第27回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和5年1月27日(金)10:00~12:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)

出席者

(委員)(五十音順)
岡本委員、佐々木委員、冨山委員、中野委員、春川委員、守島部会長、山川委員、山田委員
(事務局)
小林厚生労働審議官、山田大臣官房長、中村政策統括官(総合政策担当)、田中政策立案総括審議官、蒔苗政策統括官付参事官、古屋政策統括官付労働経済調査官、髙橋職業安定局雇用政策課長、宇野人材開発統括官付人材開発政策担当参事官、牛島雇用環境・均等局総務課長、古館労働基準局総務課長

議題

  1. (1)報告書(素案)について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○守島部会長 皆様方、おはようございます。
 定刻になりましたので、ただいまから、第27回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催したいと思います。皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席をいただき誠にありがとうございます。
 本日は、所用により石山委員、入山委員、大橋委員、古賀委員、川﨑委員、武田委員が御欠席でございます。
 議事に入ります前に、オンラインでの開催に関しまして、事務局から説明があります。
○古屋政策統括官付労働経済調査官 おはようございます。厚生労働省の古屋でございます。
 オンラインの開催に関しまして、留意事項を御説明いたします。
 まず、原則としてカメラはオン、マイクはミュートとしていただくようお願いいたします。
 オンライン参加の委員の皆様は、御発言の際は「参加者パネル」の御自身のお名前の横にある「挙手ボタン」を押して部会長から御指名があるまでお待ちいただくようお願いいたします。部会長から御指名の後、マイクのミュートを解除して御発言いただくようお願いいたします。発言終了後はマイクをミュートに戻し、再度「挙手ボタン」を押して挙手の状態を解除していただくようお願いします。
 通信の状態などにより音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。
 また、会の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡いただくようお願いいたします。
 以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
 それでは議事に入りたいと思います。
 本日の議題は、「報告書(素案)について」となっております。
 まず、本日の進め方について御説明差し上げます。
 最初に事務局から報告書(素案)について御説明をいただき、その後自由討議を行いたいと思います。
 それでは、事務局から報告書(素案)について御説明をお願いいたします。
○古屋政策統括官付労働経済調査官 御説明させていただきます。
 資料1ということで報告書の取りまとめ素案と、それから労働政策審議会労働政策基本部会についてということで参考資料を配らせていただいております。
 取りまとめ素案については資料1のほうでございます。こちらについて御説明させていただきます。
 この素案につきましては、委員の皆様方の前回までの御議論とヒアリングの内容等についてまとめたものでございます。
 全体の構成としましては5つに整理しておりまして、具体的な内容については前々回のフリーディスカッションの構成に合わせて2~4に示しております。主な内容である2~4について御説明させていただきます。
 まず、1ページの「2.社会・経済の現状について」を御覧いただければと存じます。
 産業構造の変化について、就業構造のサービスやAI等の進展、テレワークの普及などが進んでおりまして、個別化された製品、サービスの提供が可能となっているということを示しております。
 AIやDXの社会実装が進みますと、ハードだけでなく「知」で勝負する世界となってくるということを書いてございます。
 また、カーボンニュートラルなど、社会構造や産業構造を中長期的に展望し、活躍できる人材の育成というものが重要となるという状況も出てくることを書いております。
 また、多くの方が働く中小企業・中堅企業の生産を高めるということや、大都市圏以外の働く場を確保していくといったことも重要ということを書いております。
 2ページを御覧いただければと存じます。
 産業構造の変化とともに、人口減少に直面する我が国では、多様な人材の労働参加と企業の成長といったものが重要になってくるというところでございまして、最初の●でございますが、労働者一人一人がさらに貴重な存在となるということを書いております。
 それぞれの労働者が多様な能力を発揮し、社会を活性化するためには女性や高齢者をはじめ、あらゆる労働者の労働参加などを通じて全員参加型のダイバーシティー社会を実現することが重要と書いております。
 それから、2つ目の●のところでございますが、企業でのイノベーションに多様な発想が必要ということで、組織のダイバーシティーを通じていろいろな視点を持った人材が働けるようにすることが必要で、ガバナンスを高めるためにも外部人材の登用などの多様性の観点が有益ということも書かせていただいております。
 それから、我が国では女性管理職比率が低く、長時間労働を前提とする正社員の働き方を変えることや、キャリアを阻害する要因とならないように、前回のヒアリングの例のように、テレワークやフレックスタイムなどの工夫といったことが重要と書いているところでございます。
 また、アンコンシャス・バイアスといったように、社会全体の課題として、性別役割分担意識やネガティブな思い込みを払拭していくということも重要と書いているところでございます。
 また共働きも過半となる中で、女性就労や高齢者就労の制約となっていると指摘されているような社会保障制度や税制等について、働き方に中立的なものとしていくことが重要としております。
 続きまして、「(3)労働市場の変化について」を御覧ください。
 最初の●ですが、我が国は様々な変化に対し、これまで企業内での人材育成や幅広い活用など、内部労働市場により対処してきたところですが、労働者がその能力を発揮して働けるようにするには、内部労働市場だけではなく外部労働市場の機能も活用しながら変化に対応でき、かつ、回復力を持つ持続可能な労働市場の構築といったものが必要となると、3ページの1つ目の●のところでまとめているところでございます。
 こういった労働市場での人材確保には、賃金などの労働条件の改善や人材の定着のためには適正な評価・処遇やエンゲージメントを高めることが重要と、その次の●で示しております。
 足下の状況ということで、その後ろに示しておりますが、非正規雇用労働者の割合が長期的には増加傾向にあるということや、入職者に占める転職入職者数も大企業を中心に増加傾向ということ、それから新たな人材が加わることで組織を活性化するといった効果もあるということも指摘されており、転職者の受入れ体制といったことが重要となっているということを書いております。
 続いて、(4)を御覧いただければと存じます。
 こちらについて、2つ目の●のところでございますが、近年のIT技術の発達などによりまして、短期間で様々なことが大きく変わる現状で、価値を創造していくためには変化の対応に必要な技術を企業が考えることが必要としております。
 その上で、新たなスキルが必要であれば労働者へのリスキリングを進めていく必要があるというところでございます。
 次の4ページですが、企業は経営戦略として社会経済の変化に対応する必要性や、どう変わりたいのか、そのためにどのような能力や技術が必要で、何を学ぶべきかといった具体像を労働者に説明することが必要としておりまして、労働者も変化を前向きに捉えて新たなスキルを身につけられるよう、リスキリングへの意識が重要としております。
 その次の●ですが、リスキリングの中ではIT技術が注目されているところですが、専門領域の知識を持ちながら、デジタルツールを活用して問題を発見、解決できるような方法を理解している人材が重要な役割を担うということが考えられるとしております。
 一方で、変化に対応できないような方に対しては、企業はその必要性を丁寧に説明して、マインドセットをつくりながら実践的な学習機会をつくるなどして、働きかけていくことも重要としております。
 また、環境の急速、広範な変化に伴いまして仕事内容が変化しているということでございまして、職業人生も長期化が進む中でリスキリングの必要性が高まっているということでございます。
 しかし、企業主導の人事異動の下では自らのキャリアを考えて実行していくことはなかなか相当の努力を要するという一方で1つの企業で育つのではなくて、自分自身のキャリアをどうつくるかということに重きを置いている労働者も出てきており、キャリア自律が重要となってきているということを、5ページの最初の●の辺りまで書かせていただいております。
 また、能力を発揮できるようにエンゲージメントを高めるということも大事なのではないかということを、5ページの2つ目の●に書かせていただいております。
 それから「3.働き方の現状について」を御覧いただければと存じますが、全員が戦力となる社会を目指していくということには、社会全体で人材投資を進めていくということが重要としております。
 2つ目の●ですが、これまでの企業固有のスキルだけではなくて、企業横断的なスキルや新しいスキルへの投資も企業に新たな付加価値をもたらし、成長していくためにも重要としております。
 したがって、育成した人材の社外流出を懸念して人材投資を行わないということは、企業の成長だけではなくて我が国の経済成長にも望ましいことではないとしているところでございます。
 また、4つ目の●のところに示しておりますが、定年延長や再雇用など、高齢者雇用なども進んでおりまして、職業人生も長期になるということから中高年のリスキリングを含めた能力開発も重要としております。
 その下ですが、こういった中でスキルによる格差、分断をいかに回避していくかが重要ということで、雇用区分にかかわらず全ての社員、労働者に対して公平・公正な人材育成の機会提供が必要としておりまして、労働者全体にどう対応していくのかといった、国の対策としても重要としております。
 その次ですが、「イ.デジタル技術への対応・リスキリング」でございます。
 こちらについては、6ページを御覧いただければと存じます。
 リスキリング、なぜ学ぶのか、学んだ上でどんな仕事ができるようになるかといった目的意識が重要ということを書いています。
 企業がリスキリングの必要性を明確にして、積極的にその機会を設けるということと、経営者が自ら積極的に学んでメッセージを示すといった労使でのコミュニケーションも重要としております。ヒアリングで取り上げた企業でも、こうした特徴があったということで書かせていただいております。
 中小企業は生き残りのためといった、リスキリングの切実な理由があるというところでございますが、リソースが限られておりまして、あと一歩が踏み出せない中小企業の経営者も見受けられ、経営者へのリスキリング、相談窓口の設置、労働者向けのリスキリング支援等も重要としています。
 その次の●ですけれども、DXを進める上で中間管理職の役割も重要というところで、企業はビジョンを明らかにして中間管理職にデジタルの基本的な知識などを提供することが重要としております。
 ヒアリングでは中間管理職と若手を組み合わせて課題を解決する検証をしているという例もあったということを書かせていただいております。
 続きまして、その次の●ですが、人材育成は必ずしも社内だけではなく、在籍型出向や副業・兼業なども重要といったことも書かせていただいております。
 その下の●ですが、地域や産業ごとの拠点でのリスキリング支援情報の共有といったものも課題でありまして、脚注に示した産業政策と一体となった自治体のリスキリングの支援といったものもあったということを示させていただいております。
 続きまして「(2)雇用管理について」を御説明させていただきます。
 7ページを御覧いただければと存じます。
 「ア.人事制度」のところでございますが、こちらについては一番上のところですが、転職入職者の割合が増加しているということで、IT化・DX化で専門性のある人材が求められているということで、中途採用を迎え入れるための賃金体系をどうしていくかということも課題としております。
 1つ飛ばしまして、企業内での上司や先輩の経験や、能力のスキルを超える範囲の業務が増加しているというところです。既存社員のOff-JT研修等によるリスキリングも必要ということ、管理職のデジタル技術の知識や業務のデジタル化の理解といったものも大事ということ、あと、社員のリスキリングを推進する上で新しいスキルによる能力の向上や新しいことへの挑戦といった意欲も適正に評価・処遇することは、これまで以上に重要としております。
 また新しい働き方としてテレワークが普及したことで、過重労働とか健康障害、リモートワークの環境下における安全衛生面といったところも対応していくところがあるということで、労働時間管理や勤務間インターバルのような休息時間といったものも大事としております。
 また、ヒアリングですと、変形労働時間を採用して週休3日制を導入したという会社もありますので、こういった有意義に従業員が時間を使えるというような事例を紹介させていただいているところでございます。
 続きまして、「イ.ジョブ型人事」でございますけれども、企業の中ではいわゆるジョブ型人事と呼ばれるような新しい人事制度を導入する動きが出ているというところでございまして、企業が導入の目的や働く人に何を求めるかということが重要としております。
 「限定社員やジョブ型社員が一段下のような階層になる」といった御指摘もいただきましたので、多様な人材が力を発揮できるように企業内の労使の対話も大事としております。
 また、新しい人事制度で得られた専門人材の知見をどういった形で経営に反映していくかといったことも課題として考えられるとしております。
 続きまして、8ページを御覧いただければと思います。
 中小企業やサービス業等では、1人の社員が様々な業務を担うということも多いので、ジョブ型人事がなじまないようなケースもあるということで、ヒアリングではマルチタスクができるように柔軟に業務に対応するようにできるようにしたところ、高付加価値を実現したというような例もありましたので、記載しているところでございます。
 続きまして、その次の●でございますが、新しい人事でヒアリングを数社行った結果ということで、日本でジョブ型と呼ばれるような制度の導入企業の例でも、欧米と少し違う点として、①新卒採用後一定期間研修を行う、②人事異動は会社主導で行うといったような形で、バリエーションのあるものが多くあったというところでございます。今後各社で経営戦略上最もふさわしい人事制度への模索が続くということが考えられるとしているころでございます。
 続きまして「ウ.労働移動について」を御覧いただければと思います。
 1つ目の●の最後に示しておりますが、労働移動は、よりよい条件の仕事に就くことができるというチャンスでもありますので、ポジティブに捉えるということも必要としております。
 一方で、失業の長期化や賃金低下の可能性もありますので、こういった不安がないように外部労働市場の整備や企業横断的な能力評価の基盤などのセーフティーネットの整備等が必要としております。
 その次ですけれども、待遇や職場環境も大事ということで、退職金や競業避止等によって希望者が転職をちゅうちょするような可能性もあるという御意見もあったところで、労働移動に中立的な人事制度設計が可能となるような取組が必要としております。
 続きまして、採用後の研修やメンター制度、人事評価制度も転職者には有効といったことも書かせていただいております。
 続きまして、8ページの一番下でございますが、高いスキルを持つ方の労働移動が重要ということですが、弱い立場の人も円滑に労働移動ができるということも重要としております。
 労使双方が納得して労働移動が可能となるような仕組みについても考えていくべきとしています。注として9ページのところに例を示しています。
 続きまして、9ページの「エ.労使関係について」を御覧いただければと存じます。
 テレワークの導入など働き方の多様化によりまして、個々の労働者にとっての利益やニーズも多様化していく中で、労働組合には多様な労働者の利益を集約する工夫が求められているということについて、ヒアリングでは細かな単位で綿密な労使コミュニケーションを図る事例といったことの御報告を春川委員からいただいたところでございます。
 また、産業別・職種別の公正代表として行動する従業員代表の仕組みが重要という意見もあったので記載させていただいております。
 加えまして、中長期的な社会対話と合意形成の場として地域における労使などの社会対話の深化が重要としております。
 続きまして「4.今後の労働政策の課題について」を御覧いただければと思います。
 まず、企業に求められる役割ですが、2つ目の●に示しておりますように、人材投資をコストとして捉えるのではなく、無形資産投資や非財務価値を高めるという意識が重要というところを書いております。
 学んだことに対する価値や身につけたスキルに対して対価を支払うということで、結果として企業にリターンが返ってくるということと、学び直しやスキル取得のインセンティブを高める必要があるということを書いているところでございます。
 また、従来よりも現場の管理職のマネジメント業務の増加に対しまして、マネジメント研修や管理職の業務負担の軽減を図るということが重要としております。
 加えて、非正規雇用労働者を含む全ての労働者に対して、労働条件の改善やキャリア形成につながる能力向上の機会の確保が必要としております。
 10ページを御覧いただければと存じます。
 労働者に求められる対応ということでございますけれども、多くの変化が短期間に起こる現状では、過剰に変化を恐れるのではなく、変化を前向きに捉えることが重要としております。
 3つ目の●ですが、変化に対応するため、労働者が自律的にキャリア形成、学びを深めていくことが必要ではないかとしております。
 続いて「(3)労働政策において今後検討すべき課題」でございます。
 2つ目の●に示しておりますように、女性や高齢者など多様な人材が能力を発揮できるよう、働き方に中立的な税制・社会保障制度の構築や、雇用によらない働き方など様々な働き方の方をどのようにセーフティーネットに組み入れていくかという点などが考えられるとしているところでございます。
 また、労働者が節目ごとにキャリアの棚卸しができるよう、スキルの見える化ができるようなツールや、キャリアコンサルタントによる助言・相談等の支援を講じるということや、自発的に労働移動を行う方の参考となるように、在籍型出向支援で得られた事例収集や紹介等の転職しやすい環境整備を進めるべきとしているところでございます。
 5つ目の●でございますけれども、働く時間、場所に制約がある場合も多く、テレワークやフレックスタイム、勤務間インターバルなども含めまして働き方改革を引き続き進めていく必要があるとしております。
 最後に「(4)社会全体に求められる対応」についてです。
 日本の人材育成は企業に負うところが大きかったとしており、これに加えて、一人一人の労働者が自律的にキャリアについて考えていける方策を、社会全体で危機感を持って考える必要があるとしております。
 企業の取組だけですと、こぼれ落ちる方も想定されるため、例えば公労使、産学、地域での連携、こういった多様な主体の連携により社会全体でリスキリングをどう進めていくかという視点に移っていくことが必要なのではないかと結んでいるところでございます。
 説明については以上でございます。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、自由討議に入りたいと思います。御意見のある方は挙手をお願いいたします。
 冨山委員がまず手を挙げていらっしゃいます。どうぞ。
○冨山委員 どうもありがとうございました。
 最初に幾つか申し述べたいです。
 最後の最後のほうにいいことが書いてあるのでよかったなと思いました。
 これは、大分事務局が頑張ってくれたことはよく承知しておりますが、全体のトーンでいうと、基本は、日本の社会というのは終身年功制の働き方、生き方が原則で、会社を変わるとか会社が潰れてしまうというのは例外的事象であるということで、従来そうだったからしようがないのですけれども、なってしまってます。
 これは何度もここで申し上げていますが、本当に名実ともに終身年功制の中で生きている人は、私の知る限り今の勤労者20%です。これはほぼ連合の組織率であり、資本金10億円以上の企業で働いている人の、正社員が全勤労者に占める割合が2割なのです。大体2割なのですよ。その外側の8割がメインであって、今の賃金低下の問題はここで起きている問題です。
 ですから、春闘が何となく世の中一般で盛り上がらないのは、それは原因は明らかで、結局2割の議論なのですよ。だから、8割の人からしたらその話は他人事なのです。皆さん頑張ってくれているのはよく分かっているし、僕らも当事者なのでちゃんとやったほうがいいと思うけれども、8割の人から見たら他人事なのです。
 それから、恐らく、若い人たちから見ても、本音で言ってしまうと、きっと大半が他人事だと思っているのではないかな。
 それで、何が言いたいかというと、これは冒頭のところで変化の議論がありました。産業構造を変えると。今起きていることは、Aという産業構造からBという産業構造に変えるという変化ではありません。ある種、安定的な産業構造から、この後ずっと流動的で不安定な産業構造の変化が続く時代に変わるのです。あるいはもう変わっているのです。ですから、今、一瞬、GAFAがすごいとみんな思っていますけれども、10年後にGAFAはなくなっている可能性あります。そういう時代なのです。常に変転が続くのです。
 常に変転・変容が続くということは、何を意味するかというと、企業や産業の新陳代謝がない限り経済は成長しませんし所得は伸びないのです。これが30年間、OECDの中で日本が自ら証明してきた事実であります。
 要は、いろいろな統計がありますけれども、はっきりしていることは、要は、顕著に日本が低いのは創業率と廃業率です。顕著に日本が低いのが所得上昇率であり、かつ、経済成長率です。ですから、結局、企業の新陳代謝あるいは働いている人たちのいろいろな意味での流動性というものがない限り、逆に賃金も上がらないし経済成長もしないのが今の状態です。
 全体のところで、かなり企業にいろいろ頑張ってください、経営者頑張れ、中間管理職頑張れと書いてあるのだけれども、私が見てきた現実、これはいわゆるグローバル企業、ソニーとか日立とかああいうところもそうだし、我々地方でバス会社をいっぱい経営していますから、そういうところで見てきた、もっと何か弱い立場の人たちの世界も見てきましたが、その現実は何が起きているかというと、残念ながら、こういう変化の時代に、既存の会社の既存の経営者に頑張れと言っても限界がもう明確です。要は、ずっと野球しかやってこなかった人に従業員にサッカーを教えろと言っているのです。教える本人が野球しか知らないのだからこんなもの教えられるわけがない。そういうことなのです。
 ということは、サッカーができる会社に会社が統合されるか、労働者がサッカーができる経営者の会社に移動する以外にこれは解決はないのですよ。現実問題として。これは僕がずっと見てきた現実です。
 我々のバス会社は賃金を上げていますから。うちのところは賃金は明確に高いです。理由は簡単です。うちにサッカー選手がいるからです。うちが中小・零細を買収したら必ず賃金が上がります。これは私鉄総連で調べてみると分かります。要するにそういうことです。
 結局、ある意味、流動、変動を起こす以外にこれは答えがないわけで、ですから、内部労働市場が原則であって、例外的に「外部労働市場も」という表現になっているのが不満で、外部労働市場を活性化しない限り絶対今後賃金は上がりません。これははっきり予言しておきます。10年後に絶対答えが出ていますから。これは間違いなくそうなります。
 そうなると、結局、考えなくてはいけないことは、企業に期待することは、やめろとは言わないけれども、既存企業とその経営者にそんなに頑張ってと期待しないで、むしろ最後のほうに書いてある、企業を超えて社会や公が個人に対して直接手を差し伸べるという、要は、個人を社会が直接守るというセーフティーネットを整備して、それができれば流動化が進むので、それをやらない限り、言っておきますけれども、絶対に日本の賃金なんか上がらないですよ。生産性が上がらないのだから。だから、これは私はっきり断言しておきます。
 そういう意味で言ってしまうと、とにかく外部労働市場の機能が大事で、外部労働市場、の今の日本の問題点は、今、多分転職すると給料が下方遷移している場合が多いはずなのです。問題は、要するに、外部労働市場がちゃんと機能しているかどうか、現状、人手不足なのです。人手不足なのに何で下方遷移するかというと、これは明らかに市場が失敗しているのです。外部労働市場が失敗しているわけで、今後、この労働政策を考えるときに、この後、要するに、転職するときに上方遷移が起きる。これは、本来、市場が機能していれば、人手が足りないのだから上方遷移が起きるはずなのです。
 だから、上方遷移が起きているかどうか見るべきで、たしか現状はあれですよね。たしか非正規の市場は、今、賃金上昇が先行的に始まっていたはずです。ということは、問題は、正規の人たちの労働市場がほとんどまともに機能しないということです。最後にありましたけれども、これは明らかに中立的ではないからです。その会社にい続けることと転職することに関して。これを中立化するということは、この国が本当に賃金を上げたいのだったら絶対条件だと思います。私はそう思っています。
 それから、あと、いろいろな労働紛争問題も含めて、とにかく企業に過度に期待するのはやめたほうがいい。本当にやめたほうがいい。要するに、むしろその結果として労働者は守られていないのだから。だから、もうそれは絶対やめたほうがいいし、今、はっきり言って日本の企業にそんな力はないです。僕はそう思っています。
 それから、中間管理職の議論なのですけれども、私が思うには、昭和型の中間管理職の仕事は今後なくなります。明確になくなります。これはネットの発達と、それこそ、ChatGPTは使ったことありますか。あれはすごいですよ。多分僕らより頭がいいです。だから要らなくなるのです。中間管理職として残る仕事は中間経営職です。経営の仕事が残ります。
 そうすると、従来の中間管理職教育とか研修とは全然違う次元のことをやらなくては駄目なのです。要は、中間管理職で機能する人というのは、恐らく中小企業の経営もできる人です。そういう意味で全然異次元のトレーニングをしていかないと、中間管理職の仕事は、きっと全部AIに置き換わります。これは既に起きています。始まっています。
 この基本部会は、割と未来を先取りするという立場の部会なので、ぜひともそこの問題意識というものは提示してもらったほうがいいのかなと思いました。
 それから、ジョブ型についての表現で、私はうーん?と思ったところがあって、ジョブ型イコール新しい働き方と書いてありますが、労働の歴史で言ってしまうと、日本型のメンバーシップ雇用が最も新しい特殊な働き方だと思います。もともと全部ジョブ型だから。要は、メンバーシップという働き方は戦後の日本でしかないでしょう。ですから、これが一番新しくて、ほかはみんなジョブ型だといったらジョブ型なのです。要するに、メンバーシップ型がそれ以外と表現したほうがよくて、なので、新しい働き方が入ってくるというイメージは、僕は正直ぴんと来ていない。
 あと、マルチタスクの議論で、実はうちのバス会社はマルチタスクをやっています。ただ、マルチタスクという話とメンバーシップというのはイコールではないです。マルチタスクというのはむしろジョブ型です。だって、タスクを明確に定義しているのだから。だから、バスの運転もしてください、整備も部分的にやってください、これもやってくださいと、僕らはちゃんと明確に定義してお願いをしています。ですから、メンバーシップ雇用ではないとマルチタスクができないと言っているのは、それは僕は経営者の怠慢だと思う。それは全然関係ないです。うちみたいなプロフェッショナルファームでもそのようにやっているので、それは全然関係ないと思っています。
 それともう一つ、今、例えばグローバル企業で入ってきているジョブ型というのは、先ほど出ていたような、何か二級市民というジョブ型ではないです。今、現実でやっていることは。どのようにやっているかというと、ジョブ型で働く人はむしろ超一級市民です。というのは、どういう理由で日立などは入れているかというと、日本以外は基本的に全部、労働契約というのはジョブを明確に定義しているのです。そうではないと労働契約にならないから。契約社会ですから。そうすると、グローバルに人を入れ替えるということを考えると、日本人は向こうに行ったらジョブ型で働かなくてはいけないのです。向こうの労働契約の規制の中にあるから。したがって、むしろグローバルにぐるぐる回るようなエリート社員について、それがいつでもできるようにお互いに、向こうの人が日本に来たときも同じ契約できるようにジョブ型の契約を導入しているのです。
 あと、最近、企業は東大のAI研などからすごく高い給料で人を採っています。日本のグローバル企業。これもはっきり言ってジョブ型です。これも要するに超エリート採用です。ですので、要するに、ジョブ型すなわち二級市民というのは今の実態とちょっとずれてきている気がしているので、そこは表現を実態に合わせたほうがいいような気がしています。
 実際、今、若い世代の、これはくどいですけれども、ローカルなうちのバス会社の運転手さんみたいな人の世界から、先ほど言った一番最上級の社員、非常に優秀なすごくエリートな人たち。これはそれぞれ議論を分けたほうがいいと思うのだけれども、現状、日本のいわゆるジャパニーズトラディショナルカンパニー、最近JTCと言われていますが、JTCの世界で何でみんな困っているかというと、要するに、非常に優秀な学生を採ろうとしたときに、競争相手は、我々みたいなプロフェッショナルファームと投資銀行、投資会社、ベンチャーなのです。こういったところというのは、最初から100%ジョブ型採用です。給料は高いです。流動的です。
 それで、今、何が起きているかというと、いわゆる、日本でみんなが知っている大企業は、トヨタも含めてそこにどんどん人を取られているのですよ。猛烈に人が取られています。JTCにおけるエリート社員の退職はすごいんじゃないかな。そういうことが起きていて、要するに、何が言いたいかというと、この空間においては、実態がもう既に欧米型になってしまっていると思うのです。
 もちろん、アンケートを取ると、ずっとトヨタとかパナで働きたいという人が多く出るのです。だけれども、ちょっときつい言い方をすると、グローバル企業の立場からするとそういう人は欲しくないのです。なぜならば、パナもトヨタも、その世界のグローバル企業だから、ずっとワールドカップを闘っているのです。なので、極端な話、ワールドカップに出られるような人しか先進国の採用においては要らないです。平均的なブルーワーカー的な仕事はどうしたって新興国に行ってしまうので、だから、そういう実は本音があります。
 今、その中で、実は、いわゆる経団連的な企業のトップレイヤーのところというのは、実はジョブ型を導入してきていると。これは聞いても彼らは本当のことを言わないで、僕はあえて代わりに本当のことを言いますけれども、それが起きていることなのです。これは現実問題として。
 なので、要は、今回のレポートにこれを全部反映しろとは申し上げませんけれども、すごく努力されたことはよく分かっているので、ですから、次の基本部会の議論として、この基本部会は、やはり10年後、20年後を先取りすべき場所だと思うのです。そういった脈絡で言うと、10年後、20年後に確実に、今、私が申し上げていることはきっと加速しているのです。ますますそうなっているはずなので、ですから、そこは次のステージに、こういうことを反映したような議論を始めてもらうとうれしいなと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。
 これから春闘を頑張っていこうという時期ですが、冨山委員からご発言があったように、確かに多くの方にとっては他人事のようにみえることかもしれません。しかし、未組織労働者を含めて、社会全体に成果を広げていくように現役の組合には頑張っていただきたいと思っているところです。
○冨山委員 賃上げ賛成派ですので、頑張ってください。うちもちゃんと上げますから。
○岡本委員 よろしくお願いします。
 さて、私は3点発言させていただきたいと思います。まず、ジョブ型人事についてですが、これまでの部会での議論を踏まえて、いわゆるジョブ型人事制度という形で整理いただいていますが、IT化とかDX化への対応を含め、新たな人事制度を導入するに当たっては、労働者が安心して働き続けられるよう、また、労働者間で格差や分断を生まないようにすることが重要だと思います。
 ジョブ型人事制度を政策的に推進していくのではなくて、ヒアリングを含め個別労使が様々な課題に向き合って、創意工夫を重ねながら導入・運用している好事例が幾つかありましたけれども、このような好事例を周知していくことがこれからも必要ではないかと思います。
 2点目は、資料の9ページに記載の労使関係についてです。
 労使の建設的なコミュニケーションが活発的に行われるためには、労働組合を中心とした集団的労使関係を土台とするということが不可欠だと思います。それは働き方や労働者のニーズなどが多様化している中であっても不変であり、労働組合でも未組織労働者も含めた意見集約などに積極的に取り組んでいます。
 労使間の情報の非対称性や交渉力の差などがある中で、使用者と対等な立場に立つために労働者の団結権が保障されて、労働組合の法的保護が図られています。そのような視点も含め、今回、労働組合の役割・機能の重要性について触れていただいていると認識をしています。
 労働者代表についての記載もありますが、まずは現在の過半数代表における選出方法をはじめとした不適切な運用などの課題をいかに解消していくのかということが重要ではないかと考えます。
 3点目は、資料の10ページ、雇用によらない働き方についてですが、労働政策で今後検討すべき課題として、多様な働き方の人に対する重層的なセーフティーネットの課題について記載があります。これまでも発言してきたとおり、従来の労使関係法令の対象とならないフリーランスなど、曖昧な雇用で働く方の法的保護の拡充ということは喫緊の課題ではないかと思います。
 そこで検討すべき課題の具体的な項目として、社会の実態や就業形態の多様化などを踏まえた労働者性の見直しが必要であるということは、報告書においても言及すべきであると思います。
 以上です。ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございました。
 では、続きまして、佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員 ありがとうございます。
 先ほどジョブ型の話が出ましたが、「ジョブ型」という名前がつくられるときに、私は委員会にいて、「ジョブ型」という名前にするとどうも下位の印象を与えてしまうので「プロフェッショナル型」という名前にしたほうがいいのではないかと発言をしました。日本社会がこれからどのような働き方の人を育てていきたいのかということは、本当は言葉遣いから重要なのかなと思っておりまして、先ほどの御意見に私も賛成でございます。
 あと、余談でございますけれども、今、GAFAもマイクロソフトも含めていろいろなところを大量解雇するというニュースが出ると、大騒ぎになって日本のニュースになるのですけれども、一部の私の周りの人たちは、あれができるからアメリカの企業は強くて、そして、労働者が緊張感を持って実力を高めるので強くなって流動性もできる。そういった企業だから強いのであって、経営が駄目になっても解雇できずに採用し続けなければならないという日本の慣習というのを見直さなくてはいけない時期なのではないかという議論をする人もいます。こういうようなところが大きな背景なのかなと思いながら伺いました。
 今回の報告書の素案につきましては、1つ、私は既に意見というか修正案を出させてはいただいているのですけれども、例えば多様な人材、ダイバーシティーみたいなところとかは、労働を確保するという視点ではなくて、その人たち一人一人を活用することで多様な視点が生かされるというような経営になるのだというような趣旨の文章にしていただきたいと思っていますし、何となく女性・高齢者というのが全部中ポツでつながっているとちょっとどうかなと思うので、この辺りは具体的に提案をさせていただいていますけれども表記方法の御検討いただきたいと思います。
 これから企業を守るというよりも、個人を育てるという、個人が仕事を通して貢献するという時代になっていくということが読んでいて分かるような、力強く個人が成長する、貢献するというところに気がつくような文章にしていただきたいというのが全体像です。
 具体的に、報告書を出したときに、3月に取りまとめて6月ぐらいに出すのだと思うのですが、これからまとめていくのに当たって、このアウトプット、これを出したら世の中はどう読むのかということを意識して書く必要があると思っています。
 目的は、1つは読むであろう記者の方々がちゃんと理解して記事にして、これを広めていくというか考え方を世の中に問うていくというか提案していくというか、そういうことができるように、記者の人たちが理解できるように書いているのかということです。
 それから、もう一つは、労働政策をこれから法整備などをしていくときの、読み手が引用したり活用しやすくきちんとまとまっているのかということと、3つ目に、企業の人事の方々が、ああそうかとちょっと考え方を変えて、このように準備しなければ、みたいな参考になるのかということです。残念ながら、これを出したときに、国民全員が一生懸命読んで、自分のことを振り返ろうというものには活用しないのだと思うので、この3つのところをターゲットにして、どのように使ってもらえるのか、読み手に伝わる文章にまとめていくのかということが重要だと私は思っています。
 そうすると、今書いてあるものというのは、ちょっと使いにくいし、専門家として論文として読んでいけば、ここがあそこがということを専門家は分かりますが、さらっと読んだときに分かりにくいということで、ぜひ、この後のプロセスとしては、議論を踏まえた上で、例えば小見出しをつくるとか、エグゼクティブサマリーみたいなものをちゃんと頭に載せるとか、タイトルから使いやすい、記事になりやすい、誤解されないで、この言葉がちゃんと出回っていくように、これがインパクトなんだということをちゃんとハイライトできるようにしていただきたいです。ちょっと違う視点からのコメントですけれども、この報告書が使われるようにというところはぜひ注意を払って仕上げていただきたいということでございます。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 では、続きまして、春川委員、お願いいたします。
○春川委員 ありがとうございます。
 私からは、報告書の素案につきまして、3点発言をさせていただきます。
 まず、労働者そのものがキャリアを築いていくキャリア自律が重要との記載があります。労働者個人が、主体的かつ自律的にキャリアを築くことが必要という考え方は重々理解しているところです。その上で、働く先の企業の持続的な発展を見据えれば、人材の定着といった観点も重要と考えています。労働者が自ら自律的にキャリアを築いていくということは大切なところでありますが、労働者のキャリアパスに関して、企業側が関与していく側面も重要ではないかという点を改めて発言させていただきたいと思います。
 2点目は、8ページに労働移動の件が記されております。先ほど、冨山委員からも、これからの外部労働市場のお話がありました。当然、これから少子高齢化で労働力が減っていく、あるいは、逆に成長分野でも人手不足が生じるというような記載があります。そのようなところへの労働移動そのものを否定するということでは全くありませんが、労働者の意思によらない移動となってしまえば、それこそ職場に定着しないことになってしまいかねず、意図する政策的な効果が望めないのではなかろうかという危惧もございます。
 先ほどの外部労働市場の御指摘がありましたとおり、新しく変わる企業における雇用の質や労働条件の向上、あるいは、労働者から見て魅力ある産業、企業づくりといったものの結果があって生ずる労働移動だと考えていますので、労働者本人の意思によって選択されることが前提にあるということを踏まえていただきたいところです。
 8ページの最後のほうに、スキルの有無などで区分するような表現もありましたけれども、そのような区別はなくてもいいのではないかということも意見として申し上げたいと思います。
 また、9ページには、今後の企業と労働者それぞれに求められる対応という項目がありますが、企業としても労働者のリスキリングを含めた様々な部分にサポートを行っていくというところも触れられていますけれども、能力の向上、リスキリングされた労働者を、企業の中でしっかり再配置をしていくということが当然必要だということを意見として発言させていただきたいと思います。
 私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 では、続きまして、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 ありがとうございます。
 若干、細かな点も含めて幾つか申し上げさせていただきたいのですけれども、2ページの(2)のところで、最初に、人のサイドから見たときに、今のシステムというのはもう限界にきていて変わっていかないと駄目だという話があるわけですけれども、私は、人口減少の中でも、日本の社会が従来の考え方でコアに位置づけてきた男性の現役世代が、完全に2000年にピークアウトして、今、すごい勢いで減っていることが重要な事実だと思います。そこを強く書いたほうがいいのではないかと。そうではないと、旧来の発想でやっていると人が採れないという状態になっている。佐々木委員がおっしゃったように、これは読んでもらうために、インパクトを出すための工夫みたいなものが要るので、そういうものを、場合によってはデータなども示しながらやることが大事かなと思います。
 それから、これも細かいのですが、3つポツのところで、女性の管理職比率という話が出てくる。管理職はそうなのですけれども、これも先ほど冨山委員がおっしゃったところと関わるのですけれども、経営者の比率も重要なのです。女性の経営職の比率が少ないというのがより根本的に問題なのではないか。管理職の旧来タイプがなくなっていくということでしょうから、ですから、これは言葉遣いなのですけれども、管理職だけではなく経営職とか役員をどう増やすかというところだと思うのですが、そういう細かいところです。
 それと、(4)なのですけれども、やや構成上のことを申し上げて申し訳ないのですけれども、表題を見ると「労働者の意識・企業の求める人材像の変化ついて」ということになっていて、これはすごく実は重要な部分なのですけれども、内容を読むと、実は半分ぐらいがリスキリングの話になっているのです。これは多分、後のほうに持っていったほうがよくて、むしろここで大事なのは、それこそ冨山委員が先ほどおっしゃったように、若い人の意識も全然変わっているとか、あるいはコロナを通じて、特に在宅が入ったものですから、企業と個人の距離が物すごく変わっていっていると思うのです。
 これは統計を見ていても、特に潜在的な転職意識を持っている正社員がすごく増えてきているということで、こういう労働者の意識ということを、いろいろファクトも含めながら大きく変わっているのだよというところを、ここではしっかり、一部書かれているのですけれども、そういう部分を補強する必要があるのではないかなと思います。
 それと、企業の求める人材像も、実はイノベーションを起こせる人材は1つしか書いていないのですけれども、多分、これも先ほど冨山委員がおっしゃったように、管理職自体が変わっていくんだよとか、あるいは、多分、現場の人たちもデジタル技術を使っていて、やはり機械と協業していくことになる。あるいはその前提としてDXとかデジタルによって、まさにこれまでの旧来型の管理職であったり事務職でも、ある程度頭脳労働でも、ルーティン化したような頭脳労働というのはどんどん機械化されていくわけですから、そういう背景も含めながら、求められる人材像というのはもうちょっと具体的にこのように変わっていくということを書いたほうが、読んだほうが切迫感が出てくるのではないかというところです。
 それと、6ページの雇用管理のところで、最初、人事制度の話が出てくるのですけれども、これは冨山委員のお話からすると、ここはあまり意味ないというか、むしろどうやって既存の枠組みの外で活躍する人を増やしていくか、という話になるのかもしれません。そうはいうもの、多くの人はここで働いているし、現実問題としてはしばらくここで価値を生み続けないと日本社会が壊れるということで、やはり現実にはすごく大事なところだと思うのです。冨山委員はあえておっしゃっているとは思うのですけれども、やはり、企業に対して、全体の人事の仕組みというのを、やはりどういう考えでどう変えていかないと駄目なのかという、具体論とか、個別論は書かれているのですけれども、総論というか全体の考え方みたいなものを整理して最初に提起する必要があるのではないかなと。
 例えば、これはよく言われているように、前半で書かれているのですけれども、技術とか市場の変化、どんどん加速しているので、どんどん事業とか仕事の内容というのは変わっていくわけです。どんどん変化していくと。その中で働くほうも、経営者が全てどういう仕事がよくてどういうビジネスがいいかと100%正解を持っていないわけですから、やはり働いている人たちが主体的に考えていって、主体的にキャリアをつくり、仕事をつくっていくような人材が必要になっている。
 その中で、大きく、そういう人材を、従来のような同質性を重視し集団行動でやってきたような人材マネジメントから、多様性をもっと尊重し、個々の創意工夫を誘発するような新しい人材マネジメントに展開していかないと駄目だという、何かそういう全体的な、基本的な考え方を明確に書いたほうがいいのではないかなという印象です。
 それから、ジョブ型人事も、先ほどからも議論があったように、本来のジョブは、実は欧米のブルーの人たちから出てきた概念ですよね。だから、ここでの文脈では、まさにそれは、先ほど佐々木委員がおっしゃったように、本当は「プロ」と言ったほうがいいかなと思うのです。
 ただ、ジョブという言い方が一般的になっているので、大事なのは、仕事に対して、日企業というのは人事権が非常に強く持っているわけです。これに対して、意識の高い人たち、特に若い人たちを中心に変わっているわけです。人事権によって、企業によって勝手に移動させられるということは耐えられないわけですね。
 だから、本人サイド、個人サイドにジョブなり職務の選択権を与えていく。だからそういう形でまさに変化が起こっているわけです。採用にしても、トップ層のというか、優秀な学生さんというのは、従来型のマネジメントをやっていると日本企業に来てくれなくて全部外資系に流れると。それは、外資系は自分で仕事を選べるからということですから、多分そこの人事権の問題、ここは企業サイドからだと微妙な側面もあるとは思うのですけれども、ただ、そこの意識は、前のほうの意識の変化というところに書き込むことになるのかもしれません。
 ただ、企業人事は、実際、今起こっているところというのは、例えば、いわゆるジョブ型を入れているところというのは手挙げ式を増やしたり、あと、いわゆるジョブ型採用ということで、まずは希望を聞くという変化が起こっているということで、そこはこちらのほうで書かれていることだと思うのですけれども、ジョブという言葉自体が、前にも守島先生もおっしゃったと思うのですけれども、ジョブということに対しての世の中の混乱があるので、少なくとも厚労省が出すものなので、少し整理をしていって、ここは少し丁寧にもうちょっと書き込んだほういいのではないかなと思います。
 それと、全体では外部労働市場を強化していくというのは、恐らく政策的な大きなテーマということになっていくと思うのです。その必要性を言うためにも、実は、まさに日本の大手企業の人材マネジメントというのは、ジョブ型と言いながら日本というのはジョブ型の雇用というのができないのです。それは、いわゆる解雇権の問題もあれば、それから、実は、欧米のジョブ型雇用というのは、雇用をジョブに限定しますから、その仕事がなくなると自動的に雇用契約は解除ということになりますから。ただ、逆に言うと、そういうジョブ型で採用するということは、その人がその能力を持っているということが前提になるわけです。それは欧米の場合は、教育段階でそれが身につくようになっているのです。インターンが長いとか、現場の人たちというのは、デュアルシステムみたいなものがあるわけです。ただ、そこの教育が、日本はそういうシステムになっていないのでやりようがないというのが現実だと。
 だから、中長期的にそこも考えていかないと駄目な話というか、まさにそういう議論が今進んでいるわけですけれども、だから、そこの制約の部分を、日本というのは、結局、外部労働市場の機能が不十分であるがゆえに、今、大手企業で入りつつあるジョブ型人事というのは、実はここに書かれているように欧米のものとは違うと。それはなぜかというと、外部労働市場の制約があるからであって、将来的に見たときに、外部労働市場ももっと強化していくことが政策的に重要である。もちろん、企業によってビジネスによって、いわゆるメンバーシップ型のほうがいいというのは実際あると思います。ただ、大事なのは、その選択肢を増やしていくということなので、そういう意味で、現在のジョブ型人事というのは、実は欧米型のものとは違っていて、それはそういう制約があるからだと。ただ、今後の動向を考えると、その企業のあるいは個人の選択肢を増やしていくために外部労働市場を強化していかないと駄目だということで、最後のほうに外部労働市場の具体策というのが既に幾つか書かれているのですけれども、ここをもうちょっと補強しながら書かれるといいのではないかなと、そんな印象を持ちました。
 勝手なことを言いましたけれども、以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 では、山川委員、お願いいたします。
○山川委員 皆さんから出た後ではほとんどかぶってしまうのですけれども、1つは、冨山委員の外部労働市場の話で、それを個別の論点に落とし込むというか、要は解雇の話です。「企業ができない」という言い方をするのか、「企業に押しつけ過ぎ」という言い方をするのかどうかというところはあると思うのですけれども、企業はいろいろな人を労働者として参加させなさいと。また、賃金もアップしなさい、リスキリングもしなくてはいけない、労働者の自律性を高めるために配置転換権も抑制的に使わなくてはいけない。でも、一旦雇ったら絶対首にできませんよなんて、これはもう不可能です。もちろん解雇の規制をどのようにするかについてはいろいろな議論もあるし、私も、しつこいようですけれども、必ずしも、これは別に労働者のためにならないと思っていなくて、今の解雇規制だと首になったら2~3年裁判して、自分を首にした会社に戻ってバックペイしか法律上要求できないというのも、どう考えてもおかしくて、今日、ちらちらと話しているだけでも、解雇のことを私ほどはっきり言わないにしても、何人かの委員は問題に思っているのに、それがちゃんとした●として入っていないのは、少なくとも検討課題としては、脚注ではなくて上に残さないと、すごく違和感はあります。
 普通の、一般に雑誌とかを読んでいても「解雇規制が問題」と言っている記事がある中で、この委員会で●として載っていないのはどうかなと思いました。
 それから、集団的労使関係については、私も勉強不足で、何かすごいことが言えるわけではないのだけれども、集団的労使関係が非常に重要であることは間違いなくて、この場で申し上げにくいのだけれども、でも、労働組合の組織率がすごく下がっている、それが今後上がっていくとも思えないという中で、新しい労使対話、集団的の労使対応のプラットフォームというものを検討しなくていいのかというのは、従前から少し疑問に私は思っています。
 それから、労働者性の見直しというのも、当然、私は法律家なので法律の感じからいって当然重要なのだけれども、結局こんなに多様な労働者がいる中で、労働者の定義が1つというのは多分無理だから、やはりいろいろな労働者に対応した、個別の法律になるのか分からないけれども、対応が必要なのかなと思います。
 それから、最後に、佐々木委員がおっしゃっていたことにちょっと感動したのですけれども、私はこれを読んで、いろいろなことがすごくきれいにまとまっていてすばらしいなと思った一方で、申し訳ないのだけれども、第一印象としては、何かすごくふわっとしていて毒にも薬にもないようなものが出てきたなと思った。
 多分、佐々木委員がおっしゃっているところで、あまりにもいろいろなことを網羅してカバーしてくれた結果、何が言いたいのかよく分からないから、やはりエグゼクティブサマリーみたいに何かぽんぽんぽんみたいなのがあったほうが、何かよく分からないけれども、ふわっとしているなという印象は拭えるのかなと思いました。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
 ほかに、セカンドラウンドでも構わないので御意見はございますでしょうか。
 冨山委員、気がつかなくてごめんなさい。
○冨山委員 チャットに書きました。
 だから、1つは、先ほどの春川さん意見、私もそこは全く同感で、ただ、一方で外部労働市場が活性化しないと会社は頑張らないのですね。辞めていかれないので。やはり外部労働市場を活性化すると。漫然とやっていると優秀な人材はどんどん辞めてしまうので。これは一部のグローバルジャパニーズトラディショナルカンパニーで既に始まっていることなのですけれども、そうすると、それが起きると真面目に定着してもらうように頑張るのです。人間はそういうものなので。
 だから、日本企業は、例えばMBAの学生、MBAを取って辞めちゃうといって日本の会社はMBA派遣をやめてしまったのです。そうなのだけれども、それは逆で、そんなことをやっているからどんどん人材がいなくなって、知的生産性が下がったわけだから、そういった意味で言うと、先ほどの話というのは、外部労働市場の活性化という問題と定着頑張るというのは、多分同じ行為と思っているように、私は伺っていて思いました。
 先ほどの解雇規制のやり方、私もいわゆる解雇規制緩和派ではなくて、むしろ山川さんが言われたところの脈絡で言うと、もし、その会社にずっといるということと、転職に関して中立的な解雇規制にするのであれば、私は金銭救済を認めるべきだと思います。だってひどい目に遭っているわけでしょう。不当解雇されるようなひどい目に遭って、なおかつその会社にいるのか、それとも、こんなくそ会社は辞めるというのと、中立的だとすれば、それは選択的に金銭救済を認めるべきです。要は、労働者の選択権として認めればいい。そうすると、金銭解雇だと言うのだけどでも、現状、少なくとも欧州などで認めている金銭救済の相場感がありますよね。これは、私はこの状況はよく知っているので、日本の現実に起きているような不当解雇、これは本当は不当解雇なのだろうみたいな解雇事案を見ていると、労働審判の解決金にしても、やはり全然安いですよ。あと、特に中堅中小企業の場合、実際に訴訟に訴えられる人は限られているので、ほとんど泣き寝入りしているのです。そのことを考えたら、むしろ金銭救済を権利として選択権を認めてあげたほうが、私は労働者が守られていると思います。
 だから、その議論というのは、下にちょろちょろと注に書いてあるけれども、この議論はそろそろいい加減やったほうがいいと。外部労働場市場と内部労働市場を中立化しようと大きな議論として言っているわけでしょう。だから、中立化の1つの象徴なのですよね。金銭救済権、救済を求める権利を労働者に与えるというのはすごく大事で、恐らく、本質的な意味で言ってしまうと、いわゆる経団連さんとか連合さんで反対する理由はなくて、これは実は私の理解で、オフレコモードで言ってしまうと、中小企業が反対するのです。この議論は。それは何で反対するかというと、従来、ある種解雇天国だからなのですよ。そうなのだけれども、そういう状況まで認めてあげて中小企業を守る意味はないです。
 というのは、今、日本は労働力が足りない国になっているのだから、そういった会社からはどんどん労働者が移動していって、もっとちゃんとホワイトにやっている会社に移ってくれればいいのですよ。
 だから、それを促すということ考えたら、かつ、そうすれば当然、会社の側は、紛争が起きたときのために引当をするでしょう。その引当を積めるような会社が生き残ればいいのであって、そうではない、それもできない会社が今の日本で残る必要ないのですよ。労働力が足りないのだから。僕はそう思っています。
 それから、あと、先ほどのジョブ型の議論で言うと、これもある種の現実論を言ってしまうと、実は新卒一括採用で、40歳ぐらいまでおおむね年功制でやるという人事制度は、人事部はすごく楽なのです。めちゃ楽なの。実はこれは管理職も楽なのです。はっきり言って適当にやっておけばいいから。だけれども、現状というのは40歳ぐらいまでをどう過ごすかということが、すごくその人のキャリアで大事なのです。40を過ぎてしまうとなかなか人間は成長しないので。
 そういった意味で言ってしまうと、これは残念ながら、外資を含めて欧米企業のほうがちゃんとやっています。要は、個々人の多様性とか個性とか能力を、かなり高い解像度で測定して評価して、キャリアパスをどうするかということを欧米企業のほうがフィードバックをかけるのです。というのは、ある種評価が厳しいので。出す結果が。
 これをちゃんとやっておかないと、多分、山田さんとかは御存じでしょうけれども、これは相当ちゃんとやっていないと、アメリカとかだとこれはすぐ訴訟になってしまうのです。はっきり言ってここは日本は緩いです。物すごく緩いです。
 なので、そういう意味で言ってしまうと、これは結局、何でこの仕組みに移行できないかというと、私の理解も、実際の現実ですよ。やはり、日本の企業の人事部と中間管理職の側に、これが今できないのです。ノットレディーなのです。ノットレディーなので、曖昧なやり方でやりたい。結果的に、見かけ、差はつかないのだけれども、それは本当にすごく能力があっていい仕事している人からしたら、これは逆差別になってしまうのです。そうすると、当然のことながら、外資とかベンチャーがそこを狙いにいくわけです。そういう人を取ろうということで。どんどん取られているというのが今の現実なので、ここは本当にハイレゾリューションにしていかないと駄目で、そうすると、結果的に、それ法律的にジョブ型と言うかはともかくとして、やはりジョブの定義が、少なくとも、例えばこの1年間この人がやる業務について、ある程度ジョブの定義がされて、ジョブのグレードがあって、それに対して何を期待するかということはかなりハイレゾリューションではっきりしていないと、やはりこういうことできないのですよ。
 大体、日本の企業で多いのは、何か漫然と「彼は優秀だから」という言い方をするのです。そういう言い方をするときが多いでしょう。これははっきり言って駄目ですよ。そんなことやっているから外資系とかうちみたいな会社にどんどん人を抜かれるので、だから、これも結局、冒頭の春川さんの話と脈絡がつながるのです。定着率を上げようと思ったらまずこれなのです。まずこれをちゃんとやらないと定着しないので、ここは私も日本の大企業の役員とかもやっているので、ここはかなり声を強くしていったような気がしました。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 岡本委員、お願いいたします。
○岡本委員 ありがとうございます。
 解雇の金銭解決制度についてのご発言が幾つかが出ていました。私は労働審判の委員も務めておりまして、審判や調停の解決金額が低いこともよく分かるのですが、労働審判のプロセスそのものが非常に重要です。労働審判は中小企業、零細企業のケースが多いですから、安易な解雇がなぜ許されないのかということ自体の理解が全く不十分な経営者がたくさんいるのです。どこが問題だったのかということも分かっていない。そのような方たちに、労働審判の委員がいろいろとお話をさせていただくことで納得いただけることも多くありますし、今後は不当解雇などをするのはやめようとなることも多くあるのです。金銭解決のように、あまり一律に線で区切るようなことは相応しくないのではないかと思っているところです。
 もともと基本部会は、個別の審議会への提言や大きな方向性を示していく役割があると思っております。9ページの注釈にあるように、既に労働条件分科会で金銭救済制度について議論をしているようですから、これまでこの件についてあまり発言をしてこなかったのです。
 この部会の報告のとりまとめが近づいた段階で、この議論を改めて行っていくということにもならないでしょうし、私は、現在の整理でいいのではないかと思います。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 冨山さん、どうぞ。
○冨山委員 先ほどの岡本さんの話で。
 もちろん、労働裁判みたいな、これは一種の形成訴訟ですよね。特に金銭解決とかは。これは離婚調停などと同じで、調停前置主義が基本なので、基本的な流れは労働審判をやって、それで解決しなかったら金銭救済を求める訴訟になるという流れになると思います。
 これは制度設計の問題なので、部会でやっているのであれば、ちゃんと議論をしてもらったらいいと思うのですけれど、その流れでちゃんと制度が整備されれば、私は、労働審判の解決金とかも上がると思うのですよ。あと、労働審判のときの労働者側の交渉力も上がると思うので、ここは私も直接議論に関わっていないのですけれども、あの議論はちょっと時間がかかっているので、そこは岡本さんのほうからも議論を急ぐようにと。
 くどいですけれども、これは、要は金銭救済の裁判制度と労働審判というのは全然相互排他的ではなくて、基本、こういう裁判というのは調停前置主義ですから、そういった仕組みでやっていくと、恐らく岡本さんのお仕事もやりやすくなるのではないかと私は思っておりますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 では、私の感想を言わせていただきたいのですが、ここでずっと議論されていることというのは、英語になってしまって申し訳ないですけれども、Power to the peopleへの移行なのだと思うのです。働く人たちの力をどうやって上げていくのか。たとえば、外部労働市場をちゃんと活性化することで、自分たちのキャリアをつくっていくということを可能にする。その結果として、先ほどから議論されているように、企業が人事の在り方を改革していって、人事も強くなっていくということもあるだろうし、あと、解雇規制の問題もそうです。今までの日本の労働政策の基本的な思想というのは、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれどもSafety to the peopleだったと思うのです。働く人たちにどうやって安全・安心を与えていくか、それが、ある意味では限界にきていて、最初のほうでいろいろ議論されているような経済環境の変化とか、そういう中で限界にきていて、結果として、Power to the peopleにもうちょっと移っていかないといけない。もしくは、その方向に舵を切っていかないといけない。
 ただ、難しいのは、Safety to the peopleとPower to the peopleというのは完全に対立概念かというとそうでもなくて、時間をかけてどうやってバランスをさせて、うまい均衡をどうつくっていくかという話だと思うのです。ですから、完全に外部労働市場を開放して、解雇規制を撤廃してやればうまくいくという話でもないし、同時に、Safetyだけをやっていればうまくいくという話でもないので、そういうような労働政策の大きな考え方の一種の転換期にあるのかなというようなことを伺っていて思いました。
 ちなみに、今までやってきたSafety to the peopleという考え方に基づく労働政策の下で起こってきた悪いこともあるでしょう。例えば、先ほど冨山さんがおっしゃったような、人事部とか中間管理職が何もしなくても、結果的に人材が囲い込まれた形でマネジメントされているという状態があるので、それですんでしまうとか、あとは解雇規制であるとすれば、ある意味では、解雇された人たちがそれに対して、それ相応のジャスティスが成立しないというようなこともあります。そうしたことすべてが、もうちょっとPower to the peopleみたいな考え方をもっともっと労働政策の中に入れていかないといけない時代にだんだんしてきたのだろうなと私は思っています。
 また先ほどから議論されているジョブ型ということですけれども、プラスの意見もマイナスの意見もあると思うのですが、ごめんなさい、ここまでできてしまっていて非常に申し訳ないのですが、ジョブ型というフレームワークがいいのかどうかという問題は考えたほうがいいかなと思うのです。
 先ほどから冨山さんとかほかの方も言われているように、実際にトップクラスの人材についてはジョブ型になっているし、あと、もう一つ、ジョブ型になっているグループという意味で言うと、非正規の人たちというのも、実質的にはジョブ型になっている。ただ、非正規労働者のジョブ型の大きな問題点というのは、自分がキャリアアップして、能力アップをして、新しい仕事に移って賃金を改善していくというようなオポチュニティーがほとんどない中でジョブ型に置かれてしまっているので、逆に言うとジョブ型のすごく悪い面が出ている、そういう世界のように私は思っています。
 ですから、ジョブ型といっても、トップクラスの人たちにとってはものすごくいい状況になっていて、どんどん新たなオポチュニティーに移っていけるようになっている。でも、非正規の人たちにとっては、ある意味では自分のミゼラブルな働き方から全然出られないような状態になっているということです。ジョブ型というのは本質的にプラスの面とマイナスの面のある話なので、それを新しい働き方という形で言うことは、例えばコンサルタントなどはもちろん推進したいと言うと思いますけれども、それが本当にいいことなのかと、私は考えたほうがよいと思います。それよりも、もっと内実を見る必要がある。
例えば、先ほど、これも冨山さんが言われていたマルチタスクというのは、ジョブ型にしないとできないわけです。タスクを明確にしないと、その複数形は確定できない。当然ですけれども、曖昧な形でこれをやっておいてよという形で仕事をアサインして、大きなジョブというか、大きな課題を投げてしまうと、その中で何がマルチなのかわかりにくくなる。そういう意味では、マルチタスクみたいなものを進めていきたい企業、そういう事例も今回のヒアリング中にありましたけれども、そういうようなことをやっていきたい企業にとっては、逆に言うとジョブ型を入れないとできないということです。言い換えると、ジョブ型を入れるというよりは、課題というか役割を明確化しないとできないということはあると思うのです。
 プラスの面とマイナスの面のあるものを、ごめんなさい、本当にここまでできてしまって非常に申し訳ないのですが、表に出すということがいいことなのかというのは、やはり考えたほうがいいかなと思いました。
 いずれにしても、この報告書の時間的スパンをどこまで取るかということにもよるのですが、やはり労働政策みたいなものがSafety to the peopleという考え方だけではなくて、Power to the peopleみたいな話にだんだん変わっていかないといけないのだという大きなコンテクストの中で、今回の細かい議論、具体的な議論というのはされているように何となく感じました。
 ですから、先ほど山田さんから、総論があったほうがいいというお話があって、私も気がついていなかったのですけれども、そのとおりだと思います。
 先ほど申し上げたように、時間軸の問題と関係するので、なかなか決めにくいところもあるのですが、そのような大きな流れの中での今回の動きなのだというような捉え方もあるのかなとは思いました。
 以上です。
 事務局から何かありますか。
○蒔苗政策統括官付参事官 事務局の蒔苗でございます。
 いろいろ建設的なインパクトのある御発言が多く、我々として今日の御意見を議事録できちんと発言をかみしめながら、あと、今日欠席の方もいらっしゃいますので、今日の議論を我々で整理しつつやっていきたいと思います。
 あとは政策的な内容は、これから今日の意見も踏まえて整理させていただきますし、構成的なところも、公表時のアウトプットをいかに読み手に分かってもらうかという点も、エグゼクティブサマリーの部分も含めて検討していきたいと思ってございます。
 今日はどうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございました。
 まだちょっと時間もありますので、ほかに御発言なさりたい方があったら受けたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 山川委員。
○山川委員 今のだったら、例えば副題を「Power to the people」にしてしまうとか、何かキャッチーな副題をつけてしまうとか。
○守島部会長 それは私も考えたのですけれども、逆に分かりにくくなるのではないかという心配はあるのです。
○山川委員 少なくとも「おや」とは思います。読んでみようと思いますよね。
○守島部会長 「おや」と読んでみようという気にはなるかもしれませんね。ありがとうございます。
 ほかにどなたか。
 大丈夫ですか。
 ありがとうございました。それでは、今日の労働政策審議会はこれで終わりにさせていただきたいと思います。皆様方、活発な御議論をありがとうございました。また、お忙しい中お集まりいただいて、どうもありがとうございました。
 最後に、事務局から次回日程について周知をお願いしたいと思います。
○蒔苗政策統括官付参事官 事務局の蒔苗でございます。
 次回につきまして、今ほどの山川先生からありました副題の件も含めていろいろ考えまして、必要な調整等もございますので、調整した上で報告書の案を作成しまして、欠席の方を含めて再度御意見を伺いながら、次回は最終回ですので、これまでプレゼンいただいた資料等もございますので、参考資料も用意しながら完成版として御議論いただければと思ってございます。日程につきましては、改めてまた事務局より御連絡申し上げます。よろしくお願いします。
○守島部会長 それでは、本日の労働政策基本部会はこれで終わりにさせていただきたいと思います。皆様方、活発な御議論をどうもありがとうございました。