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第33回労働政策審議会労働政策基本部会 議事録
政策統括官付政策統括室
日時
令和6年9月5日(木)10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第21会議室(17階)
出席者
- 委員(五十音順)
- 石﨑委員、逢見委員、佐々木かをり委員、佐々木勝委員、春川委員、守島部会長、山川委員
- 事務局
- 田中厚生労働審議官、朝川政策統括官(総合政策担当)、河野政策立案総括審議官、中井賃金政策推進室長、宇野政策統括官付参事官、山田雇用環境・均等局総務課長、菱谷雇用環境・均等局職業生活両立課長、倉吉雇用環境・均等局総務課企画官、吉田職業安定局雇用政策課長、武田職業安定局高年齢雇用対策課長、横田人材開発統括官付政策企画室室長、澁谷労働基準局労働条件政策課長
議題
- (1)委員及び企業ヒアリング
- (2)その他
議事
- 議事内容
- ○守島部会長 皆様方、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第33回「労働政策審議会労働政策基本部会」を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席をいただきどうもありがとうございます。
本日は、所用により、石原委員、入山委員、大橋委員、岡本委員、川﨑委員、武田委員、冨山委員、山田委員が御欠席でございます。
また、所用のため、佐々木かをり委員は、途中での御入室、途中での御退室と伺っております。
それでは、議事に入ります前に、オンラインの開催に関しまして、事務局から御説明があります。よろしくお願いいたします。
○宇野政策統括官付参事官 オンラインでの開催に関して、留意事項を説明いたします。
まず原則として、カメラはオン、マイクはミュートとしてください。
委員の皆様は、御発言の際に参加者パネルの御自身のお名前の横にある挙手ボタンを押して、部会長から指名があるまでお待ちください。
部会長から指名後、マイクのミュートを解除して御発言ください。
発言終了後は、マイクをミュートに戻し、再度挙手ボタンを押して挙手の状態を解除してください。
通信の状態などにより音声での発言が難しい場合には、チャットで発言内容をお送りください。
また、会議の最中に音声等のトラブルがございましたら、チャット機能でお知らせいただくか、事前に事務局からお送りしている電話番号まで御連絡ください。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず本日の進め方について御説明差し上げます。
初めに「女性の就業・活躍の推進と労働法」というテーマで、石﨑委員に御発表いただきます。
それから「65歳以上の人材活用、中高年へのリスキリング」というタイトルで、株式会社ハマヤの若井様に御説明をいただきます。
プレゼンに関する質疑応答と自由討議につきましては、お二人のプレゼンが両方とも終了した後にまとめて行いたいと思います。
それでは、早速ですけれども、石﨑委員、よろしくお願いいたします。
○石﨑委員 ありがとうございます。
横浜国立大学の石﨑と申します。専門は労働法でございます。
本日は「女性の就業・活躍の推進と労働法」というテーマで御報告をさせていただきますけれども、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
女性の就業・活躍の推進というところで申しますと、労働法に限らず、今、社会保障法の年収の壁ですとか、そういった課題も指摘されているところかとは存じますが、私自身の専門が労働法であるということ、また、こちらの労働政策基本部会の性格から、特に労働法に関わる課題に絞ってお話をさせていただければと思っております。
初めに現状認識でございます。
こちらは御存じの方も多いと思いますので、簡単にというところでございますけれども、女性の就業率は上昇しており、また、M字型カーブについては徐々に台形型に近づいているというデータが出ておりますが、しかし、なおM字の部分は残っているところでありまして、離職者数の中でも一定割合が出産・育児、介護などのケアへの従事を理由として離職しているという状況がございます。
また、そうした形で就業を継続するとしましても、短時間雇用者に占める女性の割合が高く、正規雇用率という意味では、L字型カーブを描いている状況がございます。
さらに国際的に見れば、男女賃金格差はなお大きく、女性管理職が少ないといった課題も指摘されているところです。
近年、経済産業省などで健康経営の推進等が行われているところかと存じますが、女性特有の月経随伴症状による労働損失というのは3.4兆円ですとか、いろんな試算がございますけれども、かなりの額に上るといったデータも出ているところでありまして、反面、そういった女性の健康課題に対する認識というのは、必ずしも高くないということも指摘がされているところであります。
女性の就業・活躍の推進といったところに関連する法制度につきましては、まずは男女雇用機会均等法が挙げられるところでありまして、1985年の制定当初は多くの規定を努力義務という、ソフトな規制という形で規定して導入されたものでありますが、その後の社会の変化だったり、その間の行政による指導などを経て、1997年改正でハードロー化していった。さらに2006年改正には女性であることを理由とする差別禁止ではなくて、男女問わず性別を理由とする差別禁止法へと発展していったという経過がございます。
なお、1997年改正でハードロー化する際に、労働基準法に規定されておりました女子保護規定、時間外労働の制限等に係る規定が廃止されておりまして、これは国際的な流れもあり、廃止もされたところであるわけですけれども、ただ、その際には反対の意見も出されていたところではありました。要するにかえって女性にとって働きにくくなるのではないかという趣旨の反対の意見が出されていたところでありましたが、そこは男性側の働き方の見直しによって、今後対応されていくべきであろうという形で、課題として残されていたわけであります。しかし、そこの見直しがこれまで必ずしも十分になされてきたかというと、そうではないというのが、これからお話ししていく報告での問題意識でもございます。
また、後の報告の中でも触れていきますけれども、他方、ワーク・ライフ・バランス立法と呼ばれる育児介護休業法ですとか、そうした次世代法と呼ばれる法律など、そうしたワーク・ライフ・バランスに関わる法制度というのは段階的に整備され、また、拡充しております。
さらに2015年の女性活躍推進法の中では、一定規模以上の事業主に一般事業主行動計画の策定や届出を義務づけ、事業主自らが自分で何をするべきかを考えて、女性の活躍・推進に向けた対応を取っていくということを求めるような立法が導入されているところであります。
また、注目されますのが、要するに自分で考えてPDCAを回していくということに加えて、一定の事項についての情報公表が義務づけられているところでありまして、2022年7月の省令改正で男女の賃金格差が情報開示項目に追加されたというところは、記憶に新しいところかと存じます。
この改正では、301人以上の事業主に義務として課されているところでありますが、今年の8月、直近で出された報告書の中では、さらに事業主の対象拡大なども方向性として示されているところでありまして、そうした情報開示に関わる規制が入っているというところが、ここで一つポイントになります。
やや前置きが長くなりましたけれども、これから報告していく流れとしましては、大きく分けると2点に絞ってお話ししていければと思っております。Ⅰがケアと仕事の両立に係る課題、Ⅱが女性特有の健康問題に係る課題であります。
なお、やや結論先取り的なお話になりますが、Ⅰについては、ケアに従事する人であれば、男性か女性かというのは必ずしも関わりがないところでありまして、先に結論を申し上げるような形になりますが、そういった意味では、男女を問わず、柔軟な働き方が可能となるような仕組みを入れていく、あるいはそれを推進していくことが重要ではないかというお話をこれからしていきたいと思っているところであります。
この問題は、この中の目次でも入れておりますように、労働時間の制度にも深く関わるところであります。実は労働時間制度の在り方については、現在、厚生労働省の労働基準局で開催されております労働基準関係法制研究会の中でも議論がなされているところでありまして、私自身もその委員を務めさせていただいているところではありますが、今日の御報告では、そこでの議論も一部紹介させていただきつつも、意見として申し上げる部分はあくまでも私見ということで捉えていただければと思うところであります。
それでは、本題に入っていきたいと思いますが、まず簡単に労働時間制度について確認しておきたいと思います。
現行の労働時間制度、法定労働時間は1日8時間、週40時間という形で規定がありますが、過半数代表との36協定を締結することによって、時間外労働が可能という仕組みを取っております。
その中で、時間外労働に対する上限も設定できていたわけですが、その上限に係る規制が働き方改革関連法の制定によって入ったというところでありまして、特に中小企業との関係では、令和2年4月にこの上限規制が施行されている状況であります。
また、時間外労働に対しては、割増賃金の規制もございまして、こちらも中小企業との関係でいきますと、月60時間を超える部分についてはより高い割増率が設定されておりますけれども、その部分に関する施行が令和5年4月になっているというのが状況であります。
今、御紹介したのが基本的な労働時間の制度であるとしますと、それに対する例外の仕組みもございまして、そのうちの一つが労働時間の弾力的な配分を可能とする変形労働時間制やフレックスタイム制というものであります。
フレックスタイム制は、始業・終業時間を労働者が選べるということで、柔軟な働き方という側面がありますが、他方で、1日8時間を多少超えていたとしても、一定の生産期間の中で帳尻が合えば、それは時間外労働として扱わないという効果が生じるという、そういう意味での弾力的な配分を可能とする仕組みであります。
もう一つが労働時間の算定みなしと呼ばれる制度でありまして、労働時間の算定に当たって、原則としては実際に働いた労働時間、実労働時間をベースに算定するのですが、こちらのみなし制では、実際に働いた時間かどうかにかかわらず、一定の時間働いたものとしてみなすという、こういう仕組みを取ることが一定の要件下で可能になっているということであります。
このほか、適用除外の規制として、従来からあった労基法41条に基づく規制、働き方改革関連法の制定によって入りました、高度プロフェッショナルに関わる適用除外のルールが存在している状況です。
特に適用除外との関係で実務上も問題になることが多いものとして、管理監督者に対する適用除外というものがございますけれども、適用除外の管理監督者と高度プロフェッショナル、あるいはみなし線の裁量労働制の適用を受ける労働者の間では、次のような違いがあるということが指摘されているところであります。
すなわち、高度プロフェッショナルですとか、あるいは裁量労働みなし制を導入するに当たっては、労使協定の締結、あるいは労使委員会の決議といった一定の手続が必要になってきており、また、適用を受ける労働者本人の同意も必要とされているところであります。
加えて、それを運用するに当たっては、健康福祉確保措置ですとか、苦情処理措置などを整備することが必要とされていたり、さらに高度プロフェッショナルに関しましては、選択的措置をプラスアルファで講じることが必要であるといったような規制が入っているところであります。
高度プロフェッショナルの選択的措置自体、これで十分かという議論はもちろんあるわけですが、管理監督者についてはこうした手続的規制であったり、労働者の健康確保のための規制というのが労基法の中では少なくとも入っていないという現状があります。実際、労働時間の把握に関しては、健康管理の観点からの労働時間把握というのは、ここで挙げている労働安全衛生法という法律に基づいて求められ、長時間働いている場合には面接・指導の措置等を取る必要があるということにはなるわけですけれども、ほかの類型と比べると、健康確保という点で薄いといった課題があるところであります。
ここで言う管理監督者というのは、いわゆる管理職よりはより狭い範囲の方々を想定するものではありますけれども、労働時間規制もそのまま適用されない中で、要するに負担が管理監督者に偏ってしまうおそれがどうしても強くあるのではないかというところが、問題として言えるのではないかということであります。
特に、現状、女性管理職が少ない、あるいは若い方の中に管理職になりたくないということがあるわけですけれども、こうした管理監督者を全く適用の除外においていいのか、管理監督者に対しても健康確保であったり、あるいは労働時間の解放に係るルールを別の形で入れていくことができないのかというのが、今後課題となっていくように思うところであります。
今、労働時間の解放ということも申し上げましたけれども、労働時間制度の中で労働時間の解放に係るルールとしましては、年次有給休暇の制度があり、また、こちらの制度については、時間単位の年休という仕組みも存在しているところであります。ただ、時間単位年休の導入に当たっては、労使協定の締結が必要でありますので、締結がされていないと、時間単位の年休は使えないということになります。
また、勤務間インターバルについては、労働時間等設定改善法という法律の中での努力義務という形で現在は位置づけられているところでありますが、この努力義務をもう少し義務化していったり、より普及を図るべきではないかということも、課題として存在するところになります。
このほか、労働時間に関係する制度としまして、労働基準法の中では、妊産婦については、軽易業務への転換を認めていたり、時間外労働の制限に係る特別のルールを置いていたりしますし、育児、介護に従事している方についても、いわゆる時短の仕組みであったり、そうした時間外の制限の仕組みを置いている。
さらにガイドラインレベルではありますが、労働時間等設定改善法の中で、一定の属性を持つ労働者に対する配慮の規定が置かれているところであります。
育児介護休業法につきましての展開は、こちらを御参照いただければ分かるとおり、徐々に拡充しておりまして、直近の改正でもテレワーク努力義務などが入ったりしているところかと思います。
さらに先ほど御紹介した女性活躍推進法や次世代法の中でも、労働時間に関わるルールが一部あるところでして、次のスライドに移りますけれども、こうした残業時間等の情報開示というのが一定の企業に対して求められているところであります。ただ、これらの事項というのは、全ての企業にとって一律に開示しなければいけない項目ではなくて、複数の項目の中からこれを選択しなければならないということになっていたり、あるいはプラチナくるみん認定企業という形で、一定の企業に絞って開示義務がかかっているところがございます。
これらの情報開示に関わる仕組みというのは、ある種労働市場における評価を利用することによって、より望ましい方向へ誘導していくアプローチと言えるところでありますけれども、そういった意味で労働時間に関わる情報開示が十分かというところに関しては、なお課題があるところかと存じます。
このほか、柔軟な働き方の導入に関しましては、中小企業を対象として各種の助成金がある状況です。
以上をまとめますと、法定労働時間の原則と例外としての時間外労働というところがあり、そうした時間外労働に対する制限というのは、上限規制が入っているわけですが、なおこれで十分なのかというところが一つ課題として挙げられるところであります。
また、妊産婦や育児、介護を担う労働者に対する特別対応やその拡充が見られるところではあるのですけれども、そうした特別な労働者に対する特別な対応ということで、それでよいのかというのも一つ課題です。
それから、繰り返しになりますが、そうした情報開示や認定制度を利用したレピュテーションによる政策誘導を取られているところですが、情報開示の在り方として十分なのかというところは、なお検討の余地があるのではないかというところであります。
改めてこうして考えたときに、基本的な労働時間法制が想定する労働者をどのような労働者として想定するのか。要するに何時間でもばりばり働けるようなイメージの労働者を想定するのか、それとも家庭でケアとか、そういったものを担っている労働者を前提に、それを原則として組み立てていくのか。そういったところが実は大きな課題になると思っております。私自身の個人的な考え方としましては、法定労働時間、1日8時間という時間についても、将来的にはさらなる短縮も検討してよいのではないかと思っているところでありますけれども、こうした労働者像をどう描いていくのかというのは、法制度の方向性を考えるに当たって一つの大きなポイントになっていくと思っているところであります。
現状を見ますと、なかなか柔軟な制度が入っていないというところがあるのですが、少し諸外国に目を向けますと、イギリスではフレキシブル・ワーキング申請権というものがございまして、これももともとはケア労働の担い手にのみ認められていた権利なのですが、2014年の改正によって全ての労働者がこうした柔軟な働き方を申請することが可能になる仕組みが入っております。
ただ、もちろんこれは申請すれば直ちに認められるものではなくて、直近の改正では協議の手続というのが入ったりしているのですが、協議した上で合理的な理由があれば、使用者は拒否できるという形で、そういった柔軟な働き方の可能性を探る仕組みが導入されているところです。
また、ドイツも従来からそうしたケア労働に従事する労働者の時短請求権は認められていましたし、あるいはフルタイムの者がパートタイムに変わるということも認められていたわけですけれども、パートタイムに一度戻った後、フルタイムに戻ることができないということが課題として認識されるようになりまして、2018年改正で、特に事由を問わずに時短で働く権利とそこからその一定期間経過後に戻る権利というのが新たに規定されているところです。
ただ、ここでも重要なのはやはり協議でありまして、そうした協議を経た上で認められる場合は認めていく、難しい一定の理由がある場合には拒否できるという仕組みとなっております。
なお、ドイツでは、中小企業については特則を置いていまして、一定規模以下は適用されませんし、一定規模の企業ではこの権利を利用できる従業員の数に制限を置いている状況であります。
すみません、ちょっと時間が押してきているかと思いますが、続きまして、テレワークについてです。
テレワークも多様な人材の確保という観点から、コロナ禍以前から推進が図られてきていたものかと思いますが、現状では、テレワークを入れるかどうかというのは、基本的には契約あるいは企業サイドで決定する事項とされているかと思います。
ただ、テレワークガイドラインの中では、一般に難しいと思う場合でも業務の在り方を見直したりすることによって、できる場合もあるということが示唆されていたりするところであります。
このあたり、現状は育介法の中で努力義務であったり、選択的な措置の一つとして入れることによって推進が図られているところですが、さらに広く推進を図っていく必要がないかというところは一つ課題になるところかと思います。
また、その際、テレワークに関しては、ガイドライン中でも言われているように、あらかじめ労使で話し合うということが重要であるということも強調されているところでして、そうした仕組みをどう取り入れていくか、進めていくかというのも重要なポイントになります。
さて、こういった形で、柔軟な働き方を進めていくというところが重要になってくるかと思うのですが、しかし、それを利用したとしても、その結果、そこでキャリアが途絶えてしまうとか、そういうことになってしまうと、女性であれば、そういった活躍にはつながらないという課題があるわけです。
これに対する対応として、均等法や育児介護休業法では、不利益取扱い禁止の規定ですとか、ハラスメントの禁止といったものを置いておりますけれども、そのあたりをどう進めていくのかというところとの関係でいきますと、実はそうした不利益取扱いの禁止やハラスメントに対応する対策を取っていくということに加えて、こちらにも書かせていただいていますが、研修の実施だったり、必要な配慮を行っていく、職場環境自体を見直していくことも重要なのではないかと思われるところであります。実は均等法や育介法の中では、男女雇用推進者や職業家庭両立推進者の選任の努力義務規定などもありますが、こうした規定を生かしていくということも一つあり得るのではないかと思われるところであります。
不利益取扱いの禁止と申しましても、休んだことについて、その部分に対応する賃金が払われないとか、その限りではもちろん不利益取扱いの禁止に当たらないわけですが、しばしば問題になるものとして、育休復帰後、あるいは妊娠中、軽い仕事に就いている中で、役職を降ろすこと、降格が不利益取扱いに当たるのかどうかというのが実務上問題になるところであります。
詳細は省略させていただきますが、それが問題となった最高裁判決におきましては、軽易業務への転換を契機として降格させる措置は、原則として禁止される取扱いに当たるとしながら、自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由があるときには、不利益取扱いに当たらないという枠組みを示したところであります。
この枠組みについては、学説上、理論的な課題なども指摘されているところではありますが、他方で、自由な意思に基づいて承諾したと言うためには、いろんな情報提供、説明等を行った上で納得してもらうことが重要であるという側面がありまして、そうした意味で、労使間の話合いを促す判断枠組みとして、これを評価する考え方も存在しているところであります。
その後、この枠組みは、直近ですと育休後の降格に関わる事件でも採用されているところでありまして、このケースも育休後に復帰したところ、今まで部下を持ってチームリーダーとして活躍されていた方が、電話営業に1人で従事するような形に置かれたというケースにおいて、そうした将来のキャリア形成における影響というところも踏まえて、不利益取扱いに当たるという判断がされておりまして、その際、やはり十分な話合いが行われていないということが、使用者側にとって不利に考慮されたりしているところであります。
最後、女性特有の健康課題に係る課題としましては、まず月経随伴症状に関わる問題があるかと思います。日本の労基法の中では、生理休暇に関する規定も置かれているところではありますけれども、取得率が低いというところがありますし、また、この制度では、主に生理日における就業困難を想定しておりますので、更年期だったり、月経前症候群だったり、そういったものは対象外になっているところであります。
好事例として挙げられているケースの中では、特別休暇としてエフ休だったり、ライフサポート休暇などを入れている例も見られるところでありますけれども、こうした制度の導入をいかに促していくか、あるいは生理休暇というものがあったときに、それを使いやすい職場環境をどう整備していくかということが一つ政策課題になっていくと思います。
ただ、特に中小企業に関していいますと、上司に生理休暇を取りたいと言うこと、あるいは女性関連の疾患で休暇を取りたいと言うのは、女性の人数比によってはなかなか言い出しにくいところもあるかと思いますので、そうすると、前半の話と関わりますが、事由を問わない休暇を取りやすい環境の整備というところが重要になってくるかと思います。
不妊治療と仕事の両立ということも、近年、課題になっているところですし、不妊治療ということは、男女共に関係ある話ではありますが、特に女性への負担が重いというところがありまして、こちらについても政策的対応の中で労使のコミュニケーションを促すような方向性が取られています。これ自体は重要なことでありますけれども、やはり事由を問わず休めるような制度の導入が非常に重要になってくると考えているところであります。
最後になりますけれども、以上の話の中で、やはり重要だと思われる点としましては、これまでの制度というのは、どうしても男性稼ぎ主モデルから脱却できていないというところが労働時間制度についてもあるということで、そこからどう展開をしていくのかというのが重要になってくるということです。また、特にケア労働に関わるところなどについても見ていきますと、ニーズというのは多様で個別的でありますので、それについてどう対応していくかというのは、労使の間できちんとコミュニケーションを取っていくことが重要になってくるのではないかということであります。それから、最後の点は、今回のお話の中で十分に取り上げ切れなかったところでありますけれども、女性の活躍・推進といったことを考えていくときに、女性が担ってきたケアを、要するに外部の、例えば保育所であったり、介護事業者に担ってもらうことになるわけですが、そこで従事している方々の処遇も改善していきませんと、ケア労働の質にも関わってきて、安心して家族を預けられないということになるかと思いますので、そういった点も非常に重要になるのではないかということを指摘させていただいて、報告とさせていただきます。
時間超過してしまいまして、申し訳ありませんでした。
○守島部会長 石﨑先生、ありがとうございました。
それでは、続いて、株式会社ハマヤの若井様にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○若井様 ありがとうございます。
株式会社ハマヤの若井と申します。よろしくお願いいたします。
画面共有させていただきます。
私からは、65歳以上のリスキリングをお話しさせていただきます。
改めてこのような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
今回のリスキリングのお話は、弊社、株式会社ハマヤのDXの事例を基にお話しさせていただいたほうが分かりやすいかと思いましたので、DXの事例と併せて御説明させていただきます。
まず初めに、株式会社ハマヤという会社は、京都で50年ほど続いている手芸屋さんとなっておりまして、手芸材料の卸業を50年ほど営んできている会社となります。
ずっといわゆるアナログな会社だったのですが、DXを取り入れて、今はIT企業のような会社となっておりまして、その中での変革みたいなところをここで御説明させていただければと思っております。
まず軽く自己紹介をさせていただければと思っておりまして、改めまして、株式会ハマヤ代表取締役、CTOをしています若井と申します。
日本CTO協会とか、あとは弁護士さんなどが集まるSIGYOITというコミュニティーであったり、様々に所属させていただいております。
登壇に関しましても、Google Cloud Nextさんであったり、日本CTO協会さんであったり、そのほか、大阪府さんであったり、様々に登壇させていただいております。
イベント実績としても、ハッカソンの最多受賞であったり、様々にさせていただいているところでございます。
メディア実績といたしましては、株式会社ハマヤが取り上げていただいた実績なのですけれども、「IT嫌いシニアを優しくDX グーグルも驚く京都の老舗」という形で取り上げていただいておりまして、こちらがYahoo!ニュースに載りまして、経済ランキングで1位を獲得した実績があったりしております。
ここからは、具体的にDX推進と実績、併せてリスキリングというところをお話しさせていただきます。
まず、私が株式会社ハマヤに入社したのが2018年の9月頃だったのですけれども、入社した際は驚くところが多くて、私はもともと大阪にあるデジタルマーケティングのベンチャー会社でずっとエンジニアをしていたこともあって、ギャップが大きかったというところがございました。
どういうギャップかというと、アナログなところが非常に残っていまして、電話が基本的に使われておりまして、電話は使われているのですけれども、メールは基本的に使えなかったということがありました。お客さんとのメールのやり取りができなかったということが基本にあったので、注文を受け取ったり、やり取りに関しては電話なので、エビデンスが残りづらい形で進めている状況になっておりました。
電卓も非常に残っておりまして、当時、会社にパソコンが2台しかなかったということもございまして、ほとんどパソコンが使われていなかったということがあって、それこそエクセルでの計算などもなかったので、基本、皆さん電卓で計算をしておりました。
3つ目は、複写伝票と書かせていただいているのですけれども、5枚つづりの複写伝票を使っておりまして、もともと3枚つづりの伝票も見たことがなかったのですが、4枚目、5枚目はどこで使われているのかみたいなところもあって、結構不透明な状態で活用されていたということが実態でした。
そのほかにも、基本的に手書き文化なので、手書きで全て行っていたり、あと、在庫管理などは人の脳みそで行っていたので、その人が辞めてしまうと全ての在庫が分からなくなるみたいな状態で進めていたので、危機な状態が続いていたと思っております。
そのような状態を見て、IT改革といいますか、DXを進めないといけないということで、進めていきましたということでございます。
その際、DXというか、ITは毛嫌いといいますか、否定的な方が多くて、9割以上の方が否定されていて、そもそも自分はパソコンも使ってきていないし、それこそLINEも使ってきていないですし、私にITとかを近づけないでほしいであったり、自分がITができるとは思えないということもありましたし、様々に否定的な御意見をいただいていたというところが当初はございました。
そのほか、要望も多くて、DXの予算が出ないと言われまして、基本的に最初の予算が0円といいますか、一切出なかったというところがあったり、システムが嫌いなので、私、関わるのは嫌ですという話もありましたし、あとは、最初にITを入れていくときに、クラウドなどを使っていくので、セキュリティーは大丈夫なのかみたいな様々な御意見をいただいたというところがございました。
IT改革を進めていくことに対しても、誰でも簡単に無料で安全でクラウドでDXみたいな、様々な御要件の下、進めていくことになりました。
具体的にどのように進めていったかといいますと、先ほどお伝えしたとおり、9割の方がITに近づけないでほしいといいますか、嫌いな方が多かったのですけれども、1割未満の方はちょっと興味があるといいますか、DXとか、IT改革を導入してもいいですみたいな方がいらっしゃったので、その方の部署から、IT改革、DXを取り入れていくことになりました。
その方がいる部署にまず入り込みをさせていただきまして、その人の作業とか、業務とかを見せていただいて、このあたりは改善できそうですみたいなところに寄り添いながら進めていきました。
最初に開発したのは、インターネットショップを弊社は行っているのですけれども、インターネットショップの競合調査を毎日やっておりまして、ほかの会社がどんな新商品を出したのかとか、価格を変えたのかというところを毎日クリックで調べにいくみたいなことがあったのですけれども、それに非常に時間がかかっていたので、そこを軽く改善していったところ、そこで結構大きな改善が見込めて、受け入れられるきっかけになったということであります。
ちなみに、先ほど無料で使えてとか、安全で、しかも、簡単でみたいなところで活用させていただいたツールは、Google Workspaceというサービスとなっておりまして、特に有名なのはGoogleスプレッドシートという、エクセルのクラウド版みたいなものがあるのですけれども、そちらは関数とか、Google Apps Scriptを組み合わせると、結構簡単にDXができるというか、簡単にシステムをつくれるようなサービスとなっておりまして、それを活用させてもらって、先ほどのインターネットショップの業務を改善させていただきました。
改善させていただくと、その方から非常にいい、かなり効果が出たので、ちょっと興味がありますみたいな形で、その方に様々なITのことをお伝えしていくと、その人の口から様々な部署に発信していただくことになりました。
IT改革はよさそうだ、DXというのはよさそうだみたいな形で声をかけていただいて、そうしたら、隣の部署からうちも興味があるのですけれどもみたいな形で声をかけていただいて、その部署も様々な改革をさせていただいて、そうしたら、その部署の方もほかの人に意見を言っていただいてみたいな形で、口コミでどんどん広がっていくことによって、最終的には結構な割合を巻き込むとができました。
最初は1人でつくっていたのですけれども、関わっていただく方が増えました。あとは、ITを学ぶ方が増えました。それこそ経営者であったり、営業部長であったり、経理部長であったり、様々な方がITを学ぶことになりまして、プログラミングまで行う方も非常に増えまして、その方々が独自でシステムを開発し始めたのです。
私もしていましたが、ほかの方も各部署でシステムを開発し始めることによって、どんどんシステムが出来上がって、大きな改善効果が見込めたというところがございまして、これが年間でいうと5,760時間の改善につながってございます。こちらで100以上のアプリが生まれて、システムが生まれて、5,760時間の削減につながったので、一つ成功と言ってもいいみたいな状況になっております。
その副次的な効果みたいなところがございまして、卸事業は利益率が低いビジネスとなっておりまして、もともと9%しかなかったのですけれども、様々なシステムとか、アプリが導入されることによって数字が取れるようになりまして、もともと感覚で大体このぐらい仕入れて、感覚でこのぐらいを売ってみたいなことを続けてきていたので、そのあたりの数字を取れるようになると、どういう商品をどういうタイミングで仕入れたらいいのか、どういう商品をどういうお客さんにどのように届けたらいいのかということが分かるようになりまして、いわゆるマーケティング要素が強くなったので、それで数字の改善を見込むことができました。
もう一つ、社内でやっているIT改革とか、DXということを社外に伝えていくと、うちもやってほしい、私もやってほしいみたいなところから様々なお声をいただいて、最初はちらほら少ない数をこなしたのですけれども、数十というプロジェクト単位になったタイミングで事業化いたしまして、いわゆるITコンサル事業を始めることができました。手芸屋さんができるのだから、うちもできますよねみたいなところからいろんなお声をいただいて、そこが非常に利益率を上げた、全体の利益率が向上したというところでございまして、30%に上がったというところがございました。
あと、先ほどのITコンサルの事業は、社内の利益率のシェアが30%を超えましたとか、もともと結構残業の多い会社だったのですけれども、残業はほぼなくなりましたし、しかも、各方々の作業時間も削減されたので、時間が余るような状況になりまして、時間が余ったときに何をしたのかというと、弊社は卸業なので、ブランドなどは持っていないのです。自分たちはメーカーではないので、何かしら物を持っているわけではなかったのですけれども、手芸というのは、毛糸を編むときの器、毛糸を入れる器、ヤーンボールというものがあるのですが、こちらは海外でははやっているのですが、日本では少なくて、それを独自ブランドとして立てようという形で、時間の空いたパートさんたちが集まって企画をし始めて、いろんなことを話し合って、工房であったり、信楽焼の職人さんなどに交渉を始めて、一つのブランドをつくり上げたという実績がございまして、それはDXで空いた時間によって新しいクリエーティブを生み出したということでございます。なので、空いた時間があるからといって、その人の時間を単に削減するのではなくて、その時間によって新しいクリエーティブをつくっていただいたり、それこそ先ほどのリスキリングという形で、DX人材になっていただいたりということがどんどん生まれ始めたということでございます。
その効果によって、社内のDX人材が30%アップしたのですけれども、おおよそプログラミングができたり、ある程度開発ができる方も30%アップしたのですが、基本的に社内のほとんどの方はもともとパソコンを一切触っていなかったところから、今でいうと、先ほどのGoogle Workspaceのサービス、Googleスプレッドシートであったり、Googleドキュメントという一通りのサービスを遜色なく使いこなせるような状態になっておりまして、いわゆるエンジニアと会話をして一緒にサービスをつくれるぐらい、一つのシステムをつくれるぐらいの方々に基本なっています。
もともと弊社の平均年齢は60代でして、60代から80代の方が関わられていたのですけれども、その方々も一通りパソコンの操作を覚えて、エンジニアと会話をしながらシステムをつくるみたいなことをされておりました。これが一つリスキリングの形になったのではないかと思います。
ほかは営業利益率が上がったり、作業時間が下がったりというところがあったりします。
DXの成功の鍵はと書かせていただいているのですけれども、大きく4つの壁を乗り越えたところにあったと思っていまして、特に大事なのは覚悟だったりします。いろんなことが起こるので大変です。覚悟はやはり一つ大事だと思っているのですけれども、その覚悟の中でも4つの壁を乗り越えてきたと思っています。
一つ目は、時間がないと書かしていただいたのですけれども、DXを推進していく中で、うちは時間がないから一切教育はできないと言われることが多かったので、最初はその人の時間をつくってあげるということが大事だったと思っていまして、その人の業務を洗い出しまして、そこから工数がどのぐらいかかるのか、開発工数がどのぐらいかかるのか、インパクトがどのぐらいあるのか、どのぐらいの早さでできるのかみたいな、様々な指標をつくり上げて、それをポイント化して、優先順位を決めて上からやっていくことによって、時間がないというところの解消はできましたということになります。
予算がないというところに関しては、予算は当初0円だったので、無料でできるいろんなサービスを探しまして、幾つかリストアップして、いろいろと試すことによって、Google Workspaceにたどり着きました。諦めずに探していくと見つかりますという話になります。
効果が出ないというところに関しましては、DX推進もリスキリングも生ものだと思っておりまして、最初、DX推進をします、リスキリングをしますと言ったとしても、時間がたち過ぎると、やはり飽きられてしまうのです。なので、効果が出るのはもちろんなのですけれども、いかに早くできるかというところを指標に組み込んで、上から実践していくことによって、早く効果が出ることによって巻き込める人が増える、協力者が増えるという形になりますので、それで効果を出していったということがございます。
最後に不満が出るというところなのですけれども、これはしっかり未来を見せるということを伝えます。ITは嫌いと言う人も多かったのですけれども、それを導入することによって、自分たちの仕事が失われるのではないかという声も結構多かったのです。そうではなくて、空いた時間でリスキリングだったり、IT人材になれますというところであったり、あとは、もともと手芸の器のブランドを立ち上げたかった方がいらっしゃったので、そういうものがつくれますみたいな、空いた時間の活用方法をしっかり伝えてあげて、その上でDXを進めていくというのが大事だと思います。
そんな中でも、結構反対意見が多かったり、出てきたりはするので、そのあたりはしっかり覚悟を持って進めていくというのが大事だと思っております。
その後、DX導入、弊社のコンサルティング事業というところが、様々な業界に導入をさしていただいておりまして、製造業さんであったり、予備校さんであったり、美容室さんとか、様々にあるのですけれども、よくある質問をお伝えさせていただきます。
一つ目なのですけれども、従業員の年齢層と、そのうち何人ほどの従業員がプログラミングレベルの開発をこなせるようになったかと書かせていただいたのですが、プログラミングができるレベルというところで分けさせていただいたのですが、当時、平均年齢は60代、DX人材は0人の会社の会社だったのですけれども、入りまして、DXの改革を進めることによって、2024年時点ではIT人材の方が4割です。改革したので、若くてITに強い方がよく入ってくるような会社になったところがありまして、大きく増えました。
そして、社会のDX人材、プログラミングレベルをこなせる従業員が3割ほどおります。それ以外の3割の方も、先ほどお伝えしたとおり、エンジニアと相談しながら一緒にシステムをつくれるレベルになっておりますので、基本的にほとんどの方がシステムに関わっている方々となっております。
2つ目は、当初、DX化に対して、従業員からどのような御意見があったかということなのですけれども、先ほど少しお伝えしたとおり、ITを近づけないでほしいというのが9割以上を超えていたので、1割未満の人が少しでも興味があるという方々だったので、そういう方々がいらっしゃるところからお伝えしていくと、そこから攻略していくことができたといいますか、協力者を増やすことができたというところを書かせていただいております。大事なのはやはりその人の口からDXのよさを発信していただく必要があるので、その人のしっかりした理解と、その人にしっかり伝えていくというのがやはり大事だと思っております。
3つ目なのですけれども、具体的にどのようにITを覚えていったかということなのですが、これは結構重要なポイントだと思っておりまして、ほとんど触ったことがない、LINEも使ったことがないという方が結構多かったのです。70代、80代の方が多かったりするのですけれども、その方の横について、まずダブルクリックから教えました。これをダブルクリックすると開きますとか、ドラッグ・アンド・ドロップで横にずらしますとか、あとは、検索エンジン、ブラウザという言葉を基本的に日本語に直してやっていきまして、横文字のことはこういう日本語で言うのですみたいなところを伝えていくようにしております。IT業界にいると、ミーティングという言葉があるのですけれども、ミーティングという言葉も難しいので、打合せですということをしっかり伝えていって、横文字の障壁をなくしながら伝えていく。
横にいながら操作を1個1個やっていくというところはやはり大事だったと思っていまして、ある程度興味がある人だと、検索の仕方と生成系AI、あるいはChatGPTなどの使い方を教えると、検索とChatGPTのセットを繰り返して、そこから独り立ちといいますか、1人で勝手に進めて物がつくれる状態になるので、そこまで教えるというところに重点を持ってやりました。横についてやっていくというのは、非常に大事だと思っております。そのあたりを乗り越えられると、結構楽しんでやっていただいて、むしろ上達が早い方が多かったりしました。
現在、従業員ができる作業の具体例なのですけれども、3つございまして、一つ目は競合調査システムなのですが、先ほどお伝えしたとおり、毎日競合の調査を行っていたのですが、これも1時間ぐらいでつくったシステムなのですが、毎日、商品価格とか、新商品情報を取ってきてくれるということがございまして、年間1,200時間ぐらい改善したのですが、このサービスは最初はつくったのですけれども、今、改修とか、パラメータを変えたりというのは基本的にパートさんがしてくださっていたり、DX人材の方がしてくださったりしています。
あと、帳票突き合わせシステムですけれども、紙を毎日200枚以上印刷して、それをチェックするみたいな作業があったのですが、そちらは配送業者のCSVとか、インターネットショップのCSVなどを入れ込むことによって、システムがここをチェックしてくれるみたいなシステムをつくったのですけれども、これも1時間ぐらいで出来上がったものなのですが、これも最初はつくったのですが、今、保守・運用のところは、一通りDX人材がやってくださっています。
備品発注システムという形で、備品の発注を手書きでやって、各部署に回すというのが文化としてありまして、手書きを回していくので、最終的に備品発注担当に返ってくるのは1週間後みたいなことが多くて、手書きでやっていたので、何を書いているか分からないというところも結構多くて、発注漏れとか、遅れが非常に出ていたのですが、これを導入することによってなくなりましたし、自動発注ができることになりました。これも保守・運用はDX人材がやってくださっています。
今、3つのツールをお伝えしたのですけれども、この3つのツールは、DX人材の今のメンバーがすぐにつくれますという状況になっております。このぐらいのサービスならすぐにつくれますということであります。
中高年社員の方がコンサル事業に関わっている具体例というところなのですけれども、基本的にほとんどは社内の改善に入っていただいているのですが、一例を挙げさせていただくと、こちらは40代の方になってしまうのですが、この方はIT未経験の従業員で、DXを学んで、今、左官業のDXに関わっていて、お客さんとすり合わせながらコンサルティングサービスの導入とか、勤怠管理のシステムの納品を行いましたということなのですけれども、お客様の課題をヒアリングして、導入まで行って、今ではもう少しやってほしいみたいな形で、いろんなところからお声がかかるような状態になっていまして、こういう方が増えてきています。このような事例もあったりしております。
最後ですが、こういう取組を外側にも発信しておりまして、外から未経験の方を取り入れて一緒に活動しているということで、例えば中学校教師の方であったり、または医者の方に未経験から入っていただいて、一緒にさせていただいて、DXを学んでいくみたいなことをさせていただきながら、このノウハウを会社に還元したりしております。
すみません、時間を超えてしまったのですけれども、私からのお話は以上とさせていただきます。御清聴いただき、ありがとうございました。
○守島部会長 若井様、どうもありがとうございました。
それでは、質疑応答に入りたいと思います。どなたでも、どちらのお話でも構いませんので、御質問いただければと思います。
では、佐々木さん、お願いいたします。
○佐々木(か)委員 お二人のお話、大変勉強になりました。どうもありがとうございます。
いろいろ石﨑さんには本当にいっぱい議論したいところとかがあるのですけれども、ちょっと簡単なところからと言ったらあれですがも、ハマヤの若井さんが話していただいたことはすごく面白かったです。
社員は、何人くらいの会社だったのですか。初めですね。入社されたときです。それから、どうやってその会社に入社されたのか。つまり、社長がやはりDX人材を入れてくれ、何とかしないといけないなと思ってピンポイントで若井さんをスカウトしたのか、手書きでそういうところに1人で乗り込んでいくというのはよほどのある意味、書いていただいた覚悟が必要だったと思うのですけれども、この入社のプロセスですね。
伺っていると、若井さんのような方がいろいろな企業に1人いたら、随分いろいろな会社の改革ができるだろうなと思ったのですが、若井さんのような方を見つけるのが難しいのだろうと私はちょっと思っていて、そこの初期の人数と、若井さんが入社に至ったところを教えていただけたらと思いました。
○守島部会長 どうぞ、若井さん、お答えください。
○若井様 ありがとうございます。
1点目に関しましてですが、弊社自体、従業員数みたいなところは非公開にさせていただいております。
後者に関しまして、私自身が入った経緯なのですが、もともと株式会社ハマヤという会社自体が三代表制というのをしいていまして3名代表がいるような会社となっていまして、その3名でもともと別のスタートアップを立ち上げようと思っていたといいますか、3人でずっと別の会社に勤めながら土日に集まって活動をしていたところがございます。
そこからスタートアップを立ち上げようと思っていたのですが、それの方向性というところが今この株式会社ハマヤというところを継いで大きく進めることによってかなえそうだというところから、3人のうちの1人が家族企業としてこの手芸屋さんを受け継いだので、その受け継いだ会社を開拓していこうという形で進めたところがございますので、最初のきっかけとしてはもともと3名で、結構、外側でアプリ開発とかをしていまして、実際出会ったきっかけはフェイスブックでいきなり会いませんかと連絡が来まして、ちょっと怪しいなと思いながら行ったんですけれども、そこから意気投合したというところの流れがあったりしております。
○佐々木(か)委員 ありがとうございました。
○守島部会長 ほかに、どなたか御質問ございますか。
佐々木勝さんが先に手を挙げていらっしゃったので、では、佐々木先生お願いいたします。
○佐々木(勝)委員 どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
まず、石﨑先生の労働法の課題についてちょっと御質問させていただきたいのですけれども、特に労働時間で管理監督者に対する適用除外が適切なのかというところです。確かに若い人であったり、女性だったり、多くの人がもしかしたらもっと実りのある仕事をしたいと考えながらも、すごく労働時間が長くなるために、自分は管理職になりたくはないということが確かに増えているのかなと思います。
そういう意味では労働時間に関しては、高度プロフェッショナルの運用と同じようにすべきだと思うと同時に、やはり労働時間の情報開示というのは非常に重要なことかと思います。
それで、その労働時間だけではなく、さっき冒頭でご報告された男女の賃金格差に関する情報の開示ということもレピュテーションによる政策誘導として、私は非常に効果的なのではないかなと思います。
というのも、今、慢性的な人材不足がこれから続いていくことから、労働者の顔色を見ながら企業は採用していかなければいけないような状況になるため、労働時間や賃金について、できるだけ労働者に魅力ある労働条件を提示することになると考えます。
ただ、情報の開示といったときに、それが信憑性というか、信頼性というのはどうなのかなとはちょっと思いました。特に賃金格差の情報開示といったときに、単に男性の従業員の平均賃金と女性の平均賃金を比較して高い、低いというだけでなく、本来ならばもしかしたら女性のほうが低いのは年齢が女性のほうが全体的に低くて、男性のほうが高いからそうなっているかもしれないし、女性の学歴が男性よりも全体的に低いためそうなっている可能性もあるので、そういうところを一つ一つコントロールした上での情報開示というのは重要なのかなと思います。果たしてそこまで全ての企業が考慮して開示しているのかなというのが一つの疑問で、そういう現場の話をちょっとお聞かせいただければと思います。
あとは、テレワークに対してですが、コロナ以降、テレワークが一時期非常にはやりましたが、コロナが明けてからは「対面型のほうがいいんじゃないか、そのほうが組織の生産性が高いんじゃないか」ということで徐々に元に戻りつつあると思うのですけれども、テレワークをすると絶対にオンライン会議というのがあると思うのですが、それは非常に有効だなと思って、参加者が速やかに情報を共有して早期に問題解決の意思決定ができるので、そうするとやはり組織の生産性というのは非常に上がるかと思います。
これを有効に活用していく必要があるのですけれども、よく言われているように、創造的なイノベーティブなことを考えようというときにはあまり効果的ではないということを聞きます。
ちょっとこれは情報提供なのですが、ある研究ではオンライン会議の参加者の視線をアイトラッキングで調べたら、やはりみんな画面をずっと見ているわけですね。集中しているのでしょうからそれはいいとは思うのですけれども、でも、何かイノベーティブなことを考えるときにはやはり対面型で雑談をしながら、そして視線をどこか外して、外を見るなり、ほかを見るなり、そういう遊びがあったほうが創造的なものが生産できるのではないかなとは思います。
だから、対面型か、テレワーク型かというのはコミュニケーションの目的であったり、仕事の内容であったりして、うまく使い分けていく必要があるなと思います。ここは、質問ではなくコメントです。
2つ目の若井さんのお話は非常に勉強になりまして、私も今、学部長をやっており、ある意味、管理職でありまして、特に下の階に教務係、庶務係、会計係があるのですけれども、教務係の労働時間は非常に長くて、もうちょっとうまいことDX化できたら何とか効率よくできるんじゃないかなとは思うんですね。特に学生の情報を扱うわけなので、情報処理するという意味ではDX化というのは一番効率的だと思うので、何かうまいことできないのかなと思っているので非常に参考になりました。
幾つか質問はあるのですけれども、まずは御社のところでDX化を進めたと仰いましたが、
取引する相手もある程度DX化しないことには大変じゃないかと考えます。相手がDX化していないとむしろ仕事量が増えるのではないかと思いました。同じように社内の中でも部署が複数あって、ある部署だけが最初に興味を持ったところからDX化したとありましたが、隣の部署、その隣の部署に対してはまだDX化に抵抗感はある中で、一部署だけDX化してもむしろ非効率ではないのか、やはり社内一体で仕事をする際に余計仕事の量が増えるのではないでしょうか。
部署間でも、先ほど言ったとおり、備品発注作業は以前紙で隣に渡していたものを、それをDX化で備品発注システムを通じて発注するとします。でも、隣の部署がまだ紙文化であるとき、「よく分からないからやはり紙で送ってよ」みたいになると仕事が二重になってしまい、余計負担になってしまうような気がしました。
だから、やるならば全ての部署で一斉どんとやったほうが非常に効果的であるにもかかわらず、ちょっとずつ、ちょっとずつ興味ある部署からDX化していったと説明されましたが、それでも成功したというストーリーをもう少し聞かせいただければと思います。
あとは、今回使ったのはグーグルワークプレイスだと思うのですけれども、無料だということなのですが、やはりまだちょっと個人情報の管理というところは本当に大丈夫なのかなということを思いました。
さっき言ったとおり、例えばうちの教務係のところにグーグルワークプレイスを導入しましょうとなったときに、やはり教務係としては学生の成績などの個人情報の取扱いにかなり神経をとがらせているので、無料だからといって本当に情報管理に安全なのかということになってしまいそうです。本当にグーグルワークプレイスが安全であり、その安全性に対して御社の人たちは受け入れたのかなとは思いました。
平均年齢60歳以上ですよね。それで職人が多いような印象があるのですけれども、ダブルクリックも分からない人が半年から1年半後にアプリをつくるというのは非常に衝撃的なお話でした。どうもありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
石﨑先生からお答えになりますか。
○石﨑委員 ありがとうございました。何点か、コメントいただいてありがとうございます。
まず情報開示の部分について私の知る範囲でお答えできればと思うのですけれども、この情報開示の中で実は説明欄というのが設けられているようでして、要するに賃金格差に関して言えば数値だけではなくて、なぜそうなっているのかとか、今どういう状況にあるのかというような説明する項目があるようです。
だから、そういった意味で賃金格差について何か要因がある。先ほどお話に出たように、例えば女性は年齢が低いからそうなっているというようなところについては、そうしたことで記載するところがあって、そしてまたそういう説明欄があることによって自ら企業がなぜそういう原因が生じているのかを自分で考える契機になっているというような指摘もあるようでして、それである意味そこについては対応がなされているというようなところがあるようであります。
もう一つ、先ほど報告の中で言いそびれてしまった部分で、重ねてここで申し上げさせていただくと、1つ課題としてあるかなと思いますのが、幾つかウェブサイト、スライドにも載せさせていただいたのですが、両立支援の広場だったり、女性活躍推進企業データベースだったり、こちらで開示されている事項を検索することはできるのですけれども、企業名とか、どこの業種を調べたいというようなことがはっきりしている場合には、それでクリックして一覧が出てくるのですが、開示されている項目で検索するということがあまりできなくて、例えば平均残業時間一覧とか、そういった形での検索の仕方というのはホームページの使用上、あまり今できていないようなところがあって、もう少し検索性を高めていただくような形で変えていただけるといいのかなというのはちょっと思っているところではあります。
あとは、これは8月に出された雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会の報告書の中で指摘されていたところではありますけれども、情報開示をしっかりやっているような企業さんで、やはり女性活躍推進というところもプラスで効果が出ているような話もありまして、それはプラスでの話としてあるのかなというところであります。
あともう一点、テレワークに関して御意見をいただいていて、確かに創造的な仕事をするときに対面のほうがいい部分もあるというのはそのとおりだと思いますし、企業さん、あるいはテレワークを利用したい人のニーズによっては、完全テレワークじゃなくて、一部はやはり出社したほうが逆に仕事も生産性が高まるというところもあろうかと思うので、テレワークを推進していく、あるいは導入していく段階で非常に重要になってくるのが、そこでの労使のコミュニケーションなのではないかと思っています。
そういう意味で、要するにベストバランスといいますか、それを探るというところが重要で、どこまでだったら、例えば家族責任との関係ではどれくらいだったらより自分らしく働けたりするのかとか、あるいは体調の問題でテレワークにしたいというような話であるのだったら、どのくらい必要で、どれくらいだったら頑張れるのかとか、そういった調整をやっていく作業が非常に重要になってくるのかなと思っているところです。
以上、全てお答えできたかは分からないのですが。
○佐々木(勝)委員 ありがとうございます。
検索性を高めるということになると、そういうものを若井さんに頼んだらいいわけですね。分かりました。
○守島部会長 では、若井さんお願いいたします。
○若井様 ありがとうございます。本当にありがたい言葉をかけていただいて、非常にうれしく思っております。ありがとうございます。
3点あったかと思いますのでお答えさせていただくのですけれども、1点目がそれこそDXを進めていく上で、お客さんもそれこそDXしていくといいますか、クライアント先もしっかりDXしていかないとDXというのは進みづらいんじゃないかというお話だと思うのですけれども、おっしゃっていただいているとおりでして、しっかりバリューストリームといいますか、サプライチェーンといいますか、この辺りの連携みたいな、弊社で言うと卸業なので、メーカーと小売店の間に入っているような職業なので、ここが上と下といいますか、横のつながりがしっかりDXされていないと、おっしゃるとおり非常に動きにくかったということがございます。
それで、特に弊社の今いるような業界というところは、業界自体も非常に結構アナログなところがございまして、お客さんにそういうお話をさせていただくと、基本はそれこそ分からないことは多いのですけれども、例えば銀行振込ですらちょっと厳しいといいますか、銀行振込自体の手形であったりとか、実際に受け取りに行って銀行振込をお願いしますと言ったとしても、DXを押しつけてくるなというようなことを言ってくる業界構造になっていまして最初のうちは非常に苦労したのですけれども、その辺りを御協力いただくところはそれこそ本当に横に寄り添いながら御協力いただいたというところは一つございます。
ただ、ほとんどのケースで社内のDXしかしていません。業界構造はDXはせずに、社内のDXはせずに、その辺りのお客さんであったりとか、メーカーさんであったりとかを大きく変えることは難しいし、時間がかかると思います。社内のDXの中で大きく効果が出るというところに努めてきたというところがございます。
2点目に関しまして、一斉にやったほうが早いんじゃないかといいますか、会社丸ごとで大きくやっていったほうが早かったんじゃないかというところです。これは本当におっしゃっていただいたとおりかと思っておりまして、1つは結果論ではあるのですけれども、中小企業でDXがうまくいかないケースは結構そこにもあるのかなと思っておりまして、覚悟を持って全体的にやろうとしたとしても、やはり経営者の考え方でいうと、この重要な職業の人が辞められると困るとか、その人が辞めてしまうと回らなくなってしまうというところの依存が強くて、一気にやろうとするとそういうところのハレーションといいますか、影響力みたいなところがあって、なかなかそれでロックがかかってしまって進まなくなるようなケースを結構見たことがございます。
それで、当時やっていたことはしっかり現場に寄り添うといいますか、それこそ本当にボトムアップ的に下から徐々に部署を攻略していって、最終的に全体を巻き込むみたいなことをしておりまして、それをすることによって結構うまくいったのかなと思っております。
先ほどお話の中で、部署をまたぐようなシステムはどうしているのかという話があったと思うんですけれども、これはどちらかというとDXの定義で言うデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの順番でやっていったみたいなところが結構強くて、まずデジタイゼーションで部署を1つずつやっていくことによって、徐々にその部署に関わるような人であったりとか、関わるような業務などを改善していくことができます。
これで徐々にスプレッドシートであったりグーグルワークスペースの使い方を学んだりとか、およそその辺りのシステムの使い方を学ぶということを各部署でやっていくことによって、各部署がその辺りの理解がどんどん深まっていくことができました。
そうすることによって、その部署がその辺りの理解が深まった上で横断するような備品発注システムというところをつくり始めましたということで、次はデジタライゼーションにちょっと寄っていくような全体に関わるようなシステムをつくり始めましたということで、段階的に行っていったというところがございました。
3つ目が個人情報の管理ということで、こちらも非常にセンシティブな情報というところかなとは思うのですけれども、この辺りも結構、最初の辺りはいろいろ調べたりとか、すぐ参照が出せるわけではないのですけれども、それこそグーグルが管理されているスペシャリストのセキュリティーチームの情報を見せていただいたりとか、各種論文であったりとか、オンプレミスとクラウドと事例の違いであったりとか、まずはIPAのセキュリティー基準とかを見させていただいた上で判断させていただいたところがあるのですけれども、その中でもその辺りの基準に寄り添っていって、IPA基準とかも含めて寄り添っていく中で、それこそデータの管理に関しましてはセンシティブな情報かどうかといいますか、セキュリティー、個人情報のレベルとかというところを分解しまして、それをクラウドに載せる情報、置いておく情報、置いておかない情報というのはしっかり分けていっているということで今になっております。
3点、全てお答えできておりますでしょうか。
○佐々木(勝)委員 どうもありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
春川委員と山川委員とどちらが先かちょっと分からないのですけれども、では春川委員お願いいたします。
○春川委員 ありがとうございます。
石﨑さん、若井さん、今日は御説明、御提案ありがとうございました。
私から御両名にお聞かせ願いたいところがあります。まず石﨑さんには2つありまして、1つは感想めいたことになります。私は常々、労働組合側と会社側と様々な社内課題の問答をしていますが、労働時間のことに関して申し上げますと、今日御指摘のありました、管理監督者、マネジャー管理職の総実労働時間に関して、私たち労働組合側としても、私個人としても課題認識を持っています。どういう背景事情があるかというところよりも、こんな事象が今あるのではなかろうかということについて感想等を含めてお伝えします。
例えば、ジョブ型人事制度のような形でポストに任用されているような仕組みになったときに、そこに就かれた管理監督者の方が、そのポストを維持していくという考え方の中で、それが働く労働時間に大きく影響しているのではなかろうかと思っております。事例として申し上げると、本当に体が壊れるぐらいまで一生懸命頑張られて、結果的にお休みになってしまうようなこともあります。先ほどの判例にもあったのですが、登用制度ではなくて、あくまでも任用と解任の場合であっても、体調を崩してしまうとそのポストが取られてしまうのではないかという思いから、結果、労働時間が長くなってしまうようなことも労働組合側の立場から見えているようなところもあり、少し危惧しておりました。今日のお話でそういった部分の課題点もちょっとお話しいただけましたので、そこは私自身も非常に勉強になったところです。
2つ目は、どういうお考えかをお聞かせ願いたいのですが、私としましては常日頃、労働者代表として労使コミュニケーションの一当事者として、例えば労働法制に関する解除の部分、例えば、36協定を定めたり、裁量労働制の労使委員会であったり、様々な場面で対応しております。そこに臨むに当たっては職場の社員、組合員の実態というものを把握し得ないと、いろいろなことを労働者代表として話すことはできないという思いで取り組んでおります。今日のスライドに職場コミュニケーションの推進とありましたので、そこをくまなく進めていくためにはどのような方策などをお考えなのかお聞かせ願いたいというのが質問になります。
続いて、若井様にお聞かせいただきたいと思います。DX化のところは私も興味深く聞かせていただきました。コンサルもなされているということなので、御社の御事例でも、またはコンサルをされた先のところでも構わないのですけれども、社員を高めたり、そもそもスキルを持つように能力開発したりしていくことが非常に重要だということを改めて認識をしたのですが、労働者が自身を高めて仕事に携わっていく一つのモチベーションとしては、それがどう処遇に反映していくのかも重要な要素だろうと思っております。
携わられてきた中で、能力開発を行った社員、従業員の処遇が上がっていくような好循環につながった事例等があればお聞かせ願いたいです。
よろしくお願いいたします。
○守島部会長 それでは、石﨑委員からお願いできますでしょうか。
○石﨑委員 ありがとうございました。
まず、1点目に関しては貴重な情報を教えていただきましてありがとうございました。私自身、まだジョブ型であるということと、それに伴う管理監督者の長時間労働の関係というところがどうなのかということはあまり実態としてはよく分かっていないところはあるのですが、おっしゃられるように、要するにある種のポジションというか、責任を伴う地位にあって、その責任を果たし続けなければというプレッシャーゆえに長時間労働になるという実態はあろうかと思いますし、また、今日、私がいろいろと申し上げたことの裏返しになるのかもしれませんけれども、要するに多様な事情を抱える労働者がたくさん部下としていたときに、その人たちの代わりを全部労働時間規制の適用を受けない管理職が肩代わりをしてしまうような形で長時間になっていたりというようなことも、もしかしたら起きているのかなとも思っております。しかし、それ長い目で見るとあまり持続可能な仕組みではない。つまり、そうすると管理監督者になると、もうみんないろいろなことを背負い込まなければならなくなって、みんなそれでやりたがらなくなるということになってしまうと、それはあまり生産的なことではないので、やはりそこの管理監督者、あるいは管理監督者にならないまでも管理職の方々の働き方というのは、今後注意していく必要があるのかなと思っているところであります。
それから、2点目の労使コミュニケーションの推進というところですね。これも非常に重要な点で、実は報告の中でも申し上げました労働基準関係法制研究会の中でも一つの重要なテーマとして取り上げさせていただいているところであるのですけれども、そこへの一つの対応としましては、実は検討会の中でも議論になったところでもあるわけですけれども、やはりこの協定を結ぶにしろ、そうした決議をするにせよ、企業側からの過半数代表への情報提供、最初にここで話したのは要するに外向けの情報公表の話ですけれども、それだけではなくて内向けの情報開示というのを促していくということが非常に重要なのではないかというところがあります。その辺りはきちんと組合が組織され、機能されているところであれば、団体交渉などを使いながら情報を求めていくというようなこともできるかとは思うのですが、ただ、やはりその協定締結に当たって必要な情報を開示していくというようなことが重要になってきて、その辺をやはり法律等の中でもきちんと規定していく必要があるのではないかというような意見が複数出ているところではあります。
また、併せて、これは場合によっては、ケースによってはということになるとは思うのですけれども、要するに中での意見集約をするに当たっての企業側がある種の便宜供与をするべき場面もあるのではないか。
つまり、今いろいろとデジタル化が進んでいて、要するに意見箱というんですか、デジタル版の意見箱みたいなものをつくることもそれなりに可能であるとすると、そういったものを供与して、こういう意見が出ているよということを共有していくみたいなことも考えられるのではないかというところもありまして、そういった方法というのはあり得るのかなと思っているところであります。
これは特に過半数組合があるところはいいのですけれども、ないような過半数代表者しかいないところについては、よりその必要性というのは高いのかなと思っているところになります。
今のでお答えになりましたでしょうか。
○春川委員 ありがとうございます。
労働組合の立場としては、労働組合を立ち上げてやっていくということをまずはやるべきだと思っております。お考えを聞かせていただきましてありがとうございました。
○石﨑委員 それで、ちなみに今、佐々木かをり委員からメッセージをいただいておりまして、先ほど私のほうで説明欄の説明に関して、例えば年齢構成が違うから賃金格差があるという場合には、その旨、説明欄で書くことが可能であるというようなお話をしたのですが、ただ、佐々木委員から、賃金格差については年齢が違うという場合は年齢と給与がなぜ関係するのか。年功序列を取っていること自体が課題となって、役職が違って差があるという場合はなぜ高給の役職者に男性が多いのかが課題となるということで、賃金格差をそういう意味では全体で見ることが重要な視点となるというのは御指摘いただいたところであります。
この点は全くおっしゃられるとおりでありまして、そもそもどうしてそういう構造になっているのかというところから検討していく必要があるのかなと私自身も考えているところであります。
また、同時にえるぼし企業とされている中にも賃金格差が高いところもあるというような御指摘もいただいていますけれども、こうした認定制度の中には育休の取得率とかで見る場合もありますが、制度を導入することでプラスになっていくようなものもあって、でも実は重要なのは実際の運用はどうかというところですよね。そこをどう担保していくかというのは、課題になっていくのかなと私自身も思っております。
すみません。せっかくコメントいただいたので、併せて回答させていただきました。
○守島部会長 ありがとうございます。
若井さん、何かありますか。
○若井様 ありがとうございます。
御質問といたしましては、それこそ能力開発というところに関しての処遇がどうなっているのかというお話があったと思いますのでお伝えさせていただきますと、スライドの中に書かせていただいたとおり、弊社とコンサル先にも比較的多い事例といたしましてはそれこそ未来を見せるというところで、時間が減ることによって残業がなくなりますよというところであったりとか、あとは空いた時間によってクリエーティブなことができますよ、やりたかったことができますよというところが基本的に結構多かったりはするのですけれども、この辺りもその人、人ごとによってうれしい処遇が分かれているのかなとやはり思っておりまして、今のパーパス経営ではないのですけれども、基本は一人一人に寄り添った処遇といいますか、お伝えの仕方を変えているというところはございます。
例えば、キャリアアップを目指されている方であればキャリアアップをお伝えさせていただきますし、残業時間を削減したい方は削減されることをお伝えしますし、賃金をアップしたいという方は肩書が上がると賃金がアップするみたいな形で各自に確認させていただいて、その上で反映させていくということが圧倒的に多かったりしております。
弊社のコンサル先に関しましては、弊社ほど平均年齢が高いような業界があまりなかったりしますので、弊社の事例を改めてお伝えさせていただきますと、弊社は業界が手芸業界というところなのですが、結構多い事例としては、70代、80代まで働いて、その後にそのノウハウを持って独立をされるというキャリアが多かったりされまして、この手芸用品のこれに関して独立されるみたいなことが結構多いキャリアとなっています。
そういう方々にとって、ではキャリアはどう見せるのかというお話なのですが、独立された後にそれこそ個人事業主になられるので、その辺りの管理業務というところが自分に負担がかかるというのは皆さん存じ上げておりまして、その際にちょっとスプレッドシートをつくれたりとか、ちょっといわゆる関数とか使えたりすると自分が楽になりますし、管理コストを抑えることができますよねというところは理解いただいて、そういうようなキャリアの伝え方もさせていただきますし、コンサル先は40代が平均の会社さんも結構多かったりするのですけれども、そういう方々に対しては今のIT人材が重要であったりとか、いわゆるDX人材も重要であったりとかというのは様々、幾つか取り上げさせてもらって、それを見せることによってそれこそキャリアアップにつながったりとか、あとは会社の職業としての、職種としての自分のバリューというか、価値の発揮の仕方が変わりますよというような見せ方をさせていただいていることが多いので、結構個別にさせていただいていることが圧倒的に多かったりしておりますというところなのですが、すみません、回答になっておりますでしょうか。
○守島部会長 ありがとうございます。
春川委員、よろしいですね。
○春川委員 はい、ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、続いて山川委員お願いいたします。
○山川委員 ありがとうございます。
ハマヤさんのお話も非常に興味深く結構、感動的だったのですけれども、今日は女性の就業の関連で、質問なのか、意見なのか、感想なのか分からないのですが、今日は人数も少ないし、時間もあるようなので3点お話しさせていただいて、もし石﨑さんのほうから何かお考えがあればと思って発言させていただきます。
必ずしも労働法とは関係はないのですけれども、女性の就業について私は専門的に勉強したことはないので、本当に一女性労働者、もしくは経営者として考えることが3点あります。
1つは、男女の職種別の格差というものについて非常に気になっている、個人的に気持ちが悪いなと思っていることがあります。どういうことかというと、これは法律事務所だけではないと思うんですけれども、例えば法律事務所を私は経営しています。それで、弁護士業界というのは本当に朝ドラの世界とほとんど進化していないので、今、女性が2割くらいで非常に男性中心なのですけれども、女性の弁護士を増やそうとか、女性のパートナーを増やそうというのは経営努力でいかようにもなります。実際、うちの事務所もアソシエートだと女性が半分くらいなのかな。
それで、パートナーはもともと3割だったんだけれども、私一人なのですが、1人男性を昇進させてしまったから、がたっと25%に落ちちゃったんだけれども、でも今後のパイプラインを見てちゃんと女性もということで、将来的にパートナーシップにも一定程度の女性を維持するというのは可能かなと。だから、これは経営努力でいかようにもなるというのが私の感触です。
ただ、どうにもならないのが、当然サポートスタッフがいます。サポートスタッフは、特に秘書さん、法律事務をやっている秘書というふうにうちの業界では言うのですけれども、その事務職員は100%女性です。それが問題なのか、問題じゃないのかというのがまずあると思うのですけれども、個人的にはちょっと気持ち悪いです。
でも、例えばそこで秘書とか事務職員の賃金を上げたからといって別に男性が入ってくるわけでは恐らくないと思うから、なかなか一経営者としての企業努力ではいかんともし難い。
でも、それは多分問題だと思うんです。サポート的な人が女性というのはどこの会社でもそうなんだけれども、恐らく問題だと思うのですが、なかなか企業努力でいかんともし難いので、そこはどういうふうに専門家的には考えられているのかなというのが1つです。
それからもう一つが働く母親の話なのですけれども、育児と仕事を両立したいです。だから時短があります、育休がありますというのは非常に分かるし、それはもちろん大事なんだけれども、他方で仕事を普通にばりばり続けたいという女性も当然います。
うちの事務所で言うと、お子さんがおられる女性の弁護士は大体5時には帰るんだけれども、そこには2パターンいて、5時以降仕事をしませんという女性もいます。それはもちろんいい。
他方で、いや、いや、私はフルタイムという言い方もおかしいんだけれども、普通に男性と同じだけの時間数を働きたいという女性もいます。そういう方を見ていると、5時に帰っていろいろおうちのことをやられて、それはいいのかどうかはともかく10時以降とかにまたログインしてお仕事をされたりとか、週末に仕事をされたりする。だから、法律事務所なので稼働時間は記録しているので見えるんだけれども、ほかのお子さんがいない方だったり男性弁護士と遜色のない働き方をしている。
その気持ちはすごくよく分かって、私ぐらいの年齢になれば若いときにちょっと時短したぐらいで、職業生活は長いんだから別にそんなにキャリアに大きな影響はないから心配しなくていいよと言いたくもなるけれども、本人的にはそれは心配に決まっていますよね。ほかの同期の弁護士がすごく一生懸命仕事をしているのに、自分だけ時短になったらちょっと後れを取っちゃうというのは非常にわかる。
ただ、うちの事務所の場合は弁護士を個人事業主として扱っているからそういう働き方は可能なんだけれども、これが会社の労働者だったら深夜に働いたら深夜割増がついてしまうし、休日だったら休日割増がついちゃいますよね。だから、フレックスでいいというものでもないし、高プロは率直に言って非常に使い勝手が悪い。裁量労働制は認められる職種がすごく少ないので別に全員が使えるわけじゃないから、今の労働法制では恐らくうちの事務所の女性弁護士がやっているような働き方はほぼ不可能なのかなという気はします。
もちろん、その会社がじゃぶじゃぶ残業代も何でも払いますよと言えば別なんだけれども、そういうものではないと思うので、そこら辺はどういうふうに法律的にとか、あるいは政策的に考えるべきなのかなというのが2点目です。
3点目は、個人的に非常に関心の高いのが更年期の問題なんですよね。石﨑さんのスライドに「女性の健康課題に対する認識は高くない」とお書きになって、それはまさにそのとおりで、ただ、女性の健康課題の中でも出産に関連することは結構社会に影響があるからそれなりの認識と対応はされていると思うんです。それこそ不妊治療についてとか、いろいろあるじゃないですか。
他方で、更年期というのは子供が産めなくなった女性に関することだから、かなり世間での認知度と対応度が低くて、これは結構問題だなと思っているのは、恥ずかしながら自分の話をさせていただくと、私は今51なんですけれども、実は4、5年くらい前から毎日仕事を辞めたいと思っていたんですよ。それで、いつもいらいらしていて、仕事を辞めたい、仕事を辞めたい、仕事を辞めたいとずっと思っていたんです。
ただ、いわゆる肉体的なところ、ホットフラッシュとか不眠とか、そういうのが全然なかったから何となく更年期と私は結びつけていなかったんですね。それで、英語のポッドキャストとかいろいろ聞いていたら、これは更年期なんだなということが分かってすぐに婦人科に行って、世の中にはホルモンパッチというものがあるので、ホルモンパッチを処方してもらったら1週間くらいで仕事を辞めたいというのが、さっとなくなって結構仰天したんです。だから、逆に言うと仕事を辞めなくてよかったと思ったんです。
それで、資料に女性が更年期で離職される方が46万というのは非常に驚くべきことなんだけれども、でもすごくうなずける。私だってそのままホルモンパッチをしていなかったら仕事を辞めていたかもしれないくらいなので、これはすごく重要な問題で、ほかにもそう思って見ると、私は使用者側の労働事件をやっているのですが、割とこの人は更年期だよなという年齢の女性で非常に攻撃的になっている方もいます。
要するに、勤務態度不良みたいなことで会社を辞めさせられちゃったり、懲戒されちゃっている事例は結構あるんだけれども、見ていると、それはちょっと言えないですが、更年期じゃないかと思うことが非常にある。
だから、やるべきことは世の中にもうちょっと啓蒙も必要だし、あとは少なくとも産業医レベルでは必ず更年期についての勉強をしてもらいたいし、啓蒙も例えば多分、最近は昔よりはされているんですけれども、私は更年期ばかり検索しているから変な記事がいっぱい挙がってきちゃうのですが、そういうのを見ても、芸能人が私も更年期でした、でもそのうち治るから頑張ろうぜとか、ハーブティを飲みましたとか、ほぼ精神論で、そういうものだから頑張ってね、大丈夫だからとか、でもこれは医学的な問題ですよね。女性ホルモンが下がっちゃうんだから、そんな精神論で片づけるべき問題じゃないし、しかもこれから女性活躍だ、高齢化社会だといったら結構これは普通に大きな問題だと思うので、啓蒙だったり、それこそそういうことがあるならば時短だったり、ちょっとお休みするとか、そういうのもあってしかるべきだと思うので、ほぼ意見みたいな話になりましたけれども、私からは以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。
石﨑委員、どうされますか。お答えになりますか。
○石﨑委員 ありがとうございます。
3点いただいたかと思います。すみませんが、途中で音声が途切れ途切れになってしまったところがあって若干補ってお答えするので、もしかすると的外れになる部分があるかもしれなくて、そこはまた追加で御質問いただければと思います。まず3点目で御指摘いただいた更年期との関係で啓蒙が大事だというお話をしていただいたかと思います。
私もその点は同感でありまして、やはり女性の健康課題に対する問題は、休暇制度をより柔軟にして使いやすくするというアプローチが一方で大事なのですが、もう一つやはり私個人もいろいろその点に関しては気を付けていかなければいけないところがいろいろあるのですが、きちんと医療にうまくつながって必要なそういう対応方法を知るとか、あるいはいわゆるがん検診とかもあるわけですけれども、そういう何かより重い病気が隠れていないかを確認するとか、そういったところでヘルスリテラシーを高めていくための政策というのは重要だと思いますし、今これもたしか安全衛生の関係の部会で御検討されていることかと思うのですが、健康診断とか、そういったところに女性特有の疾患の関係についても入れていこうというような議論もあったように聞いておりますので、そういった方向はやはり重要なのかなと思いながらお話を伺ったところであります。
もう一つ、更年期症状等によるいろいろな不調が不利に評価されてしまうのではないかという話との関係で言いますと、これは更年期障害に限らずなのですが、やはりそういった本人の責めによらない体調不良とか、そういったものに対するある種の配慮義務みたいなものを観念していくべきなのではないかということを個人的には思っておりまして、今、障害者に対しては合理的配慮ということが大分浸透してきてはいるのかなと思っているのですけれども、その延長線上にはやはりそういった体調不良に対する配慮というのを観念していくということはあってよいのではないかと私自身は思っているというところであります。
それが3点目に対するコメントで、あとは2点目として育児と仕事の両立のバランスのさせ方についても人によって大分違いがあって、人によってはばりばり働きたいという方もいるし、場合によっては恐らく保育園のお迎えとかで夕方の時間帯とかは働けないとしても深夜働きたいというニーズもあるのではないかというようなお話として伺いました。
こうしたニーズというのは多様であるというところからすると、やはり選択肢があるということが重要であると思っていて、要するに希望する人はそうした柔軟な働き方ができるようにする。そういう選択肢があるということがまずは重要だと考えているというのが1点になります。
あともう一つは、特に育児期ですね。深夜働きたいニーズと、あとは労働者ですと深夜割増賃金との関係が問題になるところかと思いますけれども、これは私自身の私見であまり多くの賛同は労働法学会的には得られにくい見解かなと思ってはいるのですが、労働者の方が自分の事情で働き方を多少柔軟に調整できるような立場にあって、かつ自ら望んで深夜の働き方を選択する場合に、一定の健康確保の観点からのコントロール等が必要になるかもしれませんけれども、そういった場合の割増賃金規制の規制緩和みたいなものは実は考えてもいいのではないかと私自身は個人的には考えているところであります。
ただ、その際、いろいろ慎重に条件設定というのは必要になってくるかもしれないなとは思っているところです。
あとは、1点目で御指摘いただいたのは、職種によって男女の格差があるというようなお話だったでしょうか。
○山川委員 そうです。まさにおっしゃるとおりで、うちの法律事務所でいうと秘書が全員女性みたいな、それが私は何か気持ちが悪いんですけれども、それが問題なのかというと、問題ならばどうやって解決するのか。一企業努力だとなかなか難しいのでということです。ちょっと御専門とは関係ないかもしれませんけれども、すみません。
○石﨑委員 職種によって確かに女性が多い職種、男性が多い職種というのはあるかと思いますし、弁護士事務所ですとなかなか難しいかもしれないのですけれども、例えばそうした比較的軽易な仕事に従事するような職があり、かつそこに女性が多いというときに、そこで働きながらスキルアップしていったりとか、その方がより責任の重い仕事を希望されたときに、やはりそちらに行ける、転換できるような仕組みがあることは望ましいのかなとは思っています。
本人が希望して比較的軽い仕事を望んでそれに従事している限りは、そのこと自体が何か非難されるとか、問題になることではないとは思うのですけれども、そうしたキャリアに対する希望というのもやはり長いキャリアの中で、人生の中で変わり得るものだと思いますので、そうしたところに応えられるような制度が導入されていることが必要なのかなと思いながらお聞きしました。
以上になります。ありがとうございました。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、逢見委員お願いします。
○逢見委員 大変興味あるプレゼン、ありがとうございました。石﨑委員と若井さんに、それぞれ1点ずつ質問をさせていただきます。
石﨑委員のプレゼンの中で、アメックス事件の東京高裁の判例が紹介されていまして、その中で、直ちに経済的不利益を伴わない配置の変更であっても将来のキャリア形成に影響を及ぼしかねないものについては原則不利益の取扱いに当たるという判断がありました。「キャリア権」という議論もあり、このキャリア形成についてどのように評価していくかがこれからも論点になっていくと思います。
これは降格事件の判例ですけれども、一方で上位に上がっていくキャリア形成の際に、例えば転居を伴う転勤というものが通常行われている場合、それが家庭の事情などで転勤できないことが直ちにキャリア形成として上位の職位に上がれないということになると、それもどうなのかという思いがあり、こういうキャリア形成に伴う転勤などをどのように考えるべきか、あるいはそこに配慮は一定のものがあってもいいのか、その点についてお考えがあればお聞かせ願いたいと思っています。
それから、若井さんに伺います。手芸のことはあまりよく分からないのですけれども、非常にアイテム数がたくさんあるというご説明でした。そこには売れ筋とか死に筋とか、商品の傾向というものがDX化すると見えてくるのではないかと思っています。そういうときに通常の在庫が減った分だけ発注するというのではなく、売れ筋についてはより発注を増やすとか、あるいは死に筋についてはどこかで取扱いをやめるとか、そういう判断は担当者レベルでもできるものなのでしょうか。もしくはそういうものについては、より上位のところに情報が集約されて判断するようになるのでしょうか。これについて質問させていただきます。
○守島部会長 ありがとうございます。
では、石﨑委員お願いいたします。
○石﨑委員 ありがとうございました。
アメックス事件との関係で若干補足させていただきますと、こちらの事件は労働者のキャリアに対する利益にも着目して不利益取扱いを認めたというのは御紹介させていただいたとおりではあるのですが、もちろん労働者が、自分が期待していたのと違うキャリアだったとか、そういったことで、それが直ちに不利益取扱いに当たるかというと、そういうことまでは判決は言っていないところでして、この事案の中で実は育休中に経営上の理由によっていろいろなチームの変更などが起きていたりとか、そういう事情もあったりはしたのですけれども、ただ、そうは言ってもやはりリーダー職に就いて部下をたくさん抱えていた人をたった一人で電話営業をやらせて、しかもその営業に対して目標がどうだとか、そういう話も全くなくその仕事に従事させたというようなケースでして、そういったところも含めて不利益取扱いに当たるという判断がされたのかなと理解しているところであります。
それで、今回私の報告の中で取り上げられなかったのですが、今、御指摘いただいた転居を伴う配転についての問題というのは、私は女性の就業の促進とか活躍推進といったところを考えていくときに非常に重要だと思っていまして、現状の裁判例ですと、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益という非常に大きな不利益がかからないと配転命令は濫用とはならずそのまま命じてよい、それに従わなければいけないというような判断枠組みの下、判断されているのですけれども、本来的にはそういった家庭生活上のいろいろな不利益が伴うような転勤については、やはり事前にそれなりに労働者とそういう配転が予定されているのだけれどもどうだろうかというところをきちんと話し合う必要があると思いますし、そういった不利益があるようなときに一方的な命令という形で強制するのがいいのかどうかというのは、かなり私は問題あるのではないかと思っています。
そういう意味では、判例の判断枠組みももうちょっとそこは変わっていくべきではないかと思いますし、企業の動きとしては最近大分そういった勤務地の限定みたいなところの動きも出ていると聞いていますけれども、そういった意味で転居を伴う転勤を強制することについては企業としては慎重であるべきだし、どうしても必要になる場合でもそれこそテレワークとかの利用で別の形が取れないかというようなことを検討いただくのが重要なのではないかと思っているところになります。
以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。
若井さん、いかがでしょう。
○若井様 ありがとうございます。
手芸業界でのそれこそ在庫管理のお話というところを御回答させていただきますと、弊社が手芸で取り扱っている種類でいうと10万種類くらいの量を取り扱っておりまして、そこでそれこそ本当に売れる毛糸であったり、売れない毛糸であったり、生地とかも結構様々で、季節ごとによっても様々あったり、それこそタイミングによってもはねたり、はねなかったりということがあるようなところなのですが、本当におっしゃっていただいているところで、今まではずっとそれこそデータが取れていなかったので感覚値で、およそこの毛糸が売れそうだな、およそこの生地が売れそうだなみたいな形で発注担当者の勘というところで今まで発注業務を行っていたところがあるのですけれども、こちらはデータが取れるようになりました。
どのタイミングでどれがどれだけ売れたのか。過去に何年分遡ってどれだけ売れてきたのか。ということは、来年これくらい売れそうだとか、7月時期にこれくらい仕入れておくとこれくらいの売れの見込みが取れそうだというようなところが今はデータで取れるようになっていましてシステム上で見えるようになっていますので、いわゆる手芸業務に関わっている方々であればどなたでも今、発注業務ができるような状態になっております。
発注管理と、それこそ商品の取扱い管理みたいなところが一通りできるようになっておりますので、今までは1名、その人しかできなかったというようなところから、ほぼ今は全員が携われるような状態になっております。
○守島部会長 ありがとうございます。
これで全員済ませたのですが、1つだけ若井さんにお伺いしたいことがあるのですけれども、例えばDXでそのスキルを学んだり、もしくは新たなシステムを入れるようになった人たちに対して、何か報酬面であるとか、あとはキャリアのアップであるとか、その他その人がいろいろ多様性を持って臨まれると思うのですけれども、その辺の対応というのは何かなされたのでしょうか。
○若井様 ありがとうございます。
まさしくおっしゃっていただいたとおりでして、報酬面であったり待遇面のアップというところはさせていただいておりまして、かといってそれこそ中小企業の規模の小さい会社ではあるので、ほかの会社からするともしかしたら待遇は少し少ないのかなとは思っているので、その方が転職を選ばれたとしても、その辺りは食い止めることはできないなということは思ってはおります。
○守島部会長 ありがとうございます。
あとは、石﨑委員が手を挙げていらっしゃいますのでどうぞ。
○石﨑委員 ありがとうございます。
私もぜひ若井さんに1点感想と、1点質問をさせて頂ければと思います。1点目の感想としましては、DXを進めていくに当たって非常に丁寧にコミュニケーションを取られたんだなというところが印象的で、そこがその後のいろいろな時間削減にせよ、生産性向上にせよ、成果につながっているのかなという印象を持ちました。
それで、質問としては高齢の方が多いというところで、やはりそうすると多少体調とかもいろいろ不調などを抱えながら働かれている方も多いのではないかと拝察するのですけれども、その辺りへの配慮というか、労務管理上どうされているかというようなお話も伺えるとありがたいです。
○守島部会長 では、若井さんよろしくお願いいたします。
○若井様 非常にうれしい御感想をいただき、ありがとうございます。
まさしくおっしゃっていただいているところでして、割合としても本当に高齢の方も多かったりとか、女性の割合が多いような会社というところがございまして、もともとではあるのですけれども、働き方としては結構フレキシブルに行っているというところがございまして、ある意味、結構その日でも休めるとか、その日でも体調が悪かったらすぐ帰れる。比較的、承認が少ない状態で帰っていただいたりとか、来ていただいたりとかということができるような状態になっています。
ただ、問題はDXをする前は残業があったりしていたので、誰かがカバーをしないといけないというか、負担がかかるというような状態が少しあったのですが、それがDXによって大きく改善されまして、基本的にシステムで誰でも行えるという状態になったので、ほかの方に負担をかけず、ほかの方がそれこそ残業も一切せずに回るような状況になっていますので、もともとあったフレキシブルな環境と、それが相まって非常に今は御高齢の方でも働きやすい環境になっているのではないかとは自負しております。
○石﨑委員 環境と、やはり業務分担が重要だなということを伺いながら思いました。
ありがとうございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
大体時間となりましたので、この辺りで今回の議論は終了させていただきたいと思います。石﨑委員、それから特に若井さん、非常にすばらしいプレゼンテーションをありがとうございました。また、質問に対しても丁寧にお答えいただき、ありがとうございます。
最後に、事務局から次回日程についてお願いいたします。
○宇野政策統括官付参事官 事務局でございます。
次回の日程につきましては調整の上、追って御連絡いたします。
以上でございます。
○守島部会長 ありがとうございます。
それでは、以上をもちまして本日の労働政策基本部会は終了させていただきたいと思います。
皆様方、御多忙の中お集まりいただき、どうもありがとうございました。