは基本的には無痛分娩が原因だと思っております。それと、コロナでの産み控えもまだ根強く残っておりまして、それで分娩数が減っております。
私は今、68歳、来年69歳になりますが、京都府の出身でございまして、父親は医者ではございません。商社マンで、小学校時代、西ドイツで過ごしまして、関西に戻ってまいりまして、東京の大学病院にいたのですが、藤枝市立志太総合病院という、私の住んでいる町の隣の周産期センターですが、そこに大学からの出張で派遣されまして、居ついてしまったのが1つ。それから、平成3年頃に私の医院のところで開業されていて年間600件ぐらいされていた先生が亡くなられまして、その亡くなられた影響で私どもの市立病院の分娩が300件、400件増えたのです。それで全く手術が回らなくなりまして、周産期センターとしての機能が一気に麻痺してしまったのです。
開業医が亡くなるというのはそういうことかというのを実感しまして、遺族から頼まれたこともありまして、じゃ、自分がやろうということで病院を飛び出した。それが現在の開業の筋道でございます。
11番のスライドのように、静岡市と浜松市の間にある地域、焼津市で開業しております。
12番目のスライドにお示ししているのが病院の全容で、手前の平屋が助産所でございまして、向こうの3階建てが医院でございます。昔の先生の医院を引き継いだので、古い建物でずっとやっていたのですが、地震で倒壊寸前になりましたので、平成25年に新築しました。その借金がいまだに重くのしかかっております。
病院から開業医に転じたわけですけれども、開業医の何が大変かというと、毎日外来に出なくてはいけない。勤務医をしていますと、週に2回ぐらい外来です。だから、朝から昼まではほぼ暇というか、人としゃべる時間はございません。患者さん、妊婦さんとしゃべっているばかりですね。今、いろいろな医師会とか産婦人科医会の役職を得ましたので、午後、できるだけ自由にできるようにということで、午後の外来をすっぱり切りまして、週に2回だけ外来をやっております。
そのほか、産婦健診。産婦健診というのは非常に大事な健診ですので、いわゆる昔で言う1か月健診ですが、これを今、2週間健診と併せてやっておりまして、原則、私が1人でお産をやっております。統計では90%ぐらい、私が立ち会うようにしております。これは、家庭医として、自分がお産を取らないと開業医の役割を果たせないと思っているからでございます。
うちの医院の今の統計を取りたかったのですが、昔のものになってしまいますが、2001年から2010年までの時間別の分娩の割合を14番に示しました。赤が帝王切開、青が普通分娩です。帝王切開は定時でやるものがありますので、12時から14時の間に集中します。これを取りますと、普通分娩だけで万遍なく、どの時間も分娩があったことになりまして、これを日割りしますと、22時から6時の間に38%の分娩が行われます。10日に7.2日の割合で夜の眠りを中断されます。夜間の救急外来の患者さんもある一定数、来院されます。最近、分娩が少し減りましたので、この数字がちょっと減りますが、それぐらい、夜、起こされている。
ただ、それが大変なのではなくて、24時間365日、妊婦さんのおなかの中の赤ちゃんの状態を監視しなくてはいけない。少なくとも入院した方の赤ちゃんの状態は絶えず監視しなくてはいけないということで、私は今、このノートパソコンの中に分娩監視装置というのがございまして、それを飛ばしていまして、会議の最中もすみません、こうやって時々見ております。それぐらいの気の使い方をしているのが開業医でございます。これは全く点数化されておりませんので、基本的には無償奉仕をしております。
収支の現状ですが、3年前から今年にかけて分娩数が160件減りましたので、令和5年度の赤字が6800万です。令和4年度が177万の赤字。その前はかすかに黒字でございました。6800万と言っても、借金の返済がそのうちの半分ぐらい含まれております。それでも分娩数の減少は、開業医には打撃が大きいということになります。
現状では看護職員が退職しても補充ができず、サービスの質が低下しているという実感がございます。このままでは産科から撤退せざるを得ないと思います。
白井先生が言っていただきましたけれども、助産師という立場は非常に大きな立場でございまして、医師の活動だけではなくて、助産師がいろいろと活躍してくださっています。保健指導、母親学級。最近はメンタルヘルス、産後の子育て支援、授乳指導。こういったものは基本的には点数化されていないのです。ですから、ほとんど分娩費の中で賄っているというのが現状でございます。
今日は、繭のいえのことを本当は話したかったのですが、時間がないので、助産院の産後ケアはまた違う機会にお話できたらと思います。
開業医といえども、いろいろな緊急事態に対応しますので、近くの病院と連携システムをつくっておりまして、公立病院との連携、診療所同士での帝王切開のやり取りといったことをやっております。
産科の開業医の悪いイメージというのは、皆さんがよく言われるのは、医療レベルが病院より低いのではないか。金もうけ主義ではないか。特に山崎豊子さんの「白い巨塔」の義理の父親の財前又一というのが非常に悪徳に書かれていましたので、このイメージが非常に大きいと思います。
それから、再三言われますように、フランス料理とかエステといったもので分娩費がつり上げられているのではないかとおしかりをいただきます。うちではフランス料理はやっていませんし、エステもやっていませんし、うちの地域でそんなのをやっているところは一軒もありません。少なくとも地方の県でそれを売りにしているところはあまりないのです。実際にかかっている費用というのは、人件費。それから、助産師さんを雇用する費用。それから、医療の機械の費用です。そういったことがありますので、その誤解をぜひ解いていただきたいと思います。
我々の長所は、病院の先生たちに比べるとベテランが多いので、むしろファーストタッチは慣れている人間に任せていただくほうが安心なときがあります。ですから、ローリスクの妊婦さんが本当の顧客です。ハイリスクは我々、扱いませんので、ローリスクの方を扱うということは本当に大切に思っていますので、そういった意味でも妊産婦さんのニーズに応えていると思います。
そのほか、いろいろなニーズ、いろいろな利点がございますし、大体20%の人は、うちで生まれた妊婦さんが大人になって、また産んでくれています。そういう家庭医としての立場も開業医は持っております。
分娩費用の保険化は産科開業医の息の根を止めてしまう可能性があると書きました。ちょっと過激な書き方でもあるし、先ほどの井上先生の話とは真逆のことを書いておりますが、ただでさえ減少しています。これは精神的にも肉体的にもきついから。その上に、今、経済的・経営的に非常に厳しくなっていまして、このままでは産科医なんかやる人、いなくなってしまいます。
ですから、分娩費の保険化が悪いわけではない。妊産婦さんには、できるだけ費用の安い分娩を体現させてあげたいと思っていますが、それは第2回で申し上げたように保険化ではないでしょう。それは補助金を増やすとか、別の財源でいいわけです。支払者側の方の意見はよく分かるので、財源論とか、そういったことをもう一回洗い直して、保険化以外の方法を考えていただかないと、このままいくといろいろな県で産科医がいなくなる。開業医だけじゃないですよ。開業医がいないとなると、若手が大学に入ってこなくなりますから、産科の医者はいなくなると思っております。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、今まで御説明いただきました資料2-1から資料2-4までにつきまして、御意見、御質問等ございましたら、挙手にてお知らせいただければと思います。
では、松野構成員、よろしくお願いします。
○松野構成員 連合の松野です。
御説明ありがとうございました。歴史的変遷や論点整理、それから地方における妊産婦の声や医療機関の実情など、大変勉強になりました。
まず、感想になりますが、井上先生の御指摘のとおり、この間の妊産婦の方のヒアリングからも、また自分自身の出産の時を思い出しても、分娩施設から出産に当たっての提供内容をパッケージで示されるだけで、その中の詳細は個別に選択できなかったことを考えると、選択肢があるようでないような状況なのかなと感じた次第です。一方で、前田先生のお話を聞いていて、改めて産婦人科や助産所において24時間365日体制で分娩を取り扱う大変さ、そしてそれを支える熱い思いを感じたところです。
質問につきましては、小暮さんと白井さんに1つずつございます。
まず、小暮先生に質問ですけれども、7ページで1941年の分娩費の件数に対して、助産の手当件数が激減しているのは、12ページを見ると、順次、助産の手当が廃止された影響だと思いますが、1943年に助産の手当が完全に廃止された後、産婆さんによる助産の件数などの影響について、分かれば教えていただければと思います。
それから、白井さんへの質問は、地方と言っても地域によって状況は様々かと思います。こういった地域ではこういったニーズが多い、またはこういったところに困っているなど、地方の声として地域ごとの特徴など見られれば、もう少し詳しく教えていただければと思います。正常分娩の保険適用につきましては、産科医療の標準化と質の向上を、全国どこに住んでいても希望する人が安全・安心に子供を産み育てることができる環境整備に向けて必要だと思っておりますので、負担とのバランスも考慮しつつ、妊産婦のニーズや地域の実情も踏まえながら議論が必要かと思っております。
私のほうから以上です。
○田邊座長 では、御質問ございましたので、答えられる範囲でよろしくお願いいたします。
○小暮参考人 参考人の小暮でございます。
質問いただいた43年以降については、申し訳ないのですけれども、分からないというのがお答えになります。41年までしか書いていないのは、それ以降、本当にデータがないというところになります。多分、昭和22年ぐらいまで分からない時代が続くことになります。
以上です。
○田邊座長 では、よろしくお願いします。
○白井参考人 参考人の白井です。御質問ありがとうございます。
まず、アンケートのほう、先ほどスキップしてしまったスライドにあるのですけれども、その中で地方の声というのが出てくると思います。アンケートの自由記述、スライド25枚目になりますが、産む場所探しに関して、例えば自宅近くの産婦人科は閉院が続いていてということであったり、子宮筋腫があるなど、様々な自身のことがあるときに、自分が望む分娩施設が見つからなかったなど。また、自分に合う産院ではなく、最も近い産院しか選択肢がないなど。特に地方では、出産先が見つからないという声が自由記述でもたくさん上がってきました。
また、集計のほうで言いますと、今日は時間の関係でスキップしてしまったのですが、人口規模別に集計というのを行っています。人口規模別というのは、人口トップ5の都市であるところと、人口100万人以上のトップ5以外の都市と、人口100万人未満の10県で集計を行いました。その結果、経験している出産にかなり違いがあるということが分かりました。
人口規模が小さいところ、地方都市とか過疎とかを想定していただければと思いますけれども、そういったところでは病院出産の割合がとても大きいことが分かりました。遠いところにある規模の大きな病院一択で、そこにしかないというようなことが読み取れます。そういったところでは、助産師の継続ケアがあってよかったと回答する割合が高く、人間関係はできているのではないかということも読み取れました。一方で、助産院や自宅出産を知らない割合が大変高く、知っていても近隣にないということで、全く選択肢がないということも分かりました。また、大きな病院であるからなのか、コロナ禍で立会い分娩がなかったという割合が、人口規模が小さいところは大変大きいということが分かりました。
逆に、人口規模がとても大きいところは、病院での妊婦健診が医師主導であるなど、恐らく多くの人数をたくさん診なければいけないというような姿が見えてきました。一方で、産前教室に参加する割合は大きく、病院の中で分業が進んでいるのかもしれません。また、人口規模が大きいところは、硬膜外麻酔分娩の割合が大きいことも分かりました。
東日本と西日本の東西で比較いたしますと、東日本のほうが病院出産の割合が高く、経験している出産というのが地域によって大きな違いがあるということが分かり、これをどういうふうに議論に盛り込んでいくのかが大きな課題だなということが浮かび上がってきたと思います。
以上になります。
○松野構成員 御説明ありがとうございました。
○田邊座長 ほか、いかがでございましょう。
では、佐野構成員、よろしくお願いします。
○佐野構成員 ありがとうございます。健保連の佐野でございます。様々な視点からの御説明いただきまして、大変勉強になりました。お礼を申し上げたいと思います。
前回ヒアリングにおいて、私も健保連として医療保険者の立場から、いろいろな論点や課題を申し上げさせていただきました。繰り返しになりますが、保険適用の導入を含めて、出産に関する支援等のさらなる強化についての検討に当たっては、1点目は、出産費用だけではなく、サービス内容や妊婦健診、産婦健診、産前産後サポートや相談窓口、各種助成制度等、現行の支援サポートをどう考えるのか。
2点目は、支援の実施主体の在り方、財源のバランスをどう取るのか。これら2つの視点が重要なポイントであって、実態の見える化や、それに基づく標準化の検討が必要であると申し上げました。
本日、お話をうかがって、何点かコメントさせていただきたいと思います。まず、井上先生から、出産費用の保険適用に当たっては、給付の標準化について考えていくべきだということで、特に画一的なものではなく、多様なニーズに対応するために標準化が必要であって、これが選択の自由につながるのだという、標準化ということに関する大変良い示唆をいただいたのではないかなと思っております。
また、小暮先生からは、出産の給付について、過去に病気とは別建てで現物給付としていたこともあるというお話がございました。今後の出産費用の保険適用に向けた議論に当たっても、社会環境や社会背景に応じた適切な給付というものを考えていくべきだということを改めて痛感しました。
それともう一点、前回も申し上げたことの繰り返しになって恐縮ですが、本日も出産に関わる医療費の無償化というお話があったのでコメントします。無償化、イコール自己負担なしとしても、実際には公費負担もしくは保険料負担で賄うことになります。つまり、、公費で負担という場合には当然税金が対象になりますし、また保険で負担するということは保険料負担ということで、いずれにしても国民が負担しているということが前提条件になりますので、無料と言っても、実際には国民が負担しているのだということを前提に、このバランスをどう取っていくのかという議論はぜひお願いしたいと思います。
以上でございます。
○田邊座長 ありがとうございました。
それでは、佐藤参考人、お手が挙がったと思いますので、よろしくお願いいたします。
○佐藤参考人 参考人の佐藤です。全国妊娠SOSネットワークと、あと、前回も参考人としてお話しをさせてもらいましたが、子どもと家族のための緊急提言プロジェクト、今、政策提言プロジェクトと名前を変えていますけれども、そこで私たちが全国で調査したことをお話しした者です。
全国妊娠SOSに来る子供の虐待死亡事例の検証報告でも、ゼロ日死亡の子供たちのことがずっと取り上げられているわけですけれども、妊娠・出産についての考えというのが、今の少子化に向かっている中で非常に狭くなってきているなという気がします。予期せぬ妊娠をしたとしても、そのことを誰にも言えない。むしろ家族にこそ言えない、殺されるといった相談も舞い込んできて、それは何かというと、お金がかかるというのもあるのですけれども、妊娠・出産というものに対して、祝福されたものであるべきだという思いが日本の世の中にあるのではないかというのを、つくづくそういう相談を聞くと思うのですね。
物すごい少子化というのは、私たちの価値観を変えてきたというように思います。価値観の転換を図らねばならない時期に来ていると思いまして、今日、ニーズ、選択の自由、多様性と標準化とか、すごくいいキーワードがいっぱい出てきましたけれども、予期せぬ妊娠をした人たちの望みに応じた形での、できるだけ負担のない出産等をさせるような仕組みができたらいいなと思っています。今、妊娠届出するのが怖いとか、指導される。何でこういう妊娠をしたのというような。それは予期せぬ妊娠をした人たちにはすごくつらいことであるので、それも含めた形で包容するような支援、多様なニーズに応じた支援に向かっていったらいいなと物すごく思うところですという感想とお願いをちょっとお話しさせてもらいました。
以上です。
○田邊座長 ありがとうございました。
では、亀井構成員、よろしくお願いします。
○亀井構成員 亀井です。産婦人科学会を代表しまして、井上参考人に御質問させていただきます。
多様なニーズに応じて多種類の標準化を求めるということ。我々ももちろん全ての妊産婦さんがグリーン車に乗りたいと思っておられるわけではないというのも了解しておりますので、それはとてもいいことなのですけれども、一方で、学会としましては、医会とともに医療安全の確保ということをすごく考えております。これだけ世界で一番安全な周産期環境をつくらせていただいているのですけれども、それに関わる費用を、例えば正常分娩とおっしゃられますけれども、正常分娩だと分かるのは、出産が終わって胎盤も出てしまって、しばらくたってから。後から見て、この方は正常分娩だと分かるわけです。
そのために、例えば中には、私たちが2008年に産科危機的出血の統計を取らせていただいたときも、4000人に1人ぐらいで出血量が1万を超える方がおられる。こういった方に対してバックアップの体制が全くない状態で、多分、皆さん亡くなられると思うのですね。そういったことが起きないように、我々、常日頃からオンコールもつくって、近くにみんな住ませて対応しているわけですね。ですから、正常分娩ということで一括りにされてしまって、これに係るバックアップの費用をどういう形で、例えば押しなべて全体の方に公平に均等に負担していただくというシナリオはございませんでしょうか。いわゆるリスクヘッジという観点です。
○田邊座長 では、お願いいたします。
○井上参考人 医療安全に関わるお話に多少入り込ませていただいて、恐縮でございます。今、亀井先生、おっしゃいましたけれども、日本産科婦人科学会などで進められておられる水準というのは、私も医療系弁護士で特に産科を多くやっておりますので、承知しております。先生を前に、言い方が悪ければ後で謝らせていただきますが、私は実は医療安全の世界で、他の診療科と比べて産科がどうかという観点からお話を随分しております。他の診療科が全部正しいというわけでもなく、産科が正しいというわけでもないのですけれども、ただ、バランスを見ますと、正直、産科は医療安全にかなり前のめってい過ぎると私自身は判断しまして、むしろ他の診療科と同様な医療安全にしたらどうかと。
つまり、医療安全が絶対的にいいというわけではないと。実際の現場とか実際の診療の必要性とか、本当に医療はもろもろの総合考慮の上でのバランスで成り立っているものだと思います。特に、疾病とか負傷という領域になりましたら、それは先生がおっしゃることというのはかなり比重が高まりますが、一括りにと言いたいわけではなくて、バランスとしては、それなりに正常なというか、むしろ普通のお話の部分も多いわけですから、その辺を全て結果が異常である可能性があるということで、その水準をがんと上げ過ぎるために、正直、産科の世界のバランスが他の診療科と比べて崩れているのではないか。そういう抜本的な問題があります。
申し訳ございませんが、これは施設自体の維持と医療安全とのバランスの問題ですので、はっきり申しまして、現物給付化するか、現金給付化するかというレベルとはちょっと違う筋道ではないかと思っておりますので、亀井先生には実際にいろいろなことで御示唆いただいておりますが、その辺のところの切り分けと、それから相対的なものなのだということを、産科の先生方には、これだけ頑張っておられる方々に何か変な言い方をしているように取られましたら誠に申し訳ございませんが、そこの医療安全、悪く言えば原理主義的になり過ぎないようにということをぜひ御注意いただくということを、むしろ医療安全の学会などでバランスを取って行おうじゃないかということで主張しているところでございます。
ですので、亀井先生には、そんな観点からですと、この場でむしろそのお話を前面に出すというのは、必ずしも場の設定としてはそぐわないのではないか。そもそも論で申し訳ございませんが、そんなことを考えているところです。
○亀井構成員 ですから、井上先生のおっしゃることですと、4000人に1人、1万以上出血するような方に関しては、もう犠牲にせざるを得ないということかもしれませんね。了解しました。ありがとうございます。
○井上参考人 そのようなことを申し上げたつもりはございません。医療というのは、本当にどの方にどんな問題が起きても何とかしましょうということを全診療科、みんな医療者は頑張っているわけです。でも、その中に実際に限定された領域の中でみんなやっているわけですので、そういうことも結果としては起こり得るというところの配慮、バランスというのが必要ではないかということを申し上げたにすぎません。
○田邊座長 恐らく1日中できそうなアジェンダだと思います。
では、前田構成員、よろしくお願いします。
○前田構成員 すみません、今の議論に入るとちょっと不毛になるので、別の観点から。
佐野構成員のおっしゃったこと、非常に大事な論点だと思うのです。保険にしても無償化するにしても、国民の皆さんが最終的には負担されるわけです。でも、今、少子化対策として、この会議をやっているわけですね。皆さん、保険化するのは少子化対策が最初にあったわけです。ところが、今の保険化の議論では少子化対策に本当になるのかというのは、2回目、3回目のこの検討会でも一部の方から疑義が出ておりました。それは本当にそのとおりだと思います。少なくとも、出産育児一時金と保険の費用の二重取りはできないわけですね。これは佐野構成員からもこの間、出ました。
そうなると、国民の皆さんには何の得になるのか。そうしたら何が少子化対策になるのかということです。ですから、国民の皆さんの思っている、できるだけ安く分娩したい。それは国も、国民の皆さんが分娩してくれれば国益になるわけですから、求めるものだと思うので、そうしたら国民全体の皆さんに納得していただいて、出産にはこれだけ費用がかかるのですよと。そのためには税金を投入せざるを得ませんよとか、保険料を投入せざるを得ませんよという話にして。
今、保険財源の中でちまちまとお金をいじくって、何とか国民の皆さんに納得させようとしているからおかしな話になるので、僕は国民の皆さんに、人がお産をする費用を全体で出さなきゃいけないということをまず納得してもらわないと、この議論は進まないと思うのです。保険財源の中では絶対にこの議論は進まないし、少子化対策には全くならないと思います。
そして、一言、さっきの井上先生と亀井先生の話で言えば、亀井先生がこれを言い出したのは、分娩費がかかるのは要するに人件費がかかっている。人件費には安全対策が含まれている。井上先生が産婦人科は過剰防衛だとおっしゃるならば、それでいいですけれども、それは国民の皆さんが決めることであって、より安全に産みたいのか、その代わり税金を投入するのか、それとも多少、他の国々並みの医療安全度になっていいのか。それは我々が議論する話ではなく、国民の皆さんがそう納得してくれれば、我々はそれで結構です。ということです。
○田邊座長 では、井上参考人、手短にお願いいたします。
○井上参考人 すみません。前田先生、ありがとうございます。
今、費用のお話しをされましたので、ちょっと申し上げますと、本当に多岐に申し上げると切りがないのですけれども、先ほど前田構成員がおっしゃった話にまさにあったのですけれども、前田先生のところが赤字になったゆえんの一つは、無痛分娩をやっておられなくて、無痛分娩の妊産婦さんがほかに行ってしまったという部分があるということをおっしゃっていました。私自身は、そこと、例えばこの検討会で、その後でも結構ですけれども、無痛分娩を保険化すべきかという問題はあると思っています。どうしてかといいますと、適応に基づく無痛分娩と希望による無痛分娩。その希望の部分をどれだけ扱うかというところがあるので、ここは十分絡む余地があるかと思っています。
それから、全般的な少子化は、ここの出産の局面だけでは足りません。結婚して妊娠して、そして出産して子供、子育て、全面にわたって国家が全部一斉に進まないと少子化対策にはならないと思っていますので、その一環として、今回のこの出産の部分が全てではなくて、ほかとの足並みをそろえていくという意味で考えていただく必要があるのではないかなと思います。
そして、最後に、地方県の産科診療所のお話を前田先生、されていましたけれども、里帰り出産が減っているというのがございます。弁護士ですので、ちょっとドライ過ぎる物の言い方で失礼があったらと思うのですけれども、全国一律の水準で皆保険制を実施しているということからすると、卑近な金額の点だけで見ると、先ほどの実際にかかる金額と、今度、仮に保険化されたら、その部分とは、逆に言うと地方県であると里帰り出産を誘引するような可能性さえあるのではないかと考えておりますので、前田先生へのコメントと2つオーバーラップしておりまして恐縮でございますが、手短にまとめさせていただきました。分かりにくいかもしれませんが、申し訳ございません。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、いかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
それでは、2番目の議題に関しては、こちらで終了させていただきたいと存じます。
また、全体を通じまして何か御意見等ございますでしょうか。今日のうちに言っておかないと寝られないという方は、ぜひお手を挙げていただければと思いますけれどもね。
では、濵口構成員、どうぞ。
○濵口構成員 濵口でございます。
いろいろなお立場のヒアリングがありまして、皆さんの御意見を聞き、大変考えるところがございますけれども、検討会は今回、5回目になります。キックオフのフリーディスカッションを始め、各界からのヒアリングがあって、そして今日の意見を踏まえまして、今後どういうふうにしていくのかということ、今後の議論の1つの資料ではないかと考えるところでございますし、今日の内容に関しては勉強として受け止めるということでよろしいかなと思います。
この検討会をするに当たって、出産に関して国のビジョンというのが大きな視点から見えてこないというのが根本的にあって、その中で少子化対策にこれが結びつくのかどうかとか、あるいは具体的には財源の問題とか、今後、いろいろ各論に入っていくわけですけれども、大きな視点から、国がこういった方向性で考えているのだということをある程度示していただいて、その上で、各委員の知恵を持っていい方向に向かっていくというのが一番大事じゃないかなと考えておりますので、所感かもしれませんけれども、コメントさせていただきました。
○田邊座長 ありがとうございました。
ほか、何か御発言ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
では、本日も非常に有益かつ多様な御意見を頂戴したところでございます。事務局におかれましては、次回以降の議論に向けて御準備いただければと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
これをもちまして本日の議事は終了といたします。
今後の予定につきまして、事務局のほうから何かございましたらよろしくお願いします。
○柴田課長補佐 事務局でございます。
次回の開催日程につきましては、追って御連絡をさしあげます。
○田邊座長 これをもちまして第5回の検討会を終了いたします。
本日は、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、また、参考人の方々に関しましては、非常に有益な御報告を賜りまして、御礼申し上げる次第でございます。
これで終了でございます。散会いたします。